特許第6242892号(P6242892)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6242892電気的に切り替え可能な複合材アセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242892
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電気的に切り替え可能な複合材アセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B32B 3/04 20060101AFI20171127BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171127BHJP
   C03C 27/12 20060101ALI20171127BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B32B3/04
   B32B27/00 Z
   C03C27/12 N
   B60J1/00 H
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-525791(P2015-525791)
(86)(22)【出願日】2013年6月28日
(65)【公表番号】特表2015-531701(P2015-531701A)
(43)【公表日】2015年11月5日
(86)【国際出願番号】EP2013063628
(87)【国際公開番号】WO2014023475
(87)【国際公開日】20140213
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】12179771.6
(32)【優先日】2012年8月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512212885
【氏名又は名称】サン−ゴバン グラス フランス
【氏名又は名称原語表記】Saint−Gobain Glass France
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】インゴ フォン デア ヴァイデン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュネルスキ
(72)【発明者】
【氏名】フランツ ペナース
(72)【発明者】
【氏名】ユリウス メニヒ
【審査官】 増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/154663(WO,A1)
【文献】 特表2009−534283(JP,A)
【文献】 特開平05−165011(JP,A)
【文献】 特表2009−533248(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/009399(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C03C 27/00−29/00
G02F 1/1333
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切り替え可能な複合材アセンブリであって、少なくとも:
a.第一のプレート(1)、
b.第二のプレート(2)および
c.前記第一および第二のプレートの間に配置された中間層(3)、ここで、中間層(3)は、少なくとも第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)と第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)、ならびに前記第一および第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置されたSPDシート(3b)を含んでおり、ならびに
d.中間層(3)の外側エッジ領域(5)に配置された、ポリイミド(PI)を含むエッジシーリング(4)を含み、
その際、エッジシーリング(4)が、SPDシート(3b)を外側エッジ領域(5)において覆っており、SPDシート(3b)の内表面(I、II)の上側および下側で少なくとも1mmの長さ(L)に及び、かつポリイミドシートを含み、
第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)の外側エッジと第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)の外側エッジが、エッジシーリング(4)で被覆されたSPDシート(3b)の覆われた外側エッジより少なくとも2mm突出している
前記複合材アセンブリ。
【請求項2】
第三の熱可塑性ポリマーシート(3d)が、第一のプレート(1)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)の間に配置されている、請求項1に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項3】
IR反射コーティング(6)が、第三の熱可塑性ポリマーシート(3d)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)の間に配置されている、請求項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項4】
IR反射コーティング(6)が、ニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、銀、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、銅および/またはそれらの混合物、またはそれらの合金を含む、請求項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項5】
熱可塑性ポリマーシート(3a、3c、3d)が、PVB(ポリビニルブチラール)および/またはEVA(ポリエチルビニルアセテート)、特に好ましくはEVA(ポリエチルビニルアセテート)を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項6】
SPDシート(3b)が、100μm〜500μm、好ましくは150μm〜400μmの厚さを有する、請求項1からまでのいずれか1項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項7】
SPDシート(3b)が電気接点を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項8】
エッジシーリング(4)がポリアクリル接着剤を含む、請求項1からまでのいずれか1項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリ。
【請求項9】
切り替え可能な複合材アセンブリの製造方法において、
a.SPDシート(3b)を、その外側エッジ領域においてポリイミド(PI)を含むエッジシーリング(4)で被覆して、ここで、1つの機能シートが得られ、その際、前記エッジシーリング(4)は、ポリアクリル接着剤を有するポリイミドシートを含む絶縁シートとして形成されており、
b.前記機能シートを、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)の間に配置して中間層(3)にし、ここで、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)は、機能シートより少なくとも2mm大きい外側エッジギャップを有する、ならびに
c.前記中間層(3)および、第一のプレート(1)と第二のプレート(2)との間にある前記機能シートを積層する
前記切り替え可能な複合材アセンブリの製造方法。
【請求項10】
切り替え可能な複合材アセンブリの製造方法において、
a.SPDシート(3b)を、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)と第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)との間に配置して中間層(3)が得られ、
b.前記中間層(3)を第一のプレート(1)と第二のプレート(2)との間に積層し、
c.少なくとも1mmの深さのノッチ(7)をSPDシート(3b)の領域において切削加工するか、またはスクラッチング加工し、その際、ノッチ(7)が、少なくともSPDシート(3b)にまで達している、ならびに
d.前記ノッチをポリイソブチレン(PIB)で充填し、続いてポリウレタン(PU)で充填する
前記切り替え可能な複合材アセンブリの製造方法。
【請求項11】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の切り替え可能な複合材アセンブリの、車両用ガラス、船舶用ガラス、鉄道用ガラス、航空機用ガラスおよび/または建築用ガラスとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に切り替え可能な複合材アセンブリ、その製造方法、および車両用ガラスおよび建築用ガラスとしてのその使用に関する。
【0002】
スイッチでその光透過性を変え、それによって暗い外観と透明な外観とを切り替えることができるガラスは工業的に広く普及している。特に、車両製造では、さまざまな可能性が開かれている。真夏に、および日差しが強い場合に、車両乗員室は、窓開口部によりきわめて強く加熱されることがある。さらに、運転者は、運転の間、散光に目がくらむことがある。特に自動車の屋根ガラスの場合、車両は、夏季に急速にかつ強く加熱されることがある。車両内部空間のこの加熱は、運転者の集中力および反応力に悪影響を及ぼすだけでなく、重要な程度で、自動車のエネルギー消費およびそれにより燃料消費をも高める。
【0003】
プレート、例えば、エレクトロクロミックガラスまたは液晶ディスプレイ(LCD)の光透過性を調節するための種々の方策がある。
【0004】
US6,277,523B1は、エレクトロクロミックコーティングの構造方式および機能の仕方を記載している。ここで、種々の波長の光に対する透過性は、電気負荷をかけることによって制御および調節することができる。
【0005】
JP2008−025229A1は、ダブルファサードにおける光透過性を変化させるためのシステムを開示している。これは、入射光量、およびそれに伴い建物内の熱量の調節を可能にするものである。ここで、透過率の制御は、核形成プロセス(Keimbildungsprozess)により、つまり、中間層における気体の液滴形成により制御される。
【0006】
US2004257649A1は、電気的に切り替え可能なSPDフィルムを有する、数部分からなる建物ガラスを開示している。
【0007】
US2005/0227061A1は、SPDフィルム(suspended particle device)の製造および積層の方法を開示している。ここで、実際のSPDフィルムは、熱作用および真空下に、接着シートの間に積層される。
【0008】
EP2010385B1は、多層の中間層を有する合わせガラスを開示している。この中間層は、少なくとも3つの接着シート、赤外線偏向機能(infrarotablenkende Funktion)を有する層、および電気装置を含んでいる。これには、液晶層またはSPDフィルムを有する装置が含まれる。この電気装置は、接着シートの凹部内に配置されている。
【0009】
EP2013013B1は、少なくとも3層の中間層を有する合わせガラスを開示している。ここで、中間の中間層は、SPDフィルムのためのフレームであり、下側の中間層と上側の中間層と一緒に積層される。中間層材料は、重要な条件として可塑剤を含んでいない。
【0010】
合わせガラスにおけるよくある問題は、中間シートの予定より早い劣化である。湿度および酸素が侵入することによって、特に太陽光のUV照射と結びついて、前記接着シートの少なくとも表面が変質に至ることがある。したがって、エッジシーリング(Randversiegelung)の品質が、ガラス全体の品質および長期安定性に大きな影響を及ぼす。さらに無機の機能層、特に、金属の機能層が存在する場合、中間層の劣化はさらに明らかに早くなる。
【0011】
ここで、劣化は、ガラスの視覚的な印象全体に作用するだけでなく、機能性も明らかに制限しうる。特に、ガラス外側エッジ領域では、ガラスの機能性が明らかに制限されていることがある。SPDフィルムを有するガラスの領域では、これは、エッジ領域における色の急変が遅らされるか、またはさらに全く起こらないことがあることを意味する。特に、無印加時にエッジ領域のガラスは、ますます明るくなる。この増光効果は、次第にガラス領域全体に広がることがある。
【0012】
本発明の基礎をなす課題は、機能層の耐劣化性が高く、かつ長期に持続するSPDフィルムを有する電気的に切り替え可能なガラスを提供することにある。
【0013】
本発明の課題は、独立請求項1により解決される。好ましい実施態様は、従属請求項から読み取れる。
【0014】
SPDフィルムを有する電気的に切り替え可能なガラスを製造するための、本発明による2つの方法およびその使用は、さらなる独立請求項から読み取れる。
【0015】
本発明による切り替え可能な複合材アセンブリは、少なくとも第一のプレート、第二のプレート、および前記第一および第二のプレートの間に配置される中間層を含んでいる。前記プレートは、好ましくは、板ガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、および/またはそれらの混合物を含んでいる。代替的に、前記プレートは、ポリマー、例えば、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレート(プレキシガラス)を含んでいてもよい。前記中間層は、少なくとも第一の熱可塑性ポリマーシート、および第二の熱可塑性ポリマーシート、ならびに前記第一および第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置された電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートを含んでいる。SPD(suspended particle device)フィルムおよびSPDシートは、1μm未満の好ましい粒径のコロイド状粒子を含んでいる。この粒子は、溶液中または好ましくはポリマーマトリクス中に懸濁している。電場が存在しない場合、前記コロイド状粒子は、溶媒中でランダムに配置および配向されている。入射光は、この状態においては吸収されるか、または反射され、SPDフィルムは、暗く、不透明に見える。電場がかかる場合、前記コロイド状粒子は配向される。照射された光線は通過でき、SPDフィルムは、透明に見える。電圧の変化によって、SPDフィルムの光透過率を段階的に変化させることも可能である。SPDフィルムの詳細な記載は、例えば、US2005/0227061A1、特に[0004]〜[0015]にあり、SPDフィルムを有するプレートの積層方法は、[0016]にある。熱可塑性ポリマーシートは、PVB(ポリビニルブチラール)またはEVA(ポリエチルビニルアセテート)を含んでいるのが好ましい。任意に、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)およびポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニル(PVF)、可塑剤を含まないポリビニルブチラール(PVB)、および/またはそれらのコポリマーが含まれていてもよく、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)が含まれていてよい。電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートの外側エッジ領域、好ましくは外側エッジ領域全体に、エッジシーリングが配置されている。エッジシーリング、好ましくは絶縁シートとしてのエッジシーリングは、ポリイミド(PI)および/またはポリイソブチレン(PIB)を含んでいる。
【0016】
SPDシートとは、本発明の範囲において、実際の活性のSPDシートが、平面状に、少なくとも1つの第一のキャリアシートおよび少なくとも1つの第二のキャリアシートの間に配置されている多層シートであると理解される。SPDシートの利点は、切り替え可能な複合材アセンブリを容易に製造できることにある。前記SPDシートは、前記複合材アセンブリを製造する前に大量に準備することができ、製造において複合物に容易に挿入できるものであり、この複合物は、その後、従来の方法で積層され複合材にされる。
【0017】
前記キャリアシートは、少なくとも熱可塑性ポリマー、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)を含んでいるのが好ましい。どのキャリアシートも厚さは、好ましくは0.1mm〜1mm、特に好ましくは0.1mm〜0.2mmである。
【0018】
前記エッジシーリングは、電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートの外側エッジ領域から、このSPDシートの内表面方向に少なくとも1mmに及んでいる。このエッジシーリングは、ポリイミドシートまたはポリイミドフィルムを含んでいるのが好ましい。「外側エッジ領域」という表現は、本発明の範囲において、水平に平らなシートのせん断端部を意味する。このエッジシーリングを用いて覆うことによって、前記中間層の劣化が明らかに、かつ測定可能なほどに減少する。ここで、前記エッジシーリングのポリイミドを含む組成物は、驚くべきことに、例えば、市販の粘着テープ(「Tesafilm(登録商標)」)よりも優れた劣化防止性を示す。
【0019】
前記エッジシーリングは、代替的な実施態様では、前記中間層の領域において、少なくとも1mmの深さのノッチ(Einkerbung)として形成されている。このノッチは、少なくともSPDシートにまで達しており、ポリイソブチレン(PIB)および/またはポリウレタン(PU)が充填されている。このエッジシーリングは、SPDシートを効果的に劣化から保護し、前記切り替え可能な複合材アセンブリの耐用年数を延ばすものである。
【0020】
前記熱可塑性ポリマーシートは、PVB(ポリビニルブチラール)および/またはEVA(ポリエチルビニルアセテート)を含んでいるのが好ましい。EVAからのポリマーシートは、驚くべきことに、ポリイミド(PI)および/またはポリイソブチレンを含む本発明によるエッジシーリングと結びついて最も高い劣化防止性を示す。これは、おそらく、ガラスを積層する間に、本発明によるエッジシーリングとEVA(ポリエチルビニルアセテート)とがきわめて強く結びつくことに起因すると考えられる。
【0021】
前記切り替え可能な複合材アセンブリは、第三の熱可塑性ポリマーシートを、第一のプレートおよび第二の熱可塑性ポリマーシートの間に含んでいるのが好ましい。この第三の熱可塑性ポリマーシートは、機械特性、例えば、破断安全性(Bruchstabilitaet)の改善に寄与しうるものである。代替的に、この第三の熱可塑性シートは、さらなる機能、例えば、日焼け防止のためのキャリアとして用いられてもよい。
【0022】
前記切り替え可能な複合材アセンブリは、IR(赤外線)反射コーティングを、第三の熱可塑性ポリマーシートおよび第二の熱可塑性ポリマーシートの間に含んでいるのが好ましい。
【0023】
このIR反射コーティングは、ニオブ、タンタル、モリブデン、ジルコニウム、銀、金、アルミニウム、ニッケル、クロム、銅および/またはそれらの混合物またはそれらの合金を含んでいるのが好ましい。
【0024】
前記電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、第一の熱可塑性ポリマーシートおよび第二の熱可塑性ポリマーシートよりもエッジギャップ(cut−out)が1mm〜4mm少ないのが好ましい。これによって、前記SPDシートを含む第一の熱可塑性シートおよび第二の熱可塑性シートは、前記SPDシートの外側エッジよりも1mm〜4mm突出していることになる。前記熱可塑性シートのこの突出部は、本発明によるエッジシーリングと結びついて、前記SPDシートおよび前記切り替え可能な複合材アセンブリ全体の耐劣化性をさらに明らかに高める。
【0025】
前記エッジシーリングは、耐劣化性をさらに高めるポリウレタンからなる被覆を含んでいるのが好ましい。
【0026】
前記電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、100μm〜500μm、好ましくは150μm〜400μmの厚さを有しているのが好ましい。
【0027】
前記電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、電気接点を含んでいるのが好ましい。この電気接点は、電力供給装置および制御エレメントと連結されており、前記切り替え可能な複合材アセンブリの透過率の変化、好ましくは段階的な変化を可能にする。
【0028】
前記エッジシーリングは、ポリアクリル接着剤を有しているのが好ましい。好ましい実施態様では、前記エッジシーリングは、絶縁シートとして形成され、前記ポリアクリル接着剤は、この絶縁シートを前記電気的に切り替え可能なSPDシートに固着させる。
【0029】
本発明は、さらに、切り替え可能な複合材アセンブリの製造方法を含んでいる。第一段階において、電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、その外側エッジ領域で、ポリイミド(PI)を含むエッジシーリング(4)で被覆される。前記エッジシーリングは、ポリアクリル接着剤を有するポリイミドシートを含む絶縁シートとして形成されているのが好ましい。前記被覆された電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、1つのシートである。
【0030】
次の段階において、前記シートを第一の熱可塑性ポリマーシートおよび第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置して中間層にする。第一の熱可塑性ポリマーシートと第二の熱可塑性ポリマーシートは、これらの熱可塑性ポリマーシートが、前記電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートよりも外側エッジギャップが少なくとも2mm大きくなるように配置される。前記電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、さらに電気接点が備えられているのが好ましい。
【0031】
それに続く段階において、前記中間層は、第一のプレートおよび第二のプレートの間に積層される。この作られた合わせガラスは、さらなる段階において、さらに電気制御装置が備えられてよい。
【0032】
本発明は、さらに、切り替え可能な複合材アセンブリの代替的な製造方法を含んでいる。電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートは、第一の熱可塑性ポリマーシートおよび第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置されて中間層にされる。
【0033】
続いて、前記中間層は、第一のプレートおよび第二のプレートの間に積層される。
【0034】
次の段階において、前記中間層に、前記電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシートの領域で、1mm〜5mmの深さのノッチが切削加工される。それに続く段階において、このノッチは、ポリイソブチレン(PIB)が充填され、次にポリウレタン(PU)が充填される。
【0035】
本発明は、さらに、本発明による切り替え可能な複合材アセンブリの、車両用ガラス、船舶用ガラス、鉄道用ガラス、航空機用ガラスおよび/または建築用ガラスとしての使用を含んでいる。
【0036】
以下において、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。図面は、単なる図解にすぎず、縮尺どおりではない。図面は、本発明を決して限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】先行技術による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図
図2】本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図
図3】好ましい本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図
図4】さらに好ましい本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図
図5】本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの製造のためのフロー図
図6】本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの代替的な製造のためのフロー図
【0038】
図1は、先行技術による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図を示している。第一のプレート(1)および第二のプレート(2)の間に、熱可塑性中間層(3)が配置されている。前記熱可塑性中間層(3)は、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)、および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)、ならびに前記第一および第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置された電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)を含んでいる。電源供給装置は、図示されていない電気接点を介して、電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)に接続されている。
【0039】
図2は、本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図を示している。第一のプレート(1)および第二のプレート(2)の間に、熱可塑性中間層(3)が配置されている。前記熱可塑性中間層(3)は、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)、ならびに前記第一および第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置された電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)を含んでいる。電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)の外側エッジ領域(5)には、エッジシーリング(4)が配置されている。前記エッジシーリングは、ポリイミド(PI)を含んでおり、ここで、前記エッジシーリング(4)は、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)の間のSPDシート(3b)の下側(I)および上側(II)で外側エッジ領域(5)から少なくとも1mmの長さ(L)に及んでいる。前記エッジシーリング(4)は、ポリイミドシートとして形成されているのが好ましい。
【0040】
図3は、好ましい本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図を示している。基本構成は、図2に示される構成に相当する。それに加えて、第三の熱可塑性ポリマーシート(3d)が、第一のプレート(1)および中間層(3)の間に配置されている。さらに、IR反射コーティング(6)、例えば、銀が、第三の熱可塑性ポリマーシート(3d)および中間層(3)の間に配置されている。
【0041】
図4は、代替的な好ましい本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの断面図を示している。基本構成は、エッジシーリング(4)まで、図2に示される基本構成に相当する。中間層(3)のエッジ領域には、ノッチ(7)があり、ポリイソブチレンとポリウレタンとからのエッジシーリング(4)が充填されている。
【0042】
図5は、本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリを製造するためのフロー図を示している。第一段階において、電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)を、その外側エッジ領域において、ポリイミド(PI)を含むエッジシーリング(4)で被覆する。エッジシーリング(4)は、ポリアクリル接着剤を有するポリイミドシートを含む絶縁シートとして形成されているのが好ましい。この被覆された電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)は、1つのシートを形成している。次の段階において、熱可塑性ポリマーシート(3a、3c)が前記シートよりも少なくとも2mm大きい外側エッジギャップを有するように、このシートを第一の熱可塑性ポリマーシートおよび第二の熱可塑性ポリマーシートの間に配置する。それに続く、図示されていない段階において、電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)に、さらに電気接点および電気制御装置が備えられる。
【0043】
図6は、本発明による電気的に切り替え可能な複合材アセンブリの代替的な製造のフロー図を示している。電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)を、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)および第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)の間に配置して中間層(3)にする。次に、作られた中間層(3)を第一のプレート(1)および第二のプレート(2)の間に積層する。次の段階において、電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート(3b)の領域で、中間層(3)に少なくとも1mmの切削加工をする。それに続く段階において、ノッチ(7)を、ポリイソブチレン(PIB)で充填する。ポリイソブチレンの硬化後、続いて、ノッチ(7)をポリウレタン(PU)でシーリングする。
【0044】
以下において、本発明を2つの例および1つの比較例に基づいて詳細に説明する。これらの例は、本発明をなんら制限するものではない。
【0045】
1.例(本発明による)
合わせガラス(20cm×20cm)は、以下の構成(値は厚さを示す)を含んでいた:第一のプレート(1)(2.1mm)、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)(EVA、0.38mm)、SPDシート(3b)(0.35mm)、第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)(EVA、0.38mm)、銀コーティングを有するPET(6)(0.05mm)、第三の熱可塑性ポリマーシート(3c)(EVA、0.38mm)、第二のプレート(2)(2.1mm)。SPDシート(3b)は、エッジ領域において、図2および図3で示される通り、ポリイミドシートからのエッジシーリング(4)で被覆されていた。EVAからの熱可塑性シート(3a、3c)は、SPDシート(3b)に対して約2mmの突出部を有していた。前記合わせガラスを、28日間、90℃で加熱貯蔵し、1000時間、90℃でWOM(耐候性試験)にかけて、出力1250W/h・m2のキセノンランプ(PV3929)で照射した。
【0046】
2.例(本発明による)
合わせガラス(20cm×20cm)は、以下の構成(値は厚さを示す)を含んでいた:第一のプレート(1)(2.1mm)、第一の熱可塑性ポリマーシート(3a)(EVA、0.38mm)、SPDシート(3b)(0.35mm)、第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)(EVA、0.38mm)、SPDシート(3b)(0.35mm)、第二の熱可塑性ポリマーシート(3c)(EVA、0.38mm)、銀コーティングを有するPET(6)(0.05mm)、第三の熱可塑性ポリマーシート(3c)(EVA、0.38mm)、第二のプレート(2)(2.1mm)。SPDシート(3b)は、図4に示されるエッジ領域で、ポリイソブチレンとポリウレタンとからのエッジシーリング(4)で被覆されていた。この合わせガラスを、例1と同様に、28日間、90℃で加熱貯蔵し、1000時間、90℃でWOM(耐候性試験)にかけて、出力1250W/h・m2のキセノンランプ(PV3929)で照射した。
【0047】
3.比較例(先行技術)
この合わせガラスは、SPDシート(3b)のシーリングを含まない例1および例2に相当する。この合わせガラスを、例1および例2と同様に、28日間、90℃で加熱貯蔵し、1000時間、90℃でWOM試験(耐候性試験)にかけて、出力1250W/h・m2のキセノンランプ(PV3929)で照射した。
【0048】
前記例の試験結果を、第1表に示す。前記例では、エッジ領域におけるSPDシートの劣化を、「加熱貯蔵」および「WOM試験」の試験経過後に測定した。前記SPDシートの劣化は、無電圧の状態におけるSPDシートの増光により示される。表1は、SPDシートのエッジ領域の寸法をmm単位で示しており、この領域は、無電圧状態では明るく現れる。したがって、この領域は、もはや(充分に)機能しない。
【0049】
【表1】
【0050】
本発明による例1および例2は、加熱貯蔵でも、WOM試験でも、前記SPDシートのエッジがごくわずかに、取るに足らないほどにしか損傷していないことを示している。したがって、機能するエッジ領域の減少は、試験条件に応じて0.5mm〜2mmの間を変動している。比較例3では、前記SPDシートのエッジの損傷(5mmより大)は、本発明による例におけるよりも2.5〜10倍高い。これらの結果は、驚くべきことであり、当業者に予測できなかった。市販のTesafilm(登録商標)を有するSPDシートの絶縁性は、比較例3と類似の値を示している。
【符号の説明】
【0051】
(1) 第一のプレート
(2) 第二のプレート
(3) 中間層
(3a) 第一の熱可塑性ポリマーシート
(3b) 電気的に切り替え可能な透過率可変のSPDシート
(3c) 第二の熱可塑性ポリマーシート
(3d) 第三の熱可塑性ポリマーシート
(4) エッジシーリング
(5) 外側エッジ領域
(6) IR反射コーティング
(7) ノッチ
(L) SPDシートに沿うエッジシーリングの長さ
(I) SPDシートの下側平面
(II) SPDシートの上側平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6