(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動体の移動経路上に前記無線基地局が形成するセルと比較して、周波数、通信方式及びカバレッジエリアの少なくとも1つが異なるセルを形成する第2の無線基地局を有し、
前記無線移動局は、前記複数のユーザ端末と、前記無線基地局及び前記第2の無線基地局との通信を中継することを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
前記無線基地局及び前記無線移動局の少なくとも一方が、ビームフォーミングにより形成したビームを用いて通信を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の無線通信システム。
前記無線移動局が、前記無線基地局及び/又は前記無線移動局の地理的位置に基づいて、選択候補となる複数のウェイトから選択したウェイトを用いてビームを形成することを特徴とする請求項3に記載の無線通信システム。
前記無線基地局が、前記移動体の移動経路に基づいて、選択候補となる複数のウェイトから選択したウェイトを用いてビームを形成することを特徴とする請求項3又は4に記載の無線通信システム。
前記無線基地局及び前記無線移動局の少なくとも一方が、前記無線移動局が中継するトラフィック量、前記無線移動局が中継するトラフィック構成、前記移動体の種類、前記移動体の車両構成、前記移動体の移動速度及び前記移動体の移動方向のうち少なくとも1つに基づいて、適応的に制御したウェイトを用いてビームを形成することを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の無線通信システム。
前記移動体外用通信部は、前記無線基地局及び/又は前記移動体の地理的位置に基づいて、選択候補となる複数のウェイトから選択したウェイトを用いてビームを形成して前記無線基地局と通信を行うことを特徴とする請求項7に記載の無線移動局。
前記無線基地局は、前記移動体の移動経路に基づいて、選択候補となる複数のウェイトから選択したウェイトを用いてビームを形成して前記無線移動局と通信を行うことを特徴とする請求項9に記載の無線基地局。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施の形態に係る無線通信システムが適用されるネットワーク構成の概念図の一例である。
図1に示すネットワーク構成は、マクロセルを形成する無線基地局(以下、マクロ基地局又はMeNB(Macro eNodeB)という)、各スモールセルを形成する無線基地局(以下、スモール基地局又はSeNB(Small eNodeB)という)、マクロ基地局及びスモール基地局の少なくとも一つと通信するユーザ端末(UE:User Equipment)とを含む。
図1においては、移動体(電車)が、所定の移動経路(線路)に沿って移動しており、多数のユーザ端末が移動体に内包されている。また、
図1では、スモール基地局が、マクロセルがカバーする範囲(カバレッジエリア、セルエリア)と重畳(オーバーレイ)してスモールセルを形成するネットワーク構成を示している。
【0011】
図1に示すネットワーク構成では、マクロセルにおいて相対的に低い周波数帯(以下、低周波数帯という)のキャリアF1(例えば、2GHz帯)を用い、スモールセルにおいて相対的に高い周波数帯(以下、高周波数帯という)のキャリアF2(例えば、3.5GHz帯、10GHz帯など)を用いることが検討されている。なお、本実施の形態に係る無線通信システムが適用されるネットワーク構成は、
図1に示した構成に限られない。例えばスモール基地局がない場合であっても適用可能である。
【0012】
低周波数帯のキャリアF1を用いるマクロセルにおいて、カバレッジ確保やモビリティサポートを行い、高周波数帯のキャリアF2を用いるスモールセルにおいて、容量増大やオフロードを行うこと(Macro-assisted、C/U-plane splitなどともいう)も検討されている。例えば、ユーザ端末がマクロ基地局及びスモール基地局の双方に接続可能である場合、制御メッセージを取り扱う制御プレーン(C(Control)−plane)をマクロセルによってサポートし、ユーザデータを取り扱うユーザプレーン(U(User)−plane)をスモールセルによってサポートするよう分離して制御することができる。
【0013】
ここで、周波数fに比例して、パスロス(path-loss、伝搬損失)が増加する。このため、高周波数帯のキャリアF2が用いられるスモールセルでは、MIMO(Multiple Input Multiple Output)、Massive MIMO(3次元(3D)/Massive MIMOともいう)などによるビームフォーミングを適用することで、パスロスを補償することが検討されている。
【0014】
ここで、ビームフォーミング(BF)とは、複数のアンテナ素子において、それぞれの送受信信号に対して振幅、位相を制御することによって、送受信ビームに指向性を持たせ、かつビームの形状を変更できる技術である。このビームフォーミングにおいては、一般にアンテナ素子数が多いほど高度な制御が可能である。言い換えると、アンテナ素子数に応じてビーム数、各ビームの形状(水平面におけるビームの幅、垂直面におけるビームの幅等)、ビームの方向及び利得を詳細に制御できる。例えば、ビームの幅を狭くすること(すなわち、細いビームを形成すること)により、高い利得(電力密度)を得ることができる。
【0015】
Massive−MIMO伝送方式では、多数(例えば、100個以上)のアンテナ素子を用いてデータを送信することでデータレート(周波数利用効率)を向上させる。大量のアンテナ素子を用いてデータを送信することから、少数のアンテナ素子を用いる場合と比べて多重化に伴う伝送効率を改善でき、従来よりも高速な無線通信が可能となる。また、多数のアンテナ素子の組合せにより高度なビームフォーミングが可能となる。
【0016】
図1に示すネットワーク構成において、ユーザ端末(UE)は、マクロセル内に位置する場合にはマクロ基地局と通信可能に構成され、スモールセル内に位置する場合にはスモール基地局と通信可能に構成される。また、スモールセル内に位置する場合にはスモール基地局に加えてマクロ基地局とも通信可能に構成されても良い。このように、利用周波数の異なる複数の無線通信システムを同時に用いて通信することを、リンクアグリゲーション(Link aggregation)とも呼ぶ。なお、本実施の形態におけるユーザ端末は、移動端末装置も固定端末装置も含む。
【0017】
図1に示すネットワーク構成において、マクロ基地局及びスモール基地局は、上位局装置(中央制御局、上位ノードとも呼ばれる)と接続される。この上位局装置は、コアネットワークに接続される。中央制御局には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)等が含まれる。なお、上位局装置の一部又は全部の機能をマクロ基地局に設けた構成としてもよい。
【0018】
ところで、従来の無線通信システムでは、1つの移動体(例えば、電車、バス、船など)内に存在する多数の端末における移動通信(グループモビリティ、Group mobility)において、各端末が個別に無線基地局との通信を行う。その結果、制御信号による負荷、端末間干渉などによってシステムパフォーマンスが低下してしまう恐れがあった。
【0019】
例えば、
図1において、移動体がマクロセル境界を通過する場合には、移動体内の各ユーザ端末がハンドオーバを一斉に実施するため、ハンドオーバを制御するためのプロセスが大量に発生してしまい、システムパフォーマンスが低下する。
【0020】
また、移動体の移動に伴う高速なチャネル変動により、無線基地局及び移動体内のユーザ端末が正確なプリコーディングを行うことができない場合、端末間干渉が生じ、通信パフォーマンスが低下する。また、移動体内のユーザ端末は、高速変動するチャネルに追従するために、無線基地局から送信される参照信号を用いたチャネル推定を頻繁に行う必要があるが、多数のユーザ端末がそれぞれ独自にチャネル推定する場合、参照信号の送信や、チャネル状態情報(CSI)のフィードバックによるオーバヘッドが大きく、システムパフォーマンスが低下する。
【0021】
このように、複数のユーザ端末を含んだ移動体の移動に伴って高密度なトラフィック(通信量)の発生源が移動することとなる。そのため、移動体の移動経路周辺の無線基地局においては、移動体がセル内に存在する場合(特に、移動体が外部からセルに入ってきた場合)には高負荷が発生し、移動体がセル外に移動すると負荷が急激に減少する。したがって、無線通信システムのネットワークが不安定となってしまう恐れがあった。
【0022】
そこで、本発明者らは、グループモビリティに対して、移動体内のユーザ端末に係る通信を専用システムによりオフロードすることで、既存の無線通信システムへの負荷を軽減できることを着想し、本発明に至った。この構成によれば、ユーザ端末に変更を加えることなく、無線通信システム全体のシステムパフォーマンスを向上することが可能となる。
【0023】
以下、本実施の形態に係る無線通信システムを詳細に説明する。
図2は、本実施の形態に係る無線通信システム(無線通信システム100)の概略構成図である。
図2に示す無線通信システム100は、例えば、LTEシステム、LTE−Aシステム、IMT−Advanced、4G、FRA(Future Radio Access)などであっても良い。以下では、本実施の形態について、移動体が電車である場合を例に説明するが、これに限られるものではない。
【0024】
図2に示すように、無線通信システム100は、移動体110と、移動体110に搭載されるGM移動局120と、GMセル180(180a、180b)を形成するGM基地局130と、マクロセルを形成するマクロ基地局140と、スモールセルを形成するスモール基地局150と、移動体110に内包される複数のユーザ端末160と、から構成される。本実施の形態に係る無線基地局(以下、専用基地局とも呼ぶ)は、GM基地局130であり、本実施の形態に係る無線移動局(以下、専用移動局とも呼ぶ)は、GM移動局120である。なお、
図2では、簡単のため、マクロセル及びスモールセルは省略している。また、本実施の形態に係る無線通信システムの構成は、
図2に示した構成に限られない。例えば、マクロ基地局140及びスモール基地局150の一方又は双方がない場合であっても適用可能である。
【0025】
移動体110は、所定の経路を移動する物体である。移動体110は、例えば、電車、バス、船などである。
【0026】
GM移動局120は、移動体110に設置され、移動体110内部に含まれるユーザ端末160と、GM基地局130、マクロ基地局140及びスモール基地局150との通信を中継する。
【0027】
GM移動局120の送受信アンテナは、複数のアンテナ素子を有するMIMO構成であることが好ましい。当該構成により、ビームフォーミングを利用して、移動体110の移動に伴う各基地局の相対的な位置の変化に好適に追従することができ、安定した通信品質を保証することが可能となる。また、より多数のアンテナ素子(例えば、アンテナ素子数が1024個)を有するMassive−MIMO構成であれば、さらに高度なビームフォーミングが可能で、さらに高い品質の通信が可能である。
【0028】
GM基地局130は、移動体の移動経路をカバーするセル(GMセル)を形成する基地局であり、移動体110の移動経路に沿って設置される。GM基地局130は、移動体110に搭載されるGM移動局120を介してユーザ端末160との通信を行う。また、GM基地局130を、GM移動局120用の専用基地局として利用することも可能である。GM基地局130は、移動体110の移動経路に沿って、複数設置されても良い。
図2においては、GMセル180aを形成するGM基地局130a及びGMセル180bを形成するGM基地局130bの2つのGM基地局が設置されている。
【0029】
GM基地局130の設置場所は、移動体110の移動経路に近く、移動経路を広くカバーできることが好ましい。例えば、移動体110が電車である場合には、GM基地局130の設置場所として線路の脇が好適である。なお、本実施の形態に係る無線通信システムの構成は、
図2に示した構成に限られない。例えば、
図2においては、GMセル180a及び180bは重なる部分があるが、本実施の形態は、GMセル同士がオーバラップしない場合にも適用できる。
【0030】
GM基地局130の送受信アンテナは、複数のアンテナ素子を有するMIMO構成であることが好ましい。当該構成により、ビームフォーミングを利用して、移動体110の移動に好適に追従し、安定した通信品質を保証することが可能となる。また、より多数のアンテナ素子(例えば、アンテナ素子数が1024個)を有するMassive−MIMO構成であれば、さらに高度なビームフォーミングが可能となり、さらに高い品質の通信が可能である。
【0031】
マクロ基地局140は、相対的に広いカバレッジを有するセル(マクロセル)を形成する無線基地局であり、GM移動局120及びユーザ端末160と通信することができる。なお、マクロ基地局は、eNodeB(eNB)、無線基地局、送信ポイント(transmission point)などと呼ばれてもよい。
【0032】
スモール基地局150は、局所的なカバレッジを有するセル(スモールセル)を形成する無線基地局であり、GM移動局120及びユーザ端末160と通信することができる。なお、スモール基地局は、RRH(Remote Radio Head)、ピコ基地局、フェムト基地局、Home eNodeB、送信ポイント、eNodeB(eNB)などと呼ばれてもよい。また、スモール基地局150は、Massive−MIMO伝送方式により通信を行うことができるMassive−MIMO基地局であっても良い。また、ロードバランスを考慮した結果、移動体110が接近した場合、GM移動局120およびユーザ端末160と通信しないように、移動経路に対するスモールセルのカバレッジエリアを一時的に縮小することも可能である。
【0033】
本実施の形態において、マクロセル及びスモールセルは、GMセルと比較して、周波数、通信方式及びカバレッジエリアのうち少なくとも1つが異なるセルである。したがって、GMセルはマクロセル及びスモールセルと低干渉の通信が実現できる。通信方式としては、例えばLTE、LTE−A、IMT−Advanced、4G、FRAと呼ばれる通信方式が利用できる。なお、通信方式はこれに限られない。
【0034】
GM基地局130、マクロ基地局140及びスモール基地局150は、それぞれ上位局装置に接続され、上位局装置を介してコアネットワークに接続される。なお、上位局装置には、例えば、アクセスゲートウェイ装置、無線ネットワークコントローラ(RNC)、モビリティマネジメントエンティティ(MME)などが含まれる。また、GM基地局130、マクロ基地局140及びスモール基地局150は、それぞれ基地局間で有線接続されてもよいし、無線接続されてもよい。
【0035】
ユーザ端末160は、LTE、LTE−A、FRAなどの各種通信方式に対応した端末であり、移動通信端末だけでなく固定通信端末を含んでよい。また、ユーザ端末160は、GM移動局120、マクロ基地局140及びスモール基地局150と単独で通信可能である。
【0036】
(GM移動局の基本構成)
図3を参照して、本実施の形態に係るGM移動局の基本構成を説明する。
図3は、本実施の形態に係るGM移動局の概略説明図であり、移動体110における1つの車両111にGM移動局120が配置される場合を例に説明する。本実施の形態においては、1つの移動体110に対して1つのGM移動局120が設置される。ただし、これに限られず、1つの移動体110に対して複数のGM移動局120を設置する構成としても良い。
【0037】
GM移動局120は、MIMOを構成するために多数のGMセル用アンテナ素子を有する。ここで、GMセル用アンテナ素子数は、GM基地局が具備するアンテナ素子数と同等であることが好ましい。また、GMセル用アンテナ素子は、移動体の全体に均等に分散して配置されることが好ましい。例えば、1024素子のGMセル用アンテナ素子を16両で構成される車両に配置する場合には、各車両に64素子ずつアンテナ素子を配置する構成とすることができる。
【0038】
このようなアンテナ素子の分散配置により、分散アンテナMIMOによる空間多重効果が得られると共に、GMセル間のハンドオーバを好適に行うことができる。なお、アンテナ素子の配置及び配線に係るコスト低減を優先させたい場合には、アンテナ素子を集中して配置しても良い。特に、1箇所に集中配置することにより、設置に係るコストを好適に低減することができる。
【0039】
また、GM移動局120は、マクロセル用、スモールセル用のアンテナ及び送受信機を搭載しており、マクロセル及びスモールセルの信号を移動体内に中継する。これにより、ユーザ端末の通信に係る接続の安定性を保証すると同時に、マクロセル及びスモールセルと複数のユーザ端末との通信をGM移動局120が統括することで、各ユーザ端末が個別に各セルと通信する場合に比べて、マクロセル、スモールセルが要する制御信号、参照信号などの通信オーバヘッドを削減することができる。また、このような構成を採用することで、C/U-planeを好適に分離することができ、処理能力と回線容量を適切に変更することが可能となる。
【0040】
なお、マクロセル、スモールセル用のアンテナは、
図3に示すように1つの移動体110に1つずつのみ配置しても良いし、1つの移動体110に複数設置して、空間的ダイバーシティ効果又は空間多重化効果などにより外部からの受信性能を向上しても良い。
【0041】
ここで、GM移動局120におけるユーザ端末への信号及びユーザ端末からの信号の中継方法としては、DF(Decode and Forward)型中継技術及びAF(Amplifier and Forward)型中継技術を利用する。ただし、信号の中継方法はこれに限られない。
【0042】
DF型中継技術は、DFリレー、レイヤ2リレーなどとも呼ばれる。DF型中継技術は、受信したRF(Radio Frequency)信号を復調及び復号した後、送信先に適した形式で再度符号化及び変調を行い、送信する中継技術である。例えば、GMセルから受信した信号を、ユーザ端末160が利用可能で、最適な通信形式で送信する。DFリレーによれば、雑音を好適に除去することができる。また、移動体110内部においては、ユーザ端末の移動が少なく、無線伝搬路が比較的に安定していると考えられるため、移動体110内部の伝搬路に応じた最適な通信方法を用いることにより、通信スループット改善効果が期待できる。
【0043】
DF型中継を行う場合、GM移動局120は移動体110内部に対して、一般的に言う基地局の役割を果たす。具体的には、移動体110内部の多数のユーザ端末の通信(トラフィック)を一旦GM移動局120にて集約する。ユーザ端末は、GM移動局120を基地局として認識し、通常の基地局との通信と同じように、GM移動局に対して通信を行う。さらに、GM移動局は、移動体外部のGM基地局、マクロ基地局、スモール基地局などに対して、一つの移動局として振る舞い、内部のユーザ端末から一旦集約した通信(トラフィック)をGM基地局などに対し行う。複数ユーザ端末の通信を一旦集約することによって、ユーザ端末における制御信号(C−Plain)によるオーバヘッドを削減し、通信スループットを改善することが可能である。
【0044】
移動体110は、所定の車両に張り出した内部用アンテナを有する。当該内部用アンテナは、各車両に具備されることが好ましいが、少なくとも1つの車両に具備されていれば良い。GM移動局120が信号をDFリレーで中継する場合には、内部用アンテナを介して、所定の無線伝送技術を用いて移動体内部のユーザ端末と無線通信を行う。当該無線伝送技術としては、例えば、IEEE802.11規格に準拠した無線LANを用いることができる。なお、これに限られず、移動体110内にGM移動局120と有線接続するための通信用コネクタを有し、ユーザ端末を当該通信用コネクタに接続することで、GM移動局120と有線通信を行っても良い。また、移動体110内の照明(LED照明、有機EL照明など)によって、可視光線帯域の電磁波を用いた可視光通信などを利用しても良い。
【0045】
AF型中継技術は、AFリレー、レイヤ1リレーなどとも呼ばれる。AF型中継技術は、受信したRF信号を電力増幅して送信する中継技術である。GM移動局120がマクロセル用、スモールセル用アンテナを各車両に張り出している場合には、AF型中継技術が好適である。AFリレーは、低コストな機器で実現することができると共に、低遅延、低消費電力の通信に好適である。さらに、マクロセルとの通信が少ない電力で可能になるため、移動体外に存在するマクロセルに在圏するユーザ端末への干渉低減効果もある。
【0046】
GM移動局が信号をAFリレーで中継する場合には、DFリレーの場合と同様に、所定の車両に張り出したアンテナを用いてユーザ端末と無線通信を行う。
【0047】
(移動体内の端末動作)
次に、
図4を参照して、本実施の形態に係るユーザ端末と各基地局との通信の動作を説明する。
図4は、本実施の形態に係るユーザ端末と各基地局との通信の動作の説明図であり、移動体110における1つの車両111にGM移動局120が配置される場合を例に説明する。
【0048】
移動体内のユーザ端末と各基地局との接続形態(以下、接続形態と呼ぶ)は、ユーザ端末の接続要求やネットワーク状態などに基づいて制御する。本実施の形態に係るユーザ端末の接続形態としては、GM移動局、従来システムなどとの接続の有無により、様々な形態が考えられるが、一般的に考えられる例として、以下の3つが選択可能である。
【0049】
第1の接続形態は、基本形態である。第1の接続形態では、ユーザ端末はGM移動局とのみ接続し、マクロ基地局やスモール基地局との直接の通信は行わない。
図4においては、ユーザ端末160b−160eが、第1の接続形態で通信を実施している。なお、ユーザ端末160bは、後述する第2の接続形態から第1の接続形態に切り替わった直後の状態であり、マクロセル、スモールセルへの接続は切断し、GM移動局120とのみ接続している。また、ユーザ端末106eは、有線によりGM移動局120と接続している。
【0050】
第2の接続形態は、高パフォーマンス形態である。第2の接続形態では、ユーザ端末はGM移動局との接続に加えて、マクロ基地局及び/又はスモール基地局とも接続する。つまり、第2の接続形態において、ユーザ端末は、複数の無線通信回線を束ねた通信(リンクアグリゲーション)を実施することになる。したがって、第2の接続形態を利用することにより、ユーザ端末においては、GM移動局とユーザ端末の連携による通信パフォーマンスの向上が達成できる。
図4においては、ユーザ端末160fが、第2の接続形態で通信を実施している。また、第2の接続形態において、ユーザ端末はマクロ基地局/スモール基地局と直接接続する代わりに、GM基地局がAFリレーする信号により当該基地局と通信を行っても良い。
【0051】
第3の接続形態は、低パフォーマンス形態(低消費電力形態)である。第3の接続形態では、ユーザ端末はGM移動局からのAFリレーによってマクロセルと接続する。なお、DFリレーは第1、第2の接続形態で利用される。第3の接続形態においては、GM移動局がない場合に比べて、ユーザ端末においてマクロ基地局からの信号の受信強度を大きくすることができるため、ユーザ端末の信号受信に係る消費電力が削減可能である。また、マクロセルとの通信が少ない電力で可能になるため、マクロセルに在圏する移動体外のユーザ端末への干渉低減効果もある。
図4においては、ユーザ端末160aが、第3の接続形態で通信を実施している。
【0052】
上記3つの接続形態は、上位局装置からの制御情報、GM移動局の設定情報又はユーザ端末の接続要求に基づいて決定する。また、接続形態は、本実施の形態ではGM移動局によって決定され、ユーザ端末に通知されるが、これに限られない。例えば、GM基地局又は上位局装置によって決定され、GM移動局を介してユーザ端末に接続形態を指定する構成としても良い。
【0053】
図5に、本実施の形態に係るユーザ端末の接続形態決定に係るフローチャートを示す。なお、
図5におけるフローチャートにおいては、GM移動局が通信可能な基地局として、GM基地局及びマクロ基地局がある場合を想定しているが、スモール基地局があっても良い。スモール基地局がある場合は、
図5の各処理において「マクロ基地局」を「スモール基地局」又は「マクロ基地局/スモール基地局」と読み替えることができる。
【0054】
まず、ユーザ端末は、GM移動局と接続する(ステップST10)。ユーザ端末がGM移動局と接続を確立できた場合に、フローチャートの以降のステップを実施するものとする。なお、ユーザ端末がGM移動局と接続が確立できない場合は、ユーザ端末は、GM移動局によらず、個別にマクロセルやスモールセルとの通信を実施する。
【0055】
GM移動局は、接続が確立されているユーザ端末の接続形態を、上述した第1−第3の接続形態から選択する。ここで、ユーザ端末の接続形態の選択は以下の3つの少なくとも1つに基づいて実施する。なお、接続形態の選択は、特定のユーザ端末に対して行っても良いし、複数のユーザ端末に対して行っても良い。
【0056】
GM移動局が制御情報を受信した場合(ステップST20)、ユーザ端末の接続形態の選択を実施する(ステップST30)。例えば、上位局装置から、各基地局を介して制御情報を受信した場合に、接続形態の選択を実施する。この場合、ユーザ端末の接続形態は、上位局装置が選択しても良いし、上位局装置からの制御情報を受信したGM基地局が選択しても良いし、いずれかの基地局から制御情報を受信したGM移動局が選択しても良い。また、制御情報は、ユーザ端末の接続形態の選択に利用することができる情報であれば良く、形式は特に限定されない。例えば、制御情報は、所定の接続形態に変更するように指示する情報であっても良いし、特定のユーザ端末の通信性能を増大させる又は低減させるように指示する情報であっても良い。
【0057】
また、GM移動局の設定に基づいて(ステップST21)、ユーザ端末の接続形態の選択を実施する(ステップST30)。例えば、接続が確立されているユーザ端末のトラフィック量をGM移動局が観測している場合には、トラフィック量が増加してきたなどの環境に応じて特定のユーザ端末の接続形態を変更することができる。なお、GM移動局の設定に基づく接続形態の選択は、任意のタイミングで実施しても良い。
【0058】
また、GM移動局がユーザ端末から接続要求を受けた場合(ステップST22)、ユーザ端末の接続形態の選択を実施する(ステップST30)。例えば、新しいユーザ端末からの接続要求を受けた場合、既に接続済みのユーザ端末を考慮に入れて、各ユーザ端末の接続形態を変更することができる。なお、ステップST22は、ステップST10と同時に並行して実施しても良い。
【0059】
ユーザ端末の接続形態が決定したら、次に当該接続形態が基本形態であるか否かを判定する(ステップST40)。接続形態が基本形態であると判定された場合(ステップST40−YES)、ユーザ端末はマクロ基地局との直接接続を確立済みであれば、当該接続を切断する(ステップST50)。
【0060】
一方、接続形態が基本形態でないと判定された場合(ステップST40−NO)、次に接続形態が高パフォーマンス形態であるか否かを判定する(ステップST41)。接続形態が高パフォーマンス形態であると判定された場合(ステップST41−YES)、ユーザ端末はマクロ基地局との直接接続を確立していなければ、当該接続を確立する(ステップST51)。
【0061】
ステップST50又はST51の後、GM移動局はGM基地局及び/又はマクロ基地局との接続を適宜確立する(ステップST60)。なお、特定のユーザ端末はGM基地局と接続し、他のユーザ端末はマクロ基地局と接続するなど、接続の構成は適宜変更することができる。
【0062】
また、接続形態が高パフォーマンス形態でないと判定された場合(ステップST41−NO)、接続形態は低パフォーマンス形態(低消費電力形態)である。したがって、ユーザ端末はマクロ基地局との直接接続を確立済みであれば、当該接続を切断する(ステップST52)。また、GM移動局はマクロ基地局からの信号及びマクロ基地居への信号をユーザ端末にAFリレーする(ステップST62)。
【0063】
なお、GM移動局は、ユーザ端末及び/又は各基地局からの通信をバッファする構成を有しても良い。基地局からGM移動局への下り通信の場合、GM移動局は、ユーザ端末が所望する大容量なデータの一部を事前に基地局より取得し、バッファすることによって、GM基地局などがカバーしていない場所に移動体が移動するなどして通信が中断された場合においても、事前にバッファに保存されたデータをユーザに提供し続けることが可能である。また、上り通信の場合、GM基地局などがカバーしていない場所に移動体が移動するなどしてGM基地局などとの通信が中断された場合、端末からのデータを一旦バッファに保存し、通信が回復した場合に、適切な送信先に送信することができる。
【0064】
具体的には、移動体がGMセルのカバレッジエリア外(つまり、GMセルと通信不可能な地理的位置)に存在する場合には、GM基地局との通信を中継していたユーザ端末に対して、上りの送信データをバッファしておいて、再び移動体がGMセルのカバレッジエリア内に移動した際に、当該バッファしたデータをGM基地局に送信しても良い。また、GM移動局がGMセルからユーザ端末への通信を中継できない場合には、GM基地局からの下りの送信データをバッファしておいて、再びGM移動局がユーザ端末に対して通信を中継できるようになった際に、当該バッファしたデータをユーザ端末に送信しても良い。
【0065】
以上、本実施の形態に係る無線通信システムによれば、グループモビリティに対して、移動体内のユーザ端末に係る通信を専用システムによりオフロードすることで、既存の無線通信システムへの負荷を軽減でき、無線通信システム全体のシステムパフォーマンスを向上することが可能となる。
【0066】
(GM基地局及びGM移動局の無線制御)
図6を参照して、本実施の形態に係るGM基地局及びGM移動局の無線制御に係る動作を説明する。
図6は、本実施の形態に係るGM基地局及びGM移動局の無線制御に係る動作の説明図であり、移動体110(電車)が移動経路(線路)に沿って左から右に移動する場合において、GM基地局及びGM移動局の形成するビーム、そして当該ビームに対応するウェイトが示されている。
【0067】
本実施の形態に係るGM基地局は、ビームフォーミング(BF)により形成したビームを用いて、GM移動局と通信する。ここで、当該ビームは、GM基地局がカバーする移動局の移動経路の形状、幅、移動方向などに応じて事前に決定されたBF用固定ウェイト(以下、固定ウェイトと呼ぶ)から適切なものを選択して形成されることが好ましい。なお、移動体がGM用アンテナを複数搭載しており、当該複数のアンテナが異なる車両にあるなど離れて配置される場合には、各アンテナに対して複数のビームを同時に送受信して多重化することにより、空間的ダイバーシティ効果、空間多重化効果などを得ることができる。
【0068】
GM基地局のビーム形成のウェイトは、上記の固定ウェイトを一定時間間隔で切り替えることにより選択しても良い。例えば、移動体が規則に従って移動している場合(時刻表通りに電車が運行している場合など)には、移動体が所定の時刻に存在する地理的位置は特定可能であるため、一定時間間隔での切り替えが好適である。
【0069】
図6に示すように、線路に移動体110(電車)が左側から移動してきた場合を例に説明する。この際、GM基地局130は移動体110が搭載するGM移動局120の位置を把握し、ウェイトW
1によりビームを形成する。その後、所定の時間間隔毎にウェイトの更新を実施し、ウェイトW
2、W
3、…、W
Nというように、適宜ウェイトを変更しつつGM移動局120との通信を実施する。ここで、NはGM基地局130に規定されている固定ウェイトの個数である。
【0070】
また、ウェイト形成については、GM移動局が中継するトラフィック量、GM移動局が中継するトラフィック構成、移動体の種類、移動体の車両構成、移動体の移動速度、移動体の移動方向などに応じて、適応的に制御される構成としても良い。以下、適応的に制御されるBF用ウェイトを適応的ウェイトと呼ぶ。
【0071】
ここで、GM移動局が中継するトラフィック量及びトラフィック構成は、GM移動局の中で通信データを観測することにより、取得することができる。トラフィック量としては、通信データの情報量を用いても良いし、単位時間当たりの通信データの情報量を用いても良い。また、トラフィック構成とは、例えば、動画データが多い、特定のサイトに接続するユーザ端末が多いなどのトラフィック内容に関する直接的又は間接的なデータのことをいう。また、トラフィック量及びトラフィック構成については、移動体全体についての情報でなく、移動体の所定の部分についての情報であっても良い。例えば、車両2両目の通信量が多いという情報であっても良い。トラフィック量及びトラフィック構成に基づくことにより、将来の通信量を予測して事前にビームを強くしておくなどの制御が可能となる。
【0072】
移動体の種類としては、例えば、「電車」や「バス」のような大まかな情報であっても良いし、「所定の路線の特急電車」のような詳細な情報であっても良い。また、移動体の車両構成は、例えば「16両編成」のような単に車両数を示した情報であっても良いし、GM用アンテナが搭載された車両の位置や、当該車両におけるアンテナの数を示す情報であっても良い。
【0073】
さらに、移動体の種類、車両構成、移動速度及び移動方向などは、GM基地局又はGM移動局に設置されたセンサ(カメラ、レーダ、赤外線など)により取得しても良いし、移動体の位置情報、ドップラーシフトによる推定、制御情報などから取得する構成としても良い。また、移動速度及び移動方向をセンサで容易に取得できるようにするために、移動体にマーカなどの目標を設置しても良い。また、目標として、移動体の種類、車両構成などの情報を含んだバーコードなどを利用することで、高速な移動体であっても、上記情報をカメラなどによって好適に取得することができる。さらに、移動体の移動速度、移動方向などのリアルタイムな情報を電子的に表示できる装置(例えば、液晶ディスプレイなど)によって表示し、カメラなどによる認識で情報取得することも可能である。
【0074】
なお、GM移動局が中継するトラフィック量、GM移動局が中継するトラフィック構成、移動体の種類、移動体の車両構成、移動体の移動速度、移動体の移動方向などの適応的ウェイトの生成に利用される情報は、固定ウェイトを決定するために利用しても良い。また、上記情報のうち、GM移動局で観測されるものについては、GM移動局がGM基地局及び/又は既存システムの基地局に送信して、これらの基地局及び上位局装置で利用する構成としても良い。例えば、上記情報をGM移動局がマクロ基地局に送信し、マクロ基地局が上位局装置に通知し、上位局装置がGM基地局に通知することで、GM基地局は接続を確立していないGM移動局についても適切にウェイトを選択することが可能となる。
【0075】
適応的ウェイトとしては、ビーム種類(ビーム幅、ビームの送信電力など)を変えても良い。例えば、移動体の移動速度が高速である場合には、ビーム幅を広くし、移動体の移動速度が低速である場合には、ビーム幅を狭くするように構成しても良い。
【0076】
また、適応的ウェイトとして、ウェイトの切り替え間隔を変更しても良い。例えば、移動体の移動速度が高速である場合には、切り替え間隔を短くし、移動体の移動速度が低速である場合には、切り替え間隔を長くするように構成しても良い。
【0077】
また、上述した固定ウェイト及び適応的ウェイトを組み合わせて利用しても良い。例えば、移動体がGM基地局のカバレッジエリアの端に入ってきたときは、固定ウェイトにより初期接続を行い、その後のウェイトは適応ウェイトを算出して利用するという2段階のビームフォーミングを用いても良い。
【0078】
また、固定ウェイト及び適応的ウェイトを環境によって使い分けても良い。例えば、GM基地局からGM移動局を見たときの遮蔽物の有無、移動体の移動経路周囲の見通しの有無、電波の散乱物の有無などによって、使い分けを行っても良い。
【0079】
一方、本実施の形態に係るGM移動局は、ビームフォーミングにより形成したビームを用いて、GM基地局と通信する。ここで、当該ビームは、GM基地局の方向に向けてビームフォーミングされる。GM基地局の方向は、制御情報やデータベースによって取得することができる。例えば、上位局装置から、マクロ基地局を介してGM基地局の地理的位置に関する情報を受信しても良い。また、移動体の移動経路に基づいて、移動体が所定の時刻に存在する地理的位置を予めデータベース化した情報をGM移動局が保持し、現在の時刻やGM移動局の地理的位置に基づいてGM基地局の位置情報を推定しても良い。なお、各基地局やGM移動局の地理的位置に関する情報の取得としては、例えばGPS(Global Positioning System、全地球測位システム)、測域センサ(レーザスキャナとも呼ぶ)などを用いることができる。
【0080】
GM移動局のビームフォーミング用のウェイトは、GM基地局の地理的位置及び移動体(若しくはGM移動局)の地理的位置に関する情報をGM基地局が取得し、当該情報に基づいて、事前に決定された固定ウェイトから適切なものを選択してビーム形成されることが好ましい。なお、固定ウェイトは、移動体から見てGM基地局が存在する可能性がある方向に対してビーム形成ができるウェイトが選択可能であれば良い。例えば、GM基地局が移動体の進行方向に対して右方向にのみ配置される構成となっている場合には、固定ウェイトは右方向のビームが形成可能なよう設定されていれば良い。
【0081】
GM移動局のビーム形成のウェイトは、上記の固定ウェイトを一定時間間隔で切り替えることにより選択しても良い。例えば、移動体が所定の規則に正常に従って移動している場合(時刻表通りに電車が運行している場合など)には、所定の時刻における移動体から見たGM基地局の地理的位置は特定可能であるため、一定時間間隔での切り替えが好適である。また、この場合には、所定の時刻におけるGM基地局及びGM移動局の相対的な位置関係は、センサなどで測定するまでもなく既知であるため、GM基地局及びGM移動局の地理的位置に関する情報は、一方或いは両方がなくてもビーム形成を適切に行うことが可能である。なお、上述した両方の地理的位置に関する情報を必要としない場合であっても、時刻に関連して、間接的にではあるが地理的位置に基づいてビーム形成をしていることは明確である。
【0082】
図6に示すように、線路に移動体110(電車)が左側から移動してきた場合を例に説明する。この際、GM移動局120はGM基地局130の位置を把握し、ウェイトW
2’によりビームを形成する。その後、
図6中の移動経路の中央付近に移動体110が位置する場合にはウェイトW
1’を利用し、さらに右に移動した場合にはW
M’を使用する。このように、適宜ウェイトを変更しつつGM基地局130との通信を実施する。ここで、MはGM移動局120に規定されている固定ウェイトの個数である。
【0083】
また、ウェイト形成については、GM基地局の場合と同様に、GM移動局が中継するトラフィック量、GM移動局が中継するトラフィック構成、移動体の種類、移動体の車両構成、移動体の移動速度、移動体の移動方向などに応じて、適応的ウェイトにより構成しても良い。また、GM移動局において、GM基地局からの無線信号をチャネル推定した結果に基づいて、適応的ウェイトを利用する構成としても良い。
【0084】
また、固定ウェイト及び適応的ウェイトを組み合わせて利用しても良い。例えば、固定ウェイトにより初期接続を行い、その後のウェイトは適応的ウェイトを算出して利用するという2段階のビームフォーミングを用いても良い。
【0085】
(GM移動局及びGM基地局の構成)
以下、本実施の形態に係るGM移動局及びGM基地局の構成について
図7−9を参照して説明する。
【0086】
図7は、本実施の形態に係るGM移動局の全体構成図である。
図7に示されるように、本実施の形態に係るGM移動局120は、GM移動局制御部121及び、GMセル用通信部122、既存システム用通信部123、移動体内用通信部124と、を具備する。
【0087】
GM移動局制御部121は、ユーザ端末と各基地局との通信を中継すると共に、GM移動局全体の制御を行う。特に、端末の接続形態の決定を実施する。また、送受信データをバッファする機能を有しても良い。また、GMセル用通信部122に対してビームフォーミングのパラメータを指示する機能を有しても良い。
【0088】
また、GM移動局制御部121は、ユーザ端末の接続形態を決定することができる。具体的には、ユーザ端末の接続形態の選択は、GMセル用通信部122又は既存システム用通信部123から制御情報を受信した場合に実施しても良いし、GM移動局の設定に基づいて実施しても良いし、移動体内用通信部124を介してユーザ端末から接続要求を受けた場合に実施しても良い。
【0089】
また、GM移動局制御部121は、GM基地局の位置を取得する機能を有することが好ましい。例えば、既存システム用通信部123を介して、上位局装置からGM基地局の位置に関する情報を受信することができる。また、GM移動局120の搭載される移動体の移動経路周辺に置局されているGM基地局の位置に関する情報を、事前に保持していても良い。また、GM移動局制御部121は、自局の位置、つまり移動体の位置を取得する機能を有することが好ましい。
【0090】
図8は、本実施の形態に係るGMセル用通信部又は既存システム用通信部の基本構成図である。GMセル用通信部122及び既存システム用通信部123は、ハードウェアの主要部構成は同じであるので、以下でこれらを区別しないときは、まとめて移動体外用通信部200と呼ぶ。
【0091】
移動体外用通信部200は、送受信アンテナ201(アンテナポート)と、アンプ部202と、送受信部203と、ベースバンド信号処理部204と、を備えている。なお、送受信アンテナ201はMIMO伝送のために複数アンテナから構成されるが、1つのアンテナから構成されても良い。
【0092】
下り信号については、複数の送受信アンテナ201で受信された無線周波数信号がそれぞれアンプ部202で増幅され、送受信部203で周波数変換され、ベースバンド信号処理部204に入力される。ベースバンド信号処理部204では、FFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)処理や、誤り訂正復号、再送制御の受信処理などがなされる。この下り信号に含まれるユーザデータは、GM移動局制御部121に転送される。また、下り信号の内、報知情報もGM移動局制御部121に転送される。
【0093】
一方、上りリンクのユーザデータについては、GM移動局制御部121からベースバンド信号処理部204に入力される。ベースバンド信号処理部204では、MAC(Medium Access Control)再送制御(例えば、HARQ(Hybrid ARQ)の送信処理)や、チャネル符号化、プリコーディング、DFT(Discrete Fourier Transform、離散フーリエ変換)処理、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform、逆高速フーリエ変換)処理などが行われて各送受信部203に転送される。送受信部203は、ベースバンド信号処理部204から出力されたベースバンド信号を無線周波数帯に変換する。その後、アンプ部202は、周波数変換された無線周波数信号を増幅して送受信アンテナ201により送信する。
【0094】
また、ベースバンド信号処理部204は、プリコーディングの際に送信ビームをビームフォーミングするためのウェイトを決定するBFウェイト決定部を有する。BFウェイト決定部は、ビームがGM基地局の方向に向けてビームフォーミングされるようにウェイトを決定する。ウェイトは、GM基地局及び/又はGM移動局の地理的位置に基づいて、事前に規定された固定ウェイトを一定時間間隔で切り替えて選択しても良いし、環境に応じて適応的に制御される適応的ウェイトを算出して使用する構成としても良い。また、GM移動局において、GM基地局からの無線信号をチャネル推定した結果に基づいて、適応的ウェイトを利用する構成としても良い。
【0095】
ここで、適応的ウェイトは、GM移動局が中継するトラフィック量、GM移動局が中継するトラフィック構成、GM移動局が搭載される移動体の種類、移動体の車両構成、移動体の移動速度、移動体の移動方向などに応じて、制御することができる。また、固定ウェイト及び適応的ウェイトを組み合わせて利用しても良いし、環境によって使い分けても良い。また、チャネル状態を示すCSI(Channel State Information)などのGM基地局からのフィードバック情報や、アンテナ素子の重み付けに用いられるAOA(Angle of Arrival)やAOD(Angle of Departure)などに基づいて、ビームフォーミングを行っても良い。
【0096】
なお、GM移動局が中継するトラフィック量、GM移動局が中継するトラフィック構成、移動体の種類、移動体の車両構成、移動体の移動速度、移動体の移動方向などの情報を取得するために、カメラ、レーダ、赤外線などのセンサを具備しても良い。また、当該情報を、送受信アンテナ201を介してGM基地局及び/又は既存システムの基地局に送信して、これらの基地局及び上位局装置で利用する構成としても良い。
【0097】
また、送受信アンテナ201は、ビームフォーミングを形成するために、多数のアンテナ素子から構成されている。なお、既存システム用通信部123も、BFウェイト決定部を有していても良く、送受信アンテナ201が多数のアンテナ素子から構成されても良い。
【0098】
なお、上述した移動体外用通信部200は、DFリレーを利用する場合の構成である。AFリレーを利用する場合には、移動体外用通信部200は、送受信アンテナ201及びアンプ部202の処理を行えば良い。
【0099】
移動体内用通信部124は、GM移動局と移動体内部のユーザ端末との通信を実施する。本実施の形態では、移動体内用通信部124は、IEEE802.11関連の規格に従う無線LANによってユーザ端末と通信する。しかしながら、通信方式はこれに限られない。また、移動体内用通信部124は、有線通信用の通信部及びコネクタを有していても良く、ユーザ端末は所定のケーブルを用いてコネクタに接続することにより、移動体内用通信部124と有線通信を実施する構成としても良い。
【0100】
本実施の形態に係るGM基地局130は、GM基地局制御部及びGM基地局通信部(通信部)300を具備する。
【0101】
GM基地局制御部は、GM移動局を介したユーザ端末との通信及びGM基地局全体の制御を行う。また、GM基地局制御部は、GM基地局通信部300に対してビームフォーミングのパラメータを指示する機能を有しても良い。また、GM基地局制御部は、ユーザ端末の接続形態を決定することができる。具体的には、ユーザ端末の接続形態の選択は、上位局装置から制御情報を受信した場合に実施しても良いし、GM移動局からGM移動局の設定を受信して実施しても良いし、GM移動局を介してユーザ端末から接続要求を受けた場合に実施しても良い。
【0102】
また、GM基地局制御部は、GM移動局の位置を取得する機能を有することが好ましい。例えば、GM基地局がカメラ、レーダ、赤外線などのセンサを具備し、それらによりGM移動局の地理的位置に関する情報を取得しても良い。
【0103】
図9は、本実施の形態に係るGM基地局通信部の基本構成図である。本実施の形態に係るGM基地局通信部300は、MIMO伝送のための複数の送受信アンテナ301と、アンプ部302と、送受信部303と、ベースバンド信号処理部304と、呼処理部305と、を備えている。なお、複数の送受信アンテナ301は、Massive MIMO用のアンテナ素子で構成されてもよい。
【0104】
下りリンクによりGM基地局130からGM移動局120を介してユーザ端末160に送信されるユーザデータは、上位局装置から伝送路インタフェースを介してGM基地局制御部に入力された後、ベースバンド信号処理部304に入力される。
【0105】
ベースバンド信号処理部304では、PDCPレイヤの処理、ユーザデータの分割・結合、RLC(Radio Link Control)再送制御の送信処理などのRLCレイヤの送信処理、MAC再送制御、スケジューリング、伝送フォーマット選択、チャネル符号化、IFFT処理、プリコーディング処理が行われて各送受信部303に転送される。また、下り制御信号に関しても、チャネル符号化や逆高速フーリエ変換などの送信処理が行われて、各送受信部303に転送される。
【0106】
各送受信部303は、ベースバンド信号処理部304からアンテナ毎にプリコーディングして出力された下り信号を無線周波数帯に変換する。アンプ部302は、周波数変換された無線周波数信号を増幅して送受信アンテナ301により送信する。
【0107】
一方、上り信号については、各送受信アンテナ301で受信された無線周波数信号がそれぞれアンプ部302で増幅され、各送受信部303で周波数変換されてベースバンド信号に変換され、ベースバンド信号処理部304に入力される。
【0108】
ベースバンド信号処理部304では、入力された上り信号に含まれるユーザデータに対して、FFT処理、IDFT処理、誤り訂正復号、MAC再送制御の受信処理、RLCレイヤ、PDCPレイヤの受信処理がなされ、GM基地局制御部に出力された後、伝送路インタフェースを介して上位局装置に転送される。呼処理部305は、通信チャネルの設定や解放などの呼処理や、基地局の状態管理や、無線リソースの管理を行う。
【0109】
また、ベースバンド信号処理部304は、プリコーディングの際に送信ビームをビームフォーミングするためのウェイトを決定するBFウェイト決定部も有する。BFウェイト決定部は、ビームがGM移動局の方向に向けてビームフォーミングされるようにウェイトを決定する。ウェイトは、GM移動局(つまり、移動体)の移動経路に基づいて、事前に規定された固定ウェイトを一定時間間隔で切り替えて選択しても良いし、環境に応じて適応的に制御される適応的ウェイトを算出して使用する構成としても良い。また、送受信アンテナ301は、ビームフォーミングを形成するために、多数のアンテナ素子から構成されている。
【0110】
また、ウェイト形成については、GM移動局の場合と同様に、GM移動局が中継するトラフィック量、GM移動局が中継するトラフィック構成、移動体の種類、移動体の車両構成、移動体の移動速度、移動体の移動方向などに応じて、適応的ウェイトにより構成しても良い。また、固定ウェイト及び適応的ウェイトを組み合わせて利用しても良い。また、CSIなどのGM移動局からのフィードバック情報や、AOAやAODなどに基づいて、ビームフォーミングを行っても良い。
【0111】
以上のように、本実施の形態に係る無線通信システムによれば、グループモビリティに対して、移動体内のユーザ端末に係る通信を専用システムによりオフロードすることで、既存の無線通信システムへの負荷を軽減できる。この構成によれば、ユーザ端末に変更を加えることなく、無線通信システム全体のシステムパフォーマンスを向上することが可能となる。
【0112】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。従って、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。