特許第6243064号(P6243064)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243064電力制御装置、電力制御方法及び電力制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243064
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】電力制御装置、電力制御方法及び電力制御システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20171127BHJP
   H02J 3/14 20060101ALI20171127BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20171127BHJP
   H02J 9/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H02J3/38 180
   H02J3/38 130
   H02J3/38 160
   H02J3/38 170
   H02J3/14 130
   H02J13/00 311T
   H02J9/00 120
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-561265(P2016-561265)
(86)(22)【出願日】2015年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2015005933
(87)【国際公開番号】WO2016084396
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年2月2日
(31)【優先権主張番号】特願2014-240354(P2014-240354)
(32)【優先日】2014年11月27日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100192924
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 裕充
(72)【発明者】
【氏名】沖野 健太
【審査官】 永井 啓司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−066268(JP,A)
【文献】 特開2014−183640(JP,A)
【文献】 特開2007−014066(JP,A)
【文献】 特開2008−141926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00−7/12
7/34−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの負荷機器の駆動状況を監視可能な電力制御装置であって、
停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて算出した停電時に使用される前記負荷機器の電力需要予測量に基づいて算出する制御部を備えることを特徴とする電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力制御装置において、
前記制御部は、前記停電時に使用される負荷機器を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定する、電力制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の電力制御装置において、
前記制御部はさらに、前記負荷機器に接続された発電装置による発電予測量に基づいて前記蓄電池残量を算出する、電力制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電力制御装置において、
前記発電予測量は、前記停電時における前記発電装置の自立運転時の発電可能電力量に基づいて算出される、電力制御装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の電力制御装置において、
前記発電予測量は、前記停電時における前記発電装置から前記蓄電池への充電可能電力量に基づいて算出される、電力制御装置。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか1項に記載の電力制御装置において、
前記発電予測量はさらに、前記発電装置の故障状態及びメンテナンス動作予定の少なくとも一方に基づいて算出される、電力制御装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力制御装置において、
前記制御部はさらに、前記停電時に前記負荷機器が使用可能となる停電対応時間の設定情報を取得して、前記設定情報に基づいて前記蓄電池残量を算出する、電力制御装置。
【請求項8】
請求項7に記載の電力制御装置において、
前記制御部は、前記停電対応時間の案を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて報知する、電力制御装置。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電力制御装置において、
前記制御部は、前記停電時に前記負荷機器が使用可能となる停電対応時間を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定し、当該停電対応時間に基づいて前記蓄電池残量を算出する、電力制御装置。
【請求項10】
少なくとも1つの負荷機器の駆動状況を監視可能な電力制御装置における電力制御方法であって、
停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて算出した停電時に使用される前記負荷機器の電力需要予測量に基づいて算出するステップを有することを特徴とする電力制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の電力制御方法において、
前記算出するステップでは、前記停電時に使用される負荷機器を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定する、電力制御方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の電力制御方法において、
前記算出するステップでは、前記停電時に前記負荷機器が使用可能となる停電対応時間を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定する、電力制御方法。
【請求項13】
蓄電池を備える蓄電装置と、
少なくとも1つの負荷機器の駆動状況を監視可能な電力制御装置と、
を含む電力制御システムであって、
前記電力制御装置は、
停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて算出した停電時に使用される前記負荷機器の電力需要予測量に基づいて算出する制御部を備えることを特徴とする電力制御システム。
【請求項14】
請求項13に記載の電力制御システムにおいて、
前記制御部は、前記停電時に使用される負荷機器を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定する、電力制御システム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の電力制御システムにおいて、
前記制御部は、前記停電時に前記負荷機器が使用可能となる停電対応時間を、前記デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定する、電力制御システム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願へのクロスリファレンス】
【0001】
本出願は、日本国特許出願2014−240354号(2014年11月27日出願)の優先権を主張するものであり、当該出願の開示全体を、ここに参照のために取り込む。
【技術分野】
【0002】
本発明は、電力制御装置、電力制御方法及び電力制御システムに関する。
【背景技術】
【0003】
従来、使用電力が供給電力よりも少なく送電網からの電力補充が不要なときには発電装置から蓄電池(二次電池)に充電し、反対に電力補充が必要なときには蓄電池を即時に放電させるシステムが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−032899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1においては、商用系統からの電力供給状態に対して適切に蓄電池を駆動しているわけでなく、商用系統の電力供給状態に対してより経済的に蓄電池を駆動することが求められていた。
【0006】
本発明の目的は、商用系統の電力供給状態に対してより経済的に蓄電池を駆動することができる電力制御装置、電力制御方法及び電力制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る電力制御装置は、
少なくとも1つの負荷機器の駆動状況を監視可能な電力制御装置であって、
停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて算出した停電時に使用される前記負荷機器の電力需要予測量に基づいて算出する制御部を備えることを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の一実施形態に係る電力制御方法は、
少なくとも1つの負荷機器の駆動状況を監視可能な電力制御装置における電力制御方法であって、
停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて算出した停電時に使用される前記負荷機器の電力需要予測量に基づいて算出するステップを有することを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明の一実施形態に係る電力制御システムは、
蓄電池を備える蓄電装置と、
少なくとも1つの負荷機器の駆動状況を監視可能な電力制御装置と、
を含む電力制御システムであって、
前記電力制御装置は、
停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて算出した停電時に使用される前記負荷機器の電力需要予測量と、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方と、に基づいて算出する制御部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電力制御装置、電力制御方法及び電力制御システムによれば、商用系統の電力供給状態に対してより経済的に蓄電池を駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電力制御システムの機能ブロック図である。
図2】想定使用負荷機器の設定画面を示す図である。
図3】(a)は、電力需要予測量、停電時電力需要予測量、発電予測量、停電時発電予測量、放電予測量及び停電時放電予測量を示す図である。(b)は、(a)に対応するデータ(停電時以外のとき)である。(c)は、(a)に対応するデータ(停電時)である。
図4図1に示す電力制御装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
[システム構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る電力制御システム90の機能ブロック図である。電力制御システム90は、少なくとも、電力制御装置3及び蓄電装置7を備える。さらに、好ましくは、電力制御システム90は、発電装置4を備える。また、電力制御システム90は、スマートメータ2、分電盤5、負荷機器6を有してもよい。図1において、制御ライン及び情報伝達ラインは破線で示し、電力ラインは実線で示す。本実施形態においては一例として、電力制御システム90は、需要家施設によって備えられる。本発明に係る電力制御システム90の各機能を説明するが、電力制御システム90が有する他の機能を排除することを意図したものではないことに留意されたい。
【0014】
電力会社サーバ1は、電力会社80によって電力会社80の内部または外部に備えられ、需要家施設にデマンドレスポンスの要請を行う。アグリゲータが電力会社サーバ1と需要家施設との間に存在してデマンドレスポンスの要請を行ってもよい。
【0015】
スマートメータ2は、スマートメータ2が接続する商用系統を介して分電盤5に供給される電力量及び需要家施設によって商用系統に売電される電力量を計測する。スマートメータ2は、計測した電力量を、ネットワーク経由で電力会社サーバ1及び電力制御装置3に通知することができる。
【0016】
電力制御装置3は、制御部31、表示部32、入力検出部33及び記憶部34を備える。電力制御装置3は例えばHEMS(Home Energy Management System)である。
【0017】
制御部31は、電力制御装置3の各機能部をはじめとして電力制御装置3の全体を制御するプロセッサである。制御部31は、少なくとも1つの後述する負荷機器6の駆動状況を監視可能である。駆動状況とは、電力消費の状況をいう。また、制御部31は、通常時及びデマンドレスポンスの要請時に、蓄電装置7の蓄電池72において確保すべき蓄電池残量を少なくとも算出する。後述するように、制御部31は、デマンドレスポンスの要請におけるインセンティブ及び緊急度の少なくとも一方に応じて蓄電池残量を算出する。また本実施形態では、制御部31は、算出した蓄電池残量を確保するように蓄電装置7の充放電を制御する。
【0018】
表示部32は、例えば、液晶パネル(LCD:Liquid Crystal Display)や有機ELパネル(OELD:Organic Electroluminescence Display)で構成する。
【0019】
入力検出部33は、機械式の押しボタンまたはタッチセンサを含む任意の入力インタフェースである。入力検出部33は例えば、負荷機器6毎の、停電時に負荷機器6を使用可能としたい時間(以下、停電対応時間)の入力を受付ける。
【0020】
記憶部34は、フラッシュメモリ等の任意の記憶資源を用いて構成する。記憶部34は各種情報及び電力制御装置3を動作させるためのプログラム等を記憶するとともに、ワークメモリとしても機能する。記憶部34は例えば、停電対応時間、負荷機器6の電力需要予測量及び発電装置4の発電予測量を記憶する。
【0021】
発電装置4は、本実施形態では、太陽光発電装置であるが、燃料電池装置、マイクロ風力発電装置、及びマイクロ火力発電装置などの別の発電装置であってもよい。太陽光発電装置は、ソーラーパネルで受光する太陽光を光電変換して直流電力を発電する。そのため、発電装置4として太陽光発電装置を用いる場合には、受光する太陽光の光量に応じて発電量が変動する。例えば、天気に応じた日射量の変動及び時刻に応じた太陽光の入射角度の変動に基づいて、発電量が変動する。
【0022】
分電盤5は、商用系統、発電装置4または蓄電装置7から供給された電力を1以上の負荷機器6に供給する。また、分電盤5は、商用系統または発電装置4から供給された電力を蓄電装置7に供給する。
【0023】
負荷機器6は、電力を消費する電力負荷であり、例えば需要家施設によって使用されるエアコン、電子レンジ、冷蔵庫、テレビ、ルータ等の各種電気製品である。また、負荷機器6は、商工業施設で使用される空調機または照明器具等の機械、照明設備等であってもよい。
【0024】
蓄電装置7は、PCS(Power Conditioning System:パワーコンディショナ)71及び蓄電池72を備える。蓄電装置7は電力制御装置3による制御に基づいて蓄電池72の充放電を行う。または、電力制御装置3が蓄電池残量の算出までを行って、蓄電装置7のPCS71が、停電時以外(すなわち、系統連系時)において算出された蓄電池残量となるように蓄電池72の充放電の制御を行ってもよい。
【0025】
PCS71は、インバータ、AC/DCコンバータ及び双方向DC/DCコンバータ等を備える。PCS71は、分電盤5から供給された交流電力を直流に変換し、当該電力を蓄電池72に出力して蓄電池72を充電する。またPCS71は、蓄電池72から取得した直流電力を交流電力に変換して分電盤5を介して負荷機器6に出力する。
【0026】
蓄電池72は、電力制御装置3による制御によって充放電を行う。蓄電池72は、停電時において、発電装置4が発電した電力のうち負荷機器6で消費されなかった超過分の電力を充電可能である。
【0027】
以下、本発明の一実施形態を詳細に説明する。
【0028】
入力検出部33は、停電対応時間の設定操作を負荷機器6毎に需要家から受付ける。需要家は、電力制御装置3の表示部32を視認しながら停電対応時間を設定可能である。停電対応時間はゼロであってもよい。このため、停電対応時間の設定によって、停電時に使用される負荷機器6の数も決定される。代替例として、入力検出部33は、全ての負荷機器6に共通に設定するものとして停電対応時間の設定操作を受付けてもよい。
【0029】
停電対応時間は、通常時またはデマンドレスポンスの要請のレベル別に設定可能である。通常時とは、電力会社サーバ1、アグリゲータ等からデマンドレスポンスの要請がなされていないときを指す。デマンドレスポンスの要請のレベルとは、緊急度及びインセンティブの少なくとも一方によって、本実施形態では一例として3段階(「低」、「中」及び「高」)で定められる。各段階において、負荷機器6毎に、停電対応時間ではなく使用の有無が設定可能であってもよい。
【0030】
入力検出部33は、受付けた当該停電対応時間を制御部31に出力する。制御部31は、取得した停電対応時間を記憶部34に記憶させる。
【0031】
代替例として需要家は、電力制御装置3と通信可能な端末を用いて、当該端末にダウンロードされたアプリケーションによって当該端末の表示部に表示される画像を視認しながら停電対応時間を設定することもできる。
【0032】
また、制御部31は、電力会社サーバ1、アグリゲータ等からのデマンドレスポンスの要請の有無を判定する。
【0033】
デマンドレスポンスの要請がないと判定したとき、制御部31は後述するデマンドレスポンス時制御を行わず、通常時に使用されるものとして需要家によって設定された負荷機器6を想定使用負荷機器と決定し、また各負荷機器6に設定された停電対応時間を決定する。
【0034】
他方、デマンドレスポンスの要請があると判定したとき、制御部31は、デマンドレスポンス時制御を行う。すなわち、まず制御部31は、次の通りデマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブ(料金)の少なくとも一方に応じた停電対応時間の設定情報を、記憶部34から取得し、想定使用負荷機器を停電対応時間とともに決定する。
【0035】
想定使用負荷機器とは、需要家が設定した停電対応時間から、停電時に使用されると決定される負荷機器6である。すなわち、想定使用負荷機器とは、停電対応時間がゼロより大きい負荷機器6である。需要家が設定した想定使用負荷機器の一例を図2に示す。
【0036】
図2に一例として示すように、デマンドレスポンスの要請レベルが「低」のときの想定使用負荷機器は、照明、エアコン、冷蔵庫、テレビである。また、デマンドレスポンスの要請レベルが「中」のときの想定使用負荷機器は、照明及びエアコンである。さらに、デマンドレスポンスの要請レベルが「高」のときの想定使用負荷機器は、照明のみである。
【0037】
異なる機能として、制御部31はデマンドレスポンスの要請があると判定したとき、停電対応時間の案を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて報知してもよい。すなわち、制御部31は、表示部32を介して需要家に当該案を報知して、入力検出部33は、当該報知に対する需要家による入力を受付ける。例えば制御部31は、デマンドレスポンスの緊急度が高いときまたはインセンティブが高いときは、需要家が事前に設定した停電対応時間(例えば、6時間)を4時間に減少する案を、表示部32に表示させる。制御部31は、停電対応時間の設定情報を取得して、想定使用負荷機器及び停電対応時間を決定する。代替例として制御部31は、停電対応時間を、前デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定してもよい。
【0038】
デマンドレスポンスの要請の有無がいずれの場合においても、想定使用負荷機器及び停電対応時間の決定後、制御部31は、電力情報を取得する。電力情報は、分電盤5から取得される負荷機器6の消費電力情報を少なくとも含む。また電力情報は、発電装置4から取得される発電電力情報及び蓄電装置7から取得される蓄電池残量情報をさらに含むことが好ましい。さらに、電力情報は、スマートメータ2から取得される売電電力情報及び蓄電装置7から取得される充放電電力情報を含んでもよい。
【0039】
制御部31は、取得した電力情報に基づいて、想定使用負荷機器の停電時の電力需要予測量及び停電時の発電予測量を算出する。このとき制御部31は、任意のサーバからネットワーク経由で取得した日射予測量の情報及びメーカ等のサーバからネットワーク経由で取得した太陽光パネルの発電能力の情報に基づいて発電予測量を算出してもよい。
【0040】
制御部31は、蓄電池残量の算出のために発電装置4の発電予測量も考慮に入れるときには、発電装置4(本実施形態では太陽光発電装置)の発電予測量を、停電時における発電装置4の自立運転時の発電可能電力量(本実施形態では定格出力)に基づいて算出する。制御部31は例えば発電可能電力量の情報を発電装置4から取得する。
【0041】
また、制御部31は、発電予測量を、停電時における発電装置4から蓄電装置内の蓄電池72への充電可能電力量に基づいて算出してもよい。制御部31は例えば充電可能電力量の情報を、蓄電装置7から取得する。
【0042】
さらに、制御部31は、発電予測量を、発電装置4及び蓄電池72の少なくとも一方の、故障状態及びメンテナンス動作予定の少なくとも一方に基づいて算出してもよい。故障状態及びメンテナンス動作予定は例えば、電力制御装置3によって発電装置4及び蓄電装置7から取得される。
【0043】
制御部31は、電力需要予測量と、発電予測量と、蓄電池情報(例えば定格効率)と、停電対応時間とに基づいて、停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を算出する。
【0044】
算出後、制御部31は確保すべき蓄電池残量を設定し、蓄電池72の充放電制御を行う。具体的には制御部31は、確保すべき蓄電池残量を記憶部34に記憶させ、当該蓄電池残量が確保されるように蓄電装置7の外部から蓄電池72の充放電を制御する。または、制御部31は、蓄電装置7に確保すべき蓄電池残量を設定し、蓄電装置7のPCS71が、当該蓄電地残量を確保するように蓄電池72を制御してもよい。
【0045】
電力制御装置3が、選択された負荷機器6を制御可能なときは、設定された通りに電力制御装置3が制御を行う。
【0046】
以上説明した蓄電池残量の算出方法の具体例を、停電時以外のときと停電時とを比較しながら説明する。本実施形態においては一例として、全想定使用負荷機器の停電対応時間は12時〜18時の6時間であり定格効率は0.94であるとして説明する。また、本実施形態においては一例として、停電時において想定使用負荷機器が消費する電力は、停電時以外のときに使用される負荷機器6の消費電力の半分であり、停電時において発電装置4が発電する発電可能電力の最大値は1500Wとして説明する。
【0047】
図3(a)は、停電時以外における電力需要予測量、発電予測量及び放電予測量を実線で示し、停電時(デマンドレスポンス対応なし)における停電時電力需要予測量、停電時発電予測量及び停電時放電予測量を破線で示した図である。図3(b)及び図3(c)は、図3(a)に対応するデータを示す図である。図3(c)において停電時放電予測量が負の値になっている時間帯では、蓄電池72は、停電時発電予測量のうち停電時電力需要予測量を超過する量の電力を充電している。
【0048】
図3(a)に記載の通り、停電時以外のとき(実線で示す)において、16〜18時の間で発電予測量が電力需要予測量を下回る。他方、停電時(破線で示す)においては、全想定使用負荷機器の消費電力は、停電時以外のときに使用される負荷機器6の消費電力の半分である。そのため、破線で示す停電時電力需要予測量は、実線で示す電力需要予測量よりも小さく、停電時発電予測量が停電時電力需要予測量を下回るのは17〜18時の間である。この間、発電予測量の不足分を補うように制御部31は蓄電池72を放電させる。
【0049】
前述のとおり、図3(a)の破線は、制御部31が停電時にデマンドレスポンス対応を行わない場合の電力量を示している。制御部31が停電時にデマンドレスポンス対応を行うときの想定使用負荷機器の電力需要予測量は、デマンドレスポンス対応を行わないときの電力需要予測量に比べて小さいこと、及び、想定使用負荷機器の電力需要予測量はデマンドレスポンスのレベルが高くなるほど小さいことに留意されたい。
【0050】
制御部31は、12時の時点で確保すべき蓄電池残量を、12時からの6時間の間(すなわち、12〜18時)に不足する電力量の合計を定格効率で割った値として算出する。停電時において、12〜18時の間に不足する電力量は、各時間帯で停電時電力需要予測量から停電時発電予測量を減算した値(すなわち、「停電時放電予測量」)の合計値(ただし、負のときは0)に基づいて算出される。例えば図3(c)に示す通り、12〜18時の間の停電時放電予測量の合計値は−4170Whである。このとき、17〜18時の間に不足する電力量が、12〜17時の間に充電する電力量で賄われているため、12時の時点で確保すべき蓄電地残量は0Whである。
【0051】
同様に制御部31は、例えば1時間毎の確保すべき蓄電量を算出する。例えば13時の時点で確保すべき蓄電池残量を、13時からの6時間の間に不足する電力量の合計(ただし、負のときは0)を定格効率で割った値として制御部31は算出する。図3(c)に示す通り、13時の時点で確保すべき蓄電池残量も0である。14、15、16及び17時等の時点で確保すべき蓄電池残量も、制御部31は同様に算出する。説明は省略する。
【0052】
この結果、蓄電池72は、12、13及び14時の時点では0Whを確保した状態となり、余剰の蓄電池残量をデマンドレスポンスの対応に使用することが可能になるため、経済性が向上する。15時の時点では215Whを確保した状態となる。また、蓄電池72は、16時の時点では1215Whを、17時の時点では1710Whを確保した状態となる。また、デマンドレスポンスのレベルが高くなるほど、想定使用負荷機器の電力需要予測量が小さくなり、確保する蓄電池残量を少なくできることでより多くの蓄電池残量をデマンドレスポンスの対応に使用することが可能になる。デマンドレスポンスのレベルが高くなるほど、インセンティブも高くなると考えられるため、経済性の向上も大きい。
【0053】
[動作フロー]
図4図1に示す電力制御装置3が任意の時間間隔で実行する動作フローを示す図である。
【0054】
電力制御装置3は、停電対応時間の設定を需要家から受付け、記憶部34に記憶する(ステップS1)。電力制御装置3は、デマンドレスポンスの要請があるか否かを判定する(ステップS2)。
【0055】
デマンドレスポンスの要請があると判定したとき(ステップS2のYes)、電力制御装置3は、デマンドレスポンスのレベルに基づいて、記憶部34から停電対応時間の設定情報を取得し、想定使用負荷機器及び停電対応時間を決定する(ステップS3)。他方、デマンドレスポンスの要請がないと判定したとき(ステップS2のNo)、電力制御システム90は、記憶部34から停電対応時間の設定情報を取得し、想定使用負荷機器及び停電対応時間を決定する(ステップS4)。
【0056】
次いで電力制御装置3は、スマートメータ2、発電装置4、蓄電装置7、分電盤5等から電力情報を取得する(ステップS5)。電力制御装置3は、取得した電力情報に基づいて、停電時の電力需要予測量及び停電時の発電予測量を算出する(ステップS6)。
【0057】
電力制御装置3は、電力需要予測量と、発電予測量と、蓄電池情報と、停電対応時間とに基づいて、確保すべき蓄電池残量を算出する(ステップS7)。電力制御装置3は、ステップS7で算出した確保すべき蓄電池残量を設定し、蓄電池72の充放電制御を行う(ステップS8)。
【0058】
上記実施形態の通り、制御部31は、停電の発生に備え確保すべき蓄電池残量を、停電時に使用される負荷機器6の電力需要予測量と、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方と、に基づいて算出する。このため、停電が発生したときでも、負荷機器6を使用するのに必要最低限の残量を算出することができるため、必要最低限の蓄電池残量は残した状態で、最大限に蓄電池72を活用できる。すなわち、需要家は昼間の買電量を減らし購入費用を削減することができるという経済的メリットを享受できる。また、デマンドレスポンス要請が発動されるときには、確保すべき蓄電池残量を減少させてより多く放電させることで、商用系統の緊急事態を回避することができる。さらに、需要家はインセンティブを獲得することが可能となる。
【0059】
また、上記実施形態の通り、制御部31は、発電予測量を、停電時における発電装置4の自立運転時の発電可能電力量に基づいて算出する。このため、発電装置4において停電時とそれ以外のときとでシステム制約によって発電可能電力量が異なっていても、このことを考慮した正確な算出を行うことができる。
【0060】
また、上記実施形態の通り、制御部31は、発電予測量を、停電時における発電装置4から蓄電池72への充電可能電力量に基づいて算出する。システム制約によって、発電装置4が発電した電力全てを蓄電池72へ充電することが不可能であること(または充電可能電力量に制限があること)がある。このとき、発電予測量は停電時以外のときの発電量より少ない。したがって、発電予測量を当該充電可能電力量に基づいて算出することによって正確な算出を行うことができる。
【0061】
また、上記実施形態の通り、制御部31は、発電予測量を、発電装置4及び蓄電池72の少なくとも一方の、故障状態及びメンテナンス動作予定の少なくとも一方に基づいて算出する。このため、発電または充電の可否を考慮した正確な算出を行うことができる。
【0062】
さらに、上記実施形態の通り、制御部31は、停電時に負荷機器6が使用可能となる停電対応時間の案を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて報知する。このため、商用系統の緊急事態の回避及びインセンティブの獲得が容易となる。
【0063】
さらに、上記実施形態の通り、制御部31は、停電時に負荷機器6が使用可能となる停電対応時間を、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に基づいて決定し、当該停電対応時間に基づいて前記蓄電池残量を算出する。このとき、デマンドレスポンスの要請の緊急度及びインセンティブの少なくとも一方に応じた適切な停電対応時間が決定されて蓄電池残量が算出されるため、商用系統の緊急事態の回避及びインセンティブの獲得が容易となる。
【0064】
本発明の一実施形態を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各部材、各部、各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能である。また、本発明を方法の発明として実施するときにも、複数の部やステップなどを1つに組み合わせたり、あるいは分割したりすることが可能である。
【0065】
本開示内容の制御は、プログラム命令を実行可能なコンピュータシステムその他のハードウェアによって実行される、一連の動作として示される。コンピュータシステムその他のハードウェアには、たとえば、汎用コンピュータ、PC(パーソナルコンピュータ)、専用コンピュータ、ワークステーション、またはその他のプログラム可能なデータ処理装置が含まれる。各実施形態では、種々の動作は、プログラム命令(ソフトウェア)で実装された専用回路(例えば、特定機能を実行するために相互接続された個別の論理ゲート)や、1つ以上のプロセッサによって実行される論理ブロックやプログラムモジュール等によって実行されることに留意されたい。論理ブロックやプログラムモジュール等を実行する一以上のプロセッサには、たとえば、1つ以上のマイクロプロセッサ、CPU(中央演算処理ユニット)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、コントローラ、マイクロコントローラ、電子機器、ここに記載する機能を実行可能に設計されたその他の装置及び/またはこれらいずれかの組合せが含まれる。ここに示す実施形態は、たとえば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコードまたはこれらいずれかの組合せによって実装される。
【0066】
ここで用いられるネットワークには、他に特段の断りがない限りは、インターネット、アドホックネットワーク、LAN(Local Area Network)、セルラーネットワーク、もしくは他のネットワークまたはこれらいずれかの組合せが含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1 電力会社サーバ
2 スマートメータ
3 電力制御装置
31 制御部
32 表示部
33 入力検出部
34 記憶部
4 発電装置
5 分電盤
6 負荷機器
7 蓄電装置
71 PCS
72 蓄電池
80 電力会社
90 電力制御システム
図1
図2
図3
図4