(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243104
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】非接触電源装置
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20171127BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20171127BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J50/10
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-154588(P2012-154588)
(22)【出願日】2012年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-17399(P2014-17399A)
(43)【公開日】2014年1月30日
【審査請求日】2015年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116666
【氏名又は名称】愛知電機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】片平 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小川 恭史
【審査官】
久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−241824(JP,A)
【文献】
特開平08−241384(JP,A)
【文献】
特開平10−189351(JP,A)
【文献】
特開2001−338820(JP,A)
【文献】
特開2003−017346(JP,A)
【文献】
特開2004−120915(JP,A)
【文献】
特開2000−269058(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 38/14
H02J 7/00、50/00、50/10−50/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略コ字形をなす一次コアを収納する一次側ユニットと、略コ字形をなす二次コアを収納する二次コアを収納する二次側ユニットを、前記一次コアと二次コアの開放端が対向するように配置し、前記1次コアと2次コアの互いが対向しない側に銅又はアルミニウム等の非磁性体の金属からなる介在物を配置して、前記1次コア及び2次コアと当該介在物周りに配置したコイルボビンに、1次コイルと2次コイルを各々巻き付けて1次側ユニットと2次側ユニットを構成し、当該1次側ユニットと二次側ユニットによって形成される結合トランスの電磁誘導作用によって、該1次側ユニットから2次側ユニットへ非接触で電力を供給することを特徴とする非接触電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に電磁誘導作用により非接触で電力を供給する非接触電源装置において、電力供給効率の向上を図る技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、分離した1次側ユニットと2次側ユニットを対向配置して結合トランスを形成し、結合トランスの電磁誘導作用によって1次側ユニットから2次側ユニットへ電力を供給する非接触電源装置は知られている。
【0003】
前記結合トランスは、例えば、コ字形の鉄心(コアという)の脚鉄部にコイルボビンを介して1次コイルを巻回した1次側ユニットと、同様にコ字形のコアの脚鉄部にコイルボビンを介して2次コイルを巻回した2次側ユニットを、両ユニット内のコ字形コアの開放端を対向させて配置して形成したものである(特許文献1参照)。
【0004】
このような非接触電源装置は、文字通り、非接触で電力の供給が可能であるので、ユニット間の給電用のコードが不要となる等、種々の利点があり、近年、携帯機器や電動工具、或いは、電動車両の充電用に使われる等、その用途は多岐に渡っており、利用範囲も広い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−110658
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、電磁誘導作用を利用して1次側ユニットから2次側ユニットへ非接触で電力を供給する非接触電源装置は、2次側ユニットへの電力供給の効率を向上させることが重要であり、電力効率が悪ければ2次側ユニットに接続する負荷の動作不良を招来する可能性がある。
【0007】
そこで、出願人は、1次側ユニットから2次側ユニットへの電力供給効率を向上させる技術を過去に出願している(特許文献1参照)。この発明は、コ字形に形成して対向配置した1次コアと2次コアの各々の脚間距離を、両コア間のギャップ間距離の2倍以上に設定することにより、脚間の磁気抵抗を両コア間の磁気抵抗と比較して大きくして、1次コアから2次コアへの磁束鎖交率を向上させ、1次コイルと2次コイル間の結合係数を向上させるものである。
【0008】
本発明は、特許文献1記載の発明と同様、1次コイルと2次コイル間の結合係数を向上させる技術に関し、コアの脚間距離を拡大することなく、これを実現することのできる非接触電源装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の非接触電源装置は、
略コ字形をなす一次コアを収納する一次側ユニットと、略コ字形をなす二次コアを収納する二次コアを収納する二次側ユニットを、前記一次コアと二次コアの開放端が対向するように配置し、前記1次コアと2次コアの互いが対向しない側に銅又はアルミニウム等の非磁性体の金属からなる介在物を配置し
て、前記1次コア及び2次コアと当該介在物周りに
配置したコイルボビンに、1次コイルと2次コイルを各々巻き付けて1次側ユニットと2次側ユニットを構成し
、当該1次側ユニットと二次側ユニットによって形成される結合トランスの電磁誘導作用によって、該1次側ユニットから2次側ユニットへ非接触で電力を供給することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、コイルとコア間の距離が離れることにより、コイル周りに発生してコアに鎖交した磁束がコイル側に戻ってくる量を減少させ、以って、コアの磁束鎖交量を増加させることができる。その結果、1次コアから2次コアへ鎖交する磁束量を増加させることができ、1次コイルと2次コイル間の結合係数を向上できる。
【0012】
また、請求項
1記載の発明によれば、介在物を銅またはアルミニウム等の非磁性体の金属によって構成することにより、介在物に鎖交する磁束量を極力抑制し、コアにより多くの磁束を鎖交させて、1次コイルと2次コイル間の結合係数をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の非接触電源装置の使用状態を示す図である。
【
図2】本発明の非接触電源装置の内部構造の概念図である。
【
図3】本発明の非接触電源装置のコイル巻回状態を示す縦断面図である。
【
図4】本発明の非接触電源装置の磁束鎖交状態を示す図である。
【
図5】本発明の非接触電源装置を構成する1次側ユニットと2次側ユニット間の距離と結合係数の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について
図1乃至
図5を用いて説明する。
図1は本発明の非接触電源装置の使用状態を示すものである。本発明の非接触電源装置Aは、窓硝子等の非磁性体Xを介して対向配置する1次側ユニット1と2次側ユニット2から構成されている。
【0015】
1次側ユニット1は、電源コード3を介して屋内コンセント等の電源に接続され、一方、2次側ユニット2は、給電コード4を介して負荷5に接続されている。
【0016】
図2は1次側ユニット1及び2次側ユニット2に各々収容される結合トランスの構成物を示している。前記結合トランスは、例えば、コ字形に形成され、継鉄部6a,6bの開放端同士を対向配置した鉄心(以下、コアという)7a,7bと、コア7a,7bの脚鉄部8a,8bの外側(継鉄部6a,6bの延出方向と逆側)に配置される介在物9a,9bと、コア7a,7bの脚鉄部8a,8bと介在物9a,9bを内嵌して取り付けられるコイルボビン10a,10bを備えている。
【0017】
そして、
図3に示すように、前記コイルボビン10a,10bに、巻線(以下、コイルという)11a,11bが所定巻数巻回して結合トランスは構成され、外筐12a,12bに収容される。外筐12a,12bは、窓硝子等Xと接触する部材(以下、接触部という)13a,13bを樹脂等、金属以外の非磁性体によって構成し、1次コア7aから放出された磁束が接触部13a,13bを通過して2次コア7bに鎖交するように構成する。
【0018】
また、接触部13a,13b以外は、例えば、銅やアルミニウムによって形成することにより、外筐12a,12bの外部へ磁束が放出されることを極力抑制して、放出された磁束が電源コード3(
図1参照)に鎖交して供給電圧にノイズが発生することを防止する。
【0019】
1次側ユニット1から2次側ユニット2へ電力を供給する場合は、
図1に示す電源コード3によって1次側ユニット1の1次コイル11a(
図4参照)に通電する。これにより、1次コイル11a周りに磁束(
図4の点線及び二点鎖線)が発生し、その結果、1次コイル11aを巻回した1次コア7aに磁束が鎖交する。
【0020】
1次コア7aに鎖交した磁束は、
図4の実線矢印で示すように、1次コア7aの継鉄部6aの上部開放端から、これと対向する2次コア7bの継鉄部6bの上部開放端を通って2次コア7bに流れる。そして、2次コア7bの脚鉄部8bを通った後、継鉄部6bの下部開放端から1次コア7aの継鉄部6aの下部開放端へと流れる。
【0021】
これにより、2次コア7bに巻回した2次コイル11bには誘導電流が流れ、2次側ユニット2に接続した給電コード4を介して負荷5(
図1参照)に動作電力が供給される。
【0022】
つまり、1次側ユニット1と2次側ユニット2間に窓硝子等の非磁性体Xが介在しても、1次側ユニット1と2次側ユニット2によって形成される結合トランスの電磁誘導作用によって、1次側ユニット1から2次側ユニット2へ非接触で電力を供給して、2次側ユニット2に接続した負荷5を動作させることができる。
【0023】
ここで、本発明の非接触電源装置Aは、1次コア7a及び2次コア7bの外側(両コア7a,7bの対向する側と逆側)に介在物9a,9bを配置して構成したことに特徴を有する。介在物9a,9bは、コア7a,7bとコイル11a,11b間の距離を確保するためのものであり、例えば、樹脂等の絶縁体によって構成すれば良い。
【0024】
絶縁体9a,9bを1次コア7aと2次コア7bの外側に配置して、これを内嵌するコイルボビン10a,10bを取り付け、コイルボビン10a,10bに1次,2次コイル11a,11bを巻回することで、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数を向上させる。
【0025】
具体的には、コイル11a,11b周りに発生し、コア7a,7bに流れる磁束が、コイル11a,11bとコア7a,7b間の距離を拡大することにより、再び、コイル11a,11b側に戻ってくる量(
図4の点線)を減少させ、コア7a,7bに鎖交する磁束量を増加させるのである。
【0026】
また、前記介在物9a,9bを樹脂等の絶縁物の代わりに銅又はアルミニウム等の非磁性体金属によって形成することによっても、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数をより向上させることができる。
【0027】
つまり、コア7a,7bとコイル11a,11b間に銅又はアルミニウム等の金属を介在することにより、コイル11a,11b周りに発生する磁束が介在物9a,9bを通過する量を極力抑制し、以って、コア7a,7b側に鎖交する磁束量を増加させる。
【0028】
これにより、1次コア7aから2次コア7bへの磁束量は増加し、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数をより一層向上させることが可能となる。
【0029】
つまり、本発明の非接触電源装置は、コア7a,7bとコイル11a,11b間の距離を介在物9a,9bの配置により十分確保し、場合によっては、介在物9a,9bを磁束の通過を抑制可能な部材とすることにより、コイル11a,11b側へ戻ってくる磁束量(
図4の点線)を減少させるとともに、コア7a,7bへの磁束鎖交量を増加させ、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数を向上させるのである。
【0030】
図5は1次側ユニット1と2次側ユニット2間の距離と、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数の関係を示すグラフである。詳しくは、1次コア7aと2次コア7bの脚鉄部8a,8bの幅寸法を5[mm]とし、介在物9a,9bに絶縁体を採用した場合における絶縁体9a,9bの幅寸法を0[mm]から3[mm]づつ12[mm]まで変化させた結果をプロットしたものである。
【0031】
図5から明らかなように、1次側ユニット1と2次側ユニット2間の距離が変化しても、絶縁体9a,9bを配さない場合に比べて、絶縁体9a,9bを配した場合の結合係数は向上し、また、絶縁体9a,9bの幅寸法が増加するにしたがって結合係数が増していることがわかる。
【0032】
以上説明したように、本発明の非接触電源装置は、1次コア7aと2次コア7bの外側に介在物9a,9bを配置して、両コア7a,7bと介在物9a,9b周りに1次コイル11aと2次コイル11bを各々巻回して構成することにより、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数を増加可能である。
【0033】
また、1次コアと2次コアの脚間距離を増加させず、換言すれば、ユニット1,2の接触面積を拡大することなく、1次コイル11aと2次コイル11b間の結合係数を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
電磁誘導作用により非接触で電力を供給する機器に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 1次側ユニット
2 2次側ユニット
3 電源コード
4 給電コード
5 負荷
6a,6b 継鉄部
7a 1次コア
7b 2次コア
8a,8b 脚鉄部
9a,9b 絶縁体
10a,10b コイルボビン
11a 1次コイル
11b 2次コイル
12a,12b 外筐
13a,13b 接触面
A 非接触電源装置
X 非磁性体(窓硝子等)