特許第6242882号(P6242882)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242882植物細胞における長鎖多価不飽和脂肪酸の産生
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242882
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】植物細胞における長鎖多価不飽和脂肪酸の産生
(51)【国際特許分類】
   C11B 1/10 20060101AFI20171127BHJP
   C11C 3/00 20060101ALI20171127BHJP
   C11C 1/00 20060101ALI20171127BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20171127BHJP
   C12N 5/04 20060101ALI20171127BHJP
   C12N 9/00 20060101ALI20171127BHJP
   C12P 7/62 20060101ALI20171127BHJP
   A01H 5/00 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 51/48 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 53/50 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 57/03 20060101ALI20171127BHJP
   C07C 57/12 20060101ALI20171127BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20171127BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20171127BHJP
   A61K 31/22 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/24 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 17/08 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20171127BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 31/56 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 36/31 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   C11B1/10ZNA
   C11C3/00
   C11C1/00
   C12N15/00 A
   C12N5/04
   C12N9/00
   C12P7/62
   A01H5/00 A
   C07C51/48CSP
   C07C53/50
   C07C57/03
   C07C57/12
   A23K10/30
   A61K8/37
   A61K8/63
   A61K8/92
   A61K8/9789
   A61K31/22
   A61P9/06
   A61P9/00
   A61P29/00
   A61P11/06
   A61P17/06
   A61P19/10
   A61P13/12
   A61P31/18
   A61P25/00
   A61P29/00 101
   A61P1/04
   A61P25/18
   A61P35/00
   A61P13/02
   A61P25/24
   A61P9/12
   A61P3/10
   A61P3/04
   A61P25/28
   A61P11/00
   A61P9/10
   A61P17/08
   A61P7/02
   A61P15/00
   A61P3/02
   A61P27/02
   A61K31/56
   A61K36/48
   A61K36/31
【請求項の数】22
【全頁数】143
(21)【出願番号】特願2015-516383(P2015-516383)
(86)(22)【出願日】2013年6月14日
(65)【公表番号】特表2015-528027(P2015-528027A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】AU2013000639
(87)【国際公開番号】WO2013185184
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年6月13日
(31)【優先権主張番号】61/660,392
(32)【優先日】2012年6月15日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/663,344
(32)【優先日】2012年6月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/697,676
(32)【優先日】2012年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/782,680
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(73)【特許権者】
【識別番号】511119798
【氏名又は名称】グレインズ リサーチ アンド デヴェロップメント コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】514318725
【氏名又は名称】ヌシード ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100093676
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ピートリー,ジェームズ ロバートソン
(72)【発明者】
【氏名】シング,スリンダー パル
(72)【発明者】
【氏名】デ フェイター,ロバート チャールズ
【審査官】 吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−509059(JP,A)
【文献】 特表2011−519552(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/103253(WO,A1)
【文献】 特表2014−523750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B
C11C
C12N
C12P
A01H
A23K
A61K 8/
A61K 36/
A61P
A61Q
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに、任意にステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)の1またはそれ以上を含む抽出植物脂質であって、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは7(w/w)から20%(w/w)であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは2(w/w)から16%(w/w)の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは1%(w/w)未満である、前記抽出植物脂質。
【請求項2】
TAGの形態でエステル化されたDHAの少なくとも70%(w/w)が前記TAGのsn‐1またはsn‐3の位置にある、請求項1の脂質。
【請求項3】
以下の特徴:
i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは、2(w/w)から15%(w/w)の間である、
i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルは、3(w/w)ら30%(w/w)の間である、
iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルは、4(w/w)ら35%(w/w)の間である、
iv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記α‐リノレン酸(ALA)のレベルは、7(w/w)ら40%(w/w)の間である、
v)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記γ‐リノレン酸(GLA)のレベルは、4%(w/w)未満である、
vi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ステアリドン酸(SDA)のレベルは、4(w/w)未満である、
vii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサテトラエン酸(ETA)のレベルは、4(w/w)未満である、
viii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルは、4%(w/w)未満である、
ix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサペンタエン酸(EPA)のレベルは、4%(w/w)未満である、
x)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ドコサぺンタエン酸(DPA)のレベルは、4%(w/w)未満である、
xi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、11%(w/w)から20%(w/w)の間である、
xii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸のレベルは、4(w/w)ら25%(w/w)の間である、
xiii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸のレベルは、4(w/w)ら35%(w/w)の間である、
xiv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸のレベルは、20%(w/w)ら75%(w/w)の間である、
xv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸のレベルは、20%(w/w)未満である、
xvi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸のレベルは、10%(w/w)未満である、
xvii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは、40%(w/w)ら60%(w/w)の間である、
xviii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸のレベルは、9%(w/w)ら33%(w/w)の間である、
xix)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、1.0から3.0の間である、
xx)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、1.0から3.0の間である、
xxi)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも10%(w/w)の、オレイン酸のDHAへの転換の効率に基づく、
xxii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも15%の、LAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxiii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも17%の、ALAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxiv)前記抽出脂質における前記総脂肪酸は、C20:1を1%(w/w)未満有する、
xxv)前記脂質の前記TG含有量は、少なくとも70%(w/w)である、
xxvi)前記脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含む、
xxvii)前記脂質は、10%(w/w)未満の遊離(非エステル化)脂肪酸および/もしくはリン脂質を含む、または、これらを実質的に含まない、
xxviii)前記脂質は、トリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む、
の1もしくはそれ以上、または全てを有する請求項1または2の脂質。
【請求項4】
1またはそれ以上のステロールをさらに含む、および/またはオイルの形態であって、1.5mgから10mgの間のステロール/gのオイルを含む、請求項1〜3のいずれか1つの脂質。
【請求項5】
前記脂質は、アブラナ属種オイルまたはカメリナ サティバオイルである、請求項1からのいずれか1つの脂質。
【請求項6】
抽出植物脂質を産生するためのプロセスであって、以下の工程:
i)脂質を含む植物部分を得ることであって、前記脂質はエステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)およびγ‐リノレン酸(GLA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに任意にエイコサペンタエン酸(EPA)およびエイコサテトラエン酸(ETA)の1またはそれ以上を含み、前記植物部分における抽出可能な脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、7(w/w)から20%(w/w)であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは2(w/w)から16%(w/w)の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは1%(w/w)未満であり、前記植物部分は、Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼをコードし、各ポリヌクレオチドが、前記植物部分の細胞において、前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることが可能である、1またはそれ以上のプロモーターに操作可能に結合される、外因性ポリヌクレオチドを含む、工程、ならびに
ii)前記植物部分から脂質を抽出することであって、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、7(w/w)から20%(w/w)であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは2(w/w)から16%(w/w)の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは1%(w/w)未満である、工程、
を含む、前記プロセス。
【請求項7】
前記抽出脂質は、請求項2から5のいずれか1つに定義される1またはそれ以上の特徴を有する、請求項5のプロセス。
【請求項8】
前記植物部分が、以下の特徴:
i)前記Δ12‐デサチュラーゼが、少なくとも60%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞におけるオレイン酸をリノール酸に転換する、
ii)前記ω3‐デサチュラーゼが、少なくとも65%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、ω6脂肪酸をω3脂肪酸に転換する、
iii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、少なくとも30%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、ALAをSDAに転換する、
iv)前記Δ6‐デサチュラーゼが、5%未満の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、リノール酸をγ‐リノレン酸に転換する、
v)前記Δ6‐エロンガーゼが、少なくとも60%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、SDAをETAに転換する、
vi)前記Δ5‐デサチュラーゼが、少なくとも60%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、ETAをEPAに転換する、
vii)前記Δ5‐エロンガーゼが、少なくとも80%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、EPAをDPAに転換する、
viii)前記Δ4‐デサチュラーゼが、少なくとも80%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、DPAをDHAに転換する、
ix)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞における、DHAへのオレイン酸の転換の効率が、少なくとも10%である、
x)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞における、DHAへのLAの転換の効率が、少なくとも15%である、
xi)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞における、DHAへのALAの転換の効率が、少なくとも17%である、
xii)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞が、前記外因性ポリヌクレオチドを欠いている対応する細胞よりも、少なくとも15%(w/w)多いω3脂肪酸を含む、
xiii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、、リノール酸(LA)に対してα‐リノレン酸(ALA)を優先的に不飽和化する、
xiv)前記Δ6‐エロンガーゼは、また、Δ9‐エロンガーゼ活性を有する、
xv)前記Δ12‐デサチュラーゼは、また、Δ15‐デサチュラーゼ活性を有する、
xvi)前記Δ6‐デサチュラーゼは、また、Δ8‐デサチュラーゼ活性を有する、
xvii)前記ω3‐デサチュラーゼは、また、LAでΔ15‐デサチュラーゼ活性を有する、
xviii)前記ω3‐デサチュラーゼは、両方のLAおよび/またはGLAを不飽和化する、
xix)前記ω3‐デサチュラーゼは、、LAに対してGLAを優先的に不飽和化する、
xx)前記植物部分における前記DHAのレベルは、少なくとも10%の、前記植物部分におけるオレイン酸のDHAへの転換の効率に基づく、
xxi)前記植物部分における前記DHAのレベルは、少なくとも15%の、前記植物部分におけるLAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxii)前記植物部分における前記DHAのレベルは、少なくとも17%の、前記植物部分におけるALAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxiii)1もしくはそれ以上のまたは全ての前記デサチュラーゼが、対応するアシル‐PC基質よりもアシル‐CoA基質で、より高い活性を有する、
xxiv)前記Δ6‐デサチュラーゼが、脂肪酸基質としての、LAよりもALAで、より高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する、
xxv)前記Δ6‐デサチュラーゼが、脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、より高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する、
xxvi)前記Δ6‐デサチュラーゼが、基質としてのALAで、LAと比較して、少なくとも2倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する、
xxvii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、より高い活性を有する、 xxviii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、少なくとも5倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する、
xxix)前記デサチュラーゼは、フロントエンドのデサチュラーゼである、
xxx)前記Δ6‐デサチュラーゼは、ETAで、検出可能なΔ5‐デサチュラーゼ活性を有していない、
の1もしくはそれ以上、または全てを有する請求項6または7のプロセス。
【請求項9】
以下の1またはそれ以上の特徴:
i)前記外因性ポリヌクレオチドは、前記植物部分の細胞のゲノムに組込まれるT‐DNA分子において共有結合で結合される;
ii)前記外因性ポリヌクレオチドを含む前記植物部分の総オイル含有量は、前記外因性ポリヌクレオチドを欠く対応する植物部分の総オイル含有量の少なくとも40%(w/w)である;
iii)前記脂質は、オイルであり、前記脂質の少なくとも90%(w/w)がトリアシルグリセロールである;
iv)前記総脂肪酸含有量のパーセンテージとしての前記DHAのレベルを増加させるために前記脂質を処理することをさらに含
が該当する、請求項から8のいずれか1つのプロセス。
【請求項10】
以下のセットの酵素:
i)Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
ii)ω3‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
iii)Δ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
iv)Δ12‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
v)ω3‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
vi)Δ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
vii)Δ12‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、または
viii)Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
の1つをコードする、外因性ポリヌクレオチドを含む宿主細胞であって、
各ポリヌクレオチドは、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることができるように、1またはそれ以上のプロモーターと操作可能に結合され、ここで前記細胞は、請求項1からのいずれか1つに定義される脂質を含む、前記細胞。
【請求項11】
請求項10の細胞を含む、トランスジェニック非ヒト生物。
【請求項12】
トランスジェニック植物である、請求項11のトランスジェニック非ヒト生物。
【請求項13】
a)その種子における脂質であって、該脂質がエステル化形態における脂肪酸を含む脂質、ならびに
b)以下のセットの酵素:
i)Δ12‐デサチュラーゼ、真菌のω3‐デサチュラーゼ、および/または真菌のΔ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、または
ii)Δ12‐デサチュラーゼ、真菌のω3‐デサチュラーゼ、および/もしくは真菌のΔ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、の1つをコードする外因性ポリヌクレオチド
を含む油料種子植物であって、
各ポリヌクレオチドは、前記植物の種子を発生する場合に、前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることができるように1またはそれ以上の種子特異的プロモーターを操作可能に結合され、
前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)およびγ‐リノレン酸(GLA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)、ならびに任意にエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、
前記脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは7(w/w)から20%(w/w)であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは2(w/w)から16%(w/w)の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは1%(w/w)未満である、前記油料種子植物。
【請求項14】
以下の特徴:
i)キャノーラ、ダイズ、カメリナ サティバ、またはシロイヌナズナ植物である;
ii)1またはそれ以上の前記デサチュラーゼは、アシル‐CoA基質を使用することができる;
iii)前記植物の成熟した、収穫された種子は、1グラムの種子あたり少なくとも28mgのDHA含有量を有する;
の1またはそれ以上が該当する、請求項13の植物。
【請求項15】
以下の特徴:
i)請求項1からのいずれか1つに定義される脂質を含む;または
ii)請求項12から14のいずれか1つの植物由来である
1またはそれ以上を有する植物部分。
【請求項16】
種子である、請求項15の植物部分。
【請求項17】
種子を産生する方法であって、
a)請求項15もしくは16に定義される部分を産生する植物を成長させること、または請求項12から15のいずれか1つに定義される部分を産生する植物を成長させることと、
b)前記植物の1つまたは複数から種子を収穫することと、
c)任意に、前記種子から脂質を抽出することと、
を含む、方法。
【請求項18】
請求項16の種子から得られる種子ミール。
【請求項19】
家畜飼料を産生する方法であって、
1またはそれ以上の、請求項1からのいずれか1つの前記脂質もしくはオイル、請求項10の前記細胞、請求項11もしくは12の前記トランスジェニック生物、請求項13もしくは14の前記油料種子植物、請求項15もしくは16の前記植物部分、または請求項18の前記種子ミールを、少なくとも1つの他の食品原料成分と混合することを含む、方法。
【請求項20】
PUFAから利益を得る、症状の治療または防止に使用するための、請求項1から5のいずれか1つの前記脂質。
【請求項21】
PUFAから利益を得る、症状の治療または防止に使用するための、請求項18に記載の前記種子ミール。
【請求項22】
多価不飽和脂肪酸のエチルエステルを産生するためのプロセスであって、
抽出植物脂質におけるトリアシルグリセロールをエステル交換することを含み、前記抽出植物脂質は、エステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに任意に1またはそれ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルが7(w/w)から20%(w/w)であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるパルミチン酸のレベルは2(w/w)から16%(w/w)の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは1%(w/w)未満であり、これにより前記エチルエステルを産生する、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組換え植物細胞において、長鎖多価不飽和脂肪酸、特にドコサヘキサエン酸を合成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オメガ3長鎖多価不飽和脂肪酸(LC‐PUFA)は、ヒトおよび動物の健康のために重要な化合物として現在広く認識されている。これらの脂肪酸は、食事供給源から、またはその両方がヒトの食事において必須脂肪酸であるとされる、リノール酸(LA,18:2ω6)もしくはα‐リノレン酸(ALA,18:3ω3)の脂肪酸の転換により得られるかもしれない。ヒトおよび多くの他の脊椎動物が植物源から得られたLAまたはALAをC22に転換することができ、一方、それらは非常に低い割合でこの転換を行う。さらに、最も現代的な社会では、理想であるとされるω6:ω3脂肪酸について4:1の比またはそれ以下の代わりに、少なくとも90%の多価不飽和脂肪酸(PUFA)がω6脂肪酸である、アンバランスな食事をしている(非特許文献1)。ヒトについてのエイコサペンタエン酸(EPA,20:5ω3)およびドコサヘキサエン酸(DHA,22:6ω3)のようなLC‐PUFAの即時の食事供給源は、大部分は魚および魚油である。健康の専門家は、よって、ヒトの食事に、有意なレベルのLC‐PUFAを含む魚を規則的に含めることを薦めている。ますます、魚由来のLC‐PUFAオイルは、食品生産物、例えば、調整粉乳に組み込まれている。しかしながら、グローバルなおよび国際的な水産業の低下に起因し、これらの有益な健康増進オイルの代替的なソースが必要とされる。
【0003】
動物と対照的に、顕花植物は、18の炭素よりも長い鎖の長さを有する多価不飽和脂肪酸を合成する性能を欠く。特に、他の被子植物とともに作物および園芸作物は、ALA由来であるEPA、ドコサぺンタエン酸(DPA,22:5ω3)、およびDHAのようなより長い鎖のω3脂肪酸を合成するために必要とされる酵素を有していない。植物のバイオテクノロジーにおける重要なゴールは、よって、実質的な量のLC‐PUFAを産生し、これによりこれらの化合物の代替的なソースを提供する作物植物のエンジニアリングである。
【0004】
LC‐PUFA生合成経路
微細藻類、蘚類、および真菌類のような、生物におけるLC‐PUFAの生合成は、通常、一連の酸素依存的な不飽和化および鎖延長反応として生じる(図1)。これらの生物において、EPAを産生する最も一般的な経路は、Δ6‐不飽和化、Δ6‐伸長およびΔ5‐不飽和化(Δ6‐不飽和化経路と呼ばれる)を含み、一方、より一般的ではない経路は、Δ9‐伸長、Δ8‐不飽和化、およびΔ5‐不飽和化(Δ9‐不飽和化経路とよばれる)を使用する。これらの連続的な不飽和化および鎖延長反応は、図1の左上に模式的に示されるω6脂肪酸基質LA(ω6)または図1の右下に示されるEPAにたどり着くω3基質ALA(ω3)のいずれかにより開始し得る。最初のΔ6‐不飽和化がω6基質LAで行われる場合、一連の3つの酵素のLC‐PUFA産生物は、ω6脂肪酸ARAであろう。LC‐PUFA合成生物は、アラキドン酸(ARA,20:4ω6)のEPAへの転換について、図1にΔ17‐デサチュラーゼ工程として示されるように、ω3‐デサチュラーゼを用いて、ω6脂肪酸をω3脂肪酸に転換することとしてもよい。ω3‐デサチュラーゼファミリーのいくつかのメンバーは、LAからARAの範囲の種々の基質で作用し得る。植物のω3‐デサチュラーゼはLAのALAへのΔ15‐不飽和化を特異的に触媒することが多く、一方、真菌および酵母のω3‐デサチュラーゼは、ARAのEPAへのΔ17‐不飽和化に特異的であることとしてもよい(非特許文献2、非特許文献3)。いくつかの報告は、多種多様なω6基質をそれらの対応するω3産生品に転換し得る非特異的なω3‐デサチュラーゼが存在することを示唆する(非特許文献4)。
【0005】
これらの生物におけるEPAのDHAへの変換は、DPAを産生するためにEPAのΔ5‐伸長により生じ、その後、DHAを産生するためのΔ4‐不飽和化に続く(図1)。対照的に、哺乳類は、Δ4‐デサチュラーゼとは独立した、3つの別個の反応により、DPAをDHAに転換する、いわゆる「シュプレッヒャー(Sprecher)」経路を使用する(非特許文献5)。
【0006】
植物、蘚類、微細藻類、およびカエノラブディティスエレガンス(Caenorhabditis elegans)のような下等動物に概してみられるフロントエンドのデサチュラーゼは、ホスファチジルコリン(PC)基質のsn‐2位置にエステル化された脂肪酸基質を主に受容する。これらのデサチュラーゼは、よって、アシル‐PC、脂質‐結合フロントエンドデサチュラーゼとして知られる(非特許文献6)。対照的に、高等動物のフロントエンドデサチュラーゼは、概して、脂肪酸基質がPCよりもむしろCoAに結合するアシル‐CoA基質を受容する(非特許文献7)。いくつかの微細藻類デサチュラーゼおよび1つの植物デサチュラーゼは、CoAへとエステル化される脂肪酸基質を使用することが知られる(表2)。
【0007】
各PUFA鎖延長反応は、多成分性のタンパク質複合体により触媒される4つの工程からなり、まず、縮合反応が、マロニル‐CoAから脂肪酸に2Cユニットの追加をもたらし、β‐ケトアシル中間物の形成をもたらす。次に、これがNADPHにより還元され、その後エノイル中間物を産生するための脱水へと続いた。この中間物は、最後に、伸長された脂肪酸を産生するために2回目の還元がなされた。概して、これらの4つの反応の濃縮工程は基質特異的であり、一方、他の工程はそうではないことが考えられる。実施においては、このことは、天然の植物の伸長機構は、PUFAに特異的な濃縮酵素(概して「エロンガーゼ(elongase)」と呼ばれる)が導入されることを提供するPUFAを伸長することができるが、非天然PUFA基質を伸長することにおける、天然の植物伸長機構の効率は、低いかもしれないことを意味する。2007年に、酵母の伸長サイクルデヒドラターゼの同定および特徴づけが公開された(非特許文献8)。
【0008】
植物、蘚類、および微細藻類におけるPUFA不飽和化は、アシル‐PCプールにおける脂肪酸基質に対して主に天然に生じ、一方、伸長は、アシル‐CoAプールにおける基質に対して生じる。アシル‐PC分子からCoA担体への脂肪酸の転移は、ホスホリパーゼ(PLA)により行われ、一方、アシル‐CoA脂肪酸からPC担体への転移は、リゾホスファチジル‐コリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)により行われる(図21)(非特許文献9)。
【0009】
LC‐PUFAの工学的産生
ほとんどのLC‐PUFA代謝工学は、有酸素性のΔ6‐不飽和化/伸長経路を用いて行われてきた。タバコにおけるγ‐リノレン酸(GLA、18:3ω6)の生合成が、シアノバクテリウムシネコシスティス由来のΔ6‐デサチュラーゼを用いて、1996年に最初に報告された(非特許文献10)。より近年では、GLAがベニバナ(種子オイルにおける73%GLA;非特許文献11)およびダイズ(28%GLA;非特許文献12)のような作物植物において産生された。EPAおよびDHAのようなLC‐PUFAの産生は、増加した数の不飽和化および関連する伸長工程に起因する、より複雑な工学を伴う。陸上植物におけるEPAの産生は、イソクリシスガルバナ(Isochrysis galbana)由来のΔ9‐エロンガーゼ、ユーグレナグラシリス由来のΔ8‐デサチュラーゼ、およびモルティエレラアルピナ由来のΔ5‐デサチュラーゼをコードする遺伝子をアラビドプシスに導入し、3%までのEPAを産生した非特許文献13により最初に報告された。この研究は、ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)由来のΔ6‐デサチュラーゼおよびΔ6‐エロンガーゼ、並びにフェオダクチラム(Phaeodactylum tricornutum)由来のΔ5‐デサチュラーゼをコードする遺伝子を用いる亜麻の種子において、0.8%までのEPAの産生を報告した非特許文献14により続けられた。
【0010】
DHA産生の最初の報告、および報告された最も高いレベルのVLC‐PUFA産生を示すのが、種子ではなく、魚類の内臓真菌症菌(Saprolegnia diclina)のΔ6‐デサチュラーゼ、モルティエレラアルピナのΔ6‐デサチュラーゼ、モルティエレラアルピナのΔ5‐デサチュラーゼ、魚類の内臓真菌症菌のΔ4‐デサチュラーゼ、魚類の内臓真菌症菌のΔ17‐デサチュラーゼ、モルティエレラアルピナのΔ6‐エロンガーゼおよびパブロバルセリ(Pavlova lutheri)のΔ5‐エロンガーゼをコードする遺伝子を導入することにより、ダイズ胚における3%DHAの産生が記載される、特許文献1であった。また、DHAをも産生する胚における最大のEPAのレベルは、EPAのDHAへの転換の効率が乏しいことを示す、19.6%であった(特許文献2)。この発見は、非特許文献15により公開されたものと同様であり、EPAからDHAへの流動は低く、ゼブラフィッシュΔ5/6‐デサチュラーゼ、カエノラブディティスエレガンス(Caenorhabditis elegans)Δ6‐エロンガーゼ、並びにパブロバサリナ(Pavlova salina)Δ5‐エロンガーゼおよびΔ4‐デサチュラーゼを用いるアラビドプシスにおいて3%EPAおよび0.5%DHAの産生であった。また、2005年には、Wu et al.が、ピティウムイレギュラレ(Pythium irregulare)のΔ6‐デサチュラーゼ、スラウストキトリッド(Thraustochytrid)のΔ5‐デサチュラーゼ、ヒメツリガネゴケのΔ6‐エロンガーゼ、キンセンカ(Calendula officianalis)のΔ12‐デサチュラーゼ、スラウストキトリッドのΔ5‐エロンガーゼ、フィトフトラインフェスタンス(Phytophthora infestans)のΔ17‐デサチュラーゼ、ニジマス(Oncorhyncus mykiss)のLC‐PUFAエロンガーゼ、スラウストキトリッドのΔ4‐デサチュラーゼ、およびスラウストキトリッドLPCATを用いて、セイヨウカラシナにおける25%ARA、15%EPA、および1.5%DHAの産生を公開した(非特許文献16)。ω3LC‐PUFAを合成する油料種子作物を産生するための試みの概要は、非特許文献17および非特許文献18で提供される。非特許文献18により示されるように、トランスジェニック植物においてDHAの産生について示すための得られた結果は、魚油においてみられるレベルに近いものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第04/017467号
【特許文献2】国際公開第2004/071467号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Trautwein, 2001
【非特許文献2】Pereira et al., 2004a
【非特許文献3】Zank et al., 2005
【非特許文献4】Zhang et al., 2008
【非特許文献5】Sprecher et al., 1995
【非特許文献6】Domergue et al. , 2003
【非特許文献7】Domergue et al., 2005
【非特許文献8】Denic and Weissman, 2007
【非特許文献9】Singh et al. , 2005
【非特許文献10】Reddy and Thomas, 1996
【非特許文献11】Knauf et al., 2006
【非特許文献12】Sato et al., 2004
【非特許文献13】Qi et al. (2004)
【非特許文献14】Abbadi et al. (2004)
【非特許文献15】Robert et al. (2005)
【非特許文献16】Wu et al., 2005
【非特許文献17】Venegas-Caleron et al. (2010)
【非特許文献18】Ruiz-Lopez et al. (2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、遺伝子組換え細胞におけるLC‐PUFAの、特に、油料種子植物の種子におけるDHAのより効率的な産生の必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、高いレベルのDHAを有する脂質を産生するために特定された方法および植物を有する。
【0015】
第1の態様において、本発明は、エステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに、任意にステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)の1またはそれ以上を含み、前記抽出脂質の総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約7%から20%である、抽出植物脂質を提供する。
【0016】
一実施形態においては、前記抽出脂質は、以下の特徴:
i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記パルミチン酸のレベルは、約2%から18%の間、または約2%から16%の間、または約2%から15%の間であり、
ii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは、約6%未満、または約3%未満、または約2%未満、または約1%未満である、
iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルは、約1%から約30%の間、約3%から約30%の間、約6%から約30%の間、1%から約20%の間、約30%から約60%の間、約45%から約60%、または約30%である、
iv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルは、約4%から約35%の間、約4%から約20%の間、または約4%から17%の間である、
v)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記α‐リノレン酸(ALA)のレベルは、約4%から約40%の間、約7%から約40%の間、約10%から約35%の間、約20%から約35%の間、約4%から16%の間、または約2%から16%の間である、
vi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記γ‐リノレン酸(GLA)のレベルは、4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から約7%の間、0.05%から約4%の間、0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
vii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ステアリドン酸(SDA)のレベルは、約7%未満、約6%未満、約4%未満、約3%未満、約0.05%から約7%の間、約0.05%から約6%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
viii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサテトラエン酸(ETA)のレベルは、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.05%から約6%の間、約0.05%から約5%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または約0.05%から約2%の間である、
ix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルは、約4%未満、約2%未満、約1%未満、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または約0.05%から約2%の間、または約0.05%から約1%の間である、
x)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサペンタエン酸(EPA)のレベルは、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約0.05%から約10%の間、約0.05%から約5%の間、約0.05%から約3%の間、または約0.05%から約2%の間である、
xi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ドコサぺンタエン酸(DPA)のレベルは、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約0.05%から約8%の間、約0.05%から約5%の間、または約0.05%から約3%の間、または約0.05%から約2%の間である、
xii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約8%から20%の間、約10%から20%の間、約11%から20%の間、約10%から約16%の間、または約14%から20%の間である、
xiii)前記脂質は、その脂肪酸含有量にω6‐ドコサぺンタエン酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を含む、
xiv)前記脂質は、その脂肪酸含有量に、ω6‐ドコサぺンタエン酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を実質的に含まない、
xv)前記脂質は、その脂肪酸含有量に、SDA、EPA、およびETAを実質的に含まない、
xvi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸のレベルは、約4%から約25%の間、約4%から約20%の間、約6%から約20%の間、約4%から約60%の間、約30%から約60%の間、または約45%から約60%の間である、
xvii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸のレベルは、約4%から約35%の間、約8%から約25%の間、または8%から約22%の間である、
xviii)記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸のレベルは、約20%から約75%の間、約50%から約75%の間、または約60%から約75%の間である、
xix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸のレベルは、約35%から約50%の間、約20%から約35%の間、約6%から約20%の間、約20%未満、約16%未満、約10%未満、約1%から約16%の間、約2%から約10%の間、または約4%から約10%の間である、
xx)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸のレベルは、約10%未満、約8%未満、約6%未満、4%未満、約1%から約20%の間、約1%から約10%の間、約0.5%から約8%の間、または約0.5%から4%の間である、
xxi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは、36%から約65%の間、約40%から約60%の間、約20%から約35%の間、約10%から約20%の間、約25%、約30%、約35%、または約40%である、
xxii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸のレベルは、約9%から約33%の間、約10%から約20%の間、約20%から約30%の間、約12%から約25%の間、約13%、約15%、約17%、または約20%である、
xxiii)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約1.0、約0.1、または約0.2である、
xxiv)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、約1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約0.1、約0.2、または約1.0である、
xxv)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約60%から約98%の間、約70%から約95%の間、または約75%から約90%の間の、Δ12‐デサチュラーゼによる、オレイン酸のLAへの転換の効率に基づく、
xxvi)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30%から約70%の間、約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間の、Δ6‐デサチュラーゼによる、ALAのSDAへの転換の効率に基づく、
xxvii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、約60%から約95%の間、約70%から約88%の間、または約75%から約85%の間の、Δ6‐エロンガーゼによる、SDAのETA酸への転換の効率に基づく、
xxviii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、約60%から約99%の間、約70%から約99%の間、または約75%から約98%の間の、Δ5‐デサチュラーゼによる、ETAのEPAへの転換の効率に基づく、
xxix)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、約50%から約95%の間、または約85%から約95%の間の、Δ5‐エロンガーゼによる、EPAのDPAへの転換の効率に基づく、
xxx)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、約50%から約95%の間、約80%から約95%の間、または約85%から約95%の間の、Δ4‐デサチュラーゼによる、DPAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxxi)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約10%から約50%の間、約10%から約30%の間、または約10%から約25%の間の、オレイン酸のDHAへの転換の効率に基づく、
xxxii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約25%、約15%から約50%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間の、LAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxxiii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、約17%から約55%の間、約22%から約35%の間、または約24%から約35%の間のALAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxxiv)前記抽出脂質における前記総脂肪酸は、C20:1を1%未満有する、
xxxv)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも95%、約70%から約99%の間、または約90%から約99%の間であり、
xxxvi)前記脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含む、
xxxvii)前記脂質は、約10%未満、約5%未満、約1%未満、または約0.001%から約5%の間の、遊離(非エステル化)脂肪酸および/もしくはリン脂質を含み、または、これらを実質的に含まない、
xxxviii)TAGの形態でエステル化されたDHAの少なくとも70%または少なくとも80%が、前記TAGのsn‐1またはsn‐3の位置にある、
xxxix)前記脂質において最も豊富なDHA含有TAGの種は、DHA/18:3/18:3(TAG58:12)である、
xl)前記脂質は、トリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む、
の1もしくはそれ以上、または全てを有する。
【0017】
別の実施形態では、前記抽出脂質は、オイルの形態であって、該オイルの重量の少なくとも約90%、または少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約95%から約98%の間が前記脂質である。
【0018】
好ましい実施形態では、前記脂質またはオイル、好ましくは、種子オイルは、以下の特徴を有する:前記脂質またはオイルにおける前記総脂肪酸含有量において、前記DHAのレベルは約7%から20%の間であり、前記パルミチン酸のレベルは約2%から約16%の間であり、前記ミリスチン酸のレベルは6%未満であり、前記オレイン酸のレベルは約1%から約30%の間であり、前記LAのレベルは約4%から約35%の間であり、ALAが存在し、GLAが存在し、前記SDAのレベルは約0.05%から約7%の間であり、前記ETAのレベルは約4%未満であり、前記EPAのレベルは約0.05%から約10%の間であり、前記DPAのレベルは約0.05%から約8%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総飽和脂肪酸のレベルは約4%から約25%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総一価不飽和脂肪酸のレベルは約4%から約35%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総多価不飽和脂肪酸のレベルは約20%から約75%の間であり、前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.05から約3.0の間であり、前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は約0.03から約3.0の間、好ましくは約0.50未満であり、前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約60%のΔ12‐デサチュラーゼによるオレイン酸のLAへの転換の効率、少なくとも約60%のΔ6‐エロンガーゼによるSDAのETA酸への転換の効率、約50%から約95%の間のΔ5‐エロンガーゼによるEPAのDPAへの転換の効率、約50%から約95%の間Δ4‐デサチュラーゼによるDPAのDHAへの転換の効率、少なくとも約10%のオレイン酸のDHAへの転換の効率に基づき、および前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は少なくとも約70%であり、並びに、任意に、前記脂質は、コレステロールを実質的に含まないおよび/または前記脂質がトリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む。
【0019】
より好ましい実施形態では、前記脂質またはオイル、好ましくは、種子オイルは、以下の特徴を有する:前記脂質における前記総脂肪酸含有量において、前記DHAのレベルは約7%から20%の間であり、前記パルミチン酸のレベルは約2%から約16%の間であり、前記ミリスチン酸のレベルは2%未満であり、前記オレイン酸のレベルは約1%から約30%の間であり、前記LAのレベルは約4%から約35%の間であり、前記ALAのレベルは約7%から約40%の間であり、前記GLAのレベルは約4%未満であり、前記SDAのレベルは約0.05%から約7%の間であり、前記ETAのレベルは約4%未満であり、前記ETrAのレベルは約0.05%から約4%の間であり、前記EPAのレベルは約0.05%から約10%の間であり、前記DPAのレベルは約0.05%から約8%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総飽和脂肪酸のレベルは約4%から約25%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総一価不飽和脂肪酸のレベルは約4%から約35%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総多価不飽和脂肪酸のレベルは約20%から約75%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω6脂肪酸のレベルは0.5%から約10%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは36%から約75%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω3脂肪酸のレベルは約9%から約33%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における、ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.05から約3.0の間であり、前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は約0.03から約3.0の間であり、前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約60%のΔ12‐デサチュラーゼによるオレイン酸のLAへの転換の効率、少なくとも約60%のΔ6‐エロンガーゼによるSDAのETA酸への転換の効率、少なくとも約60%のΔ5‐デサチュラーゼによるETAのEPAへの転換の効率、約50%から約95%の間のΔ5‐エロンガーゼによるEPAのDPAへの転換の効率、約50%から約95%の間Δ4‐デサチュラーゼによるDPAのDHAへの転換の効率、少なくとも約10%のオレイン酸のDHAへの転換の効率、少なくとも約15%のLAのDHAへの転換の効率、少なくとも約17%のALAのDHAへの転換の効率に基づき、並びに、前記抽出脂質における前記脂肪酸含有量が1%未満のC20:1であり、前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は少なくとも約70%であり、前記脂質はコレステロールを実質的に含まず、および前記脂質はトリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む。好ましくは、前記脂質もしくはオイルはキャノーラオイルであり、および/または前記植物または植物部分から抽出された後に、エステル交換反応プロセスにより処理されない。好ましい実施形態において、前記脂質またはキャノーラオイルは、メチルまたはエチルエステルのようなアルキルエステルへと前記オイルにおける前記脂肪酸を転換するためにその後に処理されることとしてもよい。さらなる処理が、DHAについての前記脂質またはオイルを濃縮するために適用されることとしてもよい。
【0020】
一実施形態では、前記脂質またはオイル、好ましくは種子オイルは、以下の特徴を有する:前記脂質の前記総脂肪酸含有量において、前記DHAのレベルは約7%から20%の間であり、前記パルミチン酸のレベルは約2%から約16%の間であり、前記ミリスチン酸のレベルは2%未満であり、前記オレイン酸のレベルは約30%から約60%の間、好ましくは約45%から約60%の間であり、前記LAのレベルは約4%から約20%の間であり、前記ALAのレベルは約2%から約16%の間であり、前記GLAのレベルは約3%未満であり、前記SDAのレベルは約3%未満であり、前記ETAのレベルは約4%未満であり、前記ETrAのレベルは約2%未満であり、前記EPAのレベルは約4%未満であり、前記DPAのレベルは約4%未満であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総飽和脂肪酸のレベルは約4%から約25%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総一価不飽和脂肪酸のレベルは約30%から約60%の間、または約40%から約60%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総多価不飽和脂肪酸のレベルは約20%から約75%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω6脂肪酸のレベルは約0.5%から約10%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは約10%から約20%の間であり、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω3脂肪酸のレベルは約9%から約20%の間であり、前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.05から約3.0の間、好ましくは約0.50未満であり、前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は約0.03から約3.0の間であり、前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は少なくとも約70%であり、前記脂質はコレステロールを実質的に含まず、および前記脂質はトリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む。好ましくは、前記脂質またはオイルは、SDA、EPA、およびETAを実質的に含まず、および/またはキャノーラオイルであり、および/または前記植物または植物部分から抽出された後に、エステル交換反応プロセスにより処理されない。特定の実施形態では、前記脂質またはキャノーラオイルは、メチルまたはエチルエステルのようなアルキルエステルへと前記オイルにおける前記脂肪酸を転換するためにその後に処理されることとしてもよい。さらなる処理が、DHAについての前記脂質またはオイルを濃縮するために適用されることとしてもよい。
【0021】
さらに好ましい実施形態では、前記脂質またはオイル、好ましくは種子オイルは、以下の特徴を有する:前記脂質またはオイルの前記総脂肪酸含有量において、前記DHAのレベルは約7%から20%の間であり、前記パルミチン酸のレベルは約2%から約16%の間であり、前記ミリスチン酸のレベルは6%未満であり、前記オレイン酸のレベルは約1%から約30%の間であり、前記LAのレベルは約4%から約35%の間であり、ALAが存在し、GLAが存在し、前記SDAのレベルは約0.05%から約7%の間であり、前記ETAのレベルは約6%未満であり、前記EPAのレベルは約0.05%から約10%の間であり、前記DPAのレベルは約0.05%から約8%の間である。
【0022】
さらなる実施形態では、前記抽出脂質は、1またはそれ以上のステロール、好ましくは植物ステロールをさらに含む。
【0023】
別の実施形態では、前記抽出脂質はオイルの形態であって、約10mgのステロール/gのオイル未満、約7mgのステロール/gのオイル未満、約1.5mgから約10mgの間のステロール/gのオイル、または約1.5mgから約7mgの間のステロール/gのオイルを含む。
【0024】
前記抽出脂質内にあり得るステロールの例は、カンペステロール/24‐メチルコレステロール、Δ5‐スチグマステロール、エブリコール(eburicol)、β‐シトステロール/24‐エチルコレステロール、Δ5‐アベナステロール(avenasterol)/イソフコステロール、Δ7‐スチグマステロール/スティグマスト(stigmast)‐7‐エン‐3β‐オール、およびΔ7‐アベナステロールの1もしくはそれ以上、または全てを含むが、必ずしもこれらに限定されない。
【0025】
一実施形態では、前記植物種は、キャノーラのような、表26に挙げられたものであり、前記ステロールのレベルは、その特定の植物種について表26で挙げられたものとほぼ同じである。
【0026】
一実施形態では、前記抽出脂質は、約0.5mgのコレステロール/gのオイル未満、約0.25mgのコレステロール/gのオイル未満、約0mgから約0.5mgの間のコレステロール/gのオイル、もしくは約0mgから約0.25mgの間のコレステロール/gのオイルを含む、またはコレステロールを実質的に含まない。
【0027】
さらなる実施形態では、前記脂質はオイルであり、好ましくは、油料種子由来のオイルである。このようなオイルの例は、キャノーラオイルのようなアブラナ属種オイル、ワタオイル、アマオイル、ヒマワリ属種オイル、ベニバナオイル、ダイズオイル、トウモロコシオイル、シロイヌナズナオイル、モロコシオイル、ソルガムブルガレ(Sorghum vulgare)オイル、エンバクオイル、トリフォリウム属種オイル、エラエイスグイネエヌシス(Elaesis guineenis)オイル、ベンサミアナタバコオイル、オオムギオイル、ルピナスアングスティフォリウス(Lupinus angustifolius)オイル、イネオイル、アフリカイネオイル、カメリナサティバ(Camelina sativa)オイル、クランベアビシニカ(Crambe abyssinica)オイル、ミスカンサスxギガンティウスオイル(Miscanthus x giganteus)、またはススキオイルを含むが、これらに限定されない。
【0028】
エステル化形態で脂肪酸を含む、抽出植物脂質、好ましくは抽出されたキャノーラ種子オイルもまた提供され、前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに任意に1またはそれ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、前記脂質の前記総脂肪酸含有量において、脂質は以下の特徴を有する:
i)前記DHAのレベルが、約3%、約4%、約5%、約6%、または約7%であり、
ii)前記パルミチン酸のレベルが、約2%から約16%の間であり、
iii)前記ミリスチン酸のレベルが、約2%未満であり、
iv)前記オレイン酸のレベルが、約30%から約60%の間、好ましくは約45%から約60%の間であり、
v)前記LAのレベルが、約4%から約20%の間であり、
vi)前記ALAのレベルが、約2%から約16%の間であり、
vii)前記GLAのレベルが、約4%未満であり、
viii)前記SDAのレベルが、約6%未満、または約4%未満であり、
ix)前記ETAのレベルが、約6%未満、または約4%未満であり、
x)前記ETrAのレベルが、約1%未満であり、
xi)前記EPAのレベルが、約10%未満であり、および/または前記EPAのレベルが、前記DHAのレベルの0.5から2.0倍であり、
xii)前記DPAのレベルが、約4%未満であり、
xiii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総飽和脂肪酸のレベルが、約4%から約25%の間であり、
xiv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総一価不飽和脂肪酸のレベルが、約30%から約70%の間であり、
xv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総多価不飽和脂肪酸のレベルが、約15%から約75%の間、好ましくは約15%から約30%の間であり、
xvi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω6脂肪酸のレベルが、約0.5%から約10%の間であり、
xvii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総ω3脂肪酸のレベルが、約10%から約20%の間であり、
xviii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω3脂肪酸のレベルが、約3%から約20%の間であり、
xix)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.05から約3.0の間、好ましくは約0.50未満であり、
xx)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、約0.03から約3.0の間であり、
xxi)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は、少なくとも約70%であり、および
xxii)前記脂質は、コレステロールを実質的に含まない。一実施形態では、前記脂質は、トリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む。より好ましくは、前記脂質は、SDAおよびETAを実質的に含まず、および/または前記植物または植物部分から抽出された後に、エステル交換反応プロセスにより処理されない。
【0029】
別の態様では、エステル化形態で脂肪酸を含む、抽出植物脂質が提供され、前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに1またはそれ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、(i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルが7%から20%の間であり、(ii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記パルミチン酸のレベルが2%から16%の間であり、(iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルが6%未満であり、(iv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルが、1%から30%の間、好ましくは30%から60%の間であり、(v)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルが4%から35%の間であり、(vi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量におけるαリノレン酸(ALA)のレベルが4%から40%の間であり、(vii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルが4%未満であり、(viii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総飽和脂肪酸のレベルが4%から25%の間であり、(ix)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比が、1.0から3.0の間、または0.1から1の間であり、(x)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は少なくとも70%であり、および(xi)TAGの形態においてエステル化されたDHAの少なくとも70%が、前記TAGのsn‐1またはsn‐3位置にある。一実施形態では、1もしくはそれ以上のまたは全ての以下の特徴を有する:
i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記パルミチン酸のレベルが約2%から約15%の間である、
ii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルが1%未満である、
iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルが、約3%から約30%の間、約6%から約30%の間、1%から約20%の間、約45%から約60%の間、または約30%である、
iv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルが、約4%から約20%の間、または約4%から17%の間である、
v)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記α‐リノレン酸(ALA)のレベルが、約7%から約40%の間、約10%から約35%の間、約20%から約35%の間、または約4%から約16%の間である、
vi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記γ‐リノレン酸(GLA)のレベルが、4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から7%の間、0.05%から4%の間、または0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
vii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ステアリドン酸(SDA)のレベルが、約4%未満、約3%未満、約0.05%から約7%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
viii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサテトラエン酸(ETA)のレベルが、約4%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.05%から約5%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または約0.05%から約2%の間である、
ix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルが、約2%未満、約1%未満、0.05%から4%の間、0.05%から3%の間、または0.05%から約2%の間、または0.05%から約1%の間である、
x)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサペンタエン酸(EPA)のレベルが、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から10%の間、0.05%から5%の間、または0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
xi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ドコサぺンタエン酸(DPA)のレベルが、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から8%の間、0.05%から5%の間、または0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
xii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルが、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%,約8%から20%の間、約10%から20%の間、約11%から20%の間、約10%から約16%の間、または約14%から20%の間である、
xiii)前記脂質は、その脂肪酸含有量にω6‐ドコサぺンタエン酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を含む、
xiv)前記脂質は、その脂肪酸含有量に、ω6‐ドコサぺンタエン酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を実質的に含まない、
xv)前記脂質は、その脂肪酸含有量に、SDA、EPA、およびETAを実質的に含まない、
xvi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸のレベルは、約4%から約20%の間、または約6%から約20%の間である、
xvii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸のレベルは、約4%から約35%の間、約8%から約25%の間、または8%から約22%の間である、
xviii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸のレベルは、約20%から約75%の間、約50%から約75%の間、または約60%から約75%の間である、
xix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸のレベルは、約35%から約50%の間、約20%から約35%の間、約6%から20%の間、20%未満、約16%未満、約10%未満、約1%から約16%の間、約2%から約10%の間、または約4%から約10%の間である、
xx)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸のレベルは、約10%未満、約8%未満、約6%未満、4%未満、約1%から約20%の間、約1%から約10%の間、約0.5%から約8%の間、または約0.5%から4%の間である、
xxi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは、36%から約65%の間、40%から約60%の間、約20%から約35%の間、約10%から約20%の間、約25%、約30%、約35%、または約40%である、
xxii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸のレベルは、9%から約33%の間、約10%から約20%の間、約20%から約30%の間、約12%から約25%の間、約13%、約15%、約17%、または約20%である、
xxiii)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約1.0、約0.1、または約0.2である、
xxiv)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、約1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約0.1、約0.2、または約1.0である、
xxv)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約10%から約50%の間、約10%から約30%の間、または約10%から約25%の間の、オレイン酸のDHAへの転換の効率に基づく、
xxvi)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約25%、約15%から約50%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間の、LAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxvii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、約17%から約55%の間、約22%から約35%の間、または約24%から約35%の間のALAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxviii)前記抽出脂質における前記総脂肪酸は、C20:1を1%未満有する、
xxix)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも95%、約70%から約99%の間、または約90%から約99%の間である、
xxx)前記脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含む、
xxxi)前記脂質は、約10%未満、約5%未満、約1%未満、約0.001%から約5%の間の、遊離(非エステル化)脂肪酸および/もしくはリン脂質を含み、または、これらを実質的に含まない、
xxxii)TAGの形態でエステル化されたDHAの少なくとも80%が、TAGのsn‐1またはsn‐3の位置にある、
xxxiii)前記脂質において最も豊富なDHA含有TAGの種は、DHA/18:3/18:3(TAG58:12)である、および
xxxiv)前記脂質は、トリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む。
【0030】
特に上記態様に関し、一実施形態では、
i)前記脂質がオイルの形態であり、該オイルが、カンペステロール、Δ5‐スチグマステロール、エブリコール、β‐シトステロール、Δ5‐アベナステロール、Δ7‐スチグマステロールおよび、Δ7‐アベナステロールの1もしくはそれ以上のまたは全てのような、1もしくはそれ以上のステロールを含み、および、任意に、前記オイルは10mg未満のステロール/gのオイルを含む、および/もしくは前記オイルはコレステロールを実質的に含まず、並びに/または、
ii)前記脂質は、油料種子がアブラナ属種子の油料種子またはキャノーラ種子であるような、油料種子由来のオイルの形態である。
【0031】
別の態様では、本発明は、
i)脂質を含む植物部分を得ることであって、前記脂質はエステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに、任意にエイコサペンタエン酸(EPA)、ステアリドン酸(SDA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)の1またはそれ以上を含み、前記植物部分における前記抽出可能な脂質の総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約7%から20%である工程、
ii)前記植物部分から脂質を抽出することであって、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約7%から20%である工程、を含む、抽出植物脂質を産生するためのプロセスを提供する。
【0032】
好ましい実施形態では、前記抽出脂質は、上記に定義される1またはそれ以上の特徴を有する。
【0033】
一実施形態では、前記植物部分は、種子、好ましくは油料種子である。このような種子の例は、アブラナ属種子、ワタ、アマ、ヒマワリ属種、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ、シロイヌナズナ(アラビドプシスタリアナ)、モロコシ、ソルガムブルガレ、エンバク、トリフォリウム属種、エラエイスグイネエヌシス、ベンサミアナタバコ、オオムギ、ルピナスアングスティフォリウス、イネ、アフリカイネ、カメリナサティバ、またはクランベアビシニカ、好ましくは、セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、またはカメリナサティバ(C.サティバ)種子を含むが、これらに限定されない。
【0034】
別の実施形態では、前記種子は、種子1グラム当たり、少なくとも約18mg、少なくとも約22mg、少なくとも約26mg、約18mgから約100mgの間、約22mgから約70mgの間、または約24mgから約50mgのDHAを含む。
【0035】
さらなる実施形態では、前記植物部分は、以下のセットの酵素:
i)ω3‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
ii)Δ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
iii)Δ12‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
iv)Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
v)ω3‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
vi)Δ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
vii)Δ12‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、または
viii)Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
の1つをコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、
各ポリヌクレオチドが、前記植物部分の細胞において、前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることが可能である、1またはそれ以上のプロモーターに操作可能に結合される。
【0036】
さらに、さらなる実施形態では、前記植物部分は、以下の特徴:
i)前記Δ12‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、約60%から約98%の間、約70%から約95%の間、または約75%から約90%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞におけるオレイン酸をリノール酸に転換する、
ii)前記ω3‐デサチュラーゼが、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、約65%から約95%の間、約75%から約95%の間、または約80%から約95%の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、ω6脂肪酸をω3脂肪酸に転換する、
iii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、約30%から約70%の間、約35%から約60%の間、または約50%から約70%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、ALAをSDAに転換する、
iv)前記Δ6‐デサチュラーゼが、約5%未満、約2.5%未満、約1%未満、約0.1%から約5%の間、約0.5%から約2.5%の間、または約0.5%から約1%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、リノール酸をγ‐リノレン酸に転換する、
v)前記Δ6‐エロンガーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、約60%から約95%の間、約70%から約88%の間、または約75%から約85%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、SDAをETAに転換する、
vi)前記Δ5‐デサチュラーゼが、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、約60%から約99%の間、約70%から約99%の間、または約75%から約98%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、ETAをEPAに転換する、
vii)前記Δ5‐エロンガーゼが、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%の間、約50%から約95%の間、または約85%から約95%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、EPAをDPAに転換する、
viii)前記Δ4‐デサチュラーゼが、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約93%、約50%から約95%の間、約80%から約95%の間、または約85%から約95%の間の効率で、1またはそれ以上の植物の細胞において、DPAをDHAに転換する、
ix)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞における、DHAへのオレイン酸の転換の効率が、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約10%から約50%の間、約10%から約30%の間、または約10%から約25%の間である、
x)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞における、DHAへのLAの転換の効率が、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約25%、約15%から約50%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間である、
xi)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞における、DHAへのALAの転換の効率が、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、約17%から約55%の間、約22%から約35%の間、または約24%から約35%の間である、
xii)前記植物部分の1またはそれ以上の細胞が、前記外因性ポリヌクレオチドを欠いている対応する細胞よりも、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約15%から約30%の間、または約22.5%から約27.5%の間で多いω3脂肪酸を含む、
xiii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、、リノール酸(LA)に対してα‐リノレン酸(ALA)を優先的に不飽和化する、
xiv)前記Δ6‐エロンガーゼは、また、Δ9‐エロンガーゼ活性を有する、
xv)前記Δ12‐デサチュラーゼは、また、Δ15‐デサチュラーゼ活性を有する、
xvi)前記Δ6‐デサチュラーゼは、また、Δ8‐デサチュラーゼ活性を有する、
xvii)前記Δ8‐デサチュラーゼは、また、Δ6‐デサチュラーゼ活性を有し、またはΔ6‐デサチュラーゼ活性を有していない、
xviii)前記Δ15‐デサチュラーゼは、また、GLAでω3‐デサチュラーゼ活性を有する、
xix)前記ω3‐デサチュラーゼは、また、LAでΔ15‐デサチュラーゼ活性を有する、
xx)前記ω3‐デサチュラーゼは、両方のLAおよび/またはGLAを不飽和化する、
xxi)前記ω3‐デサチュラーゼは、、LAに対してGLAを優先的に不飽和化する、
xxii)前記植物部分における前記DHAのレベルは、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約10%から約50%の間、約15%から約30%の間、または約20%から約25%の間の、前記植物部分におけるオレイン酸のDHAへの転換の効率に基づく、
xxiii)前記植物部分における前記DHAのレベルは、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、約15%から約60%の間、約20%から約40%の間、または約22%から約30%の間の、前記植物部分におけるLAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxiv)前記植物部分における前記DHAのレベルは、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、約17%から約65%の間、約22%から約35%の間、または約24%から約35%の間の、前記植物部分におけるALAのDHAへの転換の効率に基づく、
xxx)1もしくはそれ以上のまたは全ての前記デサチュラーゼが、対応するアシル‐PC基質よりもアシル‐CoA基質で、より高い活性を有する、
xxxi)前記Δ6‐デサチュラーゼが、脂肪酸基質としての、LAよりもALAで、より高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する、
xxxii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、脂肪酸基質としてのPCのsn‐2位置に結合するALAよりも、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、より高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する、
xxxiii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、基質としてのALAで、LAと比較して、少なくとも約2倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性、少なくとも3倍高い活性、少なくとも4倍高い活性、または少なくとも5倍高い活性を有する、
xxxiv)前記Δ6‐デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、より高い活性を有する、
xxxv)前記Δ6‐デサチュラーゼは、脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、少なくとも約5倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性または少なくとも10倍高い活性を有する、
xxxvi)前記デサチュラーゼは、フロントエンドのデサチュラーゼである、
xxxvii)前記Δ6‐デサチュラーゼは、ETAで、検出可能なΔ5‐デサチュラーゼ活性を有していない、
の1もしくはそれ以上、または全てを有する。
【0037】
さらに、さらなる実施形態では、前記植物部分が、1もしくはそれ以上のまたは全ての以下の特徴:
i)前記Δ12‐デサチュラーゼが、配列番号10で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号10と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
ii)前記ω3‐デサチュラーゼが、配列番号12で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号12と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
iii)前記Δ6‐デサチュラーゼが、配列番号16で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号16と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
iv)前記Δ6‐エロンガーゼが、配列番号25で規定される配列を有するアミノ酸、配列番号26のようなその生物学的に活性な断片、または配列番号25および/または配列番号26と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
v)前記Δ5‐デサチュラーゼが、配列番号30で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号30と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
vi)前記Δ5‐エロンガーゼが、配列番号37で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号37と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
vii)前記Δ4‐デサチュラーゼが、配列番号41で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号41と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む、
の1もしくはそれ以上、または全てを有する。
【0038】
一実施形態では、前記植物部分が、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT)、モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(MGAT)、グリセロール‐3‐ホスフェートアシルトランスフェラーゼ(GPAT)、1‐アシル−グリセロール‐3‐ホスフェートアシルトランスフェラーゼ(LPAAT)、好ましくはC22多価不飽和脂肪族アシル‐CoA基質を使用し得るLPAAT、アシル‐CoA:リソホスファチジルコリンアシルトランスフェラーゼ(LPCAT)、ホスホリパーゼA(PLA)、ホスホリパーゼC(PLC)、ホスホリパーゼD(PLD)、CDP‐コリンジアシルグリセロールコリンホスフォトランスフェラーゼ(CPT)、ホスファチジルコリン(phoshatidylcholine)ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(PDAT)、ホスファチジルコリン:ジアシルグリセロールコリンホスフォトランスフェラーゼ(PDCT)、アシル‐CoAシンターゼ(ACS)、または2つもしくはそれ以上のこれらの組み合わせをコードする外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0039】
別の実施形態では、前記植物部分が、FAE1、DGAT、MGAT、GPAT、LPAAT、LPCAT、PLA、PLC、PLD、CPT、PDAT、FATBのようなチオエステラーゼ、またはΔ12‐デサチュラーゼ、または2つもしくはそれ以上のこれらの組み合わせから選択される、前記植物部分の細胞における内因性酵素の産生および/または活性を下方制御する、導入された突然変異または外因性ポリヌクレオチドをさらに含む。
【0040】
さらなる実施形態では、少なくとも1つまたは全ての前記プロモーターが種子特異的プロモーターである。一実施形態では、少なくとも1つまたは全ての前記プロモーターが、オイル生合成もしくはオレオシンのような蓄積遺伝子から、またはコンリニン(conlinin)のような種子貯蔵タンパク質遺伝子から得られている。
【0041】
別の実施形態では、前記Δ4‐デサチュラーゼおよび前記Δ5‐エロンガーゼをコードする、外因性ポリヌクレオチドの発現を方向づける前記プロモーターが、前記植物部分の種子の発生以前、またはピークの発現に達する以前において、ポリヌクレオチドの発現を開始し、前記プロモーターが前記Δ12‐デサチュラーゼおよび前記ω3‐デサチュラーゼをコードする前記外因性ポリヌクレオチドの発現を方向づける。
【0042】
さらなる実施形態では、前記外因性ポリヌクレオチドは、前記植物部分の細胞のゲノムに組込まれるDNA分子、好ましくはT‐DNA分子において共有結合で結合され、好ましくは前記植物部分の前記細胞の前記ゲノムに組込まれるこのようなDNA分子の数は、1、2もしくは3以下であり、または2もしくは3である。
【0043】
さらに別の実施形態では、前記植物は、同じまたは異なるアミノ酸配列を有するΔ6‐デサチュラーゼをそれぞれコードする少なくとも2つの異なる外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0044】
さらなる実施形態では、前記外因性ポリヌクレオチドを含む前記植物部分の総オイル含有量は、前記外因性ポリヌクレオチドを欠く対応する植物部分の総オイル含有量の少なくとも約40%、または少なくとも約50%、または少なくとも約60%、または少なくとも約70%、または約50%から約80%の間である。これらの実施形態において、最大の前記オイル含有量は、対応する野生型の植物部分の前記オイル含有量の約100%であることとしてもよい。
【0045】
別の実施形態では、前記脂質は、オイル、好ましくは、油料種子由来の種子オイルの形態であり、前記脂質の重量の少なくとも約90%、または少なくとも約95%、少なくとも約98%、または約95%から約98%の間がトリアシルグリセロールである。
【0046】
さらなる実施形態では、前記プロセスは、前記総脂肪酸含有量のパーセンテージとしての前記DHAのレベルを増加させるために前記脂質を処理することをさらに含む。例えば、前記処理がエステル交換反応である。例えば、キャノーラオイルのような前記脂質が、前記オイルにおける前記脂肪酸を、メチルまたはエチルエステルのようなアルキルエステルに転換するために処理されることとしてもよく、その後、前記DHAについての前記脂質またはオイルを濃縮するために分画することとしてもよい。
【0047】
i)脂質を含む、植物部分、好ましくは、キャノーラ種子を得ることであって、前記脂質はエステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに任意に1またはそれ以上のエイコサペンタエン酸(EPA)、ステアリドン酸(SDA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、前記植物部分における抽出可能な脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約3%、約4%、約5%、約6%、または約7%である工程、および
ii)前記植物部分から脂質を抽出する工程、
を含む、抽出植物脂質を産生するためのプロセスがさらに提供され、
前記抽出脂質は、前記脂質の前記総脂肪酸含有量において、以下の特徴を有する:
i)前記DHAのレベルは約3%、約4%、約5%、約6%、または約7%であり、
ii)前記パルミチン酸のレベルは約2%から約16%の間であり、
iii)前記ミリスチン酸のレベルは2%未満であり、
iv)前記オレイン酸のレベルは約30%から約60%の間、好ましくは約45%から約60%の間であり、
v)前記LAのレベルは約4%から約20%の間であり、
vi)前記ALAのレベルは約2%から約16%の間であり、
vii)前記GLAのレベルは約4%未満であり、
viii)前記SDAのレベルは、約6%未満、または約4%未満であり、
ix)前記ETAのレベルは、約6%未満、または約4%未満であり、
x)前記ETrAのレベルは約1%未満であり、
xi)前記EPAのレベルは約10%未満であり、および/または前記EPAのレベルは前記DHAのレベルの0.5から2.0倍であり、
xii)前記DPAのレベルは約4%未満であり、
xiii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総飽和脂肪酸のレベルは約4%から約25%の間であり、
xiv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総一価不飽和脂肪酸のレベルは約30%から約70%の間であり、
xv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記総多価不飽和脂肪酸のレベルは約15%から約75%の間、好ましくは、約15%から約30%の間であり、
xvi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω6脂肪酸のレベルは約0.5%から約10%の間であり、
xvii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは約10%から約20%の間であり、
xviii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記新ω3脂肪酸のレベルは約3%から約20%の間であり、
xix)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.05から約3.0の間、好ましくは約0.50未満であり、
xx)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は約0.03から約3.0の間であり、
xxi)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は少なくとも約70%であり、および
xxii)前記脂質はコレステロールを実質的に含まない。一実施形態では、前記脂質はトリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む。より好ましくは、前記脂質は、SDAおよびETAを実質的に含まず、および/または前記植物または植物部分から抽出された後に、エステル交換反応プロセスにより処理されない。
【0048】
i)脂質を含む植物部分を得ることであって、前記脂質はエステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに、1またはそれ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、(i)前記抽出脂質の総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、7%から20%の間であり、(ii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記パルミチン酸のレベルが、2%から16%の間であり、(iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは、6%未満であり、(iv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルは、1%から30%の間または30%から60%の間であり、(v)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルは、4%から35%の間であり、(vi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記α‐リノレン酸(ALA)のレベルは、4%から40%の間であり、(vii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルは、4%未満であり、(viii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸のレベルは、4%から25%の間であり、(ix)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、1.0から3.0の間、または0.1から1の間であり、(x)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は、少なくとも70%であり、および(xi)TAGの形態でエステル化されたDHAの少なくとも70%が、TAGのsn‐1またはsn‐3の位置にある工程、
%、および、
ii)前記植物部分から脂質を抽出することであって、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約7%から20%である工程、
を含む、抽出植物脂質を産生するためのプロセスもまた提供される。
【0049】
本発明のプロセスを用いて産生される、脂質または該脂質を含むオイルもまた提供される。
【0050】
別の態様では、本発明は、多価不飽和脂肪酸のエチルエステルを産生するためのプロセスを提供し、該プロセスは、抽出植物脂質におけるトリアシルグリセロールをエステル交換することを含み、前記抽出植物脂質は、エステル化形態で脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに任意に1またはそれ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルが約7%から20%であり、これにより前記エチルエステルを産生する。
【0051】
好ましい実施形態では、前記抽出脂質は、1またはそれ以上の上記の特徴を有する。
【0052】
別の態様では、本発明は、多価不飽和脂肪酸のエチルエステルを産生するためのプロセスを提供し、該プロセスは、抽出植物脂質におけるトリアシルグリセロールをエステル交換することを含み、前記抽出植物脂質は、トリアシルグリセロールの形態でエステル化された脂肪酸を含み、該脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、およびドコサヘキサエン酸(DHA)、並びに1またはそれ以上のステアリドン酸(SDA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)、およびエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、(i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約3%、約4%、約5%、約6%、または7%から20%の間であり、(ii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記パルミチン酸のレベルが、2%から16%の間であり、(iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルは、6%未満であり、(iv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルは、1%から30%の間または30%から60%の間であり、(v)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルは、4%から35%の間であり、(vi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記α‐リノレン酸(ALA)のレベルは、4%から40%の間であり、(vii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルは、4%未満であり、(viii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸のレベルは、4%から25%の間であり、(ix)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、1.0から3.0の間、または0.1から1の間であり、(x)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は、少なくとも70%であり、および(xi)TAGの形態でエステル化されたDHAの少なくとも70%が、TAGのsn‐1またはsn‐3の位置にあり、これにより前記エチルエステルを産生する。一実施形態では、前記抽出植物脂質は、以下の特徴:
i)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記パルミチン酸のレベルが2%から15%の間である、
ii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ミリスチン酸(C14:0)のレベルが1%未満である、
xxxv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記オレイン酸のレベルが、約3%から約30%の間、約6%から約30%の間、1%から約20%の間、約45%から約60%の間、または約30%である、
xxxvi)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記リノール酸(LA)のレベルが、約4%から約20%の間、または約4%から17%である、
xxxvii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記α‐リノレン酸(ALA)のレベルが、約7%から約40%の間、約10%から約35%の間、約20%から約35%の間、または4%から16%の間である、
xxxviii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記γ‐リノレン酸(GLA)のレベルが、4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、0.05%から7%の間、0.05%から4%の間、または0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
xxxix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ステアリドン酸(SDA)のレベルが、約4%未満、約3%未満、約0.05%から約7%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
xl)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサテトラエン酸(ETA)のレベルが、約4%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.05%から約5%の間、約0.05%から約4%の間、約0.05%から約3%の間、または約0.05%から約2%の間である、
xli)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサトリエン酸(ETrA)のレベルが、約2%未満、約1%未満、0.05%から4%の間、0.05%から3%の間、または0.05%から約2%の間、または0.05%から約1%の間である、
xlii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記エイコサペンタエン酸(EPA)のレベルが、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から10%の間、0.05%から5%の間、または0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
xliii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記ドコサぺンタエン酸(DPA)のレベルが、4%未満、約3%未満、約2%未満、0.05%から8%の間、0.05%から5%の間、または0.05%から約3%の間、または0.05%から約2%の間である、
xliv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルが、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約8%から20%の間、約10%から20%の間、約11%から20%の間、約10%から約16%の間、または約14%から20%の間である、
xlv)前記脂質は、その脂肪酸含有量にω6‐ドコサぺンタエン酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を含む、
xlvi)前記脂質は、その脂肪酸含有量に、ω6‐ドコサぺンタエン酸(22:5Δ4,7,10,13,16)を実質的に含まない、
xlvii)前記脂質は、その脂肪酸含有量に、SDA、EPA、およびETAを実質的に含まない、
xlviii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総飽和脂肪酸のレベルは、約4%から約20%の間、または約6%から約20%の間である、
xlix)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総一価不飽和脂肪酸のレベルは、約4%から約35%の間、約8%から約25%の間、または8%から約22%の間である、
l)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総多価不飽和脂肪酸のレベルは、約20%から約75%の間、約50%から約75%の間、または約60%から約75%の間である、
li)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω6脂肪酸のレベルは、約35%から約50%の間、約20%から約35%の間、約6%から20%の間、20%未満、約16%未満、約10%未満、約1%から約16%の間、約2%から約10%の間、または約4%から約10%の間である、
lii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω6脂肪酸のレベルは、約10%未満、約8%未満、約6%未満、4%未満、約1%から約20%の間、約1%から約10%の間、約0.5%から約8%の間、または約0.5%から4%の間である、
liii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における総ω3脂肪酸のレベルは、36%から約65%の間、40%から約60%の間、約20%から約35%の間、約10%から約20%の間、約25%、約30%、約35%、または約40%である、
liv)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における新ω3脂肪酸のレベルは、9%から約33%の間、約10%から約20%の間、約20%から約30%の間、約12%から約25%の間、約13%、約15%、約17%、または約20%である、
lv)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約1.0、約0.1、または約0.2である、
lvi)前記抽出脂質の前記脂肪酸含有量における、新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸の比は、約1.0から約3.0の間、約0.1から約1の間、約0.1から約0.5の間、約0.50未満、約0.40未満、約0.30未満、約0.20未満、約0.15未満、約0.1、約0.2、または約1.0である、
lvii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、約10%から約50%の間、約10%から約30%の間、または約10%から約25%の間の、オレイン酸のDHAへの転換の効率に基づく、
lviii)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約22%、少なくとも約25%、約15%から約50%の間、約20%から約40%の間、または約20%から約30%の間の、LAのDHAへの転換の効率に基づく、
lix)前記脂質の前記脂肪酸組成は、少なくとも約17%、少なくとも約22%、少なくとも約24%、約17%から約55%の間、約22%から約35%の間、または約24%から約35%の間のALAのDHAへの転換の効率に基づく、
lx)前記抽出脂質における前記総脂肪酸は、C20:1を1%未満有する、
lxi)前記脂質の前記トリアシルグリセロール(TAG)含有量は、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも95%、約70%から約99%の間、または約90%から約99%の間である、
lxii)前記脂質は、ジアシルグリセロール(DAG)を含む、
lxiii)前記脂質は、約10%未満、約5%未満、約1%未満、または約0.001%から約5%の間の、遊離(非エステル化)脂肪酸および/もしくはリン脂質を含む、または、これらを実質的に含まない、
lxiv)TAGの形態でエステル化されたDHAの少なくとも80%が、前記TAGのsn‐1またはsn‐3の位置にある、
lxv)前記脂質において最も豊富なDHA含有TAGの種は、DHA/18:3/18:3(TAG58:12)である、および
lxvi)前記脂質は、トリ‐DHA TAG(TAG66:18)を含む、
の1もしくはそれ以上、または全てを有する。
【0053】
特に上記態様に関し、一実施形態では、以下の事項:
i)前記脂質はオイルの形態であり、前記オイルは、カンペステロール、Δ5‐スチグマステロール、エブリコール、β‐シトステロール、Δ5‐アベナステロール、Δ7‐スチグマステロールおよび、Δ7‐アベナステロールの1もしくはそれ以上のまたは全てのような、1もしくはそれ以上のステロールを含み、並びに、任意に、前記オイルは約10mg未満のステロール/gのオイルを含む、および/もしくは前記オイルはコレステロールを実質的に含まない、
ii)前記脂質は、油料種子がアブラナ属種子の油料種子またはキャノーラ種子のような、油料種子由来のオイルの形態である、
iii)前記抽出脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは、約3%、約4%、約5%、約6%、または7%から20%である、
の1もしくはそれ以上、または全てが適用される。
【0054】
さらなる態様では、本発明は、単一のDNA分子上で、全て共有結合で結合される、第1の遺伝子、第2の遺伝子、第3の遺伝子、第4の遺伝子、第5の遺伝子、および第6の遺伝子の順で含む、キメラ遺伝子構築物(コンストラクト)を提供し、第1、第2、および第3の遺伝子が第1の遺伝子クラスターとしてともに結合され、第4、第5、および第6の遺伝子が第2の遺伝子クラスターとしてともに結合され、
各遺伝子は、各プロモーターが前記コード領域および転写ターミネーターおよび/またはポリアデニル化領域が操作可能に結合されるように、プロモーター、コード領域、および転写ターミネーター、および/またはポリアデニル化領域を含み、
各プロモーターが、前記DNA分子が3、4、5、または6つの異なるプロモーターを含むように、独立して他のプロモーターと同じまたは異なり、
1もしくはそれ以上のまたは全ての前記プロモーターが、それが操作可能に結合されるコード領域に対して異種性であり、
前記第1の遺伝子の転写の方向が、前記第3の遺伝子から離れており、前記第3の遺伝子の転写の方向と反対であり、
前記第4の遺伝子の転写の方向が、前記第6の遺伝子から離れており、前記第6の遺伝子の転写の方向と反対であり、
前記第2の遺伝子の転写の方向が、前記第1の遺伝子または前記第3の遺伝子と同じであり、
前記第5の遺伝子の転写の方向が、前記第4の遺伝子または前記第6の遺伝子と同じであり、
前記第2の遺伝子の前記転写ターミネーターおよび/またはポリアデニル化領域が、約0.2から約3.0キロベースの間の第1のスペーサー領域により、より近いいずれかの、前記第1または第3の遺伝子の前記プロモーターから間隔を置き、
約1.0から約10.0キロベースの間の第2のスペーサー領域により前記第1の遺伝子クラスターが第2の遺伝子クラスターから間隔を置き、および
前記第5の遺伝子の前記転写ターミネーターおよび/またはポリアデニル化領域が、約0.2から約3.0キロベースの間の第3のスペーサー領域により、より近いいずれかの、第4または第6の遺伝子の前記プロモーターから間隔を置く。
【0055】
一実施形態では、前記DNA分子が、約1.0から約10.0キロベースの間のスペーサー領域により、より近いいずれかの、前記第1の遺伝子クラスターまたは前記第2の遺伝子クラスターから間隔を置く第7の遺伝子を含む。
【0056】
別の実施形態では、前記DNA分子が、2つまたはそれ以上の異なる転写ターミネーターおよび/またはポリアデニル化領域を含む。
【0057】
さらに、さらなる実施形態では、少なくとも1つの前記スペーサー領域がマトリックス結合領域(MAR)を含む。
【0058】
さらなる実施形態では、前記DNA分子が、前記遺伝子に隣接する左右境界領域を含み、かつT‐DNA分子である。
【0059】
別の実施形態では、前記遺伝子コンストラクトが、アグロバクテリウム細胞におけるものである、または植物細胞のゲノムに組み込まれる。
【0060】
好ましい実施形態では、少なくとも1つの前記遺伝子が、脂肪酸デサチュラーゼまたは脂肪酸エロンガーゼをコードする。
【0061】
別の実施形態では、前記遺伝子コンストラクトは、本明細書に定義される酵素のセットをコードする遺伝子、および/または本明細書に定義される酵素をコードする1またはそれ以上の遺伝子を含む。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、
i)配列番号1から9、11、14、18、22、23、28、34、35、39、または45のいずれかから選択されるヌクレオチドの配列、および/または
ii)配列番号1から9、11、14、18、22、23、28、34、35、39、または45に示される1またはそれ以上の配列と、少なくとも95%同一または99%同一であるヌクレオチドの配列、
を含む、単離および/または外因性ポリヌクレオチドを提供する。
【0063】
特定の好ましい実施形態では、前記単離および/または外因性ポリヌクレオチドは、
i)配列番号2のヌクレオチドの配列、および/または
ii)配列番号2に示される配列と、少なくとも95%同一または99%同一であるヌクレオチドの配列、
を含む。
【0064】
別の態様では、本発明は、本発明のポリヌクレオチドおよび/または本発明の前記遺伝子コンストラクトを含む、ベクターまたは遺伝子コンストラクトを提供する。
【0065】
一実施形態では、配列番号11、14、18、22、23、28、34、35、39、もしくは45のいずれか1つから選択される前記ヌクレオチドの配列、または配列番号11、14、18、22、23、28、34、35、39、もしくは45で示される1もしくはそれ以上の前記配列と少なくとも95%同一もしくは99%同一である前記ヌクレオチドの配列は、プロモーターに操作可能に結合される。
【0066】
さらなる態様では、本発明は、以下のセットの酵素:
i)ω3‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
ii)Δ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
iii)Δ12‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
iv)Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
v)ω3‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
vi)Δ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
vii)Δ12‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、または
viii)Δ12‐デサチュラーゼ、ω3‐デサチュラーゼもしくはΔ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9−エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
の1つをコードする、外因性ポリヌクレオチドを含む宿主細胞を提供し、
各ポリヌクレオチドは、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることができるように、1またはそれ以上のプロモーターと操作可能に結合される。
【0067】
一実施形態では、前記細胞が、上記に定義される脂質を含み、または1もしくはそれ以上のまたは全ての前記デサチュラーゼもしくはエロンガーゼは、上記に定義される1またはそれ以上の特徴を有する。
【0068】
別の態様では、本発明は、
i)配列番号10に規定される配列を有するアミノ酸を含むΔ12‐デサチュラーゼをコードする第1の外因性ポリヌクレオチド、その生物学的に活性な断片、または配列番号10と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列と、
ii)配列番号12に規定される配列を有するアミノ酸を含むω3‐デサチュラーゼをコードする第2の外因性ポリヌクレオチド、その生物学的に活性な断片、または配列番号12と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列とを含む、宿主細胞を提供し、
各ポリヌクレオチドが、前記細胞における前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることができる1またはそれ以上のプロモーターと操作可能に結合される。
【0069】
さらなる態様では、本発明は、1またはそれ以上の、本発明の前記ポリヌクレオチド、本発明の前記遺伝子コンストラクト、または本発明の前記ベクターもしくは遺伝子コンストラクトを含む、宿主細胞を提供する。
【0070】
一実施形態では、前記細胞は、植物における、植物部分におけるものであり、および/または成熟した植物種子の細胞である。
【0071】
一実施形態では、前記植物または植物種子は、それぞれ油料種子植物または油料種子である。
【0072】
本発明の細胞を含むトランスジェニック非ヒト生物もまた提供される。
【0073】
好ましくは、前記トランスジェニック非ヒト生物は、トランスジェニック植物であり、好ましくは、油料種子植物またはシロイヌナズナである。一実施形態では、前記植物は、アブラナ属植物、好ましくは、セイヨウアブラナもしくはセイヨウカラシナ、またはシロイヌナズナ以外の他の植物である。
【0074】
別の態様では、本発明は、
a)その種子における脂質であって、該脂質はエステル化形態における脂肪酸を含み、および
b)以下のセットの酵素:
i)Δ12‐デサチュラーゼ、真菌のω3‐デサチュラーゼ、および/もしくは真菌のΔ15‐デサチュラーゼ、Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ6‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、または
ii)Δ12‐デサチュラーゼ、真菌のω3‐デサチュラーゼ、および/もしくは真菌のΔ15‐デサチュラーゼ、Δ8‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、Δ9‐エロンガーゼ、およびΔ5‐エロンガーゼ、
の1つをコードする外因性ポリヌクレオチドを含む、油料種子植物を提供し、各ポリヌクレオチドは、前記植物の種子を発生する場合に、前記ポリヌクレオチドの発現を方向づけることができるように1またはそれ以上の種子特異的プロモーターを操作可能に結合され、前記脂肪酸は、オレイン酸、パルミチン酸、リノール酸(LA)およびγ‐リノレン酸(GLA)を含むω6脂肪酸、α‐リノレン酸(ALA)を含むω3脂肪酸、ステアリドン酸(SDA)、ドコサぺンタエン酸(DPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)、ならびに任意にエイコサペンタエン酸(EPA)および/またはエイコサテトラエン酸(ETA)を含み、前記脂質の前記総脂肪酸含有量における前記DHAのレベルは約7%から20%である。
【0075】
油料種子植物の例は、アブラナ属種子、ワタ、アマ、ヒマワリ属種、ベニバナ、ダイズ、トウモロコシ、シロイヌナズナ、モロコシ、ソルガムブルガレ、エンバク、トリフォリウム属種、エラエイスグイネエヌシス、ベンサミアナタバコ、オオムギ、ルピナスアングスティフォリウス、イネ、アフリカイネ、カメリナサティバ、またはクランベアビシニカを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、前記油料種子植物は、キャノーラ、ダイズ、カメリナサティバ、または シロイヌナズナ植物である。代替的な実施形態では、前記油料種子植物は、シロイヌナズナ以外である。
【0076】
一実施形態では、1またはそれ以上の前記デサチュラーゼは、アシル‐CoA基質を使用することができる。好ましい実施形態では、1またはそれ以上の前記Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、およびΔ8‐デサチュラーゼは、もし存在する場合には、アシル‐CoA基質を用いることができ、好ましくは、i)Δ6‐デサチュラーゼ、Δ5‐デサチュラーゼ、およびΔ4‐デサチュラーゼ、またはii)Δ5‐デサチュラーゼ、Δ4‐デサチュラーゼ、およびΔ8‐デサチュラーゼのそれぞれは、アシル‐CoA基質を用いることができる。一実施形態では、Δ12‐デサチュラーゼおよび/またはω3‐デサチュラーゼは、アシル‐CoA基質を用いることができる。アシル‐CoA基質は、好ましくは、ALA‐CoA、ETA‐CoA、DPA‐CoA、ETrA‐CoA、LA‐CoA、GLA‐CoA、またはARA‐CoAである。
【0077】
一実施形態では、前記植物の成熟した、収穫された種子は、1グラムの種子あたり少なくとも約28mg、好ましくは1グラムの種子あたり少なくとも約32mg、1グラムの種子あたり少なくとも約36mg、1グラムの種子あたり少なくとも約40mg、より好ましくは1グラムの種子あたり少なくとも約44mg、または1グラムの種子あたり少なくとも約48mgのDHA含有量を有する。最大のDHA含有量は、1グラムの種子あたり約80から約100mg、または1グラムの種子あたり約80mgもしくは約100mgであることとしてもよい。
【0078】
さらなる態様では、本発明は、DHAを含む種子を産生することができるセイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、またはカメリナサティバ植物を提供し、前記植物の成熟した、収穫された種子は、1グラムの種子あたり少なくとも約28mg、好ましくは1グラムの種子あたり少なくとも約32mg、1グラムの種子あたり少なくとも約36mg、1グラムの種子あたり少なくとも約40mg、より好ましくは1グラムの種子あたり少なくとも約44mg、または1グラムの種子あたり少なくとも約48mgのDHA含有量を有する。最大のDHA含有量は、1グラムの種子あたり約80から約100mg、または1グラムの種子あたり約80mgもしくは約100mgであることとしてもよい。
【0079】
別の態様では、本発明は、前記外因性ポリヌクレオチドを含む、本発明の植物の植物細胞を提供する。
【0080】
植物部分、好ましくは種子もまた提供され、以下の特徴、
i)本発明の植物由来である、
ii)本明細書で定義される脂質を含む、
iii)本発明のプロセスで使用され得る、
iv)本発明の遺伝子コンストラクトを含む、または
v)本明細書で定義される外因性ポリヌクレオチドのセットを含む、
の1またはそれ以上を有する。
【0081】
さらに別の態様では、本発明は、DHAおよび重量で約4%から約15%の間の水分含有量を含む、成熟した、収穫されたセイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、またはカメリナサティバ種子を提供し、前記種子の前記DHAの含有量は、1グラムの種子あたり少なくとも約28mg、好ましくは1グラムの種子あたり少なくとも約32mg、1グラムの種子あたり少なくとも約36mg、1グラムの種子あたり少なくとも約40mg、より好ましくは1グラムの種子あたり少なくとも約44mg、または1グラムの種子あたり少なくとも約48mgである。最大のDHA含有量は、1グラムの種子あたり約80から約100mg、または1グラムの種子あたり約80mgもしくは約100mgであることとしてもよい。
【0082】
一実施形態では、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、または本発明の前記種子であって、本明細書で定義される1もしくはそれ以上のまたは全ての特徴を含む抽出脂質を産生するために使用され得るものがある。
【0083】
さらにさらなる態様では、本発明は、本発明の細胞を産生する方法を提供し、該方法は、
a)前記細胞、好ましくは、LC‐PUFAを合成することができない細胞に、本発明の前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/または外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターまたは遺伝子コンストラクト、本明細書に定義される1またはそれ以上の外因性ポリヌクレオチドの組み合わせを導入することと、
b)任意に、前記遺伝子またはポリヌクレオチドを前記細胞内に発現することと、
c)任意に、前記細胞の前記脂肪酸組成を分析することと、
d)任意に、前記遺伝子またはポリヌクレオチドを発現する細胞を選択することと、
を含む。
【0084】
一実施形態では、前記細胞における前記脂質が、1またはそれ以上の本明細書に定義される特徴を有する。
【0085】
別の実施形態では、前記遺伝子コンストラクト、前記単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド、前記ベクター、前記遺伝子コンストラクト、または外因性ポリヌクレオチドの組み合わせは、前記細胞の前記ゲノムに安定して組込まれる。
【0086】
さらなる実施形態では、前記細胞は植物細胞であり、前記方法は工程a)の前記細胞から形質転換植物を再生する工程をさらに含む。
【0087】
別の実施形態では、前記遺伝子および/または外因性ポリヌクレオチドは、一過性で前記細胞内に発現される。
【0088】
本発明の方法を用いて産生される細胞もまた提供される。
【0089】
別の態様では、本発明は、種子を産生する方法を提供し、該方法は、
a)好ましくは少なくとも1000のこのような植物の個体群の一部としてのフィールドで、またはスタンダードな栽植密度で栽植される少なくとも1ヘクタールのエリアで、本明細書の植物、または本明細書に定義される部分を産生する植物を成長させることと、
b)前記植物の1つまたは複数から種子を収穫することと、
c)任意に、前記種子から脂質を抽出して、好ましくは、少なくとも60kgDHA/ヘクタールの総DHA収率を有するオイルを産生することと、
を含む。
【0090】
一実施形態では、本発明の他の前記植物、植物細胞、植物部分、または種子は、以下の特徴:
i)前記オイルが本明細書に定義される、
ii)前記植物部分または種子が、本発明のプロセスで使用されることができる、
iii)前記外因性ポリヌクレオチドが、本発明の遺伝子コンストラクトに含まれる、
iv)前記外因性ポリヌクレオチドは、本発明の外因性ポリヌクレオチドを含む、
v)前記植物細胞は、本発明の細胞である、
vi)前記種子は、本発明の方法で産生される、
の1またはそれ以上を有する。
【0091】
別の態様では、本発明は、1もしくはそれ以上の脂肪酸デサチュラーゼおよび/もしくは脂肪酸エロンガーゼ、または1もしくはそれ以上の脂肪酸デサチュラーゼ、並びに1もしくはそれ以上の脂肪酸エロンガーゼを産生する方法を提供し、該方法は、本発明の前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/または外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターまたは遺伝子コンストラクト、本明細書で定義される1またはそれ以上の外因性ポリヌクレオチドの組み合わせを、好ましくは、前記フィールドで油料種子植物に発生する油料種子において、細胞でまたは細胞フリーの発現システムで発現することを含む。
【0092】
さらなる態様では、本発明は、本発明の前記プロセス、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、または本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子を用いて、産生されまたは得られる脂質またはオイルを提供する。
【0093】
一実施形態では、前記脂質またはオイルは、油料種子由来のオイルの抽出により得られる。油料種子由来のオイルの例は、キャノーラオイル(セイヨウアブラナ、ブラッシカ・ラパ亜種)、マスタードオイル(セイヨウカラシナ)、他のアブラナオイル、ヒマワリ油(ヒマワリ)、亜麻仁油(アマ)、ダイズオイル(ダイズ)、ベニバナオイル(ベニバナ)、コーンオイル(トウモロコシ)、タバコオイル(タバコ)、ピーナッツオイル(ピーナッツ)、パームオイル、綿実油(ワタ)、ココナッツオイル(ココヤシ)、アボカドオイル(アボカド)、オリーブオイル(オリーブ)、カシューオイル(カシューナッツ)、マカダミアオイル(マカダミア)、アーモンドオイル(アーモンド)、またはシロイヌナズナ種子オイル(シロイヌナズナ)を含むが、これらに限定されない。
【0094】
さらなる態様では、本発明は、本発明の前記プロセス、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、または本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子を用いて、産生されまたは得られる脂肪酸を提供する。好ましくは、前記脂肪酸はDHAである。前記脂肪酸は、本明細書に記載される脂肪酸組成を有する脂肪酸の混合物であることとしてもよい。一実施形態では、前記脂肪酸は非エステル化である。
【0095】
本発明の種子から得られる種子ミールもまた提供される。好ましい種子ミールは、セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、カメリナサティバ、またはダイズの種子ミールを含むが、これらに限定されない。一実施形態では、前記種子ミールは、本明細書に定義される外因性ポリヌクレオチドおよび/または遺伝子コンストラクトを含む。
【0096】
別の態様では、本発明は、1またはそれ以上の、本発明の前記脂質もしくはオイル、本発明の前記脂肪酸、本発明の前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターもしくは遺伝子コンストラクト、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子、または本発明の前記種子ミールを含む組成物を提供する。実施形態では、前記組成物は、薬学的、食品、もしくは農業的使用に適する担体、種子処理化合物、肥料、他の食品もしくは配合原料、または添加されたタンパク質もしくはビタミンを含む。
【0097】
1またはそれ以上の、本発明の前記脂質もしくはオイル、本発明の前記脂肪酸、本発明の前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターもしくは遺伝子コンストラクト、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子、本発明の前記種子ミール、または本発明の組成物を含む、家畜飼料、化粧品、または化学物質もまた提供される。
【0098】
別の態様では、本発明は、家畜飼料を産生する方法を提供し、該方法は、1またはそれ以上の、本発明の前記脂質もしくはオイル、本発明の前記脂肪酸、本発明の前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターもしくは遺伝子コンストラクト、本発明に係る前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子、本発明の前記種子ミール、または本発明の前記組成物を、少なくとも1つの他の食品原料成分と混合することを含む。
【0099】
別の態様では、本発明は、PUFAから利益を得る、症状を治療または防止する方法を提供し、該方法は、対象に、1またはそれ以上の、本発明の前記脂質もしくはオイル、本発明の前記脂肪酸、本発明の前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターもしくは遺伝子コンストラクト、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子、本発明の前記種子ミール、本発明の前記組成物、または本発明の前記家畜飼料、を投与することを含む。
【0100】
PUFAから利益を得る症状の例は、心不整脈、血管形成、炎症、喘息、乾せん、骨粗鬆症、腎結石、AIDS、多発性硬化症、関節リウマチ、クローン病、統合失調症、癌、胎児性アルコール症候群、注意欠陥多動性障害、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、単極性うつ病、攻撃的な敵意(aggressive hostility)、副腎白質ジストロフィー(adrenoleukodystophy)、冠動脈心疾患、高血圧、糖尿病、肥満、アルツハイマー病、慢性閉塞性肺疾患、潰瘍性大腸炎、血管形成後の再狭窄、湿疹、血圧上昇、血小板凝集、消化管出血、子宮内膜症、月経前症候群、筋痛性脳脊髄炎、ウイルス感染後の慢性疲労、または眼性疾患を含むが、これらに限定されない。
【0101】
PUFAから利益を得る、症状を治療または防止するための薬剤の製造のために、1またはそれ以上の、本発明の前記脂質もしくはオイル、本発明の前記脂肪酸、本発明のいずれか1つの前記遺伝子コンストラクト、本発明の前記単離および/もしくは外因性ポリヌクレオチド、本発明の前記ベクターもしくは遺伝子コンストラクト、本発明の前記細胞、本発明の前記トランスジェニック生物、本発明の前記油料種子植物、本発明の前記セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナ、もしくはカメリナサティバ植物、本発明の前記植物部分、本発明の前記種子、本発明の前記植物、植物細胞、植物部分、もしくは種子、本発明の前記種子ミール、本発明の前記組成物、または本発明の前記家畜飼料、の使用もまた提供される。前記薬剤の前記産生は、本明細書に記載される状態の治療のために、薬学的に受容可能な担体と、本発明のオイルを混合することを含むこととしてもよい。前記方法は、まず、前記DHAのレベルを増加させるために、前記オイルを精製することおよび/またはエステル交換反応および/または前記オイルの分画を含むこととしてもよい。特定の実施形態において、前記方法は、前記オイルにおける前記脂肪酸を、メチルまたはエチルエステルのようなアルキルエステルに転換するために、キャノーラオイルのような前記オイルまたは脂質を処理することを含む。さらに、分画または蒸留のような処理が、前記DHAについての前記オイルまたは脂質を濃縮するために適用されることとしてもよい。好ましい実施形態では、前記薬剤はDHAのエチルエステルを含む。さらにより好ましい実施形態では、前記薬剤における前記DHAのエチルエステルのレベルは、30%から50%の間である。例えば、前記薬剤における前記総脂肪酸含有量の30%から50%の間で、前記薬剤はEPAのエチルエステルをさらに含むこととしてもよい。このような薬剤は、本明細書に記載されるような医学的状態を治療するために、ヒトまたは動物の対象に投与するのに適する。
【0102】
別の態様では、本発明は、本発明の種子を得ることと、金銭的利益のために得られた前記種子を取引することとを含む、種子を取引する方法を提供する。
【0103】
一実施形態では、前記種子を得ることは、本発明の前記植物を栽培すること、および/または前記植物から前記種子を収穫することを含む。
【0104】
別の実施形態では、前記種子を得ることは、コンテナに前記種子を配置すること、および/または前記種子を保存することをさらに含む。
【0105】
さらなる実施形態では、前記種子を得ることは、前記種子を異なる場所に運ぶことをさらに含む。
【0106】
さらに別の実施形態では、前記方法は、前記種子が取引された後に、前記種子を異なる場所に運ぶことをさらに含む。
【0107】
さらなる実施形態では、前記取引することは、コンピュータのような電子的手段を用いて行われる。
【0108】
さらに別の態様では、本発明は、
a)本発明の種子を含む植物の地上部分を刈り取り、並べ、および/または収穫することと、
b)前記植物部分の残りから前記種子を分離するために、前記植物の前記一部を脱穀し、および/または選り分けることと、
c)工程b)で分離された前記種子をふるいにかけおよび/またはソートすること、および容器内に前記ふるいにかけられたおよび/またはソートされた種子をロードすることにより、種子の入った容器を産生することと、
を含む、種子の入った容器を産生するプロセスを提供する。
【0109】
前記脂質もしくオイル、好ましくは種子オイルに関連するまたは有用な、一実施形態では、本発明は、表16の種子14のような、実施例のセクションにおいて表で提供されるものについての脂肪のレベルを有する。
【0110】
あらゆる本明細書の実施形態は、別途に特に記載されない限り、あらゆる他の実施形態に必要な変更を加えて適用すると解釈されるべきである。
【0111】
本発明は、本明細書に記載される特定の実施形態による範囲に限定されず、これらは例示のみの目的を意図とされる。機能的に均等な産生物、組成物、および方法は、あきらかに、本明細書に記載されるように、本発明の範囲内である。
【0112】
本明細書を通じて、特定の別途の記載または文脈上別途の必要性がない限り、単一の工程、組成物の材料、工程の群、組成物の材料の群への参照は、1つおよび複数(つまり、1またはそれ以上の)のこれらの工程、組成物の材料、工程の群、組成物の材料の群を包含すると解釈されるべきである。
【0113】
本発明は、以下の非限定的な実施例によりおよび添付の図面に対する参照により、ここに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0114】
図1】好気性DHA生合成経路である。
図2】pJP3416−GA7の左境界と右境界との間のT−DNA挿入領域のマップ。RBは右境界を示す;LB、左境界;TER、転写ターミネーター/ポリアデニル化領域;PRO、プロモーター;コード領域は矢印の上に記され、プロモーターおよびターミネーターは矢印の下に記される。Micpu−Δ6D、ミクロモナス・プシラ(Micromonas pusilla)Δ6デサチュラーゼ;Pyrco−Δ6E、ピラミモナス・コルダタ(Pyramimonas cordata)Δ6エロンガーゼ;Pavsa−A5D、パブロバ・サリナΔ5デサチュラーゼ;Picpa−ω3D、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)ω3デサチュラーゼ;Pavsa−Δ4D、P.サリナΔ4デサチュラーゼ;Lackl−Δ12D、ラカンセア・クルイベリ(Lachancea kluyveri)Δ12デサチュラーゼ;Pyrco−Δ5E、ピラミモナス・コルダタΔ5エロンガーゼ。NOSはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)ノパリンシンターゼ転写ターミネーター/ポリアデニル化領域;FP1、セイヨウアブラナ切断ナピンプロモーター;FAE1、シロイヌナズナFAE1プロモーター;レクチン、グリシン・マックスレクチン転写ターミネーター/ポリアデニル化領域;Cnl1およびCnl2はリヌム・ウシタティスシムムコンリニン(conlinin)1またはコンリニン2プロモーターまたはターミネーターを意味する。MARはニコチアナ・タバカムのRb7マトリックス付着領域である。
図3】pJP3404の左境界と右境界との間のT−DNA挿入領域のマップ。標識は図2の通りである。
図4】pJP3367の左境界と右境界との間の挿入領域のマップ。標識は図2の通りである。
図5】TおよびT世代の複数の独立トランスジェニックシロイヌナズナ種子脂質の総脂肪酸のパーセンテージとしてのDHA量である。角括弧がついたT事象はTに持ち込まれた。コロンビアおよびfad2変異体A.タリアナバックグラウンドの双方からの事象が示される。
図6】トランスジェニックシロイヌナズナ種子の脂質の総脂肪酸含有量のパーセンテージとしての、油含有量(w/w)対DHA含有量である。
図7】pJP3416−GA7を使って形質転換したB.ナプス胚のT−DNAの他の導入遺伝子と比較して、低発現のΔ6デサチュラーゼを示す代表的なRT−PCRゲルである。レーンは左からRT−PCR産物を示す:1、DNAサイズマーカー;レーン2、Δ12デサチュラーゼ;レーン3、ω3デサチュラーゼ;レーン4、Δ6デサチュラーゼ(低発現);レーン5、Δ6エロンガーゼ;レーン6、Δ5デサチュラーゼ;レーン7、Δ5エロンガーゼ;レーン8、Δ4デサチュラーゼ。
図8】オレイン酸のパーセンテージに対してプロットされたALAのパーセンテージであり、それぞれトランスジェニック35S:LEC2セイヨウアブラナ体細胞胚から得た脂質中の総脂肪酸のパーセンテージとして示す。
図9】NMRによる、A)マグロ油およびB)トランスジェニックDHAアラビドプシス種子油に対する位置分布の分析である。DHAアルファと示されるピークは、TAGのsn−1およびsn−3位置に存在するDHAの量を示す(位置的な優先がない場合は、これは総DHAの66%に等しい)一方で、DHAベータと示されるピークは、TAGのsn−2位置に存在するDHAの量を示す(優先がない場合は、これはDHAの33%に等しい)。
図10】トランスジェニックA.タリアナの発育中の(灰色)および成熟した(黒色)種子における主要なDHA含有トリアシルグリセロール種のLC−MS分析である。DHAに続く数字は、炭素原子の総数および他の2つの脂肪酸の二重結合の総数を意味する。したがって、DHA/34:1は、TAG56:7などとも呼ばれ得る。
図11】pORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片の左境界と右境界との間のT−DNA挿入領域のマップである。標識は図2の通りである;SSU、シロイヌナズナRubisco小サブユニットプロモーター。
図12】候補Δ12デサチュラーゼがその中にクローニングされるNotI制限部位を示すバイナリーベクターpJP3364のマップである。
図13】SigmaPlotを使用して生成したボックスプロットであり、pFN045−pFN050で形質転換したアラビドプシスT2種子群の種子脂質の脂肪酸20:4ω6(ARA)のパーセンテージを示す。ゼロに一番近い各枠の境界は、25パーセンタイルを示し、各枠の中の線は中央値を示し、ゼロから一番遠い各枠の境界は、75パーセンタイルを意味する。各枠の上下に示される誤差バーは、90および10パーセンタイルを示す。
図14】pFN045−pFN050で形質転換したアラビドプシスT2種子の種子脂質の総脂肪酸含有量のパーセンテージとして、ARAの平均量を示す。
図15】pFN045−pFN050で形質転換したアラビドプシスT2種子群の種子脂質の脂肪酸20:2ω6(EDA)のパーセンテージを示すボックスプロットである。ボックスプロットの値は図13で記載された通りに示される。
図16】pFN045−pFN050で形質転換したアラビドプシスT4種子群の種子脂質のARAのパーセンテージを示すボックスプロットである。ボックスプロットの値は図13で記載された通りに示される。
図17】pFN045−pFN050で形質転換したアラビドプシスT4種子群の種子脂質の総脂肪酸含有量のパーセンテージとして、ARAの平均量を示す。
図18】pFN045−pFN050で形質転換したアラビドプシスT4種子群の種子脂質のEDAのパーセンテージを示すボックスプロットである。ボックスプロットの値は図13で記載された通りに示される。
図19】(A)環および側鎖ナンバリングを伴った、基本的な植物ステロール構造である。(B)いくつかの植物ステロールの化学構造である。
図20】公知のLPAATの系統樹である。
図21】PC、CoAプールおよびTAGプールの間で脂肪酸を搬送する様々なアシル交換酵素である。出典はSinghら(2005)からである。
【発明を実施するための形態】
【0115】
配列表のカギ
配列番号1‐pJP3416‐GA7ヌクレオチド配列。
配列番号2‐pGA7‐mod_Bヌクレオチド配列。
配列番号3‐pGA7‐mod_Cヌクレオチド配列。
配列番号4‐pGA7‐mod_Dヌクレオチド配列。
配列番号5‐pGA7‐mod_Eヌクレオチド配列。
配列番号6‐pGA7‐mod_Fヌクレオチド配列。
配列番号7‐pGA7‐mod_Gヌクレオチド配列。
配列番号8‐pORE04+11ABGBEC_Cowpea_EPA_インサートヌクレオチド配列。
配列番号9‐植物におけるラカンセア・クルイベリ(Lachancea kluyveri)Δ12デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号10‐ラカンセア・クルイベリΔ12‐デサチュラーゼ。
配列番号11‐植物におけるピキア・パストリスω3デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号12‐ピキア・パストリスω3デサチュラーゼ。
配列番号13‐ミクロモナス・プシラΔ6‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号14‐植物におけるミクロモナス・プシラΔ6‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン1)。
配列番号15‐植物におけるミクロモナス・プシラΔ6‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン2)。
配列番号16‐ミクロモナス・プシラΔ6‐デサチュラーゼ。
配列番号17‐オストレオコッカスルシマリヌスΔ6‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号18‐植物におけるオストレオコッカスルシマリヌスΔ6‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号19‐オストレオコッカスルシマリヌスΔ6‐デサチュラーゼ。
配列番号20‐オストレオコッカスタウリΔ6‐デサチュラーゼ。
配列番号21‐ピラミモナス・コルダタΔ6‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号22‐植物におけるピラミモナス・コルダタΔ6‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(3’末端で切断され、機能的なエロンガーゼをコードする)(バージョン1)。
配列番号23‐植物におけるピラミモナス・コルダタΔ6‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(3’末端で切断され、機能的なエロンガーゼをコードする)(バージョン2)。
配列番号24‐植物におけるピラミモナス・コルダタΔ6‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(3’末端で切断され、機能的なエロンガーゼをコードする)(バージョン3)。
配列番号25‐ピラミモナス・コルダタΔ6‐エロンガーゼ。
配列番号26‐切断されたピラミモナス・コルダタΔ6‐エロンガーゼ。
配列番号27‐パブロバサリナΔ5‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号28‐植物におけるパブロバサリナΔ5‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン1)。
配列番号29‐植物におけるパブロバサリナΔ5‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン2)。
配列番号30‐パブロバサリナΔ5‐デサチュラーゼ。
配列番号31‐ピラミモナス・コルダタΔ5‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号32‐ピラミモナス・コルダタΔ5‐デサチュラーゼ。
配列番号33‐ピラミモナス・コルダタΔ5‐エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号34‐植物におけるピラミモナス・コルダタΔ5‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン1)。
配列番号35‐植物におけるピラミモナス・コルダタΔ5‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン2)。
配列番号36‐植物におけるピラミモナス・コルダタΔ5‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン3)。
配列番号37‐ピラミモナス・コルダタΔ5‐エロンガーゼ。
配列番号38‐パブロバサリナΔ4‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号39‐植物におけるパブロバサリナΔ4‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン1)。
配列番号40‐植物におけるパブロバサリナΔ4‐デサチュラーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム(バージョン2)。
配列番号41‐パブロバサリナΔ4‐デサチュラーゼ。
配列番号42‐イソクリシスガルバナΔ9‐エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号43‐イソクリシスガルバナΔ9‐エロンガーゼ。
配列番号44‐エミリアニアハクスレイCCMP1516Δ9‐エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号45‐植物におけるエミリアニアハクスレイΔ9‐エロンガーゼの発現についてのコドン最適化オープンリーディングフレーム。
配列番号46‐エミリアニアハクスレイCCMP1516Δ9‐エロンガーゼ。
配列番号47‐パブロバピンギスΔ9‐エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号48‐パブロバピンギスΔ9‐エロンガーゼ。
配列番号49‐パブロバサリナΔ9‐エロンガーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号50‐パブロバサリナΔ9‐エロンガーゼ。
配列番号51‐パブロバサリナΔ8‐デサチュラーゼをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号52‐パブロバサリナΔ8‐デサチュラーゼ。
配列番号53‐P19ウイルスサプレッサー。
配列番号54‐V2ウイルスサプレッサー。
配列番号55‐P38ウイルスサプレッサー。
配列番号56‐Pe‐P0ウイルスサプレッサー。
配列番号57‐RPV‐P0ウイルスサプレッサー。
配列番号58‐P19ウイルスサプレッサーをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号59‐V2ウイルスサプレッサーをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号60‐P38ウイルスサプレッサーをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号61‐Pe‐P0ウイルスサプレッサーをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号62‐RPV‐P0ウイルスサプレッサーをコードするオープンリーディングフレーム。
配列番号63‐シロイヌナズナLPAAT2。
配列番号64‐リムナンテスアルバLPAAT。
配列番号65‐サッカロマイセスセレビシエLPAAT。
配列番号66‐ミクロモナス・プシラLPAAT。
配列番号67‐モルティエレラアルピナLPAAT。
配列番号68‐セイヨウアブラナ(Braccisa napus)LPAAT。
配列番号69‐セイヨウアブラナLPAAT。
配列番号70‐フィトフトラインフェスタンスω3デサチュラーゼ。
配列番号71‐タラッシオシラシュードナナω3デサチュラーゼ。
配列番号72‐ピティウムイレギュラレω3デサチュラーゼ。
【0116】
一般的な技術および定義
別途具体的に定義されていない限り、本明細書で使用される全ての技術および科学用語は、当業者(例えば、細胞培養、分子遺伝学、脂肪酸合成、トランスジェニック植物、タンパク質化学、および生化学における)により一般的に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるべきである。
【0117】
別途示されない限り、本発明で利用される、遺伝子組換えタンパク、細胞培養、および免疫学的技術は、当業者によく知られる標準的な手順である。このような技術は、J. Perbal, A Practical Guide to Molecular Cloning, John Wiley and Sons (1984), J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory Press (1989), T.A. Brown (エディター), Essential Molecular Biology: A Practical Approach, Volumes 1 and 2, IRL Press (1991), D.M. Glover and B.D. Hames (エディター), DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes 1-4, IRL Press (1995および1996), F.M. Ausubel et al. (エディター), Current Protocols in Molecular Biology, Greene Pub. Associates and Wiley-Interscience (1988, 現在までの全てのアップデートを含む), Ed Harlow and David Lane (エディター), Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbour Laboratory, (1988),および J.E. Coligan et al. (エディター), Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons (現在までの全てのアップデートを含む)のようなソースにおける文献を通じて記載され、および説明される。
【0118】
用語「および/または」、例えば、「Xおよび/またはY」は、「XおよびY」または「XまたはY」のいずれかを意味することが理解されるべきであり、両方の意味について、または一方の意味について、明示的なサポートを提供すると解釈されるべきである。
【0119】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、逆の記載がない限り、所定の値の+/−10%、より好ましくは+/−5%、より好ましくは+/−1%を指す。
【0120】
本明細書を通じて、用語「含む(include)」または「含む(includes)」もしくは「含んでいる(including)」のようなバリエーションは、1つの記載された要素、整数、もしくは工程、または群の要素、整数、もしくは工程を含むが、あらゆる他の要素、整数、もしくは工程、または群の要素、整数、もしくは工程を排除しないことを暗示することが理解されるであろう。
【0121】
選択された定義
本明細書で使用される場合、用語「抽出植物脂質」および「単離植物脂質」は、植物または種子のようなその植物部分を、例えば、破砕することにより、抽出形態である脂質組成物を指す。抽出脂質は、例えば、植物の種子を破砕することにより得られる比較的天然の組成物、または全てではなくても、ほとんどの1もしくはそれ以上のもしくはそれぞれの、植物性物質由来の水、核酸、タンパク質、および炭水化物が取り除かれた、より精製された組成物、であり得る。精製方法の例が、以下に記載される。一実施形態では、抽出または単離植物の脂質は、組成物の重量により、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%(w/w)脂質を含む。脂質は、室温で固体または液体であることとしてもよく、液体である場合に、オイルであることが考えられる。一実施形態では、本発明の抽出脂質は、別のソースにより産生されないDHAのような別の脂質(例えば、魚油由来のDHA)とブレンドされていない。一実施形態では、抽出後に、1もしくはそれ以上のまたは全ての、DHAに対するオレイン酸、DHAに対するパルミチン酸、DHAに対するリノール酸、および総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、無傷の種子または細胞における比と比較される場合に、有意に変化していない(例えば、10%または5%以下の変化)。別の実施形態では、抽出植物脂質は、無傷の種子または細胞における比と比較される場合に、1もしくはそれ以上のまたは全ての、DHAに対するオレイン酸、DHAに対するパルミチン酸、DHAに対するリノール酸、および総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比を変化させるかもしれない、水素化または分画法のような手順にさらされていない。本発明の抽出植物脂質がオイルにおいて含まれる場合、オイルは、ステロールのような、非脂肪酸分子をさらに含むこととしてもよい。
【0122】
本明細書で使用される場合、用語「抽出植物オイル」および「単離植物オイル」は、抽出植物脂質または単離植物脂質を含み、室温で液体である、物質または組成物を指す。オイルは、植物または種子のようなその一部から得られる。抽出または単離オイルは、例えば、植物の種子を破砕することにより得られる比較的天然の組成物、または全てではなくても、ほとんどの1もしくはそれ以上のもしくはそれぞれの、植物性物質由来の水、核酸、タンパク質、および炭水化物が取り除かれた、より精製された組成物、であり得る。組成物は、脂質または非脂質である他の成分を含むこととしてもよい。一実施形態では、オイル組成物は、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%(w/w)抽出植物脂質を含む。一実施形態では、本発明の抽出されたオイルは、別のソース(例えば、魚油由来のDHA)により産生されていないDHAのような別のオイルによりブレンドされていない。一実施形態では、抽出後に、1もしくはそれ以上のまたは全ての、DHAに対するオレイン酸、DHAに対するパルミチン酸、DHAに対するリノール酸、および総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比は、無傷の種子または細胞における比と比較される場合に、有意に変化していない(例えば、10%または5%以下の変化)。別の実施形態では、抽出植物オイルは、無傷の種子または細胞における比と比較される場合に、1もしくはそれ以上のまたは全ての、DHAに対するオレイン酸、DHAに対するパルミチン酸、DHAに対するリノール酸、および総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸の比を変化させるかもしれない、水素化または分画法のような手順にさらされていない。本発明の抽出植物オイルは、ステロールのような非脂肪酸分子を含むこととしてもよい。
【0123】
本明細書で使用される場合、「オイル」は、主に脂質を含み、常温で液体である組成物である。例えば、本発明のオイルは、好ましくは、重量により、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、または少なくとも90%の脂質を含む。典型的には、精製されたオイルは、オイルにおける脂質の重量による少なくとも90%トリアシルグリセロール(TAG)を含む。ジアシルグリセロール(DAG)、遊離脂肪酸(FFA)、リン脂質、およびステロールのようなオイルの微量な成分は、本明細書に記載されるように存在することとしてもよい。
【0124】
本明細書で使用される場合、用語「脂肪酸」は、飽和または不飽和の長い脂肪族末端を有することが多い、カルボン酸(または、有機酸)を指す。典型的に、脂肪酸は、少なくとも8炭素原子の長さ、より好ましくは少なくとも12炭素の長さの炭素‐炭素結合鎖を有する。最も天然に発生する脂肪酸は、それらの生合成が2つの炭素原子を有するアセテートを伴うため、同じ数の炭素原子を有する。脂肪酸は、遊離状態(非エステル化)におけるもの、またはトリグリセリド、ジアシルグリセリド、モノアシルグリセリド、アシル‐CoA(チオ‐エステル)結合、もしくは他の結合形態の一部ような、エステル化形態におけるものであることとしてもよい。脂肪酸は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、またはジホスファチジルグリセロール形態のような、リン脂質としてのエステル化であることとしてもよい。
【0125】
「飽和脂肪酸」は、あらゆる二重結合、または鎖に沿う他の官能基を含まない。用語「飽和」は、水素を指し、全ての炭素(カルボン酸[‐COOH]基から離れてている)が、できるだけ多くの水素を含む。つまり、オメガ(ω)端部は3つの水素(CH3‐)を含み、鎖内の各炭素は2つの水素(‐CH2‐)を含む。
【0126】
「不飽和脂肪酸」は、各アルケンが、二重に結合された「‐CH=CH‐」部分(つまり、別の炭素に対して二重に結合された炭素)により、鎖の一重に結合された「‐CH2‐CH2‐」部分を置換し、1またはそれ以上のアルケン官能基が鎖に沿って存在することを除いて、飽和脂肪酸に対して類似の形態である。二重結合の両側に結合された鎖における2つの隣の炭素原子は、シスまたはトランス構造で生じ得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、用語「一価不飽和脂肪酸」は、その炭素鎖において少なくとも12の炭素原子および鎖におけるただ1つのアルケン基(炭素‐炭素二重結合)を含む、脂肪酸を指す。本明細書で使用される場合、用語「多価不飽和脂肪酸」または「PUFA」は、その炭素鎖において少なくとも12の炭素原子および少なくとも2つのアルケン基(炭素‐炭素二重結合)を含む、脂肪酸を指す。
【0128】
本明細書で使用される場合、用語「長鎖多価不飽和脂肪酸」および「LC‐PUFA」は、その炭素鎖において少なくとも20の炭素原子および少なくとも2つの炭素‐炭素二重結合を含む、脂肪酸を指し、よって、VLC‐PUFAを含む。本明細書で使用される場合、用語「非常に長い長鎖多価不飽和脂肪酸」および「VLC‐PUFA」は、その炭素鎖において少なくとも22の炭素原子および少なくとも3つの炭素‐炭素二重結合を含む、脂肪酸を指す。脂肪酸の炭素鎖における炭素原子の数は、通常、分岐していない炭素鎖を指す。炭素鎖が分岐されている場合、炭素原子の数は、側鎖におけるものを除外する。一実施形態において、長鎖多価不飽和脂肪酸は、ω3脂肪酸であり、つまり、脂肪酸のメチル端部から3番目の炭素‐炭素結合において、不飽和化(炭素‐炭素二重結合)を有する。別の実施形態では、長鎖多価不飽和脂肪酸は、ω6脂肪酸であり、つまり、脂肪酸のメチル端部から6番目の炭素‐炭素結合において、不飽和化(炭素‐炭素二重結合)を有する。さらなる実施形態では、長鎖多価不飽和脂肪酸は、アラキドン酸(ARA、20:4Δ5、8、11、14;ω6)、エイコサテトラエン酸(ETA、20:4Δ8、11、14、17、ω3)、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5Δ5、8、11、14、17;ω3)、ドコサぺンタエン酸(DPA、22:5Δ7、10、13、16、19、ω3)、またはドコサヘキサエン酸(DHA,22:6Δ4、7、10、13、16、19、ω3)からなる群から選択される。また、LC‐PUFAは、ジホモ‐γ‐リノール酸(DGLA)またはエイコサトリエン酸(ETrA、20:3Δ11、14、17、ω3)であることとしてもよい。本発明により産生されるLC‐PUFAは、上記のあらゆるまたは全ての混合物であることとしてもよく、他のLC‐PUFAまたはこれらのLC‐PUFAのあらゆる誘導体を含むこととしてもよいことは、容易に明らかになるであろう。好ましい実施形態では、ω3脂肪酸は、少なくともDHA、好ましくは、DPAおよびDHA、またはEPA、DPA、およびDHAである。
【0129】
さらに、本明細書で使用される場合、用語「長鎖多価不飽和脂肪酸」および「非常に長い長鎖多価不飽和脂肪酸」は、遊離状態(非エステル化)における、または、トリグリセリド、ジアシルグリセリド、モノアシルグリセリド、アシル‐CoA結合、もしくは他の結合形態の一部のようなエステル化形態におけるである脂肪酸を指す。脂肪酸は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、またはジホスファチジルグリセロール形態のような、リン脂質としてエステル化されることとしてもよい。よって、LC‐PUFAは、細胞の脂質、または細胞、組織、または生物から抽出された脂質もしくは精製されたオイルにおける混合物の形態で存在することとしてもよい。好ましい実施形態においては、本発明は、少なくとも75%または少なくとも85%のトリアシルグリセロールを含み、LC‐PUFAを含む少なくとも前記のトリアシルグリセロールを有する、言及したもののような他の形態の脂質として残りが存在する、オイルを提供する。後に、オイルは、さらに精製され、または、例えば、遊離脂肪酸を放出するために強塩基での加水分解により、もしくは蒸留等により処理されることとしてもよい。
【0130】
本明細書で使用される場合、「総ω6脂肪酸」または「総ω6脂肪酸含有量」等は、その内容が測定される場合に、総脂肪酸含有量のパーセンテージとして表される、抽出脂質、オイル、遺伝子組換え(recombinanat)細胞、植物部分、または種子におけるエステル化および非エステル化ω6脂肪酸の全ての合計を指す。これらのω6脂肪酸は、(もし存在する場合には)LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、およびω6‐DPAを含み、あらゆるω3脂肪酸および一価不飽和脂肪酸を除外する。
【0131】
本明細書で使用される場合、「新ω6脂肪酸」または「新ω6脂肪酸含有量」等は、その内容が測定される場合に、総脂肪酸含有量のパーセンテージとして表される、抽出脂質、オイル、遺伝子組換え細胞、植物部分、または種子における、LAを除く、エステル化および非エステル化ω6脂肪酸の全ての合計を指す。これらの新ω6脂肪酸は、細胞内に導入される遺伝子コンストラクト(外因性ポリヌクレオチド)の発現による本発明の細胞、植物、植物部分、および種子で産生される脂肪酸であり、(もし存在する場合には)GLA、DGLA、ARA、EDAおよびω6‐DPAを含むが、LAおよびあらゆるω3脂肪酸および一価不飽和脂肪酸を除外する。例示的な総ω6脂肪酸含有量および新ω6脂肪酸含有量は、実施例1に記載されるように、FAMEへのサンプルにおける脂肪酸の転換およびGCによる分析により測定される。
【0132】
本明細書で使用される場合、「総ω3脂肪酸」または「総ω3脂肪酸含有量」等は、その内容が測定される場合に、総脂肪酸含有量のパーセンテージとして表される、抽出脂質、オイル、遺伝子組換え細胞、植物部分、または種子におけるエステル化および非エステル化ω3脂肪酸の全ての合計を指す。これらのω3脂肪酸は、(もし存在する場合には)ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA、およびDHAを含み、あらゆるω6脂肪酸および一価不飽和脂肪酸を除外する。
【0133】
本明細書で使用される場合、「新ω3脂肪酸」または「新ω3脂肪酸含有量」等は、その内容が測定される場合に、総脂肪酸含有量のパーセンテージとして表される、抽出脂質、オイル、遺伝子組換え細胞、植物部分、または種子における、ALAを除く、エステル化および非エステル化ω3脂肪酸の全ての合計を指す。これらの新ω3脂肪酸は、細胞内に導入される遺伝子コンストラクト(外因性ポリヌクレオチド)の発現による本発明の細胞、植物、植物部分、および種子で産生される脂肪酸であり、(もし存在する場合には)SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA、およびDHAを含むが、ALAおよびあらゆるω6脂肪酸および一価不飽和脂肪酸を除外する。例示的な総ω3脂肪酸含有量および新ω3脂肪酸含有量は、実施例1に記載されるように、FAMEへのサンプルにおける脂肪酸の転換およびGCによる分析により測定される。
【0134】
本発明で使用される、デサチュラーゼ、エロンガーゼ、およびアシルトランスフェラーゼタンパク質、並びにそれらをコードする遺伝子は、あらゆる当該技術分野で知られるもの、または相同体、またはこれらの誘導体である。このような遺伝子およびコードされるタンパク質サイズの例は、表1に挙げられる。LC‐PUFA生合成に関与することが示されたデサチュラーゼ酵素は全て、いわゆる「フロントエンド」のデサチュラーゼの群に属する。
【0135】
本明細書で使用される場合、用語「フロントエンドのデサチュラーゼ」は、3つの高度に保存されたヒスチジンボックスを含む、典型的な脂肪酸デサチュラーゼドメインに沿って、N末端シトクロムb5ドメインの存在により構造的に特徴づけられる、脂質のアシル鎖の既存の不飽和部分とカルボキシル基との間の二重結合を導入するクラスの酵素のメンバーを指す(Napier et al., 1997)。
【0136】
本発明における使用に関するあらゆるエロンガーゼまたはデサチュラーゼの活性は、例えば、酵母細胞、植物細胞のような細胞における、または好ましくは体性の胚もしくはトランスジェニック植物における酵素をコードする遺伝子を発現することにより、および細胞、胚、もしくは植物が、酵素が発現されない比較可能な細胞、胚、もしくは植物と比較してLC‐PUFAを産生する性能を増加させたかどうかを測定することにより試験されることとしてもよい。
【0137】
一実施形態において、本発明における使用のための1またはそれ以上のデサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼは、微細藻類から精製され得、つまり、微細藻類から精製され得るポリペプチドと同じアミノ酸配列である。
【0138】
一定の酵素が、本明細書に「二機能性」として具体的に記載されるが、このような用語がないことが、特定の酵素が具体的に定義される以外の活性を有しないことを暗示する必要はない。
【0139】
デサチュラーゼ
本明細書で使用される場合、用語「デサチュラーゼ」は、例えば、アシル‐CoAエステルのような、典型的にはエステル化形態におけるものである、脂肪酸基質のアシル基内に炭素‐炭素二重結合を導入することが可能な酵素を指す。アシル基は、ホスファチジルコリン(PC)のようなリン脂質に対して、またはアシル担体タンパク質(ACP)に対して、または、好ましい実施形態ではCoAに対して、エステル化されることとしてもよい。よって、デサチュラーゼは、概して、3つのグループにカテゴライズされることとしてもよい。一実施形態では、デサチュラーゼは、フロントエンドのデサチュラーゼである。
【0140】
本明細書で使用される場合、「Δ4‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から4番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。「Δ4‐デサチュラーゼ」は、DPAをDHAに転換することが少なくとも可能である。DPAからDHAを産生するための不飽和化工程は、哺乳類以外の生物におけるΔ4‐デサチュラーゼにより触媒され、この酵素をコードする遺伝子は、淡水性の原生生物種ユーグレナグラシリスおよび海洋種スラウストキトリウム(Thraustochytrium)種から単離された(Qiu et al., 2001; Meyer et al., 2003)。一実施形態において、Δ4‐デサチュラーゼは、配列番号41に規定される配列を有するアミノ酸、もしくはスラウストキトリウム種Δ4‐デサチュラーゼ、その生物学的に活性な断片、または配列番号41と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0141】
LC‐PUFA生合成に関連するクローン化遺伝子
【表1】
【0142】
本明細書で使用される場合、「Δ5‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から5番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。Δ5‐デサチュラーゼの例は、Ruiz-Lopez et al. (2012)およびPetrie et al. (2010a)および本明細書の表1に挙げられる。一実施形態において、Δ5‐デサチュラーゼは、配列番号30に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号30と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ5‐デサチュラーゼは、配列番号32に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号32と少なくとも53%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ5‐デサチュラーゼは、スラウストキトリウム種またはエミリアニアハクスレイ由来である。
【0143】
本明細書で使用される場合、「Δ6‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から6番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。Δ6‐デサチュラーゼの例は、Ruiz-Lopez et al. (2012)およびPetrie et al. (2010a)および本明細書の表1に挙げられる。好ましいΔ6‐デサチュラーゼは、ミクロモナス・プシラ、ピティウムイレギュラレ、またはオストレオコッカスタウリ由来である。
【0144】
一実施形態では、Δ6‐デサチュラーゼは、少なくとも2つの、好ましくは全ての3つの、および好ましくは植物細胞において、以下の事項:i)脂肪酸基質としてのリノール酸(LA、18:2Δ9、12、ω6)よりも高いα‐リノレン酸(ALA、18:3Δ9、12、15、ω3)でのΔ6‐デサチュラーゼ活性;ii)脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも高い脂肪酸基質としてのALA‐CoAでのΔ6‐デサチュラーゼ活性;およびiii)ETrAでのΔ8‐デサチュラーゼ活性、を有することによりさらに特徴づけられる。このようなΔ6‐デサチュラーゼの例は、表2に提供される。
【0145】
一実施形態では、Δ6‐デサチュラーゼは、ω3基質で、対応するω6基質よりも高い活性を有し、植物細胞のような遺伝子組換え細胞における外因性ポリヌクレオチドから発現される場合には、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ましくは少なくとも50%、または、酵母細胞で発現される場合には、少なくとも35%、の効率で、オクタデカテトラエン酸(ステアリドン酸、SDA、18:4Δ6、9、12、15、ω3)を産生するために、ALAで活性を有する。一実施形態において、Δ6‐デサチュラーゼは、より高い活性、例えば、脂肪酸基質としてのALAでLAよりも少なくとも約2倍高いΔ6‐デサチュラーゼ活性を有する。別の実施形態では、Δ6‐デサチュラーゼは、より高い活性、例えば、脂肪酸基質としてのALA‐CoAで、脂肪酸基質としてのPCのSn‐2位置に結合するALAよりも、少なくとも5倍のΔ6‐デサチュラーゼ活性または少なくとも10倍高い活性を有する。さらなる実施形態では、Δ6‐デサチュラーゼは、脂肪酸基質ALA‐CoAおよびPCのSn‐2位置に結合するALAの両方で活性を有する。
【0146】
アシル‐CoA基質で活性を有することが実証されたデサチュラーゼ
【表2】
【0147】
一実施形態において、Δ6‐デサチュラーゼは、ETAで検出可能なΔ5‐デサチュラーゼ活性を有しない。別の実施形態では、Δ6‐デサチュラーゼは、配列番号16、配列番号19、もしくは配列番号20で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号16、配列番号19、もしくは配列番号20と少なくとも77%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ6‐デサチュラーゼは、配列番号19もしくは配列番号20で規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号19もしくは配列番号20の1つもしくは両方と少なくとも67%同一であるアミノ酸配列を含む。また、Δ6‐デサチュラーゼは、Δ8‐デサチュラーゼ活性を有することとしてもよい。
【0148】
本明細書で使用される場合、「Δ8‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から8番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。Δ8‐デサチュラーゼは、ETrAをETAに転換することが少なくとも可能である。Δ8‐デサチュラーゼの例は、表1に挙げられる。一実施形態において、Δ8‐デサチュラーゼは、配列番号52に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号52と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0149】
本明細書で使用される場合、「ω3‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のメチル末端から3番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。よって、ω3‐デサチュラーゼは、LAをALAにおよびGLAをSDAに(全てC18脂肪酸)、またはDGLAをETAにおよび/もしくはARAをEPAに(C20脂肪酸)転換することとしてもよい。いくつかのω3‐デサチュラーゼ(グループI)は、植物およびラン藻のω3‐デサチュラーゼのような、C18基質でのみ活性を有する。このようなω3‐デサチュラーゼは、Δ15‐デサチュラーゼでもある。他のω3‐デサチュラーゼは、C20基質で活性を有し、C18基質で活性を有さず(グループII)またはいくつかの活性を有する(グループIII)。このようなω3‐デサチュラーゼは、Δ17‐デサチュラーゼでもある。好ましいω3‐デサチュラーゼは、ピキア・パストリスω3‐デサチュラーゼ(配列番号12)のような、LAをALAに、GLAをSDAに、DGLAをETAに、およびARAをEPAに転換するグループIIIタイプである。ω3‐デサチュラーゼの例は、Pereira et al. (2004a)(魚類の内臓真菌症菌(Saprolegnia diclina)ω3‐デサチュラーゼ、グループII)、Horiguchi et al. (1998)、Berberich et al. (1998)、およびSpychalla et al. (1997)(線虫ω3‐デサチュラーゼ、グループIII)により記載されるものを含む。好ましい実施形態では、ω3‐デサチュラーゼは、真菌のω3‐デサチュラーゼである。本明細書で使用される場合、「真菌のω3‐デサチュラーゼ」は、卵菌ソースを含む真菌ソース由来、またはアミノ酸配列がこれらに対して少なくとも95%同一であるこれらの変異体である、ω3‐デサチュラーゼを指す。多数のω3‐デサチュラーゼをコードする遺伝子は、例えば、フィトフトラインフェスタンス(受入番号CAJ30870、国際公開第2005083053号;配列番号70)、魚類の内臓真菌症菌(受入番号AAR20444,Pereira et al., 2004a &米国特許第7211656号)、ピティウムイレギュラレ(国際公開第2008022963号,グループII;配列番号72)、モルティエレラアルピナ(Sakuradani et al., 2005;受入番号BAD91495;国際公開第2006019192号)、タラッシオシラシュードナナ(Armbrust et al., 2004;受入番号XP_002291057;国際公開第2005012316号、配列番号71)、ラカンセア・クルイベリ(サッカロマイセスクルイベリ(Saccharomyces kluyveri)としても知られる;Oura et al., 2004;受入番号AB118663)由来の真菌ソースから単離された。Xue et al. (2012)は、C20基質について好ましい、ω6脂肪酸基質を対応するω3脂肪酸に効率的に転換することができた、つまり、それらはΔ15‐デサチュラーゼ活性よりも強いΔ17‐デサチュラーゼ活性を有した、卵菌ピティウムアファニデルマツム(Pythium aphanidermatum)、フィトフトラソジャエ(Phytophthora sojae)、およびフィトフトララモラム(Phytophthora ramorum)由来のω3‐デサチュラーゼを記載する。これらの酵素は、Δ12‐デサチュラーゼ活性を欠くが、基質としてのアシル‐CoAおよびリン脂質フラクションの両方における脂肪酸を使用することができた。
【0150】
より好ましい実施形態では、真菌ω3‐デサチュラーゼは、ピキア・パストリス(コマガタエラパストリス(Komagataella pastoris)としても知られる)ω3‐デサチュラーゼ/Δ15‐デサチュラーゼ(Zhang et al., 2008;受入番号EF116884;配列番号12)、またはこれらと少なくとも95%同一であるポリペプチドである。
【0151】
一実施形態では、ω3‐デサチュラーゼは、少なくとも、ARAをEPAに、DGLAをETAに、GLAをSDAに、のうち1つを、ARAをEPAにおよびDGLAをETAに、の両方を、ARAをEPAにおよびGLAをSDAに、の両方を、またはこれら3つの全てを転換することができる。
【0152】
一実施形態において、ω3‐デサチュラーゼは、少なくとも3つの炭素‐炭素二重結合、好ましくはARAを有する、C20脂肪酸で、Δ17‐デサチュラーゼ活性を有する。別の実施形態では、ω3‐デサチュラーゼは、3つの炭素‐炭素二重結合、好ましくはGLAを有するC18脂肪酸で、Δ15‐デサチュラーゼ活性を有する。好ましくは、両方の活性が存在する。
【0153】
本明細書で使用される場合、「Δ12‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から12番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。Δ12‐デサチュラーゼは、典型的には、オレオイル-ホスファチジルコリンまたはオレオイル‐CoAのいずれかを、リノレオイル−ホスファチジルコリン(18:1‐PC)またはリノレオイル‐CoA(18:l‐CoA)にそれぞれ転換する。基質に結合されたPCを用いるサブクラスは、リン脂質依存性のΔ12‐デサチュラーゼを、後者のサブクラス(sublclass)はアシル−CoA依存性のΔ12‐デサチュラーゼを指す。植物および真菌Δ12‐デサチュラーゼは、概して前者のサブクラスであるのに対して、動物のΔ12‐デサチュラーゼ、例えば、Zhou et al. (2008)による昆虫からクローン化された遺伝子によりコードされるΔ12‐デサチュラーゼは後者のサブクラスである。多くの他のΔ12‐デサチュラーゼ配列は、配列のデータベースをサーチすることにより容易に同定され得る。
【0154】
本明細書で使用される場合、「Δ15‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から15番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。Δ15‐デサチュラーゼをコードする多数の遺伝子は、植物および真菌の種からクローン化された。例えば、米国特許第5952544号は、植物Δ15‐デサチュラーゼ(FAD3)をコードする核酸を記載する。これらの酵素は、植物Δ15‐デサチュラーゼの特性であったアミノ酸モチーフを含む。国際公開第200114538号は、ダイズFAD3をコードする遺伝子を記載する。多くの他のΔ15‐デサチュラーゼ配列は、配列データベースをサーチすることにより、容易に同定され得る。
【0155】
本明細書で使用される場合、「Δ17‐デサチュラーゼ」は、脂肪酸基質のカルボキシル末端から17番目の炭素‐炭素結合で、炭素‐炭素二重結合を導入するデサチュラーゼ反応を行うタンパク質を指す。Δ17‐デサチュラーゼは、もしそれがω3結合で不飽和化を導入するためにC20基質で作用する場合には、ω3‐デサチュラーゼであるとも考えられる。
【0156】
好ましい実施形態では、Δ12‐デサチュラーゼおよび/またはΔ15‐デサチュラーゼは、真菌Δ12‐デサチュラーゼまたは真菌Δ15‐デサチュラーゼである。本明細書で使用される場合、「真菌Δ12‐デサチュラーゼ」または「真菌のΔ15‐デサチュラーゼ」は、卵菌ソースを含む真菌ソース、または、アミノ酸配列がこれらに対して少なくとも95%同一である、これらの変異体由来である、Δ12‐デサチュラーゼまたはΔ15‐デサチュラーゼを指す。多数のデサチュラーゼをコードする遺伝子は、真菌のソースから単離された。米国特許第7211656号は、魚類の内臓真菌症菌由来のΔ12デサチュラーゼを記載する。国際公開第2009016202号は、Helobdella robusta、オオキツネタケ(Laccaria bicolor)、ナスビカサガイ(Lottia gigantea)、ミクロコレスクソノプラステス(Microcoleus chthonoplastes)、モノシガブレビコリス(Monosiga brevicollis)、マイコスファエレラフィジエンシス(Mycosphaerella fijiensis)、コムギ葉枯病菌(Mycospaerella graminicola)、Naegleria gruben、ネクトリアヘマトコッカ(Nectria haematococca)、ネマトステラベクテンシス(Nematostella vectensis)、フィコマイセスブレイクスリーアヌス(Phycomyces blakesleeanus)、トリコデルマレシイ(Trichoderma resii)、ヒメツリガネゴケ、ポスティアプラセンタ(Postia placenta)、イヌカタヒバ(Selaginella moellendorffii)、およびミクロドキウムニバレ(Microdochium nivale)由来の真菌のデサチュラーゼを記載する。国際公開第2005/012316号は、タラッシオシラシュードナナおよび他の真菌類由来のΔ12‐デサチュラーゼを記載する。国際公開第2003/099216号は、アカパンカビ、アスペルギルスニデュランス、灰色かび病菌およびモルティエレラアルピナから単離された真菌のΔ12‐デサチュラーゼおよびΔ15‐デサチュラーゼをコードする遺伝子を記載する。国際公開第2007133425号は、サッカロマイセスクルイベリ、モルティエレラアルピナ、アスペルギルスニデュランス、アカパンカビ、フザリウムグラミニアラム(Fusarium graminearum)、フザリウムモニリフォルメ(Fusarium moniliforme)、およびマグネポルテグリセア(Magnaporthe grisea)から単離される真菌のΔ15デサチュラーゼを記載する。好ましいΔ12デサチュラーゼは、フィトフトラソジャエ由来である(Ruiz-Lopez et al., 2012)。
【0157】
真菌のΔ12‐デサチュラーゼおよび真菌のΔ15‐デサチュラーゼの別個のサブクラスが、二機能性の真菌のΔ12/Δ15‐デサチュラーゼである。これらをコードする遺伝子は、フザリウムモリノフォルメ(Fusarium monoliforme)(受入番号DQ272516、Damude et al., 2006)、アカントアメーバカステラーニ(Acanthamoeba castellanii)(受入番号EF017656、Sayanova et al., 2006)、パーキンサスマリヌス(Perkinsus marinus)(国際公開第2007042510号)、麦角病菌(Claviceps purpurea)(受入番号EF536898、Meesapyodsuk et al., 2007)、およびネナガヒトヨタケ(Coprinus cinereus)(受入番号AF269266、Zhang et al., 2007)からクローン化された。
【0158】
別の実施形態では、ω3‐デサチュラーゼが、アシル‐CoA基質で、対応するアシル‐PC基質と少なくとも同じ活性、好ましくはより高い活性を有する。本明細書で使用される場合、「対応するアシル‐PC基質」は、脂肪酸がアシル‐CoA基質におけるものと同じ脂肪酸である、ホスファチジルコリン(PC)のsn‐2位置でエステル化された脂肪酸を指す。例えば、アシル‐CoA基質はARA‐CoAであることとしてもよく、対応するアシル‐PC基質はsn‐2ARA−PCであることとしてもよい。一実施形態では、活性は少なくとも2倍以上高い。好ましくは、ω3‐デサチュラーゼは、アシル‐CoA基質とその対応するアシル‐PC基質の両方で少なくとも同じ活性を有し、C18およびC20基質の両方で活性を有する。このようなω3‐デサチュラーゼの例は、上記に挙げられたクローン化された真菌デサチュラーゼ間で知られる。
【0159】
さらなる実施形態では、ω3‐デサチュラーゼは、配列番号12に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号12と少なくとも60%同じである、好ましくは少なくとも90%、もしくは少なくとも95%配列番号12と同じであるアミノ酸配列を含む。
【0160】
さらに、さらなる実施形態では、本発明における使用のためのデサチュラーゼは、アシル‐CoA基質で、対応するアシル‐PC基質よりも高い活性を有する。別の実施形態では、本発明における使用のためのデサチュラーゼは、アシル‐PC基質で、対応するアシル‐CoA基質よりも高い活性を有するが、両方の基質でいくつかの活性を有する。上記に概説したように、「対応するアシル‐PC基質」は、脂肪酸がアシル‐CoA基質におけるものと同じ脂肪酸である、ホスファチジルコリン(PC)のsn‐2位置でエステル化された脂肪酸を指す。一実施形態では、より高い活性は少なくとも2倍以上高い。一実施形態では、デサチュラーゼは、Δ5もしくはΔ6‐デサチュラーゼ、またはω3‐デサチュラーゼであって、その例が提供されるが、表2に挙げられたものに限定されない。どの基質でデサチュラーゼが作用するのかを、すわなち、アシル‐CoAまたはアシル‐PC基質で、試験するために、分析が、Domergue et al. (2003)および(2005)に記載されるように、酵母細胞で行われ得る。また、デサチュラーゼについてのアシル‐CoA基質性能が、エロンガーゼの場合に推論され得、デサチュラーゼ(desturase)とともに発現される場合、エロンガーゼがデサチュラーゼの産生物の伸長を触媒する、少なくとも約90%の植物細胞における酵素的な転換効率を有する。これに基づき、GA7コンストラクト(実施例2および3)およびその変異体(実施例5)から発現されるΔ5‐デサチュラーゼおよびΔ4‐デサチュラーゼが、それらの個々のアシル‐CoA基質、ETA‐CoA、およびDPA‐CoAを不飽和化することを可能にする。
【0161】
エロンガーゼ
生化学的証拠が、脂肪酸伸長が4つの工程:濃縮、還元、脱水、および第2の還元からなることを示唆する。本発明の内容において、「エロンガーゼ」は、適切な生理的条件下で、伸長複合体の他のメンバーの存在下で凝縮工程を触媒するポリペプチドを指す。伸長タンパク質複合体の凝縮成分(「エロンガーゼ」)のみの細胞における異種性または相同性発現が、個々のアシル鎖の伸長のために必要とされることが示された。よって、導入されたエロンガーゼが、成功的なアシル伸長を行うためのトランスジェニック宿主からの還元および脱水作業を成功的に採用することができる。鎖の長さに対する鎖延長反応の特異性または脂肪酸基質の不飽和化の程度が、凝縮成分に存在することが考えられる。また、この成分は、鎖延長反応において律速であることが考えられる。
【0162】
本明細書で使用される場合、「Δ5‐エロンガーゼ」は、EPAをDPAに転換することが少なくとも可能である。Δ5‐エロンガーゼの例は、国際公開第2005/103253号に開示されるものを含む。一実施形態において、Δ5‐エロンガーゼは、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、または最も好ましくは80%もしくは90%の効率でDPAを産生するために、EPAで活性を有する。さらなる実施形態では、Δ5‐エロンガーゼは、配列番号37に規定されるアミノ酸配列、その生物学的に活性な断片、または配列番号37と少なくとも47%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、Δ6‐エロンガーゼは、オストレオコッカスタウリまたはオストレオコッカスルシマリヌス由来である(米国出願公開第2010/088776号)。
【0163】
本明細書で使用される場合、「Δ6‐エロンガーゼ」は、SDAをETAに少なくとも転換することができる。Δ6‐エロンガーゼの例は、表1に挙げられるものを含む。一実施形態において、エロンガーゼは、配列番号25に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片(例えば、配列番号26に規定されるフラグメント)、または配列番号25もしくは配列番号26の1つもしくは両方と少なくとも55%同一であるアミノ酸配列を含む。一実施形態では、Δ6‐エロンガーゼは、ヒメツリガネゴケ(Zank et al., 2002;受入番号AF428243)またはタラシオシラシュードナナ(Tlialassiosira pseudonana)(Ruiz-Lopez et al., 2012)由来である。
【0164】
本明細書で使用される場合、「Δ9‐エロンガーゼ」は、ALAをETrAに少なくとも転換することができる。Δ9‐エロンガーゼの例は、表1にあげられるものを含む。一実施形態において、Δ9‐エロンガーゼは、配列番号43に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号43と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ9‐エロンガーゼは、配列番号46に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号46と少なくとも81%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ9‐エロンガーゼは、配列番号48に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号48と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、Δ9‐エロンガーゼは、配列番号50に規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または配列番号50と少なくとも50%同一であるアミノ酸配列を含む。さらなる実施形態では、Δ9‐エロンガーゼは、ω6基質で対応するω3基質よりも高い活性を有し、またはその逆である。
【0165】
本明細書で使用される場合、用語「ω6基質で対応するω3基質よりも高い活性を有する」は、ω3デサチュラーゼの作用により異なる基質での酵素の相対的な活性を指す。好ましくは、ω6基質はLAであり、ω3基質はALAである。
【0166】
Δ6‐エロンガーゼおよびΔ9‐エロンガーゼ活性を有するエロンガーゼは、(i)SDAをETAに転換すること、および(ii)ALAをETrAに変換することが少なくとも可能であり、Δ9‐エロンガーゼ活性よりも高いΔ6‐エロンガーゼ活性を有する。一実施形態において、エロンガーゼは、ETAを産生するために、SDAで、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%の転換の効率、および/またはETrAを産生するために、ALAで、少なくとも6%もしくはより好ましくは少なくとも9%の転換の効率を有する。別の実施形態では、エロンガーゼは、Δ9‐エロンガーゼ活性よりも少なくとも約6.5倍高いΔ6‐エロンガーゼ活性を有する。さらなる実施形態では、エロンガーゼは、検出可能なΔ5‐エロンガーゼ活性を有していない。
【0167】
他の酵素
本明細書で使用される場合、用語「1‐アシル‐グリセロール‐3‐ホスフェートアシルトランスフェラーゼ」(LPAAT)は、リゾホスファチジン酸‐アシルトランスフェラーゼまたはアシルCoA‐リゾホスファチジン酸‐アシルトランスフェラーゼともよばれ、ホスファチド酸(PA)を形成するためにsn‐2位置でsn‐l‐アシル‐グリセロール‐3‐ホスフェート(sn‐1 G‐3‐P)をアシル化するタンパク質を指す。よって、用語「1‐アシル‐グリセロール‐3‐ホスフェートアシルトランスフェラーゼ活性」は、PA(EC 2.3.1.51)を産生するための、sn‐2位置での(sn‐1 G‐3‐P)のアシル化を指す。好ましいLPAATは、LPAのsn‐2位置に多価不飽和C22アシル基を転移するために、基質として多価不飽和C22アシル‐CoAを使用し得るものであり、PAを形成する。このようなLPAATは、実施例13に例示され、そこに記載されるように試験され得る。一実施形態では、本発明のために有用なLPAATは、配列番号63から69のいずれか1つに規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または1もしくはそれ以上の配列番号63から69のいずれか1つと少なくとも40%同一であるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、本発明について有用なLPAATは、配列番号64、65、および67のいずれか1つに規定される配列を有するアミノ酸、その生物学的に活性な断片、または1もしくはそれ以上の配列番号64、65、および67のいずれか1つと少なくとも40%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0168】
本明細書で使用される場合、用語「ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ」(EC2.3.1.20;DGAT)は、トリアシルグリセロールを産生するために、アシル‐CoAからジアシルグリセロール基質へと脂肪族アシル基を転移するタンパク質を指す。よって、「ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ活性」は、トリアシルグリセロールを産生するための、ジアシルグリセロールへのアシル‐CoAの転移を指す。DGAT1、DGAT2、およびDGAT3として言及される3つの既知のタイプのDGATがある。DGAT1ポリペプチドは、典型的には、10の膜貫通ドメインを有し、DGAT2は、典型的には、2の膜貫通ドメインを有し、一方、DGAT3は、典型的には可溶性である。DGAT1ポリペプチドの例は、アスペルギルスフミガーツス(受入番号XP_755172)、シロイヌナズナ(CAB44774)、トウゴマ(AAR11479)、オオアブラギリ(ABC94472)、ベルノニアガラメンシス(ABV21945、ABV21946)、ニシキギ(AAV31083)、カエノラブディティスエレガンス(Caenorhabditis elegans)(AAF82410)、ドブネズミ(Rattus norvegicus)(NP_445889)、ホモサピエンス(NP_036211)由来のDGAT1遺伝子によりコードされるポリペプチド、並びにその変異体および/または突然変異体を含む。DGAT2ポリペプチドの例は、シロイヌナズナ (受入番号NP_566952)、トウゴマ(AAY16324)、オオアブラギリ(ABC94474)、モルティエレララマニアナ(AAK84179)、ホモサピエンス(Q96PD7、Q58HT5)、ウシ(Bos taurus)(Q70VD8)、ハツカネズミ(Mus musculus)(AA84175)、ミクロモナスCCMP1545由来のDGAT2遺伝子によりコードされるポリペプチド、並びにその変異体および/または突然変異体を含む。DGAT3ポリペプチドの例は、ピーナッツ(peanut)(ピーナッツ(Arachis hypogaea), Saha, et al., 2006)由来のDGAT3遺伝子によりコードされるポリペプチド、並びにその変異体および/または突然変異体を含む。
【0169】
ポリペプチド/ペプチド
ポリペプチドの内容における用語「遺伝子組換え」は、それが天然に産生される場合のその自然の状態と比較して、変化した量または変化した率で、細胞によりまたは細胞フリーの発現システムにより産生される場合のポリペプチドを指す。一実施形態において、細胞は、ポリペプチドを天然で産生しない細胞である。しかしながら、細胞は、産生されるポリペプチドの変化した量を生じさせる非内因性遺伝子含む細胞であることとしてもよい。本発明の遺伝子組換えポリペプチドは、それが産生される、細胞、組織、器官、もしくは生物、または細胞フリー発現システムにおけるポリペプチド、つまり、それが産生されたトランスジェニック(遺伝子組換え)細胞の他の成分から分離または精製されていないポリペプチド、および、その後、少なくともいくつかの他の成分から精製されるこのような細胞または細胞フリーのシステムにおいて産生されるポリペプチドを含む。
【0170】
用語「ポリペプチド」および「タンパク質」は、概して、互換的に使用される。
【0171】
ポリペプチドまたはポリペプチドのクラスは、基準のアミノ酸配列に対してそのアミノ酸配列の同一性の程度(%同一性)により、または1つの基準のアミノ酸配列に対して、別に対するよりもより高い%同一性を有することにより、定義されることとしてもよい。基準のアミノ酸配列に対するポリペプチドの%同一性は、典型的には、ギャップクリエーションペナルティ(gap creation penalty)=5、および、ギャップエクステンションペナルティ(gap extension penalty)=0.3のパラメーターによってGAP分析(Needleman and Wunsch, 1970;GCGプログラム)により測定される。問い合わせ配列は、少なくとも15アミノ酸の長さであり、GAP分析は、少なくとも15アミノ酸の領域にわたる2つの配列に照準を合わせる。より好ましくは、問い合わせ配列は、少なくとも50アミノ酸の長さであり、GAP分析は、少なくとも50アミノ酸の領域にわたる2つの配列に照準を合わせる。より好ましくは、問い合わせ配列は、少なくとも100アミノ酸の長さであり、GAP分析は、少なくとも100アミノ酸の領域にわたる2つの配列に照準を合わせる。さらにより好ましくは、問い合わせ配列は、少なくとも250アミノ酸の長さであり、GAP分析は、少なくとも250アミノ酸の領域にわたる2つの配列に照準を合わせる。さらにより好ましくは、GAP分析は、それらの全体の長さにわたる2つの配列に照準を合わせる。ポリペプチドまたはポリペプチドのクラスは、基準ポリペプチドと同じ酵素活性もしくは異なる活性を有し、またはその活性を欠くこととしてもよい。好ましくは、ポリペプチドが、基準ポリペプチドの活性の少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%の酵素的な活性を有する。
【0172】
本明細書で使用される場合、「生物活性」フラグメントは、例えば、デサチュラーゼおよび/またはエロンガーゼ活性、または他の酵素活性を有するような、全長基準ポリペプチドの定義された活性を維持する、本明細書に定義されるポリペプチドの一部である。本明細書で使用される生物学的に活性な断片は、全長ポリペプチドを除外する。生物学的に活性な断片は、それらが定義された活性を維持する限り、あらゆるサイズ部分であり得る。好ましくは、生物学的に活性な断片は、全長タンパク質の少なくとも10%、少なくとも50%、少なくとも75%、または少なくとも90%の活性を維持する。
【0173】
定義されたポリペプチドまたは酵素に関し、本明細書で提供されるものよりもより高い%同一性の形態が、好ましい実施形態を包含することが理解されるであろう。よって、適用できる場合、最小の%同一性の形態に照らして、ポリペプチド/酵素は、関連して挙げられる配列番号と、少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも76%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるアミノ酸配列を含むことが好ましい。
【0174】
本明細書で定義されるポリペプチドのアミノ酸配列変異体/突然変異体は、本明細書に定義される核酸に適切なヌクレオチドの変更を導入することにより、または所望のポリペプチドのインビトロ合成により調製され得る。このような変異体/突然変異体は、例えば、アミノ酸内に、残基の欠失、挿入、または置換を含む。欠失、挿入、および置換の組み合わせは、最終的なペプチド産生物が所望の酵素活性を有することを提供する、最終的なコンストラクトに達するために作成され得る。
【0175】
突然変異体(変更された)ペプチドは、あらゆる公知技術を用いて調製され得る。例えば、本明細書に定義されるポリヌクレオチドは、Harayama (1998)により広く記載されるように、インビトロで突然変異誘発またはDNAシャッフリング技術に供され得る。突然変異/変更DNA由来の産生物は、例えば、それらがデサチュラーゼまたはエロンガーゼ活性を有する場合に、測定を行うための、本明細書に記載される技術を用いて容易にスクリーニングされ得る。
【0176】
アミノ酸配列の突然変異体をデザインする際、突然変異点の場所および突然変異の性質が、変更される特徴(複数を含む)に依存するであろう。突然変異の場所は、例えば、(1)まず保守的なアミノ酸の選択により、その後の達成された結果による革新的な選択により置換し、(2)標的残基を欠失させ、または(3)位置される場所に隣り合う他の残基を挿入することにより、個々にまたは連続して変更され得る。
【0177】
アミノ酸配列は、概して約1から15の残基の範囲、より好ましくは約1から10残基および典型的には約1から5の連続する残基を欠失する。
【0178】
置換突然変異体は、除去されるポリペプチド分子における少なくとも1つのアミノ酸残基およびその場所に挿入される異なる残基を有する。置換突然変異誘発の最も高い関心の場所は、天然に生じるデサチュラーゼまたはエロンガーゼの中で保存されない場所を含む。これらの場所は、好ましくは、酵素活性を維持するために、比較的保守的な態様で置換される。このような保守的な置換は、「例示的な置換」の項目のもとに、表3で示される。
【0179】
好ましい実施形態では、突然変異体/変異体ポリペプチドは、天然に生じるポリペプチドと比較される場合に、唯一、または、1もしくは2もしくは3もしくは4以下の保守的なアミノ酸変更を有する。保守的なアミノ酸の変更の詳細は、表3に提供される。当業者が認識しているように、このような微小な変更は、遺伝子組換え細胞で発現される場合に、ポリペプチドの活性を変更しないことが合理的に予測され得る。
【0180】
ポリペプチドは、当該技術分野で知られる方法に従って、天然のポリペプチドまたは遺伝子組換えポリペプチドの産生および回収を含む、種々の方法で産生され得る。一実施形態において、遺伝子組換えポリペプチドは、本明細書で定義される宿主細胞のような、ポリペプチドを産生するために有効な条件下でポリペプチドの発現を可能にする細胞を培養することにより産生される。ポリペプチドを産生するためにより好ましい細胞は、植物における細胞、特に、植物における種子である。
【0181】
ポリヌクレオチド
また、本発明は、例えば、遺伝子、単離ポリヌクレオチド、T‐DNA分子のようなキメラ遺伝子構築物、またはキメラDNAであることとしてもよい、ポリヌクレオチドを提供しおよび/または使用する。本明細書に定義される特定の活性を行うための、ゲノムまたは合成の起源、二本鎖または一本鎖のDNAまたはRNAであり、炭水化物、脂質、タンパク質、または他の材料との組み合わされることとしてもよい。用語「ポリヌクレオチド」は、本明細書で、用語「核酸分子」と互換的に使用される。「単離ポリヌクレオチド」で、天然のソースから得られる場合に、その天然状態で関連しもしくは結合されるポリヌクレオチド配列、または非天然で生じるポリヌクレオチドで、ポリヌクレオチド配列から分離された、ポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、単離ポリヌクレオチドは、天然に関連する、他の成分から、少なくとも60%フリー、より好ましくは少なくとも75%フリー、およびより好ましくは少なくとも90%フリーである。
【0182】
例示的な置換
【表3】
【0183】
一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、非天然起源である。非天然源のポリヌクレオチドの例は、(本明細書に記載される方法を用いることによるような)突然変異されたもの、およびタンパク質をコードするオープンリーディングフレームが、(本明細書に記載されるコンストラクトにおけるような)天然に関連していないプロモーターに操作可能に結合されるポリヌクレオチドを含むが、これらに限定されない。
【0184】
本明細書で使用される場合、用語「遺伝子」はその広い内容で解釈され、構造遺伝子の、転写領域および翻訳される場合にはタンパク質コード領域を含み、遺伝子の発現を伴う、両端に少なくとも約2kbの距離でコード領域と5’および3’の端部の両方で隣り合って配置される配列を含むデオキシリボヌクレオチド配列を含む。この点については、遺伝子は、遺伝子が「キメラ遺伝子」を指す場合における、異種性の制御シグナル、または所与の遺伝子と天然に関連する、プロモーター、エンハンサー、ターミネーション、および/またはポリアデニル化シグナルのような制御シグナルを含む。タンパク質コード領域の5’に配置され、およびmRNAに存在する配列は、5’の非翻訳配列を指す。タンパク質コード領域の下流または3’に配置され、およびmRNAに存在する配列は、3’の非翻訳配列を指す。用語「遺伝子」は、cDNAおよび遺伝子のゲノムの形態の両方を包含する。ゲノムの形態または遺伝子のクローンは、「イントロン」、または「介在領域」、または「介在配列」とよばれる非コード配列により中断されるコード領域を含む。イントロンは、核のRNA(hnRNA)内に転写される遺伝子のセグメントである。イントロンは、エンハンサーのような調節エレメントを含むこととしてもよい。イントロンは、核または転写一次産物から取り除かれまたは「切り出され」、よって、イントロンはメッセンジャーRNA(mRNA)転写物に存在しない。mRNAは、新生のポリペプチドにおける配列またはアミノ酸の順序を特定するための翻訳中に機能する。用語「遺伝子」は、本明細書に記載される本発明のタンパク質の全部または一部および上記のいずれか1つに対する相補的なヌクレオチド配列をコードする、合成または融合分子を含む。
【0185】
本明細書で使用される場合、「キメラDNA」または「キメラ遺伝子構築物(コンストラクト)」は、その天然の位置において天然のDNA分子ではないあらゆるDNA分子を指し、また、本明細書で「DNAコンストラクト」を指す。典型的には、キメラDNAまたはキメラ遺伝子は、調節および転写され、または天然でともに操作可能に結合されたことがみられない、つまり、互いに対して異種性である、タンパク質コード配列を含む。よって、キメラDNAまたはキメラ遺伝子は、異なるソース由来である調節配列およびコード配列、または同じソース由来である調節配列およびコード配列を含むが、天然でみられるものと異なる態様で配列されることとしてもよい。
【0186】
用語「内因性」は、例えば、研究下の植物と同じ発生上のステージでの非変更植物に通常存在しまたは産生される物質を指すために、本明細書で使用される。「内因性遺伝子」は、生物のゲノムにおけるその天然の場所での天然の遺伝子を指す。本明細書で使用される場合、「遺伝子組換え核酸分子」、「遺伝子組換えポリヌクレオチド」、またはこれらのバリエーションは、遺伝子組換えDNA技術により構成または変更された核酸分子を指す。用語「外来性ポリヌクレオチド」または「外因性ポリヌクレオチド」または「異種性ポリヌクレオチド」等は、実験的操作により、細胞のゲノム内に導入されたあらゆる核酸を指す。外来性または外因性遺伝子は、非天然生物内に挿入される遺伝子、天然の宿主内で新しい場所に導入される天然の遺伝子、またはキメラ遺伝子であることとしてもよい。「導入遺伝子」は、変換手順により、ゲノム内に導入された遺伝子である。用語「遺伝的に変更された」、「トランスジェニック」、およびそのバリエーションは、変換または形質導入により細胞内に遺伝子を導入すること、細胞における遺伝子を突然変異すること、およびこれらの作用がなされる細胞もしくは生物またはこれらの後代における遺伝子の調節の変更または調節することを含む。本明細書で使用される「ゲノム領域」は、導入遺伝子、または導入遺伝子の群(本明細書ではクラスターとしても言及される)が、細胞またはこれらの子孫内に導入された、ゲノム内の位置を指す。このような領域は、本明細書に記載される方法によるような、人の干渉により組み込まれたヌクレオチドのみを含む。
【0187】
ポリヌクレオチドの内容における用語「外因性」は、その天然の状態と比較して変化した量における、細胞に存在する場合のポリヌクレオチドを指す。一実施形態において、細胞は、ポリヌクレオチドを天然で含まない細胞である。しかしながら、細胞は、コードされたポリペプチドの変化した産生の量をもたらす、非内因性ポリヌクレオチドを含む細胞であることとしてもよい。本発明の外因性ポリヌクレオチドは、トランスジェニック(遺伝子組換え)細胞、または存在する場合には、細胞フリーの発現システムの他の成分から分離されていないポリヌクレオチド、および少なくともいくつかの他の成分からその後精製されるこのような細胞または細胞フリーの発現システムで産生されるポリヌクレオチドを含む。外因性ポリヌクレオチド(核酸)は、天然に存在するヌクレオチドの連続的な伸展であり得、またはシングルポリヌクレオチドを形成するために結合される異なるソース(天然由来および/または合成)由来の2つまたはそれ以上の連続的なヌクレオチドの伸展を含む。典型的には、このようなキメラポリヌクレオチドは、関心細胞におけるオープンリーディングフレームの転写を駆動するのに適するプロモーターに操作可能に結合する、本発明のポリペプチドをコードする少なくともオープンリーディングフレームを含む。
【0188】
本明細書で使用される場合、用語「異なる外因性ポリヌクレオチド」またはそのバリエーションは、各ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、少なくとも1つ、好ましくはそれ以上のヌクレオチドにより異なることを意味する。ポリヌクレオチドは、細胞内のタンパク質へと翻訳されるまたはされないこととしてもよい、RNAをコードする。実施例では、各ポリヌクレオチドは、異なる活性でタンパク質をコードすることが好ましい。別の実施例では、各外因性ポリヌクレオチドは、他の外因性ポリヌクレオチドと95%未満、90%未満、または80%未満同一である。好ましくは、外因性ポリヌクレオチドは、機能的なタンパク質/酵素をコードする。さらに、異なる外因性ポリヌクレオチドは非重複であり、各ポリヌクレオチドは、例えば、別の外因性ポリヌクレオチドと重複しない染色体外の転移核酸の別個の領域であることが好ましい。最小限で、各外因性ポリヌクレオチドは、転写開始および停止部位、並びに、指定されたプロモーターを有する。個々の外因性ポリヌクレオチドは、イントロンを含むこととしてもよく、または含まないこととしてもよい。
【0189】
定義されたポリヌクレオチドに関し、上記に提供されるよりも高い数値の%同一性は、好ましい実施形態に包含されることが理解されるであろう。よって、適用可能である場合には、最小の同一性%の数値に照らして、ポリヌクレオチドは、関連して挙げられる配列番号の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも91%、より好ましくは少なくとも92%、より好ましくは少なくとも93%、より好ましくは少なくとも94%、より好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも97%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、より好ましくは少なくとも99.1%、より好ましくは少なくとも99.2%、より好ましくは少なくとも99.3%、より好ましくは少なくとも99.4%、より好ましくは少なくとも99.5%、より好ましくは少なくとも99.6%、より好ましくは少なくとも99.7%、より好ましくは少なくとも99.8%、およびさらにより好ましくは少なくとも99.9%同一であるポリヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
【0190】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに対し、厳しい条件下で、選択的にハイブリダイズすることとしてもよい。本明細書で使用される場合、厳しい条件は、(1)ホルムアミドのような変性剤、例えば、0.1%(w/v)ウシ血清アルブミン、0.1%フィコール、0.1%ポリビニルピロリドン、750mM NaClでpH6.5とした50mMリン酸ナトリウムバッファ、75mMクエン酸ナトリウム入りの50%(v/v)ホルムアミドを42℃でハイブリダイゼーション中に採用する、または(2)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト液、超音波処理されたサーモンスパムのDNA(50g/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを0.2×SSCおよび0.1%SDSにおいて42℃で採用する、および/または(3)洗浄のための低イオン強度および高温、例えば、0.015M NaCl/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%SDSを50℃で採用するものである。
【0191】
本発明のポリヌクレオチドは、天然に生じる分子と比較される場合に、ヌクレオチド残基の欠失、挿入または置換である、1またはそれ以上の突然変異を有することとしてもよい。基準配列に対して突然変異を有するポリヌクレオチドは、天然起源(すなわち、天然のソースからの単離)または合成(例えば、上記のような核酸で部位特異的突然変異誘発またはDNAシャッフリングを行うことによる)のいずれかであり得る。よって、本発明のポリヌクレオチドは、天然起源または遺伝子組換え由来のいずれかであり得ることは明らかである。好ましいポリヌクレオチドは、公知技術で知られるような、植物細胞における翻訳のためにコドン最適化されるコード領域を有するものである。
【0192】
組み換えベクター
本発明の一実施形態には、組み換えベクターが含まれ、これは、宿主細胞にポリヌクレオチド分子を導入するのが可能ないずれかのベクターに挿入された、本明細書で定義される少なくとも1つのポリヌクレオチド分子を含む。組み換えベクターには発現ベクターが含まれる。組み換えベクターは、異種性ポリヌクレオチド配列、つまり、本明細書で定義されるポリヌクレオチド分子に、自然には隣接して見つからず、好ましくは、該ポリヌクレオチド分子(複数可)が由来した種以外の種由来であるヌクレオチド配列を含む。ベクターはRNAまたはDNAのいずれかであり得、一般的にプラスミドである。プラスミドベクターには通常、1つ以上のT−DNA領域を含む、たとえばpUC由来ベクター、pSK由来ベクター、pGEM由来ベクター、pSP由来ベクター、pBS由来ベクターまたは好ましくはバイナリーベクターといった、原核細胞における発現カセットの容易な選択、増幅および形質転換を提供する追加の核酸配列を含む。追加の核酸配列には、ベクターの自律複製を提供する複製開始点、好ましくは抗生物質または除草剤耐性をコードする選択マーカー遺伝子、核酸構築物にコードされる核酸配列または遺伝子を挿入するための複数の部位を提供する特有のマルチプルクローニング部位、および、原核および真核(特に植物)細胞の形質転換を強化する配列が含まれる。組み換えベクターには、本明細書で定義されるポリヌクレオチドを2つ以上、たとえば、3、4、5または6つの本明細書で定義されるポリヌクレオチドを組み合わせて含み得、好ましくは、それぞれのポリヌクレオチドが、対象細胞で動作可能な発現制御配列に操作可能に結合している本発明のキメラ遺伝子構築物を含み得る。本明細書で定義される2つ以上のポリヌクレオチド、たとえば、3、4、5または6つのポリヌクレオチドは、好ましくは単一組み換えベクターと共有結合し、好ましくは単一T−DNA分子内で共有結合し、これは、次いで、単一分子として細胞に導入され、本発明に従った組み換え細胞を形成し得、好ましくは、たとえばトランスジェニック植物の組み換え細胞のゲノムに組み込まれ得る。したがって、そのように結合したポリヌクレオチドは組み換え細胞または植物の子孫内に単一遺伝子座として一緒に受け継がれる。組み換えベクターまたは植物は、たとえば、各組み換えベクターが3、4、5または6つのポリヌクレオチドを含む、それぞれが複数のポリヌクレオチドを含むそのような組み換えベクターを2つ以上含み得る。
【0193】
本明細書で使用される「操作可能に結合」は、2つ以上の核酸(たとえば、DNA)断片間の機能的な関係性を指す。通常、転写調整要素(プロモーター)の転写された配列に対する機能的な関係性を指す。たとえば、プロモーターが適切な細胞でコード配列の転写を刺激または調節する場合、プロモーターは本明細書で定義されるポリヌクレオチドといったコード配列に操作可能に結合している。一般的に、転写配列に操作可能に結合するプロモーター転写調節要素は、転写配列に物理的に近接しており、すなわち、これらはシス作用性である。しかし、エンハンサーといったいくつかの転写調節要素は、それらが強化する転写対象であるコード領域に物理的に近接または隣接して位置する必要はない。
【0194】
複数のプロモーターが存在する場合、各プロモーターは独立して同一または異なっていてよい。
【0195】
キメラDNAまたは遺伝子構築物といった組み換え分子はまた、(a)発現された本明細書で定義するポリペプチドが、ポリペプチドを生産する細胞から分泌されるのを可能にするシグナルペプチド配列をコードする、または、たとえば細胞の小胞体(ER)内でのポリペプチドの保持もしくはプラスチドへの送達といった、発現ポリペプチドの局在化を提供する、1つ以上の分泌シグナルを含み、ならびに/または(b)融合タンパク質として核酸分子の発現を導く融合配列を含む。適切なシグナル断片の例には、本明細書で定義されるポリペプチドの分泌または局在化を指示することが可能な、任意のシグナル断片が含まれる。組み換え分子はまた、本明細書で定義される核酸分子の核酸配列を囲む、および/または、本明細書で定義される核酸分子の核酸配列内に、介在および/または非翻訳配列を含み得る。
【0196】
形質転換体の同定を助長するために、核酸構築物は、好ましくは、外来性または外因性ポリヌクレオチドとして、または、外来性または外因性ポリヌクレオチドに加えて、選択またはスクリーンマーカー遺伝子を含む。「マーカー遺伝子」は、マーカー遺伝子を発現する細胞に特有の表現型を分け与え、したがってそのような形質転換細胞がマーカーを有さない細胞から区別されることを可能にする遺伝子を意味する。選択マーカー遺伝子は、選択剤(たとえば、除草剤、抗生物質、放射、熱または非形質転換細胞を傷つける他の処理)に対する耐性に基づいて「選択」できる特色を提供する。スクリーンマーカー遺伝子(またはレポーター遺伝子)は、観察または試験を通して、すなわち、「スクリーニング」する(たとえば、非形質転換細胞には存在しないβ−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、GFPまたは他の酵素活性)ことで、同定できる特色を提供する。マーカー遺伝子および対象のヌクレオチド配列は結合していなくてもよい。植物細胞といった、選択した細胞と組み合わせて機能的である(すなわち、選択的である)限り、マーカーの実際の選択は重要ではない。
【0197】
細菌選択マーカーの例には、アンピシリン、エリスロマイシン、クロラムフェニコールまたはテトラサイクリン耐性、好ましくはカナマイシン耐性といった抗生物質耐性を与えるマーカーが挙げられる。植物形質転換体の選択のための例示的選択マーカーには、ハイグロマイシンB耐性をコードするhyg遺伝子;カナマイシン、パロモマイシン、G418への耐性を与えるネオマイシンホスフォトランスフェラーゼ(nptII)遺伝子;たとえば欧州特許第256223号に記載されるような除草剤由来のグルタチオンへの耐性を与えるラット肝臓のグルタチオン−S−トランスフェラーゼ遺伝子;たとえば国際公開第87/05327号に記載されるようなホスフィノトリシンといったグルタミンシンテターゼインヒビターへの耐性を過剰発現の際に与えるグルタミンシンテターゼ遺伝子、たとえば欧州特許第275957号に記載されるような選択剤ホスフィノトリシンへの耐性を与えるストレプトマイセス・ビリドクロモゲネス(Streptomyces viridochromogenes)由来のアセチルトランスフェラーゼ遺伝子、たとえばHinchee et al.(1988)が説明するようなN−ホスホノメチルグリシンへの耐性を与える5−エノールシキメート−3−リン酸シンターゼ(EPSPS)をコードする遺伝子、たとえば国際公開第91/02071号に記載されるビアラホスに対する耐性を与えるbar遺伝子;ブロモキシニルへの耐性を与える臭鼻菌由来のbxnといったニトリラーゼ遺伝子(Stalker et al.、1988);メトトレキセーへの耐性を与えるジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(Thillet et al.、1988年);イミダゾリノン、スルホニルウレアもしくは他のALS阻害化学物質への耐性を与える突然変異体アセト乳酸シンターゼ遺伝子(ALS)(欧州特許第154,204号);5−メチルトリプトファンへの耐性を与える突然変異したアントラニル酸シンターゼ遺伝子;または除草剤への耐性を与えるダラポンデハロゲナーゼ遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
【0198】
好ましいスクリーンマーカーには、様々な色素生産性基質が知られるβ−グルクロニダーゼ(GUS)酵素をコードするuidA遺伝子、緑色蛍光タンパク質遺伝子(Niedz et al.、1995)またはその誘導体;生物発光検知を可能にするルシフェラーゼ(luc)遺伝子(Ow et al.、1986)、および、当該技術分野で知られる他のものが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される「レポーター分子」は、タンパク質産物への参照によってプロモーターの決定を助長する分析的に同定可能なシグナルをその化学的性質で提供る分子を意味する。
【0199】
好ましくは、核酸構築物は植物細胞といった細胞のゲノム内に安定に取り込まれる。したがって、核酸は、分子がゲノム、好ましくはT−DNA分子の右および左境界配列に取り込まれることを可能にする適切な成分を含み得、または、構築物は、細胞の染色体に組み込まれ得る適切なベクター内に配置される。
【0200】
発現
本明細書で使用される発現ベクターは、宿主細胞を形質転換する、および、1つ以上の特定のポリヌクレオチド分子(複数可)の発現をもたらすことが可能なDNAベクターである。本発明の好ましい発現ベクターは、酵母菌および/または植物細胞の遺伝子発現を指示できる。本発明に有益な発現ベクターには、転写制御配列、翻訳制御配列、複製開始点といった調整配列および組み換え細胞に適合し、本発明のポリヌクレオチド分子の発現を制御する他の調整配列が含まれる。特に、本発明に有益なポリヌクレオチドまたはベクターには、転写制御配列が含まれる。転写制御配列は、転写の開始、伸長および終結を制御する配列である。特に重要な転写制御配列は、プロモーターおよびエンハンサー配列といった、転写開始を制御するものである。適切な転写制御配列には、本発明の組み換え細胞の少なくとも1つで機能し得る、いずれかの転写制御配列が含まれる。使用される調整配列の選択は、植物といった標的有機生物および/または対象の標的器官または組織による。そのような調整配列は、植物または植物ウイルスといった任意の真核生物から得られ得、または、化学的に合成され得る。そのような様々な転写制御配列が、当業者には公知である。特に好ましい転写制御配列は、植物またはその部分の使用によって、恒常的、または発生段階および/もしくは組織特異的のいずれかで植物の転写を指示することにおいて活性を有するプロモーターである。
【0201】
植物細胞の安定形質移入またはトランスジェニック植物の確立に適切な複数のベクターが、たとえば、Pouwels et al.、Cloning Vectors:A Laboratory Manual、1985,supp.1987;WeissbachおよびWeissbach、Methods for Plant Molecular Biology、アカデミック・プレス社(Academic Press)、1989;ならびにGelvin et al.、Plant Molecular Biology Manual、クルーヴァー・アカデミック・パブリッシャーズ社(Kluwer Academic Publishers)、1990で説明されている。通常、植物発現ベクターには、たとえば、5’および3’調整配列の転写制御下の、1つ以上のクローニングされた植物遺伝子および優勢な選択マーカーが含まれる。そのような植物発現ベクターには、プロモーター調整領域(たとえば、誘導性もしくは恒常的、環境的もしくは発達的に調整される、または、細胞もしくは組織特異的発現を制御する調節領域)、転写開始開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位、および/またはポリアデニル化シグナルも含まれ得る。
【0202】
植物細胞で活性を有する複数の恒常的プロモーターが説明されている。植物における恒常的発現に適切なプロモーターには、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)35S、サトウキビ桿状型ウイルス(sugarcane bacilliform virus)プロモーター、ツユクサ黄色斑葉ウイルス(comellina yellow mottle)、リブロース−1,5−ビス−リン酸カブロキシラーゼの小サブユニット由来の光誘導性プロモーター、イネ細胞質トリオースリン酸イソメラーゼ(rice cytosolic triosephosphate isomerase)プロモーター、アラビドプシスのアデニンホスホリポシルトランスフェラーゼプロモーター、イネアクチン1遺伝子プロモーター、マンノピンシンターゼプロモーターおよびオクトピンシンターゼプロモーター、Adhプロモーター、スクロースシンターゼプロモーター、R遺伝子複合プロモーターならびにクロロフィルα/β結合タンパク質遺伝子プロモーターが含まれるが、これらに限定されない。
【0203】
葉、種子、根または茎といった植物の供給源組織での発現のために、本発明で使用されるプロモーターはこれらの特定の組織で比較的高発現を有することが好ましい。この目的のために、組織または細胞特異的または強化性発現を伴う遺伝子のための複数のプロモーターから選択され得る。文献で報告されているそのようなプロモーターの例には、エンドウ由来の葉緑体グルタミンシンテターゼGS2プロモーター、コムギ由来の葉緑体フルクトース−1,6−ビホスファターゼプロモーター、ジャガイモ由来の核光合成ST−LS1プロモーター、シロイヌナズナ由来のセリン/トレオニンキナーゼプロモーターおよびグルコアミラーゼ(CHS)プロモーターが含まれる。リブロース−1,5−ビスリン酸カブロキシラーゼプロモーターおよびCabプロモーターも、光合成的に活発である組織で活性を有すると報告されている。
【0204】
環境的、ホルモン的、化学的および/または発達的シグナルに反応して調節される様々な植物遺伝子プロモーターはまた、植物細胞での遺伝子発現のためにも使用され得、これには、(1)熱、(2)光(たとえば、エンドウRbcS−3Aプロモーター、トウモロコシRbcSプロモーター);(3)アブシジン酸といったホルモン、(4)傷をつけること(たとえば、WunI);または(5)メチルジャスモン酸、サリチル酸、ステロイドホルモン、アルコール、Safeners(国際公開第97/06269号)といった化学物質によって調製されるプロモーターを含み、また(6)器官特異的プロモーターを利用するのも有益であり得る。
【0205】
本明細書で使用される「植物種子特異的プロモーター」またはその変化形は、他の植物組織と比較した際、植物の発育中の種子での遺伝子転写を優先的に指示するプロモーターを指す。ある実施形態では、種子特異的プロモーターは、植物の葉および/または茎と比べて、植物の発育中の種子で少なくとも5倍強大に発現され、好ましくは、他の植物組織と比較して発育中の種子の胚でより強大に発現される。好ましくは、プロモーターは発育中の種子の対象遺伝子の発現を指示するのみであり、および/または、葉といった植物の他の部分の対象遺伝子の発現はノーザンブロット分析および/またはRT−PCRでは検知不可能である。通常プロモーターは、種子の成長および発育の間に、特に種子での貯蔵化合物の合成および蓄積の段階の間に、遺伝子の発現を促進する。そのようなプロモーターは植物貯蔵器官全体または種皮もしくは子葉(複数可)といったその一部分のみで遺伝子発現を促進し得、好ましくは、胚、双子葉類植物の種子または単子葉類植物の種子の胚乳もしくはアリューロン層で遺伝子発現を促進し得る。
【0206】
種子特異的発現のために好まれるプロモーターには、i)デサチュラーゼおよびエロンガーゼといった、種子での脂肪酸生合成および蓄積に関わる酵素をコードする遺伝子のプロモーター、ii)種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子のプロモーター、およびiii)種子での炭水化物生合成および蓄積に関わる酵素をコードする遺伝子のプロモーターが含まれる。適切な種子特異的プロモーターは、アブラナナピン遺伝子プロモーター(米国第5,608,152号)、ビキア・ファバ(Vicia faba)USPプロモーター(Baumlein et al.、1991)、アラビドプシスオレオシンプロモーター(国際公開第98/45461号)、ファセオルス・ヴルガリス(Phaseolus vulgaris)ファゼオリンプロモーター(米国第5,504,200号)、ブラシカBce4プロモーター(国際公開第91/13980号)またはビキア・ファバ由来のレグミンLeB4プロモーター(Baumlein et al.、1992)およびトウモロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、イネなどといった単子葉植物での種子特異的発現を導くプロモーターである。注目すべき、適切なプロモーターは、オオムギlpt2またはlpt1遺伝子プロモーター(国際公開第95/15389号および国際公開第95/23230号)または国際公開第99/16890号に記載されるプロモーター(オオムギホルデイン遺伝子、イネグルテリン遺伝子、イネオリジン遺伝子、イネプロラミン遺伝子、コムギグリアジン遺伝子、コムギグルテリン遺伝子、トウモロコシゼイン遺伝子、カラスムギグルテリン遺伝子、ソルガムカシリン遺伝子、ライムギセカリン遺伝子のプロモーター)である。他のプロモーターには、Broun et al.(1998)、Potenza et al.(2004)、米国第20070192902号および米国20030159173号によって説明されるものが含まれる。ある実施形態では、種子特異的プロモーターが、胚、子葉(複数可)または胚乳といった種子の定義した部分で優先的に発現される。そのような特異的プロモーターの例には、FP1プロモーター(Ellerstrom et al.、1996)、エンドウレグミンプロモーター(Perrin et al.、2000)、マメフィトヘマグルチニンプロモーター(Perrin et al.、2000)、アマ2S貯蔵タンパク質をコードする遺伝子のためのコンリニン1およびコンリニン2プロモーター(Cheng et al.、2010)、シロイヌナズナ由来のFAE1遺伝子のプロモーター、セイヨウアブラナのグロブリン様タンパク質遺伝子のBnGLPプロモーター、リヌム・ウシタティスシムム由来のペルオキシレドキシン遺伝子のLPXRプロモーターが含まれるがこれらに限定されない。
【0207】
5’非翻訳リーダー配列は、本発明のポリヌクレオチドの異種性遺伝子配列を発現するよう選択されたプロモーター由来であり得、または、好ましくは生産される酵素のコード領域に関して異種性であり、および、所望される場合はmRNAの翻訳を増大するように特定的に改変され得る。導入遺伝子の発現を最適化するレビューに関しては、Koziel et al.(1996)を参照されたい。5’非翻訳領域は、適切な真核生物遺伝子、植物遺伝子(コムギおよびトウモロコシクロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子リーダー)または合成遺伝子配列由来の植物ウイルスRNA(とりわけタバコモザイクウイルス、タバコエッチウイルス、トウモロコシ萎縮モザイクウイルス、アルファルファモザイクウイルス)からも取得され得る。本発明は、非翻訳領域が、プロモーター配列に付随する5’非翻訳配列由来である構築物には制限されない。リーダー配列は、無関係のプロモーターまたはコード配列由来でもあり得る。本発明の文脈で役立つリーダー配列は、トウモロコシHsp70リーダー(米国5,362,865号および米国5,859,347号)およびTMVオメガ成分を含む。
【0208】
転写の終結は、対象のポリヌクレオチドにキメラベクター内で操作可能に結合した3’非翻訳DNA配列によって達成される。組み換えDNA分子の3’非翻訳領域は、アデニレートヌクレオチドのRNAの3’末端への添加を引き起こすように植物で機能するポリアデニル化シグナルを含む。3’非翻訳領域は、植物細胞で発現される様々な遺伝子から取得され得る。一般的に、この能力において、ノパリンシンターゼ3’非翻訳領域、エンドウ小サブユニットRubisco遺伝子の3’非翻訳領域、ダイズ7S種子貯蔵タンパク質遺伝子またはアマコンリニン遺伝子の3’非翻訳領域が使用される。アグロバクテリウム腫瘍誘発(Ti)プラスミド遺伝子のポリアデニレートシグナルを含む3’転写、非翻訳領域も適切である。
【0209】
組み換えDNA技術を用いて、たとえば宿主細胞内でのポリヌクレオチド分子のコピー数、これらポリヌクレオチド分子が転写される効率、結果として得られる転写物が翻訳される効率、および翻訳後修飾の効率を操作することで、形質転換ポリヌクレオチド分子の発現を向上し得る。本明細書で定義されるポリヌクレオチド分子の発現を増大するのに役立つ組み換え技術には、ポリヌクレオチド分子の1つ以上の宿主細胞染色体への組み込み、mRNAへの安定配列の添加、転写制御シグナル(たとえば、プロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または修飾、翻訳制御シグナル(たとえば、リボゾーム結合部位、シャイン・ダルガノ配列)の置換または修飾、宿主細胞のコドン使用頻度に対応するようにポリヌクレオチド分子を修飾すること、および転写物を不安定化する配列の欠失が含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
組み換え細胞
本発明はまた、本明細書で定義されるポリヌクレオチド、キメラ遺伝子構築物または組み換えベクターといった1つ以上の組み換え分子で形質転換した宿主細胞である、組み換え細胞、好ましくは組み換え植物細胞も提供する。組み換え細胞は、2または3つの組み換えベクター、または組み換えベクターおよび1つ以上の追加ポリヌクレオチドもしくはキメラDNAといった、その任意の組み合わせを含み得る。本発明の適切な細胞には、たとえば本明細書に記載されるポリペプチドまたは酵素をコードする分子といった、本発明のポリヌクレオチド、キメラDNAまたは組み換えベクターで形質転換され得る任意の細胞が含まれる。細胞は好ましくは、それによってLC−PUFAを生産するために使用されることができる細胞である。組み換え細胞は培養中の細胞、インビトロの細胞であり得、または、たとえば植物といった有機生物内にあり得、もしくは、たとえば種子もしくは葉といった器官内にあり得る。好ましくは細胞は、植物または植物部分内にあり、さらに好ましくは植物の種子内にある。
【0211】
ポリヌクレオチド(複数可)が導入される宿主細胞は、非形質転換細胞または少なくとも1つの核酸分子ですでに形質転換された細胞のいずれかであり得る。そのような核酸分子は、LC−PUFA合成に関係し得、または無関係であり得る。本発明の宿主細胞は、本明細書で定義されるタンパク質を内因的に(すなわち、自然に)生産することができるか、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチドで形質転換された後にのみ、そのようなタンパク質を生産することができるかのいずれかであり得、前者の場合、そこから生じる組み換え細胞は、ポリペプチドを生産する強化した能力を有する。ある実施形態では、発明の組み換え細胞は、長鎖多価不飽和脂肪酸を合成する強化した能力を有する。本明細書で使用される語句「長鎖多価不飽和脂肪酸を合成する強化された能力を伴う細胞」は、本発明の組み換え細胞を本発明のポリヌクレオチド(複数可)を欠如する宿主細胞と比較し、組み換え細胞が、天然の細胞よりも多くの長鎖多価不飽和脂肪酸脂肪酸を生産している、または、天然の細胞よりも大きい濃度のDHAといったLC−PUFA(他の脂肪酸と比べて)を生産している状態である、相対的な語句である。たとえば別の脂肪酸、脂質、デンプンといった炭水化物、RNA分子、ポリペプチド、医薬品または他の生成物といった、別の生成物を合成する強化した能力を伴う細胞は、対応する意味を有する。
【0212】
本発明の宿主細胞は、本明細書に記載されるタンパク質を少なくとも1つ生産することのできる任意の細胞であり得、細菌、真菌(酵母菌を含む)、寄生虫、節足動物、動物および植物細胞を含み得る。細胞は原核生物または真核生物の細胞であり得る。好まれる宿主細胞は、酵母菌および植物細胞である。好ましい実施形態では、植物細胞は種子細胞であり、特に種子の子葉または胚乳内の細胞である。一実施形態では、細胞は動物細胞または藻細胞である。植物細胞は、たとえば非ヒト動物細胞、非ヒト脊椎動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞といった任意の種類の動物の細胞であり得、または、魚類、甲殻類、無脊椎動物、昆虫などといった水生動物の細胞であり得る。細胞は発酵プロセスに適した有機生物の細胞であり得る。本明細書で使用される「発酵プロセス」という語句は、任意の発酵プロセスまたは発酵工程を含む任意のプロセスを指す。微生物の発酵の例としては、酵母菌といった真菌生物が含まれる。本明細書で使用される「酵母菌」には、サッカロマイセス(Saccharomyces)菌種、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールベルゲンシス、カンジダ(Candida)菌種、クルイベロミセス(Kluyveromyces)菌種、ピキア(Pichia)菌種、ハンゼヌラ(Hansenula)菌種、トリコデルマ(Trichoderma)菌種、リポミセス(lipomyces)菌種、リポマイセス・スターケイ(Lipomyces starkey)およびヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が含まれる。好ましい酵母菌には、サッカロマイセス菌種の株、およびとりわけ、サッカロマイセス・セレビシエが含まれる。
【0213】
トランスジェニック植物
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを1つ以上含むトランスジェニック植物といった、本発明の細胞を含む植物も提供する。本明細書で名詞として使用される「植物」という語句は、全体の植物を指すが、形容詞として使用される場合は、たとえば植物器官(たとえば、葉、茎、根、花)、単細胞(たとえば、花粉)、種子、植物細胞などといった、植物に存在する、植物から得られる、植物由来の、または植物に関係する任意の物質を指す。「植物部分」という語句は、その植物部分が本発明に従った脂質を合成する限り、たとえば葉または茎といった植物構造、根、花器官または構造、花粉、種子、胚、胚乳、胚盤または種皮といった種子部分、たとえば維管束組織といった組織、細胞および同植物の子孫を含む、植物DNAを含む全植物部分を指す。
【0214】
「トランスジェニック植物」「遺伝子改変植物」またはその変化形は、同一の種、変種または品種の野生型植物には見つからない遺伝子構築物(「導入遺伝子」)を含む植物を指す。本発明の文脈で定義されるトランスジェニック植物には、所望する植物または植物器官に本明細書で定義する脂質または少なくとも1つのポリペプチドの生産を引き起こす組み換え技術を用いて遺伝子的に改変した植物およびそれらの子孫が含まれる。トランスジェニック植物細胞およびトランスジェニック植物部分は対応した意味を有する。本明細書で言及される「導入遺伝子」は、バイオテクノロジーの分野での通常の意味を有し、組み換えDNAまたはRNA技術によって生産した、または変化させた遺伝子配列、および、本発明の細胞、好ましくは植物細胞に導入された遺伝子配列を含む。導入遺伝子には、導入遺伝子が導入された植物細胞と同一の種、変種もしくは品種であり得る、もしくは、異なる種、変種もしくは品種であり得る植物由来の遺伝子配列、または、植物細胞以外の細胞由来の遺伝子配列が含まれ得る。一般的に、導入遺伝子は、たとえば形質転換といったヒトの操作によって植物といった細胞内に導入されるが、当業者が理解する通り、いかなる方法を用いてもよい。
【0215】
「種子」および「穀粒」は、本明細書で同じ意味で使用される。「穀粒」は、収穫された穀粒といった成熟穀粒または植物上にまだあるが収穫される準備ができている穀粒を指すが、文脈によっては吸水または発芽後の穀粒も指し得る。成熟した穀粒または種子は一般的に、約18〜20%未満の含水量を有する。本明細書で使用される「発育中の種子」は、通常受精または開花後の植物の生殖構造に見つかる成熟前の種子を指すが、植物から単離された、成熟前のそのような種子も指し得る。
【0216】
本明細書で使用される「植物部分を得る」または「種子を得る」という語句は、それぞれ植物部分または種子を得る任意の方法を指し、野外または温室もしくは成長室といった容器の植物から植物部分または種子を回収すること、または、植物部分または種子の供給元からの購入もしくは受け取りを含む。種子は、植え付けに適切であり得、すなわち、発芽して後代植物を生産でき、または、もう発芽できないように処理されており、たとえば、食物もしくは飼料の適用または本発明の脂質の抽出に役立つ、粉砕、研磨または製粉した種子である。
【0217】
本明細書で使用される「植物貯蔵器官」という語句は、たとえばタンパク質、炭水化物、脂肪酸および/または油の形態での貯蔵エネルギーに特化した植物の一部分を指す。植物貯蔵器官の例としては、種子、果実、塊根および塊茎が挙げられる。本発明の好ましい植物貯蔵器官は種子である。
【0218】
本明細書で使用される「表現型的に正常」という語句は、非改変植物または植物器官と比較した際に、著しく低下した成長および生殖能力を有さない、本発明の遺伝子改変植物または植物器官、特に種子、塊茎または果実といった貯蔵器官を指す。ある実施形態では、表現型的に正常な遺伝子改変植物または植物器官は、植物貯蔵器官特異的プロモーターに操作可能に結合したサイレンシング抑制因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを含み、前記ポリヌクレオチドを含まない同質遺伝子植物または器官と実質的に同じである成長または生殖能力を有する。好ましくは、バイオマス、成長速度、発芽速度、貯蔵器官サイズ、種子サイズおよび/または生産される生存種子の数は、同一条件下で成長した前記外因性ポリヌクレオチドを有さない植物の90%未満である。この語句は、野生型植物とは違い得るが、たとえば実生葉のバレリーナ表現型といった、商業上の目的のための植物の有用性をもたらさない植物の特色は包含しない。
【0219】
本発明の実践における使用によって提供される、または本発明の実践における使用が企図される植物には、単子葉類および双子葉類の双方が含まれる。好ましい実施形態では、本発明の植物は、農作物(たとえば、穀類および豆類、トウモロコシ、コムギ、ジャガイモ、タピオカ、イネ、ソルガム、雑穀、キャッサバ、オオムギもしくはエンドウ)または他のマメ科植物である。植物を、食用根、塊茎、葉、茎、花または果実の生産のために成長させ得る。植物は、野菜または観賞植物であり得る。本発明の植物は:トウモロコシ(ゼア・メイズ)、キャノーラ(セイヨウアブラナ、ブラッシカ・ラパ種)、カラシナ(セイヨウカラシナ)、アマ(リヌム・ウシタティスシムム)、アルファルファ(メディカゴ・サティバ(Medicago sativa))、イネ(オリザ・サティバ)、ライムギ(セカレ・セレアレ(Secale cerale))、ソルガム(ソルガム・ビカラー、ソルガム・ヴルガレ)、ヒマワリ(ヘリアンタス・アヌス)、コムギ(トリチウム・アエスチブム(Tritium aestivum))、ダイズ(グリシン・マックス)、タバコ(ニコチアナ・タバカム)、ジャガイモ(ソラヌム・ツベロスム(Solanum tuberosum))、ピーナッツ(アラキス・ヒポゲア)、ワタ(ゴシピウム・ヒルスツム)、サツマイモ(ロプモエア・バタツス(Lopmoea batatus))、キャッサバ(マニホト・エスクレンタ(Manihot esculenta))、コーヒー(コフェア(Cofea)種)、ココナッツ(ココヤシ)、パイナップル(アナナ・コモスス(Anana comosus))、柑橘類樹木(シトラス(Citrus)種)、ココア(テオブロマ・カカオ(Theobroma cacao))、茶(カメリア・セネンシス(Camellia senensis))、バナナ(ムサ(Musa)種)、アボカド(ペルセア・アメリカナ)、イチジク(フィクス・カシカ(Ficus casica))、グアバ(プシディウム・グアジャバ(Psidium guajava))、マンゴー(マンギフェラ・インディカ(Mangifer indica))、オリーブ(オレア・エウロパエア)、パパイア(カリカ・パパヤ(Carica papaya))、カシュー(アナカルジウム・オクシデンタレ)、マカダミア(マカダミア・インテルグリフォリア)、アーモンド(プルヌス・アミグダルス)、テンサイ(ベタ・ブルガリス(Beta vulgaris))、オートムギまたはオオムギであり得る。
【0220】
好ましい実施形態では、植物は被子植物である。
【0221】
ある実施形態では、植物は油料種子植物であり、好ましくは油料種子農作物である。本明細書で使用される「油料種子植物」は、植物の種子の油の商業的生産のために使用される植物種である。油料種子植物は、アブラナ(たとえばキャノーラ)、トウモロコシ、ヒマワリ、ダイズ、ソルガム、アマ(アマニ)またはテンサイであり得る。さらに、油料種子植物は、他のブラシカ属、綿、ピーナッツ、ポピー、カラシナ、トウゴマ、ゴマ、ベニバナまたはナッツ生産植物であり得る。植物は、オリーブ、アブラヤシまたはココナッツといったその果実内で多量の油を生産する。本発明が適用され得る園芸植物は、レタス、エンダイブまたはキャベツ、ブロッコリーまたはカリフラワーを含むブラシカ属の野菜である。本発明は、タバコ、ウリ、ニンジン、イチゴ、トマトまたコショウにも適用され得る。
【0222】
さらに好ましい実施形態では、本発明のトランスジェニック植物を生産するために使用される非トランスジェニック植物は、特に種子内に、i)20%未満、10%未満または5%未満の18:2脂肪酸および/またはii)10%未満または5%未満の18:3脂肪酸を有する油を生産する。
【0223】
好ましい実施形態では、トランスジェニック植物は、その子孫が所望する表現型に関して分離しないように、導入されたそれぞれおよび全ての遺伝子(導入遺伝子)に対してホモ接合である。トランスジェニック植物は、導入された導入遺伝子(複数可)に対してヘテロ接合でもあり得、好ましくは、たとえばハイブリッド種子から成長したF1種子において、導入遺伝子と均一にヘテロ接合であり得る。そのような植物は当該技術分野では良く知られる雑種強勢といった利点を提供し得る。
【0224】
関連がある場合、トランスジェニック植物は、限定しないが、Δ6デサチュラーゼ、Δ9エロンガーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ6エロンガーゼ、Δ5デサチュラーゼ、ω3デサチュラーゼ、Δ4デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ、LPAAT、Δ17デサチュラーゼ、Δ15デサチュラーゼおよび/またはΔ12デサチュラーゼといったLC−PUFAの生産に関わる酵素をコードする追加の導入遺伝子も含み得る。これらの活性を1つ以上伴うそのような酵素の例は、当該技術分野では知られており、本明細書に記載されるものが含まれる。特定の例では、トランスジェニック植物は;
a)Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼおよびΔ6エロンガーゼ、
b)Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼおよびΔ9エロンガーゼ、
c)Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、Δ6エロンガーゼおよびΔ15デサチュラーゼ、
d)Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、Δ9エロンガーゼおよびΔ15デサチュラーゼ
e)Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ6デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、Δ6エロンガーゼおよびΔ17デサチュラーゼ、または、
f)Δ4デサチュラーゼ、Δ5デサチュラーゼ、Δ8デサチュラーゼ、Δ5エロンガーゼ、Δ9エロンガーゼおよびΔ17デサチュラーゼ、をコードする外因性ポリヌクレオチドを少なくとも含む。
【0225】
ある実施形態では、外因性ポリヌクレオチドは、ピシウム・イレグラレΔ6デサチュラーゼ、スラウストキトリドΔ5デサチュラーゼまたはエミリアナ・ハックスレイ(Emiliana huxleyi)Δ5デサチュラーゼ、フィスコミトレラ・パテンスΔ6エロンガーゼ、スラウストキトリドΔ5エロンガーゼまたはオストレオコッカス・タウリ(Ostreococcus tauri)Δ5エロンガーゼ、フィトフトラ・インフェスタンスω3デサチュラーゼまたはピシウム・イレグラレω3デサチュラーゼおよびスラウストキトリドΔ4デサチュラーゼである一連のポリペプチドをコードする。
【0226】
ある実施形態では、本発明の植物は、好ましくは少なくとも1,000または1,000,000個の実質的に同じ植物群として野外で成長し、または、少なくとも1ヘクタールの面積内で成長する。植え付け密度は、植物種、植物変種、気候、土壌条件、肥料の割合および当該技術分野で知られる他の要因によって異なる。たとえば、キャノーラは通常1ヘクタールあたり120〜150万の植物の植え付け密度で成長する。植物は当該技術分野で知られる通りに収穫され、これには植物の一刈り、地干し刈りおよび/または刈り取り、次いで、植物材料を脱穀および/または吹き分けて、しばしばもみ殻の形態である植物部分の残りの部分から種子を分離することが含まれ得る。または、種子は野外で単一のプロセス、すなわちコンバイニングによって収穫され得る。
【0227】
植物の形質転換
トランスジェニック植物を、A.Slater et al.、Plant Biotechnology−The Genetic Manipulation of Plants、オックスフォード大学出版局(2003)およびP.ChristouおよびH.Klee、Handbook of Plant Biotechnology、ジョン・ワイリー&サンズ社(2004)で広く説明されるものといった、当該技術では公知の技術を用いて生産できる。
【0228】
本明細書で使用される語句「安定に形質転換する」、「安定に形質転換した」という語句およびそれの変化形は、外因性核酸分子の存在を積極的に選択する必要なく、外因性核酸分子が細胞分裂の間に後代細胞へ移されるように、外因性核酸分子を細胞のゲノムに組み込むことを指す。安定的形質転換体またはその子孫は、染色体DNA上のサザンブロットまたはゲノムDNAのインサイツハイブリダイゼーションといった、当該技術分野では公知の任意の方法によって選択され得る。
【0229】
アングロバクテリウム媒介性導入は、植物細胞へ遺伝子を導入するのに広く適用可能なシステムであり、なぜなら、全体の植物組織もしくは植物器官または組織培養の外植片の細胞に、植物細胞ゲノムのDNAの一過性発現または安定的組み込みのいずれかで、DNAを導入することができるからである。DNAを植物細胞に導入する、アグロバクテリウム媒介性植物組み込みベクターの使用は、当該技術分野では良く知られており(たとえば、米国第5177010号、米国第5104310号、米国第5004863号または米国第5159135号を参照)、DNAを植物細胞に導入できるアグロバクテリウムまたは他の細菌を用いたフローラルディップ方法が含まれる。導入されるDNAの領域は境界配列によって定義され、介在DNA(T−DNA)が通常植物ゲノムに挿入される。さらに、T−DNAの組み込みは、ほとんど再配列をもたらさない比較的正確なプロセスである。アグロバクテリウム媒介性形質転換が効率的であるこれらの植物変種において、トランスジェニックの容易な、および、定義された性質のために、最善の方法である。好ましいアグロバクテリウム形質転換ベクターは、大腸菌ならびにアグロバクテリウムでの複製が可能であり、説明される好都合な操作を可能にする(Klee et al.、In:Plant DNA Infectious Agents、HohnおよびSchell編集、シュプリンガー・フェアラーク社(Springer−Verlag)、ニューヨーク、pp.179−203(1985)。
【0230】
使用され得る加速方法には、たとえば、微粒子銃などが含まれる。植物細胞に形質転換する核酸分子を送達するための方法の一例が、微粒子銃である。この方法は、Yang et al.、Particle Bombardment Technology for Gene Transfer、オックスフォード大学出版局、英国、オックスフォード(1994)によって評論されている。核酸で覆われ、推進力によって細胞内に送達され得る非生物粒子(微粒子)である。例示的な粒子には、タングステン、金、プラチナなどから成るものが含まれる。微粒子銃の特徴的な利点は、それが再現可能的に単子葉類を形質転換する効果的な方法であることに加え、プロトプラストの単離またはアグロバクテリウム感染の感受性のいずれも必要でないことである。
【0231】
別の代替実施形態では、プラスチドは安定に形質転換され得る。より高等の植物におけるプラスチド形質転換に関して開示される方法には、選択マーカーを含むDNAのパーティクル・ガン・デリバリーおよび相同組み換えを通してDNAをプラスミドゲノムに標的すること(米国第5,451,513号、米国第5,545,818号、米国第5,877,402号、米国第5,932479号および国際公開第99/05265号)が含まれる。
【0232】
細胞形質転換の他の方法も用い得、これらには、花粉への直接DNA導入、植物の生殖器官へのDNAの直接注入、または、未成熟胚の細胞へのDNAの直接注入に続く乾燥した胚の再水和による、DNAの植物への導入が含まれるがこれらに限定はされない。
【0233】
単一の植物プロトプラスト形質転換体または様々な形質転換外植片からの植物の再生、発育および栽培は当該技術分野では良く知られている(Weissbach et al.、In:Methods for Plant Molecular Biology、アカデミック・プレス社、カリフォルニア、サンディエゴ(1988)。この再生および成長プロセスには通常、これらの個別化した細胞を、根付いた小植物の段階の一般的な胚発育の段階を通して培養し、形質転換細胞を選択する工程が含まれる。トランスジェニック胚および種子は同様に再生される。その後、得られる根付いたトランスジェニック芽を、土壌といった適切な植物成長培地に播く。
【0234】
外来性、外因性遺伝子を含む植物の発育または再生は当該技術分野で良く知られている。好ましくは、再生される植物は自家受粉してホモ接合トランスジェニック植物を提供する。そうでなければ、再生した植物から得られる花粉を、作物栽培学的に重要な系統の、種子から成長した植物に交雑させる。逆に、これらの重要な系統の植物の花粉を用いて、再生植物を受粉させる。当業者には良く知られている方法を用いて、所望する外因性核酸を含む本発明の導入遺伝子植物を栽培する。
【0235】
トランスジェニック細胞および植物の導入遺伝子の存在を確認するために、当業者には公知の方法を用いてポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅またはサザンブロット分析を実施し得る。導入遺伝子の発現産物は、産物の性質によって様々な方法のいずれかで検知され得、ウェスタンブロットおよび酵素アッセイを含む。トランスジェニック植物が一度得られたら、それらは成長して所望する表現型を有する植物組織または部分を生産し得る。植物組織または植物部分を、収穫および/または種子を回収し得る。種子は、所望する特徴を有する組織または部分を有する追加の植物を成長させるための供給源として役立ち得る。
【0236】
アグロバクテリウムまたは他の形質転換方法を用いて形成したトランスジェニック植物は通常、1つの染色体上に単一遺伝子座を含む。そのようなトランスジェニック植物を、添加した遺伝子(複数可)に対してヘミ接合であると呼び得る。さらに好ましいのは、添加した遺伝子(複数可)に対してホモ接合であるトランスジェニック植物であり;すなわち、染色体ペアの各染色体上の同一座に1つの遺伝子である、2つの添加遺伝子を含むトランスジェニック植物である。ホモ接合トランスジェニック植物は、ヘミ接合トランスジェニック植物を自家受精させ、生産された種子のいくつかを発芽させ、得られた植物を対象遺伝子に関して分析することで、得ることができる。
【0237】
独立して分離する2つの外因性遺伝子または座を含む、2つの異なるトランスジェニック植物も交雑(交配)して双方の遺伝子または座のセットを含む子孫を生産し得るということも理解される。適切なF1子孫の自家受粉は、双方の外来性遺伝子または座に対してホモ接合な植物を生産し得る。親植物とのもどし交雑および非トランスジェニック植物との外交配も、栄養繁殖と同様に、企図される。異なる特質および作物に一般的に使用される他の交雑方法の記述がFehr、In:Breeding Methods for Cultivar Development、Wilcox J.編集、米国農学会(American Society of Agronomy)、ウィスコンシン、マディソン(1987)に見られる。
【0238】
外因性RNA量および安定発現の強化
サイレンシング抑制因子
ある実施形態では、本発明の細胞、植物または植物部分は、サイレンシング抑制因子タンパク質をコードする外因性ポリヌクレオチドを含む。
【0239】
転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)は、細胞およびウイルスmRNAの双方を分解のためにターゲットし得る、ヌクレオチド配列特異的防御メカニズムである。PTGSは、外来性(異種性)または内因性DNAで安定にまたは一過性に形質転換した植物または真菌で起こり、導入した核酸との配列相同性を有するRNA分子の蓄積の低下につながる。
【0240】
サイレンシング抑制因子と対象の導入遺伝子との同時発現が、導入遺伝子から転写された細胞内に存在するRNAの量を増大することが広く企図されている。このことがインビトロの細胞に関して正しいと証明されている一方で、多くの全植物同時発現実験では顕著な副作用が観察されている。さらに具体的には、Mallory et al.(2002)、Chapman et al.(2004)、Chen et al.(2004)、Dunoyer et al.(2004)、Zhang et al.(2006)、Lewsey et al.(2007)およびMeng et al.(2008)が説明する通り、サイレンシング抑制因子を発現する植物は、一般的に恒常的プロモーター下では、それらが商業上の生産には有効ではない程度まで、しばしば表現型的に異常である。
【0241】
最近、植物またはその部分の種子へのサイレンシング抑制因子の発現を制限することで、RNA分子量が増大し得、および/またはRNA分子量が多くの世代にわたって安定化し得ることが発見されている(国際公開第2010/057246号)。本明細書で使用される「サイレンシング抑制因子タンパク質」、つまりSSPは、特に初めに形質転換した植物から繰り返された世代にわたって、植物細胞の異なる導入遺伝子からの発現産物の量を強化する植物細胞で発現され得る任意のポリペプチドである。ある実施形態では、SSPはウイルス性サイレンシング抑制因子またはその変異体である。多くの数のウイルス性サイレンシング抑制因子が当該技術分野で知られており、P19、V2、P38、Pe−PoおよびRPV−P0を含むがこれらに限定しない。ある実施形態では、ウイルス性サイレンシング抑制因子は、配列番号53から57のいずれか1つで提供される配列、その生物学的に活性な断片、または、配列番号53から57のうち1つ以上に少なくとも50%相同であり、サイレンシング抑制因子としての活性を有するアミノ酸配列を有するアミノ酸を含む。
【0242】
本明細書で使用される「発現を安定する」、「安定に発現された」「安定な発現」およびそれらの変化形は、繰り返される世代、たとえば少なくとも3、少なくとも5または少なくとも10の世代にわたって、サイレンシング抑制因子をコードする外因性ポリヌクレオチドを欠如する同質遺伝子植物と比較した際に、RNA分子の量が後代植物において実質的に同じまたはより高いことを指す。しかし、この語句(複数可)は、繰り返される世代にわたって、以前の世代と比較してRNA分子量の多少の損失、たとえば1世代あたり少なくとも10%の損失がある可能性を排除しない。
【0243】
抑制因子は任意の供給源から選択され得る、たとえば、植物、ウイルス、哺乳動物などである。抑制因子が得られるウイルスおよびそれぞれの特定ウイルスからの抑制因子に関するタンパク質(たとえばB2、P14など)またはコード領域指定の一覧表に関しては国際公開第2010/057246号を参照されたい。抑制因子の複数のコピーが使用され得る。異なる抑制因子が一緒に使用され得る(たとえば、タンデムで)。
【0244】
RNA分子
植物種子に発現されることが望ましいRNA分子は実質的にどれもサイレンシング抑制因子と同時発現され得る。コードされたポリペプチドは、油、デンプン、炭水化物、栄養素などの代謝に関連し得、または、タンパク質、ペプチド、脂肪酸、脂質、ろう、油、デンプン、砂糖、炭水化物、風味、匂い、毒素、カロテノイド、ホルモン、ポリマー、フラボノイド、貯蔵タンパク質、フェノール酸、アルカロイド、リグニン、タンニン酸、セルロース、糖タンパク質、糖脂質などの合成、好ましくはTAGの生合成または構築に関与し得る。
【0245】
特定の実施例では、作製した植物は、たとえば、キャノーラまたはヒマワリであるブラシカ属、ベニバナ、アマ、綿、ダイズ、カメリナまたはトウモロコシといった植物での油生産のための酵素の量を増大した。
【0246】
生産されるLC−PUFAの量
組み換え細胞または種子といった植物部分で生産されるLC−PUFAまたはLC−PUFA(複数)の組み合わせの量は重要である。量は、特定のLC−PUFA、または、たとえば、ω3LC−PUFAもしくはω6LC−PUFAもしくはVLC−PUFAといった関連LC−PUFAのグループ、または、当該技術分野で知られる方法によって決定され得る他のものである脂肪酸の合計の組成(パーセントで)として表され得る。量は、LC−PUFA含有量としても表され得、たとえば、組み換え細胞を含む材料の乾燥重量におけるLC−PUFAのパーセンテージ、たとえば、LC−PUFAである種子の重量のパーセンテージである。油料種子で生産されるLC−PUFAは、LC−PUFA含有量の面で見れば、油生産のためには育てられない野菜または穀物においてよりも著しく高い可能性があることがわかるが、双方は類似したLC−PUFA組成を有し得、双方はヒトまたは動物の消費のためのLC−PUFAの供給源として使用され得る。
【0247】
LC−PUFA量は当該技術分野で知られる任意の方法で測定され得る。好ましい方法では、総脂質を細胞、組織または有機生物から抽出し、ガスクロマトグラフィー(GC)による分析の前に脂肪酸をメチルエステルに変換する。そのような技術は実施例1にて説明される。クロマトグラムでのピーク位置を使用して、それぞれの特定の脂肪酸を同定し得、各ピーク下の面積を積分して量を測定する。別で指示されない限り、本明細書で使用される、試料中の特定の脂肪酸のパーセンテージは、クロマトグラムでの脂肪酸の合計面積のパーセンテージとして、その脂肪酸のピーク下の面積として決定される。これは、実質的に重量パーセンテージ(w/w)に対応する。脂肪酸の同一性をGC−MSで確認し得る。総脂肪酸を、当該技術分野で知られる技術で分離し、TAG分画といった分画を精製し得る。たとえば、薄膜クロマトグラフィー(TLC)を分析的規模で実施し、特にTAGの脂肪酸組成を決定するために、DAG、アシル−CoAまたはリン脂質といった他の脂質分画からTAGを分離し得る。
【0248】
一実施形態では、抽出した脂質の脂肪酸のARA、EPA、DPAおよびDHAの合計量は、細胞の総脂肪酸の約7%と約25%との間である。さらなる実施形態では、細胞の総脂肪酸は、1%未満のC20:1を有する。好ましい実施形態では、細胞の抽出可能TAGは、本明細書で言及される量で脂肪酸を含む。本明細書に記載される脂質を定義する特色の可能な組み合わせもそれぞれ包含される。
【0249】
組み換え細胞、植物または種子といった植物部分でのLC−PUFAの生産量は、本明細書で「転換効率」または「酵素的効率」とも呼ばれる、特定の基質脂肪酸から1つ以上の産物脂肪酸への転換パーセンテージとしても表され得る。このパラメーターは、細胞、植物、植物部分または種子から抽出される脂質における脂肪酸組成に基づいており、すなわち、1つ以上の基質脂肪酸(それから生じる他の脂肪酸全てを含む)として形成されたLC−PUFA(それから生じる他のLC−PUFAを含む)の量である。転換パーセンテージの一般式は:100×(産物LC−PUFAをおよびそれから生じる全ての産物のパーセンテージの合計)/(基質脂肪酸およびそれから生じる全ての産物のパーセンテージの合計)である。たとえばDHAに関しては、これはDHAの量(脂質の総脂肪酸含有量におけるパーセンテージとして)の、基質脂肪酸(たとえば、OA、LA、ALA、SDA、ETAまたはEPA)およびその基質から生じたDHA以外の全ての産物の量に対する比として表され得る。転換パーセンテージまたは転換の効率は、経路での単一の酵素的工程、または、経路の一部分もしくは全体に関して表され得る。
【0250】
特定の転換効率が、次の式に従って本明細書で算出される:
1.OAからDHA=100×(%DHA)/(OA、LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
2.LAからDHA=100×(%DHA)/( LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
3.ALAからDHA=100×(%DHA)/ ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
4.EPAからDHA=100×(%DHA)/(EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
5.DPAからDHA(Δ4デサチュラーゼ効率)=100×(%DHA)/(DPAおよびDHAの合計%)。
6.Δ12デサチュラーゼ効率=100×(LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)/(OA、LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
7.ω3デサチュラーゼ効率=100×(ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)/(LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
8.OAからALA=100×(ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)/(OA、LA、GLA、DGLA、ARA、EDA、ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
9.Δ6デサチュラーゼ効率(ω3基質ALA上)=100×(SDA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)/(%ALA、SDA、ETrA、ETA、EPA、DPAおよびDHA)。
10.Δ6エロンガーゼ効率(ω3基質SDA上)=100×(ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)/(SDA、ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
11.Δ5デサチュラーゼ効率(ω3基質ETA上)=100×(EPA、DPAおよびDHAの合計%)/(ETA、EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
12.Δ5エロンガーゼ効率(ω3基質EPA上)=100×(DPAおよびDHAの合計%)/(EPA、DPAおよびDHAの合計%)。
【0251】
本発明の脂質、好ましくは種子油の脂肪酸組成を、総ω6脂肪酸:総ω3脂肪酸または新ω6脂肪酸:新ω3脂肪酸のいずれかに関する、総脂肪酸含有量のω6脂肪酸:ω3脂肪酸の比によっても特徴づける。総ω6脂肪酸、総ω3脂肪酸、新ω6脂肪酸および新ω3脂肪酸という語句は、本明細書で定義される意味を有する。本明細書で例証する方法で、細胞、植物、植物部分または種子から抽出された脂質での脂肪酸組成から比を算出する。脂質においてω6脂肪酸よりもω3脂肪酸の量を多く有することが望まれ、したがって、1.0未満のω6:ω3比が好まれる。0.0の比は、定義されるω6脂肪酸の完全な不在を示し;0.03の比が実施例6に記載される通り、達成された。そのような低い比は、ω3デサチュラーゼ、特に、本明細書で例示されるピキア・パストリスω3デサチュラーゼといった真菌ω3デサチュラーゼと、ω3基質に好みを示すΔ6デサチュラーゼとの併合使用を通して達成され得る。
【0252】
種子の重量あたりのLC−PUFAの収率も、種子中の総油含有量および油中の%DHAに基づいて算出され得る。たとえば、キャノーラ種子の油含有量が約40%(w/w)で、油の総脂肪酸含有量の約12%がDHAである場合、種子のDHA含有量は、約4.8%または種子1グラムあたり約48mgである。実施例2で説明する通り、約9%のDHAを有し、キャノーラよりも低い油含有量を有するアラビドプシス種子のDHA含有量は、1g種子あたり約25mgであった。約7%のDHA含有量では、キャノーラ種子またはカメリナ・サティバ種子は種子1グラムあたり約28mgのDHA含有量を有する。したがって、本発明は1グラム種子あたり約28mgのDHAを少なくとも含む、セイヨウアブラナ、セイヨウカラシナおよびカメリナ・サティバ植物ならびにそれらから得られる種子を提供する。種子は、ドライダウンした後の収穫した成熟種子の標準通りの含水量を有する(4〜15%水分)。本発明はまた、種子を得ることおよびその種子から油を抽出することを含む、油を得るためのプロセス、ならびに、その油の使用、ならびに、本発明に従う植物から種子を収穫することを含む、種子を得る方法も提供する。
【0253】
1ヘクタールあたりに生産されるDHA量も、1ヘクタールあたりの種子収率が分かっていれば、算出可能であり、または、推定可能である。たとえば、オーストラリアのキャノーラは通常、1ヘクタールあたり約2.5トンの種子をもたらし、これは、40%の油含有量では約1000kgの油をもたらす。総油中12%のDHAでは、これは、1ヘクタールあたり約120kgのDHAを提供する。油含有量が50%減った場合でも、1ヘクタールあたり約60kgのDHAを提供する。
【0254】
現在までの証拠によって、酵母菌または植物に異種性で発現されるいくつかのデサチュラーゼは、いくつかのエロンガーゼとの組み合わせで比較的低い活性を有することが提唱されている。LC−PUFA合成における基質として脂肪酸のアシル−CoA形態を使用する能力を有するデサチュラーゼを提供することで、これを緩和し得、これは、組み換え細胞、特に植物細胞で、好都合であると考えられる。効率的なDHA合成に特に好都合な組み合わせは、たとえばピキア・パストリスω3デサチュラーゼ(配列番号12)といった真菌ω3デサチュラーゼと、たとえば、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号13)または少なくとも95%のアミノ酸配列相同性を有するその変異形といった、ω3アシル基質に対して好みを有するΔ6デサチュラーゼとの組み合わせである。
【0255】
本明細書で使用される「実質的に含まない」という語句は、その組成物が(たとえば脂質または油)が、定義される成分をほとんど(たとえば、約0.5%未満、約0.25%未満、約0.1%未満もしくは約0.01%未満)または一切含まないことを意味する。ある実施形態では、「実質的に含まない」は、その成分が、通例の分析的技術を用いて検知不能であること意味し、たとえば、特定の脂肪酸(ω6ドコサペンタエン酸といった)は実施例1で説明されるガスクロマトグラフィーを用いて検知され得ない。
【0256】
油の生産
当該技術分野で日常的に実施される技術を用いて、本発明の細胞、植物、種子などによって生産される油を抽出、プロセスおよび分析し得る。通常、植物種子を、調理、プレスおよび抽出して、粗油を生産し、これを次いで、脱ガム、精製、脱色、脱臭する。一般的に、種子を粉砕する技術は当該技術分野では公知である。たとえば、油料種子に水をスプレーして含水量をたとえば8.5%まで上げることで油料種子を和らげ得、隙間設定が0.23から0.27mmの滑らかなローラーを用いてフレーク状にし得る。種子の種類によっては、粉砕前に水を加えない可能性がある。熱の適用は酵素を非活性化させ、細胞破裂を助長し、油の液滴を合体させ、タンパク質粒子を凝集し、これらはすべて抽出プロセスを助長する。
【0257】
ある実施形態では、種子油の大部分は、スクリュープレスを経る経路によって放出される。スクリュープレスから排除されたケイクを次いで、たとえばヘキサンと一緒に、熱トレーシングカラムを用いて溶媒抽出する。または、プレス操作によって生産された粗油を、溝付きのワイヤー排水蓋を有する沈殿タンクを通過させ、プレス操作の間に油と一緒に現れた固体を除き得る。精製油をプレートおよびフレームフィルターを通過させて、いずれの残存している固体微粒子を除去し得る。望ましい場合は、抽出プロセスから回収される油を精製油と一緒にまとめて、混合粗油を生産し得る。
【0258】
溶媒を一度粗油から取り除くと、プレスおよび抽出した部分をまとめ、通常の油プロセシング手順に供する。本明細書で使用される「精製」という語句は、本発明の脂質または油との関連で使用される際は、抽出した脂質または油が、脂質/油成分の純度を高める1つ以上のプロセシング工程に供せられることを通常意味する。たとえば精製工程には、抽出した油を:脱ガム、脱臭、脱色、乾燥および/または分画化することから成る群のうち1つ以上または全てが含まれ得る。しかし、本明細書で使用される「精製」という語句には、総脂肪酸含有量のパーセンテージとしてのDHA含有量を増大するための、エステル交換反応プロセスまたは本発明の脂質または油の脂肪酸組成を変化する他のプロセスは含まれない。つまり、精製脂質または油の脂肪酸組成は、実質的に非精製脂質または油の脂肪酸組成と実質的に同じである。
【0259】
脱ガム
脱ガムは、油の精製において初期の工程であり、その第1の目的は抽出した総脂質のうちおよそ1〜2%で存在し得るリン脂質の大部分を油から取り除くことである。通常リン酸を含む約2%の水を70〜80℃で粗油に添加すると、微量金属および色素を伴う、大部分のリン脂質の分離につながる。取り除かれた難溶性物質は、主にリン脂質およびトリアシルグリセロールの混合物であり、レシチンとしても知られる。濃縮したリン酸を粗種子油に添加することで脱ガムを実施し、非水和性ホスファチドを水和性形態に変換し得、および、存在する少量の金属をキレート化し得る。遠心分離によって、ガムを種子油から分離する。
【0260】
アルカリ精製
アルカリ精製は、粗油を処理するための精製プロセスの1つであり、時折中和とも呼ばれる。アルカリ精製は、通常脱ガムに続き、脱色の前に行われる。脱ガムに続いて、種子油を十分な量のアルカリ溶液の添加によって処理し、全ての脂肪酸およびリン酸を滴定し、こうして形成されたセッケンを取り除く。適切なアルカリ性材料には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウムおよび水酸化アンモニアが含まれる。このプロセスは通常室温で実行され、遊離脂肪酸分画を取り除く。セッケンを遠心分離またはセッケンのための溶媒への抽出によって取り除いて、中和した油を水で洗う。必要であれば、油中の任意の余分なアルカリを、塩酸または硫酸といった適切な酸で中和し得る。
【0261】
脱色
脱色は、窒素もしくは蒸気と、または、真空で作用させることで、漂白土(0.2〜2.0%)の存在下および酸素の不在下で、油を90〜120℃で10〜30分間加熱する精製プロセスである。油プロセシングにおけるこの工程は、所望しない色素(カロテノイド、クロロフィル、ゴシポールなど)を取り除くように設計され、該プロセスはまた、酸化産物、微量金属、硫黄化合物および微量のセッケンも取り除く。
【0262】
脱臭
脱臭は、高温度(200〜260℃)および低圧(0.1〜1mmHg)での油および脂肪の処理である。これは通常、蒸気を、種子油100mlあたり、約0.1ml/分の速度で種子油に導入することで達成される。30分のスパージング後、種子油を真空下で放冷する。通常、種子油をガラス容器に移し、冷蔵下で保管する前に、アルゴンで洗い流す。この処理によって、種子油の色が改善され、任意の残存している遊離脂肪酸、モノアシルグリセロールおよび酸化産物を含む、揮発性物質または臭気化合物の大部分が取り除かれる。
【0263】
脱ろう
脱ろうは、周囲以下の温度での結晶化によって、油および脂肪を固体(ステアリン)および液体(オレイン)分画に分離するために、油の商業上の生産において時折使用されるプロセスである。これは本来、固体フリー生成物を生産するために綿実油に適用された。通常は油の飽和脂肪酸含有量を低下するために使用される。
【0264】
エステル交換反応
エステル交換反応は、初めに脂肪酸をTAGから自由脂肪酸または脂肪酸エステルのいずれか、通常は脂肪酸メチルエステルまたはエチルエステルとして放出することで、脂肪酸をTAG内または間で交換する、または、その脂肪酸を別のアルコールに移してエステルを形成するプロセスである。分画化プロセスと組み合わせる場合、エステル交換反応を用いて脂質の脂肪酸組成を改変し得る(Marangoni et al.、1995)。セステル交換は、化学的(たとえば、強酸または塩基触媒性)または酵素的方法のいずれかを用い得、後者はTAG上の脂肪酸に関して位置特異的(sn−1/3またはsn−2特異的)であり得るリパーゼを用い、または、他よりもいくつかの脂肪酸に対して好みを有する(Speranza et al.、2012)。油中のLC−PUFAの濃度を増大するための脂肪酸分画化は、たとえば、冷凍結晶化、尿素を用いた複合体形成、分子蒸留、超臨界流体抽出および銀イオン錯体形成といった、当該技術で公知の方法のいずれかによって達成され得る。尿素との複合体結成はその油中の飽和および一価不飽和脂肪酸の量を減らす際の単純性および効率性のために好ましい方法である(Gamez et al.、2003)。始めに、酸または塩基触媒性反応条件下での加水分解によって、油のTAGを、しばしば脂肪酸エステルの形態であるそれらを構成する脂肪酸に分け、それによって、過剰なアルコールが用いられ、形成されたアルキルエステルおよび、さらに形成されたグリセロールの分離を可能にする、1molのTAGが少なくとも3molのアルコール(たとえば、エチルエステルにはエタノール、メチルエステルにはメタノール)と反応し、または、リパーゼによって、油のTAGを、しばしば脂肪酸エステルの形態であるそれらを構成する脂肪酸に分ける。その処理によって脂肪酸組成が通常は改変した、これらの遊離脂肪酸または脂肪酸エステルを次いで、複合体形成のための尿素のエタノール溶液と混合する。飽和および一価不飽和脂肪酸は容易に尿素と複合体形成し、冷却の際に結晶化し、続いて濾過によって取り除かれ得る。非尿素と複合した分画はこうしてLC−PUFAに富んでいる。
【0265】
家畜飼料
本発明には、家畜飼料として使用され得る組成物を含む。本発明のために、「家畜飼料」には、体内に取り込まれた際に(a)組織に栄養分を与え、もしくは組織を築く、またはエネルギーを供給するために役立つ;および/または(b)十分な栄養状態または代謝機能を維持、再建または支持する、ヒトまたは動物の消費のための任意の食物または調製物が含まれる。本発明の家畜飼料には、たとえば、本発明の調製粉乳および種子ミールといった、乳児および/または小さな子供にとって栄養のある組成物が含まれる。
【0266】
本発明の家畜飼料は、たとえば、本発明の細胞、本発明の植物、本発明の植物部分、本発明の種子、本発明の抽出物、本発明の方法の生成物、本発明の発酵プロセスの産物、または適切な担体(複数可)を伴う組成物を含む。「担体」という語句は、その広義で使用され、栄養価を含み得るまたは含み得ない任意の成分を包含する。当業者には理解される通り、担体は、家畜飼料を消費する有機生物に有害な影響を有さないような、家畜飼料での使用に適している(または十分低い濃度で使用される)必要がある。
【0267】
本発明の家畜飼料は、本明細書で開示される方法、細胞または植物の使用で直接もしくは間接的に生産される油、脂肪酸エステルもしくは脂肪酸を含む。組成物は、固体または液体の形態のいずれかであり得る。さらに、組成物には、食用多量養素、タンパク質、炭水化物、ビタミンおよび/またはミネラルが、特定の使用に望ましい量で含まれ得る。これら成分の量は、組成物が、正常な個体への使用を意図されているのか、または代謝疾患などを患う個体など、特化したニーズを有する個体への使用を意図されているのかによって、異なるであろう。
【0268】
栄養価を伴う適切な担体の例には、食用脂、炭水化物およびタンパク質といった多量養素が含まれるが、これらに限定されない。そのような食用脂の例には、ココナッツ油、ルリジサ油、真菌油、黒潮(black current)油、ダイズ油ならびにモノおよびジグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。そのような炭水化物の例には:グルコース、食用ラクトースおよび加水分解デンプンが含まれる(がこれらに限定されない)。さらに、本発明の栄養組成物で使用され得るタンパク質の例には、ダイズタンパク質、電気透析乳漿、電気透析脱脂乳、牛乳の乳漿またはこれらタンパク質の加水分解物が含まれる(が、これらに限定されない)。
【0269】
ビタミンおよびミネラルに関しては、次に挙げるものが本発明の家畜飼料組成物に添加され得る:カルシウム、リン、カリウム、ナトリウム、クロリド、マグネシウム、マンガン、鉄、銅、亜鉛、セレン、ヨウ素およびビタミンA、E、D、CおよびB群。他のそのようなビタミンおよびミネラルも添加され得る。
【0270】
本発明の家畜飼料組成物で使用される成分は、半精製または精製由来であり得る。半精製または精製とは、天然材料の精製または新規合成によって調製された物質を指す。
【0271】
また、本発明の家畜飼料組成を、食事の補充が必要でない場合でも、食物に添加してもよい。たとえば、組成物をいかなる種類の植物にも添加してよく、それには:マーガリン、改変バター、チーズ、牛乳、ヨーグルト、チョコレート、キャンディ、スナック食品、サラダ油、調理油、調理脂、肉、魚および飲み物が含まれる(がこれらに限定されない)。
【0272】
サッカロマイセス属の種は、ビールの醸造およびワイン作りの双方で使用され、また、特にパンを焼く際に作用剤としても使用される。たとえばヤロウイア種を含む油性酵母菌といった他の酵母菌もLC−PUFA生産に役立つ。酵母菌は、養殖漁業といった動物試料での添加剤としても使用され得る。本明細書で説明されるようにLC−PUFAを合成するよう適合された、遺伝子操作した酵母菌株が提供され得ることは明らかになるであろう。これら酵母菌株またはそれらで生産されるLC−PUFAを、次いで、食料品ならびにワインおよびビール作りで使用し、強化した脂肪酸含有量を有する製品を提供し得る。
【0273】
さらに、本発明に従って生産された脂肪酸または形質転換して対象遺伝子を含むおよび発現する宿主細胞を、動物の栄養補助食品としても使用し、動物の組織、卵または牛乳の脂肪酸組成を、ヒトまたは動物の消費により望ましいものに変え得る。そのような動物の例には、ヒツジ、ウシ、ウマ、ニワトリといった家禽類などが含まれる。
【0274】
さらに、本発明の家畜飼料を養殖漁業で用いて、ヒトまたは動物の消費用の、魚、または、たとえばエビといった甲殻類の脂肪酸量を増大し得る。好ましい魚はサケである。
【0275】
本発明の好ましい家畜飼料は、ヒトまたは他の動物用の食物または試料として直接使用され得る、植物、種子ならびに葉および茎といった他の植物部分である。たとえば、動物は野外で成長したそのような植物を直接食べ得、または、制御した餌やりの中で測定された量を与えられ得る。本発明には、そのような植物および植物部分を、ヒトおよび他の動物のLC−PUFA量を増大するための摂食としての使用が含まれる。
【0276】
組成物
また、本発明には、本発明の方法を用いて生産される1つ以上の脂肪酸および/または結果として得られる油を含む組成物、具体的には医薬組成物も包含される。
【0277】
医薬組成物は、リン酸緩衝生理食塩水、水、エタノール、ポリオール、植物油、湿潤剤または水/油乳濁液といった乳濁液のような、標準的で、良く知られる、非毒性の薬剤的に許容される担体、補助剤または媒体と組み合わせた、1つ以上の脂肪酸および/または油を含み得る。組成物は液体または固体のいずれかの形態であり得る。たとえば、組成物は、錠剤、カプセル、経口摂取可能液体または粉末、注射可能または局所軟膏またはクリームの形態であり得る。たとえば、分散液の場合は必要な粒径の維持、および、界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。たとえば、糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことも望まれ得る。そのような不活性希釈剤に加え、組成物はまた、湿潤剤、乳濁および懸濁剤、甘味料、風味料および芳香剤といった補助剤も含み得る。
【0278】
懸濁物は、活性化合物に加え、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶性セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天、ならびにトラガントまたはこれら物質の混合物といった懸濁剤を含み得る。
【0279】
当該技術分野では良く知られている技術を用いて、錠剤およびカプセルといった固体剤形を調製し得る。たとえば、本発明にしたがって生産した脂肪酸を、アカシア、コーンスターチまたはゼラチンといった結合剤、ジャガイモデンプンまたはアルギン酸といった崩壊剤、およびステアリン酸またはステアリン酸マグネシウムといった潤滑剤と組み合わせて、ラクトース、スクロースおよびコーンスターチといった従来の錠剤ベースで錠剤化し得る。これら賦形剤を抗酸化剤および関連脂肪酸と一緒にゼラチンカプセルに組み込むことで、カプセルを調製し得る。
【0280】
静脈内投与に関して、本発明従って生産された脂肪酸またはその誘導体を、市販製剤に組み込んでもよい。
【0281】
特定の脂肪酸の一般的な投与量は、0.1mgから20gを、1日あたり1から5回の摂取(1日最大100gまで)であり、好ましくは、1日約10mgから約1、2、5または10gの範囲である(1または複数の服用)。当該技術分野で知られる通り、最小限である、約300mg/日の脂肪酸、特にLC−PUFA、が望ましい。しかし、任意の量の脂肪酸も対象には有益であることが理解されるであろう。
【0282】
本発明の医薬組成物の可能性のある投与経路には、たとえば、経腸(たとえば経口および経直腸)および非経口が含まれる。たとえば、液体調製物は経口または経直腸投与され得る。さらに、均質な混合物を水に完全に分散させ、生理学的に許容される希釈剤、保存剤、緩衝剤または噴霧剤と滅菌条件下で混合し、スプレーまたは吸入剤を形成し得る。
【0283】
患者に投与される組成物の投与量は、当業者の一人によって決定され得、患者の体重、患者の年齢、患者の全体的な健康状態、患者の過去の経歴、患者の免疫状態などといった様々な要因次第である。
【0284】
さらに、本発明の組成物を美容上の目的で使用し得る。混合物が形成されるように本発明の組成物を既存の美容組成物に添加し得、また、本発明に従って生産された脂肪酸を、美容組成物における唯一の「活性」成分として使用し得る。
【実施例】
【0285】
実施例1.材料および方法
一過性発現系での植物細胞の遺伝子発現
外因性遺伝子構築物を、基本的にVoinnet et al.(2003)およびWood et al.(2009)が説明する通りに、一過性発現系で植物細胞に発現させた。CaMV 35Sプロモーターといった強度の恒常的プロモーターから発現されるコード領域を含むプラスミドを、アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に導入した。国際公開第2010/057246号に記載される通り、p19ウイルス性サイレンシング抑制因子発現のためのキメラ遺伝子35S:p19を別でAGL1内に導入した。組み換えアグロバクテリウム細胞を、50mg/Lカナマイシンおよび50mg/Lリファンピシンを添加したLBブロス内で、28℃で静止期まで成長させた。次いで、10mMのMES pH5.7、10mMのMgClおよび100μΜアセトシリンゴンを含む浸潤緩衝液内でOD600=1.0まで再懸濁する前に、室温で15分間、5000gでの遠心分離によって細菌をペレット状にした。次いで、35S:p19および対象の試験キメラ構築物(複数可)を含む同じ体積のアグロバクテリウム培養物を、葉の組織への浸潤に先立って混合する前に、細胞を振動させながら28℃で3時間インキュベートした。一般的に、浸潤後、葉のディスクを脂肪酸のGC分析のために取り出して凍結乾燥させる前に、植物をさらに5日間成長させた。
【0286】
内部標準として量が既知であるヘキサデカン酸と一緒に、80℃で2時間、メタノール/HCl/ジクロロメタン(10/1/1 v/v)溶液中試料をインキュベートすることで、凍結乾燥試料における全ての葉脂質の脂肪酸メチルエステル(FAME)を作製した。FAMEをヘキサン/DCMで抽出し、ヘキサン中、小体積まで濃縮し、GCに注入した。脂質分画に存在する各および総脂肪酸の量を内部標準の既知の量をもとに定量化した。
【0287】
脂肪酸のガスクロマトグラフィー(GC)分析
30mのSGE−BPX70カラム(70%シアノプロピルポリシルフェニレン−シロキサン、0.25mmの内部直径、0.25mmのフィルムの厚さ)、FID、分割/非分割注入器ならびにアジレント・テクノロジー社7693シリーズ自動回収装置および注入器を備えたアジレント・テクノロジー社7890A GC(米国、カリフォルニア州、パロアルト)を用いたガスクロマトグラフィーによって、FAMEを分析した。ヘリウムをキャリアガスとして用いた。150℃のオーブン温度で試料を分割モード(50:1比)で注入した。注入後、オーブン温度を150℃で1分間維持し、次いで、1分あたり3℃ずつ210℃まで上げ、再度1分あたり50℃ずつ240℃まで上げ、最終的に、240℃で1.4分間維持した。アジレント・テクノロジー社ChemStationソフトウェア(Rev B.04.03(16)、米国、カリフォルニア州、パロアルト)で、既知の量である外部標準GLC−411(Nucheck)およびC17:0−ME内部標準の反応をもとにピークを定量化した。
【0288】
脂質の液体クロマトグラフィー−質量分析(LC−MS)分析
内部定量化標準として既知の量のtri−C17:0−TAGを添加した後、開花から12日後(daf)の、凍結乾燥した発育中の種子および成熟した種子から全ての脂質を抽出した。5mgの乾燥材料あたりで、抽出した脂質をブタノール:エタノール(1:1 v/v)中10mMのブチル化ヒドロキシトルエン1mLに溶解し、アジレント社1200シリーズLCおよび6410bエレクトロスプレーイオン化3連4重極LC−MSを用いて分析した。0.2mL/分のフロー速度でバイナリ勾配を操作するAscentis Express RP−Amideカラム(50mm×2.1mm、2.7μm、Supelco)を用いて、脂質をクロマトグラフィーによって分離した。移動相は:A.HO:メタノール:テトラヒドロフラン(50:20:30 v/v/v)中10mMの蟻酸アンモニウム;B.HO:メタノール:テトラヒドロフラン(5:20:75、v/v/v)中10mMの蟻酸アンモニウムであった。マルチプルリアクションモニタリング(MRM)リストは、30Vの衝突エネルギーおよび60Vのフラグメンターを用いて、次の主要な脂肪酸をもとにした:16:0、18:0、18:1、18:2、18:3、18:4、20:1、20:2、20:3、20:4、20:5、22:4、22:5、22:6。アンモニア化合プリカーサーイオンおよび22:6のニュートラルロスによるプロダクトイオンをもとに、各MRM TAGを同定した。10μΜのトリステアリン外部標準を用いてTAGを定量化した。
【0289】
種子脂肪酸プロフィールおよび油含有量の測定
種子油含有量を測定する予定であった場合、種子を24時間デシケーター内で乾燥させ、およそ4mgの種子を、テフロン加工のねじ口を含む2mlのガラス小瓶に移した。0.1mlトルエン中に溶解した0.05mgトリヘプタデカノインを内部標準として小瓶に添加した。
【0290】
0.7mlの1NメタノールHCl(Supelco)を、種子材料を含む小瓶に添加することで、種子FAMEを調製し、簡単に撹拌し、80℃で2時間インキュベートした。室温まで下げた後、0.3mlの0.9%NaCl(w/v)および0.1mlヘキサンを小瓶に添加し、10分間、Heidolph Vibramax110でよく混合した。FAMEを0.3mlのガラス製インサートに集め、水素炎イオン化検出器(FID)を伴うGCで、前記した通りに分析した。
【0291】
市販の標準GLC−411(ニューチェック・プレップ社(NU−CHEK PREP,INC.,)、米国)に存在する同じFAMEの既知の量のピーク面積反応をもとに、各FAMEのピーク面積をまず校正した。GLC−411は、C8:0からC22:6に及ぶ、同量の31個の脂肪酸(重量%)を含む。標準に存在しなかった脂肪酸の場合、発明者らは最も類似したFAMEのピーク面積反応を取り出した。たとえば、16:ld9のFAMEのピーク面積反応を16:ld7に関して使用し、C22:6のFAME反応をC22:5に関して使用した。校正した面積を用いて、内部標準質量との比較によって、試料中の各FAMEの質量を算出した。油はTAGの形態で主に保存され、その重量を、FAME重量をもとに算出した。各FAMESのモルを算出し、FAMEの合計モルを3で割ることで、グリセロールの合計モルを算出した。41および15がそれぞれグリセロール部分およびメチル基の分子量である、重量%油=100×((41×合計モルFAME/3)+(合計gFAME−(15×合計モルFAME)))/g種子という関係を用いて、グリセロールおよび脂肪アシル部分の合計としてTAGを算出した。
【0292】
油試料のステロール含有量の分析
およそ10mgの油の試料を、内部標準として添加した一定分量のC24:0モノオールと一緒に、80%MeOH中4mLの5%KOHを用い、テフロン加工のねじ口のガラス管内で80℃にて2時間加熱し、けん化した。反応混合物を冷やした後、2mLのMilli−Q水を添加し、振動および撹拌することで、ステロールを2mLのヘキサン:ジクロロメタン(4:1 v/v)に抽出した。混合物を遠心分離し、ステロール抽出物を取り除き、2mLのMilli−Q水で洗浄した。振動および遠心分離のあと、ステロール抽出物を次いで除去した。窒素ガスの流れを利用して抽出物を蒸発させ、200mLのBSTFAを用い、および80℃で2時間加熱して、ステロールをシリル化した。
【0293】
ステロールのGC/GC−MS分析のために、ステロール−OTMSi誘導体を40℃のヒートブロック上の窒素ガスの流れ下で乾燥し、次いで、GC/GC−MS分析の直前にクロロホルムまたはヘキサンに再溶解した。ステロール−OTMS誘導体を、Superlco Equity(商標)−1溶融石英キャピラリーカラム(15m×0.1mm内部直径、0.1μmのフィルムの厚さ)、FID、分割/非分割注入器ならびにアジレント・テクノロジー社7683Bシリーズ自動回収装置および注入器が取り付けられたアジレント・テクノロジー社6890A GC(米国、カリフォルニア州、パロアルト)を用いたガスクロマトグラフィー(GC)によって分析した。ヘリウムをキャリアガスとして使用した。120℃のオープン温度で、非分割モードで試料を注入した。注入後、オーブン温度を1分あたり10℃ずつ270℃まで上げ、最終的に1分あたり5℃ずつ300℃まで上げた。アジレント・テクノロジー社ChemStationソフトウェア(米国、カリフォルニア州、パロアルト)でピークを定量化した。GC結果は各成分の面積の±5%のエラーに影響される。
【0294】
GC−質量分析(GC−MS)の分析をFinnigan Thermoquest GCQ GC−MSおよびFinnigan Thermo Electron Corporation GC−MS上で実施した;双方のシステムにカラム上注入器およびThermoquest Xcaliburソフトウェア(米国、テキサス州、オースティン)を取り付けた。各GCに、上記したものと類似した極性のキャピラリーカラムを取り付けた。質量スペクトルデータを用いて、保持時間データを、信憑性のある実験室標準に関して得られた保持時間データと比較することで、それぞれの成分を同定した。試料バッチと同時に、完全な手続き上のブランク分析を実施した。
【0295】
RT−PCR条件
逆転写PCR(RT−PCR)増幅は、一般的に、製造業者の説明にしたがって10pmolのフォワードプライマーおよび30pmolのリバースプライマー、2.5mMの最終濃度までのMgSC、緩衝液を伴う400ngの全RNAならびにヌクレオチド成分を用いた、体積25μLのSuperscript III One−Step RT−PCRシステム(インビトロゲン社(Invitrogen))を使用して実行された。典型的な温度レジームは:逆転写が起こるために30分間45℃で1サイクル;次いで、2分間94℃で1サイクル、引き続き、30秒間94℃、30秒間52℃、1分間70℃の40サイクル;次いで、反応混合物を5℃に冷やす前に2分間72℃の1サイクルであった。
【0296】
35S−LEC2での誘導によるB.ナプス体細胞胚の作製
【0297】
B.ナプス(cv.Oscar)種子を、(Attila Kereszt et al.、2007)が説明する通り、塩素ガスを用いて滅菌した。滅菌した種子を、pH5.8に調節した0.8%寒天を伴う1/2強度のMS培地(MurashigeおよびSkoog、1962)上で発芽させ、6〜7日間、24℃にて、18/6時間(明/暗)の光周期を伴う蛍光灯(50μΕ/ms)下で成長させた。2〜4mmの柄の長さである子葉柄(Cotyledonary petioles)をこれら実生から無菌的に単離し、外植片として使用した。1つは種子特異的バイナリーベクターを保有し、2つ目は35S−LEC2構築物を伴う、形質転換したA.ツメファシエンス株AGL1の培養物を新しいプレートの単一コロニーから接種し、適切な抗生物質を伴う10mLのLB培地内で成長させ、28℃で、150rpmの撹拌を伴いながら一晩成長させた。細菌細胞を5分間の4000rpmの遠心分離で回収し、2%スクロースを含むMS培地で洗浄し、10mLの同じ培地内に再懸濁し、100μMまでアセトシリンゴンを添加した後、4時間、必要に応じて選択のための抗生物質と成長させた。植物組織への添加の2時間前に、スペルミジンを1.5mMの最終濃度まで添加し、細菌の最終密度を新しい培地でOD600nm=0.4まで調節した。1つは種子特異的構築物を保有し、もう一方は35S−AtLEC2を保有する、2つの細菌培養物を、1:1から1:1.5比で混合した。
【0298】
新たに単離したB.ナプス子葉柄を、20mLのA.ツメファシエンス培養物で6分間感染させた。子葉柄を滅菌フィルター紙上にブロットして余分なA.ツメファシエンスを除去し、次いで、同時培養培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、L−システイン(50mg/L)を添加した100μΜアセトシリンゴン、アスコルビン酸(15mg/L)およびMES(250mg/1)を有するMS培地)に移した。プレートを微小孔テープで密封し、24℃で48時間、暗所でインキュベートした。同時培養した外植片を事前選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、3mg/LのAgNO、250mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含むMS)に移し、4〜5日間、24℃で、16時間/8時間の光周期を伴って培養した。種子特異的ベクター上の選択マーカー遺伝子にしたがって、外植片を次いで選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、3mg/LのAgNO、250mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含むMS)に移し、2〜3週間、24℃で、16時間/8時間の光周期を伴って培養した。緑色の胚形成カルスを伴う外植片をホルモンフリーMS培地(3mg/LのAgNO、250mg/Lセフォタキシム、50mg/Lチメンチンおよび選択剤を伴うMS)に移し、もう2〜3週間培養した。選択培地上で生き残った外植片から単離した魚雷または子葉期の胚を、GCを使って、それらの全ての脂質の脂肪酸組成に関して分析した。
【0299】
実施例2.シロイヌナズナ種子のトランスジェニックDHA経路の安定な発現
【0300】
バイナリーベクターの作製
バイナリーベクターpJP3416−GA7およびpJP3404はそれぞれ、5つのデサチュラーゼおよび2つのエロンガーゼをコードする7つの異種性脂肪酸生合成遺伝子、ならびに、各ベクターに存在するT−DNAの左境界と右境界の反復の間に植物選択マーカーを含んでいた(図2および3)。配列番号1は、右境界から左境界の配列のpJP3416−GA7のT−DNA領域のヌクレオチド配列を提供する。双方の遺伝子構築物は、ラカンセア・クルイベリΔ12−デサチュラーゼ(配列番号1のヌクレオチド14143〜16648を含む)、ピキア・パストリスω3デサチュラーゼ(配列番号1のヌクレオチド7654〜10156を含む)、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号1のヌクレオチド226〜2309を含む)、パブロバ・サリナΔ5およびΔ4デサチュラーゼ(それぞれ配列番号1のヌクレオチド4524〜6485および10157〜14142を含む)およびピラミモナス・コルダタΔ6およびΔ5エロンガーゼ(それぞれ配列番号1のヌクレオチド2310〜4523および17825〜19967を含む)をコードする、植物コドン最適化遺伝子を含んでいた。配列番号1に対して、バイナリーベクターpJP3416−GA7のT−DNA(方向:右境界から左境界の配列)領域の特定の領域は次の通りである:
ヌクレオチド1〜163:右境界;480〜226、アグロバクテリウム・ツメファシエンスノパリンシンターゼターミネーター(TER_NOS);1883〜489、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ;2309〜1952、セイヨウアブラナ切断ナピンプロモーター(PRO_FPl);2310〜3243、シロイヌナズナFAE1プロモーター(PRO_FAE1);3312〜4181、ピラミモナス・コルダタΔ6エロンガーゼ;4190〜4523、グリシンマックスレクチンターミネーター(TER_レクチン);4524〜4881、PRO_FPl;4950〜6230:パブロバ・サリナΔ5デサチュラーゼ;6231〜6485:TER_NOS;7653〜6486、ニコチアナ・タバカムRb7マトリックス付着領域(MAR);8387〜7654、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン1ターミネーター(TER_Cnl1);9638〜8388、ピキア・パストリスω3デサチュラーゼ;10156〜9707、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン1プロモーター(PRO_Cnl1);10157〜12189、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン1プロモーター;12258〜13604、パブロバ・サリナΔ4デサチュラーゼ;13605〜14142、リヌム・ウシタティスシムムコンリニン2ターミネーター;14143〜14592、PRO_Cnl1;14661〜15914、ラカンセア・クルイベリΔ12デサチュラーゼ;15915〜16648、TER_Cnl1;17816〜16649、MAR;17825〜18758、PRO_FAE1;18827〜19633、ピラミモナス・コルダタΔ5エロンガーゼ;19634〜19967、TER_レクチン;19990〜20527、複製エンハンサー領域を伴うカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター;20537〜21088、ストレプトマイセス・ビリドクロモゲネスホスフィノトリシン−N−アセチルトランスフェラーゼ;21097〜21349、TER_NOS;21367〜21527、左境界。
【0301】
構築物の7つのコード領域は、それぞれ、種子特異的プロモーターの制御下にあり、3つの異なるプロモーター、すなわち、切断セイヨウアブラナナピンプロモーター(pBnFP1)、シロイヌナズナFAE1プロモーター(pAtFAE1)およびリヌム・ウシタティスシムムコンリニン1プロモーター(pLuCnl1)が使用された。7つの脂肪酸生合成遺伝子は、一緒に、18:1Δ9(オレイン酸)から22:6Δ4、7、10、13、16、19(DHA)に変換するよう設計された全体のDHA合成経路をコードしていた。双方のバイナリーベクターは、複製エンハンサー領域を伴うカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35SプロモーターおよびA.ツメファシエンスnos3’ポリアデニル化領域−転写ターミネーターに操作可能に結合した領域をコードするBAR植物選択マーカーを含んでいた。植物選択マーカーはT−DNA領域の左境界に隣接して配置され、したがって、植物細胞へのT−DNA導入の方向に関して、T−DNA上で遠位に位置した。これは、選択マーカー遺伝子を含まない可能性が高いT−DNAの部分的導入が選択されない可能性を増大した。pJP3416−GA7およびpJP3404はそれぞれアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)由来のRiA4複製開始点を含んだ(Hamilton、1997)。
【0302】
配列番号1のヌクレオチド226〜19975に対応するDNA領域(GA7領域)を合成し、この領域をPspOMI部位の受容バイナリーベクターpJP3416に挿入することで、pJP3416−GA7を作製した。GA7上の各脂肪酸生合成遺伝子は、プロモーターと翻訳開始ATGとの間に、各コード領域と操作可能に結合して遺伝子から生成されるmRNAの翻訳効率を最大化するタバコモザイクウイルス5’非翻訳領域(5’UTR)配列を含んでいた。GA7構築物はまた、Hall et al.(1991)が説明する通り、2つのニコチアナ・タバカムRb7マトリックス付着領域(MAR)配列を含んでいた。核付着領域と時折呼ばれるMAR配列は、インビトロで核マトリックスに特異的に結合すると知られており、インビボでクロマチンの核マトリックスへの結合を媒介し得る。MARは、トランスジェニックサイレンシングを緩和するように機能すると考えられている。pJP3416−GA7において、トランスジェニック発現カセットを遮断するDNAスペーサーとして作用するために、MARも、T−DNA領域内に挿入および配置される。GA7領域の挿入前のpJP3416ベクターは、境界間に植物選択マーカーカセットしか含んでいなかった。
【0303】
種子内のSDA生産のための遺伝子を含んだバイナリーベクターpJP3367に遺伝子カセットが添加される、制限酵素をもとにした順次挿入によって、遺伝子構築物pJP3404を作製した。この構築物は、双方ともB.ナプス切断ナピンプロモーター(FP1)によって発現されるL.クルイベリΔ12デサチュラーゼおよびP.パストリス(P.pastoris)ω3デサチュラーゼ、ならびに、A.タリアナFAE1プロモーターに発現されるM.プシラΔ6デサチュラーゼを含んでいた(図4)。はじめに、A.タリアナFAD2イントロンをEcoRI部位に隣接させ、pJP3367MfeI部位にクローニングしてpJP3395を作製した。それぞれFAE1およびFP1プロモーターによって促進されるP.コルダタΔ6およびΔ5エロンガーゼカセットを含む断片を、pJP3395のKasI部位にクローニングして、pJP3398を作製した。次いで、pJP3398のRK2複製開始点をRiA4複製開始点で置き換えることで、pJP3399を作製した。それぞれFP1およびFAE1プロモーターによって促進されるP.サリナΔ5およびΔ4デサチュラーゼカセットを含むSbfI隣接断片をpJP3399のSbfI部位にクローニングすることで、最終バイナリーベクター、pJP3404を作製した。
【0304】
A.タリアナ(シロイヌナズナ)形質転換および脂肪酸組成の分析
キメラベクターをA.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換したアグロバクテリウムの培養物からの細胞を用いて、形質転換のためにフローラルディップ方法を利用してA.タリアナ(シロイヌナズナ)(生態型コロンビアおよびfad2変異体)植物を処理した(CloughおよびBent、1998)。成熟後、処理した植物からのT種子を回収しBAR選択マーカー遺伝子を含む植物の選択のためにPPTを含むMSプレート上に播いた。生き残った、健康なT実生を土壌に移した。植物が成熟まで成長し、自家受精が可能にした後、これら植物からのT種子を回収し、それらの種子脂質の脂肪酸組成を実施例1で記載する通りにGC分析によって分析した。
【0305】
pJP3416−GA7をコロンビア遺伝的背景へ使用した13個の形質転換体およびfad2変異体を使用した6個の形質転換体に関して、種子脂質のDHA量のデータが図5に示される(Tと標識されたレーン)。pJP3416−GA7構築物は、総脂肪酸含有量のパーセンテージとして表されるDHA量の、pJP3404構築物よりも平均的に少しだけ高い生産につながった。表4は、最も高いDHA量を伴うT系統からの総種子脂質の脂肪酸組成を示す。同一種子のオレイン酸からのDHAの生産における各酵素的工程に関して算出された転換効率が表5に示される。転換効率は、(%産物×100)/(%残存基質+%産物)で算出され、したがってパーセンテージで表される。
【0306】
pJP3416−GA7 T形質転換系統で生産されたDHAの最も高く観察された量は6.2%であり、さらに、0.5%EPAおよび0.2%DPA(系統#14)を伴った。これらのT種子は、導入遺伝子に対して依然と分離しており、すなわち、均一してホモ接合ではなかった。独立トランスジェニック種子の総種子脂質のプロフィール(表4)のまとめたデータが表6に示される。これらの種子の導入遺伝子の結果生産されたω3脂肪酸の量(コロンビア背景で内因的に生産されたALAの量を除外した全ての新ω3脂肪酸)が10.7%である一方で、ω6脂肪酸の量(18:2Δ9、12を除外した全ての新ω6脂肪酸)は1.5%であった。これは、新ω3脂肪酸:新ω6脂肪酸の極端に有利な比、すなわち、7.3:1を意味する。
【0307】
pJP3416−GA7で形質転換した選択系統、すなわち、コロンビア背景の7、10、14、22および34と指定された系統ならびにfad2変異体背景の18、21および25と指定された系統のT種子を、インビトロのトランスジェニック実生の選択のためにPPTを含むMS培地上に播いた。各系統に対して20個のPPT耐性実生が土壌に移され、自家受精後成熟するまで成長させた。これらの植物は、選択マーカー遺伝子、および、したがって、植物ゲノムの少なくとも1つのT−DNA挿入物にとって、ホモ接合である傾向が非常に高かった。これら植物のT種子を回収し、それらの種子油の脂肪酸組成を、GCによって分析した。データは表7に表される。この分析によって、pJP3416−GA7構築物は、ホモ接合植物のT種子で、分離するT種子よりも高い量のω3LC−PUFA DHAを生産することが明らかになった。最大約13.9%のDHAがコロンビア背景で22.2と指定されたTのpJP3416−GA7形質転換系統で観察され、これは、ヘミ接合T種子における約5.5%から増加し、種子脂質含有量における総脂肪酸のパーセンテージとして、約24.3%の新ω3脂肪酸の合計量を伴った。新ω6脂肪酸は、総脂肪酸の1.1%の量であり、新ω3脂肪酸:新ω6脂肪酸の大変有利な比、すなわち約22:1を意味する。同様に、fad2変異体背景での形質転換は、種子脂質含有量における総脂肪酸のパーセンテージとして、11.5%のDHAを含む、20.6%の新ω3脂肪酸の合計をもたらした。
【0308】
【表4】
【0309】
【表5】
【0310】
【表6】


【0311】
【表7】
【0312】
オレイン酸からのDHAの生産のための経路における各酵素工程の酵素的転換効率が、より高いDHA量を有するT種子に関して表8に示される。系統22.2の種子におけるΔ12デサチュラーゼ転換効率は81.6%で、ω3デサチュラーゼ効率は89.1%であり、双方とも著しく高く、これらの真菌(酵母菌)酵素は発育中の種子で良く機能できたことを示す。DHA経路における他の外因性酵素の活性はω3基質に対して同様に高く、Δ6デサチュラーゼは42.2%効率、Δ6エロンガーゼは76.8%、Δ5デサチュラーゼは95.0%、Δ5エロンガーゼは88.7%およびΔ4デサチュラーゼは93.3%効率で作用した。ω6基質LA上のΔ6デサチュラーゼ活性はもっと低く、Δ6デサチュラーゼはLA上でたった0.7%の転換効率で作用した。GLAはたった0.4%の量で存在し、最も高いDHA含有量を伴うT種子で検知された20:2ω6を除いて、唯一の新ω6産物であった。独立トランスジェニック種子の総種子脂質プロフィール(表7)のまとめたデータが表9で示される。最も高いDHA量を有する系統に関するこのデータは、総ω6 FA(LAを含む)の総ω3 FA(ALAを含む)に対する0.10の比を含んだ。この系統の脂質における、新ω6 FA(LAを含まない)の新ω3 FA(ALAを含まない)に対する比は、0.05であった。総多価不飽和脂肪酸量は、これらの系統で50%超であり、少なくとも4つの系統で60%超であった。全体的な転換効率は次のように算出された:OAからEPA=21.8%、OAからDHA=18.0%、LAからEPA=26.9%、LAからDHA=22.2%、ALAからEPA=30.1%、ALAからDHA=24.9%。
【0313】
【表8】
【0314】
【表9】
【0315】
系統22の子孫である、コロンビア背景のpJP3416−GA7系統22.2からのT種子を土壌に直接播き、得られたT植物の成熟種子の脂肪酸組成をGCで分析した。これらの種子の平均DHA量は、種子脂質の総脂肪酸のパーセンテージとして、13.3%±1.6(n=10)であった。表6で示される通り(右側の柱)、最も高い量のDHAを有する系統は、種子脂質の総脂肪酸において15.1%のDHAを含んでいた。酵素的転換効率が、オレイン酸からのDHA生産の各工程に関して、表8に示される。
【0316】
最も高いDHA量を伴う系統の総ω6 FA(LAを含む)のω3 FA(ALAを含む)に対する比は、0.102であった。最も高いDHA量を有する系統での新ω6 FA(LAを含まない)の新ω3 FA(ALAを含まない)に対する比は、0.053であった。総飽和脂肪酸の量は約17.8%であり、一価不飽和脂肪酸の量は約18.1%であった。総ω6脂肪酸の量は約5.7%であり、ω3脂肪酸の量は約55.9%であった。全体的な転換効率は次のように算出された:OAからEPA=24.5%、OAからDHA=20.1%、LAからEPA=29.9%、LAからDHA=24.5%、ALAからEPA=32.9%、ALAからDHA=27.0%。総オメガ3脂肪酸は総脂肪酸の55.9%まで蓄積することが発見された一方で、オメガ6脂肪酸は総プロフィールの5.7%であった。
【0317】
サザンブロットハイブリダイゼーション分析を実施した。結果は、高蓄積DHA系統はpJP3416−GA7構築物のT−DNAの単一または重複コピーのいずれかであったが、トランスジェニック系統コロンビア#22は例外で、これは、アラビドプシス植物のゲノムに3つのT−DNA挿入を有した。T5世代種子もまた分析し、総種子脂質において最大13.6%のDHAを有することが分かった。GA7構築物は、DHA生産能力の観点からは、複数の世代を超えて安定であることが分かった。
【0318】
トランスジェニックA.タリアナ(シロイヌナズナ)DHA系統の油含有量の測定
様々な量のDHAを有するトランスジェニックA.タリアナ種子の油含有量を実施例1で説明した通りGCで測定した。データは図6に示され、油含有量(種子の重量%油)をDHA含有量(総脂肪酸のパーセンテージとして)に対してグラフ化している。種子1グラムあたり最大26.5mgのDHAが観察された(表10)。トランスジェニックアラビドプシスの油含有量は、DHA含有量と負で相関していることが分かった。種子の重量あたりのDHA量は、約14%DHAを有する種子と比較して、約9%のDHA量を有する形質転換種子でより高かった。これがアラビドプシス以外の種子にもあてはまるかどうかはまだ測定されていない。
【0319】
【表10】
【0320】
実施例3.カメリナサティバ種子のトランスジェニックDHA経路の安定な発現
上記のバイナリーベクターpJP3416−GA7を、A.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換したアグロバクテリウムの培養物からの細胞を用いて、形質転換のためにフローラルディップ方法を用いてC.サティバ(カメリナサティバ)顕花植物を処理した(LuおよびKang、2008)。植物の成長および成熟後、処理した植物のT種子を回収し、土壌に播き、得られた植物を除草剤BASTAで噴霧することで処理し、pJP3416−GA7のT−DNA上に存在するbar選択マーカー遺伝子のトランスジェニックであり、pJP3416−GA7のT−DNA上に存在するbar選択マーカー遺伝子を発現していた植物を選択した。除草剤に耐性を持ち、生き残ったT植物を、自家受精させた後に成熟するまで成長させ、得られたT種子を回収した。5つのトランスジェニック植物が得られ、そのうち3つのみが全体のT−DNAを含んでいた。
【0321】
全体のT−DNAを含んだ3つの植物のそれぞれからのおおよそ20の種子のプールから脂質を抽出した。プール化した試料のうち2つは、大変低い、ほとんど検知できない量のDHAを含んでいたが、3つ目のプールは約4.7%のDHAを含んでいた(表12)。したがって、この植物の10個の各T種子から脂質を抽出し、脂肪酸組成をGCで分析した。この形質転換系統の各種子の脂肪酸組成データも表11に示される。総種子脂質プロフィール(表11)をまとめたデータは表12に示される。
【0322】
【表11】

【0323】
【表12】
【0324】
DHAは、10個のそれぞれの種子のうち6つに存在した。他の4つの種子はDHAを有さず、親植物のT−DNA挿入のヘミ接合性をもとに、T−DNAを有さなかった無効分離体であると推定された。最も高い量のDHAを有する単一種子から抽出された脂質は9.0%のDHAを有し、一方で、EPA、DPAおよびDHAの合計パーセンテージは11.4%であった。形質転換の結果この種子で生産された新ω3脂肪酸(SDA、ETrA、ETA、EPA、DPA、DHA)の合計パーセンテージは19.3%であり、一方で、新ω6脂肪酸(GLA、EDA、DGLA、ARAおよびいずれかのω6伸長産物)の対応する合計は、2.2%であり、GLAおよびEDAのみが新ω6脂肪酸として検知された。総ω6FA(LAを含む)のω3FA(ALAを含む)に対する比は、0.44だと分かった。最も高いDHA量を有する種子の新ω6FA(LAを含まない)の新ω3FA(ALAを含まない)に対する比は、0.12であった。総飽和脂肪酸の量は約17.8%であり、一価不飽和脂肪酸の量は約15.5%であった。総ω6脂肪酸の量は、約20.4%であり、ω3脂肪酸の量は約46%であった。全体の転換効率は次のように算出された:OAからEPA=15.6%、OAからDHA=12.3%、LAからEPA=17.2%、LAからDHA=13.6%、ALAからEPA=24.8%、ALAからDHA=19.6%。
【0325】
この系統のホモ接合種子を、T4世代で得た。T4世代全体で観察された平均7.3%のDHAを有するFD5−46−18−110事象で、最大10.3%のDHAが生産された。
【0326】
複数の温室でホモ接合種子を植え付け、全体で600超の個々の植物を作製した。ソックスレー、アセトンおよびヘキサン抽出を含む様々な方法を使用して、種子から油を抽出している。
【0327】
上記の通り得られた、独立して形質転換した系統のC.サティバの数が低かったので、C.サティバをpJP3416−GA7で形質転換するさらなる実験を実施する。発明者らは、種子油中の総脂肪酸のパーセンテージで10%超のDHA量が、さらに形質転換された系統およびで達成され、T−DNAに対してホモ接合である植物は20%のDHAまで達成される推測する。20個のC.サティバGA7_modH事象を作製し、種子のDHA含有量を分析している。3つのGA7_modB事象作製し、事象CMD17.1からのT1種子の分析は、9.8%のプール化種子DHA含有量を明らかにした。最も高い単一種子DHA値は13.5%であることがわかった。
【0328】
実施例4.セイヨウアブラナ種子のトランスジェニックDHA経路の安定な発現
単一ベクターを用いたB.ナプス(セイヨウアブラナ)形質転換および脂肪酸組成の分析
バイナリーベクターpJP3416−GA7を使用して、形質転換セイヨウアブラナ植物およびその植物からの種子を作製した。標準的なエレクトロポレーション手法を介して、上記のベクターpJP3416−GA7をアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に導入した。トランスジェニックアグロバクテリウム細胞の培養物を、150rpmでの振動を伴って、28℃のLB培地で一晩成長させた。細菌細胞を5分間の4000rpmでの遠心分離によって回収し、Winans AB培地(Winans、1988)で洗浄し、10mLのWinans AB培地(pH5.2)に再懸濁し、カナマイシン(50mg/L)、リファンピシン(25mg/L)および100μΜアセトシリンゴンの存在下で一晩成長を続けた。ブラシカ細胞の感染の2時間前に、スペルミジン(120mg/L)を添加し、細菌の最終密度を新しいAB培地で0.3〜0.4のOD600nmまで調節した。1/2MS(MurashigeおよびSkoog、1962)で成長した8日目のセイヨウアブラナ実生から新たに単離した子葉柄または1mg/Lのチジアズロン(TDZ)および0.1mg/Lのα−ナフタレン酢酸(NAA)を伴うMS培地上で3〜4日で事前に条件を整えた胚軸断片を、10mLのアグロバクテリウム培養物で5分間感染した。アグロバクテリウムで感染した外植片を次いで滅菌フィルター紙にブロットして余分なアグロバクテリウムを除去し、異なる抗酸化剤(L−システイン50mg/Lおよびアスコルビン15mg/L)を添加した、または添加していない、同時培養培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAAおよび100μΜアセトシリンゴンを伴うMS培地)に移した。全プレートをパラフィルムで密封し、23〜24℃の暗所で48時間インキュベートした。
【0329】
処理した外植片を次いで、500mg/Lセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含む滅菌蒸留水で10分間洗浄し、滅菌蒸留水で10分間すすぎ、滅菌フィルター紙上にブロットして乾燥し、事前選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、20mg/Lの硫酸アデニン(ADS)、1.5mg/LのAgNO、250mg/Lのセフォタキシムおよび50mg/Lチメンチンを含むMS)に移し、16時間/8時間の光周期で、5日間24℃で培養した。次いで、形質転換細胞の選択のための作用剤として1.5mg/Lのグルフォシネートアンモニウムを伴う選択培地(1mg/LのTDZ、0.1mg/LのNAA、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO、250mg/Lのセフォタキシムおよび50mg/Lのチメンチンを含むMS)にそれらを移し、同じ培地上で、隔週で継代培養しながら、16時間/8時間の光周期で、24℃にて4週間培養した。緑色のカルスを伴う外植片を発芽開始培地(1mg/Lのキネチン、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO、250mg/Lのセフォタキシム、50mg/Lのチメンチンおよび1.5mg/Lのグルフォシネートアンモニウムを含むMS)に移し、もう2〜3週間培養した。耐性外植片から生まれた芽を芽伸長培地(0.1mg/Lのジベレリン酸、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNO、250mg/Lのセフォタキシムおよび1.5mg/Lのグルフォシネートアンモニウムを含むMS培地)に移し、もう2週間培養した。2〜3cmの長さの健康的な芽を選択し、発根培地(1mg/LのNAA、20mg/LのADS、1.5mg/LのAgNOおよび250mg/Lのセフォタキシムを含む1/2MS)に移し、2〜3週間培養した。根を伴う良く確立された芽を、実生成長ミックスを含むポットに移し、2週間成長キャビネットで成長させ、引き続き、温室に移した。この方法で、GA7構築物で形質転換したおよそ40(T)の植物を得た。
【0330】
植物を、自家受精させた後、成熟するまで成長させた。形質転換した植物から得た種子を、実施例1に記載される通り、それらの種子油の脂肪酸組成に関して分析した。最も高いDHA量を有する形質転換系統に関するデータが表13で示される。平均的なDHA量は、pJP3416−GA7のT−DNAで形質転換したB.ナプス種子の種子油において、同じ構築物で形質転換したA.タリアナ種子(実施例2)またはカメリナ種子(実施例3)よりも、著しく低かった。およそ40の系統の中で最も高い量のDHAは1.52%であり、トランスジェニック系統の大部分は検知可能なDHAを有した。これらの種子のなかに、総脂肪酸の約35%である相当な蓄積のALAがあり、これはSDAまたは経路で続く産物に効率的に変換されていなかったことが留意された。
【0331】
事象、CT125−2からの単一B.ナプス種子の脂肪酸プロフィール分析を実施して、トランスジェニック種子で生産されたDHAの量をより良く測定した。種子は、0%(無効種子)と8.5%の間のDHAを含むことがわかった(表13)。
【0332】
DHA生産を示す、植物系統CT116ならびに他のトランスジェニック系統由来の種子をいくつか播いて、後代植物を作製した。GA7構築物が、同一構築物を有するトランスジェニックA.タリアナおよびC.サティバと比較して、なぜDHA生産に関して不十分に作用し、および、pJP3115およびpJP3116上の遺伝子の組み合わせと比較してなぜ不十分に作用したのかを決定するために、これら植物の発育中の胚から単離した総RNAに対してRT−PCRを実施した(下)。一段階RT−PCRキット(インビトロゲン社)および各導入遺伝子を標的する遺伝子特異的プライマーを用いて、RT−PCRを総RNAに対して行った。これによって、GA7構築物の各遺伝子は、形質転換種子の大部分で不十分に発現したΔ6デサチュラーゼを除いて、B.ナプス形質転換体で良好に発現することが確認された。この構築物からの他の遺伝子は、B.ナプスおよびA.タリアナ種子の双方で良く機能し、たとえば、Δ12およびΔ15デサチュラーゼはオレイン酸量を減らす一方で種子のLAおよびALAの増加した量を生産するように機能した。代表的なRT−PCRゲルは、図7に示され、これは、pJP3416−GA7の他の導入遺伝子と比較して、Δ6デサチュラーゼの低発現を明らかに示す。
【0333】
導入遺伝子とホモ接合であるトランスジェニック植物および種子を、最も高いDHAを有する系統の後代を植え付けることで、作製する。
【0334】
【表13】










【0335】
2つのベクターを用いたB.ナプス形質転換および脂肪酸組成の分析
B.ナプスの別の実験において、および、導入遺伝子を導入するための代替形式として、国際公開第2010/057246号に記載されるバイナリーベクターpJP3115およびpJP3116を使用して、形質転換B.ナプス植物を別々に作製し、形質転換種子をその植物から得た。pJP3115上のT−DNAは、クレピス・パレスチナ(Crepis palestina)Δ12デサチュラーゼ、ミクロモナス・プシラΔ6デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタΔ6エロンガーゼおよびパブロバ・サリナΔ5デサチュラーゼをコードするキメラ遺伝子を含み、pJP3116上のT−DNAはペルリア・フルテスケンス(Perilla frutescens)Δ15デサチュラーゼ、ピラミモナス・コルダタΔ5エロンガーゼおよびパブロバ・サリナΔ4デサチュラーゼを含んでいた。2つのT−DNAは、一緒に存在し、発育中の種子に発現された場合、内因的に生産されたオレイン酸からDHAを生産するための7遺伝子経路を形成した。これらのベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に、標準的なエレクトロポレーション手法で導入し、形質転換した細胞を独立して使用し、上記の方法を用いてB.ナプスを形質転換し、安定的に形質転換したT植物を作製した。29のpJP3115および19のpJP3116形質転換体を得て、これらの植物を成熟するまで成長させ、自家受精の後に得られた種子を、それらの種子油の脂肪酸組成に関して分析した。pJP3115のT−DNAでの形質転換は、内因的に生産されたALAからのEPA生産につながると予測された一方で、pJP3116のT−DNAでの形質転換はLAからのALA生産増大につながると予測された。これらの表現型を示す植物を複数同定した。事象の大部分は、低量のEPA生産を伴うΔ12不飽和化のために、低下したOA/増大したLA表現型を示した。最大2.6%のEPAがpJP31115トランスジェニック種子プールで観察された。同様に、pJP3116事象の大部分はΔ15デサチュラーゼ活性のために増大したALA表現型を有することが分かった。最大18.5%のALAがpJP3116のT−DNAで形質転換したプール種子で発見された。
【0336】
最も高い量のEPAおよびALAを有する系統のT植物を交雑させ、24個の回収した事象の後代種子(F1)のDHA含有量を分析した。DHAは、これらの事象のうち17個で発見され、最大1.9%のDHAがこれらの事象のプール種子で発見された。単一種子分析を実施して、DHA生産の範囲を決定し、そのデータが表14に示される。広い範囲のDHA量が交雑子孫で観察され、おそらく、親植物でのT−DNAのヘミ接合性質のためであり、その結果、いくつかの種子は双方のT−DNAを受け取らなかった。最大6.7%のDHAが全種子脂質で観察された。
【0337】
【表14】

【0338】
【表15】
【0339】
全脂質プロフィール(表14)をまとめたデータが表15に示される。表15のデータによると、最も高い量のDHAを有する種子での全ω6FA(LAを含む)のω3FA(ALAを含む)に対する比は、3.34であった。新ω6FA(LAを含まない)の新ω3FA(ALAを含まない)に対する比は1.39であった。総飽和脂肪酸の量は、約13.7%であり、一価不飽和脂肪酸の量は約21.8%であった。総ω6脂肪酸の量は46.4%であり、ω3脂肪酸の量は約14.8%であった。全体の転換効率は次のように算出された:OAからEPA=12.8%、OAからDHA=8.5%、LAからEPA=15.7%、LAからDHA=10.4%、ALAからEPA=72.1%、ALAからDHA=47.9%。pJP3115およびpJP3116の組み合わせでの本実験で観察されたω6脂肪酸からω3脂肪酸の転換の効率の低下は、ALAからDHAの転換のための遺伝子と組み合わせた場合、真菌Δ15/ω3デサチュラーゼと比較して、植物Δ15デサチュラーゼの効率がより低い(実施例2および3)ためであると考えられた。
【0340】
導入された導入遺伝子の全てにホモ接合であるDHA含有系統の子孫を分析のために作製する。
【0341】
実施例5.植物種子における、DHA経路をコードするT−DNAの改変
B.ナプスでのDHA生産量を実施例4に記載される量を超えて改善するために、バイナリーベクターpJP3416−GA7−modA、pJP3416−GA7−modB、pJP3416−GA7−modC、pJP3416−GA7−modD、pJP3416−GA7−modEおよびpJP3416−GA7−modFを次のように作製した。これらのバイナリーベクターは、実施例2に記載されたpJP3416−GA7構築物の変異形であり、特にΔ6デサチュラーゼおよびΔ6エロンガーゼ機能を改善することで、植物種子でのDHAの合成をさらに増大するように設計した。Δ5エロンガーゼと比べて比較的低い伸長効率のために、GA7構築物で形質転換したある種子では、SDAが蓄積されるのが観察されていたので、他の改変の中で、2つのエロンガーゼ遺伝子配置をT−DNAで交換した。
【0342】
まず始めに新しいP.コルダタΔ6エロンガーゼカセットをpJP3416−GA7のSbfI部位間にクローニングし、P.コルダタΔ5エロンガーゼカセットと取り換えることで、pJP3416−GA7における2つのエロンガーゼコード配列を、T−DNA上でのそれらの配置を交換し、pJP3416−GA7−modAを得た。M.プシラΔ6デサチュラーゼを促進するFP1プロモーターをコンリニンCnl2プロモーター(pLuCnl2)と交換することで、この構築物をさらに改変し、pJP3416−GA7−modBを得た。Δ6デサチュラーゼ発現を増大、それによって酵素効率を増大させる試みの中でこの改変を行った。Cnl2プロモーターは、切断ナピンプロモーターよりもより高い導入遺伝子の発現をB.ナプスにもたらし得ると考えられた。少し異なるコドン使用頻度を伴う第2のM.プシラΔ6デサチュラーゼカセット(配列番号15)を添加することにより、pJP3416−GA7−modCを作製し、pJP3416−GA7−modBの右境界のちょうど内側のPmeI部位に挿入したFP1プロモーターで促進した。Δ6デサチュラーゼ発現量を増大し、複数のプロモーターの使用によってΔ6デサチュラーゼの発現のための種子発育間の期間を延ばすために、第2のΔ6デサチュラーゼカセットを双方のpJP3416−GA7−modBおよびpJP3416−GA7−modFに添加した。2つの核配列で異なるコドン使用頻度を使用して、同一T−DNA内での類似したコード領域の同時抑制の恐れのない、同一タンパク質配列の翻訳につながった。pJP3416−GA7−modDおよびpJP3416−GA7−modEは、配列番号1のヌクレオチド16649〜17816に対応する3番目のMAR配列がPmeI部位にてそれぞれpJP3416−GA7およびpJP3416−GA7−modBに添加された類似変異形であった。天然Δ6デサチュラーゼヌクレオチド配列を含む第2のM.プシラΔ6デサチュラーゼカセットを添加することで、pJP3416−GA7−modFを作製し、pJP3416−GA7−modBの右境界のPmeI部位にあるFP1プロモーターで促進した。pJP3416−GA7−modGを、まず始めにAscI−PacI部位での制限クローニングによってM.プシラΔ6デサチュラーゼカセットをCnl2:P.コルダタΔ5エロンガーゼカセットで置き換えることで作製した。次いで、SbfI部位での制限クローニングによって本来のFAE1:P.コルダタΔ5エロンガーゼカセットをFAE1:M.プシラΔ6デサチュラーゼカセットで交換することで、pJP3416−GA7−modGを作製した。これらの遺伝子構築物のそれぞれのT−DNAのヌクレオチド配列は、次のように示される:pJP3416−GA7−modB(配列番号2)、pJP3416−GA7−modC(配列番号3)、pJP3416−GA7−modD(配列番号4)、pJP3416−GA7−modE(配列番号5)、pJP3416−GA7−modF(配列番号6)およびpJP3416−GA7−modG(配列番号7)。
【0343】
バイナリーベクターpJP3416−GA7−modB、pJP3416−GA7−modC、pJP3416−GA7−modD、pJP3416−GA7−modE、pJP3416−GA7−modFおよびpJP3416−GA7−modGを使用して形質転換したブラシカ体細胞胚ならびにセイヨウアブラナ、カメリナ・サティバおよびシロイヌナズナ植物および後代種子を作製する。pJP3416−GA7−modBに関するデータが次の実施例で示される。
【0344】
8個のトランスジェニックpJP3416−GA7−modB A.タリアナ事象および15個のトランスジェニックpJP3416−GA7−modG A.タリアナ事象を作製した。プール化したpJP3416−GA7−modB種子において3.4%と7.2%との間のDHAが観察され、プール化したT2 pJP3416−GA7−modG種子において0.6と4.1%との間のDHAが観察された。最も高いpJP3416−GA7−modB事象のいくつかを選択培地上に播き、生き残った実生を次の世代まで持って行った。種子のDHA含有量が分析されている。プール化したT1種子は導入遺伝子に対して分離している群を示し、いずれかの無効分離体を含んでいたので、後代植物のホモ接合種子は種々油中最大20%の総脂肪酸含有量である増大した量のDHAを有するであろうと予測される。他の改変構築物を使ってA.タリアナを形質転換した。ほんの少数の形質転換系統しか得られなかったが、どれもmodB構築物よりも高い量のDHAをもたらさなかった。
【0345】
また、pJP3416−GA7−modB構築物を使用し、品種OscarおよびNX005と呼ばれる育種系統の形質転換B.ナプス植物を作製した。Oscar形質転換に関しては10個の独立形質転換植物(T0)を、NX005に関しては20個の独立系統をこれまでに得た。種子(T1種子)をこれらのトランスジェニック系統から回収した。種子のプールを、種子油中DHA量に関して試験し、最も高い量を示した2つの系統を選択し、これらを系統CT132.5(品種Oscarで)およびCT133.15(NX005で)と名付けた。CT132.5から20個の種子およびCT133.15から11個の種子を水に浸し、2日後、各種子それぞれの子葉半分から油を抽出した。胚軸を伴うもう片方の子葉を培地上で維持および培養し、特定の後代系統を維持した。油中脂肪酸組成を決定した;CT132.5に関するデータが表16に示される。分析した20の種子のうちの10個におけるDHA量は、GC分析で測定された総脂肪酸含有量の7〜20%の範囲にあった。他の種子は7%未満のDHAを有し、pJP3416−GA7−modB由来のT−DNAの部分(不完全)コピーを含み得た。トランスジェニック系統は遺伝子的に結合していない複数の導入遺伝子挿入を含んでいるように見えた。トランスジェニック系統CT133.15の種子は、0〜5%の範囲のDHA量を示した。DHAを有さない種子は無効分離体になる可能性が高かった。これらのデータによって、modB構築物はキャノーラ種のDHA生産に関して良好に働くことが確認された。
【0346】
また、pJP3416−GA7−modBおよびpJP3416−0A7−modF構築物を使って形質転換したカメリナ・サティバ植物を作製した。少なくとも24個の独立形質転換植物(T0)を得、後代分析によってさらに細かく調査した。種子(T1種子)をこれらのトランスジェニック系統から回収した。種子のプールを種子油中DHA量に関して試験し、最も高いDHA量(6%と9%との間)を示す6個の系統を選択した。各系統からの20個のT1種子のDHA量を分析し、多くの種子はGC分析で測定された総脂肪酸含有量の6〜14%の範囲でDHAを示した。油中脂肪酸組成を決定した;複数のトランスジェニック種子に関するデータが表17に示される。これらのデータによって、modBおよびmodF構築物は双方ともカメリナ属でのDHA生産に関して良好に働くことが確認された。
【0347】
【表16】
【0348】
【表17】
【0349】
発明者らは、概して、DHA経路の律速酵素活性の効率は、単一コピーT−DNA形質転換体に比べて複数コピーT−DNA形質転換体においてより活発であり得、また、経路で制限している可能性がある酵素をコードする複数の遺伝子をT−DNAに挿入することで増大し得ることを企図した。複数コピー形質転換体の可能性のある重要性の証拠はGA7構築物で形質転換したアラビドプシス種子(実施例2)に見られ、ここでは、最も多収性であるDHA事象は、宿主ゲノムに挿入された3つのT−DNAを有した。複数の遺伝子は同一であり得、または、好ましくは、同一のポリペプチドをコードする異なる変異形であり、または、重複した発現パターンを有する異なるプロモーターの制御下にある。たとえば、増加した発現は、同一タンパク質が生産される場合でも、複数のΔ6デサチュラーゼコード領域の発現によって達成され得る。pJP3416−GA7−modFおよびpJP3416−0A7−modCでは、たとえば、M.プシラΔ6デサチュラーゼの2つのバージョンが存在し、異なるプロモーターによって発現された。コード配列は異なるコドン使用頻度を有し、したがって、異なるヌクレオチド配列を有して、可能性のあるサイレンシングまたは同時抑制効果を軽減したが、同一タンパク質の生産につながった。
【0350】
実施例6.体細胞胚の種子特異的構築物の活性
種子特異的プロモーターの制御下である種子中の遺伝子構築物の発現を予測する迅速アッセイシステムを作るために、体細胞胚システムをセイヨウアブラナに準備した。これには、体細胞胚形成の開始に関わるLEC2転写因子を発現するベクターが使用された。実演として、バイナリーベクター35S:LEC2およびpJP107(Petrie et al.、2010aおよびb)をアグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1に標準的なエレクトロポレーションを介して導入し、そのアグロバクテリウム形質転換体を使用して同時培養によってセイヨウアブラナを同時形質転換した。pJP107のT−DNA領域はイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)Δ9エロンガーゼ、P.サリナΔ8デサチュラーゼおよびP.サリナΔ5デサチュラーゼをコードする遺伝子を含んでおり、各遺伝子は種子特異的プロモーターによって発現された。対照形質転換には35S:LEC2ベクターが単独で用いられた。35S:LEC2発現は、実施例1に記載される形質転換B.ナプスカルス組織に直接由来する組織培養物での体細胞胚の形成につながった。
【0351】
脂肪酸分析によって、構築物pJP107のT−DNA上の種子特異的遺伝子は、同時形質転換LEC2遺伝子の存在下でトランスジェニック体細胞胚に発現され、機能してLAからARA(20:4Δ5、8、11、14)およびALAからEPA(20:5Δ5、8、11、14、17)を生産することが示された。3つの同時形質移転間体細胞胚に関するデータが表18に示され、それぞれの脂肪酸組成を、pJP107のT−DNAの遺伝子を導入し、pJP107のT−DNAを発現したセイヨウアブラナ種子の種子油の脂肪酸組成と比較した(Petrie et al.、2010aおよびb)。安定的に形質転換した種子プロフィールと比較した場合、ARAならびに中間脂肪酸EDA(20:2ω6)およびDGLA(20:3ω6)の類似した総パーセンテージおよび転換効率が体細胞胚組織で観察された。安定なTトランスジェニック種子および体細胞胚の脂肪酸組成において類似した結果が観察された:ω6脂肪酸はそれぞれ26.6%および25.6%(平均)の量である一方で、ARA量はそれぞれ9.7%および10.6%(平均)であることが分かった。
【0352】
35S:LEC2を単独で導入し、体細胞胚を時間経過で分析した場合、脂肪酸プロフィールは、逆相関して減少する18:3Δ9、12、15および増加する18:1Δ9を伴う、さらに胚様であるプロフィールに変化することが発見された(図8)。これらの結果によって、体細胞胚は確実に性質上種子のようになっており、pJP107のT−DNAの上の遺伝子は発現されたことが示された。これは、体細胞胚システムが、トランスジェニック植物およびそれからの成熟種子を作製する全プロセスを必要とせずに、B.ナプスのトランスジェニック種子特異的構築物の迅速な性質決定を可能にすることを示した。
【0353】
【表18】
【0354】
体細胞胚を作製するための同一のシステムを用いて、セイヨウアブラナ細胞を別々でpJP3416−GA7−modBおよびpJP3416−GA7−modDで形質転換した。modBからは18個、modDからは24個である、42個の胚を得た。全ての脂質を胚から抽出し、脂肪酸組成を分析した。胚は、0%と最大16.9%との間のDHAを含んでいた(表19)。0%のDHAの結果は、部分的T−DNAのみの組込みまたはゲノムの転写的に不活動な領域への挿入のためであると推定された。総ω3FA(ALAを含む)の総ω6FA(LAを含む)に対する比は胚#270に関しては2.3、胚#284に関しては11.96であることが分かった。総ω6FA(LAを含む)の総ω3FA(ALAを含む)に対する比は#284に関して0.08であった。新ω6FA(LAを含まない)の新ω3FA(ALAを含まない)に対する比は、#284に関しては0.03であった。全体の転換効率は次のように算出された:(胚#270、#284に関して)OAからEPA=14.0%、29.8%;OAからDHA=9.7%、24.2%;LAからEPA=15.4%、30.7%;LAからDHA=10.7%、25.0%;ALAからEPA=22.1%、33.3%;ALAからDHA=15.3%、27.0%。これらの効率は、pJP3416−GA7−modBベクターがB.ナプス細胞で良好に機能できることを示したT pJP3416−GA7アラビドプシス系統に関して観察されたものに類似しており、または、#284の場合は、pJP3416−GA7−modBベクターがB.ナプス細胞で良く機能できることが示されたT pJP3416−GA7アラビドプシス系統に関して観察されたものよりも大きかった。SDA量は3.0%未満であり、Δ6エロンガーゼはGA7構築物よりもさらに良好に作用していたことを示す。#284で達成されたそれぞれの酵素効率は次の通りであった:Δl2デサチュラーゼ、97.4%;ω3−デサチュラーゼ、92.3%;Δ6デサチュラーゼ、38.2%;Δ6エロンガーゼ、88.2%;Δ5デサチュラーゼ、98.8%;Δ5エロンガーゼ、94.1%;およびΔ4デサチュラーゼ、86.3%。総飽和脂肪酸は21.2%であり、総一価不飽和脂肪酸は10.2%であり、総多価不飽和脂肪酸は68.6%であった。
【0355】
発明者らは、下に記載されるさらなるデータを除いて、これまでB.ナプス細胞で達成されたなかで、これは一番高い量のDHAであったと考える。これによって、pJP3416−GA7−modBにおける改変は、pJP3416−GA7と比較して、Δ6デサチュラーゼ遺伝子の発現量を増大するのに効果的であることも実証された。上記のバイナリーベクターpJP3416−GA7、pJP3416−GA7−modA、pJP3416−GA7−modC、pJP3416−GA7−modD、pJP3416−GA7−modEおよびpJP3416−GA7−modFを35S:LEC2と同時形質転換し、形質転換B.ナプス体細胞胚を作製する。modD胚では最大7.0%のDHA、modE胚では9.9%のDHA、modF胚では8.3%のDHA、少数のmodG胚では3.6%のDHAが観察された。
【0356】
【表19】
【0357】
実施例7.DHAを生産するトランスジェニックA.タリアナ種子のTAGの分析
形質転換A.タリアナ種子のTAG上のDHAの位置分布をNMRで決定した。およそ200mgの種子から、初めにそれらをヘキサン下でつぶし、つぶした種子を、10mLヘキサンを含むガラス管に移すことで、全ての脂質を抽出した。管をおよそ55℃の水浴内で温め、次いで撹拌および遠心分離した。ヘキサン溶液を除去し、その手順をさらに4×10mLで繰り返した。抽出物を1つにまとめ、ロータリーエバポレーションによって濃縮し、ヘキサン中20mLの7%ジエチルエーテルを用いた短いシリカカラムを通過させることで、抽出脂質内のTAGを極性脂質から精製した。精製TAG上のアシル基の位置分布を以前に説明された通り量的に決定した(Petrie et al.、2010aおよびb)。
【0358】
分析によって、総種子油中のDHAのほとんどはTAGのsn−1/3位置に位置し、sn−2位置にはほとんど発見されないことが示された(図9)。これは、50%のARA(20:4Δ5、8、11、14)がトランスジェニックキャノーラ油のsn−2位置に位置する一方で、33%のみが無作為な分布であると予測されることを示したARA生産種子のTAGとは対照的である(Petrie et al.、2012)。
【0359】
pJP3416−GA7またはpJP3115およびpJP3116の組み合わせで形質転換したB.ナプス種子のTAGにおけるDHAの位置分布は基本的に同じ方法で決定される。
【0360】
また、トランスジェニックA.タリアナ種子の全ての脂質を3連4重極LC−MSによって分析し、主要なDHA含有トリアシルグリセロール(TAG)種を決定した(図10)。最も多くDHAを含むTAG種は、DHA−18:3−18:3(TAG58:12;位置分布を説明しない命名法)であり、2番目に多いのはDHA−18:3−18:2(TAG58:11)であることが分かった。低いが検知可能な量ではあるが、Tri−DHA TAG(TAG66:18)が総種子油に観察された。他の主要なDHA含有TAG種には、DHA−34:3(TAG56:9)、DHA−36:3(TAG58:9)、DHA−36:4(TAG58:10)、DHA−36:7(TAG58:13)およびDHA−38:4(TAG60:10)が含まれていた。2つの主要なDHA含有TAGの同一性は、Q−TOF MS/MSによってさらに確認された。
【0361】
実施例8.B.ナプス種子でのDHA生産の予測
GA7遺伝子構築物を用いた、15%量でのアラビドプシス種子のDHAの効率的な生産を実施例2で実証した。セイヨウアブラナ種子における同じ構築物は、主にこの種のGA7のΔ6でサンチュラーゼ遺伝子の不十分な発現のために、形質転換体の多く(全てではない)で約1.5%のDHAしか生産しなかった(実施例4)。GA7構築物の改変はΔ6デサチュラーゼ遺伝子発現問題を克服するであろうという認識に基づいて(実施例5を参照、実施例6で実証された)、計算を実施し、JP3416−GA7の変異形から遺伝子を発現すし、ここで、各導入遺伝子をコードした酵素が、GA7構築物を有するA.タリアナで観察されたのと同じくらい効率的に作用していたB.ナプストランスジェニック種子の、あり得る脂肪酸プロフィールを決定した。3つの計算に対して予測される脂肪酸組成(#1、#2、#3)が表20に示される。これは、59%オレイン酸、20%LAおよび8%ALAを含んでいたB.ナプスに関する野生型(非形質転換)脂肪酸組成に基づいた。表の下半分に示される3つの予測された部分的脂肪酸プロフィールは、表の上半分で示される各酵素的工程の転換効率に基づいた。予測#2では、75%効率のΔ12不飽和化、75%のΔ15不飽和化、35%のΔ6不飽和化、80%のΔ6伸長化、90%のΔ5不飽和化、90%のΔ5伸長化および90%のΔ4不飽和化の組み合わせが、一般的なキャノーラトランスジェニック種子でのおよそ10%のDHAの生産につながるであろう。これらの効率は全て、アラビドプシスで見られるそれぞれの効率より低いまたはほぼ同じであったため、予測#2は控えめな推定を意味した。#3に列挙される転換効率は、pJP3416−GA7で形質転換したA.タリアナで見られる効率的な転換に基づいた概算である。DHAは、B.ナプスで生産される種子油の総脂肪酸含有量の約15%で生産されると予測され、A.タリアナで観察された最も効率的な生産量を反映した結果であった。ホモ接合状態での複数のT−DNAの挿入は、B.ナプスでDHA量を20%まで増やすと期待される。
【0362】
【表20】
【0363】
実施例9.トランスジェニックEPA経路の植物葉での安定な発現
バイナリーベクター構築
葉組織でのEPAの合成のための植物へのT−DNA導入のために、バイナリーベクターpORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片(配列番号8)を設計した。このバイナリーベクターは、酵素:M.プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号16)、P.コルダタΔ6エロンガーゼ(配列番号:25)およびP.サリナΔ5デサチュラーゼ(配列番号30)をコードするキメラ遺伝子を含んでおり、それぞれは、CaMV35SおよびA.タリアナRubisco小サブユニット(SSU)プロモーターの制御下であった(図9)。配列番号2の領域199〜10878を合成し、これをBsiWIおよびKasI部位で受容バイナリーベクターpORE04(Coutu et al.、1997)内にクローニングすることで、バイナリーベクターを作製した。3つの脂肪酸生合成遺伝子は、ALA、18:3Δ9、12、15からEPA、20:5Δ5、8、11、14、17に変換するのに必要な酵素をコードした。
【0364】
N.ベンサミアナ(ベンサミアナタバコ)葉細胞でのEPA構築物の一過性発現
構築物が正しく、葉組織で効率的に遺伝子を発現することを試験するために、キメラベクターpORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片をA.ツメファシエンス株AGL1に導入した。キメラベクター35S:p19もA.ツメファシエンス株AGL1に実施例1で説明された通り導入した。これらの培養物からの細胞を、24℃の成長室でベンサミアナタバコ植物の葉組織内に浸潤させた。同じ葉の両面に位置する比較中の試料に、複数の直接比較物を湿潤させた。実験は3通りで実施された。浸潤に続いて、実施例1に説明されるGCによる脂肪酸プロフィール分析のために葉ディスクを取り出す前に、植物をさらに5日間成長させた。GC分析によって、EPAベクターはベンサミアナタバコ葉で機能してEPAを生産し(表21)、最も高い量のEPAは総葉脂質の10.7%であったことが明らかになった。
【0365】
ニコチアナ・タバカムの安定的形質転換
キメラベクターpORE04+11ABGBEC_ササゲ_EPA_挿入断片を使って、ニコチアナ・タバカムを安定に形質転換した。ベクターをA.ツメファシエンス株AGL1に標準的なエレクトロポレーション手法を介して導入した。形質転換した細胞を、カナマイシン(50mg/L)およびリファンピシン(25mg/L)を添加した固相LB培地で成長させ、28℃で2日間インキュベートした。単一のコロニーを用いて新しい培養を開始した。48時間の活発な培養に続いて、細胞を2,000x gでの遠心分離によって回収し、上澄みを除去した。細胞を50%LBおよび50%MS培地をOD600=0.5の密度で含む新しい溶液に再懸濁した。
【0366】
【表21】
【0367】
インビトロで成長させたN.タバカム品種W38の葉試料を鋭いメスで切除し、サイズ約0.5〜1cmの正方形の断片に切り、一方でA.ツメファシエンス溶液に浸した。A.ツメファシエンスに浸した、傷をつけたN.タバカム葉断片を、滅菌フィルター紙上にブロットして乾燥し、および添加物なしのMSプレートに移動する前に、室温で10分間放置させた。24℃での2日間の同時培養期間に続いて、外植片を滅菌の液体MS培地で3回洗浄し、次いで滅菌フィルター紙でブロットして乾燥し、1.0mg/Lベンジルアミノプリン(BAP)、0.25mg/Lインドール酢酸(IAA)、50mg/Lカナマイシンおよび250mg/Lセフォタキシムを添加した選択MS寒天上に置いた。プレートを24℃で2週間インキュベートし、形質転換N.タバカム葉断片を発芽させた。
【0368】
インビトロで根のついたトランスジェニック植物を作るために、健康な若芽を切断し、25μg/LのIAA、50mg/Lノカナマイシンおよび250mg/Lのセフォタキシムを添加したMS寒天培地を含む200mLの組織培養ポットに移した。トランスジェニック芽を室温で根付かせ成熟するまで成長させた後、土壌に移した。十分大きな葉ディスクを21個の成熟トランスジェニック植物から取り、実施例1に記載される通りに脂肪酸プロフィールを分析した。全てのトランスジェニック試料がEPAを含むことが分かり(表21)、ヘミ接合の1次形質転換体で最も高い量のEPAは総葉脂質の12.1%であることが分かった。葉試料は、それらの脂質の中に少量(0.5%未満)のDPAも含み、これは、Δ6エロンガーゼの低量のΔ5伸長活性によるEPAの伸長に起因した。総ω3FA(ALAを含む)のω6FA(LAを含む)に対する比は、2.7であることが分かった。全体的な転換効率は次のように算出された:OAからEPA=18.4%、LAからEPA=18.9%、ALAからEPA=25.9%。12.1%のEPAの生産は、特にその事象がヘミ接合の1次転換体であったため、注目すべきである。特にALAからEPAへの効率は、安定種子形質転換体で観察されたものに近い。構築物がΔ12またはΔ15デサチュラーゼを含んでおらず、OAおよびLAからALAへの転換を増大したのは注目に値する。増加した効率はこれらの活性の加算で予測される。
【0369】
ヘミ接合形質転換体の種子は回収され、ホモ接合植物を作製するために植え付けされている。
【0370】
上部EPA系統にセットされた種子は正常に見え、系統#10および#17からの種子は良く発芽し、T世代を確立した。EPAの無効(EPA無し)系統に対する比は、事象#28が単一遺伝子座であることを示し、したがってこの系統のT世代も確立した。T群の脂肪酸プロフィール分析は、導入遺伝子が、無効事象は一切見つからず、安定した量のEPAを伴ったホモ接合であったことを示した。全体のT群の総葉脂質におけるEPAの平均量は、9.4%±0.3(表22)であることが分かった。
【0371】
【表22】
【0372】
ホモ接合TN.タバカム植物の葉試料をさらに生化学分析に供した。全ての脂質を凍結乾燥した葉材料から抽出し、薄膜クロマトグラフィー(TLC)によって分画化した。EPAはN.タバカムTAGに最大30.1%で、ならびに、極性脂質に6.3%で存在したことが分かった(表23)。トランスジェニック経路によって生産されるEPAが、TAG、MGDG、DGDG、SQDG、PG、PC、PE、PIおよびPSを含む評価された総脂質分画に存在したことに留意するのは興味深い。総脂質プールは、低量の新規中間体またはω6LC−PUFA脂肪酸を、新規ω3のω6脂肪酸に対するTAG比が10:1の状態で含んでいた。
【0373】
ササゲの安定的形質転換
キメラベクターpORE04+11AB GBEC−ササゲ−EPA−挿入断片をササゲ(ビグナ・ウンギクラタ)に次の通りに形質転換した。成熟した乾燥種子が好ましい出発材料であるが、種子が最大新鮮重量である未熟なさやから回収した種子を使用してもよい。乾燥種子を手で脱穀し、種子の皮が破けるのを避け、したがって、微生物との混入を低減する。
【0374】
乾燥種子または未熟なさやを70%エタノールに2分間浸し、次いで、20%の市販の漂白剤(8.4g/Lの次亜塩素ナトリウム最終濃度)で30分間処理する。種子を次いで滅菌水で複数回洗浄する。未熟な種子をさやから無菌的に取り除き、一方で成熟種子を一晩水に浸した。2つの異なる外植片を、複数の芽作製のために使用し得、すなわち、胚軸および子葉そのもの、好ましくは二分した胚軸が付着した子葉である。芽および根端を、子葉節、すなわち、軸の子葉への付着点に傷をつける前に、軸から取り除く。19個の品種および系統の初期比較から、ササゲのほとんどの系統は形質転換され得ることが現在明確であり、唯一の注意は異なる組織培養条件が各系統のために最適化される必要があるということである。
【0375】
【表23】


【0376】
選択マーカー遺伝子、barまたはNptIIが形質転換のために使用され得る。アグロバクテリウム・ツメファシエンス株AGL1はササゲ形質転換に好ましい株である。pORE04+11ABGBEC−ササゲ−EPA−挿入断片ベクターを含むアグロバクテリウムを180rpmの振とう器で28℃にて一晩培養し、懸濁物を8000gで10分間遠心分離にかけ、培地1(10分の1に希釈し、30g/lのスクロース、加圧滅菌の前にpH5.6に調節し、フィルターを滅菌したMS−ビタミンを添加した20mMの2−MES、100mg/lのミオイノシトール、1.7mg/lのBAP、0.25mg/lのGA、0.2mMのアセトシリンゴン、250mg/lの
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、150mg/lのジチオスレイトールおよび0.4g/lのL−システインを含むMS塩基性培地)に再懸濁する。メスで分裂領域に傷をつけてから、外植片を振らずに細菌懸濁物に1時間浸す。処理した外植片を次いで滅菌フィルター紙上にブロットし、フィルター紙をかけた固定培地2(0.8%寒天を含む培地1)に移す。同時培養の4日後、発芽および形質転換した芽の選択のために、外植片を培地3(100mg/lのミオイノシトール、150mg/lのチメンチン、30g/Lのスクロース、3mMのMES、1.7mg/LのBAP、5mg/LのPPTまたは25〜50mg/Lのジェネテシンまたは150mg/Lのカナマイシン、0.8g/Lの寒天を添加し、pH5.6に調節した全強度MS培地)に移す。2週間後、初めの芽が見られる。子葉を子葉節領域から取り除き、培養物を新しい培地3に移す。死組織および瀕死の組織の除去に続いて、2週間ごとに培養物を新しい培地3に移す。初めの4つの継代培養物はカナマイシン選択上にあり、続いてジェネテシンおよびカナマイシンと交互にする。6継代培養後、生き残った若芽を、芽伸長のために、培地4(BAPを含まないが0.5mg/lのGA、50mg/lのアスパラギン、0.1mg/lの3−インドール酢酸(IAA)、150mg/lのチメンチンおよびPPT(10mg/1)、ジェネテシン(50mg/L)またはカナマイシン(150mg/L)のいずれかを添加した培地3)に移す。それぞれの芽が1cmの長さを超えるまで芽を2週間ごとに継代培養する。選択下でのさらなる成長のために、より大きなこれらの芽をペトリ皿から培養瓶(高さ80mm)に移す。
【0377】
再生した芽の大部分はインビトロで根を下ろし得、根を下ろした植物を土壌に移し、周囲室温条件に移す前に14〜21日間高湿度室で根付かせた。
【0378】
ササゲへの遺伝子移転を高めるために、同時培養培地にチオール化合物を添加した。L−システイン、ジチオスレイトールおよびチオ硫酸ナトリウムの添加によって傷をつけた組織の褐色化を緩和する。
【0379】
大量のササゲ外植片を単純化したプロトコルで処理してもよい。簡潔に、該プロトコルは次の工程から成る:滅菌化成熟種子を一晩水に浸す、その結果、その種子を縦に二分化することで外植片を導く、割れた胚軸(芽および根尖部は取り除かれている)は子葉にまだ付着している、分裂領域を局所的に傷つけることで補助されるアグロバクテリウム株AGL1との感染、チオール化合物を含む培地上で25℃にて光をうけて4日間にわたる同時培養、選択剤を含む培地上での発芽および芽の伸長、芽はインビトロで根付き、開花および結実のために室温条件へ移す、推定トランスジェニック植物のPCRまたは酵素分析、ならびに、PCRまたは酵素活性による次世代子孫のスクリーニング。
【0380】
トランスジェニックT植物の子孫は、表現型では正常である。導入遺伝子を子孫に伝え、ホモ接合T植物を、それらのT子孫を酵素活性に関してまたはPCRによってスクリーニングすることで同定する。
【0381】
この形質転換システムを用いて1000の外植片あたり約10個のトランスジェニック植物を作製し、これは、他のマメ科植物の形質転換頻度に類似している。形質転換される品種または系統によって、このプロトコルは、外植片調製からT種子回収まで、5〜8か月を必要とする。
【0382】
形質転換システムを使ってpORE04+11ABGBEC−ササゲ−EPA−挿入断片バイナリーベクターを再生、形質転換ササゲ植物に導入する。
【0383】
pORE04+11ABGBEC−ササゲ−EPA−挿入断片バイナリーベクターに対し、Δ5エロンガーゼおよびΔ4デサチュラーゼをコードする遺伝子を加える修飾を行い、生産したEPAをDHAにさらに変換する能力を与える遺伝子構築物を提供する。栄養組織でのDHAの生産のために、構築物を植物へ形質転換する。
【0384】
化学的選択を生き延びた少数の事象にEPAが存在することが分かった。最も高い系統は、総葉脂質中7.1%±0.2のEPA含んでいた。形質転換の速度は、6つの系統のみトランスジェニックが確認されたササゲに関して普段経験されるよりも低かった。何がこの結果をもたらしたのかは今のところはまだ分からないが、普段の大きさよりも大きいトランスジェニック事象が、不完全なT−DNA領域を含んでいたことに留意するのは興味深い。大きな構築物のサイズが効率の低下に寄与した可能性がある。3つの各トランスジェニック酵素の見かけの転換効率も算出した(表22)。天然ALAの初期Δ6不飽和化後のEPAへの良好な転換を伴い、結果は全3つの種においておおむね類似した。特定のΔ5エロンガーゼの不在にもかかわらず、EPAからDPAへのΔ5伸長が多少あったことが留意された。P.コルダタΔ6エロンガーゼは以前、低量のΔ9エロンガーゼ活性(すなわち、18:3Δ9、12、15から20:3Δ11、14、17への転換)を有すると示されてきたが、酵母菌アッセイではΔ5エロンガーゼ活性は一切検知されなかった。
【0385】
実施例10.Δ12デサチュラーゼ遺伝子の差異の試験
バイナリーベクター作製
一連のキメラΔ12デサチュラーゼ遺伝子を試験および比較する試みとして、複数のバイナリーベクターを作り、これらを使用してA.タリアナおよびB.ナプスを形質転換した。バイナリーベクターpJP3365、pJP3366、pJP3367、pJP3368およびpJP3369はそれぞれ、P.パストリスω3デサチュラーゼ(配列番号12)およびM.プシラΔ6デサチュラーゼ(配列番号16)酵素、および一連のΔ12デサチュラーゼの1つを含んでいた。Δ12デサチュラーゼはクリプトコッカス・ネオフォルマンス(Cryptococcusneoformans)(pJP3365において受託番号XP_570226)由来であり、遺伝子活性を増大する試みとしてL151M突然異変(pJP3366において)、ラカンセア・クルイベリ(pJP3367において配列番号10)、シネコシスティスPCC6803(pJP3368において受託番号BAA18169)およびクレピス・パラエスチナ(Crepis palaestina)(pJP3369において受託番号CAA76157、Lee et al.、1998)を含んだクリプトコッカス・ネオフォルマンスΔ12デサチュラーゼのバージョンである。クレピスデサチュラーゼはこの一連の中で唯一の植物デサチュラーゼであり;他は真菌酵素であった。野生型であったクレピス・パレスチナΔ12デサチュラーゼを除いた、各Δ12デサチュラーゼのための植物コドン最適化タンパク質コード領域を、FP1プロモーターに操作可能に結合して各デサチュラーゼの種子特異的発現を提供する配向で、ベクターpJP3364のNotI部位に挿入することで、ベクターを作った(図12参照)。ベクターpJP3364は、それぞれが種子特異的プロモーターの制御下にあるP.パストリスω3デサチュラーゼおよびM.プシラΔ6デサチュラーゼをコードするキメラ遺伝子をすでに含んでいた(図12)。3つの脂肪酸生合成酵素、すなわちΔ12デサチュラーゼ、ω3デサチュラーゼおよびΔ6デサチュラーゼの組み合わせを、オレイン酸(18:1Δ9)からSDA(18:4Δ6、9、12、15)に変換する経路を構築するよう設計した。したがって、アッセイを実行し、形質転換種子のSDA生産量を測定した。
【0386】
A.タリアナおよびB.ナプス形質転換および分析
キメラバイナリーベクターをA.ツメファシエンス株AGL1に導入し、形質転換したアグロバクテリウムの培養物からの細胞を用いて、形質転換のためにフローラルディップ方法を利用してfad2変異体A.タリアナ植物を形質転換した(CloughおよびBent、1998)。成熟後、処理した植物のT種子を回収し、各キメラベクターのT−DNA上に存在するNptII選択マーカー遺伝子を有する小植物の選択のために、カナマイシンを含むMSプレート上にプレート化した。生き残ったT実生を土壌に移した。植物を自家受精させ、成熟するまで成長させた後、これらの植物からのT種子を回収し、種子脂質の脂肪酸組成をGCによって分析した。
【0387】
キメラベクターpJP3367も使用して、実施例4に記載される方法でB.ナプスを形質転換し、12個のトランスジェニック事象を作製した。SDAは、植物のプール化した種子のうち0.6%から2.2%の範囲で見つかり、最も高いSDAトランスジェニック植物を有するトランスジェニック植物から、9個の別個の種子を脂肪酸組成に関して分析した。そのような分析の脂肪酸組成データは表24に示される。
【0388】
データによって、双方のA.タリアナおよびB.ナプスにおけるT−DNAのそれぞれから発現されるΔ12デサチュラーゼ活性は、予想に反して低く、GA7構築物の同じ発現カセットで見られた70〜80%(実施例2および3)ではなく約20%の酵素転換効率をもたらしたことが示された。これらのベクターからのΔ12デサチュラーゼ遺伝子の比較的不十分な発現の理由は不明であるが、全体の構築物での遺伝子の位置に関連し得る。
【0389】
対照的に、RT−PCR発現分析は、T−DNA上のP.パストリスω3デサチュラーゼおよびM.プシラΔ6デサチュラーゼ遺伝子は形質転換種子で比較的良好に発現されたことを示した。表24には、形質転換種子のΔ6デサチュラーゼ転換効率が含まれ、これは、あるB.ナプス形質転換系統では約11%〜約25%の範囲であった。これは、GA7構築物で形質転換したB.ナプス種子で見られた約7%のΔ6デサチュラーゼの転換効率よりも著しく高かった(実施例4)。
【0390】
【表24】
【0391】
したがって、pJP3367のT−DNAによってもたらされたより高いΔ6デサチュラーゼ転換効率を活用するために、このT−DNAで形質転換されたB.ナプス植物をpJP3416−GA7のT−DNAで形質転換した植物(実施例4)と交雑させ、双方のT−DNAを保有する後代植物および種子を作製した。F1種子から抽出された油の脂肪酸組成を、DHA含有量および他の脂肪酸含有量に関してGCで分析する。増加したDHA量が、Δ6デサチュラーゼの増加した発現の結果として観察される。双方のT−DNAにとってホモ接合である植物を作製し、該植物はより高い量のDHAを生産するはずである。
【0392】
実施例11.サイレンシング抑制因子タンパク質を用いることによる、脂肪酸の蓄積の増大
バイナリーベクターの構築
国際公開第2010/057246号で、植物の種子における導入遺伝子発現を増大させるためのサイレンシング抑制因子タンパク質(SSP)の使用が説明される。そのようなタンパク質が、複数の世代にわたって
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のLC−PUFAの生産を強化および安定させ得ることを実証するために、複数のSSP、すなわち、V2(受託番号GU178820.1)、p19(受託番号AJ288943.1)、p38(受託番号DQ286869.1)およびP0PE(受託番号L04573.1)を試験のために選択した。p19は、トマトブッシースタントウイルス(TBSV)由来の抑制因子タンパク質であり、これは、21個のヌクレオチドの長さのsiRNAが相同RNAのアルゴノート誘導切断を誘導する前に、21個のヌクレオチドの長さのsiRNAに結合する(Voinnet et al.、2003)。トマト黄化葉巻ウイルス(TYLCV)由来の抑制因子タンパク質であるV2は、ssRNA基質から二本鎖RNA中間体を生成するのに必要であると考えられるタンパク質である(Beclin et al.、2002)、植物タンパク質SGS3に結合し(Glick et al.、2008)、または、5’オーバーハングを有するdsRNA構造に結合する(Fukunaga et al.、2009)。p38は、ダイサーまたはアルゴノートタンパク質に結合することによって植物サイレンシングメカニズムに干渉する、ターニップクリンクルウィルス(TCV)由来の抑制因子タンパク質である(Azevedo et al.、2010)。ポレロウイルス由来の、P0PEおよびRPV−P0といったP0タンパク質は、強化した分解のためにアルゴノートタンパク質を標的とする(Baumberger et al.、2007;Bortolamiol et al.、2007、Fusaro et al.、2012)。したがって、LA(18:1Δ912)からARA(20:4Δ5、8、11、14)への生産のための一連の脂肪酸生合成遺伝子と組み合わせて、植物種子でのこれらSSPの発現のために、遺伝子構築物を次のように調製した。
【0393】
イソクリシス・ガルバナΔ9エロンガーゼおよびパブロバ・サリナΔ8およびΔ5デサチュラーゼをコードする脂肪酸生合成遺伝子および細菌選択マーカーを、9560bp断片を生じるPmeiおよびAvrIIでの消化によって、pJP3010の単一DNA断片上で得た。この断片上のΔ9エロンガーゼコード領域をA.タリアナFAE1プロモーター(pAtFAE1)およびコンリニン転写終結/ポリアデニル化領域(LuCnl2−3’)に結合させた。デサチュラーゼコード領域をそれぞれ切断ナピンFP1プロモーター(pBnFP1)およびnos3’転写終結/ポリアデニル化領域に結合させた。この断片上の3つの脂肪酸生合成遺伝子をpJP107と同じ方法で方向付けおよびスペース配置し(Petrie et al.、2012)、pJP107と同じタンパク質をコードさせた。DNA断片はまた、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするpCW141(国際公報第2010/057246号を参照)のpFP1:GFiP:nos3’遺伝子を含んでいた。このスクリーニング可能なマーカー遺伝子を、視覚的な種子特異的マーカーとして使用し、単純および非破壊的な同定が可能になり、それによって、その遺伝子を含み発現するトランスジェニック種子の選択が可能になった。
【0394】
それぞれが異なるSSP遺伝子を含む一連の5つのベクター(国際公報第2010/057246号)のそれぞれのPmeI−AvrII部位にPmeI−AvrII断片を挿入し、pFN045、pFN046、pFN047、pFN048およびpFN049と指定した遺伝子構築物をもたらした。これらは、SSPのP0PE、p38、p19、35S:V2およびV2をそれぞれコードする遺伝子を含む。各SSP遺伝子は、V2コード領域が恒常的CaMV35Sプロモーターの制御下である構築物pFN048を除いて、FP1プロモーターおよびocs3’転写終結/ポリアデニル化領域の制御下にあった。各例のSSP遺伝子は構築物のT−DNA領域内にあり、T−DNAの右境界(RB)に隣接した。pFN045をAhdIおよびNheIで消化し、続いてDNAリガーゼで再環状化してFP1:P0PE遺伝子を欠失することによって、いずれのSSPコード配列も欠如した第6の構築物、pFN050を作った。6つの各構築物は、T−DNA内およびT−DNAの左境界に隣接したNptII選択マーカー遺伝子を含んだ。構築物は全てアグロバクテリウムのプラスミドの維持のためのRK2複製開始点を有した。
【0395】
SSPと組み合わせたARA発現ベクターとのA.タリアナの形質転換
その種子脂質において高いリノール酸量を有するfad2/fae1二重変異体である、アラビドプシスの遺伝子型MC49を形質転換するために、フローラルディップ方法によって(CloughおよびBent、1998)、6つの各構築体pFN045〜pFN050で個別に形質転換したA.ツメファシエンス株GV3101で、植物を処理した。処理した植物を成熟するまで成長させ、それらから回収したT種子を、カナマイシンを含むMS培地上にプレートし、形質転換したT種子を選択した。種子のGFP発現のスクリーニングも、形質転換T種子のための視覚的なマーカーとして使用した。MS/Kanプレート上に生き残った、または、GFP陽性種子から得た実生を土壌に移し、T種子のために成熟まで成長させた。得られた形質転換植物の数は、pFN045、pFN046、pFN047、pFN048、pFN049およびpFN050との形質転換でそれぞれ5、14、32、8、23および24であった。この段階で、pFN046にp38をコードする遺伝子は機能的ではないことが分かり、したがって、ベクターpFN046で形質転換した植物を追加対照、すなわち、pFN050と基本的に同じであると見なした。
【0396】
FAME調製およびGC分析による種子脂質の脂肪酸組成決定のために、各形質転換植物から約100個のプール化したT種子を取り出した。各トランスジェニック系統からの6つのT実生も成長させ、T種子を作製した。
【0397】
種子から抽出した全ての脂質における脂肪酸組成を、GCを用いて決定した。分析によって、ある範囲のARAならびにT群の中間体EDA(20:2ω6)およびDGLA(20:3ω6)の量が示された。ARAに関するデータが図13および14に示される。
【0398】
図13は、T種子の群の脂質におけるARA量のボックスプロット分析を示す。ARA生合成遺伝子に加えてFP1:p19および35S:V2遺伝子を含む種子群のARAの中央(50パーセンタイル)値は、SSP遺伝子を含まないpFP050の欠陥FP1:p38遺伝子または対照T−DNA含む種子よりも、著しく高かった。p19およびV2をコードする遺伝子で形質転換した種子に関する平均ARA量は、p38遺伝子で形質転換した種子またはSSPを持たない種子に関してよりも多かった(図14)。1つのFP1:p19およぶ2つのFP1:V2系統は、約19%、20%および23%のARAをそれぞれ示した。これらは異常値であり、したがって、ボックスプロット分析の計算には含まれなかった。遺伝子FP1:P0PEおよび35S:V2を含むT−DNAで形質転換した植物は、他の構築物と比べてより少ない数で生き残った;これらの遺伝子はMC49背景では植物の健康に有害であり得ると考えられる。
【0399】
構築物の中でARA量が著しく異なるだけでなく、LAからARAの経路の第1の中間体、すなわちEDA(20:2ω6)の種子脂質における量もV2またはp19を発現する系統において、SSPを欠如するまたはp38構築物を含む種子よりも低く観察された(図15)。T種子では、p19を発現する構築物を含む1つの群は種子脂質中の総脂肪酸のパーセンテージとしての38%のARAを示した。
【0400】
ある範囲のトランスジェニックT系統をT世代まで進ませた。V2を発現するT種子のARAの量は、前の世代に比べて同じであるか、または、それらのT3親に比べて増加した量を確実に示すかのいずれかであった(図16)。p19を発現する系統は、さらにばらつきのあるARA量を示した。ARA量はいくつかの系統では低下した一方で、他ではT3親と比較して同じまたは増加していた。対照的に、欠陥p38遺伝子を含む、または、SSPを欠如する系統は、一般的にARAの量の低下および中間体の量の増加を示した(図18)。これらの系統のいくつかでは、ARAは約1%まで低下し、EDAの量は約20%まで増加した。T種子のARAの平均量は、p38を発現する、または、SSPを欠如する系統と比べて、p19およびV2を発現する系統に関してより高かった(図17)。
【0401】
この実験によって、LC−PUFA生合成経路のための遺伝子をさらに一緒に伴うトランスジェニック植物の種子におけるSSPの発現は、子孫の第1世代にて所望する脂肪酸の生産量を増加しただけでなく、子孫の第3または第4世代といった後代の世代での脂肪酸生産量を安定させた。増加した脂肪酸生産は、生合成経路での中間脂肪酸の量の低下を伴った。種子特異的プロモーターから発現されるSSPのp19およびV2が好ましかった。p38 SSPを発現するように設計された構築物は欠陥であり、この構築物では有効なデータは一切得られなかった。他のウイルス由来のV2 SSPおよびそのホモログは、特に好ましいと考えられ、なぜなら、これらは生合成経路遺伝子の最大発現および発育中の種子の同一細胞内での他の遺伝子の同時サイレンシングを可能にするからである。
【0402】
実施例12.油中のステロール含有量および組成のアッセイ
オーストラリアの商業的供給源から購入した12個の植物油試料の植物ステロールを、実施例1に記載される通り、GCおよびGC−MS分析によってO−トリメチルシリルエーテル(OTMSi−エーテル)として特徴づけた。保持データ、質量スペクトルの解釈ならびに文献および実験室標準質量スペクトルとの比較によってステロールを同定した。ステロールを、5β(H)−コラン−24−オール内部標準の使用によって定量化した。基本的な植物ステロール構造および同定ステロールのいくつかの化学構造が図19および表25に示される。
【0403】
分析した植物油は:ゴマ(セサマム・インディカム(Sesamum indicum))、オリーブ(オレア・エウロパエア)、ヒマワリ(ヘリアンサス・アヌス)、トウゴマ(リシヌス・コムニス(Ricinus communis))、キャノーラ(セイヨウアブラナ)、ベニバナ(カーサマス・ティンクトリアス(Carthamus tinctorius))、ピーナッツ(アラキス・ヒポガエア(Arachis hypogaea))、アマ(リヌム・ウシタティスシムム)およびダイズ(グリシン・マックス)由来である。全油試料のうち、主要な植物ステロールは相対存在量が多い順で:β−シトステロール(総ステロール含有量の28〜55%に及ぶ)、Δ5−アベナステロール(イソフコステロール)(3〜24%)、カンペステロール(2〜33%)、Δ5−スチグマステロール(0.7〜18%)、Δ7−スチグマステロール(1〜18%)およびΔ7−アベナステロール(0.1〜5%)であった。他のマイナーな複数のステロールを同定し、それらは:コレステロール、ブラシカステロール、カリナステロール、カンペスタノールおよびエブリコールであった。4つのC29:2および2つのC30:2ステロールも検知されたが、これらのマイナーな成分の同定を完成するには研究がさらに必要である。加えて、油のいくつかには他の同定されなかったステロールが複数存在したが、それらの大変低い存在量のために、質量スペクトルはそれらの構造の同定が可能になるほど十分強くなかった。
【0404】
油のmg/gとして表されるステロール含有量は、多い量の順で:キャノーラ油(6.8mg/g)、ゴマ油(5.8mg/g)、アマ油(4.8〜5.2mg/g)、ヒマワリ油(3.7〜4.1mg/g)、ピーナッツ油(3.2mg/g)、ベニバナ油(3.0mg/g)、ダイズ油(3.0mg/g)、オリーブ油(2.4mg/g)、トウゴマ油(1.9mg/g)であった。%ステロール組成および総ステロール含有量が表26に示される。
【0405】
【表25】
【0406】
全種子油試料の中で、主要な植物ステロールは一般的にβ−シトステロール(総ステロール含有量の30〜57%に及ぶ)であった。他の主要なステロールの割合では、油間で大きな幅があった:カンペステロール(2〜17%)、Δ5−スチグマステロール(0.7〜18%)、Δ5−アベナステロール(4〜23%)、Δ7−スチグマステロール(1〜18%)。異なる種の油は異なるステロールプロフィールを有し、いくつかは大変特徴的なプロフィールを有していた。キャノーラ油の場合、キャノーラ油は一番大きな割合のカンペステロール(33.6%)を有し、一方で、他の種の試料は一般的により低い量を有し、たとえば、ピーナッツ油では最大17%であった。ベニバナ油は比較的大きな割合のΔ7−スチグマステロール(18%)を有する一方で、このステロールは通常他の種の油では低く、ヒマワリ油では最大9%である。ステロールプロフィールは各種に対して特有であるので、したがって、ステロールプロフィールを使用して特定の野菜または植物油の同定を助け、および、純種性および他の油との不純物混和を確認し得る。
【0407】
表26.アッセイした植物油のステロール含有量および組成
【0408】
【表26】
【0409】
ヒマワリおよびベニバナそれぞれの2つの試料を比較し、各場合で、1つは種の冷圧によって作製し、精製しておらず、一方で、他方は冷圧せず、精製した。いくつか違いが観察されたものの、2つの油の源は類似したステロール組成および総ステロール含有量を有し、処理および生産はこれら2つのパラメーターには効果をほとんど有さなかったことを示している。試料間のステロール含有量は3倍ばらつき、1.9mg/gから6.8mg/gに及んだ。キャノーラ油は一番高いステロール含有量を有し、トウゴマ油は一番少ないステロール含有量を有した。
【0410】
実施例13.sn−2TAG位置でのDHAの蓄積の増加
本発明者らは、TAGのsn−2位置でのDHA蓄積は、1−アシル−グリセロール−3−リン酸アシルトランスフェラーゼ(LPAAT)をGA7構築物またはその変異形によって提供されるようなDHA生合成経路と一緒に同時発現することで増加し得ることを考察した。好ましいLPAATは、多価不飽和C22脂肪アシル−CoAに基質として作用するものであり、内因性LPAATに比べ、PAを形成するLPAのsn−2位置での多価不飽和C22鎖の挿入の増加につながる。細胞質LPAAT酵素はしばしば、特にその種がTAGにて異常な脂肪酸を合成および蓄積する場合、様々な基質の好みを示す。リムナンテス・ダグラシー(Limnanthes douglasii)由来のLPAAT2は、PA合成のためにエルコイル−CoA(C22:1−CoA)を基質として用いることが示され、これは、C22基質を使用し得ない同じ種由来のLPAAT1とは対照的であった(Brown et al.、2002)。
【0411】
公知のLPAATを企図し、試験のために複数を選択し、sn−2位置でDHAの取り込みを増加することが期待されないものがいくつか対照として含まれた。公知のLPAATには:シロイヌナズナLPAAT2:(配列番号63、受託番号ABG48392、Kim et al.、2005)、リムナンテス・アルバLPAAT(配列番号64、受託番号AAC49185、Lassner et al.、1995)、サッカロマイセス・セレビシエSlclp(配列番号65、受託番号NP010231、Zou et al.、1997)、モルティエレラ・アルピナLPAAT1(配列番号67、受託番号AED33305;米国特許第7879591号)およびB.ナプスLPAAT(配列番号68および配列番号69、それぞれ受託番号ADC97479およびADC97478)が含まれた。これらを選択してLPAAT酵素の3つのグループを包含した:1)異常な長鎖多価不飽和脂肪酸に対して通常低活性を有する対照植物種子LPAAT(アラビドプシスおよびブラシカLPAATを含む)、2.基質としてC22アシル−CoA、この場合エルカ酸C22:1を用いることでC22脂肪酸に作用することが以前に実証されたLPAAT(リムナンテスおよびサッカロマイセスLPAATを含む)、3.EPAおよびDHAといった長鎖多価不飽和脂肪酸を基質として使用できる可能性が高いと発明者らが考えるLPAAT(モルティエレラLPAATを含む)。
【0412】
アラビドプシスLPAAT2(LPAT2とも呼ばれる)はC16およびC18基質に対して活性を有することが示される、小胞体に局在した酵素であるが、C20またはC22基質に対する活性は試験されなかった(Kim et al.、2005)。リムナンテス・アルバLPAAT2は、C22:1アシル鎖をPAのsn−2位置に挿入することが実証されたが、DHAを基質として使用する能力は試験されなかった(Lassner et al.、1995)。選択されたS.セレビシエLPAAT Slclpは、18:1−CoAに加えて22:1−CoAを基質として使用して活性を有することが示され、鎖長に関する幅広い基質特異性を示唆する(Zou et al.、1997)。再び、DHA−CoAおよび他のLC−PUFAは基質として試験されなかった。モルティエレラLPAATは、トランスジェニックヤロウイア・リポリティカのEPAおよびDHA脂肪酸基質に対して活性を有することが以前に示された(米国7879591)。
【0413】
発明者らは、さらなるLPAATを同定した。ミクロモナス・プシラは、この種のTAG上のDHAの分布は確認されていないが、その油中にDHAを生産および蓄積する微細藻類である。アラビドプシスLPAAT2をBLAST問い合わせ配列として使用してミクロモナス・プシラゲノム配列を調査することで、ミクロモナス・プシラLPAAT(配列番号66、受託番号XP_002501997)を同定した。候補配列が複数生じ、配列XP_002501997を、C22 LC−PUFAに対する活性を伴う可能性の高いLPAAT酵素として試験するために合成した。リシヌス・コムニスLPAATをトウゴマゲノム配列の推定LPAATとして注釈した(Chan et al.、2010)。トウゴマゲノム由来の4つの候補LPAATを合成し、浸潤したN.ベンサミアナ葉組織の粗葉可溶化物で試験した。ここに記載される候補配列はLPAAT活性を示した。
【0414】
複数の候補LPAATを、系統樹上に公知のLPAATと一緒に配列した(図20)。推定ミクロモナスLPAATは推定C22 LPAATとクラスター化しなかったが、分岐配列であったことが留意された。
【0415】
様々なLPAATの、基質としてDHA−CoAを使用する能力の初期試験として、キメラ遺伝子構築物を、N.ベンサミアナ葉における外因性LPAATの恒常的発現のために作製し、それぞれは次の通りに、35Sプロモーターの制御下にある:35S:Arath−LPAAT2(アラビドプシスER LPAAT);35S:Ricco−LPAAT2;35S:Limal−LPAAT(リムナンテス・アルバLPAAT);35S:Sacce−Slclp(S.セレビシエLPAAT);35S:Micpu−LPAAT(ミクロモナス・プシラLPAAT);35S:Moral−LPAAT1(モルティエレラ・アルピナLPAAT)。外因性LPAATを欠如する35S:p19構築物を対照として実験で用いる。これら構築物をそれぞれ、実施例1で記載される通りにアグロバクテリウム経由でN.ベンサミアナ葉に導入し、浸潤から5日後、処理した葉の区域を切断し、すりつぶして葉可溶化物を作る。各可溶化物には、LPAを合成するための外因性LPAATならびに内因性酵素が含まれる。14Cで標識したOA、LAまたはALA(C18基質)、ARA(C20基質)およびDHA(C22)を可溶化物に別々に添加することで、インビトロの反応を3通りで準備する。反応を25℃でインキュベートし、14Cで標識した脂肪酸のPAへの取り込みの量をTLCで測定する。ARAおよびC18脂肪酸と比較して、各LPAATのDHAを用いる能力を算出する。メドウフォーム、モルティエレラおよびサッカロマイセスLPAATは、DHA基質に活性を有することが発見され、放射標識したPAはこれらに関しては現れたが、他のLPAATに関しては現れなかった。全LPAATは、類似したオレイン酸供給によって活性であると確認された。
【0416】
種子のLPAAT活性を試験するために、タンパク質コード配列またはLPAATを複数コンリニン(pLuCnl1)プロモーターの制御下でバイナリーベクターに挿入する。次いで、キメラ遺伝子、Cnl1:Arath−LPAAT(陰性対照)、Cnl1:Limal−LPAAT、Cnl:Sacce−SlclpおよびCnl1:Moral−LPAATをそれぞれ含む、結果として得られた遺伝子構築物を用いてB.ナプスおよびA.タリアナ植物を形質転換し、種子特異的な方法でLPAATを発現する安定した形質転換体を作製する。Cnl1:LPAAT構築物を有する形質転換植物を、種子でDHAを生産するGA7構築物またはその変異形を発現する植物(実施例5)と交雑し、TAGのsn−2位置でのDHAの取り込みの増加につながる。また、構築物を用いて、GA7構築物およびその変異形をすでに含むB.ナプス、C.サティバおよびA.タリアナ植物(実施例2から5)を形質転換して親およびLPAAT遺伝子構築物の双方を保有する子孫を作製する。TAGのsn−2位置でのDHAの取り込みの増加は、LPAATコード導入遺伝子を欠如する植物での取り込みに相対的であると予想される。油含有量も種子で改善され、特に、より多い量のDHAを生産する種子に関して改善され、実施例2で説明されるアラビドプシス種子で見られる傾向を相殺する。
【0417】
広義的に説明される本発明品の趣旨または範囲から逸脱することなく、数多くの変化および/または修正が特定の実施形態で示される本発明品になされ得ることが、当業者には理解されるだろう。したがって、本実施形態は全ての点において例示的であり制限的ではないと見なされる。
【0418】
本出願は、2012年6月15日に出願された米国第61/660,392号、2012年6月22日に出願された米国第US61/663,344号、2012年9月6日に出願された米国第61/697,676号、2013年3月14日に出願された米国第61/782,680号からの優先権を主張し、それぞれの全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0419】
本明細書で考察および/または参照された出版物はすべてその全体が本明細書に組み込まれる。
【0420】
本出願は、2012年6月15日に出願された米国第61/660,392号、2012年6月22日に出願された米国第61/663,344号および2012年9月6日に出願された米国第61/697,676号を、参照により本明細書に組み込む。
【0421】
本明細書に含まれる文書、法令、材料、デバイス、品物などの考察はいずれも、本発明の文脈を提供する目的のためのみである。これらの事柄のいずれかまたは全てが先行技術の基盤の一部を形成する、または、本出願の各請求項の優先日以前に存在した通り、本発明に関連した当該分野では共通の常識であったということが承認としては見なされない。
【0422】
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]