(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242840
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】乾式分離方法、及び乾式分離装置
(51)【国際特許分類】
B07B 4/08 20060101AFI20171127BHJP
B07B 11/06 20060101ALI20171127BHJP
B07B 11/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B07B4/08 B
B07B11/06
B07B11/00
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-152930(P2015-152930)
(22)【出願日】2015年7月31日
(65)【公開番号】特開2017-29928(P2017-29928A)
(43)【公開日】2017年2月9日
【審査請求日】2016年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】506015834
【氏名又は名称】MM Nagata Coal Tech株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】久保 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】図師 竜也
(72)【発明者】
【氏名】中務 真吾
【審査官】
池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−139005(JP,A)
【文献】
特開2011−056454(JP,A)
【文献】
特開2008−246393(JP,A)
【文献】
特開2013−173145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00−15/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層へ気体を導入し、前記流動層中の分離対象物を分離する乾式分離方法であって、前記流動層を形成する容器本体が円弧上を移動しながら回転し、前記分離対象物を分離することを特徴とする乾式分離方法。
【請求項2】
前記流動層を形成する容器本体は、1個又は複数個からなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記気体の導入を、多孔性材料からなる気体分散板を介して行う請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記多孔性材料が、パンチング板と、天然繊維または化学繊維で織られた布との組み合わせである請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記分離を、前記流動層の下部からの送風により行う請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
通気速度が15.0(cm3/s)/cm2以下の条件下で、送風を行うことを特徴する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記流動層は、粉体を流動化させた固気流動層である請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
分離対象物が、自動車シュレッダーダスト、家電シュレッダーダスト、及びこれら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースである請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
流動層と、分離対象物を投入する分離対象物投入手段と、前記分離対象物が前記流動層によって分離し浮揚した浮揚物を回収する第一の回収手段と、前記分離対象物が流動層によって分離し沈降した沈降物を回収する第二の回収手段と、空気室と、前記流動層を形成する容器本体を円弧上に移動させて、かつ、回転させることが可能な電動機とを備え、前記流動層を形成する容器本体は、円弧上を移動しながら回転することが可能であることを特徴とする乾式分離装置。
【請求項10】
前記流動層を形成する容器本体は、1個又は複数個からなる請求項9記載の装置。
【請求項11】
前記空気室は、1個又は複数個からなる請求項9又は10に記載の装置。
【請求項12】
さらに、送風管を有する請求項9〜11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記電動機によって、前記空気室は、円弧上を移動しながら回転することが可能である請求項9〜12のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
さらに、送風量調整バルブを有する請求項9〜13のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾式分離方法、及び乾式分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の素材から構成される工業製品、鉱物資源、さらには、産業廃棄物等においては、種々の異なる成分を含んでいる。このような成分毎の分離は、鉱物資源の精製、資源のリサイクル等を行う上で必要である。
【0003】
現在までのところ、分離方法としては主として、湿式分離法及び乾式分離法が知られている。
【0004】
例えば、乾式分離法として、流動化媒体となる粉体に気体を吹き込んで流動層を形成し、固気流動層内に石炭粒子を投入して流動層の見かけ密度より小さい密度の石炭粒子を浮揚させ、大きい密度の石炭粒子を沈降させて分離するようにした乾式石炭分離方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−61398
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記乾式分離法は、装置コストが高く、効率も低いなどの問題がある。加えて、湿式分離法においては、廃液処理による環境汚染の問題や、水資源の少ないところでは利用できず、また、廃液処理や分離後の乾燥工程を必要とするなどの問題を抱えている。
【0007】
また、従来においては、回収速度を速めようとすると、流動層が乱れてしまい、分離の回収精度が著しく低下してしまうという問題点を有する。したがって、分離の精度をある程度高めようとする場合、いわゆるバッチ式に頼らざるを得ず、高精度を維持しつつ、連続的な分離対象物の分離は困難であった。
【0008】
そこで、本発明は、連続的に分離対象物を分離することが可能であり、かつ、低コストで、環境に優しい乾式分離方法、及び乾式分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは、流動層での挙動を維持しつつ、連続的に回収できる機構について鋭意検討した結果、本発明の乾式分離方法及び乾式分離装置を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明の乾式分離方法は、流動層へ気体を導入し、
前記流動層中の分離対象物を分離する乾式分離方法であって、
前記流動層を形成する容器本体が
円弧上を移動しながら
回転し、前記分離対象物を分離することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、
前記流動層を形成する容器本体は、1個又は複数個からなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記気体の導入を、多孔性材料からなる気体分散板を介して行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、多孔性材料が、パンチング板と、天然繊維または化学繊維で織られた布との組み合わせであることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記分離を、前記流動層の下部からの送風により行うことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、通気速度が15.0(cm
3/s)/cm
2以下の条件下で、送風を行うことを特徴する。
【0017】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、流動層は、粉体を流動化させた固気流動層であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、分離対象物が、自動車
シュレッダーダスト、家電シュレッダーダスト、及びこれら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースであることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の乾式分離装置は、流動層と、分離対象物を投入する分離対象物投入手段と、前記分離対象物が前記流動層によって分離し浮揚した浮揚物を回収する第一の回収手段と、前記分離対象物が流動層によって分離し沈降した沈降物を回収する第二の回収手段と、空気室と、
前記流動層を形成する容器本体を
円弧上に移動させ
て、かつ、回転させることが可能な電動機とを備え、
前記流動層を形成する容器本体は、円弧上を移動
しながら回転することが可能であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、
前記流動層を形成する容器本体は、1個又は複数個からなることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記空気室は、1個又は複数個からなることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、送風管を有することを特徴とする。
【0023】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記電動機によって、前記空気室は、円弧上を移動可能であることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、送風量調整バルブを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、装置コストが安価で、効率が高く、廃液処理や分離後の乾燥工程が不用であって、環境への影響もほとんどないという有利な効果を奏する。また、本発明によれば、いわゆる乾式分離であるため、水資源の少ないところでも利用することができる。また、本発明によれば、高精度、かつ、連続的に、分離対象物を分離可能であるという有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1(a)は、分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図1(b)は、
図1(a)の装置の断面を示す。
【
図2】分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。回転部を示す。
【
図3】分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。固定部を示す。
【
図4】分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。回転部と固定部を示す。
【
図5】分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。
【
図6】分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。
【
図7】本発明による分離を行った場合の一実施態様における各層の評価を示す。
【
図8】本発明による分離を行った場合の一実施態様における各層の評価を示す。
【
図9】本発明による分離を行った場合の一実施態様における各層の評価を示す。
【
図10】本発明による分離を行った場合の一実施態様における各層の評価を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の分離の原理について説明すると、以下のようになる。すなわち、粉体を流動化させ、液体系の比重選別と同様な粉体流動化媒体、言い換えれば固気流動層(以下では、単に流動層ともいう。)を利用して分離対象物を主としてその密度によって、分離するものであるか、粉体を用いなくても、気体を流動層へ導入することによって、分離対象物は、密度偏析を生じるため、当該密度偏析現象を利用して、分離対象物を分離しようとするものである。本発明においては、これに加えて、流動層本体を移動させながら、分離対象物を回収することも特徴の一つである。このように流動層本体を移動させることによって、流動層の偏析精度を維持しつつ、迅速に分離対象物を回収可能となる。すなわち、いわゆるバッチ式の偏析精度を保ったまま、連続的に分離対象物を高精度で、迅速に分離することが可能となる。
【0028】
まず、固気流動層による分離の概念を以下に説明する。粉体に気体を送り浮遊流動化させた場合、粉体からなる流動層は、液体と同様の挙動を示す。従って、流動層の見掛け密度ρfbは下記の式で表される。
【0029】
ρfb=Wp /Vf =(1−εf )ρp
ここでWp は流動化媒体の粉体重量、Vf は流動化時の体積、εf は流動化時の空隙率、ρp は流動化媒体の粉体密度である。
【0030】
このような見掛け密度ρfbを有する流動層中に密度ρs の分離対象物を混在させたとき、ρs <ρfbの分離対象物成分は流動層上部に浮揚し、ρs >ρfbの当該分離対象物成分は流動層下部に沈降する。そしてρs =ρfbの当該分離対象物成分は流動層中間部を浮遊する。このことを利用して分離対象物の比重選別を行うのである。
【0031】
また、いわゆる粉体を用いない場合の本発明の分離の原理について説明すると、以下のようになる。すなわち、分離対象物を流動層内で流動化及び/又は循環させて、当該分離対象物の比重差及び/又はサイズ差を利用して分離対象物を分離するものである。すなわち、固気流動層に使用する流動化媒体の影響を受けやすい粒状混合物については、固気流動層を用いず、むしろそのまま分離対象物自体を流動化させて、偏析現象及び飛散現象を利用して分離対象物を分離せんとするものである。
【0032】
本発明者らは、大容量の分離対象物を大量に処理することを達成するにはどうするかを検討した結果、バッチ式の連続装置とすることで、本発明を完成させるに至った。これによれば、バッチ処理のように、風速調整も自在に可能である結果、分離対象物の分離を最適化することも可能である。
【0033】
すなわち、本発明者らは、当初、固気流動層を例にとれば、粉体自身が移動することに着目した。これによれば、装置に供給された粉体は、振動などの力により自ら排出端へ向けて移動し、移動する間にあらかじめ調整された風の力により密度偏析を起こし排出端で 2 産物に分離される。
【0034】
但し、この装置の問題点は、粉体自身が移動しなければならないことである。細かい粉体の密度偏析現象はきわめてデリケートである。粉体自身が移動することによって密度偏析の形成が阻害されることがかなりの確率で想定される。したがって、できるだけ密度偏析の形成を阻害しないようにするには移動速度を遅くすることが考えられるが、遅くすることは本装置の処理能力減小に直結する。従って
仮に密度偏析形成を阻害させない移動が可能となっても、本装置は大容量処理には不向きである。
【0035】
そこで、本発明者らは、連続装置は理想的にはバッチ連続装置が望ましいことに着目し、流動層本体を移動させることを見出し、本発明を完成するに至った。流動層を移動させる方法の場合、装置は無限の長さにはできないから循環するシステムにするという観点から、小ユニットの流動層本体を円形に連続的につなぎ、それを回転させることで限りなくバッチに近い状態で連続化することが可能となることを見出した。
【0036】
すなわち、本発明の乾式分離方法は、流動層へ気体を導入し、流動層中の分離対象物を分離する乾式分離方法であって、前記流動層本体が移動しながら、前記分離対象物を分離することを特徴とする。また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記流動層本体は、円弧上を移動することを特徴とする。
【0037】
本発明においては、この密度偏析を利用した円型流動層は回転機構の観点から、2つの方式を挙げることができる。第一の方式は、流動層本体:A のみが回転移動する方式で、この方式では空気室と流動層本体との境界面が摺動面となる。第二の方式は、流動層本体:Aと送風管:Cを含む空気室:Bが一体となって回転移動する方式である。この方式では、送風主管:Dの内部に摺動面がある。
【0038】
第一の方式は、摺動面の長さが回転体円周の2倍ありきわめて長い点特徴である。この長い面を機械的にエアシールすることは困難性を有する。
【0039】
一方、第二の方式では、エヤシールの必要な箇所及び長さを最小限にすることが可能である。すなわち、第二の方式では、いくつかに分割された固気流動層本体にそれぞれ空気室が固定され、各空気室にはそれぞれ送風用の配管を固定することができる。したがって、簡易に製造可能という観点から、第二の方式が好ましい。
【0040】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記流動層本体は、通気速度を制御するという観点から、1個又は複数個からなることを特徴とする。
【0041】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記気体の導入を、多孔性材料からなる気体分散板を介して行うことを特徴とする。好ましくは、多孔性材料が、多孔性材料が、パンチング板と、天然繊維または化学繊維で織られた布との組み合わせである。
【0042】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、前記分離を、前記流動層の下部からの送風により行うことを特徴とする。分離することが可能な成分がより多くなるからである。但し、下部からの送風に限定される意図ではなく、たとえば、比較的比重が低い成分においては横風を送っても分離は可能である。明らかに比重が低い成分が存在する場合、横風でも飛散距離が大きいため高効率で分離可能である。したがって、固気流動層選別に前処理として横風を使った風力分級で比重が低い成分を除去したのち、残存する分離対象物の各成分を除去してもよい。
【0043】
分離対象物中に目的成分以外に不純物として比重が低い成分が存在する場合も同様の手順で、不純物を除去することができる。
【0044】
そして、本発明においては、通気速度が15.0(cm
3/s)/cm
2以下の条件下で、送風を行うことができる。これは、通気速度を制御することにより、浮沈の安定化を図る事ができるからである。分離対象物にもより、特に限定されないが、通気速度を15.0(cm
3/s)/cm
2以下、好ましくは、10.0(cm
3/s)/cm
2以下、さらに好ましくは、5.0(cm
3/s)/cm
2以下とすることができる。
【0045】
本発明において、空塔速度をu0として粉体の最小流動化空塔速度をu mfとした場合、u0/umf が分離を制御する1つの要因となる。なぜなら、空塔速度を調節することにより、例えば、2つの非常に近接した密度差を有する成分を容易に除去でき、逆に、密度差の大きい成分の分離には、空塔速度を上げることにより、短時間で分離することができるからである。
【0046】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、流動層は、粉体を流動化させた固気流動層であることを特徴とする。
【0047】
また、本発明の乾式分離方法の好ましい実施態様において、分離対象物が、自動車
シュレッダーダスト、家電シュレッダーダスト、及びこれら以外の産業廃棄物、一般廃棄物、鉱石類、石炭、又はレアアースであることを特徴とする。
【0048】
次に、本発明の乾式分離装置について説明する。すなわち、本発明の乾式分離装置は、流動層と、分離対象物を投入する分離対象物投入手段と、前記分離対象物が前記流動層によって分離し浮揚した浮揚物を回収する第一の回収手段と、前記分離対象物が流動層によって分離し沈降した沈降物を回収する第二の回収手段と、空気室と、前記流動層を移動させることが可能な電動機とを備え、前記流動層本体は、円弧上を移動可能であることを特徴とする。流動層については、上述の本発明の乾式分離方法における説明を参照することができる。分離対象物投入手段は、分離対象物を投入することができれば、特に限定されない。場合によっては、分離対象物を攪拌するために、攪拌機などの攪拌手段を介して、投入してもよい。また、浮揚物を回収する第一の回収手段としても、浮揚物を回収できる限り、特に限定されない。また、沈降物を回収する第二の回収手段についても、沈降物を回収することができる限り、特に限定されない。また、電動機についても、前記流動層を移動させることができれば、特に限定されない。前記電動機によって、前記流動層本体は、円弧上を移動可能である。流動層が移動する利点については、上述した本発明の乾式分離方法における説明と同様である。
【0049】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記流動層本体は、通気速度を制御するという観点から、1個又は複数個からなることを特徴とする。また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記空気室は、通気速度を制御するという観点から、1個又は複数個からなることを特徴とする。前記空気室を、前記流動層と対応して設けることにより、微妙な風速調整が可能となり、分離対象物の高精度、かつ、迅速な分離の最適化を図ることができる。
【0050】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、送風管を有することを特徴とする。前記送風管を前記空気室ごとに設ければ、さらにきめ細かい風速調整が可能となる。たとえば、さらに、送風量調整バルブを設けることが可能である。
【0051】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記電動機によって、前記空気室は、円弧上を移動可能であることを特徴とする。いわゆる、上述の本発明の乾式分離方法の一実施態様において説明した第二の方式の態様の場合である。
【0052】
なお、粉体を利用する固気流動層の場合、粉体は、1又は複数の粉体を投入する粉体投入手段によって、投入されてもよく、前記1又は複数の粉体投入手段により投入された粉体によって、固気流動層を形成してもよい。
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記第一及び/又は第二の回収手段の分離対象物を回収する回収方向がそれぞれ異なる。回収方向を異にすることで、排出機による粒度媒体の偏りを小さくさせることが可能となる。
【0053】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、さらに、分離対象物を分離回収する際に発生する集塵を回収する集塵回収手段を有する。これにより、不純物のない、より精度の高い分離が可能となる。
【0054】
また、本発明の乾式分離装置の好ましい実施態様において、前記第一及び第二の回収手段が、吸引機構によるものであることを特徴とする。吸引機構は、浮揚物等を回収することができれば特に限定されない。
【0055】
次に、本発明の乾式分離装置の一実施態様を添付図面に基づいて説明する。
図1(a)は、分離対象物を分離する装置の一実施態様における概略図を示す。
図1(b)は、
図1(a)の装置の断面を示す。図中、1は回転方向、2は送風主管、3は流動層、4は空気室、5は送風管、6は分離対象物導入、7は高密度分離対象物回収、8は低密度分離対象物回収を、それぞれ示す。この態様において、流動層3、及び空気室4は、回転方向1の矢印のように、移動可能、回転可能である。送風主管2から、それぞれの空気室4、ひいては流動層5へ、送風可能であり、それぞれ異なる風量を送風可能である。流動層はむろん、粉体を用いて流動化してもよく、粉体を用いず、分離対象物自体の偏析現象を利用してもよい。
【0056】
分離手順の一例を示すと、固気流動層を用いる場合には、前記流動層内に流動化媒体であるガラスビーズ、ユニビーズ、ジルコンサンド、ポリスチレン粒子などを仕込み、流動層3の下面から気体分散板を通して均一に流動層3内に気体を送り込み粉体を流動化させ、流動層を形成する。粉体を用いない場合には、粉体を導入する必要はない。
【0057】
その後、流動層3の上面開口から分離対象物を投入すると、密度の大きい分離対象物成分は沈降する(分離対象物導入6)。導入された分離対象物は、密度の差により、流動層3とともに移動しながら、効率よく、かつ、精度よく、迅速に分離する。例えば、一回転することには、密度差に応じて、高密度分離対象物と、低密度分離対象物とに、分離することができる(高密度分離対象物回収7、及び低密度分離対象物回収8)。
【0058】
図2は、分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。回転部を示す。図中、10は空気室、11は回転部、12は送風管、13は摺動面、14は各空気室用の開口部を、それぞれ示す。
【0059】
図3は、分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。固定部を示す。
図4は、分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。回転部と固定部を示す。図中、21は開口部、22は風量調整バルブ、23は送風管、24は摺動面、31は送風量調整バルブ、32は流動層本体、33は分離対象物供給部、34は高密度分離対象物、及び低密度分離対象物の排出部、35は固定部、36は回転部、37送風主管、38は回転方向、39はメタルタッチの摺動部、40は送風管を、それぞれ示す。この例においては、送風用の各配管12は装置の中心に向かって回転部11としてまとめられている。各配管12の入り口は摺動面13に開口14しておりそれぞれ隣り合う空気室用の入り口とは区別されている構造になっている。一方、固定部35側の摺動面にも密度偏析促進に必要とされる風量調整プロセスの数に等しい開口部が設けられている。この開口部に風量調整用のバルブが設けられた送風管がつながっており、この送風管は装置の中心に設けられた送風主管2に結合されている。回転部36と固定部35との摺動面を合わせて結合すれば全体装置がまとまる。空気の供給は、例えば、トラニオンバルブ構造の分配機を用いて行うことができる。空気供給部分において、固定メタルタッチの外周部分が回転することができる。
【0060】
送風主管2より供給された密度偏析に必要なガス(空気など)は、バルブ22を通り摺動面の開口部に達する。そのガスは回転側の開口部14を通じて空気室に送られ空気室の上部に固定された流動層3本体に送られる構造である。分離対象物は、供給部より流動層3本体に供給される。回転部11の回転により、摺動面13で固定部35と回転部36の開口部が通じた箇所から送風が開始され分離対象物(粉体を用いる場合は粉体も)は流動化を開始、偏析作用が開始される。回転に伴い回転部36の摺動面開口部は、あらかじめ風量調整された固定側の開口部を滑らかに通過することで偏析に最適な風量を受け取り密度偏析作用を促進させる。回転がさらに進むと固定側の開口部がない箇所に達する。ここで密度偏析作用は終了する。更に回転すると、偏析層の上部を低密度産物として掻きだし、更に回転し次に 高密度産物を掻きだす。更に回転すると、当初の分離対象物供給部に達する。
【0061】
この例によれば、本装置の回転数は可変であり、従い処理対象物の物性に最適な密度偏析時間を実現することができる。又、いくつかの風量調整が可能なプロセス調整区を設けているので密度偏析作用の時間軸に対する風量の最適化が可能である。
【0062】
図5は、分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。図中、50は回転方向、51はロータリー型分離対象物回収手段、52は排出機(ベルトコンベアなど)、53は開口部を、それぞれ示す。ロータリー型分離対象物回収手段51は、回転方向50に回転しながら、分離対象物を回収することができる。回収された分離対象物は、排出機52によって、所望の場所へ排出することができる。
【0063】
図6は、分離対象物の成分を回収する本発明の一実施態様における概略図を示す。60は、低密度分離対象物、61は高密度分離対象物を、それぞれ示す。例えば、前記ロータリー型分離対象物回収手段51によって、流動層内の浅い部分に集合した低密度分離対象物を回収することができ、また、流動層内の深い部分に集合した高密度分離対象物を回収することができる。
【0064】
なお、流動層を、固気流動層(粉体を使用)として適用する場合としない場合とでは、回収装置仕様が異なる。すなわち、1)流動媒体不要の装置の場合は、低密度部分と高密度部分をそれぞれ全て回収するので円形の回収装置は通常の穴の開いていないバケットのようなもので回収する。2)固気流動層の場合、(低密度部分+媒体)と(高密度部分+媒体)をそれぞれ回収する。その場合、媒体は、円型流動層に循環しなければならないので円形回収装置では織網のような穴明きのバケットで回収することができる。更に、円形の中心部から装置外に出たところで振動スクリーンもしくは穴明きトロンメルのような装置で掻きだした産物中の媒体を分離し、分離後の媒体を円型流動層に循環する装置が必要となる。また、媒体は100%循環できない場合があるので、不足する媒体の補給装置を必要とする場合がある。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、下記実施例に限定して解釈される意図ではない。
【0066】
実施例1
本発明の乾式分離装置を用いて、実際に分離対象物の分離を試みた。分離対象物としては、石炭を用いた。分離対象物:石炭(微粉炭)、粒度:500-300μm。また、流動層の高さに応じて、流動層の上の層から、層番号1として、下の層番号を10として、偏析の様子を調べた。また、送風速度を一定にした場合と、送風速度を変化させた場合について、調べた。結果を、表1に示す。表1は、偏析分離の条件を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
表1中、u
0:空塔速度(cm/s)、u
mf:最小流動化速度(cm/s)を示す。また、各層の評価結果を示すデータを
図7に示す。
図7の結果に基づいて、各層の石炭の真密度の測定結果を示したのが、
図8である。また、灰分と層番号との関係を示したのが
図9である。また、発熱量と層番号との関係を示したのが
図10である。この結果、層番号1〜9までと、10とで、精炭と、それ以外とを分離することが可能であることが分かる。すなわち、分離前の原炭の密度に対し、層番号:1〜9は密度が低く、層番号:10は密度が高い。したがって、微粉炭を低密度産物と高密度産物に分離可能である。
【0069】
特に、送風速度変化(条件2)では低密度産物と高密度産物の密度差はより顕著であり、送風速度変化による手法は偏析分離に効果的である。
【0070】
低密度産物(精炭:製品と想定)の灰分と発熱量の評価については、条件1:送風速度一定では、分離前は、密度:1.481g/cm
3、灰分:22.7%、発熱量6444kcal/kgのものが、層番号1〜9において(低密度産物(精炭))、密度:1.466g/cm
3、灰分:21.3%、発熱量6573kcal/kg、歩留り90%のものと、層番号10において(高密度産物)、密度:1.607g/cm
3、灰分:33.9%、発熱量5345kcal/kg、歩留り10%のもの、に分離することができた。
【0071】
低密度産物(精炭:製品と想定)の灰分と発熱量の評価については、条件2:送風速度変化では、分離前は、密度:1.481g/cm
3、灰分:22.7%、発熱量6444kcal/kgのものが、層番号1〜9において(低密度産物(精炭))、密度:1.448g/cm
3、灰分:19.7%、発熱量6729kcal/kg、歩留り90%のものと、層番号10において(高密度産物)、密度:1.708g/cm
3、灰分:42.9%、発熱量4467kcal/kg、歩留り10%のもの、に分離することができた。
【0072】
この結果、送風速度変化による手法では、3%の灰分低減と280kcal/kgの発熱量向上が認められた。まとめると、送風速度を一定にした偏析分離により、微粉炭を低密度産物と高密度産物に分離可能であり、石炭の品位のアップグレードが可能であることが判明した。また、送風速度を連続的または断続的に減少あるいは増加させた送風の最適化制御により、偏析分離を促進することができ、石炭の品位のさらなるアップグレードが可能であることが判明した。
【符号の説明】
【0073】
1 回転方向
2 送風主管
3 流動層
4、10 空気室
5、12 送風管
6 分離対象物導入
7 高密度分離対象物回収
8 低密度分離対象物回収
9 排出機B
11 回転部
13 摺動面
14 各空気室用の開口部
21 開口部
22 風量調整バルブ
23 送風管
24 摺動面
31 送風量調整バルブ
32 流動層本体
33 分離対象物供給部
34 高密度分離対象物、及び低密度分離対象物の排出部
35 固定部
36 回転部
37 送風主管
38 回転方向
39 メタルタッチの摺動部
40 送風管
50 回転方向
51 ロータリー型分離対象物回収手段
52 排出機(ベルトコンベアなど)
53 開口部
60 低密度分離対象物
61 高密度分離対象物