(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1500から2500barの圧力でディーゼル燃料配合物の等温圧縮率を増加させる目的のための、ディーゼル燃料配合物における粘度改良添加剤の使用であって、前記粘度改良添加剤が、オレフィンベースのポリマーまたは潤滑油ナフテン系基油であり、該ディーゼル燃料配合物中、0.01〜2%w/wの濃度で使用され、かつ前記配合物の等温圧縮率が一定温度において圧力に伴う密度の変化率である前記使用。
前記オレフィンベースのポリマーが、ポリイソブチレン(PIB)、ポリアルファオレフィン(PAO)、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレンベースのポリマー、およびそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、ディーゼル燃料配合物の圧縮率、すなわち圧力増加に伴うその密度の変化率は、添加剤を使用することにより改変できるという認識に基づく。燃料の圧縮率の増加とは、例えば燃料噴射システム内のように次第に高まる圧力に晒されると、燃料の密度はより高い割合で増加することを意味する。これは次いで、どのような噴射圧力が与えられても、燃料の密度はより高くなることを意味する。したがって、ディーゼルエンジンの噴射システム内に見られる高い圧力(典型的には1600から2500bar)において、燃料は、噴射ごとにより多くのエネルギー容量を提供するだろう。これは次いで、エンジンによるパワー送達を増加させ、従ってその性能も高められる可能性がある。
【0007】
驚くべきことに、粘度改良添加剤は、あらゆる所定の温度および圧力においてディーゼル燃料配合物の粘度を増加させることに加えて、その圧縮率も増加させることができることが見出された。さらにこの作用は、現代のディーゼルエンジンで典型的に使用される高い圧力(例えば1500を超える、または2000barもの圧力)および高い温度(例えば100℃を超える、しばしば最大250℃もの温度)で特に顕著のようである。
【0008】
したがって、本発明に従って使用するためのディーゼル燃料配合物は、典型的な噴射圧力および温度で、粘度改良添加剤の非存在下の場合よりも高い密度を有すると予想される。それにより、本配合物で稼働するエンジンから送達されたパワーを増加させることができる。それゆえに、本発明によれば、粘度改良添加剤を使用して、配合物の圧縮率を増加させることによりディーゼル燃料配合物で稼働するエンジンのパワー関連性能を改善できる。標準的な測定条件下では(例えば大気圧、15℃または40℃のいずれか)、添加剤はそれほど大幅に配合物の密度を増加させない場合があるが、噴射条件下ではそれよりもかなり大幅に密度を増加させることができる。
【0009】
現代のディーゼルエンジンで使用されるレール圧力はますます増加していることから、本発明は、このようなエンジンにおいて特定の利点を提供するものと予想される。エネルギーおよび出力の増加に伴う圧力増加に応答可能な燃料配合物は、高性能エンジンおよびそれによりパワーが供給される車両で使用するための有望な候補の一つとなり得る。
【0010】
本発明で使用される粘度改良添加剤は、ディーゼル燃料配合物で使用するのに適しており、このような配合物に添加されると、配合物の粘度の増加、特にその動粘度の増加を引き起こすあらゆる成分またはそれらの混合物であってもよい。様々なこのような成分が公知であり市販されている。
【0011】
粘度改良剤は、これまでにディーゼル燃料で使用されてきた。例えばWO−A−2005/054411は、組成物が導入されるディーゼルエンジンの自動車牽引力(VTE)および/または加速性能を改善する目的での、ディーゼル燃料組成物における粘度を増加させる成分の使用を説明している。燃料組成物の粘度を増加させるのに使用される成分としては、特にフィッシャー−トロプシュ誘導ディーゼル成分などの炭化水素のディーゼル燃料成分、および油類が挙げられ、この油類は、鉱油または合成油由来であってもよいし、フィッシャー−トロプシュにより誘導されたものでもよい。US−A−2009/0241882は、燃料組成物が導入されるエンジンの、またはこのようなエンジによってパワーが供給される車両の加速性能を改善する目的での、自動車用ディーゼル燃料組成物における粘度指数(VI)改良添加剤の使用を開示している。
【0012】
しかしながら、このような開示は、特に典型的な燃料噴射圧力における燃料配合物の粘度とその圧縮率との関連を確立することができていないばかりか、その調査さえも行っていない。このような関連の予測は、燃料配合物の比較的複雑な構成と特性のために必ずしも可能であるとは限らない。粘度改良添加剤が高温および高圧においてさえ燃料の圧縮率への作用を有するであろうということを、この初期の研究から予測することは不可能であった。添加剤が加えられた燃料の密度および粘度に対する初期の研究は、標準的な(例えばASTM)試験法の多くと同様に、噴射条件下での燃料の挙動の変化を調査するのではなく主として周囲温度および圧力で測定された燃料特性に焦点を当てている。
【0013】
Maginらは、Energy & Fuels、26巻、2号における「Bulk Modulus of Compressibility of Diesel/Biodiesel/HVO」とうタイトルの論文の1336〜1343頁において、HVO/ディーゼルブレンドに関する体積弾性率のより高い値をもたらす相乗効果を見出しており、それによれば25%のHVO含量で最大値が達成されている。この論文では、この作用の理由は、ディーゼルにHVOを取り入れることによってもたらされる炭化水素構造の多様性が増加するためであり、同様に燃料ブレンドに少量のHVOが利用される場合、分子構造の多様性が減少する結果、体積弾性率が有意に減少すると推測している。
【0014】
本発明によれば、粘度改良添加剤は、オリゴマーまたは高分子成分であってもよく、特に高分子成分であってもよい。このような成分は:
i.オレフィンベースのポリマー;
ii.ナフテン系基油、パラフィン系基油、または合成基油;
iii.ポリメタクリレート;および
iv.それらの混合物
から選択できる。
【0015】
オレフィンベースのポリマーは、わずかな量の添加剤で基油添加剤よりも有用な圧縮率の増加を生じさせ得ることが見出された。
【0016】
したがってタイプ(i)の添加剤が特に好ましい。タイプ(i)の添加剤は、1種またはそれより多くのオレフィンモノマー単位を含むポリマーである。本発明の内容において、用語「ポリマー」は、コポリマーを包含する。タイプ(i)の添加剤は、コポリマー、特にブロックコポリマーであってもよく、これらは、2種またはそれより多くのオレフィン系モノマー単位の混合物を含んでいてもよい。オレフィン系モノマー単位は、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、およびスチレンから選択できる。
【0017】
タイプ(i)の添加剤は、ポリイソブチレン(PIB)、ポリアルファオレフィン(PAO)、エチレン−プロピレンコポリマー(半晶質コポリマーと非晶質コポリマーの両方を包含する)、スチレンベースのポリマー、およびそれらの混合物から選択できる。タイプ(i)の添加剤は、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレンベースのポリマー、およびそれらの混合物から選択できる。
【0018】
好適なエチレン−プロピレンコポリマーは、例えばLZ706X添加剤(例えばルブリゾール(Lubrizol))として入手可能である。好適なPIBは、例えば、インドポール−H(Indopol-H)(例えばイネオス(INEOS))として市販されている。好適なPAOは、例えば、デュラシン(Durasyn)(登録商標)(例えばイネオス)、またはシンフルイド(Synfluid)(登録商標)(例えばシェブロン・フィリップス(Chevron Phillips))として市販されている。
【0019】
一実施態様において、タイプ(i)の添加剤は、スチレンベースのポリマー、すなわち1種またはそれより多くのスチレン系モノマー単位を含むポリマーまたはコポリマーを含む。タイプ(i)の添加剤は、スチレンベースのコポリマー、例えば少なくとも1種のスチレン系モノマーと少なくとも1種のオレフィン系モノマーとのコポリマーを含んでいてもよい。このような好適なポリマーは、例えば、クレイトン(Kraton)(商標)Dまたはクレイトン(Kraton)(商標)G添加剤(例えばクレイトン(Kraton))として、またはSV(商標)添加剤(例えばインフィニューム(Infineum)、マルチソル(Multisol)など)として入手可能である。これらは、これまでにディーゼル燃料配合物中に入れる粘度改良添加剤および粘度指数改良添加剤として使用されてきた:例えばUS−A−2009/0241882を参照されたい。またこれらは、潤滑剤中の添加剤としても使用されてきた(WO−A−2008/024111を参照)。
【0020】
タイプ(i)の添加剤は、特に、スチレン系モノマーとオレフィン系モノマーとのコポリマー(特にスチレンモノマーと、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、および/またはイソプレン(2−メチル−1,3−ブタジエン)モノマーとのコポリマー)、ならびにそれらの混合物から選択できる。タイプ(i)の添加剤は、例えば、ポリスチレン−ポリイソプレンコポリマー、ポリスチレン−ポリブタジエンコポリマー、およびそれらの混合物から選択できる。このようなコポリマーは、例えばSV(商標)150(直鎖ポリスチレン−ポリイソプレンジブロックコポリマー)、またはクレイトン(Kraton)(商標)添加剤(スチレンブタジエン−スチレントリブロックコポリマー、もしくはスチレン−エチレン−ブチレントリ−ブロックコポリマー)のようなブロックコポリマーであってもよい。これらは、テーパー型コポリマー、例えばスチレンブタジエンコポリマーであってもよい。これらは、例えばSV(商標)260およびSV(商標)200(これらは、ポリスチレン−ポリイソプレン星形コポリマーである)のような星状のコポリマーであってもよい。
【0021】
一実施態様において、添加剤(i)は、ポリスチレン−ポリイソプレンコポリマーおよびそれらの混合物から選択される。一実施態様において、添加剤(i)は、SV(商標)添加剤およびそれらの混合物から選択され、例えばSV(商標)150、SV(商標)200、SV(商標)260、およびそれらの混合物から選択される。一実施態様において、添加剤(i)は、SV(商標)150、SV(商標)260、およびそれらの混合物から選択される。一実施態様において、添加剤(i)は、SV(商標)150を含む。
【0022】
タイプ(ii)の添加剤は、最も好適には潤滑油基油であり、例えばナフテン系原油から誘導されたナフテン系基油である。タイプ(ii)の添加剤は、特に鉱油またはそれらの混合物であってもよく、例えばナフテン系鉱物基油であってもよい。基油またはそれらの成分は、例えばフィッシャー−トロプシュ誘導成分などの合成産物であってもよい。
【0023】
基油(ii)は、例えばグループIII、グループIVまたはグループVの基油であってもよい。一実施態様において、基油(ii)は、API(米国石油協会(American Petroleum Institute))のグループVの基油である。グループVの基油としては、例えばジエステル、ポリオールエステルなどの非PAO合成成分、ならびに例えばアルキル化ナフテンおよびアルキル化ベンゼンなどのアルキル化炭化水素が挙げられる。
【0024】
具体的な実施態様において、基油(ii)は、15℃で、875から885kg/m
3の密度(DIN51 757D;ISO12185)、例えば約880kg/m
3の密度を有していてもよい。基油(ii)は、40℃(VK40)で、7.7から8.2mm
2/秒(DIN51 562、T.1;ISO3104)、例えば約7.9mm
2/秒の動粘度を有していてもよいし;および/または100℃(VK100)で、約2.1mm
2/秒(ISO3104)の動粘度を有していてもよい。基油(ii)は、20℃で0.01kPa未満の蒸気圧;−60℃の流動点(DIN ISO3016);146℃の引火点(ISO2719);および/または約1%w/wの多環式芳香族化合物(PCA)含量(IP346)を有していてもよい。
【0025】
基油、特に鉱物基油は、例えばシェル(Shell)のグループ企業から広く入手可能である。これらは、これまでにレース用ディーゼル燃料の粘度および密度を増加させるのに使用されてきた。
【0026】
一実施態様において、タイプ(ii)の添加剤は、潤滑油基油HNR40Dを含み、これは、シェルのグループ企業より入手可能なナフテン系鉱物基油である。
【0027】
タイプ(iii)の添加剤は、例えばビスコプレックス(Viscoplex)(商標)1−300(例えばエボニック(Evonik))として入手可能であり、これは、流動点降下剤として、さらには潤滑剤中の粘度調整剤として使用される。
【0028】
本発明の実施態様において、粘度改良添加剤は、オレフィンベースのポリマー;基油;およびそれらの混合物から選択される。一実施態様において、粘度改良添加剤は、スチレンベースのポリマー;基油;およびそれらの混合物から選択される。一実施態様において、粘度改良添加剤は、スチレンベースのポリマーまたはそれらの混合物を含む。
【0029】
タイプ(i)〜(iv)の添加剤は、本発明に従って、活性成分(例えばオレフィンベースのポリマー)と好適なキャリアー流体との両方を含有する添加剤組成物の形態で使用できる。キャリアー流体(特にキャリアー溶媒)としては、例えば、鉱油、例えばシェルゾール(Shellsol)(商標)A150(例えばシェル)などの芳香族炭化水素溶媒、通常のディーゼルの沸点範囲内の沸点を有する他の炭化水素および炭化水素混合物、脂肪酸アルキルエステル(特に脂肪酸メチルエステル)、ならびにそれらの混合物などが挙げられる。
【0030】
このような添加剤組成物は、1種またはそれより多くの追加の活性物質を含んでいてもよく、このような追加の活性物質は、例えば、洗浄剤、曇り除去剤(dehazer)、防食添加剤、消泡添加剤、潤滑性改良剤、低温流動性改良剤、セタン価改良剤として活性な物質、およびそれらの混合物から選択され、特に、洗浄剤、曇り除去剤、防食添加剤、消泡添加剤として活性な物質、およびそれらの混合物から選択される。
【0031】
一実施態様において、粘度改良添加剤とは、粘度指数改良添加剤のことであり、すなわちディーゼル燃料配合物に添加されるとその粘度指数VIの増加を引き起こす成分である。燃料配合物のVIとは、温度に伴い配合物の粘度が変化する割合の尺度である。比較的高いVIを有する燃料配合物は、温度上昇がどの程度であれ、比較的低いVIを有する燃料配合物の場合よりも比較的小さい粘度の低下を示すと予想される。
【0032】
粘度指数改良添加剤(またVI改良剤とも称される)は、すでに潤滑剤の配合で知られており、その場合、粘度指数改良添加剤は、より高温で粘度を増加させることによって、望ましい温度範囲にわたりできる限り一定に粘度を維持するのに使用される。粘度指数改良添加剤は、典型的には、凝集体および/またはミセルを形成できる比較的高い分子量の長鎖高分子をベースとする。これらの分子系はより高温で拡張するため、さらにそれらの運動が相互に制限され、その結果、系の粘度が増加する。
【0033】
公知のVI改良剤としては、ポリメタクリレート(PMA)、ポリイソブチレン(PIB)、エチレン−プロピレンコポリマーおよび他のオレフィンコポリマー(OCP)、ならびに例えば上述したものなどのスチレン/オレフィンコポリマーが挙げられる。したがって、粘度改良添加剤(i)および(iii)の多くが、ディーゼル燃料配合物におけるVI改良添加剤としても作用する可能性がある。
【0034】
WO−A−01/48120において、これらのタイプの所定の添加剤は、ディーゼル燃料組成物での使用において高温でのエンジン始動能力を改善する目的で提案されている。しかしながら、WO−A−01/48120は、本発明者らが知る限り、ディーゼル燃料配合物の圧縮率を増加させることにおける使用については提唱していない。
【0035】
本発明によれば、粘度改良添加剤は、ディーゼル燃料配合物中、0.01%w/wまたはそれより高い、または0.05%w/wまたはそれより高い、または0.1%w/wまたはそれより高い(活性物質の)濃度で使用できる。いくつかの場合において、粘度改良添加剤は、0.5または1%w/wまたはそれより高い(活性物質の)濃度で使用できる。粘度改良添加剤は、最大30%w/w、または最大25もしくは20もしくは15%w/w、またはより適切には最大10%w/w、または最大7.5もしくは5もしくは2.5%w/wの(活性物質の)濃度で使用できる。いくつかの場合において、粘度改良添加剤は、最大1または0.5%w/w、例えば0.01から0.5%w/wまたは0.05から0.5%w/wの(活性物質の)濃度で使用できる。
【0036】
第一の具体的な実施態様において、特に粘度改良添加剤がタイプ(i)または(iii)に属するものの場合、より特定にはエチレン−プロピレンコポリマーまたはスチレンベースのポリマー、最も特定にはスチレンベースのポリマーである場合、ディーゼル燃料配合物中のその(活性物質の)濃度は、0.01%w/wもしくはそれより高い濃度、または0.025もしくは0.05%w/wもしくはそれより高い濃度、または0.1%w/wもしくはそれより高い濃度であってもよい。この実施態様において、この添加剤の(活性物質の)濃度は、最大0.5%w/w、または最大0.4もしくは0.3もしくは0.2%w/w、例えば0.01から0.5%w/wもしくは0.04から0.2%w/wまたは0.05から2%w/wであってもよい。好ましい実施態様において、タイプ(i)の添加剤は、ディーゼル燃料配合物中で、0.01から2%w/wの範囲の濃度、より好ましくは0.01から1%w/wの範囲の濃度、特に0.01から0.5%w/wの範囲の濃度、例えば0.01から0.2%w/wの範囲の濃度、または0.04から0.2%w/wの範囲の濃度で使用される。
【0037】
このような粘度改良添加剤を燃料添加剤で典型的に用いられるような低い濃度で提供することにより圧縮率を増加させることができるということは、有意な利点である。これは、例えば、燃料の製造および処理過程に与える本発明の作用を最小化するために好ましい。
【0038】
第二の具体的な実施態様において、特に粘度改良添加剤がタイプ(ii)に属するものの場合、ディーゼル燃料配合物中のその濃度は、1%w/wもしくはそれより高い濃度、または2%w/wもしくはそれより高い濃度であってもよく、またはいくつかの場合において、5もしくは10%w/wもしくはそれより高い濃度であってもよい。この実施態様において、添加剤の濃度は、最大30%w/w、または最大25もしくは20もしくは15%w/w、好適には最大10%w/wもしくは最大7.5もしくは5%w/w、例えば1から10%w/wもしくは1から5%w/wであってもよい。したがってこのような粘度改良添加剤は、典型的に燃料成分に関連する濃度で燃料配合物中に包含されていてもよい。このようなケースにおいて、添加剤は、全体の配合物の特性にとって有害ではないと予想され、すなわち、全体の配合物が、噴射温度および圧力下でより高い密度および圧縮率を有するとしても、それでもなお例えばEN590またはASTM D975などの関連する適用可能な標準規格に適合すると予想される。
【0039】
本発明に従って使用されるディーゼル燃料配合物(すなわち、本発明に従って粘度改良添加剤が使用されている、または使用されたことがあるディーゼル燃料配合物)は、粘度改良添加剤に加えて、1種またはそれより多くのディーゼル燃料成分および/または添加剤を含んでいてもよく、このような成分および/または添加剤は例えば当業界公知のものでもよい。このようなディーゼル燃料配合物は、例えば、ディーゼル用ベース燃料またはそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0040】
ディーゼル用ベース燃料は、ディーゼル燃料配合物中での使用、すなわち圧縮点火(ディーゼル)エンジン内での燃焼に好適な、および/またはそれらに適したあらゆる燃料成分、またはそれらの混合物であってもよい。ディーゼル用ベース燃料は、典型的には液状の炭化水素中間留分燃料であり、より典型的にはガス油であると予想される。ディーゼル用ベース燃料は、石油由来であってもよい。ディーゼル用ベース燃料は、ケロシン燃料成分であってもよいし、またはケロシン燃料成分を含有していてもよい。あるいはディーゼル用ベース燃料は、合成であってもよく:例えばフィッシャー−トロプシュ濃縮産物であってもよい。ディーゼル用ベース燃料は、例えば植物バイオマスなどの生物学的な源から直接的または間接的に誘導されてもよい。ディーゼル用ベース燃料は、例えば、脂肪酸アルキルエステル、特に脂肪酸メチルエステル(FAME)、例えば菜種メチルエステルまたはパーム油メチルエステルなどの酸素添加物であってもよいし、またはそのような酸素添加物を包含していてもよい。
【0041】
ディーゼルベース燃料は、典型的には、150または180から370℃の範囲で沸騰すると予想される(ASTM D86またはEN ISO3405)。ディーゼルベース燃料は、好適には、40から70、または40から65、または51から65、または70の測定セタン価(ASTM D613)を有すると予想される。ディーゼルベース燃料は、好適には、15℃で、750から900kg/m
3、または800から860kg/m
3、またはより適切には820から845kg/m
3の密度(ASTM D4052またはEN ISO3675)、および/または1.5から6.0mm
2/秒、または2.0から4.5mm
2/秒のVK40(ASTM D445またはEN ISO3104)を有すると予想される。
【0042】
本発明に従って使用される燃料配合物がディーゼルベース燃料を含む場合、配合物中のベース燃料の濃度は、60%v/vもしくはそれより高い濃度、または65もしくは70もしくは75もしくは80もしくは85もしくは90%v/vもしくはそれより高い濃度であってもよく、またはいくつかの場合において、95%v/vもしくはそれより高い濃度であってもよい。その濃度は、最大99.99%v/v、または最大99.95もしくは99.9%v/v、または最大99.8もしくは99.5%v/v、または最大99もしくは98もしくは95%v/vであってもよい。ベース燃料は、燃料配合物の主要部分の1つであってもよく:したがって、粘度改良添加剤、ならびにあらゆる追加の(任意の)燃料成分および添加剤が入れられた後、100%になるまでの残り部分がディーゼルベース燃料であってもよい。
【0043】
本発明に従って使用されるディーゼル燃料配合物は、好適には、例えばEN590(欧州の場合)またはASTM D975(米国の場合)などの適用可能な現行の標準的なディーゼル燃料規格(複数可)に適合すると予想される。一例として、全体的な配合物は、15℃で820から845kg/m
3の密度;360℃またはそれ未満のT95沸点(ASTM D86またはEN ISO3405);40またはそれより大きい測定セタン価、理想的には51またはそれより大きい測定セタン価;2から4.5mm
2/秒のVK40;55℃またはそれより高い引火点(ASTM D93またはEN ISO2719);50mg/kgまたはそれ未満の硫黄含量(ASTM D2622またはEN ISO20846);−10℃未満の曇り点(IP219);および/または11%w/w未満の多環式芳香族炭化水素(PAH)含量(EN12916)を有していてもよい。本配合物は、例えばISO12156に従って高周波数で往復するリグを使用して測定され、460μmまたはそれ未満の「HFRR摩耗痕径(wear scar)」として示された潤滑性を有していてもよい。しかしながら関連する個々の規格値は、国によって、季節によって、および年によって異なる可能性もあり、意図される配合物の使用によって決まる可能性がある。さらに、全体的なブレンドの特性はその個々の成分の特性とはしばしば有意に異なる可能性があるため、本発明に従って使用される配合物は、これらの範囲外の特性を有する個々の燃料成分を含有していてもよい。
【0044】
本発明に従って使用される燃料配合物は、1種またはそれより多くの燃料添加剤または製油添加剤、特に自動車用ディーゼル燃料で使用するのに適した添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤の多くは公知であり市販されている。本配合物は、例えば、洗浄剤、曇り除去剤、防食添加剤、消泡添加剤、例えば硝酸2−エチルヘキシル(2−EHN)などのセタン価改良剤、帯電防止添加剤、潤滑添加剤、導電性添加剤、低温流動性添加剤、およびそれらの組み合わせから選択される1種またはそれより多くの添加剤を含んでいてもよい。本配合物は、洗浄剤、曇り除去剤、防食添加剤、消泡添加剤、およびそれらの混合物から選択される1種またはそれより多くの添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤はそれぞれ、最大300ppmw(重量百万分率)、例えば50から300ppmwの(活性物質の)濃度で包含されていてもよい。
【0045】
本発明に従って使用される燃料配合物は、圧縮点火(ディーゼル)内燃機関で使用するのに好適である、および/または適していると予想される。本燃料配合物は、特に自動車用燃料配合物であってもよい。一実施態様において、本燃料配合物は、高い燃料噴射圧力、例えば約1800barより大きい圧力、または約2000barまたはそれより大きい圧力を使用して稼働するディーゼルエンジンで使用するのに好適であるか、および/またはそのようなディーゼルエンジンでの使用に適している。このようなエンジンは、例えば一般的なレールまたはユニット噴射器タイプのものでもよいし、および/または「ユーロ5(Euro 5)」と称されるタイプのものでもよい。
【0046】
実施態様において、本発明は、少なくとも1,000リットルの添加剤含有ディーゼル燃料配合物、または少なくとも5,000もしくは10,000もしくは20,000もしくは50,000リットルの添加剤含有ディーゼル燃料配合物を製造できる。
【0047】
本発明によれば、ディーゼル燃料配合物の圧縮率を増加させるために、粘度改良添加剤が使用される。粘度改良添加剤は、特に、1000barもしくはそれより大きい圧力、または1500barもしくはそれより大きい圧力、または2000barもしくはそれより大きい圧力、例えば1000から2500bar圧力、または1500から2500bar圧力、または2000から2500barの圧力で配合物の圧縮率を増加させるのに使用できる。粘度改良添加剤は、100℃またはそれより高い温度、または150℃またはそれより高い温度、または100から250℃の温度、または100から200℃の温度、または100から175℃の温度、または100から150℃の温度で配合物の圧縮率を増加させるのに使用できる。一実施態様において、粘度改良添加剤を使用して、2000から2500barの圧力および100から150℃の温度において、特に2000barの圧力および150℃の温度において圧縮率を増加させたディーゼル燃料配合物が生産される。
【0048】
本発明の状況において、「圧縮率」は、好適には等温圧縮率、すなわち一定温度において圧力に伴う密度の変化率である。
【0049】
燃料の等温圧縮率配合物は、例えば以下の実施例で説明されているようなあらゆる好適な方法を使用して評価できる。その逆数は、体積弾性率とも称され、典型的には一定温度における密度の相対的な変化に対する圧力の変化率と定義される。したがって等温圧縮率と体積弾性率は、様々な圧力で燃料配合物の密度を測定し、圧力に伴い密度がどのように変化するかを観察することによって評価できる。その結果は、例えば圧力に対する密度のグラフにプロットしてもよい。密度測定は、一定温度で、例えばディーゼルエンジンの噴射システム中で燃料配合物が典型的に晒されると予想される温度でなされると予想される。特に、密度測定は、40から200℃の範囲、または40から150℃の範囲、または100から150℃の範囲、例えば約150℃の一定温度でなされてもよい。
【0050】
燃料配合物の密度は、例えばASTM D4052または類似の方法などの標準的な試験方法を使用して測定できる。
【0051】
本発明を使用すれば、あらゆる程度の燃料配合物の圧縮率の増加を達成すること、および/または望ましい目標とする圧縮率、例えば適用可能な規制基準によって規定された目標、または使用者(取扱者、管理者(keeper)もしくは販売人を包含する)もしくは考えられる配合物の使用者によって規定された目標を達成することが可能である。圧縮率の増加とは、典型的には、配合物に粘度改良添加剤を添加する前の配合物の圧縮率と比較した場合の増加であると予想される。
【0052】
本発明を使用すれば、特定の温度で、または特定の温度範囲内で望ましい圧縮率の増加を達成できる。本発明を使用すれば、特定の圧力で、または特定の圧力範囲内で望ましい圧縮率の増加を達成できる。
【0053】
また望ましい目標とする特性を「達成すること」は、関連する目標を改善することも包含し、さらに一実施態様では、そのような目標を改善することに関連する。したがって、例えば粘度改良添加剤を使用して、望ましい目標値よりも高い圧縮率を有するディーゼル燃料配合物が生産される可能性がある。
【0054】
ディーゼル燃料配合物の圧縮率の増加は、粘度改良添加剤が本発明で示されるようにして使用できると認識される前、または本発明に係る配合物に粘度改良添加剤を添加する前の類似の状況で使用することが意図された(例えば市販されている)配合物および/または別の類似した燃料配合物の圧縮率と比較した場合の増加であってもよい。したがって、増加は、粘度改良添加剤を含まないディーゼル燃料配合物の圧縮率と比較した増加でもよい。所定の圧力および温度において、圧縮率の増加は、例えば、改善が求められる圧縮率の0.5%またはそれを超える増加、または0.75もしくは1%もしくはそれを超える増加、またはいくつかの場合において2.5もしくは3もしくは4もしくは5%もしくはそれを超える増加であってもよい。所定の圧力および温度において、圧縮率の増加は、例えば、改善が求められる圧縮率の最大20%、または最大15もしくは10%、または最大7.5もしくは5%の増加であってもよい。
【0055】
加えて、またはその代わりに、本発明を使用して、ディーゼル燃料配合物の圧縮率と同等の、またはその圧縮率に関連するあらゆるディーゼル燃料配合物の特性を調節することができ、例えば望ましい特性もしくは挙動の増加、および/または望ましくない特性もしくは挙動の減少を達成できる。特に、圧縮率の増加は、燃料配合物で稼働する燃料消費システム(特にディーゼルエンジン)の性能における改善によって証明が可能である。このような改善は、例えば、定常状態条件下での(すなわち一定のエンジン速度および負荷での)より高いトルクの発生、より短い加速時間、および/またはより高い出力(例えばより高いブレーキ平均有効圧力によって証明される)を含み得る。したがってこのような改善は、燃料消費システムの性能の1種またはそれより多くのパワー関連の性質の改善によって証明できる。本発明によれば、これらの作用のうち1種またはそれより多くを達成する目的で、特に、燃料配合物が使用されている、または使用が意図されているエンジンのパワー関連性能を改善するために、ディーゼル燃料配合物に粘度改良添加剤を使用してもよい。粘度改良添加剤は、本配合物で稼働するエンジンの燃焼室に燃料配合物が噴射されるごとに生成する燃焼エネルギーを増加させるのに使用してもよい。
【0056】
また燃料消費システムのパワー関連性能の改善は、別の理由に起因する、特に燃料消費システムを稼働させる燃料配合物に包含される別の燃料成分または添加剤に起因する加速性能の減少を、少なくともある程度軽減することも包み得る。一例として、燃料配合物は、その全体的な密度を低下させることにより、燃焼で生成する排気レベルを低下させることを意図した1種またはそれより多くの成分を含有していてもよい;密度の低下はエンジンパワーの損失を起こす可能性があるが、この作用は、本発明に係る粘度改良添加剤を使用することにより克服されるかまたは少なくとも軽減される可能性がある。
【0057】
またパワー関連性能の改善は、例えば含酸素成分を含有する燃料(例えばいわゆる「バイオ燃料」)の使用、またはエンジン中で(典型的には燃料噴射器中で)燃焼に関連する堆積物が蓄積されることなどの別の理由で低下した性能の少なくとも部分的な回復も含み得る。
【0058】
本発明の内容において、ディーゼル燃料配合物における粘度改良添加剤の「使用」は、典型的には1種またはそれより多くの他のディーゼル燃料成分、例えばディーゼルベース燃料、さらに場合により1種またはそれより多くの他のディーゼル燃料添加剤とのブレンド(すなわち物理的な混合物)として、配合物に添加剤を取り入れることを意味する。粘度改良添加剤は、エンジンまたはディーゼル燃料配合物で稼働すると予想される他のシステムにディーゼル燃料配合物を導入する前に取り入れられることが好都合であると予想される。その代わりに、またはそれに加えて、粘度改良添加剤の使用は、典型的にはエンジンの燃焼室に、添加剤含有ディーゼル燃料配合物を導入することによって、添加剤含有ディーゼル燃料配合物で燃料消費システム、典型的には内燃機関を稼働させることを含み得る。粘度改良添加剤の使用は、添加剤含有ディーゼル燃料配合物で駆動する車両を燃料消費システムによって稼働させることを含み得る。このようなケースにおいて、燃料消費システムは、好適には圧縮点火(ディーゼル)エンジンである。
【0059】
上記で説明したような粘度改良添加剤の「使用」はまた、配合物の圧縮率を増加させるためにディーゼル燃料配合物で添加剤を使用することに関する説明書と共に添加剤を供給することも包含し得る。添加剤そのものは、燃料添加剤として使用するのに好適な、および/またはそのような使用に適した、および/またはそのような使用が意図された組成物の一部として供給されてもよく、そのようなケースにおいて、粘度改良添加剤は、ディーゼル燃料配合物の圧縮率に対する添加剤の作用を促す目的でこのような組成物に包含される可能性がある。
【0060】
一般的に、燃料配合物中に成分を「添加する」または成分を「取り入れる」と述べらる場合、配合物生産中のあらゆる所で、またはその使用前のあらゆる時に添加すること、または取り入れることを包含するものと解釈できる。したがって、例えば、粘度改良添加剤は、製油所でディーゼルベース燃料に取り入れられてもよく、またはより適切には、粘度改良添加剤は、製油所下流の貯蔵所でディーゼル燃料配合物に添加されてもよい。
【0061】
本発明に従って使用されるディーゼル燃料配合物は、粘度改良添加剤の包含による改善、特に、燃料配合物で稼働するエンジンのより高い圧縮率および/またはパワー関連性能の改善から利益を得ていることを表示して販売することもできる。このような配合物の販売は、(a)関連表示を含む容器に配合物を入れること;(b)表示を含む製品パンフレットと共に配合物を供給すること;(c)配合物を説明する出版物または看板(例えば販売場所における)に表示を提供すること;および(d)例えばラジオ、テレビまたはインターネットで放送されるコマーシャルに表示を提供することから選択される活動を含む場合もある。このような表示において、改善は少なくとも部分的に粘度改良添加剤の存在に起因すると述べられていてもよい。本発明は、その製造中または製造後に配合物の関連特性(特に圧縮率)を評価することを含んでいてもよい。本発明は、例えば配合物における関連改善に添加剤が寄与していることを確認できるように、粘度改良添加剤を取り入れる前と後の両方で関連特性を評価することを含んでいてもよい。
【0062】
同様に、粘度改良添加剤を含有するディーゼル燃料添加剤組成物は、本発明に従って、粘度改良添加剤の包含に起因する改善から利益を得ているという表示を用いて販売してもよく、ここで改善とは、それが使用されるディーゼル燃料配合物の圧縮率を増加させる、および/またはこのようなディーゼル燃料配合物で稼働するエンジンのパワー関連性能を改善する組成物の能力のことである。
【0063】
本明細書に記載された説明および特許請求の範囲全体で、「含む」および「含有する」という用語とその用語の変化形、例えば「含むこと」および「含む」は、「これらに限定されないが〜などが挙げられる」ということを意味し、他の成分、添加剤、構成要素、数値または工程を排除しない。
【0064】
本発明の各形態の好ましい特徴は、他の形態のいずれかに関連して説明されたものと同様であってもよい。本発明の他の特徴は以下の実施例から明らかになると予想される。一般的に言えば、本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲および図面の全てを包含する)で開示されたあらゆる新規の特徴の1つ、またはそれらのあらゆる新規の組み合わせにまで及ぶ。したがって、本発明の特定の形態、実施態様または実施例と共に説明された特徴、数値、特性、化合物、化学成分またはグループは、それにより矛盾が生じない限り、本明細書において説明された他のあらゆる形態、実施態様または実施例にも適用可能であると理解されるものとする。
【0065】
例えば燃料成分濃度についての特性に関して上限と下限が述べられている場合、上限のいずれかと下限のいずれかとの組み合わせによって定義される値の範囲も意味に含まれる。
【0066】
本明細書において、燃料および燃料成分の特性についての言及は、特に他の指定がない限り、周囲条件下で、すなわち大気圧で、16から22もしくは25℃の温度、または18から22もしくは25℃の温度、例えば約20℃の温度で測定された特性について述べているものとする。
【0067】
ここで以下の非限定的な実施例を参照しながら本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0068】
実施例1
本発明に従ってディーゼルベース燃料と4種の粘度改良試験添加剤とをブレンドすることにより、ディーゼル燃料配合物を製造した。添加剤は以下の通りである:
a.SV(商標)150、これは、例えばインフィニューム(Infineum)のポリスチレン−ポリイソプレンブロックコポリマーを含有する燃料添加剤である。
b.SV(商標)200、これは、例えばインフィニュームのポリスチレン−ポリイソプレンスターコポリマーを含有する燃料添加剤である。
c.SV(商標)260、これは、例えばインフィニュームのスチレン−ポリイソプレンスターコポリマーを含有する燃料添加剤である。
d.HNR40D、これは、例えばシェルの潤滑油基油である。
【0069】
ベース燃料は、ディーゼル燃料の欧州規格EN590に適合する硫黄非含有のディーゼル燃料(例えばシェル)とした。このディーゼル燃料は、標準的な製油添加剤と共に7%v/vの菜種メチルエステル(RME)を含有する。このディーゼル燃料は、2.86mm
2/秒のVK40(DIN EN ISO3104)、および40℃で817.28kg/m
3の密度(DIN EN ISO12185)を有していた。
【0070】
HNR40Dは、高度に精製されたAPIグループVの鉱油(例えばシェル)である。HNR40Dは、減圧蒸留および水素化処理を含むプロセスによりナフテン系原油から製造される。HNR40Dは、15℃で880kg/m
3の密度(ISO12185);7.9mm
2/秒のVK40(ISO3104);2.1mm
2/秒のVK100(ISO3104);146℃の引火点(ISO2719);1%w/wの多環式芳香族化合物(PCA)含量(IP346);および0.5未満の色指数(ASTM1500)を有する。
【0071】
SV(商標)150の場合は0.04%w/wおよび0.2%w/wの処理率で;SV(商標)200の場合は0.2%w/wの処理率で;SV(商標)260の場合は0.15%w/wの処理率で、HNR40Dの場合は26%w/wの処理率で、試験添加剤をベース燃料に取り入れた。
【0072】
100℃で、密度センサーを使用して、250bar刻みで0barから2500barまでの一連の圧力で(大気に対して)、得られた配合物の密度と添加剤が加えられていないベース燃料の密度とを測定した。この実験を150℃で繰り返した。
【0073】
以下の表1および2に、100℃および150℃それぞれで得られた測定に関する結果を示す。これらの表に記載された数値は、ベース燃料と燃料配合物の密度(kg/m
3)である。「0」と表示された圧力は雰囲気圧(1bar)に相当する。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
測定された密度を使用して、各圧力および温度におけるベース燃料および試験配合物の等温圧縮率を計算した。温度T(KT)での等温圧縮率は、以下の式:
KT=−1・(∂V)
V0(∂P)
に従って、体積の減少分をそれに伴う圧力変化で割った値と定義され、式中Vは、温度Tおよび圧力Pにおける関連燃料サンプルの体積であり、V0は、温度Tおよび雰囲気圧(1気圧)における同じサンプルの体積である。
【0077】
本発明の目的に関して、等温圧縮率は、以下の式:
【0078】
【数1】
【0079】
に従って定義でき、式中ρは、温度Tおよび圧力Pにおける燃料サンプルの密度である。
【0080】
以下の表3および4に、100℃および150℃それぞれで行われた実験に関する結果を示す。これらの表に記載された数値は、1barあたりのKT値×10
−6である。ここでも「0」と表示された圧力は雰囲気圧(1bar)に相当する。
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
表1および2において、粘度改良添加剤は、特により高い圧力でベース燃料の密度を増加させることが示される。さらに、添加剤が加えられたベース燃料の密度とベース燃料単独の密度との差は、圧力増加に伴い増加しており、これは、関連する添加剤と組み合わされるとベース燃料の圧縮率が増加することを示している。ベース燃料単独の圧縮率と比較した場合のこの圧縮率の増加は、表3および4のデータで明白に示されている。これは両方の測定温度で、特に150℃で明らかであり、すなわち典型的な燃料噴射条件下において本発明が有用である可能性が裏付けられる。
【0084】
圧力に対する密度のグラフに表1の結果をプロットしたところ、特に約1000barを超えるより高い圧力において、添加剤が加えられた燃料配合物の曲線はベース燃料単独の曲線から分岐していることが観察できる。5種の添加剤が加えられた配合物の圧力に伴う密度の変化率(すなわち圧縮率)は、このようなより高い圧力において、添加剤が加えられていないベース燃料よりも有意に大きい。SV(商標)150およびSV(商標)260を用いた場合の圧縮率の増加は、どの所定の圧力においても、SV(商標)200を用いた場合よりも大きい。実際には、SV(商標)150は、0.04%w/wもの低い処理率でさえも作用を有する。曲線の分岐が100℃で観察された分岐よりも顕著な表2の結果にも同様の解釈が適用される。
【0085】
ベース燃料/HNR40Dのブレンドは、ベース燃料単独よりもかなり高い初期密度を有する。その密度は、全ての圧力においてベース燃料の密度よりも大きいままであったが、ここでも圧力増加に伴うその密度の変化率は、100℃と150℃のどちらにおいてもベース燃料単独の変化率よりも高いことが示された。しかしながら、等温圧縮率を改善するための基油HNR40Dの使用は、かなり大量の添加剤(これらの実施例では26%w/w)を必要としたが、それに対してそれぞれのオレフィンベースのポリマー添加剤の場合、それよりも有意に低い量、すなわち0.2%w/wまたはそれ未満で使用しても圧縮率の利点がもたらされた。
【0086】
全体的にみれば、これらの結果から、等温圧縮率と圧力との公知の関係、すなわち圧縮率は圧力増加に伴い減少することが確認された。本発明者らはさらに、少量の好適な粘度改良添加剤が、典型的な燃料噴射圧力の範囲全体でディーゼル燃料配合物の圧縮率を変化させ、結果として噴射条件下でより高い燃料密度が達成される方式に影響を与えることができることも示し、これはこれまで評価されてこなかったことである。
【0087】
したがって、本発明は、多くの場合において比較的少量のディーゼル燃料適合性の添加剤の使用によりディーゼル燃料配合物の圧縮率を増加させる方法を提供できる。圧縮率が増加するということは、エンジンの燃料噴射システム中で晒されるより高い圧力で、燃料配合物がより大きい密度を有すると予想され、したがって定量供給式の噴射システムを介してより大きい燃焼エネルギーを発生させると予想されることを意味する。この方式で、添加剤が加えられた燃料を使用することにより、ディーゼルエンジンのパワー関連性能を改善できる。