(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242887
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】低エネルギーフィードスペーサを用いる膜ろ過
(51)【国際特許分類】
B01D 63/10 20060101AFI20171127BHJP
B01D 63/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B01D63/10
B01D63/00 510
【請求項の数】16
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-520275(P2015-520275)
(86)(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公表番号】特表2015-526282(P2015-526282A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】US2013046101
(87)【国際公開番号】WO2014004142
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】61/690,419
(32)【優先日】2012年6月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515000281
【氏名又は名称】コンウェッド プラスチックス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キッドウェル, アレクサンダー ジェイムズ
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−237554(JP,A)
【文献】
特開平09−038410(JP,A)
【文献】
特開2005−305422(JP,A)
【文献】
特開2004−283708(JP,A)
【文献】
特開昭62−161364(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0182774(US,A1)
【文献】
特開2010−089081(JP,A)
【文献】
米国特許第04710185(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/205520(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル型ろ過エレメントであって、前記スパイラル型ろ過エレメントは、
少なくとも1つの孔が画定されている中心集水管と、
前記中心集水管に取り付けられ、かつ、スペーサによって分離された2枚の膜シートを有する少なくとも1枚の封筒状膜であって、前記中心集水管の周囲に巻き付けられることによりスパイラルを形成するように構成された少なくとも1枚の封筒状膜と、
前記中心集水管に巻き付けられたときに少なくとも1枚の膜シートに隣接して配置されるように、かつ、ろ過される液体を受け取る流路を形成するように構成された少なくとも1つのフィードスペーサと
を備え、
前記フィードスペーサは、
第1の方向に延在する第1の組の平行ストランドであって、第1の太さを有する複数の第1のストランドと前記第1の太さより小さい第2の太さを有する複数の第2のストランドとを含む第1の組の平行ストランドと、
前記第1の方向を横切る第2の方向に延在する第2の組の平行ストランドと
を含む網を備え、
前記第1の組のストランドおよび前記第2の組のストランドが常に互いに同じ側に位置し、
前記第2の組の平行ストランドは、第3の太さを有する複数の第3のストランドと前記第3の太さより小さい第4の太さを有する複数の第4のストランドとを含み、
前記第1の組の平行ストランドは、交互の第1のストランドおよび第2のストランドを含み、前記第2の組の平行ストランドは、交互の第3のストランドおよび第4のストランドを含む、スパイラル型ろ過エレメント。
【請求項2】
前記第1のストランドおよび前記第3のストランドは、5ミルから40ミルの太さを有し、前記第2のストランドおよび前記第4のストランドは、3ミルから35ミルの太さを有する、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項3】
前記第1のストランドおよび前記第3のストランドは、8ミルから35ミルの太さを有し、前記第2のストランドおよび前記第4のストランドは、5ミルから15ミルの太さを有する、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項4】
前記第1のストランドおよび前記第3のストランドは、10ミルから30ミルの太さを有し、前記第2のストランドおよび前記第4のストランドは、7ミルから12ミルの太さを有する、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項5】
前記第1のストランドおよび前記第3のストランドは、同じ太さを有し、前記第2のストランドおよび前記第4のストランドは、同じ太さを有する、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項6】
前記網は、前記第1のストランドと前記第3のストランドとの交差部において、25ミルから50ミルの総厚さを有する、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項7】
前記第1の組の平行ストランドは、前記第2の組の平行ストランドに対して垂直である、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項8】
前記第1の組の平行ストランドは、前記エレメントの長手方向軸に平行な方向において65度から110度の角度で前記第2の組の平行ストランドと交差している、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項9】
前記スパイラル型ろ過エレメントの圧力降下が、実質的に同一の太さを有するストランドを備えるフィードスペーサを有する同じスパイラル型ろ過エレメントに比較して少なくとも10%低減する、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項10】
前記フィードスペーサは、0.1重量%から10重量%の超高分子量ポリエチレンを含む、請求項1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
【請求項11】
押出成形網であって、前記押出成形網は、
第1の方向に延在する第1の組の平行ストランドであって、第1の太さを有する複数の第1のストランドと前記第1の太さより小さい第2の太さを有する複数の第2のストランドとを含む第1の組の平行ストランドと、
前記第1の方向を横切る第2の方向に延在する第2の組の平行ストランドであって、第3の太さを有する複数の第3のストランドと前記第3の太さより小さい第4の太さを有する複数の第4のストランドとを含む第2の組の平行ストランドと
を備え、
前記第1の組のストランドおよび前記第2の組のストランドが常に互いに同じ側に位置し、前記第1の組の平行ストランドは、交互の第1のストランドおよび第2のストランドを含み、前記第2の組の平行ストランドは、交互の第3のストランドおよび第4のストランドを含む、押出成形網。
【請求項12】
0.1重量%から10重量%の超高分子量ポリエチレンをさらに含む、請求項11に記載の押出成形網。
【請求項13】
前記第1のストランドおよび前記第3のストランドは、5ミルから40ミルの太さを有し、前記第2のストランドおよび前記第4のストランドは、3ミルから35ミルの太さを有する、請求項11に記載の押出成形網。
【請求項14】
前記第1のストランドおよび前記第3のストランドは、8ミルから35ミルの太さを有し、前記第2のストランドおよび前記第4のストランドは、5ミルから15ミルの太さを有する、請求項11に記載の押出成形網。
【請求項15】
前記網は、前記第1の組の平行ストランドと前記2の組の平行ストランドとの交差部において、25ミルから50ミルの総厚さを有する、請求項11に記載の押出成形網。
【請求項16】
前記第1の組の平行ストランドは、前記エレメントの長手方向軸に平行な方向において65度から110度の角度で前記第2の組の平行ストランドと交差している、請求項11に記載の押出成形網。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年6月26日に出願された米国仮特許出願第61/690,419号明細書の利益を主張し、その開示内容は全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、逆浸透システム等、膜ろ過に使用される押出成形網に関する。
【背景技術】
【0003】
膜ろ過は、供給液または流入液を生成物流および濃縮物流に分離するために使用されるプロセスである。通常、供給物流は、ろ過または脱塩する必要がある水であり、それにより、水を、飲用用途、農業用途および工業用途に使用することができる。膜ろ過では、膜は、いくつかの化合物を通過させる一方で他の化合物を排除する障壁として作用する。1つのタイプの膜ろ過は、圧力駆動プロセスである逆浸透(RO)ろ過である。浸透中、水は、浸透平衡に達するまで、浸透圧により高溶質濃度の領域から低溶質濃度の領域に拡散する。逆浸透は、浸透圧を克服し高溶質濃度の水を強制的に膜に通して低溶質体積に拡散させ、それにより溶質を残すために、高溶質濃度の体積に圧力が加えられるプロセスである。ROろ過で使用される膜は、非常に選択的であり、ほぼまったく溶質を通過させない。
【0004】
1つのタイプのROろ過システムは、スパイラル型エレメントシステムとして知られている。このシステムでは、1つまたは複数の封筒状膜が細長い集水管の周囲に巻き付けられている。各封筒状膜は、2つの膜外面と、集水管の側壁の孔と連通する、膜外面の間の透過水シートとを備えている。各封筒状膜の一方の側にフィードスペーサが配置されており、それにより、封筒状膜が集水管の周囲に巻き付けられた時、封筒状膜およびフィードスペーサの交互の層によってスパイラル構成が形成される。集水管、封筒状膜およびフィードスペーサは、結合してスパイラル型エレメントを形成する。通常、複数のエレメントが直列にかつ並列に結合されてより体積の大きい供給液を処理する。
【0005】
使用時、スパイラル型エレメントは圧力容器内に配置され、高濃度の溶質を含有する水(供給水として知られる)が、圧力下で圧力容器の一端に圧送される。供給水は、フィードスペーサによって生成される封筒状膜の間の流路を通ってスパイラル型膜に入り、集水管の軸に対して平行に進む。供給水の一部は、浸透圧を超える供給水の高圧のために、膜を通って透過水シート内に拡散する。透過水シートは、水を、集水管に達してその後スパイラル型エレメントの端部まで軸方向に進むまで、スパイラル方向に案内する。膜を通って拡散しない供給水は、軸方向に進み続け、通常、第1スパイラル型エレメントに直列に接続された別のスパイラル型エレメントに移送される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの孔が画定されている中心集水管と、中心集水管に取り付けられ、かつスペーサによって分離された2枚の膜シートを有する少なくとも1枚の封筒状膜であって、中心集水管の周囲に巻き付けられてスパイラルを形成するように構成された少なくとも1枚の封筒状膜と、中心集水管に巻き付けられた時に少なくとも1枚の膜シートに隣接して配置されるように、かつろ過される液体を受け取る流路を形成するように構成された少なくとも1つのフィードスペーサとを備える、スパイラル型ろ過エレメントが提供される。フィードスペーサは、第1方向に延在し、かつ第1太さを有する複数の第1ストランドおよび第1太さより小さい第2太さを有する複数の第2ストランドを含む、第1組の平行ストランドと、第1方向に対して横切る第2方向に延在する第2組の平行ストランドとを含む網を備えることができる。第1組のストランドおよび第2組のストランドは、常に互いに同じ側に位置することができる。
【0007】
少なくとも1つの実施形態では、第1方向に延在し、かつ第1太さを有する複数の第1ストランドおよび第1太さより小さい第2太さを有する複数の第2ストランドを含む、第1組の平行ストランドと、第1方向に対して横切る第2方向に延在し、かつ第3太さを有する複数の第3ストランドおよび第3太さより小さい第4太さを有する複数の第4ストランドを含む、第2組の平行ストランドとを備える押出し成形網が提供される。第1組のストランドおよび前記第2組のストランドは、常に互いに同じ側に位置することができ、第1組の平行ストランドは交互の第1ストランドおよび第2ストランドを含むことができ、第2組の平行ストランドは交互の第3ストランドおよび第4ストランドを含むことができる。
【0008】
少なくとも1つの実施形態では、少なくとも1つの孔が画定されている中心集水管と、中心集水管に取り付けられ、かつスペーサによって分離された2枚の膜シートを有する少なくとも1枚の封筒状膜であって、中心集水管の周囲に巻き付けられてスパイラルを形成するように構成された少なくとも1枚の封筒状膜と、中心集水管に巻き付けられた時に少なくとも1枚の膜シートに隣接して配置されるように、かつろ過される液体を受け取る流路を形成するように構成された少なくとも1つのフィードスペーサとを備えるスパイラル型ろ過エレメントが提供される。フィードスペーサは、第1方向に延在し、かつ第1太さを有する複数の第1ストランドおよび第1太さより小さい第2太さを有する複数の第2ストランドを含む、第1組の平行ストランドと、第1方向に対して横切る第2方向に延在し、かつ第3太さを有する複数の第3ストランドおよび第3太さより小さい第4太さを有する複数の第4ストランドを含む、第2組の平行ストランドとを含む網を備えることができる。第1組のストランドおよび第2組のストランドは、常に互いに同じ側に位置することができる。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
少なくとも1つの孔が画定されている中心集水管と、
前記中心集水管に取り付けられ、かつスペーサによって分離された2枚の膜シートを有する少なくとも1枚の封筒状膜であって、前記中心集水管の周囲に巻き付けられてスパイラルを形成するように構成された少なくとも1枚の封筒状膜と、
前記中心集水管に巻き付けられた時に少なくとも1枚の膜シートに隣接して配置されるように、かつろ過される液体を受け取る流路を形成するように構成された少なくとも1つのフィードスペーサであって、
第1方向に延在し、かつ第1太さを有する複数の第1ストランドおよび前記第1太さより小さい第2太さを有する複数の第2ストランドを含む、第1組の平行ストランドと、
前記第1方向に対して横切る第2方向に延在する第2組の平行ストランドと、
を含む網を備え、
前記第1組のストランドおよび前記第2組のストランドが常に互いに同じ側に位置している、フィードスペーサと、
を具備するスパイラル型ろ過エレメント。
(項目2)
前記第2組の平行ストランドが、第3太さを有する複数の第3ストランドと前記第3太さより小さい第4太さを有する複数の第4ストランドとを含む、項目1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目3)
前記第1組の平行ストランドが、交互の第1ストランドおよび第2ストランドを含む、項目1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目4)
前記第1組の平行ストランドが、交互の第1ストランドおよび第2ストランドを含み、前記第2組の平行ストランドが、交互の第3ストランドおよび第4ストランドを含む、項目2に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目5)
前記第1ストランドおよび前記第3ストランドが、太さが5ミルから40ミルであり、前記第2ストランドおよび前記第4ストランドが、太さが3ミルから35ミルである、項目2に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目6)
前記第1ストランドおよび前記第3ストランドが、太さが8ミルから35ミルであり、前記第2ストランドおよび前記第4ストランドが、太さが5ミルから15ミルである、項目2に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目7)
前記第1ストランドおよび前記第3ストランドが、太さが10ミルから30ミルであり、前記第2ストランドおよび前記第4ストランドが、太さが7ミルから12ミルである、項目2に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目8)
前記第1ストランドおよび前記第3ストランドが同じ太さであり、前記第2ストランドおよび前記第4ストランドが同じ太さである、項目2に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目9)
前記網が、前記第1ストランドと前記第3ストランドとの交差部における総厚さが25ミルから50ミルである、項目2に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目10)
前記第1組の平行ストランドが、前記第2組の平行ストランドに対して垂直である、項目1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目11)
前記第1組の平行ストランドが、前記エレメントの長手方向軸に対して平行な方向において65度から110度の角度で前記第2組の平行ストランドと交差している、項目1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目12)
前記スパイラル型ろ過エレメントの圧力降下が、実質的に太さが同一であるストランドを備えるフィードスペーサを有する同じスパイラル型ろ過エレメントに比較して少なくとも10%低減する、項目1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目13)
前記フィードスペーサが、0.1重量%から10重量%の超高分子量ポリエチレンを含む、項目1に記載のスパイラル型ろ過エレメント。
(項目14)
第1方向に延在し、かつ第1太さを有する複数の第1ストランドおよび前記第1太さより小さい第2太さを有する複数の第2ストランドを含む、第1組の平行ストランドと、
前記第1方向に対して横切る第2方向に延在し、かつ第3太さを有する複数の第3ストランドおよび前記第3太さより小さい第4太さを有する複数の第4ストランドを含む、第2組の平行ストランドと、
を具備し、
前記第1組のストランドおよび前記第2組のストランドが常に互いに同じ側に位置し、前記第1組の平行ストランドが交互の第1ストランドおよび第2ストランドを含み、前記第2組の平行ストランドが交互の第3ストランドおよび第4ストランドを含む、押出成形網。
(項目15)
0.1重量%から10重量%の超高分子量ポリエチレンをさらに含む、項目14に記載の押出成形網。
(項目16)
前記第1ストランドおよび前記第3ストランドが、太さが5ミルから40ミルであり、前記第2ストランドおよび前記第4ストランドが、太さが3ミルから35ミルである、項目14に記載の押出成形網。
(項目17)
前記第1ストランドおよび前記第3ストランドが、太さが8ミルから35ミルであり、前記第2ストランドおよび前記第4ストランドが、太さが5ミルから15ミルである、項目14に記載の押出成形網。
(項目18)
前記第1組の平行ストランドと前記2組の平行ストランドとの交差部における総厚さが25ミルから50ミルである、項目14に記載の押出成形網。
(項目19)
前記第1組の平行ストランドが、前記エレメントの長手方向軸に対して平行な方向において65度から110度の角度で前記第2組の平行ストランドと交差している、項目14に記載の押出成形網。
(項目20)
少なくとも1つの孔が画定されている中心集水管と、
前記中心集水管に取り付けられ、かつスペーサによって分離された2枚の膜シートを有する少なくとも1枚の封筒状膜であって、前記中心集水管の周囲に巻き付けられてスパイラルを形成するように構成された少なくとも1枚の封筒状膜と、
前記中心集水管に巻き付けられた時に少なくとも1枚の膜シートに隣接して配置されるように、かつろ過される液体を受け取る流路を形成するように構成された少なくとも1つのフィードスペーサであって、
第1方向に延在し、かつ第1太さを有する複数の第1ストランドおよび前記第1太さより小さい第2太さを有する複数の第2ストランドを含む、第1組の平行ストランドと、
前記第1方向に対して横切る第2方向に延在し、かつ第3太さを有する複数の第3ストランドおよび前記第3太さより小さい第4太さを有する複数の第4ストランドを含む、第2組の平行ストランドと、
を含む網を備え、
前記第1組のストランドおよび前記第2組のストランドが常に互いに同じ側に位置している、フィードスペーサと、
を具備するスパイラル型ろ過エレメント。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】少なくとも1つの実施形態による逆浸透スパイラル型エレメントの切取図である。
【
図2】少なくとも1つの実施形態による網の斜視図である。
【
図3】少なくとも1つの実施形態による網の上面図である。
【
図4】少なくとも1つの実施形態による隣接する膜シートの間の網の断面図である。
【
図5】隣接する膜シートの間の従来技術による網の断面図である。
【
図6】少なくとも1つの実施形態による隣接する膜シートの間の網の断面の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
要求に応じて、本発明の詳細な実施形態を本明細書に開示するが、開示する実施形態は、さまざまなかつ代替的な形態で具現化することができる本発明を単に例示するものであることが理解されるべきである。図は、必ずしも正確な縮尺ではなく、いくつかの特徴を、特定の構成要素の細部を示すために誇張しているかまたは最小化している場合がある。したがって、本明細書に開示する具体的な構造的詳細および機能的詳細は、限定するものとしてではなく、単に、当業者に対して本発明をさらざまに採用するように教示するための代表的な基礎として解釈されるべきである。
【0011】
実施例を除き、または明示的に示す場合を除き、本明細書において反応および/または使用の材料または条件の量を示すすべての数量は、本発明の最も広い範囲を示すために「約」という語で修飾されているものとして解釈されるべきである。言及する数値的限界の範囲内での実施が概して好ましい。また、明示的に反対に述べられている場合を除き、パーセント値、「一部」の値および比率の値は、重量により、「ポリマー」という用語は、「オリゴマー」、「コポリマー」、「ターポリマー」等を含み、本発明に関連して所与の目的に対して好適であるかまたは好ましいものとしての材料の群または種類の記載は、その群または種類のうちのいずれかの2つ以上の要素の混合物が等しく好適であるかまたは好ましいことを意味し、化学用語での成分の記載は、その記載で指定されるあらゆる組合せに添加する時点での成分を指し、混合された混合物の成分間の化学的相互作用を必ずしも排除するものではなく、頭字語または他の略語の最初の定義は、本明細書において、同じ略語の後続するすべての使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法的変形に対して必要な変更を加えて適用される。
【0012】
図1を参照すると、逆浸透(RO)システムスパイラル型エレメント1が示されている。ROシステムが示されているが、同じ概略構成は、一般的な膜ろ過システムに適用可能である。スパイラル型エレメント(エレメント)1は、典型的には、圧力容器2(図示せず)内に配置されるように構成されている。エレメント1は、少なくとも1枚の封筒状膜4を備え、それは、スペーサ、一般に透過水シート8を封入する2枚の膜シート6を含む。透過水シート8は、軸方向に間隔を空けて配置された孔12を有する集水管10に一方の側に沿って取り付けられている。各封筒状膜4の間にフィードスペーサ14が、各封筒状膜4の少なくとも1枚の膜シート6がフィードスペーサ14と接触するように設けられている。封筒状膜4およびフィードスペーサ14が集水管10を軸方向中心にしてスパイラルに丸められると、スパイラル型エレメント1が形成される。フィードスペーサ14は、隣接する膜シート6の間に流路16を形成し、供給液が膜シート6の表面に沿って通過するのを可能にする。
【0013】
エレメント1が圧力容器内に配置されると、供給液は圧力下で供給液入口端部18に提供され、液体は、フィードスペーサ14によって形成された流路16に入る。供給液は、集水管10に対して平行な軸方向に進む。供給液が膜シート6の表面を横切って進むに従い、液体の一部は、圧力下で膜シート6を通って透過水シート8内に拡散する。供給液に比較してわずかの溶質を含むかまったく含まないこの液体は、その後、スパイラル経路において透過水シート8を通り集水管10の孔12を通って進む。集水管10を通って進む液体を、概して、浸透水または生成液と呼ぶ。膜シート6を通って拡散しない供給液は、エレメント1の出口端部20に達するまで軸方向に進み続ける。エレメント1の出口端部20において、生成液は取り除かれ、残りの供給液は、概して、別のスパイラル型エレメント1に移送され、プロセスを繰り返して生成物液の歩留りを上昇させる。
【0014】
一般的な膜ろ過には、特にROろ過の場合、いくつかの難題がある。1つの難題は、スパイラル型エレメントの長手方向長さに沿った、直列に接続されている場合は1つのろ過エレメントから次のろ過エレメントにおける、圧力降下である。フィードスペーサは、スパイラル型エレメントを通る供給液の流れに抵抗するため、主な圧力降下源である。その結果、ROろ過システムにおいてフィード圧を上昇させなければならず、それにより運用コストおよび保守コストが増大する。第2の難題は、ファウリング、特にバイオファウリングである。ファウリングは、膜の上で堆積物が蓄積するかまたは成長する時に発生し、それによってフィード圧を上昇させる必要がある可能性があり、かつファウリングは、膜に損傷を与えるかまたは膜の耐用年数を短縮する可能性がある。バイオファウリングは、堆積物が、細菌、真菌、原生動物等、本質的に生物学的である場合に発生する。これらの微生物は、膜の上に堆積する可能性がありかつ/または膜の上で成長する可能性があり、効率を低減し洗浄を必要とする。第3の難題は、膜表面またはその近くで塩濃度が上昇する濃度分極である。これにより、膜の表面で浸透圧が上昇し、液体透過が低減し溶質透過が増大することになる可能性がある。フィードスペーサは、これらの問題に対処しかつ/またはそれらを軽減する役割を果たす。
【0015】
図2〜
図4を参照すると、本開示は、圧力降下、バイオファウリングおよび濃度分極等の問題に対処しながら、相対的に高いROろ過処理能力を提供する、フィードスペーサ14を提供する。少なくとも1つの実施形態では、本開示のフィードスペーサ14は、第1組のストランド32および第2組のストランド34を備えた押出成形網30として形成される。少なくとも1つの実施形態では、第1組のストランド32のストランドは、互いに平行に配置されかつ第1方向に延在し、第2組のストランド34のストランドは、互いに平行に配置され、かつ第1方向に対して略横切る第2方向に延在している。少なくとも1つの実施形態では、第1方向および第2方向は実質的に垂直であり、それにより、第1ストランド32および第2ストランド34は直角(90°)に交差している。
【0016】
しかしながら、第1ストランド32および第2ストランド34は90°以外の角度で交差することができることが理解されるべきである。一実施形態では、第1ストランド32および第2ストランド34は、エレメントの長手方向軸に対して平行な方向に60度から120度の角度で交差する。別の実施形態では、第1ストランド32および第2ストランド34は、エレメントの長手方向軸に対して平行な方向に65度から110度の角度で交差する。別の実施形態では、第1ストランド32および第2ストランド34は、エレメントの長手方向軸に対して平行な方向に70度から100度の角度で交差する。別の実施形態では、第1ストランド32および第2ストランド34は、エレメントの長手方向軸に対して平行な方向に75度から90度の角度で交差する。
【0017】
少なくとも1つの実施形態では、ストランド32および34は、押出成形ダイから出る時または出た直後に交差して網状構造を形成する、押出成形ポリマー細長部材である。この実施形態では、ストランド32および34は、網30を通して互いに同じ側のままである。しかしながら、ストランド32および34を、押出成形中に交差させるのではなく合わせて編むかまたは織る押出成形ストランドから形成することも可能である。ストランド32および34を、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、アセタール、フルオロポリマー、ポリウレタンおよびエラストマー等のあらゆる好適な材料から作製することができる。少なくとも1つの実施形態では、ストランド32および/または34はポリプロピレンから作製される。別の実施形態では、ストランド32および/または34は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)または超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)等のポリエチレンから作製される。少なくとも1つの実施形態では、ストランド32および34は同じ材料から作製される。しかしながら、他の実施形態では、ストランド32をストランド34とは異なる材料から作製することができることが企図される。
【0018】
図2〜
図4に示す例として、少なくともいくつかの実施形態では、ストランド32および34の両方の組が、少なくとも2つの異なるサイズのストランドを含む。ストランド32および34の各組は、Aとして識別される大きいストランドとBとして識別されるそれより小さいストランドとを含む。したがって、第1組のストランド32は、第1太さの複数の第1ストランド(Aストランド)と第2太さの複数の第2ストランド(Bストランド)とを有し、第2組のストランド34は、第3太さの複数の第3ストランド(Aストランド)と第4太さの複数の第4ストランド(Bストランド)とを有する。ストランドAおよびBは、AがBより相当大きい限り、別々にいかなる好適なサイズでもあり得る。
【0019】
交互のAストランドおよびBストランドを有するストランド32、34の両方の組を備えたフィードスペーサ14が、ROスパイラル型エレメントに対して最も有効な構成であると目下考えられ、それは、こうした構成が、膜シート6とともに流路16の完全性を維持するのに十分な支持点密度を依然として維持しながら圧力降下の低減を可能にするためである。さらに、ストランド32および34の両方の組が交互のAストランドおよびBストランドを有する場合、フィードスペーサ14を横切る流れは、流路16において実質的に対称であり、各膜シート6を同様の条件にさらす。しかしながら、いくつかの実施形態では、ストランド32またはストランド34の一方の組が、太さが均一なストランド、たとえばAストランドのみまたはBストランドのみを有する場合があり、ストランド32またはストランド34の他方の組が、上述したようにAストランドおよびBストランドの両方を有する。さらに他の実施形態では、ストランド32および34の一方または両方が、第3太さのストランド、すなわちAストランドおよびBストランドとは異なるCストランドを含む場合がある。
【0020】
一実施形態では、ストランドAは、太さが、5000分の1インチから40000分の1インチ、すなわち5ミルから40ミル(0.127mmから1.016mm)である。別の実施形態では、ストランドAは、太さが8ミルから35ミル(0.203mmから0.889mm)である。別の実施形態では、ストランドAは、太さが10ミルから30ミル(0.254mmから0.762mm)である。別の実施形態では、ストランドAは、太さが15ミルから25ミル(0.381mmから0.635mm)である。さらに別の実施形態では、ストランドAは、太さが20ミル(0.508mm)である。一実施形態では、ストランドBは、太さが3ミルから35ミル(0.076mmから0.889mm)である。別の実施形態では、ストランドBは、太さが3ミルから25ミル(0.076mmから0.635mm)である。別の実施形態では、ストランドBは、太さが3ミルから20ミル(0.076mmから0.508mm)である。別の実施形態では、ストランドBは、太さが5ミルから15ミル(0.127mmから0.381mm)である。別の実施形態では、ストランドBは、太さが7ミルから12ミル(0.178mmから0.305mm)である。さらに別の実施形態では、ストランドBは、太さが10ミル(0.254mm)である。少なくとも1つの実施形態では、ストランド32のAストランドおよびBストランドは、ストランド34のAストランドおよびBストランドと太さが同じである。別の実施形態では、ストランド32および34のAストランドは太さが同じであり、Bストランドは太さが異なる。別の実施形態では、ストランド32および34のBストランドは太さが同じであり、Aストランドは太さが異なる。さらに別の実施形態では、ストランド32および34両方のAストランドおよびBストランドは太さが異なる。
【0021】
少なくとも1つの実施形態では、ストランド32および34(AおよびB)は円形断面を有している。しかしながら、あらゆる好適な形状を利用することができることが企図される。ストランドが円形断面を有する場合、太さは、ストランド32および34の直径を測定することによって測定される。ストランド32および34が円形断面を有するいくつかの実施形態では、ストランド32および34の太さは、それらの長さを通して実質的に一定のままである。しかしながら、他の実施形態では、ストランド32および34は、交差箇所38の間に太さの低減した部分を有することができる。
【0022】
図4において最もよく示すように、ストランド32および34の3つの異なるタイプの交差部、すなわちA/A、A/BおよびB/Bがあるため、網30の厚さは均一ではない。比較のために、
図5に、ストランド太さが均一であり総厚さが均一である、典型的な従来技術によるフィードスペーサを示す。
図6に、太さが22ミルであるAストランドおよび太さが12ミルであるBストランドを含む網30の一例を、2枚の膜シートの間の断面で示す。2つのAストランドが交差する時、網30の厚さはその最大であり、2つのBストランドが交差する時、網30の厚さはその最小である。本明細書で用いる網30の総厚さは、2つのAストランドの交差部38、すなわち網30の最大厚さを指す。さらに、網30の厚さは、Aストランドの太さの2倍に常に対応するとは限らない。
図4に示すように、2つのストランドは、交差箇所38において部分的に融合する、すなわち互いに「沈み込む」場合がある。ストランド32および34の融合の量は、処理パラメータに基づいて変化する可能性がある。一実施形態では、それは0.1%から30%であり得る。別の実施形態では、融合の量は5%から20%であり得る。別の実施形態では、融合の量は10%から15%であり得る。たとえば、各々、直径が20ミル(0.508mm)である2つのAストランドの交差部38において、網30の厚さは、40ミル(1.016mm、各ストランドの太さの2倍)ではなく34ミル(0.864mm)であり得る。この例では、15%の融合がある。
【0023】
少なくとも1つの実施形態では、網30は、交差箇所38で測定すると、総厚さが20ミルから80ミル(0.508mmから2.032mm)である。別の実施形態では、網30は、総厚さが22ミルから65ミル(0.559mmから1.651mm)である。別の実施形態では、網30は、総厚さが25ミルから50ミル(0.635mmから1.270mm)である。別の実施形態では、網30は、総厚さが28ミルから45ミル(0.711mmから1.143mm)である。別の実施形態では、網30は、総厚さが30ミルから40ミル(0.762mmから1.016mm)である。
【0024】
図2〜
図4に示す実施形態では、ストランド32および34は、各々、交互のAストランドおよびBストランドを有しており、すなわち、ストランド順序はABAB…である。交互のストランド順序は、ROスパイラル型レメント1に対して最も有効な順序であると目下考えられており、それは、より一貫したかつ/または一定の流量を提供し、乱流生成と流路16の支持との間の最も有効なバランスを提供するためである。しかしながら、複数のAストランドがBストランドの間で繰り返されるかまたはその逆である(たとえば、ABBABBまたはAABAAB)他のストランド順序も企図される。さらに、AストランドおよびBストランドを、ブロックで、たとえばAABBまたはAAABBで配置することができる。
図2〜
図4に示す実施形態では、ストランド32および34は同じストランド順序を有しているが、ストランド32および34は、上記のあらゆる組合せであり得る異なるストランド順序を有することができる。
【0025】
ストランド32および34の組のストランドは、それらの間に、ストランド間隔である均一の間隔を有することができる。ストランド32および34は、
図2〜
図4に示す実施形態ではストランド間隔が同じであるが、ストランド間隔は、ストランドの各組に対して異なり得る。ストランド間隔を、1インチ辺りのストランドの数として測定することができる。少なくとも1つの実施形態では、ストランド間隔は、1インチ辺り2ストランドから30ストランドである。別の実施形態では、ストランド間隔は、1インチ辺り3ストランドから25ストランドである。別の実施形態では、ストランド間隔は、1インチ辺り5ストランドから20ストランドである。別の実施形態では、ストランド間隔は、1インチ辺り7ストランドから15ストランドである。さらに別の実施形態では、ストランド間隔は、1インチ辺り9ストランドである。さらに、ストランド32および34の交差部によって形成されるさまざまなサイズの開口部40を利用することができることが理解されるべきである。さらに、図面では孔または開口部40は正方形であるように示すが、あらゆる好適な形状およびサイズを利用することができることが理解されるべきである。たとえば、ストランド32および34が垂直であり、1組のストランドが他の組のストランドよりストランド間隔が小さい場合、矩形開口部40を形成することができる。ストランド32および34が垂直でない場合、開口部40は菱形の形状であり得る。
【0026】
交互ストランド設計とも呼ぶストランド32および34の交互の太さが、特に圧力降下、バイオファウリング、膜損傷および濃度分極等の範囲において、現時点で入手可能なフィードスペーサに対して改善をもたらす。後述する利点は、純水または飲用水を得るための塩水のろ過について述べるが、同じ原理は他の供給液のろ過にも適用される。
【0027】
交互ストランド設計(ASD)により、全体を通してストランド太さが均一である従来のフィードスペーサに比較して圧力降下が低減する。一実施形態では、ASDフィードスペーサを有する膜ろ過エレメントにおける圧力降下は、従来のフィードスペーサ(すなわち、
図5に示すような太さが均一なストランドを有するフィードスペーサ)を有する同じエレメントより少なくとも10%小さい。別の実施形態では、ASDフィードスペーサを有する膜ろ過エレメントにおける圧力降下は、従来のフィードスペーサを有する同じエレメントより少なくとも15%小さい。別の実施形態では、ASDフィードスペーサを有する膜ろ過エレメントにおける圧力降下は、従来のフィードスペーサを有する同じエレメントより少なくとも20%小さい。別の実施形態では、ASDフィードスペーサを有する膜ろ過エレメントにおける圧力降下は、従来のフィードスペーサを有する同じエレメントより少なくとも25%小さい。別の実施形態では、ASDフィードスペーサを有する膜ろ過エレメントにおける圧力降下は、従来のフィードスペーサを有する同じエレメントより少なくとも30%小さい。別の実施形態では、ASDフィードスペーサを有する膜ろ過エレメントにおける圧力降下は、従来のフィードスペーサを有する同じエレメントより少なくとも35%小さい。
【0028】
いかなる特定の理論にもとらわれることなく、圧力降下の低減は、少なくとも部分的に、(すべてAストランドである従来のフィードスペーサに比較して)Bストランドの低減したストランド表面積によると考えられる。ストランド表面積が低減することにより、形状抗力が低減することになり、したがってそうした表面積の低減は、網30の上を通り膜シート6の表面を横切って流れる水に対する網30の抵抗を低減するのに役立つ。従来のフィードスペーサ網(すなわち、ストランド太さが均一である網)と比較した全体的な網ストランド表面積の低減は、AストランドおよびBストランドの太さに基づいて変化する。少なくとも1つの実施形態では、全体的な網ストランド表面積は少なくとも10%低減する。別の実施形態では、全体的な網ストランド表面積は少なくとも25%低減する。
【0029】
ASDの別の結果は、同じ供給量での従来のフィードスペーサに比較して、塩水または他の液体の流速が低下することである。流速の低下により、膜表面におけるせん断応力が低下し、塩水における乱流が低減することになる。せん断応力および乱流は、バイオファウリングおよび濃度分極等の問題を対処するのに有益であるため(後述する)、流量を増大させて流速、せん断応力および乱流を典型的なレベル(すなわち、典型的な、ストランド太さが均一なフィードスペーサによって達成されるレベル)に戻すことが有利である。しかしながら、ASDフィードスペーサ14が用いられる場合の流量の増大により、典型的なスパイラル型エレメントの場合より高いレベルまで圧力降下が増大しない。対照的に、圧力降下は、典型的なエレメントにおけるより低いままであり得る。その結果、ROろ過システムを、典型的なシステムより高い供給量で、ただし同じかまたはより小さい圧力降下ならびに同じかまたはより優れたせん断応力および乱流で動作させることができる。別法として、ろ過システムを、典型的なシステムと同じ供給量でただし圧力降下を低減させて動作させることができる。したがって、いずれの動作方法でも、エネルギー消費を低下させることができる。
【0030】
バイオファウリングは、膜表面における微生物の堆積および/または成長であり、圧力降下の増大、膜を通る水の拡散の低減、および膜を通過する塩の量の増大をもたらす可能性がある。バイオファウリングは、フィードスペーサが膜と接触する領域において増大する。ASDにより、フィードスペーサ14と膜シート6との間の接触面積が低減し、したがってバイオファウリングが低減し、それは、ストランド32および34のBストランドが膜シート6と接触しないためである。典型的な網30は、全体を通して厚さが均一であり、したがって、すべての交差箇所38が隣接する膜シート6両方と接触する。ASDである網30を有するエレメント1では、大部分の交差箇所38が、隣接する膜シート6の一方のみとしか接触しないかまたはいずれとも接触しない。
図4に示すように、BBストランドの交差部38は、隣接する膜シート6のいずれとも接触せず、ABストランドの交差部38は、一方の隣接する膜シート6のみと接触する。膜6との接触面積が低減することに加えて、ASDのフィードスペーサ14により、ストランドが相対的に細い領域における水の流速が低くなる。水の流速が高いことは、よりバイオファウリングの成長に関連し、それは、より多くの栄養が水の流速の高い領域に向かうためである。したがって、ASDフィードスペーサ14の水の流量が低いということは、Bストランドの領域に有機栄養がより少なく、それによりそれらの領域のバイオファウリングが低減することを意味する。
【0031】
バイオファウリングの蓄積をさらに低減するために、ストランド32および34に低COFコーティングを被覆することができ、またはそれらの組成に低COF添加剤を含めることができる。一実施形態では、低COF添加剤は、(概して、分子量が100万Daから600万Daである)UHMWPEである。別の実施形態では、低COF添加剤はポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標)(Teflon)としても知られる)である。低COF添加剤は、存在する場合、フィードスペーサ14の0.1重量%から10重量%であり得る。別の実施形態では、低COF添加剤は、フィードスペーサ14の1重量%から7.5重量%であり得る。別の実施形態では、低COF添加剤は、フィードスペーサ14の約5重量%であり得る。低COF添加剤は、活性成分および不活性成分を含むことができる。一実施形態では、低COF添加剤は、0.1重量%から75重量%の活性成分を含む。別の実施形態では、低COF添加剤は、1重量%から50重量%の活性成分を含む。別の実施形態では、低COF添加剤は、10重量%から40重量%の活性成分を含む。別の実施形態では、低COF添加剤は、活性成分の約25重量%を含む。低COF添加剤の残りは、担体樹脂等、不活性担体であり得る。担体樹脂は、ポリオレフィン、たとえばLDPE、HDPEまたはポリプロピレン(PP)であり得る。
【0032】
バイオファウリングを低減することにより、膜ろ過エレメントに対して1年で必要な膜洗浄サイクルの回数を低減させることができる。膜を洗浄するために使用される化学物質が膜損傷をもたらす可能性があり、したがって、バイオファウリングの低減により膜損傷もまた低減させることができる。バイオファウリングを低減させることに加えて、ASDであるフィードスペーサ14と膜シート6との間の接触面積が低減することによってもまた膜損傷が低減する。膜シート6と接触する交差部38が少なくなることにより、フィードスペーサ14と膜シート6との間で発生する引っ掻きおよびこすれが低減する結果となる。
【0033】
さらに、ASDフィードスペーサ14を使用することで圧力降下が低減するため、フィードスペーサ14を、他の点では同様のエレメント1に対して従来のフィードスペーサより薄くすることができる。従来のフィードスペーサが、ASDフィードスペーサ14と同じ厚さであるように薄くなった場合、エレメント1において許容できない圧力降下がある可能性がある。フィードスペーサ14を薄くすることにより、より多くの封筒状膜4を集水管10の周囲に巻き付けることができ、それによりエレメント1内の膜シート6表面積の量が増大し、それは典型的には最大径が約16インチである。
【実施例】
【0034】
実施例1
ASDフィードスペーサを用いる2つの半塩水逆浸透(BWRO)ろ過システムを巻回し、厚さが均一な従来のフィードスペーサを用いる2つのBWROろ過システムと比較した。ろ過エレメントは、直径が8インチであり長さが40インチであって、それらを、下記表1に示す条件下で1時間同時に試験した。ASDフィードスペーサおよび従来のフィードスペーサはともに、厚さが34ミル(約0.86mm)であり、25枚の膜シートおよび12枚のフィードスペーサを有していた。試験の結果を以下の表2に示す。ASDフィードスペーサおよび従来のフィードスペーサに対する除去率(たとえば、膜シートを通過させなかった溶質のパーセント)は同様であった。ASDフィードスペーサを有するエレメントは、1日辺りのm
3に関してわずかに流量が高かった。ASDスペーサを有するエレメントの圧力降下(ΔP)は、従来のスペーサを有するエレメントと比較して約23.3%の平均低減を示した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
実施例2
総厚さが75ミルである従来のダイヤモンドフィードスペーサと総厚さが75ミルであるASDフィードスペーサとを、3D印刷を用いて製作した。従来のフィードスペーサは、37.5ミルの均一なストランド太さであった。ASDフィードスペーサは、太さが37.5ミルの大きい(A)ストランドと18.75ミルである小さい(B)ストランドを有していた(たとえば、Bストランドは、太さがAストランドの太さの1/2に等しかった)。それらのフィードスペーサを、Sterlitech SEPA CF Membrane Element Cell(「フローセル」)を用いて試験した。従来のスペーサおよびASDスペーサを、2.0ガロン/分および1.0ガロン/分の流量で試験した。結果により、2.0ガロン/分の流量の場合、ASDスペーサは、従来のスペーサに比較して圧力降下が16.79%低減したことが分かった。1.0ガロン/分の流量では、ASDスペーサは、従来のスペーサに比較して圧力降下が30.05%低減した。結果を以下の表3に示す。
【0038】
【表3】
【0039】
実施例3
数値流体力学(CFD)を用いるシミュレーション試験を、非圧縮ニュートン流体の層流に対するNavier−Stokes方程式を用いて行った。2つの条件、すなわち一定の入口流速および一定の供給流量を試験した(条件は表4に示し、結果は表5に示す)。シミュレーションの結果により、0.16m/sの一定の入口流速では、従来のスペーサに比較してASDフィードスペーサでは、圧力降下が27%低減したことが分かった。16L/hの一定の供給流量では、シミュレーション結果により、従来のスペーサに比較してASDフィードスペーサでは、圧力降下が32%低減したことが分かった。入口流速が0.16m/sで一定に保持される場合、ASDフィードスペーサは、従来のスペーサに比較して供給流量が5.9%増大した。供給流量が16L/hで一定に保持された場合、ASDフィードスペーサは、従来のスペーサに比較して入口流速が5.6%低下した。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
例示的な実施形態を上述したが、これらの実施形態は本発明のすべてのあり得る形態を記述するようには意図されていない。そうではなく、本明細書で用いられる語は、限定ではなく説明の語であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくさまざまな変更を行うことができることが理解される。さらに、さまざまな実施する実施形態の特徴を組み合わせて、本発明のさらなる実施形態を形成することができる。