(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハイドロゲルフィルムは、薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を有する、請求項1に記載のキット。
【発明を実施するための形態】
【0016】
より具体的には、一実施形態は、ヒアルロン酸塩とアルギン酸塩をとの両方からなる膜を包含する。これらのポリマーに加えて、膜は、顕著な割合の水をも含有してよく、且つハイドロゲルとして分類され得る。ハイドロゲルは、過剰な水に曝露されたとき膨潤する物質である。分子レベルにおいて、ハイドロゲルは、水性媒体内に分散されたポリマー鎖のネットワークからなる。一実施形態のハイドロゲル膜の特徴は、個々のポリマー鎖を結び合わせる架橋(crosslinks)である。これら架橋は、ハイドロゲルを水中で膨潤させるが、ハイドロゲルが完全に溶解することを防ぐ。水それ自体が生体適合性であるから、ハイドロゲルは、生体適合性の傾向にある。従って、ハイドロゲルは、物質が生きた組織と密着することになる臨床用途にとって魅力的である。
【0017】
一実施形態において、カルシウムの存在下架橋されたゲルを生成するアルギン酸塩の能力ゆえに、アルギン酸塩は膜のフレームワークを形成する。この架橋されたフレームワークは、膜に機械的安定性と形状とを与える。ヒアルロン酸塩成分は、アルギン酸塩ゲル内でトラップされ、その放出は、アルギン酸塩ゲルのポアに比べてその大きなサイズにより制限される。ヒアルロン酸塩は、アルギン酸塩よりも親水性であり、従ってヒアルロン酸塩を大きな割合で有するハイドロゲル組成物は、より大きな水膨潤を示す。アルギン酸塩に対するヒアルロン酸塩の比率が低い場合、ヒアルロン酸塩は、架橋されたアルギン酸塩マトリックス内に完全にもしくは部分的にトラップされており、溶出(leaching)は制限される。但し、アルギン酸塩に対するヒアルロン酸塩の比率が高い場合、架橋されたアルギン酸塩は溶出可能な(leachable)ヒアルロン酸塩成分を保持できないかもしれない。ヒアルロン酸塩成分は、水中で膜をリンスすることにより溶出され得る(ヒアルロン酸塩は水に対して強い親和性を有する)。ヒアルロン酸塩が溶出されると、それは膜内に空のポアを後に残し、水の拡散のための相互接続した経路を提供する。ポアを変更することにより、及び従って膜の水含量、膜の物理的特性(例えば可撓性及び弾性)もまた変更される。製造の際、膜からのヒアルロン酸塩の溶出は、膜の物理的特性を有利に修正するための手段として使用され得る。ヒアルロン酸の溶出は、ヒアルロン酸塩のプロ再生性(pro-regenerative)創傷治癒特性を利用する創傷部位に対してヒアルロン酸塩を届けるための手段として、in vivoでも生じ得る。
【0018】
図2は、アルギン酸塩/ヒアルロン酸塩膜の水膨潤比率を組成の関数として表す。膜は親水性であり、水を吸収する。膜内でのヒアルロン酸塩の割合の増大は、膜をより親水性にし、膜の水膨潤容量を増やす。
【0019】
一実施形態において、膜は、溶液キャスティングにより調製される。これは、水性混合物内のアルギン酸塩とヒアルロン酸塩との水溶性塩形態を溶解する必要がある。次いで溶液のある容量が、モールド内へ分注され得る。適当なモールドは、いずれの形状もしくはサイズであり得る。カルシウム塩の水性溶液内に浸すことにより架橋され得る乾いた薄膜を得るため、溶液由来の水は蒸発し得る。架橋は、水中で膨潤するが溶解しないハイドロゲル膜を生成する。キャストフィルムを得るための同様のテクニック(例えばスピンキャスティング、キャスティングナイフによりドクターブレード法、押し出し、その他)は、水蒸発ステップを必要としないフィルムを製造できる。これらのフィルムは、乾燥ステップ不要で、カルシウムにより架橋され得る。
【0020】
ドクターブレードは、決められた厚さを有する濡れたフィルムを作成するのに使用されるツールである。一実施形態においてそのドクターブレードを使用するには、基板上にある容量のアルギン酸塩/ヒアルロン酸塩溶液を分注する。次いで、溶液を決められた厚さの平坦なフィルムへと広げるため、溶液の上からドクターブレードを被せる。ドクターブレードは、過剰な溶液を除去し、それにより基板を被覆する予め決まった厚さの濡れたフィルムを製造する。
【0021】
組織アンカー
考察は、今度はより具体的には金属イオン封鎖(sequestering)溶液を有する液体組織アンカーのための実施形態に向かう。以下に記載された組織アンカーの実施形態は、上に考察された実施形態と共に使用されてよく、又はこれら実施形態について独立に使用されてよい。
【0022】
一実施形態は、癒着バリアを処理する方法、又は負傷部位において(複数の)架橋剤(例えばカルシウム)を除去する金属イオン封鎖溶液で、1以上の架橋剤(例えばカルシウム)を除去することにより未架橋であり得る架橋構成成分(例えばアルギン酸カルシウム)からなるいずれの移植可能デバイスを包含する。本発明の一実施形態は、金属イオン封鎖溶液それ自体(インプラントとは独立に)として理解されてもよい。
【0023】
金属イオン封鎖溶液の一実施形態は、カルシウムキレート剤を包含するが、他の実施形態はそのように限定されない。
【0024】
一実施形態において、金属イオン封鎖溶液は、インプラント内で架橋(架橋実施形態に関する上の考察を参照)を崩壊させることにより働く。架橋の崩壊は、インプラント内で金属イオン封鎖剤(sequestering agent)を架橋剤に結合することにより生じる。生じるべき崩壊のため、一実施形態において金属イオン封鎖剤は、インプラントの架橋性成分が結合するよりも強く架橋剤に結合する。より具体的には、金属イオン封鎖剤は、架橋剤もしくはイオンを封鎖(sequester)可能である。なぜならばそのようにすることにより、システムの全体的エネルギーが低下するからである。このエネルギー低下は、移植(implanted)デバイスの緩和を引き起こし、デバイスの機械的完全性を減ずる。デバイスは、組織ジオメトリに一致し、水素結合の性質により粘膜付着性になる。この粘膜付着性は、他のアンカー装置(例えば縫合糸もしくは組織糊)の必要をなくす。
【0025】
図3は、腹部外傷についてのラットモデルの腸への、アルギン酸塩とヒアルロン酸塩との膜の適用を描く一連の写真である。膜は可撓性であり、正確な位置において配置することが容易である。シリンジは、膜の組織癒着(adherence)及び生体吸収性(bioresorption)を促進する任意の液体組織アンカーを適用する。
【0026】
機械的に頑丈なインプラント(例えばアルギン酸塩癒着膜)は、臨界治癒期間(約2週間)を超えて体内に存続してよいが、これは問題となり得る。なぜなら、インプラントが体内で長期間存続するならば、望ましくない免疫応答の確率(the odds)がより大きいからである。しかし、一実施形態において、移植された(implanted)デバイスは、金属イオン封鎖溶液とともに使用することにより、手術後2週間以内に完全に吸収される(resorbs)。しかしながら、他の実施形態は、この期間を短くてしても、長くしてもよい。
【0027】
種々の実施形態において、適当な金属イオン封鎖剤は、架橋剤に結合可能な複数のアニオン性官能基を有する有機分子の塩である(例えばカルシウム,マグネシウム,カドミウム,銀,亜鉛,ケイ素,オキシダント,プロトン酸,金属化され得る化合物)。例としては、クエン酸,EDTA,EGTA,BAPTA,テトラサイクリン,及びリン酸塩の塩である。
【0028】
一実施形態において、金属イオン封鎖溶液の強度は、金属イオン封鎖剤のモル濃度に依存する。例えば、金属イオン封鎖剤のより大きなモル濃度で配合された溶液は、インプラント内でより多くの架橋を崩壊させ、及び従って生体吸収性の速度を増大させる。従って、金属イオン封鎖溶液内の金属イオン封鎖剤の濃度は、体内でのインプラント吸収(resorption)の望ましい速度を得るように調節され得る。例えば、300mMクエン酸塩は、100mM塩化カルシウム溶液で架橋させたアルギン酸塩/ヒアルロン酸塩フィルムの1週間生体吸収を与える。一方、100mMクエン酸塩は、100mM塩化カルシウム溶液で架橋させたアルギン酸塩/ヒアルロン酸塩フィルムの2週間生体吸収を与える。その上さらに、金属イオン封鎖溶液を使用しないと、この同一フィルムは、6週間存続する。このチューナビリティ(tunability)は、様々な指示のための治癒サポートを容易にするため、1インプラントを考慮する。例えば、ヘルニア修復は、繊維芽細胞内部成長(ingrowth)が十分になるまで、長期間を必要とし得る(例えば6週間)。この時間フレームは、約2週間の生体吸収性を必要とする腹部癒着防止と対立する。
【0029】
一実施形態において、外科医はいずれの外科手技の際、金属イオン封鎖溶液を使用する。その外科手技において、望ましくない組織癒着もしくは望ましくない瘢痕組織癒着を防ぐため、金属イオン封鎖溶液で未架橋であり得る架橋構成成分(例えばアルギン酸カルシウム)からなるインプラントが使用される。外科医は、適当な配送装置(例えばシリンジ、スプレー、その他)により、インプラントの表面に金属イオン封鎖溶液を塗布する。金属イオン封鎖溶液は、望ましくない架橋(例えばカルシウム)を崩壊させるように迅速に働く。次いで処置されたインプラントは、下に存在する組織の輪郭に一致し且つより強く接着する。
【0030】
創傷部位への金属イオン封鎖溶液の塗布を容易にするため、一実施形態において、金属イオン封鎖溶液は、増稠剤を配合されてよい。増稠剤は、濃いシロップ状の液体を生成するため、溶液粘度を高める。増稠剤の有益な効果は、金属イオン封鎖剤がより粘性であるほど、粘性の低い水っぽい溶液よりも適用部位に対してより良く制限される(confined)ことである。一実施形態は、その生体吸収性及び溶液増粘特性の両方について知られている増稠剤(例えばヒアルロン酸ナトリウム)を包含する。
【0031】
様々な実施形態における生体適合性の利益において、金属イオン封鎖溶液は、pHを緩衝液処理する(buffer)、もしくはモル浸透圧濃度(osmolarity)(例えば通常使用されるリン酸塩緩衝液において見つかるもの)を調節するため、塩を配合され得る。
【0032】
一実施形態は、具体的にはカルシウムで架橋され、且つ対応するカルシウム金属イオン封鎖溶液で処理されたアルギン酸塩バリアを包含する。しかしながら、他の実施形態において、同じ方法を同様に他のイオンに対して適用できる。例えば、多様な実施形態においてアルギン酸塩バリアは、カチオン(例えばバリウム、ストロンチウム、銅、鉄、その他)で架橋される。同一の金属イオン封鎖剤を、これらの架橋剤を崩壊させるのに使用してよい。
【0033】
材料の架橋は、材料とそれ自体もしくは他の材料との間の結合の数の増加を包含する。結合の増加は、材料全体の屈折率の変化をひき起こし、材料を貫通する光をゆがませる。実施形態は、インプラント内の結合を減らす金属イオン封鎖溶液を包含するので、得られるインプラントの屈折率は、金属イオン封鎖溶液の投入(administration)により変化することになる。例えば、アルギン酸塩及びHA癒着バリアは、架橋した場合半透明であり、カルシウム金属イオン封鎖溶液を塗布後、透明である。
図1は、アルギン酸塩とヒアルロン酸塩とからなる膜(2cm×4cm)の一例を表す。膜は、薄い、可撓性、親水性、半透明な、且つ滑らかで滑りやすい表面を有する。
【0034】
一実施形態において、ハイドロゲル膜及び金属イオン封鎖溶液はキット内に用意される。キットは、創傷部位に金属イオン封鎖溶液を塗布するのに適した配送装置をも包含し得る。手術室セッティング内の外科医又は他のヘルスケア提供者は、創傷部位に膜及び適当な容量の金属イオン封鎖溶液を塗布するためにキットを使用し得る。このアプローチは、エンドユーザに、患者特有のニーズに合致するため、膜サイズと溶液体積とを調節するための高い柔軟性を与える。
【0035】
膜の移植(implantation)から数時間、数日、もしくは数週間後、金属イオン封鎖溶液を膜に塗布してよい。例えば、望ましくない瘢痕組織癒着の防止のため、ハイドロゲル膜を創傷部位に置いてよい(例えば屈筋腱修復)。瘢痕形成のための時間の後(通常3乃至4日間)、膜バリアはもはや必要ではない。従って、金属イオン封鎖溶液を、膜を完全に可溶化するため、創傷部位内へ注入してよい。この作用は、その目的として、このように望ましくない異物応答を排除する創傷部位からの膜の除去を有する。金属イオン封鎖溶液は、周辺組織を貫通する針及びシリンジにより導入され得るか、又は最低限に侵襲的外科手段により導入され得る。
【0036】
多分子層(multilayer)ハイドロゲル
本発明の一実施形態は、多糖系二分子層(bilayer)ハイドロゲルフィルムを包含し、第2の相において望ましくない瘢痕組織形成を防止する。ハイドロゲル(例えばW02009/108760,W02012/048283,W02012/048289に記載されたもの)を、1の層において再生効果を提供し、第2の層において癒着防止効果を提供する、別個の層を有する多分子層(multi-layer)ハイドロゲルを形成するため使用する。ハイドロゲル再生層は、細胞付着とin vitro増殖とを促進する。ハイドロゲル癒着防止層は、望ましくない細胞付着を防止し、繊維化組織形成を制限する。ハイドロゲルは、癒着防止側もしくはルーメンに曝露される再生側のいずれかを有する導管に丸められてよい。
【0037】
一実施形態は、一方の側において瘢痕組織癒着を防止し、他方の側において健全な再生を促す生体高分子からなる二分子層ハイドロゲルを包含する。癒着防止層は、ヒアルロン酸とアルギン酸塩とからなる。再生層は、コラーゲンとヒアルロン酸とからなる。2つの層は、別個のものであり、共有結合している。一実施形態は、細胞付着及び増殖を促すコラーゲンマトリックスを包含する。
【0038】
実施形態は、望ましくない軟組織付着の問題を解決し、並びに損傷された組織の再生をサポートすることにより臨界治癒時間を減らす。様々な実施形態は、非合成すべて天然の成分を使用して癒着防止(anti-adhesive)層及び再生層を提供する。一実施形態は、天然多糖類からなる生体適合性二分子層ハイドロゲルを包含する。
【0039】
一実施形態は、自己接着性であり、縫合糸又はねじを必要としない。一実施形態は、より優れた組織結合(例えば組織をメッシュに縫合すること)を可能にする結合された(例えば被覆された)メッシュ材料であってよく、様々な手順(例えばヘルニア修復、胆嚢摘出、その他)において有用かもしれない。より一般的には、実施形態は、腹腔内外科手術、及び/又は腹部,婦人科系,肺,腱,心臓,神経解剖術その他に関する手順を包含する様々な外科手術において移植されてよい。
【0040】
一実施形態において、アルギン酸塩とヒアルロン酸の光反応性誘導体(GMHA)との膜が、方法(例えば、W02009/108760,W02012/048283,W02012/048289に記載された方法。これらの文献全ては参照により本書に含まれる。)に従って製造された。第1の膜層の製造後、サンプルを、滅菌条件下で乾燥し、コラーゲンとGMHAとの第2の層を最上部にキャストした。2つの層は、化学的に架橋され、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)で処理することにより融合された(fused)。二分子層形成は、蛍光標識されたヒアルロン酸及び免疫染色下コラーゲンの共焦点画像を使用して確認された。ジアミジノ−2−フェニルインドール(DAPI)を使用して、in vitro細胞形態を特徴化した。in vitro細胞形態及び特徴化は、コラーゲン層は接着性、増殖性基材(substrate)を効果的に提供することを示す。癒着防止層は、細胞増殖及び付着を効果的に防止する。
【0041】
図4は、アルギン酸塩,ヒアルロン酸塩,及びコラーゲンを有する二分子層フィルム画像を包含する。このフィルムは、共焦点レーザー走査蛍光顕微鏡法により映し出された。
図4(A)及び
図4(B)は、それぞれ(ヒアルロン酸塩とアルギン酸塩とを有する)癒着防止層内及び(ヒアルロン酸塩とコラーゲンとを有する)再生層内の蛍光標識されたヒアルロン酸の存在を表す。
図4(C)は、再生層に付着したヒト真皮繊維芽細胞の癒着形態を表す。
図4(D)は、細胞が癒着防止層に不十分に付着していることを表す。
図4(E)は、二分子層の有利な取り扱い特性を表す写真である。要するに、これらの画像は、再生層は細胞のための接着性基材を提供し、癒着防止層は細胞付着を防止することを示す。
【0042】
図5においてHAは、D−グルクロン酸ナトリウムとN−アセチル−D−グルコサミンとからなる繰り返し二糖ユニットを有する線形多糖類である。天然グリコサミノグリカンは、皮膚,関節液,並びに皮下組織及び間質組織の成分である。HAは、身体から代謝的に除去され、そして細胞を保護かつ潤滑にし、且つ組織の構造的完全性を維持する役割を果たす。アニオン性カルボン酸基は、HAにその粘弾性と細胞接着防止特性とを与える水分子を固定化する。様々な実施形態において、いずれの適当な架橋テクニックを使用して、層は一緒に融合され得る。例えば、重合性官能基(functionalities)でグラフト化されたフィルム成分の光開始架橋は、層を融合する。適当な化学架橋剤(例えばEDC)を使用してもよい。イオン架橋(例えばアルギン酸塩成分のカルシウム架橋)はまた、様々な層を一緒に融合し得る。第2の層を追加しても、術野は見える。
【0043】
図5は結晶テンプレート法(crystal templating)を包含するが、別の実施形態は、同一のプロセスを有してよい。ただし、当該実施形態は、結晶テンプレート法関連ステップを省略する(例えば、ステップ2及び2はある実施形態では実施されないが、
図5の残りのステップは実施される)、その代わりHAとアルギン酸塩とから本質的になる癒着防止層を続行する。
【0044】
二分子層ハイドロゲルが繰り返し考察されたが、実施形態は、2つの層に限定されず、それよりも3,4,5,6,7,8以上の層を包含してよい。外側層はいずれも、外側層と外側層との間に配置された1以上の再生層と共に癒着防止性であってよい。
【0045】
実施形態はまた、HA/コラーゲン及びアルギン酸塩/HA層に限定されない。例えば、癒着防止層は、滑らかな非接着性表面を呈するいずれのポリマーもしくはポリマーの組合せからなっていてよい。再生層は、細胞付着及び増殖を促すポリマーもしくはタンパク質(例えばラミニン)のいずれの組合せからなっていてよい。
【0046】
治療薬送達
本発明の一実施形態は、創傷部位において医薬的に有効な成分を放出する、アルギン酸塩とヒアルロン酸塩とからなる生体適合性膜を包含する。活性成分は、抗生物質,抗炎症,化学療法剤,瘢痕防止剤,及び/又はプロ再生薬(例えば成長因子もしくは幹細胞)であってよい。
【0047】
瘢痕化,炎症,及び細菌感染は、外科手術手順の望ましくない合併症である。外科的手技の際、身体の組織及び期間は、故意に又は不注意により傷つけられるかもしれない。これらの損傷は、瘢痕化と炎症とをもたらす創傷治癒応答を促し得る。瘢痕化は、癒着しないままでいるべき隣接する組織と器官との間に瘢痕組織癒着を生成する場合、問題となり得る。患者は、特に細菌増殖のための隙間(niches)を提供するポリマーもしくは金属インプラント周辺で細菌感染しやすくなる。
【0048】
一実施形態は、トラップされた医薬的に有効な成分と共にアルギン酸塩とヒアルロン酸塩とを有する膜を包含する。一実施形態は、トラップされた医薬的に有効な成分と共に本質的にアルギン酸塩とヒアルロン酸塩とからなる。一実施形態において、分散形態もしくはマイクロ結晶質形態いずれかで、溶液内で、アルギン酸塩とヒアルロン酸塩とを有効成分と共に混合することにより、及び次いで平面膜を得るための方法(例えばモールド内へキャストする方法、スピンコート法、ドクターブレード法、その他)を使用して、薬物(drug)を充填した膜が得られる。次いで、多価カチオン(例えばカルシウム。ただしカルシウムに限定されない。)で架橋することにより、膜を安定化してよい。任意には、アルギン酸塩もしくはヒアルロン酸いずれかを、(紫外線源もしくは可視光源により引き起こされる場合、化学架橋を受ける)それらの光反応性誘導体で置換することにより、膜はさらに安定化され得る。一実施形態において、有効成分なしで、膜は製造され、その後引き続きその成分が充填され得る。例えば、膜は、濃縮溶液内へ浸され、それにより膜に溶液からの有効成分を吸収させる。一実施形態において、膜は、膜を構成するポリマーと共有結合又は静電的に結合すようになる有効成分の溶液と共にインキュベートされ得る。
【0049】
一実施形態は、瘢痕化,炎症,もしくは細菌感染を阻害し、減じ、もしくは防止するため前記薬物充填膜実施形態の1つを使用する方法を包含する。望ましくない瘢痕化もしくは炎症のリスクがある外科手技の後の身体のいずれの解剖学的場所で、膜を使用してよい。例えば、腹腔,腱周囲(peritendinous)空間、洞腔(sinus cavity)その他。同様に、細菌感染のリスクをもたらすいずれのインプラントの近くもしくは周辺に、膜を配置してよい。一実施形態は、腫瘍へもしくは腫瘍摘出後の手術部位へ化学療法剤を送達するため、前述の薬物充填膜実施形態を使用する方法を包含する。一実施形態において、本発明は、組織修復及び治癒を強化するため、プロ再生薬(例えば成長因子もしくは幹細胞)を送達するため、前述の薬物充填膜実施形態を使用する方法である。オープンな及び最低限に侵襲的外科手術手順の両方において、膜を使用してよい。
【0050】
一実施形態は、膜の放出特性を改善するため、薬物充填膜を刺激(好ましくは溶液もしくはゲル)で処理する方法を包含する。例えば、溶液は、膜溶解速度を増大し得、従ってトラップされた医薬的に有効な成分の放出速度を増大させる。このような得溶液は、膜を安定化する多価カチオンを封鎖する(sequester)キレート剤を包含する。一実施形態において、溶液は本質的にキレート剤からなる。外傷上に、もしくは手術部位内へ膜を配置した後、その溶液を適用してよい。しかしながら、別の実施形態では、膜移植後数時間、数日、もしくは数週間の膜に、溶液を塗布してよい。遅い時点で溶液を塗布することにより、医療提供者は、その患者特有のニーズにマッチさせるように薬物放出を適合させる(tailoring)ことが可能になる。
【0051】
一実施形態は、全身送達の副作用が回避できるように、創傷部位への有効成分の放出を狙う膜を包含する。このような実施形態は、生体適合性且つ生体吸収性である。膜を包含する実施形態は、外科的手技の際、容易にカット及びトリミングされ得、かつ組織及び器官の傷ついた表面をカバーするのに便利である。瘢痕化,炎症,もしくは細菌感染を減らしもしくは防止する有効成分を放出するため、深い傷もしくは浅い傷内へこのような実施形態を挿入してよい。
【0052】
ハイドロゲル膜は、水中で膨潤するアルギン酸塩とヒアルロン酸塩とのネットワークからなる。このネットワークは、濃縮溶液からの有効成分を吸収できるポアを提供する。ハイドロゲル膜のポアは、水がそこを浸透できる相互接続した経路を有する。初めのうちは、ポアは、オングストローム乃至ナノメートルの範囲内で小さく、小さい分子のみ(例えば溶媒、塩及び無機代謝物質)を収容できる。水による膜の浸透は、ポアを膨潤させ、それによりポアのサイズと体積を増大させる。ナノメートル乃至マイクロメートルの範囲内に十分に膨潤したポアは、ペプチド,タンパク質,及びマクロ分子の拡散を収容することができる。
【0053】
膜のポアは、膜のヒアルロン酸塩成分の溶出により形成されてもよい。ヒアルロン酸塩のアルギン酸塩に対する比率が低い場合、ヒアルロン酸塩成分は、架橋アルギン酸塩マトリックス内に完全にもしくは部分的にトラップされており、溶出は制限される。但し、ヒアルロン酸塩のアルギン酸塩に対する比率が高い場合、架橋アルギン酸塩は、溶出可能なヒアルロン酸塩を保持できない。ヒアルロン酸塩が(水に対して)強い親和性を有する水中で膜をすすぐことにより、ヒアルロン酸塩成分を溶出できる。ヒアルロン酸塩が溶出する場合、それは、膜内に空のポアを後に残し、それは、水及び薬物分子の拡散のための相互接続した経路を提供する。膜からのヒアルロン酸の溶出は、in vivoで生じてよく、創傷部位へヒアルロン酸塩を送達する方法として使用してよい。これは、ヒアルロン酸塩のプロ再生創傷治癒特性を利用する方法として有利かもしれない。
【0054】
一実施形態において、膜は、結晶テンプレート法により、数マイクロメートル乃至数百マイクロメートルの規模の、ポアの相互接続したネットワークと共に製造され得る。結晶テンプレート法は、キャストしたフィルム内の結晶の核形成と成長とが多孔性ネットワークを作成する方法である。このような膜は、
型(form)又は容器内へアルギン酸塩、ヒアルロン酸塩及び結晶化可能な分子の溶液をキャストするステップ、
溶媒を蒸発させるステップ、
自発的核形成又は結晶シードの慎重な導入により、結晶化可能な分子の結晶を成長させるステップ、
結晶周囲のアルギン酸塩及び/又はヒアルロン酸塩を架橋するステップ、及び
結晶の形状における多孔性ネットワークが膜内へテンプレート化されたような結晶を溶解するステップ
により製造され得た。結晶成長のプロセスは、ポアの相互接続性を確実にし、且つ樹枝状構造(dendritic archtectures)を生ずることができる。このポア系構造は、トラップされた薬物分子の拡散及び放出に対して有利な作用を有する(例えば、連続したポアは、ハイドロゲル内への薬物のより大きな拡散を可能にする)。
【0055】
膜が溶液からの薬物もしくは他の治療薬を吸収し得るその溶液は、水性溶液であり得る。なぜなら、ハイドロゲル膜の膨潤させるため、及び有効成分をポア内への拡散を容易にするためのいずれにも、水は良溶媒であるからだ。しかしながら、多くの薬物は、不十分な水溶性を有する。従って、濃縮溶液は、水及び水混和性溶媒(例えばアルコール、例えばメタノール、エタノール、エチレングリコール、その他)、水混和性極性非プロトン溶媒(例えば、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、その他)、酸、及び/又は塩基を有する溶液と混合されてもよい。これらの混合溶液は、水溶性が不十分である薬物を溶解すること、及び膜を膨潤させることについていずれについても利点を有する。これら混合物内の水の割合は、特定の薬物の溶解特性を適合させるため、100%乃至0%の範囲であり得る。
【0056】
ハイドロゲル膜は、ハイドロゲル膜が含んでよい薬物のタイプに限定されない。種々の実施形態において、ハイドロゲル膜は、タンパク質、ペプチド、及び小分子を含んでよい。実施形態は、化学療法剤、プロ再生薬物(例えば成長因子及び幹細胞)、及び炎症,感染,瘢痕化,及び癒着の予防もしくは治療のために使用される薬物を包含してよい。実施形態は、バンコマイシン,トブラマイシン,ドキソルビシン,フランカルボン酸モメタゾン,及びそれらの塩酸塩から選択された有効成分を有してよい。一実施形態において、ハイドロゲル膜は、マクロ分子(例えば血管内皮成長因子及びヒアルロン酸ナトリウム)を放出するように配合されていてもよい。ハイドロゲル膜には、有効成分の放出をサポートするため、非有効成分(例えばバインダ、界面活性剤、塩、その他)が配合されてよい。
【0057】
薬物充填ハイドロゲル膜は、外科手術手順の際に使用されてよい。一実施形態において、瘢痕化及び炎症を減らすため、薬物充填膜を、傷ついた組織及び器官の最上部においてよい。傷ついた組織は、内部であるか(この場合、膜は体腔内へ挿入されることになる)、外部であるか(この場合、膜は傷ついた領域の上に居所的に適用されることになる)のいずれかでよい。一実施形態において、薬物充填膜を、手術部位内へ細菌感染を導入するリスクがあるインプラントに隣接させて置いてよい。一実施形態において、化学療法剤を放出するため、薬物充填膜を、腫瘍近くにもしくは腫瘍切除の部位に置いてよい。
【0058】
一実施形態において、当初は薬物無充填のハイドロゲル膜は、使用直前に膜と組み合わされるべき薬物成分を包含するキット内に設けられてよい。このアプローチは、膜及び薬物のための別々の貯蔵条件を可能にすることにより、有利であってよい。例えば、外科医、看護師、または病院,オフィスもしくは手術室セッティング内のヘルスケア実務家は、キットを開封し、膜を薬物溶液内に浸し、次いで薬物で濡らした膜を損傷部位に適用するかもしれない。このアプローチは、疾病状態,体重,年齢,及び代謝に基づいた患者特有のニーズに合わせるため、膜と複合製剤(drug combinations)とのミックス・アンド・マッチを行うため、エンドユーザに大きな自由度を与えることになる。
【0059】
ハイドロゲル膜から薬物を放出するタイミングは、多くのファクターにより決定される。これらのファクターのうち、充填された薬物の量、膜組成(例えばヒアルロン酸塩のアルギン酸塩に対する比率)、架橋の程度、及び膜の水含有量がある。例えば、ヒアルロン酸塩のアルギン酸塩に対する比率を増大させることは、膜の架橋密度を減少させ、それによりカプセル封入された薬物の拡散に対する膜の浸透性を増大させ得る。別の例として、より大きな水含有量を有する膜は、より速い放出を見せるかもしれない。なぜなら、膨潤による水含有量は、膜多孔性に関連しているからだ。
【0060】
一実施形態において、ハイドロゲル膜からの有効成分の放出は、刺激の使用により変更されてよい。水性溶液もしくはゲルの形態におけるこのような刺激は、膜を安定化させる架橋イオン(例えばカルシウム)を封鎖するキレート剤を有する。一実施形態において、水性溶液もしくはゲルの形態におけるこのような刺激は、膜を安定化させる架橋イオン(例えばカルシウム)を封鎖するキレート剤を主成分とし得る。適当なキレート剤は、カルシウムに結合可能な、多様な(multiple)アニオン性官能基を有する有機分子の塩である(又は何らかの架橋イオンが使用された)。例は、クエン酸,EDTA,EGTA,BAPTA,テトラサイクリン,及びリン酸塩の塩である。刺激は、ヒトの身体内部への膜の挿入を伴う外科手術手順の際に適用されてよい。刺激への応答において、膜は膨潤し、膜のポアサイズを増大させ、且つ膜から傷環境内への有効成分の拡散速度を増大させる。ポアサイズは、少なくとも10倍に及び1,000倍以上まで増大してよい。刺激の有益効果は、体重,年齢,代謝,もしくは疾病状態に関して患者にマッチするように、薬物放出の速度が調節されてよいことである。刺激は、シリンジ,スプレー機構,その他により、移植された膜の表面まで送達されてよい。
【0061】
別の実施形態において、膜移植から数時間、数日、もしくは数週間後に、刺激を膜に適用してよい。例えば、バンコマイシン(抗生物質)を充填された仮想上の(hypothetical)膜は、骨インプラントに隣接して挿入されてよい。この膜は、抗生物質の放出を表すことになる。ヘルスケア提供者が骨インプラント周囲に感染の症状を認めるならば、感染を撲滅するためのこの抗生物質の放出速度を増大させるため膜を刺激するよう決めてよい。薬物全体が放出された後、ヘルスケア提供者は、バンコマイシン送達の目的を済ませた膜は、刺激の作用により完全に可溶化されるべきであること、従って創傷部位から異質膜の存在を除去することを決定してよい。刺激は、周辺組織を貫通する針とシリンジにより導入され得るか、又は最低限に侵襲的外科手段により導入され得る。
【0062】
前述の実施形態の多くは、治療薬と多孔性ハイドロゲルとを組み合わせる。前述のこのような多孔性ハイドロゲルの一つは、結晶テンプレートハイドロゲルに関わっていた。一例として、米国特許出願公開US20110008442に見られる実施形態は、治療法とともに利用してよい。その内容が本書に含まれる用途(application)は、結晶テンプレート法により形成されたポアありハイドロゲルを有するいくつかの実施形態と、結晶テンプレート法なしに形成されたポアを有する他の実施形態とを包含する。本書に記載された治療薬は、これらの実施形態のいずれかのこれらのポアに包含されてよい。
【0063】
一実施形態は、治療薬を展開するのに使用してよい組織アンカーを包含する。例えば、治療薬を包含するハイドロゲルは、作用剤(agent)に適用されてよい。ハイドロゲルを患者に塗布し、そして放置してよい。しかしながら、ハイドロゲルを「調整する(tune)」ために、刺激を使用してよい。例えば、ハイドロゲルは、カルシウム架橋及び治療薬を包含してよい。
(1)ハイドロゲルが患者に癒着する(例えば腫瘍に癒着する)のを助けるため、
(2)ハイドロゲルのための溶解時間(例えば1時間又は1週間)を促進もしくは調整するため、及び
(3)治療薬適用時間(例えば1時間又は2週間)を調整するため、
カルシウムキレート剤をカルシウム架橋ハイドロゲルに適用してよい。
【0064】
実施形態を、上述の多分子層ハイドロゲルと組み合わせてよい。従って、一実施形態は、治療薬を展開するのに使用してよい多分子層ハイドロゲルを包含する。多分子層ハイドロゲルは、再生効果を提供する第1の層(例えば、コラーゲンとヒアルロン酸とを包含する再生層)と癒着防止性である第2の層(例えばヒアルロン酸とアルギン酸塩とを包含する癒着防止性層)とを包含してよく、且つ前記第2の層のポアと共に治療薬をさらに包含する。
【0065】
一実施形態は、癒着バリアに有益な4つのファクターを備えたフィルムを包含する。実施形態は、癒着バリアによる従来の課題(不十分な取り扱い特性))を解決する。これは、バリアについて強い市場受け入れを妨げてきた。4つのファクターについて、第1のファクターは、外科セッティング(例えば、腹腔鏡送達のためのトロカールを使用するオープンな外科手術(open surgery)、その他)に関連するやり方において操作されるべきバリアのための能力を包含する。第2の属性は、組織癒着である。バリアが、それが移植されている適所に留まることができならば、そのバリアは、部位に特有な組織サポートを提供するだけではなく、縫合糸もしくは別の固定ステップの必要性をも取り除く。第3の属性は、なじみ性(conformability)である。最後の属性は、生体吸収性である。本発明の一実施形態は、これらの4つのファクターすべてに適合する。
【0066】
一実施形態は、ハイドロゲルに多孔性と繊維とを追加するためのテクニックを使用する。容易に調節可能であり、異なるポリマー特性、異なるパターン、その他を与えるプロセスに役立たせるため、異なる結晶、生体高分子の異なる密度を使用する自由度がある。この自由度に加えて、ハイドロゲルの製造をスケールアップする能力がある。一実施形態は、結晶性ネットワーク周辺の光架橋性HAを包含し、及び次いで結晶性ネットワーク周辺のアルギン酸塩をさらに化学的に架橋する。生体高分子の繊維様構造への圧縮は、フィルムの強度を強化する一方で、多孔性ネットワークは、弾性を生じる。従って、結晶化プロセスは、それ以外は脆い材料において、要求された取扱い特性を提供するユニークな繊維とポアを与える。結晶化プロセスは、廉価で、単純で、時間のかからず、そして高性能な機器もしくはスキルを必要としない。フィルムキャストは、他のキャストと異なる。
【0067】
一実施形態は湿式で適用されてよく、このことは、内視鏡手順に適しており、且つ術野を乾燥させる必要を取り除く。フィルムは、可撓性であり、且つ術野を見える状態にするように半透明である。また、外科的切開は、湿ったインプラントよりもはるかに小さくてよい。フィルムの一実施形態は、当座は再配置可能でもある。例えば、術野内の初期の配置の際の一実施形態と共に、フィルムは、容易に再配置可能である。しかしながら、配置から24時間以内に、フィルムは、ゲルから粘液への変態(transformation)を受ける。この時点で、フィルムはもはや再配置可能ではなくなり、組織に強く接着する。この変態は、内在ナトリウムイオンによるフィルム内でのカルシウム架橋の移動(displacement)により生じる。
【0068】
本発明の一実施形態は、アルギン酸塩とヒアルロン酸塩とを有する膜を包含する。膜は、方法、例えばモールド内へのキャスティング、スピンコーティング、ドクターブレード法、押し出し、その他により得られる。膜は、多価カチオン、好ましくはカルシウムとの架橋により安定化される。任意には、膜は、アルギン酸塩もしくはヒアルロン酸塩のいずれかを、その光反応性誘導体(紫外線源もしくは可視光源により引き起こされる場合、当該誘導体は、化学架橋を受ける)で置換することによりさらに安定化可能である。
【0069】
本発明の一実施形態は、瘢痕組織癒着を阻害し、減じ、もしくは防止するための上述の膜を使用する方法である。膜を、瘢痕組織癒着のリスクが存在する身体のいずれの解剖学的場所で使用してよい。外科的手技の際、膜を2つの並列された器官もしくは組織の間に置いてよい。オープンな及び最低限に侵襲的外科手術手順の両方において、膜を使用してよい。
【0070】
本発明の一実施形態は、膜の特性を改善するため、刺激(stimulus)、好ましくは溶液もしくはゲルで上述の膜を処理する方法である。例えば、溶液は、膜の組織癒着を強化するか、又は体内の膜吸収の速度を増大させてよい。このような溶液は、膜を安定化させる多価カチオンを結合するキレート剤(例えばカルシウムキレート剤)を有する。ヒトの身体内部への膜の挿入を伴う外科手術手順の際、溶液が適用される。任意には、溶液は、外科的送達を容易にするため、粘度調整剤を有していてもよい。
【0071】
本発明の一実施形態は、トラップされた医薬的に有効な成分と共にアルギン酸塩とヒアルロン酸塩とを有する上述の膜である。有効成分は、抗生物質,抗炎症,化学療法剤,瘢痕防止剤,及び/又はプロ再生薬(例えば成長因子もしくは幹細胞)であってよい。一実施形態において、ハイドロゲル膜からの有効成分の放出は、上述の刺激の使用により変更されてよい。
【0072】
本発明の一実施形態は、2つの異なる(distinct)層を有する二分子層ハイドロゲル膜である。2つの層のうち一方は、瘢痕組織癒着を阻害し、減じ、もしくは防止し、他方は、創傷治癒及び再生を促進する。この2つの層は、化学的、イオン性、もしくは物理的結合を介して合わさる。
【実施例】
【0073】
以下の実施例は、さらなる実施形態に関する。
【0074】
実施例1は、ハイドロゲルフィルム内に両方とも含まれる未架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩と;
カルシウムキレート剤と
を包含する。ここで、
(a)前記アルギン酸塩はカルシウムで架橋され、
(b)前記ハイドロゲルフィルムは平坦であり、且つ幅、長さ、並びに前記幅及び長さ未満である厚さを包含し、
(c)カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムの生体吸収性が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成される。
【0075】
実施例2において、実施例1の主題は、そこではハイドロゲルフィルム内のカルシウム架橋を崩壊させるように、カルシウムキレート剤は構成されることを任意に包含し得る。
【0076】
実施例3において、実施例1乃至2の主題は、カルシウムキレート剤は、クエン酸塩,EDTA,EGTA,及びBAPTAを有するグループから選択されることを任意に包含し得る。
【0077】
実施例4において、実施例1乃至3の主題は、カルシウムキレート剤の濃度は、0.05乃至1.0モル濃度(molar)であることを任意に包含し得る。
【0078】
実施例5において、実施例1乃至4の主題は、増稠剤を任意に包含し得る。
【0079】
実施例6において、実施例1乃至5の主題は、増稠剤はヒアルロン酸ナトリウムを包含することを任意に包含し得る。
【0080】
実施例7において、実施例1乃至6の主題は、増稠剤は、カルシウムキレート剤の粘度を増やすように構成されることを任意に包含し得る。
【0081】
実施例8において、実施例1乃至7の主題は、ハイドロゲルフィルムは、ヒアルロン酸とアルギン酸塩とから本質的になることを任意に包含し得る。
【0082】
実施例9において、実施例1乃至8の主題は、ハイドロゲルフィルムは、少なくとも1%且つ33%以下のヒアルロン酸組成を有することを任意に包含し得る。
【0083】
実施例10において、実施例1乃至9の主題は、未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を有する第1のハイドロゲル層と;
【0084】
コラーゲン及びヒアルロン酸を有する第2のハイドロゲル層と
を任意に包含し得る。
【0085】
実施例11において、実施例1乃至10の主題は、
前記第1のハイドロゲル層はモノリシックであり、
前記第2のハイドロゲル層はモノリシックであるが、前記第1のハイドロゲル層とモノリシックではなく、且つ
前記第1のハイドロゲル層と第2のハイドロゲル層とは互いに共有結合していること
を任意に包含し得る。
【0086】
実施例12において、実施例1乃至11の主題は、追加の未架橋ヒアルロン酸及び追加の架橋アルギン酸塩を有する第3のハイドロゲル層を任意に包含し得る。
【0087】
ここで、前記第3のハイドロゲル層はモノリシックであるが、前記第2のハイドロゲル層とモノリシックではなく、前記第3のハイドロゲル層と第2のハイドロゲル層とは互いに共有結合しており、且つ前記第2のハイドロゲル層は、第1のハイドロゲル層と第3のハイドロゲル層との間にある。
【0088】
実施例13において、実施例1乃至12の主題は、アルギン酸塩は、未架橋ヒアルロン酸の周囲で架橋されることを任意に包含し得る。
【0089】
実施例14において、実施例1乃至13の主題は、ハイドロゲルフィルムは、薬物,医薬品(pharmaceutical agent),ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を有することを任意に包含し得る。
【0090】
実施例15において、実施例1乃至14の主題は、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じて治療薬に関するハイドロゲルフィルムの放出速度が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成されることを任意に包含し得る。
【0091】
実施例16において、実施例1乃至15の主題は、アルギン酸塩は、治療薬の周囲で架橋されることを任意に包含し得る。
【0092】
実施例17において、実施例1乃至16の主題は、ハイドロゲルフィルム内のヒアルロン酸塩の含有量を増やすのに応じて治療薬に関するハイドロゲルフィルムの放出速度が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成されることを任意に包含し得る。
【0093】
実施例18において、実施例1乃至17の主題は、薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を任意に包含し得る。
【0094】
実施例19において、実施例1乃至18の主題は、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムに関する粘膜付着性が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成されることを任意に包含し得る。
【0095】
実施例20において、実施例1乃至19の主題は、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じて透明性を高めるように、前記ハイドロゲルフィルムは構成されることを任意に包含し得る。
【0096】
別の実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、厚さ5乃至30μmを有する。しかしながら、他の実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、5,10,15,20,25,35,40,45,もしくは50μm以下である。別の実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、厚さ5乃至10,10乃至15,15乃至20,20乃至25,25乃至30,30乃至40,50乃至60,70乃至80,90乃至100μmを有する。別の実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、厚さ250μm以下を有する。
【0097】
実施例21は、架橋アルギン酸塩内に未架橋ヒアルロン酸をトラップするため、未架橋ヒアルロン酸の周囲で架橋される架橋アルギン酸塩から本質的になるハイドロゲルフィルムと;
金属イオン封鎖剤と
を有するキットであって、
(a)前記アルギン酸塩はイオンで架橋され、
(b)前記ハイドロゲルフィルムは平坦であり、
(c)金属イオン封鎖剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムの生体吸収性が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成され、且つ
(d)前記金属イオン封鎖剤はイオンを封鎖するように構成される、
キットを包含する。
【0098】
実施例22において、実施例21の主題は、
前記ハイドロゲルフィルムは、
未架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を有する第1のハイドロゲル層と;
薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を有する第2のハイドロゲル層と
を有し;
(a)前記第1のハイドロゲル層はモノリシックであり、
(b)第2のハイドロゲル層はモノリシックであるが、第1のハイドロゲル層とモノリシックではなく、
(c)前記第1のハイドロゲル層と第2のハイドロゲル層とは互いに化学的に結合しており、
(d)第2のハイドロゲル層は粘着性であり、且つ
(e)第1のハイドロゲル層は粘着防止性であることを任意に包含し得る。
【0099】
実施例23において、実施例21乃至22の主題は、
前記ハイドロゲルフィルムは、薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を包含し;且つ
金属イオン封鎖剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じて治療薬に関するハイドロゲルフィルムの放出速度が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成されることを任意に包含し得る。
【0100】
実施例24において、実施例21乃至23の主題は、
金属イオン封鎖剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムに関する粘膜付着性が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成されることを任意に包含し得る。
【0101】
図6は、一実施形態における一方法を包含する。
【0102】
ブロック605は、被験者にハイドロゲルフィルムを適用するステップであって、前記ハイドロゲルフィルムは、未架橋ヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を包含し、且つ前記アルギン酸塩は、カルシウムで架橋されるステップを包含する。
【0103】
ブロック610は、
(a)カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムの生体吸収性を増大させるため、
(b)カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲル内に含まれた治療薬に関するハイドロゲルフィルムの放出速度を調整するため、及び/又は
(c)カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムに関する粘膜付着性を増大させる、
カルシウムキレート剤をハイドロゲルに適用するステップを包含する。
【0104】
ブロック607は任意である。ブロック607は、カルシウムキレート剤の粘度を増大させるため、増稠剤をカルシウムキレート剤に適用するステップを包含する。これは、カルシウムキレート剤がハイドロゲルに適用される前もしくは後にしてよい。
【0105】
一実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を有する第1のハイドロゲル層と;
コラーゲン及びヒアルロン酸を有する第2のハイドロゲル層と
を包含する。このような実施形態により、ブロック605は、第2のハイドロゲル層を患者の傷に適用するステップを包含してよい。
【0106】
一実施形態において、
図6におけるカルシウムキレート剤は、金属イオン封鎖剤と置き換えられ、架橋されたカルシウムは、より一般的には金属イオン封鎖剤と対応するイオンに基づく架橋に基づく。
【0107】
別の実施形態は、ハイドロゲルフィルムを被験者に適用するステップを有する方法であって、ハイドロゲルフィルムは、未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を包含する方法を包含する。前記アルギン酸塩はカルシウムで架橋され、
前記ハイドロゲルフィルムは平坦であり、且つ幅、長さ、並びに前記幅及び長さ未満である厚さを包含する。当該方法は、
カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムの生体吸収性が増大するように、カルシウムキレート剤をハイドロゲルに適用するステップをさらに有する。当該方法は、ハイドロゲルを患者に塗布してから1日以上後にカルシウムキレート剤をハイドロゲルに適用するステップをさらに有する。一実施形態において、当該方法は、カルシウムキレート剤の粘度を増大させるため、増稠剤をカルシウムキレート剤に適用するステップをさらに有する。一実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を有する第1のハイドロゲル層と;
コラーゲン及びヒアルロン酸を有する第2のハイドロゲル層と
を包含する。当該方法は、第2のハイドロゲル層を患者の傷に適用するステップをさらに有する。別の実施形態は、ハイドロゲルフィルムを、その外側表面が第1のハイドロゲル層を包含するロールに丸めるステップを包含する。前記実施形態は、ハイドロゲルフィルムが、トロカール,イントロデューサ,もしくはチューブに粘着もしくは癒着せずに、ハイドロゲルフィルムを患者内に導入するため、第1のハイドロゲル層をトロカール,イントロデューサ,もしくはチューブと接触させるステップを包含する。一実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を有する。当該方法は、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに提供することにより、治療剤に関するハイドロゲルフィルムの放出速度を調整するステップを有してよい。一実施形態において、当該方法は、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに提供することにより、ハイドロゲルフィルムに関する粘膜付着性を増大させるステップを有してよい。
【0108】
別の実施形態は、ハイドロゲルフィルムを被験者に適用するステップを有する方法を包含する。前記ハイドロゲルフィルムは、未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を包含する。アルギン酸塩は、イオンで架橋され、ハイドロゲルフィルムは平坦であり、且つ幅、長さ、並びに前記幅及び長さ未満である厚さを包含する。当該方法は、金属イオン封鎖剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムの生体吸収性が増大するように、金属イオン封鎖剤をハイドロゲルに適用するステップをさらに有する。一実施形態において、当該方法は、金属イオン封鎖剤の粘度を増大させるため、増稠剤を金属イオン封鎖剤に適用するステップをさらに有する。一実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を有する第1のハイドロゲル層と;
治療薬を有する第2のハイドロゲル層と
を包含する。当該方法は、第2のハイドロゲル層を患者の傷に適用するステップをさらに有する。別の実施形態は、ハイドロゲルフィルムを、その外側表面が第1のハイドロゲル層を包含するロールに丸めるステップを包含する。前記実施形態は、ハイドロゲルフィルムが、トロカール,イントロデューサ,もしくはチューブに粘着もしくは癒着せずに、ハイドロゲルフィルムを患者内に導入するため、第1のハイドロゲル層をトロカール,イントロデューサ,もしくはチューブと接触させるステップを包含する。一実施形態において、ハイドロゲルフィルムは、薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を有する。当該方法は、金属イオン封鎖剤をハイドロゲルフィルムに提供することにより、治療剤に関するハイドロゲルフィルムの放出速度を調整するステップを有してよい。一実施形態において、当該方法は、金属イオン封鎖剤をハイドロゲルフィルムに提供することにより、ハイドロゲルフィルムに関する粘膜付着性を増大させるステップを有してよい。
【0109】
別の実施形態は、キットを包含しないが、その代わりハイドロゲルをただ包含する。このような実施形態は、いずれもハイドロゲルフィルム内に包含された未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を包含する。ただし、
(a)前記アルギン酸塩はカルシウムで架橋され、
(b)前記ハイドロゲルフィルムは平坦であり、且つ幅、長さ、並びに前記幅及び長さ未満である厚さを包含し、
(c)カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムの生体吸収性が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成される。ハイドロゲルフィルム内のカルシウム架橋を崩壊させるように、このようなカルシウムキレート剤は構成されるであろう。一実施形態において、前記ハイドロゲルフィルムは、ヒアルロン酸とアルギン酸塩とから本質的になる。一実施形態において、前記ハイドロゲルフィルムは、少なくとも1%且つ33%以下のヒアルロン酸組成を有する。一実施形態において、前記ハイドロゲルフィルムは、
未架橋のヒアルロン酸及び架橋アルギン酸塩を有する第1のハイドロゲル層と;
コラーゲン及びヒアルロン酸を有する第2のハイドロゲル層と
を有する。一実施形態において、
前記第1のハイドロゲル層はモノリシックであり、
前記第2のハイドロゲル層はモノリシックであるが、前記第1のハイドロゲル層とモノリシックではなく、且つ
前記第1のハイドロゲル層と第2のハイドロゲル層とは互いに共有結合している。一実施形態において、前記ハイドロゲルフィルムは、
追加の未架橋ヒアルロン酸及び追加の架橋アルギン酸塩を有する第3のハイドロゲル層を有し;
前記第3のハイドロゲル層はモノリシックであるが、前記第2のハイドロゲル層とモノリシックではなく、前記第3のハイドロゲル層と第2のハイドロゲル層とは互いに共有結合しており、且つ前記第2のハイドロゲル層は、第1のハイドロゲル層と第3のハイドロゲル層との間にある。一実施形態において、アルギン酸塩は、未架橋ヒアルロン酸の周囲で架橋される。一実施形態において、前記ハイドロゲルフィルムは、薬物,医薬品,ペプチド,タンパク質,メディシン,ホルモン,及びマクロ分子を有するグループから選択された治療薬を有する。一実施形態において、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じて治療薬に関するハイドロゲルフィルムの放出速度が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成される。一実施形態において、アルギン酸塩は、治療薬の周囲で架橋される。一実施形態において、ハイドロゲルフィルム内のヒアルロン酸塩の含有量を増やすのに応じて治療薬に関するハイドロゲルフィルムの放出速度が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成される。一実施形態において、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じてハイドロゲルフィルムに関する粘膜付着性が増大するように、前記ハイドロゲルフィルムは構成される。一実施形態において、カルシウムキレート剤をハイドロゲルフィルムに適用するのに応じて透明性を高めるように、前記ハイドロゲルフィルムは構成される。一実施形態において、前記ハイドロゲルフィルムは、厚さ5乃至30μmを有する。一実施形態において、この段落で述べられたカルシウムキレート剤は、金属イオン封鎖剤と置き換えられ、架橋されたカルシウムは、より一般的には金属イオン封鎖剤と対応するイオンに基づく架橋に基づく。
【0110】
本発明は、限定された数の実施形態について記載されてきたが、当業者であれば、それらから多数の変形及び変更を認識するはずである。添付の請求項は、本発明の精神と範囲内に属するとき、そのような変形及び変更全てをカバーすることが意図される。