(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記マトリックスの固化は、20から300℃の間で加熱することによって、及び/又はUV放射線を発射することによって実施されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
前記バインダーは、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂から選択された少なくとも1つのポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から5の何れか1項に記載の方法。
前記混合物の成形は、1.5から3000MPaの圧力下及び20から300℃の温度での変形によって達成されることを特徴とする、請求項1から6の何れか1項に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
今日、世界的なエネルギー消費の大部分は、冷蔵庫及び空調設備に充てられている(米国の国内電気市場の25%)。磁気冷凍は、ガス圧縮による従来の低温生産技術の代替を目的とする新規技術の1つであるが、それは、それらがCFCs及びHCFCsの何れも使用せず、かつより良いエネルギー収量を有する(30%程度を超える)という利点を有するからである。それは特定のタイプの磁性材料、いわゆる磁気熱量材料を使用して構成されるが、それは、外部磁場の作用にさらされるときに温度の変動を有する。そして、材料が連続的な磁化/消磁サイクルを経るときに、その材料の周りで大振幅の温度差異が得られる。
【0003】
この磁気熱量効果は特に、それらのキュリー温度T
C付近で、強磁性材料に対して観察される。Gdは、室温付近において冷凍用途に使用され得る標準磁気熱量材料(reference magnetocaloric material)であり、5Tの磁場において、その等温磁気エントロピー変動ΔSmは−10J/kg.Kであり、その断熱温度変動ΔT
adは12Kである。磁気熱量効果は特に、強磁性であること及び磁気モーメント密度が高いことにより、レアアース及び/又は遷移金属をベースとする合金において研究されてきた。その中でも、合金La(Fe
1−xSi
x)
13は特に興味深いと判明しているが、それは、それらが高い磁気熱量特性を有し、また、Gdをベースとする合金よりも少ない原料コストを有するからである。さらに、Gdは比較的希少な材料である。
【0004】
合金La(Fe
1−xSi
x)
13は、NaZn
13型の構造を有する。それらのT
Cは、Feを部分的に置換する、それを上昇させるためのCoやそれを低下させるためのMnなどの別の遷移金属を導入することによって調整され得る。これはまた、
−(関連用途に対して好ましくない)磁気熱量特性の低下;及び
−(関連用途に対して好ましい)材料の熱ヒステリシスの減少:
との結果も有する。
【0005】
また、空間群Fm−3cの結晶格子内にH、C、N又はBなどの元素を挿入することによって材料の磁歪特性及びT
Cを調整することも可能である。この挿入は、格子パラメータa及びFe−Fe距離を増加させることによってT
Cを上昇させる効果を有する。磁気熱量特性自体は低下されるが、Feの置換による低下よりは程度が小さい。また、格子パラメータa、故にT
Cを低下させる主にCe及びPrである別のレアアースでLaを置換することによってT
Cを調整することもできるが、それは磁気熱量特性を維持あるいは上昇させる。
【0006】
これらの材料の合成は従来、それらの成分の量論的混合物を融解及び固化させ、続いて第二相を消滅させ目的とするNaZn
13構造を得るための900から1200℃での延長アニーリングステップを行うことで達成されてきた。好ましくは、その方法の生産性のために、過剰なアニーリング持続時間につながり得る相の大幅すぎる分離を避けるための高速固化方法(fast solidification method)が適用されるべきである。
【0007】
この高速固化は、例えば粉末を形成するために次いで粉砕される合金リボンを得るために、冷却された回転表面に液体合金を発射することで達成され得る。特許文献1には例えば、このような方法が記載されている。
【0008】
別の高速固化方法は、ディストリビュータ上に高速度ガスを発射することによって、ディストリビュータに残る液体合金ジェットを噴霧する(atomizing)ことから構成される。10から略100μmの平均直径を有し、材料を製造するための後続ステップに直接使用され得る粉末が、こうして直接得られる。特許文献2にはこのような方法について記述されている。
【0009】
特許文献3には、反応焼結(reactive sintering)によって磁気熱量成分を得るための方法が記載されている。反応焼結は、異なる組成物の粉末の(前駆体と呼ばれる)混合物の成形及び焼結から構成される。その文献にはまた、その前駆体を得るための方法が記載されている。一次前駆体FeLa及びLaYが巨大な状態から調製され、例えばホイール上に金属リボンを鋳造することによって得られ、次いで均一な分布を有する微細粉末を得るために粉砕される。その後、粉砕を促進させ、かつ前駆体における望ましくない元素の量を低減するために、前駆体のうちの1つが水素化されると有益である。好ましくはそのうちの1つが水素化されている前駆体の両粉末は次いで、10ミクロン未満(記載の実施例では2.7ミクロン)の粉末粒径を有する均一な混合物(二次前駆体)を得るために、再度混合及び粉砕される。
【0010】
ガス噴霧により、これらの全ステップを省略し、かつその組成が非常に良好に制御された単一の前駆体粉末を直接得る可能性が提供される。その粉末は、磁気熱量材料を得るために、焼結又は活性化及び/又は水素化され得る。
【0011】
別の特許文献4には、酸化物を粉砕することによって磁気熱量粉末を得るための方法が記載されている。レアアース、Si及びFe酸化物の粉末が還元剤及び解離促進剤と混合され、還元及び原子拡散を保証するためにかなり長時間にわたって1000から1250℃の間の不活性雰囲気下で加熱される。粉末は次いで冷却され、100から500℃の間の水素下で処理される。最終的に、粉末の還元剤と解離促進剤とを分離するために水中に浸される。この方法は明らかに、噴霧及びそれに続くアニーリングよりも適用しにくく、また、同様の量の粉末を得ることができない。
【0012】
しかしながら、既知の方法の主な欠点は、それを磁気熱量素子の形態にするために粉末の焼結を作り出す必要があることである。その材料は故に酸化のリスクに曝され、複雑形状の素子を容易に作ることはできず、また、焼結温度は粉末に前もって挿入された元素(H又はN)の抜去を引き起こし得る。
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、競争力のあるコストでかつ工業的に適用可能な方法で、−30から+50℃の間に位置するTc範囲及び高い磁気熱量特性を有する高い性能、並びに低い熱ヒステリシスを伴う、NaZn
13型構造を有し、容易に成形され得かつこの成形の間に焼結を実施する必要のない磁気熱量材料を提供する、複合磁気熱量材料の製造方法を提供することである。
【0015】
この目的のために、本発明の対象は、磁気熱量素子の製造方法であって、それは以下のステップを含むことを特徴とする:
−磁気熱量合金の少なくとも1つの粉末が、組成:
La
1−x(Ce,Pr)
x((Fe
1−z−vMn
zCo
v)
1−ySi
y)
wX
n
(ここで、
−XはH、C、N及びBから選択された1つ又は幾つかの元素であり;
−x=0〜0.5、好ましくは0.25〜0.5;
−y=0.05〜0.2;
−z=0〜0.15;
−v=0〜0.15;
−w=12〜1;
−n=0〜3.5、好ましくは1〜3.5;である)
で調製され、
その残りは合成(elaboration)から生じる、最大4重量%、好ましくは最大2重量%の含量の、La、Ce及びPr以外のレアアースの不純物と、最大2重量%の含量の他の不純物と、であり、その粉末自体の調製は以下のステップを含む:
−液体合金がるつぼで合成される;
−前記液体合金は、不活性ガスを用いた前記液体合金のジェットの噴霧により、10から100μmの間に含まれる平均直径を有する実質的に球形の粒子の粉末として固化される;
−場合によっては、前記粉末は、その粉末に吸収された化合物を除去するために、非酸化性の雰囲気下で少なくとも1分間、100から500℃の間に含まれる温度で加熱処理される;
−前記粉末は、不活性若しくは還元雰囲気下又は真空内で900から1200℃、好ましくは1000から1200℃の温度まで加熱することによって、少なくとも70重量%のNaZn
13型構造相を与えるように、加熱処理される;
−場合によっては、nにその確定値を与えるために、水素化及び/又は窒化及び/又は炭化(carbidation)及び/又は炭窒化(carbonitridation)処理が実施される;
−前記粉末は、40から80体積%の粉末を含む混合物を形成するために、1つ又は幾つかの有機バインダーによって形成されたマトリックス中に分散される;
−前記混合物が成形される;
−場合によっては、マトリックスの固化が実施される。
【0016】
NaZn
13型構造を与える粉末の加熱処理は、1から200℃/分の速度で処理温度までその粉末を加熱するステップを含むことができる。
【0017】
マトリックスの固化は、20から300℃の間で加熱することによって、及び/又はUV放射線を発射することによって実施されることができる。
【0018】
成形前に、粉末及びバインダーによって形成された混合物は、粉砕又は顆粒に変形されることができる。
【0019】
キュリー温度が最大で80℃異なる少なくとも2つの異なる粉末とマトリックスとを混合することができる。
【0020】
バインダーは、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂から選択された少なくとも1つのポリマーを含むことができる。
【0021】
混合物の成形は、例えば1.5から3000MPaの圧力下及び20から300℃の温度での変形によって達成されることができる。
【0022】
混合物の成形は、モールド内での圧縮によって達成されることができる。
【0023】
混合物の成形は、モールド内への射出によって達成されることができる。
【0024】
混合物の成形は、押出によって達成されることができる。
【0025】
本発明の対象はまた、上記の方法に従って得られることを特徴とする磁気熱量素子である。
【0026】
その厚さは、少なくとも局所的に0.2から2mmの間に含まれる。
【0027】
上記で理解されるように、本発明は、厳密に言えばその材料の製造方法及びその組成物に関連する幾つかの特徴のつながりに基づく。
【0028】
まず、磁気熱量材料が得られ得る粉末を製造するために専ら選択されるのは、ガス噴霧による高速固化である。
【0029】
この粉末はそして、最適な比率、つまり少なくとも70重量%のNaZn
13型の磁気熱量相を形成するために、不活性雰囲気下、900から1200℃、好ましくは1000℃から1200℃の間でのアニーリングを経る。NaZn
13型相内に元素H、N及びCの1つ又は幾つかを挿入することが望まれる場合、水素若しくは窒素を含む雰囲気下又は炭素質雰囲気下において、連続的な加熱処理が実施される。
【0030】
最終的に、磁気熱量材料の成形は例えば、前記金属粉末と前記粉末の粒子に対してバインダーとして作用する有機成分との混合物の、1.5から3000MPaの圧力下及び20から300℃の温度での変形によって生じる。この目的のために、特に加圧モールディング、モールド内への射出、又は押出を使用することができる。機能的に等価である他の成形方法も期待され得る。
【0031】
材料は好ましくは、Laを部分的に置換する比較的多量のCeを融合する。Ceは好ましくは、レアアースの原子百分率の25から50%の間を示す。このように、この目的のために使用され得るLa−Ce混合物は実質的に、レアアースを含む材料(「ミッシュメタル」)を分離した最終生成物であるLa単独よりも安いため、製造コストは低減され得る。磁気熱量特性もまた、Ceの導入によって改善されるが、Tcが低下するという代償があり、それは材料の組成の他の調整によって相殺され得る。
【0032】
Prはまた、通常Ceよりもコストが高いという欠点を有しつつ、同様の比率で、Laの置換物としてCeに加えて又はCeの代わりに使用され得る。
【0033】
LaをCe及びPr以外の他のレアアースで置換することは原理的に可能である。しかしながら、周期表でPrを超えると、ランタノイドは顕著にLaよりも小さい原子半径を有する。このことは、NaZn
13構造においてそれをこれらの原子で置換する可能性を制限し、NaZn
13型の相以外の相の形成をもたらし得る。これが、La、Ce及びPr以外のレアアースの含量が4%、好ましくは2%を超えるべきではない理由である。
【0034】
Tcを上昇させるために、材料は可能な限り広範な水素化を経ることができ、好ましくはTcを室温に向かってシフトさせるために完全水素化を経ることができる。この点において、Hと機能的に等価である他の元素(つまりC、N、B)が、この目的のためにそれに加えられるか、又はそれを置換することができる。
【0035】
Tcはまた、部分的にMn及び/又はCoでFeを置換することによって、相補的に調整される。MnでのFeの置換によりTcは低下し、一方でCoでのFeの置換によりTcは上昇する。
【0036】
低比率のフェライトα−Fe(Si)若しくはFe(Co,Si)、又はFe(Mn,Si)が、その材料を作る活性化粉末において不可避的に存在する。この相の存在はしかしながら、NaZn
13型相の最大比率(少なくとも70重量%)を得るために、可能な限り制限されるべきである。この用途において対象とされる温度で明らかにより大きいTcを有するフェライトαを除けば、磁気熱量特性に有害な影響は何ももたらさない。
【0037】
本発明は、以下の添付図面を参照して以下の説明を読むことで、より良く理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明による材料の製造方法の第1ステップは、本発明による材料の形成を意図した合金の成分を融解することである。その組成に影響を与え得る全ての処理が実施された時点で、本発明による材料は最終的な一般式として、以下を有するべきである:
La
1−x(Ce,Pr)
x((Fe
1−z−vMn
zCo
v)
1−ySi
y)
wX
n
(ここで、
−XはH、C、N及びBから選択された1つ又は幾つかの元素であり;
−x=0〜0.5、好ましくは0.25〜0.5;
−y=0.05〜0.2;
−z=0〜0.15;
−v=0〜0.15;
−w=12〜16;
−n=0〜3.5、好ましくは1〜3.5;である)。
【0040】
レアアースは容易に互いに分離できないという事実を考慮に入れると、La、Ce及びPr以外の他のレアアースも場合によっては不純物として存在し得ることを理解されたい。従って、最終合金においてLa、Ce及びPr以外のレアアースを4重量%まで、さらに2重量%まで許容することができる。
【0041】
他の元素の導入に使用される原材料に通常存在する不純物もまた、最終合金に存在し得る。上記の式で明確に述べられた元素に加えて、最終合金に合計で2重量%に達する(La、Ce及びPr以外のレアアースを除く)不純物が許容される。
【0042】
液体状態である合金の融解及び合成の最終段階において、場合によりnとの関連を除いて、液体金属は既にこの組成を有するべきである。実際に、最終合金においてnがゼロでないとき、BもCも使用されない場合はしかしながら、噴霧の最後においてそれは0に等しいことがある。XがH及び/又はNである場合、これらの元素は理解できるように、本方法の後続段階でガスルートを介して固化合金に添加され、そして一緒に又は別個に使用され得る。NaZn
13型相の形成前、故に噴霧された粉末のアニーリング段階前に、材料内にそれらを挿入することは望ましくない。反対に、XがB(単独で、又はH、N若しくはCの少なくとも1つとともに)である場合、最終生成物内にそれを再度見出すことが意図される場合には、この元素は原材料が融解され次第存在すべきである。Cに関して、場合によりそれは固体形態で溶融材料に添加され得るか、又はガスルートを介して固化合金内に添加され得、これらの方法の両方をともに使用することもできる。従って、最終合金がCを含む必要がある場合、(C及びNをほぼ含まないことができる不純物を有して、)合成の最後でnはそれでもなおゼロであることがある。
【0043】
図1に示すように、融解及び固化プロセスの全てが密閉チャンバ1において実施され、その雰囲気は以下で説明されるように制御され得る。
【0044】
巨大な原材料が、例えば誘導(induction)によって、1400から1800℃、好ましくは1500から1700℃の間に含まれる温度に加熱されたるつぼ2で融解される。最小値である1400℃は、成分の融解が実際に完全であることを保証する可能性を与える。液体金属槽のまわりの雰囲気は、不活性ガス、好ましくはアルゴンによって形成され、圧力は、低減された圧力下で蒸発することができるであろう特にレアアースである元素の脱離を制限するために、少なくとも大気圧に等しく、好ましくはそれより大きい。この元素の蒸発の制限はまた、最大温度が1800℃にされる理由でもある。1500℃未満では、少なくとも比較的高い融点を有する合金に対して、直径が小さいと見られる鋳造ノズルのオリフィスにおける液体金属の凝結をもたらすリスクがある。1700℃を超えると、液体金属とるつぼの耐火物とが反応するリスクが増加するが、それは望ましくない不純物の合金内への導入につながる(例えば合金の磁気熱量性能を低下させるAl、Mgなど)。
【0045】
La、Ce及びPrなどのレアアースは容易に酸化されるとよく知られており、それ故に、可能な限り酸素を含まない雰囲気3において全体的な融解及び固化プロセスを実施することが重要である。
【0046】
その組成及びその温度が調整された時点で、液体金属4がディストリビュータ5に注がれる。このディストリビュータ5はその底部に少なくとも1つのノズル6を備え、その出口オリフィス7は2から10mm程度の直径を有する。ノズル6のオリフィス7から出る液体金属ジェット8は、1つ又は幾つかのノズル9、10を出る不活性ガス(好ましくはアルゴン)の液体金属に対するジェットによって噴霧され、それはその流出前において例えば8から80barの圧力である。典型的に噴霧ガスは、金属の酸化を回避するために、最大0.02重量%の酸素含量を有する。
【0047】
微細液滴11へのジェット8のこの噴霧の目的は、(噴霧による固化方法自体は新規でないために当業者の通常の技能による)それに応じた装置の調整を必要とするが、固化するこれらの液滴から、平衡時の相の分離が最小化される10から100μmの間に含まれる平均直径を有する実質的に球形の粒子を形成することである。より強い分離により、非常に長いアニーリング時間がもたらされ、それは工業的生産の場合には適切でない。
【0048】
より大きな粒径は、素子を使用する間の良好な熱交換に必要とされる、成形された磁気熱量素子の狭い区域を得ることを困難にし得る。より小さな粒径は、ノズル6から出る液体金属ジェット8の流速を、操作的問題(液体金属4の凝結によるオリフィス7の遮断の高いリスク)をもたらし得る過剰に低い値まで低下させることによってのみ得られ得る。
【0049】
固化された粒子は、噴霧タワー12の冷却下部13で収集される。
【0050】
そして、材料の加熱処理及び成形が、噴霧によって固化された粉末から実現される。
【0051】
優先的に、100から500℃の温度で、少なくとも1分間であり数時間にも達し得る時間にわたり、非酸化分雰囲気下にその粉末を維持することで始まる。この特徴のために、処理は真空内又は不活性若しくは還元雰囲気内で実施され得る。この処理の目的は、粉末の組成を変えることなく、特に湿気である粉末に吸収され得る化合物を除去することである。
【0052】
次に、粉末の加熱処理、それに続いて、材料の成形前にそのNaZn
13型構造及び場合によりその確定的組成をその粉末に与え得る任意の水素化又は窒化が行われる。
【0053】
粉末は材料の組成に応じて、不活性若しくは還元雰囲気下又は真空内で、好ましくは1から200℃/分の速度で、1000から1200℃、好ましくは1050から1170℃、最適には1080から1150℃の温度まで加熱される。
【0054】
高速すぎる加熱のリスクは、瞬時ではないNaZn
13相形成の低減をもたらすことのみである。遅すぎる加熱は本方法の生産性を損なう。
【0055】
この温度維持の持続時間は、特に処理される粉末の量及び粒子の配置によって決まる一連の所定の実験によって選択されるものであるが、それは、材料全体が適切に処理されるような持続時間であるべきだからである。これは、24時間あるいはそれ以上まで、質的な欠点なしに続き得る。この加熱処理により、元の粉末と比較してその粉末が明らかに酸化に対してより鈍感になることに留意すべきである。確かに、この処理の間、レアアース全体及び遷移金属の大部分が合金化され、故に酸化に対してより耐性を持つようになる。
【0056】
次に、粉末の水素化が場合により達成される。この目的のために、例えば、水素化雰囲気において0.1から10barの水素分圧で、1から500分間100から500℃で加熱処理を実施することができる。そして部分的に又は完全に水素化された構造NaZn
13が得られる。所定の試験により、特に合金の組成、粉末の粒径、及び処理条件の間の関連性を決定する可能性が与えられるが、それは、材料の化学式においてパラメータnの値で示される所定の水素化度に到達する可能性を与える。
【0057】
水素の代わりに窒素を材料の組成内に導入することが望ましい場合、上記の粉末の加熱処理の後、例えば1から1000分間400から1100℃の温度で、窒素含有雰囲気において0.3から30barの窒素分圧で粉末を維持することによって、窒化が実施され得る。水素化と同様に、所定の試験により、特に合金の組成、粉末の粒径、及び処理条件の間の関連性を決定することができるが、それは、材料の化学式においてパラメータnの値で示される所定の窒化度に到達する可能性を与える。
【0058】
Cの一部又は全部の導入はまた、最終合金のNaZn
13型相内にそれを挿入することを意図する場合、粉末の炭化又は炭窒化のための従来の方法によって、この段階で達成され得る。
【0059】
この段階で元素H、N及びCの幾つかを一緒に又は連続して添加することが望ましい場合、これは故に、当業者の通常の技能内に入る従来技術を用いることで可能となり、また、本発明で使用される粉末の特定事例に対しては所定の試験によって容易に適合できる。
【0060】
粉末の成形がそして、それを冷凍機で使用され得る磁気熱量素子にするために達成される。
【0061】
従って、本発明によると、先に調製された材料が1つ又は幾つかの有機化合物によって形成されたマトリックス中に分散される。この方法は経済的であり、時間的にもエネルギー的にもコストが高い焼結を用いることを回避し、素子に対して良好な化学的及び機械的安定性を保証する。
【0062】
本発明の文脈で使用される「マトリックス」との用語は、使用される磁気熱量粉末及び有機材料の相対比率を予断しないことを理解すべきである。マトリックスは単純に、その粉末が活性成分である素子の凝集性を維持する材料と考えられる。
【0063】
有機マトリックスはさらに、磁気熱量粉末を腐食から保護する。さらに、NaZn
13構造の磁気熱量素子の冷却又は前記素子への磁場の適用の間、それは常磁性状態から強磁性状態に移行するが、それは、温度、粉末の組成、及び適用磁場の強度に応じて略1.35%まで広がり得る体積変化に付随して起こることを思い出すべきである。この膨張は、冷却の間のTc低下につながるが、一方で強磁性状態から常磁性状態への逆の移行の間、このような制約は存在せず、粉末の組成を考慮してTcはその固有値にとどまる。高密度材料において、これは熱ヒステリシス及びクラック形成の増加をもたらすが、それは素子使用サイクルの間の材料の膨張に対向する力によるものである。柔軟な有機マトリックスを使用することによりこれらの応力を吸収し、素子のクラッキングを回避し、さらに磁気熱量性能に対する金属粒子の膨張のプラス効果を維持することができる。
【0064】
マトリックスを形成するために、粉末との混合が意図される1つ又は幾つかの有機バインダーが選択される。これらのバインダーの選択は、以下の特徴に基づく:
−所与の体積を有する素子の磁気熱量特性が、それが含有する磁気熱量粉末のマトリックスに対する体積比率に直接関連することによる、大量の磁気熱量粉末を許容するそれらの能力;
−磁気熱量材料に悪影響を与えない温度で成形されるそれらの能力;
−特にそれらの機械的特性の観点から、上記で説明されてきた粉末の膨張応力を実際に吸収できるように、素子の製造及び使用の間にそれらが曝される温度、素子の環境による化学エッチングに対する良好な耐性、及び磁気熱量粉末との親和性をそれらに与える必要がある、それらの物理的及び化学的特性。
【0065】
このようなバインダーの例として、ポリエチレン、エチレンビニルアセテート、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂から選択されたポリマーに言及され得る。
【0066】
2つ以上のバインダーの混合物が使用され得る。
【0067】
粉末/バインダー混合物における磁気熱量粉末の体積比率は、典型的に40から80%である。下限である40%は、所与の素子体積に対して十分な磁気熱量効果を保証するために望ましい。上限である80%は、素子に粉末を過剰に担持しないように選択されるが、それはマトリックスがこれを確実にサポートしないからである。
【0068】
噴霧された磁気熱量粒子の使用は、例えば固化そして粉砕されたストリップから生じる粒子と比較して有利であると判明した。確かにそれらは、磁気熱量粒子が高担持された混合物においてさえも、圧縮、射出又は押出による成形方法に適合する混合物の粘度を伴って、粉末/バインダー混合物の非常に良好な均一性を有する可能性を与える。これは、噴霧によって得られる粒子が実質的に球形であることによるものであり、それは故に、混合物に対して顕著な密度を提供し、一方で磁気熱量粒子においてその含量を最大にすることができる。また、球形であることにより、先に述べた方法での成形の間の混合物の適切な流れに有利な低い粒子間摩擦プロセスが提供される。最後にこれらの粒子は、バインダーとのそれらの相互作用を再生可能にする良好な表面清浄度を有する。
【0069】
混合物は例えば、0.2から2mmの幅を有するスロットを備えるモールド内、又はそれを通って成形され得、素子の活性部位に対して、こうして局所的に顕著に小さいことがあるこれらの目標とする厚さ、又は後続の成形操作によって低減され得るより大きな厚さを提供する。加圧、射出、又は押出が、20から300℃の間で、1.5MPaから3000MPaの間に含まれる圧力で実施される。加圧された混合物がモールド又は押出ダイから外に出た後、マトリックスが未だ固化されていない場合、使用された有機化合物の性質がマトリックスの確定的特性を得るためにこれを必要とするならば、20から300℃の間の加熱及び/又はUV放射線の発射によるマトリックスの固化が実施される。
【0070】
本発明によると、以下の組成を有する合金粉末を調製することから始まる:
La
1−x(Ce,Pr)
x((Fe
1−z−vMn
zCo
v)
1−ySi
y)
wX
n
(ここで、
−Xは、C、N又はBから選択された1つ又は幾つかの元素であり、最終合金においてXがHによって部分的又は完全に形成される必要がある場合、この元素(同様に、場合によってはC及びNの一部又は全部)はガスルートによって続いて添加され得ると理解される;
−x=0〜0.5(不純物含量でのLa、Ce及びPr以外のレアアースの存在は排除することができず、合金内へのLa、Ce及びPrの導入を許容する原材料は、4重量%まで、さらに2重量%までの他のレアアースを含み得ると理解される);好ましくはx=0.25〜0.5;
−y=0.05〜0.2;
−z=0〜0.15;
−v=0〜0.15;
−w=12〜16;
−n=0〜3.5;である。)
【0071】
この目的のために、優先的な方法によると、La、Ce及び/又はPr(それらが得られる合金中に存在する場合)、Fe、Si、Mn(それが得られる合金中に存在する場合)、Co(それが得られる合金中に存在する場合)、あるいはB及び/又は場合によってはCの全部又は一部を、これらの元素が得られる合金中に存在する必要がある場合に、H若しくはNに加えて又はH若しくはNの代わりに含む、原材料の巨大な一片が、誘導オーブンにおいて融解される。この融解操作の間、元素を強く還元するLa、Ce及びPrの一部が加熱炉の耐火物と反応し得ることを考慮に入れるべきである。従って実行する上では、使用される加熱炉の通常の操作条件を知っている冶金家の経験によって決定され得る予測可能な損失を相殺するために、それらを僅かに超過して導入することが勧められ得る。他の元素が、純粋な形態で、又は合金鉄、くず鉄、若しくはこのような原材料の混合物から添加される。
【0072】
こうして調製された液体合金の高速固化のためのステップが、上記で説明されてきた理由のために、
図1に図式化したような既に詳細に説明した装置において、金属ジェットのガスの噴霧によって実施される。その設計自体はオリジナルではない。実質的に球形である液体金属の液滴がこうして得られ、それは粉末を形成するために素早く固化し、噴霧タワー12の下部13で収集される。
【0073】
図2に示すような粉末Aの二次電子画像で見られる粒子14は、ある程度球形であり、10から100μmの間に含まれる平均直径を有する。
図3は、噴霧後の組成Aの材料の後方散乱電子画像を示し、
図4は、(本発明に準拠しない操作方法によって)インゴットモールドに鋳造された後の画像であり、それぞれ600倍及び500倍に拡大されている。
【0074】
この粉末Aは、説明例において、以下の組成(重量%)を有する:
Fe:76.7%;La:15.8%;Si:4.67%;Co:2.82%;C:0.035%(不純物);N:0.035%(不純物);O:0.005%(不純物)、つまり、全体の原子組成:La(Fe
0.86Co
0.03Si
0.11)
13.8。
【0075】
図3及び4では、固化後の材料が2つの相から構成されることが見られる:
−La豊富の鮮明な相15:主にLa(Fe,Co)Si(部分的にCoで置換された三元で規定された化合物LaFeSi);及び
−暗い相16:Fe(Co,Si)(αフェライト)。
【0076】
噴霧の効果は、分離の限界の観点で明らかである。噴霧後には略5μmの平均寸法を有する相が得られ(
図3)、一方、従来の方法によって得られるインゴットにおいては平均寸法は50から100μmの間で測定される(
図4)。これらの相の両方の界面におけるNaZn
13型相の形成はそして、非常に促進される。
【0077】
この第1の噴霧ステップの後、磁気熱量相を形成するために加熱処理がその粉末に適用される。
【0078】
本発明者らは、例えば1080から1150℃の間で5分から8時間にわたる適切な条件下でその粉末が加熱される場合、関連する両方の相が包晶(peritectic)又は包析(peritectoic)タイプの変形によってNaZn
13型構造を有する相に変形されたことを発見した。通常、粉末を加熱するための温度は、変形が生じ得るように、900から1200℃の間、好ましくは1000から1200℃の間に含まれるべきである。加熱の最適な持続時間は、変形の反応速度を支配する操作条件によって決まる。
【0079】
図5は、噴霧のみされた粉末B(曲線17)、次いで8時間に設定された持続時間にわたって1000℃(曲線18)、1050℃(曲線19)、1120℃(曲線20)、及び1170℃(曲線21)でアニールされた粉末Bで得られたX線回折スペクトルを示す。横軸にはピークが出現する回折角2θが見られ、縦軸には回折ピークの強度が定量的に見られる。
【0080】
この粉末Bの組成は以下の通りである(重量百分率):
Fe:79.1%;La:11.1%;Ce:5.1%;Si:4.4%;C:0.0067%(不純物);N:0.0045%(不純物);O:0.03%(不純物)、つまり全体の原子組成:La
0.69Ce
0.31(Fe
0.9Si
0.1)
13.6。
【0081】
噴霧された粉末は主に、1000℃から1170℃の間のアニーリングの後、NaZn
13型相:La
0.7Ce
0.3(Fe
0.9Si
0.1)
13から構成される。しかしながら、相:(La,Ce)FeSiが1050℃まで存続する(X線ディフラクトグラムで実施されるリートフェルト(Rietveld)タイプの精製(refinement)によると9重量%。その方法は、H.M.Rietveld,J.Appl.Cryst.2(1969),65の文献に記載されており、それにより材料中の様々な相の重量比率を計算することができる。)。この相を可能な限り除去することが非常に重要であるが、それは、材料に導入されるレアアースの合計の比率をこの相が動かし、少量のNaZn
13型相をもたらすからである。
【0082】
実験がまた、以下の各組成(重量百分率)を有する粉末C及びDにおいて実施された: Fe:76.9%;La:15.8%;Si:4.32%;Co:2.74%;C:0.045%(不純物);N:0.043%(不純物);O:0.006%(不純物)、つまり全体の原子組成:La(Fe
0.86Co
0.03Si
0.11)
13.8、及び、Fe:80.8%;La:14.6%;Si:4.39%;Co:0.04%(不純物);C:0.046%(不純物);N:0.064%(不純物);O:0.012%(不純物)、つまり全体の原子組成:La(Fe
0.90Si
0.10)
15.1。
【0083】
図6は、粉末C及びDにおけるNaZn
13型相(粉末Cは曲線22、粉末Dは曲線23)、αフェライト型(粉末Cは曲線24、粉末Dは曲線25)、及びLaFeSi型又はLa(Fe,Co)Si型(粉末Cは曲線26、粉末Dは曲線27)の重量比率対アニーリング温度T
annealの時間依存変化を示す。後者は、1080から1150℃の間のアニーリング温度において最適である。超えると、これらの温度におけるレアアースを含む液体相の発生によりアニーリング効率が低下する。1200℃を超えると、この影響は明らかに、十分有効にアニーリングを行うには大きすぎるため、この状態は回避されるべきである。
【0084】
本発明者らはまた、5分から8時間の間のこれらの粉末のアニーリングの持続時間が、温度上昇速度が速すぎないという条件で、相の重量比率にあまり影響を与えないことを示した。
図7は、1120℃の温度で5分(曲線28)、30分(曲線29)、及び8時間(曲線30)の持続時間にわたってアニールされた、噴霧された粉末Cで得られたX線回折スペクトルを示す。これらのアニーリングは、相:La(Fe,Co)Siを完全に除去し、かつ同様の比率のNaZn
13型相及びフェライトFe(Si)の相(平均で、NaZn
13型相96重量%及びαフェライト4重量%)を得る可能性を与える。
【0085】
最終的に、試験された条件下において、また本発明によって処理された試験粉末に関わらず、少なくとも85重量%のNaZn
13型相を含む粉末を得ることができる。通常、本発明の範囲内において、少なくとも70%のNaZn
13型構造が合金内で得られるべきであると考えられる。
【0086】
先に記載したような最適なアニーリング条件は、8から10kgの粉末バッチで作動する工業的オーブンにおいて有効であり、主な基準として、形成されたNaZn
13型相の比率並びにアニールされた粉末の均一性を有した。
【0087】
ホイールクエンチング(wheel quenching)などの他の高速固化方法により、NaZn
13型相を形成するためのアニーリングの持続時間を非常に低下することができる。しかしながら、成形前に多様な形状を有するブロックを得ることができるように、金属ストリップを粉砕するステップを加える必要がある。さらに、粉砕された金属ストリップから生じるフレーク形状の粒子は、成形方法の選択を非常に減少させる。従って、これらの方法は本発明に含まれない。
【0088】
粉末の酸化を回避するために、不活性ガス走査により加熱処理が実施されるべきであり、それはまた、粒子表面に吸収されかつ高温で滞在的に形成された望ましくない化合物を排出するという利点を有する。好ましくは、不活性ガス下又は真空中での100から500℃における湿気を脱着するステップが、先に記載したような変形のための加熱処理の前に実施される。
【0089】
La(Fe
1−xSi
x)
13型の材料は、良好な磁気熱量特性を有するが、それらは制限された最大キュリー温度を有し、それはまた、明らかに目的とする温度範囲(−30℃から+50℃)の最小限度未満である。例えば、式:La(Fe
0.9Si
0.1)
13のNaZn
13型相を含む、1120℃でアニールされた粉末Dは、1Tの磁場において、−73℃のTc及び9.3J/kg.Kの磁気エントロピー変動−ΔSmを有する。一定の(Fe+Mn+Co+Si)/(La+Ce+Pr)、Si/(Fe+Mn+Co+Si)、Mn/(Fe+Mn+Co+Si)、及び/又はCo/(Fe+Mn+Co+Si)比率における、材料の磁気熱量特性の改善を目的としたLaの置換物としてのCe及び/又はPrの導入もまた、それらのTcを低下させる。
【0090】
従って、本発明に記載のTcを上昇させるための手段のうちの1つを適用することが必要である。
【0091】
従って、材料のTcを上昇させるために、NaZn
13型構造におけるFeのCoでの置換、又は原子格子セル内へのH、N、C若しくはBなどの軽量元素の挿入を進めることができる。H、N及びCを挿入するために、通常100から500℃の温度において、純水素、純窒素、又はこれら2つのガスのうちの1つとアルゴンとの混合物の雰囲気で、1分から2時間にわたって0.05から5MPaの圧力下で、第2の加熱処理を実施することができる。
【0092】
カーボンは、少量が融解次第固体ルートを通って、また、第2の加熱処理の間に多量がガスルート通って挿入され得る。
【0093】
図8に見られるように、本発明者らは、NaZn
13型の格子セル内への水素の挿入は強制的に高い水素圧の使用を必要としないが、それが水素の単純フロー下及び適切な温度での加熱とともに大気圧で実施され得ることを示した。(水素の挿入を示す)低角度に向かうシフトは、噴霧され、アニールされ、かつ水素を含まない粉末D(曲線31)、噴霧され、アニールされ、かつ8時間にわたり300℃で大気圧である水素フロー下で水素化された粉末D(曲線32)、噴霧され、アニールされ、かつ1時間にわたり400℃で大気圧である水素フロー下で水素化された粉末D(曲線33)、及び噴霧され、アニールされ、かつ5barを超える水素圧下で水素化された粉末D(温度は不明であるが、おそらく200℃である)(曲線34)の間で同一である。
【0094】
図9は、非水素化状態である噴霧されかつアニールされた粉末D(曲線35及び36)、C(曲線37及び38)、E(重量組成:Fe:69.8%;La:15.4%;Si:4.4%;Co:6.1%(不純物);N:0.0084%(不純物);O:0.043%(不純物)、つまり、全体の原子組成:La(Fe
0.82Co
0.08Si
0.10)
13.5)(曲線39及び40)、及び噴霧され、アニールされ、かつ水素化された粉末D(曲線41及び42)のキュリー温度及び磁気エントロピーの変動に対する、FeをCoで置換する影響を示す。磁気エントロピーは、0から2Tにわたる磁場でのM(H)の測定から1T及び2Tで計算された。観察されたTcの上昇(+17.3℃/Coの重量%)は、|ΔSm|の低下(−1.1J/kg.K/Coの重量%)に付随する。
【0095】
反対に、8時間にわたる300℃でのH
2フロー下における、大気圧での材料の加熱によって生成されるHの挿入は、非常に僅かにのみ磁気熱量特性を低下させ、Tcの非常に高い上昇(H
20.2重量%(全水素化)において、δT
C=+130Kに対してδ|ΔSm|=−3.7J/kg.K)を可能にする。そうすると格子内への水素の挿入の選択は、明らかに幅広い温度範囲にわたって材料のTcを上昇するための好ましい手段のように見える。FeのCoでの置換は場合により、あまり特性を低下させないための、狭い温度範囲にわたってTcを調整する手段であり得る。
【0096】
図10は、噴霧され、アニールされ、かつ最大まで水素化された、粉末B(曲線43、44)、F(重量組成:Fe:78.4%;La:11.6%;Ce:5.2%;Si:4.24%;Mn:0.364%;C:0.0071%(不純物);N:0.0083%(不純物);O:0.018%(不純物)、つまり、全体の原子組成:La
0.69Ce
0.31(Fe
0.899Mn
0.004Si
0.097)
12.9)(曲線45、46)、G(重量組成:Fe:75.6%;La:12.0%;Ce:5.3%;Si:4.48%;Mn:1.69%;C:0.087%(不純物);N:0.0054%(不純物);O:0.037%(不純物)、つまり、全体の原子組成:La
0.7Ce
0.3(Fe
0.877Mn
0.020Si
0.103)
12.4)(曲線47、48)、及びH(重量組成:Fe:74.1%;La:12.1%;Ce:5.3%;Si:5.35%;Mn:2.35%;C:0.09%(不純物);N:0.0035%(不純物);O:0.022%(不純物)、つまり、全体の原子組成:La
0.7Ce
0.3(Fe
0.851Mn
0.027Si
0.122)
12.4)(曲線49、50)のキュリー温度及び磁気エントロピー変動に対する、FeをMnで置換する影響を示す。磁気エントロピーは、0から2Tにわたる磁場でのM(H)の測定から1T及び2Tで計算された。Tcの低下が観察され(−28.8K/Mnの重量%)、それはCoでの上昇よりも速く、また|ΔSm|も大幅に低下する(−7.6J/kg.K/Mnの重量%)。Tcを低下させるためのFeのMnでの置換の使用は、狭い温度範囲にわたる調整としてのみ使用されるべきである。
【0097】
上記の材料は、35kgの金属バッチの噴霧を達成する可能性を与える装置において、実験的条件下(数十グラム)ではなく工業的条件下で合成された、ということに留意することが重要である。
【0098】
La(Fe,Co,Si)
13(又はLa(Fe,Co,Si)
13H
x)及び(La,Ce)(Fe,Mn,Si)
13H
x)材料の両群は、240から320K(−30から50℃)の目的とする温度範囲をカバーする可能性を与える。
図9と
図10との比較はまた、Mn含量とともにそれがより高速に低下するが、目的とする温度範囲において(La,Ce)(Fe,Mn,Si)
13H
max材料の|ΔSm|はLa(Fe,Co,Si)
13材料の|ΔSm|よりも大きいことを示す。材料中のMnに対する一定の許容限度を超えて材料のTcが低下する必要がある場合、材料の部分的な脱水素化ステップで水素含量を低下することができる。
【0099】
図11は、略60℃の温度範囲(0から60℃の間)にわたる、噴霧され、アニールされ、かつ完全に水素化された粉末DのTcの制御された低下を示す。適切な温度(150から250℃の間)におけるArフロー下での処理により、粉末のTcの選択的調整が可能になり、一方で|ΔSm|の低下を制限することが可能になるが、それは、最大水素化前及び後の、噴霧されかつアニールされた粉末Cを示す、
図9の曲線37、38及び41、42間の比較で示される。
図11の曲線に関連する
図12の曲線は、示された条件下で試験された同一の粉末に対して、NaZn
13型相:La(Fe
0.9Si
0.1)
13H
xの格子パラメータの変動を示す。処理後の各粉末は実質的に、NaZn
13型相のパラメータで指標され得る単一相のみを含むが、このことは、150から250℃の間のArフロー下での粉末の部分的な脱水素化が処理された粉末バッチにおいて実質的に均一であることを示す。
【0100】
材料の組成が目的とするTc(|ΔSm|が良好な磁気熱量性能を示す範囲にその組成は位置すると理解される)に応じて調整された時点で、素子の成形が、熱交換器として使用することが意図された部位にそれを一致させるために、少なくとも70重量%のNaZn
13型構造の相を含む加熱処理粉末(いわゆる「活性化粉末」)から達成される。
【0101】
この目的のために、活性化粉末は、マトリックスを形成することが意図され、かつ上記で説明したように材料の40から80体積%に含まれる活性化粉末比率を得るように好ましくは選択された1つ又は幾つかの有機バインダーと混合される。次に、混合物が粉砕又は顆粒化される。混合物の成形が次いで、先に述べた方法のうちの1つによって実施される。
【0102】
モールド内での加圧若しくは射出、又はダイを介した押出によって実施される成形の場合、特にマトリックスの性質に応じて、それは好ましくは20から300℃の間で実施され、そしてモールドから除去した後、例えば20から300℃であるマトリックスの性質に適した温度でのベーキング及び/又はUV照射が続き得る。
【0103】
磁気熱量素子の有効温度の範囲を広げることが望ましい場合、これはそれぞれ異なるTcを有する2つ以上の異なる粉末を混合することによって達成でき、この差異は高いTcと低いTcとの間で80℃まで及ぶことができる。
【0104】
第1の例では、本発明による合金35kgが、大気圧に対して僅かに超過気圧(0.5barまで)でありアルゴンで不活性化された密閉チャンバ1における閉鎖誘導炉2で融解された。目的は、組成:La
0.75Ce
0.25(Fe
0.9Si
0.1)
13の合金を得ることであった。この目的のために、13.6重量%のLa及び4.6%のCe(つまり、合成中の損失を相殺するために、理論的に必要である量よりもLa及びCeは10%多い)、77.5重量%のFe、並びに4.3重量%のSiを含むバッチが使用された。液体金属4が次いで、同様にチャンバ1に含まれるディストリビュータ5内に注がれ、また6mmの直径を有するノズル6のオリフィス7を通ってディストリビュータ5から流れ出た。オリフィスの出口において、液体金属ジェット8はその流出前に、50barの圧力においてノズル9、10から流れ出るアルゴンで噴霧された。合金の磁気熱量粉末は故に、以下の特徴を有して得られた:
−組成(重量%):Fe:78.1%;La:12.2%;Ce:4.6%;Si:4.3%、全体の原子組成はLa
0.73Ce
0.27(Fe
0.9Si
0.1)
12.9である。
−粒子直径D50:75μm。
【0105】
この粉末は次いで、不活性雰囲気下で8時間にわたり1120℃でアニールされた。この処理の最後に、粉末は、略88重量%の磁気熱量相(X線回折測定による)、168KのTc、及び1Tの磁場変動において略18J/kg.Kの|ΔSm|値を有した。この粉末は次いで、1Tの磁場変動における略14.8J/kg.Kの|ΔSm|に対して330K(57℃)のT
Cを得るために、略400℃において水素フロー下で水素化された。それは最終的に、27、18及び15℃に等しいTcを有する幾つかの均一なバッチを形成するために、制御された方法で脱水素化された。最終的に、15℃の粉末が低密度ポリエチレン(LDPE)と混合され、次いで顆粒化された。この方法により得られた顆粒は、最終的に15℃のTc及び略5.3J/kg.Kの|ΔSm|を有する。
【0106】
強固な部位を作るための別の完全な例において、本発明の方法によって噴霧されかつ加熱処理された粉末:(La,Ce)(Fe,Mn,Si)
13H
x(粉末G)が、以下のプロセスによる金属バッチの押出によって成形された。この粉末は、以下の特徴を有した:
−全体の原子組成:La
0.7Ce
0.3(Fe
0.877Mn
0.020Si
0.103)
12.4
−アニーリング及び水素化後の磁気熱量相比率:94重量%
−粒子直径D50:38.4μm
−充填密度:3.65g/cm
3。
【0107】
ゲーリッケタイプのブレードミキサー内に、粉末としてのポリエチレンLDPE及び金属粉末が導入される。選択されるポリエチレンは、以下の特徴を有する:流体指数MFR=22dg/分(190℃/2.16kg)、密度=919kg/m
3。混合は、10分間にわたって25rpmの回転速度で、室温において達成される。混合物の比率は以下の通りである:5kgの全混合重量に対して、ポリエチレン36体積%、金属粉末64体積%。
【0108】
押出ヘッドで160℃まで加熱された、TSAブランドの共回転二軸スクリュー押出機(スクリュー直径20mm、長さ1000mm)において、先に得られた混合物がその中に導入される。スクリューの回転速度は40rpmに設定された。粉末及びポリマーは密接に、共回転スクリューによって与えられる熱及びせん断の結合作用下で混合される。出口では、リングを得るために混合物が円筒形のダイを通って押し出される。この調整により、押出機の出口において材料の4.5kg/hの一定流速が得られる。
【0109】
得られたリングは、2mmのグリッドを備える機械的フライス盤(mechanical milling machine)で粉砕される。それによって得られた顆粒は、標準的な単一スクリュー押出機で変形され得る。
【0110】
第2ステップでは、材料が薄いプレートとして成形される。これを行うために、その出口に成形ダイを備えたグレイナータイプの単一スクリュー押出機(スクリュー直径30mm、長さ762mm)から構成された押出ラインが使用される。ダイと組み合わせて、成形の維持を保証するコンフォーマー(conformer)、次いで冷却のための真空中の浸漬パンが備えられる。最終的に、浸漬パンの出口において乾燥及び維持ツールが使用され、次いでドロワー(drawer)を用いてプロファイルが引かれる。
【0111】
単一スクリュー押出機は以下のパラメータに応じて調整された:押出ヘッドで165℃の温度を有する加熱プロファイル、15rpmに設定された回転速度、及び80℃のコンフォーマー温度。この調整により、4m/分のプロファイルの出力速度が得られた。
【0112】
図13及び14に示される最終的に得られる生成物は、0.6mmの厚さ及び大きい長さを有するストリップである。それは、ポリマーマトリックス中に分散された64体積%の磁気熱量粉末から構成される。