(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種、を含有する眼科用水性組成物(硫酸亜鉛又は乳酸亜鉛を含有する眼科用水性組成物を除く)。
(C)成分が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、ポリビニルピロリドン、デキストラン及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載の眼科用水性組成物。
ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びポリエチレンナフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のプラスチックを素材として含む容器に収容された、請求項1〜3のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、その課題は、テルペノイドを含有する眼科用水性組成物において、容器へのテルペノイドの吸着を抑制して、該眼科用水性組成物におけるテルペノイドの残存率を高く維持することができる眼科用水性組成物を提供することであり、更に、眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法を提供することである。
【0006】
更に、本発明のその他の課題は、その他のより改善された作用を有する眼科用水性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記した課題を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、テルペノイドを含有する眼科用水性組成物中に、塩化亜鉛と共に、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することによって、眼科用水性組成物をプラスチック容器等の各種の容器に充填して保存した場合に、容器へのテルペノイドの吸着を抑制することができ、テルペノイド含有量の低下を長期間抑制することが可能となることを見出した。また、本発明者は、上記成分を含む眼科用水性組成物は、ヒスタミン遊離抑制作用を顕著に有し、更に、目やにを効果的に抑制するという予期できない作用を有することも見出した。本発明は、これらの知見に基づいて更に研究を重ねた結果完成されたものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物を提供するものである。
項1-1: (A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種、を含有する眼科用水性組成物。
項1-2: テルペノイドが、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール及びゲラニオールからなる群より選択される少なくとも1種である上記項1-1に記載の眼科用水性組成物。
項1-3. 眼科用水性組成物の総量を基準としてテルペノイドの含有割合が総量で0.00001〜0.2w/v%である、項1-1又は1-2に記載の眼科用水性組成物。
項1-4: テルペノイドの総量1重量部に対して、塩化亜鉛を0.000005〜5000重量部含有する上記項1-1〜1-3のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-5: テルペノイドの総量1重量部に対して、(C)成分を総量として、0.0005〜1000000重量部含有する上記項1-1〜1-4のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-6: (C)成分が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、デキストラン及びポリエチレングリコールからなる群より選択される少なくとも一種である、上記項1-1〜1-5のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
項1-7: 更に、界面活性剤を含有する、上記項1-1〜1-6のいずれにかに記載の眼科用水性組成物。
項1-8: ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂及びポリエチレンナフタレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種のプラスチックを素材として含む容器に収容された、上記項1-1〜1-7のいずれかに記載の眼科用水性組成物。
【0009】
また、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物におけるテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法又はテルペノイドの含有量の低下を抑制する方法を提供するものである。
項2-1: 眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイドと共に、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、該眼科用水性組成物中のテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法。
項2-2: 眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイドと共に、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、該眼科用水性組成物中のテルペノイドの含有量の低下を抑制する方法。
【0010】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法又は眼科用水性組成物に目やに抑制作用を付与する方法をも提供する。
項3-1. 眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、該眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法。
項3-2. 眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、眼科用水性組成物に目やにを抑制する作用を付与する方法。
【0011】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の目のかゆみの抑制若しくは治療方法、又は目やにの抑制方法をも提供するものである。
項4-1. (A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目のかゆみを抑制又は治療する方法。
項4-2. (A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目やにを抑制する方法。
【0012】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の使用をも提供するものである。
項5. テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物を製造するための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種の使用。
【0013】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の使用も提供する。
項6-1. テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物の使用。
項6-2. 組成物が、上記項1-2〜1-8のいずれかに記載の組成物である、上記項6-1に記載の使用。
【0014】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の組成物も提供するものである。
項7-1. テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物。
項7-2. 組成物が、上記項1-2〜1-8のいずれかに記載されたものである、上記項7-1に記載の組成物。
【0015】
更に、本発明は、下記に掲げる態様の眼科用水性組成物の製造方法も提供するものである。
項8-1. 水を含む担体に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を添加することを含む、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物の製造方法。
項8-2. 組成物が、上記項1-2〜1-8のいずれかに記載された組成物である、上記項8-1に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の眼科用水性組成物によれば、テルペノイドを配合した眼科用水性組成物において、テルペノイドの容器への吸着を抑制して、例えば流通過程等においても長期間に亘って該眼科用水性組成物中におけるテルペノイドの含有量の低下を抑制することができる。眼科用水性組成物のテルペノイド含有量の低下は、使用感に大きな影響を与えることから、テルペノイド含有量の低下を抑制することにより、患者のコンプライアンスを向上させることもできる。
【0017】
更に、本発明の眼科用水性組成物は、優れたヒスタミンの遊離を抑制する作用を有するものである。よって、本発明の組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で該組成物を角膜に接触させることによって、抗ヒスタミン作用が増強され、目のかゆみを抑制乃至治療することができる。従って、本発明の眼科用組成物は、例えば、かゆみ抑制用点眼剤又は洗眼剤として有用であり、更に、かゆみ症状を伴う、アレルギー用、炎症用、ドライアイ用、コンタクトレンズ装用時用の点眼剤などとしても有用である。
【0018】
また、本発明の眼科用水性組成物は、目やにを効果的に抑制する作用を有するものである。よって、本発明の組成物を点眼、洗眼などの方法で角膜に接触させることによって、目やにの症状を示す患者に対して、目やに量を抑制することができ、例えば、目の開け易さ、まばたきのし易さ、目のかすみなどを改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.眼科用水性組成物
本発明の眼科用水性組成物は、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種、を含有する水性組成物である。
【0021】
本明細書において、「水性組成物」とは水を含有する組成物である。本発明の眼科用水性組成物における水の含有割合は、該眼科
用水性組成物の総量を基準として、例えば、10〜99.8w/v%、好ましくは55〜99.0w/v%、より好ましくは70〜98.0w/v%、更に好ましくは85〜98.0w/v%、特に好ましくは90〜98.0w/v%である。
【0022】
以下、本発明の眼科用水性組成物について具体的に説明する。
【0023】
(1)テルペノイド
テルペノイド(以下、(A)成分と表記することもある)は、イソプレンユニットを構成単位とする構造を有し、清涼化剤として使用されている公知の化合物である。
【0024】
本発明の眼科用水性組成物では、テルペノイドとしては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される限り、特に制限なく使用できる。この様なテルペノイドとしては、具体的には、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール、シネオール、シトロネロール、カルボン、アネトール、オイゲノール、リモネン、リナロール、酢酸リナリル、これらの誘導体等が挙げられる。これらの化合物はd体、l体及びdl体のいずれでもよい。
【0025】
また、本発明において、テルペノイドとして、上記化合物を含有する精油を使用してもよい。このような精油としては、例えば、ユーカリ油、ベルガモット油、ペパーミント油、クールミント油、スペアミント油、ハッカ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、ローズ油、樟脳油等が挙げられる。
【0026】
テルペノイドは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0027】
これらのテルペノイドの中でも、メントール、メントン、カンフル、ボルネオール、ゲラニオール等が好ましく、メントール及びカンフルがより好ましく、l-メントール、dl-メントール、d-カンフル及びdl-カンフルが更に好ましく、l-メントールが特に好ましい。
【0028】
本発明の眼科用水性組成物におけるテルペノイドの含有割合については、具体的な眼科用組成物の種類に応じて適宜設定することができる。一例として、眼科用水性組成物の総量を基準として、(A)成分の含有割合が、総量で、0.00001〜0.5w/v%であり、好ましくは0.0005〜0.25w/v%であり、更に好ましくは0.001〜0.1w/v%である。また、かかる含有割合は、投与回数、投与方法等によって増減できることは言うまでもない。
【0029】
(2)塩化亜鉛
本発明の眼科用水性組成物では、塩化亜鉛(以下、(B)成分と表記することもある)としては、眼科用水性組成物に使用することが可能なものであれば特に制限なく使用できる。例えば、第十六改正日本薬局方に記載されている塩化亜鉛を用いることができる。
【0030】
本発明の眼科用水性組成物における塩化亜鉛の含有割合については、特に限定的ではないが、一例として、眼科用水性組成物の総量を基準として、塩化亜鉛の含有割合が、0.000001〜0.05w/v%、好ましくは0.00005〜0.025w/v%、更に好ましくは0.0001〜0.015w/v%である。
【0031】
また、該眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドの含有量に対する塩化亜鉛の含有量の比率については、特に限定的ではないが、例えば、該眼科用水性組成物に含まれる(A)成分(テルペノイド)の総量1重量部に対して、塩化亜鉛が、0.000005〜5000重量部であり、好ましくは 0.0005〜1000重量部であり、更に好ましくは0.002〜500重量部であり、特に好ましくは0.002〜10重量部であり、最も好ましくは0.002〜1重量部である。
【0032】
(3)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種
本発明の眼科用水性組成物では、テルペノイド((A)成分)及び塩化亜鉛((B)成分)と共に、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種(以下、(C)成分と表記することもある)を同時に含有することによって、テルペノイドの容器への吸着を抑制して、長期間に亘って該眼科用水性組成物中におけるテルペノイドの含有量の低下を抑制することができる。更に、本発明の眼科用水性組成物は、ヒスタミンの遊離を抑制する作用、目やにを抑制する作用等に優れたものであり、該眼科用水性組成物を使用することによって抗ヒスタミン作用の増強、目やに量の抑制等の効果が奏される。
【0033】
本発明の眼科用水性組成物では、(C)成分としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば、特に制限なく使用できる。
【0034】
本発明で用いられるセルロース系高分子化合物としては、セルロース、セルロースのヒドロキシル基を他の官能基で置換したセルロース誘導体、これらの塩等を例示することができる。セルロース誘導体において、ヒドロキシル基を置換する官能基としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されるものであれば特に制限されず、具体的には、水酸基又はカルボキシル基で置換(好ましくは、置換基の数は1つ)されていてもよい炭素数1〜5(好ましくは炭素数1〜3)のアルコキシル基等が挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、ヒドロキシメトキシ基、ヒドロキシエトキシ基、ヒドロキシプロポキシ基、カルボキシメトキシ基、カルボキシエトキシ基等が例示される。セルロース誘導体の具体例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0035】
セルロース及びその誘導体の塩については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される塩の形態のものであれば特に制限されず、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩を例示できる。
【0036】
セルロース系高分子化合物の中では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましくは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースがさらに好ましい。
【0037】
これらのセルロース系高分子化合物は、市販品を使用することができる。メチルセルロースとして、例えば、メトローズS M シリーズとして信越化学工業株式会社から販売されている、S M − 1 5 ( 平均分子量約7 万) 、S M − 2 5 ( 平均分子量約9 万) 、S M − 5 0 ( 平均分子量約1 1 万) 、S M − 1 0 0 ( 平均子量約1 2 万) 、S M − 40 0 ( 平均分子量約1 7 万) 、S M − 1 5 0 0 ( 平均分子量約2 9 万) 、S M − 4 0 0 0( 平均分子量約3 6 万) 等が利用できる。ヒドロキシエチルセルロースとして、例えば住友精化株式会社から販売されているH E C − C F − G( 平均分子量約4 0 万) 、H E C − C F − H( 平均分子量約7 0 万) 、H E C − C F − V ( 平均分子量約1 0 0 万) 、H E C − C F − W ( 平均分子量約1 3 0 万) 、H E C − C F − X ( 平均分子量約1 5 0 万) 、H E C − C F − Y ( 平均分子量約1 80 万) 等が利用できる。ヒドロキシプロピルメチルセルロースとして、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2208、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2906、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2910等が挙げられ、メトローズS H シリーズとして信越化学工業株式会社から販売されている、6 0 SH − 1 5 ( 平均分子量約7 万) 、6 0 S H − 50 ( 平均分子量約10 万) 、6 0 S H − 4000( 平均分子量約30 万) 、6 0 S H − 10000 ( 平均分子量約50 万) 、65 S H − 50( 平均分子量約10万)、65S H − 4 0 0( 平均分子量約11万) 、65 S H − 1 5 0 0 ( 平均分子量約20万) 、65 S H − 4000 ( 平均分子量約30万) 、65 S H − 150000 ( 平均分子量約80万)、90S H − 4000 ( 平均分子量約30万)等が利用できる。
【0038】
これらのセルロース系高分子化合物は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。特にヒドロキシプロピルメチルセルロース2906又はヒドロキシプロピルメチルセルロース2910が好ましい。
【0039】
セルロース系高分子化合物の分子量については、置換基の種類や置換度等によって異なるが、通常、重量平均分子量で0.1万〜150万、好ましくは0.5万〜130万、更に好ましくは1万〜100万程度である。
【0040】
本発明で用いられるビニル系高分子化合物とは、ビニル基を有するモノマー化合物を重合し、必要に応じてケン化することにより得られるポリマー(ビニル系ポリマー)又はその塩である。ビニル系高分子化合物としては、具体的には、ポリビニルアルコール(完全又は部分ケン化物)、ポリビニルピロリドン等が例示され、ポリビニルピロリドンが好ましい。
【0041】
ビニル系高分子化合物の分子量については、構成モノマーの種類等によって異なるが、通常、重量平均分子量で0.1万〜250万、好ましくは0.5万〜200万、更に好ましくは1万〜150万程度のものを使用することができる。
【0042】
より具体的には、ビニル系高分子化合物がポリビニルアルコールの場合には、JIS K-6726に準拠して測定される平均重合度が通常700〜4500、好ましくは800〜4000、より好ましくは900〜3500程度のもの(例えば、900〜1100のものや2900〜3100のもの)を使用することができる。
【0043】
また、ビニル系高分子化合物がポリビニルピロリドンの場合には、フィケンチャー法によるK値が、通常15〜100、好ましくは20〜99、より好ましくは22〜98程度のもの(例えば、22〜28のものや87〜93のもの)を使用することができる。
【0044】
また、ビニル系高分子化合物の塩については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される塩の形態のものであれば、特に制限されず、ナトリウム塩、カリウム塩等の無機塩基との塩、トリエタノールアミン塩等の有機塩基との塩等を例示できる。
【0045】
これらのビニル系高分子化合物は、市販品を使用することができる。ポリビニルピロリドンとして、例えば、コリドンシリーズとしてB A S F 株式会社から販売されている、コリドン25 ( 平均分子量約3 万) 、コリドン3 0 ( 平均子量約5 万) 、コリドン1 7 P F ( 平均分子量約9 万) 、コリドン9 0 ( 平均分子量約1 2 万) 等が利用できる。ポリビニルアルコールとして、例えば、ゴーセノールシリーズとして日本合成化学株式会社から販売されている、ゴーセノールEG 0 5 ( 平均分子量約3 万) 、ゴーセノールE G 4 0 ( 平均分子量約1 2 万) 等が利用できる。また、これらのビニル系高分子化合物は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0046】
本発明で用いられるデキストランは、ショ糖を原料としてある種の乳酸菌が生産する多糖を部分的に加水分解して得られる水溶性高分子化合物である。デキストランは重量平均分子量0.5万〜100万、好ましくは1万〜50万、さらに好ましくは1万〜10万程度のものを使用することができる。なかでも、本発明の効果をより一層高める観点から、好ましくはデキストラン、デキストラン70、デキストラン40、特に好ましくは、デキストラン70である。また、これらのデキストランは、市販のものを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
本発明で用いられるポリエチレングリコールは、別名をマクロゴールとも言い、置換基の置換度や分子量に制限はないが、重量平均分子量100〜5万、好ましくは400〜2万、さらに好ましくは2000〜1万程度のものを使用することができる。なかでも、本発明の効果をより一層高める観点から、好ましくはマクロゴール6000、マクロゴール4000、マクロゴール400、特に好ましくは、マクロゴール400である。また、これらのポリエチレングリコールは、市販のものを用いることができ、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
本発明の眼科用水性組成物では、(C)成分としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、デキストラン、ポリエチレングリコール等が好ましく、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ポリビニルピロリドン、デキストランがさらに好ましく、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが特に好ましい。
【0049】
本発明の眼科用水性組成物では、テルペノイドの含有量に対する、(C)成分であるセルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも一種の成分の含有比率は、テルペノイドの総量1重量部に対して、例えば、(C)成分の総量として、0.0005〜1000000重量部が好ましく、0.05〜10000重量部がより好ましく、0.2〜3000重量部が更に好ましく、0.5〜1000重量部が特に好ましく、1〜200重量部が最も好ましい。
【0050】
また、塩化亜鉛の含有量に対する(C)成分の含有比率は、塩化亜鉛1重量部に対して、例えば、(C)成分の総量として、0.002〜100000重量部が好ましく、0.5〜60000重量部がより好ましく、1〜40000重量部が更に好ましく、2〜30000重量部が特に好ましく、2〜10000重量部が最も好ましい。
【0051】
本発明の眼科用水性組成物では、該眼科用水性組成物中の(C)成分の含有割合については特に限定はなく、具体的な眼科用水性組成物の用途、使用方法などに応じて適宜決めることができる。例えば、眼科用水性組成物の総量を基準として、(C)成分の総量として0.0001〜25w/v%、好ましくは0.001〜10w/v%、更に好ましくは0.0025〜10w/v%、特に好ましくは0.01〜5w/v%、最も好ましくは0.01〜2.5w/v%である。また、かかる投与量は投与回数、投与方法等によって増減できることは言うまでもない。
【0052】
尚、上記した(C)成分の総量の含有割合の範囲内において、セルロース系高分子化合物の含有割合は、眼科用水性組成物の総量を基準として、0.0001〜10w/v%、好ましくは0.0025〜7w/v%、さらに好ましくは0.005〜5w/v%、特に好ましくは0.01〜3w/v%、最も好ましくは0.05〜2.5 w/v%程度である。ビニル系高分子化合物の含有割合は、眼科用水性組成物の総量を基準として、0.0001〜10w/v%、好ましくは0.0025〜7w/v%、さらに好ましくは0.005〜5w/v%、特に好ましくは0.01〜3w/v%、最も好ましくは0.05〜2.5 w/v%程度である。デキストランの含有割合は、眼科用水性組成物の総量を基準として、0.001〜25w/v%、好ましくは0.001〜10w/v%、より好ましくは0.01〜10w/v%、更に好ましくは0.01〜5w/v%、特に好ましくは0.01〜1w/v%、更に特に好ましくは0.01〜0.1w/v%である。ポリエチレングリコールの含有割合は、眼科用水性組成物の総量を基準として0.001〜25w/v%、好ましくは0.001〜10w/v%、より好ましくは0.01〜10w/v%、さらに好ましくは0.05〜5w/v%、特に好ましくは0.05〜2w/v%である。
【0053】
(4)界面活性剤
本発明の眼科用水性組成物は、上記した(A)〜(C)成分を含有するものであるが、更に必要に応じて、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤を含有することにより、本発明の効果、即ち、テルペノイドの容器への吸着抑制、ヒスタミン遊離抑制作用の増強、目やにの抑制等の効果がより顕著に発揮される。
【0054】
本発明の眼科用水性組成物に配合可能な界面活性剤としては、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤のいずれであってもよい。界面活性剤を含有する事により、本発明の効果をより顕著に発揮することができる。
【0055】
これらの内で、非イオン界面活性剤としては、具体的には、モノラウリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノパルミチン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート40)、モノステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、トリステアリン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート65)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類;ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロクサマー403、ポロクサマー237、ポロクサマー124等のPOE・POPブロックコポリマー類;POE(60)硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)等のPOE硬化ヒマシ油類;POE(9)ラウリルエーテル等のPOEアルキルエーテル類;POE(20)POP(4)セチルエーテル等のPOE-POPアルキルエーテル類;POE(10)ノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類等が挙げられる。なお、上記で例示する化合物において、POEはポリオキシエチレン、POPはポリオキシプロピレン、及び括弧内の数字は付加モル数を示す。また、本発明の眼科用水性組成物に配合可能な両性界面活性剤としては、具体的には、アルキルジアミノエチルグリシン等が例示される。また、本発明の眼科用水性組成物に配合可能な陽イオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が例示される。また、本発明の眼科用水性組成物に配合可能な陰イオン性界面活性剤としては、具体的には、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、脂肪族α−スルホメチルエステル、αオレフィンスルホン酸等が例示される。
【0056】
本発明の眼科用水性組成物において、界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明の眼科用水性組成物における界面活性剤の含有割合については、特に限定的ではないが、一例として、眼科用水性組成物の総量を基準として、界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜5w/v%、より好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%である。
【0058】
より詳しくは、以下の含有割合が例示される。
【0059】
界面活性剤が非イオン界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、非イオン界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜2w/v%、より好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%。
【0060】
界面活性剤が両性界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、両性界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜1w/v%、より好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.1w/v%。
【0061】
界面活性剤が陰イオン性界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、陰イオン界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜2w/v%、より好ましくは0.01〜1w/v%、更に好ましくは0.03〜0.5w/v%。
【0062】
界面活性剤が陽イオン性界面活性剤の場合、眼科用水性組成物の総量を基準として、陽イオン性界面活性剤の含有割合が、総量で、好ましくは0.001〜1w/v%、より好ましくは0.005〜0.5w/v%、更に好ましくは0.01〜0.1w/v%。
【0063】
(5)その他の成分
本発明の眼科用水性組成物は、上記した(A)成分、(B)成分、及び(C)成分を含有するものであるが、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、種々の薬理活性成分や生理活性成分を適宜選択して、含有することができる。
【0064】
更に、本発明の眼科用水性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲であれば、その用途や製剤形態に応じて、常法に従い、様々な添加物を適宜選択して、含有することができる。
【0065】
(6)眼科用水性組成物のpH
本発明の眼科用水性組成物によれば、テルペノイドを含有する水性組成物中に、塩化亜鉛と共に、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することによって、広いpH範囲において、容器へのテルペノイドの吸着を抑制することができ、更に、ヒスタミン遊離抑制効果の増強、目やにの抑制などの作用が付与される。従って、本発明の眼科用水性組成物のpH値については、医薬上、薬理学的に(製薬上)又は生理学的に許容される範囲内であれば特に限定されるものではなく、具体的な眼科用水性組成物の用途、製剤形態、使用方法などに応じて適宜決めることができる。本発明の眼科用水性組成物のpHの一例として、3.5〜9.5、好ましくは3.8〜9.0、より好ましくは4.2〜8.8、更に好ましくは4.5〜8.5となる範囲が挙げられ、特に好ましくは、5.0〜8.0である。
【0066】
(7)眼科用水性組成物の調製方法及び用途
本発明の眼科用水性組成物は、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する水性組成物であればよく、製造方法については特に限定はなく、当業者に公知の方法に従って調製することができる。例えば、各成分を適量の精製水に溶解した後に、所定のpH値に調節し、次いで、残りの精製水を加えて容量調整することにより製造することができる。また、必要に応じて、濾過及び滅菌処理をし、容器に充填することもできる。
【0067】
従って、本発明は、別の観点から、水を含む担体に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を添加することを含む、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用、増強されたヒスタミン遊離抑制作用、又は目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物の製造方法を提供するものである。
【0068】
本発明の眼科用水性組成物は、医薬品や医薬部外品等の製剤として使用でき、点眼剤[但し、点眼剤にはコンタクトレンズ装用中に点眼可能な点眼剤を含む]、人工涙液、洗眼剤[但し、洗眼剤にはコンタクトレンズ装用中に洗眼可能な洗眼剤を含む]、コンタクトレンズ用組成物[コンタクトレンズ装着液、コンタクトレンズケア用組成物(コンタクトレンズ消毒剤、コンタクトレンズ用保存剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄保存剤)等]等が含まれる。本発明の眼科用水性組成物の好適な一例として、点眼剤、人工涙液、洗眼剤、コンタクトレンズ装着液が挙げられ、特に好適な例として点眼剤、人工涙液が挙げられる。なお、コンタクトレンズ用組成物として用いる場合には、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズを含むあらゆるコンタクトレンズに適用可能である。
【0069】
本発明の眼科用水性組成物は、任意の容器に収容して提供することができる。本発明の眼科用水性組成物を収容する容器については特に制限されず、当該分野で一般的な容器に使用することができる素材を用いたものであればよく、例えば、ガラス素材及びプラスチック素材(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂)など、目的、用途に応じて適宜選択して用いることができる。また、本発明の眼科用水性組成物を収容する容器は、容器内部を視認できる透明容器であってもよく、容器内部の視認が困難な不透明容器であってもよい。眼科用水性組成物の溶液量の確認、製造工程での異物検査等が容易であることから、特に透明容器が好ましい。ここで、「透明容器」とは、無色透明容器及び有色透明容器の双方が含まれる。
【0070】
本発明の眼科用水性組成物は、特に、従来の眼科用水性組成物ではテルペノイドの吸着が生じ易かったプラスチック容器に収容した際にも、テルペノイドが容器に吸着してテルペノイドの含有量が減少することを顕著に抑制することができる。このため、本発明の眼科用水性組成物は、プラスチック容器に収容して用いる眼科用水性組成物として有用性が高く、特に、テルペノイドが吸着し易いポリエチレンテレフタレート樹脂又はポリエチレン樹脂を素材として含む容器に収容して用いる眼科用水性組成物として有用性が高いものである。
【0071】
更に、本発明の眼科用水性組成物は、1回使いきりタイプの包装形態だけでなく、複数回にわたり投与する形態で包装され、かつ使用者が継続的に使用するマルチドーズの眼科用水性組成物としても、有用である。
【0072】
2.眼科用水性組成物中のテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法
前述した通り、眼科用水性組成物に、(A)テルペノイドと共に、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することにより、該眼科用水性組成物に含まれるテルペノイドが、容器、特に、ポリエチレンテレフタレート製容器などのプラスチック製容器に吸着して該眼科用水性組成物中のテルペン含有量が低下することを抑制することができる。
【0073】
従って、本発明は、眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイドと共に、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種の成分を配合することにより、該眼科用水性組成物中のテルペノイドの容器への吸着を抑制する方法又はテルペノイドの含有量の低下を抑制する方法を提供するものである。
【0074】
本発明は、更に、別の観点から、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用を有する眼科用水性組成物を製造するための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種の使用を提供するものである。
【0075】
更に、本発明は、別の観点から、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用を有する眼科用水性組成物としての、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物の使用を提供するものである。
【0076】
更に、本発明は、別の観点から、テルペノイドの容器への吸着を抑制する作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物を提供するものである。
【0077】
これらの方法、使用及び組成物では、眼科用水性組成物に(A)成分、(B)成分、及び(C)成分が共存すればよく、それらの添加順序は特に限定されない。(A)〜(C)成分としては、本発明の眼科用水性組成物に配合可能なものであればよく、その添加量も本発明の眼科用水性組成物に配合可能な量であればよい。また、該眼科用水性組成物に配合される各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
【0078】
3.ヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法及び目のかゆみを抑制又は治療する方法
更に、前述した通り、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科用水性組成物とすることによって、眼科用水性組成物におけるヒスタミン遊離抑制作用を増強することができる。
【0079】
よって、本発明は、別の観点から、眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、眼科用水性組成物のヒスタミン遊離抑制作用を増強する方法を提供するものである。
【0080】
本発明は、更に、別の観点から、増強されたヒスタミン遊離抑制作用を有する眼科用水性組成物を製造するための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種の使用を提供するものである。
【0081】
更に、本発明は、別の観点から、増強されたヒスタミン遊離抑制作用を有する眼科用水性組成物としての、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物の使用を提供するものである。
【0082】
更に、本発明は、別の観点から、増強されたヒスタミン遊離抑制作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物を提供するものである。
【0083】
また、前述した通り、本発明の眼科用水性組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で該組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることによって、ヒスタミンの遊離を抑制する作用が増強され、その結果、抗ヒスタミン作用が増強されて、目のかゆみを抑制又は治療することができる。
【0084】
従って、本発明は、更に、別の観点から、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目のかゆみを抑制又は治療する方法を提供するものである。
【0085】
これらの方法、使用及び組成物では、眼科用水性組成物に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種が共存するのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種としては、本発明の眼科用水性組成物に配合可能なものであればよく、その添加量も本発明の眼科用水性組成物に配合可能な量であればよい。また、該眼科用水性組成物に配合する各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
【0086】
4.目やにを抑制する方法
更に、前述した通り、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科用水性組成物とすることによって、該眼科用水性組成物に目やにを抑制する作用を付与することができる。
【0087】
よって、本発明は、別の観点から、眼科用水性組成物中に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を配合することを含む、眼科用水性組成物に目やにを抑制する作用を付与する方法を提供するものである。
【0088】
本発明は、更に、別の観点から、目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物を製造するための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種の使用を提供するものである。
【0089】
更に、本発明は、別の観点から、目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物の使用を提供するものである。
【0090】
更に、本発明は、別の観点から、目やにの抑制作用を有する眼科用水性組成物としての使用のための、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物を提供するものである。
【0091】
また、前述した通り、本発明の眼科用水性組成物を点眼剤、洗眼剤などとして用いて、点眼、洗眼などの方法で該組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることによって、目やにを抑制することができ、例えば、目の開け易さ、まばたきのし易さ、目のかすみ又は美観などを改善することができる。
【0092】
従って、本発明は、更に、別の観点から、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種を含有する眼科用水性組成物を角膜及び/又は結膜に接触させることを含む、目やにを抑制する方法を提供するものである。
【0093】
これらの方法、使用及び組成物では、眼科用水性組成物に、(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種が共存すZるのであれば、それらの添加順序は特に限定されない。(A)テルペノイド、(B)塩化亜鉛、並びに(C)セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール及びデキストランからなる群より選択される少なくとも1種としては、本発明の眼科用水性組成物に配合可能なものであればよく、その添加量も本発明の眼科用水性組成物に配合可能な量であればよい。また、該眼科用水性組成物に配合する各成分の種類や含有量、その他に配合される成分の種類や含有量、該組成物の製剤形態などは、本発明の眼科用水性組成物と同様である。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例及び試験例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例等によって限定されるものではない。
【0095】
試験例1
表1に示す組成を有する比較例1及び実施例1〜3の眼科用水性組成物をそれぞれ調製し、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と表記することもある)製の容量10mLの点眼容器にそれぞれ8mLずつ分注して、ノズル(ポリエチレン(以下「PE」と表記することもある)製)及びキャップを装着した。表1における成分含有割合の単位は、w/v%である。
【0096】
次いで、これらの容器を50℃の恒温槽内で1週間静置した。なお、「静置」とは振とうを与えないで放置することを言う。調製直後および50℃下1週間静置後の試験液中のl-メントールの含有量をガスクロマトグラフィーを用いて常法により測定した。
【0097】
この測定結果に基づいて、下記式(1)〜(3)に従って試験液中のl-メントールの吸着率及びl-メントールの吸着抑制率を算出した。結果を下記表1にあわせて示す。
【0098】
残存率(%)=
(50℃下1週間静置後のl-メントール含有量/調製直後のl-メントール含有
量)×100 …式(1)
l-メントールの容器への吸着率(%) = 100(%)−残存率(%)…式(2)
l-メントールの吸着抑制率(%)=
(比較例1の吸着率(%)−吸着率(%))÷(比較例1の吸着率(%))×100
…式(3)
【0099】
【表1】
【0100】
表1における比較例1と実施例1〜3の結果から明らかなように、l−メントールを含有する眼科用水性組成物に、塩化亜鉛と共にヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はポリエチレングルコール400を配合した場合(実施例1〜3)には、l-メントールの容器への吸着率が大きく低下し、吸着抑制効果が向上した。
【0101】
試験例2
表2に示す組成を有する比較例1、比較例2、実施例1、実施例3〜5の各眼科用水性組成物をそれぞれ調製し、PET製の容量10mLの点眼容器にそれぞれ8mLずつ分注して、ノズル(PE製)及びキャップを装着した。
【0102】
【表2】
【0103】
次にこれらの容器を60℃の恒温槽内で1週間静置した。調製直後および60℃下1週間静置後の試験液中のl-メントールの含有量を、ガスクロマトグラフィーを用いて常法により測定した。
【0104】
これらの測定値に基づいて、試験例1における式(2)及び(3)と、下記式(4)に従って、試験液中のl-メントールの残存率及び吸着抑制率を算出した。
図1に、吸着抑制率の算出結果を示す。
【0105】
残存率(%)=
(60℃下1週間静置後のl-メントール含有量/調製直後のl-メントール含有
量)×100 …式(4)
l−メントールを含有する眼科用水性組成物に、塩化亜鉛と共に、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デキストラン70又はポリエチレングルコール400を配合することによって、容器へのl−メントールの吸着は顕著に抑制された(実施例1、3、4及び5)。
【0106】
これに対して、実施例1の塩化亜鉛に代えて硫酸亜鉛を配合した比較例2の試験液では、容器へのl−メントールの吸着が抑制されず、かえって、容器へのl−メントールの吸着量が増加した。
【0107】
これらの結果から、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール又はデキストランと、塩化亜鉛とを併用する場合には、容器へのl−メントールの吸着が抑制されるが、塩化亜鉛に代えて硫酸亜鉛を配合した場合(比較例2)には、 かえってl−メントールの吸着が増加することが明らかとなった。
【0108】
従って、本発明組成物による容器へのl−メントールの吸着抑制効果は、亜鉛化合物として塩化亜鉛を用いた場合の特有の効果であることが明らかとなった。
【0109】
試験例3
表3に示す組成を有する比較例3〜5及び実施例6〜7の眼科用水性組成物をそれぞれ調製し、PET製の容量10mLの点眼容器にそれぞれ8mLずつ分注して、ノズル(PE製)及びキャップを装着した。
【0110】
【表3】
【0111】
次に50℃の恒温槽内で1週間静置した。調製直後および50℃下1週間静置後の試験液中のl-メントールの含有量をガスクロマトグラフィーを用いて常法により測定した。
【0112】
これらの測定結果に基づいて、試験例1における式(1)及び(2)と、下記式(5)に従って、試験液中のl-メントールの吸着抑制率を算出した。
図2に吸着抑制率の算出結果を示す。
【0113】
l-メントールの吸着抑制率(%)
={ (比較例3の吸着率(%)−吸着率(%))÷(比較例3の吸着率(%) }×100
…式(5)
l−メントールを含有する眼科用水性組成物に、塩化亜鉛と、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロースを配合することによって、容器へのl−メントールの吸着は顕著に抑制された(実施例6及び7)。これに対して実施例7における塩化亜鉛に代えて、硫酸亜鉛を配合した比較例4では、容器へのl−メントールの吸着が抑制されず、かえって、容器へのl−メントールの吸着が増加した。また、実施例6の試験液に配合したヒドロキシエチルセルロース及び実施例7の試験液に配合したヒドロキシプロピルメチルセルロースに代えて、増粘剤であるキサンタンガムを配合した比較例5の試験液においては、容器へのl−メントールの吸着が抑制されず、かえって、容器へのl−メントールの吸着が増加した。
【0114】
これらの結果から、亜鉛化合物として塩化亜鉛を用いた眼科用水性組成物に、セルロース系高分子化合物、ビニル系高分子化合物、ポリエチレングリコール又はデキストランという特定の成分を更に併用することによって、容器へのl−メントールの吸着を抑制する効果が顕著に奏されることが確認できた。
【0115】
試験例4
表4に示す組成を有する比較例6〜7及び実施例8の眼科用水性組成物をそれぞれ調製し、ポリエチレン(PE)製の容量10mLの点眼容器にそれぞれ8mLずつ分注して、ノズル(PE製)及びキャップを装着した。
【0116】
【表4】
【0117】
次に、恒温槽内で50℃及び60℃のそれぞれの温度で1週間静置した。調製直後および50℃又は60℃下1週間静置後の試験液中のl-メントールの含有量をガスクロマトグラフィーを用いて常法により測定した。
【0118】
その結果、PE製の点眼容器に充填した場合にも、50℃又は60℃で1週間静置後のl-メントールの含有量は、塩化亜鉛及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まない比較例6の試験液、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含まない比較例7の試験液と比較して、塩化亜鉛とヒドロキシプロピルメチルセルロースを同時に含む実施例8の試験液では有意に高く、PE製の容器においても、l−メントールの吸着を抑制することが明らかとなった。
【0119】
試験例5(テルペノイドの吸着抑制)
表5に示す処方に従って試験液を調製し、試験例1と同様の方法にて、テルペノイド(l−メントール又はd-ボルネオール)の含有量を測定し、式(4)に従い、テルペノイドの試験液中の残存率を算出した。また、式(2)及び下記式(6)に従い、容器へのテルペノイドの吸着抑制率を算出した。結果を表5に併せて示す。
【0120】
ここで、「対応する比較例」とは、具体的には、亜鉛化合物を含有せず、それ以外の成分の組成及びpHが同一である眼科用水性組成物、又は亜鉛化合物と(C)成分を含有せず、それ以外の成分の組成及びpHが同一である眼科用水性組成物を指す。具体的には、実施例9に対応するものは比較例8、実施例10に対応するものは比較例9、実施例11に対応するものは比較例10である。
【0121】
テルペノイドの吸着抑制率(%)
={1−(実施例の吸着率(%)÷対応する比較例の吸着率(%))}×100
・・・式(6)
【0122】
【表5】
【0123】
表5から明らかなように、塩化亜鉛、テルペノイド、及び(C)成分(ヒブロメロース又はヒドロキシエチルセルロース)を含有する眼科用水性組成物(実施例9〜11)は、塩化亜鉛を含有することなく、テルペノイドを含有する眼科用水性組成物(比較例8)、及び塩化亜鉛を含有することなく、テルペノイドと(C)成分(ヒブロメロース又はヒドロキシエチルセルロース)を含有する眼科用水性組成物(比較例9及び10)と比較して、メントールの容器への吸着が顕著に抑制された。
【0124】
試験例6(ヒスタミン遊離抑制)
10容量%ウシ胎児血清(インビトロジェン社製)を添加したDMEM培地(インビトロジェン社製)に懸濁したラット好塩基球細胞株(RBL-2H3)を1.4×10
5cells/cm
2の密度で96ウェルマイクロタイタープレート(コーニング社製)に播種し、37℃、5%CO
2下で24時間培養した。その後、培養上清を吸引除去し、表6〜8に示す試験液を1ウェル当たり0.1mlずつ添加し、1.5時間、37℃、5%CO
2下でインキュベートした(操作1)。なお、PIPES緩衝液としては以下を用いた。PIPES緩衝液:pH7.2、組成:0.1w/v%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)、CaCl
2・2H
2O 3.0mM、MgCl
2・6H
2O 0.40mM、KCl 7.38mM、NaCl 118.93mM、D(+)-Glucose 5.60mM、25mM PIPES(Piperazine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid)、同仁化学研究所製。
【0125】
その後培養上清を吸引除去し、表6〜8に示す試験液に、さらに10μMとなるようにA23187(試薬:シグマ社製)を加え、1ウェル当たり0.2mlずつ添加し、更に30分間、37℃、5%CO
2下でインキュベートした(操作2)。
【0126】
各ウェルの上清を回収し、ヒスタミンの濃度をELISAキット(Oxford Biochemical Research社製)を用いて定量した。
【0127】
また、コントロールとして、操作1において、試験液に代えてPIPES緩衝液を用い、操作2において、A23187を加えた試験液に代えて、A23187を加えたPIPES緩衝液を用いた以外は、上記した方法と同様にして試験を行い、ヒスタミン濃度を定量した。
【0128】
さらに、ブランクとして、操作2において、A23187を添加しないPIPES緩衝液を用いた以外は、コントロールと同様にして試験を行い、ヒスタミン濃度を定量した。
【0129】
各試験液およびコントロールのヒスタミン濃度から、ブランクのヒスタミン濃度を差し引いた値を、それぞれ各試験液の真のヒスタミン濃度およびコントロールの真のヒスタミン濃度とした。得られた各試験液の真のヒスタミン濃度とコントロールの真のヒスタミン濃度を用いて、下記式(7)に従ってヒスタミン遊離抑制率(%)を算出した。
ヒスタミン遊離抑制率(%)=
{1−(各試験液の真のヒスタミン濃度÷コントロールの真のヒスタミン濃度
)}x100 …… (7)
なお、試験に用いた成分の規格としては、塩化亜鉛は和光純薬製(試薬)、l−メントールは和光純薬製(試薬)である。
【0130】
【表6】
【0131】
【表7】
【0132】
【表8】
【0133】
表6〜8から明らかなように、塩化亜鉛のみを含有する試験液を用いた比較例11では僅かにヒスタミン遊離抑制作用を示したが、(C)成分のみを含有する試験液を用いた比較例12〜16では、ヒスタミン遊離抑制効果がむしろ低下する傾向にあった。また、(C)成分に加えてメントールを含有する試験液を用いた比較例17〜21でも、ヒスタミン遊離抑制効果の向上は殆ど見られなかった。
【0134】
これに対して、塩化亜鉛、(C)成分及びメントールを含有する試験液を用いた実施例12〜16においては、ヒスタミン遊離抑制効果は顕著に改善され、高いヒスタミン遊離抑制効果を示した。
【0135】
試験例7(目やに抑制試験)
表9に示す処方に従って試験液を調製し、PET製の点眼容器に充填し、試験サンプルとした。被験者は、2種類の試験サンプルを1セットとし、一方の試験サンプルを右眼に、他方を左眼に、1日1セット、1日5回、1回2滴ずつ点眼した(n=10)。尚、1種類の試験サンプルは、常に同一眼に点眼し、各回の点眼間隔は、1時間以上とした。5回目の点眼から2時間以上後に、被験者が自覚する目やに量をビジュアルアナログスケール法(VAS法)にて評価した。すなわち、10cmの直線において、直線の左端、すなわち0cmの点を「目やにが全くない」とし、直線の右端、すなわち10cmの点を「過去に経験した最大の目やに量」とし、各試験サンプル点眼後の眼において自覚する目やに量に相当する直線上の一点を被験者に示してもらい、0cmの点からの距離(cm)を測定して、目やに量の点数とした。結果を表9に併せて示す。表9における成分含有割合の単位は、w/v%である。
【0136】
【表9】
【0137】
表9から明らかなように、塩化亜鉛及びメントールを含有し、更に(C)成分としてヒドロキシエチルセルロースを含有する実施例17の試験液では、目やに量の顕著な抑制効果が認められた。