特許第6243111号(P6243111)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243111
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】磁気センサ装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20171127BHJP
   G01R 33/09 20060101ALI20171127BHJP
   H01R 11/01 20060101ALI20171127BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   G01D5/245 110A
   G01R33/06 R
   G01D5/245 R
   H01R11/01 501C
   H01R43/00 H
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-250164(P2012-250164)
(22)【出願日】2012年11月14日
(65)【公開番号】特開2014-98611(P2014-98611A)
(43)【公開日】2014年5月29日
【審査請求日】2015年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】王滝 輝彦
(72)【発明者】
【氏名】東 隆祐
(72)【発明者】
【氏名】八幡 亮一
(72)【発明者】
【氏名】竹村 政夫
【審査官】 吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−232616(JP,A)
【文献】 特開2002−206950(JP,A)
【文献】 特開2010−62339(JP,A)
【文献】 特開2005−116596(JP,A)
【文献】 特開平4−262890(JP,A)
【文献】 特開2012−23263(JP,A)
【文献】 特開平11−135909(JP,A)
【文献】 特開2008−118091(JP,A)
【文献】 特開2010−226140(JP,A)
【文献】 特開平5−198864(JP,A)
【文献】 特開平11−340541(JP,A)
【文献】 特開平9−45975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00−5/252
G01B 7/00−7/34
G01P 3/00−3/80
G01R 33/00−33/18
H05K 1/11、3/40−3/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気抵抗素子から延在する磁気抵抗膜を備えた複数の第1端子が接続領域で配列する素子基板と、前記複数の第1端子の各々に導通する複数の第2端子を備えたフレキシブル配線基板と、を有する磁気センサ装置において、
前記フレキシブル配線基板には、銅層からなる導電パターンが形成され、
前記第2端子では、前記導電パターンの表面にハンダ層が形成されており、
前記接続領域では、前記素子基板と前記フレキシブル配線基板との間に、前記ハンダ層より低融点の複数のハンダ粒子が樹脂材料中に分散したハンダ接合用組成物が介在し、
前記樹脂材料によって前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とが接着され、
前記ハンダ層が溶融せずに、前記複数のハンダ粒子のうち、前記第1端子と前記第2端子との重なり領域で溶融したハンダ粒子によって前記第1端子と前記第2端子とが導通し、前記第1端子と前記第2端子との重なり領域以外に存在するハンダ粒子は、前記樹脂材料中に分散していることを特徴とする磁気センサ装置。
【請求項2】
前記第1端子の表面は、前記磁気抵抗膜からなることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項3】
前記樹脂材料は、熱硬化性樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記ハンダ接合用組成物は、前記接続領域から前記素子基板の側面まで回り込んで当該側面と前記フレキシブル配線基板とを接着していることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記ハンダ粒子は、スズと、銅、銀、ビスマス、アンチモンおよびインジウムのうちの何れかの金属と、を含有し、融点が200℃以下であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
素子基板において磁気抵抗素子から延在する磁気抵抗膜を備えた複数の第1端子が配列する接続領域で、フレキシブル配線基板に形成されている複数の第2端子を各々前記複数の第1端子と導通させる接合工程を有する磁気センサ装置の製造方法において、
前記フレキシブル配線基板に、銅層からなる導電パターンを設け、前記第2端子では、前記導電パターンの表面にハンダ層を形成しておき、
前記接合工程では、
前記接続領域と前記フレキシブル配線基板との間に、前記ハンダ層より低融点の複数のハンダ粒子が樹脂材料中に分散したペースト状のハンダ接合用組成物を配置する第1工程と、
前記接続領域において前記フレキシブル配線基板と前記素子基板とを加圧しながら前記ハンダ粒子の融点より高く前記ハンダ層の融点より低い温度で前記ハンダ接合用組成物を加熱する第2工程と、
を行うことを特徴とする磁気センサ装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1端子の表面は、前記磁気抵抗膜からなることを特徴とする請求項6に記載の磁気センサ装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2工程を行う際、前記フレキシブル配線基板に対して前記素子基板とは反対側に緩衝部材を配置し、当該緩衝部材を介して前記フレキシブル配線基板を前記素子基板に向けて加圧することを特徴とする請求項6または7に記載の磁気センサ装置の製造方法。
【請求項9】
前記樹脂材料は、熱硬化性樹脂からなり、
前記第2工程の後、前記ハンダ粒子の融点より低い温度で前記接続領域を加熱する第3工程を行うことを特徴とする請求項6乃至8の何れか一項に記載の磁気センサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子が形成された素子基板にフレキシブル配線基板が接続された磁気センサ装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
剛性基板に形成された複数の端子とフレキシブル配線基板に形成された複数の端子とを導通させる場合や、第1フレキシブル配線基板に形成された複数の端子と第2フレキシブル配線基板に形成された複数の端子とを導通させる場合、端子の表面に金や銅等を形成しておき、ハンダ粒子が樹脂材料中に分散したペースト状のハンダ接合用組成物を基板間に介在させて加圧加熱する接合方法が採用されることがある。
【0003】
磁気センサ装置のように、素子基板において、磁気抵抗素子から延在する磁気抵抗膜を備えた端子にフレキシブル配線基板の端子を導通させる場合、端子の表面に金や銅等を形成すると、磁気センサ装置としてはコストが増大しすぎるため、従来は、上記技術の適用が困難である。
【0004】
一方、磁気センサ装置の製造工程において、磁気抵抗素子が形成された素子基板の一方面側にフレキシブル配線基板を接続する際、異方性導電シートを用いる方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−159197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術でも、異方性導電シートが高価であるとともに、端子の表面に金層を形成する必要があるため、磁気センサ装置としてはコストが嵩みすぎるという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、比較的低コストで素子基板の端子とフレキシブル配線基板の端子とを高い信頼性をもって導通させることができる磁気センサ装置、およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、磁気抵抗素子から延在する磁気抵抗膜を備えた複数の第1端子が接続領域で配列する素子基板と、前記複数の第1端子の各々に導通する複数の第2端子を備えたフレキシブル配線基板と、を有する磁気センサ装置において、前記フレキシブル配線基板には、銅層からなる導電パターンが形成され、前記第2端子では、前記導電パターンの表面にハンダ層が形成されており、前記接続領域では、前記素子基板と前記フレキシブル配線基板との間に、前記ハンダ層より低融点の複数のハンダ粒子が樹脂材料中に分散したハンダ接合用組成物が介在し、前記樹脂材料によって前記素子基板と前記フレキシブル配線基板とが接着され、前記ハンダ層が溶融せずに、前記複数のハンダ粒子のうち、前記第1端子と前記第2端子との重なり領域で溶融したハンダ粒子によって前記第1端子と前記第2端子とが導通し、前記第1端子と前記第2端子との重なり領域以外に存在するハンダ粒子は、前記樹脂材料中に分散していることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、素子基板において磁気抵抗素子から延在する磁気抵抗膜を備えた複数の第1端子が配列する接続領域で、フレキブル配線基板に形成されている複数の第2端子を各々前記複数の第1端子と導通させる接合工程を有する磁気センサ装置の製造方法において、前記フレキシブル配線基板に、銅層からなる導電パターンを設け、前記第2端子では、前記導電パターンの表面にハンダ層を形成しておき、前記接合工程では、前記接続領域と前記フレキシブル配線基板との間に、前記ハンダ層より低融点の複数のハンダ粒子が樹脂材料中に分散したペースト状のハンダ接合用組成物を配置する第1工程と、前記接続領域において前記フレキシブル配線基板と前記素子基板とを加圧しながら前記ハンダ粒子の融点より高く前記ハンダ層の融点より低い温度で前記ハンダ接合用組成物を加熱する第2工程と、を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明では、ハンダ接合用組成物の樹脂材料によって、素子基板とフレキシブル配線基板とを接着できるとともに、第1端子と第2端子との重なり領域で溶融したハンダ粒子によって第1端子と第2端子とを導通させることができるので、異方性導電フィルムを用いた場合に比して、製造コストの低減を図ることができる。
【0011】
本発明において、前記第1端子の表面は、前記磁気抵抗膜からなることが好ましい。かかる構成によれば、第1端子の表面に金層等を形成しない分、低コスト化を図ることができる。
【0012】
本発明において、前記樹脂材料は、熱硬化性樹脂からなることが好ましい。かかる構成によれば、素子基板とフレキシブル配線基板とを確実に接着できるとともに、端子同士の接合個所の耐湿性能を向上することができる。
【0013】
本発明において、前記ハンダ接合用組成物は、前記接続領域から前記素子基板の側面まで回り込んで当該側面と前記フレキシブル配線基板とを接着していることが好ましい。かかる構成によれば、素子基板にフレキシブル配線基板を強固に接続することができる。
【0014】
本発明において、前記ハンダ粒子は、スズと、銅、銀、ビスマス、アンチモンおよびインジウムのうちの何れかの金属と、を含有し、融点が200℃以下であることが好ましい。かかる構成によれば、比較的低い温度で接合を行うことができる。
【0015】
本発明において、前記第2工程を行う際、前記フレキシブル配線基板に対して前記素子基板とは反対側に緩衝部材を配置し、当該緩衝部材を介して前記フレキシブル配線基板を前記素子基板に向けて加圧することが好ましい。かかる構成によれば、フレキシブル配線基板の第2端子を素子基板の第1端子に適正に加圧することができる。
【0016】
本発明において、前記樹脂材料が熱硬化性樹脂からなり、前記第2工程の後、前記ハンダ粒子の融点より低い温度で前記接続領域を加熱する第3工程を行うことが好ましい。かかる構成によれば、樹脂材料の未硬化成分を確実に硬化させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、ハンダ接合用組成物の樹脂材料によって、素子基板とフレキシブル配線基板とを接着できるとともに、第1端子と第2端子との重なり領域で溶融したハンダ粒子によって第1端子と第2端子とを導通させることができるので、異方性導電フィルムを用いた場合に比して、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明を適用した磁気センサ装置の全体構成を示す説明図である。
図2】本発明を適用した磁気センサ装置の素子基板モジュールの説明図である。
図3】本発明を適用した磁気センサ装置の製造工程のうち、素子基板とフレキシブル配線基板とを接合する接合工程を示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図面を参照して、本発明を適用した磁気センサ装置および製造方法を説明する。
【0020】
(磁気センサ装置1の全体構成)
図1は、本発明を適用した磁気センサ装置1の全体構成を示す説明図であり、図1(a)、(b)、(c)は、磁気センサ装置1を用いたエンコーダの説明図、磁気センサ装置1をセンサ面2側からみた斜視図、および磁気センサ装置1からシールド部材9を外した状態をセンサ面2側からみた斜視図である。
【0021】
図1に示すように、本形態における磁気センサ装置1を磁気式リニアエンコーダに用いた場合には、固定部材(図示せず)に設けた磁気センサ装置1の底面(センサ面2)に対して、可動部材(図示せず)に固定された磁気スケール1aを対向させる。磁気スケール1aには、例えば、長手方向(移動方向)に沿ってN極とS極とが交互に配列されている。従って、可動部材が磁気スケール1aとともに磁気スケール1aの長手方向に移動した際の磁気センサ装置1からの出力信号を検出すれば、可動部材の位置や移動速度等を検出することができる。磁気センサ装置1は、略直方体形状のアルミニウムダイカスト品からなる筐体6と、この筐体6の開口を覆う矩形板状のカバー90と、筐体6から延びたケーブル7とを備えている。カバー90はビス91によって筐体6に固定されている。筐体6において、磁気スケール1aと対向する底面60にはセンサ面2側とは反対側に凹んだ基板配置部62が形成されており、かかる基板配置部62に、後述する素子基板10が配置されている。
【0022】
筐体6の底面60において、基板配置部62の周りには、センサ面2側で開口する溝からなるシールド部材固定部66が形成されており、かかるシールド部材固定部66によって、素子基板10に対してセンサ面2側には、板状のシールド部材9が固定されている。より具体的には、シールド部材9は、基板配置部62および素子基板10をセンサ面2側で覆う矩形の端板部9aと、端板部9aの外縁からセンサ面2側とは反対側に屈曲してシールド部材固定部66に嵌った4枚の側板部(図示せず)とを備えており、側板部は、シールド部材固定部66の内部で接着剤等により固定されている。なお、筐体6の内部には、基板配置部62に樹脂材(図示せず)が充填されており、筐体6と素子基板10との間や、筐体6とシールド部材9との間は樹脂材で埋められている。本形態において、樹脂材は軟質性であり、かかる樹脂材としてはエポキシ系樹脂を用いることができる。
【0023】
(素子基板10等の構成)
図2は、本発明を適用した磁気センサ装置1の素子基板モジュール3の説明図であり、図2(a)、(b)、(c)、(d)は、素子基板モジュール3の側面図、素子基板モジュール3をセンサ面2側(シールド部材9側)からみた底面図、素子基板10とフレキシブル配線基板30との接続部分の断面構成を模式的に示す説明図、および素子基板10とフレキシブル配線基板30との接続部分の断面構成を模式的に拡大して示す説明図である。
【0024】
図1および図2に示すように、素子基板10において磁気センサ装置1のセンサ面2側に向く主面11(一方面)には、磁気抵抗膜13によって磁気抵抗素子14が形成された感磁領域15と、複数の第1端子16が基板縁に沿って配列形成された接続領域17とが形成されている。本形態において、接続領域17は、素子基板10の一方側の端部のみに形成されている。感磁領域15は、素子基板10の側面19から所定の寸法を隔てた内側領域に形成されており、また、接続領域17とは所定の寸法を隔てた位置にある。素子基板10の基板本体は、ガラス基板やシリコン基板である。
【0025】
感磁領域15には、磁気抵抗素子14として、A相の磁気抵抗素子14a、B相の磁気抵抗素子14b、およびZ相の磁気抵抗素子14zが形成されており、かかる磁気抵抗素子14と第1端子16とは配線部分18によって導通している。磁気抵抗素子14は、磁気抵抗膜13によって構成されている。かかる磁気抵抗膜13は、素子基板10の主面11に半導体プロセスにより形成された強磁性体NiFe等の磁性体膜からなり、ホイートストン・ブリッジ等を構成している。なお、磁気抵抗膜13は、Coを含有する磁性体膜であってもよい。
【0026】
本形態において、配線部分18および第1端子16は、磁気抵抗素子14と同様、磁気抵抗膜13によって構成されている。すなわち、配線部分18および第1端子16は、感磁領域15から延在する磁気抵抗膜13によって形成されており、配線部分18および第1端子16の少なくとも最上層は、磁気抵抗膜13からなる。本形態においては、配線部分18および第1端子16の全体が磁気抵抗膜13からなる。なお、素子基板10の主面11には、感磁領域15、および配線部分18が形成されている領域にシリコン酸化膜等からなる絶縁膜が形成されている。かかる絶縁膜は接続領域17には形成されておらず、第1端子16の表面は露出した状態にある。
【0027】
素子基板10の接続領域17にはフレキシブル配線基板30の端部34が接続されており、素子基板10およびフレキシブル配線基板30は素子基板モジュール3として、図1を参照して説明した筐体6の内部に保持されている。
【0028】
図2に示すように、フレキシブル配線基板30は、ポリイミド等からなるベースフィルム35の一方面に銅層等からなる導電パターン32が形成された構成になっており、かかる導電パターン32の端部を利用して、フレキシブル配線基板30の端部34には、素子基板10の複数の第1端子16に各々導通する複数の第2端子31が形成されている。なお、フレキシブル配線基板30において、導電パターン32の表面側は絶縁膜で覆われている。但し、絶縁膜は、第2端子31の表面には形成されておらず、第2端子31の表面は、絶縁膜から露出している。
【0029】
(第1端子16と第2端子31との導通構造)
図2(d)に示すように、本形態の磁気センサ装置1においては、素子基板10の複数の第1端子16と、フレキシブル配線基板30の複数の第2端子31とを導通させるにあたって、まず、第2端子31では、フレキシブル配線基板30に形成された銅層からなる導電パターン32の表面にハンダ層33が形成されている。
【0030】
また、接続領域17では、素子基板10とフレキシブル配線基板30との間に、ハンダ層33より低融点の複数のハンダ粒子81が樹脂材料80中に分散したハンダ接合用組成物8が介在しており、樹脂材料80によって素子基板10とフレキシブル配線基板30とが接着されている。また、複数のハンダ粒子81のうち、第1端子16と第2端子31との重なり領域で溶融したハンダ粒子812によって第1端子16と第2端子31とが導通している。ここで、第1端子16と第2端子31との重なり領域では、3個から4個のハンダ粒子812が溶融し、凝集した状態になっている。
【0031】
なお、複数のハンダ粒子81のうち、第1端子16と第2端子31との重なり領域以外に存在するハンダ粒子811は、隣り合う第1端子16の間や、隣り合う第2端子31の間等で樹脂材料80中に分散している。ここで、第1端子16の間隔および第2端子31の間隔に比較して、ハンダ粒子81の粒径は小さい。例えば、第1端子16の間隔および第2端子31の間隔は、100μm程度であるのに対して、ハンダ粒子81の粒径は1〜12μm程度である。このため、隣り合う第1端子16の間や、隣り合う第2端子31の間等で樹脂材料80中に分散しているハンダ粒子81が、隣り合う第1端子16同士や、隣り合う第2端子31同士を短絡させることはない。
【0032】
本形態では、樹脂材料80としてエポキシ系等の熱硬化樹脂が用いられている。また、ハンダ粒子81は、スズと、銅、銀、ビスマス、アンチモンおよびインジウムのうちの何れかの金属とを含有しており、融点が200℃以下の低融点ハンダ材料からなる。例えば、ハンダ粒子81は、スズ−ビスマス系のハンダ材料からなり、融点は約140℃である。これに対して、ハンダ層33は、ハンダ粒子81より融点が高いハンダ材料からなり、その融点は、200℃を超える温度である。例えば、ハンダ層33は、スズ−銅系のハンダ材料からなり、融点は約230℃である。なお、ハンダ層33は、スズ−銅系のハンダ材料の他、スズ−銀−銅系や、スズ−ビスマス系のハンダ材料であってもよい。
【0033】
ここで、ハンダ接合用組成物8は、図2(a)に示すように、接続領域17から素子基板10の側面19まで回り込んだ部分88を有しており、かかる部分88は、側面19とフレキシブル配線基板30とを接着している。
【0034】
(磁気センサ装置1の製造方法)
図3は、本発明を適用した磁気センサ装置1の製造工程のうち、素子基板10とフレキシブル配線基板30とを接合する接合工程を示す工程断面図である。
【0035】
本形態の磁気センサ装置1を製造するにあたっては、素子基板10とフレキシブル配線基板30とを接合する接合工程を行う。かかる接合工程を行う際、図2(d)を参照して説明したハンダ層33をフレキシブル配線基板30の第2端子31に形成しておく。
【0036】
接合工程では、まず、図3(a)、(b)に示す第1工程において、接続領域17とフレキシブル配線基板30の端部34との間に、図2を参照して説明したハンダ接合用組成物8を配置する。この時点では、ハンダ接合用組成物8は未硬化であり、ペースト状になっている。本形態では、図3(a)に示すように、ディスペンサーによる塗布やマスク印刷等の方法により、素子基板10の接続領域17にペースト状の未硬化のハンダ接合用組成物8を配置した後、図3(b)に示すように、フレキシブル配線基板30の端部34を重ねる。その際、素子基板10の第1端子16とフレキシブル配線基板30の第2端子31とを重ねる。
【0037】
次に、図3(c)に示す第2工程では、接続領域17においてフレキシブル配線基板30と素子基板10とを加圧しながらハンダ粒子81の融点より高くハンダ層33の融点より低い温度でハンダ接合用組成物8を加熱する。本形態では、素子基板10をステージ4上に配置し、ヒータチップ5によって、フレキシブル配線基板30を素子基板10に向けて加圧し、加熱する。本形態では、ヒータチップ5によって、5g/mm2〜20g/mm2の荷重を印加する。また、本形態では、ヒータチップ5によって、ハンダ接合用組成物8を約200℃に加熱する。また、本形態では、ハンダ接合用組成物8において、図2(d)に示す樹脂材料80は、熱硬化性樹脂含有フラックスとして配合されている。
【0038】
また、本形態では、第2工程を行う際、フレキシブル配線基板30に対して素子基板10側とは反対側、すなわち、フレキシブル配線基板30とヒータチップ5との間に緩衝部材50を配置し、緩衝部材50を介してフレキシブル配線基板30を素子基板10に向けて加圧する。本形態では、緩衝部材50として、アルミニウムシートや、アルミニウムシートにフッ素樹脂シートを接合したシート等、熱伝導性が高いシートを用いる。かかる緩衝部材50の厚さは20μm〜100μmである。なお、緩衝部材50の厚さは、フレキシブル配線基板30のベースフィルム35の厚さの1倍から2倍が好ましい。例えば、フレキシブル配線基板30のベースフィルム35の厚さが25μmである場合、緩衝部材50の厚さは、25μm〜50μmであることが好ましい。
【0039】
かかる第2工程の結果、図2(d)を参照して説明したように、樹脂材料80は、素子基板10とフレキシブル配線基板30との間で硬化し、素子基板10とフレキシブル配線基板30とを接着する。その際、樹脂材料80は、素子基板10とフレキシブル配線基板30との間で広がり、素子基板10の接続領域17とフレキシブル配線基板30の端部34との間を樹脂材料80が完全に埋める。また、図2(a)を参照して説明したように、ハンダ接合用組成物8の一部は、接続領域17から素子基板10の側面19まで回り込み、かかる部分88は、側面19とフレキシブル配線基板30とを接着する。また、複数のハンダ粒子81のうち、第1端子16と第2端子31との重なり領域に位置するハンダ粒子812は、第1端子16と第2端子31との間で溶融し、凝集する結果、第1端子16と第2端子31とはハンダ粒子812を介して導通する。また、複数のハンダ粒子81のうち、第1端子16と第2端子31との重なり領域以外に存在するハンダ粒子811は、隣り合う第1端子16の間や、隣り合う第2端子31の間等で樹脂材料80中に分散しており、隣り合う第1端子16同士や、隣り合う第2端子31同士を短絡させることはない。
【0040】
本形態では、樹脂材料80の未硬化成分を完全に硬化させるという観点から、第2工程の後、ハンダ粒子81の融点より低い温度、例えば、120℃〜140℃の温度で接続領域17を加熱する第3工程(アフターキュア工程)を行う。
【0041】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、ハンダ層33より低融点の複数のハンダ粒子81が樹脂材料80中に分散したハンダ接合用組成物8を用いて、素子基板10の接続領域17とフレキシブル配線基板30の端部34とが接合されている。このため、ハンダ接合用組成物8の樹脂材料80によって、素子基板10の接続領域とフレキシブル配線基板30の端部34とを接着することができるとともに、素子基板10の第1端子16とフレキシブル配線基板30の第2端子31との重なり領域で溶融したハンダ粒子81(ハンダ粒子811)によって第1端子16と第2端子31とを導通させることができる。それ故、異方性導電フィルムを用いた場合に比して、製造コストの低減を図ることができる。
【0042】
また、第2端子31では、フレキシブル配線基板30に形成された銅層からなる導電パターン32の表面にハンダ層33が形成されているため、銅層からなる導電パターン32の表面酸化等の問題が発生しない。それ故、安定した電気的な接続を行うことができる。
【0043】
また、接続領域17は樹脂材料80で封止されるので、耐湿特性を向上することができる。さらに、ハンダ粒子81の粒径や配合量によって、隣り合う端子同士の短絡を防止することができるので、端子間距離が短い場合でも、十分に対応することができる。また、第2端子31の表面にハンダ層33を形成すればよく、金層を形成する必要がないので、その点でも、製造コストの低減を図ることができる。さらに、ハンダ接合用組成物8中のハンダ粒子81の融点は、第2端子31表面のハンダ層33の融点より低いので、第2端子31表面のハンダ層33に食われが発生することを防止することができる。さらにまた、ハンダ接合用組成物8がフラックスを含んでいる場合でも、フラックスは樹脂材料80中に封じ込められるので、フラックス洗浄を省略することができる。
【0044】
また、第1端子16の表面は磁気抵抗膜13のままでよいので、第1端子16の表面に金層等を形成する必要がない分、低コスト化を図ることができる。
【0045】
また、樹脂材料80は、熱硬化性樹脂からなるため、素子基板10とフレキシブル配線基板30とを確実に接着できるとともに、端子同士の接合個所の耐湿性能を向上することができる。しかも、本形態では、第2工程の後、ハンダ粒子81の融点より低い温度で接続領域17を加熱する第3工程(アフターキュア工程)を行うため、樹脂材料80の未硬化成分を確実に硬化させることができる。それ故、素子基板10にフレキシブル配線基板30を強固に接続することができるとともに、未硬化成分がアウターガスとして発生するのを抑制することができる。
【0046】
さらに、ハンダ接合用組成物8は、接続領域17から素子基板10の側面19まで回り込んで側面19とフレキシブル配線基板30とを接着している。このため、素子基板10にフレキシブル配線基板30を強固に接続することができる。
【0047】
さらにまた、第2工程を行う際、フレキシブル配線基板30に対して素子基板10とは反対側に緩衝部材50を配置し、緩衝部材50を介してフレキシブル配線基板30を素子基板10に向けて加圧する。このため、フレキシブル配線基板30の第2端子31を素子基板10の第1端子16に適正に加圧することができる。
【0048】
(他の実施の形態)
上記実施の形態では、素子基板10の一方の端部にフレキシブル配線基板30が接続された磁気センサ装置1を例示したが、素子基板10の両方の端部にフレキシブル配線基板30が接続された磁気センサ装置に本発明を適用してもよい。
【0049】
上記実施の形態では、磁気式リニアエンコーダに用いた磁気センサ装置1を例示したが、磁気式ロータリエンコーダにおいて、回転ドラム(可動部材)の外周面や端面に配置された磁気スケールに対向配置される磁気センサ装置に本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 磁気センサ装置
3 素子基板モジュール
8 ハンダ接合用組成物
10 素子基板
11 主面
13 磁気抵抗膜
14 磁気抵抗素子
15 感磁領域
16 第1端子
17 接続領域
30 フレキシブル配線基板
31 第2端子
33 ハンダ層
50 緩衝部材
80 樹脂材料
81 ハンダ粒子
図1
図2
図3