特許第6243016号(P6243016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243016回転対称の金属構造部品を生産する方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243016
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】回転対称の金属構造部品を生産する方法および装置
(51)【国際特許分類】
   B21H 1/00 20060101AFI20171127BHJP
   B21H 7/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B21H1/00 A
   B21H1/00 B
   B21H7/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-520438(P2016-520438)
(86)(22)【出願日】2014年6月17日
(65)【公表番号】特表2016-524541(P2016-524541A)
(43)【公表日】2016年8月18日
(86)【国際出願番号】EP2014062685
(87)【国際公開番号】WO2014202581
(87)【国際公開日】20141224
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】102013106268.7
(32)【優先日】2013年6月17日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510041496
【氏名又は名称】ティッセンクルップ スチール ヨーロッパ アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Steel Europe AG
(73)【特許権者】
【識別番号】501142663
【氏名又は名称】ヴェーエフ−マシーネンバウ ウント ブレッヒフォルムテヒニック ゲーエムベーハー ウント ツェーオー コマンディットゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゴフェルト
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン マルケンパー
(72)【発明者】
【氏名】スザンネ ブリンケッテラー
【審査官】 石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04712409(US,A)
【文献】 特開2000−018234(JP,A)
【文献】 特開昭60−166136(JP,A)
【文献】 特開昭58−199633(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21H 1/00
B21H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランク(4)が耐ねじれ性を有するように第1のレセプタクル(2)上に配置され、前記レセプタクル(2)は回転軸(D)の周りを回転し、そうすることで前記ブランク(4)はこの回転軸(D)の周りを回転させられる、金属製の、具体的には鋼製の回転対称の構造部品(1、12)を生産する方法であって、前記回転対称の構造部品(1、12)または前記構造部品のプリフォームの展開状態の外部輪郭を少なくとも部分的に有する輪郭を有する少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)は、同期回転する前記ブランク(4)の表面に対して接線方向に移動され、前記直動形成要素(6、7、8、9)は同時に前記ブランク(4)に押圧され、そうすることで、前記接線方向に移動する間に、前記直動形成要素(6、7、8、9)の前記輪郭が前記ブランク(4)に少なくとも部分的に成形され、連結シャフトおよびリンク外側部分を有する連結リンクのキングピンまたはリンクピン(1、12)が生産され、少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)によって、前記ブランクのための前記レセプタクル(2)の輪郭は、成形された前記ブランクの内部輪郭として成形される、方法。
【請求項2】
前記ブランク(4)は、回転軸方向において少なくとも2つのセグメント(8a、8b、8c、9a、9b、9c)に細分された直動形成要素(8、9)によって変形され、前記直動形成要素(8、9)の前記セグメント(8a、8b、8c、9a、9b、9c)は、前記ブランク(4)の異なる軸方向区分(4a、4b、4c)と関連付けられ、前記関連のセグメントの輪郭は、前記ブランク(4)の前記それぞれの軸方向区分(4a、4b、4c)に成形されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記直動形成要素(8、9)の前記輪郭が前記ブランク(4)に成形される間は、前記直動形成要素(8、9)の個々のセグメント(8a、8b、8c、9a、9b、9c)の前記接線方向の速度は互いに異なることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブランクの互いに反対側で前記ブランクと係合している2つの直動形成要素(6、7、8、9)を用いて前記ブランク(4)に前記外部輪郭を成形することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
回転対称の予備成形されたブランク(4)が成形されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記回転対称のブランクは、少なくとも1つのロールを用いた転造加工によって第2の回転可能なレセプタクル上に予備成形されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
少なくともさらなる回転可能なレセプタクル上では、完成構造部品の前記内部輪郭および前記外部輪郭を、前記ブランクの前記回転軸に対して接線方向に移動する少なくとも1つのさらなる直動形成要素を用いて、予備成形された構造部品に少なくとも部分的に最終成形することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
回転軸の周りを回転可能な金属製のブランクのためのレセプタクル(2)と、ブランク(4)に輪郭を成形できる変形手段(6、7、8、9)とを備えた、具体的には請求項1〜のいずれか一項に記載の方法を実行するための、金属製の、具体的には鋼製の回転対称の構造部品(1、12)を前記ブランク(4)から生産する装置であって、前記回転対称の構造部品(1、12)または前記構造部品のプリフォームの展開状態の外部輪郭を輪郭として少なくとも部分的に有する少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)が設けられ、前記少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)を回転ブランク(4)に対して接線方向にかつ同期するように移動させる手段が設けられ、さらに、前記少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)から前記回転ブランク(4)に力を加える手段が存在し、そうすることで、前記少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)の前記輪郭は前記ブランク(4)に少なくとも部分的に成形され、連結シャフトおよびリンク外側部分を有する連結リンクのキングピンまたはリンクピン(1、12)が生産され、前記ブランクのための前記レセプタクル(2)は、前記直動形成要素の前記輪郭を前記ブランク(4)に少なくとも部分的形成する際に前記キングピンまたはリンクピン(1、12)の前記リンク外側部分の内部輪郭として少なくとも部分的に成形される輪郭を有する、装置。
【請求項9】
前記少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)を移動させる手段として、前記回転ブランクに対して少なくとも接線方向にかつ同期するように移動可能な、前記少なくとも1つの直動形成要素のための少なくとも1つのレセプタクル(10、11)が設けられることを特徴とする、請求項に記載の装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの直動形成要素(8、9)は、前記回転軸方向において、前記ブランクの異なる軸方向区分(4a、4b、4c)と関連付けられた少なくとも2つのセグメント(8a、8b、8c、9a、9b、9c)に細分されることを特徴とする、請求項またはに記載の装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの直動形成要素(8、9)の個々のセグメント(8a、8b、8c、9a、9b、9c)または前記それぞれの直動形成要素(8、9)の前記接線方向の移動速度を変更する手段が設けられることを特徴とする、請求項10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
少なくとも1つの直動形成要素の少なくとも1つのセグメント(8b、8c、9b、9c)が、前記直動形成要素の前記レセプタクルに対して前記セグメントを移動させる手段を有することを特徴とする、請求項11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
転ブランクの両側において前記ブランク(4)とまたは予備成形された構造部品と係合する直動形成要素(6、7、8、9)が2つ設けられることを特徴とする、請求項12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
予備成形装置が設けられ、前記予備成形装置は金属製のブランク(4)のためのさらなる回転可能なレセプタクルを有し、転造加工手段(5)が設けられ、前記さらなる回転可能なレセプタクル上に配置された前記ブランクは前記転造加工手段(5)を用いて回転対称になるように予備成形できることを特徴とする、請求項13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
最終成形装置が設けられ、前記最終成形装置は、前記回転対称の構造部品の前記展開状態の外部輪郭を少なくとも部分的に有する少なくとも1つの直動形成要素を備え、前記少なくとも1つの直動形成要素(6、7、8、9)を予備成形された回転構造部品に対して接線方向にかつ同期するように移動させる手段が設けられ、さらに、前記少なくとも1つの直動形成要素から前記予備成形された回転構造部品に力を加える手段が存在し、そうすることで、前記予備成形された構造部品を最終成形できることを特徴とする、請求項14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブランクが耐ねじれ性を有するように第1のレセプタクル上に配置され、そのレセプタクルは回転軸の周りを回転し、そうすることでブランクはこの回転軸の周りを回転させられる、金属製の、具体的には鋼製の回転対称の構造部品を生産する方法に関する。さらに、本主題は、金属製の、具体的には鋼製のブランクのための、回転軸の周りを回転可能なレセプタクルと、ブランクに輪郭を成形できる成形手段とを備える、金属製の、具体的には鋼製の回転対称の構造部品をブランクから生産する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製の回転対称の構造部品が、具体的には連結リンクのキングピンまたはリンクピンが、平行に延びていない押し込み係合回転軸によって互いにつながるように、例えば回転運動を伝達するために用いられる。好ましくは、リンクピンは金属から、具体的には鋼から生産される。リンクピンまたはキングピンは通常、連結シャフトおよびベル形のリンク外側部分を有し、そのリンク外側部分は押し込み係合手段を収容するように内側輪郭を有する。したがって、キングピンまたはリンクピンの生産の際には、例えば連結シャフトの領域に外側輪郭を成形しなければならず、例えばリンク外側部分の領域に内側輪郭を成形しなければならない。満足な機能を実行するためには、キングピンおよびリンクピンだけでなく他の回転対称の構造部品も、その形状において特に高い精度を有しなければならない。例えば、リンク外側部分の場合は、内側輪郭にボールケージを固定するためにアンダーカットが設けられることが多い。しかし、同時に、ボールトラックも設けなければならず、そのボールトラックでは、ボールは移動可能になるように配置され、力を伝達するにもかかわらず、回転運動の伝達では様々な角度を可能にする。さらに、金属ブランクが回転可能なレセプタクル上に配置され、回転させられ、被動ロールまたは自由回転ロールによって転造加工される、転造加工法を用いて、鋼製の回転対称の構造部品を生産することが知られている。しかし、特に複雑な形状を成形する工程の場合は、転造加工を用いることが正確度および工程所要時間の点で最適の解決策を提供するわけではないことが分かっている。
【0003】
このような背景から、本発明の目的は、金属製、具体的には鋼製であり、複雑な形状でもある、回転対称の構造部品を十分な正確度でかつ工程所要時間を短縮して生産できる、回転対称の構造部品を生産する方法および装置を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の教示によれば、前述の目的は、回転対称の構造部品またはその構造部品のプリフォームの展開状態の外部輪郭を少なくとも部分的に有する輪郭を有する少なくとも1つの直動形成要素が、同期回転ブランクの表面に対して接線方向に移動され、その直動形成要素は同時にブランクに押圧され、そうすることで、接線方向に移動する間に、形成要素の輪郭は少なくとも部分的にブランクに成形される方法によって達成される。
【0005】
生産される構造部品または生産される構造部品のプリフォームの、展開状態の平坦な輪郭に対応する形成輪郭を有する直動形成要素を用いることによって、回転対称の構造部品またはその構造部品のプリフォームの成形および形成は、より短い工程所要時間およびより高い正確度で実現されることが分かっている。ブランクと直動形成要素とが同期移動することにより、形成要素の輪郭はブランクに転写され、回転対称の構造部品が生産される。この場合、輪郭の成形手順は転造加工と似ており、したがって、特に高い正確度が保証される。生産される構造部品またはその構造部品のプリフォームの輪郭を非常に高い精度で直動形成要素に組み込みできることにより、この展開状態の輪郭を回転ブランクに非常に正確に転写することも可能になり、それにより、非常に複雑な形状も回転ブランクに転写することができる。さらに、回転対称の構造部品またはそのプリフォームの展開状態の輪郭を有する直動形成要素は、例えば対応する輪郭による転造加工よりも単純に生産することができる。
【0006】
その方法の第1の構成によれば、ブランクは、回転軸方向において少なくとも2つのセグメントに細分された直動形成要素によって変形され、その形成要素のセグメントはブランクの異なる軸方向区分と関連付けられ、関連のセグメントの輪郭はそれぞれの軸方向区分に成形される。このようにして、ブランクの様々な軸方向区分に、例えばブランクの直径が異なる区分に、異なる輪郭を並行して組み込むことができる。さらに、形成要素をセグメントに分割することにより、例えば製品を入れ替える場合に、単にセグメントを交換することによって、回転対称の構造部品の軸方向区分の形状の変更を簡単に考慮に入れることができる。
【0007】
さらなる構成によれば、形成要素の輪郭を形成する間は形成要素の個々のセグメントの接線方向の速度が確実に互いに異なることによって、異なるように構築された輪郭をブランクのそれぞれの軸方向区分に成形することができる。こうした対策により、ブランクの軸方向区分の様々な直径に関して輪郭を成形する間のブランクの互いに異なる通過速度を考慮に入れることが可能である。
【0008】
さらなる構成によれば、ブランクの互いに反対側でブランクと係合している2つの直動形成要素を用いてブランクに輪郭を成形する場合は、互いに反対側に配置された形成要素が結果として互いに相互補償する力をブランクに加えるので、回転可能なレセプタクルの機械的荷重を最小限に抑えることができる。このようにして、回転可能なレセプタクルが負担する荷重が低減される。同時に、形成要素を2重に用いることにより、変形中の動作速度の上昇が実現される。
【0009】
好ましくは、さらに、少なくとも1つの形成要素によってブランクのレセプタクルの輪郭が、成形されるブランクの内部輪郭として成形されることから、ブランクに内部輪郭を生産することができる。例えば、ブランクのレセプタクルは、直動形成要素によってブランク内に単純な手法で成形できる、リンクピンのリンク外側部分の内部輪郭を有することができる。
【0010】
その方法のさらなる構成によれば、回転対称の予備成形されたブランクが成形されることで追加の成形段階を避けることができる。
【0011】
好ましくは、連結シャフトおよびリンク外側部分を有する連結リンクのキングピンまたはリンクピンが生産される。本発明による方法の利点は、回転対称の内部輪郭はキングピンまたはリンクピンのリンク外側部分に生産しなければならず、連結シャフトの回転対称の押し込み係合手段も高い精度で生産しなければならないので、キングピンまたはリンクピンの生産において特に効果的に利用することができる。さらに、好ましくは様々なセグメントに細分された直動形成要素を用いることにより、キングピンまたはリンクピンの異なる軸方向区分を並行して形成することが可能である。
【0012】
回転対称の構造部品の生産の際の工程所要時間は、ある構成によれば、回転対称のブランクが、少なくとも1つのロールを用いた転造加工によって第2の回転可能なレセプタクル上に予備成形されることから、さらに短縮することができる。好ましくは、直動形成要素を用いた予備成形されたブランクのさらなる変形と並行して予備成形の段階を実行できることにより、直動形成要素によって取り入れられる変形の程度は全体的に低減させることができる。この場合、ロールは自由に回転または駆動できる。
【0013】
さらなる構成によれば、さらなる回転可能なレセプタクル上では、完成構造部品の内部輪郭および外部輪郭を、ブランクの回転軸に対して接線方向に移動する少なくとも1つのさらなる直動形成要素を用いることによって、予備成形された構造部品に少なくとも部分的に最終成形できることから、金属製の、具体的には鋼製の回転対称の構造部品の生産能力のさらなる改善が実現される。こうした対策により、構造部品の生産工程は、転造加工によるブランクの任意選択の予備成形、外部輪郭および任意選択で内部輪郭を有する予備成形された構造部品の生産、およびその予備成形された構造部品を用いた構造部品の最終成形に細分される。3つの動作段階が、すなわち、ブランクの予備成形、構造部品の予備成形、および構造部品の最終成形が全て並行して、例えば計3つの回転可能なレセプタクル上で実行される場合は、その方法の生産能力は有意に向上させることができる。
【0014】
さらに、その方法は、その材料が熱間成形されるかまたは熱間成形の温度で転造加工が実行されることから、より強度の高い材料を用いるときに改善することができる。このために、ブランクは、好ましくは誘導的に、400℃から1100℃の温度に、好ましくは材料のACの温度を超える温度またはACの温度を超える温度に加熱され、所望の温度で成形される。しかし、例えば、対応する温度における熱間成形は、リンク部品の部分的領域、例えばハブもしくはベルに対してのみ、またはケージ、ボールもしくはローラトラックを成形するために採り入れることもできる。成形の後には硬化が続くことができ、その硬化は、部分領域にのみ及ぶこともできるか、または構造部品全体を含むことができる。熱間成形する場合、高強度の材料にクラックが発生する危険性を低下させることができる。
【0015】
本発明のさらなる教示によれば、前述の目的は、金属製の、具体的には鋼製の回転対称の構造部品を生産する装置であって、回転対称の構造部品またはその構造部品のプリフォームの展開状態の外部輪郭を輪郭として少なくとも部分的に有する少なくとも1つの直動形成要素が設けられ、少なくとも1つの形成要素を回転ブランクに対して接線方向にかつそれと同期するようにして移動させる手段が設けられ、さらに、少なくとも1つの直動形成要素から回転ブランクに力を加える手段が存在し、そうすることで、少なくとも1つの直動形成要素の輪郭はブランクに少なくとも部分的に成形される、装置によっても達成される。
【0016】
すでに言及したように、直動形成要素を用いることにより、ブランクの回転に対して接線方向にかつブランクの回転と同期された移動によって、回転軸上で回転するブランクに複雑な形状を取り入れるための単純な形成を実現可能であるとことが分かっている。
【0017】
少なくとも1つの直動形成要素を移動させる手段として、回転ブランクに対して少なくとも接線方向にかつそれと同期するように移動可能な、少なくとも1つの直動形成要素のための少なくとも1つのレセプタクルが設けられる場合は、単に直動形成要素を交換することによって、その装置は回転対称の構造部品の他の形状を作るように変換することができる。
【0018】
形成要素の輪郭をブランクに少なくとも部分的に成形する際に構造部品の内部輪郭として、ブランクのレセプタクルが少なくとも部分的に形成される輪郭を有する場合は、キングピンまたはリンクピンを例えば単純な手法で生産することができる。内部輪郭は、例えばキングピンまたはリンクピンのリンク外側部分の内部輪郭は、ブランクのレセプタクルの輪郭と関連して直動形成要素の輪郭を形成することによって成形される。成形工程は精度が特に高く、したがって、構造部品の内部輪郭および/または外部輪郭も精度が特に高くなる。
【0019】
半径が異なることによって回転ブランクの通過速度が互いに異なることを考慮に入れるために、少なくとも1つの直動形成要素は、回転軸方向において、ブランクの異なる軸方向区分と関連付けられた少なくとも2つのセグメントに細分することが可能である。ブランクの異なる軸方向区分は、例えば異なる半径を有することができ、そうすることで、少なくとも1つの形成要素の異なるセグメントは展開状態の異なる輪郭を有することができる。このようにして、形成の自由度をさらに高めることができ、同時に、少なくとも1つの直動形成要素のモジュール式の構成が実現される。
【0020】
少なくとも1つの形成要素の個々のセグメントまたはそれぞれの形成要素の接線方向の移動速度を変更する手段が設けられる場合は、ブランク表面の互いに異なる通過速度を考慮に入れ、これを予備成形された構造部品のブランクに組み込むことが可能である。例えば、このことは、構造部品の軸方向区分が特に小さい直径を有し、そのためブランクが回転する時の通過速度が比較的低くなる場合に必要になることがある。ここでこの軸方向区分と関連付けられた少なくとも1つの形成要素のセグメントは、形成を改善するために、例えば、例えば大径で通過速度の高い軸方向区分のために設けられるセグメントとは異なる接線方向速度を有することができる。具体的には、セグメントの接線方向の移動速度を変更する手段により、セグメントの輪郭には構造部品に様々な輪郭を確実に生成可能にすることができる。
【0021】
形状の成形のためにいくつかの形成要素が用いられる場合は、それぞれの形成要素の接線方向の移動速度を変更することにより、それぞれの形成要素を用いてブランクに異なる輪郭を単純な手法で成形することができる。
【0022】
特に好ましくは、少なくとも1つの形成要素の少なくとも1つのセグメントが、形成要素のレセプタクルに対してセグメントを移動させる手段を備え、そうすることで、直動形成要素の少なくとも1つのさらなるセグメントの速度とは関係なく、他のセグメントの速度を変更することができ、それにより、構造部品の特定の輪郭を構造部品の軸方向区分に取り入れることができる。直動形成要素に対して移動させる手段として、例えば、強制案内手段ならびに直動被動移動手段のためのガイドレールを設けることができる。
【0023】
その装置のさらなる構成よれば、回転ブランクの両側においてブランクとまたは予備成形された構造部品と係合する直動形成要素が2つ設けられる。直動形成要素によって加えられる成形の力による回転可能なレセプタクルの荷重の大部分をこの実施形態によって打ち消すことができる。さらに、形成要素を2つ用いることにより、すでに言及したように個々の各直動形成要素はブランクまたは予備成形された構造部品の低減した変形の程度を実現するだけでよいので、生産速度の上昇を実現することができる。
【0024】
その装置のさらなる構成によれば、金属製の、具体的には鋼製のブランクのためのさらなる回転可能なレセプタクルを備え、そのさらなる回転可能なレセプタクル上に配置されたブランクは転造加工ローラ手段を用いて回転対称になるように予備成形できる転造加工手段を含む、予備成形装置が設けられる。この予備成形工程によって、ブランクをほぼ最終の輪郭に予備成形することができ、そうすることで、ブランクはその後、直動形成要素によって、予備成形された構造部品または最終成形された構造部品の輪郭を受容することができる。予備成形装置により、予備成形段階は例えば構造部品に予備成形されたブランクの変形と並行して実行できるので、本発明による装置の能力をさらに向上させることができる。
【0025】
最終成形装置が設けられ、その最終成形装置は、回転対称の構造部品の展開状態の外部輪郭を少なくとも部分的に有する少なくとも1つの直動形成要素を備え、少なくとも1つの直動形成要素を予備成形された回転構造部品に対して接線方向にかつそれと同期するように移動させる手段が設けられ、少なくとも1つの直動形成要素から予備成形された回転構造部品に力を加える追加の手段が存在し、そうすることで予備成形された構造部品を最終成形できることから、装置の能力のさらなる向上が実現される。このような装置により、その方法をさらにブランクの予備成形、構造部品の予備成形および構造部品の最終成形に細分することおよび並列化することを実現することができ、このようにして、個々の変形段階は並行して実現でき、そうすることで能力が全体的に向上する。好ましくは、ブランクのための予備成形装置、構造部品のための予備成形装置および構造部品のための最終成形装置は、予備成形装置から最終成形装置への加工されるブランクの輸送が自動的に実行されるような取り扱いシステムを備える。
【0026】
次に、図面と併せた例示的な実施形態の助けによって本発明をより詳細に示す。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】リンクピンの形態で生産される回転対称の構造部品の例示的な実施形態の断面図である。
図2】ブランクのための回転可能なレセプタクルの第1の例示的な実施形態の平面図である。
図3】ブランクのための予備成形装置の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図4】回転対称の構造部品を生産するための第1の例示的な実施形態の斜視図である。
図5】形状を成形する段階の前の回転対称の構造部品を生産する装置のさらなる例示的な実施形態の概略斜視図である。
図6】形状を成形する段階の後の図5の例示的な実施形態の概略斜視図である。
図7】本発明による方法の例示的な実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
まず、通常は鋼から生産されるキングピンおよび/またはリンクピンの形態の典型的な回転対称の構造部品1が、図1の断面図に示されている。キングピンおよび/またはリンクピンは、他の回転対称の構造部品と同様に、高い正確度の要件を満たさなければならないことが多い。この正確度の要件は、費用対効果の大きい合理的な製造工程であっても満たさなければならない。図1では、生産される構造部品1は、本発明による方法によって生産中に用いられるレセプタクル2上に静止した状態で示されており、本発明による方法によって構造部品1の内部輪郭は外部輪郭の成形中に成形される。
【0029】
図2はレセプタクル2の複雑な設計の平面図を示し、そのレセプタクル2によって、例えばその上に配置される対応するブランク内の回転対称の内部輪郭を取り入れることができる。レセプタクル2は通常、中央に設けられた回転軸の周りを回転する。
【0030】
レセプタクル2は、具体的には、図3の概略斜視図に示されたブランク4を載せるように働く。好ましくは、ブランク4は少なくとも1つの自由回転ロールまたは被動ロール5を用いた転造加工によって予備成形される。任意選択で予備成形することにより、例えばブランクに初期の輪郭を取り入れることができ、そうすることにより、ブランクを例えば4a、4b、4cの軸方向区分に細分する。
【0031】
ここで、図4は本発明による方法の第1の例示的な実施形態を示す。この第1の例示的な実施形態では、少なくとも1つの形成要素、ここでは2つの直動形成要素6、7が回転ブランクに押圧され、同期回転するブランクの表面に対して接線方向に移動され、直動形成要素6、7は、直動形成要素6、7に取り入れられる回転対称の構造部品の展開状態の輪郭がブランク4に取り入れられるようにしてブランクに押圧される。図4の矢印FおよびFは、形成要素6、7がブランク4に加える力の方向を示す。さらに、矢印VおよびVも形成要素の運動の方向を示す。ブランク4は形成要素6、7の移動と同期移動し、そうすることで、回転対称の輪郭をブランクに取り入れることができる。図1に示されるようなブランクのレセプタクルの輪郭により、内部輪郭もブランク本体に同時に取り入れられる。
【0032】
図5および図6は装置および方法のさらなる例示的な実施形態を示す。図5の例示的な実施形態によれば、ブランク4が変形され、回転軸方向Dにおいてそれぞれ3つのセグメントに細分された直動形成要素8、9が用いられる。セグメント8a、8b、8c、9a、9b、9cは、ブランクのそれぞれの軸方向区分4a、4b、4cと関連付けられ、いずれの場合も生産される構造部品の軸方向区分に対応する異なる輪郭を有する。さらに、セグメント8c、8b、9c、9bは、セグメント8a、9aとは関係なく移動可能になるように配置されているのでその接線方向の移動速度を変更することができる。ガイドレールが、さねはぎ連結部13を介してセグメント8a、8b、8c、9a、9b、9cのレセプタクル10、11に対して実行される相対移動を可能にし、その相対移動は、例えば強制案内手段を介してまたは駆動手段を介しても(図示せず)実行することができる。このようにして、形成要素のセグメントの接線方向の移動速度は、いずれの場合も完成構造部品の個々の軸方向区分に必要な輪郭に従って適合することができる。やはり図5から確認できるように、レセプタクル10、11上では、例えばブランクまたは構造部品の軸方向区分の別の輪郭を作るために、少なくとも1つの形成要素のセグメントを単純な手法で交換することができる。図5の例示的な実施形態には、形成要素が、具体的には形成要素8、9のセグメント8a、8b、8c、9a、9b、9cがブランクに押圧される力FおよびFも示されている。さらに、速度の矢印VおよびVは、レセプタクル10および11が回転ブランク4に対して移動する方向を示す。
【0033】
同時に、セグメント8c、8bならびに9c、9bを互いに異なる速度で、例えばレセプタクル10、11に対してVおよびVで移動させることが可能になり、そうすることで、例えば、回転可能なレセプタクル上に配置された、予備成形されたブランク4に押圧することにより、軸方向の異なる形状を成形する動作を実行することができる。具体的には、セグメント8b、8c、9b、9cの速度は、それぞれの軸方向区分に想定される輪郭に適合することができる。
【0034】
図6は、形状を成形する動作の後の図5の例示的な実施形態を概略斜視図に示す。生産されたリンクピン12上ではこのリンクピン12が異なる区分に異なる輪郭を有することをはっきりと理解することができる。図5および図6に示された方法段階は、最終的な形成方法段階としてまたはプリフォームの用意のための方法段階として用いることができ、そうすることで、回転対称の構造部品を生産する際の変形の程度は最終的な形状に応じていくつかの段階に細分される。矢印は、完成した構造部品12を取り出すことができるように直動形成要素8、9のレセプタクル10、11が移動する方向を示す。
【0035】
図7は、この方法の例示的な実施形態を改めて非常に単純化してブロック図の形態で示す。図では、ブランクRが転造加工による第1の予備成形段階Aを受け、予備成形されたブランクは工程段階Bで予備成形された構造部品に変形され、最後に工程段階Cで最終的な形状になるように変形される。工程段階BおよびCでは、いずれの場合も少なくとも1つの直動形成要素を用いて形成要素の輪郭を同期回転ブランクに取り入れる。装置および方法の生産能力を向上させるために、方法段階A、B、Cは、好ましくは、いずれの場合も別々の回転可能なレセプタクルに同時進行で実行される。破線の矢印で示すように、予備成形されたブランクの場合、2つの方法段階のみ、すなわち方法段階Bおよび後続の方法段階Cのみ実行することも考えられる。ブランクが方法段階Cのみを受けることも考えられる。
【0036】
方法段階Cの最後には金属製または鋼製の完成した回転対称の構造部品が生産され、その構造部品は、高い精度を有し、その複雑な形状にもかかわらず単純で合理的な手法で生産することができる。この回転対称の構造部品は、例えば、キングピンおよび/またはリンクピン12とすることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7