(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242891
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】原子力発電所全交流電源喪失時の受動式発電
(51)【国際特許分類】
G21D 5/04 20060101AFI20171127BHJP
G21D 5/14 20060101ALI20171127BHJP
G21C 15/18 20060101ALI20171127BHJP
H02N 11/00 20060101ALI20171127BHJP
G21D 3/04 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
G21D5/04
G21D5/14
G21C15/18 M
H02N11/00 A
G21D3/04 Q
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-524300(P2015-524300)
(86)(22)【出願日】2013年7月9日
(65)【公表番号】特表2015-528118(P2015-528118A)
(43)【公表日】2015年9月24日
(86)【国際出願番号】US2013049627
(87)【国際公開番号】WO2014018247
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年4月19日
(31)【優先権主張番号】61/674,878
(32)【優先日】2012年7月24日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/764,804
(32)【優先日】2013年2月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】デデラー、ジェフリー、ティー
(72)【発明者】
【氏名】ペレーゴ、キャサリン
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0260309(US,A1)
【文献】
特表2010−505382(JP,A)
【文献】
特表2010−505384(JP,A)
【文献】
特開昭62−039792(JP,A)
【文献】
特開平05−256994(JP,A)
【文献】
特開平06−281779(JP,A)
【文献】
特開2010−276564(JP,A)
【文献】
特開2005−049135(JP,A)
【文献】
特開2001−242287(JP,A)
【文献】
特開平05−223980(JP,A)
【文献】
特開平04−262297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 15/18
G21D 5/04−5/16
G21D 3/04
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核分裂が起きる原子炉(60)の炉心内を循環する冷却材により炉心内で発生する熱が有用な仕事をするための利用回路へ運ばれる原子力発電所(22)であって、
当該原子力発電所は、万一異常な運転状態が生じた場合原子炉(60)の停止後に炉心で発生する残留熱を放散させるための冷却材残留熱除去回路(98)を含み、
当該冷却材残留熱除去回路は、炉心から残留熱除去回路(98)を介して或る量の冷却材を搬送するための残留熱除去導管(12)を含み、当該残留熱除去導管は非断熱部分(13)を含み、
当該冷却材残留熱除去回路はさらに、非断熱部分(13)と熱交換関係にある第1の構成部分と、当該非断熱部分を取り囲む環境と熱交換関係にある第2の構成部分とをそれぞれが有する複数の熱機関(10)であって、残留熱除去導管(12)と当該非断熱部分を取り囲む環境との間の温度差に応答して、異常な運転状態への対処を支援する補助動力源として、電力または機械力を発生させる熱機関を含み、
当該冷却材残留熱除去回路はさらに、複数の凹部(146)がその外側表面に存在する熱伝導性クランプ(138)を含み、当該複数の凹部の少なくとも一部の凹部のそれぞれに当該複数の熱機関のうちの対応するものを支持することによって、当該熱機関の少なくとも第1の構成部分を当該非断熱部分の近傍に固着すること、
を特徴とする原子力発電所。
【請求項2】
前記熱機関が熱電発電機(10)である請求項1の原子力発電所(22)。
【請求項3】
前記熱機関(10)がランキンサイクルエンジンまたはスターリングサイクルエンジン(148)である請求項1の原子力発電所(22)。
【請求項4】
前記残留熱除去回路(98)が水室(16)を有する受動式残留熱除去熱交換器(14)を含み、前記非断熱部分(13)が水室に接続する配管区間(12)および/または水室の表面上に存在する請求項1の原子力発電所(22)。
【請求項5】
万一異常な運転状態が生じたとき原子力発電所を首尾よく運転停止するための除熱および監視システムを含み、受動的に起動する独立のオンサイト電源によって1つ以上の除熱および監視システムが少なくとも部分的に作動し、前記熱機関が当該受動的に起動する独立のオンサイト電源の作動期間を引き延ばすために接続されている、請求項1の原子力発電所(22)。
【請求項6】
冷却材が前記残留熱除去回路(98)を介して流れ始めた場合にのみ前記熱機関が作動する請求項1の原子力発電所(22)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、「Passive Power Production During SBO With Thermo−Electric Generation」と題する2012年7月24日に提出された米国仮特許出願第61/674,878号に基づく優先権を主張する。
【0002】
本発明は概して原子力発電所に関連し、具体的には、従来型のオンサイトおよびオフサイト電源を喪失した緊急運転停止状態において、原子力発電所内の安全設備に補助電源を提供するために受動的に起動する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
加圧水型原子炉等の原子炉は、冷却材を加熱するための原子燃料を格納している原子炉圧力容器と、冷却材から有用な仕事をするためのエネルギーを抽出するように作動する蒸気発生器とを貫く冷却回路を介して、冷却材を高圧下で循環させる。典型的には、残留熱除去システムが、運転停止時に圧力容器から崩壊熱を除去するために設けられる。冷却材が喪失した場合、冷却材を補給するための手段が設けられている。冷却材がほんの少量失われることがあるが、その際、相対的に小さな高圧補給水供給源から、原子炉冷却材回路を減圧することなく、冷却材を追加注入することができる。大量の冷却材が失われると、大量の水を収容している低圧供給源から冷却材を追加する必要がある。ポンプにより原子炉冷却材回路の実質的な作動圧力(例えば2,250psi、すなわち150バール)を克服するのは困難であることから、大量の冷却材が失われた場合、原子炉冷却材回路を減圧して、原子炉システムの格納容器シェル内の周囲圧力下で格納容器内燃料交換用水貯蔵タンクから冷却水を追加できるようにする。
【0004】
ペンシルベニア州クランベリー郡区に所在のウェスチングハウス・エレクトリック・カンパニーLLCが提供し、本発明がその一部を構成するAP1000型原子炉システム22(
図1に示す)の一次回路は、一次冷却材回路を減圧するための段階的な減圧システムを用いており、これを
図1、2に示す。一連の弁72は、原子炉出口56(一次冷却材回路の「ホットレグ」とも呼ばれる)を、格納容器内の燃料交換用水貯蔵タンク50内にあるスパージャ74を介して、格納容器シェル54の内部と結合する。当該スパージャは、ホットレグ冷却材のエネルギーを、タンク内の燃料交換用水へ放散する。タンクが加熱されて蒸気を放出すると、格納容器シェル内で蒸気が凝結する。最初に減圧を開始する時、冷却材回路46と格納容器内燃料交換用水貯蔵タンクとは、減圧弁72により、実質的な背圧を持つ流路に沿って1本以上の小導管76を介して結合される。冷却回路内の圧力が下がるにつれて、減圧弁72が段階的に作動して新たな導管が開き、冷却材回路46と格納容器シェル54との間により大きなおよび/または直接的な流路が開通する。
【0005】
初期の減圧段階では、導管によって冷却材回路ホットレグ56に接続された加圧器タンク80が、格納容器内燃料交換用水供給タンク50の中のスパージャ74に結合される。スパージャ74はタンク内で水没している小噴射口に至る導管を備えており、これによって背圧が発生し、スパージャがタンク50内に放出した蒸気が凝縮して水になる。連続的な減圧段階における導管の内径は、段階的に大きくなる。最終段階では、大きな導管84がホットレグを、格納容器シェル54内の、例えば原子炉回路46のホットレグ56が通過する主冷却材ループコンパートメント40に直接的に結合する。この構成によれば、冷却材回路内の圧力は、各原子炉導管に突発的な水圧荷重をかけることなく、迅速に、実質的に大気圧まで低減される。圧力が十分に低くなると、格納容器内燃料交換用水貯蔵タンク50から冷却材回路に、重力により水が流入し、追加される。
【0006】
AP1000(登録商標)型原子炉システムにおける自動減圧は、原子炉冷却材回路に大きな破損が生じたような重大な冷却材喪失事故が発生した場合で、炉心が確実に冷却されるようにする受動式安全措置である。格納容器内燃料交換用水貯蔵タンクが重力により排水されるので、ポンプは不要である。原子炉容器がある格納容器建屋の底部へ水が排出されると、格納容器内の水の流体圧力ヘッドは、ポンプ等の能動的要素に頼らずに、減圧された冷却材回路内に水を強制的に導入するのに十分な大きさになる。一旦冷却材回路が大気圧となり格納容器が冠水すると、水は継続して原子炉容器内に強制的に導入され、そこで沸騰して原子燃料を冷却する。蒸気の形で原子炉冷却材回路から漏れる水は、格納容器シェルの内壁で凝縮し、格納容器内燃料交換用水貯蔵タンクに戻され、再び原子炉冷却材回路内に注入される。
【0007】
AP1000(登録商標)型原子力発電所は、全交流電源喪失、すなわち従来型のオンサイトおよびオフサイト電源が全て失われた場合に、プラントが安全に停止し、受動式システムだけで安全な停止状態に至るように設計されている。ここで言う従来型のオンサイトおよびオフサイト電源とは、オンサイトおよびオフサイトでの従来式発電によって得られる電力のことである。数個の簡素な弁が自動的に作動すると、受動式安全系統が適切な構成にセットされる。多くの場合、これらの弁は「フェイルセーフ」であり、弁を通常の閉位置に保つには電源が必要である。電源が失われると、これらの弁が開いて安全系統を適切な構成にする。いずれの場合も、これらの弁は、ばね、圧縮ガス、またはバッテリーに蓄積されたエネルギーによって作動する。プラントは、この状態を介入なしに72時間以上保つように設計されており、この期間を過ぎると、対処期間を延長するには運転員による何らかの操作が必要である。最初の72時間の間、バッテリー群を使用して、必要な機器およびプラント監視計器などに給電する。運転停止時およびその後の期間にプラントで得られるエネルギーを利用して、この対処期間を72時間よりも引き延ばすための別の受動的手段を検討するのが望ましい。
【0008】
したがって、本発明の目的は、プラント内の資源を利用することにより、運転員の介入やオフサイト電源の支援なしに72時間を超えてプラントを安全に保つことである。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、既存のプラントシステムの運転を変更せずに、そのような対処期間の延長を行うことである。
【発明の概要】
【0010】
前述の目的を達成するために、本発明は、核分裂が起きる原子炉の炉心内を循環する冷却材により炉心内で発生する熱が有用な仕事をするための利用回路へ運ばれる原子力発電所を提供する。この原子力発電所は、特に万一異常な運転状態が生じた場合、原子炉の停止後に炉心で発生する残留熱を放散させるための冷却材残留熱除去回路を含む。残留熱除去回路は、炉心から残留熱除去回路を介して或る量の冷却材を搬送するための残留熱除去導管を含み、当該残留熱除去導管は非断熱部分を含む。残留熱除去回路はまた、残留熱除去導管の非断熱部分と熱交換関係にある第1の構成部分と、当該非断熱部分を取り囲む環境と熱交換関係にある第2の構成部分とを
それぞれが有する
複数の熱機関を含む。前記熱機関は、前記残留熱除去導管と前記非断熱部分を取り囲む環境との間の温度差に応答して、異常な運転状態への対処を支援する補助動力源として、電力または機械力を発生させる。
前記残留熱除去回路はさらに、複数の凹部がその外側表面に存在する熱伝導性クランプを含み、その少なくとも一部の凹部のそれぞれに前記複数の熱機関のうちの対応するものを支持することによって、当該熱機関の少なくとも第1の構成部分を当該非断熱部分の近傍に固着する。
【0011】
別の一実施態様において、前記熱機関は、ランキンサイクルエンジンまたはスターリングサイクルエンジンである。前記残留熱除去回路は、水室を有する受動式残留熱除去熱交換器を含み、前記非断熱部分は、水室に接続する配管部分および/または水室の表面上に存在するのが好ましい。
【0012】
一般的に原子力発電所は、万一異常な運転状態が生じたとき原子力発電所を首尾よく運転停止するための除熱および監視システムを含んでいる。本発明の別の実施態様では、受動的に起動する独立のオンサイト電源によって1つ以上の除熱および監視システムが少なくとも部分的に作動し、当該受動的に起動する独立のオンサイト電源の作動期間を引き延ばすため
に前記熱機関が接続されている。冷却材が前記残留熱除去回路を介して流れ始めた場合にのみ、前記
熱機関が作動するのが望ましい。
【0013】
本発明の詳細を、好ましい実施態様を例にとり、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明によって利益が得られる受動式炉心冷却系の主要構成要素の等角図である。
【0015】
【
図2】一連の熱電発電パネルが懸架された受動式残留熱除去熱交換器入口配管区間の非断熱部分を示す概略図である。
【0016】
【
図3】受動式残留熱除去熱交換器の水室の断面図である。
【0017】
【
図4】図
3に示す受動式残留熱除去熱交換器の水室下側の平面図である。
【0018】
【
図5】全交流電源喪失時に原子炉システムを安全な状態に保つための構成機器作動用補助電源として使用できる熱電素子の概略図である。
【0019】
【
図6】1個の熱電発電素子の電力と時間との関係を示すグラフである。
【0020】
【
図7】熱電発電機アセンブリの総電力を示すグラフである。
【0021】
【
図8】円管の一区間に熱電発電素子を取り付けるための取付クランプの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から、残留熱除去系98は、原子炉冷却材配管56のホットレグに接続する導管58を、格納容器内燃料交換用水貯蔵タンク(IRWST)50内で冠水する受動式残留熱除去熱交換器(PRHR)14に接続したものであることが分かる。PRHR熱交換器の出口配管12は蒸気発生器30の水室に接続されているので、冷却材の流れはコールドレグ配管36内に差し向けられ、原子炉容器60へ還流する。この受動式冷却系が起動すると、自然循環作用のみによって前述の回路内で流れが生じ、高温の原子炉冷却材がPRHR熱交換器内に送り込まれ、そこでエネルギーの一部がIRWST内の水に放散される。温度が低下した冷却材はその後、原子炉容器に還流する。ホットレグの冷却材とコールドレグの冷却材との間の温度差が両者間に密度差をもたらすため、冷却材が受動的に流れるようになる。PRHR入口配管58の一部は、意図的に断熱されていない。その結果、高温の冷却材が配管58内を流れると、管表面の温度は、高い冷却材温度に近くなる。本発明では、配管58の外面に取り付けられた熱電発電機アレイを含む熱機関が、配管温度と格納容器54の周囲温度との間で作動することによって発電を行う。
【0023】
本発明は、受動式残留熱除去システムの一部を成す原子炉から取り出した潜熱を、全交流電源喪失の条件下でプラントの多くの重要な機能に動力を供給するために使用可能な補助エネルギー源に変換することにより、プラントを安全な状態に保とうとするものである。図
2に略示する本発明の一実施態様では、熱電発電機が、格納容器燃料交換用水貯蔵タンク50内に位置する受動式残留熱除去熱交換器14の取入口に接続された配管12の一部に取り付けられる。受動式残留熱除去熱交換器14は、全交流電源喪失後、炉心崩壊熱が、自然循環を駆動力とする流れによって除去されるように原子炉冷却材配管に接続される。受動式残留熱除去熱交換器14の入口水室16に取り付けられた配管12の一部13は、意図的に断熱されていない(図
2では受動式除熱熱交換器入口ノズルは、図
3、
4に参照符号12で示す入口配管に接続されている)。また、水室16の表面も断熱されていない。これらの構成要素の利用可能な表面の一部を、図
2、
3、
4に示す。全交流電源喪失時この熱交換器14が使用状態にされると、入口管12の非断熱部分13と水室16に原子炉冷却系から、水温が当初は華氏約600度(316℃)であり、最初の72時間は華氏約350度(177℃)に留まる高温水が供給される。熱電発電機は、その両側(一般には「高温側」および「低温側」と呼ばれる)の温度差が大きい場合に最も効率が良い。
【0024】
典型的な熱電装置を図
5に示し、これを参照符号10で総括表示する。熱電装置10は一般的に、電気的に直列接続、熱的に並列接続されたN型およびP型不純物ドープ半導体材料18の2つ以上の素子から成る。N型材料は、電子が過剰になる(完全な分子格子構造を形成するのに必要な電子数を超える)ようにドープされており、P型材料は、電子が不足する(完全な分子格子構造を形成するのに必要な電子数を下回る)ようにドープされている。N型材料中の余剰電子と、P型材料中の電子の不足によって生じる「正孔」は、熱源20から熱電材料を介してヒートシンク24へ熱エネルギーを移動させる担体である。当該ヒートシンクは、ここでは、熱電発電機が取り付けられた受動式残留熱除去システムの配管および/または水室を取り囲む環境である。図
5に示す素子のように1つ以上の直列または並列接続された熱電素子から成る熱電モジュールによって発生される電力は、素子10の両側の温度差に比例する。受動式残留熱除去システムの配管12または水室16に取り付けられた熱電発電機アレイは、高温の配管表面と格納容器内の周囲温度との間に大きな温度差があることから、有意な電力を発生する能力を有する。図
6に示すのは、単一の熱電発電素子の典型的な、時間の関数としての出力であり(高温状態が時間とともに減衰することによる)、図
7に示すのは、配管および水室の利用可能な全表面を利用した場合の総出力である。AP1000(登録商標)型原子力発電所における利用可能な表面をすべて利用すれば、2,130枚の熱電発電パネルを配置することができる。図から分かるように、発電開始時には25キロワットを超え、少なくとも最初の24時間は5キロワットを超える状態が続く有意な総出力が得られる。この出力は、バッテリーを充電するために、または必要に応じて機器に直接給電するために利用できる。このことは、原子力発電所の運転事業者にとって価値があるが、その理由は、既存のバッテリー群にかかる電力需要を軽減することによって、この受動的に発生される電力をプラントの対処期間の延長に利用できるからである。
【0025】
一般的に、最も効率的な市販の熱電発電機は、比較的小型(2〜3インチ(5.1〜7.6 cm)四方)のパネルとして製造されている。しかし、これらの正方形パネルは、配管の外周にぴったりとは適合しない。この問題に対する1つの解決方法は、配管の外周に適合するクランプ、または受動式残留熱除去熱交換器の円形部分、すなわち管板領域の上部水室の周りを延びるクランプを使用することである。そのようなクランプ138を図
8に示す。このクランプは、配管の周りを延びる2つの半円形部分140が、互いに接する一方の端部
のフランジ142
ともう一方の端部の取付けフランジ144がボルト締めされたものである
。クランプ138は、アルミニウム合金などの熱伝導率の高い材料で作られており、四角い熱電発電パネルが良好な熱的接触状態で適合する凹部146を外周に沿って機械加工または鋳造により形成したものである。このようなクランプは、高温側の表面積をできるだけ大きくして、発電量を最大にすることができる。各熱電発電機を相互に接続してアレイにし、アレイを直列または並列接続、若しくは直列並列接続を組み合わせることにより、必要な電圧および電流を得ることができる
。クランプ138は、ヒンジ継手
とその反対側のボルト締めフランジ
を組み込むか、または
図8に示すように、クランプの相対する両側に2つのボルト締めフランジ
142、144を組み込むことによって、既存の配管に取り付けやすいクラムシェル構造にすることができる。この取付けに関する考え方は、受動式残留熱除去熱交換器の水室16を含むあらゆる曲面に拡張でき、その場合必要に応じて、熱電発電機取付け具を表面に固定するための取付け点を使用する。
【0026】
代案として、スターリングサイクルエンジンまたはランキンサイクルエンジンを、配管12および/または水室16と熱交換関係になるよう接続し、これらの表面と周囲環境との間の温度差を機械力に変換することができる。この機械力は、ポンプを直接駆動するために、あるいは、弁および計測器を作動させるために必要となる可能性のある補助電力を供給する発電機を駆動するために使用できる。そのような代案の構成を図
2に示す。ここに、ランキンサイクルエンジンまたはスターリングサイクルエンジンを表すブロック148は、ヒートパイプ150を介して配管12と熱連通している。
【0027】
したがって、本願で説明する実施態様は、全交流電源喪失後に、原子力発電所の従来型電源とは別の、独立したエネルギー源により、原子力発電所用の電力を発生させる真に受動的な発電手段を提供する。熱機関、すなわち熱電発電機またはランキンサイクルエンジンまたはスターリングサイクルエンジンは、通常状態では、それらが取り付けられている配管および/または水室が低温のため作動しない。しかし、自然循環を駆動力とする流れが生じる場合のように、高温の流体が配管を通過すると、この熱機関は自動的に作動する。これらの装置は、格納容器内燃料交換用水貯蔵タンク水が沸騰した場合に格納容器内に存在する可能性のある蒸気環境で作動できるように、保護被膜を施すこともできる。
【0028】
本発明のある特定の実施態様について詳しく説明してきたが、当業者は、本開示書全体の教示するところに照らして、これら詳述した実施態様に対する種々の変更および代替への展開が可能である。したがって、ここに開示したある特定の実施態様は説明目的だけのものであり、本発明の範囲を何ら制約せず、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲に記載の全範囲およびその全ての均等物である。