(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242858
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】炭素を捕捉および隔離するため、ならびに廃ガスストリーム中の酸化炭素の質量を低減するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
C01B 32/164 20170101AFI20171127BHJP
B01D 53/86 20060101ALI20171127BHJP
B01J 23/06 20060101ALI20171127BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20171127BHJP
C01B 32/186 20170101ALI20171127BHJP
C01B 32/205 20170101ALI20171127BHJP
C01B 32/25 20170101ALI20171127BHJP
【FI】
C01B32/164
B01D53/86 100
B01J23/06 M
C01B32/05
C01B32/186
C01B32/205
C01B32/25
【請求項の数】19
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2015-506979(P2015-506979)
(86)(22)【出願日】2013年3月15日
(65)【公表番号】特表2015-514670(P2015-514670A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】US2013000081
(87)【国際公開番号】WO2013158161
(87)【国際公開日】20131024
【審査請求日】2016年3月11日
(31)【優先権主張番号】61/624,462
(32)【優先日】2012年4月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514261926
【氏名又は名称】シーアストーン リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100114889
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ノイズ ダラス ビー.
【審査官】
壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2010/120581(WO,A1)
【文献】
国際公開第2013/090444(WO,A1)
【文献】
特開2011−116614(JP,A)
【文献】
特開2001−187334(JP,A)
【文献】
特開昭63−159210(JP,A)
【文献】
特開2006−027949(JP,A)
【文献】
特開2001−046864(JP,A)
【文献】
特表2010−528974(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0220695(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0183959(US,A1)
【文献】
特表2012−524015(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0305028(US,A1)
【文献】
特表2015−500201(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/090274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B32/00−32/991
B01D53/86,53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化炭素含有ガスストリームから炭素を捕捉および隔離する方法であって、
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを、触媒の存在下で、第1の触媒変換器に通過させて、前記少なくとも1種の酸化炭素の少なくとも一部分と前記少なくとも1種の還元剤の少なくとも一部分とを、第1の固体炭素生成物と、水蒸気を含む中間ガスストリームとに変換することと、
前記第1の触媒変換器から前記第1の固体炭素生成物を取り出すことと、
前記中間ガスストリームから水を除去して、乾燥した中間ガスストリームを形成することと、
前記乾燥した中間ガスストリームを、第2の触媒変換器に通過させて、第2の固体炭素生成物とテールガスストリームとを形成することと、
前記第2の固体炭素生成物を前記第2の触媒変換器から取り出すことと、
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記第1の触媒変換器に再循環させることと、を含み、
該再循環させることは、
前記テールガスストリームを、前記テールガスストリームから水を除去することなく酸化炭素濃縮器へ送ることと、
前記水の少なくとも一部分と酸化炭素以外のガスの少なくとも一部分とを、前記酸化炭素濃縮器内で前記テールガスストリームから除去して、乾燥再循環ガスストリームを形成することと、
前記乾燥再循環ガスストリームの少なくとも一部分を前記反応ガスストリームと混合することと、を含む、
前記方法。
【請求項2】
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記第1の触媒変換器に再循環させることは、前記テールガスストリームを、機械冷凍の使用を伴わずに、前記第2の触媒変換器内で生成される水蒸気の少なくとも一部分の凝縮を引き起こすのに十分な圧力で再循環させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記第1の触媒変換器に再循環させることは、前記テールガスストリームを、酸化炭素濃縮器に通過させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記テールガスストリームは、前記反応ガスストリームの未反応部分をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記反応ガスストリームを、水素、アルカン、およびアルコール、またはそれらの混合物を含む還元ガスを含むように選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記反応ガスストリームを、二酸化炭素を含む酸化炭素を含むように選択することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む前記反応ガスストリームを、触媒の存在下で、第1の触媒変換器に通過させることは、機械または電気エネルギーのさらなる投入を伴わずに、前記反応ガスストリームを前記触媒変換器を通して流すのに十分な圧力で、前記反応ガスストリームを導入することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記中間ガスストリームから水を除去することは、前記中間ガスストリームから水を凝縮して、0℃未満の露点を有する乾燥した中間ガスストリームを生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを、触媒の存在下で、第1の触媒変換器に通過させることは、前記反応ガスストリームを、ボッシュ反応のための反応触媒と400℃を超える温度で接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを、触媒の存在下で、第1の触媒変換器に通過させることは、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、煤、繊維状炭素、バックミンスターフラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、およびナノダイヤモンドからなる群から選択される少なくとも1つの物質を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応ガスストリームを前記第1の触媒変換器に通過させる前に、前記反応ガスストリームの少なくとも一部分を、前記少なくとも1種の酸化炭素の濃度を増大させるように供給源ガスストリームを濃縮することによって、該供給源ガスストリームから分離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記供給源ガスストリームを濃縮することは、不活性ガスおよび炭化水素のうちの少なくとも1つを含む放出ガスを形成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを、触媒の存在下で、第1の触媒変換器に通過させることは、前記反応ガスストリームを、元素周期表の5族〜10族の元素、ランタニド、アクチニド、そのような元素の金属合金、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される触媒材料に曝露することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒材料は、Zn、Fe、Ni、W、V、Cr、Sn、Cu、Co、Mn、およびMoのうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒材料は、鋼、鋳鉄、または白鋳鉄のうちの少なくとも1つを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒材料は、ショット、グリット、または粉末のうちの少なくとも1つの粒子を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒材料は、プレート、シート、または箔のうちの少なくとも1つの形態の材料を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒材料は、繊維を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記触媒材料は、スチールウールまたは刻まれたスチールウールを含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2012年4月16日に出願された、米国特許仮出願第61/624,462号、「Methods and Systems for Capturing and Sequestering Carbon and for Reducing the Mass of Carbon Oxides in a Waste Gas Stream」の恩典を主張するものであり、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の実施形態は、気体酸化炭素の固体炭素生成物への変換による炭素の捕捉および貯蔵に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
2012年2月9日に公開された米国特許出願公開第2012/0034150A1号は、本明細書の背景情報を開示し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
追加的な情報は、以下の文書で開示され、それぞれの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
1.Dallas B. Noyesの名義で2012年4月16日に出願された米国特許出願第61/624,702号の恩典を主張する、「Methods and Structures for Reducing Carbon Oxides with Non−Ferrous Catalysts」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000072(代理人整理番号3525−P10945.1PC)、
2.Dallas B.Noyesの名義で2012年4月16日に出願された米国特許出願第61/624,573号の恩典を主張する、「Methods and Systems for Thermal Energy Recovery from Production of Solid Carbon Materials by Reducing Carbon Oxides」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000076(代理人整理番号3525−P10946.1PC)、
3.Dallas B.Noyesの名義で2012年4月16日に出願された米国特許出願第61/624,723号の恩典を主張する、「Methods for Producing Solid Carbon by Reducing Carbon Dioxide」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000077(代理人整理番号3525−P10947.1PC)、
4.Dallas B.Noyesの名義で2012年4月16日に出願された米国特許出願第61/624,753号の恩典を主張する、「Methods and Reactors for Producing Solid Carbon Nanotubes,Solid Carbon Clusters,and Forests」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000073(代理人整理番号3525−P11001.1PC)、
5.Dallas B.Noyesの名義で2012年4月16日に出願された米国特許出願第61/624,513号の恩典を主張する、「Methods for Treating an Offgas Containing Carbon Oxides」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000075(代理人整理番号3525−P11002.1PC)、
6.Dallas B.Noyesの名義で2012年4月16日に出願された米国特許出願第61/624,848号の恩典を主張する、「Methods for Using Metal Catalysts in Carbon Oxide Catalytic Converters」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000071(代理人整理番号3525−P11248.1PC)、
7.Dallas B.Noyesの名義で2012年7月13日に出願された米国特許出願第61/671,464号の恩典を主張する、「Methods and Systems for Forming Ammonia and Solid Carbon Products」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000078(代理人整理番号3525−P11361.1PC)、および
8.Dallas B.Noyesの名義で2012年4月23日に出願された米国特許出願第61/637,229号の恩典を主張する、「Carbon Nanotubes Having a Bimodal Size Distribution」について本願と同日に出願された、国際特許出願
PCT/US2013/000079(代理人整理番号3525−P11771PC)。
【0005】
固体炭素は、数多くの商業的用途を有する。これらの用途としては、タイヤ、インク等のフィラー材料としてのカーボンブラックおよび炭素繊維の使用、種々の形態のグラファイトのための(例えば、電極、および遮熱材における熱分解グラファイトとしての)使用、ならびにバックミンスターフラーレンおよびカーボンナノチューブのための革新的で新たに出現した用途が挙げられる。種々の形態の固体炭素を製造するための従来の方法は、一般的に、好適な触媒の存在下での炭化水素の熱分解を含む。炭化水素は、歴史的に見て豊富な入手可能性があり、比較的低価格であるため、一般的に、炭素源として使用される。固体炭素の生成における、炭素源としての酸化炭素の使用は、殆ど未開発のままであった。
【0006】
酸化炭素、特に二酸化炭素(CO
2)は、炭化水素燃焼の排気ガス等の点排出源から、またはいくつかのプロセスオフガスから抽出されることができる豊富なガスである。CO
2はまた、空気からも抽出されることができる。点排出源は、空気よりも著しく高いCO
2濃度を有するので、しばしばCO
2を採取するための経済的な供給源である。
【0007】
CO
2は、発電および化学プロセスの副産物として、益々入手可能および安価になっており、ここで、1つの課題は、CO
2の捕捉およびその後の隔離によって(例えば、地層中へ注入することによって)、大気中へのCO
2の排出を低減または無くすことであり得る。酸化炭素はまた、坑井および埋立処理場からの天然ガス、燃焼オフガス、ポートランドセメントか焼炉オフガス、発酵オフガス、ならびに酸化炭素または合成ガスをもたらす種々の他の化学プロセス等の、他の産業的供給源の生成物である。二酸化炭素を捕捉し、その後(しばしば、地層中へ注入することによって)隔離することによって、大気への二酸化炭素の排出を低減するための試みがなされている。例えば、CO
2の捕捉および隔離は、いくつかの「グリーン」石炭燃焼発電所の基礎である。現在の実務において、CO
2の捕捉および隔離は、多大なコストを必要とする。したがって、CO
2のための経済的に実行可能な使用、またはCO
2の隔離のより経済的な手段が有用であり得る。
【0008】
種々の平衡が反応生成物として固体炭素をもたらすと同定されている、炭素、酸素、および水素の関与する多種多様な反応が存在する。炭化水素の熱分解は、一般的に酸素が殆どまたは全く存在しない状態で、固体炭素の生成に好都合である水素と炭素との間の平衡を伴う。「一酸化炭素の不均化反応」とも称されるBoudouard反応は、一般的に水素が殆どまたは全く存在しない状態で、固体炭素の生成に好都合である炭素と酸素との間の平衡の範囲である。ボッシュ反応は、同様に固体炭素の生成に好都合である反応条件下で、炭素、酸素、および水素の全てが存在する平衡の領域内で生じ、特徴としては、反応成分中に存在する水素による酸化炭素の還元に起因する共生成物として水を有する。
【0009】
炭化水素の熱分解と、Boudouard反応と、ボッシュ反応との関係は、
図1で示されるように、C−H−O平衡状態図に関して理解され得る。
図1のC−H−O平衡状態図は、カーボンナノチューブ(「CNT」)を含む固体炭素までの種々の既知のルートを示す。炭化水素の熱分解反応は、HとCを結ぶ平衡線上、および三角形の左縁部の近くから破線の左上の領域の中で起こる。熱分解ゾーンとボッシュ反応ゾーンとの間の遷移は、反応器温度によって変化し得るので、2つの破線が示されている。Boudouard反応または一酸化炭素の不均化反応は、OとCを結ぶ平衡線の近く(すなわち、三角形の右縁部)で起こる。本図を横切る種々の温度に関する平衡線は、固体炭素が形成されるおおよその領域を示す。各温度について、固体炭素は、関連する平衡線の上側の領域で形成され得るが、一般的に、平衡線の下側の領域では形成されない。Boudouard反応ゾーンは、三角形の右側に現れる。このゾーンでは、熱力学的にボッシュ反応よりもBoudouard反応が好ましい。熱分解ゾーンとBoudouard反応ゾーンとの間の領域、および特定の反応温度曲線の上側では、熱力学的にBoudouard反応よりもボッシュ反応が好ましい。
【0010】
CNTは、強度、通電容量、ならびに熱および電気伝導性を含む、その固有の材料特性のため、有益である。現在のCNTのバルク用途としては、複合材の製造における樹脂への添加物としての用途が挙げられる。CNTの用途に関する研究および開発は、多種多様な使用用途で非常に活発であるか、または検討中である。CNTの広範囲にわたる使用に対する1つの障害は、製造コストであった。
【0011】
米国特許第7,794,690号(Abatzoglou他)は、有機材料からの炭素の隔離のための、乾燥改質プロセスを教示する。Abatzoglouは、任意で3D乾燥改質触媒を用いる、2D炭素隔離触媒を利用する方法を開示している。例えば、Abatzoglouは、第1段階で、3D触媒上で有機材料(例えば、メタン、エタノール)およびCO
2を乾燥改質して合成ガスを形成し、それに続いて、CNTおよびカーボンナノフィラメントを形成するために2D炭素鋼触媒上で合成ガスの炭素隔離をするための、2段階プロセスを開示している。2D触媒は、非多孔性金属担体もしくはセラミック担体上の活性金属(例えば、Ni、Rh、Ru、Cu−Ni、Sn−Ni)、またはモノリス担体上の鉄系触媒(例えば、鋼)であり得る。3D触媒は、類似の組成であり得るか、または類似の担体上の複合触媒(例えば、Ni/ZrO
2−Al
2O
3)であり得る。Abatzoglouは、鉄をそのアルファ相へと変態させるために、その共晶点を超える温度で触媒の表面上に不活性ガスストリームを通過させることによる、2D触媒の事前活性化を教示している。Abatzoglouは、2段階プロセスにおいて水を最小限にすること、または乾燥改質の第1段階中に、反応ガス混合物中に低濃度(0〜10重量%)の水を添加することを教示している。
【0012】
米国特許出願公開第2012/0034150 A1号は、触媒の存在下で還元剤を用いる、酸化炭素の固体炭素生成物への触媒変換のための方法を開示する。開示される方法は概して、酸化炭素を有益な固体炭素生成物へ還元するための触媒変換プロセスに関し、より具体的には、典型的には触媒の存在下での、還元剤(水素または炭化水素等)を用いた固体炭素の生成のための主要炭素源としての酸化炭素(例えば、一酸化炭素および二酸化炭素)の使用に関する。したがって、この方法は、固体炭素および水への酸化炭素(主に一酸化炭素および二酸化炭素)の触媒変換に関与する。方法は、大気、燃焼ガス、プロセスオフガス、坑井ガス、および他の酸化炭素の天然または産業的供給源を使用することができる。酸化炭素は、これらの供給源から分離され、必要に応じて濃縮されることができる。これらの方法は、種々のモルフォロジの固体炭素生成物を商業的に製造するため、ならびに酸化炭素の固体炭素および水への触媒変換のために使用することができる。
【発明の概要】
【0013】
開示
炭素を捕捉および隔離する方法は、少なくとも1種の酸化炭素を含む最初のプロセスガスストリームを、酸化炭素中の炭素の一部分を固体炭素と水蒸気を含有する反応生成物ガスストリームとに変換するように構築および適合される触媒変換器に導入することを含むことができる。固体炭素は、その廃棄または貯蔵のために触媒変換器から取り出される。反応生成物ガスストリームの少なくとも一部分は、触媒変換器に再循環される。反応生成物ガスストリームは、最初のプロセスガスストリームの一部分と、触媒変換器中で生成される水蒸気の少なくとも一部分とを含む。
【0014】
酸化炭素を含有するガス源から炭素を捕捉および隔離する方法は、ガス源の酸化炭素内容物を濃縮して最初のプロセスガスストリームを形成することと、最初のプロセスガスストリームを触媒の存在下で還元剤と反応させて、固体炭素と、未反応酸化炭素、未反応還元剤、および水蒸気を含む残留プロセスガスストリームとを生成することと、残留プロセスガスストリームから固体炭素を分離することと、残留プロセスガスストリームの少なくとも一部分を再循環させてガス源と組み合わせることと、を含むことができる。
【0015】
本明細書のある実施形態において、反応時の水の分圧は、水の再循環および凝縮を含む種々の手段によって調節されて、例えば生成される炭素生成物の構造またはその組成の他の面に影響を及ぼす。水の分圧は、ある所望の炭素同素体を得るのを支援すると思われる。
【0016】
ある実施形態では、触媒を反応に使用する前に該触媒を活性化する必要のない、鋼系触媒を含む、広範囲の安価で容易に入手可能な触媒が説明される。鋼を含む鉄合金は、アルファ鉄(オーステナイト)、ガンマ鉄、およびデルタ鉄を含む、種々の鉄の同素体を含み得る。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される反応は、有利には鉄系触媒を利用し、ここで、鉄は、アルファ相ではない。ある実施形態では、主にオーステナイト相の鉄を含むステンレス鋼が、触媒として用いられる。
【0017】
鉄系触媒(例えば、鋼、スチールウール)を含む触媒は、追加的な固体担体を必要とすることなく使用され得る。ある実施形態において、本明細書で開示される反応は、触媒のためのセラミック担体または金属担体を必要とすることなく進行する。固体担体を省略することは、反応器の装備を簡略化し、かつコストを削減し得る。
【0018】
酸化炭素を含有するガス源から炭素を捕捉および隔離するためのシステムは、ガス源の酸化炭素内容物を濃縮して最初のプロセスガスストリームを形成するための濃縮器手段と、最初のプロセスガスストリームを触媒の存在下で還元剤と反応させて、固体炭素と、未反応酸化炭素、還元剤、および水蒸気を含む残留プロセスガスストリームとを生成するための反応器手段と、残留プロセスガスストリームから固体炭素を分離するための固体分離手段と、残留プロセスガスストリームの少なくとも一部分を再循環させてガス源と組み合わせるための再循環手段と、を含むことができる。
[本発明1001]
酸化炭素含有ガスストリームから炭素を捕捉および隔離する方法であって、
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを触媒変換器へ導入して、前記少なくとも1種の酸化炭素の少なくとも一部分と前記少なくとも1種の還元剤の少なくとも一部分とを、触媒の存在下で、固体炭素と、水蒸気を含有するテールガスストリームとに変換することと、
前記触媒変換器から固体炭素を取り出すことと、を含む、前記方法。
[本発明1002]
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記触媒変換器に再循環させることをさらに含む前記方法であって、前記テールガスストリームの前記少なくとも一部分は、
最初のプロセスガスストリームからの未反応反応物質の一部分と、
前記触媒変換器内で生成される前記水蒸気の少なくとも一部分と、
を含む、本発明1001の方法。
[本発明1003]
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記触媒変換器に再循環させることは、前記触媒変換器内で生成される前記水蒸気の少なくとも一部分を除去して、乾燥テールガスストリームを形成することと、前記乾燥テールガスストリームの少なくとも一部分を前記反応ガスストリームの少なくとも一部分として使用することと、を含む、本発明1002の方法。
[本発明1004]
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記触媒変換器に再循環させることは、前記テールガスストリームを、機械冷凍の使用を伴わずに、前記触媒変換器内で生成される前記水蒸気の少なくとも一部分の凝縮を引き起こすのに十分な圧力で再循環させることを含む、本発明1003の方法。
[本発明1005]
前記テールガスストリームを前記反応ガスストリームと混合することをさらに含む、本発明1002の方法。
[本発明1006]
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記触媒変換器に再循環させることは、前記テールガスストリームを、酸化炭素濃縮器に通過させることを含む、本発明1002の方法。
[本発明1007]
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを触媒変換器へ導入することは、前記少なくとも1種の酸化炭素の一部分を前記少なくとも1種の還元剤と触媒の存在下で反応させて、固体炭素と、水蒸気を含むテールガスストリームとを形成することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1008]
前記テールガスストリームは、前記反応ガスストリームの未反応部分をさらに含む、本発明1001または1007の方法。
[本発明1009]
前記反応ガスストリームを、燃焼ガス排出物ストリーム、燃焼ガス排出物ストリームから分離された酸化炭素、プロセスオフガスストリーム、プロセスオフガスストリームから分離された酸化炭素、または合成ガスストリームのうちの少なくとも1つを含むように選択することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1010]
前記反応ガスストリームを、水素、アルカン、およびアルコール、またはそれらの混合物を含む還元ガスを含むように選択することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1011]
前記反応ガスストリームを、主として二酸化炭素を含む酸化炭素を含むように選択することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1012]
前記反応ガスストリームを、主として一酸化炭素を含む酸化炭素を含むように選択することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1013]
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む前記反応ガスストリームを触媒変換器へ導入することは、機械または電気エネルギーのさらなる投入を伴わずに、前記最初のプロセスガスストリームを前記触媒変換器を通して流すのに十分な圧力で、前記最初のプロセスガスストリームを導入することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1014]
機械または電気エネルギーを前記反応ガスストリームに追加することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1015]
少なくとも1種の酸化炭素と少なくとも1種の還元剤とを含む反応ガスストリームを触媒変換器へ導入することは、
前記反応ガスストリームを、第1の触媒変換器に通過させて、第1の固体炭素生成物と、水を含有する中間ガスストリームとを形成することと、
前記第1の触媒変換器から前記第1の固体炭素生成物を取り出すことと、
前記中間ガスストリームから水を除去して、乾燥した中間ガスストリームを形成することと、
前記乾燥した中間ガスストリームを、第2の触媒変換器に通過させて、第2の固体炭素生成物と前記テールガスストリームとを形成することと、
前記第2の固体炭素生成物を前記第2の触媒変換器から取り出すことと、
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記第1の触媒変換器に再循環させることと、を含む、本発明1001の方法。
[本発明1016]
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を前記触媒変換器に再循環させることは、
前記テールガスストリームを、前記テールガスストリームから水を除去することなく酸化炭素濃縮器へ送ることと、
前記水の少なくとも一部分と酸化炭素以外のガスの少なくとも一部分とを、前記酸化炭素濃縮器内で前記テールガスストリームから除去して、乾燥再循環ガスストリームを形成することと、
前記乾燥再循環ガスストリームの少なくとも一部分を前記反応ガスストリームと混合することと、を含む、本発明1002または1015の方法。
[本発明1017]
前記中間ガスストリームから水を除去することは、前記中間ガスストリームから水を凝縮して、選択された露点を有する乾燥した中間ガスストリームを生成することを含む、本発明1015の方法。
[本発明1018]
前記中間ガスストリームから水を除去することは、前記中間ガスストリームから水を凝縮して、約0℃未満の露点を有する乾燥した中間ガスストリームを生成することを含む、本発明1015の方法。
[本発明1019]
前記反応ガスストリームを精製して、少なくともいくらかの粒子状物質、少なくともいくらかの水蒸気、または少なくとも1種の不活性ガスを除去することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1020]
少なくとも1種の酸化炭素を含む最初のプロセスガスストリームを触媒変換器へ導入することは、前記最初のプロセスガスストリームを、ボッシュ反応のための反応触媒と約400℃を超える温度で接触させることを含む、本発明1001の方法。
[本発明1021]
少なくとも1種の酸化炭素を含む最初のプロセスガスストリームを触媒変換器へ導入することは、グラファイト、グラフェン、カーボンブラック、煤、繊維状炭素、バックミンスターフラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンプレートレット、およびナノダイヤモンドのうちの少なくとも1つを形成することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1022]
前記反応ガスストリームの少なくとも一部分を、前記少なくとも1種の酸化炭素の濃度を増大させるように希薄排出物源を濃縮することによって、前記希薄排出物源から分離することをさらに含む、本発明1001の方法。
[本発明1023]
前記希薄排出物源を濃縮することは、不活性ガスおよび炭化水素のうちの少なくとも1つを含む前記反応ガスストリームを形成することを含む、本発明1023の方法。
[本発明1024]
反応ガスストリームを触媒変換器へ導入することは、前記反応ガスストリームを、元素周期表の5族〜10族、ランタニド、アクチニド、そのような元素の金属合金、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される触媒材料に曝露することを含む、本発明1001の方法。
[本発明1025]
前記触媒材料は、Zn、Fe、Ni、W、V、Cr、Sn、Cu、Co、Mn、およびMoのうちの少なくとも1つを含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
前記触媒材料は、鋼、鋳鉄、または白鋳鉄のうちの少なくとも1つを含む、本発明1001の方法。
[本発明1027]
前記触媒材料は、ショット、グリット、または粉末のうちの少なくとも1つの粒子を含む、本発明1001の方法。
[本発明1028]
前記触媒材料は、プレート、シート、または箔のうちの少なくとも1つの形態の材料を含む、本発明1001の方法。
[本発明1029]
前記触媒材料は、繊維を含む、本発明1001の方法。
[本発明1030]
前記触媒材料は、スチールウールまたは刻まれたスチールウールを含む、本発明1029の方法。
[本発明1031]
酸化炭素を含有するガス源から炭素を隔離する方法であって、
前記ガス源の前記酸化炭素内容物を濃縮して、反応ガスストリームを形成することと、
前記反応ガスストリームを触媒の存在下で還元剤と反応させて、固体炭素と、未反応酸化炭素、未反応還元剤、および水蒸気を含むテールガスストリームとを生成することと、
前記固体炭素を前記テールガスストリームから分離することと、
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を再循環させて、前記反応ガスストリームと組み合わせることと、を含む、前記方法。
[本発明1032]
前記最初のプロセスガスストリームを触媒の存在下で還元剤と反応させることは、前記ガス源中の前記酸化炭素の少なくとも10%を固体炭素に変換することを含む、本発明1031の方法。
[本発明1033]
前記水蒸気の少なくとも一部分を前記テールガスストリームから分離することをさらに含む、本発明1031のシステム。
[本発明1034]
酸化炭素を含有するガス源から炭素を隔離するためのシステムであって、
前記ガス源の前記酸化炭素内容物を濃縮して反応ガスストリームを形成するための濃縮器手段と、
前記反応ガスストリームを触媒の存在下で還元剤と反応させて、固体炭素と、未反応酸化炭素、還元剤、および水蒸気を含むテールガスストリームとを生成するための反応器手段と、
前記固体炭素を前記テールガスストリームから分離するための固体分離手段と、
前記テールガスストリームの少なくとも一部分を再循環させて、前記ガス源と組み合わせるための再循環手段と、を備える、前記システム。
[本発明1035]
前記反応器手段内で形成される前記水蒸気の少なくとも一部分を前記テールガスストリームから分離するための水分離手段をさらに備える、本発明1034のシステム。
[本発明1036]
少なくとも1つの構成要素の構築材料は、前記構成要素の運転条件下でメタルダスティング腐食を制限するように選択され、前記構成要素は、前記ガス源、前記反応ガスストリーム、および前記テールガスストリームのうちの少なくとも1つと接触するように構成される、本発明1034のシステム。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本開示の特徴および利点は、添付図面と関連してなされる以下の詳細な説明を参照することにより明らかになるであろう。
【0020】
【
図2】本方法の一実施形態による炭素の捕捉および隔離のための装置を示す簡略プロセスフロー図である。
【
図3】水の除去および酸化炭素濃縮器への残留物の再循環を伴う単段階触媒変換器を示す簡略プロセスフロー図である。
【
図4】段階間の水の除去および酸化炭素濃縮器への残留物の再循環を伴う2段階触媒変換器を示す簡略プロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示は、酸化炭素を触媒変換プロセスにおいて固体炭素に変換することによって、酸化炭素を捕捉および隔離するための方法およびシステムを含む。酸化炭素からの固体炭素の生成は、有益であり、本明細書に開示される触媒変換プロセスを通じて酸化炭素を隔離するための経済的動機付けを提供することができる。例えば、炭化水素燃焼プロセス、か焼プロセス、採鉱プロセス、精製プロセス等の任意の産業的プロセスからの酸化炭素を、本明細書に開示される通り使用することができる。システムは、酸化炭素濃縮器および触媒変換器を含むことができる。
【0022】
方法の一例として、酸化炭素ガスストリームは、酸化炭素濃縮器から酸化炭素触媒変換ユニット内へと流れ、そこで酸化炭素ガスストリームは、メタン、水素、炭化水素、またはそれらの混合物等の還元ガスと混合される。酸化炭素のうちの少なくともいくらかは、固体炭素へと触媒的に変換され、商業利用または長期間の隔離のための貯蔵のために触媒変換器から取り出される。触媒変換器は、ボッシュ反応を促進するように選択される触媒を含む。ガスストリーム中の水蒸気の制御は、固体炭素の生成に重要である。過剰な水が存在する場合、水性ガス反応が生じることがあり、水と固体炭素が合成ガスに変換される。いくつかの触媒は、ガスストリーム中の高濃度の水によって作用が損なわれる。ボッシュ反応において水が生成されるため、生成物である水の少なくとも一部分または全てを、残留プロセスガスストリームを再循環させる前に、凝縮し、反応生成物ガスから除去してもよい。水の除去は、触媒変換システム中で、酸化炭素濃縮器中で、またはシステム内部の分離したガス処理ステップとして行うことができる。残留プロセスガスストリームは、酸化炭素濃縮器へと再循環されて戻り、そこで酸化炭素源ガスストリームまたは適切な中間ガスストリームと混合される。低減された濃度の酸化炭素または低減された体積の酸化炭素を含有する放出ガスが、触媒変換ユニットから吐出される。再循環されたガス中の水蒸気のうちのいくらかを除去することにより、形成される固体炭素のモルフォロジを制御することができる。水蒸気の分圧を変化させることは、混合物の炭素活量を変化させる。
【0023】
炭素活量(A
c)は、特定の反応条件下(例えば、温度、圧力、反応物質、濃度)で、固体炭素が形成されるかどうかの指標として使用することができる。いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、炭素活量は、固体炭素のどの同素体が形成されるかを決定するための鍵となるメトリックであると考えられる。より高い炭素活量は、CNTの形成をもたらす傾向があり、より低い炭素活量は、グラファイト形態の形成をもたらす傾向がある。
【0024】
気体反応物質から固体炭素を形成する反応に関する炭素活量は、反応平衡定数を気体生成物の分圧で乗じ、反応物質の分圧で除したものとして定義することができる。例えば、反応平衡定数Kを有する反応
において、炭素活量A
cは、K・(P
CO・P
H2/P
H2O)として定義される。したがって、A
cは、COおよびH
2の分圧に正比例し、H
2Oの分圧に反比例する。より高いP
H2Oは、CNT形成を阻害する傾向がある。この反応の炭素活量はまた、モル分率および全圧の観点から表すこともできる:A
c=K・P
T(Y
CO・Y
H2/Y
H2O)、式中P
Tは全圧であり、Yは種のモル分率である。反応平衡定数は概して温度とともに変動するため、炭素活量は概して、温度とともに変動する。炭素活量はまた、消費されるモル数とは異なるモル数のガスが生成される反応に関して全圧とともに変動する。固体炭素同素体の混合物およびそのモルフォロジは、触媒および反応器中の反応ガスの炭素活量を変えることによって、達成することができる。
【0025】
図2は、炭素を捕捉するためのシステム100、およびシステム100を用いて実施することができる方法の一実施形態の簡略プロセスフロー図を示す。酸化炭素を含有する供給源ガスストリーム102は、酸化炭素濃縮器104内へと流れ、その中で供給源ガスストリーム102の酸化炭素は濃縮される。プロセスガスストリーム106は、酸化炭素濃縮器104中で放出ガス108から分離される。プロセスガスストリーム106は、還元ガス110とともに触媒変換器112へと流れる。プロセスガスストリーム106が酸化炭素および還元ガスの好適な混合物を含有する場合、還元ガス110は任意である。固体炭素生成物114は、システム100から取り出され、残留ガスストリーム116は、酸化炭素濃縮器104へと再循環されて戻る。ベントガスストリーム117は、典型的には、残留ガスストリーム116から、および不活性ガスがシステム内に蓄積しないことを確実にする触媒変換器112内の種々のユニット動作から抜かれる。ベントガスストリーム117は、触媒変換器112からの残留ガスストリーム116の実質的な一部であってもよい。
【0026】
供給源ガスストリーム102は、1種以上の炭素含有構成成分を有する任意の供給源ガスを含むことができる。供給源ガスストリーム102はまた、炭素を含有しない構成成分を含むこともできる。例えば、供給源ガスストリーム102は、天然ガスもしくは他の炭化水素、水素、窒素、アンモニア、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素、アルゴン、硫黄含有ガス、または任意の他の気体種を含むことができる。例えば、供給源ガスストリーム102は、合成ガスである、主に水素と一酸化炭素との混合物を含むことができ、また二酸化炭素を含むこともできる。供給源ガスストリーム102が炭化水素を含む場合、炭化水素は、供給源ガスストリーム102が供給される温度および圧力において気体であり得る。例えば、供給源ガスストリーム102は、低分子量アルキル、アルケニル、ならびに炭素および水素のみから成る環状炭素化合物を含むことができる。いくつかの実施形態において、供給源ガスストリーム102は、石油坑、埋立処理場、燃焼エンジン、発酵槽、または任意の他の動作等の産業的供給源に由来するガスを含むことができる。供給源ガスストリーム102は、主に一酸化炭素または二酸化炭素を含むことができる。例えば、二酸化炭素および/または一酸化炭素は、供給源ガスストリーム102の炭素含有構成成分の80%超、90%超、95%超、またはさらには99%超を構成することができる。他の実施形態において、供給源ガスストリーム102は、酸化炭素に加えて、炭素含有構成成分ガスを含むことができる。供給源ガスストリーム102はまた、1種以上の不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等)を含むことができる。二酸化炭素ガスと一酸化炭素ガスとの双方を含む供給源ガスストリーム102は、広範な種類の産業活動によって生成され得る。二酸化炭素はまた、種々の天然の供給源(例えば、大気、ならびに天然ガス、二酸化炭素、および石油を含有する地下層)からも入手可能である。
【0027】
酸化炭素濃縮器104は、供給源ガスストリーム102の1種以上の炭素含有構成成分の濃度を増大させることが可能な任意のデバイスであることができる。典型的には、酸化炭素濃縮器104は、プロセスガスストリーム106(供給源ガスストリーム102より高濃度の炭素含有構成成分を有する)を放出ガス108(供給源ガスストリーム102より低濃度の炭素含有構成成分を有する)から分離する。例えば、酸化炭素濃縮器104は、凝縮器、膜(例えば、セラミック膜、有機膜等)、深冷蒸留カラム、アミン吸収分離システム、圧力スイング吸収システム、および/または任意の他の酸化炭素ガス分離デバイスを含むことができる。放出ガス108は、供給源ガスストリーム102中に存在する1種以上のガスを含むことができる。例えば、放出ガス108は、酸素、窒素、アルゴン等を含むことができる。酸化炭素濃縮器104は、特定のガスを分離するように構成されてもよく、また任意の選択された純度(すなわち、CO、CO
2、または別の炭素含有構成成分の濃度)のプロセスガスストリーム106を提供するように連続してまたは平行して稼働される2つ以上のデバイスを含んでもよい。放出ガス108は、さらに精製され、大気中へと排気されることができる。典型的には、酸化炭素濃縮器104から吐出される放出ガス108は、供給源ガスストリーム102より低濃度の酸化炭素を含有する。酸化炭素濃縮器104は、主としてまたは本質的にCOおよびCO
2から成るプロセスガスストリーム106を生成することができる。例えば、プロセスガスストリーム106は、少なくとも90%のCOおよびCO
2、少なくとも95%のCOおよびCO
2、またはさらには少なくとも98%のCOおよびCO
2を含むことができる。
【0028】
酸化炭素濃縮器104は典型的には、水を分離してプロセスガスストリーム106中の水蒸気圧を制御するための手段を含む。水ストリーム115は、酸化炭素濃縮器104から除去されて、放出されるかまたは少なくともいくらかの還元ガス110を提供するように電解されてもよい。水ストリーム115を除去してプロセスガスストリーム106中の結果として生じる水蒸気を制御するための多数の好適な手段が存在する。一実施形態において、水ストリーム115は、プロセスガスストリーム106中の水蒸気濃度を制御するための好適な制御装置を有する1つ以上の凝縮器によって、供給源ガスストリーム102、残留ガスストリーム116、またはそれらの混合物から分離される。別の実施形態では、水ストリーム115は、大気脚凝縮器の手段によって分離される。触媒変換器112の反応器内部の水蒸気圧は、形成される固体炭素の同素体およびモルフォロジ、固体炭素の堆積速度、ならびに触媒活性に影響を及ぼし得、触媒変換器112から所望の動作および固体炭素生成物の品質を達成するように制御され得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、放出ガス108は、供給源ガスストリーム102中に含有される炭素含有構成成分の一部分を含むことができる。他の実施形態では、放出ガス108は、炭素含有構成成分を実質的に含まなくてもよい(例えば、放出ガス108は、10%未満、5%未満、1%未満、またはさらには0.1%未満の炭素含有構成成分を含有してもよい)。放出ガス108は、典型的には、供給源ガスストリーム102の炭素含有量より低い炭素含有量を有する。例えば、放出ガス108は、供給源ガスストリーム102の炭素含有量の10%未満の炭素含有量、供給源ガスストリーム102の炭素含有量の5%未満の炭素含有量、供給源ガスストリーム102の炭素含有量の1%未満の炭素含有量、またはさらには供給源ガスストリーム102の炭素含有量の0.1%未満の炭素含有量を有することができる。
【0030】
酸化炭素濃縮器104の構成および動作は、プロセスの要件(例えば、ガスの流速、圧力、エネルギー入手可能性、環境規制、安全性規制、コスト等)に依存し得る。例えば、経済的側面により、プロセスガスストリーム106と放出ガス108との双方がいくらかの炭素含有構成成分を含有することが要求される場合がある。すなわち、炭素含有構成成分全体をプロセスガスストリーム106中へ分離することは、有益でない場合がある。そのような場合、特定の炭素含有構成成分(または、特定の炭素含有構成成分の一部分)は、放出ガス108とともに排気されるか、または別の動作で処理されてもよい。
【0031】
プロセスガスストリーム106および還元ガス110は、触媒変換器112へ入る。還元ガス110は、プロセスガスストリーム106の炭素含有構成成分の触媒変換プロセスを促進するための追加の種を含んでもよい。還元ガス110は、例えば、水素、メタン、別の炭化水素等を含むことができる。還元ガス110は、存在する場合、触媒変換器112へ入る前に(例えば、混合バルブ内で)、または触媒変換器112内でプロセスガスストリーム106と混合されることができる。
【0032】
触媒変換器112は、典型的には、触媒変換器から固体炭素生成物114を取り出すための手段と反応ガスを触媒変換器112内部で加熱および循環させるための好適な付属物とを伴う、プロセスガスストリーム106中の酸化炭素還元ガスの少なくとも一部分を固体炭素生成物および水に変換するのに好適な少なくとも1つの反応器から成るシステムである。触媒変換器112の反応器部分は、グラファイト(例えば、熱分解グラファイト)、グラフェン、カーボンブラック、煤、繊維状炭素、バックミンスターフラーレン、単層CNT、多層CNT、カーボンプレートレット、またはナノダイヤモンド等の固体炭素生成物への炭素含有構成成分(すなわち、ガス)の変換に好ましい条件を提供するように構成される、任意の反応器であってよい。触媒変換器112は、所望の固体炭素生成物の形成または収集を促進する任意の反応器設計または反応器設計の組み合わせの1つ以上の反応器を含むことができる。例えば、触媒変換器112は、流動床反応器、流体壁(fluid−wall)反応器、充填床反応器、エアロゾル反応器等を含むことができる。
【0033】
いくつかの実施形態において、触媒変換器112は、1つ以上のエアロゾル反応器を含むことができ、該反応器中では、触媒は特定のサイズ分布のために予め形成されて選択され、液体またはキャリアガス溶液中へ混合され、次いで、(例えば、エレクトロスプレーを介して)反応器中へ噴霧される。固体炭素粒子は、触媒上に形成されてもよく、粒子は、触媒変換器112または関連する配管内に沈降または堆積し得る。ガス流は、生成物を触媒変換器112の外へ送達することができる。別の実施形態において、触媒変換器112は、1つ以上の流動床反応器を含み、触媒粒子または触媒被覆粒子がその中へ導入され、該反応器中では、固体炭素が該粒子の表面で成長する。固体炭素は、触媒変換器112の反応器部分中でエルトリエーションされ、反応ガス中に同伴されて触媒変換器112の反応器部分の外へ運ばれてもよく、または表面に固体炭素が付着した触媒粒子が採取され、固体炭素が表面から取られてもよく、および触媒粒子は任意で、触媒変換器112の反応器部分へ戻されてもよい。
【0034】
触媒変換器112は、1つ以上のバッチ反応器を含むことができ、該反応器中では、触媒は、固定された固体表面であるか、または固定された固体表面上に載置される(例えば、不活性基材上に堆積された触媒ナノ粒子)。そのような実施形態では、固体炭素は、触媒上に形成され、触媒および固体炭素生成物114は、触媒変換器112から定期的に取り出されることができる。あるいは、触媒変換器112は、連続した反応器を含むことができ、ここでは、固体炭素が形成されながら固体炭素生成物114が触媒から取られる。いくつかの実施形態において、固体触媒または固体基材上に載置された触媒は、流れているガスストリーム中を通過し、結果として生じる固体炭素生成物114が採取され、固体表面が触媒変換器112へ再生または再導入される。固体触媒は、触媒材料(例えば、クロム、モリブデン、コバルト、鉄、もしくはニッケルを含有する合金もしくは超合金の固体片、または金属の混合物)、または触媒材料が載置される不活性基材であることができる。
【0035】
一実施形態において、触媒変換器112は、触媒を保持する一方で、固体炭素生成物114をガス流中に同伴させ、所望のサイズに到達した時点で反応ゾーンからロフトされることを可能にするように設計される流動床反応器を含んでもよい。反応器の形状およびガスの流速は、エルトリエートの滞留時間および対応する固体炭素生成物114のサイズ(例えば、CNTの長さ)を制御することができる。
【0036】
触媒変換器112の反応条件(例えば、時間、温度、圧力、反応物質の分圧、水蒸気の分圧、触媒特性等)は、選択されたタイプ、モルフォロジ、純度、均一性等の固体炭素を生成するように最適化することができる。例えば、条件は、CNTの形成を促進するように選択することができる。
【0037】
本明細書に開示される方法は、種々の分離技術を含むことができる。酸化炭素および還元ガスを触媒変換器112中で反応させた後、結果として生じる固体炭素生成物114は、触媒変換器112から取り出されて、長期間の隔離のために貯蔵されてもよいし、商業用製品として販売されてもよいし、別の生成物の生成等に使用されてもよい。残留ガスストリーム116は、固体炭素生成物114の反応および分離後に触媒変換器112中に残留するガスを含む。残留ガスストリーム116から固体炭素生成物114を分離するための技術は、触媒変換器112に使用される反応器のタイプに依存し得る。一実施形態では、固体炭素生成物114を分離および収集するために、サイクロン分離器が使用される。別の実施形態では、固体炭素生成物114を分離および収集するために、ベンチュリースクラバが使用される。さらに別の実施形態では、固体炭素生成物114を分離および収集するために、バッグハウスが使用される。固体炭素生成物114は、エルトリエーション、遠心分離、電気集塵、濾過、洗浄集塵(scrubbing)、または任意の他の方法によって、残留ガスストリーム116から収集および分離されることができる。
【0038】
残留ガスストリーム116は、酸化炭素濃縮器104へ再循環されて戻ることができ、またはベントガスストリーム117の一部もしくはベントガスストリーム117全体として放出されることができる。残留ガスストリーム116は、酸化炭素濃縮器104へ入る前に、または酸化炭素濃縮器104内で、供給源ガスストリーム102と混合されることができる。いくつかの実施形態において、残留ガスストリーム116またはその一部分は、プロセスガスストリーム106等の別のガスと混合されることができる。
【0039】
典型的には、ガスは、触媒変換器112内部のみで再循環されない(ただし、いくらかの循環が触媒変換器112内部で生じることがある)。代わりに、残留ガスストリーム116は、酸化炭素濃縮器104へ再循環される。残留ガスストリーム116は次に、供給源ガスストリーム102とともに再処理される。残留ガスストリーム116中の酸化炭素は、再濃縮され、蓄積された不活性ガスまたは非反応性成分は、放出ガス108によって排除されることができる。あるいは、残留ガスストリーム116は、大気、地質学的貯蔵所、または別のプロセスへ放出されてもよい。
【0040】
図3は、炭素を捕捉および隔離するためのシステム200ならびにシステム200を用いて実施することができる方法の別の実施形態の簡略プロセスフロー図を示す。システム200は、水がシステム200内で中間ガスストリーム202から除去されるという点で、
図2のシステム100と異なる。上に説明される通り、供給源ガスストリーム102は、酸化炭素濃縮器104に入り、その中では、供給源ガスストリーム102中の炭素含有構成成分が濃縮される。水ストリーム115は、酸化炭素濃縮器104から除去されることができ、放出されるかまたは還元ガス110の少なくともいくらかを提供するように電解されることができる。結果として生じるプロセスガスストリーム106(濃縮された炭素含有構成成分を含有する)は、触媒変換器112中で、または触媒変換器112へ入る前に、還元ガス110(例えば、水素、メタン、別の炭化水素等)と混合される。触媒変換器112内に形成される固体炭素生成物114は、上に説明される通りに取り出される。
【0041】
触媒変換器112を出る中間ガスストリーム202は、酸化炭素濃縮器104へと再循環されて戻る前に、水除去デバイス204を通過する。水除去デバイス204は、乾燥した中間ガスストリーム206から水ストリーム208を分離する。水除去デバイス204は、例えば、凝縮器であってもよい。乾燥した中間ガスストリーム206は、20℃未満、0℃未満、またはさらには−20℃未満の露点を有することができる。水ストリーム208は、触媒変換器112中で形成される水蒸気および/または供給源ガスストリーム102中に存在する水を含むことができる(例えば、蒸気、水滴として、エアロゾル粒子上の被覆物として、水和された固体に結合されて等)。水ストリーム208は、収集されるか、貯蔵されるか、または他の動作に使用されることができる。
【0042】
乾燥した中間ガスストリーム206は、酸化炭素濃縮器104の前に、または酸化炭素濃縮器104の中で、供給源ガスストリーム102と混合されることができる。他の実施形態では、乾燥した中間ガスストリーム206は、プロセスガスストリーム106と混合されることができる。低減された濃度の酸化炭素を含有する放出ガス108は、酸化炭素濃縮器104から放出されることができる。
【0043】
図2に示されるシステム100は、酸化炭素濃縮器104から分離した水除去デバイスを含まない。すなわち、残留ガスストリーム116は、酸化炭素濃縮器104へ再循環され、水の除去は、酸化炭素濃縮器により直接生じる。水の一部は、放出ガス108中で除去されることもできる。
図3に示されるシステム200は、結果として生じる水208が有益である状況において、例えば、油および坑井ガスの処理において、ならびに十分な真水源を欠いている環境において、
図2に示されるシステム100より好ましい場合がある。システム200はまた、触媒変換器112および/または酸化炭素濃縮器104の動作への水の干渉を制限または防止することができる。いくつかの実施形態において、水除去デバイス204は、酸化炭素濃縮器104の水除去能力を上回るさらなる水除去能力を提供することができる。システム100は、水を回収することが無益である、または酸化炭素濃縮器104が十分な水除去設備を含む状況において、好ましい場合がある。
【0044】
図4は、炭素を捕捉および隔離するためのシステム300ならびにシステム300を用いて実施することができる方法の別の実施形態の簡略プロセスフロー図を示す。システム300は、段階間での水除去を伴う2つの触媒変換段階を含む。
図2および3に関して上に説明される通り、供給源ガスストリーム102は、酸化炭素濃縮器104に入り、そこで供給源ガスストリーム中の炭素含有構成成分が濃縮される。酸化炭素濃縮器104は、典型的には、水を分離してプロセスガスストリーム106中の水蒸気圧を制御するための手段を含む。水ストリーム115は、酸化炭素濃縮器104から除去されて、放出されるかまたは還元ガス110の少なくともいくらかを提供するように電解されることができる。結果として生じるプロセスガスストリーム106(濃縮された炭素含有構成成分を含有する)は、触媒変換器112内で、または触媒変換器112へ入る前に、任意の還元ガス110(例えば、水素、メタン、別の炭化水素等)と混合される。触媒変換器112内での反応から生じる固体炭素生成物114は、上に説明される通り取り出される。
【0045】
触媒変換器112を出る中間ガスストリーム202は、乾燥した中間ガスストリーム206から水208を分離する、水除去デバイス204へ入る。乾燥した中間ガスストリーム206は、濃縮された酸化炭素および還元ガスを含有することができ、第2の触媒変換器302へと流れる。第2の触媒変換器302は、酸化炭素を第2の固体炭素生成物306および第2の中間ガスストリーム304に変換する。第2の中間ガスストリーム304は、水、未反応の炭素含有構成成分の一部分、および/または他のガスを含むことができる。任意で、水が、上に説明されるように第2の中間ガスストリーム304から凝縮されてもよい。第2の中間ガスストリーム304は、第2の触媒変換器302から酸化炭素濃縮器104へと再循環されて戻り、そこで第2の中間ガスストリーム304は供給源ガスストリーム102と混合される。いくつかの実施形態では、第2の中間ガスストリーム304は、適切な中間ガスストリーム(例えば、プロセスガスストリーム106、中間ガスストリーム202等)と混合される。放出ガス108は、酸化炭素濃縮器104およびシステム300から吐出されることができる。システム300では、放出ガス108は、
図2のシステム100におけるものより遥かに低い濃度または質量の酸化炭素を含有することができる。
【0046】
固体炭素生成物114および第2の固体炭素生成物306は、それぞれ、触媒変換器112および第2の触媒変換器302から取り出されることができる。固体炭素生成物114および第2の固体炭素生成物306のいずれかまたは双方は、商業的に販売可能な製品として使用されることができ、または長期間の隔離のために適切な方法で貯蔵されることができる。固体炭素生成物114および第2の固体炭素生成物306は、同一のまたは異なるモルフォロジ、粒径等を有する物質を含むことができる。固体炭素生成物114および第2の固体炭素生成物306はその後、販売可能な製品を形成するために混合されることができる。
【0047】
図4に例証されるシステム300は、炭素含有構成成分が複数の触媒変換段階の有益な使用のために供給源ガスストリーム102中で十分に濃縮される状況において、有益な場合がある。いくつかの実施形態では、さらなる変換を促進するために、追加の触媒変換段階を使用することができる。触媒変換段階の最適な数は、触媒変換器112、302の効率、入力流速、生成物のタイプおよび分量、生成物の数、エネルギーコスト、設備コスト、維持コスト、環境規制、生成物に期待される需要等を含む、多数の要因に依存し得る。
【0048】
図4に例証されるシステム300において、水除去デバイス204は、第2の触媒変換器302へ入る乾燥した中間ガスストリーム206の水蒸気の所望の分圧を達成するように制御されることができる。水蒸気分圧の制御は、固体炭素生成物114または第2の固体炭素生成物306の均一な品質、および炭素形成のキネティクスを促進するために重要であることがある。別の水除去デバイスが、第2の触媒変換器302の後、または酸化炭素濃縮器104の後に追加されてもよい。
【0049】
システム100、200、300は、システム100、200、300内への、システム100、200、300内部の、およびシステム100、200、300外への材料の移動を可能にするためのポンプ、配管、バルブ、取り付け具等を含むことができる。いくつかの実施形態では、複数のユニット動作が、平行してまたは連続して行われ得る。例えば、プロセスガスストリーム106は、分割され、2つの分離した触媒変換器112内へ通すことができる。
【0050】
いくつかの実施形態において、供給源ガスストリーム102または還元ガス110は、システム100、200、300へ入る前に加圧されることができる。供給源ガスストリーム102または還元ガス110の圧力は、さらなる圧縮または他のエネルギー投入を伴わないシステム100、200、300を通じた材料の移動を引き起こすのに十分であることができる。いくつかの実施形態では、供給源ガスストリーム102または還元ガス110は、システム100、200、300へ入る前に、精製、乾燥、または別の方法で処理されることができる。
【0051】
複数の触媒変換器112、302を用いる方法では、段階間水除去によって後続段階で形成される固体炭素の反応速度およびタイプを調節することができる。触媒変換器112へ入るプロセスガスストリーム106の圧力が十分に高い場合、ガスは、さらなる機械エネルギーの追加を伴わずに、触媒変換器112、302、および水除去デバイス204を通過することができる。そのような圧力は、酸化炭素濃縮器104の放出時に提供され得る。例えば、そのような圧力は、供給源ガスストリーム102の圧力によって提供され得る。他の実施形態では、プロセスガスストリーム106または乾燥した中間ガスストリーム206は、システム100、200、300内部の1つ以上の圧縮機によって加圧されることができる。いくつかの実施形態では、段階間水除去は、機械冷凍(例えば、空気冷却器または水冷却器)の使用を伴わずに行われ得る。
【0052】
図に示される、および本明細書に説明される動作のいずれにおいても、制御器は、1つ以上のセンサから受信される信号によって指示される通りに選択される条件を維持するように構成されることができる。例えば、システム100、200、300は、材料取扱い、ガス組成制御、混合、温度制御、および/または圧力制御、流速制御等のための適切な手段を含むことができる。
【0053】
本明細書に説明される方法およびシステムは、種々の用途において有益であることができる。例えば、システム100、200、300は、他の炭素の捕捉および隔離システムよりも低い資本コストまたは稼働コストを有することができる。供給源ガスストリーム102または還元ガス110が、システム100、200、300全体を移動するのに十分な高い圧力でシステム100、200、300に入る場合、内部ポンプ、機械冷凍、または他の動作を省略することができる。したがって、そのような動作の経費、維持、およびエネルギーコストを回避することができる。また、水除去デバイス204の使用は、水を含有する供給源ガスストリーム102の処理を可能にすることができる。
【0054】
さらに、システム100、200、300は、1種以上の有益な生成物を生成することができる。例えば、固体炭素生成物114および第2の固体炭素生成物306は、種々の商業的用途に使用することができる。いくつかの実施形態では、水208は、関連する産業的用途に使用される、精製等されることができる有益な生成物であることができる。いくつかの実施形態では、水208は、水素および酸素を形成するように電解または熱分解することができ、水素は次に還元ガス110の少なくとも一部分を形成することができる。
【0055】
より高濃度の酸化炭素を有するプロセスガスストリーム106を提供するための酸化炭素濃縮器104の使用は、触媒変換器112または第2の触媒変換器302の必要とされるサイズを低減することによって、触媒変換器112または第2の触媒変換器302の資本コストまたは稼働コストを低減することができる。より低い資本コストおよび稼働コストは、炭素の捕捉および酸化炭素の隔離の経済的妥当性を増強することができる。
【0056】
いくつかの実施形態において、濃縮された酸化炭素ストリーム(例えば、プロセスガスストリーム106または乾燥した中間ガスストリーム206の一部分)は、酸化炭素濃縮デバイス(例えば、酸化炭素濃縮器104)から別のプロセスへまたは貯蔵へと送ることができる。酸化炭素の固体炭素生成物への変換は、炭素の捕捉および隔離のための手段を提供し、それによって大気へ放出される酸化炭素の量を潜在的に減少させる。例えば、二酸化炭素は、地形的に隔離される(geosequestered)、または地下構造内に貯蔵されることができる。そのような変換は、廃棄コスト(例えば、規制料、精製等)の回避に加えて、販売または他の生成物における使用に有益な生成物を提供することができる。供給源ガスストリーム102の全部かまたは一部かが固体炭素に変換されるかどうかは、個々の場合に応じて成される経済的判断である。本開示の方法は、状況が求め得るように、供給源ガスストリーム102中の酸化炭素の一部、全部、または本質的に全部を変換するために使用することができる。
【0057】
触媒変換器112、302は、
図4に示され説明される通り、単一の触媒変換器112より高い効率を有する、固体炭素生成物114および第2の固体炭素生成物306を生成するための手段を提供することができる。さらに、複数の触媒変換器112、302の使用は、複数のタイプまたはグレードの固体炭素生成物を同時に形成することを可能にすることができる。各触媒変換器112、302の反応条件は、市場の状況の変化により変えてもよく、高需要生成物の生成を可能にする。そのような柔軟性は、システム300の稼働の経済的可能性を高めることができる。複数の触媒変換器の使用は、3つ以上へと容易に拡張できることに留意されたい。
【0058】
触媒変換器112、302内で生じる反応は、
図1に示される状態図の内部領域内および右縁部上(すなわち、Boudouard反応ゾーンおよびボッシュ反応ゾーン)の反応を含むことができ、ここでは固体炭素、酸素、ならびに炭素、水素、および酸素の化合物の間で平衡が確立され得る。
図1の中央領域は、CNTおよび他の形態の固体炭素の形成に好都合である複数のポイントを有する。生成される固体炭素のタイプは、触媒、反応ガス、および反応条件の選択および処理を通じて選択的に制御することができる。したがって、これらの方法は、CNT等の有益な固体炭素生成物の生成、および炭素含有ガスの処理のための有益なルートを提供することができる。
【0059】
触媒変換器112、302は、約450℃〜約900℃の温度で動作することができる。いくつかの実施形態では、触媒変換器112、302は、約650℃超、例えば約680℃超で動作することができる。触媒変換器112、302内の触媒の組成および結晶粒径は、結果として生じる固体炭素生成物のモルフォロジに影響し得る。触媒変換器112、302の温度および圧力、滞留時間、ならびに触媒の結晶粒径を含む反応条件は、選択される特徴を有する固体炭素生成物を得るように制御することができる。
【0060】
固体炭素は、本方法の酸化炭素還元プロセスを通じて多数の異なるモルフォロジで生成することができる。生成することができる固体炭素モルフォロジのいくつかとしては、グラファイト(例えば、熱分解グラファイト)、グラフェン、カーボンブラック、繊維状炭素、バックミンスターフラーレン、単層CNT、多層CNT、カーボンプレートレット、およびナノダイヤモンドが挙げられる。
【0061】
固体炭素の所望の種の形成に好ましい反応キネティクスは、好適な触媒の使用を通して確立することができる。好適な触媒としては、5族〜10族(例えば、ニッケル、モリブデン、クロム、コバルト、タングステン、マンガン、ルテニウム、白金、イリジウム等)、アクチニド、ランタニド等の周期表の2族〜15族から選択される金属、それらの合金、およびそれらの組み合わせが挙げられる。例えば、触媒としては、鉄、ニッケル、コバルト、モリブデン、タングステン、クロム、およびそれらの合金が挙げられる。周期表は、種々の族の付番方式を有し得ることに留意されたい。本明細書で使用されるとき、2族は、Beを含む族であり、3族は、Scを含む族であり、4族は、Tiを含む族であり、5族は、Vを含む族であり、6族は、Crを含む族であり、7族は、Mnを含む族であり、8族は、Feを含む族であり、9族は、Coを含む族であり、10族は、Niを含む族であり、11族は、Cuを含む族であり、12族は、Znを含む族であり、13族は、Bを含む族であり、14族は、Cを含む族であり、かつ15族は、Nを含む族である。いくつかの実施形態では、市販の金属が、特別な調製を伴わずに使用される。触媒は、より低温での動作を促進することができる。CNTを形成する反応では、より高い反応速度はより小さい直径のCNTに対応し、より低い反応速度は、より大きい直径のCNTに対応し得る。
【0062】
触媒は、ナノ粒子の形態、または固体材料中でドメインもしくは結晶粒および結晶粒界の形態、例えば、鋼または不活性基材の表面上に堆積した触媒であってもよい。触媒は、固体炭素生成物の所望の直径(例えば、CNT直径)の特有の寸法に関連する結晶粒径を有するように選択することができる。特に好適な触媒活性金属の例は、Zn、Fe、Ni、W、V、Cr、Sn、Cu、Co、Mn、およびMoである。触媒粉末は、エアロゾル溶液を注入することによって触媒変換器112、302の中またはその近くに形成されることができ、その結果、キャリア溶媒の蒸発時に選択された粒径分布をもたらす。あるいは、粉末状の触媒材料は、キャリアガス中に同伴され、触媒変換器112、302に送達されることができる。触媒および反応条件を選択することによって、プロセスは、固体炭素生成物の選択されたモルフォロジを生成するように調整され得る。触媒は、米国特許出願公開第2012/0034150 A1号に説明される通りに形成されることができる。いくつかの実施形態において、触媒は、反応に関わらない不活性酸化物等の基材または担体の上に形成することができる。しかしながら、基材は必須ではなく、他の実施形態では、触媒材料は、バルク金属、または別の材料に結合していない金属の粒子(例えば、流動床反応器内で使用することができるような、遊離した粒子、シェービング、またはショット)等の非担持材料である。
【0063】
304ステンレス鋼は、広範囲の温度、圧力、およびガス組成下でCNTの形成を触媒すると考えられる。しかしながら、304ステンレス鋼上でのCNTの形成速度は比較的低いように見え、したがって304ステンレス鋼は、通常動作においてそれらの表面上への堆積が最小限である、プロセス設備のための構築材料として有効に使用することができる。316Lステンレス鋼は、対照的に、304ステンレス鋼よりも著しく高い速度で固体炭素の形成を触媒すると考えられるが、種々のモルフォロジの炭素を形成する可能性もある。したがって、316Lステンレス鋼は、高反応速度を達成するための触媒として使用することができるが、特定の反応条件が、生成物モルフォロジを制御するために維持されてもよい。触媒は、例えば、約22重量%以下の量で、Crを含むように選択することができる。例えば、316Lステンレス鋼は、約16重量%〜約18.5重量%のCrを含有する。触媒はまた、例えば、約8重量%以上の量で、Niを含むように選択することもできる。例えば、316Lステンレス鋼は、約10重量%〜約14重量%のNiを含有する。これらのタイプの鋼の触媒は、従来のプロセスにおいて触媒として使用されるアルファ相の鉄とは対照的に、オーステナイト相の鉄を有する。316Lステンレス鋼に観察される良好な結果を考慮すると、Niおよび/またはCrは、Feと相乗効果を有する可能性がある。
【0064】
触媒表面の酸化およびそれに続く還元は、結晶粒構造および結晶粒界を変化させる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、酸化は、酸化した領域内の金属触媒の表面を変化させると考えられる。その後の還元は、触媒表面のさらなる変化をもたらし得る。したがって、触媒の結晶粒径および結晶粒界は、触媒表面を酸化および還元することによって、ならびに還元ガスおよび酸化ガスへの触媒表面の曝露時間を制御することによって、制御することができる。酸化および/または還元温度は、約500℃〜約1200℃、約600℃〜約1000℃、または約700℃〜約900℃の範囲であり得る。結果として生じる結晶粒径は、約0.1μm〜約500μm、約0.2μm〜約100μm、約0.5μm〜約10μm、または約1.0μm〜約2.0μmの範囲であり得る。いくつかの実施形態では、触媒は、固体炭素を形成する反応の前または間に還元される、酸化金属(例えば、錆びた鋼)であることができる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、酸化物の除去は、触媒材料の表面に空隙または凹凸を残し、触媒材料の総表面積を増加させると考えられる。
【0065】
触媒変換器112、302の最適温度は、触媒の組成または触媒の粒径に依存し得る。小さい粒径を有する触媒材料は、より大きい粒径を有する同一の触媒材料より低い温度で最適反応温度を有する傾向がある。例えば、ボッシュ反応は、粒径および組成ならびに所望の固体炭素生成物に応じて、鉄系触媒に関して約400℃〜950℃の範囲の温度で生じ得る。一般に、グラファイトおよびアモルファス固体炭素は、より低い温度で形成し、CNTは、より高い温度で形成する。CNTは、約550℃を超える温度で形成することができる。一般に、反応は、ほぼ真空から4.0MPa(580psi)以上の圧力の、広範囲の圧力で進行する。例えば、CNTは、約0.028MPa(4.0psi)〜6.2MPa(900psi)超の範囲の圧力で形成することができる。いくつかの実施形態において、CNTは、約0.34MPa(50psi)〜約0.41MPa(60psi)の圧力で、または約1.3MPa(200psi)もしくは約4.1MPa(600psi)の圧力で形成することができる。典型的には、炭素の堆積は拡散律速であるため、圧力の増大は反応速度を増大させる。
【0066】
触媒変換器112、302に(例えば、還元ガス110の一部として)添加される少量の物質(例えば、硫黄)は、触媒上の炭素生成物の成長を加速する触媒促進剤であることができる。そのような促進剤は、広範な化合物の状態で存在することができる。そのような化合物は、化合物の分解温度が触媒変換器112、302の温度未満であるように選択することができる。例えば、硫黄が鉄系触媒のための促進剤として選択された場合、硫黄は、チオフェンガスとして、またはキャリアガス中のチオフェンの液滴として、触媒変換器112中へ導入することができる。硫黄含有促進剤の例としては、チオフェン、硫化水素、複素環硫化物、および無機硫化物が挙げられる。他の促進剤としては、鉛化合物およびビスマスが挙げられる。
【0067】
本明細書に示され、説明されるシステムの構成要素およびゾーンは、種々の温度で動作する。例えば、触媒変換器112、302のうちの一方または双方は、少なくとも450℃の温度、例えば、少なくとも650℃の温度、または約680℃〜約700℃の温度で動作することができる。酸化炭素濃縮器104または水除去デバイス204は、触媒変換器112、302より低温で動作することができる。例えば、酸化炭素濃縮器104または水除去デバイス204は、約100℃未満、約80℃未満、またはさらには約50℃未満の温度で動作することができる。いくつかの実施形態において、熱は、ある材料から回収され、別の材料へ移動させることができる。代表的な熱回収システムは、1978年11月21日に刊行された「System for Treating and Recovering Energy from Exhaust Gases」と題された米国特許第4,126,000号に説明される。
【実施例】
【0068】
下記の実施例1〜7のために、炭素鋼クーポンを、約1.3mmの厚さを有する軟鋼のシートから切断した。各クーポンは、幅約13mmおよび長さ約18mm〜22mmであった。クーポンは、長さ約8.5cmおよび幅1.5cmの石英ボート中に離して配置し、ボートは、内径約2.54cmおよび長さ約1.2mの石英管中に端と端を接して挿入した。次いで、石英管を、管状炉中に配置した。管状炉を動作条件まで加熱して、石英管を水素ガスでパージし、クーポンの表面を還元した。管状炉が動作条件に到達した後、各クーポンの上面および下面の双方が反応ガスに露出するように、反応ガスを石英管中へ導入した(すなわち、石英管中に連続的に流した)。温度、圧力、およびガス組成を、各クーポンに関して測定または決定した。試験後に、クーポンを、石英管から取り出した。重量の変化および炭素の形成に注目した。
【0069】
実施例1
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約25%H
2、25%CO、25%CO
2、および25%CH
4を含有する反応ガスを、約4.0MPaで石英管に導入した。ガスは、約4時間にわたって、2000sccm(立方センチメートル毎分)でクーポン上に流した。下記の表1に示される通り、約650℃〜約870℃の間の温度で、12個のクーポンのうち8個の上に固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表1に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中に、約41.2グラムの水をガスから収集した。
【0070】
(表1)25%H
2、25%CO、25%CO
2、および25%CH
4からの固体炭素形成
【0071】
実施例2
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約50%COおよび50%CO
2を含有する反応ガスを、約4.0MPaで石英管に導入した。ガスを、2000sccmで約3時間、クーポン上に流した。下記の表2に示される通り、約590℃〜約900℃の間の温度で、12個のクーポンのうち10個の上に固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表2に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中、ガスから水は収集されなかった。
【0072】
(表2)50%COおよび50%CO
2からの固体炭素形成
【0073】
実施例3
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約90%COおよび10%CO
2を含有する反応ガスを、約4.0MPaで石英管に導入した。ガスを、2000sccmで約2時間、クーポン上に流した。下記の表3に示される通り、約590℃〜約900℃の間の温度で、12個のクーポンのうち10個の上に固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表3に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中、ガスから水は収集されなかった。
【0074】
(表3)90%COおよび10%CO
2からの固体炭素形成
【0075】
実施例4
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約90%COおよび10%CO
2を含有する反応ガスを、約1.5MPaで石英管に導入した。ガスを、2000sccmで約3時間、クーポン上に流した。下記の表4に示される通り、約536℃〜約890℃の間の温度で、12個のクーポンのうち10個の上に固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表4に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中、ガスから水は収集されなかった。
【0076】
(表4)90%COおよび10%CO
2からの固体炭素形成
【0077】
実施例5
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約13.0%H
2、15.2%CO、10.9%CO
2、57.8%CH
4、および3.0%Arを含有する反応ガスを、約412kPaで石英管に導入した。ガスを、2000sccmで約6時間、クーポン上に流した。下記の表5に示される通り、約464℃〜約700℃の間の温度で、12個のクーポンのうち7個の上に固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表5に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中に、約7.95グラムの水をガスから収集した。
【0078】
(表5)13.0%H
2、15.2%CO、10.9%CO
2、57.8%CH
4、および3.0%Arからの固体炭素形成
【0079】
実施例6
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約13.0%H
2、15.2%CO、13.0%CO
2、55.8%CH
4、および2.93%Arを含有する反応ガスを、約412kPaで石英管に導入した。ガスを、2000sccmで約6時間、クーポン上に流した。下記の表6に示される通り、約536℃〜約794℃の間の温度で、12個のクーポンのうち7個の上に、固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表6に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中に、約7.38グラムの水をガスから収集した。
【0080】
(表6)13.0%H
2、15.2%CO、13.0%CO
2、55.8%CH
4、および2.93%Arからの固体炭素形成
【0081】
実施例7
12個の鋼クーポンを、上に説明される通り石英管内に配置した。約15.2%H
2、13.0%CO、8.7%CO
2、59.9%CH
4、および3.15%Arを含有する反応ガスを、約412kPaで石英管に導入した。ガスを、2000sccmで約6時間、クーポン上に流した。下記の表7に示される通り、約523℃〜約789℃の間の温度で、12個のクーポンのうち10個の上に固体炭素が形成した。試験後、固体炭素をクーポンのいくつかから物理的に取り、表7に示される通り、BET比表面積に関して試験した。試験中に、約9.59グラムの水をガスから収集した。
【0082】
(表7)15.2%H
2、13.0%CO、8.7%CO
2、59.9%CH
4、および3.15%Arからの固体炭素形成
【0083】
予想実施例8
メタンガスを、中にスチールウールを含有する約680℃に維持したセラミック材料で裏打ちした第1の管状炉の中で、二酸化炭素ガスと1.2:1の比で混合する。メタンガスは、スチールウールの存在下で二酸化炭素ガスと反応して、単層カーボンナノチューブと、二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、水、および水素の残留ガス混合物とを形成する。残留ガス混合物を、約50℃で動作する凝縮器へ入れて、残留ガス混合物から液体の水を除去する。乾燥させた残留ガス混合物を、中にスチールウールを含有する約680℃に維持したセラミック材料で裏打ちした第2の管状炉の中へ入れる。乾燥させた反応ガス混合物中の二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、および水素は、スチールウールの存在下で反応して、単層カーボンナノチューブと、水、メタン、および水素のテールガス混合物とを形成する。カーボンナノチューブが、スチールウールの表面上に集まる。侵入するテールガス混合物を、予備濃縮器へ再循環させる。
【0084】
プロセスが一定時間進行した後、ガスの流れを停止し、炉および凝縮器を室温に冷却し、システムを不活性ガスでパージする。スチールウールを第2の管状炉から取り出し、カーボンナノチューブを、スチールウールから物理的に取る。カーボンナノチューブ上の残りの金属を、酸で洗浄することによって除去する。
【0085】
予想実施例9
エタンガスを、中にスチールウールを含有する約680℃に維持したセラミック材料で裏打ちした第1の管状炉の中で、二酸化炭素ガスと1:1の比で混合する。エタンガスは、スチールウールの存在下で二酸化炭素ガスと反応して、単層カーボンナノチューブと、二酸化炭素、一酸化炭素、エタン、メタン、水、および水素の残留ガス混合物とを形成する。残留ガス混合物を、約50℃で動作する凝縮器へ入れて、残留ガス混合物から液体の水を除去する。乾燥させた残留ガス混合物を、中にスチールウールを含有する約680℃に維持したセラミック材料で裏打ちした第2の管状炉の中へ入れる。乾燥させた反応ガス混合物中の二酸化炭素、一酸化炭素、エタン、メタン、および水素は、スチールウールの存在下で反応して、単層カーボンナノチューブと、水、エタン、メタン、および水素のテールガス混合物とを形成する。カーボンナノチューブが、スチールウールの表面上に集まる。侵入するテールガス混合物を、予備濃縮器へ再循環させる。
【0086】
プロセスが一定時間進行した後、ガスの流れを停止し、炉および凝縮器を室温に冷却し、システムを不活性ガスでパージする。スチールウールを第2の管状炉から取り出し、カーボンナノチューブを、スチールウールから物理的に取る。カーボンナノチューブ上の残りの金属を、酸で洗浄することによって除去する。
【0087】
予想実施例10
水素ガスを、中にスチールウールを含有する約680℃に維持したセラミック材料で裏打ちした第1の管状炉の中で、二酸化炭素ガスと約2.1:1の比で混合する。水素ガスは、スチールウールの存在下で二酸化炭素ガスと反応して、単層カーボンナノチューブと、二酸化炭素、一酸化炭素、水、および水素の残留ガス混合物とを形成する。残留ガス混合物を、約50℃で動作する凝縮器へ入れて、残留ガス混合物から液体の水を除去する。乾燥させた残留ガス混合物を、中にスチールウールを含有する約680℃に維持したセラミック材料で裏打ちした第2の管状炉の中へ入れる。乾燥させた反応ガス混合物中の二酸化炭素、一酸化炭素、および水素は、スチールウールの存在下で反応して、単層カーボンナノチューブと、水および水素のテールガス混合物とを形成する。カーボンナノチューブが、スチールウールの表面上に集まる。侵入するテールガス混合物を、予備濃縮器へ再循環させる。
【0088】
プロセスが一定時間進行した後、ガスの流れを停止し、炉および凝縮器を室温に冷却し、システムを不活性ガスでパージする。スチールウールを第2の管状炉から取り出し、カーボンナノチューブを、スチールウールから物理的に取る。カーボンナノチューブ上の残りの金属を、酸で洗浄することによって除去する。
【0089】
本開示は、従来の方法に比べていくつかの利点を有する。本方法の実施形態を説明してきたが、種々の修正および変更が、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、当業者によってなされることができる。