【文献】
石垣昭,溶解用パルプの性能向上を目的とする界面活性劑の応用(第1報),紙パ技協誌,1958年 7月,第12巻第88号,457−461頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記界面活性剤で処理されたパルプが、界面活性剤を含まない同じパルプと比べ、比吸収速度の増加が30%未満であり、界面活性剤を含まない同じパルプよりも少なくとも10%濾過性が向上している、請求項28に記載の繊維。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(I.方法)
本開示は、セルロース繊維を製造するための新規な方法を提供する。この方法は、セルロースに対し、クラフトパルプ作製工程と、酸素脱リグニン工程と、漂白シーケンスとを行うことを含み、特定の実施形態では、少なくとも1つの触媒酸化段階の後、少なくとも1つの漂白段階および界面活性剤での処置を含んでいてもよい。一実施形態では、繊維に対し、触媒酸化を行わずに、開示する蒸解プロセス、脱リグニンプロセス、および漂白プロセスを行って繊維が得られ、この繊維を界面活性剤で処理すると、以前に公知であるものよりもより大きい率で簡単に、高価な綿繊維または亜硫酸パルプと置き換えられ得る。別の実施形態では、繊維に対し、触媒酸化を行いつつ、開示する蒸解プロセス、脱リグニンプロセス、および漂白プロセスを行って繊維が得られ、この繊維を界面活性剤で処理すると、以前に公知であるものよりもより大きい率で簡単に、高価な綿繊維または亜硫酸パルプと多量に置き換えられ得るが、さらに、熱、光にさらすか、および/または化学薬品による処理を行うと繊維が黄変する傾向を低減しつつ、高い明度および低い粘度を示す。
【0021】
本明細書に記載される方法で使用されるセルロース繊維は、軟材繊維、硬材繊維およびこれらの混合物から誘導されてもよい。ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、任意の公知の供給源由来の軟材(以下に限定されないが、マツ、トウヒ、およびモミかを含む)から誘導される。ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、硬材(例えば、ユーカリ)から誘導される。ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、軟材と硬材の混合物から誘導される。さらに別の実施形態では、改質されたセルロース繊維は、クラフト法のすべてまたは一部を前もって行ったセルロース繊維(すなわち、クラフト繊維)から誘導される。
【0022】
本開示において「セルロース繊維」、「クラフト繊維」、「パルプ繊維」または「パルプ」という言及は、異なることが明示的に示されているか、または当業者がこれらの用語が異なるものであると理解するであろう場合を除き、相互に置き換え可能である。本明細書で使用される場合、「改質されたクラフト繊維」、すなわち、本開示にしたがって蒸煮され、漂白され、酸化された繊維を、文脈が認める範囲において、「クラフト繊維」または「パルプ繊維」と相互に置き換え可能に使用され得る。
【0023】
本開示は、セルロース繊維を処理するための新規方法を提供する。ある実施形態では、本開示は、セルロース繊維を提供することと、セルロース繊維を酸化することとを含む、セルロース繊維を改質する方法を提供する。本明細書で使用される場合、「酸化され」、「触媒的に酸化され」、「触媒的な酸化」、「酸化」は、すべて相互に置き換え可能であると理解され、少なくとも1種類の金属触媒(例えば、鉄または銅)と少なくとも1種類の過酸化物(例えば、過酸化水素)を用い、セルロース繊維のヒドロキシル基の少なくとも一部が酸化されるようなセルロース繊維の処理を指す。「鉄または銅」、同様に「鉄(または銅)」という句は、「鉄もしくは銅、またはこれらの組み合わせ」を意味する。ある実施形態では、酸化は、セルロース繊維のカルボン酸含有量とアルデヒド含有量を同時に増加させることを含む。
【0024】
本発明の一方法では、セルロース(好ましくは、サザンパイン)を、Lo−Solids(登録商標)により2容器型の液圧蒸解釜で蒸解して、約17〜約21の範囲のカッパー価まで、蒸煮する。得られたパルプに対し、約8または約8より小さいカッパー価に達するまで、酸素脱リグニンを行う。次いで、セルロースパルプを、最終的な漂白段階の前に少なくとも1つの触媒的な酸化段階を含み得る多段階漂白シーケンスで漂白する。
【0025】
一実施形態では、本方法は、連続的な蒸解釜の中でセルロース繊維を並流下向流で蒸解することを含む。白液投入の有効アルカリ量(「EA」)は、パルプに対して少なくとも約15%、例えば、パルプに対して少なくとも約15.5%、例えば、パルプに対して少なくとも約16%、例えば、パルプに対して少なくとも約16.4%、例えば、パルプに対して少なくとも約17%である。本明細書で使用される場合、「パルプに対する%」は、クラフトパルプの乾燥重量を基準とした量を指す。一実施形態では、白液投入は、分割され、白液の一部が、含浸釜(impregnator)のセルロースに適用され、白液の残りが、蒸解釜のパルプに適用される。一実施形態によれば、白液は、50:50の比率で適用される。別の実施形態では、白液は、90:10〜30:70、例えば、50:50〜70:30、例えば、60:40の範囲で適用される。一実施形態によれば、一連の段階で、白液が、蒸解釜に加えられる。一実施形態によれば、蒸解は、約160℃〜約168℃、例えば、約163℃〜約168℃、例えば、約166℃〜約168℃の間の温度で行われ、目標カッパー価である約17〜約21の間に達するまで、セルロースを処理する。従来技術で使用されるものより通常の有効アルカリ量(「EA」)を高く、温度を高くすると、通常のカッパー価より小さな値を達成すると考えられる。
【0026】
本発明の一実施形態によれば、セルロースが蒸解釜に入るにつれて木材の比率に対して液体を増加させる押し出す流れを増加させつつ、蒸解釜を動かす。この白液の添加は、蒸解釜を油圧平衡に維持するのに役立ち、蒸解釜で連続的な下向流条件を達成しやすくするのに役立つと考えられる。
【0027】
一実施形態では、本方法は、カッパー価が約17〜約21になるまで蒸煮してリグニン含有量をさらに減らし、カッパー価をさらに減らした後に、酸素脱リグニンすることを含む。酸素脱リグニンを当業者に対して公知の任意の方法によって行われ得る。例えば、酸素脱リグニンを、従来の二段階酸素脱リグニンプロセスで行ってもよい。有利には、脱リグニンを、目標カッパー価である約8または約8より小さく、さらに具体的には、約6〜約8になるまで行う。
【0028】
一実施形態では、酸素脱リグニン中に、適用される酸素は、パルプに対して約3%未満、例えば、パルプに対して約2.4%未満、例えば、パルプに対して約2%未満である。一実施形態によれば、酸素脱リグニン中に、新たな苛性化剤をセルロースに加える。新たな苛性化剤を、パルプに対して約2.5%〜パルプに対して約3.8%、例えば、パルプに対して約3%〜パルプに対して約3.2%の量で加えてもよい。一実施形態によれば、苛性化剤に対する酸素の比率は、標準的なクラフト作製よりも減少するが、酸素の絶対量は同じままである。脱リグニンは、約93℃〜約104℃、例えば、約96℃〜約102℃、例えば、約98℃〜約99℃の温度で行われてもよい。
【0029】
繊維が、約8または約8より小さいカッパー価に達した後、繊維に対し、多段階漂白シーケンスを行う。多段階漂白シーケンスの段階は、任意の従来のものを含んでいてもよく、または開発した一連の段階の後であってもよく、従来の条件で行ってもよい。少なくとも1つの実施形態では、多段階漂白シーケンスは、5段階漂白シーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、DEDEDシーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、D
0E1D1E2D2シーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、D
0(EoP)D1E2D2シーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、D
0(EO)D1E2D2である。
【0030】
ある実施形態では、漂白の前に、セルロースのpHを、約2〜約6、例えば、約2〜約5または約2〜約4、または約2〜約3の範囲のpHに調節する。
【0031】
当業者が認識するような任意の適切な酸(例えば、硫酸もしくは塩酸)または漂白プロセスの酸性漂白段階(例えば、多段階漂白プロセスの二酸化塩素(D)段階)からの濾液を使用してpHを調節してもよい。例えば、外部からの酸を加えることによって、セルロース繊維を酸性化してもよい。外部からの酸の例は、当該技術分野で公知であり、限定されないが、硫酸、塩酸および炭酸が挙げられる。ある実施形態では、漂白工程からの酸性濾液(例えば、廃棄濾液)を用い、セルロース繊維を酸性化する。少なくとも1つの実施形態では、多段階漂白プロセスのD段階からの酸性濾液を用い、セルロース繊維を酸性化する。
【0032】
ある実施形態では、記載される繊維に対し、触媒的な酸化処理を行う。ある実施形態では、鉄または銅を用いて繊維を酸化し、次いで、さらに漂白し、有益な明度特徴を有する繊維を提供する。この実施形態によれば、多段階漂白シーケンスは、酸化工程の後にアルカリ性漂白工程を含まない任意の漂白シーケンスであってもよい。少なくとも1つの実施形態では、多段階漂白シーケンスは、5段階漂白シーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、DEDEDシーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、D
0E1D1E2D2シーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、D
0(EoP)D1E2D2シーケンスである。ある実施形態では、漂白シーケンスは、D
0(EO)D1E2D2である。
【0033】
ある実施形態では、本方法は、多段階漂白シーケンスの1つまたは1つより多くの段階でセルロース繊維を酸化することを含む。ある実施形態では、本方法は、多段階漂白シーケンスの1つの段階でセルロース繊維を酸化することを含む。ある実施形態では、本方法は、多段階漂白シーケンスの終了時または終了付近でセルロース繊維を酸化することを含む。ある実施形態では、本方法は、酸化工程の後に少なくとも1つの漂白工程を含む。ある実施形態では、本方法は、5段階漂白シーケンスの4番目の段階でセルロース繊維を酸化することを含む。
【0034】
上述のように、本開示にしたがって、セルロース繊維の酸化は、少なくとも触媒量の金属触媒(例えば、鉄または銅)と過酸素(peroxygen)(例えば、過酸化水素)を用いてセルロース繊維を処理することを含む。少なくとも1つの実施形態では、本方法は、鉄および過酸化水素を用いてセルロース繊維を酸化することを含む。鉄源は、当業者が認識するように、任意の適切な源であってもよく、例えば、硫酸第一鉄(例えば、硫酸第一鉄七水和物)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄アンモニウム、塩化第二鉄、硫酸第二鉄アンモニウム、またはクエン酸第二鉄アンモニウムであってもよい。
【0035】
ある実施形態では、本方法は、銅と過酸化水素を用いてセルロース繊維を酸化することを含む。同様に、銅源は、当業者が認識するように、任意の適切な源であってもよい。最後に、ある実施形態では、本方法は、銅および鉄ならびに過酸化水素との組み合わせを用い、セルロース繊維を酸化することを含む。
【0036】
漂白工程でセルロース繊維が酸化されるとき、セルロース繊維を、酸化中または酸化後に、漂白プロセスにおいて実質的にアルカリ性の条件にすべきではない。ある実施形態では、本方法は、酸性pHでセルロース繊維を酸化することを含む。ある実施形態では、本方法は、セルロース繊維を提供することと、セルロース繊維を酸性化することと、次いで、セルロース繊維を酸性pHで酸化することとを含む。ある実施形態では、pHは、約2〜約6、例えば、約2〜約5または約2〜約4の範囲である。
【0037】
多段階漂白シーケンスの非酸化段階は、任意の従来のものを含んでいてもよく、発見された一連の段階の後に、従来の条件下で行われてもよい。ただし、本開示に記載された改質された繊維を製造するのに有用にするためには、アルカリ性漂白工程を酸化工程の後に行わない。
【0038】
ある実施形態では、酸化は、多段階漂白プロセスの4番目の段階に組み込まれる。ある実施形態では、本方法は、D
0E1D1E2D2のシーケンスを有する5段階漂白プロセスで実施され、クラフト繊維を酸化するために、4番目の段階(E2)を使用する。
【0039】
ある実施形態では、セルロース繊維を酸化した後、カッパー価は増加する。さらに具体的には、人は、過マンガン酸塩試薬と反応する材料(例えば、リグニン)の予想される減少に由来して、この漂白段階にわたってカッパー価が低下することを典型的に予想する。しかし、本明細書に記載される方法において、セルロース繊維のカッパー価は、不純物(例えば、リグニン)がなくなることによって低下し得るが、カッパー価は、繊維の化学改質のために増加し得る。理論によって束縛されることを望まないが、改質されたセルロースの官能基が増加すると、過マンガン酸塩試薬と反応し得るさらなる部位を提供すると考えられる。したがって、改質されたクラフト繊維のカッパー価は、標準的なクラフト繊維のカッパー価と比較して高い。
【0040】
少なくとも1つの実施形態では、鉄または銅と過酸化物を両方とも加え、いくらかの保持時間を提供した後に、漂白シーケンスの1つの段階で酸化が起こる。適切な保持は、鉄または銅を用いて過酸化水素を触媒するのに十分な時間量である。このような時間は、当業者により簡単に解明することができる。
【0041】
本開示にしたがって、酸化は、反応の望ましい終了を与えるのに十分な時間および温度で行われる。例えば、酸化を、約60〜約80℃の範囲の温度で約40〜約80分の範囲の時間、行ってもよい。酸化反応の望ましい時間および温度は、当業者により容易に解明することができる。
【0042】
一実施形態によれば、セルロースに対し、D(EoP)DE2D漂白シーケンスを行う。この実施形態によれば、漂白シーケンスの1番目のD段階(D
0)を、少なくとも約57℃、例えば、少なくとも約60℃、例えば、少なくとも約66℃、例えば、少なくとも約71℃の温度で、約3未満のpH(例えば、約2.5)で行う。二酸化塩素を、パルプに対して約0.6%より多く、例えば、パルプに対して約0.8%より多く、例えば、パルプに対して約0.9%より多い量で適用する。pHを維持するのに十分な量で、例えば、パルプに対して少なくとも約1%の量で、例えば、パルプに対して少なくとも約1.15%、例えば、パルプに対して少なくとも約1.25%の量で、酸をセルロースに適用する。
【0043】
一実施形態によれば、1番目のE段階(E
1)を、少なくとも約74℃、例えば、少なくとも約77℃、例えば、少なくとも約79℃、例えば、少なくとも約82℃の温度、約11より高い、例えば、11.2より高いpH(例えば、約11.4)で行う。苛性化剤を、パルプに対して約0.7%より多く、例えば、パルプに対して約0.8%より多く、例えば、パルプに対して約1.0%より多い量で適用する。酸素を、パルプに対して少なくとも約0.48%、例えば、パルプに対して少なくとも約0.5%、例えば、パルプに対して少なくとも約0.53%の量で、セルロースに適用する。過酸化水素を、パルプに対して少なくとも約0.35%、例えば、パルプに対して少なくとも約0.37%、例えば、パルプに対して少なくとも約0.38%、例えば、パルプに対して少なくとも約0.4%、例えば、パルプに対して少なくとも約0.45%の量で、セルロースに適用する。当業者は、任意の公知の過酸素化合物を使用し、過酸化水素の一部またはすべてを置き換え得ることを認識する。
【0044】
本発明の一実施形態によれば、D(EoP)段階後のカッパー価は、約2.2であるかまたは約2.2より小さい。
【0045】
一実施形態によれば、漂白シーケンスの2番目のD段階(D
1)を、少なくとも約74℃、例えば、少なくとも約77℃、例えば、少なくとも約79℃、例えば、少なくとも約82℃の温度、約4未満、例えば、3.5未満、例えば、3.2未満のpHで行う。二酸化塩素をパルプに対して約1%未満、例えば、パルプに対して約0.8%未満の量で、例えば、パルプに対して約0.7%の量で適用する。苛性化剤を、望ましいpHに調節するのに有効な量で、例えば、パルプに対して約0.015%未満、例えば、パルプに対して約0.01%未満、例えば、パルプに対して約0.0075%の量で、セルロースに適用する。この漂白段階の後のパルプのTAPPI粘度は、例えば、9〜12mPa・sであってもよい。
【0046】
一実施形態によれば、2番目のE段階(E
2)を、少なくとも約74℃、例えば、少なくとも約79℃の温度、約2.5より大きなpH、例えば、2.9より大きなpH(例えば、約3.3)で行う。鉄触媒を、パルプに対して鉄が約25〜約100ppmのFe
+2、例えば、25〜75ppm、例えば、50〜75ppmになる速度で、例えば、水溶液で加える。過酸化水素を、パルプに対して約0.5%未満の量で、セルロースに適用する。当業者は、任意の公知の過酸素化合物を使用し、過酸化水素の一部またはすべてを置き換え得ることを認識する。
【0047】
本開示にしたかって、過酸化水素を、酸性媒体中、最終セルロース製品の望ましい酸化ならびに/または重合度および/または粘度を達成するのに十分な量で、セルロース繊維に加える。例えば、過酸化物を、約1%〜約50重量%の濃度の溶液として、パルプの乾燥重量を基準として、約0.1〜約0.5%、または約0.1%〜約0.3%、または約0.1%〜約0.2%、または約0.2%〜約0.3%の量で加えられ得る。
【0048】
鉄または銅を、過酸化物を用いてセルロースの酸化を触媒するのに少なくとも十分な量で、加える。例えば、クラフトパルプの乾燥重量を基準として約25〜約100ppm、例えば、25〜75ppm、例えば、50〜75ppmの範囲の量で鉄を加えてもよい。当業者は、最終セルロース製品の望ましいレベルまたは量の酸化および/または重合度および/または粘度を達成するために、鉄または銅の量を容易に最適化することができる。
【0049】
ある実施形態では、本方法は、過酸化水素を加える前または加えた後に、例えば、蒸気によって熱を加えることをさらに関する。
【0050】
ある実施形態では、パルプの最終的なDPおよび/または粘度は、鉄または銅および過酸化水素の量ならびに酸化工程の前の漂白条件のロバスト性(robustness)によって制御され得る。当業者は、本開示の改質されたクラフト繊維の他の特性が、触媒および過酸化物の量ならびに酸化工程の前の漂白条件のロバスト性によって影響を受け得ることを認識する。例えば、当業者は、最終製品の望ましい明度および/または望ましい重合度または粘度を標的とし、または達成するための酸化工程の前に、鉄または銅および過酸化水素の量ならびに漂白条件のロバスト性を調節してもよい。
【0051】
ある実施形態では、D1段階の洗浄釜でクラフトパルプが酸性化され、鉄源(または銅源)も、D1段階の洗浄釜でクラフトパルプに加え、鉄源(または銅源)を加えた後に、E2段階の塔の前の混合釜内またはポンプ内の追加点で、過酸化物を加え、E2塔でクラフトパルプが反応され、E2洗浄釜で洗浄され、蒸気混合釜のE2塔の前に、場合により蒸気を加えてもよい。
【0052】
ある実施形態では、D1段階の終了時までに鉄(または銅)を加えてもよく、または、E2段階の開始時に鉄(または銅)も加えてもよいが、但し、D1段階でパルプを最初に(すなわち、鉄(または銅)を添加する前に)酸性化する。過酸化物を加える前または加えた後に、場合により蒸気を加えてもよい。
【0053】
例えば、ある実施形態では、酸(または銅)を含む酸性媒体中の過酸化水素を用いた処理は、クラフトパルプのpHを約2〜約5の範囲のpHに調節することと、酸性化したパルプに鉄(または銅)源を加えることと、クラフトパルプに過酸化水素を加えることとを含んでいてもよい。
【0054】
一実施形態によれば、漂白シーケンスの3番目のD段階(D
2)を、少なくとも約74℃、例えば、少なくとも約77℃、例えば、少なくとも約79℃、例えば、少なくとも約82℃の温度、約4未満、例えば、約3.8未満のpHで行う。二酸化塩素を、パルプに対して約0.5%未満、例えば、パルプに対して約0.3%未満、例えば、パルプに対して約0.15%の量で適用する。
【0055】
または、セルロース繊維を酸化する前に、もっとロバスト性の高い漂白条件を提供するように、多段階漂白シーケンスを変えてもよい。ある実施形態では、本方法は、酸化工程の前に、もっとロバスト性の高い漂白条件を提供することを含む。もっとロバスト性の高い漂白条件によって、もっと少ない量の鉄もしくは銅および/または過酸化水素を用い、セルロース繊維の重合度および/または粘度を酸化工程中に下げ得る。したがって、最終セルロース製品の明度および/または粘度をさらに制御することができるように、漂白シーケンス条件を変えることができ得る。例えば、過酸化物および金属の量を減らすと、酸化前にもっとロバスト性の高い漂白条件を提供しつつ、同一の酸化条件を用いるが、ロバスト性が高くない漂白を用いて製造された酸化製品よりも粘度が低く、明度が高い製品を提供し得る。このような条件は、ある実施形態では、特に、セルロースエーテル用途では有利であり得る。
【0056】
ある実施形態では、例えば、本開示の範囲内の改質されたセルロース繊維を調製する方法は、約2〜約5の範囲のpH(例えば、硫酸を用いて)までクラフトパルプを酸性化することと、鉄源(例えば、硫酸第一鉄、例えば、硫酸第一鉄七水和物)と、酸性化されたクラフトパルプとを、クラフトパルプの乾燥重量を基準として約25〜約250ppmのFe
+2を適用する量で、一貫して約1%〜約15%の範囲で混合し、また約1重量%〜約50重量%の濃度の溶液として、クラフトパルプの乾燥重量を基準として約0.1%〜約1.5%の範囲の量の過酸化水素と混合することを含んでいてもよい。ある実施形態では、硫酸第一鉄溶液を、一貫して約7%〜約15%の範囲でクラフトパルプと混合する。ある実施形態では、酸性クラフトパルプを、鉄源と混合し、約60〜約80℃の範囲の温度で約40〜約80分の範囲の期間、過酸化水素と反応させる。
【0057】
ある実施形態では、5段階漂白プロセスのそれぞれの段階は、混合釜と、反応釜と、洗浄釜とを少なくとも備えている(当業者が知っているように)。
【0058】
一実施形態によれば、圧縮力の関数としてのクラフト繊維の密度は、
図1からわかり得る。図は、圧縮力下で、パルプ繊維の密度の変化を示す。このグラフは、本発明のパルプ繊維と、比較例4にしたがって作製した繊維および標準的な綿毛状パルプを用いて作製した繊維とを比較する。このグラフからわかり得るように、本発明のパルプ繊維は、標準的な綿毛状パルプより圧縮性が高い。
【0059】
一実施形態によれば、密度の関数としてのパルプ繊維のドレープ性は、
図2からわかり得る。
図2は、密度が増加するとき、パルプ繊維のドレープ性を示す。このグラフは、本発明のパルプ繊維と、比較例4にしたがって作製した繊維および標準的な綿毛状パルプを用いて作製した繊維とを比較する。このグラフからわかり得るように、本発明のパルプ繊維は、標準的な綿毛状パルプでわかるよりも顕著に良好なドレープ性を示す。さらに、低い密度で、本発明の繊維は、比較例のパルプ繊維よりも良好なドレープ性を有する。
【0060】
少なくとも1つの実施形態では、本方法は、セルロース繊維を提供することと、セルロース繊維を部分的に漂白することと、セルロース繊維を酸化することとを含む。ある実施形態では、酸化は、漂白プロセス中に行われる。ある実施形態では、酸化は、漂白プロセス後に行われる。
【0061】
記載されるように製造した繊維を表面活性剤で処理する。本発明で使用するための表面活性剤は、固体または液体であってもよい。表面活性剤は、任意の表面活性剤であってもよく、限定されないが、繊維に対し
実質的ではない(すなわち、その比吸収速度を妨害しない)柔軟剤、剥脱剤、および界面活性剤が挙げられる。本明細書で使用する場合、繊維に対し「
実質的ではない(not substantive)」表面活性剤は、本明細書に記載するpfi試験を用いて測定した場合に、比吸収速度の30%以下で増加させることを示す。一実施形態によれば、比吸収速度は、約25%以下、例えば、約20%以下、例えば、約15%以下、例えば、約10%以下だけ増加する。理論によって束縛されることを望まないが、界面活性剤の添加によって、試験流体であるセルロースに対し、同じ位置で競争が生じる。したがって、界面活性剤が
実質的すぎると、多すぎる部位で反応し、繊維の吸収能力を低下させる。
【0062】
本明細書で使用する場合、PFIは、SCAN−C−33:80 Test Standard、Scandinavian Pulp、Paper and Board Testing Committeeにしたがって測定される。この方法は、一般的には、以下のとおりである。まず、PFI Pad Formerを用いてサンプルを調製する。減圧状態にし、約3.01gの綿毛状パルプをこのパッド作製器の投入口に入れる。減圧状態を止め、試験片を取り除き、パッドの質量を調べるために、これを秤の上に置く。綿毛状物の質量を3.00±0.01gに調節し、Mass
dryとして記録する。この綿毛状物を試験用シリンダーに入れる。綿毛状物が入ったシリンダーを、Absorption Testerの浅い穴の開いた皿に入れ、水の弁を開ける。綿毛状パッドに穏やかに500gを加えつつ、試験片のシリンダーを持ち上げ、すぐに開始ボタンを押す。このTesterを30秒間動かした後、表示の読みを00.00にする。表示で20秒間読み取った後、乾燥したパッドの高さを0.5mm単位で記録する(Height
dry)。再び、表示の読みを00.00にして、再び開始ボタンを押し、すぐにトレーを自動的に水から上げ、次いでこのとき、時間表示を記録する(吸収時間、T)。このTesterを30秒間動かし続ける。水のトレーは自動的に下がり、このとき、さらに30秒間動かす。表示を20秒間読み取り、濡れたパッドの高さを0.5mm単位で記録する(Height
wet)。サンプルホルダを取り出し、濡れたパッドを秤に移動し、Mass
wetを測定し、水の弁を閉じる。比吸収速度(s/g)は、T/Mass
dryである。特定の収容力(g/g)は、(Mass
wet − Mass
dry)/Mass
dryである。濡れた状態のバルク(cc/g)は、[19.64cm
2 × Height
wet/3]/10である。乾燥状態のバルクは、[19.64cm
2 × Height
dry/3]/10である。界面活性剤で処理された繊維と比較するための参照標準は、界面活性剤を加えない同じ繊維である。
【0063】
柔軟剤および剥脱剤は、単一な化合物ではなく、複雑な混合物としてのみ市販されていることが多いことが一般的に認識される。以下の記載は、優勢な種類に注目しているが、一般的に市販の混合物を実際に使用してもよいことを理解すべきである。適切な柔軟剤、剥脱剤、および界面活性剤は、当業者には容易に明らかであり、文献に広く報告されている。
【0064】
適切な界面活性剤としては、繊維に対して
実質的ではないカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、および非イオン系界面活性剤が挙げられる。一実施形態によれば、界面活性剤は、非イオン系界面活性剤である。一実施形態によれば、界面活性剤は、カチオン系界面活性剤である。一実施形態によれば、界面活性剤は、植物系界面活性剤であり、例えば、植物系脂肪酸、例えば、植物系脂肪酸四級アンモニウム塩である。このような化合物としては、どちらもCellulose Solutionsから入手可能なDB999およびDB1009が挙げられる。他の界面活性剤としては、限定されないが、Akzo Nobel製のエトキシ化ノニルフェノールエーテルBerol 388が挙げられ得る。
【0065】
生分解性柔軟剤を利用してもよい。代表的な生分解性カチオン系柔軟剤/剥脱剤は、米国特許第5,312,522号;第5,415,737号;第5,262,007号;第5,264,082号;および第5,223,096号に開示され、これらはすべて全体的に本明細書に組み込まれる。この化合物は、四級アンモニウム化合物の生分解性ジエステル、四級化したアミンエステル、ならびに四級アンモニウムクロリドおよびジエステルジエルシルジメチルアンモニウムクロリドで官能化された生分解性植物油に基づくエステルであり、これらは代表的な生分解性柔軟剤である。
【0066】
界面活性剤を6lb/トンまで、例えば、0.5lb/トン〜3lb/トン、例えば、0.5lb/トン〜2.5lb/トン、例えば、0.5lb/トン〜2lb/トン、例えば、2lb/トン未満の量で加える。
【0067】
表面活性剤を、パルプのロール、ベイルまたはシートを作製する前の任意の時点で加えてもよい。一実施形態によれば、パルプ機械のヘッドボックスの直前で、具体的には、主要なクリーナー供給ポンプの投入口で表面活性剤を加える。
【0068】
一実施形態によれば、本発明の繊維は、ビスコースプロセスで利用するとき、優れた濾過性を有する。例えば、本発明の繊維を含むビスコース溶液の濾過性は、界面活性剤を含まず、同一の繊維を用いて同一の様式で製造したビスコース溶液よりも少なくとも10%低く、例えば、少なくとも15%低く、例えば、少なくとも30%低く、例えば、少なくとも40%低い。ビスコース溶液の濾過性は、以下の方法によって測定する。1および3/16インチの濾過したオリフィスを底部に有する窒素で加圧した(27psi)容器に溶液を入れ、濾過媒体は、容器の外側から内側に、穴の開いた金属板、20メッシュステンレス鋼製ふるい、モスリン布、Whatman 54濾紙、および毛羽立った側面が容器の内容物に向かって上側にある2層のナップフランネル(knap flannel)である。40分間、この溶液を媒体を介して濾過し、次いで、40分経過後に、さらに140分間(つまり、40分の時点でt=0)、濾過した溶液の体積を測定し(重量)、経過時間をX座標として、濾過したビスコースの重量をY座標とし、このプロットの傾きが、濾過数である。10分間隔で記録を行う。界面活性剤で処理された繊維と比較する参照標準は、界面活性剤を加えていない同一の繊維である。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、本発明の界面活性剤で処理された繊維は、比吸収速度の増加が制限されることを示し、例えば、30%未満で、同時に濾過性も低下する(例えば、少なくとも10%)。一実施形態によれば、界面活性剤で処理された繊維は、比吸収速度の増加が30%未満であり、濾過性の低下が少なくとも20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%である。別の実施形態によれば、界面活性剤で処理された繊維は、比吸収速度の増加が25%未満であり、濾過性の低下が少なくとも10%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%である。さらに別の実施形態によれば、界面活性剤で処理された繊維は、比吸収速度の増加が20%未満であり、濾過性の低下が少なくとも10%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%である。別の実施形態によれば、界面活性剤で処理された繊維は、比吸収速度の増加が15%未満であり、濾過性の低下が少なくとも10%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%である。さらに別の実施形態によれば、界面活性剤で処理された繊維は、比吸収速度の増加が10%未満であり、濾過性の低下が少なくとも10%、例えば、少なくとも約20%、例えば、少なくとも30%、例えば、少なくとも40%である。
【0070】
これまで、ビスコース製造のために結合させたパルプにカチオン系界面活性剤を加えるのは、ビスコース製造に悪影響を与えると考えられていた。カチオン系界面活性剤は、セルロースのうち、苛性化剤が反応してセルロース繊維の破壊を開始しなければならない同じ部位に結合する。したがって、長い間、カチオン系の材料は、ビスコース製造に用いられる繊維のパルプ前処理として使用すべきではないと考えられてきた。理論によって束縛されることを望まないが、本発明にしたがって製造された繊維は、従来技術の繊維とは形態、特徴および化学が異なるため、このカチオン系界面活性剤は、従来技術の繊維と同じ様式では結合しないと考えられる。本開示の繊維は、本発明の界面活性剤で処理すると、苛性化剤の浸透および濾過性を高める様式で繊維を分離する。したがって、未処理の繊維または従来の繊維よりももっと大きな程度で、高価な綿または亜硫酸繊維の置換物として本開示の繊維を使用することができる。
【0071】
(II.クラフト繊維)
本明細書では、「標準的な」、「従来の」または「伝統的な」クラフト繊維、クラフト漂白された繊維、クラフトパルプまたはクラフト漂白されたパルプについて言及されている。このような繊維またはパルプは、多くは、本発明の改良された特性を規定するための参照点として記載される。本明細書で使用される場合、これらの用語は相互に置き換え可能であり、組成物中で同一であるが、標準的な様式で処理される繊維またはパルプを指す。本明細書で使用される場合、標準的なクラフト法としては、当該技術分野で認識される条件での蒸煮段階および漂白段階を両方とも含む。標準的なクラフト処理は、蒸解の前に、前加水分解段階を含まない。
【0072】
明細書に述べられるクラフトセルロース繊維の物理特徴(例えば、純度、明度、繊維長および粘度)は、実施例の章に提供されるプロトコルにしたがって測定される。
【0073】
ある実施形態では、本開示の改質されたクラフト繊維は、標準的なクラフト繊維と同等の明度を有する。ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、明度は、ISOで少なくとも85%、86%、87%、88%、89%または90%を有する。ある実施形態では、明度は、約91%、約92%または約93%ISOである。ある実施形態では、明度は、約85%〜約93%、または約86%〜約91%、または約87%〜約91%、または約88%〜約91%ISOの範囲である。
【0074】
ある実施形態では、本開示にしたがうセルロースは、約84%〜約91%の範囲のR18値を有する。例えば、R18は、少なくとも約88%、例えば、少なくとも約89%の値を有し、これは、加水分解していないパルプまたは亜硫酸プロセスから作られるパルプではきわめて驚くべきことである。
【0075】
R18含有量は、TAPPI T235で記載される。R18は、18%の苛性化剤溶液を用いたパルプの抽出後に残る、溶解していない材料の残留量をあらわす。一般的に、ヘミセルロースのみが溶解し、18%の苛性化剤溶液中に除去される。
【0076】
ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、約14%〜約16%、または約14.5%〜約15.5%の範囲のS18苛性化剤溶解度を有する。ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、約11.5%〜約14%、または約12%〜約13%の範囲のS18苛性化剤溶解度を有する。
【0077】
本開示は、低粘度および超低粘度のクラフト繊維を提供する。別段の定めがない限り、「粘度」は、本明細書で使用される場合、プロトコルで参照されるようにTAPPI T230−om99にしたがって測定された、0.5%のCapillary CED粘度を指す。
【0078】
「DP」は、実施例で使用される場合、TAPPI T230−om99にしたがって測定された、0.5%のCapillary CED粘度から算出された重量での平均重合度(DPw)を指す。例えば、J.F.Cellucon Conference in The Chemistry and Processing of Wood and Plant Fibrous Materials、p.155、試験プロトコル8、1994(Woodhead Publishing Ltd.、Abington Hall、Abinton Cambridge CBI 6AH England、J.F.Kennedyら編集)を参照のこと。低粘度は、約7〜約13mPa・sの範囲であり、「超低粘度」は、約3〜約7mPa・sの範囲である。
【0079】
一実施形態では、改質されたセルロース繊維は、約4.0mPa・s〜約6mPa・sの範囲の粘度を有する。ある実施形態では、粘度は、約4.0mPa・s〜約5.5mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、約4.5mPa・s〜約5.5mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、約5.0mPa・s〜約5.5mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、6mPa・s未満、5.5mPa・s未満、5.0mPa・s未満、または4.5mPa・s未満である。
【0080】
別の実施形態では、改質されたセルロース繊維は、粘度が約7.0mPa・s〜約10mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、約7.5mPa・s〜約10mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、約7.0mPa・s〜約8.0mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、約7.0mPa・s〜約7.5mPa・sの範囲である。ある実施形態では、粘度は、10mPa・s未満、8mPa・s未満、7.5mPa・s未満、7mPa・s未満、または6.5mPa・s未満である。
【0081】
本開示にしたがうある実施形態の改質されたクラフト繊維は、他の超低粘度繊維と比較したとき、改良された黄変防止特徴も示し得る。本発明の改質されたクラフト繊維は、NaOH飽和状態で、約30未満、例えば、約27未満、例えば、約25未満、例えば、約22未満のb*色値を有する。飽和状態でのb*色値の試験は、以下のとおりである。サンプルを3インチ×3インチの四角形に切断する。それぞれの四角形を、トレイに別個に置き、30mlの18%NaOHを加えてシートを飽和させる。次いで、5分後に、この四角形をトレイおよびNaOH溶液から取り出す。このとき、それは「NaOH飽和状態」である。明度および色値をこの飽和シートで測定する。明度および色値を、CIE L*、a*、b*座標として、Hunterlab MiniScan(商標) XE装置で決定した。または、黄変防止特徴を、飽和前および飽和後のシートのb*色の間の差としてあらわし得る。以下の実施例5を参照のこと。一番少なく変化するシートが、最良の黄変防止特徴を有する。改質された本発明のクラフト繊維は、Δb*が、約25未満、例えば、約22未満、例えば、約20未満、例えば、約18未満である。
【0082】
ある実施形態では、本開示のクラフト繊維は、漂白プロセス中、その繊維長を維持する。「繊維長」と「平均繊維長」は、繊維の特性を記述するために用いられる場合、相互に置き換え可能に用いられ、長さ加重平均繊維長を意味する。したがって、例えば、2mmの平均繊維長を有する繊維は、2mmの長さ加重平均繊維長を有する繊維を意味すると理解されるべきである。
【0083】
ある実施形態では、クラフト繊維が軟材繊維である場合、セルロース繊維は、以下の実施例の章に記載される試験プロトコル12にしたがって測定した場合、約2mmまたは2mmより大きい平均繊維長を有する。ある実施形態では、平均繊維長は、約3.7mmしかない。ある実施形態では、平均繊維長は、少なくとも約2.2mm、約2.3mm、約2.4mm、約2.5mm、約2.6mm、約2.7mm、約2.8mm、約2.9mm、約3.0mm、約3.1mm、約3.2mm、約3.3mm、約3.4mm、約3.5mm、約3.6mm、または約3.7mmである。ある実施形態では、平均繊維長は、約2mm〜約3.7mm、または約2.2mm〜約3.7mmの範囲である。
【0084】
ある実施形態では、本開示の改質されたクラフト繊維は、標準的なクラフト繊維と比較して、カルボキシル含有量が増加している。
【0085】
ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、約2meq/100g〜約4meq/100gの範囲のカルボキシル含有量を有する。ある実施形態では、カルボキシル含有量は、約3meq/100g〜約4meq/100gの範囲である。ある実施形態では、カルボキシル含有量は、少なくとも約2meq/100g、例えば、少なくとも約2.5meq/100g、例えば、少なくとも約3.0meq/100g、例えば、少なくとも約3.5meq/100gである。
【0086】
ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、約1.5meq/100g〜約2.5meq/100gの範囲のカルボキシル含有量を有する。ある実施形態では、カルボニル含有量は、約1.5meq/100g〜約2meq/100gの範囲である。ある実施形態では、カルボニル含有量は、約2.5meq/100g未満、例えば、約2.0meq/100g未満、例えば、約1.5meq/100g未満である。
【0087】
ある実施形態では、改質されたセルロース繊維は、銅価が約2未満である。ある実施形態では、銅価は、約1.5未満である。ある実施形態では、銅価は、約1.3未満である。ある実施形態では、銅価は、約1.0〜約2.0、例えば、約1.1〜約1.5の範囲である。
【0088】
少なくとも1つの実施形態では、改質されたクラフト繊維のヘミセルロース含有量は、標準的な未漂白クラフト繊維と実質的に同じである。例えば、軟材クラフト繊維のヘミセルロース含有量は、約12%〜約17%の範囲であってもよい。例えば、硬材クラフト繊維のヘミセルロース含有量は、約12.5%〜約16.5%の範囲であってもよい。
【0089】
(III.クラフト繊維から製造される製品)
本開示は、本明細書に記載する改質されたクラフト繊維から作製される製品を提供する。ある実施形態では、製品は、典型的には、標準的なクラフト繊維から作製されるものである。他の実施形態では、製品は、典型的には、綿リンター、前加水分解クラフトまたは亜硫酸パルプから作製される製品である。さらに具体的には、本発明の繊維を、さらに改質することなく、使用することができ、化学誘導体、例えば、エーテルおよびエステルの調製の出発物質として使用することができる。今まで、α含有量が高いセルロース(例えば、綿および亜硫酸パルプ)ならびに伝統的なクラフト繊維の両方を置き換えるために有用な繊維は、入手可能ではなかった。
【0090】
例えば、「綿リンター(または亜硫酸パルプ)を置換され得る」および「綿リンター(または亜硫酸パルプ)と相互に置き換え可能である」および「綿リンター(または亜硫酸パルプ)の代わりに使用され得る」などの句は、その繊維が、通常は綿リンター(または亜硫酸パルプまたは前加水分解クラフト繊維)を用いて作製される最終用途で使用するのに適した特性を有することのみを意味する。この句は、その繊維が、必ずしも綿リンター(または亜硫酸パルプ)とすべて同じ特徴を有すると意味することを意図しない。
【0091】
ある実施形態では、本開示は、綿リンターまたは亜硫酸パルプの代用品として使用され得る改質されたクラフト繊維を提供する。ある実施形態では、本開示は、例えば、セルロースエーテル、酢酸セルロースおよび微結晶性セルロースの製造において、綿リンターまたは亜硫酸パルプの代用物として使用され得る改質されたクラフト繊維を提供する。
【0092】
理論によって束縛されないが、従来のクラフトパルプに対し、アルデヒド含有量が増加すると、粘度を同時に減らしつつ、顕著な黄変も変色も付与することなく、紙製造およびセルロース誘導体の両方に使用可能な繊維を作製することができ、最終製品にエーテル化のためのさらなる活性な部位(例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)を提供すると考えられる。
【0093】
ある実施形態では、改質されたクラフト繊維は、セルロースエーテルを製造するのに適切にする化学特性を有する。したがって、本開示は、上述のような改質されたクラフト繊維から誘導されるセルロースエーテルを提供する。ある実施形態では、セルロースエーテルは、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルメチルセルロースから選択される。本開示のセルロースエーテルを、セルロースエーテルを伝統的に使用する任意の用途で使用され得ると考えられる。例えば、限定する様式ではないが、本開示のセルロースエーテルを、コーティング、インク、バインダー、制御放出薬物錠剤および膜に使用してもよい。
【0094】
ある実施形態では、改質されたクラフト繊維は、セルロースエステルを製造するのに適切にする化学特性を有する。したがって、本開示は、本開示の改質されたクラフト繊維から誘導されるセルロースエステル(例えば、酢酸セルロース)を提供する。ある実施形態では、本開示は、本開示の改質されたクラフト繊維から誘導される酢酸セルロースを含む製品を提供する。例えば、限定する様式ではないが、本開示のセルロースエステルを、家財道具、たばこフィルター、インク、吸収性製品、医療用デバイスおよびプラスチック(例えば、LCDおよびプラズマスクリーンならびにフロントガラスを含む)に使用してもよい。
【0095】
ある実施形態では、本開示の改質されたクラフト繊維は、ビスコースの製造に適していてもよい。さらに具体的には、本開示の改質されたクラフト繊維を、高価なセルロース出発物質の部分的な代用物として使用してもよい。本開示の改質されたクラフト繊維は、高価なセルロース出発物質の35%と同じ量または35%より多く、例えば、20%と同じ量、例えば、10%と同じ量を置き換えてもよい。したがって、本開示は、上述のような改質されたクラフト繊維から全体的または部分的に誘導されるビスコース繊維を提供する。ある実施形態では、ビスコースと呼ばれる溶液を作製するためにアルカリおよび二硫化炭素で処理された本開示の改質されたクラフト繊維からビスコースが製造され、次いで、希硫酸および硫酸ナトリウムに紡績され、ビスコースをセルロースに再び変換する。本開示のビスコース繊維を、ビスコース繊維が伝統的に用いられる任意の用途で使用してもよいと考えられる。例えば、限定する様式ではないが、本開示のビスコースを、レーヨン、セロファン、フィラメント、食品容器およびタイヤコードに使用してもよい。
【0096】
ある実施形態では、本開示の改質されたクラフトを、さらに改質することなく、酸性亜硫酸パルプ化プロセスによって製造される綿リンターおよび漂白した軟材繊維から誘導される繊維の全体的または部分的な代用物として、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース)およびエステルの製造に使用され得る。
【0097】
ある実施形態では、本開示は、綿リンターまたは亜硫酸パルプの全体的または部分的な代用物として使用され得る改質されたクラフト繊維を提供する。ある実施形態では、本開示は、例えば、セルロースエーテル、酢酸セルロース、ビスコースおよび微結晶性セルロースの製造において、綿リンターまたは亜硫酸パルプの代用物として使用され得る改質されたクラフト繊維を提供する。
【0098】
ある実施形態では、クラフト繊維は、セルロースエーテルの生産に適している。したがって、本開示は、上述のクラフト繊維から誘導されるセルロースエーテルを提供する。ある実施形態では、セルロースエーテルは、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルメチルセルロースから選択される。本開示のセルロースエーテルを、セルロースエーテルが伝統的に使用される任意の用途で使用してもよいと考えられる。例えば、限定する様式ではないが、本開示のセルロースエーテルを、コーティング、インク、バインダー、制御放出薬物錠剤および膜で使用してもよい。
【0099】
ある実施形態では、クラフト繊維は、セルロースエステルの生産に適している。したがって、本開示は、本開示のクラフト繊維から誘導されるセルロースエステル(例えば、酢酸セルロース)を提供する。ある実施形態では、本開示は、本開示のクラフト繊維から誘導される酢酸セルロースを含む製品を提供する。例えば、限定する様式ではないが、本開示のセルロースエステルを、家財道具、たばこフィルター、インク、吸収性製品、医療用デバイスおよびプラスチック(例えば、LCDおよびプラズマスクリーンならびにフロントガラス)に使用してもよい。
【0100】
ある実施形態では、クラフト繊維は、微結晶性セルロースの生産に適している。微結晶性セルロースの作製は、比較的きれいな、高度に精製された出発セルロース材料を必要とする。このように、伝統的に高価な亜硫酸パルプを、その作製のために主に使用してきた。本開示は、本開示のクラフト繊維から誘導される微結晶性セルロースを提供する。したがって、本開示は、微結晶性セルロース作製のための費用効率が高いセルロース源を提供する。
【0101】
本開示のセルロースを、微結晶性セルロースが伝統的に使用されてきた任意の用途に使用してもよい。例えば、限定する様式ではないが、本開示のセルロースを、医薬用途または機能性食品用途、食品用途、化粧品用途、紙用途で、または構造コンポジットとして使用してもよい。例えば、本開示のセルロースは、バインダー、希釈剤、崩壊剤、滑沢剤、錠剤化助剤、安定化剤、質感調整剤(texturizing agent)、脂肪代替物、充填剤、ケーキング防止剤、発泡剤、乳化剤、増粘剤、分離剤、ゲル化剤、担体材料、乳白剤または粘度調整剤であってもよい。ある実施形態では、微結晶性セルロースは、コロイドである。
【0102】
本開示のクラフト繊維から誘導されるセルロース誘導体および微結晶性セルロースを含む他の製品も、当業者によって推測され得る。このような製品は、例えば、化粧品用途および工業用途で見出され得る。
【0103】
本明細書で使用される場合、「約」は、実験誤差に起因する変動を説明することが意味される。すべての測定は、「約」が明示的に引用されているか否かにかかわらず、特に記述されない限り、「約」という用語で修飾されていると理解される。したがって、例えば、「2mmの長さを有する繊維」という記述は、「約2mmの長さを有する繊維」を意味すると理解される。
【0104】
本発明の1つ以上の非限定的な実施形態の詳細を以下の実施例に示す。本発明の他の実施形態は、本開示を考慮した後は、当業者には明らかなはずである。
【実施例】
【0105】
(試験プロトコル)
1.苛性化剤溶解度(R10、S10、R18、S18)をTAPPI T235−cm00にしたがって測定する。
【0106】
2.カルボキシル含有量をTAPPI T237−cm98にしたがって測定する。
【0107】
3.アルデヒド含有量を、Econotech Services LTDの所有している手順であるESM 055Bにしたがって測定する。
【0108】
4.銅価をTAPPI T430−cm99にしたがって測定する。
【0109】
5.以下の式にしたがって、Biomacromolecules 2002、3、969〜975からのカルボニル含有量を銅価から算出する。カルボニル=(銅価−0.07)/0.6。
【0110】
6.0.5%のCapillary CED粘度を、TAPPI T230−om99にしたがって測定する。
【0111】
7.固有粘度を、ASTM D1795(2007)にしたがって測定する。
【0112】
8.以下の式(the 1994 Cellucon Conference published in The Chemistry and Processing Of Wood And Plant Fibrous Materials、p.155、Woodhead Publishing Ltd、Abington Hall、Abington、Cambridge CBl 6AH、England(J.F.Kennedyらが編集)から)にしたがって0.5%のCapillary CED粘度からDPを算出する。DPw=−449.6+598.4ln(0.5% Capillary CED)+118.02ln
2(0.5% Capillary CED)
9.炭水化物を、Dionexイオンクロマトグラフィーによる分析を用い、TAPPI T249−cm00にしたがって測定する。
【0113】
10.以下の式にしたがって、TAPPI Journal 65(12):78〜80 1982からのセルロース含有量を炭水化物の組成から算出する。セルロース=グルカン−(マンナン/3)。
【0114】
11.ヘミセルロース含有量を、糖類の合計からセルロース含有量を引いて算出する。
【0115】
12.繊維長および粗さを、OPTEST、ホークスベリー、オンタリオ製のFiber Quality Analyzer(商標)で、製造業者の標準的な手順にしたがって決定する。
【0116】
13.DCM(ジクロロメタン)抽出物(extractives)を、TAPPI T204−cm97にしたがって決定する。
【0117】
14.鉄含有量を、酸蒸解およびICPによる分析によって決定する。
【0118】
15.灰分含有量を、TAPPI T211−om02にしたがって決定する。
【0119】
16.明度をTAPPI T525−om02にしたがって決定する。
【0120】
17.CIE白度をTAPPI法 T560にしたがって決定する。
18.ミューレン破裂をTAPPI T807にしたがって測定する。
19.PFIを上に記載するように測定する。
20.濾過性を上に記載するように測定する。
【0121】
(実施例1)
サザンパインセルロースを、1599T/Dのパルプ製造速度で操作し、液流が並流である連続蒸解器で蒸解した。パルプに16.7%の有効アルカリを加えた。投入した白液は、含浸釜と蒸解器とに分配され、投入量の半分をそれぞれ適用した。カッパー価は20.6に達した。
【0122】
次いで、セルロース繊維を洗浄し、従来の二段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を1.6%の率で適用し、苛性化剤を2.1%の率で適用した。脱リグニンを205.5°の温度で行った。ブレンドチェスト(blend chest)で測定したカッパー価は7.6であった。
【0123】
脱リグニンしたパルプをD(EOP)D(EP)Dのシーケンスで、5段階漂白プラントで漂白した。1番目のD段階(D
0)を温度144.3°F、およびpH2.7で行った。二酸化塩素を0.9%の量で適用した。酸を17.8lb/トンの量で適用した。
【0124】
1番目のE段階(E
1)を温度162.9°F、およびpH11.2で行った。苛性化剤を0.8%の量で適用した。酸素を10.8lb/トンの量で適用した。過酸化水素を6.7lb/トンの量で適用した。
【0125】
2番目のD段階(D
1)を温度約161.2°F、およびpH3.2で行った。二酸化塩素を0.7%の量で適用した。苛性化剤を0.7lb/トンの量で適用した。
【0126】
2番目のE段階(E
2)を温度164.8°F、およびpH10.7で行った。苛性化剤を0.15%の量で適用した。過酸化水素は、量が0.14%であった。
【0127】
3番目のD段階(D
2)を温度176.6°F、およびpH4.9で行った。二酸化塩素を0.17%の量で適用した。
【0128】
結果を以下の表に記載する。
【0129】
【表1】
【0130】
(実施例2)
サザンパインセルロースを、1676T/Dのパルプ製造速度で操作し、液流が並流である連続蒸解器で蒸解した。パルプに16.5%の有効アルカリを加えた。投入した白液は、含浸釜と蒸解器とに分配され、投入量の半分をそれぞれ適用した。カッパー価は20.9に達した。
【0131】
次いで、セルロース繊維を洗浄し、従来の二段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を2%の率で適用し、苛性化剤を2.9%の率で適用した。脱リグニンを206.1°の温度で行った。ブレンドチェストで測定したカッパー価は7.3であった。
【0132】
脱リグニンしたパルプをD(EOP)D(EP)Dのシーケンスで、5段階漂白プラントで漂白した。1番目のD段階(D
0)を温度144.06°F、およびpH2.3で行った。二酸化塩素を1.9%の量で適用した。酸を36.5lb/トンの量で適用した。
【0133】
1番目のE段階(E
1)を温度176.2°F、およびpH11.5で行った。苛性化剤を1.1%の量で適用した。酸素を10.9lb/トンの量で適用した。過酸化水素を8.2lb/トンの量で適用した。
【0134】
2番目のD段階(D
1)を温度178.8°F、およびpH3.8で行った。二酸化塩素を0.8%の量で適用した。苛性化剤を0.07lb/トンの量で適用した。
【0135】
2番目のE段階(E
2)を温度178.5°F、およびpH10.8で行った。苛性化剤を0.17%の量で適用した。過酸化水素は、量が0.07%であった。
【0136】
3番目のD段階(D
2)を温度184.7°F、およびpH5.0で行った。二酸化塩素を0.14%の量で適用した。
【0137】
結果を以下の表に記載する。
【0138】
【表2】
【0139】
(実施例3)
サザンパインセルロースを、1715T/Dのパルプ製造速度で操作し、液流が並流である連続蒸解器で蒸解した。パルプに16.9%の有効アルカリを加えた。投入した白液は、含浸釜と蒸解器とに分配され、投入量の半分をそれぞれ適用した。蒸解を温度329.2°Fで行った。カッパー価は19.4に達した。
【0140】
次いで、セルロース繊維を洗浄し、従来の二段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を2%の率で適用し、苛性化剤を3.2%の率で適用した。脱リグニンを209.4°の温度で行った。ブレンドチェストで測定したカッパー価は7.5であった。
【0141】
脱リグニンしたパルプをD(EOP)D(EP)Dのシーケンスで、5段階漂白プラントで漂白した。1番目のD段階(D
0)を温度142.9°F、およびpH2.5で行った。二酸化塩素を1.3%の量で適用した。酸を24.4lb/トンの量で適用した。
【0142】
1番目のE段階(E
1)を温度173.0°F、およびpH11.4で行った。苛性化剤を1.21%の量で適用した。酸素を10.8lb/トンの量で適用した。過酸化水素を7.4lb/トンの量で適用した。
【0143】
2番目のD段階(D
1)を少なくとも約177.9°Fの温度、およびpH3.7で行った。二酸化塩素を0.7%の量で適用した。苛性化剤を0.34lb/トンの量で適用した。
【0144】
2番目のE段階(E
2)を温度175.4°F、およびpH11で行った。苛性化剤を0.4%の量で適用した。過酸化水素は、量が0.1%であった。
【0145】
3番目のD段階(D
2)を温度178.2°F、およびpH5.4で行った。二酸化塩素を0.15%の量で適用した。
【0146】
結果を以下の表に記載する。
【0147】
【表3】
【0148】
(実施例4)
1680トンのサザンパインセルロースを、1680T/Dのパルプ製造速度で操作し、液流が並流である連続蒸解器で蒸解した。パルプに18.0%の有効アルカリを加えた。投入した白液は、含浸釜と蒸解器とに分配され、投入量の半分をそれぞれ適用した。カッパー価は17に達した。
【0149】
次いで、セルロース繊維を洗浄し、従来の二段階酸素脱リグニンプロセスで酸素脱リグニンした。酸素を2%の率で適用し、苛性化剤を3.15%の率で適用した。脱リグニンを210°の温度で行った。ブレンドチェストで測定したカッパー価は6.5であった。
【0150】
脱リグニンしたパルプをD(EOP)D(EP)Dのシーケンスで、5段階漂白プラントで漂白した。1番目のD段階(D
0)を温度140°Fで行った。二酸化塩素を1.3%の量で適用した。酸を15lb/トンの量で適用した。
【0151】
1番目のE段階(E
1)を温度180°Fで行った。苛性化剤を1.2%の量で適用した。酸素を10.5lb/トンの量で適用した。過酸化水素を8.3lb/トンの量で適用した。
【0152】
2番目のD段階(D
1)を少なくとも約180°Fの温度で行った。二酸化塩素を0.7%の量で適用した。苛性化剤は適用しなかった。
【0153】
2番目のE段階(E
2)を温度172°Fで行った。苛性化剤を0.4%の量で適用した。過酸化水素は、量が0.08%であった。
【0154】
3番目のD段階(D
2)を温度180°Fで行った。二酸化塩素を0.18%の量で適用した。
【0155】
結果を以下の表に記載する。
【0156】
【表4】
【0157】
(実施例5)
上の実施例にしたがって製造した繊維サンプルの特徴(白度および明度を含む)を測定した。結果を以下に報告する。
【0158】
【数1】
【0159】
【数2】
【0160】
(実施例6)
実施例1〜4と同じ方法によって製造した繊維の溶解度で、S10、S18、R10およびR18値を試験した。結果を以下に記載する。
【0161】
【数3】
【0162】
(実施例7)
実施例5の方法によって製造した繊維の炭水化物含有量を測定した。以下の1番目の2つの表は、2つの決定因子の平均に基づくデータを報告する。1つめの表は、本発明の繊維であり、2つめの表はコントロールである。2番目の2つの表は、100%に正規化した値である。
【0163】
【数4】
【0164】
【数5】
【0165】
(実施例8)
(本開示の繊維を調製する方法)
Lo−Solids(登録商標)による下向流蒸煮を用いた2容器型の連続式蒸解釜でサザンパインチップを蒸煮した。白液の適用は、含浸容器中、有効アルカリ量(EA)として8.42%であり、クエンチ循環において8.59%であった。クエンチ温度は、166℃であった。蒸解後のカッパー価は、20.4であった。褐色ストックパルプを、2.98%水酸化ナトリウム(NaOH)および2.31%酸素(O
2)を適用した2段階酸素脱リグニンシステムでさらに脱リグニンした。温度は、98℃であった。1番目の反応釜の圧力は758kPaであり、2番目の反応釜は、372kPaであった。カッパー価は、6.95であった。
【0166】
酸素脱リグニンしたパルプを、5段階漂白プラントで漂白した。1番目の二酸化塩素段階(D0)を、61℃の温度、2.4のpHで適用された0.90%の二酸化塩素(ClO
2)を用いて行った。
【0167】
2番目または酸化アルカリ性抽出段階(EOP)を76℃の温度で行った。NaOHを0.98%で、過酸化水素(H
2O
2)を0.44%で、酸素(O
2)を0.54%で適用した。酸素脱リグニン後のカッパー価は、2.1であった。
【0168】
3番目または二酸化塩素段階(D1)を、74℃の温度、3.3のpHで行った。ClO
2を0.61%で、NaOHを0.02%で適用した。0.5% Capillary
CED粘度は、10.0mPa・sであった。
【0169】
4番目の段階を変え、低重合度パルプを製造した。硫酸第一鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)を、D1洗浄釜のリパルパー(repulper)で、パルプに対して75ppmのFe
+2を提供する速度で、2.5lb/gal水溶液として加えた。この段階のpHは、3.3であり、温度は、80℃であった。この段階の供給ポンプの吸引時に、H
2O
2をパルプに対して0.26%で適用した。
【0170】
5番目または最終の二酸化塩素段階(D2)を、0.16%ClO
2を適用し、80℃の温度、3.9のpHで行った。粘度は、5.0mPa・sであり、明度は、90.0%
ISOであった。
【0171】
鉄含有量は、10.3ppmであり、測定された抽出物は、0.018%であり、灰分含有量は、0.1%であった。さらなる結果を以下の表に記載する。
【0172】
(実施例9)
Lo−Solids(登録商標)による下向流蒸煮を用いた2容器型の連続式蒸解釜でサザンパインチップを蒸煮した。白液の適用は、含浸容器中、有効アルカリ量(EA)として8.12%であり、クエンチ循環において8.18%であった。クエンチ温度は、167℃であった。蒸解後のカッパー価は、20.3であった。褐色ストックパルプを、3.14%のNaOHおよび1.74%のO
2を適用した2段階酸素脱リグニンシステムでさらに脱リグニンした。温度は、98℃であった。1番目の反応釜の圧力は、779kPaであり、2番目の反応釜は、372kPaであった。酸素脱リグニン後のカッパー価は、7.74であった。
【0173】
酸素脱リグニンしたパルプを5段階漂白プラントで漂白した。1番目の二酸化塩素段階(D0)を、68℃の温度、2.4のpHで適用された1.03%のClO
2を用いて行った。
【0174】
2番目または酸化アルカリ性抽出段階(EOP)を87℃の温度で行った。NaOHを0.77%で、H
2O
2を0.34%で、O
2を0.45%で適用した。この段階の後のカッパー価は、2.2であった。
【0175】
3番目または二酸化塩素段階(D1)を、76℃の温度、3.0のpHで行った。ClO
2を0.71%で、NaOHを0.11%で適用した。0.5% Capillary
CED粘度は、10.3mPa・sであった。
【0176】
4番目の段階を変え、低重合度パルプを製造した。硫酸第一鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)を、D1洗浄釜のリパルパーで、パルプに対して75ppmのFe
+2を提供する速度で、2.5lb/gal水溶液として加えた。この段階のpHは、3.3であり、温度は、75℃であった。この段階の供給ポンプの吸引時に、H
2O
2をパルプに対して0.24%で適用した。
【0177】
5番目または最終の二酸化塩素段階(D2)を、0.14%ClO
2を適用し、75℃の温度、3.75のpHで行った。粘度は、5.0mPa・sであり、明度は、89.7% ISOであった。
【0178】
鉄含有量は、15ppmであった。さらなる結果を以下の表に記載する。
【0179】
(実施例10)
Lo−Solids(登録商標)による下向流蒸煮を用いた2容器型の連続式蒸解釜でサザンパインチップを蒸煮した。白液の適用は、含浸容器中、有効アルカリ量(EA)として7.49%であり、クエンチ循環において7.55%であった。クエンチ温度は、166℃であった。蒸解後のカッパー価は、19.0であった。褐色ストックパルプを、3.16%のNaOHおよび1.94%のO
2を適用した2段階酸素脱リグニンシステムでさらに脱リグニンした。温度は、97℃であった。1番目の反応釜の圧力は、758kPaであり、2番目の反応釜は、337kPaであった。酸素脱リグニン後のカッパー価は、6.5であった。
【0180】
酸素脱リグニンしたパルプを5段階漂白プラントで漂白した。1番目の二酸化塩素段階(D0)を、67℃の温度、2.6のpHで適用された0.88%のClO
2を用いて行った。
【0181】
2番目または酸化アルカリ性抽出段階(EOP)を83℃の温度で行った。NaOHを0.74%で、H
2O
2を0.54%で、O
2を0.45%で適用した。この段階の後のカッパー価は、1.8であった。
【0182】
3番目または二酸化塩素段階(D1)を、78℃の温度、2.9のpHで行った。ClO
2を0.72%で、NaOHを0.04%で適用した。0.5% Capillary
CED粘度は、10.9mPa・sであった。
【0183】
4番目の段階を変え、低重合度パルプを製造した。硫酸第一鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)を、D1洗浄釜のリパルパーで、パルプに対して75ppmのFe
+2を提供する速度で、2.5lb/gal水溶液として加えた。この段階のpHは、2.9であり、温度は、82℃であった。この段階の供給ポンプの吸引時に、H
2O
2をパルプに対して0.30%で適用した。
【0184】
5番目または最終の二酸化塩素段階(D2)を、0.14%ClO
2を適用し、77℃の温度、3.47のpHで行った。粘度は、5.1mPa・sであり、明度は、89.4% ISOであった。
【0185】
鉄含有量は、10.2ppmであった。さらなる結果を以下の表に記載する。
【0186】
(実施例11−比較例)
Lo−Solids(登録商標)による下向流蒸煮を用いた2容器型の連続式蒸解釜でサザンパインチップを蒸煮した。白液の適用は、含浸容器中、有効アルカリ量(EA)として8.32%であり、クエンチ循環において8.46%であった。クエンチ温度は、162℃であった。蒸解後のカッパー価は、27.8であった。褐色ストックパルプを、2.44% NaOHおよび1.91%のO
2を適用した2段階酸素脱リグニンシステムでさらに脱リグニンした。温度は、97℃であった。1番目の反応釜の圧力は、779kPaであり、2番目の反応釜は、386kPaであった。酸素脱リグニン後のカッパー価は、10.3であった。
【0187】
酸素脱リグニンしたパルプを5段階漂白プラントで漂白した。1番目の二酸化塩素段階(D0)を、66℃の温度、2.4のpHで適用された0.94%のClO
2を用いて行った。
【0188】
2番目または酸化アルカリ性抽出段階(EOP)を83℃の温度で行った。NaOHを0.89%で、H
2O
2を0.33%で、O
2を0.20%で適用した。この段階の後のカッパー価は、2.9であった。
【0189】
3番目または二酸化塩素段階(D1)を、温度77℃、pH2.9で行った。ClO
2を0.76%で、NaOHを0.13%で適用した。0.5% Capillary CED粘度は、14.0mPa・sであった。
【0190】
4番目の段階を変え、低重合度パルプを製造した。硫酸第一鉄七水和物(FeSO
4・7H
2O)を、D1洗浄釜のリパルパーで、パルプに対して150ppmのFe
+2を提供する速度で、2.5lb/gal水溶液として加えた。この段階のpHは、2.6であり、温度は、82℃であった。この段階の供給ポンプの吸引時に、H
2O
2をパルプに対して1.6%で適用した。
【0191】
5番目または最終の二酸化塩素段階(D2)を、0.13%ClO
2を適用し、85℃の温度、3.35のpHで行った。粘度は、3.6mPa・sであり、明度は、88.7% ISOであった。
【0192】
上の実施例で製造されたそれぞれの漂白したパルプから、気流フレクト乾燥セクション
【0193】
【化1】
【0194】
を有するFourdrinier型パルプ乾燥器でパルプ板を製造した。各パルプのサンプルを集め、化学組成および繊維特性を分析した。結果を表5に示す。
【0195】
この結果は、増加した脱リグニンおよび酸触媒による過酸化物段階(実施例8〜10)の組み合わせによる低粘度またはDP
wを用いて製造されたパルプは、標準的な脱リグニンを用い、増加した酸触媒による過酸化物段階を用いた比較例よりも小さいカルボニル含有量を有することを示す。本発明のパルプは、苛性化剤に基づくプロセス(例えば、セルロースエーテルおよびビスコースの製造)を行ったとき、顕著に低い黄変を示す。
【0196】
結果を以下の表に示す。
【0197】
【表5】
【0198】
(実施例12−黄変の試験)
実施例9および比較例からの乾燥したパルプシートを3インチ×3インチの四角形に切断した。明度および色値を、CIE L*、a*、b*座標として、Hunterlab
MiniScan(商標) XE装置で決定した。それぞれの四角形を、トレイに別個に置き、30mlの18%NaOHを加えてシートを飽和した。5分後に、この四角形をトレイおよびNaOH溶液から取り出した。明度および色値を、飽和シートで測定した。
【0199】
L*、a*、b*システムは、以下のような色空間を記載する。
【0200】
L*=0(黒色)−100(白色)
a*=−a(緑色)−+a(赤色)
b*=−b(青色)−+b(黄色)
結果を表6に示す。実施例9のパルプは、飽和サンプルについて小さなb*値および飽和したときのb*値の増加が小さいことからわかるように、顕著に低い黄変を示す。
【0201】
【表6】
【0202】
(実施例13−標準的な綿毛状パルプ)
Lo−Solids(登録商標)による下向流蒸煮を用いた2容器型の連続式蒸解釜でサザンパインチップを蒸煮した。白液の適用は、含浸容器中、有効アルカリ量(EA)として8.32%であり、クエンチ循環において8.46%であった。クエンチ温度は、162℃であった。蒸解後のカッパー価は、27.8であった。褐色ストックパルプを、2.44%のNaOHおよび1.91%のO
2を適用した2段階酸素脱リグニンシステムでさらに脱リグニンした。温度は、97℃であった。1番目の反応釜の圧力は、779kPaであり、2番目の反応釜は、386kPaであった。酸素脱リグニン後のカッパー価は、10.3であった。
【0203】
酸素脱リグニンしたパルプを5段階漂白プラントで漂白した。1番目の二酸化塩素段階(D0)を、66℃の温度、2.4のpHで適用された0.94%のClO
2を用いて行った。
【0204】
2番目または酸化アルカリ性抽出段階(EOP)を83℃の温度で行った。NaOHを0.89%で、H
2O
2を0.33%で、O
2を0.20%で適用した。この段階の後のカッパー価は、2.9であった。
【0205】
3番目または二酸化塩素段階(D1)を、77℃の温度、2.9のpHで行った。ClO
2を0.76%で、NaOHを0.13%で適用した。0.5% Capillary
CED粘度は、14.0mPa・sであった。
【0206】
4番目の段階(EP)は、過酸化物で強化したアルカリ性抽出段階であった。この段階のpHは、10.0であり、温度は、82℃であった。NaOHをパルプに対して0.29%で適用した。この段階の供給ポンプの吸引時に、H
2O
2をパルプに対して0.10%で適用した。
【0207】
5番目または最終の二酸化塩素段階(D2)を、0.13%ClO
2を適用し、85℃の温度、3.35のpHで行った。粘度は、13.2mPa・sであり、明度は、90.9% ISOであった。
【0208】
(実施例14−界面活性剤で処理されたパルプ)
実施例1〜4にしたがって作製した繊維を、セルロース溶液から界面活性剤DB999で処理し、界面活性剤で処理されたパルプを作製した。DB999は、製造業者の特許品であり、セルロース溶液であるが、植物系脂肪酸四級化合物であることが公知である。この界面活性剤を、パルプ機械のヘッドボックスの直前で、0.25lb/トン〜1.5lb/トンの量で加えた。その後、パルプからベイルを作製した。
【0209】
【数6】
【0210】
界面活性剤で処理された繊維を、ビスコースを調製するプロセスで使用した。処理条件および繊維の特性を
図3、4、および5に記載する。PFI結果を以下に記載する。
【0211】
【数7】
【0212】
多くの実施形態を記載してきた。それにもかかわらず、本開示の精神および範囲から逸脱することなく、種々の改変がなされてもよいことが理解され得る。したがって、他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内である。