(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハウジングと前記タービンのボス部との間に第1シール部が設けられ、前記潤滑油排出通路は、基端部が前記タービン側軸受と前記第1シール部との間の空間部に連通することを特徴とする請求項1に記載の排気タービン過給機。
前記ハウジングと前記タービンの翼部との間に第2シール部が設けられ、前記第1シール部と前記第2シール部との間の空間部にシール空気を供給するシール空気供給通路が設けられることを特徴とする請求項2に記載の排気タービン過給機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タービンとコンプレッサを連結する回転軸は、各軸受によりハウジングに回転自在に支持され、この各軸受に対して外部から潤滑油が供給されている。ところが、ハウジング内のタービン側が負圧になることから、タービン側の軸受に供給された潤滑油がタービン側に漏洩するおそれがある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、潤滑油のタービン側への漏洩を抑制する排気タービン過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の排気タービン過給機は、タービンと、コンプレッサと、前記タービンと前記コンプレッサとを同軸上に連結する回転軸と、前記タービンと前記コンプレッサと前記回転軸を収容するハウジングと、前記回転軸における前記タービン側の端部と前記コンプレッサ側の端部を前記ハウジング内でそれぞれ回転自在に支持するタービン側軸受及びコンプレッサ側軸受と、前記タービン側軸受と前記コンプレッサ側軸受に潤滑油を供給する潤滑油供給通路と、基端部が前記タービン側軸受より前記タービン側の空間部に連通して先端部が前記回転軸を収容する空間部に連通する潤滑油排出通路と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、潤滑油は、潤滑油供給通路を通してタービン側軸受とコンプレッサ側軸受に供給される。タービン側軸受に供給された潤滑油は、タービン側の負圧により吸引されようとする。ところが、タービン側軸受よりタービン側の空間部から回転軸を収容する空間部に連通する潤滑油排出通路が設けられていることから、タービン側軸受に供給された潤滑油は、このタービン側軸受と回転軸との軸受面を潤滑した後、潤滑油排出通路を通して回転軸を収容する空間部側に排出されることとなり、潤滑油のタービン側への漏洩を抑制することができる。
【0010】
本発明の排気タービン過給機では、前記ハウジングと前記タービンのボス部との間に第1シール部が設けられ、前記潤滑油排出通路は、基端部が前記タービン側軸受と前記第1シール部との間の空間部に連通することを特徴としている。
【0011】
従って、ハウジングとタービンのボス部との間に第1シール部が設けられることから、タービン側軸受に供給された潤滑油は、この第1シール部によりタービン側への漏洩を抑制することができる。
【0012】
本発明の排気タービン過給機では、前記ハウジングと前記タービンの翼部との間に第2シール部が設けられ、前記第1シール部と前記第2シール部との間の空間部にシール空気を供給するシール空気供給通路が設けられることを特徴としている。
【0013】
従って、シール空気は、シール空気供給通路を通して第1シール部と第2シール部との間の空間部に供給され、第1シール部を通った一部のシール空気が前記タービン側軸受の空間部に流動することとなり、タービン側軸受に供給された潤滑油は、このシール空気によりタービン側への漏洩を抑制することができる。
【0014】
本発明の排気タービン過給機では、前記ハウジングにおける前記タービン側軸受と前記第1シール部との間の空間部の周囲に潤滑油貯留部が設けられ、前記潤滑油排出通路は、基端部が前記潤滑油貯留部に連通することを特徴としている。
【0015】
従って、タービン側軸受に供給された潤滑油は、この空間部に設けられた潤滑油貯留部に一時的に貯留された後、潤滑油排出通路から回転軸を収容する空間部側に排出されることとなり、潤滑油のタービン側への漏洩を抑制することができる。
【0016】
本発明の排気タービン過給機では、前記潤滑油貯留部は、前記タービン側軸受と前記第1シール部との間の空間部の下方に周方向に沿って凹部形状をなして設けられることを特徴としている。
【0017】
従って、潤滑油貯留部をこの空間部の下方に周方向に沿って凹部形状をなして設けることで、必要最小限の位置に潤滑油貯留部を設けることで、加工コストの増加を抑制することができる。
【0018】
本発明の排気タービン過給機では、前記潤滑油貯留部に対向する前記回転軸に径方向に突出する油切部が設けられることを特徴としている。
【0019】
従って、タービン側軸受に供給された潤滑油は、回転軸の表面を伝って移行するが、回転軸に油切部が設けられることで、回転軸の表面を伝って移行する潤滑油がこの油切部により回転軸から離脱して潤滑油貯留部に落下することとなり、潤滑油のタービン側への漏洩を抑制することができる。
【0020】
本発明の排気タービン過給機では、前記潤滑油貯留部に対向する前記タービンのボス部に軸方向または径方向に突出する油切部が設けられることを特徴としている。
【0021】
従って、タービン側軸受に供給された潤滑油は、回転軸の表面を伝って移行するが、タービンのボス部に油切部が設けられることで、回転軸の表面を伝って移行する潤滑油がこの油切部により回転軸から離脱して潤滑油貯留部に落下することとなり、潤滑油のタービン側への漏洩を抑制することができる。
【0022】
本発明の排気タービン過給機では、前記潤滑油排出通路は、先端部が前記回転軸を収容する空間部の縦壁に開口することを特徴としている。
【0023】
従って、タービン側軸受に供給された潤滑油は、潤滑油排出通路から回転軸を収容する空間部側の縦壁に形成された開口から排出されることとなり、潤滑油を効率良く排出することができる。
【0024】
本発明の排気タービン過給機では、前記ハウジングの下部から排出される潤滑油を前記潤滑油供給通路に供給する潤滑油循環ラインが設けられることを特徴としている。
【0025】
従って、ハウジングに排出された潤滑油は、潤滑油循環ラインにより潤滑油供給通路に戻されることとなり、回転軸を収容する空間部を負圧とすることができ、タービン側軸受に供給された潤滑油を潤滑油排出通路から効率良く排出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の排気タービン過給機によれば、タービン側軸受よりタービン側の空間部から回転軸を収容する空間部に連通する潤滑油排出通路を設けるので、潤滑油のタービン側への漏洩を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る排気タービン過給機の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。
【0029】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の排気タービン過給機を表す概略断面図である。
【0030】
第1実施形態にて、排気タービン過給機は、コンプレッサとタービンが一体に回転するように連結されて構成され、舶用ディーゼル機関から排出された排ガスによりタービンが回転し、タービンの回転が伝達されてコンプレッサが回転し、このコンプレッサが燃焼用気体を圧縮してエンジンに供給するものである。
【0031】
図1に示すように、排気タービン過給機11は、タービン12とコンプレッサ13とが回転軸14により一体に連結され、ハウジング15内に回転自在に収容されている。
【0032】
ハウジング15は、中空形状をなし、タービン12を収容する第1空間部S1と、コンプレッサ13を収容する第2空間部S2と、回転軸14を収容する第3空間部S3とが区画されている。ハウジング15の第3空間部S3は、第1空間部S1と第2空間部S2との間に位置し、回転軸14が配置されている。この回転軸14は、タービン12側の端部がタービン側軸受であるラジアル軸受21により回転自在に支持され、コンプレッサ13側の端部がコンプレッサ側軸受であるラジアル軸受22及びスラスト軸受23により回転自在に支持されている。
【0033】
回転軸14は、軸方向における一端部にタービンディスク24が固定されており、タービンディスク24は、第1空間部S1に収容され、外周部に軸流型をなす複数のタービン翼25が周方向に所定間隔で設けられている。
【0034】
ハウジング15は、タービン翼25に対して排気ガスの入口通路26と排気ガスの出口通路27が設けられている。また、ハウジング15は、入口通路26とタービン翼25との間にタービンノズル28が設けられており、このタービンノズル28により静圧膨張された軸方向の排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、タービン12を駆動回転することができる。
【0035】
回転軸14は、軸方向における他端部に、コンプレッサ羽根車31が固定されており、コンプレッサ羽根車31は、第2空間部S2に収容され、外周部に複数のブレード32が周方向に所定間隔で設けられている。
【0036】
ハウジング15は、コンプレッサ羽根車31に対して空気取込口33と圧縮空気吐出口34が設けられている。また、ハウジング15は、コンプレッサ羽根車31と圧縮空気吐出口34との間にディフューザ35が設けられている。コンプレッサ羽根車31により圧縮された空気は、ディフューザ35を通って排出される。
【0037】
従って、舶用ディーゼル機関からの排気ガスは、排気ガスの入口通路26を通り、タービンノズル28により静圧膨張され、軸方向の排気ガス流が複数のタービン翼25に導かれることで、この複数のタービン翼25が固定されたタービンディスク24を介してタービン12が駆動回転する。そして、複数のタービン翼25を駆動した排気ガスは、出口通路27から外部に排出される。一方、タービン12により回転軸14が回転すると、一体のコンプレッサ羽根車31が回転し、空気取込口33を通って空気が吸入される。この吸入された空気は、コンプレッサ羽根車31で加圧されて圧縮空気となり、この圧縮空気は、ディフューザ35を通り、圧縮空気吐出口34から舶用ディーゼル機関に供給される。
【0038】
また、排気タービン過給機11にて、ハウジング15は、ラジアル軸受21,22とスラスト軸受23に潤滑油を供給する潤滑油供給通路40が設けられている。潤滑油供給通路40は、ハウジング15の上部に径方向に沿う第1供給通路41と、ハウジング15の上部に軸方向に沿う第2供給通路42と、ラジアル軸受21に連通する第3供給通路43と、ラジアル軸受22に連通する第4供給通路44と、スラスト軸受23に連通する第5供給通路45とから構成されている。そして、第1供給通路41は、基端部が潤滑油タンク(図示略)に連結され、先端部が第2供給通路42に連通し、第2供給通路42は、第3供給通路43と第4供給通路44と第5供給通路45の基端部に連通している。
【0039】
ラジアル軸受21,22は、内周面により回転軸14を回転自在に支持しており、外周部に第3供給通路43と第4供給通路44の先端部がそれぞれ連結されている。ラジアル軸受21,22は、第3供給通路43と第4供給通路44から供給された潤滑油を回転軸14の外周面に導く通路21a,22aが形成されている。
【0040】
一方、ハウジング15は、第3空間部S3の下方に潤滑油排出管46の基端部が連結されており、この潤滑油排出管46の先端部はオイルパン(図示略)に連結されている。そして、オイルパンの潤滑油を潤滑油タンクに供給する潤滑油循環ライン47が設けられ、この潤滑油循環ライン47にオイルポンプ48とオイルフィルタ49が設けられている。
【0041】
ハウジング15は、タービン12におけるタービンディスク24のボス部24aとの間に第1シール部としてのラビリンスシール51が設けられている。また、ハウジング15は、タービン12におけるタービンディスク24の翼部24bとの間に第2シール部としてのラビリンスシール52が設けられている。そして、ハウジング15は、ラビリンスシール51とラビリンスシール52との間の第4空間部S4にシール空気を供給するシール空気供給通路53が設けられている。シール空気供給通路53は、シール空気室54と、連通路55とから構成されている。
【0042】
そして、本実施形態では、潤滑油供給通路40の第3供給通路43から通路21aを通してラジアル軸受21と回転軸14との間に供給された潤滑油を回収し、第3空間部S3に排出する潤滑油排出通路60が設けられている。
【0043】
図2は、排気タービン過給機の要部断面図、
図3は、オイルポケットを表す断面図、
図4は、オイルポケットを表す
図3のIV−IV断面図である。
【0044】
排気タービン過給機11にて、
図2から
図4に示すように、潤滑油排出通路60は、ハウジング15における回転軸14の下方に設けられている。潤滑油排出通路60は、ハウジング15の径方向に沿う第1排出通路61と、ハウジング15の軸方向に沿う第2排出通路62とから構成されている。潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部がラジアル軸受21よりタービンディスク24側の第5空間部S5に連通し、先端部が第2排出通路62の基端部に連通し、第2排出通路62の先端部が回転軸14を収容する第3空間部S3に連通している。この第5空間部S5は、ラジアル軸受21とラビリンスシール51とにより区画された空間部であり、リング形状をなしており、潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部がこの閉塞された第5空間部S5に連通し、第2排出通路62の先端部が第3空間部S3における縦壁15aに開口している。
【0045】
また、ハウジング15は、この第5空間部S5の周囲に潤滑油貯留部としてのオイルポケット63が設けられており、潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部がオイルポケット63に連通している。オイルポケット63は、ハウジング15における第5空間部S5の下方に周方向に沿って凹部形状をなして設けられている。即ち、オイルポケット63は、回転軸14におけるタービンディスク24との連結部にある段付部14aに対する径方向の外側に対向して設けられている。オイルポケット63は、回転軸14の中心より下方に設けられ、回転軸14の周方向に沿って一定の深さで形成される溝部63aにより構成される。潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部が溝部63aの底部に開口している。
【0046】
なお、オイルポケット63の形状は、上述したものに限定されるものではない。
図5は、オイルポケットの変形例を表す断面図である。
【0047】
図5に示すように、オイルポケット64は、ハウジング15における第5空間部S5の下方に周方向に沿って凹部形状をなして設けられている。オイルポケット64は、回転軸14の中心より下方に設けられ、回転軸14の周方向に沿って深さが変わるように形成される溝部64aにより構成される。溝部64aは、回転軸14の下方位置で最も深く、回転軸14の側方位置に向けて深さが浅くなるように形成されている。
【0048】
このように構成された排気タービン過給機11では、潤滑油タンクから潤滑油供給通路40に供給された潤滑油は、第1供給通路41及び第2供給通路42を通して第3供給通路43、第4供給通路44、第5供給通路45に供給される。そして、第3供給通路43は、ラジアル軸受21に給油し、第4供給通路44は、ラジアル軸受22に給油し、第5供給通路45は、スラスト軸受23に給油する。
【0049】
一方、シール空気供給通路53に供給されたシール空気は、シール空気室54から連通路55を通してラビリンスシール51とラビリンスシール52との間の第4空間部S4に供給される。すると、この第4空間部S4に供給されたシール空気は、ハウジング15やタービンディスク24などを冷却した後、一部がラビリンスシール52の隙間から出口通路27側に流れ、一部がラビリンスシール51の隙間から第5空間部S5側へ流れる。
【0050】
このとき、ラジアル軸受21に給油された潤滑油は、ラジアル軸受21と回転軸14との支持面を潤滑した後、回転軸14の外周面を第3空間部S3側に移行し、遠心力により離散してハウジング15の下方に落下する。しかし、一部の潤滑油が回転軸14の外周面を第5空間部S5側に移行するおそれがある。一方で、第4空間部S4に供給されたシール空気の一部がラビリンスシール52の隙間から第5空間部S5側へ流れる。すると、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、第4空間部S4からラビリンスシール51の隙間を通って第5空間部S5に流れるシール空気により堰き止められ、オイルポケット63に貯留される。
【0051】
そして、排気タービン過給機11の駆動時は、潤滑油循環ライン47のオイルポンプ48が作動することから、この潤滑油循環ライン47の基端部が連結された第3空間部S3は負圧状態に維持される。そのため、第3空間部S3の負圧が潤滑油排出通路60を通してオイルポケット63に作用する。すると、このオイルポケット63に貯留されている潤滑油が吸引され、この潤滑油がシール空気と共に潤滑油排出通路60を通して第3空間部S3に排出される。その結果、第5空間部S5に侵入した潤滑油は、オイルポケット63から潤滑油排出通路60を通して第3空間部S3に排出され、第4空間部S4側に移行することが抑制される。
【0052】
このように第1実施形態の排気タービン過給機にあっては、タービン12とコンプレッサ13と回転軸14とハウジング15を設けると共に、回転軸14におけるタービン12側の端部とコンプレッサ13側の端部をハウジング15内でそれぞれ回転自在に支持するラジアル軸受21,22と、ラジアル軸受21,22に潤滑油を供給する潤滑油供給通路40と、基端部がラジアル軸受21よりタービン12側の第5空間部S5に連通して先端部が回転軸14を収容する第3空間部S3に連通する潤滑油排出通路60とを設けている。
【0053】
従って、潤滑油は、潤滑油供給通路40を通してラジアル軸受21,22に供給される。ラジアル軸受21に供給された潤滑油は、タービン12側が負圧であることから、このラジアル軸受21と回転軸14との軸受面を潤滑した後、タービン12側に吸引される。ところが、ラジアル軸受21よりタービン12側の第5空間部S5から回転軸14を収容する第3空間部S3に連通する潤滑油排出通路60が設けられていることから、ラジアル軸受21を潤滑した潤滑油は、潤滑油排出通路60を通して第3空間部S3側に排出されることとなり、潤滑油のタービン12側への漏洩を抑制することができる。
【0054】
第1実施形態の排気タービン過給機では、ハウジング15とタービンディスク24のボス部24aとの間にラビリンスシール51を設け、潤滑油排出通路60の基端部をラジアル軸受21とラビリンスシール51との間の第5空間部S5に連通している。ラジアル軸受21に供給された潤滑油は、このラビリンスシール51によりタービン12側への漏洩を抑制することができる。
【0055】
第1実施形態の排気タービン過給機では、ハウジング15とタービンディスク24の外周部(翼部)24bとの間にラビリンスシール52を設け、ラビリンスシール51とラビリンスシール52との間の第4空間部S4にシール空気を供給するシール空気供給通路53を設けている。従って、シール空気は、シール空気供給通路53を通して第4空間部S4に供給され、ラビリンスシール51を通った一部のシール空気が第5空間部S5に流動することとなり、ラジアル軸受21に供給された潤滑油は、このシール空気によりタービン12側への漏洩を抑制することができる。
【0056】
第1実施形態の排気タービン過給機では、ハウジング15におけるラジアル軸受21とラビリンスシール51との間の第5空間部S5の周囲にオイルポケット63を設け、潤滑油排出通路60の基端部をオイルポケット63に連通している。従って、ラジアル軸受21に供給された潤滑油は、この第5空間部S5に設けられたオイルポケット63に一時的に貯留された後、潤滑油排出通路60から第3空間部S3側に排出されることとなり、潤滑油のタービン12側への漏洩を抑制することができる。
【0057】
第1実施形態の排気タービン過給機では、オイルポケット63をラジアル軸受21とラビリンスシール51との間の第5空間部S5の下方に周方向に沿って凹部形状をなして設けている。従って、オイルポケット63をハウジング15における必要最小限の個所に設けることで、加工コストの増加を抑制することができる。
【0058】
第1実施形態の排気タービン過給機では、潤滑油排出通路60の先端部を第3空間部S3の縦壁15aに開口している。従って、ラジアル軸受21に供給された潤滑油は、潤滑油排出通路60から第3空間部S3側の縦壁15aに形成された開口から排出されることとなり、潤滑油を効率良く排出することができる。
【0059】
第1実施形態の排気タービン過給機では、ハウジング15の下部から排出される潤滑油を潤滑油供給通路40に供給する潤滑油循環ライン47を設けている。従って、ハウジング15に排出された潤滑油は、潤滑油循環ライン47により潤滑油供給通路40に戻されることとなり、第3空間部S3を負圧に維持することができ、ラジアル軸受21に供給された潤滑油を潤滑油排出通路60から効率良く排出することができる。
【0060】
[第2実施形態]
図6は、第2実施形態の排気タービン過給機の要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0061】
第2実施形態において、
図6に示すように、ラジアル軸受21(
図1参照)と回転軸14との間に供給された潤滑油を回収して第3空間部S3(
図1参照)に排出する潤滑油排出通路60が設けられている。ハウジング15は、第5空間部S5の周囲に潤滑油貯留部としてのオイルポケット63が設けられており、潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部がオイルポケット63に連通している。オイルポケット63は、回転軸14におけるタービンディスク24の段付部14aに対する径方向の外側に対向して設けられている。
【0062】
そして、回転軸14は、オイルポケット63に対向する外周面に径方向の外方に突出する油切リング(油切部)71が設けられている。この油切リング71は、回転軸14の段付部14aの外周部に円板形状をなして一体に形成されている。即ち、油切リング71は、外径が段付部14aを含めた回転軸14の外径より大きい寸法に設定されている。
【0063】
そのため、潤滑油がラジアル軸受21に供給されると、ラジアル軸受21と回転軸14との支持面を潤滑した後、回転軸14の外周面を第3空間部S3側に移行し、遠心力により離散してハウジング15の下方に落下する。一方、シール空気が第4空間部S4に供給されると、一部がラビリンスシール51の隙間から第5空間部S5側へ流れる。
【0064】
すると、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、第4空間部S4からラビリンスシール51の隙間を通って第5空間部S5に流れるシール空気により堰き止められ、オイルポケット63に貯留される。このとき、回転軸14に油切リング71が設けられていることから、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、この油切リング71の外周部からオイルポケット63に落下しやすくなる。
【0065】
そして、第3空間部S3が負圧状態に維持されていることから、オイルポケット63に貯留されている潤滑油が吸引され、この潤滑油がシール空気と共に潤滑油排出通路60を通して第3空間部S3に排出される。
【0066】
このように第2実施形態の排気タービン過給機にあっては、ハウジング15における第5空間部S5の周囲にオイルポケット63を設け、第3空間部S3に連通する潤滑油排出通路60の基端部をオイルポケット63に連通し、オイルポケット63に対向する回転軸14に径方向に突出する油切リング71を設けている。
【0067】
従って、潤滑油がラジアル軸受21に供給されると、回転軸14との軸受面を潤滑した後、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行するが、回転軸14に油切リング71が設けられることから、回転軸14の表面の潤滑油は、この油切リング71により回転軸14から離脱してオイルポケット63に落下することとなり、この潤滑油を潤滑油排出通路60により第3空間部S3側に適正に排出することができる。
【0068】
[第3実施形態]
図7は、第3実施形態の排気タービン過給機の要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
第3実施形態において、
図7に示すように、ラジアル軸受21(
図1参照)と回転軸14との間に供給された潤滑油を回収して第3空間部S3(
図1参照)に排出する潤滑油排出通路60が設けられている。ハウジング15は、第5空間部S5の周囲に潤滑油貯留部としてのオイルポケット63が設けられており、潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部がオイルポケット63に連通している。オイルポケット63は、回転軸14におけるタービンディスク24の段付部14aに対する径方向の外側に対向して設けられている。
【0070】
そして、タービン12のタービンディスク24は、オイルポケット63に対向するボス部24aの外周面に切欠部72により軸方向に突出する油切突起部73が設けられている。タービンディスク24のボス部24aは、回転軸14の段付部14a側の端面に半円形断面形状をなす切欠部72が周方向に沿って形成されることで、ボス部24aの外周部に軸方向における段付部14a側に突出する油切突起部(油切部)73が周方向に沿って設けられている。即ち、油切突起部73は、外径が段付部14aを含めた回転軸14の外径より大きい寸法に設定されている。
【0071】
そのため、潤滑油がラジアル軸受21に供給されると、ラジアル軸受21と回転軸14との支持面を潤滑した後、回転軸14の外周面を第3空間部S3側に移行し、遠心力により離散してハウジング15の下方に落下する。一方、シール空気が第4空間部S4に供給されると、一部がラビリンスシール51の隙間から第5空間部S5側へ流れる。
【0072】
すると、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、第4空間部S4からラビリンスシール51の隙間を通って第5空間部S5に流れるシール空気により堰き止められ、オイルポケット63に貯留される。このとき、タービンディスク24のボス部24aに油切突起部73が設けられていることから、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、この油切突起部73の外周部からオイルポケット63に落下しやすくなる。
【0073】
そして、第3空間部S3が負圧状態に維持されていることから、オイルポケット63に貯留されている潤滑油が吸引され、この潤滑油がシール空気と共に潤滑油排出通路60を通して第3空間部S3に排出される。
【0074】
このように第3実施形態の排気タービン過給機にあっては、ハウジング15における第5空間部S5の周囲にオイルポケット63を設け、第3空間部S3に連通する潤滑油排出通路60の基端部をオイルポケット63に連通し、オイルポケット63に対向するタービンディスク24のボス部24aに軸方向に突出する油切突起部73を設けている。
【0075】
従って、潤滑油がラジアル軸受21に供給されると、回転軸14との軸受面を潤滑した後、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行するが、タービンディスク24のボス部24aに油切突起部73が設けられることから、回転軸14の表面の潤滑油は、この油切突起部73により回転軸14から離脱してオイルポケット63に落下することとなり、この潤滑油を潤滑油排出通路60により第3空間部S3側に適正に排出することができる。
【0076】
[第4実施形態]
図8は、第4実施形態の排気タービン過給機の要部断面図である。なお、上述した実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0077】
第4実施形態において、
図8に示すように、ラジアル軸受21(
図1参照)と回転軸14との間に供給された潤滑油を回収して第3空間部S3(
図1参照)に排出する潤滑油排出通路60が設けられている。ハウジング15は、第5空間部S5の周囲に潤滑油貯留部としてのオイルポケット63が設けられており、潤滑油排出通路60は、第1排出通路61の基端部がオイルポケット63に連通している。オイルポケット63は、回転軸14におけるタービンディスク24の段付部14aに対する径方向の外側に対向して設けられている。
【0078】
そして、回転軸14とタービン12のタービンディスク24との間に、オイルポケット63に対向して径方向の外方に突出する油切リング(油切部)74が設けられている。この油切リング74は、回転軸14の段付部14aとタービンディスク24のボス部24aとの間で、円板形状をなし、且つ、外周部が先細となるテーパ形状をなしている。即ち、油切リング74は、外径が段付部14aを含めた回転軸14の外径やボス部24aの外径より大きい寸法に設定されている。
【0079】
そのため、潤滑油がラジアル軸受21に供給されると、ラジアル軸受21と回転軸14との支持面を潤滑した後、回転軸14の外周面を第3空間部S3側に移行し、遠心力により離散してハウジング15の下方に落下する。一方、シール空気が第4空間部S4に供給されると、一部がラビリンスシール51の隙間から第5空間部S5側へ流れる。
【0080】
すると、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、第4空間部S4からラビリンスシール51の隙間を通って第5空間部S5に流れるシール空気により堰き止められ、オイルポケット63に貯留される。このとき、回転軸14とタービンディスク24との間に油切リング74が設けられていることから、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行した潤滑油は、この油切リング74の外周部からオイルポケット63に落下しやすくなる。
【0081】
そして、第3空間部S3が負圧状態に維持されていることから、オイルポケット63に貯留されている潤滑油が吸引され、この潤滑油がシール空気と共に潤滑油排出通路60を通して第3空間部S3に排出される。
【0082】
このように第4実施形態の排気タービン過給機にあっては、ハウジング15における第5空間部S5の周囲にオイルポケット63を設け、第3空間部S3に連通する潤滑油排出通路60の基端部をオイルポケット63に連通し、オイルポケット63に対向する回転軸14とタービンディスク24との間に径方向に突出する油切リング74を設けている。
【0083】
従って、潤滑油がラジアル軸受21に供給されると、回転軸14との軸受面を潤滑した後、回転軸14の外周面を伝って第5空間部S5側に移行するが、回転軸14とタービンディスク24との間に油切リング74が設けられることから、回転軸14の表面の潤滑油は、この油切リング74により回転軸14から離脱してオイルポケット63に落下することとなり、この潤滑油を潤滑油排出通路60により第3空間部S3側に適正に排出することができる。
【0084】
なお、この実施形態にて、潤滑油排出通路60を、ハウジング15の径方向に沿う第1排出通路61とハウジング15の軸方向に沿う第2排出通路62とから構成したが、この構成に限定されるものではない。例えば、第2排出通路をハウジング15の軸方向に対して径方向の外側に傾斜したものとしてもよく、潤滑油を自重により効率良く排出することができる。また、潤滑油排出通路自体を傾斜した通路としたり、湾曲した通路などとしたりしてもよい。
【0085】
また、上述した実施形態にて、ハウジング15における第5空間部S5の周囲に潤滑油貯留部としてのオイルポケット63を設けたが、オイルポケット63の形状は各実施形態に限定されるものではない。また、潤滑油貯留部を設けずに、潤滑油排出通路60の基端部を第5空間部S5に直接連通してもよく、この場合、潤滑油排出通路60の内径を第5空間部S5に向けて徐々に拡大することが望ましい。