【実施例】
【0285】
実施例1.材料および方法
一過性発現系での植物細胞の遺伝子発現
外因性遺伝子構築物を、基本的にVoinnet et al.(2003)およびWood et al.(2009)が説明する通りに、一過性発現系で植物細胞に発現させた。CaMV 35Sプロモーターといった強度の恒常的プロモーターから発現されるコード領域を含むプラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に導入した。国際公開第2010/057246号に記載される通り、p19ウイルス性サイレンシング抑制因子発現のためのキメラ遺伝子35S:p19を別でAGL1内に導入した。組み換えアグロバクテリウム細胞を、50mg/Lカナマイシンおよび50mg/Lリファンピシンを添加したLBブロス内で、28℃で静止期まで成長させた。次いで、10mMのMES pH5.7、10mMのMgCl
2および100μΜアセトシリンゴンを含む浸潤緩衝液内でOD600=1.0まで再懸濁する前に、室温で15分間、5000gでの遠心分離によって細菌をペレット状にした。次いで、35S:p19および対象の試験キメラ構築物(複数可)を含む同じ体積のアグロバクテリウム培養物を、葉の組織への浸潤に先立って混合する前に、細胞を振動させながら28℃で3時間インキュベートした。一般的に、浸潤後、葉のディスクを脂肪酸のGC分析のために取り出して凍結乾燥させる前に、植物をさらに5日間成長させた。
【0286】
内部標準として量が既知であるヘキサデカン酸と一緒に、80℃で2時間、メタノール/HCl/ジクロロメタン(10/1/1 v/v)溶液中試料をインキュベートすることで、凍結乾燥試料における全ての葉脂質の脂肪酸メチルエステル(FAME)を作製した。FAMEをヘキサン/DCMで抽出し、ヘキサン中、小体積まで濃縮し、GCに注入した。脂質分画に存在する各および総脂肪酸の量を内部標準の既知の量をもとに定量化した。
【0287】
脂肪酸のガスクロマトグラフィー(GC)分析
30mのSGE−BPX70カラム(70%シアノプロピルポリシルフェニレン−シロキサン、0.25mmの内部直径、0.25mmのフィルムの厚さ)、FID、分割/非分割注入器ならびにアジレント・テクノロジー社7693シリーズ自動回収装置および注入器を備えたアジレント・テクノロジー社7890A GC(米国、カリフォルニア州、パロアルト)を用いたガスクロマトグラフィーによって、FAMEを分析した。ヘリウムをキャリアガスとして用いた。150℃のオーブン温度で試料を分割モード(50:1比)で注入した。注入後、オーブン温度を150℃で1分間維持し、次いで、1分あたり3℃ずつ210℃まで上げ、再度1分あたり50℃ずつ240℃まで上げ、最終的に、240℃で1.4分間維持した。アジレント・テクノロジー社ChemStationソフトウェア(Rev B.04.03(16)、米国、カリフォルニア州、パロアルト)で、既知の量である外部標準GLC−411(Nucheck)およびC17:0−ME内部標準の反応をもとにピークを定量化した。
【0288】
脂質の液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)分析
内部定量化標準として既知の量のtri−C17:0−TAGを添加した後、開花から12日後(daf)の、凍結乾燥した発育中の種子および成熟した種子から全ての脂質を抽出した。5mgの乾燥材料あたりで、抽出した脂質をブタノール:エタノール(1:1 v/v)中10mMのブチル化ヒドロキシトルエン1mLに溶解し、アジレント社1200シリーズLCおよび6410bエレクトロスプレーイオン化3連4重極LC−MSを用いて分析した。0.2mL/分のフロー速度でバイナリ勾配を操作するAscentis Express RP−Amideカラム(50mm×2.1mm、2.7μm、Supelco)を用いて、脂質をクロマトグラフィーによって分離した。移動相は:A.H
2O:メタノール:テトラヒドロフラン(50:20:30 v/v/v)中10mMの蟻酸アンモニウム;B.H
2O:メタノール:テトラヒドロフラン(5:20:75、v/v/v)中10mMの蟻酸アンモニウムであった。マルチプルリアクションモニタリング(MRM)リストは、30Vの衝突エネルギーおよび60Vのフラグメンターを用いて、次の主要な脂肪酸をもとにした:16:0、18:0、18:1、18:2、18:3、18:4、20:1、20:2、20:3、20:4、20:5、22:4、22:5、22:6。アンモニア化合プリカーサーイオンおよび22:6のニュートラルロスによるプロダクトイオンをもとに、各MRM TAGを同定した。10μΜのトリステアリン外部標準を用いてTAGを定量化した。
【0289】
種子脂肪酸プロフィールおよび油含有量の測定
種子油含有量を測定する予定であった場合、種子を24時間デシケーター内で乾燥させ、およそ4mgの種子を、テフロン加工のねじ口を含む2mlのガラス小瓶に移した。0.1mlトルエン中に溶解した0.05mgトリヘプタデカノインを内部標準として小瓶に添加した。
【0290】
0.7mlの1NメタノールHCl(Supelco)を、種子材料を含む小瓶に添加することで、種子FAMEを調製し、簡単に撹拌し、80℃で2時間インキュベートした。室温まで下げた後、0.3mlの0.9%NaCl(w/v)および0.1mlヘキサンを小瓶に添加し、10分間、Heidolph Vibramax110でよく混合した。FAMEを0.3mlのガラス製インサートに集め、水素炎イオン化検出器(FID)を伴うGCで、前記した通りに分析した。
【0291】
市販の標準GLC−411(ニューチェック・プレップ社(NU−CHEK PREP,INC.,)、米国)に存在する同じFAMEの既知の量のピーク面積反応をもとに、各FAMEのピーク面積をまず校正した。GLC−411は、C8:0からC22:6に及ぶ、同量の31個の脂肪酸(重量%)を含む。標準に存在しなかった脂肪酸の場合、発明者らは最も類似したFAMEのピーク面積反応を取り出した。たとえば、16:ld9のFAMEのピーク面積反応を16:ld7に関して使用し、C22:6のFAME反応をC22:5に関して使用した。校正した面積を用いて、内部標準質量との比較によって、試料中の各FAMEの質量を算出した。油はTAGの形態で主に保存され、その重量を、FAME重量をもとに算出した。各FAMESのモルを算出し、FAMEの合計モルを3で割ることで、グリセロールの合計モルを算出した。41および15がそれぞれグリセロール部分およびメチル基の分子量である、重量%油=100×((41×合計モルFAME/3)+(合計gFAME−(15×合計モルFAME)))/g種子という関係を用いて、グリセロールおよび脂肪アシル部分の合計としてTAGを算出した。
【0292】
油試料のステロール含有量の分析
およそ10mgの油の試料を、内部標準として添加した一定分量のC24:0モノオールと一緒に、80%MeOH中4mLの5%KOHを用い、テフロン加工のねじ口のガラス管内で80℃にて2時間加熱し、けん化した。反応混合物を冷やした後、2mLのMilli−Q水を添加し、振動および撹拌することで、ステロールを2mLのヘキサン:ジクロロメタン(4:1 v/v)に抽出した。混合物を遠心分離し、ステロール抽出物を取り除き、2mLのMilli−Q水で洗浄した。振動および遠心分離のあと、ステロール抽出物を次いで除去した。窒素ガスの流れを利用して抽出物を蒸発させ、200mLのBSTFAを用い、および80℃で2時間加熱して、ステロールをシリル化した。
【0293】
ステロールのGC/GC−MS分析のために、ステロール−OTMSi誘導体を40℃のヒートブロック上の窒素ガスの流れ下で乾燥し、次いで、GC/GC−MS分析の直前にクロロホルムまたはヘキサンに再溶解した。ステロール−OTMS誘導体を、Superlco Equity(商標)−1溶融石英キャピラリーカラム(15m×0.1mm内部直径、0.1μmのフィルムの厚さ)、FID、分割/非分割注入器ならびにアジレント・テクノロジー社7683Bシリーズ自動回収装置および注入器が取り付けられたアジレント・テクノロジー社6890A GC(米国、カリフォルニア州、パロアルト)を用いたガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。ヘリウムをキャリアガスとして使用した。120℃のオープン温度で、非分割モードで試料を注入した。注入後、オーブン温度を1分あたり10℃ずつ270℃まで上げ、最終的に1分あたり5℃ずつ300℃まで上げた。アジレント・テクノロジー社ChemStationソフトウェア(米国、カリフォルニア州、パロアルト)でピークを定量化した。GC結果は各成分の面積の±5%のエラーに影響される。
【0294】
GC−質量分析(GC−MS)の分析をFinnigan Thermoquest GCQ GC−MSおよびFinnigan Thermo Electron Corporation GC−MS上で実施した;双方のシステムにカラム上注入器およびThermoquest Xcaliburソフトウェア(米国、テキサス州、オースティン)を取り付けた。各GCに、上記したものと類似した極性のキャピラリーカラムを取り付けた。質量スペクトルデータを用いて、保持時間データを、信憑性のある実験室標準に関して得られた保持時間データと比較することで、それぞれの成分を同定した。試料バッチと同時に、完全な手続き上のブランク分析を実施した。
【0295】
RT−PCR条件
逆転写PCR(RT−PCR)増幅は、一般的に、製造業者の説明にしたがって10pmolのフォワードプライマーおよび30pmolのリバースプライマー、2.5mMの最終濃度までのMgSC
4、緩衝液を伴う400ngの全RNAならびにヌクレオチド成分を用いた、体積25μLのSuperscript III One−Step RT−PCRシステム(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用して実行された。典型的な温度レジームは:逆転写が起こるために30分間45℃で1サイクル;次いで、2分間94℃で1サイクル、引き続き、30秒間94℃、30秒間52℃、1分間70℃の40サイクル;次いで、反応混合物を5℃に冷やす前に2分間72℃の1サイクルであった。
【0296】
35S−LEC2での誘導によるB.ナプス体細胞胚の作製
【0297】
B.ナプス(cv.Oscar)種子を、(Attila Kereszt et al.、2007)が説明する通り、塩素ガスを用いて滅菌した。滅菌した種子を、pH5.8に調節した0.8%寒天を伴う1/2強度のMS培地(MurashigeおよびSkoog、1962)上で発芽させ、6〜7日間、24℃にて、18/6時間(明/暗)の光周期を伴う蛍光灯(50μΕ/m
2s)下で成長させた。2〜4mmの柄の長さである子葉柄(Cotyledonary petioles)をこれら実生から無菌的に単離し、外植片として使用した。1つは種子特異的バイナリーベクターを保有し、2つ目は35S−LEC2構築物を伴う、形質転換したA.ツメファシエンス株AGL1の培養物を新しいプレートの単一コロニーから接種し、適切な抗生物質を伴う10mLのLB培地内で成長させ、28℃で、150rpmの撹拌を伴いながら一晩成長させた。細菌細胞を5分間の4000rpmの遠心分離で回収し、2%スクロースを含むMS培地で洗浄し、10mLの同じ培地内に再懸濁し、100μMまでアセトシリンゴンを添加した後、4時間、必要に応じて選択のための抗生物質と成長させた。植物組織への添加の2時間前に、スペルミジンを1.5mMの最終濃度まで添加し、細菌の最終密度を新しい培地でOD600nm=0.4まで調節した。1つは種子特異的構築物を保有し、もう一方は35S−AtLEC2を保有する、2つの細菌培養物を、1:1から1:1.5比で混合した。
【0298】
新たに単離したB.ナプス子葉柄を、20mLのA.ツメファシエンス培養物で6分間感染させた。子葉柄を滅菌フィルター紙上にブロットして余分なA.ツメファシエンスを除去し、次いで、同時培養培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、L−システイン(50mg/L)を添加した100μΜアセトシリンゴン、アスコルビン酸(15mg/L)およびMES(250mg/1)を有するMS培地)に移した。プレートを微小孔テープで密封し、24℃で48時間、暗所でインキュベートした。同時培養した外植片を事前選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、3mg/LのAgNO
3、250mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含むMS)に移し、4〜5日間、24℃で、16時間/8時間の光周期を伴って培養した。種子特異的ベクター上の選択マーカー遺伝子にしたがって、外植片を次いで選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、3mg/LのAgNO
3、250mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含むMS)に移し、2〜3週間、24℃で、16時間/8時間の光周期を伴って培養した。緑色の胚形成カルスを伴う外植片をホルモンフリーMS培地(3mg/LのAgNO
3、250mg/Lセフォタキシム、50mg/Lチメンチンおよび選択剤を伴うMS)に移し、もう2〜3週間培養した。選択培地上で生き残った外植片から単離した魚雷または子葉期の胚を、GCを使って、それらの全ての脂質の脂肪酸組成に関して分析した。
【0299】
実施例2.シロイヌナズナ種子のトランスジェニックDHA経路の安定な発現
【0300】
バイナリーベクターの作製
バイナリーベクターpJP3416−GA7およびpJP3404はそれぞれ、5つのデサチュラーゼおよび2つのエロンガーゼをコードする7つの異種性脂肪酸生合成遺伝子、ならびに、各ベクターに存在するT−DNAの左境界と右境界の反復の間に植物選択マーカーを含んでいた(
図2および3)。配列番号1は、右境界から左境界の配列のpJP3416−GA7のT−DNA領域のヌクレオチド配列を提供する。双方の遺伝子構築物は、ラカンセア・クルイベリΔ12−デサチュラーゼ(配列番号1のヌクレオチド14143〜16648を含む)、ピキア・パストリスω3デサチュラーゼ(配列番号1のヌクレオチド7654〜10156を含む)、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号1のヌクレオチド226〜2309を含む)、パブロバ・サリナΔ5およびΔ4デサチュラーゼ(それぞれ配列番号1のヌクレオチド4524〜6485および10157〜14142を含む)およびピラミモナス・コルダタΔ6およびΔ5エロンガーゼ(それぞれ配列番号1のヌクレオチド2310〜4523および17825〜19967を含む)をコードする、植物コドン最適化遺伝子を含んでいた。配列番号1に対して、バイナリーベクターpJP3416−GA7のT−DNA(方向:右境界から左境界の配列)領域の特定の領域は次の通りである:
ヌクレオチド1〜163:右境界;480〜226、アグロバクテリウム・ツメファシエンスノパリンシンターゼターミネーター(TER_NOS);1883〜489、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ;2309〜1952、セイヨウアブラナ切断ナピンプロモーター(PRO_FPl);2310〜3243、シロイヌナズナFAE1プロモーター(PRO_FAE1);3312〜4181、ピラミモナス・コルダタΔ6エロンガーゼ;4190〜4523、グリシンマックスレクチンターミネーター(TER_レクチン);4524〜4881、PRO_FPl;4950〜6230:パブロバ・サリナΔ5デサチュラーゼ;6231〜6485:TER_NOS;7653〜6486、ニコチアナ・タバカムRb7マトリックス付着領域(MAR);8387〜7654、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン1ターミネーター(TER_Cnl1);9638〜8388、ピキア・パストリスω3デサチュラーゼ;10156〜9707、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン1プロモーター(PRO_Cnl1);10157〜12189、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン1プロモーター;12258〜13604、パブロバ・サリナΔ4デサチュラーゼ;13605〜14142、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン2ターミネーター;14143〜14592、PRO_Cnl1;14661〜15914、ラカンセア・クルイベリΔ12デサチュラーゼ;15915〜16648、TER_Cnl1;17816〜16649、MAR;17825〜18758、PRO_FAE1;18827〜19633、ピラミモナス・コルダタΔ5エロンガーゼ;19634〜19967、TER_レクチン;19990〜20527、複製エンハンサー領域を伴うカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター;20537〜21088、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスホスフィノトリシン−N−アセチルトランスフェラーゼ;21097〜21349、TER_NOS;21367〜21527、左境界。
【0301】
構築物の7つのコード領域は、それぞれ、種子特異的プロモーターの制御下にあり、3つの異なるプロモーター、すなわち、切断セイヨウアブラナナピンプロモーター(pBnFP1)、シロイヌナズナFAE1プロモーター(pAtFAE1)およびリヌム・ウシタティスシムムコンリニン1プロモーター(pLuCnl1)が使用された。7つの脂肪酸生合成遺伝子は、一緒に、18:1
Δ9(オレイン酸)から22:6
Δ4、7、10、13、16、19(DHA)に変換するよう設計された全体のDHA合成経路をコードしていた。双方のバイナリーベクターは、複製エンハンサー領域を伴うカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35SプロモーターおよびA.ツメファシエンスnos3’ポリアデニル化領域−転写ターミネーターに操作可能に結合した領域をコードするBAR植物選択マーカーを含んでいた。植物選択マーカーはT−DNA領域の左境界に隣接して配置され、したがって、植物細胞へのT−DNA導入の方向に関して、T−DNA上で遠位に位置した。これは、選択マーカー遺伝子を含まない可能性が高いT−DNAの部分的導入が選択されない可能性を増大した。pJP3416−GA7およびpJP3404はそれぞれアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)由来のRiA4複製開始点を含んだ(Hamilton、1997)。
【0302】
配列番号1のヌクレオチド226〜19975に対応するDNA領域(GA7領域)を合成し、この領域をPspOMI部位の受容バイナリーベクターpJP3416に挿入することで、pJP3416−GA7を作製した。GA7上の各脂肪酸生合成遺伝子は、プロモーターと翻訳開始ATGとの間に、各コード領域と操作可能に結合して遺伝子から生成されるmRNAの翻訳効率を最大化するタバコモザイクウイルス5’非翻訳領域(5’UTR)配列を含んでいた。GA7構築物はまた、Hall et al.(1991)が説明する通り、2つのニコチアナ・タバカムRb7マトリックス付着領域(MAR)配列を含んでいた。核付着領域と時折呼ばれるMAR配列は、インビトロで核マトリックスに特異的に結合すると知られており、インビボでクロマチンの核マトリックスへの結合を媒介し得る。MARは、トランスジェニックサイレンシングを緩和するように機能すると考えられている。pJP3416−GA7において、トランスジェニック発現カセットを遮断するDNAスペーサーとして作用するために、MARも、T−DNA領域内に挿入および配置される。GA7領域の挿入前のpJP3416ベクターは、境界間に植物選択マーカーカセットしか含んでいなかった。
【0303】
種子内のSDA生産のための遺伝子を含んだバイナリーベクターpJP3367に遺伝子カセットが添加される、制限酵素をもとにした順次挿入によって、遺伝子構築物pJP3404を作製した。この構築物は、双方ともB.ナプス切断ナピンプロモーター(FP1)によって発現されるL.クルイベリΔ12デサチュラーゼおよびP.パストリス(P.pastoris)ω3デサチュラーゼ、ならびに、A.タリアナFAE1プロモーターに発現されるM.プシラΔ6デサチュラーゼを含んでいた(
図4)。はじめに、A.タリアナFAD2イントロンをEcoRI部位に隣接させ、pJP3367MfeI部位にクローニングしてpJP3395を作製した。それぞれFAE1およびFP1プロモーターによって促進されるP.コルダタΔ6およびΔ5エロンガーゼカセットを含む断片を、pJP3395のKasI部位にクローニングして、pJP3398を作製した。次いで、pJP3398のRK2複製開始点をRiA4複製開始点で置き換えることで、pJP3399を作製した。それぞれFP1およびFAE1プロモーターによって促進されるP.サリナΔ5およびΔ4デサチュラーゼカセットを含むSbfI隣接断片をpJP3399のSbfI部位にクローニングすることで、最終バイナリーベクター、pJP3404を作製した。
【0304】
A.タリアナ(シロイヌナズナ)形質転換および脂肪酸組成の分析
キメラベクターをA.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換したアグロバクテリウムの培養物からの細胞を用いて、形質転換のためにフローラルディップ方法を利用してA.タリアナ(シロイヌナズナ)(生態型コロンビアおよびfad2変異体)植物を処理した(CloughおよびBent、1998)。成熟後、処理した植物からのT
1種子を回収しBAR選択マーカー遺伝子を含む植物の選択のためにPPTを含むMSプレート上に播いた。生き残った、健康なT
1実生を土壌に移した。植物が成熟まで成長し、自家受精が可能にした後、これら植物からのT
2種子を回収し、それらの種子脂質の脂肪酸組成を実施例1で記載する通りにGC分析によって分析した。
【0305】
pJP3416−GA7をコロンビア遺伝的背景へ使用した13個の形質転換体およびfad2変異体を使用した6個の形質転換体に関して、種子脂質のDHA量のデータが
図5に示される(T
2と標識されたレーン)。pJP3416−GA7構築物は、総脂肪酸含有量のパーセンテージとして表されるDHA量の、pJP3404構築物よりも平均的に少しだけ高い生産につながった。表4は、最も高いDHA量を伴うT
2系統からの総種子脂質の脂肪酸組成を示す。同一種子のオレイン酸からのDHAの生産における各酵素的工程に関して算出された転換効率が表5に示される。転換効率は、(%産物×100)/(%残存基質+%産物)で算出され、したがってパーセンテージで表される。
【0306】
pJP3416−GA7 T
2形質転換系統で生産されたDHAの最も高く観察された量は6.2%であり、さらに、0.5%EPAおよび0.2%DPA(系統#14)を伴った。これらのT
2種子は、導入遺伝子に対して依然と分離しており、すなわち、均一してホモ接合ではなかった。独立トランスジェニック種子の総種子脂質のプロフィール(表4)のまとめたデータが表6に示される。これらの種子の導入遺伝子の結果生産されたω3脂肪酸の量(コロンビア背景で内因的に生産されたALAの量を除外した全ての新ω3脂肪酸)が10.7%である一方で、ω6脂肪酸の量(18:2
Δ9、12を除外した全ての新ω6脂肪酸)は1.5%であった。これは、新ω3脂肪酸:新ω6脂肪酸の極端に有利な比、すなわち、7.3:1を意味する。
【0307】
pJP3416−GA7で形質転換した選択系統、すなわち、コロンビア背景の7、10、14、22および34と指定された系統ならびにfad2変異体背景の18、21および25と指定された系統のT
2種子を、インビトロのトランスジェニック実生の選択のためにPPTを含むMS培地上に播いた。各系統に対して20個のPPT耐性実生が土壌に移され、自家受精後成熟するまで成長させた。これらの植物は、選択マーカー遺伝子、および、したがって、植物ゲノムの少なくとも1つのT−DNA挿入物にとって、ホモ接合である傾向が非常に高かった。これら植物のT
3種子を回収し、それらの種子油の脂肪酸組成を、GCによって分析した。データは表7に表される。この分析によって、pJP3416−GA7構築物は、ホモ接合植物のT
3種子で、分離するT
2種子よりも高い量のω3LC−PUFA DHAを生産することが明らかになった。最大約13.9%のDHAがコロンビア背景で22.2と指定されたT
3のpJP3416−GA7形質転換系統で観察され、これは、ヘミ接合T
2種子における約5.5%から増加し、種子脂質含有量における総脂肪酸のパーセンテージとして、約24.3%の新ω3脂肪酸の合計量を伴った。新ω6脂肪酸は、総脂肪酸の1.1%の量であり、新ω3脂肪酸:新ω6脂肪酸の大変有利な比、すなわち約22:1を意味する。同様に、fad2変異体背景での形質転換は、種子脂質含有量における総脂肪酸のパーセンテージとして、11.5%のDHAを含む、20.6%の新ω3脂肪酸の合計をもたらした。
【0308】
【表4】
【0309】
【表5】
【0310】
【表6】
【0311】
【表7】
【0312】
オレイン酸からのDHAの生産のための経路における各酵素工程の酵素的転換効率が、より高いDHA量を有するT
3種子に関して表8に示される。系統22.2の種子におけるΔ12デサチュラーゼ転換効率は81.6%で、ω3デサチュラーゼ効率は89.1%であり、双方とも著しく高く、これらの真菌(酵母菌)酵素は発育中の種子で良く機能できたことを示す。DHA経路における他の外因性酵素の活性はω3基質に対して同様に高く、Δ6デサチュラーゼは42.2%効率、Δ6エロンガーゼは76.8%、Δ5デサチュラーゼは95.0%、Δ5エロンガーゼは88.7%およびΔ4デサチュラーゼは93.3%効率で作用した。ω6基質LA上のΔ6デサチュラーゼ活性はもっと低く、Δ6デサチュラーゼはLA上でたった0.7%の転換効率で作用した。GLAはたった0.4%の量で存在し、最も高いDHA含有量を伴うT
3種子で検知された20:2ω6を除いて、唯一の新ω6産物であった。独立トランスジェニック種子の総種子脂質プロフィール(表7)のまとめたデータが表9で示される。最も高いDHA量を有する系統に関するこのデータは、総ω6 FA(LAを含む)の総ω3 FA(ALAを含む)に対する0.10の比を含んだ。この系統の脂質における、新ω6 FA(LAを含まない)の新ω3 FA(ALAを含まない)に対する比は、0.05であった。総多価不飽和脂肪酸量は、これらの系統で50%超であり、少なくとも4つの系統で60%超であった。全体的な転換効率は次のように算出された:OAからEPA=21.8%、OAからDHA=18.0%、LAからEPA=26.9%、LAからDHA=22.2%、ALAからEPA=30.1%、ALAからDHA=24.9%。
【0313】
【表8】
【0314】
【表9】
【0315】
T
2系統22の子孫である、コロンビア背景のpJP3416−GA7系統22.2からのT
3種子を土壌に直接播き、得られたT
3植物の成熟種子の脂肪酸組成をGCで分析した。これらの種子の平均DHA量は、種子脂質の総脂肪酸のパーセンテージとして、13.3%±1.6(n=10)であった。表6で示される通り(右側の柱)、最も高い量のDHAを有する系統は、種子脂質の総脂肪酸において15.1%のDHAを含んでいた。酵素的転換効率が、オレイン酸からのDHA生産の各工程に関して、表8に示される。
【0316】
最も高いDHA量を伴う系統の総ω6 FA(LAを含む)のω3 FA(ALAを含む)に対する比は、0.102であった。最も高いDHA量を有する系統での新ω6 FA(LAを含まない)の新ω3 FA(ALAを含まない)に対する比は、0.053であった。総飽和脂肪酸の量は約17.8%であり、一価不飽和脂肪酸の量は約18.1%であった。総ω6脂肪酸の量は約5.7%であり、ω3脂肪酸の量は約55.9%であった。全体的な転換効率は次のように算出された:OAからEPA=24.5%、OAからDHA=20.1%、LAからEPA=29.9%、LAからDHA=24.5%、ALAからEPA=32.9%、ALAからDHA=27.0%。総オメガ3脂肪酸は総脂肪酸の55.9%まで蓄積することが発見された一方で、オメガ6脂肪酸は総プロフィールの5.7%であった。
【0317】
サザンブロットハイブリダイゼーション分析を実施した。結果は、高蓄積DHA系統はpJP3416−GA7構築物のT−DNAの単一または重複コピーのいずれかであったが、トランスジェニック系統コロンビア#22は例外で、これは、アラビドプシス植物のゲノムに3つのT−DNA挿入を有した。T5世代種子もまた分析し、総種子脂質において最大13.6%のDHAを有することが分かった。GA7構築物は、DHA生産能力の観点からは、複数の世代を超えて安定であることが分かった。
【0318】
トランスジェニックA.タリアナ(シロイヌナズナ)DHA系統の油含有量の測定
様々な量のDHAを有するトランスジェニックA.タリアナ種子の油含有量を実施例1で説明した通りGCで測定した。データは
図6に示され、油含有量(種子の重量%油)をDHA含有量(総脂肪酸のパーセンテージとして)に対してグラフ化している。種子1グラムあたり最大26.5mgのDHAが観察された(表10)。トランスジェニックアラビドプシスの油含有量は、DHA含有量と負で相関していることが分かった。種子の重量あたりのDHA量は、約14%DHAを有する種子と比較して、約9%のDHA量を有する形質転換種子でより高かった。これがアラビドプシス以外の種子にもあてはまるかどうかはまだ測定されていない。
【0319】
【表10】
【0320】
実施例3.カメリナサティバ種子のトランスジェニックDHA経路の安定な発現
上記のバイナリーベクターpJP3416−GA7を、A.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換したアグロバクテリウムの培養物からの細胞を用いて、形質転換のためにフローラルディップ方法を用いてC.サティバ(カメリナサティバ)顕花植物を処理した(LuおよびKang、2008)。植物の成長および成熟後、処理した植物のT
1種子を回収し、土壌に播き、得られた植物を除草剤BASTAで噴霧することで処理し、pJP3416−GA7のT−DNA上に存在するbar選択マーカー遺伝子のトランスジェニックであり、pJP3416−GA7のT−DNA上に存在するbar選択マーカー遺伝子を発現していた植物を選択した。除草剤に耐性を持ち、生き残ったT
1植物を、自家受精させた後に成熟するまで成長させ、得られたT
2種子を回収した。5つのトランスジェニック植物が得られ、そのうち3つのみが全体のT−DNAを含んでいた。
【0321】
全体のT−DNAを含んだ3つの植物のそれぞれからのおおよそ20の種子のプールから脂質を抽出した。プール化した試料のうち2つは、大変低い、ほとんど検知できない量のDHAを含んでいたが、3つ目のプールは約4.7%のDHAを含んでいた(表12)。したがって、この植物の10個の各T
2種子から脂質を抽出し、脂肪酸組成をGCで分析した。この形質転換系統の各種子の脂肪酸組成データも表11に示される。総種子脂質プロフィール(表11)をまとめたデータは表12に示される。
【0322】
【表11】
【0323】
【表12】
【0324】
DHAは、10個のそれぞれの種子のうち6つに存在した。他の4つの種子はDHAを有さず、親植物のT−DNA挿入のヘミ接合性をもとに、T−DNAを有さなかった無効分離体であると推定された。最も高い量のDHAを有する単一種子から抽出された脂質は9.0%のDHAを有し、一方で、EPA、DPAおよびDHAの合計パーセンテージは11.4%であった。形質転換の結果この種子で生産された新ω3脂肪酸(SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA、DHA)の合計パーセンテージは19.3%であり、一方で、新ω6脂肪酸(GLA、EDA、DGLA、ARAおよびいずれかのω6伸長産物)の対応する合計は、2.2%であり、GLAおよびEDAのみが新ω6脂肪酸として検知された。総ω6FA(LAを含む)のω3FA(ALAを含む)に対する比は、0.44だと分かった。最も高いDHA量を有する種子の新ω6FA(LAを含まない)の新ω3FA(ALAを含まない)に対する比は、0.12であった。総飽和脂肪酸の量は約17.8%であり、一価不飽和脂肪酸の量は約15.5%であった。総ω6脂肪酸の量は、約20.4%であり、ω3脂肪酸の量は約46%であった。全体の転換効率は次のように算出された:OAからEPA=15.6%、OAからDHA=12.3%、LAからEPA=17.2%、LAからDHA=13.6%、ALAからEPA=24.8%、ALAからDHA=19.6%。
【0325】
この系統のホモ接合種子を、T4世代で得た。T4世代全体で観察された平均7.3%のDHAを有するFD5−46−18−110事象で、最大10.3%のDHAが生産された。
【0326】
複数の温室でホモ接合種子を植え付け、全体で600超の個々の植物を作製した。ソックスレー、アセトンおよびヘキサン抽出を含む様々な方法を使用して、種子から油を抽出している。
【0327】
上記の通り得られた、独立して形質転換した系統のC.サティバの数が低かったので、C.サティバをpJP3416−GA7で形質転換するさらなる実験を実施する。発明者らは、種子油中の総脂肪酸のパーセンテージで10%超のDHA量が、さらに形質転換された系統およびで達成され、T−DNAに対してホモ接合である植物は20%のDHAまで達成される推測する。20個のC.サティバGA7_modH事象を作製し、種子のDHA含有量を分析している。3つのGA7_modB事象作製し、事象CMD17.1からのT1種子の分析は、9.8%のプール化種子DHA含有量を明らかにした。最も高い単一種子DHA値は13.5%であることがわかった。
【0328】
実施例4.セイヨウアブラナ種子のトランスジェニックDHA経路の安定な発現
単一ベクターを用いたB.ナプス(セイヨウアブラナ)形質転換および脂肪酸組成の分析
バイナリーベクターpJP3416−GA7を使用して、形質転換セイヨウアブラナ植物およびその植物からの種子を作製した。標準的なエレクトロポレーション手法を介して、上記のベクターpJP3416−GA7をアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に導入した。トランスジェニックアグロバクテリウム細胞の培養物を、150rpmでの振動を伴って、28℃のLB培地で一晩成長させた。細菌細胞を5分間の4000rpmでの遠心分離によって回収し、Winans AB培地(Winans、1988)で洗浄し、10mLのWinans AB培地(pH5.2)に再懸濁し、カナマイシン(50mg/L)、リファンピシン(25mg/L)および100μΜアセトシリンゴンの存在下で一晩成長を続けた。ブラシカ細胞の感染の2時間前に、スペルミジン(120mg/L)を添加し、細菌の最終密度を新しいAB培地で0.3〜0.4のOD600nmまで調節した。1/2MS(MurashigeおよびSkoog、1962)で成長した8日目のセイヨウアブラナ実生から新たに単離した子葉柄または1mg/Lのチジアズロン(TDZ)および0.1mg/Lのα−ナフタレン酢酸(NAA)を伴うMS培地上で3〜4日で事前に条件を整えた胚軸断片を、10mLのアグロバクテリウム培養物で5分間感染した。アグロバクテリウムで感染した外植片を次いで滅菌フィルター紙にブロットして余分なアグロバクテリウムを除去し、異なる抗酸化剤(L−システイン50mg/Lおよびアスコルビン15mg/L)を添加した、または添加していない、同時培養培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAAおよび100μΜアセトシリンゴンを伴うMS培地)に移した。全プレートをパラフィルムで密封し、23〜24℃の暗所で48時間インキュベートした。
【0329】
処理した外植片を次いで、500mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含む滅菌蒸留水で10分間洗浄し、滅菌蒸留水で10分間すすぎ、滅菌フィルター紙上にブロットして乾燥し、事前選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、20mg/Lの硫酸アデニン(ADS)、1.5mg/LのAgNO
3、250mg/Lのセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含むMS)に移し、16時間/8時間の光周期で、5日間24℃で培養した。次いで、形質転換細胞の選択のための作用剤として1.5mg/Lのグルフォシネートアンモニウムを伴う選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO
3、250mg/Lのセフォタキシムおよび50mg/Lのチメンチンを含むMS)にそれらを移し、同じ培地上で、隔週で継代培養しながら、16時間/8時間の光周期で、24℃にて4週間培養した。緑色のカルスを伴う外植片を発芽開始培地(1mg/Lのキネチン、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO
3、250mg/Lのセフォタキシム、50mg/Lのチメンチンおよび1.5mg/Lのグルフォシネートアンモニウムを含むMS)に移し、もう2〜3週間培養した。耐性外植片から生まれた芽を芽伸長培地(0.1mg/Lのジベレリン酸、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO
3、250mg/Lのセフォタキシムおよび1.5mg/Lのグルフォシネートアンモニウムを含むMS培地)に移し、もう2週間培養した。2〜3cmの長さの健康的な芽を選択し、発根培地(1mg/LのNAA、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO
3および250mg/Lのセフォタキシムを含む1/2MS)に移し、2〜3週間培養した。根を伴う良く確立された芽を、実生成長ミックスを含むポットに移し、2週間成長キャビネットで成長させ、引き続き、温室に移した。この方法で、GA7構築物で形質転換したおよそ40(T
0)の植物を得た。
【0330】
植物を、自家受精させた後、成熟するまで成長させた。形質転換した植物から得た種子を、実施例1に記載される通り、それらの種子油の脂肪酸組成に関して分析した。最も高いDHA量を有する形質転換系統に関するデータが表13で示される。平均的なDHA量は、pJP3416−GA7のT−DNAで形質転換したB.ナプス種子の種子油において、同じ構築物で形質転換したA.タリアナ種子(実施例2)またはカメリナ種子(実施例3)よりも、著しく低かった。およそ40の系統の中で最も高い量のDHAは1.52%であり、トランスジェニック系統の大部分は検知可能なDHAを有した。これらの種子のなかに、総脂肪酸の約35%である相当な蓄積のALAがあり、これはSDAまたは経路で続く産物に効率的に変換されていなかったことが留意された。
【0331】
T
1事象、CT125−2からの単一B.ナプス種子の脂肪酸プロフィール分析を実施して、トランスジェニック種子で生産されたDHAの量をより良く測定した。種子は、0%(無効種子)と8.5%の間のDHAを含むことがわかった(表13)。
【0332】
DHA生産を示す、植物系統CT116ならびに他のトランスジェニック系統由来の種子をいくつか播いて、後代植物を作製した。GA7構築物が、同一構築物を有するトランスジェニックA.タリアナおよびC.サティバと比較して、なぜDHA生産に関して不十分に作用し、および、pJP3115およびpJP3116上の遺伝子の組み合わせと比較してなぜ不十分に作用したのかを決定するために、これら植物の発育中の胚から単離した総RNAに対してRT−PCRを実施した(下)。一段階RT−PCRキット(インビトロゲン社)および各導入遺伝子を標的する遺伝子特異的プライマーを用いて、RT−PCRを総RNAに対して行った。これによって、GA7構築物の各遺伝子は、形質転換種子の大部分で不十分に発現したΔ6デサチュラーゼを除いて、B.ナプス形質転換体で良好に発現することが確認された。この構築物からの他の遺伝子は、B.ナプスおよびA.タリアナ種子の双方で良く機能し、たとえば、Δ12およびΔ15デサチュラーゼはオレイン酸量を減らす一方で種子のLAおよびALAの増加した量を生産するように機能した。代表的なRT−PCRゲルは、
図7に示され、これは、pJP3416−GA7の他の導入遺伝子と比較して、Δ6デサチュラーゼの低発現を明らかに示す。
【0333】
導入遺伝子とホモ接合であるトランスジェニック植物および種子を、最も高いDHAを有する系統の後代を植え付けることで、作製する。
【0334】
【表13】
【0335】
2つのベクターを用いたB.ナプス形質転換および脂肪酸組成の分析
B.ナプスの別の実験において、および、導入遺伝子を導入するための代替形式として、国際公開第2010/057246号に記載されるバイナリーベクターpJP3115およびpJP3116を使用して、形質転換B.ナプス植物を別々に作製し、形質転換種子をその植物から得た。pJP3115上のT−DNAは、クレピス・パレスチナ(Crepis palestina)Δ12デサチュラーゼ、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタΔ6エロンガーゼおよびパブロバ・サリナΔ5デサチュラーゼをコードするキメラ遺伝子を含み、pJP3116上のT−DNAはペルリア・フルテスケンス(Perilla frutescens)Δ15デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタΔ5エロンガーゼおよびパブロバ・サリナΔ4デサチュラーゼを含んでいた。2つのT−DNAは、一緒に存在し、発育中の種子に発現された場合、内因的に生産されたオレイン酸からDHAを生産するための7遺伝子経路を形成した。これらのベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に、標準的なエレクトロポレーション手法で導入し、形質転換した細胞を独立して使用し、上記の方法を用いてB.ナプスを形質転換し、安定的に形質転換したT
0植物を作製した。29のpJP3115および19のpJP3116形質転換体を得て、これらの植物を成熟するまで成長させ、自家受精の後に得られた種子を、それらの種子油の脂肪酸組成に関して分析した。pJP3115のT−DNAでの形質転換は、内因的に生産されたALAからのEPA生産につながると予測された一方で、pJP3116のT−DNAでの形質転換はLAからのALA生産増大につながると予測された。これらの表現型を示す植物を複数同定した。事象の大部分は、低量のEPA生産を伴うΔ12不飽和化のために、低下したOA/増大したLA表現型を示した。最大2.6%のEPAがpJP31115トランスジェニック種子プールで観察された。同様に、pJP3116事象の大部分はΔ15デサチュラーゼ活性のために増大したALA表現型を有することが分かった。最大18.5%のALAがpJP3116のT−DNAで形質転換したプール種子で発見された。
【0336】
最も高い量のEPAおよびALAを有する系統のT
1植物を交雑させ、24個の回収した事象の後代種子(F1)のDHA含有量を分析した。DHAは、これらの事象のうち17個で発見され、最大1.9%のDHAがこれらの事象のプール種子で発見された。単一種子分析を実施して、DHA生産の範囲を決定し、そのデータが表14に示される。広い範囲のDHA量が交雑子孫で観察され、おそらく、親植物でのT−DNAのヘミ接合性質のためであり、その結果、いくつかの種子は双方のT−DNAを受け取らなかった。最大6.7%のDHAが全種子脂質で観察された。
【0337】
【表14】
【0338】
【表15】
【0339】
全脂質プロフィール(表14)をまとめたデータが表15に示される。表15のデータによると、最も高い量のDHAを有する種子での全ω6FA(LAを含む)のω3FA(ALAを含む)に対する比は、3.34であった。新ω6FA(LAを含まない)の新ω3FA(ALAを含まない)に対する比は1.39であった。総飽和脂肪酸の量は、約13.7%であり、一価不飽和脂肪酸の量は約21.8%であった。総ω6脂肪酸の量は46.4%であり、ω3脂肪酸の量は約14.8%であった。全体の転換効率は次のように算出された:OAからEPA=12.8%、OAからDHA=8.5%、LAからEPA=15.7%、LAからDHA=10.4%、ALAからEPA=72.1%、ALAからDHA=47.9%。pJP3115およびpJP3116の組み合わせでの本実験で観察されたω6脂肪酸からω3脂肪酸の転換の効率の低下は、ALAからDHAの転換のための遺伝子と組み合わせた場合、真菌Δ15/ω3デサチュラーゼと比較して、植物Δ15デサチュラーゼの効率がより低い(実施例2および3)ためであると考えられた。
【0340】
導入された導入遺伝子の全てにホモ接合であるDHA含有系統の子孫を分析のために作製する。
【0341】
実施例5.植物種子における、DHA経路をコードするT−DNAの改変
B.ナプスでのDHA生産量を実施例4に記載される量を超えて改善するために、バイナリーベクターpJP3416−GA7−modA、pJP3416−GA7−modB、pJP3416−GA7−modC、pJP3416−GA7−modD、pJP3416−GA7−modEおよびpJP3416−GA7−modFを次のように作製した。これらのバイナリーベクターは、実施例2に記載されたpJP3416−GA7構築物の変異形であり、特にΔ6デサチュラーゼおよびΔ6エロンガーゼ機能を改善することで、植物種子でのDHAの合成をさらに増大するように設計した。Δ5エロンガーゼと比べて比較的低い伸長効率のために、GA7構築物で形質転換したある種子では、SDAが蓄積されるのが観察されていたので、他の改変の中で、2つのエロンガーゼ遺伝子配置をT−DNAで交換した。
【0342】
まず始めに新しいP.コルダタΔ6エロンガーゼカセットをpJP3416−GA7のSbfI部位間にクローニングし、P.コルダタΔ5エロンガーゼカセットと取り換えることで、pJP3416−GA7における2つのエロンガーゼコード配列を、T−DNA上でのそれらの配置を交換し、pJP3416−GA7−modAを得た。M.プシラΔ6デサチュラーゼを促進するFP1プロモーターをコンリニンCnl2プロモーター(pLuCnl2)と交換することで、この構築物をさらに改変し、pJP3416−GA7−modBを得た。Δ6デサチュラーゼ発現を増大、それによって酵素効率を増大させる試みの中でこの改変を行った。Cnl2プロモーターは、切断ナピンプロモーターよりもより高い導入遺伝子の発現をB.ナプスにもたらし得ると考えられた。少し異なるコドン使用頻度を伴う第2のM.プシラΔ6デサチュラーゼカセット(配列番号15)を添加することにより、pJP3416−GA7−modCを作製し、pJP3416−GA7−modBの右境界のちょうど内側のPmeI部位に挿入したFP1プロモーターで促進した。Δ6デサチュラーゼ発現量を増大し、複数のプロモーターの使用によってΔ6デサチュラーゼの発現のための種子発育間の期間を延ばすために、第2のΔ6デサチュラーゼカセットを双方のpJP3416−GA7−modBおよびpJP3416−GA7−modFに添加した。2つの核配列で異なるコドン使用頻度を使用して、同一T−DNA内での類似したコード領域の同時抑制の恐れのない、同一タンパク質配列の翻訳につながった。pJP3416−GA7−modDおよびpJP3416−GA7−modEは、配列番号1のヌクレオチド16649〜17816に対応する3番目のMAR配列がPmeI部位にてそれぞれpJP3416−GA7およびpJP3416−GA7−modBに添加された類似変異形であった。天然Δ6デサチュラーゼヌクレオチド配列を含む第2のM.プシラΔ6デサチュラーゼカセットを添加することで、pJP3416−GA7−modFを作製し、pJP3416−GA7−modBの右境界のPmeI部位にあるFP1プロモーターで促進した。pJP3416−GA7−modGを、まず始めにAscI−PacI部位での制限クローニングによってM.プシラΔ6デサチュラーゼカセットをCnl2:P.コルダタΔ5エロンガーゼカセットで置き換えることで作製した。次いで、SbfI部位での制限クローニングによって本来のFAE1:P.コルダタΔ5エロンガーゼカセットをFAE1:M.プシラΔ6デサチュラーゼカセットで交換することで、pJP3416−GA7−modGを作製した。これらの遺伝子構築物のそれぞれのT−DNAのヌクレオチド配列は、次のように示される:pJP3416−GA7−modB(配列番号2)、pJP3416−GA7−modC(配列番号3)、pJP3416−GA7−modD(配列番号4)、pJP3416−GA7−modE(配列番号5)、pJP3416−GA7−modF(配列番号6)およびpJP3416−GA7−modG(配列番号7)。
【0343】
バイナリーベクターpJP3416−GA7−modB、pJP3416−GA7−modC、pJP3416−GA7−modD、pJP3416−GA7−modE、pJP3416−GA7−modFおよびpJP3416−GA7−modGを使用して形質転換したブラシカ体細胞胚ならびにセイヨウアブラナ、カメリナ・サティバおよびシロイヌナズナ植物および後代種子を作製する。pJP3416−GA7−modBに関するデータが次の実施例で示される。
【0344】
8個のトランスジェニックpJP3416−GA7−modB A.タリアナ事象および15個のトランスジェニックpJP3416−GA7−modG A.タリアナ事象を作製した。プール化したpJP3416−GA7−modB種子において3.4%と7.2%との間のDHAが観察され、プール化したT2 pJP3416−GA7−modG種子において0.6と4.1%との間のDHAが観察された。最も高いpJP3416−GA7−modB事象のいくつかを選択培地上に播き、生き残った実生を次の世代まで持って行った。種子のDHA含有量が分析されている。プール化したT1種子は導入遺伝子に対して分離している群を示し、いずれかの無効分離体を含んでいたので、後代植物のホモ接合種子は種々油中最大20%の総脂肪酸含有量である増大した量のDHAを有するであろうと予測される。他の改変構築物を使ってA.タリアナを形質転換した。ほんの少数の形質転換系統しか得られなかったが、どれもmodB構築物よりも高い量のDHAをもたらさなかった。
【0345】
また、pJP3416−GA7−modB構築物を使用し、品種OscarおよびNX005と呼ばれる育種系統の形質転換B.ナプス植物を作製した。Oscar形質転換に関しては10個の独立形質転換植物(T0)を、NX005に関しては20個の独立系統をこれまでに得た。種子(T1種子)をこれらのトランスジェニック系統から回収した。種子のプールを、種子油中DHA量に関して試験し、最も高い量を示した2つの系統を選択し、これらを系統CT132.5(品種Oscarで)およびCT133.15(NX005で)と名付けた。CT132.5から20個の種子およびCT133.15から11個の種子を水に浸し、2日後、各種子それぞれの子葉半分から油を抽出した。胚軸を伴うもう片方の子葉を培地上で維持および培養し、特定の後代系統を維持した。油中脂肪酸組成を決定した;CT132.5に関するデータが表16に示される。分析した20の種子のうちの10個におけるDHA量は、GC分析で測定された総脂肪酸含有量の7〜20%の範囲にあった。他の種子は7%未満のDHAを有し、pJP3416−GA7−modB由来のT−DNAの部分(不完全)コピーを含み得た。トランスジェニック系統は遺伝子的に結合していない複数の導入遺伝子挿入を含んでいるように見えた。トランスジェニック系統CT133.15の種子は、0〜5%の範囲のDHA量を示した。DHAを有さない種子は無効分離体になる可能性が高かった。これらのデータによって、modB構築物はキャノーラ種のDHA生産に関して良好に働くことが確認された。
【0346】
また、pJP3416−GA7−modBおよびpJP3416−0A7−modF構築物を使って形質転換したカメリナ・サティバ植物を作製した。少なくとも24個の独立形質転換植物(T0)を得、後代分析によってさらに細かく調査した。種子(T1種子)をこれらのトランスジェニック系統から回収した。種子のプールを種子油中DHA量に関して試験し、最も高いDHA量(6%と9%との間)を示す6個の系統を選択した。各系統からの20個のT1種子のDHA量を分析し、多くの種子はGC分析で測定された総脂肪酸含有量の6〜14%の範囲でDHAを示した。油中脂肪酸組成を決定した;複数のトランスジェニック種子に関するデータが表17に示される。これらのデータによって、modBおよびmodF構築物は双方ともカメリナ属でのDHA生産に関して良好に働くことが確認された。
【0347】
【表16】
【0348】
【表17】
【0349】
発明者らは、概して、DHA経路の律速酵素活性の効率は、単一コピーT−DNA形質転換体に比べて複数コピーT−DNA形質転換体においてより活発であり得、また、経路で制限している可能性がある酵素をコードする複数の遺伝子をT−DNAに挿入することで増大し得ることを企図した。複数コピー形質転換体の可能性のある重要性の証拠はGA7構築物で形質転換したアラビドプシス種子(実施例2)に見られ、ここでは、最も多収性であるDHA事象は、宿主ゲノムに挿入された3つのT−DNAを有した。複数の遺伝子は同一であり得、または、好ましくは、同一のポリペプチドをコードする異なる変異形であり、または、重複した発現パターンを有する異なるプロモーターの制御下にある。たとえば、増加した発現は、同一タンパク質が生産される場合でも、複数のΔ6デサチュラーゼコード領域の発現によって達成され得る。pJP3416−GA7−modFおよびpJP3416−0A7−modCでは、たとえば、M.プシラΔ6デサチュラーゼの2つのバージョンが存在し、異なるプロモーターによって発現された。コード配列は異なるコドン使用頻度を有し、したがって、異なるヌクレオチド配列を有して、可能性のあるサイレンシングまたは同時抑制効果を軽減したが、同一タンパク質の生産につながった。
【0350】
実施例6.体細胞胚の種子特異的構築物の活性
種子特異的プロモーターの制御下である種子中の遺伝子構築物の発現を予測する迅速アッセイシステムを作るために、体細胞胚システムをセイヨウアブラナに準備した。これには、体細胞胚形成の開始に関わるLEC2転写因子を発現するベクターが使用された。実演として、バイナリーベクター35S:LEC2およびpJP107(Petrie et al.、2010aおよびb)をアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に標準的なエレクトロポレーションを介して導入し、そのアグロバクテリウム形質転換体を使用して同時培養によってセイヨウアブラナを同時形質転換した。pJP107のT−DNA領域はイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)Δ9エロンガーゼ、P.サリナΔ8デサチュラーゼおよびP.サリナΔ5デサチュラーゼをコードする遺伝子を含んでおり、各遺伝子は種子特異的プロモーターによって発現された。対照形質転換には35S:LEC2ベクターが単独で用いられた。35S:LEC2発現は、実施例1に記載される形質転換B.ナプスカルス組織に直接由来する組織培養物での体細胞胚の形成につながった。
【0351】
脂肪酸分析によって、構築物pJP107のT−DNA上の種子特異的遺伝子は、同時形質転換LEC2遺伝子の存在下でトランスジェニック体細胞胚に発現され、機能してLAからARA(20:4
Δ5、8、11、14)およびALAからEPA(20:5
Δ5、8、11、14、17)を生産することが示された。3つの同時形質移転間体細胞胚に関するデータが表18に示され、それぞれの脂肪酸組成を、pJP107のT−DNAの遺伝子を導入し、pJP107のT−DNAを発現したセイヨウアブラナ種子の種子油の脂肪酸組成と比較した(Petrie et al.、2010aおよびb)。安定的に形質転換した種子プロフィールと比較した場合、ARAならびに中間脂肪酸EDA(20:2ω6)およびDGLA(20:3ω6)の類似した総パーセンテージおよび転換効率が体細胞胚組織で観察された。安定なT
2トランスジェニック種子および体細胞胚の脂肪酸組成において類似した結果が観察された:ω6脂肪酸はそれぞれ26.6%および25.6%(平均)の量である一方で、ARA量はそれぞれ9.7%および10.6%(平均)であることが分かった。
【0352】
35S:LEC2を単独で導入し、体細胞胚を時間経過で分析した場合、脂肪酸プロフィールは、逆相関して減少する18:3
Δ9、12、15および増加する18:1
Δ9を伴う、さらに胚様であるプロフィールに変化することが発見された(
図8)。これらの結果によって、体細胞胚は確実に性質上種子のようになっており、pJP107のT−DNAの上の遺伝子は発現されたことが示された。これは、体細胞胚システムが、トランスジェニック植物およびそれからの成熟種子を作製する全プロセスを必要とせずに、B.ナプスのトランスジェニック種子特異的構築物の迅速な性質決定を可能にすることを示した。
【0353】
【表18】
【0354】
体細胞胚を作製するための同一のシステムを用いて、セイヨウアブラナ細胞を別々でpJP3416−GA7−modBおよびpJP3416−GA7−modDで形質転換した。modBからは18個、modDからは24個である、42個の胚を得た。全ての脂質を胚から抽出し、脂肪酸組成を分析した。胚は、0%と最大16.9%との間のDHAを含んでいた(表19)。0%のDHAの結果は、部分的T−DNAのみの組込みまたはゲノムの転写的に不活動な領域への挿入のためであると推定された。総ω3FA(ALAを含む)の総ω6FA(LAを含む)に対する比は胚#270に関しては2.3、胚#284に関しては11.96であることが分かった。総ω6FA(LAを含む)の総ω3FA(ALAを含む)に対する比は#284に関して0.08であった。新ω6FA(LAを含まない)の新ω3FA(ALAを含まない)に対する比は、#284に関しては0.03であった。全体の転換効率は次のように算出された:(胚#270、#284に関して)OAからEPA=14.0%、29.8%;OAからDHA=9.7%、24.2%;LAからEPA=15.4%、30.7%;LAからDHA=10.7%、25.0%;ALAからEPA=22.1%、33.3%;ALAからDHA=15.3%、27.0%。これらの効率は、pJP3416−GA7−modBベクターがB.ナプス細胞で良好に機能できることを示したT
3 pJP3416−GA7アラビドプシス系統に関して観察されたものに類似しており、または、#284の場合は、pJP3416−GA7−modBベクターがB.ナプス細胞で良く機能できることが示されたT
3 pJP3416−GA7アラビドプシス系統に関して観察されたものよりも大きかった。SDA量は3.0%未満であり、Δ6エロンガーゼはGA7構築物よりもさらに良好に作用していたことを示す。#284で達成されたそれぞれの酵素効率は次の通りであった:Δl2デサチュラーゼ、97.4%;ω3−デサチュラーゼ、92.3%;Δ6デサチュラーゼ、38.2%;Δ6エロンガーゼ、88.2%;Δ5デサチュラーゼ、98.8%;Δ5エロンガーゼ、94.1%;およびΔ4デサチュラーゼ、86.3%。総飽和脂肪酸は21.2%であり、総一価不飽和脂肪酸は10.2%であり、総多価不飽和脂肪酸は68.6%であった。
【0355】
発明者らは、下に記載されるさらなるデータを除いて、これまでB.ナプス細胞で達成されたなかで、これは一番高い量のDHAであったと考える。これによって、pJP3416−GA7−modBにおける改変は、pJP3416−GA7と比較して、Δ6デサチュラーゼ遺伝子の発現量を増大するのに効果的であることも実証された。上記のバイナリーベクターpJP3416−GA7、pJP3416−GA7−modA、pJP3416−GA7−modC、pJP3416−GA7−modD、pJP3416−GA7−modEおよびpJP3416−GA7−modFを35S:LEC2と同時形質転換し、形質転換B.ナプス体細胞胚を作製する。modD胚では最大7.0%のDHA、modE胚では9.9%のDHA、modF胚では8.3%のDHA、少数のmodG胚では3.6%のDHAが観察された。
【0356】
【表19】
【0357】
実施例7.DHAを生産するトランスジェニックA.タリアナ種子のTAGの分析
形質転換A.タリアナ種子のTAG上のDHAの位置分布をNMRで決定した。およそ200mgの種子から、初めにそれらをヘキサン下でつぶし、つぶした種子を、10mLヘキサンを含むガラス管に移すことで、全ての脂質を抽出した。管をおよそ55℃の水浴内で温め、次いで撹拌および遠心分離した。ヘキサン溶液を除去し、その手順をさらに4×10mLで繰り返した。抽出物を1つにまとめ、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、ヘキサン中20mLの7%ジエチルエーテルを用いた短いシリカカラムを通過させることで、抽出脂質内のTAGを極性脂質から精製した。精製TAG上のアシル基の位置分布を以前に説明された通り量的に決定した(Petrie et al.、2010aおよびb)。
【0358】
分析によって、総種子油中のDHAのほとんどはTAGのsn−1/3位置に位置し、sn−2位置にはほとんど発見されないことが示された(
図9)。これは、50%のARA(20:4
Δ5、8、11、14)がトランスジェニックキャノーラ油のsn−2位置に位置する一方で、33%のみが無作為な分布であると予測されることを示したARA生産種子のTAGとは対照的である(Petrie et al.、2012)。
【0359】
pJP3416−GA7またはpJP3115およびpJP3116の組み合わせで形質転換したB.ナプス種子のTAGにおけるDHAの位置分布は基本的に同じ方法で決定される。
【0360】
また、トランスジェニックA.タリアナ種子の全ての脂質を3連4重極LC−MSによって分析し、主要なDHA含有トリアシルグリセロール(TAG)種を決定した(
図10)。最も多くDHAを含むTAG種は、DHA−18:3−18:3(TAG58:12;位置分布を説明しない命名法)であり、2番目に多いのはDHA−18:3−18:2(TAG58:11)であることが分かった。低いが検知可能な量ではあるが、Tri−DHA TAG(TAG66:18)が総種子油に観察された。他の主要なDHA含有TAG種には、DHA−34:3(TAG56:9)、DHA−36:3(TAG58:9)、DHA−36:4(TAG58:10)、DHA−36:7(TAG58:13)およびDHA−38:4(TAG60:10)が含まれていた。2つの主要なDHA含有TAGの同一性は、Q−TOF MS/MSによってさらに確認された。
【0361】
実施例8.B.ナプス種子でのDHA生産の予測
GA7遺伝子構築物を用いた、15%量でのアラビドプシス種子のDHAの効率的な生産を実施例2で実証した。セイヨウアブラナ種子における同じ構築物は、主にこの種のGA7のΔ6でサンチュラーゼ遺伝子の不十分な発現のために、形質転換体の多く(全てではない)で約1.5%のDHAしか生産しなかった(実施例4)。GA7構築物の改変はΔ6デサチュラーゼ遺伝子発現問題を克服するであろうという認識に基づいて(実施例5を参照、実施例6で実証された)、計算を実施し、JP3416−GA7の変異形から遺伝子を発現すし、ここで、各導入遺伝子をコードした酵素が、GA7構築物を有するA.タリアナで観察されたのと同じくらい効率的に作用していたB.ナプストランスジェニック種子の、あり得る脂肪酸プロフィールを決定した。3つの計算に対して予測される脂肪酸組成(#1、#2、#3)が表20に示される。これは、59%オレイン酸、20%LAおよび8%ALAを含んでいたB.ナプスに関する野生型(非形質転換)脂肪酸組成に基づいた。表の下半分に示される3つの予測された部分的脂肪酸プロフィールは、表の上半分で示される各酵素的工程の転換効率に基づいた。予測#2では、75%効率のΔ12不飽和化、75%のΔ15不飽和化、35%のΔ6不飽和化、80%のΔ6伸長化、90%のΔ5不飽和化、90%のΔ5伸長化および90%のΔ4不飽和化の組み合わせが、一般的なキャノーラトランスジェニック種子でのおよそ10%のDHAの生産につながるであろう。これらの効率は全て、アラビドプシスで見られるそれぞれの効率より低いまたはほぼ同じであったため、予測#2は控えめな推定を意味した。#3に列挙される転換効率は、pJP3416−GA7で形質転換したA.タリアナで見られる効率的な転換に基づいた概算である。DHAは、B.ナプスで生産される種子油の総脂肪酸含有量の約15%で生産されると予測され、A.タリアナで観察された最も効率的な生産量を反映した結果であった。ホモ接合状態での複数のT−DNAの挿入は、B.ナプスでDHA量を20%まで増やすと期待される。
【0362】
【表20】
【0363】
実施例9.トランスジェニックEPA経路の植物葉での安定な発現
バイナリーベクター構築
葉組織でのEPAの合成のための植物へのT−DNA導入のために、バイナリーベクターpORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片(配列番号8)を設計した。このバイナリーベクターは、酵素:M.プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号16)、P.コルダタΔ6エロンガーゼ(配列番号:25)およびP.サリナΔ5デサチュラーゼ(配列番号30)をコードするキメラ遺伝子を含んでおり、それぞれは、CaMV35SおよびA.タリアナRubisco小サブユニット(SSU)プロモーターの制御下であった(
図9)。配列番号2の領域199〜10878を合成し、これをBsiWIおよびKasI部位で受容バイナリーベクターpORE04(Coutu et al.、1997)内にクローニングすることで、バイナリーベクターを作製した。3つの脂肪酸生合成遺伝子は、ALA、18:3
Δ9、12、15からEPA、20:5
Δ5、8、11、14、17に変換するのに必要な酵素をコードした。
【0364】
N.ベンサミアナ(ベンサミアナタバコ)葉細胞でのEPA構築物の一過性発現
構築物が正しく、葉組織で効率的に遺伝子を発現することを試験するために、キメラベクターpORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片をA.ツメファシエンス株AGL1に導入した。キメラベクター35S:p19もA.ツメファシエンス株AGL1に実施例1で説明された通り導入した。これらの培養物からの細胞を、24℃の成長室でベンサミアナタバコ植物の葉組織内に浸潤させた。同じ葉の両面に位置する比較中の試料に、複数の直接比較物を湿潤させた。実験は3通りで実施された。浸潤に続いて、実施例1に説明されるGCによる脂肪酸プロフィール分析のために葉ディスクを取り出す前に、植物をさらに5日間成長させた。GC分析によって、EPAベクターはベンサミアナタバコ葉で機能してEPAを生産し(表21)、最も高い量のEPAは総葉脂質の10.7%であったことが明らかになった。
【0365】
ニコチアナ・タバカムの安定的形質転換
キメラベクターpORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片を使って、ニコチアナ・タバカムを安定に形質転換した。ベクターをA.ツメファシエンス株AGL1に標準的なエレクトロポレーション手法を介して導入した。形質転換した細胞を、カナマイシン(50mg/L)およびリファンピシン(25mg/L)を添加した固相LB培地で成長させ、28℃で2日間インキュベートした。単一のコロニーを用いて新しい培養を開始した。48時間の活発な培養に続いて、細胞を2,000x gでの遠心分離によって回収し、上澄みを除去した。細胞を50%LBおよび50%MS培地をOD
600=0.5の密度で含む新しい溶液に再懸濁した。
【0366】
【表21】
【0367】
インビトロで成長させたN.タバカム品種W38の葉試料を鋭いメスで切除し、サイズ約0.5〜1cm
2の正方形の断片に切り、一方でA.ツメファシエンス溶液に浸した。A.ツメファシエンスに浸した、傷をつけたN.タバカム葉断片を、滅菌フィルター紙上にブロットして乾燥し、および添加物なしのMSプレートに移動する前に、室温で10分間放置させた。24℃での2日間の同時培養期間に続いて、外植片を滅菌の液体MS培地で3回洗浄し、次いで滅菌フィルター紙でブロットして乾燥し、1.0mg/Lベンジルアミノプリン(BAP)、0.25mg/Lインドール酢酸(IAA)、50mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lセフォタキシムを添加した選択MS寒天上に置いた。プレートを24℃で2週間インキュベートし、形質転換N.タバカム葉断片を発芽させた。
【0368】
インビトロで根のついたトランスジェニック植物を作るために、健康な若芽を切断し、25μg/LのIAA、50mg/Lノカナマイシンおよび250mg/Lのセフォタキシムを添加したMS寒天培地を含む200mLの組織培養ポットに移した。トランスジェニック芽を室温で根付かせ成熟するまで成長させた後、土壌に移した。十分大きな葉ディスクを21個の成熟トランスジェニック植物から取り、実施例1に記載される通りに脂肪酸プロフィールを分析した。全てのトランスジェニック試料がEPAを含むことが分かり(表21)、ヘミ接合の1次形質転換体で最も高い量のEPAは総葉脂質の12.1%であることが分かった。葉試料は、それらの脂質の中に少量(0.5%未満)のDPAも含み、これは、Δ6エロンガーゼの低量のΔ5伸長活性によるEPAの伸長に起因した。総ω3FA(ALAを含む)のω6FA(LAを含む)に対する比は、2.7であることが分かった。全体的な転換効率は次のように算出された:OAからEPA=18.4%、LAからEPA=18.9%、ALAからEPA=25.9%。12.1%のEPAの生産は、特にその事象がヘミ接合の1次転換体であったため、注目すべきである。特にALAからEPAへの効率は、安定種子形質転換体で観察されたものに近い。構築物がΔ12またはΔ15デサチュラーゼを含んでおらず、OAおよびLAからALAへの転換を増大したのは注目に値する。増加した効率はこれらの活性の加算で予測される。
【0369】
ヘミ接合形質転換体の種子は回収され、ホモ接合植物を作製するために植え付けされている。
【0370】
上部EPA系統にセットされた種子は正常に見え、系統#10および#17からの種子は良く発芽し、T
2世代を確立した。EPAの無効(EPA無し)系統に対する比は、事象#28が単一遺伝子座であることを示し、したがってこの系統のT
3世代も確立した。T
3群の脂肪酸プロフィール分析は、導入遺伝子が、無効事象は一切見つからず、安定した量のEPAを伴ったホモ接合であったことを示した。全体のT
3群の総葉脂質におけるEPAの平均量は、9.4%±0.3(表22)であることが分かった。
【0371】
【表22】
【0372】
ホモ接合T
3N.タバカム植物の葉試料をさらに生化学分析に供した。全ての脂質を凍結乾燥した葉材料から抽出し、薄膜クロマトグラフィー(TLC)によって分画化した。EPAはN.タバカムTAGに最大30.1%で、ならびに、極性脂質に6.3%で存在したことが分かった(表23)。トランスジェニック経路によって生産されるEPAが、TAG、MGDG、DGDG、SQDG、PG、PC、PE、PIおよびPSを含む評価された総脂質分画に存在したことに留意するのは興味深い。総脂質プールは、低量の新規中間体またはω6LC−PUFA脂肪酸を、新規ω3のω6脂肪酸に対するTAG比が10:1の状態で含んでいた。
【0373】
ササゲの安定的形質転換
キメラベクターpORE04+11AB GBEC−ササゲ−EPA−挿入断片をササゲ(ビグナ・ウンギクラタ)に次の通りに形質転換した。成熟した乾燥種子が好ましい出発材料であるが、種子が最大新鮮重量である未熟なさやから回収した種子を使用してもよい。乾燥種子を手で脱穀し、種子の皮が破けるのを避け、したがって、微生物との混入を低減する。
【0374】
乾燥種子または未熟なさやを70%エタノールに2分間浸し、次いで、20%の市販の漂白剤(8.4g/Lの次亜塩素ナトリウム最終濃度)で30分間処理する。種子を次いで滅菌水で複数回洗浄する。未熟な種子をさやから無菌的に取り除き、一方で成熟種子を一晩水に浸した。2つの異なる外植片を、複数の芽作製のために使用し得、すなわち、胚軸および子葉そのもの、好ましくは二分した胚軸が付着した子葉である。芽および根端を、子葉節、すなわち、軸の子葉への付着点に傷をつける前に、軸から取り除く。19個の品種および系統の初期比較から、ササゲのほとんどの系統は形質転換され得ることが現在明確であり、唯一の注意は異なる組織培養条件が各系統のために最適化される必要があるということである。
【0375】
【表23】
【0376】
選択マーカー遺伝子、barまたはNptIIが形質転換のために使用され得る。アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1はササゲ形質転換に好ましい株である。pORE04+11ABGBEC−ササゲ−EPA−挿入断片ベクターを含むアグロバクテリウムを180rpmの振とう器で28℃にて一晩培養し、懸濁物を8000gで10分間遠心分離にかけ、培地1(10分の1に希釈し、30g/lのスクロース、加圧滅菌の前にpH5.6に調節し、フィルターを滅菌したMS−ビタミンを添加した20mMの2−MES、100mg/lのミオイノシトール、1.7mg/lのBAP、0.25mg/lのGA
3、0.2mMのアセトシリンゴン、250mg/lの
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、150mg/lのジチオスレイトールおよび0.4g/lのL−システインを含むMS塩基性培地)に再懸濁する。メスで分裂領域に傷をつけてから、外植片を振らずに細菌懸濁物に1時間浸す。処理した外植片を次いで滅菌フィルター紙上にブロットし、フィルター紙をかけた固定培地2(0.8%寒天を含む培地1)に移す。同時培養の4日後、発芽および形質転換した芽の選択のために、外植片を培地3(100mg/lのミオイノシトール、150mg/lのチメンチン、30g/Lのスクロース、3mMのMES、1.7mg/LのBAP、5mg/LのPPTまたは25〜50mg/Lのジェネテシンまたは150mg/Lのカナマイシン、0.8g/Lの寒天を添加し、pH5.6に調節した全強度MS培地)に移す。2週間後、初めの芽が見られる。子葉を子葉節領域から取り除き、培養物を新しい培地3に移す。死組織および瀕死の組織の除去に続いて、2週間ごとに培養物を新しい培地3に移す。初めの4つの継代培養物はカナマイシン選択上にあり、続いてジェネテシンおよびカナマイシンと交互にする。6継代培養後、生き残った若芽を、芽伸長のために、培地4(BAPを含まないが0.5mg/lのGA
3、50mg/lのアスパラギン、0.1mg/lの3−インドール酢酸(IAA)、150mg/lのチメンチンおよびPPT(10mg/1)、ジェネテシン(50mg/L)またはカナマイシン(150mg/L)のいずれかを添加した培地3)に移す。それぞれの芽が1cmの長さを超えるまで芽を2週間ごとに継代培養する。選択下でのさらなる成長のために、より大きなこれらの芽をペトリ皿から培養瓶(高さ80mm)に移す。
【0377】
再生した芽の大部分はインビトロで根を下ろし得、根を下ろした植物を土壌に移し、周囲室温条件に移す前に14〜21日間高湿度室で根付かせた。
【0378】
ササゲへの遺伝子移転を高めるために、同時培養培地にチオール化合物を添加した。L−システイン、ジチオスレイトールおよびチオ硫酸ナトリウムの添加によって傷をつけた組織の褐色化を緩和する。
【0379】
大量のササゲ外植片を単純化したプロトコルで処理してもよい。簡潔に、該プロトコルは次の工程から成る:滅菌化成熟種子を一晩水に浸す、その結果、その種子を縦に二分化することで外植片を導く、割れた胚軸(芽および根尖部は取り除かれている)は子葉にまだ付着している、分裂領域を局所的に傷つけることで補助されるアグロバクテリウム株AGL1との感染、チオール化合物を含む培地上で25℃にて光をうけて4日間にわたる同時培養、選択剤を含む培地上での発芽および芽の伸長、芽はインビトロで根付き、開花および結実のために室温条件へ移す、推定トランスジェニック植物のPCRまたは酵素分析、ならびに、PCRまたは酵素活性による次世代子孫のスクリーニング。
【0380】
トランスジェニックT
0植物の子孫は、表現型では正常である。導入遺伝子を子孫に伝え、ホモ接合T
2植物を、それらのT
3子孫を酵素活性に関してまたはPCRによってスクリーニングすることで同定する。
【0381】
この形質転換システムを用いて1000の外植片あたり約10個のトランスジェニック植物を作製し、これは、他のマメ科植物の形質転換頻度に類似している。形質転換される品種または系統によって、このプロトコルは、外植片調製からT
1種子回収まで、5〜8か月を必要とする。
【0382】
形質転換システムを使ってpORE04+11ABGBEC−ササゲ−EPA−挿入断片バイナリーベクターを再生、形質転換ササゲ植物に導入する。
【0383】
pORE04+11ABGBEC−ササゲ−EPA−挿入断片バイナリーベクターに対し、Δ5エロンガーゼおよびΔ4デサチュラーゼをコードする遺伝子を加える修飾を行い、生産したEPAをDHAにさらに変換する能力を与える遺伝子構築物を提供する。栄養組織でのDHAの生産のために、構築物を植物へ形質転換する。
【0384】
化学的選択を生き延びた少数の事象にEPAが存在することが分かった。最も高い系統は、総葉脂質中7.1%±0.2のEPA含んでいた。形質転換の速度は、6つの系統のみトランスジェニックが確認されたササゲに関して普段経験されるよりも低かった。何がこの結果をもたらしたのかは今のところはまだ分からないが、普段の大きさよりも大きいトランスジェニック事象が、不完全なT−DNA領域を含んでいたことに留意するのは興味深い。大きな構築物のサイズが効率の低下に寄与した可能性がある。3つの各トランスジェニック酵素の見かけの転換効率も算出した(表22)。天然ALAの初期Δ6不飽和化後のEPAへの良好な転換を伴い、結果は全3つの種においておおむね類似した。特定のΔ5エロンガーゼの不在にもかかわらず、EPAからDPAへのΔ5伸長が多少あったことが留意された。P.コルダタΔ6エロンガーゼは以前、低量のΔ9エロンガーゼ活性(すなわち、18:3
Δ9、12、15から20:3
Δ11、14、17への転換)を有すると示されてきたが、酵母菌アッセイではΔ5エロンガーゼ活性は一切検知されなかった。
【0385】
実施例10.Δ12デサチュラーゼ遺伝子の差異の試験
バイナリーベクター作製
一連のキメラΔ12デサチュラーゼ遺伝子を試験および比較する試みとして、複数のバイナリーベクターを作り、これらを使用してA.タリアナおよびB.ナプスを形質転換した。バイナリーベクターpJP3365、pJP3366、pJP3367、pJP3368およびpJP3369はそれぞれ、P.パストリスω3デサチュラーゼ(配列番号12)およびM.プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号16)酵素、および一連のΔ12デサチュラーゼの1つを含んでいた。Δ12デサチュラーゼはクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcusneoformans)(pJP3365において受託番号XP_570226)由来であり、遺伝子活性を増大する試みとしてL151M突然異変(pJP3366において)、ラカンセア・クルイベリ(pJP3367において配列番号10)、シネコシスティスPCC6803(pJP3368において受託番号BAA18169)およびクレピス・パラエスチナ(Crepis palaestina)(pJP3369において受託番号CAA76157、Lee et al.、1998)を含んだクリプトコッカス・ネオフォルマンスΔ12デサチュラーゼのバージョンである。クレピスデサチュラーゼはこの一連の中で唯一の植物デサチュラーゼであり;他は真菌酵素であった。野生型であったクレピス・パレスチナΔ12デサチュラーゼを除いた、各Δ12デサチュラーゼのための植物コドン最適化タンパク質コード領域を、FP1プロモーターに操作可能に結合して各デサチュラーゼの種子特異的発現を提供する配向で、ベクターpJP3364のNotI部位に挿入することで、ベクターを作った(
図12参照)。ベクターpJP3364は、それぞれが種子特異的プロモーターの制御下にあるP.パストリスω3デサチュラーゼおよびM.プシラΔ6デサチュラーゼをコードするキメラ遺伝子をすでに含んでいた(
図12)。3つの脂肪酸生合成酵素、すなわちΔ12デサチュラーゼ、ω3デサチュラーゼおよびΔ6デサチュラーゼの組み合わせを、オレイン酸(18:1
Δ9)からSDA(18:4
Δ6、9、12、15)に変換する経路を構築するよう設計した。したがって、アッセイを実行し、形質転換種子のSDA生産量を測定した。
【0386】
A.タリアナおよびB.ナプス形質転換および分析
キメラバイナリーベクターをA.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換したアグロバクテリウムの培養物からの細胞を用いて、形質転換のためにフローラルディップ方法を利用してfad2変異体A.タリアナ植物を形質転換した(CloughおよびBent、1998)。成熟後、処理した植物のT
1種子を回収し、各キメラベクターのT−DNA上に存在するNptII選択マーカー遺伝子を有する小植物の選択のために、カナマイシンを含むMSプレート上にプレート化した。生き残ったT
1実生を土壌に移した。植物を自家受精させ、成熟するまで成長させた後、これらの植物からのT
2種子を回収し、種子脂質の脂肪酸組成をGCによって分析した。
【0387】
キメラベクターpJP3367も使用して、実施例4に記載される方法でB.ナプスを形質転換し、12個のトランスジェニック事象を作製した。SDAは、植物のプール化した種子のうち0.6%から2.2%の範囲で見つかり、最も高いSDAトランスジェニック植物を有するトランスジェニック植物から、9個の別個の種子を脂肪酸組成に関して分析した。そのような分析の脂肪酸組成データは表24に示される。
【0388】
データによって、双方のA.タリアナおよびB.ナプスにおけるT−DNAのそれぞれから発現されるΔ12デサチュラーゼ活性は、予想に反して低く、GA7構築物の同じ発現カセットで見られた70〜80%(実施例2および3)ではなく約20%の酵素転換効率をもたらしたことが示された。これらのベクターからのΔ12デサチュラーゼ遺伝子の比較的不十分な発現の理由は不明であるが、全体の構築物での遺伝子の位置に関連し得る。
【0389】
対照的に、RT−PCR発現分析は、T−DNA上のP.パストリスω3デサチュラーゼおよびM.プシラΔ6デサチュラーゼ遺伝子は形質転換種子で比較的良好に発現されたことを示した。表24には、形質転換種子のΔ6デサチュラーゼ転換効率が含まれ、これは、あるB.ナプス形質転換系統では約11%〜約25%の範囲であった。これは、GA7構築物で形質転換したB.ナプス種子で見られた約7%のΔ6デサチュラーゼの転換効率よりも著しく高かった(実施例4)。
【0390】
【表24】
【0391】
したがって、pJP3367のT−DNAによってもたらされたより高いΔ6デサチュラーゼ転換効率を活用するために、このT−DNAで形質転換されたB.ナプス植物をpJP3416−GA7のT−DNAで形質転換した植物(実施例4)と交雑させ、双方のT−DNAを保有する後代植物および種子を作製した。F1種子から抽出された油の脂肪酸組成を、DHA含有量および他の脂肪酸含有量に関してGCで分析する。増加したDHA量が、Δ6デサチュラーゼの増加した発現の結果として観察される。双方のT−DNAにとってホモ接合である植物を作製し、該植物はより高い量のDHAを生産するはずである。
【0392】
実施例11.サイレンシング抑制因子タンパク質を用いることによる、脂肪酸の蓄積の増大
バイナリーベクターの構築
国際公開第2010/057246号で、植物の種子における導入遺伝子発現を増大させるためのサイレンシング抑制因子タンパク質(SSP)の使用が説明される。そのようなタンパク質が、複数の世代にわたって
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のLC−PUFAの生産を強化および安定させ得ることを実証するために、複数のSSP、すなわち、V2(受託番号GU178820.1)、p19(受託番号AJ288943.1)、p38(受託番号DQ286869.1)およびP0
PE(受託番号L04573.1)を試験のために選択した。p19は、トマトブッシースタントウイルス(TBSV)由来の抑制因子タンパク質であり、これは、21個のヌクレオチドの長さのsiRNAが相同RNAのアルゴノート誘導切断を誘導する前に、21個のヌクレオチドの長さのsiRNAに結合する(Voinnet et al.、2003)。トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)由来の抑制因子タンパク質であるV2は、ssRNA基質から二本鎖RNA中間体を生成するのに必要であると考えられるタンパク質である(Beclin et al.、2002)、植物タンパク質SGS3に結合し(Glick et al.、2008)、または、5’オーバーハングを有するdsRNA構造に結合する(Fukunaga et al.、2009)。p38は、ダイサーまたはアルゴノートタンパク質に結合することによって植物サイレンシングメカニズムに干渉する、ターニップクリンクルウィルス(TCV)由来の抑制因子タンパク質である(Azevedo et al.、2010)。ポレロウイルス由来の、P0
PEおよびRPV−P0といったP0タンパク質は、強化した分解のためにアルゴノートタンパク質を標的とする(Baumberger et al.、2007;Bortolamiol et al.、2007、Fusaro et al.、2012)。したがって、LA(18:1
Δ9、
12)からARA(20:4
Δ5、8、11、14)への生産のための一連の脂肪酸生合成遺伝子と組み合わせて、植物種子でのこれらSSPの発現のために、遺伝子構築物を次のように調製した。
【0393】
イソクリシス・ガルバナΔ9エロンガーゼおよびパブロバ・サリナΔ8およびΔ5デサチュラーゼをコードする脂肪酸生合成遺伝子および細菌選択マーカーを、9560bp断片を生じるPmeiおよびAvrIIでの消化によって、pJP3010の単一DNA断片上で得た。この断片上のΔ9エロンガーゼコード領域をA.タリアナFAE1プロモーター(pAtFAE1)およびコンリニン転写終結/ポリアデニル化領域(LuCnl2−3’)に結合させた。デサチュラーゼコード領域をそれぞれ切断ナピンFP1プロモーター(pBnFP1)およびnos3’転写終結/ポリアデニル化領域に結合させた。この断片上の3つの脂肪酸生合成遺伝子をpJP107と同じ方法で方向付けおよびスペース配置し(Petrie et al.、2012)、pJP107と同じタンパク質をコードさせた。DNA断片はまた、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするpCW141(国際公報第2010/057246号を参照)のpFP1:GFiP:nos3’遺伝子を含んでいた。このスクリーニング可能なマーカー遺伝子を、視覚的な種子特異的マーカーとして使用し、単純および非破壊的な同定が可能になり、それによって、その遺伝子を含み発現するトランスジェニック種子の選択が可能になった。
【0394】
それぞれが異なるSSP遺伝子を含む一連の5つのベクター(国際公報第2010/057246号)のそれぞれのPmeI−AvrII部位にPmeI−AvrII断片を挿入し、pFN045、pFN046、pFN047、pFN048およびpFN049と指定した遺伝子構築物をもたらした。これらは、SSPのP0
PE、p38、p19、35S:V2およびV2をそれぞれコードする遺伝子を含む。各SSP遺伝子は、V2コード領域が恒常的CaMV35Sプロモーターの制御下である構築物pFN048を除いて、FP1プロモーターおよびocs3’転写終結/ポリアデニル化領域の制御下にあった。各例のSSP遺伝子は構築物のT−DNA領域内にあり、T−DNAの右境界(RB)に隣接した。pFN045をAhdIおよびNheIで消化し、続いてDNAリガーゼで再環状化してFP1:P0
PE遺伝子を欠失することによって、いずれのSSPコード配列も欠如した第6の構築物、pFN050を作った。6つの各構築物は、T−DNA内およびT−DNAの左境界に隣接したNptII選択マーカー遺伝子を含んだ。構築物は全てアグロバクテリウムのプラスミドの維持のためのRK2複製開始点を有した。
【0395】
SSPと組み合わせたARA発現ベクターとのA.タリアナの形質転換
その種子脂質において高いリノール酸量を有するfad2/fae1二重変異体である、アラビドプシスの遺伝子型MC49を形質転換するために、フローラルディップ方法によって(CloughおよびBent、1998)、6つの各構築体pFN045〜pFN050で個別に形質転換したA.ツメファシエンス株GV3101で、植物を処理した。処理した植物を成熟するまで成長させ、それらから回収したT
1種子を、カナマイシンを含むMS培地上にプレートし、形質転換したT
1種子を選択した。種子のGFP発現のスクリーニングも、形質転換T
1種子のための視覚的なマーカーとして使用した。MS/Kanプレート上に生き残った、または、GFP陽性種子から得た実生を土壌に移し、T
2種子のために成熟まで成長させた。得られた形質転換植物の数は、pFN045、pFN046、pFN047、pFN048、pFN049およびpFN050との形質転換でそれぞれ5、14、32、8、23および24であった。この段階で、pFN046にp38をコードする遺伝子は機能的ではないことが分かり、したがって、ベクターpFN046で形質転換した植物を追加対照、すなわち、pFN050と基本的に同じであると見なした。
【0396】
FAME調製およびGC分析による種子脂質の脂肪酸組成決定のために、各形質転換植物から約100個のプール化したT
2種子を取り出した。各トランスジェニック系統からの6つのT
2実生も成長させ、T
3種子を作製した。
【0397】
T
2種子から抽出した全ての脂質における脂肪酸組成を、GCを用いて決定した。分析によって、ある範囲のARAならびにT
2群の中間体EDA(20:2ω6)およびDGLA(20:3ω6)の量が示された。ARAに関するデータが
図13および14に示される。
【0398】
図13は、T
2種子の群の脂質におけるARA量のボックスプロット分析を示す。ARA生合成遺伝子に加えてFP1:p19および35S:V2遺伝子を含む種子群のARAの中央(50パーセンタイル)値は、SSP遺伝子を含まないpFP050の欠陥FP1:p38遺伝子または対照T−DNA含む種子よりも、著しく高かった。p19およびV2をコードする遺伝子で形質転換した種子に関する平均ARA量は、p38遺伝子で形質転換した種子またはSSPを持たない種子に関してよりも多かった(
図14)。1つのFP1:p19およぶ2つのFP1:V2系統は、約19%、20%および23%のARAをそれぞれ示した。これらは異常値であり、したがって、ボックスプロット分析の計算には含まれなかった。遺伝子FP1:P0
PEおよび35S:V2を含むT−DNAで形質転換した植物は、他の構築物と比べてより少ない数で生き残った;これらの遺伝子はMC49背景では植物の健康に有害であり得ると考えられる。
【0399】
構築物の中でARA量が著しく異なるだけでなく、LAからARAの経路の第1の中間体、すなわちEDA(20:2ω6)の種子脂質における量もV2またはp19を発現する系統において、SSPを欠如するまたはp38構築物を含む種子よりも低く観察された(
図15)。T
3種子では、p19を発現する構築物を含む1つの群は種子脂質中の総脂肪酸のパーセンテージとしての38%のARAを示した。
【0400】
ある範囲のトランスジェニックT
3系統をT
4世代まで進ませた。V2を発現するT
4種子のARAの量は、前の世代に比べて同じであるか、または、それらのT3親に比べて増加した量を確実に示すかのいずれかであった(
図16)。p19を発現する系統は、さらにばらつきのあるARA量を示した。ARA量はいくつかの系統では低下した一方で、他ではT3親と比較して同じまたは増加していた。対照的に、欠陥p38遺伝子を含む、または、SSPを欠如する系統は、一般的にARAの量の低下および中間体の量の増加を示した(
図18)。これらの系統のいくつかでは、ARAは約1%まで低下し、EDAの量は約20%まで増加した。T
4種子のARAの平均量は、p38を発現する、または、SSPを欠如する系統と比べて、p19およびV2を発現する系統に関してより高かった(
図17)。
【0401】
この実験によって、LC−PUFA生合成経路のための遺伝子をさらに一緒に伴うトランスジェニック植物の種子におけるSSPの発現は、子孫の第1世代にて所望する脂肪酸の生産量を増加しただけでなく、子孫の第3または第4世代といった後代の世代での脂肪酸生産量を安定させた。増加した脂肪酸生産は、生合成経路での中間脂肪酸の量の低下を伴った。種子特異的プロモーターから発現されるSSPのp19およびV2が好ましかった。p38 SSPを発現するように設計された構築物は欠陥であり、この構築物では有効なデータは一切得られなかった。他のウイルス由来のV2 SSPおよびそのホモログは、特に好ましいと考えられ、なぜなら、これらは生合成経路遺伝子の最大発現および発育中の種子の同一細胞内での他の遺伝子の同時サイレンシングを可能にするからである。
【0402】
実施例12.油中のステロール含有量および組成のアッセイ
オーストラリアの商業的供給源から購入した12個の植物油試料の植物ステロールを、実施例1に記載される通り、GCおよびGC−MS分析によってO−トリメチルシリルエーテル(OTMSi−エーテル)として特徴づけた。保持データ、質量スペクトルの解釈ならびに文献および実験室標準質量スペクトルとの比較によってステロールを同定した。ステロールを、5β(H)−コラン−24−オール内部標準の使用によって定量化した。基本的な植物ステロール構造および同定ステロールのいくつかの化学構造が
図19および表25に示される。
【0403】
分析した植物油は:ゴマ(セサマム・インディカム(Sesamum indicum))、オリーブ(オレア・エウロパエア)、ヒマワリ(ヘリアンサス・アヌス)、トウゴマ(リシヌス・コムニス(Ricinus communis))、キャノーラ(セイヨウアブラナ)、ベニバナ(カーサマス・ティンクトリアス(Carthamus tinctorius))、ピーナッツ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、アマ(リヌム・ウシタティスシムム)およびダイズ(グリシン・マックス)由来である。全油試料のうち、主要な植物ステロールは相対存在量が多い順で:β−シトステロール(総ステロール含有量の28〜55%に及ぶ)、Δ5−アベナステロール(イソフコステロール)(3〜24%)、カンペステロール(2〜33%)、Δ5−スチグマステロール(0.7〜18%)、Δ7−スチグマステロール(1〜18%)およびΔ7−アベナステロール(0.1〜5%)であった。他のマイナーな複数のステロールを同定し、それらは:コレステロール、ブラシカステロール、カリナステロール、カンペスタノールおよびエブリコールであった。4つのC29:2および2つのC30:2ステロールも検知されたが、これらのマイナーな成分の同定を完成するには研究がさらに必要である。加えて、油のいくつかには他の同定されなかったステロールが複数存在したが、それらの大変低い存在量のために、質量スペクトルはそれらの構造の同定が可能になるほど十分強くなかった。
【0404】
油のmg/gとして表されるステロール含有量は、多い量の順で:キャノーラ油(6.8mg/g)、ゴマ油(5.8mg/g)、アマ油(4.8〜5.2mg/g)、ヒマワリ油(3.7〜4.1mg/g)、ピーナッツ油(3.2mg/g)、ベニバナ油(3.0mg/g)、ダイズ油(3.0mg/g)、オリーブ油(2.4mg/g)、トウゴマ油(1.9mg/g)であった。%ステロール組成および総ステロール含有量が表26に示される。
【0405】
【表25】
【0406】
全種子油試料の中で、主要な植物ステロールは一般的にβ−シトステロール(総ステロール含有量の30〜57%に及ぶ)であった。他の主要なステロールの割合では、油間で大きな幅があった:カンペステロール(2〜17%)、Δ5−スチグマステロール(0.7〜18%)、Δ5−アベナステロール(4〜23%)、Δ7−スチグマステロール(1〜18%)。異なる種の油は異なるステロールプロフィールを有し、いくつかは大変特徴的なプロフィールを有していた。キャノーラ油の場合、キャノーラ油は一番大きな割合のカンペステロール(33.6%)を有し、一方で、他の種の試料は一般的により低い量を有し、たとえば、ピーナッツ油では最大17%であった。ベニバナ油は比較的大きな割合のΔ7−スチグマステロール(18%)を有する一方で、このステロールは通常他の種の油では低く、ヒマワリ油では最大9%である。ステロールプロフィールは各種に対して特有であるので、したがって、ステロールプロフィールを使用して特定の野菜または植物油の同定を助け、および、純種性および他の油との不純物混和を確認し得る。
【0407】
表26.アッセイした植物油のステロール含有量および組成
【0408】
【表26】
【0409】
ヒマワリおよびベニバナそれぞれの2つの試料を比較し、各場合で、1つは種の冷圧によって作製し、精製しておらず、一方で、他方は冷圧せず、精製した。いくつか違いが観察されたものの、2つの油の源は類似したステロール組成および総ステロール含有量を有し、処理および生産はこれら2つのパラメーターには効果をほとんど有さなかったことを示している。試料間のステロール含有量は3倍ばらつき、1.9mg/gから6.8mg/gに及んだ。キャノーラ油は一番高いステロール含有量を有し、トウゴマ油は一番少ないステロール含有量を有した。
【0410】
実施例13.sn−2TAG位置でのDHAの蓄積の増加
本発明者らは、TAGのsn−2位置でのDHA蓄積は、1−アシル−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)をGA7構築物またはその変異形によって提供されるようなDHA生合成経路と一緒に同時発現することで増加し得ることを考察した。好ましいLPAATは、多価不飽和C22脂肪アシル−CoAに基質として作用するものであり、内因性LPAATに比べ、PAを形成するLPAのsn−2位置での多価不飽和C22鎖の挿入の増加につながる。細胞質LPAAT酵素はしばしば、特にその種がTAGにて異常な脂肪酸を合成および蓄積する場合、様々な基質の好みを示す。リムナンテス・ダグラシー(Limnanthes douglasii)由来のLPAAT2は、PA合成のためにエルコイル−CoA(C22:1−CoA)を基質として用いることが示され、これは、C22基質を使用し得ない同じ種由来のLPAAT1とは対照的であった(Brown et al.、2002)。
【0411】
公知のLPAATを企図し、試験のために複数を選択し、sn−2位置でDHAの取り込みを増加することが期待されないものがいくつか対照として含まれた。公知のLPAATには:シロイヌナズナLPAAT2:(配列番号63、受託番号ABG48392、Kim et al.、2005)、リムナンテス・アルバLPAAT(配列番号64、受託番号AAC49185、Lassner et al.、1995)、サッカロマイセス・セレビシエSlclp(配列番号65、受託番号NP010231、Zou et al.、1997)、モルティエレラ・アルピナLPAAT1(配列番号67、受託番号AED33305;米国特許第7879591号)およびB.ナプスLPAAT(配列番号68および配列番号69、それぞれ受託番号ADC97479およびADC97478)が含まれた。これらを選択してLPAAT酵素の3つのグループを包含した:1)異常な長鎖多価不飽和脂肪酸に対して通常低活性を有する対照植物種子LPAAT(アラビドプシスおよびブラシカLPAATを含む)、2.基質としてC22アシル−CoA、この場合エルカ酸C22:1を用いることでC22脂肪酸に作用することが以前に実証されたLPAAT(リムナンテスおよびサッカロマイセスLPAATを含む)、3.EPAおよびDHAといった長鎖多価不飽和脂肪酸を基質として使用できる可能性が高いと発明者らが考えるLPAAT(モルティエレラLPAATを含む)。
【0412】
アラビドプシスLPAAT2(LPAT2とも呼ばれる)はC16およびC18基質に対して活性を有することが示される、小胞体に局在した酵素であるが、C20またはC22基質に対する活性は試験されなかった(Kim et al.、2005)。リムナンテス・アルバLPAAT2は、C22:1アシル鎖をPAのsn−2位置に挿入することが実証されたが、DHAを基質として使用する能力は試験されなかった(Lassner et al.、1995)。選択されたS.セレビシエLPAAT Slclpは、18:1−CoAに加えて22:1−CoAを基質として使用して活性を有することが示され、鎖長に関する幅広い基質特異性を示唆する(Zou et al.、1997)。再び、DHA−CoAおよび他のLC−PUFAは基質として試験されなかった。モルティエレラLPAATは、トランスジェニックヤロウイア・リポリティカのEPAおよびDHA脂肪酸基質に対して活性を有することが以前に示された(米国7879591)。
【0413】
発明者らは、さらなるLPAATを同定した。ミクロモナス・プシラは、この種のTAG上のDHAの分布は確認されていないが、その油中にDHAを生産および蓄積する微細藻類である。アラビドプシスLPAAT2をBLAST問い合わせ配列として使用してミクロモナス・プシラゲノム配列を調査することで、ミクロモナス・プシラLPAAT(配列番号66、受託番号XP_002501997)を同定した。候補配列が複数生じ、配列XP_002501997を、C22 LC−PUFAに対する活性を伴う可能性の高いLPAAT酵素として試験するために合成した。リシヌス・コムニスLPAATをトウゴマゲノム配列の推定LPAATとして注釈した(Chan et al.、2010)。トウゴマゲノム由来の4つの候補LPAATを合成し、浸潤したN.ベンサミアナ葉組織の粗葉可溶化物で試験した。ここに記載される候補配列はLPAAT活性を示した。
【0414】
複数の候補LPAATを、系統樹上に公知のLPAATと一緒に配列した(
図20)。推定ミクロモナスLPAATは推定C22 LPAATとクラスター化しなかったが、分岐配列であったことが留意された。
【0415】
様々なLPAATの、基質としてDHA−CoAを使用する能力の初期試験として、キメラ遺伝子構築物を、N.ベンサミアナ葉における外因性LPAATの恒常的発現のために作製し、それぞれは次の通りに、35Sプロモーターの制御下にある:35S:Arath−LPAAT2(アラビドプシスER LPAAT);35S:Ricco−LPAAT2;35S:Limal−LPAAT(リムナンテス・アルバLPAAT);35S:Sacce−Slclp(S.セレビシエLPAAT);35S:Micpu−LPAAT(ミクロモナス・プシラLPAAT);35S:Moral−LPAAT1(モルティエレラ・アルピナLPAAT)。外因性LPAATを欠如する35S:p19構築物を対照として実験で用いる。これら構築物をそれぞれ、実施例1で記載される通りにアグロバクテリウム経由でN.ベンサミアナ葉に導入し、浸潤から5日後、処理した葉の区域を切断し、すりつぶして葉可溶化物を作る。各可溶化物には、LPAを合成するための外因性LPAATならびに内因性酵素が含まれる。
14Cで標識したOA、LAまたはALA(C18基質)、ARA(C20基質)およびDHA(C22)を可溶化物に別々に添加することで、インビトロの反応を3通りで準備する。反応を25℃でインキュベートし、
14Cで標識した脂肪酸のPAへの取り込みの量をTLCで測定する。ARAおよびC18脂肪酸と比較して、各LPAATのDHAを用いる能力を算出する。メドウフォーム、モルティエレラおよびサッカロマイセスLPAATは、DHA基質に活性を有することが発見され、放射標識したPAはこれらに関しては現れたが、他のLPAATに関しては現れなかった。全LPAATは、類似したオレイン酸供給によって活性であると確認された。
【0416】
種子のLPAAT活性を試験するために、タンパク質コード配列またはLPAATを複数コンリニン(pLuCnl1)プロモーターの制御下でバイナリーベクターに挿入する。次いで、キメラ遺伝子、Cnl1:Arath−LPAAT(陰性対照)、Cnl1:Limal−LPAAT、Cnl:Sacce−SlclpおよびCnl1:Moral−LPAATをそれぞれ含む、結果として得られた遺伝子構築物を用いてB.ナプスおよびA.タリアナ植物を形質転換し、種子特異的な方法でLPAATを発現する安定した形質転換体を作製する。Cnl1:LPAAT構築物を有する形質転換植物を、種子でDHAを生産するGA7構築物またはその変異形を発現する植物(実施例5)と交雑し、TAGのsn−2位置でのDHAの取り込みの増加につながる。また、構築物を用いて、GA7構築物およびその変異形をすでに含むB.ナプス、C.サティバおよびA.タリアナ植物(実施例2から5)を形質転換して親およびLPAAT遺伝子構築物の双方を保有する子孫を作製する。TAGのsn−2位置でのDHAの取り込みの増加は、LPAATコード導入遺伝子を欠如する植物での取り込みに相対的であると予想される。油含有量も種子で改善され、特に、より多い量のDHAを生産する種子に関して改善され、実施例2で説明されるアラビドプシス種子で見られる傾向を相殺する。
【0417】
広義的に説明される本発明品の趣旨または範囲から逸脱することなく、数多くの変化および/または修正が特定の実施形態で示される本発明品になされ得ることが、当業者には理解されるだろう。したがって、本実施形態は全ての点において例示的であり制限的ではないと見なされる。
【0418】
本出願は、2012年6月15日に出願された米国第61/660,392号、2012年6月22日に出願された米国第US61/663,344号、2012年9月6日に出願された米国第61/697,676号、2013年3月14日に出願された米国第61/782,680号からの優先権を主張し、それぞれの全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0419】
本明細書で考察および/または参照された出版物はすべてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0420】
本出願は、2012年6月15日に出願された米国第61/660,392号、2012年6月22日に出願された米国第61/663,344号および2012年9月6日に出願された米国第61/697,676号を、参照により本明細書に組み込む。
【0421】
本明細書に含まれる文書、法令、材料、デバイス、品物などの考察はいずれも、本発明の文脈を提供する目的のためのみである。これらの事柄のいずれかまたは全てが先行技術の基盤の一部を形成する、または、本出願の各請求項の優先日以前に存在した通り、本発明に関連した当該分野では共通の常識であったということが承認としては見なされない。
【0422】
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