(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
[本発明の第一実施形態]
先ず、本発明の第一実施形態について説明する。
【0011】
(1)基板処理装置の構成
図1は本実施形態に係る基板処理装置を説明する説明図である。以下に、各構成を具体的に説明する。
【0012】
(処理容器)
図例のように、基板処理装置100は、処理容器202を備えている。処理容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。処理容器202は、例えば石英またはセラミックス等の非金属材料で形成された上部容器2021と、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)等の金属材料により形成された下部容器2022とで構成されている。処理容器202内には、上方側(後述する基板載置台212よりも上方の空間)に、基板としてシリコンウエハ等のウエハ200を処理する処理空間(処理室)201が形成されており、その下方側で下部容器2022に囲まれた空間に搬送空間203が形成されている。
【0013】
下部容器2022の側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入出口206が設けられている。ウエハ200は、基板搬入出口206を介して、搬送空間203に搬入されるようになっている。下部容器2022の底部には、リフトピン207が複数設けられている。
【0014】
(基板載置台)
処理空間201内には、ウエハ200を支持する基板支持部(サセプタ)210が設けられている。基板支持部210は、ウエハ200を載置する載置面211と、載置面211を表面に持つ基板載置台212と、基板載置台212に内包された第一の加熱部としてのヒータ213と、を主に有する。さらに、ヒータ213の温度を計測する温度計測端子216を有する。温度計測端子216は、配線220を介して温度計測部221に接続される。
【0015】
基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔214が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。ヒータ213には、電力を供給するための配線222が接続される。配線216は、ヒータ電力制御部223に接続される。
【0016】
温度計測部221、ヒータ電力制御部223は後述するコントローラ280に接続されている。コントローラ280は、温度計測部221で計測した温度情報をもとにヒータ電力制御部221に制御情報を送信する。ヒータ電力制御部223は受信した制御情報を参照し、ヒータ213を制御する。
【0017】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、処理容器202の底部を貫通しており、さらに処理容器202の外部で昇降部218に接続されている。
【0018】
昇降部218はシャフト217を支持する支持軸218aと、支持軸218aを昇降させたり回転させたりする作動部218bを主に有する。作動部218bは、例えば昇降を実現するためのモータを含む昇降機構218cと、支持軸218aを回転させるための歯車等の回転機構218dを有する。これらには、動作を円滑にするようにグリス等が塗布されている。
【0019】
昇降部218には、昇降部218の一部として、作動部218bに昇降・回転指示するための指示部218eを設けても良い。指示部218eはコントローラ280に電気的に接続される。指示部218eはコントローラ280の指示に基づいて、作動部218bを制御する。作動部218は、後述するように、基板載置台212が、ウエハ搬送ポジションやウエハ処理ポジションの位置に移動するよう、制御する。
【0020】
昇降部218を作動させてシャフト217および支持台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置されるウエハ200を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、これにより処理空間201内は気密に保持されている。
【0021】
基板載置台212は、ウエハ200の搬送時には、載置面211が基板搬入出口206の位置(ウエハ搬送ポジション)となるように下降し、ウエハ200の処理時には、ウエハ200が処理空間201内の処理位置(ウエハ処理ポジション)まで上昇する。
【0022】
具体的には、基板載置台212をウエハ搬送位置まで下降させた時には、リフトピン207の上端部が載置面211の上面から突出して、リフトピン207がウエハ200を下方から支持するようになっている。また、基板載置台212をウエハ処理位置まで上昇させたときには、リフトピン207は載置面211の上面から埋没して、載置面211がウエハ200を下方から支持するようになっている。
【0023】
(シャワーヘッド)
処理空間201の上部(ガス供給方向上流側)であって、基板載置面211と対向する箇所には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド230が設けられている。シャワーヘッド230は、例えば上部容器2021に設けられた穴2021aに挿入される。
【0024】
シャワーヘッドの蓋231は、例えば導電性および熱伝導性のある金属で形成されている。蓋231と上部容器2021との間にはブロック233が設けられ、そのブロック233が蓋231と上部容器2021との間を絶縁し、かつ、断熱している。
【0025】
また、シャワーヘッドの蓋231には、第一分散機構としてのガス供給管241が挿入される貫通孔231aが設けられている。貫通孔231aに挿入されるガス供給管241は、シャワーヘッド230内に形成された空間であるシャワーヘッドバッファ室232内に供給するガスを分散させるためのもので、シャワーヘッド230内に挿入される先端部241aと、蓋231に固定されるフランジ241bと、を有する。先端部241aは、例えば円柱状に構成されており、その円柱側面には分散孔が設けられている。そして、後述するガス供給部(供給系)から供給されるガスは、先端部241aに設けられた分散孔を介して、シャワーヘッドバッファ室232内に供給される。
【0026】
さらに、シャワーヘッド230は、後述するガス供給部(供給系)から供給されるガスを分散させるための第二分散機構としての分散部234を備えている。この分散部234の上流側がシャワーヘッドバッファ室232であり、下流側が処理空間201である。分散部234には、複数の貫通孔234aが設けられている。分散部234は、基板載置面211と対向するように、その基板載置面211の上方側に配置されている。したがって、シャワーヘッドバッファ室232は、分散部234に設けられた複数の貫通孔234aを介して、処理空間201と連通することになる。
【0027】
分散部234のうち、貫通孔234aと異なる位置であって、例えば貫通孔234aの外周には、円周状に配された加熱ガス供給構造235が設けられている。加熱ガス供給構造235は複数の供給孔を有する。ここでは、供給孔が円周状に配される。加熱ガス供給構造235は下流側にて処理室201と連通し、上流側にてガス供給管236が接続される。ガス供給管236は、後述する加熱ガス供給管248aに接続される。なお、ここでは複数の供給孔を加熱ガス供給構造235として説明したが、それに限るものではなく、例えば複数のスリット形状の孔を円周状に配したり、または一つのスリットを円周状に配してもよい。
【0028】
(ガス供給系)
貫通孔231aに挿入されるガス供給管241には、共通ガス供給管242が接続されている。ガス供給管241と共通ガス供給管242は、管の内部で連通している。そして、共通ガス供給管242から供給されるガスは、ガス供給管241、ガス導入孔231aを通じて、シャワーヘッド230内に供給される。
【0029】
共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245aが接続されている。このうち、第二ガス供給管244aは、リモートプラズマユニット244eを介して共通ガス供給管242に接続される。
【0030】
第一ガス供給管243aを含む第一ガス供給系243からは主に第一元素含有ガスが供給され、第二ガス供給管244aを含む第二ガス供給系244からは主に第二元素含有ガスが供給される。第三ガス供給管245aを含む第三ガス供給系245からは、ウエハ200を処理する際には主に不活性ガスが供給され、シャワーヘッド230や処理空間201をクリーニングする際はクリーニングガスが主に供給される。
【0031】
(第一ガス供給系)
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス供給源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、および、開閉弁であるバルブ243dが設けられている。そして、第一ガス供給源243bからは、第一元素を含有するガス(以下、「第一元素含有ガス」または「第一ガス」という。)が、MFC243c、バルブ243d、第一ガス供給管243a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0032】
第一元素含有ガスは、処理ガスの一つであり、原料ガスとして作用するものである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、例えばシリコン含有ガスである。なお、第一元素含有ガスは、常温常圧で固体、液体および気体のいずれであってもよい。第一元素含有ガスが常温常圧で液体の場合は、第一ガス供給源243bとMFC243cとの間に、図示しない気化器を設ければよい。ここでは、第一元素含有ガスを気体として説明する。
【0033】
第一ガス供給管243aのバルブ243dよりも下流側には、第一不活性ガス供給管246aの下流端が接続されている。第一不活性ガス供給管246aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源246b、MFC246c、および、開閉弁であるバルブ246dが設けられている。そして、不活性ガス供給源246bからは、不活性ガスが、MFC246c、バルブ246d、第一不活性ガス供給管246a、第一ガス供給管243a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0034】
ここで、不活性ガスは、第一元素含有ガスのキャリアガスとして作用するもので、第一元素とは反応しないガスを用いることが好ましい。具体的には、例えば、窒素(N
2)ガスを用いることができる。なお、不活性ガスとしては、N
2ガスのほか、例えばヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)ガス、アルゴン(Ar)ガス等の希ガスを用いることができる。
【0035】
主に、第一ガス供給管243a、MFC243c、バルブ243dにより、第一ガス供給系(「シリコン含有ガス供給系」ともいう)243が構成される。 また、主に、第一不活性ガス供給管246a、MFC246cおよびバルブ246dにより、第一不活性ガス供給系が構成される。
【0036】
なお、第一ガス供給系243は、第一ガス供給源243b、第一不活性ガス供給系を含めて考えてもよい。また、第一不活性ガス供給系は、不活性ガス供給源246b、第一ガス供給管243aを含めて考えてもよい。
このような第一ガス供給系243は、処理ガスの一つである原料ガスを供給するものであることから、処理ガス供給系の一つに該当することになる。
【0037】
(第二ガス供給系)
第二ガス供給管244aには、下流にリモートプラズマユニット244eが設けられている。上流には、上流方向から順に、第二ガス供給源244b、流量制御器(流量制御部)であるMFC244c、および、バルブ244dが設けられている。そして、第二ガス供給源244bからは、第二元素を含有するガス(以下、「第二元素含有ガス」または「第二ガス」という。)が、MFC244c、バルブ244d、第二ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244e、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。このとき、第二元素含有ガスは、リモートプラズマユニット244eによりプラズマ状態とされ、ウエハ200上に供給される。
【0038】
第二元素含有ガスは、処理ガスの一つであり、反応ガスまたは改質ガスとして作用するものである。ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本実施形態では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスであるとする。具体的には、窒素含有ガスとして、アンモニア(NH
3)ガスが用いられる。
【0039】
第二ガス供給管244aのバルブ244dよりも下流側には、第二不活性ガス供給管247aの下流端が接続されている。第二不活性ガス供給管247aには、上流方向から順に、不活性ガス供給源247b、MFC247c、および、バルブ247dが設けられている。そして、不活性ガス供給源247bからは、不活性ガスが、MFC247c、バルブ247d、第二不活性ガス供給管247a、第二ガス供給管244a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0040】
ここで、不活性ガスは、基板処理工程ではキャリアガスまたは希釈ガスとして作用する。具体的には、例えばN
2ガスを用いることができるが、N
2ガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることもできる。
【0041】
主に、第二ガス供給管244a、MFC244c、バルブ244dにより、第二ガス供給系244(「窒素含有ガス供給系」ともいう)が構成される。また、主に、第二不活性ガス供給管247a、MFC247cおよびバルブ247dにより、第二不活性ガス供給系が構成される。
【0042】
なお、第二ガス供給系244は、第二ガス供給源244b、リモートプラズマユニット244e、第二不活性ガス供給系を含めて考えてもよい。また、第二不活性ガス供給系は、不活性ガス供給源247b、第二ガス供給管244a、リモートプラズマユニット244eを含めて考えてもよい。
【0043】
このような第二ガス供給系244は、処理ガスの一つである反応ガスまたは改質ガスを供給するものであることから、処理ガス供給系の一つに該当することになる。
【0044】
(第三ガス供給系)
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス供給源245b、MFC245c、および、バルブ245dが設けられている。そして、第三ガス供給源245bからは、不活性ガスが、MFC245c、バルブ245d、第三ガス供給管245a、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0045】
第三ガス供給源245bから供給される不活性ガスは、基板処理工程では、処理容器202やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガス(もしくは「第三ガス」と呼ぶ。)として作用する。このような不活性ガスとしては、例えばN
2ガスを用いることができるが、N
2ガスのほか、例えばHeガス、Neガス、Arガス等の希ガスを用いることもできる。
【0046】
なお、第一ガス供給系、第二ガス供給系、第三ガス供給系をまとめて処理ガス供給部または処理ガス供給系と呼ぶ。さらに、処理ガス供給系から供給されるガスをまとめて処理ガスと呼ぶ。
【0047】
(加熱ガス供給系)
加熱ガス供給管248aには、上流方向から順に、ガス供給源248b、MFC248c、および、バルブ248d、第二の加熱部であるヒータ248eが設けられている。
【0048】
ガス供給源248bから供給されるガス(「加熱ガス」、もしくは「第四ガス」とも呼ぶ。)は、加熱効率が高く、更にはウエハ200上に形成された膜に影響の無い性質を有する。例えば窒素(N2)ガス等の不活性ガスである。ガス供給源248bから供給されるガスは、加熱ガス供給工程S104等で供給される。
【0049】
ガス供給源248bから供給されるガスは、MFC248c、バルブ245d、第二の加熱部248e、加熱ガス供給構造235等を介して処理室201内に供給される。ヒータ248eはコントローラ280の指示に従って、通過するガスを所定の温度に加熱し、加熱ガスとする。
【0050】
ヒータ248eには、ヒータ248eの温度を計測する温度計測部249が設けられる。更には、ヒータ248eを制御するヒータ制御部250が接続される。ヒータ248eはヒータ制御部250を介してコントローラ280から制御される。
【0051】
(ガス排気系)
処理容器202の雰囲気を排気する排気系(排気部)は、処理容器202に接続された複数の排気管を有する。具体的には、搬送空間203に接続される排気管(第一排気管)261と、処理空間201に接続される排気管(第二排気管)262と、を有する。また、各排気管261,262の下流側には、排気管(第三排気管)264が接続される。
【0052】
排気管261は、搬送空間203の側面または底面に接続される。排気管261には、高真空または超高真空を実現する真空ポンプとしてTMP(Turbo Molecular Pump:以下「第一真空ポンプ」ともいう。)265が設けられている。排気管261において、TMP265の上流側と下流側には、それぞれに開閉弁であるバルブ266,267が設けられている。
【0053】
排気管262は、処理空間201の側方に接続される。排気管262には、処理空間201内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(Auto Pressure Controller)276が設けられている。APC276は、開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ280からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。また、排気管262において、APC276の上流側と下流側には、それぞれに開閉弁であるバルブ275,277が設けられている。
【0054】
排気管264には、DP(Dry Pump)278が設けられている。図示のように、排気管264には、その上流側から排気管262、排気管261が接続され、さらにそれらの下流にDP278が設けられる。DP278は、排気管262、排気管261のそれぞれを介して、処理空間201および搬送空間203のそれぞれの雰囲気を排気する。また、DP278は、TMP265が動作するときに、その補助ポンプとしても機能する。すなわち、高真空(あるいは超高真空)ポンプであるTMP265は、大気圧までの排気を単独で行うのは困難であるため、大気圧までの排気を行う補助ポンプとしてDP278が用いられる。
【0055】
図1に記載のように、基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ280を有している。コントローラ280は、
図2に記載のように、演算部281、一時記憶部(RAM)282、記憶部283、I/Oポート284、比較部285、送受信部286を少なくとも有する。コントローラ280は、上記した各構成に接続され、上位コントローラや使用者の指示に応じて記憶部283からプログラムやレシピ、テーブルを呼び出し、その内容に応じて各構成の動作を制御する。コントローラ280はさらに入出力装置289を有する。
【0056】
なお、コントローラ280は、専用のコンピュータとして構成してもよいし、汎用のコンピュータとして構成してもよい。例えば、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ(USB Flash Drive)やメモリカード等の半導体メモリ)288を用意し、外部記憶装置288を用いて汎用のコンピュータにプログラムをインストールすることにより、本実施形態に係るコントローラ280を構成することができる。
【0057】
また、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置288を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等の通信手段を用い、外部記憶装置288を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。なお、記憶部283や外部記憶装置288は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部283単体のみを含む場合、外部記憶装置288単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。送受信部286は、I/Oポート284を介して、他の構成との情報をやり取りする。例えば、温度測定部221から温度情報を受信したりする。比較部285は、記憶部283から読みだしたテーブル等の情報と、他の構成から受信した情報とを比較し、制御するためのパラメータ等を抽出する。例えば、温度測定部221から受信した情報と、記憶部283に記録されているテーブルを比較し、第一ヒータ温度制御部223等を動作させるためのパラメータを抽出する。
【0058】
なお、記憶部283や外部記憶装置288は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部283単体のみを含む場合、外部記憶装置288単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0059】
(4)基板処理工程
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いてウエハ200上に薄膜を形成する工程について説明する。なお、以下の説明において、基板処理装置を構成する各部の動作はコントローラ280により制御される。
【0060】
ここでは、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてジクロロシラン(SiH
2Cl
2、略称DCS)ガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてアンモニア(NH
3)ガスを用いて、それらを交互に供給することによってウエハ200上に半導体系薄膜としてシリコン窒化(SiN)膜を形成する例について説明する。
【0061】
図3は、本実施形態に係る基板処理工程の概要を示すフロー図である。
図4から
図6は基板処理工程における基板処理装置100の動作を説明する図である。
図7は、
図3の成膜工程S110の詳細を示すフロー図である。
【0062】
ところで、一般的に裏面からウエハ200を急に加熱すると、ウエハ200の表面と裏面とで温度差が大きくなるが、その温度差によってウエハ200の表裏の伸びが異なるため、ウエハ200の反りを引き起こすという問題がある。ウエハ200の反りは、ウエハ200上に形成された膜の特性に影響を及ぼすことが考えられる。
【0063】
ウエハ200の反りを回避する技術として、例えば特許文献1のように、徐々に加熱する方法が存在する。しかしながら、所望の温度となるまで時間がかかり、スループットが低下するという問題がある。
【0064】
そこで、本実施形態においては、高いスループットを維持しつつウエハ200の反りを抑止可能な技術を説明する。以下に具体的な方法を説明する。
【0065】
(基板搬入載置工程:S102)
ヒータ213やヒータ248eは動作安定まで時間がかかるため、ここではウエハ200を搬送室に搬入する前にヒータ213やヒータ248eをオンとする。それらが安定したら、基板載置台212をウエハ200の搬送位置(搬送ポジション)まで下降させ、基板載置台212の貫通孔214にリフトピン207を貫通させる。その結果、リフトピン207が、基板載置台212表面よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。これらの動作と並行して、搬送空間203の雰囲気を排気し、隣接する真空搬送室(図示せず)と同圧、あるいは隣接する真空搬送室の圧力よりも低い圧力とする。
【0066】
続いて、ゲートバルブ205を開いて、搬送空間203を隣接する真空搬送室と連通させる。そして、
図4(a)に記載のように、この真空搬送室から真空搬送ロボット251を用いてウエハ200を搬送空間203に搬入する。
このとき、第三のガス供給系245や加熱ガス供給系248から処理室201や搬送空間203に不活性ガスを供給し、それと並行して排気管261から雰囲気を排気することで、処理室201内に外部の雰囲気が回りこむことを防ぐ。
【0067】
(加熱ガス供給工程S104)
続いて真空搬送ロボット251を移動し、
図4(a)のようにウエハ200をリフトピン207上方に維持させたら、真空搬送ロボット251を下げ、リフトピン207上にウエハ200を載置する。リフトピン207に載置した後、真空搬送ロボット251を搬送空間203の外に移動させると共に、ゲートバルブ205によって搬入出口206を閉じ、
図4(b)のように、リフトピン207上にウエハが載置された状態とする。ゲートバルブ206を閉じたら、第三のガス供給系245からの不活性ガス供給を停止すると共に、加熱ガス供給系248からの加熱ガス供給を継続する。供給された加熱ガスはヒータ248eによって加熱されている。加熱ガスの温度は、真空状態でもウエハ200を加熱可能とする温度であり、更には成膜工程における基板温度よりも高い温度であり、例えば700℃から800℃程度する。排気管261からの排気は継続する。
【0068】
ところで、先行技術文献に記載の従来技術の場合、ウエハの反りを防止するために、所定時間リフトピン207上にウエハを待機させている。その理由として、基板支持部上にすぐにウエハを載置した場合、室温のウエハと高温のサセプタとが直接接触することで、ウエハ内に過度の温度差が発生し、それによりウエハが反ってしまうためである。そこで、リフトピン207上で待機させることで、ウエハと基板支持部との間のガスを媒体としたウエハ下方からの熱伝導により徐々に加熱する。これによりウエハ表裏における過度の温度差を発生させずに、つまりウエハの反りを発生させずに、ウエハを所望の温度に昇温させることが可能となる。しかしながら、従来技術はウエハ上方から加熱する構造がないため、ウエハ上方から熱逃げが発生してしまうという問題がある。その熱逃げを補うために、リフトピン207上に所定時間待機させる必要がある。しかしながら、スループットが低下してしまうという問題がある。
【0069】
これに対して、本実施形態ではウエハ200の上方から加熱ガスを供給するため、ウエハ200の裏面だけでなく、ウエハ200表面が加熱される。更には、加熱ガス供給構造235からウエハ200表面までの搬送空間203および処理空間201も加熱される。
【0070】
具体的には、次のように加熱される。
加熱ガスは、搬送空間203内で矢印方向に拡散し、ウエハ200の表面に供給され、ウエハ200を加熱する。このとき、加熱ガスは基板載置面211とウエハ200裏面との間に回りこむ。ウエハ200は、上方から供給された加熱ガスと裏面に回りこんだ加熱ガスとで、ウエハ200の表裏を加熱する。ここではウエハ200の表裏の温度差が、ウエハ200が反らない程度の所定の温度範囲とする。
【0071】
さらに、加熱ガスが搬送空間203や処理空間201を拡散するので、その雰囲気が加熱される。したがってウエハ200からの熱逃げが発生することが無い。以上のことから、すばやくウエハ200を昇温させることができる。その結果、早急にヒータ213とウエハ200との温度差を少なくする事ができる。したがって、リフトピン207上で所定時間ウエハ200を待機させる必要がなく、短時間でウエハを搬送することが可能となる。
【0072】
以上のようにすることで、搬送後のウエハ温度を従来よりも早く均一に加熱することができる。したがって、ウエハの反りを起こさずに、リフトピン207上で待機させることなく、もしくは待機時間の短縮が可能となり、スループットを高くすることができる。
【0073】
さらには、加熱ガス供給構造235から加熱ガスを供給することで、後述する成膜工程S110の前に分散部234を加熱することが可能となる。事前に加熱することで、成膜工程S110ではウエハ200をすばやく加熱することが可能となる。
【0074】
(ウエハ処理ポジション移動工程S106)
所定の時間経過後、基板載置台212を上昇させ、
図5(c)のように基板載置面211上にウエハ200を載置し、さらに
図5(d)のように、ウエハ処理ポジションまで上昇させる。少なくともウエハ搬送ポジションからウエハ処理ポジションに移動するまでの間、引き続き加熱ガス供給系248から加熱ガスを供給し、ウエハ200を加熱する。ウエハ処理ポジションは、ウエハ200が処理ガスによって処理される位置であり、例えば
図1や
図5(d)に記載のように、基板載置台200の表面の高さと隔壁204の高さが揃う位置である。
【0075】
(脱離物除去工程S108)
ところで、ウエハ200上に形成された膜には多くの不純物が含まれていることが知られている。これらの不純物は、ウエハ200が搬入される前に、異なる処理室で処理したガスの成分や反応副生成物等である。例えば、六フッ化硫黄(SF6)ガスや四フッ化炭素(CF4)等のエッチングガスの成分に由来する、フッ化物やカーボン系残渣物等である。これらの不純物は、ウエハ200を高熱とすることで、膜中からの脱離が促進される。
【0076】
近年の微細化に伴い膜の表面積が増加傾向にあるため、不純物の量も増加傾向にある。従い、加熱を継続した場合に、多くの不純物の脱離も継続するため、排気量よりも脱離量が多い場合に、ウエハ200上に不純物が滞留する恐れがある。例えば、排気効率の低いウエハ中央上の雰囲気では不純物が多く、排気効率の高いウエハ外周上の雰囲気では不純物が少ない。このような状況の中で原料ガスを供給した場合、原料ガスとウエハ200の表面の間に脱離物が滞留するが、その場合原料ガスがウエハ200の表面に到達することができない、もしくは到達する量が不十分となる。そのため、ウエハ200上では膜が形成される場所と膜を形成することができない場所が存在する。したがって、ウエハ200を均一に処理することが困難となる。そのため、歩留まりの低下を引き起こす恐れがある。
【0077】
そこで本工程では、処理ガスの供給を開始する前に、ウエハ200表面上の雰囲気から脱離物を除去する。具体的には、
図6(e)のように、加熱ガスの供給を停止すると共に、処理室201の雰囲気を排気する。このようにすることで、加熱ガスによって加熱されたウエハ200から脱離された脱離物を除去することが可能となる。除去することで、次に供給する処理ガスであるDCSガスをウエハ200上に均一に供給することが可能となる。なお、前述ではウエハ処理ポジションに到達した状態で脱離物を除去していたが、脱離物を除去できればよく、例えばウエハ搬送ポジションとウエハ処理ポジションの間で行えばよい。より良くは、ウエハ200の温度が安定するウエハ処理ポジションで行うことが望ましい。
【0078】
(成膜工程:S110)
続いて、成膜工程S110について説明する。以下、
図7を参照し、成膜工程S110について詳細に説明する。なお、成膜工程S110は、異なる処理ガスを交互に供給する工程を繰り返すサイクリック処理である。
【0079】
図7を用いて成膜工程S110の詳細を説明する。
(第一の処理ガス供給工程S202)
基板載置台212が
図6(f)のようにウエハ処理ポジションに移動したら、排気管262を介して処理室201から雰囲気を排気して、処理室201内の圧力を調整する。ウエハ200の温度を調整する際、既に分散部234が加熱された状態であるので、ヒータ213から分散部234への熱移動量が少なくなる。したがって、すばやく加熱することが可能となる。
【0080】
所定の圧力に調整しつつ、ウエハ200の温度が所定の温度、例えば500℃から600℃に到達したら、共通ガス供給管242から処理ガス、例えばDCSガスを処理室に供給する。供給されたDCSガスはウエハ200上にシリコン含有層を形成する。
【0081】
(パージ工程:S204)
DCSガスの供給を停止した後は、第三ガス供給管245aからN
2ガスを供給し、処理空間201のパージを行う。このとき、バルブ275およびバルブ277は開状態とされてAPC276によって処理空間201の圧力が所定圧力となるように制御される。一方、バルブ275およびバルブ277以外の排気系のバルブは、全て閉状態とされる。これにより、第一の処理ガス供給工程S202でウエハ200に結合できなかったDCSガスは、DP278により、排気管262を介して処理空間201から除去される。
【0082】
パージ工程S204では、ウエハ200、処理空間201、シャワーヘッドバッファ室232での残留DCSガスを排除するために、大量のパージガスを供給して排気効率を高める。
【0083】
より良くは、第三ガス供給管245aからN
2ガスを供給すると共に、加熱ガス供給系248から加熱ガスを供給する。以下に理由を説明する。
本工程においては、前述のようにウエハ200上に残留したDCSガスを除去するために、大量のN
2ガスを、分散部234を介して第三ガス供給管245から供給する。そのため、大量のN
2ガスが分散部234の熱を奪ってしまい、その結果分散部234の温度が低下してしまう。また並行してウエハ200や基板載置台212の温度も変動する。ウエハ200等の温度変動は、インキュベーションタイムの変動や膜厚、膜質の変動、等の問題につながる恐れがあるため、分散部234、ウエハ200、基板載置台212の温度を維持することが望ましい。
【0084】
そこで本工程では、第三ガス供給管245aから供給されるN
2ガスよりも高い温度である加熱ガスを加熱ガス供給系248から供給する。加熱ガスは供給管236および加熱ガス供給構造235を通過するため、分散部234をも加熱する。このようにして分散部234の温度低下を抑制する。従ってウエハ200等の温度変動が抑制され、インキュベーションタイムの変動や膜厚、膜質の変動、等の問題を抑制できる。
【0085】
パージが終了すると圧力制御を再開する。このとき、パージ工程S204の間に加熱ガスを供給していれば、加熱ガスの供給を停止する。このときも、第三ガス供給管245aからのN
2ガスの供給は継続され、シャワーヘッド230および処理空間201のパージが継続される。
【0086】
(第二の処理ガス供給工程:S206)
シャワーヘッドバッファ室232および処理空間201のパージが完了したら、続いて、第二の処理ガス供給工程S206を行う。第二の処理ガス供給工程S206では、バルブ244dを開けて、リモートプラズマユニット244e、シャワーヘッド230を介して、処理空間201内へ第二の処理ガスとして第二元素含有ガスであるNH
3ガスの供給を開始する。このとき、NH
3ガスの流量が所定流量となるように、MFC244cを調整する。NH
3ガスの供給流量は、例えば1000〜10000sccmである。また、第二の処理ガス供給工程S206においても、第三ガス供給系のバルブ245dは開状態とされ、第三ガス供給管245aからN
2ガスが供給される。このようにすることで、NH
3ガスが第三ガス供給系に侵入することを防ぐ。
【0087】
リモートプラズマユニット244eでプラズマ状態とされたNH
3ガスは、シャワーヘッド230を介して、処理空間201内に供給される。供給されたNH
3ガスは、ウエハ200上のシリコン含有層と反応する。そして、既に形成されているシリコン含有層がNH
3ガスのプラズマによって改質される。これにより、ウエハ200上には、例えばシリコン元素および窒素元素を含有する層であるシリコン窒化層(SiN層)が形成されることになる。
【0088】
NH
3ガスの供給を開始してから所定時間経過後、バルブ244dを閉じ、NH
3ガスの供給を停止する。NH
3ガスの供給時間は、例えば2〜20秒である。
【0089】
このような第二の処理ガス供給工程S206では、第一の処理ガス供給工程S202と同様に、バルブ275およびバルブ277が開状態とされ、APC276によって処理空間201の圧力が所定圧力となるように制御される。また、バルブ275およびバルブ277以外の排気系のバルブは全て閉状態とされる。
【0090】
(パージ工程:S208)
NH
3ガスの供給を停止した後は、上述したパージ工程S204と同様のパージ工程S208を実行する。パージ工程S208における各部の動作は、上述したパージ工程S204と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0091】
(判定工程:S210)
以上の第一の処理ガス供給工程S202、パージ工程S204、第二の処理ガス供給工程S206、パージ工程S208を1サイクルとして、コントローラ280は、このサイクルを所定回数(nサイクル)実施したか否かを判定する。サイクルを所定回数実施すると、ウエハ200上には、所望膜厚のSiN層が形成される。
【0092】
(ウエハ搬送ポジション移動工程S112)
図3の説明に戻る。
所望の膜厚のSiN層が形成されたら、基板載置台212を下降させ、ウエハ200を搬送ポジションに移動する。ここでは、第三のガス供給系245から不活性ガスを供給し、圧力を調整する。
【0093】
ところで、基板載置台212を下降させると、分散部234はヒータ213の温度の影響を受けにくくなることから、分散部234の温度が低くなることが考えられる。前述のように、成膜工程S110では分散部234が加熱されていることが望ましいが、仮に温度が低くなると、分散部234を再度所望の温度まで上昇するまでに時間がかかってしまう。したがって、ウエハ200を所望の温度に加熱するまでに時間がかかってしまう。
【0094】
そこでより良くは、加熱ガス供給構造235から加熱ガスを供給し、分散部234の温度を下げないようにする。加熱ガス供給構造235を通過する加熱ガスは分散部234に伝導するため、温度低下を防ぐことができる。
【0095】
(基板搬入出工程:S114)
基板搬入出工程S114では、上述した基板搬入載置工程S102と逆の手順にて、処理済みのウエハ200を処理容器202の外へ搬出する。そして、基板搬入載置載置工程S102と同様の手順にて、次に待機している未処理のウエハ200を処理容器202内に搬入する。その後、搬入されたウエハ200に対しては、加熱ガス供給工程S104以降の工程が実行されることになる。
【0096】
[本発明の第二実施形態]
続いて第二の実施形態を説明する。
第二の実施形態は、加熱ガスの供給孔の構造が異なる。第一の実施形態においては、加熱ガス供給構造235は分散部234に円周状に構成されていたが、本実施形態の加熱ガス供給構造252は分散部234の径方向全面に渡って設けられている点で異なる。
【0097】
以下に、
図8、
図9を用いて説明する。
図8はシャワーヘッド230を側面方向から見た断面図であり、
図9は分散部234を基板載置面211から見た図である。具体的には、
図8は
図9(a)、(b)、(c)におけるD―D’の断面図である。
図9(a)は
図8のA―A’、
図9(b)は
図8のB―B’、
図9(c)は
図8のC―C’における断面図である。
【0098】
図8のように、加熱ガス供給構造252はガス供給管236を介して加熱ガス供給管248aに接続される。加熱ガス供給構造252は、分散部234の一部として構成される。分散部234は基板載置面211と対向する側が解放されように構成されており、加熱ガス供給構造252は、分散部234の構成のうち、基板載置面211と対向する壁234cである上壁と、分散部234を構成する側壁234bで主に構成される。本実施形態においては、壁234cと側壁234bで囲まれた領域をガス滞留空間252aと呼ぶ。壁234cは
図9(a)に記載のように下方から見て円状に形成されている。
【0099】
分散部234は、
図8、
図9に記載のように、複数の貫通孔234aが設けられる。貫通孔234aのそれぞれは筒状構造234dによって構成される。それぞれの筒状構造234dは分散部234の上壁である壁234cを貫通するように設けられている。筒状構造234dの上流側はシャワーヘッドバッファ室232と連通し、下流側は処理空間201と連通する。
【0100】
上壁234cの外周部では、上壁234cの上端よりも高い壁を有する凹部252bが、周状に設けられている。凹部252bの下方にはバッファ空間252cが構成される。即ち、
図9(a)に記載のように、上壁234の外周部に、円周状のバッファ空間252cが構成されている。凹部252bの上壁の一部にはガス供給管236が接続される。従って、バッファ空間252cは加熱ガス供給系248と連通する。
【0101】
ガス滞留空間252aは、
図8、
図9(a)、
図9(b)に記載のように、壁234aや側壁234b、凹部252bによって構成される。
【0102】
加熱ガス供給系248から供給された加熱ガスは、ガス供給管236を介してバッファ空間252cに供給される。加熱ガスの一部はバッファ空間252cの形状に沿って円周状に流れると共に、ガス滞留空間252aに供給され、ガス滞留空間252aは加熱ガスで満たされるようになる。
【0103】
以上説明したように、ガス滞留空間252aを有する加熱ガス供給構造とすることで、加熱ガスと分散部234との接触面積が増加するため、分散部234を効率よく加熱することができる。従って分散部234の温度低下の抑制することができる。
【0104】
なお、より良くは、
図8に記載のように、少なくとも筒状構造234dの基板載置面211方向の先端は、壁234cを貫通してガス滞留空間252aまで突き出すよう構成される。複数の筒状構造234dの先端がガス滞留空間252aに存在すると、加熱ガスが筒状構造234d間で滞留するため、更に分散部234の加熱効率を高めることができる。
【0105】
更により良くは、
図8、
図9(c)に記載のように、凹部252bの下方に底壁234eを設けても良い。底壁234eは、少なくとも基板載置面211と対向する位置が空洞であって、その外周が連続した板状であるドーナツ形状として構成される。このように構成することで、供給された加熱ガスは底壁234eに衝突して加熱ガス供給構造252の中央方向に向かうので、より確実に加熱ガスを分散部234の中央に搬送することが可能となる。したがって、更に確実に分散部234の加熱効率を高めることができる。
【0106】
[本発明の第三実施形態]
続いて第三の実施形態を説明する。
第三の実施形態は、第二実施例と比べて、バッファ空間252aの下方に設けられた底壁の形状が異なる。
【0107】
以下に、
図10を用いて説明する。
図10は分散部234を基板載置面211側から見た図であり、第二実施例における
図9(c)に相当する図である。他の構成は第一実施例、第二実施例と同様であるので説明を省略する。
【0108】
本実施形態における底壁234fは、第二実施例の底壁234eと同様、少なくとも凹部252aの下方に設けられているが、構造が異なる。以下に説明する。
図10に記載のように、底壁234fは、加熱ガスの流れを形成する主要部234gと、隣接する主要部234gを接続する接続部234hを有する。主要部234gの一つは、少なくともガス供給管236の供給孔の下方に設けられ、供給された加熱ガスが主要部234gにぶつかるよう構成される。主要部234gは、
図10に記載されているように、側壁234bに沿って円周状に配されている。主要部234gは、接続部234hに比べ、ガス滞留空間252aの中央方向に突出した構造である。言い換えれば、接続部234hは主要部234gに比べ、空隙234iの分、主要部234gよりも短く構成されている。このように、主要部234gは断続的に配されるよう構成されている。
【0109】
ガス供給管236から供給された加熱ガスは、主要部234gに衝突し、第二実施形態と同様にガス滞留空間252aに流れる。従って、分散部234の加熱効率を高めることができる。更には、主要部234gに衝突しなかった加熱ガスは空隙234iから処理空間201方向に供給される。従って、高温状態を維持した状態の加熱ガスが、搬送空間203や処理空間201に供給される。以上のことから、加熱ガス供給工程S102においてもウエハの加熱効率を高めることができる。即ち、本実施形態の構成により、分散部234と搬送空間203の両方を効率良く加熱することが可能となる。
【0110】
なお、本実施形態においては、主要部234gを接続部234hが接続する構成を説明したが、それに限るものではない。例えば、主要部234gの間では接続部234hを無くして空隙234iのみにしてもよい。このようにすると、加熱ガスがぶつかる構造が少なくなるので、より高温状態を維持した状態で、搬送空間203や処理空間201に加熱ガスが供給することができる。
【0111】
また、本実施形態においては、複数の主要部234gを断続的に配する構造を説明したが、それに限るものではなく、少なくともガス供給管236の下方に設けるようにしても良い。このような構成によって、高温状態を維持した状態の加熱ガスをより多く搬送空間203や処理空間201に供給可能とする。
【0112】
[他の実施形態]
以上に、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0113】
例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う成膜処理において、第一元素含有ガス(第一の処理ガス)としてDCSガスを用い、第二元素含有ガス(第二の処理ガス)としてNH
3ガスを用いて、それらを交互に供給することによってウエハ200上にSiN膜を形成する場合を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、DCSガスやNH
3ガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、これらを交互に供給して成膜処理を行うのであれば、本発明を適用することが可能である。具体的には、第一元素としては、Siではなく、例えばTi、Zr、Hf等、種々の元素であってもよい。また、第二元素としては、Nではなく、例えばAr等であってもよい。
【0114】
また、例えば、上述した各実施形態では、基板処理装置が行う処理として成膜処理を例に挙げたが、本発明がこれに限定されることはない。すなわち、本発明は、各実施形態で例に挙げた成膜処理の他に、各実施形態で例示した薄膜以外の成膜処理にも適用できる。また、基板処理の具体的内容は不問であり、成膜処理だけでなく、アニール処理、拡散処理、酸化処理、窒化処理、リソグラフィ処理等の他の基板処理を行う場合にも適用できる。さらに、さらに、本発明は、他の基板処理装置、例えばアニール処理装置、エッチング装置、酸化処理装置、窒化処理装置、露光装置、塗布装置、乾燥装置、加熱装置、プラズマを利用した処理装置等の他の基板処理装置にも適用できる。また、本発明は、これらの装置が混在していてもよい。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。