特許第6242817号(P6242817)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242817有機エレクトロルミネッセンス素子のためのスピロビフルオレン化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242817
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネッセンス素子のためのスピロビフルオレン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 211/61 20060101AFI20171127BHJP
   C07D 209/86 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 209/94 20060101ALI20171127BHJP
   C07D 307/91 20060101ALI20171127BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20171127BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C07C211/61CSP
   C07D209/86
   C07D209/94
   C07D307/91
   C09K11/06 690
   H05B33/22 D
   H05B33/14 B
【請求項の数】14
【全頁数】125
(21)【出願番号】特願2014-556942(P2014-556942)
(86)(22)【出願日】2013年1月21日
(65)【公表番号】特表2015-513530(P2015-513530A)
(43)【公表日】2015年5月14日
(86)【国際出願番号】EP2013000177
(87)【国際公開番号】WO2013120577
(87)【国際公開日】20130822
【審査請求日】2016年1月21日
(31)【優先権主張番号】12000929.5
(32)【優先日】2012年2月14日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】61/716,810
(32)【優先日】2012年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】モンテネグロ、エルビラ
(72)【発明者】
【氏名】パルハム、アミア・ホサイン
(72)【発明者】
【氏名】ストエッセル、フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ムジカ−フェルナウド、テレサ
(72)【発明者】
【氏名】フォゲス、フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブエシング、アルネ
【審査官】 齋藤 光介
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/006574(WO,A1)
【文献】 特開2011−173973(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/049325(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
H05B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(2a)、(5)または(8)の化合物;
【化1】
式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいフルオレン、スピロビフルオレン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、カルバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンより成る基から選ばれる6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜60個のC原子を有する芳香族環構造であって;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、C(R、NR、OまたはSであり;
、R、R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、各場合に、1以上の隣接しないCH基は、Si(R、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、BrもしくはIで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または各場合に1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基RもしくはRもしくはRもしくはRは、一以上の基Rにより置換されてよいモノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を随意に形成してもよく;
ここで、式(5)および(8)において、R、R、RおよびRが結合しない位置には、水素原子が結合し、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、各場合に、1以上の隣接しないCH基は、Si(R、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、BrもしくはIで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜60個のC原子を有する芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または各場合に1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、一以上の基Rにより置換されてよいモノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を随意に形成してもよく;
は、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜30個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式環構造より成る基から選ばれ、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、モノ-あるいはポリ環式の脂肪族環構造を互いに形成してもよく;
iは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり;
mは、0、1または2であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
r、sは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
または、上記定義に代えて、基ArとArに、以下の定義が適用されるという条件付きで式(2a)または(8)の化合物である:
基ArとArは、上記定義のとおり、基Eを介して互いに結合し、および基ArとArは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜60個のC原子を有する芳香族環構造である。
【請求項2】
添え字iは、0であることを特徴とする、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
以下の式(5a)または(8a)の化合物から選ばれる、請求項1または2記載の化合物;
【化2】
式中、使用される記号と添え字は、請求項1または2で定義されるとおりである。
【請求項4】
以下の式(2b)、(5b)または(8b)の化合物から選ばれる、請求項1〜3何れか1項記載の化合物;
【化3】
式中、使用される記号は、請求項1または2で定義されるとおりである。
【請求項5】
基ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、以下の式(11)〜(39)または(52)〜(58)の群から選ばれることを特徴とする、請求項1〜4何れか1項記載の化合物;
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
式中、破線の結合は、窒素原子への結合を示し、基は、1以上の基Rにより置換されてよい。
【請求項6】
ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい式(11)、(20)および(24)の基から選ばれることを特徴とする、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
基ArおよびArは、互いに異なって選択されることを特徴とする、請求項1〜6何れか1項記載の化合物。
【請求項8】
〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれることを特徴とする、請求項1〜7何れか1項記載の化合物。
【請求項9】
ArまたはArまたはArに結合するRは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個のC原子を有する芳香族環構造より成る基から選ばれることを特徴とする、請求項1〜8何れか1項記載の化合物。
【請求項10】
以下であることを特徴とする、請求項1〜9何れか1項記載の化合物:
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、式(11)〜(39)または(52)〜(58)の内の一つの基であるか;または-NArArは、式(67)〜(72)または(74)の内の一つの基であり;
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、またはC(R、N(R)、OもしくはSであり;
〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ
は、基Rが、ArまたはArまたはArに結合するならば、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族環構造より成る基から選ばれるか;
または、式(20)〜(23)、(53)、(54)、(68)および(72)中で炭素ブリッジに結合するRは、同一であるか異なり、1〜10個のC原子を有するアルキル基、特に、メチルもしくは1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基であるか;または、式(28)〜(31)または(55)〜(58)および(71)中で窒素ブリッジに結合するRは、1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、6〜24個のC原子を有する芳香族環構造より成る基から選ばれ;
iは、0であり;
mは、0または1であり、
nは、0または1であり、
rは、0または1であり、
sは、0または1である。
【請求項11】
ジアリールアミノ基が、1-もしくは3-もしくは4-ハロゲン化スピロビフルオレンとジアリールアミン間のC-Nカップリング反応により導入されることを特徴とする、請求項1〜10何れか1項記載の化合物の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10何れか1項記載の化合物の電子素子での使用。
【請求項13】
請求項1〜10何れか1項記載の少なくとも一つの化合物を含み、有機エレクトロルミネッセンス素子、有機集積回路、有機電界効果トランジスタ、有機薄膜トランジスタ、有機発光トランジスタ、有機太陽電池、有機染料感受性太陽電池、有機光学検査器、有機光受容器、有機電場消光素子、発光電子化学電池、有機レーザーダイオードおよび有機プラスモン発光素子より成る群から選ばれる電子素子。
【請求項14】
請求項1〜10何れか1項記載の化合物が、正孔輸送もしくは正孔注入もしくは励起子ブロックもしくは電子ブロック層中で正孔輸送材料として含まれ、または、発光層中で蛍光もしくは燐光エミッターのためのマトリックス材料として含まれることを特徴とする、請求項13記載の素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子素子、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用のための材料およびこれらの材料を含む電子素子に関する。
【0002】
有機半導体が機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4,539,507、US 5,151,629、EP0676461およびWO98/27136に記載されている。ここで使用される発光材料は、蛍光発光ではなく燐光発光を示す有機金属錯体とますますなっている(M.A.Baldo et al., Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6)。
【0003】
先行技術によれば、正孔輸送層もしくは正孔注入層中で使用される正孔輸送材料は、特に、少なくとも二つのトリアリールアミノ基、または少なくとも一つのトリアリールアミノ基と少なくとも一つのカルバゾール基を含むトリアリールアミン誘導体である。これらの化合物は、ジアリールアミノ置換トリフェニルアミン(TPA型)から、ジアリールアミノ置換ビフェニル誘導体(TPD型)から、またはこれらの基礎化合物の組み合わせから誘導されることが多い。さらに、たとえば、2,7-もしくは2,2',7,7'-位で、2もしくは4個のジアリールアミノ基により置換されるスピロビフルオレン誘導体が使用される(たとえば、EP 676461もしくはUS 7,714,145にしたがう。)。さらに、各場合にジフェニルアミノ基により4,4'-位で置換されたスピロビフルオレン誘導体が、知られている。これらの化合物の場合には、蛍光の場合および燐光OLEDの両者の場合に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関して、効率、寿命および駆動電圧に関して、改善に対する必要性がさらに存在する。
【0004】
本発明の目的は、蛍光もしくは燐光OLED、特に、燐光OLEDにおける、たとえば、正孔輸送層もしくは励起子ブロック層中の正孔輸送材料としてのまたは発光層中のマトリックス材料としての使用のために適している化合物を提供することである。
【0005】
驚くべきことに、以下でより詳細に説明されるある種の化合物が、この目的を達成し、特に、寿命、効率と駆動電圧に関して、有機エレクトロルミネッセンス素子における顕著な改善をもたらすことが見出された。これは、特に、正孔輸送材料としてまたはマトリックス材料としての本発明による化合物の使用について、燐光もしくは蛍光エレクトロルミネッセンス素子にあてはまる。材料は、一般的に高い熱安定性を有し、それゆえ、分解することなくまた残留物もなく昇華することができる。したがって、本発明は、これら材料とこの型の化合物を含む電子素子に関する。
【0006】
特に、少なくとも二つの窒素原子を含む正孔輸送材料が、有機エレクトロルミネッセンス素子に一般的に使用されることから、芳香族モノアミンにより非常に良好な結果が得られることは、驚くべき結果である。
【0007】
したがって、本発明は、以下の式(1)の化合物に関する:
【化1】
【0008】
式中、以下が、使用される記号と添え字に適用される;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいフルオレン、スピロビフルオレン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、カルンバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンより成る基から選ばれる6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって;ここで、ArとArは、基Eによって、互いに結合してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であって;ここで、ArとArは、基Eによって、互いに結合してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、C(R、NR、OまたはSであり;
、R、R、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、各場合に、1以上の隣接しないCH基は、Si(R、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、BrもしくはIで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または各場合に1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基RもしくはRもしくはRもしくはRは、一以上の基Rにより置換されてよいモノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を随意に形成してもよく;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CN、Si(R、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、各場合に、1以上の隣接しないCH基は、Si(R、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、D、F、Cl、BrもしくはIで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、または各場合に1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアラルキルもしくはヘテロアラルキル基より成る基から選ばれ;ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、一以上の基Rにより置換されてよいモノあるいはポリ環式の脂肪族環構造を随意に形成してもよく;
は、H、D、F、1〜20個のC原子を有する脂肪族炭化水素基、5〜30個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式環構造より成る基から選ばれ、ここで、1以上のH原子は、DもしくはFで置き代えられてよく、ここで、2個以上の隣接する置換基Rは、モノ-あるいはポリ環式の脂肪族環構造を互いに形成してもよく;
iは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり;
mは、0、1または2であり;
nは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり;
p、qは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり;
r、sは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4であり、ここで、p+r≦4およびq+s≦4である。
【0009】
さらに、本発明は、上記定義に代えて、基ArとArに、以下の定義が適用されるという条件付きで式(1)の化合物に関する:
基ArとArは、上記定義のとおり、基Eを介して互いに結合し、および
基ArとArは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜60個のC原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0010】
本発明の意味でのアリール基は、単純な芳香族環、すなわちベンゼン、または縮合アリール基、たとえば、ナフタレンもしくはフェナントレンの何れかの意味で使用される。対照的に、たとえば、ビフェニルもしくはフルオレン等の等の単結合により互いに結合した芳香族基は、アリール基を指すのではなく、逆に、芳香族環構造を指す。
【0011】
本発明の意味でのヘテロアリール基は、芳香族環中に少なくとも1個のヘテロ原子を含み、ヘテロ原子は、好ましくは、N、OおよびSから選ばれる。ヘテロアリール基は、たとえば、ピリジン、トリアジンもしくはチオフェン等の単純な複素環式芳香族環だけを含むかまたはキノリンもしくはカルバゾール等の縮合ヘテロアリール基を含んでよい。
【0012】
本発明の意味での芳香族環構造は、6〜60個のC原子を環構造中に含み、ここで、芳香族環構造は、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フルオレンおよびスピロビフルオレンまたはこれらの基の組み合わせから構築される。本発明の意味での芳香族環構造は、特に、さらに、複数のアリール基が、互いに直接または炭素原子を介して結合する構造の意味で使用される。したがって、たとえば、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、フルオレン、9,9’-スピロビフルオレン、9,9-ジアリールフルオレン等のような構造は、また、特に、本発明の意味での芳香族環構造の意味で使用される。ここで、芳香族環構造は、定義により、アミノ基を含まない。したがって、トリアリールアミノ基は、芳香族環構造の定義によってカバーされない。
【0013】
類似の定義が、用語複素環式芳香族環構造にあてはまり、2個以上の内部連結したアリールもしくはヘテロアリール基の組み合わせであり、それらの少なくとも一つがヘテロアリール基であるものと理解されるべきである。
【0014】
アラルキル基は、アリール基により置換されたアルキル基であると理解されるべきであって、アリール基は、上記のとおり定義され、アルキル基は、1〜20個のC原子を有してよく、アルキル基の定義下の上記基により置換されてよく、アルキル基に対して上記定義のとおりに置き代えられた一以上のCH基を有してよい。アラルキル基中で、アルキル基は化合物の残部に結合する基である。類似する定義が、用語ヘテロアラルキル基にあてはまり、ヘテロアリール基がアリール基に代わり存在するだけである。
【0015】
アリールオキシ基は、二価の(エーテル)酸素原子を介して結合する、アリール基であると理解されるべきである。類似する定義が、用語ヘテロアリールオキシ基にあてはまり、ヘテロアリール基がアリール基に代わり存在するだけである。
【0016】
本発明の目的のために、脂肪族炭化水素基またはアルキル基またはアルケニル基またはアルキニル基は、典型的には、1〜40個または1〜20個のC原子を含んでもよく、ここで、加えて、個々のH原子もしくはCH基は、上記言及した基により置換されていてよく、好ましくは、基メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、s-ブチル、t-ブチル、2-メチルブチル、n-ペンチル、s-ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、n-ヘキシル、ネオヘキシル、シクロヘキシル、n-ヘプチル、シクロヘプチル、n-オクチル、シクロオクチル、2-エチルヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチル、2,2,2-トリフルオロエチル、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、シクロペンテニル、ヘキセニル、シクロヘキセニル、ヘプテニル、シクロヘプテニル、オクテニル、シクロオクテニル、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニルおよびオクチニルの意味で使用される。
【0017】
1〜40個のC原子を有するアルコキシ基は、好ましくは、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、i-ブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシ、n-ペントキシ、s-ペントキシ、2-メチルブトキシ、n-ヘキソキシ、シクロヘキシルオキシ、n-ヘプトキシ、シクロヘプチルオキシ、n-オクチルオキシ、シクロオクチルオキシ、2-エチルヘキシルオキシ、ペンタフルオロエトキシまたは2,2,2-トリフルオロエトキシの意味で使用される。
【0018】
1〜40個のC原子を有するチオアルキル基は、特に、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、i-プロピルチオ、n-ブチルチオ、i-ブチルチオ、s-ブチルチオ、t-ブチルチオ、n-ペンチルチオ、s-ペンチルチオ、n-ヘキシルチオ、シクロヘキシルチオ、n-ヘプチルチオ、シクロヘプチルチオ、n-オクチルチオ、シクロオクチルチオ、2-エチルヘキシルチオ、トリフルオロメチルチオ、ペンタフルオロエチルチオ、2,2,2-トリフルオロエチルチオ、エテニルチオ、プロペニルチオ、ブテニチオル、ペンテニルチオ、シクロペンテニルチオ、ヘキセニルチオ、シクロヘキセニルチオ、ヘプテニルチオ、シクロヘプテニルチオ、オクテニルチオ、シクロオクテニルチオ、エチニルチオ、プロピニルチオ、ブチニルチオ、ペンチニルチオ、ヘキシニルチオ、ヘプチニルチオまたはオクチニルチオの意味で使用される。
【0019】
一般的に、本発明にしたがうアルキル、アルコキシあるいはチオアルキル基は、直鎖、分岐あるいは環状であることができ、ここで、一以上の隣接しないCH基は、上記した言及した基により置き代えられてよく、さらに、1以上のH原子は、D、F、Cl、Br、I、CNもしくはNO、好ましくは、F、ClもしくはCNで、さらに、好ましくは、FもしくはCNで、特に、好ましくは、CNで置き代えられてよい。
【0020】
本発明の好ましい態様では、p+q=0または1である。したがって、本発明の化合物は、好ましくは、1または2個のジアリールアミノ基を含む。
【0021】
好ましい態様では、m、s、rとnは、出現毎に同一であるか異なり、0または1であり、より好ましくは、0である。
【0022】
本発明のさらに好ましい態様によれば、式(1)中で1個以下の添え字iは、1である。さらに好ましくは、添え字iは、一般的に0である。添え字iが0である場合には、スピロビフルオレンと窒素原子は直接結合していると理解されるべきである。
【0023】
本発明の、好ましい態様では、式(1)の化合物は、以下の式(2)〜(10)の化合物から選ばれる。
【化2-1】
【化2-2】
【0024】
式中、使用される記号と添え字は、上記の意味を有する。
【0025】
式(2)〜(10)の化合物に対しては、i=0であることが好ましい。
【0026】
本発明の、特に、好ましい態様では、式(2)〜(10)の化合物は、以下の式(2a)〜(10a)の化合物から選ばれる。
【化3】
【0027】
式中、使用される記号と添え字は、上記の意味を有する。
【0028】
上記式(2a)〜(10a)の化合物に対しては、i=0であることが好ましい。
【0029】
非常に、特に、好ましいのは、以下の式(2b)〜(10b)の化合物であって、
【化4】
【0030】
式中、使用される記号と添え字は、上記の意味を有する。
【0031】
本発明の、特に、好ましい態様では、本発明の化合物は、唯一つのジアリールアミノ基-NArArを含む。したがって、これは、好ましくは、式(2)、(5)および(8)または(2a)、(5a)および(8a)または(2b)、(5b)および(8b)の化合物に関する。
【0032】
本発明の、さらに、好ましい態様では、ジアリールアミノ基-NArArは、スピロビフルオレンの4-位でまたは4-および4'-位で結合する。したがって、これは、好ましくは、式(2)および(3)または(2a)および(3a)または(2b)および(3b)の化合物に関する。
【0033】
非常に、特に、好ましいのは、以下の式(2)または(2a)または(2b)の化合物である。
【0034】
本発明の、さらに、好ましい態様では、Arは、出現毎に同一であるか異なり、夫々、1以上の基Rにより置換されてよいフルオレン、スピロビフルオレン、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、カルバゾール、ジベンゾフランおよびジベンゾチオフェンより成る基から選ばれる。
【0035】
ここで、基ArおよびArは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、以下の式(11)〜(66)の基から選ばれ、
【化5-1】
【化5-2】
【化5-3】
【化5-4】
【0036】
式中、破線の結合は、窒素原子への結合を示し、基は、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、非置換である。
【0037】
式(20)〜(28)、(53)および(54)の基中のRは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10個のC原子を有するアルキル基、特に、メチル、または1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基である。
【0038】
好ましい基ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、上記言及した式(11)、(13)、(16)、(20)、(28)、(29)、(33)、(34)、(35)、(37)、(38)、(39)、(40)、(44)、(48)、(49)、(51)および(59)より成る基から選ばれる。ここで、これらの基の全ての可能な組み合わせが、等しく可能である。
【0039】
特に、好ましくは、基ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、上記言及した式(11)、(13)、(20)、(29)、(35)、(38)、(39)、(49)、(51)および(59)より成る基から選ばれる。
【0040】
さらに、式(28)〜(31)および(40)〜(43)および(55)〜(58)および(63)〜(66)の基中のRは、好ましくは、1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基、オルト-ビフェニル基、メタ-ビフェニル基、パラ-ビフェニル基、テルフェニル基、1-ナフチル基または2-ナフチル基である。
【0041】
好ましくは、基ArおよびArは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい式(11)、(20)および(24)より成る基から選ばれる。
【0042】
少なくとも一つの基ArおよびArは、特に、好ましくは、式(11)または(20)の基である。非常に、特に、好ましくは、Arは、式(11)の基であり、Arは、式(20)の基である。
【0043】
窒素に結合する上記言及した式(11)〜(66)の二個の基ArおよびArは、所望のとおりに、組み合わされてよい。
【0044】
本発明の、好ましい態様では、基ArおよびArは、互いに異なって選ばれる。
【0045】
式(1)および(2)〜(10)の化合物または好ましい態様中の、基ArおよびArが、基Eを介して互いに結合するならば、基-NArArは、好ましくは、以下の式(67)〜(74)の一つの構造を有し、
【化6】
【0046】
式中、使用される記号は、上記の意味を有し、破線の結合はスピロビフルオレンへの結合を示す。これらの基は、1以上の基Rにより置換されてよいが、好ましくは、非置換である。
【0047】
式(68)〜(72)の基中のRは、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10個のC原子を有するアルキル基、特に、メチル、または1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基である。
【0048】
さらに、式(71)と(73)の基中のRは、好ましくは、1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基である。
【0049】
式(13)の好ましい置換された態様は、以下の式(13a)〜(13f)であり、式(16)の好ましい態様は、式(16a)と(16b)であり、式(20)の好ましい態様は、以下の式(20a)〜(20l)であり、式(21)の好ましい態様は、以下の式(21a)〜(21g)であり、式(22)の好ましい態様は、以下の式(22a)、(22b)、(22c)および(22d)であり、式(23)の好ましい態様は、以下の式(23a)、(23b)、(23c)および(23d)であり、
【化7-1】
【化7-2】
【化7-3】
【0050】
式中、破線の結合は、窒素への結合を示す。
【0051】
基Arは、出現毎に同一であるか異なり、各場合に、1以上の基Rにより置換されてもよい6〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造から選ばれる。
【0052】
特に、好ましい基Arは、以下の式(Ar-1)〜(Ar-15)の基から選ばれ、
【化8】
【0053】
式中、破線の結合は、スピロビフルオレンへの結合およびアミンへの結合を示し、ここで、基は、各自由位置で基Rにより置換されてよいが、好ましくは、非置換である。
【0054】
本発明の、好ましい態様では、R〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれる。
【0055】
本発明の、特に、好ましい態様では、R〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜6個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜18個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれる。
【0056】
最も、好ましい態様では、R〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、フェニル、メチルおよびtert-ブチルから選ばれる。
【0057】
式(1)および(2)〜(10)および(2a)〜(10a)の化合物中のR〜Rは、非常に、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、メチル、tert-ブチルおよびフェニルから選ばれる。
【0058】
本発明の、さらに、好ましい態様では、ArまたはArまたはArに結合する基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれる。
【0059】
本発明の、特に、好ましい態様では、ArまたはArまたはArに結合する基Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜5個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜6個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれる。
【0060】
ここで、基R〜Rは、好ましくは、二個を超える芳香族もしくは複素環式芳香族六員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まず、すなわち、たとえば、アントラセンまたはピレン基を含まない。基R〜Rは、特に、好ましくは、芳香族もしくは複素環式芳香族六員環が互いに直接縮合する縮合アリールもしくはヘテロアリール基を含まず、すなわち、たとえば、ナフタレン基を絶対的に含まない。
【0061】
フルオレンの9-位の2個の置換基Rが、一緒になって、好ましくは、3〜8個のC原子を有する、特に、好ましくは、5〜6個のC原子を有するシクロアルキル環を形成することが、さらに、好ましいかもしれない。
【0062】
同様に、式(68)と(72)の基中二個の置換基Rは、互いに環構造を形成してもよく、それゆえ、スピロ構造を形成してもよく、たとえば、好ましくは、3〜8個のC原子を有する、特に、好ましくは、5〜6個のC原子を有するシクロアルキル環を形成してよい。
【0063】
真空蒸発により加工される化合物に対して、アルキル基は、好ましくは、4個以下のC原子、特に、好ましくは、1個以下のC原子を有する。溶液から加工される化合物に対しては、適切な化合物は、また、10個までのC原子を有する直鎖、分岐あるいは環状アルキル基により置換されるものか、オリゴアリーレン基、たとえば、オルト-、メタ-、パラ-もしくは分岐テルフェニルもしくはクアテルフェニル基により置換されたものである。
【0064】
本発明の好ましい態様では、Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、6〜24個のC原子を有する芳香族環構造より成る基から選ばれる。Rは、特に、好ましくは、出現毎に同一であるか異なり、Hまたはメチル基であり、非常に、特に、好ましくは、Hである。
【0065】
特に、好ましいのは、上記言及した好ましい態様が、同時に出現する、式(1)および(2)〜(10)および(2a)〜(10a)および(2b)〜(10b)の化合物である。したがって、特に、好ましいのは、以下である化合物である。
【0066】
Ar、Arは、出現毎に同一であるか異なり、式(11)〜(66)の基であるか;または-NArArは、式(67)〜(74)の内の一つの基であり;
Eは、出現毎に同一であるか異なり、単結合、またはC(R、N(R)、OもしくはSであり;
〜Rは、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシ基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキルもしくはアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、Oで置き代えられてよく、ここで、1以上のH原子は、Fで置き代えられてよい。)または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい6〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれ
は、基Rが、ArまたはArまたはArに結合するならば、出現毎に同一であるか異なり、H、F、CN、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、それぞれ、1以上の基Rにより置換されてよい5〜24個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造より成る基から選ばれるか;
または、式(20)〜(23)、(53)、(54)、(68)および(72)中で炭素ブリッジに結合するRは、出現毎に同一であるか異なり、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、特に、メチルもしくは1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基;または、式(28)〜(31)、(40)〜(43)、または(55)〜(58)、(63)〜(66)および(71)および(73)中で窒素ブリッジに結合するRは、1以上の基Rにより置換されてよいフェニル基から選択され;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、1〜10個のC原子を有する直鎖アルキル基、3〜10個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル基、または、6〜24個のC原子を有する芳香族環構造より成る基から選ばれ;
iは、0であり;
mは、0または1であり、好ましくは、0であり;
nは、0または1であり、
p+qは、0または1あり:
rは、0または1であり、
sは、0または1である。
【0067】
式(1)の化合物のための好ましい構造の例は、以下の表に挙げられる。化合物は、式(2a)、(5a)および(8a)の基本構造を基礎とする。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【表1-8】
【表1-9】
【表1-10】
【表1-11】
【0068】
上記リストの化合物は、好ましくは、ArとR〜Rとして、上記で説明したこれらの基の好ましい態様を有している。より好ましくは、上記挙げられた化合物中で、上記定義されるとおり、Arは、基Ar-1〜Ar-15から選ばれる。より好ましくは、上記挙げられた化合物中で、R〜Rは、同一か異なり、H、F、フェニル、メチルおよびtert-ブチルから選ばれる。
【0069】
本発明の適切な化合物の例は、以下の表に示される化合物である。
【化9-1】
【化9-2】
【化9-3】
【化9-4】
【化9-5】
【化9-6】
【化9-7】
【化9-8】
【化9-9】
【化9-10】
【化9-11】
【化9-12】
【化9-13】
【化9-14】
【化9-15】
【化9-16】
【化9-17】
【0070】
本発明による化合物は、たとえば、臭素化、ウルマンアリール化、ハートウィッグ-ブフバルトカップリング等の当業者に知られた合成工程により調製することができる。
【0071】
合成は、一般的には、1-、3-もしくは4-ハロゲン化、特に、臭素化スピロビフルオレン誘導体から出発し、C-Nカップリング反応、たとえば、ハートウィッグ-ブフバルトカップリングまたはウルマンカップリングによる、たとえば、ジアリールアミノ基の導入が続く。同様に、別の適切な脱離基、たとえば、トシレートもしくはトリフレートを、ハロゲンに代えて使用することができる。1-ジアリールアミノスピロビフルオレンの合成がスキーム1に示され、ここで、臭素出発化合物に対する二種の異なる入手経路が示される。
【0072】
スキーム1
【化10】
【0073】
上記に示される通常のスピロ合成と同様に、3-もしくは4-位でハロゲン化された対応するスピロビフルオレン誘導体を、対応する3-もしくは4-ハロゲン置換フルオレンを出発物質として使用することにより合成することができる。同様に、対応する置換された構造も、また、全く同様に合成することができる。
【0074】
スキーム1aに示されたプロセスの変形において、第1工程でフルオレンにブフバルトカップリングを施し、次いで金属化ビフェニルの付加と後のスピロビフルオレンへの閉環を行うことも同様に可能である。さらなる詳細については、そのような合成システムが、実施例に示される。
【0075】
スピロビフルオレン-カルバゾール化合物は、実施例に示されるとおり、カルバゾールとハロゲン置換スピロビフルオレンとのブフバルトカップリングにより合成することができる。
【0076】
したがって、本発明は、さらに、ジアリールアミノ基を、1-もしくは3-もしくは4-ハロゲン化スピロビフルオレンとジアリールアミン間のC-Nカップリング反応により導入することを特徴とする、式(1)の化合物の製造方法に関する。
【0077】
上記記載の本発明の化合物、特に、臭素、沃素、塩素、ボロン酸もしくはボロン酸エステル等の反応性脱離基により置換された化合物は、対応するオリゴマー、デンドリマーまたはポリマーの調製のためのモノマーとして使用することができる。ここで、オリゴマー化またはポリマー化は、好ましくは、ハロゲン官能基もしくはボロン酸官能基により実行される。
【0078】
したがって、本発明は、さらに、一以上の式(I)の化合物を含むオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーに関し、ここで、ポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーへの結合は、R〜Rにより置換された式(I)中で任意の所望の位置で局在化されてよい。式(I)の化合物の結合に応じて、化合物は、オリゴマーもしくはポリマーの側鎖の構成部分または主鎖の構成部分である。本発明の意味でのオリゴマーは、少なくとも三個のモノマー単位から構築される化合物という意味で使用される。本発明の意味でのポリマーは、少なくとも10個のモノマー単位から構築される化合物という意味で使用される。本発明のポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーは、共役、部分共役もしくは非共役であってよい。本発明のオリゴマーまたはポリマーは、直鎖、分岐鎖もしくは樹状であってよい。直鎖状に結合した構造においては、式(I)の単位は、たがいに直接結合するか、または二価の基、たとえば、置換もしくは非置換アルキレン基により、ヘテロ原子により、または二価の芳香族もしくは複素環式芳香族基により、たがいに結合してよい。分岐および樹状構造においては、三個以上の式(I)の単位は、たとえば、三価もしくは多価の基、たとえば、三価もしくは多価の芳香族もしくは複素環式芳香族基により結合してもよく、分岐もしくは樹状オリゴマーまたはポリマーを生じる。式(I)の化合物に対する上記記載したとおりの同じ選好が、オリゴマー、デンドリマーおよびポリマー中の式(I)の繰り返し単位にあてはまる。
【0079】
オリゴマーまたはポリマーの調製のために、本発明によるモノマーは、さらなるモノマーとホモ重合するか共重合する。適切で好ましいコモノマーは、フルオレン(たとえば、EP842208もしくはWO02/22026にしたがう)、スピロビフルオレン(たとえば、EP707020、EP894107もしくはWO06/061181にしたがう)、パラ-フェニレン(たとえば、WO92/18552にしたがう)、カルバゾール(たとえば、WO04/070772もしくはW004/113468にしたがう)、チオフェン(たとえば、EP1028136にしたがう)、ジヒドロフェナントレン(たとえば、WO 05/014689もしくはWO 07/006383にしたがう)、シス-およびトランス-インデノフルオレン(たとえば、WO04/041901もしくはWO04/113412にしたがう)、ケトン(たとえば、WO05/040302にしたがう)、フェナントレン(たとえば、WO05/104264もしくはWO07/017066にしたがう)または複数のこれらの単位から選ばれる。ポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、さらなる単位、たとえば、ビニルトリアリールアミン(たとえば、WO07/068325にしたがう)もしくは燐光金属錯体(たとえば、WO06/03000にしたがう)等の発光(蛍光または燐光)単位および/または電荷輸送単位、特に、トリアリールアミン系のものをも通常含む。
【0080】
本発明によるポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーは、有利な特性、特に、長い寿命、高い効率と良好な色座標を有する。
【0081】
本発明によるポリマーおよびオリゴマーは、一以上の型のモノマーの重合により一般的に調製され、少なくとも一つのモノマーは、ポリマー中に式(I)の繰り返し単位を生じる。適切な重合反応は、当業者に知られ、文献に記載されている。C-CまたはC-N結合を生じる、特に、適切で、好ましい重合反応は、以下のものである:
(A)スズキ重合;
(B)ヤマモト重合;
(C)スチル重合および
(D)ハートウイッグ-ブッフバルト重合。
【0082】
重合をこれらの方法により実行することができる方法と次いでポリマーを反応媒体から分離し、精製することができる方法は、当業者に知られており、文献、たとえば、WO 2003/048225、WO 2004/037887およびWO 2004/037887に詳細に記載されている。
【0083】
したがって、本発明は、また、スズキ重合、ヤマモト重合、スチル重合またはハートウイッグ-ブッフバルト重合により調製されることを特徴とする本発明によるポリマー、オリゴマーおよびデンドリマーの調製方法に関する。本発明によるデンドリマーは、当業者に知られた方法によりもしくはそれに類似して調製することができる。適切な方法は、文献、たとえば、Frechet, Jean M. J.; Hawker, Craig J., "Hyperbranched polyphenylene and hyperbranched polyesters: new soluble, three-dimensional, reactive polymers"、 Reactive & Functional Polymers (1995), 26(1-3), 127-36; Janssen, H. M.; Meijer, E. W.、 "The synthesis and characterization of dendritic molecules", Materials Science and Technology (1999), 20 (Synthesis of Polymers), 403-458; Tomalia, Donald A., "Dendrimer molecules", Scientific American (1995), 272(5), 62-6、WO 2002/067343 A1およびWO 2005/026144 A1に記載されている。
【0084】
本発明の化合物は、電子素子での使用に適している。ここで、電子素子は、少なくとも一つの有機化合物を含む少なくとも一つの層を含む素子の意味で使用される。しかしながら、ここで、素子は、無機材料または無機材料から完全に構築された層をも含んでもよい。
【0085】
したがって、本発明は、さらに、本発明の化合物の電子素子での、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子での使用に関する。
【0086】
したがって、本発明は、さらになお、少なくとも一つの本発明の化合物を含む電子素子に関する。上述した選好は、同様に、電子素子にあてはまる。
【0087】
電子素子は、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(有機発光ダイオード、OLED)、有機集積回路(O-IC)、有機電界効果トランジスタ(O-FET)、有機薄膜トランジスタ(O-TFT)、有機発光トランジスタ(O-LET)、有機太陽電池(O-SC)、有機染料感受性電池(ODSSC)、有機光学検査素子、有機光受容器、有機電場消光素子(O-FQD)、発光電子化学電池(LEC)、有機レーザーダイオード(O-laser)および有機プラズモン発光素子(D. M. Koller et al., Nature Photonics 2008, 1-4)より成る群から選ばれるが、好ましくは、有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)、特に、好ましくは、燐光OLEDである。
【0088】
有機エレクトロルミネッセンス素子と発光電子化学電池は、様々な用途、たとえば、単色もしくは多色ディスプレーに、照明用途に、医療および/または化粧用途、たとえば、光治療に使用することができる。
【0089】
有機エレクトロルミネセンス素子は、カソード、アノードおよび少なくとも一つの発光層を含む。これらの層とは別に、さらなる層、たとえば、各場合に、一以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔ブロック層、電子輸送層、電子注入層、励起子ブロック層、電子ブロック層および/または電荷生成層をも含んでもよい。たとえば、励起子ブロック機能を有する中間層も、同様に二個の発光層の間に導入してもよい。しかしながら、これらの層の夫々は、必ずしも存在する必要がないことに留意する必要がある。
【0090】
ここで、有機エレクトロルミネセンス素子は、一つの発光層または複数の発光層を含んでもよい。複数の発光層が存在するならば、これらは、好ましくは、380nm〜750nm間に全体で複数の最大発光を有し、全体として、白色発光が生じるものであり、換言すれば、蛍光若しくは燐光を発することができる種々の発光化合物が、発光層に使用される。特に、好ましいのは、3個の発光層を有する構造であり、ここで、その3層は、青色、緑色及びオレンジ色もしくは赤色発光を呈する(基本構造については、例えば、WO 2005/011013参照。)。ここで、全ての発光層が蛍光発光であるか、または全ての発光層が燐光発光であるか、または一以上の発光層が蛍光発光であり、一以上の発光層が燐光発光であることも可能である。
【0091】
上記示される態様にしたがう本発明による化合物は、その正確な構造に応じて、異なる層に使用することができる。好ましいものは、式(1)の化合物または上記好ましい態様を、正孔輸送もしくは正孔注入もしくは励起子ブロックもしくは電子ブロック層中で正孔輸送層材料として、または発光層中で蛍光もしくは燐光エミッター、特に、燐光エミッターのためのマトリックス材料として含む有機エレクトロルミネッセンス素子である。上記に示される好ましい態様は、有機電子素子中での材料の使用にもあてはまる。
【0092】
本発明の好ましい態様では、式(1)の化合物または上記好ましい態様は、正孔輸送もしくは正孔注入層中で正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用される。ここで、発光層は、蛍光もしくは燐光であることができる。本発明の意味での正孔注入層は、アノードに直接隣接する層である。本発明の意味での正孔輸送層は、正孔注入層と発光層との間に位置する層である。
【0093】
本発明のなおさらに好ましい態様では、式(1)の化合物または上記好ましい態様は、励起子ブロック層中で使用される。励起子ブロック層は、アノード側の発光層に直接隣接する層の意味で使用される。
【0094】
式(1)の化合物または上記好ましい態様は、特に、好ましくは、正孔輸送または励起子ブロック層中で使用される。
【0095】
本発明の態様では、式(1)の化合物または好ましい態様は、ヘキサアザトリフェニレン誘導体、特に、ヘキサシアノヘキサアザトリフェニレン(たとえば、EP 1175470にしたがう)を含む層と組み合わせて正孔輸送または注入層中で使用される。したがって、以下のとおりの組み合わせが、たとえば、好ましい。アノード−ヘキサアザトリフェニレン誘導体−正孔輸送層であって、正孔輸送層は一以上の式(1)の化合物または好ましい態様を含む。同様に、この構造中に、少なくとも一つの正孔輸送層が、少なくとも一つの式(1)の化合物または好ましい態様を含む複数の連続する正孔輸送層を使用することもできる。さらに好ましい組み合わせは以下のとおりである。アノード−正孔輸送層−ヘキサアザトリフェニレン誘導体−正孔輸送層であって、二個の正孔輸送層のうち少なくとも一つは、一以上の式(1)の化合物または好ましい態様を含む。同様に、この構造中に、一つの正孔輸送層に代えて、複数の連続する正孔輸送層を使用することができ、ここで、少なくとも一つの正孔輸送層は、少なくとも一つの式(1)の化合物または好ましい態様を含む。
【0096】
式(1)の化合物が、正孔輸送層、正孔注入層、励起子ブロック層もしくは電子ブロック層中で正孔輸送材料として使用されるならば、化合物は、純粋材料として、すなわち層中で100%の割合で使用することができるか、または一以上の他の材料と組み合わせて使用されてよい。好ましい態様によれば、この場合、式(1)の化合物と組み合わせて使用される一もしくは他の化合物は、p-ドーパントである。使用される好ましいp-ドーパントは、電子受容性化合物、好ましくは、混合物中の一以上のその他の化合物を酸化することができる電子受容性化合物である。
【0097】
p-ドーパントは、本発明の化合物を含む層中で、好ましくは、0.1〜20体積%、好ましくは、0.5〜12体積%、より好ましくは、1〜8体積%、最も好ましくは、2〜6体積%の濃度で存在する。
【0098】
本発明の化合物と組み合わせて使用される、特に、好ましいp-ドーパントは、一以上の以下の文献に開示された化合物である:WO2011/073149、EP1968131、EP2276085、EP2213662、EP17226022、EP2045848、DE102007031220、US8044390、US8057712、WO2009/003455、WO2010/094378、WO2011/120709、US2010/0096600およびWO2012/095143。
【0099】
本発明の素子に使用される極めて好ましいp-ドーパントは、キノジメタン、アザインデノフルオレンジオン、アザフェナレン、アザトリフェニレン、I、金属ハロゲン化物、好ましくは、遷移金属ハロゲン化物、金属酸化物、好ましくは、第3主属の少なくとも一つの金属を含む遷移金属酸化物および金属酸化物および遷移金属錯体、好ましくは、少なくとも一つの束縛酸素原子を有するリガンドをもつCu、Co、Ni、PdもしくはPtの錯体である。好ましいのは、さらに、レニウム酸化物、モリブデン酸化物およびタングステン酸化物、より好ましくは、Re、MoO、WOおよびReO等の遷移金属酸化物である。
【0100】
好ましいp-ドーパントは、さらに、以下の化合物である:
【化11】
【0101】
本発明のさらに好ましい態様では、式(1)の化合物または上記好ましい態様は、発光層中で、蛍光もしくは燐光化合物、特に、燐光化合物のためのマトリックス材料として使用される。ここで、有機エレクトロルミネッセンス素子は、一つの発光層もしくは複数の発光層を含み、ここで、少なくとも一つの発光層は、少なくとも一つの本発明による化合物をマトリックス材料として含む。
【0102】
式(1)の化合物または上記好ましい態様が、発光層中で、発光化合物のためのマトリックス材料として使用されるならば、好ましくは、一以上の燐光材料(三重項エミッター)と組み合わせて使用される。本発明の意味での燐光発光は、比較的高いスピン多重度>1を有する励起状態から、特に、励起三重項状態からのルミネッセンスの意味で使用される。本発明の目的のために、遷移金属もしくはランタノイド、特に、すべてのルミネッセンスイリジウム、白金および銅錯体を含むすべてのルミネッセンス錯体が、燐光化合物とみなされるべきである。
【0103】
式(1)の化合物または上記好ましい態様と発光化合物を含む混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、式(1)の化合物または上記好ましい態様を、99.9〜1重量%、好ましくは、99〜10重量%、特に、好ましくは、97〜60重量%、特に、95〜80重量%含む。対応して、混合物は、エミッターとマトリックス材料を含む全混合物を基礎として、エミッターを0.1〜99重量%、好ましくは、1〜90重量%、特に、好ましくは、3〜40重量%、特に、5〜20重量%含む。特に、層が溶液から適用されるならば、上記に示された範囲があてはまる。層が真空蒸発により適用されるならば、同じ数値があてはまるが、この場合のパーセンテージは、各場合に、体積%を示す。
【0104】
本発明の、特に、好ましい態様は、式(1)の化合物または上記好ましい態様の、さらなるマトリックス材料と組み合わせての燐光エミッターのためのマトリックス材料としての使用である。式(1)の化合物または上記好ましい態様と組み合わせて使用することのできる、特に、適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680にしたがう芳香族ケトン、芳香族ホスフィンオキシドまたは芳香族スルホキシドもしくはスルホンであり、WO 2005/039246、US 2005/0069729、JP 2004/288381、EP 1205527もしくはWO 2008/086851に記載されたトリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、m-CBPまたはカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、WO 2010/136109 もしくは WO 2011/000455にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、EP 1731584、JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 2006/117052にしたがうアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2010/015306、WO 2007/063754もしくはWO 08/056746にしたがうトリアジン誘導体、たとえば、EP 652273もしくはWO 2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2009/124627にしたがうフルオレン誘導体、たとえば、WO 2010/054729にしたがうジアザシロールもしくはテトラアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、たとえば、US 2009/0136779、WO 2010/050778、WO 2011/042107またはO 2011/088877にしたがう架橋カルバゾール誘導体である。さらに、たとえば、WO 2010/108579に記載された正孔輸送特性も電子輸送特性も有さない電気的に中性なコ-ホストを使用することができる。
【0105】
特に、好ましくは、式(1)の化合物は、ラクタム化合物から選ばれる第2のホスト材料と組み合わせて一以上の三重項エミッターのためのマトリックス材料として使用される。特に、好ましくは、WO2011/116865、WO2011/137951、未公開EP12007040.7および未公開 EP11008708.7に開示されたラクタム化合物である。最も好ましいのは、上記出願の実施例に示された化合物である。
【0106】
発光層中で式(1)の材料と組み合わせて使用される好ましいラクタム化合物の例は、以下の表に示される。
【化12-1】
【化12-2】
【化12-3】
【化12-4】
【化12-5】
【化12-6】
【化12-7】
【0107】
同様に、混合物中で二個以上の燐光エミッターを使用することができる。この場合、より短い波長で発光するエミッターが、混合物中でコホストとして作用する。
【0108】
適切な燐光発光化合物(三重項エミッター)、特に、好ましくは、可視域で適切な励起により発光する化合物は、加えて、20より大きい原子番号、好ましくは、38〜84の原子番号、特に、好ましくは、56〜80の原子番号を有する少なくとも一つの原子、特に、この原子番号を有する金属を含む。使用される燐光発光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金または銅を含む化合物である。
【0109】
上記のエミッターの例は、出願WO 2000/70655、WO 2001/41512、WO 2002/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 2005/033244、WO 2005/019373、US2005/0258742、WO 2009/146770、WO 2010/015307、WO 2010/031485、WO 2010/054731、WO 2010/054728、WO 2010/086089、WO 2010/099852 WO 2010/102709、WO 2011/157339もしくはWO 2012/007086により明らかにされている。一般的には、燐光発光OLEDのために先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光発光錯体が適切であり、当業者は進歩性を必要とすることなく、更なる燐光発光錯体を使用することができよう。
【0110】
本出願による素子に使用される三重項エミッターの例は、以下の表に示される。
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【化13-6】
【化13-7】
【化13-8】
【0111】
本発明のさらなる態様では、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、別々の正孔注入層および/または正孔輸送層および/または正孔ブロック層および/または電子輸送層を含まず、換言すれば、たとえば、WO 2005/053501に記載されるとおり、発光層は、正孔注入層もしくはアノードに直接隣接し、および/または発光層は、電子輸送層もしくは電子注入層もしくはカソードに直接隣接する。さらに、たとえば、WO 2009/030981に記載されるとおり、発光層中の金属錯体と同一または類似する金属錯体を、発光層に直接隣接して、正孔輸送もしくは正孔注入材料として使用することも可能である。
【0112】
式(1)の化合物または上記好ましい態様は、正孔輸送層中もしくは励起子ブロック層の両者中で、および発光層中でマトリックスとして使用される。
【0113】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子のさらなる層では、先行技術にしたがって通常使用されるすべての材料を使用することができる。したがって、当業者は、進歩性を要することなく、本発明による式(1)の化合物または上記好ましい態様と組み合わせて、有機エレクトロルミネッセンス素子のために知られたすべての材料を使用することができる。
【0114】
好ましい蛍光エミッター材料は、アリールアミンのクラスから選ばれる。本発明の意味でのアリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む化合物の意味で使用される。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、縮合環構造、特に、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。それらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、一個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、9-位で結合する化合物の意味で使用される。芳香族アントラセンジアミンは、二個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、9.10-位で結合する化合物の意味で使用される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミンおよびクリセンジアミンは、同様に定義され、ここで、ジアリールアミノ基は、好ましくは、ピレンに、1位もしくは1.6-位で結合する。さらに好ましいエミッター材料は、たとえば、WO 06/122630にしたがうインデノフルオレンアミンあるいはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 08/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンアミンあるいはベンゾインデノフルオレンジアミン、および、たとえば、WO 07/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。スチリルアミンのクラスからのエミッター材料の例は、たとえば、WO 06/000388、WO 06/058737、WO 06/000389、WO 07/065549およびWO 07/115610に記載される置換あるいは非置換トリスチルベンアミンである。さらに好ましいのは、WO10/012328に開示された縮合炭化水素である。
【0115】
適切なエミッター材料は、さらに、以下の表に示される構造と、JP 06/001973、WO 04/047499、WO 06/098080、WO 07/065678、US2005/0260442およびWO 04/092111に開示されたこれらの構造の誘導体である。
【化14-1】
【化14-2】
【化14-3】
【化14-4】
【0116】
好ましくは、蛍光ドーパントのための適切なマトリックス材料は、種々の物質のクラスからの材料である。好ましいマトリックス材料は、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461にしたがう2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ- DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 04/081017にしたがう)、正孔伝導化合物(たとえば、WO 04/058911にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 05/084081およびWO 05/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、WO 06/048268にしたがう)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 06/177052にしたがう)またはベンズアントラセン(たとえば、WO 08/1452398にしたがう)のクラスから選択される。適切なマトリックス材料は、さらに、好ましくは、本発明の化合物である。本発明の化合物とは別に、特に、好ましいマトリックス材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体、オリゴアリーレンビニレン、ケトン、ホスフィンオキシドおよびスルホキシドのクラスから選ばれる。非常に、特に、好ましいマトリックス材料は、アントラセン、ベンゾアントラセン、ベンゾフェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体のクラスから選ばれる。本発明の目的のためにオリゴアリーレンは、少なくとも三個のアリールもしくはアリーレン基が互いに結合する化合物の意味で使用されることを意図している。
【0117】
好ましくは、蛍光ドーパントのための適切なマトリックス材料は、たとえば、以下の表に示される材料と、WO 04/018587、WO 08/006449、US5935721、US2005/0181232、JP2000/273056、EP681019、US2004/0247937およびUS2005/0211958に開示されたこれらの材料の誘導体である。
【化15-1】
【化15-2】
【化15-3】
【0118】
本発明の化合物に加えて、本発明の有機エレクトロルミネセンス素子の正孔注入もしくは正孔輸送層中で、または電子輸送層中で使用することができる適切な電荷輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示された化合物または先行技術によりこれらの層に使用される他の材料である
更に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用され、材料は、10−5mbar未満、好ましくは、10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で真空気相堆積されることを特徴とする。しかしながら、初期圧力は、さらにより低くても、たとえば、10−7mbar未満でも可能である。
【0119】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で適用される。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、そのように構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0120】
更に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえば、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)、インクジェット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷もしくはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。たとえば、適切な置換により得られた可溶性の化合物が、この目的のために必要である。これらのプロセスは、これらが一般的に有機溶媒中で非常に良好な溶解性を有することから、本発明の化合物のために、特に、適切でもある。
【0121】
たとえば、一以上の層が溶液から適用され、一以上のさらなる層が気相堆積により適用されるハイブリッドプロセスも可能である。したがって、たとえば、発光層が溶液から適用され、電子輸送層が気相堆積により適用されることができる。
【0122】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られており、本発明の化合物を含む有機エレクトロルミネッセンス素子を、進歩性を要することなく適用することができる。
【0123】
本発明の化合物の液相からの、たとえば、スピンコーティングによるまたは印刷プロセスによる加工は、本発明の化合物の調合物を必要とする。これらの調合物は、たとえば、溶液、分散液もしくはミニエマルジョンであり得る。この目的のためには、二以上の溶媒の混合物を使用することが好ましいかもしれない。適切で、好ましい溶媒は、たとえば、トルエン、アニソール、o-、m-もしくはp-キシレン、メチルベンゾエート、ジメチルアニソール、メシチレン、テトラリン、ベラトール、THF、メチル-THF、THP、クロロベンゼン、ジオキサンまたはこれら溶媒の混合物である。好ましくは、WO 2010/093592に開示された溶媒が、上記の目的に使用される。
【0124】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)の化合物もしくは上記に示される好ましい態様と、少なくとも一つの溶媒、特に、有機溶媒を含む調合物、特に、溶液、分散液もしくはミニエマルジョンに関する。この型の溶液を調製することができる方法は、当業者に知られており、たとえば、WO 2002/072714、WO 2003/019694、WO 2010/093592とそこに引用された文献に記載されている。
【0125】
本発明は、さらに、少なくとも一つの式(1)の化合物もしくは上記に示される好ましい態様と、少なくとも一つのさらなる化合物を含む混合物に関する。さらなる化合物は、本発明の化合物がマトリックス材料として使用されるならば、たとえば、蛍光または燐光ドーパントであり得る。そこで、混合物は、追加的なマトリックス材料としてさらなる材料を追加的に含んでもよい。
【0126】
本発明による化合物と本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を超える以下の驚くべき優位性により特徴付けられる。
【0127】
1.本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子での正孔輸送もしくは正注入層での使用に対して極めて高度に適している。本発明の化合物は、ルミネッセンスを消光しないことから、燐光発光層に直接隣接する層での使用にも、特に、適している。
【0128】
2.本発明による化合物は、蛍光もしくは燐光エミッターのためのマトリックス材料として使用され、非常に高い効率と長い寿命をもたらす。これは、特に、化合物が、さらなるマトリックス材料と燐光エミッターと一緒にマトリックス材料として使用されるときに、あてはまる。
【0129】
3.本発明による化合物は、有機エレクトロルミネッセンス素子に使用され、高い効率と低い使用および駆動電圧での急峻な電流/電圧曲線をもたらす。
【0130】
これらの上記優位性は、その他の電子特性を損なうことはない。
【0131】
本発明は、次の例により詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、進歩性を要することなく、説明に基づいて、開示された範囲全体を実行し、本発明によるさらなる化合物を調製し、それらを電子素子で使用し、本発明によるプロセスを使用することができるだろう。
【0132】

A)合成例
以下の合成は、他に断らない限り、保護ガス雰囲気下で行われる。出発物質は、アルドリッチ(ALDRICH)またはABCRから購入することができる。文献から知られる出発材料の場合の角括弧内の番号は、対応するCAS番号である。
【0133】
例1:臭素化スピロビフルオレン誘導体(出発材料)の合成
1a)1-ブロモスピロ-9,9’-ビフルオレンの合成
【化16】
【0134】
対応するグリニャール試薬を、2.7g(110ミリモル)のヨード活性化した削り屑状マグネシウム及び、25.6g(110ミリモル)の2-ブロモビフェニルと、0.8mlの1,2-ジクロロエタンと、50mlの1,2-ジメトキシエタンと、400mlのTHFと、200mlのトルエンとの混合物から、70℃の油浴を用いた二次加熱により調製する。マグネシウムが完全に反応したとき、混合物を室温まで冷ましておき、500mlのTHF中の25.9g(100ミリモル)の1-ブロモフルオレノン[36804-63-4]の溶液を次いで滴下して、反応混合物を50℃で4時間温め、その後さらに12時間室温で撹拌する。100mlの水を添加し、混合物を簡単に撹拌し、有機相を分離させ、溶媒を真空除去する。残留物を40℃で500mlの氷酢酸中に懸濁させ、0.5mlの濃硫酸を懸濁液に添加し、混合物をその後、100℃でさらに2時間撹拌する。冷却後、沈殿した固体を吸引濾過し、その度毎に、100mlの氷酢酸で1度、100mlのエタノールで3度洗浄し、最後に、ジオキサンから再結晶化させる。収率:26.9g(68ミリモル)、68%;H−NMRによる純度約98%。
【0135】
1b)4-ブロモスピロ-9,9’-ビフルオレンの合成
【化17】
【0136】
THF(1900ml)中の2,2’-ジブロモ‐ビフェニルの溶液(250g、785ミリモル)を−78℃で、アルゴン下で318mLのn-BuLi(ヘキサン中2,5モル濃度、785ミリモル)により処理する。混合物を30分間撹拌する。1000mLのTHF中のフルオレン-9-オン(144g、785ミリモル)の溶液を滴下する。反応を−78℃で30分間進行させ、終夜、室温で撹拌する。反応を水で止め、固体を濾過する。さらに精製せずに、アルコール(299g、92%)と、酢酸(2200mL)と濃HCL(100mL)の混合物を2時間還流させる。冷却後、混合物を濾過し、水で洗浄し、真空で乾燥させる。生成物を白色の固体形状で単離させる(280g、理論値の98%)。
【0137】
さらなる臭素化スピロビフルオレン誘導体の合成を同様に行う。
【化18-1】
【化18-2】
【0138】
例2:4-ビフェニル-2-(9,9’-ジメチルフルオレニル)-1-スピロ-9,9’-ビフルオレニルアミンの合成
1-(1-ビフェン-4-イル)-(9,9’-ジメチルフルオレン-2-イル)アミン-9H-フルオレン-9-オンの合成
【化19】
【0139】
トリ-tert-ブチルホスフィン(トルエン中、4.5mlの1.0モル濃度の溶液、1,9ミリモル)と、酢酸パラジウム(217mg、0.97ミリモル)と、ナトリウムtert-ブトキシド(13.9g、145ミリモル)とを、脱気トルエン(200ml)中で、1-ビフェニル-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(40.0g、111ミリモル)と、1-ブロモ-フルオレン-9-オン(25g、96ミリモル)の溶液に添加し、その混合物を終夜、還流下で加熱する。反応混合物を室温まで冷まし、トルエンで増量し、セライトで濾過する。濾過物を真空で蒸発させ、残留物をトルエン/ヘプタンから結晶化させる。生成物を淡黄色の固体の形状で単離する(43g、理論値の82%)。
【0140】
4-ビフェニル-2-(9,9’-ジメチルフルオレニル)-1-スピロ-9,9’-ビフルオレニルアミンの合成
【化20】
【0141】
THF(90ml)中の2-ブロモ‐ビフェニル溶液(17g、70ミリモル)を−78℃で、アルゴン下で35mLのn-BuLi(ヘキサン中2,1モル濃度、70ミリモル)により処理する。混合物を30分間撹拌する。90mLのTHF中の1-(1-ビフェン-4-イル)-(9,9’-ジメチルフルオレン-2-イル)アミン-9H-フルオレン-9-オン(38g、70ミリモル)の溶液を滴下して添加する。反応を−78℃で30分間進行させ、終夜、室温で撹拌する。反応を水で止め、酢酸エチルで抽出する。溶媒の除去後に中間体アルコールが得られた(31g、64%)。さらに精製せずに、アルコールと、酢酸(700mL)と濃HCL(62mL)の混合物を2時間還流させる。冷却後、混合物を濾過し、水で洗浄する。残留物をトルエンから結晶化させる。粗生成物をソックスレー抽出器(トルエン)で抽出し、真空下でゾーン昇華により精製する。生成物を淡黄色の固形形状で単離させる(13g、理論値の43%、HPLCによる純度>99.99%)。
【0142】
例3a:4-ビフェニル-2-(9,9’-ジメチルフルオレニル)-1-スピロ-9,9’-ビフルオレニルアミンの合成
【化21】
【0143】
トリ-tert-ブチルホスフィン(トルエン中、4.4mlの1.0モル濃度の溶液)と、酢酸パラジウム(248mg、1.1ミリモル)と、ナトリウムtert-ブトキシド(16.0g、166ミリモル)とを、脱気トルエン(500ml)中で、ビフェニル-2-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(40.0g、111ミリモル)と、4-ブロモ-9,9’スピロビフルオレン(56.9g、144ミリモル)の溶液に添加し、その混合物を2時間、還流下で加熱する。反応混合物を室温まで冷まし、トルエンで増量し、セライトで濾過する。濾過物を真空で蒸発させ、残留物を酢酸エチル/ヘプタンから結晶化させる。粗生成物をソックスレー抽出器(トルエン)で抽出し、真空下で2度、ゾーン昇華により精製する(p=3×10−4mバール、T=298℃)。生成物を淡黄色の固形形状で単離させる(20.4g、理論値の27%、HPLCによる純度>99.99%)。
【0144】
以下の化合物が同様にして、得られる。
【化22-1】
【化22-2】
【化22-3】
【化22-4】
【化22-5】
【化22-6】
【化22-7】
【化22-8】
【化22-9】
【化22-10】
【化22-11】
【0145】
例4a):ビフェニル-2-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-(9,9’スピロビフルオレン-4-イル)アミンの合成
【化23】
【0146】
a)ビフェニル-2-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンの合成
1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.5g、2.7ミリモル)、酢酸パラジウム(616mg、2.7ミリモル)と、ナトリウムtert-ブトキシド(22.9g、238ミリモル)とを、脱気トルエン(400ml)中のビフェニル-2-イルアミン(31.0g、183ミリモル)と、2-ブロモ-9,9-ジメチル-9H-フルオレン(50.0g、183ミリモル)の溶液に添加し、その混合物を20時間、還流下で加熱する。反応混合物を室温まで冷まし、トルエンで増量し、セライトで濾過する。濾過物を水で増量し、トルエンで再抽出し、結合した有機相を真空で蒸発乾固させる。残留物をシリカゲルを通して濾過し(ヘプタン/ジクロロメタン)、イソプロパノールから結晶化させる。ビフェニル-2-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンは淡黄色の固形形状で得られる(63.0g、理論値の95%)。
【0147】
b)ビフェニル-2-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-(9,9’-スピロビフルオレン-4-イル)アミンの合成
トリ-tert-ブチルホスフィン(トルエン中、4.4mlの1.0モル濃度の溶液、4.4ミリモル)と、酢酸パラジウム(248mg、1.1ミリモル)と、ナトリウムtert-ブトキシド(16.0g、166ミリモル)とを、脱気トルエン(500ml)中のビフェニル-2-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(40.0g、111ミリモル)と、4-ブロモ-9,9’-スピロビフルオレン(56.9g、144ミリモル)の溶液に添加し、その混合物を2時間、還流下で加熱する。反応混合物を室温まで冷まし、トルエンで増量し、セライトで濾過する。濾過物を真空で蒸発させ、残留物を酢酸エチル/ヘプタンから結晶化させる。粗生成物をソックスレー抽出器(トルエン)で抽出し、真空下で2度、ゾーン昇華により精製する(p=3×10−4mバール、T=298℃)。生成物を淡黄色の固形形状で単離させる(20.4g、理論値の27%、HPLCによる純度>99.99%)。
【0148】
以下の化合物が同様にして、得られる。
【化24-1】
【化24-2】
【0149】
例5a:ビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9,9’-スピロ-ビフルオレン-4-イル)-フェニル]-アミンの合成
ビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル(4,4,5,5テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-フェニル]-アミンの合成
【化25】
【0150】
102g(198ミリモル)のビフェニル-4-イル-(4-ブロモ-フェニル)-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミンと、4,8g(5,9ミリモル)のPd(dppf)Clと、61,6g(238ミリモル)のビス(ピナコラト)ジボロンと、58,3g(594ミリモル)の酢酸カリウムを1300mLの1,4-ジオキサン中で溶解する。反応混合物を還流し、12時間、アルゴン雰囲気下でかき混ぜ、室温に冷却後、その混合物をセライトで濾過する。濾過物を真空で蒸発させ、残留物をヘプタンから結晶化させる。生成物を淡黄色の固形形状で単離させる(87g、理論値の78%)。
【0151】
ビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-[4-(9,9’-スピロ-ビフルオレン-4-イル)-フェニル]-アミンの合成
【化26】
【0152】
28g(49,4ミリモル)のビフェニル-4-イル-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル(4,4,5,5-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-フェニル]-アミンと、20g(49,4ミリモル)の4-ブロムスピロビフルオレンと、1,8g(2,5ミルモル)のPdCl(Cy)と、15g(99ミリモル)のフッ化セシウムを、500mLのトルエン中で溶解する。反応混合物を還流し、12時間、アルゴン雰囲気下でかき混ぜ、室温に冷却後、その混合物をセライトで濾過する。濾過物を真空で蒸発させ、残留物をヘプタンから結晶化させる。粗生成物をソックスレー抽出器(トルエン)で抽出し、真空下で2度、ゾーン昇華により精製する。生成物を淡黄色の固形形状で単離させる(9g、理論値の24%、HPLCによる純度>99.99%)。
【0153】
以下の化合物が同様にして、得られる。
【化27-1】
【化27-2】
【化27-3】
【0154】
例6a:9-スピロ-4-イル3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール
【化28】
【0155】
19.2g(47ミリモル)の4-ブロム-9-スピロビフルオレンと、15g(47ミルモル)の3,6-ジフェニル-9-H-カルバゾールと、29.2gのRbCOとを250mLのp-キシロール中で懸濁させる。懸濁液には0.95g(4,2ミリモル)のPd(OAc)と12.6mlの1モル濃度のトリ-tert-ブチルホスフィンの溶液が加えられる。混合物を還流下で24時間撹拌する。冷却後、有機相を分離させ、150mLの水で3度洗浄し、その後、真空下で濃縮乾固させる。残留物をトルエンで熱抽出し、トルエンから3度再結晶化し、次いで高真空下で昇華させる。収率は19.6g(30.9ミリモル)であり、理論値の66%に対応する。HPLCによる純度は99.9%である。
【0156】
以下の化合物が同様にして、得られる:
【化29】
【0157】
B)素子の例
本発明によるOLEDと先行技術によるOLEDが、WO 2004/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、ここに記載される状況(層の厚さの変化、材料)に適合される。
【0158】
種々のOLEDに対するデータが、以下の例1〜5で示される(表1〜7参照)。
【0159】
使用された基板は、厚さ50nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆されたガラス板である。OLEDは、基本的に、次の層構造を有する:基板/正孔注入層(IL)/正孔輸送層(HTL)/正孔注入層1(IL)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)および最後にカソード。表3による素子構造において、第1の正孔注入層が省略される以外は、同じ構造が使用される。
【0160】
他の例は、表6により示される以下の一般的素子構造で表される:基板/p-ドープ正孔輸送層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/p-ドープ電子ブロック層(HIL2)/電子ブロック層(EBL)/発光層(EML)/電子輸送層(ETL)/電子注入層(EIL)および最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。
【0161】
他の例は、表7により示される以下の一般的素子構造で表される。この構造は、第2のp-ドープ電子ブロック層が省略され、正孔ブロック層(HBL)が発光層と電子輸送層との間にある点で、表6の例とは異なっている。
【0162】
本例で調製される全てのOLEDの正確な構造が、表1,3,6および7に示される。OLED製造のために必要とされる材料は、表5に示される。得られたデータは、テキストおよび/または表2と4の何れかに示される。
【0163】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合でマトリックス材料または材料と前混合される発光ドーパント(エミッター)とから成る。ここで、H1:SEB1(95%:5%)等の表現は、材料H1が95体積%の割合で層中に存在し、SEB1が5体積%の割合で層中に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も、二種の材料の混合物から成ってもよい。
【0164】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流/電圧/輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としての電流効率(cd/Aで測定)、パワー効率(Im/Wで測定)、外部量子効率(EQE、パーセントで測定)ならびに寿命が測定される。エレクトロルミネセンススペクトルは、輝度1000cd/mで測定され、CIE1931xおよびy色座標はそこから計算される。表現EQE@1000cd/mは、駆動輝度1000cd/mでの外部量子効率である。LT80@6000cd/mは、OLEDが、6000cd/mの輝度から初期輝度の80%、すなわち、4800cd/mに低下するまでの寿命である。LT80@60mA/cmは、OLEDが、60mAの一定電流での初期輝度から初期輝度の80%に低下するまでの寿命である。種々のOLEDに対して得られたデータが、テキストおよび/または表2と4の何れかに示される。
【0165】
蛍光もしくは燐光OLEDでの正孔輸送材料としての本発明の化合物の使用
特に、本発明の化合物は、OLEDでのHIL,HTLもしくはEBLとして適している。それらは、単一層としてのならず、HIL,HTL、EBLとして混合成分として、またはEML内で適している。
【0166】
例1
一重項青色素子が、表1と2に示され、三重項緑色素子が、表3と4に示される。
【0167】
参照としてNPBを含む素子(V1、V3)と比べると、本発明の化合物を含む試料は、一重項青色でも三重項緑色素子でも両方で、より高い効率と顕著に改善された寿命の両方を示す。参照材料HTMV1(V2、V4)と比べると、本発明の化合物HTM1は、、顕著に改善された効率と顕著により良好な寿命を有する。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【0168】
表5:使用される材料の構造
【化30-1】
【化30-2】
【化30-3】
【0169】
例2
異なる青色蛍光素子構造(表6)において、技術水準の材料(NPBとHTMV1)を使用する参照素子V5とV6は、本発明の化合物を含む素子E3(8.5%)、E4(8.3%)、E5(7.9%)、E6(7.6%)、E7(7.8%)、E8(8.9%)、E9(8.4%)、E10(8.1%)およびE11(8.2%)と比べて、より低い効率(V5に対して6.2%のEQE@10mA/cmおよび V6に対して5.8%)を有する。
【0170】
参照素子V5とV6は、また、試料E3(305h)、E4(290h)、E5(320h)、E6(390h)、E7(365h)、E8(165h)、E9(280h)、E10(285h)およびE11(340h)と比べて、より低い寿命(V5の120h(LT80@60mA)およびV6の105h)を有する。
【0171】
例3
異なる緑色蛍光素子構造(表6)において、参照素子V7は、本発明の化合物を含む素子E12(20.0%)、E13(19.6%)、E14(18.9%)、E15(19.2%)およびE16(20.2%)と比べて、11.7%のより低い効率(EQE@2mA/cm)を有する。参照素子V6は、また、試料E12(90h)、E13(185h)、E14(105h)、E15(205h)およびE16(185h)と比べて、80hのより短い寿命(LT80@20mA)を有する。
【表6】
【表7】
【0172】
燐光OLEDにおけるマトリックス材料としての本発明の化合物の使用
例4
異なる緑色燐光素子構造(表7)において、本発明の化合物を発光層のマトリックス材料として含まない参照素子V8は、EML中で混合マトリックス成分として使用される本発明の化合物HTM3を含む試料E17(16.1%のEQE@2mA/cm)と比べてより低い効率(14.4%のEQE@2mA/cm)を有する。参照試料V8は、また、330hの試料E17と比べて305hのより短い寿命(LT80@20mA)を有する。
【0173】
例5
異なる緑色燐光素子構造(表7)において、本発明の化合物は、ラクタム化合物H4と組み合わせて、発光層中の混合マトリックス成分として好ましい効果を示す。参照素子V9は、17.6%の効率(EQE@2mA/cm)と255hの寿命を有する。V9と比べた例E18とE19により示されるとおりに、コマトリックス材料として本発明の化合物を発光層に添加することにより、寿命を改善することができる。素子E18は、13.4%の効率と400hの寿命を示し、素子E19は、17.9%の効率と270hの寿命を示し、参照素子V9と比べて、両者改善されている。