(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の連続プロセスを説明する断面図である。
【
図2】本発明のプロセスに従って生成された構造の断面図である。
【0008】
本明細書全体を通じて使用される場合、文脈が別段に明らかに示さない限り、次の略語は次の意味を有するものとする:℃=摂氏、g=グラム、nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル、mm=ミリメートル、sec.=秒、min.=分、hr.=時間、DI=脱イオン化された、mL=ミリリットル、M
n=数平均分子量、M
w=重量平均分子量、及びDa=ダルトン。別段に注記されない限り、全ての量は、参照組成物の総重量に基づいて重量パーセント(「重量%」)であり、全ての比率はモル比である。全ての数値範囲が、かかる数値範囲が合計で100%となるよう制約されることが明らかである場合を除いて境界値を含み、いかなる順序でも組み合わせ可能である。
【0009】
文脈が別段に明らかに示さない限り、冠詞「a」、「an」、及び「the」とは、単数形及び複数形を指す。本明細書において使用される場合、「及び/または」という用語は、関連した列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる組み合わせを含む。別段に特定されない限り、「アルキル」は、直鎖、分岐、及び環状のアルキルを指す。「アリール」は、芳香族炭素環及び芳香族ヘテロ環を指す。「オリゴマー」という用語は、二量体、三量体、四量体、及びさらなる硬化が可能な他のポリマー材料を指す。「硬化」という用語は、材料または組成物の分子量を増加させる、重合等の任意のプロセスを意味する。「硬化性」とは、ある特定の条件下で硬化することができる任意の材料を指す。「膜」及び「層」という用語は、本明細書を通して交換可能に使用される。「コポリマー」という用語は、重合単位として、2つ以上の異なるモノマーからなるポリマーを指す。
【0010】
第1、第2、第3等の用語は各種の要素、構成成分、領域、層、及び/または部分を説明するために本明細書において使用され得るが、これらの要素、構成成分、領域、層、及び/または部分がこれらの用語により限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、ある要素、構成成分、領域、層、または部分を別の要素、構成成分、領域、層、または部分と区別するためにのみ使用される。したがって、以下に論じられる第1の要素、構成成分、領域、層、または部分は、本発明の教示を逸脱することなく、第2の要素、構成成分、領域、層、または部分と称することができる。ある要素が別の要素「の上に配置される」として言及される場合、それは直接その別の要素の上にあり得るか、または介在する要素がそれらの間に存在してもよい。対照的に、ある要素が別の要素「の上に直接配置される」として言及される場合、介在する要素は存在しない。
【0011】
本組成物は、1つ以上の硬化性アリーレンオリゴマー、1つ以上の硬化剤、及び1つ以上の有機溶媒を含む。
【0012】
本発明のアリーレンオリゴマーは、重合単位として、2つ以上のシクロペンタジエノン部分を有する第1のモノマーと、2つ以上のアルキン部分を有する第2のモノマーとを含み、少なくとも1つのアルキン部分がケイ素原子へ直接結合される。本発明のオリゴマーはポリアリーレンであり、好ましくは、ポリフェニレンである。2つのシクロペンタジエノン部分を含有するいかなるモノマーも、本オリゴマーを調製するために、第1のモノマーとして好適に使用され得る。かかるモノマーとしては、米国特許第5,965,679号、米国特許第6,288,188号、及び米国特許第6,646,081号、ならびに国際特許公開第97/10193号及び国際特許公開第2004/073824号に記載されるモノマー等が周知である。第1のモノマーは、式(1)、
【0013】
【化1】
【0014】
に示される構造を有することが好ましく、
式中、各R
1は独立して、H、C
1−6アルキル、フェニル、または置換フェニルから選択され、Ar
1は芳香族部分である。好ましくは、各R
1は独立して、C
3−6アルキル、フェニル、及び置換フェニルから選択され、より好ましくは、各R
1はフェニルである。「置換フェニル」とは、ハロゲン、C
1−6アルキル、C
1−6ハロアルキル、C
1−6アルコキシ、C
1−6ハロアルコキシ、フェニル、及びフェノキシから、好ましくはハロゲン、C
1−4アルキル、C
1−4ハロアルキル、C
1−4アルコキシ、C
1−4ハロアルコキシ、及びフェニルから選択される1つ以上の置換基と置き換えられる水素のうちの1つ以上を有するフェニル部分を意味する。置換フェニルは、ハロゲン、C
1−6アルキル、C
1−6アルコキシ、フェニル、及びフェノキシから選択される1つ以上の置換基と置き換えられる水素のうちの1つ以上を有するフェニル部分であることが好ましい。好ましくは、置換フェニルは1〜3個の置換基、より好ましくは1または2個の置換基を有する。米国特許第5,965,679号で開示されるもの等の幅広い種類の芳香族部分が、Ar
1としての使用に好適である。Ar
1に有用な例示的な芳香族部分としては、式(2)、
【0015】
【化2】
【0016】
に示される構造を有するものが挙げられ、式中、xは、1、2、または3から選択される整数であり、yは、0、1、または2から選択される整数であり、各Ar
2は独立して、
【0017】
【化3】
【0018】
から選択され、各R
2は独立して、ハロゲン、C
1−6アルキル、C
1−6ハロアルキル、C
1−6アルコキシ、C
1−6ハロアルコキシ、フェニル、及びフェノキシから選択され、bは0〜4の整数であり、c及びdの各々は、0〜3の整数であり、各Zは独立して、O、S、SO、SO
2、NR
3、PR
3、P(=O)R
3、C(=O)、CR
4R
5、及びSiR
4R
5から選択され、R
3、R
4、及びR
5は独立して、H、(C
1−C
4)アルキル、ハロ(C
1−C
4)アルキル、及びフェニルから選択される。xは、1または2であることが好ましく、より好ましくは1である。yは、0または1であることが好ましく、より好ましくは1である。好ましくは、各R
2は独立して、ハロゲン、C
1−4アルキル、C
1−4ハロアルキル、C
1−4アルコキシ、C
1−4ハロアルコキシ、及びフェニルから、より好ましくはフルオロ、C
1−4アルキル、C
1−4フルオロアルキル、C
1−4アルコキシ、C
1−4フルオロアルコキシ、及びフェニルから選択される。bは、0〜3であることが好ましく、より好ましくは0〜2、なおより好ましくは0または1である。cは、0〜2であることが好ましく、より好ましくは0または1である。dは0〜2であることも好ましく、より好ましくは0または1である。式(4)において、c+d=0〜4であることが好ましく、より好ましくは0〜2である。各Zは、好ましくは、独立して、O、S、NR
3、C(=O)、CR
4R
5、及びSiR
4R
5から、より好ましくはO、S、C(=O)、及びCR
4R
5から、なおより好ましくは、O、C(=O)、及びCR
4R
5から選択される。各R
3、R
4、及びR
5は独立して、H、C
1−4アルキル、C
1−4フルオロアルキル、及びフェニルから選択されることが好ましく、より好ましくはH、C
1−4アルキル、C
1−2フルオロアルキル、及びフェニルから選択される。好ましくは、各Ar
2は構造(3)を有する。
【0019】
本オリゴマーを調製するのに有用な第2のモノマーは、2つ以上のアルキン部分を有する。好ましくは、第2のモノマーは、芳香族であり、より好ましくは2つ以上のアルキン部分と置換される芳香族環を含み、なおより好ましくは2つまたは3つのアルキン部分と置換される芳香族環を含む。好適な第2のモノマーは、式(5)及び式(6)、
【0020】
【化4】
【0021】
からなるものであって、式中、aは0〜4の整数であり、bは2または3であり、cが2または3であり、各R
6は独立して、H、Si(R
8)
3、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、C
7−15アラルキル、C
6−10アリール、及び置換C
6−10アリールから選択され、各R
7は独立して、H、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、C
7−15アラルキル、C
6−10アリール、及び置換C
6−10アリールから選択され、各R
8は独立して、H、ハロゲン、ヒドロキシル、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、C
7−15アラルキル、C
7−15アラルコキシ、C
6−10アリール、C
6−20アリールオキシ、及び置換C
6−10アリールから選択され、Ar
3はC
6−10アリールである。好ましくは、各R
8は独立して、H、ヒドロキシル、C
1−6アルキル、C
1−6アルコキシ、C
7−12アラルキル、C
7−15アラルコキシ、C
6−10アリール、C
6−15アリールオキシ、及び置換C
6−10アリールから選択され、より好ましくは、各R
8は独立して、H、ヒドロキシル、メチル、エチル、プロピル、ブチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、フェニル、ベンジル、フェネチル、及びフェノキシから選択される。Ar
3は、好ましくはフェニルまたはナフチル、より好ましくはフェニルである。「置換C
6−10アリール」とは、ハロゲン、C
1−4アルキル、C
1−4ハロアルキル、C
1−4アルコキシ、C
1−4ハロアルコキシ、及びフェニルから、好ましくはC
1−3アルキル、C
1−3ハロアルキル、C
1−3アルコキシ、C
1−3フルオロアルコキシ、及びフェニルから選択される1つ以上の置換基と置き換えられる水素のうちの1つ以上を有する任意のC
6−10アリール部分を指す。フッ素は、好ましいハロゲンである。好ましくは、第2のモノマーは、式(5)の構造を有する。好ましい第2のモノマーとしては、1,3−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]ベンゼン、1,4−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]ベンゼン、1,3,5−トリス(トリメチルシリルエチニル)ベンゼン、1,3−ビス[(トリメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,4−ビス[(トリメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,3−ビス[(ジメチルメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,4−ビス[(ジメチルメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,3−フェニレンビス(エチン−2,1−ジイル))ビス(ジメチル−シラノール)、1,4−フェニレンビス(エチン−2,1−ジイル))ビス(ジメチルシラノール)、ビス(フェニルエチニル)ジメチル−シラン、及びビス(フェニルエチニル)ジメトキシシラン、より好ましくは、1,3−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]ベンゼン、1,4−ビス[(トリメチルシリル)エチニル]ベンゼン、1,3−ビス[(トリメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,4−ビス[(トリメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,3−ビス[(ジメチルメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,4−ビス[(ジメチルメトキシシリル)エチニル]ベンゼン、1,3−フェニレンビス(エチン−2,1−ジイル))ビス(ジメチルシラノール)、及び1,4−フェニレンビス(エチン−2,1−ジイル))ビス(ジメチルシラノール)が挙げられる。第2のモノマーとして有用な化合物は、当該技術分野において既知の様々な手順によって調製され得るか、またはSigma Aldrich(Milwaukee Wisconsin)、TCI America(Portland,Oregon)、もしくはGelest,Inc.(Tullytown,Pennsylvania)から一般に市販されている。
【0022】
本発明のオリゴマーは、好適な有機溶媒中で、1つ以上の第1のモノマーを1つ以上の第2のモノマー、及びいずれかの任意の第3のモノマーと反応させることによって調製される。第1のモノマー合計対第2のモノマー合計のモル比は、2.5:1〜1:2.5、好ましくは1:2〜2:1、より好ましくは1.75:1〜1:1.75である。任意の第3のモノマーが使用されるとき、それは典型的に、第1のモノマーに基づいて0.001〜0.2当量の量で使用される。本オリゴマーを調製するのに有用な好適な有機溶媒は、C
2−6アルカンカルボン酸のベンジルエステル、C
2−6アルカンジカルボン酸のジベンジルエステル、C
2−6アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−6アルカンジカルボン酸のジテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−6アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、C
2−6アルカンジカルボン酸のジフェネチルエステル、シクロアルカノン、及び芳香族溶媒である。好ましい芳香族溶媒は、芳香族炭化水素及び芳香族エーテルである。好適な芳香族炭化水素は、メシチレン、p−シメン、キシレン、及びトルエンである。好適な芳香族エーテルは、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、C
1−6アルコキシ置換ベンゼン、及びベンジルC
1−6アルキルエーテル、より好ましくはC
1−4アルコキシ置換ベンゼン、及びベンジルC
1−4アルキルエーテルである。好適なシクロアルカノンは、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、及びシクロオクタノンである。好ましい有機溶媒は、C
2−4アルカンカルボン酸のベンジルエステル、C
2−4アルカンジカルボン酸のジベンジルエステル、C
2−4アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−4アルカンジカルボン酸のジテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−4アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、C
2−4アルカンジカルボン酸のジフェネチルエステル、C
1−6アルコキシ置換ベンゼン、及びベンジルC
1−6アルキルエーテル、より好ましくは、C
2−6アルカンカルボン酸のベンジルエステル、C
2−6アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−6アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、C
1−4アルコキシ置換ベンゼン、ベンジルC
1−4アルキルエーテル、及びジベンジルエーテル、なおより好ましくは、C
2−6アルカンカルボン酸のベンジルエステル、C
2−6アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、C
1−4アルコキシ置換ベンゼン、及びベンジルC
1−4アルキルエーテルである。例示的な有機溶媒としては、ベンジルアセテート、ベンジルプロプリオネート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルブチレート、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、メシチレン、p−シメン、キシレン、トルエン、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、ジメトキシベンゼン、エチルアニソール、エトキシベンゼン、ベンジルメチルエーテル、及びベンジルエチルエーテル、好ましくは、ベンジルアセテート、ベンジルプロプリオネート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルブチレート、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、ジメトキシベンゼン、エチルアニソール、及びエトキシベンゼンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明のオリゴマーは、1つ以上の第1のモノマー、1つ以上の第2のモノマー、いずれかの任意の第3のモノマー、及び有機溶媒を、それぞれ上述のように、瓶の中でいかなる順序でも混ぜ合わせて、その混合物を加熱することによって調製され得る。第1のモノマーはまず、瓶の中で有機溶媒と混ぜ合わせられ、次いで、第2のモノマーが混合物へ添加され得る。一実施形態において、第1のモノマー及び有機溶媒混合物は、第2のモノマーが添加される前に、所望の反応温度まで加熱される。第2のモノマーは一度に添加され得るか、または代替的に第2のモノマーは、0.25〜46時間、好ましくは2〜18時間といった一定期間にわたって添加されて、発熱形成を低減し得る。第1のモノマー及び有機溶媒混合物は、第2のモノマーが添加される前に、所望の反応温度まで加熱され得る。代替的に、第1のモノマー、第2のモノマー、及び溶媒が瓶に添加され、次いで所望の反応温度まで加熱されて、この温度で一定期間保持されて所望のオリゴマーを得る。反応混合物は、8〜250時間といった一定期間中、95〜230℃の温度で加熱される。好ましくは、混合物は、110〜225℃、より好ましくは125〜225℃、なおより好ましくは150〜220℃の温度まで加熱される。任意に、反応を加速させるために、酸性触媒がこの反応物に添加されてもよい。硫酸、リン酸、ポリリン酸、塩酸、メチルスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、及びトリフルオロメタンスルホン酸等のあらゆる好適な酸が使用され得る。反応の後、結果として得られるオリゴマーが反応混合物から単離され得るか、または表面をコーティングするためのものとして使用され得る。
【0024】
本発明のオリゴマーは典型的に、2000〜100000、好ましくは2500〜80000、より好ましくは2500〜50000、なおより好ましくは2500〜30000の範囲の重量平均分子量(M
w)を有する。特に好ましいM
w範囲は5000〜50000であり、さらにより好ましい範囲は5000〜30000である。オリゴマーの分子量は、当業者に既知の手段によって調製され得る。例えば、より長い反応時間は、より高い分子量をもたらす。オリゴマーの分子量はまた、第2のモノマーの量を調節することによっても制御され得る。例えば、≦35000のM
wを有するオリゴマーを得るために、第1のモノマーの各1モルにつき1.05モル以上の第2のモノマーが使用されなければならず、つまり第1のモノマー対第2のモノマーのモル比は、1:1.055〜1:2.25といった少なくとも1:1.05でなければならない。
【0025】
理論によって縛られることを意図するものではないが、本アリーレンオリゴマーは、加熱時に、第1のモノマーのシクロペンタジエノン部分と、第2のモノマー基のエチニル部分とのディールス−アルダー反応を通じて形成されると考えられる。かかるディールス−アルダー反応の間、カルボニル架橋型種が形成する。当業者であれば、かかるカルボニル架橋型種がオリゴマー中に存在し得ることを理解するであろう。さらなる加熱時に、カルボニル架橋種が本質的に芳香族環系へ完全に転換される。好ましいアリーレンオリゴマーは、The Dow Chemical Companyから入手可能なSiLK(商標)ブランド下で販売されているフェニレンオリゴマーである。好適なアリーレンオリゴマーとしては、米国特許第5,965,679号、及びStille et al.,Macromolecules,vol.1,no.5,Sept.−Oct.1968に開示されるものが挙げられる。
【0026】
本明細書において使用される場合、「硬化剤」という用語は、そのような硬化剤を使わずに同じ条件下で硬化される同じアリーレンオリゴマーと比較して、400〜450℃の範囲の温度において酸素含有雰囲気(≧100ppmの酸素)下で硬化中、アリーレンオリゴマーの望ましくない酸化及び/または熱劣化を軽減する任意の材料を指す。好適な硬化剤は、紫外線吸収剤または光安定剤として使用される材料等のアリーレンオリゴマーを硬化させる条件下で比較的安定しているラジカルを形成する材料である。好ましい硬化剤は、立体障害アミン、ヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジン、立体障害アミンと1,3,5−トリアジンとの凝縮物、及びこれらの混合物、より好ましくは、立体障害アミン、ヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジン、及びこれらの混合物である。
【0027】
本発明において硬化剤として有用な好適な立体障害アミンは、式(7)のものであり、
【0028】
【化5】
【0029】
式中、R
9は、H、O・(酸素ラジカル)、または1〜20個の炭素原子を有する一価有機ラジカルであり、各R
10は独立して、C
1−10アルキルであり、R
11はHまたはC
1−10アルキルであり、R
12は、H、R
13、OR
14、またはNHR
14から選択され、R
13は、1〜25個の炭素原子を有する有機ラジカルであり、R
14は、Hであるか、または1〜25個の炭素原子を有する有機ラジカルである。好ましくは、R
9は、H、O・、C
1−4アルキル、及びC
1−10アルコキシである。各R
10は独立して、C
1−6アルキルであることが好ましく、より好ましくは、各R
10はメチルである。好ましくは、R
11は、HまたはC
1−8アルキル、より好ましくはHまたはC
1−6アルキル、なおより好ましくはHである。R
12は、好ましくはC
1−10アルキル、OR
13、またはNHR
13、より好ましくはOR
13またはNHR
13である。立体障害アミンの二量体もまた、本発明において好適に使用され得る。かかる二量体は、式(7)によって表され、式中、R
13またはR
14は、連結部分及びヒンダードピペリジニル部分を含む有機ラジカルである。例示的な立体障害アミンとしては、(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル、4−ヒドロキシ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル、4−アミノ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル、4−アセトアミド−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)セバシン酸塩、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)コハク酸塩、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)セバシン酸塩、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−n−ブチル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロン酸塩、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタン−テトラカルボキシレート、1,1′−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、4−ベンゾイル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−2−n−ブチル−2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)マロン酸塩、3−n−オクチル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピリオ[4.5]デカン−2,4−ジオン、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバシン酸塩、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジル)コハク酸塩、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、3−ドデシル−1−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオン、及び3−ドデシル−1−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ピロリジン−2,5−ジオンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0030】
本組成物において硬化剤として有用な好適なヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジンは、式(8)の構造を有するものであり、
【0031】
【化6】
【0032】
式中、Ar
4、Ar
5、及びAr
6は独立して、1〜3個の芳香族環を有する芳香族部分であり、これらの各々が非置換であっても、置換であってもよく、Ar
4、Ar
5、及びAr
6のうちの少なくとも1つが、ヒドロキシルで置換される。「置換芳香族環」とは、芳香族環上の1つ以上の水素が、ヒドロキシ、C
1−20アルキル、C
1−20アルコキシ、ハロ、C
1−20ハロアルキル、C
1−20カルボキシ、アミノ、C
1−20アシルアミノ、及びOR
15から選択される1つ以上の置換基と置き換えられ、式中、R
15は、1〜25個の炭素原子を有する有機ラジカルである。各芳香族環における好ましい置換基は、ヒドロキシ、C
1−20アルキル、C
1−20アルコキシ、ハロ、C
1−20ハロアルキル、C
1−20カルボキシ、及びOR
15、より好ましくは、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−10アルコキシ、C
1−20カルボキシ、及びOR
15である。好ましくは、Ar
4、Ar
5、及びAr
6の各々は、非置換または置換フェニルまたはナフチル、より好ましくは非置換または置換フェニルである。各芳香族部分は、非置換であるか、または1または2個の置換基で置換されることが好ましく、より好ましくは、各芳香族部分は、1または2個の置換基で置換される。ヒドロキシル置換芳香族部分において、ヒドロキシル置換基は、トリアジン環に対してオルトであることがさらに好ましい。好ましくは、ヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジン硬化剤は、式(9)に示される構造を有し、
【0033】
【化7】
【0034】
式中、各R
16、R
17、及びR
18は独立して、ヒドロキシ、C
1−20アルキル、C
1−20アルコキシ、ハロ、C
1−20ハロアルキル、C
1−20カルボキシ、アミノ、C
1−20アシルアミノ、及びOR
15から選択され、R
15は、1〜25個の炭素原子を有する有機ラジカルであり、a及びbは各々、0〜3の整数であり、cは、0〜2の整数である。a及びbの各々は、0〜2の整数であることが好ましく、より好ましくは1または2である。cは、0〜1の整数であることが好ましく、より好ましくは、cは1である。R
16、R
17、及びR
18の各々は、好ましくは、独立して、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−20アルコキシ、ハロ、C
1−20カルボキシ、C
1−20アシルアミノ、及びOR
15から、より好ましくはヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−20アルコキシ、C
1−20カルボキシ、及びOR
15から選択される。より好ましくは、各R
16及びR
17は独立して、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−20アルコキシ、ハロ、C
1−20カルボキシ、及びOR
15から、より好ましくはヒドロキシ、C
1−10アルキル、及びC
1−20アルコキシから選択される。各R
18は独立して、ヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−20アルコキシ、ハロ、C
1−20カルボキシ、及びOR
15から選択されるのがさらに好ましく、より好ましくはヒドロキシ、C
1−10アルキル、C
1−20アルコキシ、及びOR
15から選択される。例示的なヒドロキシアリール−1,3,5−トリアジンとしては、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−プロピルオキシフェニル)−6−(2,4−ジメチル−フェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−ブチルオキシ−プロポキシ)フェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−オクチルオキシ−プロピルオキシ)フェニル−4,6−ビス(2,4−ジメチル)−1,3,5−トリアジン、及び式(10)の化合物が挙げられるが、これらに限定されず、
【0035】
【化8】
【0036】
式中、R
19は、
【0037】
【化9】
【0038】
から選択され、式中、
*は、フェニル環への付着点を示す。
【0039】
本発明において硬化剤として有用な立体障害アミン及び1,3,5−トリアジンの凝縮物としては、N,N−ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン及び4−モルホリノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの凝縮物、2−クロロ−4,6−ビス(4−n−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジン及び1,2−ビス(3−アミノプロピルアミノ)エタンの凝縮物、2−クロロ−4,6−ジ−(4−n−ブチルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)−1,3,5−トリアジン及び1,2−ビス−(3−アミノプロピルアミノ)エタンの凝縮物、ならびにN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ヘキサメチレンジアミン及び4−tert−オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジンの凝縮物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
本組成物において有用な好適な有機溶媒としては、アリーレンオリゴマー、ならびに電子産業において通常使用される溶媒、例えば、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、メチル3−メトキシプロピオネート(MMP)、乳酸エチル、アニソール、N−メチルピロリドン、ガンマ−ブチロラクトン(GBL)、エトキシベンゼン、ベンジルプロピオネート、ならびにジメチルスルホキシド、リン酸トリエチル、及びGBLの混合物等の調製のために上述の有機溶媒のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい有機溶媒は、C
2−4アルカンカルボン酸のベンジルエステル、C
2−4アルカンジカルボン酸のジベンジルエステル、C
2−4アルカンカルボン酸のテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−4アルカンジカルボン酸のジテトラヒドロフルフリルエステル、C
2−4アルカンカルボン酸のフェネチルエステル、C
2−4アルカンジカルボン酸のジフェネチルエステル、C
1−6アルコキシ置換ベンゼン、ベンジルC
1−6アルキルエーテル、PGME、PGMEA、MMP、乳酸エチル、アニソール、N−メチルピロリドン、ガンマ−ブチロラクトン、エトキシベンゼン、及びベンジルプロピオネートである。例示的な有機溶媒としては、ベンジルアセテート、ベンジルプロプリオネート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルブチレート、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、ジメトキシベンゼン、エチルアニソール、エトキシベンゼン、ベンジルメチルエーテル、及びベンジルエチルエーテル、好ましくは、ベンジルアセテート、ベンジルプロプリオネート、テトラヒドロフルフリルアセテート、テトラヒドロフルフリルプロピオネート、テトラヒドロフルフリルブチレート、アニソール、メチルアニソール、ジメチルアニソール、ジメトキシベンゼン、エチルアニソール、エトキシベンゼン、PGME、PGMEA、MMP、乳酸エチル、アニソール、N−メチルピロリドン、ガンマ−ブチロラクトン、エトキシベンゼン、及びベンジルプロピオネートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
概して、本組成物は、1つ以上のアリーレンオリゴマーの総量の1〜35重量%の固体、好ましくは5〜20重量%の固体を含む。本発明における1つ以上の硬化剤の総量は、0.1〜15重量%の固体、好ましくは0.5〜15重量%、より好ましくは0.5〜10重量%、なおより好ましくは0.5〜5重量%である。かかる組成物が、基板上のオリゴマーコーティングを堆積させるために使用され得、オリゴマーコーティング層は50nm〜500μm、好ましくは100nm〜250μm、より好ましくは100nm〜50μmの厚さを有する。より厚いコーティングは、1つを超えるコーティングステップを必要とし得る。
【0042】
本発明の組成物は、いかなる順序でも、1つ以上のアリーレンオリゴマー、1つ以上の硬化剤、及び1つ以上の有機溶媒を混ぜ合わせることによって調製され得る。1つ以上の硬化剤を、1つ以上のアリーレンオリゴマー及び1つ以上の有機溶媒の混合物に添加することが好ましい。
【0043】
使用において、本組成物が、任意の好適な方法によって、任意の好適な基板表面上にコーティングされ得る。本組成物をコーティングするための好適な方法としては、とりわけ、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、浸漬コーティング、スロットダイコーティング、及び蒸気蒸着が挙げられるが、これらに限定されない。電子機器製造業において、スピンコーティングが、既存の設備及びプロセスを活用するための好ましい方法である。スピンコーティングでは、組成物の固体含量が回転速度と共に調節されて、それが塗布される表面上で組成物の所望の厚さが達成され得る。典型的に、本組成物は、400〜4000rpmの回転速度でスピンコーティングされる。ウエハまたは基板上に分配される組成物の量は、組成物中の総固体含量、結果として得られるコーティング層の所望の厚さ、及び当業者に周知である他の要因に依存する。それは、基板への改善された接着が、基板表面上に本組成物の層をコーティングする前に、まず、接着促進組成物により基板表面を処理するのが望ましいある特定の用途において、有利であり得る。かかる接着促進組成物及びそれらの使用は、当該技術分野で周知である。
【0044】
好ましくは、基板表面上に配置された後、オリゴマー組成物は加熱(軟焼成)されて、存在するいずれの有機溶媒を少なくとも部分的に除去する、好ましくは除去する。典型的な焼成温度は、90〜140℃であるが、他の好適な温度が使用されてもよい。残渣溶媒を除去するためのかかる焼成は、典型的におよそ30秒〜2分間で完了するが、より長いまたはより短い時間が好適に使用され得る。溶媒除去の後に、基板表面上のオリゴマーの層、膜、またはコーティングが得られる。好ましくは、オリゴマーは次に、例えば、≧300℃、好ましくは≧350℃、より好ましくは≧400℃の温度まで加熱されることによって硬化される。かかる硬化ステップは、2〜180分、好ましくは10〜120分、より好ましくは15〜60分かかるが、他の好適な時間が使用されてもよい。一実施形態において、ベルト炉が使用されて、基板上でオリゴマー層を硬化し得る。硬化中、本オリゴマーはさらに重合すると考えられる。
【0045】
アリーレンオリゴマーの硬化は、窒素等の不活性雰囲気下で通常行われるが、本発明は、酸素含有雰囲気下でかかるオリゴマーの硬化を容易にすることが可能である。本組成物は、100ppm以上の酸素を含む雰囲気下、好ましくは空気中でのアリーレンオリゴマーの硬化を可能にする。一態様において、本発明は、アリーレンオリゴマーを硬化させる方法を提供し、本方法は、基板表面上に1つ以上の硬化性アリーレンオリゴマー、1つ以上の硬化剤、及び1つ以上の有機溶媒を含む組成物を配置することと、1つ以上の有機溶媒を少なくとも部分的に除去することと、酸素含有雰囲気下で1つ以上のアリーレンオリゴマーを硬化させることと、を含む。本発明の利点は、本発明の組成物からの硬化されたアリーレンオリゴマーが、酸素含有雰囲気下で硬化されるときに、従来のアリーレンオリゴマー組成物から得られた硬化アリーレンオリゴマーと比較して、改善された機械的特性を有することである。例えば、空気中で硬化されると、本組成物からの硬化アリーレンコーティングは、空気中で硬化されたアリーレンコーティングを400℃で60分間加熱したときに、重量減少率の10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または>40%の減少等の、空気硬化された通常のアリーレンコーティングと比較して減少した熱重量減少を示す。ある特定の用途において有用であるためには、ポリアリーレン膜は、400℃で1時間加熱されたときに、<1%の重量減少を有する必要がある。
【0046】
本発明は、コーティングされた無機膜を形成する方法をさらに提供し、本方法は、無機膜を提供することと、無機膜の表面上に1つ以上の硬化性アリーレンオリゴマー、1つ以上の硬化剤、及び1つ以上の有機溶媒を含む組成物の層をコーティングすることと、コーティング層から1つ以上の有機溶媒を除去することと、酸素含有雰囲気下でコーティング層を硬化させて、コーティングされた無機膜を形成することと、を含む。保護膜は、コーティングされた無機膜上に配置される、つまり、硬化されたアリーレンコーティング上に配置され得る。ポリエチレンまたは乾燥膜積層材料の分野で既知の他の保護膜等の、当該技術分野で既知の様々な保護膜が使用され得る。透明な無機膜は、この方法で用いるのに特に適している。例示的な透明膜としては、Al
2O
3、Si
3N
4、SiO
2、TiO
2、及びZrO
2が挙げられるが、これらに限定されない。この方法は、無機膜がロールから提供され、任意の保護膜もロールから提供され、コーティングされた無機膜がロール上に取り込まれる場合の、ロールツーロール用途において特に有用である。
【0047】
図1は、本発明の組成物を使用するロールツーロールプロセスの断面図を図解する。
図1において、Al
2O
3等の一片の無機膜11が、ロール10から巻き出され、ロール10上の矢印は進行方向を示す。1つ以上の硬化性アリーレンオリゴマー、1つ以上の硬化剤、及び1つ以上の有機溶媒を含む組成物が、コーティングヘッド15から無機膜10上にコーティングされて、コーティングされた無機膜16が得られる。コーティングされた無機膜16は、硬化手段20に運ばれて、あらゆる残留有機溶媒を除去し、アリーレンオリゴマーコーティングを硬化するのに十分な条件に供される。様々な硬化手段、例えば、炉オーブン、強制熱風乾燥機、赤外線、紫外線、マイクロ波、または他の形態の電磁放射線、1つ以上の加熱ローラ、及びこれらの任意の組み合わせが使用され得る。ポリエチレン膜等の任意の保護膜26が、ロール25から運ばれ、ローラ30A及び30Bによって無機膜上の硬化されたアリーレンコーティングの表面に積層され、得られた積層構造28がローラ35に取り込まれる。任意の保護膜26は、ローラ30A及び30Bからの圧力のみによって、または任意に、例えば、ローラ30A及び30Bのうちの1つまたは両方を加熱することによって、圧力及び加熱を伴って、硬化コーティングされた無機膜16に積層され得る。
図2は、無機膜40、無機膜40上に配置された硬化アリーレンポリマーコーティング45、及び硬化アリーレンポリマーコーティング45上に配置された任意の保護膜50を含む、
図1のプロセスから得られた構造の断面図を図解する。また、無機膜、好ましくは透明無機膜と、無機膜上に配置された、好ましくはその上に直接配置された硬化アリーレンポリマーコーティングと、任意に硬化アリーレンポリマー上に配置された、好ましくはその上に直接配置された保護膜とを含む構造が、本発明によって提供される。好ましくは、この構造は、ロールの形態で提供される。
【0048】
実施例1:ポリフェニレンオリゴマー1の調製。撹拌棒を収容する複数首の丸底フラスコに、酸化ジフェニレンビス(トリフェニルシクロペンタジエノン)(DPO−CPD、10.95g、13.98mmol)を、粉末漏斗を介して添加し、続いて、33mLのエトキシベンゼンを添加した。この混合物を、室温で静かに撹拌した。次に、フラスコに逆流濃縮器、及び加熱マントルのための自己制御式サーモスタット制御装置に取り付けられた内部熱電対プローブを装備し、窒素雰囲気下に設置した。この時点で、1,3−ジエチニルベンゼン(DEB、2.0mL、15.38mmol、1.1当量)を、シリンジを介して添加した。フラスコの濃いくり色の含有物を160℃の内部温度まで30分にわたって温め、この温度で2時間維持した後、加熱要素を除去することによって室温まで冷却した。この時点で、33mLのエトキシベンゼンを溶液に添加し、容器を室温までさらに冷却して、オリゴマー1を得た。
【0049】
実施例2:ポリフェニレンオリゴマー2の調製。ポリフェニレンオリゴマーは、米国特許第5,965,679号に記載される一般手順に従って、1当量のDPO−CPDを、0.3当量の、N−メチルピロリドン(NMP)中1,3,5−トリスフェニルエチニルベンゼン(トリス)と0.6当量のDEBの混合物と反応させることによって調製し、オリゴマー2を得る。
【0050】
実施例3.使用されるモノマー及びモル比が表1に示されるものによって置き換えられることを除き、実施例1の手順が繰り返される。反応溶媒は、エトキシベンゼン、アニソール、ジメトキシベンゼン、ベンジルプリオピオネート、またはNMPである。次の略語を表1に使用する:DP−CPD=ジフェニレンビス(トリフェニルシクロペンタジエノン);N−CPD=ナフチレンビス(トリフェニルシクロペンタジエノン);PFPDP−CPD=ペルフルオロプロピル−2,2−ジフェニレンビス(トリフェニルシクロペンタジエノン);DEMB=1,3−ジエチニル−5−メチルベンゼン;DEMeOB=1,3−ジエチニル−5−メトキシルベンゼン;DEMBP=3,5−ジエチニル−4′−メチル−1,1′−ビフェニル;及びp−DEB=1,4−ジエチルベンゼン。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例4.エトキシベンゼン中のオリゴマー1(15重量%の固体)を表2に示される硬化剤と混ぜ合わせることによって、コーティングサンプルを調製する。硬化剤の量は、総固体に基づいて、重量%で報告される。硬化剤Aは、(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル(TEMPO)であり、硬化剤Bは、1−(4−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−3−ヒドロキシフェノキシ)−3−((2−エチルヘキシル)オキシ)プロパン−2−イルメタクリレート(TIMA、式(10)、式中、R
19は
【0053】
【化10】
【0054】
である)であり、硬化剤Cは、4−ヒドロキシ−(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−イル)オキシル(HO−TEMPO)である。
【0055】
【表2】
【0056】
実施例5.エトキシベンゼン中オリゴマー(15重量%の固体で)を表3に示される硬化剤と混ぜ合わせることによって、コーティングサンプルを調製する。硬化剤の量は、総固体に基づいて、重量%で報告される。硬化剤A、B、及びCは、実施例4に記載される通りであり、硬化剤Dは2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジンであり、硬化剤Eは、式(11)を有する。
【0057】
【化11】
【0058】
【表3】
【0059】
実施例6.熱安定性について、サンプルを評価した。比較サンプルC1は、硬化剤を含まない、エトキシベンゼン中オリゴマー1(14重量%の固体で)を含有した。比較サンプルC2は、硬化剤を含まない、PGMEA/シクロペンタノン/GBL(88.2/9.8/2 w/w/w)の混合物中オリゴマー9(M
n=8800、14重量%の固体で)を含有した。表4に報告されたサンプルの各々を、90秒につき1000rpmの回転速度を使用したスピンコーティングによって、ガラス基板(Samsung CorningからのEagleガラス)上に標的厚さ1μmを有する膜を堆積させるために使用して、続いて、110℃で60秒間焼成されていずれの残渣溶媒も除去した。コーティングしたガラス基板を、室温でオーブンに移し、5℃/分の速度でオーブンを400℃まで空気中で加熱することによって硬化し、次いで、400℃で1時間保持した。硬化後、各サンプルを室温まで冷却し、次いで、硬化した膜から基板を削り落とし、熱重量分析(TGA)パンに入れた。次いで、各サンプルを、次の試験方法を用いてN
2雰囲気下で、TGAによって評価した:
1.20℃/分の速度で150℃まで下降させ、15分間保持する、
2.20℃/分の速度で440℃まで上昇させ、1分間保持する、そして、
3.1℃/分の速度で450℃まで上昇させ、120分間保持する。
【0060】
60分及び120分後の重量減少の割合を決定し、表4に報告する。データから見られるように、サンプル中の本発明の硬化剤の割合は、膜重量減少量を大幅に減少させる。特に、本硬化剤は、比較サンプルC1と比較して、重量減少率の25〜50%減少を示す。同様の結果が、370℃で1時間、または、420℃で30分間、空気中で硬化したときに得られた。
【0061】
【表4】
【0062】
実施例7.コーティングしたサンプルを、空気雰囲気下で、300℃で2時間硬化したことを除き、実施例6が繰り返された。硬化後、サンプルを冷却し、実施例6に記載されるように、TGA分析に供した。450℃での1時間後の重量減少を、表5に報告する。使用したより低い硬化温度は450℃でより大幅な重量減少をもたらしたが、本硬化剤は、依然として、比較サンプルC1と比較して、膜重量減少率を25〜30%減少させた。
【0063】
【表5】
【0064】
実施例8.ガラス基板への硬化コーティングの接着を従来のクロスハッチ試験を用いて評価したことを除き、実施例7の手順を繰り返した。硬化後、格子模様試験領域は、クロスハッチカッターを用いて各硬化したオリゴマー膜に切り込みを入れた。次いで、任意の遊離膜粒子を、格子模様試験領域から除去した。次いで、Scotch(商標)ブランド600テープ(3M(Minneapolis,Minnesota)から入手可能)を、各格子模様上にしっかりと塗布し、試験領域からそのテープを後方に引っ張ることによって迅速に剥がし、テープによって剥がされた膜の量を示した。次いで、各試験領域を、ASTM標準のD3002及びD3359と可視的に比較し、ここで、5Bの評価は膜の減少がなかったことを示し、0Bの評価は広範囲に及ぶ膜の減少を示した。比較サンプルC1、サンプル1、及びサンプル2の各々からの硬化膜は、非常に良好な接着を示した(それぞれ、5Bの評価を有した)。本硬化剤は、硬化膜の接着に悪影響を及ぼさない。
【0065】
実施例9−比較例.実施例6からの比較サンプルC2(硬化剤を有しない)のサンプルを、90秒につき1000rpmの回転速度を使用したスピンコーティングによって、ガラス基板(Corning Inc.からのEagleガラス)上に標的厚さ1μmを有する膜を堆積させるために使用して、続いて、110℃で60秒間焼成されていずれの残渣溶媒も除去した。コーティングしたガラス基板を、室温でオーブンに移し、5℃/分の速度でオーブンを370、400、または430℃まで加熱することによって空気中で硬化し、次いで、その温度で30分間保持した。次いで、各硬化温度からの硬化膜のサンプルを、実施例6の手順に従って、N
2雰囲気下で、TGAによって評価した。450℃で60分後の重量減少のデータを表6に報告する。各硬化温度からの硬化膜のサンプルの接着も、実施例8の手順に従って評価した。硬化膜の各々の接着評価も、表6に報告する。アリーレンオリゴマーが本発明の硬化剤を用いずに空気中で硬化されるときに、表6のデータは、硬化温度の上昇がその基板への硬化アリーレンオリゴマー膜の接着の減少をもたらすことを明らかに示す。
【0066】
【表6】
【0067】
実施例10−比較例.実施例6からの比較サンプルC1(硬化剤を有しない)のサンプルを用い、5℃/分の速度でオーブンを370、400、430、または450℃まで加熱することによって空気中で硬化する、実施例9の手順が繰り返され、次いで、その温度で30分間保持した。次いで、各硬化温度からの硬化膜のサンプルを、実施例7の手順に従って、N
2雰囲気下で、TGAによって評価した。450℃で60分後の重量減少のデータを表6に報告する。各硬化温度からの硬化膜のサンプルの接着も、実施例8の手順に従って評価した。硬化膜の各々の接着評価も、表7に報告する。アリーレンオリゴマーが本発明の硬化剤を用いずに空気中で硬化されるときに、表7のデータは、硬化温度の上昇がその基板への硬化アリーレンオリゴマー膜の接着の減少をもたらすことを明らかに示す。
【0068】
【表7】