特許第6243160号(P6243160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243160シェーディング補正方法及びその方法を適用したスキャナ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243160
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】シェーディング補正方法及びその方法を適用したスキャナ装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/19 20060101AFI20171127BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20171127BHJP
   H04N 1/401 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   H04N1/04 103E
   G06T1/00 460D
   H04N1/40 101A
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-154842(P2013-154842)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-26957(P2015-26957A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233295
【氏名又は名称】株式会社日立情報通信エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100074550
【弁理士】
【氏名又は名称】林 實
(72)【発明者】
【氏名】内田 恭広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】池本 真樹
【審査官】 鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−056732(JP,A)
【文献】 特開2012−103291(JP,A)
【文献】 特開2008−187529(JP,A)
【文献】 特開2011−188270(JP,A)
【文献】 特開2008−219101(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/04−1/207
H04N 1/40−1/409
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿に記載された画像をイメージセンサにより光学的に走査するスキャナ装置であって、
装置内の白基準及び紙原稿等の画像を読み込むためのイメージセンサと、
装置製造時にイメージセンサを用いて読み込んだ製造時白レベル波形を記憶する製造時白レベル波形メモリと、
前記イメージセンサにより読み込んだディジタル画像信号をディジタル画像信号に変換するアナログ回路及びA/D変換器と、
照明を消した状態でのイメージセンサにより読み込んだ暗レベル波形を記憶する暗レベル波形メモリと、
前記暗レベル波形メモリに記憶した暗レベル波形を用いてアナログ回路及びA/D変換器から出力される画像信号波形から暗レベル波形を減算して暗レベル補正を行う暗補正画像信号波形を出力する暗レベル補正回路と、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正を行った画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白レベル波形を除算した白レベル補正を行う第1除算回路と、
前記第1除算回路から出力された画像信号波形の低周波成分のみを出力することにより光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分の画像信号波形を出力するローパスフィルタ回路と、
前記第1除算回路から出力された白レベル補正後像信号波形を入力としてローパスフィルタ回路から出力された画像信号波形の位相及び振幅を同期させて低周波の成分や汚れの成分から分離したレンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターンを出力させる位相・振幅同期回路と、
前記位相・振幅同期回路から出力される位相ずれ周期パターンとローパスフィルタ回路から出力された大局的変化成分画像信号波形とを乗算させて出力する第1乗算回路と、
前記第1乗算回路により乗算させた位相ずれ周期パターンと大局的変化成分画像信号波形とを含む乗算画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白基準レベル波形を乗算した補正白レベル波形を出力する第2乗算回路と、
前記第2乗算回路から出力された補正白レベル波形を記憶する補正白レベル波形メモリと、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリから出力された補正白レベル波形を除算して出力する第2除算回路とを備えたことを特徴とするスキャナ装置。
【請求項2】
前記位相・振幅同期回路が、周期パターンの位相ずれによる信号波形の周期パターンのみを抽出するため、波形から交流成分を抽出する交流成分抽出機能と、前記交流成分抽出機能により抽出した交流成分波形の振幅の緩やかな変動をピークホールド及びローパスフィルタにより抽出する緩振幅変動抽出機能と、位相を合わせた正弦波を位相同期回路により合成する正弦波合成機能とを有することを特徴とする請求項1記載のスキャナ装置。
【請求項3】
装置内の白基準及び紙原稿等の画像を読み込むためのイメージセンサと、装置製造時にイメージセンサを用いて読み込んだ製造時白レベル波形を記憶する製造時白レベル波形メモリと、前記イメージセンサにより読み込んだディジタル画像信号をディジタル画像信号に変換するアナログ回路及びA/D変換器と、照明を消した状態でのイメージセンサにより読み込んだ暗レベル波形を記憶する暗レベル波形メモリと、前記暗レベル波形メモリに記憶した暗レベル波形を用いてアナログ回路及びA/D変換器から出力される画像信号波形から暗レベル波形を減算して暗レベル補正を行う暗補正画像信号波形を出力する暗レベル補正回路とを備え、原稿に記載された画像をイメージセンサにより光学的に走査するスキャナ装置のスキャナ方法であって、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正を行った画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白レベル波形を除算した白レベル補正を行う第1除算工程と、
前記第1除算工程により出力された画像信号波形の低周波成分のみを出力することにより光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分の画像信号波形を出力するローパスフィルタ工程と、
前記第1除算工程により出力された白レベル補正後像信号波形を入力としてローパスフィルタ工程により出力された画像信号波形の位相及び振幅を同期させて低周波の成分や汚れの成分から分離したレンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターンを出力させる位相・振幅同期工程と、
前記位相・振幅同期工程により出力される位相ずれ周期パターンとローパスフィルタ工程により出力された大局的変化成分画像信号波形とを乗算させて出力する第1乗算工程と、
前記第1乗算工程により乗算させた位相ずれ周期パターンと大局的変化成分画像信号波形とを含む乗算画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白基準レベル波形を乗算した補正白レベル波形を出力する第2乗算工程と、
前記第2乗算工程により出力された補正白レベル波形を記憶する補正白レベル波形メモリ工程と、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正画像信号波形から前記補正白レベル波形メモリ工程により出力された補正白レベル波形を除算して出力する第2除算工程とによってシェーディング補正を行うことを特徴とするシェーディング補正方法。
【請求項4】
前記位相・振幅同期工程が、周期パターンの位相ずれによる信号波形の周期パターンのみを抽出するため、波形から交流成分波形を抽出する交流成分抽出工程と、前記交流成分抽出工程により抽出した交流成分波形の振幅の緩やかな変動をピークホールド及びローパスフィルタにより抽出する緩振幅変動抽出工程と、位相を合わせた正弦波を位相同期回路により合成する正弦波合成工程とを含むことを特徴とする請求項3記載のシェーディング補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙類等に記載された文字記号他を密着イメージセンサを用いて光学的に読み取る際のシェーディング補正方法及びその方法を適用したスキャナ装置に係り、特に読み取った読取画像中の濃度むらを低減することができるシェーディング補正方法及びその方法を適用したスキャナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にスキャナ装置は、読取用光源の照明むらなどに起因する画素間の濃度むらを補償するために、イメージセンサの読取用光源を消灯して読み取ったときにイメージセンサから出力される画像信号をディジタルデータに変換した場合の暗基準データと、真っ白な白基準画像を読み取ったときにイメージセンサから出力される画像信号をディジタルデータに変換した場合の白基準データとを記憶しておき、シェーディング補正機能によってイメージセンサの出力アナログ信号をアナログ/ディジタル(A/D)変換器で変換したディジタルデータの画素間の濃度むらを補償するシェーディング補正機能を備えている。なお、一般にシェーディングとは、画像処理装置の観測系におけるカメラ光学系の周辺減光、撮像素子の感度の不均一性等によって生じる対象画像の本来の輝度と画像信号との間の変換特性の不整合をいう。
【0003】
前記したシェーディング補正機能を有するスキャナ装置に関する技術が記載された文献としては、下記の特許文献1が挙げられ、この特許文献1には、照射部と、レンズアレイと、レンズアレイからの光を電気信号に変換する光電変換部材と、光電変換部材からの電気信号を補正する白シェーディング補正回路及び黒シェーディング補正回路と、白シェーディング補正回路及び黒シェーディング補正回路でそれぞれ用いられる複数の補正データを記憶する記憶部と、回路他を制御する制御部とを有し、前記制御部が、複数の補正データの中から補正データを選択し、選択された補正データに基づいて電気信号を補正するように白シェーディング補正回路及び黒シェーディング補正回路を制御することによって、温度変化による影響を軽減することができる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−65732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の特許文献1に記載された技術は、製造時に温度変化に対応した複数の補正データを記憶しておき、この補正データを用いて温度変化による影響を軽減することができるものの、多数多様の温度変化による補正データを予め用意しておくことは困難であると共にシェーディングの原因は温度変換に限られものではなく充分なシェーディング補正を行うことが困難であるという課題があった。
【0006】
この課題を具体的に説明すると、スキャナ装置の主な回路構成は、照射部と、前記照射部から照射して対象物から反射した光を受光するロッドレンズ・レンズアレイ・セルフォクスレンズと、CMOS型イメージセンサとを組み合わせた光学系と、暗(光が当たっていない状態)での暗レベル波形をオフセット補正するためのオフセット補正回路と、1画素毎にレベルをクランプ又は1ライン単位で空き画素のレベルを用いてクランプする有効レベルを保持するサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路でホールドした信号を増幅するプログラマブルアンプ回路と、アナログ信号をディジタル変換するA/D変換回路とを備え、前記オフセット補正回路が、イメージセンサが読み取った原稿読取レベル波形から前記暗レベル波形を減算してオフセット補正し、前記オフセット補正した原稿読取レベル波形を前記白レベル波形により除算して読み取り波形の正規化を行うように構成されている。
【0007】
前記暗レベル補正は、イメージセンサ出力は、暗(光が当たっていない状態)でも「0」とならないと共に、イメージセンサ毎に暗状態での出力レベルにバラツキがあるためオフセットを持たせて「0」以下にならないように調整するためであり、前記白レベル補正は、イメージセンサ出力が均一な白を見せても出力は一定とならない(大きいものでは±30%程度が仕様)ため、基準となる白を記憶して補正するためである。
【0008】
この白レベル補正は、前記白不均一性が、実際には、ほぼ連続性があるが、1画素毎にランダムであっても特定の形状でも規定内なら仕様を満たすことができるものの、「隣接する画素の連続性」をあてにすることはできない特性があり、この白不均一性には次に挙げる複数の要因が考えられる。
【0009】
この白不均一性の要因としては、(1)センサ画素の製造プロセス時に不純物が形成され、特異的に感度が異なるセンサ画素内の不純物による原因と、(2)密着センサ用のCMOSイメージセンサは一般的に複数のセンサチップ(素子)を連結して構成するため、センサチップによっては内部の回路構成に起因して特定の部位で特異的な感度を示す場合があり、この特異的な感度がチップ単位で繰り返しの特徴パターンを繰り返すセンサチップ内の感度不均一による原因と、(3)長尺状光源の場合、長手方向に均一の照明をすることは困難であり、照明むらが生じることや、縮小光学系の場合、中央と周辺部で光学系に起因する明度むらが生じることに起因する光源・光学系の不均一による原因と、(4)密着センサの場合、ロッドレンズを並べたレンズ[セルフォック(登録商標)レンズ]を用いるため、その周期で正弦波状の不均一性(図2の生産時白レベル波形bの如く鋸状)が現れ、例えば、スキャナや複合機で用いられる日本板硝子株式会社製のSLAシリーズの場合、レンズのピッチは約0.3mm、600dpi(0.04233mm/画素)のイメージセンサの場合、およそ7画素周期の正弦波となり、レンズにより異なるが数%〜十数%となるレンズアレイによる不均一性による原因とがあり、更に、基準となる白レベル不均一性も一定ではなく変動するため、前記した特許文献1記載の温度変化に対応した解決手段のみでは、充分なシェーディング補正を行うことが困難であるという課題があった。
【0010】
前記白レベル不均一性の変動は、(1)長期的な光源の光量低下及びシェーディング変化による光源自体の経時的要因と、(2)光源が蛍光管の場合、短期間にシェーディング変化を含む大きな変動が生じ、密着センサで一般的に用いられているLEDの場合は短期間(1回の連続読み取りバッチ程度)の変化は無視できるが、1日の中では無視できない変化となる光源・センサの温度特性的要因と、(3)複数のセンサチップ(素子)を連結して構成したレンズアレイの温度変化に起因する微小伸縮による正弦波パターンの位相変動による温度的要因が考えられ、特に前記(3)のレンズアレイの温度要因は、スキャナや複合機で用いられる日本板硝子株式会社製のSLAシリーズの場合、レンズのピッチが約0.3mm、長手方向の長さがA3スキャナの場合は約300mmであり、例えば、75um(伸縮率0.025%)の微小変動で1/4の位相ずれが発生し、この位相ずれはレンズの固定方法及び温度により微小変動の仕方は予測が困難である。
【0011】
また、従来技術による暗レベル及び白レベルの不均一性を補正して正規化するシェーディング補正として、原稿を読み取る直前などに照明をオフにした状態でイメージセンサのデータを読み取って暗レベル波形(図2の暗レベル波形a)を記憶し、基準となる白を読み取って白レベル波形(図2の動作時白レベル波形c)を記憶し、「(入力−暗レベル)÷白レベル」の演算を行い、この演算結果を補正値として紙等の文字記号を読み取る原稿読取レベル波形(図2の原稿読取レベル波形d)を得る技術が知られているが、装置内の白基準は紙原稿のクズ他により汚れ、白部材に黒い汚れが生じた際には読み取り画像が明るくなる(出力画像に白い縦筋が現れ、図4の原稿読取レベル波形dにノイズによるエラー99が生じる)ことや、白部材に明るい汚れが生じた場合は読み取り画像が暗くなる(出力画像に黒い縦筋が現れる)ことがあり、これらを回避するためにセンサ又は白部材を移動しながら複数の白を取得する複数白基準を設ける方法や、隣接画素を参考にして汚れ画素を検出し補間する隣接補間方法や、生産時に汚れのない白レベルを記憶して保管する生産時白基準補間方法が考えられるが、複数白基準を設ける方法は移動機構が必要となり、隣接補間方法は前記の白レベル不均一性のため精度が保証されず、生産時白基準補間方法は白レベル不均一性の変動が吸収できずに画像に現れることや、特にレンズアレイの位相ずれが吸収できずに縦筋状の周期パターンが現れ、周期パターンであるために非常に目立ちやすくなる課題を招くものであった。
【0012】
このようにシェーディングの要因は多種多様であり且つ白レベル不均一性も変動し、従来技術においてはこれら多種多様のシェーディングに対応することが困難であるという課題があった。
【0013】
本発明の目的は、前述の従来技術による課題しようとするものであり、各種要因により生じるシェーディング補正を行うことができるシェーディング補正方法及びその方法を適用したスキャナ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の目的を達成するために本発明は、原稿に記載された画像をイメージセンサにより光学的に走査するスキャナ装置であって、
装置内の白基準及び紙原稿等の画像を読み込むためのイメージセンサと、
装置製造時にイメージセンサを用いて読み込んだ製造時白レベル波形を記憶する製造時白レベル波形メモリと、
前記イメージセンサにより読み込んだディジタル画像信号をディジタル画像信号に変換するアナログ回路及びA/D変換器と、
照明を消した状態でのイメージセンサにより読み込んだ暗レベル波形を記憶する暗レベル波形メモリと、
前記暗レベル波形メモリに記憶した暗レベル波形を用いてアナログ回路及びA/D変換器から出力される画像信号波形から暗レベル波形を減算して暗レベル補正を行う暗補正画像信号波形を出力する暗レベル補正回路と、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正を行った画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白レベル波形を除算した白レベル補正を行う第1除算回路と、
前記第1除算回路から出力された画像信号波形の低周波成分のみを出力することにより光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分の画像信号波形を出力するローパスフィルタ回路と、
前記第1除算回路から出力された白レベル補正後像信号波形を入力としてローパスフィルタ回路から出力された画像信号波形の位相及び振幅を同期させて低周波の成分や汚れの成分から分離したレンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターンを出力させる位相・振幅同期回路と、
前記位相・振幅同期回路から出力される位相ずれ周期パターンとローパスフィルタ回路から出力された大局的変化成分画像信号波形とを乗算させて出力する第1乗算回路と、
前記第1乗算回路により乗算させた位相ずれ周期パターンと大局的変化成分画像信号波形とを含む乗算画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白基準レベル波形を乗算した補正白レベル波形を出力する第2乗算回路と、
前記第2乗算回路から出力された補正白レベル波形を記憶する補正白レベル波形メモリと、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリから出力された補正白レベル波形を除算して出力する第2除算回路とを備えたことを第1の特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項1記載のスキャナ装置において、前記位相・振幅同期回路が、周期パターンの位相ずれによる信号波形の周期パターンのみを抽出するため、波形から交流成分を抽出する交流成分抽出機能と、前記交流成分抽出機能により抽出した交流成分波形の振幅の緩やかな変動をピークホールド及びローパスフィルタにより抽出する緩振幅変動抽出機能と、位相を合わせた正弦波を位相同期回路により合成する正弦波合成機能とを有することを第2の特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3記載の発明は、装置内の白基準及び紙原稿等の画像を読み込むためのイメージセンサと、装置製造時にイメージセンサを用いて読み込んだ製造時白レベル波形を記憶する製造時白レベル波形メモリと、前記イメージセンサにより読み込んだディジタル画像信号をディジタル画像信号に変換するアナログ回路及びA/D変換器と、照明を消した状態でのイメージセンサにより読み込んだ暗レベル波形を記憶する暗レベル波形メモリと、前記暗レベル波形メモリに記憶した暗レベル波形を用いてアナログ回路及びA/D変換器から出力される画像信号波形から暗レベル波形を減算して暗レベル補正を行う暗補正画像信号波形を出力する暗レベル補正回路とを備え、原稿に記載された画像をイメージセンサにより光学的に走査するスキャナ装置のスキャナ方法であって、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正を行った画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白レベル波形を除算した白レベル補正を行う第1除算工程と、
前記第1除算工程により出力された画像信号波形の低周波成分のみを出力することにより光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分の画像信号波形を出力するローパスフィルタ工程と、
前記第1除算工程により出力された白レベル補正後像信号波形を入力としてローパスフィルタ工程により出力された画像信号波形の位相及び振幅を同期させて低周波の成分や汚れの成分から分離したレンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターンを出力させる位相・振幅同期工程と、
前記位相・振幅同期工程により出力される位相ずれ周期パターンとローパスフィルタ工程により出力された大局的変化成分画像信号波形とを乗算させて出力する第1乗算工程と、
前記第1乗算工程により乗算させた位相ずれ周期パターンと大局的変化成分画像信号波形とを含む乗算画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリに記憶した製造時白基準レベル波形を乗算した補正白レベル波形を出力する第2乗算工程と、
前記第2乗算工程により出力された補正白レベル波形を記憶する補正白レベル波形メモリ工程と、
前記暗レベル補正回路から出力された暗補正画像信号波形から前記補正白レベル波形メモリ工程により出力された補正白レベル波形を除算して出力する第2除算工程とによってシェーディング補正を行うことを第3の特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項3記載のシェーディング補正方法において、前記位相・振幅同期工程が、周期パターンの位相ずれによる信号波形の周期パターンのみを抽出するため、波形から交流成分波形を抽出する交流成分抽出工程と、前記交流成分抽出工程により抽出した交流成分波形の振幅の緩やかな変動をピークホールド及びローパスフィルタにより抽出する緩振幅変動抽出工程と、位相を合わせた正弦波を位相同期回路により合成する正弦波合成工程とを含むことを第4の特徴とする。

【発明の効果】
【0018】
本発明によるシェーディング補正方法及びその方法を適用したスキャナ装置は、シェーディングの要因となる光源やセンサ感度の経時変化とび温度特性による大局的な波形変化成分をローパスフィルタ回路によって抽出し、レンズアレイの周期パターンの位相ずれとを位相・振幅同期回路によって抽出し、これら抽出した補正用画像信号波形を暗レベル補正(オフセット)後の画像信号波形から除くことによって、複数のシェーディング要因を除去したシェーディング補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態によるシェーディング補正方法を適用したスキャナ装置の主な回路構成を示す図。
図2】本実施形態によるシェーディング補正方法による明度信号を示す図。
図3A】本実施形態による信号波形を示す図。
図3B】本実施形態による信号波形を示す図。
図3C】本実施形態による信号波形を示す図。
図4】本実施形態による信号波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明によるシェーディング補正方法を適用したスキャナ装置の一実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
[構成]
本実施形態によるスキャナ装置の回路構成は、図1に示す如く、装置内の白基準及び紙原稿等の画像を読み込むためのイメージセンサ2と、装置製造時にイメージセンサ2を用いて読み込んだ製造時白レベル波形を記憶する製造時白レベル波形メモリ3と、前記イメージセンサ2により読み込んだディジタル画像信号をディジタル画像信号に変換するアナログ回路及びA/D変換器10と、照明を消した状態でのイメージセンサ2により読み込んだ暗レベル波形を記憶する暗レベル波形メモリ12と、前記暗レベル波形メモリ12に記憶した暗レベル波形を用いてアナログ回路及びA/D変換器10から出力される画像信号波形から暗レベル波形を減算して暗レベル補正(オフセット補正)を行う暗レベル補正回路11と、前記暗レベル補正回路11から出力された暗補正を行った暗補正画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリ3に記憶した製造時白レベル波形を除算した白レベル補正を行う除算回路13と、前記除算回路13から出力された画像信号波形の低周波成分のみを出力することにより光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分の画像信号波形を出力するローパスフィルタ回路14と、前記除算回路13から出力された白レベル補正後像信号波形を入力としてローパスフィルタ回路14から出力された画像信号波形の位相及び振幅を同期させるための位相・同期信号を出力する位相・振幅同期回路15と、前記位相・振幅同期回路15から出力される位相・同期信号とローパスフィルタ回路14から出力された画像信号波形とを乗算させて出力する乗算回路16と、前記乗算回路16により位相及び振幅を同期した画像信号波形から前記製造時白レベル波形メモリ3に記憶した製造時白基準レベル波形を乗算した補正画像信号波形を出力する乗算回路17と、前記乗算回路17から出力された補正白レベル波形を記憶する補正白レベル波形メモリ18と、前記暗レベル補正回路11から出力された暗補正画像信号波形から前記補正白レベル波形メモリ18から出力された補正白レベル波形を除算して出力する除算回路19とを備える。
【0021】
前記位相・振幅同期回路15は、周期パターンの位相ずれによる信号波形の周期パターンのみを抽出するため、波形からAC(交流)成分を抽出するAC成分抽出機能と、前記AC成分抽出機能により抽出したAC成分波形の振幅の緩やかな変動をピークホールド及びローパスフィルタにより抽出する緩振幅変動抽出機能と、位相を合わせた正弦波を位相同期回路により合成する正弦波合成機能とを有する。
【0022】
なお、前記した実施形態においては、ローパスフィルタ回路14を使用する例を説明したが、ローパスフィルタに限られるものではなく、光源やセンサ感度の変化によるシェーディングの変化が波形全体に対して大局的に生じ、その成分は低周波で構成されるため適切な周波数より低い成分のみを抽出する回路であれば良い。
【0023】
[動作]
本実施形態によるシェーディング補正方法を適用したスキャナ装置は、まず、図示しない制御部が、装置製造時に汚れのない状態の白基準及びイメージセンサ2を用いて基準となる製造時白レベル信号波形(図3A[a]、約7画素の周期でレンズアレイの周期パターンが拡大図に示す如く正弦波状に含まれる)を製造時白レベル波形メモリ3に記憶する第1工程と、次いでアナログ回路/AD/変換器10から出力される画像信号波形と暗レベル波形メモリ12から出力される暗レベル波形を用いて暗レベル補正回路11が暗レベル補正を行う第2工程と、装置稼働時に装置内に設けた白基準をイメージセンサ2が読み取って稼働状態における動作時白レベル波形(図3A[b]、白基準が経時変化の汚れによるレベル低下が拡大図のように含まれる)を読み込んで図示しないメモリに記憶する第3工程と、前記メモリに記憶した動作時白レベル波形から、除算回路13により製造時白レベル波形メモリ3に記憶した製造時白レベル波形を除算する第4工程とを実行する。
【0024】
この第4工程による動作時白レベル波形を製造時白レベル波形で除算する処理は、動作時白レベル波形と製造時白レベル波形が完全に同一であれば、除算処理した波形は直線状の理想波形となるが、実際の波形は、「全体的なレベル低下(光源の低下)」と「全体的なシェーディングの変化(この例では右端がより暗くなっている)」と「白基準他の汚れ」と「レンズアレイの微小な伸縮に伴う周期パターンの位相ずれがあるため理想波形とはならず、図3A(c)に示す如く、中心付近は変化せず、両端に向かって変動する波形となる。
【0025】
次いで、本実施形態によるスキャナ装置は、ローパスフィルタ回路14が、前記除算回路13から出力された画像信号の低周波成分のみを通過させて図3B(d)に示す低周波成分のみを出力することにより、光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分(大局的変化成分の画像信号波形)を得る第5工程とを実行する。
【0026】
この第5工程による低周波成分の抽出は、ローパスフィルタに限られるものではなく、光源やセンサ感度の変化によるシェーディングの変化が、波形全体に対して大局的に生じ、その成分は低周波で構成されるため、適切な周波数より低い成分のみを抽出する回路又は処理であれば良い。
【0027】
次いで、本実施形態によるスキャナ装置は、位相・振幅同期回路15が、周期パターンの位相ずれによる信号が正弦波に近似する特性と周波数成分がほぼ固定でわずかに変動する特性と振幅が一定の範囲で緩やかに変動する特性を利用し、除算回路13の出力波形の周期パターンのみを抽出することによって、図3B(e)に示すAC(交流)成分を抽出し、図3B(f)に示す振幅のピークホールド及びローパスフィルタで振幅の緩やかな変動を抽出し、図3C(g)に示す位相同期回路で位相を合わせた正弦波を合成することによって、汚れの影響を受けずにレンズアレイの周期ずれに起因する周期パターンのみを抽出する第6工程を実行する。
【0028】
この位相・振幅同期回路15は、レンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターンを、低周波の成分や汚れの成分から分離して抽出を行うものであって、(a)低周波の成分の除去(信号処理で一般的なAC成分の抽出)と、(b)振幅成分をピークホールドとローパスフィルタを用いた抽出と、(c)PLL(位相同期回路)を用いて位相同期とを行い、前記(a)AC成分の抽出は、レンズの周期パターンの周波数成分を十分に減衰させる特性をもったローパスフィルタを構成し、入力信号からローパスフィルタの出力信号を減じれば良く、例えば、スキャン幅が300mm、レンズ周期0.3mmの場合、スキャン周期の周波数を1としたときのレンズ周期の周波数が1000Hzであり、IIRローパスフィルタの特性は、遮断周波数は75.3Hz、周波数1000に対する利得が−22.2dBが好適である。
【0029】
次いで、本実施形態によるスキャナ装置は、乗算回路16がローパスフィルタ回路14の出力と位相・振幅同期回路15の出力を乗算(合成)することによって、図3C(h)の如く、汚れを除去し、光源変動による大局的な変動とレンズアレイの周期パターンの位相ずれによるパターンのみを抽出した画像信号波形を合成する第7工程と、前記乗算回路16が、前記汚れを除去と光源変動大局的変動とレンズアレイ周期パターン位相ずれによるパターンのみを抽出した波形と、前記製造時白レベル波形メモリ3に記憶した製造時白白レベル波形とを乗算(合成)して補正白レベル波形メモリ18に記憶する第8工程とを実行する。
【0030】
この第8工程により補正白レベル波形メモリ18に記憶した画像信号波形は、ローパスフィルタ回路14から出力された光源やセンサ感度の経時変化及び温度特性による大局的な変化成分と位相・振幅同期回路15から出力された低周波の成分や汚れの成分から分離したレンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターンとを乗算回路16により合成し、この合成波形(経時・温度による大局的な変化成分+レンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターン)と、汚れのない白部材(白基準)で製造時白レベル波形メモリ3に記憶させた製造時白レベル波形とを、乗算回路17により乗算(合成)することによって、シェーディングの原因となる要因(経時・温度による大局的な変化成分+レンズ周期パターンの位相ずれによる周期パターン)のみが反映させた補正用の画像信号波形に相当する。
【0031】
最後に本実施形態によるスキャナ装置は、暗レベル補正回路11により暗レベル補正(オフセット補正)を行った画像信号波形から、前記補正白レベル波形メモリ18に記憶した補正用の画像信号波形を除算することによって、シェーディングを補正することができる。
【0032】
このように本実施形態によるスキャナ装置及びシェーディング補正方法は、シェーディングの要因となる光源やセンサ感度の経時変化とび温度特性による大局的な変化成分とレンズアレイの周期パターンの位相ずれを考慮し、これら要因に基づいた補正用画像信号波形を暗レベル補正(オフセット補正)後の画像信号波形から除くことによって、複数のシェーディング要因を除去したシェーディング補正を行うことができる。
【符号の説明】
【0033】
2 イメージセンサ、3 製造時白レベル波形メモリ、10 A/D変換器、
11 暗レベル補正回路、12 暗レベル波形メモリ、13 除算回路、
14 ローパスフィルタ回路、15 位相・振幅同期回路、16 乗算回路、
17 乗算回路、18 補正白レベル波形メモリ、19 除算回路
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4