(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記伸側第一圧力室と上記伸側室とを伸側第一通路で連通するとともに、上記伸側第二圧力室と上記圧側室とを伸側第二通路で連通し、上記伸側第一通路と上記伸側第二通路の一方または両方に通過する液体の流れに抵抗を与える伸側弁要素を設けた
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝装置。
上記圧側第一圧力室と上記圧側室とを圧側第一通路で連通するとともに、上記圧側第二圧力室と上記リザーバとを圧側第二通路で連通し、上記圧側第一通路と上記圧側第二通路の一方または両方に圧側弁要素を設けた
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の緩衝装置。
上記伸側作動室を形成する伸側ハウジングを設け、上記伸側ばね要素に対抗して上記伸側第二圧力室を圧縮する方向へ上記伸側フリーピストンを附勢して、上記伸側ハウジングと上記伸側フリーピストンとの衝突を防止する伸側クッションばね要素を設けた
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の緩衝装置。
上記圧側作動室を形成する圧側ハウジングを設け、上記圧側ばね要素に対抗して上記圧側第二圧力室を圧縮する方向へ上記圧側フリーピストンを附勢して、上記圧側ハウジングと上記圧側フリーピストンとの衝突を防止する圧側クッションばね要素を設けた
ことを特徴とする請求項1から7および12のいずれか一項に記載の緩衝装置。
上記ピストンが連結されるピストンロッドを備え、上記伸側作動室を形成する伸側ハウジングが上記ピストンロッドに上記ピストンを連結するピストンナットとして機能する
ことを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の緩衝装置。
上記シリンダの端部に嵌合されて上記リザーバと上記圧側室とを連通する吸込ポートを有するバルブケースと、上記バルブケースに積層されて上記吸込ポートを開閉する逆止弁とを備え、上記吸込通路を上記吸込ポートと上記逆止弁とで形成し、上記圧側作動室を形成する圧側ハウジングが上記バルブケースに連結されて上記逆止弁を当該バルブケースへ固定する
ことを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の緩衝装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に基づいて本発明を説明する。本発明の一実施の形態における緩衝装置D1は、
図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に摺動自在に挿入されシリンダ1内を2つの伸側室R1および圧側室R2に区画するピストン2と、リザーバRと、リザーバRから圧側室R2へと向かう液体の流れのみを許容する吸込通路3と、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路4と、伸側室R1からリザーバRへ向かう液体の流れのみを許容するとともに当該液体の流れに与える抵抗を変更可能な減衰力調整部としての減衰力可変バルブVと、伸側室R1と圧側室R2とに連通される伸側作動室Eと、伸側作動室E内に摺動自在に挿入されて伸側作動室E内を伸側室R1に通じる伸側第一圧力室E1と圧側室R2に通じる伸側第二圧力室E2とに区画する伸側フリーピストン15と、伸側フリーピストン15を伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ附勢する伸側ばね要素16とでなる伸側感応機構RMEと、圧側室R2とリザーバRとに連通される圧側作動室Cと、圧側作動室C内に摺動自在に挿入されて圧側作動室C内を圧側室R2に通じる圧側第一圧力室C1とリザーバRに通じる圧側第二圧力室C2とに区画する圧側フリーピストン24と、当該圧側フリーピストン24を圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ附勢する圧側ばね要素25とでなる圧側感応機構RMCとを備えて構成されている。
【0016】
また、緩衝装置D1は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド14を備えており、ピストンロッド14の一端14aはピストン2に連結されるとともに、他端である上端は、シリンダ1の上端を封止する環状のロッドガイド8によって摺動自在に軸支されて外方へ突出されている。さらに、緩衝装置D1は、シリンダ1の外周を覆ってシリンダ1との間に伸側室R1とリザーバRとを連通する排出通路7を形成する中間筒9と、中間筒9の外周を覆って中間筒9との間にリザーバRを形成する有底筒状の外筒10とを備えて構成されており、減衰力可変バルブVは排出通路7とリザーバRとの間に設けられている。
【0017】
そして、緩衝装置D1は、たとえば、ピストンロッド14の
図1中上端を車両における車体に取り付け、外筒10の
図1中下端を車両における車輪を支持する車軸等に取り付けて、車両の車体と車輪との間に介装され、減衰力を発揮して車両における車体と車輪の振動を抑制する。なお、ピストンロッド14を車両における車軸に取り付け、外筒10を車両における車体に取り付けることも当然可能である。
【0018】
なお、伸側作動室Eは、この場合、ピストンロッド14に連結されるピストン2に設けられているが、ピストンロッド14に設けるようにしてもよいし、ピストン2およびピストンロッド14に直接設けるのではなくピストンロッド14に連結される別部材に設けることもでき、シリンダ1外に設けるようにすることも可能である。さらに、シリンダ1および中間筒9の下端は、バルブケース11によって封止されており、このバルブケース11に圧側作動室Cと吸込通路3が設けられている。圧側作動室Cにあっても、バルブケース11に直接設けるのではなくバルブケース11に連結される別部材に設けることもでき、シリンダ1外に設けるようにすることも可能である。
【0019】
そして、伸側室R1、圧側室R2さらには伸側作動室Eおよび圧側作動室C内には作動油等の液体が充満され、また、リザーバR内には、当該液体とともに気体が充填されている。なお、上記した液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。
【0020】
以下、緩衝装置D1の各部について詳細に説明する。ピストン2は、シリンダ1内に移動自在に挿通されたピストンロッド14の
図1中下端である一端14aに連結されている。また、ピストンロッド14とこれを軸支するロッドガイド8との間は、シール部材12によってシールされており、シリンダ1内は液密状態に保たれている。
【0021】
ロッドガイド8は、外周が中間筒9および外筒10に嵌合することができるように段階的に外径が大きくなっていて、シリンダ1、中間筒9および外筒10の
図1中上端開口を閉塞している。
【0022】
他方、シリンダ1の
図1中下端には、バルブケース11が嵌合されている。このバルブケース11は、シリンダ1内に挿入される小径部11aと、小径部11aよりも外径が大きいシリンダ1内に嵌合する中径部11bと、中径部11bの
図1中下端側に設けられて中径部11bよりも外径が大きい中間筒9内に嵌合する大径部11cと、大径部11cの
図1中下端側に設けた筒部11dと、筒部11dに設けた複数の切欠11eとを備えている。
【0023】
そして、外筒10内に、バルブケース11、シリンダ1、中間筒9、ロッドガイド8およびシール部材12を収容し、外筒10の
図1中上端を加締めると、外筒10の加締部10aと外筒10の底部10bとで、バルブケース11、シリンダ1、中間筒9、ロッドガイド8が挟み込まれて、これらが外筒10に固定される。なお、外筒10の開口端を加締めるのではなく、外筒10に螺着されるキャップと底部10bとでバルブケース11、シリンダ1、中間筒9、ロッドガイド8およびシール部材12を挟み込むようにしてもよい。
【0024】
吸込通路3は、具体的には、バルブケース11に設けられてリザーバRを圧側室R2へ連通する吸込ポート3aと、当該吸込ポート3aに設けた逆止弁3bとを備えている。吸込ポート3aは、バルブケース11の中径部11bの
図1中上端から開口して大径部11cの
図1中下端へ通じるようになっており、リザーバRへは切欠11eを介して通じている。逆止弁3bは、液体がリザーバRから圧側室R2へ向かって流れる場合にのみ開弁するようになっており、吸込ポート3aがリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容し、逆方向への流れを阻止する一方通行に設定され、これら吸込ポート3aと逆止弁3bによって吸込通路3が構成されている。
【0025】
ピストン2は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容する整流通路4が設けられている。整流通路4は、具体的には、ピストン2に設けられて圧側室R2を伸側室R1へ連通する通路4aと、当該通路4aに設けた逆止弁4bとを備えている。逆止弁4bは、液体が通路4aを圧側室R2から伸側室R1へ向かって流れる場合にのみ開弁するようになっており、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容し、逆方向への流れを阻止する一方通行に設定され、これら通路4aと逆止弁4bによって整流通路4が構成されている。
【0026】
また、シリンダ1の図中上端近傍には、伸側室R1に臨む透孔1aが設けられており、伸側室R1がシリンダ1と中間筒9との間に形成された環状隙間に連通されている。シリンダ1と中間筒9の間の環状隙間は、伸側室R1とリザーバRとを連通する排出通路7を形成している。減衰力可変バルブVは、外筒10と中間筒9に架け渡されて固定されるバルブブロック13に設けられており、中間筒9内の排出通路7をリザーバRに接続する流路13aと、流路13aの途中に設けた弁体13bと、弁体13bより上流側である伸側室R1の圧力を当該弁体13bに開弁方向へ押圧するように作用させるパイロット通路13cと、弁体13bを閉弁方向に押圧する押圧力を発揮するとともに当該押圧力を可変にする押圧装置13dとを備えて構成されている。押圧装置13dは、図示したところでは、たとえば、ソレノイドで弁体13bを閉弁方向に押圧する圧力を制御するようになっており、外部からソレノイドへ供給する電流供給量に応じて上記圧力を変化させることができるようになっている。押圧装置13dは、上記以外にもソレノイド等のアクチュエータのみで弁体13bを押圧するものであってもよいし、これら以外にも供給される電流量や電圧力に応じて押圧力を変化させることができるものであってよい。また、減衰力調整部としては、液体が磁気粘性流体とされる場合には、減衰力可変バルブVに変えて、排出通路7とリザーバRとを連通する流路に磁界を作用させることができるもの、たとえば、コイル等であってもよく、外部から供給される電流量によって磁界の大きさを調整して流路を通過する磁気粘性流体の流れに与える抵抗を変化させるようにしてもよい。さらに、流体を電気粘性流体とする場合には、減衰力調整部は、排出通路7とリザーバRとを連通する流路に電界を作用させることができるものであってもよく、外部から与えられる電圧によって電界の大きさを調整して、上記流路を流れる電気粘性流体に与える抵抗を変化させるようにしてもよい。
【0027】
したがって、この緩衝装置D1の場合、収縮作動する際には、ピストン2が
図1中下方へ移動して圧側室R2が圧縮され、圧側室R2内の液体が整流通路4を介して伸側室R1へ移動する。この収縮作動時には、ピストンロッド14がシリンダ1内に侵入するためシリンダ1内でロッド侵入体積分の液体が過剰となり、過剰分の液体がシリンダ1から押し出されて排出通路7を介してリザーバRへ排出される。緩衝装置D1は、排出通路7を通過してリザーバRへ移動する液体の流れに減衰力可変バルブVで抵抗を与えることによって、シリンダ1内の圧力を上昇させて圧側減衰力を発揮する。
【0028】
反対に、緩衝装置D1が伸長作動する際には、ピストン2が
図1中上方へ移動して伸側室R1が圧縮され、伸側室R1内の液体が排出通路7を介してリザーバRへ移動する。この伸長作動時には、ピストン2が上方へ移動して圧側室R2の容積が拡大するが、この拡大分に見合った液体が吸込通路3を介してリザーバRから供給される。そして、緩衝装置D1は、排出通路7を通過してリザーバRへ移動する液体の流れに減衰力可変バルブVで抵抗を与えることによって伸側室R1内の圧力を上昇させて伸側減衰力を発揮する。
【0029】
上述したところから理解できるように、緩衝装置D1は、伸縮作動を呈すると、必ずシリンダ1内から排出通路7を介して液体をリザーバRへ排出し、液体が圧側室R2、伸側室R1、リザーバRを順に一方通行で循環するユニフロー型の緩衝装置に設定され、伸圧両側の減衰力を単一の減衰力可変バルブVによって発生するようになっている。なお、ピストンロッド21の断面積をピストン2の断面積の二分の一に設定しておくことで、同振幅であればシリンダ1内から排出される作動油量を伸圧両側で等しく設定できるため、伸圧両側で減衰力可変バルブVが流れに与える抵抗を同じにしておくと、伸側と圧側の減衰力を等しくすることもできる。
【0030】
つづいて、伸側感応機構RMEは、伸側室R1と圧側室R2とに連通される伸側作動室Eと、伸側作動室E内に摺動自在に挿入されて伸側作動室E内を伸側室R1に通じる伸側第一圧力室E1と圧側室R2に通じる伸側第二圧力室E2とに区画する伸側フリーピストン15と、伸側フリーピストン15を伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ附勢する伸側ばね要素16とで構成されている。
【0031】
伸側作動室Eは、この実施の形態の場合、上述したピストン2に設けた中空部によって形成されている。伸側作動室Eは、伸側第一通路17を介して伸側室R1に連通されるとともに、伸側第二通路18を介して圧側室R2に連通されている。
【0032】
また、この伸側作動室E内には、伸側フリーピストン15が摺動自在に挿入されている。伸側フリーピストン15は、この場合、伸側作動室E内を伸側第一圧力室E1と伸側第二圧力室E2とに区画しており、伸側作動室E内で移動することによって、伸側第一圧力室E1と伸側第二圧力室E2のいずれか一方を拡大させると同時に他方を縮小させることができるようになっている。
【0033】
伸側第一圧力室E1は、上記した伸側第一通路17を通じて伸側室R1に連通され、伸側第二圧力室E2は、上記の伸側第二通路18を通じて圧側室R2に連通されている。伸側第一圧力室E1と伸側第二圧力室E2は、伸側フリーピストン15によって仕切られているので、直接連通はしていないが、伸側作動室E内を伸側フリーピストン15が移動すると、伸側第一圧力室E1と伸側第二圧力室E2の一方の容積が拡大するが、その拡大容積に見合って他方の容積が減少するため、伸側第一通路17、伸側作動室Eおよび伸側第二通路18が見掛け上、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路として機能するようになっている。
【0034】
また、この実施の形態の場合、伸側第二通路18の途中にこの伸側第二通路18を通過する液体の流れに抵抗を与える伸側弁要素19を設けてある。伸側弁要素19は、この実施の形態の場合、オリフィスやチョークといった絞りで構成されていて、伸側第二圧力室E2から圧側室R2へ向かう液体の流れだけでなく反対の圧側室R2から伸側第二圧力室E2へ向かう液体の流れも許容し、この流れに抵抗を与えるようになっている。なお、伸側弁要素19は、伸側第二通路18の代わりに、或いは、これに加えて、伸側第一通路17に設けるようにしてもよい。
【0035】
さらに、伸側第二圧力室E2内には、コイルばねや弾性体等で構成される伸側ばね要素16が収容されており、伸側ばね要素16は、圧縮状態で伸側第二圧力室E2内に収容されていて、伸側フリーピストン15を伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ附勢している。なお、伸側ばね要素16としては、伸側フリーピストン15を附勢する附勢力を発揮できればよいので、コイルばね以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばねやゴム等の弾性体を用いて伸側フリーピストン15を附勢するようにしてもよい。
【0036】
他方、圧側感応機構RMCは、圧側室R2とリザーバRとに連通される圧側作動室Cと、圧側作動室C内に摺動自在に挿入されて圧側作動室C内を圧側室R2に通じる圧側第一圧力室C1とリザーバRに通じる圧側第二圧力室C2とに区画する圧側フリーピストン24と、当該圧側フリーピストン24を圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ附勢する圧側ばね要素25とで構成されている。
【0037】
圧側作動室Cは、この実施の形態の場合、上述したバルブケース11に設けた中空部によって形成されている。圧側作動室Cは、圧側第一通路26を介して圧側室R2に連通されるとともに、圧側第二通路27を介してリザーバRに連通されている。
【0038】
また、この圧側作動室C内には、圧側フリーピストン24が摺動自在に挿入されている。圧側フリーピストン24は、この場合、圧側作動室C内を圧側第一圧力室C1と圧側第二圧力室C2とに区画しており、圧側作動室C内で移動することによって、圧側第一圧力室C1と圧側第二圧力室C2のいずれか一方を拡大させると同時に他方を縮小させることができるようになっている。
【0039】
圧側第一圧力室C1は、上記した圧側第一通路26を通じて圧側室R2に連通され、圧側第二圧力室C2は、上記の圧側第二通路27を通じてリザーバRに連通されている。圧側第一圧力室C1と圧側第二圧力室C2は、圧側フリーピストン24によって仕切られているので、直接連通はしていないが、圧側作動室C内を圧側フリーピストン24が移動すると、圧側第一圧力室C1と圧側第二圧力室C2の一方の容積が拡大するが、その拡大容積に見合って他方の容積が減少するため、圧側第一通路26、圧側作動室Cおよび圧側第二通路27が見掛け上、圧側室R2とリザーバRとを連通する通路として機能するようになっている。
【0040】
また、この実施の形態の場合、圧側第一通路26の途中に圧側第一通路26を通過する液体の流れに抵抗を与える圧側弁要素28を設けてある。圧側弁要素28は、この実施の形態の場合、オリフィスやチョークといった絞りで構成されていて、圧側第一圧力室C1から圧側室R2へ向かう液体の流れだけでなく反対の圧側室R2から圧側第一圧力室C1へ向かう液体の流れも許容し、この流れに抵抗を与えるようになっている。なお、圧側弁要素28は、圧側第一通路26の代わりに、或いは、これに加えて、圧側第二通路27に設けるようにしてもよい。
【0041】
さらに、圧側第二圧力室C2内には、コイルばねや弾性体等で構成される圧側ばね要素25が収容されており、圧側ばね要素25は、圧縮状態で圧側第二圧力室C2内に収容されていて、圧側フリーピストン24を圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ附勢している。なお、圧側ばね要素25としては、圧側フリーピストン24を附勢する附勢力を発揮できればよいので、コイルばね以外のものを採用してもよく、たとえば、皿ばねやゴム等の弾性体を用いて圧側フリーピストン24を附勢するようにしてもよい。
【0042】
緩衝装置D1は、以上のように構成され、緩衝装置D1が伸長作動する場面では、ピストン2が
図1中上方へ移動するので、圧縮される伸側室R1からは液体が減衰力可変バルブVを介してリザーバRへ排出され、拡大される圧側室R2へは吸込通路3を介してリザーバRから液体が供給される。よって、伸側室R1内の圧力は上昇し、圧側室R2内の圧力はリザーバR内とほぼ等しくなる。
【0043】
伸側作動室Eにおける伸側第一圧力室E1が伸側第一通路17を通じて伸側室R1に連通されているので、伸側第一圧力室E1の圧力は、伸側室R1と同等の圧力となり、対して、伸側第二圧力室E2が伸側第二通路18を通じて圧側室R2に連通されているので、伸側第二圧力室E2の圧力は、伸側第一圧力室E1の圧力より低くなる。よって、伸側フリーピストン15は、伸側ばね要素16を押し縮めて
図1中下方へ移動し、伸側第一圧力室E1を拡大して伸側第二圧力室E2を縮小する。なお、この際に伸側弁要素19が通過する液体の流れに抵抗を与えるため、伸側フリーピストン15の急峻な変位が抑制される。
【0044】
この緩衝装置D1の伸長作動時には、圧側作動室Cにおける圧側第一圧力室C1が圧側第一通路26を通じて圧側室R2に連通されており、さらに、圧側第二圧力室C2が圧側第二通路27を通じてリザーバRに連通され、圧側室R2内の圧力は伸長作動時にはリザーバRとほぼ等圧となるために、圧側第一圧力室C1と圧側第二圧力室C2の圧力はリザーバRとほぼ等しくなって、圧側フリーピストン24は圧側ばね要素25によって附勢されて位置決められた位置から動かない。よって、緩衝装置D1の伸長作動時には、圧側フリーピストン24は作動しない。
【0045】
したがって、緩衝装置D1が伸長作動する場合、圧側感応機構RMCは作動せずに伸側感応機構RMEのみが作動して、伸側フリーピストン15の移動量に応じて、伸側作動室Eが見掛け上の流路として機能して、液体が伸側室R1から圧側室R2へ減衰力可変バルブVを迂回して移動するようになる。
【0046】
逆に、緩衝装置D1が収縮作動する場面では、ピストン2が
図1中下方へ移動するので、整流通路4によって、圧縮される圧側室R2と拡大される伸側室R1が連通状態におかれシリンダ1内から液体が減衰力可変バルブVを介してリザーバRへ排出される。よって、伸側室R1内および圧側室R2内の圧力は、ほぼ等しくともに上昇することになる。
【0047】
圧側作動室Cにおける圧側第一圧力室C1が圧側第一通路26を通じて圧側室R2に連通されているので、圧側第一圧力室C1の圧力は、圧側室R2と同等の圧力となり、対して、圧側第二圧力室C2が圧側第二通路27を通じてリザーバRに連通されているので、圧側第二圧力室C2の圧力は、圧側第一圧力室C1の圧力よりも低くなる。よって、圧側フリーピストン24は、圧側ばね要素25を押し縮めて
図1中下方へ移動し、圧側第一圧力室C1を拡大して圧側第二圧力室C2を縮小する。なお、この際に圧側弁要素28が通過する液体の流れに抵抗を与えるため、圧側フリーピストン24の急峻な変位が抑制される。
【0048】
この緩衝装置D1の収縮作動時には、伸側作動室Eにおける伸側第一圧力室E1が伸側第一通路17を通じて伸側室R1に連通されており、さらに、伸側第二圧力室E2が伸側第二通路18を通じて圧側室R2に連通され、伸側室R1内の圧力は、収縮作動時には、圧側室R2内とほぼ等圧となるために、伸側第一圧力室E1と伸側第二圧力室E2の圧力はほぼ等しくなって、伸側フリーピストン15は伸側ばね要素16によって附勢されて位置決められた位置から動かない。よって、緩衝装置D1の収縮作動時には、伸側フリーピストン15は作動しない。
【0049】
したがって、緩衝装置D1が収縮作動する場合、伸側感応機構RMEは作動せずに圧側感応機構RMCのみが作動して、圧側フリーピストン24の移動量に応じて、圧側作動室Cが見掛け上の流路として機能して、液体がシリンダ1内からリザーバRへ減衰力可変バルブVを迂回して移動するようになる。
【0050】
ここで、緩衝装置D1へ入力される振動周波数が低い場合と高い場合で、ピストン速度が同じであるという条件下で考える。まず、入力周波数が低い場合、入力される振動の振幅が大きくなり、伸長作動時であれば、伸側フリーピストン15の振幅が大きくなって伸側フリーピストン15が伸側ばね要素16から受ける附勢力が大きくなる一方、圧側フリーピストン24は作動しない。同じく、入力周波数が低い場合、収縮作動時であれば、圧側フリーピストン24の振幅が大きくなって圧側フリーピストン24が圧側ばね要素25から受ける附勢力が大きくなる一方、伸側フリーピストン15は作動しない。
【0051】
緩衝装置D1が低い振動周波数で伸長する場合、ストローク量が大きくなるので液体がシリンダ1からリザーバRへ排出される流量が多く、また、伸側フリーピストン15の振幅が大きくなって伸側ばね要素16の附勢力が大きくなるため伸側第一圧力室E1内の圧力に対して、伸側ばね要素16の附勢力分だけ伸側第二圧力室E2内の圧力が低下し、伸側第二圧力室E2と圧側室R2の圧力差が小さくなって、伸側第二通路18を通る流量が減り、見掛け上の通路として機能する伸側作動室Eを介しての伸側室R1と圧側室R2の液体のやり取りが少なくなり、その分、減衰力可変バルブVを通過する流量が多くなり、緩衝装置D1が発生する減衰力が高いまま維持される。また、緩衝装置D1が低い振動周波数で収縮する場合、ストローク量が大きくなるので液体がシリンダ1からリザーバRへ排出される流量が多く、また、圧側フリーピストン24の振幅が大きくなって圧側ばね要素25の附勢力が大きくなるため圧側第一圧力室C1内の圧力に対して、圧側ばね要素25の附勢力分だけ圧側第二圧力室C2内の圧力が低下し、圧側第二圧力室C2内とリザーバRの圧力差が小さくなって、圧側第二通路27を通る流量が減り、見掛け上の通路として機能する圧側作動室Cを介してのシリンダ1とリザーバRの液体のやり取りが少なくなり、その分、減衰力可変バルブVを通過する流量が多くなり、緩衝装置D1が発生する減衰力が高いまま維持される。つまり、緩衝装置D1が低い振動周波数で伸縮する場合には、緩衝装置D1は高い減衰力を発揮する。
【0052】
対して、緩衝装置D1への入力周波数が高い場合、入力される振動の振幅が小さくなり、ピストン2の振幅も小さい。この場合、シリンダ1からリザーバRへ排出される流量が少なく、伸長作動時には、伸側フリーピストン15の振幅も小さくなるために伸側フリーピストン15が伸側ばね要素16から受ける附勢力が小さくなる。また、緩衝装置D1への入力周波数が高い場合であって収縮作動時には、圧側フリーピストン24の振幅も小さくなるために圧側フリーピストン24が圧側ばね要素25から受ける附勢力が小さくなる。よって、緩衝装置D1が伸長行程にあっても収縮行程にあっても、減衰力可変バルブVを通過する流量に対して見掛け上の流路を通過する流量の割合が低周波振動時よりも多くなるので、緩衝装置D1が発生する減衰力が低減されて低くなる。
【0053】
なお、緩衝装置D1の伸縮速度がある程度高くなると、伸側弁要素19および圧側弁要素28が液体の流れに対して大きな抵抗を示すようになり、伸側フリーピストン15および圧側フリーピストン24が動きづらくなるため、減衰力低減効果が殆ど発揮されなくなる。そのため、緩衝装置D1の減衰特性は、
図2に示すように、推移することになる。
図2中の各実線は、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVで緩衝装置D1の伸側および圧側の減衰力をソフト、ミディアム、ハードとした場合について減衰特性を示しており、破線は、ソフト、ミディアム、ハードの減衰特性に設定される状況において、緩衝装置D1に高周波振動が入力されて、減衰力が低減された場合の減衰力の特性を示している。
【0054】
図2に示すように、この緩衝装置D1にあっては、減衰力の変化を入力振動周波数に依存させることができ、車両のばね上部材の共振周波数帯の低周波振動の入力に対しては高い減衰力を発生することで車体(ばね上部材)の姿勢を安定させて、車両旋回時に搭乗者に不安を感じさせることを防止できるとともに、車両のばね下部材の共振周波数帯の高周波振動が入力されると必ず低い減衰力を発生させて車輪側(ばね下部材側)の振動の車体側(ばね上部材側)への伝達を絶縁して、車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
【0055】
また、上述したように緩衝装置D1は、減衰力可変バルブVが液体の流れに与える抵抗を調整することによって、減衰力を調節することができる。つまり、この緩衝装置D1にあっては、減衰力可変バルブVによる減衰力調整を行いつつも、高周波数の振動に対しては、減衰力を低減することができるのである。
【0056】
したがって、本発明の緩衝装置D1によれば、比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができるのである。
【0057】
伸側感応機構RMEと圧側感応機構RMCの一方または両方を設けることで、ユニフロー型の緩衝装置D1でも、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対して低減衰力を発揮することができる。伸側感応機構RMEと圧側感応機構RMCの両方を設けることで、減衰力低減効果の特性を緩衝装置D1の伸側と圧側で個別に設定することができる。なお、伸側感応機構RMEは、緩衝装置D1へ高周波の振動が入力されて伸長作動を呈する場合に減衰力低減効果を発揮し、圧側感応機構RMCは、緩衝装置D1へ高周波の振動が入力されて収縮作動を呈する場合に減衰力低減効果を発揮するので、伸長作動時のみに減衰力低減効果を得たい場合には伸側感応機構RMEのみを設けるようにし、収縮作動時のみに減衰力低減効果を得たい場合には圧側感応機構RMCのみを設けるようにすることも当然可能である。
【0058】
また、伸長作動時における減衰力を低減する周波数帯は、伸側フリーピストン15の受圧面積、伸側ばね要素16のばね定数および伸側弁要素19の流路抵抗の設定によって、任意に決定することができる。収縮作動時における減衰力を低減する周波数帯は、圧側フリーピストン24の受圧面積、圧側ばね要素25のばね定数および圧側弁要素28の流路抵抗の設定によって、任意に決定することができる。なお、伸側弁要素19および圧側弁要素28は、減衰力を低減する周波数帯の設定によって、省略することも可能である。
【0059】
伸側フリーピストン15は、収縮作動時には、伸側ばね要素16によって伸側第一圧力室E1を最圧縮する位置決めされるように附勢されていて、中立位置へ戻されるので、伸側フリーピストン15がストロークエンドで停止してしまって、緩衝装置D1が高周波振動入力時であって伸長作動する際に、減衰力低減効果をうまく発揮できなくなってしまう事態の発生を抑制することができる。圧側フリーピストン24は、伸長作動時には、圧側ばね要素25によって圧側第一圧力室C1を最圧縮する位置決めされるように附勢されていて、中立位置へ戻されるので、圧側フリーピストン24がストロークエンドで停止してしまって、緩衝装置D1が高周波振動入力時であって収縮作動する際に、減衰力低減効果をうまく発揮できなくなってしまう事態の発生を抑制することができる。
【0060】
さらに、伸側感応機構RMEと圧側感応機構RMCとを別個にして設けているので、伸側フリーピストン15および圧側フリーピストン24の変位可能量を大きく採ることができ、伸側作動室Eおよび圧側作動室Cへ流れ込む流量が大きくなる状況となっても、減衰力低減効果を発揮し続けることができる。
【0061】
伸側感応機構RMEにおける伸側作動室Eは、たとえば、
図3に示すように、ピストンロッド30に取り付けられる伸側ハウジング31に設けることができる。この伸側ハウジング31は、ピストンロッド30の一端30aの先端に取り付けられており、ピストン32をピストンロッド30に固定する役割を担っている。
【0062】
ピストン32は、環状であってピストンロッド30の一端30aの外周に装着されており、圧側室R2と伸側室R1とを連通するポート32aが設けられている。このポート32aは、ピストン32の
図3中上方に積層されるとともにピストンロッド30の一端30aの外周に装着される環状の逆止弁33によって開閉されるようになっている。
【0063】
逆止弁33は、ピストンロッド30に固定されると外周側の撓みが許容され、ポート32aを圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対しては開弁してこれを許容し、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対してはポート32aを閉じて液体の通過を許さないようになっている。
【0064】
伸側ハウジング31は、内方に伸側フリーピストン34が挿入される筒状のケース部材35と、ケース部材35の
図3中下端開口端を閉塞する蓋部材36とで構成されている。
【0065】
詳細には、ケース部材35は、筒状であって、
図3中上方側が小径とされており、ピストンロッド30の一端30aの下端外周に螺子結合される螺子部35aと、螺子部35aより大径であって伸側フリーピストン34が摺動自在に収容されるフリーピストン収容部35bとを備えている。また、ケース部材35の下端が蓋部材36によって閉塞されて、伸側作動室Eを形成している。
【0066】
蓋部材36には、オリフィス36aが設けられており、このオリフィス36aが伸側作動室Eを圧側室R2に連通し、伸側弁要素としても伸側第二通路としても機能している。さらに、ピストンロッド30には、一端30aの下端から開口して伸側室R1に通じる伸側第一通路30bが設けられており、この伸側第一通路30bによって伸側作動室Eが伸側室R1に連通されている。
【0067】
伸側フリーピストン34は、有底筒状とされており、外周をケース部材35のフリーピストン収容部35bの内周に摺接させていて、伸側ハウジング31内を伸側第一通路30bを介して伸側室R1に連通される伸側第一圧力室E1と、伸側第二通路として機能するオリフィス36aを介して圧側室R2に連通される伸側第二圧力室E2とに区画している。
【0068】
伸側フリーピストン34は、底部と蓋部材36との間に介装される伸側ばね要素としてのコイルばね37によって、伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ附勢される。
【0069】
上記のように伸側感応機構RMEを構成することで、伸側感応機構RMEを緩衝装置D1に無理なく組み込むことができ、緩衝装置D1を具体的に実現することができる。
【0070】
また、圧側感応機構RMCにおける圧側作動室Cは、たとえば、
図4に示すように、シリンダ1の
図1中下端に嵌合されるバルブケース40に取り付けられる圧側ハウジング41に設けることができる。この圧側ハウジング41は、バルブケース40が組付けられるセンターロッド42の先端に取り付けられており、バルブケース40に積層される逆止弁44をセンターロッド42に固定する役割を担っている。
【0071】
バルブケース40は、有底筒状であって、外周に、シリンダ1の下端に嵌合される小径部40aと、小径部40aよりも外径が大きい中間筒9内に嵌合する中径部40bと、中径部40bの
図4中下端側に設けられて中径部40bよりも外径が大きな大径部40cとを備えている。また、バルブケース40の底部には、センターロッド42の挿通を許容する挿通孔40dが設けられるとともに、大径部40cの
図4中下端には、複数の切欠40eが設けられている。そして、このバルブケース40は、外筒10とシリンダ1によって挟持されて外筒10内に収容されて固定される。
【0072】
センターロッド42は、挿通孔40dに挿通されるとともに先端に螺子部を備えた軸部42aと、軸部42aの基端に設けた頭部42bとを備えている。そして、軸部42aをバルブケース40の下方から挿通孔40dに挿入するようにして、バルブケース40がセンターロッド42に組み付けられる。
【0073】
さらに、バルブケース40の底部には、圧側室R2とリザーバRとを連通する吸込ポート40fが設けられている。この吸込ポート40fは、バルブケース40の
図4中上方に積層されるとともにセンターロッド42の外周に装着される環状の逆止弁44によって開閉されるようになっている。
【0074】
逆止弁44は、センターロッド42に固定されると外周側の撓みが許容され、吸込ポート40fをリザーバRから圧側室R2へ向かう液体の流れに対しては開弁してこれを許容し、圧側室R2からリザーバRへ向かう液体の流れに対しては吸込ポート40fを閉じて液体の通過を許さないようになっている。
【0075】
圧側ハウジング41は、内方に圧側フリーピストン45が挿入される筒状のケース部材46と、ケース部材46の
図4中上端開口端を閉塞する蓋部材47とで構成されている。
【0076】
詳細には、ケース部材46は、筒状であって、
図4中下方側が小径とされており、センターロッド42の上端外周に螺子結合される螺子部46aと、螺子部46aより大径であって圧側フリーピストン45が摺動自在に収容されるフリーピストン収容部46bとを備えている。また、ケース部材46の上端が蓋部材47によって閉塞されて、圧側作動室Cを形成している。
【0077】
蓋部材47には、オリフィス47aが設けられており、このオリフィス47aが圧側作動室Cを圧側室R2に連通し、圧側弁要素としても圧側第一通路としても機能している。さらに、センターロッド42には、軸部42aの先端から開口して頭部42bの下端へ通じる圧側第二通路42cが設けられており、この圧側第二通路42cによって圧側作動室CがリザーバRに連通されている。
【0078】
圧側フリーピストン45は、有底筒状とされており、外周をケース部材46のフリーピストン収容部46bの内周に摺接させていて、圧側ハウジング41内を圧側第一通路として機能するオリフィス47aを介して圧側室R2に連通される圧側第一圧力室C1と、圧側第二通路42cを介してリザーバRに連通される圧側第二圧力室C2とに区画している。
【0079】
圧側フリーピストン45は、その底部とケース部材46の内周に形成される段部46cとの間に介装される圧側ばね要素としてのコイルばね48によって、圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ附勢される。
【0080】
上記のように圧側感応機構RMCを構成することで、圧側感応機構RMCを緩衝装置D1に無理なく組み込むことができ、緩衝装置D1を具体的に実現することができる。
【0081】
また、
図5に示した他の実施の形態における緩衝装置D2のように、圧側室R2から伸側室R1へ向かう方向の液体の流れのみを許容する逆止弁50を伸側弁要素19に並列させて設けるようにしてもよい。この実施の形態の場合、伸側弁要素19が伸側第二通路18に設けられているので、逆止弁50は、圧側室R2から伸側室R1へ向かう方向である圧側室R2から伸側第二圧力室E2へ向かう液体の流れのみを許容するように設ければよい。このようにすることで、緩衝装置D2の伸長作動時おいて、伸側室R1からの圧力によって伸側フリーピストン15が伸側第二圧力室E2を圧縮する方向へ移動した後に、緩衝装置D2が収縮作動に転じると逆止弁50が開弁して高圧となった伸側第一圧力室E1内の圧力を減圧される伸側室R1へ速やかに逃がすことができ、伸側ばね要素16による附勢力で伸側フリーピストン15を伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ押し戻すことができる。よって、緩衝装置D2に振動が継続的に入力された際に、伸側第一圧力室E1の圧籠りによって伸側フリーピストン15が伸側第二圧力室E2側へ偏ってしまい、伸側フリーピストン15の伸側第二圧力室E2を圧縮する方向への変位余裕が少なくなってしまうことが無くなる。したがって、この緩衝装置D2にあっては、伸側フリーピストン15の上記偏りを防止できるので、伸長作動時において伸側フリーピストン15の変位余裕が無くなって、減衰力低減効果が得られなくなってしまうという事態を招くことが無い。伸側弁要素19が伸側第一通路17に設けられる場合には、逆止弁50は、伸側弁要素19に並列するよう、伸側第一圧力室E1から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容するように設けるようにすればよい。
【0082】
また、この緩衝装置D2の場合、リザーバRから圧側室R2へ向かう方向の液体の流れのみを許容する逆止弁51を圧側弁要素28に並列させて設けるようにしてもよい。この実施の形態の場合、圧側弁要素28が圧側第一通路26に設けられているので、逆止弁51は、リザーバRから圧側室R2へ向かう方向である圧側第一圧力室C1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容するように設ければよい。このようにすることで、緩衝装置D2の収縮作動時おいて、圧側室R2からの圧力によって圧側フリーピストン24が圧側第二圧力室C2を圧縮する方向へ移動した後に、緩衝装置D2が伸長作動に転じると逆止弁51が開弁して高圧となった圧側第一圧力室C1内の圧力を減圧される圧側室R2へ速やかに逃がすことができ、圧側ばね要素25による附勢力で圧側フリーピストン24を圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ押し戻すことができる。よって、緩衝装置D2に振動が継続的に入力された際に、圧側第一圧力室C1の圧籠りによって圧側フリーピストン24が圧側第二圧力室C2側へ偏ってしまい、圧側フリーピストン24の圧側第二圧力室C2を圧縮する方向への変位余裕が少なくなってしまうことが無くなる。したがって、この緩衝装置D2にあっては、圧側フリーピストン24の上記偏りを防止できるので、収縮作動時において圧側フリーピストン24の変位余裕が無くなって、減衰力低減効果が得られなくなってしまうという事態を招くことが無い。圧側弁要素28が圧側第二通路27に設けられる場合には、逆止弁51は、圧側弁要素28に並列するよう、リザーバRから圧側第二圧力室C2へ向かう液体の流れのみを許容するように設けるようにすればよい。
【0083】
逆止弁50を具体的に緩衝装置D2に適用するに当たっては、たとえば、
図3に示した緩衝装置D1の伸側ハウジング31における蓋部材を
図6に示すように変更すればよい。
図6に示した緩衝装置D2における蓋部材52は、ケース部材35の開口端を閉塞しており、伸側第二圧力室E2と圧側室R2とを連通するポート52aを備えている。そして、この蓋部材52には、ポート52aの伸側第二圧力室側の開口を閉塞する環板状の逆止弁50が積層されている。逆止弁50は、蓋部材52を貫通するセンターロッド53の外周に装着されており、当該センターロッド53は、先端に加締めて固定されるリング54と協働して逆止弁50を蓋部材52に固定している。逆止弁50は、このセンターロッド53によって内周側が蓋部材52に固定されて外周側の撓みが許容される。
【0084】
逆止弁50は、圧側室R2から伸側第二圧力室E2へ向かう液体の流れに対しては撓んでポート52aを開放し、反対の流れに対してはポート52aを閉じて当該反対の流れを阻止する。また、逆止弁50には、切欠で形成したオリフィス55が設けられており、このオリフィス55は、逆止弁50が閉弁してポート52aを閉じている際には、伸側第二圧力室E2から圧側室R2へ向かう液体の流れに対して抵抗を与える伸側弁要素且つ伸側第二通路として機能する。
【0085】
このようにすることで、逆止弁50と伸側弁要素且つ伸側第二通路として機能するオリフィス55を緩衝装置D2に無理なく省スペースで設けることができる。
【0086】
逆止弁51を具体的に緩衝装置D2に適用するに当たっては、たとえば、
図4に示した緩衝装置D1の圧側ハウジング41における蓋部材を
図7に示すように変更すればよい。
図7に示した緩衝装置D2における蓋部材56は、ケース部材46の開口端を閉塞しており、圧側第一圧力室C1と圧側室R2とを連通するポート56aを備えている。そして、この蓋部材56には、ポート56aの圧側室側の開口を閉塞する環板状の逆止弁51が積層されている。逆止弁51は、蓋部材56を貫通するセンターロッド57の外周に装着されており、当該センターロッド57は、先端に加締めて固定されるリング58と協働して逆止弁51を蓋部材56に固定している。逆止弁51は、このセンターロッド57によって内周側が蓋部材56に固定されて外周側の撓みが許容される。
【0087】
逆止弁51は、圧側第二圧力室C2から圧側室R2へ向かう液体の流れに対しては撓んでポート56aを開放し、反対の流れに対してはポート56aを閉じて当該反対の流れを阻止する。また、逆止弁51には、切欠で形成したオリフィス59が設けられており、このオリフィス59は、逆止弁51が閉弁してポート56aを閉じている際には、圧側室R2から圧側第一圧力室C1へ向かう液体の流れに対して抵抗を与える圧側弁要素且つ圧側第一通路として機能する。
【0088】
このようにすることで、逆止弁51と圧側弁要素且つ圧側第一通路として機能するオリフィス59を緩衝装置D2に無理なく省スペースで設けることができる。
【0089】
また、
図3に示した緩衝装置D1において、伸側フリーピストン34が伸側第二圧力室E2を最圧縮する場合、伸側フリーピストン34の筒部の下端が蓋部材36に当接することで伸側フリーピストン34のそれ以上の伸側第二圧力室E2を圧縮する方向への移動が規制されるようになっており、伸側フリーピストン34と蓋部材36とが勢い良く衝突すると打音が生じ、この打音が車室内の搭乗者に異音として知覚される。また、伸側ばね要素としてのコイルばね37によって伸側フリーピストン34が伸側第一圧力室E1を最圧縮する位置へ戻される際に、伸側フリーピストン34とケース部材35とが勢い良く衝突すると打音が生じ、この打音が車室内の搭乗者に異音として知覚される。
【0090】
そこで、この打音量を低減するため、
図8に示すように、伸側フリーピストン34がストロークエンドまで変位する際に伸側フリーピストン34に衝合して蓋部材36との衝突を阻止するクッション60と、伸側フリーピストン34が伸側第一圧力室E1を最圧縮する位置へ戻される際に伸側フリーピストン34に衝合してケース部材35との衝突を阻止するクッション61とで構成される伸側クッション手段を設けておくとよい。クッション60,61は、この場合、環状であってもよいし、複数のクッション60,61を蓋部材36およびケース部材35における伸側フリーピストン34に衝突する位置に設けるようにしてもよい。さらには、伸側フリーピストン34にクッションを設けるようにして蓋部材36およびケース部材35にクッションを衝合させるようにしてもよい。クッションには、ゴムや合成樹脂の他、ウェーブワッシャ、皿ばね等といった弾性体を利用可能である。
【0091】
クッションは、圧側感応機構RMCに適用することも当然に可能であり、たとえば、
図4に示した圧側感応機構RMCに設けるのであれば、圧側フリーピストン45と圧側ハウジング41であるケース部材46および蓋部材47のいずれかに圧側クッション手段としてのクッションを取り付けておき、圧側フリーピストン45と圧側ハウジング41とが直接衝突することを阻止すればよい。このようにすることで、伸側フリーピストン34が伸側ハウジング31へ衝突する際の打音量および圧側フリーピストン45が圧側ハウジング41へ衝突する際の打音量が低減され、車両搭乗者へ違和感や不快感を抱かせることを防止することができる。このような伸側クッション手段および圧側クッション手段は、
図6や
図7に示した緩衝装置D2に適用することも当然可能である。
【0092】
さらに、クッションを設けるのではなく、
図9に示した緩衝装置D3のように、伸側フリーピストン34とケース部材35との間に伸側ばね要素としてのコイルばね37に対抗する附勢力を発揮する伸側クッションばね62を設けて伸側フリーピストン34をフローティング支持するとともに、圧側フリーピストン45と蓋部材47との間に圧側ばね要素としてのコイルばね48に対抗する附勢力を発揮する圧側クッションばね63を設けて圧側フリーピストン45をフローティング支持するようにしてもよい。
【0093】
伸側フリーピストン34は、底部に凹部34aが設けられており、この凹部34a内に伸側クッションばね62を挿入してある。また、伸側ハウジング31におけるフリーピストン収容部35b内には、孔空き環状のばね受け64が収容されており、このばね受け64と凹部34aの底との間に伸側クッションばね62が介装されている。
【0094】
コイルばね37は、凹部34aと筒部との間に挿入されており、このようにすることで、コイルばね37と伸側クッションばね
62のストローク長を確保しつつ、伸側感応機構RMEの全長を短くすることができる。
【0095】
そして、伸側フリーピストン34が伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ変位すると伸側クッションばね62は伸側フリーピストン34の変位量に応じてこの変位を抑制する附勢力を高くするので、伸側フリーピストン34がケース部材35に衝突する前に伸側フリーピストン34の速度を減速させることができる。よって、伸側フリーピストン34が伸側ハウジング31へ衝突する際に生じる打音量を低減することができ、車両搭乗者へ違和感や不快感を抱かせることを防止することができる。
【0096】
同様に、圧側フリーピストン45にも凹部45aを設けて、この凹部45a内に圧側クッションばね63を挿入してある。コイルばね48は、凹部45aと筒部との間に挿入されており、このようにすることで、コイルばね48と圧側クッションばね63のストローク長を確保しつつ、圧側感応機構RMCの全長を短くすることができる。
【0097】
そして、圧側フリーピストン45が圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ変位すると圧側クッションばね63は圧側フリーピストン45の変位量に応じてこの変位を抑制する附勢力を高くするので、圧側フリーピストン45が圧側ハウジング41に衝突する前に圧側フリーピストン45の速度を減速させることができ、圧側フリーピストン45が圧側ハウジング41へ衝突する際の打音量を低減することができ、車両搭乗者へ違和感や不快感を抱かせることを防止することができる。
【0098】
またさらに、伸側フリーピストン34が蓋部材36に勢い良く衝突することを防止して打音量を抑制するには、
図10に示す緩衝装置D4のように、
図3の緩衝装置D1の構造に、伸側フリーピストン34がストロークエンドまで変位すると伸側第二通路の流路面積を減少させて、伸側フリーピストン34が勢いよく伸側ハウジング31と衝突することを防止する伸側液圧クッション手段を追加して設けるようにしてもよい。
【0099】
伸側液圧クッション手段は、ケース部材35のフリーピストン収容部35bの外方から開口して内部へ通じるオリフィス孔65と、伸側フリーピストン34の筒部の外周に周方向に沿って形成した環状溝66と、伸側フリーピストン34に設けられて伸側第二圧力室E2を上記環状溝66に連通する通路67とを備えて構成されている。
【0100】
そして、伸側フリーピストン34が伸側第一圧力室E1を最圧縮する位置にある状態では、環状溝66がオリフィス孔65に対向するようになっていて、圧側室R2がオリフィス孔65、環状溝66および通路67を介して伸側第二圧力室E2に連通されるようになっている。また、伸側第二圧力室E2が蓋部材36に設けたオリフィス36aによっても圧側室R2に連通されているので、オリフィス孔65、環状溝66および通路67は、オリフィス36aとともに伸側第二通路を形成している。
【0101】
伸側フリーピストン34が伸側ばね要素としてのコイルばね37を押し縮めて伸側第二圧力室E2を圧縮する方向へ変位していくと、伸側フリーピストン34がストロークエンドに達する前にオリフィス孔65が環状溝66に対向しなくなって伸側フリーピストン34の外周によって閉塞されてオリフィス36aのみが有効となり、伸側第二通路の流路面積がオリフィス36aの断面積まで減少される。
【0102】
このように伸側フリーピストン34が伸側第二圧力室E2を圧縮する方向へストロークエンド近傍まで変位していくと、徐々に伸側第二通路の流路面積が減少して、伸側第二圧力室E2内の圧力が上昇して伸側フリーピストン34の移動を妨げることで伸側フリーピストン34を減速させることができる。したがって、伸側フリーピストン34が伸側ハウジング31へ勢い良く衝突することを防止することができる。よって、両者が接触する際に生じる打音量を低減することができ、車両搭乗者へ違和感や不快感を抱かせることを防止することができる。
【0103】
なお、伸側液圧クッション手段は、伸側フリーピストン34の伸側第二圧力室E2を圧縮する方向への変位によって、伸側第一通路の流路面積を減少させる構成を採用することもでき、また、伸側フリーピストン34の伸側第二圧力室E2を圧縮する方向への変位によって閉鎖されて内部圧力で伸側フリーピストン34の移動を停止させる液圧ロック室を設置するものであってもよい。
【0104】
液圧クッション手段は、圧側感応機構RMCに適用することも当然に可能であり、たとえば、
図4に示した圧側感応機構RMCに設けるのであれば、
図11に示した緩衝装置D5のように、ケース部材46にオリフィス孔68を設け、圧側フリーピストン45の外周に環状溝69を設けるとともに環状溝69を圧側第一圧力室C1に連通する通路70を設けて圧側液圧クッション手段とすればよい。
【0105】
この場合、圧側フリーピストン45が圧側第一圧力室C1を最圧縮する位置にある状態では、環状溝69がオリフィス孔68に対向するようになっていて、圧側室R2がオリフィス孔68、環状溝69および通路70を介して圧側第一圧力室C1に連通されるようになっている。また、圧側第一圧力室C1が蓋部材47に設けたオリフィス47aによっても圧側室R2に連通されているので、オリフィス孔68、環状溝69および通路70は、オリフィス47aとともに圧側第一通路を形成している。
【0106】
圧側フリーピストン45が圧側ばね要素としてのコイルばね48を押し縮めて圧側第二圧力室C2を圧縮する方向へ変位していくと、圧側フリーピストン45がストロークエンドに達する前にオリフィス孔68が環状溝69に対向しなくなって圧側フリーピストン45の外周によって閉塞されてオリフィス47aのみが有効となり、圧側第一通路の流路面積がオリフィス47aの断面積まで減少される。
【0107】
このように圧側フリーピストン45が圧側第二圧力室C2を圧縮する方向へストロークエンド近傍まで変位していくと、徐々に圧側第一通路の流路面積が減少して、圧側第一圧力室C1内の圧力が上昇しにくくなり、圧側フリーピストン45の移動を妨げて圧側フリーピストン45を減速させることができる。したがって、圧側フリーピストン45が圧側ハウジング41へ勢い良く衝突することを防止することができる。よって、両者が接触する際に生じる打音量を低減することができ、車両搭乗者へ違和感や不快感を抱かせることを防止することができる。
【0108】
なお、圧側液圧クッション手段は、圧側フリーピストン
45の圧側第二圧力室C2を圧縮する方向への変位によって、圧側第二通路の流路面積を減少させる構成を採用することもでき、また、圧側フリーピストン45の圧側第二圧力室C2を圧縮する方向への変位によって閉鎖されて内部圧力で圧側フリーピストン45の移動を停止させる液圧ロック室を設置するものであってもよい。
【0109】
また、
図12に示す緩衝装置D6における伸側感応機構RMEのように、伸側弁要素をオリフィスやチョークの代わりに弁体を有するバルブを用いることもできる。緩衝装置D6は、
図3の緩衝装置D1の構造に、伸側バルブ80を適用している。具体的には、
図12に示すように、伸側ハウジング31のケース部材35の開口端を閉塞する蓋部材81に伸側バルブ80を積層し、当該蓋部材81に設けたポート81aを伸側バルブ80で開閉するようになっている。
【0110】
蓋部材81は、伸側第二圧力室E2と圧側室R2とを連通するポート81a,81bとを備えている。伸側バルブ80は、環板状のリーフバルブとされており、蓋部材81の圧側室R2側に積層されるとともに、蓋部材81を貫通するセンターロッド82の外周に装着されて当該蓋部材81に内周側が固定されている。
【0111】
よって、伸側バルブ80は、伸側第二圧力室E2の圧力で外周が撓むとポート81aを開放して液体が伸側第二圧力室E2から圧側室R2へ通過することを許容しつつ当該液体の流れに抵抗を与えるが、反対に圧側室R2から伸側第二圧力室E2へ向かう液体の流れに対してはポート81aを閉じて流れを阻止する逆止弁としても機能する。
【0112】
他方、ポート81bは、蓋部材81の伸側第二圧力室E2側に積層されるとともにセンターロッド82の外周に装着される環板状の逆止弁84によって開閉されるようになっている。この逆止弁84は、圧側室R2の圧力で外周が撓むとポート81bを開放して液体が圧側室R2から伸側第二圧力室E2へ通過することを許容し、反対に伸側第二圧力室E2から圧側室R2へ向かう液体の流れに対してはポート81bを閉じて流れを阻止するようになっている。
【0113】
なお、この実施の形態の緩衝装置D6にあっては、伸側フリーピストン34を附勢するコイルばね37が逆止弁84と干渉しないように、ケース部材35の内周に環状のばね受85を設けている。この干渉の問題がなければ、ばね受85を廃止してコイルばね37を蓋部材81で支承するようにしてもよい。
【0114】
このように構成された緩衝装置D6にあっては、緩衝装置D1と同様に比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができる。
【0115】
さらに、緩衝装置D6にあっては、伸長速度が高くなって伸側第二圧力室E2から圧側室R2へ向かう液体の流量が増えても、伸側バルブ80がそれに応じてポート81aを大きく開放するため、緩衝装置D6の伸長速度が高速域に達しても減衰力低減効果が発揮され同効果が失われることがない。
【0116】
この緩衝装置D6にあっては、逆止弁84が伸側バルブ80に並列されているので、伸側室R1からの圧力によって伸側フリーピストン34が伸側第二圧力室E2を圧縮する方向へ移動した後に、緩衝装置D6が収縮作動に転じると逆止弁84が開弁して高圧となった伸側第一圧力室E1内の圧力を減圧される伸側室R1へ速やかに逃がすことができ、伸側ばね要素であるコイルばね37による附勢力で伸側フリーピストン34を伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ押し戻すことができる。
【0117】
よって、緩衝装置D6に振動が継続的に入力された際に、伸側第一圧力室E1の圧籠りによって伸側フリーピストン34が伸側第二圧力室E2側へ偏ってしまい、伸側フリーピストン34の伸側第二圧力室E2を圧縮する方向への変位余裕が少なくなってしまうことが無くなる。したがって、この緩衝装置D6にあっては、伸側フリーピストン34の上記偏りを防止できるので、伸長作動時において伸側フリーピストン34の変位余裕が無くなって、減衰力低減効果が得られなくなってしまうという事態を招くことが無い。
【0118】
また、
図13に示す緩衝装置D7における圧側感応機構RMCのように、圧側弁要素をオリフィスやチョークの代わりに弁体を有するバルブを用いることもできる。緩衝装置D7は、
図4の緩衝装置D1の構造に、圧側バルブ86を適用している。具体的には、
図13に示すように、圧側ハウジング41のケース部材46の開口端を閉塞する蓋部材87に圧側バルブ86を積層し、当該蓋部材87に設けたポート87aを圧側バルブ86で開閉するようになっている。
【0119】
蓋部材87は、圧側第一圧力室C1と圧側室R2とを連通するポート87a,87bとを備えている。圧側バルブ86は、環板状のリーフバルブとされており、蓋部材87の圧側第一圧力室C1側に積層されるとともに、蓋部材87を貫通するセンターロッド88の外周に装着されて当該蓋部材87に内周側が固定されている。
【0120】
よって、圧側バルブ86は、圧側室R2の圧力で外周が撓むとポート87aを開放して液体が圧側室R2から圧側第一圧力室C1へ通過することを許容しつつ当該液体の流れに抵抗を与え、反対に圧側第一圧力室C1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対してはポート87aを閉じて流れを阻止する逆止弁としても機能する。
【0121】
他方、ポート87bは、蓋部材87の圧側室R2側に積層されるとともにセンターロッド88の外周に装着される環板状の逆止弁89によって開閉されるようになっている。この逆止弁89は、圧側第一圧力室C1の圧力で外周が撓むとポート87bを開放して液体が圧側第一圧力室C1から圧側室R2へ通過することを許容し、反対に圧側室R2から圧側第一圧力室C1へ向かう液体の流れに対してはポート87bを閉じて流れを阻止するようになっている。
【0122】
このように構成された緩衝装置D7にあっては、緩衝装置D1と同様に比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができる。
【0123】
さらに、緩衝装置D7にあっては、収縮速度が高くなって圧側室R2から圧側第一圧力室C1へ向かう液体の流量が増えても、圧側バルブ86がそれに応じてポート87aを大きく開放するため、緩衝装置D7の収縮速度が高速域に達しても減衰力低減効果が発揮され同効果が失われることがない。
【0124】
この緩衝装置D7にあっては、逆止弁89が圧側バルブ86に並列されているので、圧側室R2からの圧力によって圧側フリーピストン45が圧側第二圧力室C2を圧縮する方向へ移動した後に、緩衝装置D7が伸長作動に転じると逆止弁89が開弁して高圧となった圧側第一圧力室C1内の圧力を減圧される圧側室R2へ速やかに逃がすことができ、圧側ばね要素であるコイルばね48による附勢力で圧側フリーピストン45を圧側第一圧力室C1を圧縮する方向へ押し戻すことができる。
【0125】
よって、緩衝装置D7に振動が継続的に入力された際に、圧側第一圧力室C1の圧籠りによって圧側フリーピストン45が圧側第二圧力室C2側へ偏ってしまい、圧側フリーピストン45の圧側第二圧力室C2を圧縮する方向への変位余裕が少なくなってしまうことが無くなる。したがって、この緩衝装置D7にあっては、圧側フリーピストン45の上記偏りを防止できるので、収縮作動時において圧側フリーピストン45の変位余裕が無くなって、減衰力低減効果が得られなくなってしまうという事態を招くことが無い。
【0126】
そして、緩衝装置D6における伸側感応機構RMEと緩衝装置D7における圧側感応機構RMCの両方を採用するようにしてもよいのは当然である。
【0127】
また、上記緩衝装置D6では、伸側第二通路に伸側バルブ80を設けていたが、
図14に示す緩衝装置D8のように、伸側第一通路に伸側バルブ90を設けることも可能である。
【0128】
緩衝装置D8では、
図3に示した緩衝装置D1の構造に加えて、ピストンロッド30の外周であってピストン32よりも伸側室R1側に設けたバルブディスク91と、同じくピストンロッド30の外周に装着されるとともにバルブディスク91の外周に嵌合するキャップ92と、バルブディスク91とキャップ92との間に介装される筒状のスペーサ93と、バルブディスク91の
図14中下方に積層される伸側バルブ90と、バルブディスク91の
図14中上方に積層される環板状の逆止弁94とを備えている。
【0129】
バルブディスク91は、環状であってピストンロッド30の外周に装着されるようになっており、上端から下端へ通じるポート91a,91bを備えている。キャップ92は、有底筒状であって、底部にピストンロッド30の挿通を許容する孔92aを備えており、底部をピストンロッド30の外周に装着させるとともに、筒部をバルブディスク91の外周に嵌合させており、バルブディスク91と協働して伸側室R1内に部屋Aを区画している。
【0130】
また、スペーサ93は、筒状であって、ピストンロッド30の外周であってキャップ92の底部とバルブディスク91との間に介装される。ピストンロッド30には、伸側第一圧力室E1へ連通される伸側第一通路30bが設けられており、伸側第一通路30bは、ピストンロッド30の外周であってスペーサ93に対向する位置に開口している。
【0131】
スペーサ93は、切欠93aを備えており、当該切欠93aを介して、伸側第一通路30bを部屋Aに連通しており、部屋Aは、上記ポート91a,91bを通じて伸側室R1に連通される。よって、伸側第一圧力室E1は、部屋Aおよびポート91a,91bを介して伸側室R1に連通されている。
【0132】
伸側バルブ90は、環状のリーフバルブとされ、バルブディスク91の
図14中下方に積層されてピストンロッド30の外周に装着されており、外周側の撓みが許容されてポート91aの下端を開閉するようになっている。したがって、伸側室R1から伸側第一圧力室E1へ向かう液体の流れに対してポート91aを開放して通過する液体の流れに対して抵抗を与え、反対の流れに対してはポート91aを閉塞して液体の通過を阻止するようになっている。
【0133】
逆止弁94は、環板状とされ、バルブディスク91の
図14中上方に積層されてピストンロッド30の外周に装着されており、外周側の撓みが許容されてポート91bの上端を開閉するようになっている。したがって、伸側第一圧力室E1から伸側室R1へ向かう液体の流れに対してポート91bを開放して液体の通過を許容し、反対の流れに対してはポート91bを閉塞して液体の通過を阻止するようになっている。
【0134】
なお、伸側バルブ90は、ポート91bの下端を閉塞することが無いように配慮されるともに、逆止弁94は、ポート91aの上端を閉塞することが無いように配慮されている。
【0135】
緩衝装置の構造上、デッドスペースであるピストンロッド30のピストン32よりも伸側室R1側に、伸側バルブ90、バルブディスク91、キャップ92、スペーサ93および逆止弁94を配置することで、ピストン32よりも
図14中下方側に設けた伸側ハウジング31の全長を短縮化することができ、ストローク長を犠牲にすることなく伸側バルブ90を設けることができる。
【0136】
このように構成された緩衝装置D8にあっては、緩衝装置D1と同様に比較的低い周波数帯の振動に対しては、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによって減衰力調整することで車体振動を制振することができるだけでなく、減衰力調整部としての減衰力可変バルブVのコントロールによっては抑制できない高周波振動に対してはメカニカルに低減衰力を発揮することができ、車輪側からの振動を絶縁して車体振動を効果的に抑制することができ、車両における乗り心地を飛躍的に向上することができる。
【0137】
さらに、緩衝装置D8にあっては、伸長速度が高くなって伸側室R1から伸側第一圧力室E1へ向かう液体の流量が増えても、伸側バルブ90がそれに応じてポート91aを大きく開放するため、緩衝装置D8の伸長速度が高速域に達しても減衰力低減効果が発揮され同効果が失われることがない。
【0138】
この緩衝装置D8にあっては、逆止弁94が伸側バルブ90に並列されているので、伸側室R1からの圧力によって伸側フリーピストン34が伸側第二圧力室E2を圧縮する方向へ移動した後に、緩衝装置D8が収縮作動に転じると逆止弁94が開弁して高圧となった伸側第一圧力室E1内の圧力を減圧される伸側室R1へ速やかに逃がすことができ、伸側ばね要素であるコイルばね37による附勢力で伸側フリーピストン34を
伸側第一圧力室E1を圧縮する方向へ押し戻すことができる。
【0139】
よって、緩衝装置D8に振動が継続的に入力された際に、伸側第一圧力室E1の圧籠りによって伸側フリーピストン34が伸側第二圧力室E2側へ偏ってしまい、伸側フリーピストン34の伸側第二圧力室E2を圧縮する方向への変位余裕が少なくなってしまうことが無くなる。したがって、この緩衝装置D8にあっては、伸側フリーピストン34の上記偏りを防止できるので、伸長作動時において伸側フリーピストン34の変位余裕が無くなって、減衰力低減効果が得られなくなってしまうという事態を招くことが無い。
【0140】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。