特許第6243061号(P6243061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243061レッグシールドにおけるスナップフィット構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243061
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】レッグシールドにおけるスナップフィット構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 17/06 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B62J17/06
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-559358(P2016-559358)
(86)(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公表番号】特表2017-508666(P2017-508666A)
(43)【公表日】2017年3月30日
(86)【国際出願番号】TH2014000018
(87)【国際公開番号】WO2015152835
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年9月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】中林 俊一
(72)【発明者】
【氏名】平井 一仁
(72)【発明者】
【氏名】川口 幸則
【審査官】 岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】 実公平06−015791(JP,Y2)
【文献】 特開2003−072627(JP,A)
【文献】 特開昭59−167384(JP,A)
【文献】 特開2007−230463(JP,A)
【文献】 特開2011−051483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 17/00 − 17/08
B62J 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動二輪車の前部側に取り付けられるアウターカバーと、
該アウターカバーに対して後方から重ね合わせて取り付けられるインナーカバーと、
前記アウターカバー及びインナーカバーにそれぞれ形成された係合凸部及び嵌合部にて構成され、前記係合凸部が嵌合部に嵌合しつつ弾性力を作用させ、その弾性力により当該アウターカバーとインナーカバーとを係合して一体化させる係合手段と、
を有して構成され、運転者の脚の前方を覆って保護するレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、
前記係合凸部は、前記嵌合部に対する嵌合方向が前記アウターカバー及びインナーカバーの合わせ面に対し前後方向に傾斜して形成されるとともに、左右方向に弾性変形して当該左右方向に弾性力を付与し得る別体のスナップフィット部材を有したことを特徴とするレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項2】
前記アウターカバーは、前記インナーカバーに対して車両の左右両側に一対設けられ、それぞれが前記係合手段で当該インナーカバーに固定されるとともに、前記係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向が車両中心線に対して対称に傾斜して成ることを特徴とする請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項3】
前記係合凸部は、前記アウターカバーに設けられるとともに、車両の後方且つ内側に向かって突出形成されたことを特徴とする請求項2記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項4】
前記インナーカバーは、その中央部に車両のヘッドパイプより後下方に向かって延設されたダウンフレームを囲む円弧状部位を有するとともに、前記係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向は、車両中心線に対して反対側の円弧状部位に指向されたことを特徴とする請求項3記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項5】
前記係合凸部及び嵌合部は、前記アウターカバー及びインナーカバーの上下方向に略等間隔で複数形成されたことを特徴とする請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項6】
前記複数の係合凸部は、前記嵌合部に対する嵌合方向が平面視で互いに平行に形成されたことを特徴とする請求項5記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項7】
記嵌合部は、当該スナップフィット部材の弾性力を保持する開口部を有するとともに、前記アウターカバー又はインナーカバーは、前記係合凸部及び嵌合部より上方又は下方の位置で締結手段にて締結されることを特徴とする請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【請求項8】
前記インナーカバーは、前記アウターカバーとの合わせ面から車両の前方に向かって延設された壁部を有し、当該壁部に前記嵌合部が形成されたことを特徴とする請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車に着座した運転者の脚の前方を覆って保護するレッグシールドにおけるスナップフィット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レッグシールドは、自動二輪車の前部側に取り付けられるアウターカバーと、該アウターカバーに対して後方から重ね合わせて取り付けられるインナーカバーとから構成され、その周縁の合わせ面に沿って両者を重ね合わせて固定することで、自動二輪車の着座シートに着座した運転者の脚を前方から保護し得るよう構成されている。かかるアウターカバーとインナーカバーとは、例えば特許文献1にて開示されているように、インナーカバーに形成された逆止爪をアウターカバーに形成された挿通孔に挿通させつつ係止段に係合させることにより固定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公平6−15791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のレッグシールドは、アウターカバーにインナーカバーを係合させて一体化させる際、インナーカバーの逆止爪をアウターカバーの挿通孔に挿通させて係止段に係合させるので、組み付け時の作業性を向上させ得るものの、組み付け精度を向上させるような工夫が施されていないため、アウターカバーとインナーカバーとの合わせ面がずれてしまい見栄えが悪くなる可能性があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、アウターカバーにインナーカバーを係合させて一体化させる際の作業性を維持することができるとともに、組み付け精度を向上させて外観を良好にすることができるレッグシールドにおけるスナップフィット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、自動二輪車の前部側に取り付けられるアウターカバーと、該アウターカバーに対して後方から重ね合わせて取り付けられるインナーカバーと、前記アウターカバー及びインナーカバーにそれぞれ形成された係合凸部及び嵌合部にて構成され、前記係合凸部が嵌合部に嵌合しつつ弾性力を作用させ、その弾性力により当該アウターカバーとインナーカバーとを係合して一体化させる係合手段とを有して構成され、運転者の脚の前方を覆って保護するレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記係合凸部は、前記嵌合部に対する嵌合方向が前記アウターカバー及びインナーカバーの合わせ面に対し前後方向に傾斜して形成されるとともに、左右方向に弾性変形して当該左右方向に弾性力を付与し得る別体のスナップフィット部材を有したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記アウターカバーは、前記インナーカバーに対して車両の左右両側に一対設けられ、それぞれが前記係合手段で当該インナーカバーに固定されるとともに、前記係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向が車両中心線に対して対称に傾斜して成ることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記係合凸部は、前記アウターカバーに設けられるとともに、車両の後方且つ内側に向かって突出形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記インナーカバーは、その中央部に車両のヘッドパイプより後下方に向かって延設されたダウンフレームを囲む円弧状部位を有するとともに、前記係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向は、車両中心線に対して反対側の円弧状部位に指向されたことを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記係合凸部及び嵌合部は、前記アウターカバー及びインナーカバーの上下方向に略等間隔で複数形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、請求項5記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記複数の係合凸部は、前記嵌合部に対する嵌合方向が平面視で互いに平行に形成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記嵌合部は、当該スナップフィット部材の弾性力を保持する開口部を有するとともに、前記アウターカバー又はインナーカバーは、前記係合凸部及び嵌合部より上方又は下方の位置で締結手段にて締結されることを特徴とする。
【0013】
請求項8記載の発明は、請求項1記載のレッグシールドにおけるスナップフィット構造において、前記インナーカバーは、前記アウターカバーとの合わせ面から車両の前方に向かって延設された壁部を有し、当該壁部に前記嵌合部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、係合凸部は、嵌合部に対する嵌合方向がアウターカバー及びインナーカバーの合わせ面に対し前後方向に傾斜して形成されたので、係合手段による係合力が傾斜した方向に生じることになるので、合わせ面に対して垂直方向及び左右方向の両方に生じることとなり、アウターカバーにインナーカバーを係合させて一体化させる際の作業性を維持することができるとともに、前後及び左右の組み付け精度を向上させて高品質な外観を得ることができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、アウターカバーは、インナーカバーに対して車両の左右両側に一対設けられ、それぞれが係合手段で当該インナーカバーに固定されるとともに、係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向が車両中心線に対して対称に傾斜して成るので、左右それぞれのアウターカバーの組み付け方向が同じとなり、左右各々の作業者が同じ作業をすることで、組み付け性をより向上させることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、係合凸部は、アウターカバーに設けられるとともに、車両の後方且つ内側に向かって突出形成されたので、アウターカバーのインナーカバーに対する組み付け時、当該アウターカバーに付与される組み付け荷重をインナーカバーの中央部にて受けさせることができる。したがって、アウターカバーのインナーカバーに対する組み付け時の力加減をあまり気にする必要がなく、組み付け性をより一層向上させることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、インナーカバーは、その中央部に車両のヘッドパイプより後下方に向かって延設されたダウンフレームを囲む円弧状部位を有するとともに、係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向は、車両中心線に対して反対側の円弧状部位に指向されたので、アウターカバーのインナーカバーに対する組み付け時、アウターカバーに付与される組み付け荷重を剛性が高い円弧状部位にて有効に受けさせることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、係合凸部及び嵌合部は、アウターカバー及びインナーカバーの上下方向に略等間隔で複数形成されたので、アウターカバーのインナーカバーに対する組み付け時、係合凸部及び嵌合部が目視できない場合であっても、それらの位置を容易に推測することができ、組み付け性をより向上させることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、複数の係合凸部は、嵌合部に対する嵌合方向が平面視で互いに平行に形成されたので、アウターカバーのインナーカバーに対する組み付け時、複数の嵌合部に対して複数の係合凸部を略同時に嵌合させることができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、嵌合部は、当該スナップフィット部材の弾性力を保持する開口部を有するとともに、アウターカバー又はインナーカバーは、係合凸部及び嵌合部より上方又は下方の位置で締結手段にて締結されるので、スナップフィット部材のみでは確保できない上下方向の組み付け精度を締結手段にて確保することができ、組み付け精度をより一層向上させ、高品質なイメージをユーザに印象づけることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、インナーカバーは、アウターカバーとの合わせ面から車両の前方に向かって延設された壁部を有し、当該壁部に嵌合部が形成されたので、走行により後方へ侵入しようとする合わせ面から水や泥が侵入しにくくなり、それにより合わせ面に泥やほこりが溜まることがなく、合わせ精度の向上と合わせて、一層外観を綺麗に見せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施形態に係るレッグシールドにおけるスナップフィット構造が適用される自動二輪車を示す模式図
図2】同レッグシールドを示す分解斜視図
図3】同レッグシールドを示す正面図
図4】同レッグシールドを示す図2、3のIV−IVにおける断面図
図5図4における係止手段を示す要部拡大図
図6】同レッグシールドにおけるアウターカバーを示す斜視図
図7】同レッグシールドにおけるインナーカバーを示す斜視図
図8図5の係止手段に係るスナップフィット部材を示す斜視図
図9図2、3平面図であって図4の平面断面図に複数の係止手段による係止状態を重ね合わせた一部断面図
図10図2のX−Xにおける上側の締結手段による締結状態を示す断面図
図11図2のXI―XIにおける下側の締結手段による締結状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るレッグシールド1は、図1に示すように、運転者Mの脚の前方を覆って保護するためのものである。かかる自動二輪車は、同図に示すように、レッグシールド1の他、アンダーカバー7及びフロントカバー9等の種々カバー類と、運転者が着座し得る着座シート11と、運転者が両足をそろえて置くステップフロア8と、操舵のためのハンドルバーHと、ヘッドライトLとを有し、車両の左側にベルト式変速機ユニット21と、それと一体のエンジン(図示せず)をリヤサスペンション22で揺動自在に支持するユニットスイングエンジンと、を備えるスクータである。
【0024】
レッグシールド1は、図2〜11に示すように、アウターカバー2と、インナーカバー3と、複数の係合手段4とを有して構成されている。このうちアウターカバー2は、自動二輪車の前部側に取り付けられるもので、本実施形態においては、インナーカバー3に対して車両の左右両側に一対設けられ、その間にフロントカバー9が取り付けられるよう構成されている。なお、本実施形態に係るアウターカバー2は、図2に示すように、車両のウィンカ20を外部に臨ませるウィンカ用開口部2aと、上部取付部2bと、下部取付部2cとが形成されている。ウィンカ20部位のインナーカバー3には、爪部がアウターカバー2には穴部が形成され、各々が嵌め合わされて合わせ精度を維持している。ウィンカ20自体は、アウターカバー2に取付固定される。
【0025】
インナーカバー3は、アウターカバー2に対して後方から重ね合わせて取り付けられるよう構成されており、車両に組み付けられたアウターカバー2とインナーカバー3との間には、図3に示すように、自動二輪車のヘッドパイプ12や該ヘッドパイプ12より後下方に向かって延設されたダウンフレーム13が位置するようになっている。なお、図3中符号14L、Rは、ステップフロア8を支持するための左右一対のロアフレームを示している。
【0026】
また、本実施形態に係るインナーカバー3は、図4、9に示すように、その中央部に車両のヘッドパイプ12より後下方に向かって延設されたダウンフレーム13を囲む円弧状部位3aを有している。さらに、本実施形態に係るインナーカバー3における表面(車両に組み付けられた際に着座シート11に対峙する面)には、任意の荷物を収納可能なインナーラック10が形成されている。
【0027】
係合手段4は、図5〜8に示すように、アウターカバー2及びインナーカバー3にそれぞれ形成された係合凸部17及び嵌合部18aにて構成され、係合凸部17が嵌合部18aに嵌合しつつ係合凸部17の軸線α方向に対する左右方向に弾性力を作用させ、その弾性力によりアウターカバー2とインナーカバー3とを係合して一体化させるものである。本実施形態に係る係合凸部17は、アウターカバー2の内面に一体形成された突出部15と、その突出部15に弾性係合にて嵌め合わされるスナップフィット部材16とから構成されている。
【0028】
突出部15は、スナップフィット部材16の幅寸法β(車両の上下方向)より若干大きな寸法で離間して形成された一対の側壁部15aと、該側壁部15aの間に形成された板状部15bと、該板状部15bに形成された上下一対の開口部15baとを有している。スナップフィット部材16は、図8に示すように、板状部材を略U字に屈曲形成して弾性変形可能な形状とされたもので、図5に示すように、突端側の内周面を内側に突出させた係止部16a、基端側を内側に突出させた係止部16bが形成されている。
【0029】
そして、突出部15の板状部15bにスナップフィット部材16の係止部16b側となる基端側から挿通させ、係止部16a、16bを開口部15baに係止させることにより、突出部15にスナップフィット部材16が取り付けられるようになっている。このように、一体化された突出部15及びスナップフィット部材16は、本発明の係合手段4における係合凸部17を構成することとなる。一方、係合手段4を構成する嵌合部18aは、インナーカバー3におけるアウターカバー2との合わせ面Sから車両の前方に向かって延設された壁部18に形成された開口部から成る。
【0030】
しかして、インナーカバー3とアウターカバー2とを係合して一体化させる際、図5に示すように、スナップフィット部材16を嵌合部18aに挿通させることにより、当該スナップフィット部材16を係合凸部17の軸線αに対する左右方向(γ方向)に弾性変形させ、当該左右方向に弾性力を付与させるとともに、その弾性力が嵌合部18aにて保持されるようになっている。これにより、係合凸部17(本実施形態においてはスナップフィット部材16)が嵌合部18aに嵌合しつつ弾性力を作用させ、その弾性力によりアウターカバー2とインナーカバー3とを係合して一体化させることができるのである。
【0031】
さらに、本実施形態に係る係合手段4(係合凸部17及び嵌合部18a)は、図1に示すように、アウターカバー2及びインナーカバー3の上下方向に略等間隔で複数(本実施形態においては、4(P1)、4(P2)、4(P3)及び4P(4)の4つ)形成されている。すなわち、アウターカバー2は、図6に示すように、上下方向に4つの係合凸部17が形成されるとともに、インナーカバー3は、図7に示すように、上下方向に4つの嵌合部18aが形成されており、対応する係合凸部17が嵌合部18aに嵌合することで、アウターカバー2とインナーカバー3とが係合して一体化するよう構成されているのである。
【0032】
ここで、本実施形態に係る係合凸部17の軸線(P2)は、図4に示すように、嵌合部18aに対する嵌合方向αがアウターカバー2及びインナーカバー3の合わせ面Sに対し所定角度aだけ傾斜して形成されている。すなわち、係合凸部17は、その軸線がアウターカバー2及びインナーカバー3の合わせ面Sに対し所定角度aだけ前後方向Yに対してa’だけ傾斜して形成されており、アウターカバー2とインナーカバー3とを係止して一体化させる際、当該係合凸部17を挿通し得る向きにて嵌合部18aが形成されているのである。従来は、前後方向Yの軸線に対して平行に係合方向が定められており、アウターカバー2とインナーカバー3の前後方向Yの合わせ精度が考慮されていなかった。
【0033】
また、本実施形態に係るアウターカバー2は、既述のように、インナーカバー3に対して車両の左右両側に一対設けられており、それぞれが係合手段4で当該インナーカバー3に固定されるとともに、図9に示すように、同一高さの係合手段4(同図においては4(P2)参照)において、係合凸部17の嵌合部18aに対する嵌合方向αが車両中心線Laに対して対称に傾斜して成るものとされている。
【0034】
さらに、本実施形態に係る係合凸部17は、同図に示すように、アウターカバー2に設けられるとともに、車両の後方(同図中上方)に向かって突出形成されており、且つ、係合凸部17の嵌合部18aに対する嵌合方向αは、インナーカバー3に形成された円弧状部位3aにおける車両中心線Laに対して反対側に指向されている。P2の軸線αにおいては、軸線αは、ダウンフレーム内部を横切り、車両反対側の円弧状部位3aに指向している(図4参照)。又、図9に示すように、アウターカバー2に形成された係合凸部17(係合手段4(P1)〜4(P4)にそれぞれ対応する係合凸部17)は、嵌合部18aに係合した状態において、車両中心線Laの反対側のインナーカバー2に指向(例えば、同図中右側のインナーカバー3に形成された係合凸部17は、車両中心線Laより同図中左側を指向)されているのである(図9は、P2の高さのインナーカバーの断面を示すが、P3、P4の軸線αも、その高さにおけるインナーカバー断面では、反対側の円弧状部位を指向する。インナーカバー断面は、P3、P4高さでは図面の上方に移動する為)。またさらに、複数の係合凸部17(係合手段4(P1)〜4(P4)にそれぞれ対応する係合凸部17)は、嵌合部18aに対する嵌合方向αが平面視(図9の方向で見た場合)で互いに平行に形成されている。
【0035】
さらに、本実施形態に係るアウターカバー2又はインナーカバー3は、図1に示すように、係合凸部17及び嵌合部18aより上方又は下方の位置で締結手段(5、6)にて締結されるようになっている。上方に位置する締結手段5は、図10に示すように、ボルトB1及びクリップナットN1を有しており、アウターカバー2に形成された上側取付部2bをボルトB1及びクリップナットN1を介してインナーカバー2に固定させ得るものとされている。また、下方に位置する締結手段6は、図11に示すように、ボルトB2及びナットN2を有しており、アウターカバー2に形成された下側取付部2cをステップフロア取付部8aを備えるロアフレーム14に溶接されたステー14aを介してロアフレーム14に固定させ得るものとされている。
【0036】
上記実施形態によれば、係合凸部17は、嵌合部18aに対する嵌合方向αがアウターカバー2及びインナーカバー3の合わせ面Sに対し前後方向に傾斜(a’)して形成されたので、係合手段4による係合力が合わせ面Sに対して垂直方向及び左右方向X(本実施形態においては車両の幅方向)の両方に生じることとなり、アウターカバー2にインナーカバー3を係合させて一体化させる際の作業性を維持することができるとともに、前後及び左右の組み付け精度を向上させて高品質な外観を得ることができる。
【0037】
すなわち、係合凸部17の嵌合部18aに対する嵌合方向αをアウターカバー2及びインナーカバー3の合わせ面Sに対し傾斜させることにより、スナップフィットの弾性力を少なくとも2方向に分力(車両の前後方向及び幅方向の分力)させることもできるので、アウターカバー2の係合凸部17にインナーカバー3の嵌合部18aをワンタッチで係合させて作業性が良好な中でも、組み付け精度を向上させることもできる。
【0038】
また、本実施形態に係るアウターカバー2は、インナーカバー3に対して車両の左右両側に一対設けられ、それぞれが係合手段4で当該インナーカバー3に固定されるとともに、係合凸部17の嵌合部18aに対する嵌合方向αが車両中心線Laに対して対称に傾斜して成るので、左右それぞれのアウターカバー2の組み付け方向が同じとなり、左右各々の作業者が同じ作業をすることで組み付け性をより向上させることができる。
【0039】
さらに、本実施形態に係る係合凸部17は、アウターカバー2に設けられるとともに、車両の後方且つ内側に向かって突出形成されたので、アウターカバー2のインナーカバー3に対する組み付け時、当該アウターカバー2に付与される組み付け荷重をインナーカバー3の中央部にて受けさせることができる。したがって、アウターカバー2のインナーカバー3に対する組み付け時の力加減をあまり気にする必要がなく、組み付け性をより一層向上させることができる。
【0040】
またさらに、本実施形態に係るインナーカバー3は、その中央部に車両のヘッドパイプ12より後下方に向かって延設されたダウンフレーム13を囲む円弧状部位3aを有するとともに、係合凸部17の嵌合部18aに対する嵌合方向αは、車両中心線Laに対して反対側の円弧状部位3aに指向されたので、アウターカバー2のインナーカバー3に対する組み付け時、アウターカバー2に付与される組み付け荷重を剛性が高い円弧状部位3aにて有効に受けさせることができる。
【0041】
また、係合凸部17及び嵌合部18aは、アウターカバー2及びインナーカバー3の上下方向に略等間隔で複数形成されたので、アウターカバー2のインナーカバー3に対する組み付け時、係合凸部17及び嵌合部18aが目視できない場合であっても、それらの位置を容易に推測することができ、組み付け性をより向上させることができる。さらに、複数の係合凸部17は、嵌合部18aに対する嵌合方向αが平面視で互いに平行に形成されたので、アウターカバー2のインナーカバー3に対する組み付け時、複数の嵌合部8aに対して複数の係合凸部17を略同時に嵌合させることができる。
【0042】
またさらに、本実施形態に係る係合凸部17は、左右方向に弾性変形して当該左右方向に弾性力を付与し得るスナップフィット部材16を有し、嵌合部18aは、当該スナップフィット部材16の弾性力を保持する開口部を有するとともに、アウターカバー2又はインナーカバー3は、係合凸部17及び嵌合部18aより上方又は下方の位置で締結手段(5、6)にて締結されるので、スナップフィット部材16のみでは確保できない上下方向の組み付け精度を締結手段(5、6)にて確保することができ、組み付け精度をより一層向上させ、高品質なイメージをユーザに印象づけることができる。
【0043】
また、本実施形態に係るインナーカバー2は、アウターカバー3との合わせ面Sから車両の前方に向かって延設された壁部18を有し、当該壁部18に嵌合部18aが形成されたので、走行により後方へ侵入しようとする合わせ面Sから水や泥が侵入しにくくなり、それにより合わせ面Sに泥やほこりが溜まることがなく、合わせ精度の向上と合わせて、一層外観を綺麗に見せることができる。
【0044】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば本実施形態においてはアウターカバー2に係合凸部17が形成されるとともにインナーカバー3に嵌合部8aが形成されているが、これに代えて、インナーカバー3に係合凸部を形成するとともにアウターカバー2に嵌合部を形成するようにしてもよい
【産業上の利用可能性】
【0045】
嵌合部に対する嵌合方向がアウターカバー及びインナーカバーの合わせ面に対し傾斜して形成されるとともに、左右方向に弾性変形して当該左右方向に弾性力を付与し得る別体のスナップフィット部材を有した係合凸部を有するレッグシールドにおけるスナップフィット構造であれば、外観形状が異なるもの、或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 レッグシールド
2 アウターカバー
3 インナーカバー
4 係合手段
5、6 締結手段
7 アンダーカバー
8 ステップフロア
9 フロントカバー
10 インナーラック
11 着座シート
12 ヘッドパイプ
13 ダウンフレーム
14 ロアフレーム
15 突出部
16 スナップフィット部材
17 係合凸部
18 壁部
18a 嵌合部
S 合わせ面
La 車両中心線
α 係合凸部の嵌合部に対する嵌合方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11