特許第6243097号(P6243097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243097
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20171127BHJP
【FI】
   B41J2/175
【請求項の数】15
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-5544(P2012-5544)
(22)【出願日】2012年1月13日
(65)【公開番号】特開2013-144395(P2013-144395A)
(43)【公開日】2013年7月25日
【審査請求日】2015年1月7日
【審判番号】不服2017-88(P2017-88/J1)
【審判請求日】2017年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴詞
【合議体】
【審判長】 森次 顕
【審判官】 黒瀬 雅一
【審判官】 畑井 順一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−207091(JP,A)
【文献】 特開2009−148930(JP,A)
【文献】 特開2005−138489(JP,A)
【文献】 特開2004−237557(JP,A)
【文献】 特開平10−95132(JP,A)
【文献】 特開2008−62526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
記録媒体に画像を記録するための液体を吐出する複数の吐出口が形成され、前記搬送機構により搬送される記録媒体と対向する吐出面を有するヘッドであって、前記複数の吐出口の吐出口領域が、前記搬送方向と直交する搬送直交方向に関して記録媒体の幅よりも長いヘッドと、
前記吐出面と対向する吐出空間が外部空間から隔離された封止状態と、前記吐出空間が外部空間に対して開放された開放状態とを取り得るキャッピング手段と、
前記封止状態において、前記吐出空間に連通し、且つ、前記吐出面と直交する方向から見て、前記搬送直交方向に関して前記吐出口領域を挟んで配置される、空気供給口及び空気排出口と、
前記封止状態において、加湿空気を前記空気供給口から前記吐出空間内に供給し、且つ前記吐出空間内の空気を前記空気排出口から排出する、加湿メンテナンスを行う加湿手段と、
画像記録時に、前記ヘッドを制御して、記録媒体と対向する複数の前記吐出口から液体を吐出させる記録制御手段と、
を備え、
前記吐出口領域は、前記搬送直交方向に関して3分割されたとき、前記空気排出口から、前記封止時において、前記搬送直交方向に関して隣接する吐出口間の単位時間当たりの乾燥進行度の差が所定値以下となる位置までの距離を第1回避距離とし、前記空気供給口から、前記封止時において、前記搬送直交方向に関して隣接する吐出口間の単位時間当たりの乾燥進行度の差が所定値以下となる位置までの距離を第2回避距離として、少なくとも前記空気排出口から最も距離が短い前記吐出口を含むとともに、前記空気排出口から前記第1回避距離以内の領域にある前記吐出口を含む排気側領域と、少なくとも前記空気供給口から最も距離が短い前記吐出口を含むとともに、前記空気供給口から第2回避距離以内の領域にある前記吐出口を含む供給側領域と、前記排気側領域及び前記供給側領域を除いた中央の中央領域とから構成され、
前記搬送機構は、画像記録時において、前記吐出面と直交する方向から見て、前記吐出口領域の前記中央領域と、記録媒体の前記搬送直交方向に関する中央とが対向し、当該中央が、前記吐出口領域の前記搬送直交方向に関する中央であって前記空気供給口及び前記空気排出口の前記搬送直交方向中間でもある位置よりも前記空気供給口側にオフセットされるとともに、前記第1回避距離以内の領域及び前記第2回避距離以内の領域を避けて記録媒体を搬送するものであり、
前記第1回避距離と前記第2回避距離とを合算した合算値は、前記空気供給口及び前記空気排出口の前記搬送直交方向に関する離隔距離から前記吐出口領域の前記搬送直交方向に関する形成領域幅を減算した値よりも大きく、且つ前記離隔距離から記録媒体の前記搬送直交方向に関する幅を減算した値以下であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記空気供給口及び空気排出口の前記搬送直交方向に関する中間位置が、前記中央領域に位置することを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記第1回避距離が前記第2回避距離よりも長いことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記封止状態を解除した後であり、且つ画像記録の前において、前記ヘッドを制御して、前記複数の吐出口から吐出させて液体を排出するフラッシングを行うフラッシング制御手段を更に備え、
前記フラッシング制御手段は、
前記空気供給口から前記空気排出口に向かう方向に関して、前記複数の吐出口を、少なくとも一つの前記吐出口からなる複数の吐出口群に分けた際において、
前記複数の吐出口群のうち、前記空気排出口から前記第1回避距離以内の領域に対応する前記吐出口を含む排出側吐出口群に含まれる前記吐出口各々、及び前記空気供給口から前記第2回避距離以内の領域に対応する前記吐出口を含む供給側吐出口群に含まれる前記吐出口各々から、その他の前記吐出口群に含まれるいずれの前記吐出口よりも多くの液体を排出させることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記フラッシング制御手段は、前記排出側吐出口群に含まれる前記吐出口各々から、前記供給側吐出口群に含まれるいずれの前記吐出口よりも多くの液体を排出させることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記フラッシング制御手段は、前記排出側吐出口群において、前記空気排出口からの距離が短い前記吐出口群に含まれる前記吐出口ほど多くの液体を排出させ、前記供給側吐出口群において、前記空気供給口からの距離が短い前記吐出口群に含まれる前記吐出口ほど多くの液体を排出させることを特徴とする請求項4又は5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記フラッシング制御手段は、前記複数の吐出口のうち、前記空気排出口から前記第1回避距離以内の領域に対応する前記吐出口、及び前記空気供給口から前記第2回避距離以内の領域に対応する前記吐出口から、その他の前記吐出口よりも多くの液体を排出させることを特徴とする請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記フラッシング制御手段は、
前記フラッシングの液体排出量を前記吐出口毎に記憶する液体排出量記憶手段と、
前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量を補正する液体排出量補正手段と、
前記ヘッドを制御して、前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量に基づいて、前記フラッシングを行うフラッシング実行手段と
を備えており、
前記液体排出量補正手段は、前記封止状態のときの、前記加湿メンテナンスが行われていない加湿停止期間に基づいて、前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量を加算補正するものであり、
前記加湿停止期間に関する前記液体排出量の加算補正量については、前記供給側吐出口群に含まれる前記吐出口各々の前記液体排出量に係る第1加算補正量、及び前記排出側吐出口群に含まれる前記吐出口各々の前記液体排出量に係る第2加算補正量は、その他の前記吐出口群に含まれる前記吐出口各々の前記液体排出量に係る第3加算補正量よりも多くすることを特徴とする請求項4〜7の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記第2加算補正量が前記第1加算補正量よりも多いことを特徴とする請求項8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記液体排出量補正手段は、
前記加湿停止期間に関する前記液体排出量の加算補正量については、前記排出側吐出口群については、前記空気排出口からの距離が短い吐出口群に含まれる前記吐出口ほど加算補正量を多くし、前記供給側吐出口群については、前記空気供給口からの距離が短い吐出口群に含まれる前記吐出口ほど加算補正量を多くすることを特徴とする請求項8又は9に記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記液体排出量補正手段は、前記封止状態のときの、前記加湿メンテナンスの加湿期間に基づいても、前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量を加算補正するものであり、前記加湿期間に関する前記液体排出量の加算補正量を、前記空気供給口からの距離が短い前記吐出口群に含まれる前記吐出口ほど少なくすることを特徴とする請求項8〜10の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項12】
前記搬送方向に関して前記空気供給口の開口幅が前記吐出口領域の幅に比べて小さい場合、前記液体排出量補正手段は、前記空気供給口から、前記加湿空気の前記搬送方向に関する流動幅が前記吐出口領域の前記搬送方向に関する領域幅以上となる位置までの距離以内にある吐出口群に含まれる前記吐出口と、前記空気排出口から、前記加湿空気の前記搬送方向に関する流動幅が前記吐出口領域の前記搬送方向に関する領域幅以上となる位置までの距離以内にある吐出口群に含まれる前記吐出口について、前記加湿期間に関する前記液体排出量の加算補正量、前記搬送方向に関して前記空気供給口の開口幅が前記吐出口領域の幅以上である場合と比べて大きくすることを特徴とする請求項11に記載の液体吐出装置。
【請求項13】
前記吐出口群は一つの前記吐出口からなることを特徴とする請求項4〜12の何れか一項に記載の液体吐出装置。
【請求項14】
記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、
記録媒体に画像を記録するための液体を吐出する複数の吐出口が形成され、前記搬送機構により搬送される記録媒体と対向する吐出面を有するヘッドであって、前記複数の吐出口の吐出口領域が、前記搬送方向と直交する搬送直交方向に関して記録媒体の幅よりも長いヘッドと、
前記吐出面と対向する吐出空間が外部空間から隔離された封止状態と、前記吐出空間が外部空間に対して開放された開放状態とを取り得るキャッピング手段と、
前記封止状態において、前記吐出空間に連通し、且つ、前記吐出面と直交する方向から見て、前記搬送直交方向に関して前記吐出口領域を挟んで配置される、空気供給口及び空気排出口と、
前記封止状態において、加湿空気を前記空気供給口から前記吐出空間内に供給し、且つ前記吐出空間内の空気を前記空気排出口から排出する、加湿メンテナンスを行う加湿手段と、
画像記録時に、前記ヘッドを制御して、記録媒体と対向する複数の前記吐出口から液体を吐出させる記録制御手段と、
前記封止状態を解除した後であり、且つ画像記録の前において、前記ヘッドを制御して、前記複数の吐出口から吐出させて液体を排出するフラッシングを行うフラッシング制御手段と、
を備え、
前記搬送機構は、前記空気排出口から、前記封止時において、前記搬送直交方向に関して隣接する吐出口間の単位時間当たりの乾燥進行度の差が所定値以下となる位置までの距離を第1回避距離とし、前記空気供給口から、前記封止時において、前記搬送直交方向に関して隣接する吐出口間の単位時間当たりの乾燥進行度の差が所定値以下となる位置までの距離を第2回避距離として、画像記録時において、前記搬送直交方向に関して前記空気排出口から前記第1回避距離以内の領域及び前記空気供給口から前記第2回避距離以内の領域を避けて記録媒体を搬送するものであり、
前記第1回避距離と前記第2回避距離とを合算した合算値は、前記空気供給口及び前記空気排出口の前記搬送直交方向に関する離隔距離から前記吐出口領域の前記搬送直交方向に関する形成領域幅を減算した値よりも大きく、且つ前記離隔距離から記録媒体の前記搬送直交方向に関する幅を減算した値以下であり、
前記フラッシング制御手段は、
前記空気供給口から前記空気排出口に向かう方向に関して、前記複数の吐出口を、少なくとも一つの前記吐出口からなる複数の吐出口群に分けた際において、
前記複数の吐出口群のうち、前記空気排出口から前記第1回避距離以内の領域に対応する前記吐出口を含む排出側吐出口群、及び前記空気供給口から前記第2回避距離以内の領域に対応する前記吐出口を含む供給側吐出口群に含まれる前記吐出口各々から、その他の前記吐出口群に含まれるいずれの前記吐出口よりも多くの液体を排出させるとともに、前記排出側吐出口群に含まれる前記吐出口各々から、前記供給側吐出口群に含まれるいずれの前記吐出口よりも多くの液体を排出させることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項15】
前記フラッシング制御手段は、
前記フラッシングの液体排出量を前記吐出口毎に記憶する液体排出量記憶手段と、
前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量を補正する液体排出量補正手段と、
前記ヘッドを制御して、前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量に基づいて、前記フラッシングを行うフラッシング実行手段と
を備えており、
前記液体排出量補正手段は、前記封止状態のときの、前記加湿メンテナンスが行われていない加湿停止期間に基づいて、前記液体排出量記憶手段に記憶されている前記液体排出量を加算補正するものであり、
前記加湿停止期間に関する前記液体排出量の加算補正量については、前記供給側吐出口群に含まれる前記吐出口各々の前記液体排出量に係る第1加算補正量、及び前記排出側吐出口群に含まれる前記吐出口各々の前記液体排出量に係る第2加算補正量は、その他の前記吐出口群に含まれる前記吐出口各々の前記液体排出量に係る第3加算補正量よりも多くし、且つ、前記第2加算補正量を前記第1加算補正量よりも多くすることを特徴とする請求項14に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク等の液体を吐出する液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の吐出口が開口した吐出面を有するヘッドを備えた液体吐出装置において、吐出口内の液体が増粘することを抑制する目的から、吐出口に対して加湿空気を供給する技術が知られている。
【0003】
上述した液体吐出装置として、特許文献1には、搬送機構により搬送されている記録媒体(シート)に対して、記録媒体の搬送方向と直交する方向において長尺なヘッドの吐出口(ノズル)からインクを吐出して記録を行う、インクジェット記録装置が開示されている。このインクジェット記録装置は、ヘッドとシートの間の隙間において、記録媒体の搬送方向上流側から搬送方向下流側へ加湿気体を供給している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−98521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェットヘッドが使用されないとき(ヘッドの休止時)に、吐出口の乾燥防止の目的として、吐出面と対向する吐出空間を封止状態(キャッピング)にした後に当該吐出空間を加湿する、加湿メンテナンスを行う技術が知られている。この加湿メンテナンスは、吐出空間と接する空気排出口から吐出空間内の空気を排出し、且つ加湿空気を、吐出空間と接する空気供給口から吐出空間内に供給することにより行われる。その際、全ての吐出口の乾燥を効率よく防止するために、通常、空気供給口と空気排出口は、吐出面と直交する方向から見て、記録媒体の搬送方向と直交する搬送直交方向に関して、全ての吐出口を挟む位置に配置されている。
【0006】
ここで、本願発明者らの検討により、キャッピング時の吐出空間内の湿度分布は一様とはならず、その結果、吐出口各々の単位時間当たりの乾燥進行度は、その形成位置に応じて異なることが知見された。そのため、キャッピング後の画像記録に際して、吐出口間の増粘の程度が著しく異なる複数の吐出口から液体を吐出して記録媒体に画像を記録した場合、画像ムラが生じる。
【0007】
本発明の目的は、吐出空間を封止状態にした後の画像記録に際して、記録媒体に画像ムラが生じることを抑制可能な液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の液体吐出装置は、記録媒体を搬送方向に搬送する搬送機構と、記録媒体に画像を記録するための液体を吐出する複数の吐出口が形成され、前記搬送機構により搬送される記録媒体と対向する吐出面を有するヘッドであって、前記複数の吐出口の吐出口領域が、前記搬送方向と直交する搬送直交方向に関して記録媒体の幅よりも長いヘッドと、前記吐出面と対向する吐出空間を外部空間から隔離する封止状態と、前記吐出空間を外部空間に対して開放する開放状態とを取り得るキャッピング手段と、前記封止状態において、前記吐出空間に連通し、且つ、前記吐出面と直交する方向から見て、前記搬送直交方向に関して前記吐出口領域を挟んで配置される、空気供給口及び空気排出口と、前記封止状態において、加湿空気を前記空気供給口から前記吐出空間内に供給し、且つ前記吐出空間内の空気を前記空気排出口から排出する、加湿メンテナンスを行う加湿手段と、画像記録時に、前記ヘッドを制御して、記録媒体と対向する複数の前記吐出口から液体を吐出させる記録制御手段と、を備え、前記搬送機構は、画像記録時において、前記搬送直交方向に関して前記空気排出口から第1回避距離以内の領域及び前記空気供給口から第2回避距離以内の領域を避けて記録媒体を搬送するものであり、前記第1回避距離と前記第2回避距離とを合算した合算値は、前記空気供給口及び前記空気排出口の前記搬送直交方向に関する離隔距離から前記吐出口領域の前記搬送直交方向に関する形成領域幅を減算した値よりも大きく、且つ前記離隔距離から記録媒体の前記搬送直交方向に関する幅を減算した値以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明では、ヘッドが使用されないとき(ヘッドの休止時)において、吐出口内の目詰まり防止のために、キャッピング手段により封止状態(キャッピング)にされた吐出空間内に、空気供給口から加湿空気を供給して吐出空間を加湿し、加湿メンテナンスを行う。ここで、加湿メンテナンスによる加湿空気の流動に起因して、キャッピング時の吐出空間内の湿度に関する変動は、空気供給口及び空気排出口近傍の空間領域が他の空間領域と比べて大きい。そのため、キャッピング後の画像記録に際して、空気供給口及び空気排出口からの距離が短い吐出口は、他の吐出口と比べて増粘の程度が著しく異なる。そこで、このような吐出口については、記録媒体への画像記録には用いないようにすることで、記録媒体に画像ムラが生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
キャッピング後の画像記録に際して、記録媒体に画像ムラが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の液体吐出装置の一実施形態によるインクジェットプリンタの内部構造を示す概略側面図である。
図2】(a)は図1のプリンタに含まれるインクジェットヘッドの流路ユニット及びアクチュエータユニットを示す平面図であり、(b)はインクジェットヘッドの吐出面を示す平面図である。
図3】ワイピングを説明するための動作状況図である。
図4】(a)は図2(a)の一点鎖線で囲まれた領域IIIを示す拡大図であり、(b)は図4(a)のIV−IV線に沿った部分断面図であり。(c)は図4(b)の一点鎖線で囲まれた領域を示す拡大図である。
図5図1のプリンタにおいて、給紙部に収容された用紙の位置とインクジェットヘッドの吐出面との位置関係を示した模式図である。
図6図1のプリンタに含まれるキャップ機構、及び加湿機構を示す概略図である。
図7図5の一点鎖線で囲まれた領域VIを示す部分断面図である。
図8】(a)はキャッピング時の吐出空間における吐出面近傍の概略湿度分布図であり、(b)は加湿期間に関するフラッシングの加算補正数を示す図であり、(c)は加湿停止期間に関するフラッシングの加算補正数を示す図であり、(d)は期間加算補正数を示す図であり、(e)はフラッシング量記憶部に記憶されている基準発数に対して加算する加算補正数を示す図であり、(f)はフラッシング量補正部により補正された後の、フラッシング量記憶部に記憶されているフラッシング発数を示す図である。
図9図1に示す制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図10図1に示す制御装置の使用前フラッシングに関する動作フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
先ず、図1を参照し、本発明に係る液体吐出装置の一実施形態としてのインクジェットプリンタ101の全体構成について説明する。
【0014】
プリンタ101は、直方体形状の筐体101aを有する。筐体101aの天板上部には、用紙Pが排紙される排紙部31が設けられている。筐体101aの内部空間は、上から順に空間A,B,Cに区分できる。空間A,Bには、給紙部101cから排紙部31に向かう用紙搬送経路が形成されており、図1に示す黒太矢印に沿って用紙Pが搬送される。空間Aでは、用紙Pへの画像形成と、用紙Pの排紙部31への搬送が行われる。空間Bでは、用紙Pの用紙搬送経路への給紙が行われる。空間Cのカートリッジ4からは、空間Aのインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1と称する)に対してインクが供給される。
【0015】
空間Aには、ブラックインクを吐出するヘッド1、ガイド機構8、キャップ機構40、用紙センサ32、加湿メンテナンスに用いられる加湿機構50(図6参照)、ヘッド昇降機構30(図9参照)、ワイピングに用いられるワイパ機構70(図3参照)、及び、制御装置100等が配置されている。
【0016】
ヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有する。ヘッド1は、ヘッドホルダ13を介して筐体101aに支持されており、ブラックインクの液滴を吐出する。ヘッド1の下面は、複数の吐出口108(図2(b),図4(a)参照)が開口した吐出面1aである。また、ヘッドホルダ13は、ヘッド1の吐出面1aと、支持部6(プラテン6a,6b)との間に画像記録に適した所定の間隙が形成されるようにヘッド1を保持している。
【0017】
ヘッドホルダ13には、ヘッド1に加えて、キャップ機構40を構成するキャップ部材41が取り付けられている。キャップ部材41は、ヘッド1の周囲に配設された環状部材であって、平面視でヘッド1を内包する。ヘッド1、及びキャップ機構40については後に詳述する。
【0018】
ガイド機構8は、用紙Pをガイドする2つのガイド部5a,5bと、画像記録に際して、搬送される用紙Pを下から支持する支持部6とを含み、用紙搬送経路を規定する。2つのガイド部5a,5bは、支持部6を挟んで配置されている。搬送方向上流側のガイド部5aは、3つのガイド18aと3つの送りローラ対22〜24とを有している。ガイド部5aは、給紙部101cとプラテン6a,6bとを繋いでおり、画像記録用の用紙Pをプラテン6a,6bに向けて搬送する。
【0019】
搬送方向下流側のガイド部5bは、3つのガイド18bと4つの送りローラ対25〜28とを有している。ガイド部5bは、プラテン6a,6bと排紙部31とを繋いでおり、画像記録後の用紙Pを排紙部31に向けて搬送する。ここで、副走査方向とは、用紙Pが送りローラ対24,25によって搬送される搬送方向D(図1中矢印D方向)と平行な方向であり、主走査方向とは、吐出面1aに平行且つ搬送方向Dに直交する搬送直交方向である。
【0020】
支持部6は、2つのプラテン6a,6bと、これらを回動させる駆動モータ(不図示)とを有する。2つのプラテン6a、6bは、搬送方向にこの順で配置され、主走査方向に回動軸7a,7bを持つ。上流側のプラテン6aは、上流端に回動中心がある。下流側のプラテン6bは、下流端に回動中心がある。2つのプラテン6a,6bは、制御装置100の制御により、駆動モータが駆動されることで、支持面形成位置と開放位置との間で回動する。支持面形成位置では、図1中において実線で示すように、2つのプラテン6a,6bの先端が突き合わされて、全体として平面形状の支持面を構成する。開放位置では、図1中において点線で示すように、2つのプラテン6a、6bが、90°回動されて下方に垂れ下がり、上面同士が平行に対向する。これにより、ヘッド1(吐出面1a)が、空間を介して対向部材10と直接対向する。なお、2つのプラテン6a,6bは、通常は、支持面形成位置に配置され、メンテナンス時に開放位置に配置される。
【0021】
用紙センサ32は、送りローラ対24の上流側に配置され、搬送される用紙Pの先端を検知する。このとき出力された検知信号は、ヘッド1及び送りローラ対22〜28の駆動に用いられ、所望の解像度と速度で画像が形成されることになる。
【0022】
加湿機構50は、吐出面1aに対向した吐出空間S1に加湿空気を供給する。吐出面1aに開口する吐出口108は、内部のインクに水分が補給されることになり、増粘や乾燥が抑制される。加湿機構50については後に詳述する。
【0023】
ヘッド昇降機構30は、ヘッドホルダ13を昇降させることで、ヘッド1を記録位置、退避位置、及びワイピング位置に選択的に移動させる。記録位置では、図1に示すように、ヘッド1がプラテン6a,6bと画像記録に適した間隔で対向する。退避位置では、ヘッド1が記録位置よりも上方に位置し、プラテン6a,6bから大きく離隔する(図3(c)参照)。ワイピング位置では、ヘッド1が記録位置と退避位置との間に位置する(図3(b)参照)。ワイピング位置及び退避位置では、ヘッド1と対向部材10との間の空間を、後述するワイパ71a,71bが移動可能である。
【0024】
ワイパ機構70は、図3に示すように、2つのワイパ71a,71b、これを支持する基部71cおよびワイパ移動機構75とを有している。ワイパ71aは基部71cの上面から鉛直方向に沿って立設され、ワイパ71bは基部71cの下面に鉛直方向に沿って立設されている。これらワイパ71a,71bは、ともに板状の弾性部材(例えば、ゴム)である。ワイパ71aは吐出面1aの幅より若干長く、ワイパ71bは対向部材10の幅より若干長い。基部71cは、副走査方向を長手方向とする直方体であって、両端に孔が形成されている。孔は、基部71cを主走査方向に貫通し、一方の内面には雌ねじが形成されている。
【0025】
ワイパ移動機構75は、一対のガイド(例えば、丸棒)76と駆動モータ(不図示)とから構成される。一方のガイド76は、外周面に雄ネジが形成されており、駆動モータから回転力を受ける。この一方のガイド76は、ねじ同士が螺合するように、孔に貫挿されている。他方のガイド76は、孔の内周面に対して主走査方向に沿って摺動可能に、孔に貫挿されている。一対のガイド76は、ヘッド1の側面に沿って延びて、記録位置にあるヘッド1を副走査方向両側から挟む。
【0026】
駆動モータの正及び逆回転によって、基部71cがガイド76に沿って往復移動する。図3(a)に示すように、ヘッド1の主走査方向の左側端部近傍は、基部71cの待機位置である。第1ワイピング時には、ワイパ71aが吐出面1aに接触した状態で、基部71cが主走査方向(図中右方)に移動することによって、ワイパ71aは吐出面1aに対して相対的に移動し、吐出面1aに付着した異物を払拭する。また、第2ワイピング時には、ワイパ71bが対向部材10の表面10aに接触した状態で、基部71cが主走査方向(図中右方)に移動することによって、ワイパ71aは表面10aに対して相対的に移動し、表面10aに付着した異物を払拭する。基部71cは、ヘッド1が退避位置に、対向部材10が第4位置(後述する)に移動するのを待って、左方の待機位置に戻される。
【0027】
空間Bには、給紙部101cが配置されている。給紙部101cは、給紙トレイ35及び給紙ローラ36を有する。このうち、給紙トレイ35が、筐体101aに対して着脱可能である。給紙トレイ35は上方に開口する箱であり、複数の用紙Pを収納可能である。給紙ローラ36は、給紙トレイ35内で最も上方の用紙Pを送り出す。
【0028】
給紙トレイ35には、主走査方向の幅が異なる複数サイズの用紙Pを収容可能なように、スライド式の用紙規制機構(図示せず)が取り付けられている。この用紙規制機構は用紙Pの搬送方向に平行な一対の用紙規制壁35a(図5参照)を有している。用紙規制壁35aは、給紙トレイ35に収納された用紙Pの主走査方向の位置を予め定められた基準位置に規制するものである。本実施形態においては、ガイド機構8と給紙部101cとで搬送手段を構成している。また、用紙規制壁35aについては、後に詳述する。
【0029】
空間Cには、ブラックインクを貯留するカートリッジ4が、筐体101aに対して着脱可能に配置されている。カートリッジ4は、ヘッド1にチューブ(不図示)及びポンプ38(図9参照)を介して接続されている。なお、ポンプ38は、ヘッド1にインクを強制的に送るとき(すなわち、パージ時や液体の初期導入時)に駆動される。これ以外は停止状態にあり、ポンプ38はヘッド1へのインク供給を妨げない。
【0030】
次に、制御装置100について説明する。制御装置100は、プリンタ各部の動作を制御して、プリンタ101全体の動作を司る。制御装置100は、外部装置(プリンタ101と接続されたPC等)から供給された記録指令(画像データなど)に基づいて、画像記録を制御する。記録指令を受けると、制御装置100は、給紙部101c、ガイド機構8を駆動する。給紙トレイ35から送り出された用紙Pは、上流側ガイド部5aによりガイドされプラテン6a、6bの支持面上に送られる。用紙Pは、ヘッド1の真下を副走査方向(搬送方向D)に通過する際に、制御装置100の制御により、ヘッド1の吐出口108からインクが吐出され、所望の画像が記録される。なお、インクの吐出タイミングは、用紙センサ32からの検知信号により決められる。そして、画像が記録された用紙Pは、下流側ガイド部5bによりガイドされて、筐体101aの上部から排紙部31に排出される。
【0031】
また、制御装置100は、ヘッド1の液体吐出特性の回復や維持を行うメンテナンス動作を制御する。メンテナンス動作には、パージ、フラッシング、ワイピング、キャッピング、加湿メンテナンス等が含まれる。
【0032】
パージでは、ポンプ38が駆動されて、すべての吐出口108からインクが強制的に排出される。このとき、アクチュエータは駆動されない。フラッシングでは、アクチュエータが駆動されて、吐出口108からインクが吐出される。フラッシングには、画像記録時に、フラッシングデータ(画像データとは異なるデータ)に基づいて行われる記録中フラッシング、及び画像記録前に行われる使用前フラッシングが含まれる。
【0033】
ワイピングには、吐出面1aを払拭する第1ワイピング、及び対向部材10の表面10aを払拭する第2ワイピングが含まれる。第1ワイピングは、パージ後に行われ、吐出面1a上の残留したインクなどの異物が取り除かれる。第2ワイピングは、パージ、及び使用前フラッシング後に行われ、対向部材10の表面10aの残留したインクなどの異物が取り除かれる。
【0034】
キャッピングでは、図6に示すように、吐出空間(吐出面1a(吐出口108)と対向する空間)S1が、キャップ機構40により外部空間S2から隔離され封止状態となる。吐出口108内のインクは、水分の発散する経路が閉じられることになり、増粘や乾燥が抑制される。加湿メンテナンスでは、図6に示すように、キャッピングにより隔離された吐出空間S1に加湿空気が供給される。このとき、吐出空間S1内に供給された加湿空気により、吐出口108内のインクの乾燥がさらに抑制される。キャッピングは、ヘッド1の休止時(画像記録が所定期間行われなかったとき)に行われる。また、加湿メンテナンスは、キャッピングが行われている期間のうちの、或る所定期間の間のみ行われる。
【0035】
次に、図2,4、及び、図5を参照して、ヘッド1について説明する。図4(a)では説明の都合上、アクチュエータユニット21の下方にあって破線で描くべき圧力室110、アパーチャ112及び吐出口108を実線で描いている。
【0036】
ヘッド1は、図2(a)に示すように、流路ユニット9の上面9aに8つのアクチュエータユニット21(21a〜21h)が固定されている。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のユニモルフ型のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する。なお、図示はしないが、ヘッド1は、流路ユニット9に加え、流路ユニット9に供給されるインクを貯留するリザーバユニット、アクチュエータユニット21に駆動信号を供給するフレキシブルプリント配線基板(Flexible Printed Circuit:FPC)、FPCに実装されたドライバICを制御する回路基板等が積層した積層体である。
【0037】
流路ユニット9は、図4(b)に示すように、9枚のステンレス製プレート122〜130を積層した積層体である。流路ユニット9の内部には、圧力室110を含むインク流路が形成されている。インク流路は、上流側の共通インク流路と下流側の個別インク流路132とから構成される。共通インク流路は、マニホールド流路105及びこれから分岐した副マニホールド流路105aからなる。マニホールド流路105は、一端に上面のインク供給口105bを持つ。個別インク流路132は、副マニホールド流路105aの出口から、アパーチャ112及び圧力室110を経て、下面(吐出面1a)の吐出口108に至る。
【0038】
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図2(a)に示すように、8つのアクチュエータユニット21a〜21hは、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう主走査方向に沿って配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21a〜21hの平行対向辺は主走査方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニットの斜側辺同士は副走査方向に沿って重なっている。また、主走査方向両側に配置された2つのアクチュエータユニット21a,21hの主走査方向外側の側辺は、副走査方向に沿っている。
【0039】
図4(c)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系セラミックスであり、3枚の圧電層161〜163から構成されている。最上層の圧電層161は、上面に複数の個別電極135が形成され、厚み方向に分極されている。圧電層162の上面には、圧電層161に挟まれて、共通電極134が全体的に形成されている。両電極134、135間に分極方向の電界が生じると、間の圧電層161(駆動活性部)が面方向に縮む。圧電層162、163は、自発的に変形しないので、圧電層161との間に歪み差が生じる。これにより、個別電極135と圧力室110とに挟まれた部分が、圧力室110に向かって突出(ユニモルフ変形)する。このとき圧力室110内のインクは加圧され、インク滴として吐出される。
【0040】
このように、アクチュエータユニット21には、個別電極135毎にアクチュエータが作り込まれており、独立してインクに吐出エネルギーを付与できる。ここで、共通電極134は、常にグランド電位にある。また、駆動信号は、個別ランド136から個別電極135に選択的に供給される。個別ランド136は、個別電極135の先端部にある。
【0041】
本実施形態では、インクの吐出に際して、引き打ち法が採用されている。個別電極135は、予め所定の電位にあり、アクチュエータはユニモルフ変形している。駆動信号が供給されると、個別電極135は、一旦共通電極134と同電位となり、所定時間後に所定電位に復帰する。同電位となるタイミングで、アクチュエータがユニモルフ変形を解消して、圧力室110にインクが吸い込まれる。電位の復帰タイミングで、アクチュエータが再びユニモルフ変形して、吐出口108からインク滴が吐出される。
【0042】
図2(b)は、ヘッド1の吐出面1aの平面図である。図2(b)に示すように吐出面1aには、吐出口領域NAが形成されている。ここで、吐出口領域NAとは、主走査方向に沿った矩形領域であって、主・副両走査方向の各両端にある吐出口108を内包する領域である。より具体的には、主走査方向両端の吐出口108に対して外側から接する副走査方向に延びた2つの仮想直線と、副走査方向両端の吐出口108に対して外側から接する主走査方向に延びた2つの仮想直線とで画定される領域である。また、吐出口領域NAは、図2(b)に示すように、主走査方向に沿って3つの領域に分けることができる。中央領域NACと、これを両側から挟む2つの端部領域NAOである。ここで、中央領域NACとは、主走査方向に関して、吐出口領域NAの中央Fを領域中心とし、吐出口領域NAの全長の半分の長さを領域幅とした領域である。また、この領域幅は、搬送される最も大きいサイズの用紙Pの主走査方向の幅よりも若干大きい。なお、各領域の区割りは、この例に限定されない。
【0043】
吐出口領域NAには、図2(b)に示すように、各アクチュエータユニット21に対向して8つの吐出口群(吐出領域)U(U1〜U8)が形成されている。8つの吐出口群Uは、それぞれ複数の吐出口108が台形領域を占め、主走査方向に2列の千鳥状に配置されている。主走査方向に関して、隣接する吐出口群U間には、台形の斜辺に沿った隙間であり、吐出口108の無い非吐出領域がある。また、吐出口領域NAのほぼ中心に位置する点について、8つの吐出領域が点対称に配置されている。加えて、吐出口群Uを構成するそれぞれの吐出口108も、当該点について点対称に配置されている。なお、複数の吐出口108は、全体として、主走査方向に沿って等間隔で並ぶ。
【0044】
次に、図2,6,7を参照し、ヘッドホルダ13及びキャップ機構40の構成について説明する。
【0045】
ヘッドホルダ13は、金属等からなる剛体の枠状フレームであり、ヘッド1の側面を全周に亘って支持している。ヘッドホルダ13には、一対のジョイント51と、キャップ機構40のキャップ部材41とが取り付けられている。ヘッドホルダ13とヘッド1との当接部は、全周に亘って封止剤で封止されている。また、ヘッドホルダ13とキャップ部材41との当接部は、全周に亘って接着剤で固定されている。
【0046】
一対のジョイント51は、ヘッド1の主走査方向両端部に外側から近接配置されている。加湿メンテナンスにおいて、図6に示すように、右側のジョイント51が加湿空気を吐出空間S1に供給する。空気供給口51aが、その下面に開口する。左側のジョイント51が、空気を吐出空間S1から回収する。空気排出口51bも、その下面に開口する。ジョイント51は、図7に示すように、方形の基端部51xと円柱状の円筒部51yとを含む。中空空間51zが、両部51x、51yを上下に貫通している。円筒部51yの先端部は、先細り形状である。円筒部51yは、ヘッドホルダ13の貫通孔13aに挿通され、露出した先端部にチューブ55が接続されている。円筒部51yと貫通孔13aとの間には若干の隙間があるが、シール材等で充填されている。
【0047】
なお、図2(b)に示すように、空気供給口51a及び空気排出口51bは、ともに円形の開口であって、吐出口領域NAの幅走査方向の領域幅よりも小さい。本実施の形態では、空気供給口51a及び空気排出口51bの主走査方向(搬送直交方向)の中間位置は、吐出口領域NAの中央Fに重なる。これにより、吐出口108に加湿空気を効果的に供給できる。
【0048】
キャップ機構40は、キャップ部材41、キャップ部材41を昇降させるキャップ昇降機構48、対向部材10、対向部材10を昇降させる対向部材昇降機構49(図9参照)を含む。キャップ部材41は、ヘッド1とともに吐出空間S1を内包可能で、主走査方向に長い。キャップ部材41は、図7に示すように、ヘッドホルダ13に支持された弾性体42、及び、昇降可能な可動体43を含む。
【0049】
弾性体42は、ゴム等の環状弾性材料からなり、平面視でヘッド1を囲んでいる。弾性体42は、図7に示すように、基部42x、基部42xから下方に突出した突出部42a、ヘッドホルダ13に固定された固定部42c、及び、基部42xと固定部42cとを接続する接続部42dを含む。このうち、突出部42aは、基部42xの下面から突出し、断面が三角形である。また、固定部42cの断面はT字状である。固定部42cの上端部分は、接着剤等によって、ヘッドホルダ13に固定されている。貫通孔13aの近傍では、固定部42cが、ヘッドホルダ13と各ジョイント51(基端部51x)とで挟持されている。接続部42dは、内側にある固定部42cの下端と外側にある基部42xの下端とを接続する。この間を、接続部42dは、湾曲しつつ延びている。接続部42dの湾曲は、基部42xの可動体43による昇降を可能にする。基部42xの上面には、凹部42bが形成されており、可動体43の下端と嵌合している。
【0050】
可動体43は、環状の剛材料(例えば、ステンレス)からなり、平面視でヘッド1の外周を取り囲んでいる。可動体43は、弾性体42を介してヘッドホルダ13に支持されつつ、ヘッドホルダ13に対して鉛直方向に相対移動可能である。
【0051】
キャップ昇降機構48は、ギア45、及び昇降モータ(不図示)を有している。ギア45は、可動体43と接続されている。制御装置100による制御の下、昇降モータが駆動されると、ギア45が回転して可動体43が昇降する。このとき、基部42xも可動体43と共に昇降する。これにより、突出部42aの先端41aと吐出面1aとの相対位置が、鉛直方向に変化する。
【0052】
突出部42aは、可動体43の昇降に伴って、先端41aがインク吐出方向に関して吐出面1aよりも前方に位置する当接位置(図6参照)と、先端41aが吐出面1aよりも後方に位置する離隔位置(図7参照)とを選択的に取る。当接位置では、突出部42aの先端41aが第1位置(後述する)にある対向部材10の表面10aに当接し、吐出空間S1が外部空間S2から隔離された封止状態となる。一方、離隔位置では、突出部42aの先端41aが対向部材10の表面10aから離隔し、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された開放状態(非封止状態)となる。
【0053】
対向部材10は、平面視において、キャップ部材41よりも一回り大きく、矩形平面形状を有するガラス板である
【0054】
対向部材昇降機構49は、対向部材10を昇降させ、対向部材10が第1位置から第4位置の間で移動する。第1位置では、図3(a)に示すように、対向部材10が最も吐出面1aに近づく位置であって、表面10aと吐出面1aとの離隔距離が支持部6の支持面と吐出面1aとの離隔距離と同じである。使用前フラッシングは、対向部材10がこの第1位置に配置されているときに行われる。
【0055】
第2位置では、図3(c)に示すように、表面10aと吐出面1aとの離隔距離が第1位置よりも大きい。第2ワイピングは、対向部材10がこの第2位置に配置されているときに行われる。
【0056】
第3位置では、図3(b)に示すように、表面10aと吐出面1aとの離隔距離が第2位置よりも大きい。パージ、及び第1ワイピングは、対向部材10がこの第3位置に配置されているときに行われる。第4位置では、図1に示すように、表面10aと吐出面1aとの離隔距離が最も大きくなる。
【0057】
次に、図6を参照して、加湿機構50の構成について説明する。
【0058】
加湿機構(加湿手段)50は、図6に示すように、一対のジョイント51、チューブ55,57、加湿ポンプ56及びタンク54などを含む。チューブ55の一端は左側ジョイント51に嵌合し、他端はタンク54に接続されている。チューブ57の一端は右側ジョイント51に嵌合し、他端はタンク54に接続されている。このように、チューブ55、57は、吐出空間S1とタンク54とを連通させている。
【0059】
加湿ポンプ56は、図6に示すように、チューブ55に設けられている。加湿ポンプ56は、駆動されると常に一方向に送気する。この場合の送気方向は、加湿ポンプ56からタンク54の方向である。
【0060】
タンク(貯留部)54は、下部空間に水(加湿液)を貯留し、且つ、上部空間に、下部空間の水により加湿された加湿空気を貯蔵している。また、タンク54の上壁には、タンク54内と大気とを連通する大気連通孔(不図示)が形成されている。チューブ55は、タンク54の下部空間(水中)と連通している。一方、チューブ57は、タンク54の上部空間と連通している。なお、タンク54内の水が流れ込まないよう、チューブ55には図示しない逆止弁が取り付けられており、図6中白抜き矢印方向にのみ空気が流れる。また、タンク54内の水が少なくなった場合には、図示しない水補給タンクより水が補給される。
【0061】
吐出空間S1が封止状態のときに、加湿メンテナンスが実行されると、制御装置100の制御により、加湿ポンプ56が駆動され、図6に示すように、タンク54内の空気が白抜き矢印に沿って循環する。上部空間の加湿空気は、空気供給口51aから吐出空間S1に供給される。内部の空気は、加湿空気と置換されながら空気排出口51bに向かって流れる。チューブ55はタンク54と水中で連通しているため、吐出空間S1内の空気は、タンク54で加湿される。生成された加湿空気は、加湿ポンプ56の駆動が続く間、上部空間から吐出空間S1に供給される。このとき、吐出口領域NA内の吐出口108に対して、加湿空気が効率良く供給される。
【0062】
なお、キャッピング時において、加湿メンテナンスが行われている期間(加湿ポンプ56を駆動している期間:以下、加湿期間)には、上述のように吐出空間S1に加湿空気が供給されているといえども、各吐出口108のインクへの水分補給量に分布が生じる。また、加湿メンテナンスは、キャッピング中の或る所定期間だけ行われる。従って、キャッピング時において、加湿メンテナンスが行われていない期間(加湿ポンプ56を駆動していない期間:以下、加湿停止期間)は、インクの増粘が生じる。結果的な増粘状態は、加湿停止期間の長さに加え、キャッピング直前の吐出口108の動作内容により変化する。そこで、本実施形態においては、このような増粘したインクを吐出口108から排出するために、ヘッド1の使用開始前(画像記録前)には、使用前フラッシングを行う。なお、本実施形態においては、加湿停止期間は加湿期間よりも短くされている。
【0063】
ここで、図8(a)は、キャッピング中の吐出空間S1内であって、主走査方向に関する吐出面1a近傍の概略湿度分布図である。横軸は主走査方向の位置、縦軸は、各主走査方向の位置における湿度の副走査方向の平均値に対応する。加湿期間において、湿度は空気供給口51a側が高く、湿度分布は空気排出口51bに向けて緩い低下傾斜を示す。吐出空間S1の両端部では、湿度分布が中央部よりも大きな低下傾向を示している。加湿空気が空気供給口51aから空気排出口51bに向かう間に、吐出口108を含む周囲の壁面に吸湿されるので、分布に傾斜が生じる。このとき、図2(b)に示すように、加湿空気の流れは、空気排出口51bへ方向付けられている。空気供給口51a近傍の気流は、空気排出口51bに向かいながら副走査方向に広がる。空気排出口51b近傍の気流は、収束しながら集まる。そのため、吐出空間S1の両端部(特に、空気供給口51a及び空気排出口51bの外側近傍)では、三方の壁面からの吸湿と気流の分布により、加湿空気(水蒸気)が供給不足気味となり、吐出空間S1の中央領域に比べて湿度が低くなる。
【0064】
また、加湿停止期間では、吐出空間S1内の湿度分布が顕著となり、空気供給口51aからの距離が短い空間領域及び空気排出口51bからの距離が短い空間領域は、他の空間領域と比べて湿度の低下を強める。これは、キャップ機構40のキャップ部材41や対向部材10に付着した残留インクの影響によるところが大きい。以下、キャップ部材41に付着した残留インクを中心に具体的に説明する。
【0065】
キャップ部材41の吐出空間S1を画定する内面は、画像記録時に生じるインクミストが付着し、第1ワイピング時にはインクの一部が付着することがある。このような残留インクは、乾燥すると乾燥材として機能する。ここで、吐出空間S1の中央領域NACと対向する空間領域においては、キャップ部材41の主走査方向に沿って延在する2つの側面に残留した残留インクの影響を主に受けて、湿度が低下する。一方、吐出空間S1の端部領域NAOと対向する空間領域は、キャップ部材41の主走査方向に沿って延在する2つの側面に加えて、キャップ部材41の副走査方向に沿って延在する1つの側面に残留した残留インクの影響を主に受けて、湿度が低下する。また、空気供給口51aよりも主走査方向外側の空間領域及び空気排出口51bよりも主走査方向外側の空間領域は、空気供給口51aと空気排出口51bとで挟まれる空間領域よりも加湿空気が供給されにくいため、加湿期間の湿度が低くなる。そのため、これらの主走査方向外側の空間領域に接触する残留インクの増粘の程度は大きくなる。またさらに、第1ワイピングでは、キャップ部材41において、主走査方向中央の領域よりも、両側の領域の方が、残留インクが多い。以上により、加湿停止期間前の吐出口108各々の増粘の程度を同じとした場合において、加湿停止期間中における吐出口108の単位時間当たりの乾燥進行度は、端部領域NAOの吐出口108の方が、中央領域NACの吐出口108よりも大きい。
【0066】
また、加湿期間には、空気供給口51aから空気排出口51bに向かって加湿空気が流れるため、キャップ部材41内の残留インクは、空気排出口51b側により多く蓄積する。このため、吐出空間S1でも、空気排出口51bからの距離が短い空間領域の方がより湿度が低下する。その結果、加湿停止期間前の吐出口108各々の増粘の程度が同じとした場合、2つの端部領域NAOのうち、空気排出口51b側の端部領域NAOにある吐出口108の方が、単位時間当たりの乾燥進行度が大きい。
【0067】
このように、キャッピング中には、吐出口108のインクに対して、加湿メンテナンスによる水分補給とその後の水分略奪が生じる。加湿メンテナンス(加湿期間)において、加湿空気の流通経路、吐出空間S1における空気供給口51a及び空気排出口51bの配置位置、さらに吐出空間S1を画定する内壁面からの吸湿等が影響して、吐出口108内のインクへの水分補給量に分布が生じる。加湿メンテナンス後の放置(加湿停止期間)では、吐出空間S1を画定する内壁面、残留インクの蓄積形態等が影響して、インクからの水分略奪量にも分布が生じる。これらの効果が重なって、単位時間あたりの乾燥進行度は、端部領域NAOが中央領域NACより大きく、端部領域NAOでも空気排出口51b側が大きい。そのため、使用前フラッシングにおいて、吐出口群の区別無く一律のフラッシングを行う構成では、空気排出口51b近傍領域の条件に合わせることになり、排出されるフラッシング量が多くなる。本実施形態においては、吐出口群U毎に吐出口108から吐出されるフラッシング量が変えられている。しかし、吐出口群Uを構成する複数の吐出口108間のフラッシング量は一律にされている。このとき、各吐出口群Uは、各アクチュエータユニット21に対応しているため、吐出口群Uを構成する複数の吐出口108間のフラッシング量を一律にすることで、使用前フラッシングの駆動制御が容易となる。
【0068】
次に、図5を参照して、用紙規制壁35aについて説明する。図5は、給紙トレイ35に収容された用紙Pの位置とヘッド1の吐出面1aとの位置関係を示した模式図である。
【0069】
図5に示すように、一対の用紙規制壁35aは、一方を主走査方向に変位させると、他方も自動的に逆方向に同じ距離だけ変位する。即ち、一対の用紙規制壁35aを隔てる空間の主走査方向に関する中心位置は、これら用紙規制壁35aの位置に拘わらず、同じ位置となる。換言すれば、用紙Pのサイズに関わらず、用紙Pの主走査方向に関する中央は、給紙トレイ35に対して、同じ位置となる。
【0070】
ここで、上述したように、加湿期間中の湿度分布(図8(a)参照)が示すように、空気供給口51a及び空気排出口51bに近い吐出口108ほど、水分補給量の変化が大きく、他の領域に比べて補給量の不足が心配される。補給量の不足には、吐出口領域NAと空気供給口51a及び空気排出口51bとのサイズ差の影響が含まれる。副走査方向に関して、吐出口領域NAは、空気供給口51a及び空気排出口51bより大きい。そのため、図2(b)に示すように、加湿空気の流通経路に偏りが生じている。空気供給口51a及び空気排出口51b近傍では、流通幅の狭い領域があり、その領域内では副走査方向に水分の補給能力に分布が生じている。一方、各吐出口108の乾燥進行度は、キャップ部材41に付着した残留インクの影響を受ける。残留インクの量やその分布が要因であるが、これらは経時的に変化する。しかし、空気供給口51a及び空気排出口51bに近い吐出口108ほど、残留インクからの影響が大きい傾向は変わらない。これは、ワイパ71a、71bの払拭方向とその範囲、加湿空気の流通方向、吐出空間S1を画定する内壁面の形態等の影響として説明される。少なくとも、主走査方向両端の吐出口群U1、U8には、増粘の程度が他に比べて大きな吐出口108が含まれている。
【0071】
このような吐出口108を用いて画像記録を行った場合、用紙Pに記録される画像にムラが生じ得る。そこで、本実施形態においては、通称センターレジ方式の搬送が採用されている。この方式では、一対の用紙規制壁35aを隔てる空間の主走査方向に関する中心位置が、画像記録時において、主走査方向に関して空気排出口51bから第1回避距離E1以内の領域及び空気供給口51aから第2回避距離E2以内の領域を避けて用紙Pが搬送されるように設定されている。
【0072】
ここで、第1回避距離E1と第2回避距離E2とは、キャッピング時において、主走査方向に関して隣接する吐出口108間の単位時間当たりの乾燥進行度の差が所定値以下となるまでの、空気供給口51a及び空気排出口51bそれぞれからの距離である。また、第1回避距離E1と第2回避距離E2とを合算した合算値は、空気供給口51a及び空気排出口51bの搬送直交方向に関する開口離隔距離Gから吐出口領域NAの搬送直交方向に関する領域幅Hを減算した値よりも大きく、且つ開口離隔距離Gから用紙Pの搬送直交方向に関する用紙幅Iを減算した値以下である。これにより、空気供給口51a及び空気排出口51bから距離が短い吐出口108を極力用いずに画像記録を行うことができるので、画像記録時において用紙Pに画像ムラが生じることを抑制することができる。
【0073】
また、上述したように、キャップ部材41内の残留インクは、空気供給口51a側よりも空気排出口51b側の方が多い。そこで、本実施形態においては、一対の用紙規制壁35aに介在する空間の主走査方向に関する中心位置から用紙搬送経路に沿って延ばした用紙中心線Oが、吐出面1aと直交する方向から見て、吐出口領域NAの主走査方向に関する中央領域NAC内であり、且つ、当該中央Fから空気供給口51a側にオフセットした位置を通るようにされている。即ち、画像記録時において、用紙Pの主走査方向に関する中央は、吐出面1aと直交する方向から見て、吐出口領域NAの中央領域NAC内であり、且つ空気供給口51a側にオフセットした位置と対向する。また、第1回避距離E1は第2回避距離E2よりも大きくされている。これにより、画像記録時において画像ムラが生じるのをさらに抑制することができる。
【0074】
変形例として、画像記録時において、吐出面1aと直交する方向から見て、主走査方向に関して、空気排出口から最も距離が短い吐出口108及び空気供給口51aから最も距離が短い吐出口108と、用紙Pとが対向しないように、一対の用紙規制壁35aを隔てる空間の主走査方向に関する中心位置が設定されていてもよい。この場合、乾燥進行度の差が他と著しく異なる吐出口108を用いずに記録媒体への画像記録が行われるので、画像ムラが生じるのを抑制することができる。
【0075】
また、別の変形例として、一対の用紙規制壁35aを隔てる空間の主走査方向に関する中心位置は、加湿メンテナンス時の吐出空間S1における吐出口領域NAと対向する空間領域の湿度分布に基づいて設定されていてもよい。具体的には、用紙Pにおける主走査方向の幅の長さを湿度分布の主走査方向の標本長さとする。そしてキャッピング時の湿度変動の分散が最も小さくなる湿度分布の標本区間と対応する、吐出口領域NAの対応領域と、用紙Pとが対向するように、一対の用紙規制壁35aを隔てる空間の主走査方向に関する中心位置が設定される。これにより、画像記録時において、用紙Pと対向する吐出口108間の増粘の程度の差が小さいので、画像ムラが生じるのを抑制することができる。
【0076】
次に、図9を参照しつつ、制御装置100について説明する。制御装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム及びこれらプログラムに使用されるデータを書き替え可能に記憶するROM(Read Only Memory)と、プログラム実行時にデータを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)とを含んでいる。制御装置100を構成する各機能部は、これらハードウェアとROM内のソフトウェアとが協働して構築されている。図9に示すように、制御装置100は、搬送制御部151と、画像データ記憶部152と、ヘッド制御部153と、メンテナンス制御部154と、フラッシング制御部155と、非対向吐出口範囲記憶部159と、期間計測部160とを有している。
【0077】
搬送制御部151は、外部装置から受信した記録指令に基づいて、用紙Pが搬送方向に沿って所定速度で搬送されるように、給紙部101c、及び、ガイド機構8の各動作を制御する。画像データ記憶部152は、外部装置からの記録指令に含まれる画像データ(インク吐出データ)を記憶する。
【0078】
ヘッド制御部153は、画像記録において、用紙Pに対してインクを吐出するようヘッド1を制御する。画像記録は、ヘッド制御部153が、画像データ記憶部152に記憶された画像データに基づいて、ヘッド1の吐出口108からのインク吐出を制御する。ヘッド1の制御は、用紙Pの搬送と同期して行われ、用紙Pの先端検出信号に基づく。画像データに基づく制御の開始は、先端が検出されてから、所定時間後である。このとき、用紙Pの印刷領域の先端が、最も上流にある吐出口108の直下に到達する。
【0079】
メンテナンス制御部154は、パージ、第1ワイピング、第2ワイピング、キャッピング、加湿メンテナンスにおいて、支持部6、ヘッド昇降機構30、ポンプ38、キャップ昇降機構48、対向部材昇降機構49、加湿ポンプ56、ワイパ移動機構75を制御する。
【0080】
フラッシング制御部155は、記録中フラッシング、及び使用前フラッシングにおいて、ヘッド1を制御する。記録中フラッシングは、画像記録中の吐出特性維持動作であり、フラッシングデータに基づいて用紙Pと対向する吐出口108からインクを吐出させて、用紙P上にフラッシングドットを形成する。使用前フラッシングでは、後述のフラッシング量記憶部156に記憶されているフラッシング量に基づいて、複数の吐出口108から吐出してインクを排出する。使用前フラッシングは、印刷ジョブの直前(例えば、電源投入直後やジョブ間の待機時)に行われる。なお、吐出口108から排出するフラッシング量を変えるには、フラッシング発数(連続吐出回数)を変える、あるいは、1発のフラッシングで排出する液滴量を変えるといった手法を採用すればよい。本実施形態においては、フラッシング発数によりフラッシング量を変えている。
【0081】
非対向吐出口範囲記憶部159は、前回の使用前フラッシングが行われた時、又は前回のパージが行われた時のうち何れか遅い方から、今回の使用前フラッシング(加湿メンテナンス)が行われるまでの間に行われた、画像記録時において、用紙Pと対向せずにインクの吐出が行われていない吐出口領域NAの範囲を記憶する。非対向吐出口範囲記憶部159は、使用前フラッシングが行われたとき、又はパージが行われたときに、記憶している吐出口領域NAの範囲を初期化する。
【0082】
期間計測部160は、キャッピングが行われているキャッピング期間中における、加湿期間及び加湿停止期間を計測する。
【0083】
次に、フラッシング制御部155について詳細に説明する。フラッシング制御部155は、フラッシング量記憶部156と、フラッシング量補正部157と、フラッシング実行部158とを有している。
【0084】
フラッシング量記憶部156は、使用前フラッシング時において、吐出口108から吐出してインクを排出するフラッシング量(フラッシング発数)を吐出口108毎に記憶している。上述したように使用前フラッシングにおいて、吐出口群Uを構成する複数の吐出口108のフラッシング量は一律にされているため、このフラッシング発数は、同一の吐出口群Uに属する吐出口108間では同一の値となる。このフラッシング量記憶部156には、使用前フラッシング時のフラッシング発数の基準となる基準発数(本実施形態においては1000発)が予め記憶されている。この基準発数は、キャッピングの期間、加湿期間、及び加湿停止期間に拘わらず、使用前フラッシング時において吐出口108各々から吐出させる最低限の発数である。フラッシング量記憶部156は、パージや使用前フラッシングが行われるときに、フラッシング発数を基準発数に初期化する。
【0085】
フラッシング量補正部157は、フラッシング量記憶部156に記憶されているフラッシング量(フラッシング発数)を加算補正する。フラッシング実行部158は、フラッシング量記憶部156に記憶されているフラッシング量に基づいて、複数の吐出口108から吐出してインクを排出する。
【0086】
次に、フラッシング量補正部157について詳細に説明する。フラッシング量補正部157は、図9に示すように、加算補正量記憶部157aと、加算補正量決定部157bとを有する。
【0087】
加湿期間中の加算補正数は、加湿中の吐出空間S1内の湿度分布に対応する。全体としては、空気排出口51bから空気供給口51aに向かうに連れて加算補正数が順次小さくなる。さらに、上述したように、副走査方向に関して、空気供給口51a及び空気排出口51bの開口幅が、吐出口領域NAの領域幅よりも小さい場合、両側の吐出口群U1及び吐出口群U8には、加湿空気と充分に接触せず、水分補給量が少ない吐出口108が含まれる。そこで、加算補正量決定部157bは、空気供給口51aから第1流動距離以内にある吐出口群U(本実施形態においては吐出口群U8)、及び空気排出口51bから第2流動距離以内にある吐出口群U(本実施形態においては吐出口群U1)には、加湿空気の流通経路の効果が加えられている。両吐出口群U1、U8は、隣接の吐出口群U2、U7より補正数が大きい。ここで、上記「第1流動距離」、及び「第2流動距離」とは、加湿空気の副走査方向に関する流動幅が吐出口領域NAの副走査方向に関する領域幅以上となる位置までの、空気供給口51a及び空気排出口51bそれぞれからの加湿空気の流動距離である。なお、ここでは、加湿期間中も若干の乾燥が進むとして、補正数は正の値で取り扱うが、水分補給が優先的に進むとすれば、補正数を負の値で取り扱えばよい。いずれにしても、吐出口群U毎に調整されるので、消費されるフラッシング量の抑制に寄与する。
【0088】
また、加湿停止期間の加算補正数は、加湿停止期間中の吐出空間S1内の湿度分布に基づいて決定される。空気排出口51bから第1回避距離E1以内の領域に対応する吐出口108を含む排出側吐出口群(本実施形態においては吐出口群U1,U2)及び空気供給口51aから第2回避距離E2以内の領域に対応する吐出口108を含む供給側吐出口群(本実施形態においては吐出口群U7,U8)の加算補正数はその他の吐出口群の加算補正数(第3加算補正量)よりも多くされている。また、排出側吐出口群U1,U2の加算補正量は、供給側吐出口群U7,U8の加算補正量よりも多くされている。これにより、加湿停止期間中の湿度分布に応じて、吐出口108の吐出特性を回復させることができると共に、使用前フラッシングで消費されるフラッシング量を抑制することができる。
【0089】
また、排出側吐出口群については、空気排出口51bからの距離が短い吐出口群Uほど加算補正量が多く、供給側吐出口群については、空気供給口51aからの距離が短い吐出口群Uほど加算補正量が多くされている。これにより、加湿停止期間中の湿度分布により応じて、吐出口108の吐出特性を回復させることができると共に、使用前フラッシングで消費されるフラッシング量を抑制することができる。
【0090】
なお、図8(a)に示すように、加湿停止期間の湿度分布は加湿期間の湿度分布よりも変化が大きい。従って、加湿期間中よりも加湿停止期間中の方が、吐出口群U間の吐出口108の増粘状態に大きな差が生じる。それゆえ、加湿停止期間における吐出口群U間の加算補正量の差は、加湿期間における吐出口群U間の加算補正量の差よりも大きい。即ち、加湿停止期間における吐出口群Uの加算補正量の分散は、加湿期間における吐出口群Uの加算補正量の分散よりも大きい。
【0091】
加算補正量決定部157bは、フラッシング量記憶部156に記憶されている基準発数に対して加算補正する加算補正数を決定する。以下、詳細に説明する。加算補正量決定部157bは、まず、加算補正量記憶部157aを参照して、期間計測部160により計測された加湿期間及び加湿停止期間に基づく、フラッシングの加算発数(以下、期間加算発数)を決定する。なお、加湿停止期間に対応した加算補正数は、空気供給口51a及び空気排出口51bにおいて気流の拡大及び収束のない形態に対応した補正数である。つまり、この補正数は、気流が、吐出空間S1内全域を副走査方向に均一分布で流れる場合に対応する。ここで、加湿期間が1時間、加湿停止期間が10時間の場合には、各々の吐出口群Uに対応する期間加算発数は図8(d)となる。例えば、吐出口群U1の期間加算発数は3120発(=120発×1+300発×10)となる。
【0092】
次に、加算補正量決定部157bは、非対向吐出口範囲記憶部159を参照して、期間加算発数に対して、フラッシングの減算発数を決定する。減算発数の決定は、直前の画像記録時のインク吐出量に基づく。ここで、画像記録時において、インクの吐出が行われた吐出口108は、吐出特性が回復していると想定される。従って、同じ吐出口108でも、キャッピング前の画像記録時において用紙Pと対向していた場合には、用紙Pと対向していない場合と比べて、キャッピング後における増粘の程度は小さい。そこで、本実施形態においては、加算補正量決定部157bは、キャッピング前の画像記録時において、用紙Pと対向せずインクの吐出が行われていない吐出口領域NAの範囲内に属する非対向吐出口群Ubを求める。その後、非対向吐出口群Ub以外の他の吐出口群Uを対向吐出口群Uaとする。例えば、キャッピング前の画像記録時において画像記録する用紙のサイズが、図5に示す用紙Pの場合には、吐出口群U3〜U6が対向吐出口群Ua、吐出口群U1,U2,U7,U8が非対向吐出口群Ubとなる。そして、加算補正量決定部157bは、対向吐出口群Uaの減算発数を所定発数(本実施形態においては1000発)とし、非対向吐出口群Ubの減算発数は零と決定する。これにより、使用前フラッシング時で消費されるフラッシング量をさらに低減することができる。
【0093】
次に、加算補正量決定部157bは、期間加算発数から減算発数を減算した加算補正発数(図8(e)参照を、フラッシング量記憶部156に記憶されている基準発数に対して加算補正する。なお、期間加算発数から減算発数を減算した値が負の値となった場合は、加算補正発数は零とする。従来のフラッシング量の設定では、各吐出口群Uの補正発数は、最大の発数を要する吐出口群U1の発数と同じであるので、合計発数は24960(=3120発×8)発となる。一方、本実施形態においては、期間加算のみを加味した場合、16260発である。さらに、画像記録時の対向・非対向に係わる加算(減算)を加味する前提で、11260発となる。フラッシング量が削減されている。加算補正量決定部157bにより加算補正された後のフラッシング量記憶部156に記憶されているフラッシング発数を図8(f)に示す。
【0094】
次に、使用前フラッシングに関わるプリンタ101の動作の一例について、図10を参照しつつ、以下に説明する。図10の動作フローは、使用前フラッシングが行われてから、次の使用前フラッシングが行われるまでのプリンタ101の一連の動作である。また、この動作フローの開始時における状態は、加湿メンテナンス後であり、且つ外部装置から受信した記録指令に基づいて画像記録を行う直前(使用前フラッシングを行う直線)の状態である。即ち、プラテン6a,6bは開放位置にあり、対向部材10は第1位置にあり、ヘッド1は記録位置にある。
【0095】
まず、フラッシング制御部155が、ヘッド1を制御して、フラッシング量記憶部156に記憶されているフラッシング発数に基づいて、使用前フラッシングを行う(F1)。
【0096】
次に、メンテナンス制御部154は、ヘッド昇降機構30及び対向部材昇降機構49を制御して、ヘッド1を退避位置に移動させ、対向部材10を第3位置に移動させる。この後、メンテナンス制御部150は、ワイパ機構70(ワイパ移動機構75)を制御して、図3(c)に示すように、対向部材10の表面10aをワイパ71bで払拭する(F2:第2ワイピング)。そして、メンテナンス制御部150は、対向部材昇降機構49及びワイパ機構70を制御して、対向部材10を第4位置に移動させ、基部71c(ワイパ71a,71b)を待機位置に戻す。この後、メンテナンス制御部154は、ヘッド昇降機構30及び支持部6を制御して、ヘッド1を記録位置に移動させ、プラテン6a,6bを支持面形成位置に移動させる。
【0097】
次に、搬送制御部151がガイド機構8、及び給紙部101cを制御して、用紙Pの搬送を行うとともに、ヘッド制御部153がヘッド1を制御して、画像データに基づいたインクの吐出を行う。また、フラッシング制御部155が、ヘッド1を制御して、フラッシングデータに基づいたインクの吐出を行う(F3:画像記録)。このとき、非対向吐出口範囲記憶部159は、この画像記録時において、用紙Pと対向せずにインクの吐出が行われていない吐出口領域NAの範囲を記憶する。
【0098】
画像記録が終了すると、メンテナンス制御部150が、対向部材昇降機構49及び支持部6を制御して、プラテン6a,6bを開放位置に移動させ、対向部材10を第1位置に移動させる。そして、メンテナンス制御部150は、キャップ昇降機構48を制御し、図6に示すように、キャップ部材41を当接位置に移動させる。こうして、吐出空間S1が外部空間S2から隔離された封止状態となる(F4)。
【0099】
次に、メンテナンス制御部154は、加湿ポンプ56を所定時間だけ駆動する。これにより、空気供給口51aから供給された加湿空気が、吐出空間S1内において空気排出口51bに向かう方向に流れて、空気排出口51bから排出される(加湿メンテナンス:F5)。その結果、吐出口108のインクに水分が補給される。また、このときの加湿空気の流れが、キャップ部材41に残留したインクを空気供給口51a側から空気排出口51b側に移動させる。その後、加湿ポンプ56を駆動してから所定時間経過すると、メンテナンス制御部154は、加湿ポンプ56の駆動を停止する(F6)。
【0100】
次に、制御装置100が外部装置から記録指令を受信する(F7)と、メンテナンス制御部154は、キャップ昇降機構48を制御し、図7に示すように、キャップ部材41を離隔位置に移動させる。こうして、吐出空間S1が外部空間S2に対して開放された開放状態となる(キャッピングの解除:F8)。
【0101】
次に、フラッシング量補正部157は、キャッピング時の加湿期間及び加湿停止期間、直前の画像記録時のインク吐出状況に基づいて、加算補正数を決定し(F9)、当該加算補正数をフラッシング量記憶部156に記憶されている基準発数に対して加算補正する(F10)。
【0102】
次に、フラッシング実行部158が、ヘッド1を制御して、フラッシング量記憶部156に記憶されているフラッシング発数に基づいて、使用前フラッシングを行う(F11)。このとき、フラッシング量記憶部156は、フラッシング発数を基準発数に初期化する。以上、使用前フラッシングに関わるプリンタ101の動作について説明した。
【0103】
以上のように、本実施形態は、封止状態の後であって、且つ、画像記録の前にヘッド1を制御して、複数の吐出口108から吐出して液体を排出するフラッシングを行うフラッシング制御部155を備え、空気供給口51aから空気排出口51bに向かう方向に関して、複数の吐出口108を、少なくとも1つの吐出口108から構成された複数の吐出口群Uに分けた際に、フラッシング制御部155は、使用前フラッシングにおいて、複数の吐出口群のうち、第1回避距離E1以内の領域及び第2回避距離E2以内の領域に対応する複数の吐出口108を含む吐出口群Uから、残余の吐出口群Uよりも多くのインクを排出させると共に、第1回避距離E1以内の領域に対応する吐出口108を含む吐出口群Uから、第2回避距離E2以内の領域に対応する吐出口108を含む吐出口群Uよりも多くの液体を排出させる。このフラッシング制御部155は、使用前フラッシングにおいて、複数の吐出口108のうち、第1回避距離E1以内の領域及び第2回避距離E2以内の領域に対応する複数の吐出口108から、残余の吐出口108よりも多くのインクを排出させると共に、第1回避距離以内の領域に対応する吐出口108から、第2回避距離E2以内の領域に対応する吐出口108よりも多くのインクを排出させてもよい。このとき、フラッシング制御部155は、空気排出口51b及び空気供給口51aに近いほど、吐出口108から多くのインクを排出させてもよい。
【0104】
本実施形態のプリンタ101は、空気供給口51a及び空気排出口51bから距離が短い吐出口108を極力用いずに画像記録を行うことができるので、画像記録時において用紙Pに画像ムラが生じることを抑制することができる。
【0105】
また、本実施形態によると、画像記録時において、用紙Pの主走査方向に関する中央は、吐出面1aと直交する方向から見て、吐出口領域NAの中央領域NAC内であり、且つ空気供給口51a側にオフセットした位置と対向する。これにより、画像記録時において画像ムラが生じるのをさらに抑制することができる。
【0106】
また、使用前フラッシング時のフラッシングの基準発数に対して加算する、加湿期間に関するフラッシングの加算補正数は、空気供給口51aから距離が短い吐出口群Uほど少なくされている。その結果、使用前フラッシングで消費されるフラッシング量を抑制することができる。
【0107】
また、空気供給口51aから距離が短い吐出口群U、及び空気排出口51bから距離が短い吐出口群Uは、その他の吐出口群Uよりも、加湿停止期間に関するフラッシングの加算補正数が多くされている。これにより、加湿停止期間における吐出空間S1の湿度分布に応じた、吐出特性の回復ができる。
【0108】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、上述の実施形態においては、キャッピング時において、加湿メンテナンスが必ず行われる態様にされていたが、キャッピング時に加湿メンテナンスが行われないときがあってもよい。また、キャッピング時において間欠的に加湿メンテナンスが行われる(加湿ポンプ56を間欠的に駆動)ようにされていてもよい。加湿メンテナンスがキャッピングの全期間を通して行われるようにされていてもよい。
【0109】
また、上述の実施形態では、加湿期間に関するフラッシングの加算補正数は正の値にされていたが、加湿メンテナンス(例えば、前に少なくとも一の加湿停止期間がある2回目以降の加湿メンテナンス)により吐出口108の増粘が回復されるような場合には、当該加湿メンテナンスに係る加算補正数については零や負の値を加算する態様にされていてもよい。
【0110】
また、上述の実施形態では、フラッシング量記憶部156に記憶されている、フラッシング発数の基準発数は一定にされているが、特にこれに限定されるものではなく、吐出口群U毎に基準発数が異なっていてもよい。また、基準発数は零でもよい。
【0111】
また、上述の実施形態においては、フラッシング発数は画像記録時の対向・非対向に係わる加算が加味されているが、加味しない態様にされていてもよい。例えば、キャッピングの期間が長時間に亘る場合には、画像記録時の対向・非対向に係わる加算が加味されないようにされていてもよい。
【0112】
また、キャップ機構40は、吐出空間S1を外部空間S2から隔離する封止状態と、吐出空間S1を外部空間S2に開放する開放状態とを取り得るものであれば、特に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態においては、キャップ部材41の先端41aが昇降可能にされていたが、キャップ部材41の先端41aが移動不能にヘッドホルダ13に固定され、キャップ部材41の先端41aの吐出面1aに対する相対位置が一定であってもよい。この場合、対向部材10が第1位置に配置されたとき、キャップ部材41の先端41aと対向部材10が当接されるように構成されていればよい。
【0113】
また、空気供給口51a、及び空気排出口51bは、吐出空間S1に連通し、且つ、吐出面1aと直交する方向から見て、吐出口領域NAを挟んで配置されている限り、形状や位置は特に限定されない。例えば、空気供給口51a及び空気排出口51bが、吐出面1aと直交する方向から見て、搬送方向Dに関して吐出口領域NAを挟んで配置されていてもよい。また、空気供給口51aが吐出面1aに形成され、空気排出口51bが対向部材10の表面10aに形成されていてもてよい。また、空気供給口51a及び空気排出口51bの副走査方向に関する開口幅が、吐出口領域NAの副走査方向に関する領域幅以上にされていてもよい。この場合、加湿空気の搬送方向Dに関する流動幅は、吐出空間S1における空気供給口51a近傍の領域、及び空気排出口51b近傍の領域においても、吐出口領域NAの搬送方向D(副走査方向)に関する領域幅以上となるため、加湿空気の流動幅に起因して増粘の程度が他と著しく異なる吐出口108が生じることを抑制することができる。従って、この場合には、加湿期間に関する加算補正数には加湿空気の流通経路の効果は加えられない。そのため、加湿期間に関する加算補正数は、空気供給口51aから距離が短い吐出口群Uほど少なくなり、吐出口群U8の加算補正数は吐出口群U7より少なくなる。
【0114】
また、上述の実施形態においては、図8(b)に示すように、加湿期間に関するフラッシング発数の加算補正数は、隣接する2つの吐出口群U間において、空気供給口51aからの距離が短い方の吐出口群Uの加算補正数は必ず少なくなるようにされているが、空気供給口51aからの距離が最も近い吐出口群U8が、空気供給口51aからの距離が最も遠い吐出口群U1よりも加算補正数が少なくされていれば、隣接する吐出口群U間(例えば、吐出口群U4と吐出口群U5間)において加算補正数が同じにされていてもよい。
【0115】
また、上述の実施形態においては、吐出口群Uは各アクチュエータユニット21に対応した複数の吐出口108から構成されていたが、特にこれに限定されるものではなく、一つの吐出口108から構成されていてもよい。この場合、吐出口108毎にフラッシング量が調整されるので、使用前フラッシングにおけるインクの消費量をさらに抑制することができる。
【0116】
また、上述の実施形態においては、給紙部101cの一対の用紙規制壁35aにより、画像記録時における用紙Pの主走査方向に関する中央の位置決めを行っていたが、特にこれに限定されるものではない。例えば、ガイド機構8が、用紙搬送経路に沿って延在し、用紙の搬送直交方向に関する幅の一端側を位置決めするガイド壁と、用紙Pをガイド壁側に斜行させながら搬送する斜行ローラとを有しており、これらにより用紙Pの主走査方向に関する位置決めを行うようにされていてもよい。この場合、当該ガイド壁が、用紙Pの主走査方向に関する中央が、吐出面1aと直交する方向から見て、吐出口領域NAの中央領域NAC内であり、且つ空気供給口51a側にオフセットした位置と対向するように、用紙Pのサイズに応じて搬送直交方向に関して変位可能にされていればよい。
【0117】
また、空気供給口51a及び空気排出口51bの搬送直交方向に関する中間位置が、吐出口領域NAの搬送直交方向に関する中央領域NACに位置していなくてもよい。
【0118】
さらに、キャップ機構は、キャップ部材41がヘッド1を固定されていたが、この形態に限定されない。対向部材にキャップ部材が固定されていても良い。 例えば、対向部材の周縁に、弾性部材からなるリップが立設されている。ヘッド1との相対移動により、当接位置では、リップの先端が吐出面1aの周縁部に当接して封止状態とし、離隔位置では、リップが対向部材とともに吐出面1aから離隔して開放状態とする。このとき、空気供給口及び空気排出口は、吐出面1aに形成されていても良いし、キャップ部材(対向部材)側に形成されていても良い。また、空気供給口及び空気排出口のうち、一方が吐出面1a側、他方がキャップ部材側に形成されていても良い。
【0119】
本発明は、ライン式・シリアル式のいずれにも適用可能であり、また、プリンタに限定されず、ファクシミリやコピー機等にも適用可能であり、さらに、インク以外の液体を吐出させることで記録を行う液体吐出装置にも適用可能である。記録媒体は、用紙Pに限定されず、記録可能な様々な媒体であってよい。さらに、本発明は、インクの吐出方式にかかわらず適用できる。例えば、本実施の形態では、圧電素子を用いたが、抵抗加熱方式でも、静電容量方式でもよい。
【符号の説明】
【0120】
1 インクジェットヘッド(ヘッド)
1a 吐出面
40 キャップ機構(キャップ手段)
50 加湿機構(加湿手段)
51a 空気供給口
51b 空気排出口
100 制御装置
108 吐出口
153 ヘッド制御部(記録制御手段)
155 フラッシング制御部(フラッシング制御手段)
156 フラッシング量記憶部(液体排出量記憶手段)
157 フラッシング量補正部(液体排出量補正手段)
S1 吐出空間
S2 外部空間
NA 吐出口領域
U 吐出口群
図1
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図8
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図10