特許第6243082号(P6243082)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 山村 武司の特許一覧

特許6243082自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法
<>
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000002
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000003
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000004
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000005
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000006
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000007
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000008
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000009
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000010
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000011
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000012
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000013
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000014
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000015
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000016
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000017
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000018
  • 特許6243082-自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法 図000019
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6243082
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 22/03 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B60R22/03
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-168608(P2017-168608)
(22)【出願日】2017年9月1日
【審査請求日】2017年9月1日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595125155
【氏名又は名称】山村 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100083437
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 實
(72)【発明者】
【氏名】山 村 武 司
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−193707(JP,A)
【文献】 特開平10−236277(JP,A)
【文献】 特開2007−030528(JP,A)
【文献】 特開2010−125965(JP,A)
【文献】 特開2013−001291(JP,A)
【文献】 特開2016−013809(JP,A)
【文献】 特開2016−043888(JP,A)
【文献】 実開昭64−016463(JP,U)
【文献】 実開昭61−179064(JP,U)
【文献】 西独国特許出願公開第3537089(DE,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/00−22/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法に設定され、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有する支持フレームが設けられ、該支持フレームの前後端間に、前後方向に軸心を向けた案内軸が掛け渡され、該案内軸に対して移動体が摺動自在に装着され、該移動体の対象座席に対峙する側壁には、吊杆が前倒不能および後揺動自在に軸支、吊下され、同吊杆の下端からは、対象となるシートベルトに係合可能な係合枝が収納姿勢とベルト係合姿勢とに姿勢変化自在に突出され、該移動体を案内軸に沿って進・退移動可能であって、該移動体が後退中に吊杆を自動的に後倒可能な折り畳み機能を有する自動送り機構が設けられ、該自動送り機構の動作に連動し、該移動体の前進中に吊杆の係合枝をベルト係合位置に、該移動体の後退中に吊杆の係合枝を収納位置に姿勢変化可能な展開機構が設けられ、該自動送り機構を自動的に制御可能な自動制御部を有してなるものとしたことを特徴とする自動シートベルト牽引装置。
【請求項2】
対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法に設定され、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有する支持フレームが設けられ、該支持フレームの前後端間に、前後方向に軸心を向けた案内軸が掛け渡され、該案内軸に対して移動体が摺動自在に装着され、該移動体の対象座席に対峙する側壁には、吊杆が前倒不能および後揺動自在に軸支、吊下され、同吊杆の下端からは、対象となるシートベルトに係合可能な係合枝が収納姿勢とベルト係合姿勢とに姿勢変化自在に突出され、該移動体を案内軸に沿って進・退移動可能であって、該移動体が後退中に吊杆を自動的に後倒可能な折り畳み機能を有する自動送り機構が設けられ、該自動送り機構の動作に連動し、該移動体の前進中に吊杆の係合枝をベルト係合位置に、該移動体の後退中に吊杆の係合枝を収納位置に姿勢変化可能な展開機構が設けられ、該自動送り機構を自動的に制御可能な自動制御部を有し、前記移動体が、案内軸に沿って前進し、吊下姿勢の吊杆が、ベルト係合位置に係合枝に係合したシートベルトを、対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の前方適所まで自動的に引き出し、該移動体が、案内軸に沿って後退する間に渡り、吊杆が後倒姿勢に折り畳まれ、該移動体が案内軸の後端まで後退すると、吊杆の係合枝が、収納姿勢となるよう動作可能とされてなるものとしたことを特徴とする自動シートベルト牽引装置。
【請求項3】
対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法に設定され、前後端に軸受け板を有し、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有する支持フレームが設けられ、該支持フレームの前後端の軸受け板間に、前後方向に軸心を向けた送りネジ、および該送りネジに平行な案内軸が掛け渡され、該支持フレームには、送りネジおよび案内軸の上側に沿って後倒制御下壁を有するガイド板が、折り畳み機能の一部として一体化され、該送りネジおよび案内軸には、主動体が、該送りネジに対して螺着され、同主動体は、同主動体の前側面から、該送りネジおよび案内軸に平行且つ、前端に脱抜規制部を有し、所定長寸法に設定された牽引棒が前方に向けて突設され、同主動体の対象座席がわとなる側壁から前方に向けて押操作部が延伸され、該送りネジおよび案内軸の主動体よりも前方となる位置には、該送りネジおよび案内軸に対して摺動自在であって、該主動体の牽引棒が、該送りネジおよび案内軸に平行な方向に摺動自在且つ、脱抜不能に貫通された従動体が装着され、該主動体と従動体との組み合わせから移動体がなり、前記支持フレームの前端の軸受け板に、従動体の接近を検知可能な前検知部が設けられ、同支持フレームの後端の軸受け板に、主動体の接近を検知可能な後検知部が設けられ、該従動体の対象座席に対峙する側壁には、揺れ腕、吊幹部および係合枝からなる吊杆が、該揺れ腕に設けられた揺動軸を介して前倒不能および後揺動自在に軸着され、該揺れ腕の上端に、前記ガイド板の後倒制御下壁に従動するよう転動可能なガイドローラーが、折り畳み機能の一部として片持ち支持軸を介して設けられ、同揺れ腕の下端に対して、揺動軸に直交する回動軸心回りの収納方向に弾性的に付勢可能な、収納付勢機構を有する回動軸着部を介して吊幹部が垂下延伸状に軸着され、該吊幹部上下端間中途適所外壁から、前記主動体の押操作部の干渉力を受けて該回動軸着部回りの回動運動に変換可能な展開枝が突出され、同吊幹部下端からは、対象となるシートベルトに係合可能な係合枝が水平姿勢状に延出され、当該支持フレームには、吊杆の揺れ腕の揺動軸よりも下方、垂下状姿勢の吊杆の吊幹部の下端より上方となる前方寄りの適所に折り畳み機能の一部をなす姿勢制御部が設けられ、前記送りネジの前後端の少なくとも何れか一方に正・逆回転制御可能な回転駆動源が設けられ、対象車両のアクセサリー起動およびエンジン始動の少なくとも何れか一方に伴って起動し、前記回転駆動源を、前記前検知部および後検知部と連動するよう制御可能な自動制御部を有してなるものとしたことを特徴とする自動シートベルト牽引装置。
【請求項4】
ガイド板が、その後倒制御下壁の後端で、後方に向けて次第に上向きに湾曲する曲面形状のものとされ、当該吊杆の姿勢変化を緩やかに緩衝可能な緩衝案内曲面壁部としてなる、請求項3記載の自動シートベルト牽引装置。
【請求項5】
自動制御部が、対象座席の、対象シートベルトが装着されているか、否かを検知可能な対象シートベルト被装着検知部を有するものとしてなる、請求項1ないし4何れか一記載の自動シートベルト牽引装置。
【請求項6】
対象車両のアクセサリー起動およびエンジン始動の少なくとも何れか一方に伴って起動し、対象座席の、対象シートベルトが装着されてない場合には、自動送り機構が、移動体を支持フレームの前端の軸受け板に近接するまで前進して停止し、対象シートベルトが装着された後、自動送り機構が、移動体を支持フレームの後端の軸受け板に近接するまで後退して停止するよう自動的に制御し、自動送り機構の折り畳み機能が、後退中の移動体が、支持フレームの後端の軸受け板に近接するまでの間、移動体を後倒姿勢に折り畳まれた状態に維持するよう自動的に制御するようにしてなるものとしたことを特徴とする、請求項5記載の自動シートベルト牽引装置の制御方法。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用のシートベルト技術に関連するものであり、特に、シートベルトの装着操作を補助し、より簡便に装着可能なものとした自動シートベルト牽引装置を製造、提供する分野は勿論のこと、その輸送、保管、組み立ておよび設置に必要となる設備、器具類を提供、販売する分野から、それら資材や機械装置、部品類に必要となる素材、例えば、木材、石材、各種繊維類、プラスチック、各種金属材料等を提供する分野、それらに組み込まれる電子部品やそれらを集積した制御関連機器の分野、各種計測器の分野、当該設備、器具を動かす動力機械の分野、そのエネルギーとなる電力やエネルギー源である電気、オイルの分野といった一般的に産業機械と総称されている分野、更には、それら設備、器具類を試験、研究したり、それらの展示、販売、輸出入に係わる分野、将又、それらの使用の結果やそれを造るための設備、器具類の運転に伴って発生するゴミ屑の回収、運搬等に係わる分野、それらゴミ屑を効率的に再利用するリサイクル分野などの外、現時点で想定できない新たな分野までと、関連しない技術分野はない程である。
【背景技術】
【0002】
(着目点)
一般的な自動車用のシートベルトは、例えば運転席を例に示すと、センターピラー下がわのフロアー付近に内蔵されたリトラクターから引き出されたウェビングの一端がわが、センターピラーのルーフ寄りであって、運転席(以降対象座席と記す)のバックレストよりも高い位置付近に吊設されたスルーアンカーを通り、さらにランチプレートが通された上、該ウェビングの一端がわが、センターピラー下がわのフロアー付近にアンカーを介するなどして固着される一方、該対象座席のバックレスト下の車室中央がわのフロアー付近にはバックルが設けられてなり、乗員の身体の要部と胴部とを対象座席に固定する、所謂3点式シートベルトが広く普及しており、対象座席に着座した乗員は、センターピラーのスルーアンカーに収容状態に吊り下がるウェビングのランチプレート付近を掴み、フロアーがわに内蔵されたリトラクターから引き出すように操作し、身体の前方に巻き付けるようにして該ランチプレートをバックルにロックするまで挿し込み、装着することとなる。
【0003】
しかしながら、こうした3点式シートベルトは、装着の際に、対象座席の斜め上後方に位置するスルーアンカーに吊り下がるランチプレート付近を掴み、引き出すという操作が不可欠なものとなっており、健常者であっても、首や肩などの身体の何処かを一時的に痛めてしまった場合などは、手が届きにくく苦労してしまうことがあり、さらに、高齢者や身体に障害をもつ人々などにとっては、それら装着操作が非常に負担になるという課題を有していた。
【0004】
(従来の技術)
こうした状況を反映し、その打開策となるような提案も、これまでに散見されない訳ではない。
例えば、下記の特許文献1(1)に提案されているものに代表されるように、対象車両の対象座席直上となる車室内壁にガイドレールが設けられ、該ガイドレールに沿って、移動式バックルおよびそれに接続されたタングプレートがワイヤー駆動によって移動する構造とされ、3点式シートベルトと、2点式オートマチックベルトとを備え、3点式シートベルトのバックルとタングプレートとの係合を検知した場合に、2点式オートマチックベルトを、乗員の上半身を拘束する該3点式シートベルトのウェビングに交差するよう、自動的に装着するように動作可能にされてなるものや、同特許文献1(2)に見られるような、3点式シートベルトおよびオートマチックベルトを備えた4点式シートベルト装置が、対象車両の対象座席の前方のAピラー上端付近からルーフ、Bピラー上端およびBピラーの上下端間の上端寄りとなる中途部に至るガイドレール、および、該ガイドレールに沿ってスライド移動するスライダにアンカーが連結され、3点式シートベルトの乗員への装着後にオートマチックベルトが作動してアンカーが待機位置に配置されるようにしてなるもの、また、同特許文献1(3)に示されたもののように、3点式シートベルトにおいて、対象車室内のルーフ内壁に前後方向に延びる送りネジが設けられ、該送りネジに対して、該シートベルトのウェビングのショルダー部を繋着したスプロケット・リールが、進退自在に螺合され、該ウェビングとスプロケット・リールとの間に、該ウェビングの変位を受けてスプロケット・リールが、該送りネジ対して回転動されるものとされ、該ウェビングを引き出すとスプロケット・リールが自動的に後退し、該ウェビングを待機位置に戻すとスプロケット・リールが自動的に前進するようにされたものなどが散見される。
【0005】
しかし、前者特許文献1(1)に示されているようなシートベルト装置などは、2点式シートベルトの上端のタングプレートが接続されたバックルが、対象車室内のルーフ壁に設けられたガイドレールのワイヤ中途部に繋着されたものとしてあり、対象車両の急制動や衝突した場合には、着座者から2点式シートベルトに加わる衝撃的荷重が、タングプレートおよびバックルを介してガイドレールのワイヤに伝わることとなるから、ガイドレールおよびワイヤーは、充分な安全を確保できる強度をもって対象車室内のルーフ壁に対して強固に一体化されたものとされていなければならず、ガイドレールおよびワイヤが装着されるルーフ壁の補強を含め、車体の補強などが充分になされていなければ、安全の確保が難しく、自動車の生産工程か、専用設計された部品を販売店が設置するなどの必要性が高く、一般の利用者が、別部品のガイドレールを簡単に後付けして簡便に設置できるものではない。
【0006】
また、前記特許文献1(2)の4点式シートベルト装置などは、2点式シートベルトのアンカーが、所謂ルーフサイドレールに沿って設けられたガイドレールのスライダに接続されているから、着座者が装着した状態にある2点式シートベルトに加わる、急制動や衝突の衝撃力は、アンカーを通じてガイドレールに加わることとなるから、こうした、シートベルト装置の設置も、やはり、自動車の生産工程か、専用設計された部品を販売店が設置するなどの必要性が高く、一般の利用者が別部品のガイドレールを簡単に後付け設置できるものとはなっていない。
【0007】
そして、後者特許文献1(3)に代表する自動車用シートベルト装置のような構造もまた、3点式シートベルトの着座者の肩上がわ配置となるウェビングの中途部が、送りネジに螺着されたスプロケット・リールに対して巻き掛けられたものとなっているから、該送りネジそれ自体の強度は勿論のこと、対象車体がわへの取り付け強度も充分に確保しなければならず、一般の利用者が、別部品の装置を車体に組み込んで気軽に利用するのは困難なものであると云わざるを得ないものであった。
【特許文献1】(1)特開2007―137177号公報 (2)特開2017−24680号公報 (3)実開昭62−139868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
(問題意識)
上述したとおり、従前までに提案のある着座のときのシートベルトの装着操作を補助可能とした各種のシートベルト装置などは、何れもウェビングの中途箇所、または、ウェビングを吊すショルダーベルトアンカー(スルーアンカー)や、タングプレートが接続されたバックルなどの連結金具類の何れかが、ガイドレール類や送りネジ類に吊り下がる構造とされているから、該ガイドレール類や送りネジ類は、充分な強度をもって対象車体へ結合されたものとしなければならず、車両への組み込みには、車体構造に関して充分な知識と経験とを有する、専門的な技術が不可欠とされ、自動車の生産工場や自動車販売店などに組み込みを以来せざるを得ないものであって、特に、既存の車両に新たに別部品を組み込んで同様の補助機能を追加しようとすると、多大な経費と労力とを注ぎ込まなければ、充分な安全を確保するのが非常に困難であり、本願出願人は、例えば、運転席や助手席などに着座した場合に、従来型の3点式ショルダーベルトにおける、Bピラーのショルダーベルトアンカー(スルーアンカー)に吊り下がるランチプレート(タングプレート)およびそれに通されたウェビングを引き寄せる為に、上半身を捩り、手腕を伸ばす動作が、永年に渡って負担となっており、健常者であっても首や腕、脇腹などを痛めたりした場合は勿論であるが、筋力の衰えた高齢者や身体に障害のある人々などにとっても大きな負担となっている現状を鑑み、一般の利用者が、車両に対して簡単に取り付けることができ、3点式ショルダーベルトの装着操作性を向上し、それによってシートベルトの装着率の向上と、運転安全性の向上とを達成可能とする新技術の開発の必要性を痛感するに至ったものである。
【0009】
(発明の目的)
そこで、この発明は、ショルダーベルトの安全性を充分に確保できる上、既存の車両に対して、一般の利用者が簡便に装着することができる新たなシートベルトの装着補助技術の開発はできないものかとの判断から、逸速くその開発、研究に着手し、長期に渡る試行錯誤と幾多の試作、実験とを繰り返してきた結果、今回、遂に新規な構造の自動シートベルト牽引装置、およびその新規な自動シートベルト牽引装置の制御方法を実現化することに成功したものであり、以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構成を詳述することとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の構成)
図面に示すこの発明を代表する実施例からも明確に理解されるように、この発明の自動シートベルト牽引装置は、基本的に次のような構成から成り立っている。
即ち、対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法に設定され、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有する支持フレームが設けられ、該支持フレームの前後端間に、前後方向に軸心を向けた案内軸が掛け渡され、該案内軸に対して移動体が摺動自在に装着され、該移動体の対象座席に対峙する側壁には、吊杆が前倒不能および後揺動自在に軸支、吊下され、同吊杆の下端からは、対象となるシートベルトに係合可能な係合枝が収納姿勢とベルト係合姿勢とに姿勢変化自在に突出され、該移動体を案内軸に沿って進・退移動可能であって、該移動体が後退中に吊杆を自動的に後倒可能な折り畳み機能を有する自動送り機構が設けられ、該自動送り機構の動作に連動し、該移動体の前進中に吊杆の係合枝をベルト係合位置に、該移動体の後退中に吊杆の係合枝を収納位置に姿勢変化可能な展開機構が設けられ、該自動送り機構を自動的に制御可能な自動制御部を有してなるものとした構成を要旨とする自動シートベルト牽引装置である。
【0011】
この基本的な構成からなる自動シートベルト牽引装置は、その表現を変えて示すならば、対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法に設定され、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有する支持フレームが設けられ、該支持フレームの前後端間に、前後方向に軸心を向けた案内軸が掛け渡され、該案内軸に対して移動体が摺動自在に装着され、該移動体の対象座席に対峙する側壁には、吊杆が前倒不能および後揺動自在に軸支、吊下され、同吊杆の下端からは、対象となるシートベルトに係合可能な係合枝が収納姿勢とベルト係合姿勢とに姿勢変化自在に突出され、該移動体を案内軸に沿って進・退移動可能であって、該移動体が後退中に吊杆を自動的に後倒可能な折り畳み機能を有する自動送り機構が設けられ、該自動送り機構の動作に連動し、該移動体の前進中に吊杆の係合枝をベルト係合位置に、該移動体の後退中に吊杆の係合枝を収納位置に姿勢変化可能な展開機構が設けられ、該自動送り機構を自動的に制御可能な自動制御部を有し、前記移動体が、案内軸に沿って前進し、吊下姿勢の吊杆が、ベルト係合位置に係合枝に係合したシートベルトを、対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の前方適所まで自動的に引き出し、該移動体が、案内軸に沿って後退する間に渡り、吊杆が後倒姿勢に折り畳まれ、該移動体が案内軸の後端まで後退すると、吊杆の係合枝が、収納姿勢となるよう動作可能とされてなるものとした構成からなる自動シートベルト牽引装置となる。
【0012】
より具体的には、対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法に設定され、前後端に軸受け板を有し、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有する支持フレームが設けられ、該支持フレームの前後端の軸受け板間に、前後方向に軸心を向けた送りネジ、および該送りネジに平行な案内軸が掛け渡され、該支持フレームには、送りネジおよび案内軸の上側に沿って後倒制御下壁を有するガイド板が、折り畳み機能の一部として一体化され、該送りネジおよび案内軸には、主動体が、該送りネジに対して螺着され、同主動体は、同主動体の前側面から、該送りネジおよび案内軸に平行且つ、前端に脱抜規制部を有し、所定長寸法に設定された牽引棒が前方に向けて突設され、同主動体の対象座席がわとなる側壁から前方に向けて押操作部が延伸され、該送りネジおよび案内軸の主動体よりも前方となる位置には、該送りネジおよび案内軸に対して摺動自在であって、該主動体の牽引棒が、該送りネジおよび案内軸に平行な方向に摺動自在且つ、脱抜不能に貫通された従動体が装着され、該主動体と従動体との組み合わせから移動体がなり、前記支持フレームの前端の軸受け板に、従動体の接近を検知可能な前検知部が設けられ、同支持フレームの後端の軸受け板に、主動体の接近を検知可能な後検知部が設けられ、該従動体の対象座席に対峙する側壁には、揺れ腕、吊幹部および係合枝からなる吊杆が、該揺れ腕に設けられた揺動軸を介して前倒不能および後揺動自在に軸着され、該揺れ腕の上端に、前記ガイド板の後倒制御下壁に従動するよう転動可能なガイドローラーが、折り畳み機能の一部として片持ち支持軸を介して設けられ、同揺れ腕の下端に対して、揺動軸に直交する回動軸心回りの収納方向に弾性的に付勢可能な、収納付勢機構を有する回動軸着部を介して吊幹部が垂下延伸状に軸着され、該吊幹部上下端間中途適所外壁から、前記主動体の押操作部の干渉力を受けて該回動軸着部回りの回動運動に変換可能な展開枝が突出され、同吊幹部下端からは、対象となるシートベルトに係合可能な係合枝が水平姿勢状に延出され、当該支持フレームには、吊杆の揺れ腕の揺動軸よりも下方、垂下状姿勢の吊杆の吊幹部の下端より上方となる前方寄りの適所に折り畳み機能の一部をなす姿勢制御部が設けられ、前記送りネジの前後端の少なくとも何れか一方に正・逆回転制御可能な回転駆動源が設けられ、対象車両のアクセサリー起動およびエンジン始動の少なくとも何れか一方に伴って起動し、前記回転駆動源を、前記前検知部および後検知部と連動するよう制御可能な自動制御部を有してなるものとした構成からなる自動シートベルト牽引装置となる。
【0013】
(関連する発明)
上記した自動シートベルト牽引装置に関連し、この発明には、その制御方法も包含している。
即ち、対象車両のアクセサリー起動およびエンジン始動の少なくとも何れか一方に伴って起動し、対象座席の、対象シートベルトが装着されてない場合には、自動送り機構が、移動体を支持フレームの前端の軸受け板に近接するまで前進して停止し、対象シートベルトが装着された後、自動送り機構が、移動体を支持フレームの後端の軸受け板に近接するまで後退して停止するよう自動的に制御し、自動送り機構の折り畳み機能が、後退中の移動体が、支持フレームの後端の軸受け板に近接するまでの間、移動体を後倒姿勢に折り畳まれた状態に維持するよう自動的に制御するようにしてなるものとした、この発明の基本である、前記したとおりの自動シートベルト牽引装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0014】
以上のとおり、この発明の自動シートベルト牽引装置によれば、従前までのものとは違い、上記したとおりの固有の特徴ある構成から、既成の様々な対象車両の適宜選択された対象座席の近傍適所に設置することが可能となり、対象車両への設置により、該対象座席に着座した乗員が、従来型の3点式ショルダーベルトにおける、Bピラーのショルダーベルトアンカー(スルーアンカー)に吊り下がるランチプレート(タングプレート)およびそれに通されたウェビングを引き寄せる為に、上半身を捩り、手腕を伸ばす窮屈な動作を不要とし、自動的に乗員の目前付近までランチプレート(タングプレート)およびそれに通されたウェビングを引き出してくれるものとなるから、健常者は勿論のこと、筋力の衰えた高齢者や身体に障害のある人々などにとっても乗車時のシートベルト装着操作の負担を大幅に軽減するものとなり、シートベルトの装着率の向上と、運転安全性の向上とを達成可能にすることができるという秀でた特徴が得られるものである。
【0015】
しかも、この発明の自動シートベルト牽引装置は、従来型の3点式ショルダーベルトの引き出し操作を自動化するものとされ、例えば、ショルダーベルトアンカー(スルーアンカー)に加わるような、対象車両の衝突時などにシートベルトから伝わる衝撃的大荷重を受けることがないから、従来型の既存の3点式ショルダーベルトの安全性を損ねることなく、優れた安全性を維持したまま、ショルダーベルトの装着操作性のみを格段に高めたものとすることができ、専門的知識を持たない一般消費者にも簡便に設置して安全に利用することができるという格段の効果を奏するものである。
【0016】
加えて、支持フレームに対して前後方向に掛け渡し状に設けられた案内軸および送りネジが、移動体の直線的進退移動を確実且つ安定性のあるものとし、しかも移動体が、主動体と従動体とからなり、主動体の前進に伴い、該従動体の吊杆の係合枝を収納位置からベルト係合位置に突起するよう動作し、該係合枝が、シートベルトのウェビング(ショルダーベルト)に対して、より確実に係合されるものとなり、また、主動体の後退に伴い、吊杆の係合枝を収納位置に折り畳むよう動作するから、引き出し動作の途中に、該係合枝からシートベルトのウェビング(ショルダーベルト)が脱落してしまうのを、より確実に防止できるものとなる。
【0017】
さらに、棒形状体の上端に、ガイドローラーが片持ち支持軸を介して設けられた吊杆のガイドローラー寄りとなる中途適所が、従動体に対して揺動軸を介して前倒不能および後揺動自在に軸着され、支持フレームには、姿勢制御部、および、後倒制御下壁を有するガイド板が設けられたものとしてあるから、主動体と共に従動体が後退を開始すると、該吊杆が、揺動軸回りに後倒され、ガイドローラーがガイド板の後倒制御下壁に沿って転動し、該吊杆の後倒姿勢を維持可能とし、シートベルトのウェビング(ショルダーベルト)の引き出しを終えて後退する従動体の吊杆が、折り畳み状となって、対象座席に着座した乗員に干渉してしまうのを、より確実に防止できるものとなる。
【0018】
そして、ガイド板の後倒制御下壁の後端が、後方に向けて次第に上向きに湾曲する曲面形状の緩衝案内曲面壁部とされてなるものは、該後倒制御下壁に沿ってガイドローラーを転動させながら後退移動して来る移動体の従動体の吊杆の瞬間的、衝撃的な垂下姿勢への変化を防止し、従動体の後方への移動に伴い、次第にゆっくりと吊杆が垂れ下がり姿勢へと変化するものとなり、乗員への干渉を防止し、より確実に安全な動作が得られるものとなる。
【0019】
そしてさらに、自動制御部が、対象座席の対象シートベルトが装着されているか否かを検知可能な対象シートベルト被装着検知部を有するものとされたものは、当該自動シートベルト牽引装置が、対象車両のアクセサリー起動およびエンジン始動の少なくとも何れか一方に伴って自動的に起動し、この発明の自動シートベルト牽引装置の制御方法に従い、対象座席の、対象シートベルトが装着されてない場合には、該対象シートベルト被装着検知部を介して、自動制御部が、対象座席の対象シートベルトが装着されてない状態を認識し、自動送り機構が、移動体を支持フレームの前端の軸受け板に近接するまで前進して停止するよう制御し、対象シートベルトが装着された後には、該対象シートベルト被装着検知部を介して、自動制御部が、対象座席の対象シートベルトが装着されたことを認識し、自動送り機構が、移動体を支持フレームの後端の軸受け板に近接するまで後退して停止するよう自動的に制御するものとなり、自動送り機構の折り畳み機能が、後退中の移動体が、支持フレームの後端の軸受け板に近接するまでの間、移動体を後倒姿勢に折り畳まれた状態に維持するよう自動的に制御するようにされたものとすることができ、当該自動シートベルト牽引装置が、その自動制御部による自動制御を、より正確、且つ安全に実行可能なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記したとおりの構成からなるこの発明の実施に際し、その最良もしくは望ましい形態について説明を加えることにする。
支持フレームは、対象車室の対象座席の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁の前後方向の所定範囲に対し、この発明の自動シートベルト牽引装置を構成する主要な部分を、充分な強度をもって取り付け、支持可能とする機能を担うものであり、所定前後長寸法に設定され、対象ルーフ内壁に対して固着可能な固着機構を有し、該支持フレームの前後端の夫々に軸受け板が設けられたものとしなければならず、該固着機構は、対象ルーフ内壁に対してボルトやネジなどを用いて容易に固着可能なブラケット部などとするのが望ましいが、接着剤や熔接などによる取り付けや、対象ルーフに適宜設けられた取り付け対象部分に対してベルト類や結束バンド類などの取り付け用部品類を用いて固着可能なものとすることができる。
【0021】
案内軸は、支持フレームの前後端の軸受け板間に、移動体を前後方向に直線的に進退移動可能となるよう案内する機能を担っており、該支持フレームの前後端の軸受け板間に、前後方向に軸心を向けた姿勢に掛け渡されたものとしなければならず、前後方向の案内範囲に渡って同じ断面形状のものとすべきであり、円形、四角形、五角形、その他の多角形など、様々な断面形状の直線棒状のものとすることができる。
【0022】
移動体は、吊杆を案内軸に沿って前後方向に進退移動自在に支持可能とする機能を担い、該移動体が後退中に吊杆を自動的に後倒可能な折り畳み機能が設けられた自動送り機構による進退移動が可能なものとしなければならず、該自動送り機構の動作に連動し、該吊杆の係合枝を、揺動軸に直交する回動軸心回りの収納位置とベルト係合位置とに回動駆動可能な展開機構が設けられたものとすべきであり、該展開機構は、吊杆の下端または下端近傍の周壁より、係合枝をベルト係合位置に突出し、また、必要に応じて同係合枝を収納位置に収納するよう制御可能とする機能を担い、吊杆の下端または下端近傍の周壁に対して、係合枝を、該吊杆の軸心に略平行な姿勢の収納位置と、該吊杆の軸心に略直交するベルト係合位置とに、出没または起伏可能なものとすることが可能である。
【0023】
移動体は、後述する実施例にも示す通り、主動体と、該主動体の進退移動に従動する従動体との組み合わせからなり、該主動体と従動体との間に、該自動送り機構の動作に連動し、該吊杆が、従動体の側壁に揺動軸を介して軸着された揺れ腕、該揺れ腕の下端に接続された吊幹部、および、吊幹部の下端から水平姿勢状に延出された係合枝からなり、該吊幹部および係合枝を、揺動軸に直交する回動軸心回りの収納位置とベルト係合位置とに回動駆動可能であって、同回動軸心回りの収納位置に向けて弾性的に付勢可能な収納付勢機構を備えた展開機構が組み込まれてなるものとすることができる。
【0024】
自動送り機構は、移動体を案内軸に沿って進退移動可能とすると共に、該移動体が、案内軸の前端がわから後端がわへ移動する場合に、吊杆を後倒姿勢に折り畳み可能とする折り畳み機能を担うものであって、移動体を案内軸に沿って自動的に移動可能なものとしなければならず、利用者のスイッチ操作によって移動体の前進、停止、後退を操作可能なものとすることができる外、マイコンやリレースイッチなどの自動制御回路を有して、移動体の前進、停止、後退を自動的に制御可能なものとすることができ、該折り畳み機能には、吊杆の後倒姿勢と垂下状姿勢との間の姿勢変化が緩やかなものに制御されるよう、油圧ダンパー、エア・ダンパー、スプリング、永久磁石、その他の弾性部品類などを利用してなる回動減衰機構、緩衝機構、防振機構などの少なくとも何れか1つを組み込んでなるものとすることが可能である。
【0025】
自動送り機構は、後述する実施例にも示すように、支持フレームの前後端の軸受け板間に、前後方向に軸心を向けた送りネジ、および該送りネジに平行な案内軸が掛け渡され、該折り畳み機能が、案内軸の上側に沿って後倒制御下壁を有するガイド板と、該支持フレームの案内軸下側の前方寄りの適所に設けられた姿勢制御部と、吊杆の上端に片持ち支持軸を介して設けられ、前記ガイド板の後倒制御下壁に従動するよう転動可能なガイドローラーとから実現化されたものとすることができ、前記送りネジは、前後端にプーリーを有する無端ベルト機構、前後端にスプロケットを有する無端チェーン機構、ラック・アンド・ピニオン機構、ワイヤー巻き取り機構、その他の動力伝達機構に置き換えてなるものとすることが可能である。
【0026】
自動送り機構の駆動源は、回転モーターや電磁石、エアコンプレッサー、油圧ポンプ、その他の駆動源を利用するのが望ましく、例えば、対象車両に搭載されたバッテリーからの電力の供給を受けて駆動可能な回転駆動源とすることができ、後述する実施例にも示すように、送りネジの一端に直接、または、減速用ギアボックスや継ぎ手類などを介するなどして接続された送りネジ用駆動モーターとすることが可能である。
【0027】
ガイド板、および、吊杆の上端に対して片持ち支持軸を介して前記ガイド板の後倒制御下壁に従動するよう転動可能に設けられたガイドローラーは、自動送り機構の折り畳み機能の一部を担うものであって、吊杆の後退移動中の後倒を可能にする機能の一部を担うものであって、後述する実施例にも示しているが、支持フレームの、送りネジおよび案内軸の下側の前方寄りの適所に設けられた姿勢制御部としての姿勢制御棒が、案内軸の後端から前方へ移動する吊杆の揺れ腕および吊幹部の垂下状姿勢に影響を与えず、案内軸の前端から後方へ移動する吊杆の揺れ腕および吊幹部の適所に係合して、該吊杆を後倒姿勢に折り畳む機能を担うものとすることが可能である。
【0028】
姿勢制御部は、自動送り機構の折り畳み機能の一部をなし、移動体が、案内軸に沿って前進する過程では、吊杆の姿勢に影響を与えず、移動体が、案内軸に沿って後退を開始する段階に、該吊杆を、自動的に後倒姿勢に折り畳み、同吊杆の上端に対して片持ち支持軸を介して軸着されたガイドローラーが、ガイド板の後倒制御下壁の前端がわに転動自在に当接するよう誘導する機能を分担し、吊杆の揺れ腕の揺動軸よりも下方、垂下状姿勢の吊杆の吊幹部の下端より上方となる前方寄りとなる支持フレームの適所に設けられたものとするのが望ましく、支持フレームとは別体に設けられ、対象車室内壁の該支持フレームの近傍適所となる箇所に、固着されたものとすることが可能であり、例えば、垂直軸心回りの一方向にのみ回転自在、逆転不能とした回転扉型のものとし、吊杆が前進する場合には、一方向に回転して吊杆の垂下状姿勢を維持したままの前進を許し、同吊杆が後退する場合には、逆転を停止して同吊杆に係合し、同吊杆を後倒姿勢に折り畳み状とするものとすることが可能であり、これと同等の作用が得られるものと置き換えることが可能であって、後述する実施例にも示すように、支持フレームの適所に対して弾性支持部を介して吊杆の揺動軸よりも下がわに係合可能な姿勢制御棒が突設され、該姿勢制御棒の弾性支持部を含む基部の、吊杆の後退方向側部に、該姿勢制御棒の後倒を阻止すると共に、前倒自在に規制する制限枠が設けられたものとすることができる。
【0029】
ガイド板は、自動送り機構の折り畳み機能の一部となり、移動体が、案内軸に沿って前進する過程では、吊杆が垂下状姿勢を維持し、吊杆の上端に対して片持ち支持軸を介して軸着されたガイドローラーが、当該ガイド板の上がわを通過し、吊杆の姿勢に影響を与えることが無く、移動体が、案内軸に沿って後退する場合に、姿勢制御部の後倒作用を受けた吊杆の、同吊杆の上端のガイドローラーを、該吊杆が、後退を完了するまでの間に渡って後倒姿勢に保持されるよう誘導可能とする機能を分担し、支持フレームの適所に対して一体化されたものとすべきであり、支持フレームとは別体の部品として設けられ、対象車室の内壁適所に対して支持フレームと共に取り付け可能なものとすることが可能であり、後述する実施例にも示しているが、当該ガイド板の後倒制御下壁の後端が、次第に上向きに湾曲する曲面形状のものとされ、該吊杆の後倒折り畳み状姿勢から垂下状姿勢に至る姿勢変化を緩やかに緩衝可能なものとするのが望ましい。
【0030】
自動制御部は、対象車両のアクセサリー起動やエンジン始動などの状態、および、対象座席の対象シートベルトの装着状態などの各条件に応じて、この発明の自動シートベルト牽引装置の移動体の前進と後退とを自動的に制御可能とする機能を担い、マイクロコンピュータ、リレー回路、その他の制御装置類からなるものとすることが可能であり、移動体を前進する場合に、同移動体を所定時間に渡って前進するよう制御し、同移動体を後退する場合には、同移動体を所定時間に渡って後退するよう制御するものとすることができる外、回転駆動源を、ステッピングモーターとし、移動体の前進量および後退量を制御可能なものとしたり、自動送り機構を進退ストロークが予め設定されたアクチュエーターとし、進退制御するようにしてなるものとすることが可能であり、後述する実施例にも示しているが、支持フレームの所定前後長寸法の両端付近にあって、移動体の前端到達を検知する前検知部、および、同移動体の後端到達を検知する後検知部とを有し、それら前・後検知部からの信号を受けて自動送り機構を制御するものとすることが可能である。
【0031】
また、自動制御部は、対象座席の着座者が、容易に手の届く範囲に設けられた起動スイッチを操作することによって起動および停止操作可能なものとすることができる外、着座者が操作可能な、前進スイッチ、後退スイッチ、緊急停止スイッチ、電源スイッチなどを有するものとすることができ、さらにまた、上述する実施例にも示す通り、対象車両のアクセサリー起動およびエンジン始動の少なくとも何れか一方に伴って起動し、対象座席の、対象シートベルトが装着されてない場合には、自動送り機構が、移動体を支持フレームの前端の軸受け板に近接するまで前進して停止し、対象シートベルトが装着された後、自動送り機構が、移動体を支持フレームの後端の軸受け板に近接するまで後退して停止するよう自動的に制御し、自動送り機構の折り畳み機能が、後退中の移動体が、支持フレームの後端の軸受け板に近接するまでの間、移動体を後倒姿勢に折り畳まれた状態に維持するよう自動的に制御するようにしてなるものとすることができる。
【0032】
加えて、この発明の自動シートベルト牽引装置には、後述する実施例にも示しているように、自動送り機構および移動体の進退動作に伴い、リトラクターからウェビングを自動的に引き出し、対象座席の着座者が、ランチプレートおよびウェビングを引き出す操作を補助可能とするリトラクター補助装置を付加されたものとすることが可能である。
以下では、図面に示すこの発明を代表する実施例と共に、その構造について詳述することとする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図面は、この発明の自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法の技術的思想を具現化した代表的な幾つかの実施例を示すものである。
図1】自動シートベルト牽引装置を一部断面化して示す側面図である。
図2】自動シートベルト牽引装置を一部断面化し拡大して示す側面図である。
図3】前進を開始した移動体を示す側面図である。
図4】前進を開始した移動体を拡大して示す側面図である。
図5】前端に到着した移動体を示す側面図である。
図6】前端に到着した移動体を拡大して示す側面図である。
図7】後退を開始した移動体を示す側面図である。
図8】後退を開始した移動体を拡大して示す側面図である。
図9】後退中に後倒姿勢に折り畳まれた吊杆を示す側面図である。
図10】折り畳まれた吊杆を拡大して示す側面図である。
図11】ガイド板および姿勢制御部の配置を示す平面図である。
図12】ガイド板および姿勢制御部の配置を示す側面図である。
図13】自動シートベルト牽引装置を示す正面図である。
図14】自動シートベルト牽引装置を示す背面図である。
図15】追加されたリトラクター補助装置を示す側面図である。
図16】リトラクター補助装置を拡大して示す側面図である。
図17】自動シートベルト牽引装置の制御を示すフローチャートである。
図18】リトラクター補助装置を含む制御を示すフローチャートである。
【実施例1】
【0034】
図1ないし図14に示す事例は、対象車両C0の対象車室C1の対象座席C2の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁C3の前後方向の所定範囲に配設可能な所定前後長寸法1Lに設定され、対象ルーフ内壁C3に対して固着可能な固着機構12を有する支持フレーム10が設けられ、該支持フレーム10の前後端間に、前後方向に軸心を向けた案内軸11が掛け渡され、該案内軸11に対して移動体4が摺動自在に装着され、該移動体4の対象座席C2に対峙する側壁には、吊杆7が前倒不能および後揺動自在に軸支、吊下され、同吊杆7の下端からは、対象となるシートベルトSに係合可能な係合枝78が収納姿勢とベルト係合姿勢とに姿勢変化自在に突出され、該移動体4を案内軸11に沿って進・退移動可能であって、該移動体4が後退中に吊杆7を自動的に後倒可能な折り畳み機能を有する自動送り機構8が設けられ、該自動送り機構8の動作に連動し、該移動体4の前進中に吊杆7の係合枝78をベルト係合位置に、該移動体4の後退中に吊杆7の係合枝78を収納位置に姿勢変化可能な展開機構75が設けられ、該自動送り機構8を自動的に制御可能な自動制御部9を有してなるものとした、この発明の自動シートベルト牽引装置における代表的な一実施例を示すものである。
【0035】
それら各図からも明確に把握できるとおり、この発明の自動シートベルト牽引装置1は、その本体を形成する支持フレーム10が、対象車両C0の対象車室C1の対象座席C2の左右何れか外がわ配置となる一方の直上に対応する対象ルーフ内壁C3の、AピラーC4の上端付近からBピラーC5の上端付近に至る前後方向の所定前後長寸法1Lに設定された案内軸11の前後端夫々に、該案内軸11に直角に交差する軸受け板20,20が設けられ、それら一対をなす軸受け板20,20には、該案内軸11に適宜間隔を隔てて平行する一軸心上に配するよう、一対の軸受け21,21が組み込まれ、さらに、各軸受け板20,20の左右端上部から、対象ルーフ内壁C3に対して固着可能とする固着機構12としてのネジ結合用の複数のブラケット部12,12,……が、対象ルーフ内壁C3の壁面形状に応じて塑性変形可能な金属素材製の舌片形状や吊り金具形状のものなどとして設けられている。
【0036】
当該支持フレーム10の前後端の軸受け板20,20の軸受け21,21間には、該案内軸11に平行であって、前後方向に軸心を向けた送りネジ2が、回転自在に掛け渡しされるよう軸着され、該送りネジ2の後端は、後部の軸受け板20を貫通してさらに後方に向けて延伸され、自動送り機構8の回転駆動源80としての送りネジ2用駆動モーター80の回転出力軸に、直接、または減速機や継ぎ手などを適宜介するなどして接続されている。
【0037】
当該支持フレーム10には、当該支持フレーム10の前後端間の所定前後範囲に相当する中途適所に、送りネジ2および案内軸11の上側に沿って後倒制御下壁14を有するガイド板13が、軸受け板20,20やブラケット部12,12,……、およびそれらが一体化された当該支持フレーム10の何れか適所に、折り畳み機能の一部として一体化されており、その後倒制御下壁14の後端がわが、該後倒制御下壁14の後端に滑らかに連続すると共に、後方に向けて次第に上向きに湾曲する曲面形状の緩衝案内曲面壁部15とされている。
【0038】
さらに、当該支持フレーム10には、送りネジ2および案内軸11の下側の前方寄りとなる適所に折り畳み機能の一部をなす姿勢制御部3が設けられ、該姿勢制御部3は、図11ないし図14に示すように、前後軸受け板20,20の下端間に掛け渡された底壁16の、対象座席C2に対峙がわとなる縁部から左右水平方向に向けて片端支持状に立設されたコイルバネ製の弾性支持部31の先端から、姿勢制御棒30が同心状に突設され、該弾性支持部31および姿勢制御棒30の後方がわとなる底壁16適所からは、該姿勢制御棒30の基端がわ後方、および、該弾性支持部31の後方がわを包囲可能な制限枠32が突設され、該弾性支持部31が、後方から前方に向かう力には柔軟な弾性可撓性を有し、姿勢制御棒30の前倒を許し、前方から後方に向かう力には制限枠32の支持力をもって抗し、底壁16に対する姿勢制御棒30の突起姿勢を維持するものとされている。
【0039】
前記移動体4は、主動体5と従動体6との組み合わせからなるものであって、該主動体5は、その本体部分が概略矩形ブロック状のものとされ、中央適所に当該送りネジ2に螺着するネジ孔50が穿設され、該送りネジ2に対して螺着された状態に組み込まれており、同主動体5の前側面の四角付近からは、該送りネジ2および案内軸11に平行且つ、前端に脱抜規制部52を有し、同一の適宜所定長寸法に設定された合計4本の牽引棒51,51,……が、前方に向けて突設され、同主動体5の対象座席C2がわとなる側壁から前方に向けて押操作部53が延伸されたものとなっている。
【0040】
当該従動体6は、ブロック状の本体を有し、その中央には、該送りネジ2および案内軸11に夫々装着可能とする平行な案内孔60,60が穿設され、該送りネジ2および案内軸11の主動体5よりも前方となる位置に、該送りネジ2および案内軸11に対して摺動自在であって、該主動体5の牽引棒51,51,……が、該送りネジ2および案内軸11に平行な方向に摺動自在且つ、脱抜不能に貫通された状態に装着されたものとなっている。
【0041】
また、前記支持フレーム10の前端の軸受け板20には、従動体6の接近を検知可能なリミットスイッチや各種センサー類などからなり、前記自動制御部9の一部となる前検知部90が設けられ、同支持フレーム10の後端の軸受け板20には、主動体5の接近を検知可能なリミットスイッチや各種センサー類などからなり、前記自動制御部9の一部となる後検知部91が設けられている。
【0042】
当該従動体6の対象座席C2に対峙する側壁には、揺れ腕70、吊幹部74および係合枝78からなる吊杆7が配され、該揺れ腕70が、揺動軸71を介して従動体6の側壁に対して前倒不能および後揺動自在に軸着され、該揺れ腕70の上端に、前記ガイド板13の後倒制御下壁14に従動するよう転動可能なガイドローラー72が、折り畳み機能の一部としての片持ち支持軸73を介して設けられ、同揺れ腕70の下端からは、棒状であって下端から、係合枝78が水平姿勢に分岐された吊幹部74の上端が、該係合枝78の展開機構75を有するものとして垂下されており、該揺れ腕70の下端と該吊幹部74上端との間には、同揺動軸71に直交する回動軸心回りの係合枝78の収納方向に弾性的に付勢可能な、渦巻きバネやコイルバネなどからなる収納付勢機構77を有する回動軸着部76を介して軸着されたものとしてある。
【0043】
当該展開機構75は、該収納付勢機構77を有する回動軸着部76と、該吊幹部74上下端間中途適所外壁から、対象座席C2(対象車室C1の中央がわ)寄りに向かうよう僅かに傾斜された水平後方に向けて突設された展開枝79とを有し、案内軸11および送りネジ2に沿って前進する前記主動体5の押操作杆53の前向きの干渉力を該展開枝79の先端に受けると、該収納付勢機構77の弾性力に抗して該吊幹部74が連動して該回動軸着部76回りに回動され、該係合枝74が、対象座席C2(対象車室C1の中央がわ)寄り方向に突起するベルト係合位置へと姿勢変化され、案内軸11および送りネジ2に沿って前記主動体5が後退すると、押操作杆53が展開枝79から離脱し、該収納付勢機構77の解放された復帰力を受けた該吊幹部74が、該回動軸着部76回りに回動され、該係合枝78を、後方に向けて折り畳まれた収納位置に姿勢変化するよう動作可能なものとなっている。
【0044】
そして、前記回転駆動源80および前・後検知部90,91には、マイクロコンピュータを備え、対象車両C0の電気系統(電源)への接続部を有する自動制御部9が接続され、該自動制御部9は、対象車両C0のアクセサリー起動およびエンジン始動などの動作に伴って起動し、前記回転駆動源80を、前記前検知部90および後検知部91と連動するよう制御可能なものとされ、さらに、対象車両C0の対象座席C2のシートベルトSのバックルS4に、同ランチプレートS3が接続され、該シートベルトSが装着されている状態、および、同バックルS4からランチプレートS3が外され、該シートベルトSの装着が解除されている状態の夫々を検知可能な、対象シートベルト被装着検知部92を有している。
【0045】
対象シートベルト被装着検知部92は、例えば、対象車両C0に搭載された車両用制御装置と、同対象車両C0に搭載されたアクセサリー類に設けられた各種センサーとを接続する信号ケーブルの適所に、分岐するよう接続した信号出力ケーブル(何れの信号用ケーブルも図示していない。)とすることが可能である外、既存のバックルS4に対して、自動制御部9から延伸された信号ケーブル(図示せず)の先端に設けられた接続センサー(図示せず)を追加的に設けられたものとし、該接続センサーが、バックルS4にランチプレートS3が接続された場合、および、バックルS4からランチプレートS3が外された場合の少なくとも何れか一方の場合に、自動制御部9に向けて検知信号を出力するものとすることができる。
【0046】
(実施例1の作用・効果)
図1ないし図14に示すとおりの構成からなるこの発明の自動シートベルト牽引装置1は、その支持フレーム10が、対象車両C0の対象車室C1内の、例えば前部右がわに配置された対象座席(運転席)C2の直上に対応する対象ルーフ内壁C3のAピラーC4上端付近からBピラーC5上端付近に達する前後間範囲に渡り、略水平状の姿勢となるよう、該対象ルーフ内壁C3に対して、同支持フレーム10の固着機構12としての各ブラケット部12,12,……の先端を夫々取付けネジ12a,12a,……によって機械的に確りと固着されたものとすることが可能であり、各ブラケット部12,12,……は、対象ルーフ内壁C3の形状に応じて適宜可塑変形して、取り付け姿勢を微調整することが可能なものとなっているから、専門知識や技術、特殊な工具類などを要することなく、一般的なドライバーなどを工具類を用いて簡単に装着することができる。
【0047】
さらに、回転駆動源としての送りネジ2用駆動モーター80、および自動制御部9を、対象車両C0のアクセサリー用の電源配線に接続し、対象車両C0のアクセサリー類用スイッチの操作に連動して起動可能なものとすることが可能であり、また、該自動制御部9に、対象座席(運転席)C2のバックルS4にランチプレートS3が接続されたか否かを検知するセンサーの出力信号を受信可能とするよう信号ケーブルが接続されたものとすることにより、対象車両C0の始動操作に連動可能とするよう電気的に接続されたものとすることが可能なものとなり、以上の構成によって既成の様々な対象車両C0に対して、後付け設置することができる。
【0048】
図1図2および図17に示すように、対象車両C0の対象車室C1内に設置されたこの発明の自動シートベルト牽引装置1は、機能を停止した初期状態にあっては、移動体4の主動体5および従動体6が、送りネジ2および案内軸11の最も後端寄りの位置に後退さられた状態にあって、主動体5の後端が、自動制御部9の後検知部91に検知された状態にあり、しかも従動体6の吊幹部7は、収納付勢機構77の付勢力を受け、同吊幹部74下端の係合枝78が、収納位置に倒れた状態となり、対象座席(運転席)C2の収納状態にあるシートベルトSのスルーアンカーS2から下がる、ウェビング(ショルダーベルト)S1の(ランチプレートS3上部付近)の車室外がわに差し入れた状態となっている。
【0049】
以上のように、対象車両C0に設置された自動シートベルト牽引装置1は、同対象車両C0の対象座席(運転席)C2に運転者が着座し、同対象車両C0のアクセサリーを起動操作(A)すると、当該自動シートベルト牽引装置1の自動制御部9が起動し、対象シートベルトS被装着検知部92を通じて、対象座席(運転席)C2のシートベルトが装着状態にあるか否か判断(B)し、対象座席(運転席)C2のシートベルトが未装着の場合には、回転駆動源80としての送りネジ2用駆動モーター80を正転駆動(C)し、移動体4の主動体5が、送りネジ2の駆動力を受けて前方への移動を開始し、(移動中の該主動体5は、各牽引棒51,51,……および従動体6を介して案内軸11の案内支持力を受け、送りネジ2と共に回転しないよう姿勢を維持するものとされている。)図3および図4に示すように、該主動体5の前端壁が、従動体6の後端壁に接して同従動体6を同前方に押し進めると共に、該主動体5の押操作部53が、同従動体6の吊幹部74の展開枝79を、収納付勢機構77の付勢力に抗して前方に向けて押し、係合枝78が、ベルト係合位置まで回動されて対象車室C1内中央がわに向けて突起し、ウェビング(ショルダーベルト)S1の(ランチプレートS3上部付近)に係合される。
【0050】
図5図6図11および図17に示すように、前進する移動体4の従動体6の揺れ腕61上端のガイドローラー63は、ガイド板13の上がわを干渉することなく通過し、前進する移動体4の従動体6の揺れ腕61の揺動軸62よりも下がわとなる中途部分が、姿勢制御部3に到達すると、制限枠32から突出されている姿勢制御棒30の先端がわに当接し、弾性支持部31の弾性支持力に抗して姿勢制御棒30を前倒状に押し倒しながら前進を継続し、さらに、前進を継続する移動体4(主動体5および従動体6)が、支持フレーム10の前端まで達して従動体6の前端壁が、自動制御部9の前検知部90に検知(D)されると、自動制御部9が、送りネジ2用駆動モーター80を停止(E)し、運転者は、目前まで引き出されたウェビング(ショルダーベルト)S1のランチプレートS3を掴み、吊幹部74の係合枝78からウェビング(ショルダーベルト)S1を外して、該ランチプレートS3をバックルS4に接続してシートベルトSの装着を容易に完了することができる。
【0051】
自動制御部9は、対象シートベルト被装着検知部92を通じて対象座席(運転席)C2のランチプレートS3とバックルS4との接続を感知すると、シートベルトSが装着されたと判断(F)し、送りネジ2用駆動モーター80の逆転駆動を開始(G)することとなり、該送りネジ2の逆転を受けた移動体4の主動体5は、従動体6に先行して後退を開始し、押操作部53の後退によって解放された吊幹部74の展開枝78が、収納付勢機構77の弾性復帰力を受けて回動軸着部76回りに、対象車室C1の対象座席(運転席)C2のドアパネル(サイド・ウインドウ)に略平行状となる収納位置に自動的に姿勢変化することとなり、さらに、主動体5が後退し続けて、牽引棒51,51,……の各脱抜規制部52,52,……が、従動体6の前壁に係合すると、主動体5が従動体6を従えて後退する。
【0052】
図7ないし図11に示すように、後退する従動体6は、揺れ腕70の揺動軸71よりも下がわとなる中途部分が、姿勢制御部3の姿勢制御棒30に差し掛かると、制限枠32の強固な支持力を受けて、後倒することなく突出姿勢を維持する該姿勢制御棒30に係合し、吊杆7(揺れ腕70およびその下端に一体化された吊幹部74)が、揺動軸71の軸心回りに後倒され、この回動に伴い、該揺れ腕70上端のガイドローラー72が、ガイド板13前端の下がわに潜り込み、さらに移動体4(主動体5および従動体6)が後進すると、吊杆7(揺れ腕70および吊幹部74)が、姿勢制御棒30から離脱した後も、ガイドローラー72が、ガイド板13の後倒制御下壁14の案内を受けて、同吊杆7の後倒姿勢を維持したまま後進を続け、後進中の吊杆7が運転者に干渉するのをより確実に防止するものとなる。
【0053】
さらに、後進する移動体4(主動体5および従動体6)が、BピラーC5付近に到達し、従動体6の吊杆7のガイドローラー72が、ガイド板13後端の緩衝案内曲面壁部15の案内を受けると、該緩衝案内曲面壁部15の緩やかに上昇する曲面が、ガイドローラー72の急激な上昇、および、吊杆7(揺動軸71および吊幹部74)の瞬間的、衝撃的な垂れ下がり運動を防止し、ゆっくりと静かに垂下姿勢に復帰するよう誘導可能なものとなり、図1および図2に示すように、移動体4(主動体5および従動体6)が、支持フレーム10の後端まで達すると、後検知部91が、主動体5の後端壁を検知(H)し、自動制御部9が駆動モーター80を停止(J)して送りネジ2の逆転を停止することとなり、支持フレーム10の後端で停止された移動体4の従動体6の吊幹部74の収納位置とされた係合枝78は、運転者が降車の際に、バックルS4からランチプレートS3を離脱し、リトラクターS0によって巻き取られ、スルーアンカーS2に吊り下がり状に戻されるウェビング(ショルダーベルト)S1の外がわ(対象車室C1内の外がわ寄り)に差し込まれた状態となり、次回のウェビング(ショルダーベルト)S1の引き出しの際に、ベルト係合位置となったときに、そのまま係合、引き出し可能な状態に維持されることとなる
【実施例2】
【0054】
図15および図16に示す事例は、この発明の基本適構成からなる自動シートベルト牽引装置1に、リトラクター補助装置Rが追加されてなるものであり、当該自動シートベルト牽引装置1の基本適構成は、前記実施例1に示したものと同一であるから、同一構成部分については同一符号を付して説明を省略することとする。
【0055】
当該リトラクター補助装置Rは、回転伝達機構R0、アクチュエーターR3およびそれらに連動してリトラクターS0からBピラーC5の上部付近に吊り提げられたスルーアンカーS2に進退自在に通されたウェビングS1を巻出し補助可能とする巻出しローラー対Mからなり、回転伝達機構R0は、前記自動シートベルト牽引装置1の支持フレーム10の後端の軸受け板20(軸受け21)を超えて後方に延伸され、回転駆動源80としての駆動モーター80の出力軸に至る間の送りネジ2の後端がわの中途部に、傘歯歯車機構R1からなる入力機構R1を介在し、チューブと、該チューブ中に回転自在に装着されたワイヤー軸Wの入力端W0が接続され、該回転伝達機構R0の中途部である該ワイヤー軸Wは、BピラーC5の上方から下方向に沿って添設されるか、BピラーC5とその内装パネルとの間に上方から下方向に通じるよう装着されるかなどして、同BピラーC5の上端がわの該ワイヤー軸Wの入力端W0から、BピラーC5の下端付近のシートベルトS用のリトラクターS0の直上付近に、該ワイヤー軸Wの出力端W1が達するよう、延伸可能な長さに設定されている。
【0056】
また、前記巻出しローラー対Mは、錐状固定ローラーM0と錐状進退ローラーM1とからなり、該錐状固定ローラーM0は、先端を切り落とした円錐状であってリトラクターS0直上のフロアーC6またはBピラーC5の下端付近に対して、太径がわが前方、細径がわが後方に向けられた軸心が、ウェビングS1の幅方向に向く姿勢となるよう、回転自在に軸着されている。
【0057】
該錐状進退ローラーM1は、当該錐状固定ローラーM0に対し、該ウェビングS1を同ウェビングS1の厚み方向に挟み込むよう対峙され、先端を切り落とした円錐状であって、細径がわが前方、太径がわが後方に向けられ、該後方に向けられた太径がわ基端壁の周縁回りに沿ってフェーズギヤ状の鋸型の山谷形状が並ぶ、摩擦端壁M2を有するものであり、同錐状進退ローラーM1の軸心相当部には、棒形状の前端に、コイルバネや永久磁石の反発力などを利用してなる離脱付勢部M3が設けられた進退回転軸M4が、前後進退自在および回転自在に貫通され、該進退回転軸M4は、錐状進退ローラーM1の締め付け前進位置と、離脱後退位置との間に進退自在となるよう、リトラクターS0直上のフロアーC6またはBピラーC5の下端付近に対して軸着されたものとなっている。
【0058】
前記アクチュエーターR3は、同アクチュエーターR3の出没軸R4の先端が、該進退回転軸M4の後端に同心状に対峙された配置となるよう、対象車室C1内壁の適所に固着されており、同アクチュエーターR3の出没軸R4の先端には、同心上に一体化された円筒形状のものとされ、該円筒形状の先端壁の周縁回りに沿って、前記錐状進退ローラーM1摩擦端壁M2の山谷形状に噛合可能な、フェーズギヤ状の鋸型の山谷形状が並ぶ駆動駒M5を有し、該駆動駒M5が、該出没軸R4の前進によって前記錐状進退ローラーM1摩擦端壁M2に噛合し、該出没軸R4の後退により、同摩擦端壁M2から離脱する配置関係および寸法、形状に設定され、該アクチュエーターR3の本体部分と駆動駒M5との間となる進退回転軸M4の中途箇所には、後述する歯車機構G0が設けられている。
【0059】
該歯車機構G0には、前記回転伝達機構R0のリトラクターS0の直上付近まで達した前記ワイヤー軸Wの出力端W1が、傘歯歯車機構R2からなる出力機構R2を介して接続されており、該歯車機構G0は該出力機構R2の出力軸端に設けられた歯車G1と、該アクチュエーターR3の出没軸R4の、アクチュエーターR3の本体部分と駆動駒M5との間に、該アクチュエーターR3の出没軸R4の進退範囲(進退ストローク寸法)を補う歯幅(出没軸R4の進退ストローク以上の歯幅)に設定された歯車G2とが噛合されたものとなっており、該アクチュエーターR3は、例えば電磁石からなり、対象車両C0のアクセサリ用の電源から電源供給を受けると共に、自動制御部9からの制御を受けて、出没軸R4の出没動作を実行するものとなっている。
【0060】
(実施例2の作用・効果)
以上のとおりの構成からなるこの発明の自動シートベルト牽引装置1は、図15図16および図18に示すように、前記実施例1およびその作用・効果に示した、当該自動シートベルト牽引装置1の動作に伴い、リトラクター補助装置Rが連動動作するものであり、以下には該リトラクター補助装置Rの動作についてのみ示し、自動シートベルト牽引装置1の主要部分の動作についての詳細な説明は省略することとする。
【0061】
運転者が対象座席C2に着座し、対象車両C0のアクセサリー類が起動(A)され、シートベルトSが未装着(B)の場合に、自動制御部9は、自動送り機構8の送りネジ2用駆動モーター(回転駆動源)80を正転方向に回転駆動すると共に、クチュエーターR3の出没軸R4を前進動作(C)するよう制御するものとなっており、該自動制御部9の制御を受けた自動送り機構8の送りネジ2用駆動モーター(回転駆動源)80が正転回転を開始すると、当該リトラクター補助装置Rの回転伝達機構R0の傘歯歯車機構(入力機構)R1が正転方向に従動回転し、その正転回転力は、同回転伝達機構R0のワイヤー軸Wの入力端W0から出力端W1、傘歯歯車機構(出力機構)R2、歯車機構G0の歯車G1、歯車G2を介し、進退回転軸M4、および、駆動駒M5に伝えられることとなり、該自動制御部9の制御(C)を受けたクチュエーターR3の出没軸R4が、前方に突出すると、駆動駒M5の先端壁の周縁回りに沿って並ぶフェーズギヤ状の鋸型の山谷形状が、錐状進退ローラーM1の摩擦端壁M2に噛合状に接合すると共に、同錐状進退ローラーM1を、進退回転軸M4に沿って、離脱付勢部M3の後方への弾発力に抗して前進させるものとなる。
【0062】
クチュエーターR3によって前進された錐状進退ローラーM1は、錐状固定ローラーM0との間にシートベルトSのウェビングS1をその厚み方向から挟み込み、同ウェビングS1をリトラクターS0の巻き取り力に抗して強制的に引き出すよう回転することとなり、当該自動シートベルト牽引装置1の移動体4(従動体6の吊杆7)によるウェビングS1の牽引動作を補助するものとなり、自動シートベルト牽引装置1の動作安定性を格段に高めたものとなる。
【0063】
また、自動制御部9が、前検知部90を通じて移動体4の前進完了を検知(D)した場合には、送りネジ2用駆動モーター(回転駆動源)80を停止すると共に、クチュエーターR3の出没軸R4を後退(E)するよう制御するものとなっており、該クチュエーターR3の出没軸R4が後退した状態では、離脱付勢部M3が、その弾性復帰力によって錐状進退ローラーM1を錐状固定ローラーM0から離脱するよう後退し、巻出しローラー対M(M0,M1)が、ウェビングS1を解き放ち、リトラクターS0の弾性的巻き戻し力を受ける状態となり、シートベルトS装着中の安全機能に影響を及ぼすこと無く、高い安全性を確保することができる。
【0064】
(結 び)
叙述の如く、この発明の自動シートベルト牽引装置、およびその制御方法は、その新規な構成によって所期の目的を遍く達成可能とするものであり、しかも製造も容易で、従前からの対象車両の工場生産における製造工程中に、対象車両に対して組み込み済みとされた自動シートベルト装置技術に比較して、専門知識のない一般の利用者であっても、既成の様々な対象車両に対して簡便に組み込むことができ、しかも既存のシートベルトの安全性を維持したまま、シートベルトの装着操作性のみを大幅に向上することができるものとなり、軽量且つ低廉化して遥かに経済的なものとすることができる上、対象車両への設置作業性にも優れているから、自動車用部品業界および自動車用部品の流通および販売業界はもとより、シートベルトの装着操作をもっと容易なものにしたいという一般消費者においても高く評価され、広範に渡って利用、普及していくものになると予想される。
【符号の説明】
【0065】
1 自動シートベルト牽引装置
10 同 支持フレーム
1L 同 所定前後長寸法
11 同 案内軸
12 同 ブラケット部(固着機構)
12a 同 取付けネジ
13 同 ガイド板
14 同後倒制御下壁
15 同 緩衝案内曲面壁部
16 同 底壁
2 送りネジ
20 同 軸受け板
21 同 軸受け
3 姿勢制御部
30 同 姿勢制御棒
31 同 弾性支持部
32 同 制限枠
4 移動体
5 主動体
50 同 ネジ孔
51 同 牽引棒
52 同 脱抜規制部
53 同 押操作部
6 従動体
60 同 案内孔
7 吊杆
70 同 揺れ腕
71 同 揺動軸
72 同 ガイドローラー
73 同 片持ち支持軸
74 同 吊幹部
75 同 展開機構
76 同 回動軸着部
77 同 収納付勢機構
78 同 係合枝
79 同 展開枝
8 自動送り機構
80 同 送りネジ2用駆動モーター(回転駆動源)
9 自動制御部
90 同 前検知部
91 同 後検知部
92 同 対象シートベルト被装着検知部
R リトラクター補助装置
R0 同 回転伝達機構
R1 同 傘歯歯車機構(入力機構)
R2 同 傘歯歯車機構(出力機構)
R3 同 クチュエーター
R4 同 出没軸
W ワイヤー軸
W0 同 入力端
W1 同 出力端
M 巻出しローラー対
M0 同 錐状固定ローラー
M1 同 錐状進退ローラー
M2 同 摩擦端壁
M3 同 離脱付勢部
M4 同 進退回転軸
M5 同 駆動駒
G0 歯車機構
G1 同 歯車
G2 同 歯車
C0 対象車両
C1 同 対象車室
C2 同 対象座席
C3 同 対象ルーフ内壁
C4 同 Aピラー
C5 同 Bピラー
C6 同 フロアー
S シートベルト
S0 同 リトラクター
S1 同 ウェビング
S2 同 スルーアンカー
S3 同 ランチプレート
S4 同 バックル



【要約】
【課題】 ショルダーベルトの安全性を充分に確保できる上、既存の車両に対して、一般の利用者が簡便に装着できる新たなシートベルトの装着補助技術を提供する。
【解決手段】 対象ルーフ内壁C3に固着可能な支持フレーム10の前後端間に掛け渡された案内軸11に対して移動体4が摺動自在に装着され、該移動体4に前倒不能および後揺動自在に軸着された吊杆7の下端から、係合枝78が収納姿勢とベルト係合姿勢とに姿勢変化自在に突出され、該移動体4を進・退移動可能であって、吊杆7の折り畳み機能を有する自動送り機構8が設けられ、該自動送り機構8に連動し、該係合枝78をベルト係合位置と、収納位置とに姿勢変化可能な展開機構75が設けられ、該自動送り機構8を自動的に制御可能な自動制御部9を有してなる自動シートベルト牽引装置1である。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18