特許第6242960号(P6242960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6242960
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】ノズルボックスアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20171127BHJP
   F01D 9/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F01D9/02
   F01D9/00
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-157411(P2016-157411)
(22)【出願日】2016年8月10日
(65)【公開番号】特開2017-125490(P2017-125490A)
(43)【公開日】2017年7月20日
【審査請求日】2016年8月10日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0005599
(32)【優先日】2016年1月15日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0073665
(32)【優先日】2016年6月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507002918
【氏名又は名称】ドゥサン ヘヴィー インダストリーズ アンド コンストラクション カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】カン、ドンウー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドン イル
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ヘサン
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョルホン
【審査官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−138802(JP,A)
【文献】 特開昭59−015603(JP,A)
【文献】 特開昭57−070903(JP,A)
【文献】 米国特許第02651495(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02736088(FR,A1)
【文献】 米国特許第05392513(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/00−04
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動蒸気が供給される蒸気流入口と、
前記蒸気流入口に連結されて環状の蒸気通路を形成し、環状の蒸気通路の前面の一部が開放された開放部を有するトーラス部と、
前記開放部に連結されてステージに連絡される通路を提供し、複数のベーンが設けられた蒸気経路リングと、
を備えるが、
前記蒸気経路リングは、前記開放部に直結され
前記トーラス部は、
前記環状の蒸気通路の断面を基準として前面、上部の内面、下部の内面、背面を有するが、前記上部の内面及び下部の内面は、所定の長さの直線区間を含み、
前記前面は、
前記蒸気経路リングと結合される上部接合面及び下部接合面を有するが、前記上部接合面の端部が前記下部接合面の端部よりも前記背面の近くに位置するノズルボックスアセンブリ。
【請求項2】
前記上部の内面及び下部の内面に含まれている所定の長さの直線区間は、前記上部の内面及び下部の内面のそれぞれの全体の長さに対してそれぞれ20〜50%の範囲の長さにそれぞれ形成される請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項3】
前記所定の長さの直線区間は、前記トーラス部の背面が形成する曲げ率半径に反比例して増減するように設計される請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項4】
前記上部接合面及び下部接合面間の水平間隔は、前記上部の内面の長さの1/100以上1/50以下である請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項5】
前記前面は、前記開放部と前記上部の内面との間、又は前記開放部と下部の内面との間に所定の長さの直線区間を有する請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項6】
前記蒸気経路リングは上部体及び下部体を備え、前記上部体の内面は、前記作動蒸気が排出される前面の開放部に進むにつれて狭くなる段付き部を有する請求項1に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項7】
前記トーラス部及び蒸気経路リングは、溶接により互いに結合される請求項1に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項8】
前記トーラス部及び蒸気経路リングが互いに溶接により結合される上部接合面及び下部接合面を形成し、
前記上部接合面及び下部接合面のトーラス部側の溶接面及び蒸気経路リング側の溶接面がそれぞれ互いに35〜45°の角度を形成する請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項9】
前記上部接合面がなす上部の水平角度は、35〜45°である請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項10】
前記下部接合面がなす下部の水平角度は、40〜50°である請求項に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項11】
前記トーラス部の前面及び蒸気経路リングの背面には、それぞれ複数のボルト孔が設けられ、前記複数のボルト孔にボルトを締め付けて前記トーラス部及び蒸気経路リングを互いに結合する請求項1に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項12】
前記蒸気経路リングのベーンは、所定の円周角で離れた、複数に分割された形状を呈し、前記分割された形状のベーンの上下の端部を蒸気経路リングに固定する上側ホルダー部及び下側ホルダー部を備え、
前記上側ホルダー部及び下側ホルダー部は、前記蒸気経路リングの上部体及び下部体に設けられたガイド部に円周方向に嵌着される請求項1に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項13】
前記トーラス部及び前記蒸気経路リングは、連結部位にそれぞれフランジを備え、前記フランジは、互いにボルト締めにより固定される請求項1に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項14】
前記トーラス部の外側又は内側を密着して取り囲む拘束リングを更に備える請求項1に記載のノズルボックスアセンブリ。
【請求項15】
前記拘束リングは、少なくとも2以上に分割された形状を呈し、分割された端部を互いに連結して前記トーラス部を取り囲む請求項14に記載のノズルボックスアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルボックスアセンブリに係り、更に詳しくは、蒸気タービンの1段ステージの入り口に設けられて1段ステージに向かって高温・高圧の蒸気を噴射するノズルボックスアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び図2に示すように、従来の蒸気タービン用のノズルボックスアセンブリは、一般に、トーラス14、ブリッジリング16及び蒸気経路リング12の3つの構成要素を備える。構成要素のそれぞれは、初期には180°のセグメントに準備されるが、構成要素を次第に溶接して2つのノズルボックス半体18を形成する。図1及び図2は、そのうちの一方のノズルボックス半体18を示し、未図示の他方のノズルボックス半体も同じ形状及び構造を有する。
【0003】
次いで、2つの半体18は、水平中間線に沿って一緒に接合されて蒸気タービン用のノズルボックスアセンブリを形成する。ノズルボックス半体18のそれぞれは、トーラス14と一体に成形された1以上の蒸気流入口10を備える。蒸気流入口10は、タービンの回転軸に対して垂直な平面上においてトーラス14に連結される。
【0004】
蒸気タービンが作動する間に、蒸気流入口10は、ボイラーなどの蒸気供給源から蒸気を受け入れてトーラス14内に流動させる。蒸気は、大体軸方向流動に方向を切り換えてブリッジリング16の環状開口を介して蒸気経路リング12内に流動する。蒸気経路リング12は、蒸気流動を指向させるためのエアフォイルベーン13を有する一連のノズルを備える。
【0005】
上述したように、従来のノズルボックスアセンブリは、トーラス14と蒸気経路リング12を継ぐためのブリッジリング16を必ず備える。すなわち、円形断面の内部空間を有するトーラス14とタービンの回転軸方向に長く延びた蒸気経路リング12を滑らかな曲面状に継ぐためには、これらの間にブリッジリング16が介在する必要がある。ブリッジリング16が形成する滑らかな曲面状の継ぎは、蒸気流入口10に流入する蒸気の流動が蒸気経路リング12に沿う方向に切り換わることをスムーズに誘導することにより、流動効率を向上させる役割を果たす。
【0006】
このように、ブリッジリングは、流れる方向が急激に変わる蒸気の流動特性を改善するために適用されたが、トーラスと蒸気経路リングとの間に溶接部位を増加させる原因になることもあり、製作工程を複雑化させ、コストアップを引き起こすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0182625号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した問題を解消するために案出されたものであり、従来のノズルボックスに必須的に配設されているブリッジリングの構造を除去することにより、製作工程の効率を図る一方で、ブリッジリングが無くても高温・高圧の作動条件下で従来のレベル以上の優れた効率が得られる新規なノズルボックスアセンブリを提供することにその目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるノズルボックスアセンブリは、作動蒸気が供給される蒸気流入口と、前記蒸気流入口に連結されて環状の蒸気通路を形成し、環状の蒸気通路の前面の一部が開放された開放部を有するトーラス部と、前記開放部に連結されてステージに連絡される通路を提供し、複数のベーンが設けられた蒸気経路リングと、を備えるが、前記蒸気経路リングは、前記開放部に直結されることを特徴とする。
【0010】
また、前記トーラス部は、前記環状の蒸気通路の断面を基準として前面、上部の内面、下部の内面、背面を有するが、前記上部の内面及び下部の内面は、所定の長さの直線区間を含む。
【0011】
ここで、前記上部の内面及び下部の内面に含まれている所定の長さの直線区間は、前記上部の内面及び下部の内面のそれぞれの全体の長さに対してそれぞれ20〜50%の範囲の長さにそれぞれ形成されることが好ましい。
【0012】
また、前記所定の長さの直線区間は、前記トーラス部の背面が形成する曲げ率半径に反比例して増減するように設計されてもよい。
【0013】
更に、前記前面は、前記蒸気経路リングと結合される上部接合面及び下部接合面を有するが、前記上部接合面の端部が前記下部接合面の端部よりも前記背面の近くに位置してもよい。
【0014】
ここで、前記上部接合面及び下部接合面間の水平間隔は、前記上部の内面の長さの1/100以上1/50以下であることが好ましい。
【0015】
また、前記前面は、前記開放部と前記上部の内面との間、又は前記開放部と下部の内面との間に所定の長さの直線区間を有することを特徴とする。
【0016】
更に、前記蒸気経路リングは上部体及び下部体を備え、前記上部体の内面は、前記作動蒸気が排出される前面の開放部に進むにつれて狭くなる段付き部を有していてもよい。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記トーラス部及び蒸気経路リングは、溶接により互いに結合されてもよい。
【0018】
ここで、前記トーラス部及び蒸気経路リングが互いに溶接により結合される上部接合面及び下部接合面を形成し、前記上部接合面及び下部接合面のトーラス部側の溶接面及び蒸気経路リング側の溶接面がそれぞれ互いに35〜45°の角度を形成してもよい。
【0019】
また、前記上部接合面がなす上部の水平角度は、35〜45°であってもよい。
【0020】
更に、前記下部接合面がなす下部の水平角度は、40〜50°であってもよい。
【0021】
本発明の一実施形態によれば、前記トーラス部の前面及び蒸気経路リングの背面には、それぞれ複数のボルト孔が設けられ、前記ボルト孔にボルトを締め付けて前記トーラス部及び蒸気経路リングを互いに結合してもよい。
【0022】
また、本発明の一実施形態によれば、前記蒸気経路リングのベーンは、所定の円周角で離れた、複数に分割された形状を呈し、前記分割された形状のベーンの上下の端部を蒸気経路リングに固定する上側ホルダー部及び下側ホルダー部を備え、前記上側ホルダー部及び下側ホルダー部は、前記蒸気経路リングの上部体及び下部体に設けられたガイド部に円周方向に嵌着されてもよい。
【0023】
一方、本発明の一実施形態によれば、前記トーラス部及び前記蒸気経路リングは、連結部位にそれぞれフランジを備え、前記フランジは、互いにボルト締めにより固定されてもよい。
【0024】
また、本発明によるノズルボックスアセンブリは、前記トーラス部の外側又は内側を密着して取り囲む拘束リングを更に備えていてもよい。
【0025】
前記拘束リングは、少なくとも2以上に分割された形状を呈し、分割された端部を互いに連結して前記トーラス部を取り囲むように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるノズルボックスアセンブリは、ブリッジリングの構造物を除去して製作上の効率を図ることができ、製作コストの節減を図ることができる。
【0027】
また、トーラス部の前面部が直線形状を有するように設計することにより、トーラス部に蒸気経路リングを直結させる構造にする一方で、前面部の直線部分が流動特性に及ぼす悪影響をトーラス部の上部及び下部の内面に形成された直線区間を用いて打ち消すことにより、流動効率を従来のレベル以上に保つことができる。したがって、本発明によるノズルボックスアセンブリは、性能の悪化の心配なしに効果的にブリッジリングを削除することが可能になる。
【0028】
更に、ブリッジリングを削除した結果、トーラス部と蒸気経路リングを溶接作業なしにボルト締めにより結合する構造にすることが可能になる。したがって、高い作業熟練度を要する溶接作業を回避することにより、溶接不良による製品の廃棄や再作業、品質がばらつく虞がなく、非破壊検査を省略することができるなど製造上の多くのメリットが得られる。
【0029】
一方、ベーンを分割体にすることにより、蒸気経路リングとベーンを切削加工を用いて一体に形成する従来の製造方法に比べて、製作工程に当たって高い効率を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】従来のノズルボックスアセンブリを示す斜視図である。
図2】従来のノズルボックスアセンブリのトーラス部及び蒸気経路リングの結合体を示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリを示す概略図である。
図4】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリの蒸気流入口及びトーラス部蒸気経路リングの結合体を示す断面図である。
図5】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリのトーラス部及び蒸気経路リングの結合体を示す断面図である。
図6】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリのトーラス部及び蒸気経路リング間の溶接結合を示す概念図である。
図7】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリのトーラス部及び蒸気経路リング間の溶接結合を示す分解図である。
図8】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリのトーラス部及び蒸気経路リング間の内部フランジ結合を示す概念図である。
図9】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリのトーラス部及び蒸気経路リング間の外部フランジ結合を示す概念図である。
図10】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリのトーラス部に設けられた拘束リングを示す概念図である。
図11】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリの蒸気経路リング及びその内部のベーン分割体を示す概念図である。
図12】本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリの蒸気経路リングにベーン分割体が設けられた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一部の実施形態について例示的な図面に基づいて詳細に説明する。各図面の構成要素に参照符号を付するに当たって、同じ構成要素に対しては、たとえ他の図面の上に示されているとしても、できる限り同じ符号を持たせることに留意すべきである。また、本発明の実施形態について説明するに当たって、関連する公知の構成又は機能についての具体的な説明が本発明の実施形態についての理解を妨げると認められる場合には、その詳細な説明は省略する。
【0032】
また、本発明の実施形態の構成要素について説明するに当たって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語が使用可能である。このような用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものに過ぎず、その用語により当該構成要素の本質や順番又は順序などが限定されることはない。
【0033】
更に、ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されると記載されている場合、その構成要素はその他の構成要素に直接的に連結又は接続されてもよいが、各構成要素の間に更に他の構成要素が介在することにより間接的に「連結」、「結合」又は「接続」されてもよいと理解されるべきである。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリを示す概略図である。
【0035】
図3に示すように、上下に延びた2つの蒸気流入口50にトーラス部200が連結される。環状のトーラス部200及び蒸気流入口50は一体に形成され、環状のトーラス部200の一方の側の正面に蒸気経路リング100が設けられる。
【0036】
図4は、このようなノズルボックスアセンブリの断面図であり、図4に示す方向を基準としたとき、上方から下方に蒸気が流入する蒸気流入口50が設けられ、蒸気流入口50の下側の端部がトーラス部200の上側の後方に連結される。なお、右側方向に蒸気経路リング100が設けられ、蒸気経路リング100の内側にベーン110が設けられる。
【0037】
図5は、本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリにおいて、トーラス部200及び蒸気経路リング100が一つの結合体をなしたときの断面図である。図5は、本発明によるトーラス部200及び蒸気経路リング100の各構成を詳細に示し、図5から本発明の一実施形態によるノズルボックスアセンブリの技術的な特徴が明確に把握される。
【0038】
図5に示すように、トーラス部200及び蒸気経路リング100は、接合面S1、S2を基準として互いに結合される。
【0039】
まず、蒸気経路リング100と結合された状態でのトーラス部200の内部空間は、図5に示すように、開放部の反対側の背面201、環状の断面上の内部空間の上部面を示す上部の内面202、環状の断面上の内部空間の下部面を示す下部の内面203、及び開放部が設けられた前面204を有する。
【0040】
ここで、トーラス部200の内部空間を形成する背面201、上部の内面202、下部の内面203、前面204は曲面を含んで互いに連続しているため、どこからどこまでが各面に相当するかを便宜的に定義する必要がある。本発明においては、トーラス部200の内部空間に外接する仮想の長方形を描き、長方形の頂点P12、P13、P34、P24を結ぶ対角線(陰影線)がトーラス部200の内部面と交差する4つの個所M1、M2、M3、M4を境界として背面201、上部の内面202、下部の内面203、及び前面204を定義するものとする。
【0041】
本発明のノズルボックスアセンブリの構造において重要なのは、上部の内面202、下部の内面203、前面204に曲面(円周面)ではなく、直線区間又は直線に近い(すなわち、曲げ率半径が大きな)曲線区間が含まれているということであるが、この詳細については後述する。
【0042】
一方、上部の内面及び下部の内面の上下関係は、図5に示すように、環状の上部側の半分の断面を基準として上下方向を定義するものであり、図示しない環状の下部側の半分の断面では上下位置が反対に定義されなければならない。
【0043】
高温・高圧の作動蒸気は、蒸気流入口50を介して供給され、トーラス部200は、蒸気流入口50に連絡された環状の蒸気通路を形成する。なお、前面204の一部に含まれている開放部には、複数のベーン110が設けられた蒸気経路リング100が連結されてステージに蒸気が噴出される通路を提供する。
【0044】
従来のノズルボックスアセンブリは、トーラス部と蒸気経路リングを連結するためにブリッジリングを備えていたが、本発明によるノズルボックスアセンブリは、ブリッジリングを省略し、蒸気経路リング100がトーラス部200の開放部に直結されるように構成されたことを特徴とする。
【0045】
これについてより具体的に説明すると、トーラス部200の前面204は、長方形の4つの頂点のうち前面を定義する2つの頂点P24、P34を結ぶ直線と一致するか、或いは、これと隣り合う程度に上部の内面202及び下部の内面203から急激に折れ曲がる形状を有するように構成される。これは、ブリッジリングを除去することにより、トーラス部200及び蒸気経路リング100を直結するための厚さを確保するための形状である。
【0046】
後述するように、トーラス部200及び蒸気経路リング100は、溶接やボルト締め、フランジ継手などにより連結されるが、このような連結のためには、前面204を形成するトーラス部200の開放面及び蒸気経路リング100間の連結部位は、適切な構造的な強度を確保するための厚さを必要とする。これにより、トーラス部200の前面204は、上部の内面202及び下部の内面203から同じ曲げ率半径で緩やかに折れ曲がっては、十分な厚さが形成されないため、図示の形状のように急激に折れ曲がる必要がある。
【0047】
このように、トーラス部200及び蒸気経路リング100を直結するために前面204の形状を設計すると、ベーン110に流れる蒸気の流れに邪魔になって流動特性に悪影響を及ぼしてしまう。本発明は、これを補うために、トーラス部200の上部の内面202及び下部の内面203の中間、すなわち、背面201及び前面204を結ぶ面のうちそれぞれ所定の長さの直線区間L1、L2を含むようにしている。すなわち、蒸気流入口50に流入した蒸気が蒸気経路リング100に向かって流れる直線流動経路を増加させ、垂直方向の高さを低めることにより、蒸気経路リング100に吐き出される流動効率を向上させるのである。
【0048】
直線区間L1、L2は、それぞれ上部の内面202及び下部の内面203の全体の長さの約20〜50%の範囲の長さを有することが好ましい。ここで、図5の(a)は、500MW級の蒸気タービンにより設計されたノズルボックスアセンブリの断面図であり、図5の(b)は、1000MW級の蒸気タービンにより設計されたノズルボックスアセンブリの断面図である。両仕様のノズルボックスアセンブリを比較すると、トーラス部200が大きくなればなるほど、直線区間L1、L2の長さはこれに半比例して短くなるということが確認できる。これは、トーラス部200が大きければ、その内部空間が形成する蒸気の流動経路が長くなるため、直線区間L1、L2の長さを短縮させることができるためである。このため、上部の内面202及び下部の内面203の全体の長さの20〜50%を占める直線区間L1、L2の長さは、トーラス部200の大きさ又は背面201を形成する円周面の曲げ率半径に反比例するように設計することができる。
【0049】
一方、前記前面204は、蒸気経路リング100と結合される上部接合面S1及び下部接合面S2を有するが、上部接合面S1の端部が下部接合面S2の端部よりも背面201の更に近くに位置することが好ましい。これは、上部接合面S1及び下部接合面S2の各端部が同じ位置に設けられる場合、トーラス部200と蒸気経路リング100が結合されるときに相互干渉を引き起こす虞があるためである。
【0050】
ここで、上部接合面S1及び下部接合面S2は、図5を基準としたときの上部及び下部をいうものであり、所定の厚さを有するリングの全体の形状においては、それぞれ外側及び内側を意味するものである。
【0051】
図6及び図7は、溶接を用いてトーラス部200及び蒸気経路リング100を直結する構造を示すが、図6に示すように、間隔「e」に見合う分だけ上部接合面S1の端部及び下部接合面S2の端部が互いに間隔を形成する。前記間隔「e」とは、上部接合面S1及び下部接合面S2の各端部が水平方向に対してオフセットされた水平間隔を意味し、その値は、上部の内面202長さの約1/100以上1/50以下であることが好ましい。このように、水平間隔「e」を形成することにより、トーラス部200及び蒸気経路リング100が互いに結合されるときに発生する干渉を防ぐことができる。
【0052】
トーラス部200及び蒸気経路リング100の溶接部310の溶接形状についてより具体的に説明すると、上部接合面S1のトーラス部200側の溶接面及び蒸気経路リング100側の溶接面は、互いに角度aをなす。角度aは、35〜45°の範囲に形成することが好ましい。
【0053】
また、下部接合面S2のトーラス部200側の溶接面及び蒸気経路リング100側の溶接面は、互いに角度bをなし、角度bもまた35〜40°であることが好ましい。
【0054】
一方、図7に示すように、上側のトーラス部200側の端部と蒸気経路リング100側の端部との間の仮想の中心線、すなわち、上部接合面S1は、溶接面の全体の上部の水平角度cを示す値であるが、上部の水平角度cは、35〜45°であることが好ましい。同様に、下側のトーラス部200側の端部及び蒸気経路リング100側の端部が形成する下部接合面S2がなす下部の水平角度dは、40〜50であることが好ましい。
【0055】
前記蒸気経路リング100は、同心をなしながらトーラス部200にそれぞれ連結される上部体101及び下部体102を有する。ここで、上部体101の内面には、蒸気の出口側に向かって狭くなる段付き部104を形成することが考えられる。このように、段付き部104を上部体101の内面に形成すると、ベーン110の立ち下がりエッジにおける蒸気の流速が増加され、これは、流動特性の向上に役立つ。
【0056】
一方、図8は、ボルト締めによるトーラス部及び蒸気経路リング間の結合構造を示す。図8に示すように、トーラス部200の前面及び蒸気経路リング100の背面にそれぞれ複数のボルト孔が設けられ、前記ボルト孔にボルト320を締め付けてトーラス部200及び蒸気経路リング100を互いに結合する。このようなボルト締めによる連結は、トーラス部200と蒸気経路リング100との間にブリッジリングが介在しないので、面圧を均一化し易いことにより可能になった結合構造である。図8は、蒸気経路リング100には外側に折れ曲がったフランジ120を形成してトーラス部200の前面の端部210の内側にボルトが嵌め込まれる実施形態を示している。
【0057】
このように、ボルトで連結する構造は、既存の溶接構造に比べて作業効率を大幅に高めることができ、メンテナンスの側面からみて非常に有利である。なお、他方では、溶接とボルト結合を同時に適用して結合部位の構造的な安定性をさらに高めることも考えられる。
【0058】
一方、図9は、図8に示すボルト結合において、トーラス部200及び蒸気経路リング100の両方ともに外側に突出されたフランジ211、121を形成した実施形態を示す。
【0059】
図8及び図9に示すように、フランジ120、121、211は、ボルト結合のための支持体を形成するだけではなく、ノズルボックスアセンブリを構造的に補強する役割を果たす。すなわち、フランジそれ自体がその突出長さに見合う分の厚さを有するリング構造をノズルボックスアセンブリの上に形成するので、その分の構造的な補強効果が得られる。
【0060】
一方、図10は、トーラス部200に設けられる拘束リングを示す。拘束リング510、520は、トーラス部200の外面を密着して取り囲むリング構造体である。拘束リング510、520は、図10に示すように、トーラス部200の上部の外側に設けられた上側拘束リング510及び/又はトーラス部200の下部の外側に設けられた下側拘束リング520を備えていてもよい。拘束リング510、520は、蒸気の圧力によりトーラス部200が膨張することを抑えるためのリングであり、上側拘束リング510及び下側拘束リング520のうちのいずれか一方にのみ設けられてもよく、両方ともに設けられてもよい。ここで、上部及び下部は、図10を基準としたものであり、環状のトーラス部200の全体を基準としたとき、上部及び下部は、外部及び内部と表してもよい。
【0061】
拘束リング510、520は、少なくとも2以上に分割された形状で準備され、分割された端部を溶接や別途の締め付け手段を用いて互いに連結して固定してもよい。拘束リング510、520は、図6及び10に示すように、溶接による結合構造(溶接部300、310)に適用可能であり、更に、図8及び図9に示すように、フランジ結合にも適用可能である。図8の実施形態であれば、トーラス部200の前面の端部に設けられてもよく、図9の実施形態においては、トーラス部200のフランジの左側に設けられてもよい。なお、場合によっては、トーラス部200だけではなく、蒸気経路リング100の外側に設けられてもよい。
【0062】
一方、図11は、分割された形状のベーン410を示す断面図であり、図12は、分割された形状のベーン410が蒸気経路リング100に結合された形状を示す正面図である。
【0063】
図12に示すように、蒸気経路リング100に結合されるベーン410は、所定の円周角に見合う分だけ離れた複数の分割された形状を有する。
【0064】
図11に示すように、分割された形状のベーン410の外側及び内側には、それぞれベーン410を固定するための上側ホルダー部420及び下側ホルダー部430が配設される。ベーン410の上側ホルダー部420及び下側ホルダー部430は、蒸気経路リング100の上部体110及び下部体120に対応する形状に設けられたガイド部130に円周方向に嵌着される。
【0065】
このように、分割された形状のベーン410は、半円リング状に蒸気経路リング100と一体に切削加工される従来の場合に比べて、製造し易く、材料のロスが少ない他、一部のベーン410が損傷された場合、当該部分のみを取り替えることができるというメリットがある。このように、ベーン410が分割体400の形で設けられた場合には、蒸気経路リング100の膨張を抑えるという構造的な側面からみてやや不利な点があるが、上述したように、拘束リング510、520を適用することにより、構造的な強度を補強することができる。
【0066】
以上において、本発明の実施形態を構成する全ての構成要素が一つ結合したり、結合して動作すると説明されたとして、本発明が必ずしもこのような実施形態に限定されることはない。すなわち、本発明の目的範囲内であれば、その全ての構成要素が一つ以上に選択的に結合して動作してもよい。また、上記の「備える」、「構成する」又は「有する」などの用語は、特に断りのない限り、当該構成要素が内在可能であることを意味するものであるため、他の構成要素を除外するわけではなく、他の構成要素を更に備えてもよいと解釈されるべきである。技術的又は科学的な用語をはじめとするあらゆる用語は、別に定義されない限り、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者により一般的に理解されるものと同じ意味がある。辞書に定義された用語のように、一般的に用いられる用語は、関連する技術の文脈上の意味と一致するものであると解釈されなければならず、本発明において明らかに定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味に解釈されない。
【0067】
以上の説明は、本発明の技術思想を例示的に説明したものに過ぎず、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲において様々な修正及び変形が加えられる筈である。よって、本発明に開始された実施形態は本発明の技術思想を限定するためのものではなく、単に説明するためのものであり、このような実施形態により本発明の技術思想の範囲が限定されることはない。本発明の範囲は、下記の特許請求の範囲により解釈されなければならず、それと同等な範囲内にあるあらゆる技術思想は本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0068】
50:蒸気流入口
100:蒸気経路リング
101:上部体
102:下部体
110:ベーン
120、121:フランジ
130:ガイド部
200:トーラス部
201:背面
202:上部の内面
203:下部の内面
204:前面
210:前面の端部
211:フランジ
300、310:溶接部
320:ボルト
400:分割体
410:ベーン
420:上側ホルダー部
430:下側ホルダー部
510:上側拘束リング
520:下側拘束リング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12