【実施例1】
【0021】
本実施例では、計測データ処理システムの例を説明する。
図1(a)は、本実施例の計測データ処理システム100の概略構成図の例である。
図1(a)の計測データ処理システム100は、例えば何らかの物理量を計測する汎用の計測器105と、該計測器の表示画面に対向して位置決められる画像取得手段101と、転送手段112と、計測データ処理装置111から構成される。
【0022】
計測器105は、計測結果を例えばデジタル表示するディスプレイである計測結果表示部104を有し、その計測結果表示部104の上面には、その計測器がいずれの機種の計測器であるのかを計測データ処理システムが識別するために利用する計測器識別媒体102が配置、貼り付けされている。
計測器105は例えば、レーザ距離計、レーザレベル計、デジタルマイクロメータ、デジタルノギス、デジタル棒ゲージなどの寸法計測器、または、時間を計測する時計やストップウォッチなどである。また、屋内や屋外の環境を計測する温度計や湿度計などである。また、体重計、体温計、血圧計などの電子健康モニタである。
計測データ処理システム100は、前記計測器105の計測結果表示部104の上面に配置された計測器識別媒体102も構成要素に含む。
【0023】
計測結果表示部104は例えば、液晶、LED、有機ELを用いたディスプレイである。ディスプレイには計測結果が表示される。液晶ディスプレイでは、背面に光源(バックライト)を設置することで視認性を高める場合がある。また、LED、有機ELディスプレイでは、ディスプレイ自体が光源となり発光する。計測結果の表示方法としては例えば、表示されるブロックの数や大きさで量を示す方法がある。また、数字や文字をデジタル表示する方法がある。デジタル表示方法としては、7セグメント方式、14セグメント方式、ドットマトリックス方式などがある。
【0024】
計測器識別媒体102は例えば、バーコードのような1次元コードやQRコード(登録商標)のような2次元コードである。これらの識別コードを使うことで計測器の識別情報を数字や文字列として保持することができる。また、計測器ごとに異なる特定の記号(星、多角形、丸など)を用いても構わない。
【0025】
画像取得手段101は、計測器105の計測結果表示部104および計測器識別媒体102を撮像し、画像を取得する。画像取得手段101で取得した画像は、転送手段112により計測データ処理装置111に転送される。
画像取得手段101は例えば、
図1(b)に示すようにデジタルカメラやスキャナなどである。画像取得手段101により、計測結果表示部104内を視野に捉えて撮像する。その視野内には、2つの計測器識別媒体102A,102Bが配置され、計測器の計測結果が表示されている。取得した画像の保存形式としては、BMP,PNG,JPEGなどがある。
【0026】
画像取得手段101で取得する画像は、少なくとも画像内に計測結果表示部104に表示される計測結果と計測器識別媒体102とを含む。複数の画像を1組のデータとして計測データ処理装置111に転送してもよい。また、複数の画像を結合して1枚の画像としてもよい。
1枚の画像のみで処理する場合、画像取得、画像転送、画像処理の時間や計算負荷が低減される。また、位置や角度の異なる複数の画像を取得する必要がなく、構成装置が簡素化できる。
【0027】
転送手段112は例えば、電子機器を接続する有線のケーブルであり、RS-232C準拠、USB規格準拠、IEEE1394規格準拠などのシリアル通信手段がある。また、無線で転送する方式として、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、ZigBee、赤外線通信ではIrDAなどの各規格に準拠した通信手段がある。また、画像取得手段101と計測データ処理装置111を同一回路基板上に配置する構成も考えられ、その場合には回路基板上の配線が転送手段112となり得る。
【0028】
計測データ処理装置111は例えば、画像取得手段101が撮像した計測器105の計測結果表示部104の画像データを入力して、画像処理によって計測結果データを認識して出力する画像処理プログラムを実行する計算機である。この計算機は、上記したような画像取得手段101と同一回路基板上に構成されたCPUとメモリと入出力インタフェースを備えた最少構成も考えられるが、各種計測器から計測データを収集して検査帳票を作成して、各種解析、判定を行う管理用計算機に、前記画像処理プログラムを実装して、各種計測器105から計測データを収集する構成も考えられる。
【0029】
図2に概略構成を示す計測データ処理装置は、例えば汎用の計算機上に、他の管理用機能と同居させて、計測データ処理機能を実装した構成を示している。
記憶部130には、本発明に係る計測データ処理プログラムを記憶する領域131、画像処理の各種パラメータを予めデータベースとして記憶しておく解析設定DB132、および画像取得手段が撮像した画像データを格納する撮像画像データ記憶領域133とを有する。
【0030】
制御部120には、記憶部130から読み出した計測データ処理プログラムをCPUにおいて実行して実現する以下の各機能部を備える。
計測器判定部121は、画像取得手段101が撮像した画像データから、計測器識別媒体102を切り出して認識して、計測器105の種別を判定する。
計測結果画像処理部122は、計測器判定部121が判定した計測器の種別情報に従って、解析設定DB132から計測器の種別に応じた画像処理パラメータを読出し、該画像処理パラメータに従って、画像取得手段101が撮像した画像データから、計測器の計測結果表示を切り出して認識して、計測データを作成する。
OCR処理部123は、計測器判定部121または計測結果画像処理部122において、画像取得手段101が撮像した画像データから切り出された領域に対して、OCR処理を実行する。
計測データ出力部124は、計測結果画像処理部122が認識して作成した計測データを、例えば検査帳票データ管理システムへ出力する。
【0031】
入力部140は、例えばキーボード、マウスなどを用いて、予め解析設定DBなどを登録、その他のデータ・指示入力などに使用される。
表示部150は、例えばディスプレイ装置などであり、撮像画像の処理のモニター、計測データを検査帳票テーブルに格納する際の画面表示、解析設定DBの登録処理などに使用される。
通信部160は、画像取得手段101と計測データ処理装置111とを接続する転送手段112の計測データ処理装置側の入出力インタフェースである。
【0032】
図3は、本実施例の計測データ処理システムにおいて、読み取り対象の計測器105に対向させて、画像取得手段101を撮像位置へ位置決めした構成図の断面図の例である。これは、計測器105のディスプレイ画面(計測結果表示部)104に、人手により画像取得手段101を向けた場合、または、固定された画像取得手段101へ向けて計測器105のディスプレイ画面を撮像のために位置決めした状態を想定している。
【0033】
本発明の計測データ処理システム100は、それぞれ異なるメーカから提供されて、異なるデータ出力形式を持つ様々な種類の汎用の計測器を対象として、ディスプレイ画面に表示される計測結果を共通の画像取得手段101によって撮像して、画像処理によって計測結果を認識して、計測データを統一の手段で取得するものです。
それを可能とするため、本発明では
図1(b)に示すように、計測器105に備わっているディスプレイ画面(計測結果表示部)104の表面に計測器識別媒体102A,102Bを適切に配置して、ディスプレイ画面(計測結果表示部)が発する光量を利用して、計測器識別媒体の認識精度を高めたところに特徴がある。
【0034】
本発明の計測データ処理システム100が対象とする汎用の計測器205は、発光する計測結果表示部(ディスプレイ画面)104を有し、計測結果表示部104表面には、複数の計測器識別媒体102A,102Bが配置、貼り付けられている。ここで、計測器識別媒体102A,102Bは、計測器205を識別するための情報をそれぞれ保持する。計測器を識別できる最小限の情報を保持していればよく、計測器識別媒体102A,102Bの保持する全ての情報が完全に一致している必要はない。
【0035】
計測器識別媒体102A,102Bは、計測結果表示部204が発光する光を透過し、光の透過率がそれぞれ異なることを特徴とする。
計測器識別媒体として、例えば、透明なシートに2次元コードを印字した場合、2次元のパターンが印字された箇所は光を透過せず、パターンが印字されていない箇所は透明なままであり光を透過する。光の透過の有無により画像上のパターンと背景を2値化し、2次元コードを認識することができる。この際、複数の計測器識別媒体102A,102Bのそれぞれにおいて、印字するシートを透明度が互いに異なる素材に変えることにより、パターンのない箇所の光の透過率を変えることができる。
【0036】
光源を有する表示部の上に計測器識別媒体102A,102Bを配置することで、計測器識別媒体の視認性が向上し、計測器識別媒体の認識率が向上する。
計測結果表示部104の画面内の表示内容が変わると、光源から計測器識別媒体102に届く光量が変化するため、ある特定の光量で読み取りが最適に出来るように画像取得手段101の位置や角度を設定した場合に、光量の変化により画像上のパターンのない箇所の輝度に変化が生じて、2値化したパターンの輪郭が不明瞭となり、認識率(パターンを正しく認識する割合)が低下する可能性がある。その対策として、光の透過率の異なるシートより作成した計測器識別媒体102を複数配置することで、画像上のパターンと背景との輝度の差異の変化の程度を異ならせることが出来るので、複数個所に配置したいずれか1つの計測器識別媒体102のパターン認識が正しく行われた時に、複数の計測器識別媒体の認識処理が完了したことにする判定方式を採用すると、表示部の光量変化が起こっても、パターン認識が正しく行われる確率が向上して、計測器識別媒体の認識率が向上する。
【0037】
そこで、複数の計測器識別媒体102A,102Bの光の透過率を変える方法として、素材を統一し、厚みのみを変えてもよい。素材を統一することで、コストを低減できる。また、素材、厚みを統一し、識別コードの種類を変えてもよい。例えば、少なくとも同一の計測器識別情報を含む1次元コードと2次元コードをそれぞれ別個に配置することで、パターンが変化し、光の透過率が変化する。また、素材、厚みを統一し、同じ種類の識別コードを用いてパターンの大きさや複雑さを変えてもよい。各識別コードが持つ計測器以外の情報に差を設けることで情報量によって複雑さの異なるパターンを作成することができる。例えば、QRコードを使用する場合は、大きさを変えることの他に、固定のパターン以外の符号のセルを異なるパターンとすることになる。素材、厚みを統一することで、素材のみを統一した場合よりもさらにコストを低減できる。
計測器識別媒体を構成する素材としては、例えばセロファン、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルムなどの透明な合成樹脂フィルムなどが利用できる。
【0038】
図13は、本実施例の計測データ処理装置111における計測データ処理のフローチャートの例である。
例えば、
図16に示すような検査帳票220を表示部140に表示させている検査帳票管理プログラムが計測データ処理装置111で実行されていて(
図2では図示せず)、
図16のデータ欄の第3行目の検査項目H
1(226)の実測値224の欄が空欄となっていてカーソル227が表示されて入力待ちとなっている。この時に、本実施例の計測データ処理プログラムがCALLされ、該当する検査項目H
1(226)を計測する製造現場にある計測器105の計測結果表示部104を撮像するために、画像取得手段101の起動スイッチが入った(例えば検査者がスイッチを入れた時)時点で、本計測データ処理プログラムが実行される。
【0039】
図13のフローチャートに基づく動作は以下のとおりである。
ステップS101において、計測データ処理装置111の計測器判別部121は、転送手段112、通信部150を介して、画像取得手段101で取得した画像データを入力として受け付ける。
【0040】
ステップS102において、計測データ処理装置111の計測器判別部121は、前記入力を受け付けた画像に対して、画像上の計測器識別媒体102の読み取りを実行する。計測器識別媒体102は予め計測器の計測結果表示部の適切な位置に複数個配置されていて、少なくとも1つの計測器識別媒体の認識処理が正常に完了すれば、本判別処理を終了する。本判別処理では、計測器識別コードを特定する。
ステップS103において、ステップS102の計測器識別媒体の判別が正常に出来た場合はステップS104へ、判別が正常に出来なかった場合はステップS108へ進む。
【0041】
ステップS104において、計測データ処理装置111の計測結果画像処理部112は、ステップS102で特定した計測器識別コードの情報に応じて、解析設定DB132から画像処理パラメータを読み出す。
解析設定DB132は、
図15に示すデータテーブル200の形式にて予め作成されている。データテーブル200は、計測データ処理対象201、画像回転205、斜影抽出領域206、矩形抽出領域207、解析条件詳細設定208の各データ項目欄より構成されて、計測器識別コードに対応して、各行の前記各データ項目欄に画像処理パラメータが定義されて、登録されている。
図15では、4種の計測器の画像処理パラメータが登録されている例を示している。
計測結果画像処理部112は、特定された計測器識別コードにより解析設定DB132が検索されて、該当する行の画像処理パラメータが読み出される。
【0042】
ステップS105において、計測結果画像処理部112は、読み出された画像処理パラメータに従って、ステップS101で入力を受け付けた画像を解析し、画像中に含まれる計測結果の認識処理を実行する。本認識処理の詳細を
図14のフローチャートに記載する。
【0043】
ステップS201において、画像回転のパラメータ205に従って、画像角度を調整する。
ステップS202において、画像面は傾斜があることを前提として、画像内の計測結果の数字の領域を大枠で切り出すための4隅のX,Y座標を、解析設定DBデータテーブル200の斜影抽出領域206のパラメータにより設定する。
ステップS203において、ステップS202で4隅の座標を設定した領域を切り出し、画像面の傾斜を補正する。
【0044】
ステップS204において、前記傾斜を補正した画像から、画像内の計測結果の数字の領域をより正確な矩形領域に切り出すための対向する2隅のX,Y座標を、解析設定DBデータテーブル200の矩形抽出領域207のパラメータにより設定する。
ステップS205において、ステップS204で2隅の座標を設定した矩形領域を切り出す。
【0045】
ステップS206において、前記切り出した矩形領域内の計測結果の数字を認識するために、2値化の探索開始閾値を解析設定DBデータテーブル200の探索開始閾値欄209より読み出して、初期閾値に設定する。
ステップS207において、前記設定された閾値により、前記矩形領域の画像を2値化する。
【0046】
ステップS208において、前記2値化された前記矩形領域の画像に対して、解析設定DBデータテーブル200のデジタル表示方法の欄204のパラメータに対応するOCRプログラムを選択して、OCR処理を実行する。
ステップS209において、前記OCR処理の結果、前記矩形領域内の計測結果の数字が全て正常に読出し出来た場合には、本計測結果認識処理を終了する。1つの数字でも正常に読出し出来なかった場合には、ステップS210へ進む。
【0047】
ステップS210において、前記設定された閾値の値を所定の刻み幅で更新する。
ステップS211において、前記更新された閾値が、解析設定DBデータテーブル200の探索終了閾値の欄210に記録されているパラメータの値を越えたら、計測結果の探索をエラー終了して、本計測結果認識処理を終了する。前記更新された閾値が、探索終了閾値を越えていなければ、ステップS207、S208、S209の一連の処理を繰り返し実行する。
【0048】
図13のフローチャートのステップS106に戻り、前記ステップS105の計測結果認識処理において、前記矩形領域内の計測結果の数字が全て正常に認識できた場合はステップS107へ、認識できなかった場合はステップS108へ進む。
【0049】
ステップS107において、計測データ処理装置111の計測データ出力部114は、ステップS102およびステップS105の実行結果に基づき計測データを生成する。計測データは少なくとも、計測器の識別情報と計測結果情報を有する。また、画像のファイル名や形式、保存時間などの画像情報や、画像入力を受け付けた時間、解析に要した時間、解析設定DBの画像処理パラメータを含んでも構わない。
計測データとして、計測器の識別情報と計測結果を合わせて保持することで、計測器を複数保有している場合、どの計測器で測定した計測結果かを一意に特定することができる。
【0050】
ステップS108において、計測データ処理装置111の計測データ出力部114は、ステップS102またはステップS105での実行に失敗した場合にエラーデータを生成する。エラーデータは、エラーを測定者に伝えるための特定の文字列(例えば”Error”など)である。文字列の中身が空(””)でもよく、情報量がなくても構わない。また、画像情報や、解析情報を含んでも構わない。また、ステップS102の実行が成功している場合には、ステップS102で判別した計測器の識別情報を含んでも構わない。
エラーデータとして、計測器の識別情報を含むことで、実行を失敗した箇所がステップS102ではなく、ステップS105であることが明確となり、対策を講じる手助けとなる。
【0051】
ステップS109において、計測データ処理装置111の計測データ出力部114は、ステップS107またはステップS108で生成されたデータを出力し、計測データ処理を終了する。
【0052】
図16に示す検査帳票220の表示画面に戻り、前記検査帳票管理プログラムは、前記計測データ処理装置111の計測データ出力部114の出力を受け取り、計測データの場合には、カーソル227を表示していた実測値の欄に計測データを表示して、その計測結果が目標値222より公差223内に入っているかを判定して、合否225の欄に判定結果を表示する。そして、続いて検査項目H
2の行の実測値の空欄228へカーソルを移動して、再び、本実施例の計測データ処理プログラムをCALLすることになる。なお、カーソル227において、前記計測データ出力部114の出力がエラーデータの場合には、検査帳票管理プログラムは、カーソルを移動せずに、測定者にエラーデータを提示して、再測定、または対策を講じることを促す運用が考えられる。
【0053】
以上の通り、本実施例の計測データ処理システム100は、計測データを出力することで、計測結果を記録する電子化帳票などと組み合わせ、計測結果を自動的に収集する電子化帳票システムの構築が可能である。また、エラーデータを出力することで、測定者に計測結果を読み取れなかったことを示すことが可能である。
【0054】
また、解析結果に応じて、計測データまたはエラーデータを出力することで、電子化帳票システムにおいて、計測データの場合には次の計測結果入力項目に自動で進み、エラーデータの場合には再度同一項目の再計測を受け付けることが可能である。計測データとエラーデータとで電子化帳票システム内での処理フローを分けることで、エラーが発生した場合でも、計測作業のみを繰り返し行えばよい計測システムを構築可能である。例えば、計測器を両手で把持しなければならない場合、計測後、次の計測結果入力項目を自動選択することや、エラーの場合に同一項目を再計測することが可能となり、計測効率が向上し、計測時間が短縮される。
【0055】
なお、本実施例では、計測データ処理プログラムと、検査帳票管理プログラムが同一の計測データ処理装置上で実行される例を説明した。しかし、計測データ処理装置上で実行されるのは計測データ処理プログラムのみであって、検査帳票管理プログラムは他の計算機上で実行される場合でも同様にシステムを構築できる。その場合は、両計算機が通信手段により接続され、計測データ出力部114の出力は、通信部150を介して、他の計算機上の検査帳票管理プログラムへ出力されることになる。