特許第6243057号(P6243057)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243057腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243057
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/36 20060101AFI20171127BHJP
   A61K 9/52 20060101ALI20171127BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20171127BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   A61K47/36
   A61K9/52
   A61K47/42
   A61K47/10
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-552831(P2016-552831)
(86)(22)【出願日】2015年10月6日
(86)【国際出願番号】JP2015005081
(87)【国際公開番号】WO2016056229
(87)【国際公開日】20160414
【審査請求日】2017年2月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-205994(P2014-205994)
(32)【優先日】2014年10月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391010976
【氏名又は名称】富士カプセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100102255
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 誠次
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100188352
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 一弘
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100198074
【弁理士】
【氏名又は名称】山村 昭裕
(74)【代理人】
【識別番号】100145920
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】西村 直樹
(72)【発明者】
【氏名】早野 旭彦
(72)【発明者】
【氏名】下川 義之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 健治
【審査官】 佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−521269(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/145379(WO,A1)
【文献】 特開昭58−172313(JP,A)
【文献】 特開2006−129715(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/146845(WO,A1)
【文献】 特開平5−139958(JP,A)
【文献】 特開平5−031352(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/056230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(a)ゼラチンと、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンとを含有し、50℃における粘度が60〜127mPa・sの腸溶性カプセル皮膜液を調製する工程;
(b)工程(a)で調製した腸溶性カプセル皮膜液を用いて、滴下法によりカプセル内容物を被包する工程;
【請求項2】
ゼラチンのゼリー強度が180〜330Bloomであることを特徴とする請求項1記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項3】
低メトキシペクチンの35℃における2質量%濃度水溶液の粘度が8〜15mPa・sであることを特徴とする請求項1又は2記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項4】
腸溶性カプセル皮膜液が、ゼラチン100質量部に対して低メトキシペクチン10〜20質量部を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項5】
腸溶性カプセル皮膜液の50℃における粘度が70〜110mPa・sであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項6】
低メトキシペクチンのアミド化度が5〜25%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項7】
低メトキシペクチンをグリセリンに分散後温水に溶解し、次いでゼラチンを添加して溶解し、濾過後に静置脱泡することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【請求項8】
腸溶性カプセル皮膜率が9〜30質量%となるように被包することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法に関し、より詳しくは、(a)ゼラチンと、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンとを含有し、50℃における粘度が60〜127mPa・sの腸溶性カプセル皮膜液を調製する工程;(b)工程(a)で調製した腸溶性カプセル皮膜液を用いて、滴下法によりカプセル内容物を被包する工程;の工程(a)及び(b)を備えた腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な有効成分を含有させたカプセルが種々報告されている。これらのカプセルにおける皮膜の材料としては、ゼラチンや寒天などが広く用いられている。しかしながら、ゼラチンや寒天などを材料とした皮膜は酸性環境の胃で崩壊するため、酸に対して弱い物質を有効成分とすることができなかった。
【0003】
そこで、近年、腸溶性カプセルが開発されてきた。腸溶性カプセルは、皮膜が酸に対して耐性を有することによって胃では皮膜が崩壊せず、腸で皮膜が崩壊して内容物が腸で放出されるカプセルである。この腸溶性カプセルは、酸に対して弱い物質を有効成分として含有させる場合だけでなく、徐々に放出させることによって効果を長時間持続させたい物質や、にんにく・魚油などの胃で消化されると呼気の臭やもどり臭の原因となる物質を含有させる場合にも用いられている。
【0004】
腸溶性カプセルの製造方法に関しては、これまでに、(a)膜形成性の水溶性重合体及び酸不溶性重合体を含有する溶液を調製し、適当な可塑剤と混合してゲル材料を生成させ;(b)このゲル材料を、熱制御されたドラムまたは面を使用して膜またはリボンへとキャスティングし;(c)回転ダイ技術を使用してソフトカプセルを形成する方法(特許文献1参照)や、ゼラチン、可塑剤として多価アルコール、アルカリ金属塩、水、並びに濃度が6〜40質量%となるようにカラギーナン、寒天、ローカストビーンガムなどの多糖類を均一に混練することにより得られるソフトカプセル原料混合物を製造する工程、該ソフトカプセル原料混合物を用いてニンニク、魚油、プロポリス、腸内細菌、及びタンパク質系薬剤から選ばれる少なくとも一種を内包する工程からなることを特徴とする腸溶性・徐放性ソフトカプセルの製造方法(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
さらに、ゼラチン、水、可塑剤、及び、エステル化度が20〜40%でゼラチン100重量部に対して10重量部〜30重量部の低メトキシルペクチンを含有するカプセル皮膜液を調製する調製工程と、ロータリーダイ式成形装置により、前記カプセル皮膜液から形成されたカプセル皮膜に内容物が充填されたソフトカプセルを成形する成形工程とを具備し、低メトキシルペクチンをゲル化する多価金属イオンを含む塩は前記カプセル皮膜液に添加されないと共に、成形された前記ソフトカプセルを前記多価金属イオンを含むゲル化液に浸漬する工程は具備しないことを特徴とする腸溶性ソフトカプセルの製造方法(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2006−505542号公報
【特許文献2】特開2009−185022号公報
【特許文献3】特開2010−047548号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、腸溶性を有し、かつ製剤性に優れたシームレスソフトカプセルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、腸溶性シームレスソフトカプセルの製造において、カプセル皮膜に用いるペクチンのアミド化度及びエステル化度や、皮膜液の粘度に着目した。カプセル皮膜材料にゼラチンと、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンとを用い、50℃における皮膜液の粘度を60〜127mPa・sとすることによって、腸溶性を有し、かつ製剤性に優れたシームレスソフトカプセルを製造することが可能であることを見いだし、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は以下に開示されるとおりのものである。
(1)(a)ゼラチンと、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンとを含有し、50℃における粘度が60〜127mPa・sの腸溶性カプセル皮膜液を調製する工程;(b)工程(a)で調製した腸溶性カプセル皮膜液を用いて、滴下法によりカプセル内容物を被包する工程;の工程(a)及び(b)を備えたことを特徴とする腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(2)ゼラチンのゼリー強度が180〜330Bloomであることを特徴とする上記(1)記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(3)低メトキシペクチンの35℃における2質量%濃度水溶液の粘度が8〜15mPa・sであることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(4)腸溶性カプセル皮膜液が、ゼラチン100質量部に対して低メトキシペクチン10〜20質量部を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(5)腸溶性カプセル皮膜液の50℃における粘度が70〜110mPa・sであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(6)低メトキシペクチンのアミド化度が5〜25%であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(7)低メトキシペクチンをグリセリンに分散後温水に溶解し、次いでゼラチンを添加して溶解し、濾過後に静置脱泡することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
(8)腸溶性カプセル皮膜率が9〜30質量%となるように被包することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか記載の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によって製造される腸溶性シームレスソフトカプセルは、腸溶性を有し、かつ製剤性に優れていることから、製造が容易で、かつ酸に対して弱い物質を内容物に含有させることが可能となるほか、にんにく・魚油などの胃で消化されると呼気の臭や戻り臭の原因となる物質を内容物に含有させても、服用後の呼気の臭や戻り臭を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法としては、(a)ゼラチンと、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンとを含有し、50℃における粘度が60〜127mPa・sの腸溶性カプセル皮膜液を調製する工程;(b)工程(a)で調製した腸溶性カプセル皮膜液を用いて、滴下法によりカプセル内容物を被包する工程;の工程(a)及び(b)を備えた腸溶性シームレスソフトカプセルの製造方法であれば特に制限されず、腸溶性とは、胃では溶解せずに腸で溶解する性質をいう。
【0012】
本発明におけるゼラチンとしては特に制限されないが、ゼリー強度が180〜330Bloom、好ましくは250〜320Bloomのゼラチンを挙げることができる。また、ゼリー強度が異なる2種以上のゼラチンを混合して用いてもよい。
【0013】
本発明において、低メトキシペクチン(LMペクチン)とは、エステル化度(DE)が50%未満のペクチンを意味し、かかるエステル化度としては、0〜40%であり、皮膜液の50℃における粘度が60〜127mPa・sとなる限り、3〜38%であっても、3〜12%であっても、22〜35%であってもよい。なお、エステル化度とは、総ガラクツロン酸中、メチルエステル化されているものの割合を意味し、メチルエステル化されたガラクツロン酸数を総ガラクツロン酸数で割って100を乗じた値(%)として求めることができる。
【0014】
また、低メトキシペクチンの35℃における2質量%濃度水溶液の粘度としては、8〜15mPa・s、好ましくは9〜14mPa・sを挙げることができる。
【0015】
本発明において、アミド化度(DA)とは、総ガラクツロン酸中、アミド化されているものの割合を意味し、アミド化されたガラクツロン酸数を総ガラクツロン酸数で割って100を乗じた値(%)として求めることができる。上記低メトキシペクチンのアミド化度としては、0〜25%であり、皮膜液の50℃における粘度が60〜127mPa・sとなる限り、0であっても、5〜25%であっても、6〜23%であってもよい。
【0016】
本発明における腸溶性カプセル皮膜液を調製する方法としては特に制限されないが、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンを水で溶解し、さらにゼラチンを加えてゼラチンを溶解させる方法を挙げることができる。上記低メトキシペクチンをグリセリンなどの可塑剤に分散後温水に溶解することや、調製した腸溶性カプセル皮膜液を目開き0.5mm以下、好ましくは0.3mm以下のメッシュで濾過し、さらに皮膜液の溶融条件下で、少なくとも外観上の泡がなくなるまで静置脱泡をすることが皮膜液の均一性の確保、カプセル皮膜の脆弱化防止、カプセルの変形・接着不良防止などの品質確保の観点で好ましい。
【0017】
本発明において、滴下法によりカプセル内容物を被包する方法としては、二重ノズルあるいは三重ノズルなどの同心多重ノズルから各種液流を凝固液中又は気体中に吐出させ、カプセル内容物をカプセル皮膜液で被包させる方法を挙げることができる。かかる方法は、市販の滴下式シームレスソフトカプセル製造装置を用いて行うことができ、継ぎ目のないシームレスカプセルとすることができる。
【0018】
本発明において、カプセル内容物としては特に制限されず、固体でも液体でもよく、医薬品成分や、栄養補助成分や、健康食品成分などを挙げることができ、具体的には、魚油、にんにく、ビタミンB1、いわゆる卵油(昔ながらの健康食品素材で、卵黄を攪拌しながら鉄なべなどを用いて長時間弱火で加熱することで得られる褐色〜黒色の液体)などの胃で消化されると呼気の臭や戻り臭の原因となる物質や、乳酸菌、ビフィズス菌などの酸に対して弱い腸内細菌や、トウガラシ素材やカプサイシンなどの胃に刺激を与える成分、フマル酸第一鉄、乾燥硫酸鉄などの鉄剤、解熱剤、鎮痛剤、消炎剤、抗腫瘍剤、抗菌剤などの徐々に放出させることによって効果を長時間持続させたい薬剤などを挙げることができる。
【0019】
上記カプセル内容物には、上記成分のほか、必要に応じて硬化油、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)、EPA、DHA、サメ肝油、タラ肝油などの油脂や、レシチン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルコール類などの界面活性を調整できる添加剤や、緩衝液や、水や、ゼラチン、カラギーナンなどのゲル化剤や、pH調整剤や、気相法シリカなどの多孔性微粒子粉末や、甘味料などの呈味剤や、香料や、溶解助剤や、粘度調整剤や、ビタミンE、BHT、BHAに代表される抗酸化剤などを含有させてもよい。
【0020】
本発明の腸溶性カプセル皮膜液において、ゼラチンに対する低メトキシペクチンの含有量は特に制限されないが、好ましくはゼラチン100質量部に対して低メトキシペクチンの含有量が10〜20質量部、より好ましくは11〜18質量部を挙げることができる。
【0021】
本発明においてカプセル内容物を被包する際には、製造される腸溶性シームレスソフトカプセルにおける腸用性カプセル皮膜率が9〜30質量%となるように被包することが好ましく、10〜20質量%となるように被包することがより好ましい。ここで、皮膜率とは、カプセル全体の質量のうち、皮膜が占める割合のことをいう。
【0022】
本発明における腸溶性カプセル皮膜液には、必要に応じて、グリセリンなどの可塑剤、リン酸ナトリウムなどのpH調整剤、クエン酸三ナトリウム、メタリン酸ナトリウムなどのキレート剤、乳酸カルシウム、塩化カリウムなどのゲル化促進剤、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチンなどの界面活性剤、甘味料、香料、防腐剤、着色剤などを含有してもよい。
【0023】
上記腸溶性カプセル皮膜液の粘度としては、50℃における粘度が60〜127mPa・sであり、好ましくは70〜100mPa・sを挙げることができる。腸溶性カプセル皮膜液粘度は、たとえば「BII型粘度計」(東機産業社製)など市販の粘度計を用いることができる。
【実施例1】
【0024】
[服用試験]
(シームレスソフトカプセルの製造)
ペクチン(DE7、DA0)15質量部をグリセリン20質量部に分散し、温水750質量部(80℃)で溶解し、さらにゼラチン(300Bloom)85質量部を添加して70℃で溶解し、100メッシュ(目開き0.15mm)で濾過後に静置脱泡して本発明カプセル皮膜液(1)を調製した。皮膜液(50℃)の粘度をBII型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、85mPa・sであった。
【0025】
また、ペクチン(DE7、DA0)10質量部をグリセリン5質量部に分散し、温水950質量部(80℃)で溶解し、さらにゼラチン(200Bloom)85質量部を添加して70℃で溶解し、100メッシュ(目開き0.15mm)で濾過後に静置脱泡して本発明カプセル皮膜液(2)を調製した。皮膜液(50℃)の粘度をBII型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、70mPa・sであった。
【0026】
さらに、ゼラチン(200Bloom)100質量部及びグリセリン30質量部を温水750質量部(70℃)で溶解し、100メッシュで濾過後に静置脱泡したコントロール皮膜液を調製した。皮膜液(50℃)の粘度をBII型粘度計(東機産業社製)で測定したところ、90mPa・sであった。
【0027】
次に、二重ノズルを備えた滴下式シームレスソフトカプセル製造装置(富士カプセル社製)により、カプセル内容物(DHA・EPA含有魚油)80mgを前記本発明カプセル皮膜液(1)、本発明カプセル皮膜液(2)又はコントロール皮膜液によって被包し、その後30℃25%RHで12時間乾燥させることによりシームレスソフトカプセルを製造した。冷却油としては、10℃の中鎖脂肪酸トリグリセライド(MCT:ココナードMT:花王社製)を用いた。
【0028】
(結果)
本発明カプセル皮膜液(1)を用いて製造したシームレスソフトカプセル、本発明カプセル皮膜液(2)を用いて製造したシームレスソフトカプセル、及びコントロール皮膜液を用いて製造したシームレスソフトカプセルを服用し、30分後に呼気の臭いを確認した。その結果、本発明カプセル皮膜液(1)又は本発明カプセル皮膜液(2)を用いて製造したシームレスソフトカプセルを服用した場合には魚由来の生臭さを感じなかったが、コントロール皮膜液を用いて製造したシームレスソフトカプセルを服用した場合には魚由来の生臭さを感じた。
【実施例2】
【0029】
[製剤性及び腸溶性試験]
(シームレスソフトカプセルの製造)
以下の表1に示すそれぞれのペクチン15質量部をグリセリン20質量部に分散し、温水750質量部(80℃)で溶解し、さらにゼラチン(300Bloom)85質量部を添加して70℃で溶解し、80メッシュ(目開き0.18mm)で濾過後に静置脱泡してカプセル皮膜液を調製した。
【0030】
【表1】
【0031】
表中、DEはそれぞれのペクチンのエステル化度(%)、DAはそれぞれのペクチンのアミド化度(%)、35℃粘度又は50℃粘度はそれぞれのペクチンの35℃又は50℃における2質量%濃度水溶液のBII型粘度計(東機産業社製)で測定した粘度(mPa・s)、皮膜液粘度はそれぞれのペクチンを溶解して上記方法で調製したカプセル皮膜液(50℃)を上記粘度計で測定した粘度(mPa・s)を示す。
【0032】
次に、滴下式シームレスソフトカプセル製造装置(富士カプセル社製)により、カプセル内容物としてMCT(ココナードMT:花王社製)100mgを、前記それぞれのカプセル皮膜液によって被包し、その後30℃25%RHで12時間乾燥させることによりシームレスソフトカプセルを製造した。ペクチン−1〜ペクチン−5を含む皮膜液を用いて製造したそれぞれのシームレスソフトカプセルを実施品1〜5とし、ペクチン6を用いて製造したシームレスソフトカプセルを比較品とした。得られたシームレスソフトカプセルの皮膜率は18質量%であった。
【0033】
得られたシームレスソフトカプセルについて、製剤性評価と腸溶性評価を行った。製剤性評価としては、成形性として10℃MCTへの滴下時のカプセルの形の良さを調べ、優、良、可、不可の4段階に分けた。
【0034】
また、腸溶性評価としては以下に示す崩壊試験により、第1液(37℃)を用いた崩壊試験による120分後の観察結果、○を開口なし、×を開口ありとし、第2液を用いた崩壊試験による30分後の観察結果、○をすべて崩壊、×を崩壊しないものありとした。
【0035】
製造したシームレスソフトカプセルの崩壊試験は文献(第16改正日本薬局方解説書 東京広川書店刊行 B589(2011))に記載の方法に準じて行った。崩壊試験器はNT−40H(富山産業社製)を用いた。関東化学社製試薬「崩壊試験第1液/溶出試験第1液」(pH1.2)を用いた試験、関東化学社製試薬「崩壊試験第2液」(pH6.8)による試験をそれぞれ18個ずつ、補助盤なしで行った。カプセルが壊れた場合、又は、皮膜が開口、破損した場合を崩壊したものとした。
【0036】
(結果)
製剤性及び腸溶性を調べた結果を表2に示す。表2に示すように、製剤性について実施品1〜5いずれも良好であった。また、腸溶性については、実施品1〜5は第1液を用いた崩壊試験により、120分後にも18個のシームレスソフトカプセル全てにおいて崩壊はみられず、新たなカプセルサンプルによる崩壊試験第2液を用いた試験により、5分後には崩壊がみられ、30分後には18個のシームレスソフトカプセルがすべて崩壊した。
【0037】
したがって、ゼラチンと、エステル化度が0〜40%かつアミド化度が0〜25%である低メトキシペクチンとを含有し、50℃における粘度が60〜127mPa・sの腸溶性カプセル皮膜液を用いてシームレスソフトカプセルを滴下法により製造することで、製剤性、及び腸溶性に優れたシームレスソフトカプセルを製造可能であることが明らかとなった。
【0038】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によって製造された腸溶性シームレスソフトカプセルは、腸溶性及び製剤性に優れており、医薬品、栄養補助品、及び健康食品分野で利用可能である。