(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突出抑制リブの先端は、衝突による変形が発生していない状態において、前記リブ部の表面側にある表面側フードモールの裏面と接触しない高さであることを特徴とする請求項1に記載のフードモール。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両1の前部には、
図5に示すように、エンジン等が収容されるエンジンルームの上面を覆うフード3が開閉可能に取り付けられている。
【0003】
フードの衝突時における歩行者等への損傷等をできる限り軽減することができるように、例えば、特許文献1においては、衝突時におけるフード3の変形等によって、フード3の前方のフードヒンジ部に締結されるボルト7の軸部先端が外側への突起となってしまうことを抑制するために、
図6に示すように、ボルト7の軸部先端を、蓋状部6hで包囲するようにすることが提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近では、
図5に示したように、フード3には、デザイン(意匠)的な観点などから、モール(フードモール)2が取り付けられることがあるが、かかるフードモール2としては、樹脂により一体成形された構造のものが主流となっている。
【0006】
ここで、デザイン(意匠)変更などの要請に応えるなどのために、フードモール2を長手方向(
図5において車幅方向)に拡張したい場合などにおいて、フードモール2を一体成形したのでは、製品の剛性などの面から表面にうねりなどが生じて見栄えが悪くなるなど、満足な品質等を得ることが難しくなるといったことが想定される。
【0007】
このような場合に、フードモールを厚さ方向において複数に分割して成形した後、これら複数の成形品を、ブラケット等を介在させつつ締結等の手法により組み立てるといったフードモール構造が採用され、かかるフードモール構造の採用によって、表面のうねりなどが改善された見栄えの良いフードモールの提供が可能となりつつある。
【0008】
上述したような分割式のフードモール構造の一例を、
図4に示すが、かかる分割式フードモール構造においては、表面側に配設される表面側フードモール20と、フード3(車両)側に取り付けられる側の車両側フードモール30と、を、ブラケット40を介してスクリュウ50により締結するようになっている。
【0009】
このような構成の分割式フードモール構造にあっては、従来のような樹脂一体成形のフードモール構造では問題となっていなかったが、衝突時におけるフード3の変形等によって、前記スクリュウ50の軸部先端51が外側への突起となってしまうことを抑制することが、歩行者保護の観点(衝突時における歩行者等への損傷等を軽減するといった観点)から必要である。
【0010】
このような観点からは、
図6に示したような技術を参考として、例えば、
図4に示したように、スクリュウ50の軸部先端51を、保護キャップ等の蓋状部60などで包囲することが想定され得る。
【0011】
しかしながら、蓋状部60を配設するスペース(例えば、
図4の隙間Hなど)を十分に確保できない場合が想定される。
更には、表面側フードモール20の裏側に別部材の蓋状部材60を取り付ける構造となるため、部品点数が増大すると共に蓋状部材60へのアクセスも難しく、組み立て工数が増大し、以って製品コストを低く維持することが難しくなるといったおそれがある。
【0012】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ低コストな構成でありながら、複数の部品を締結等によって一体的に構成する分割式フードモールにおいて、表面のうねりなどが抑制され見栄えが良い外観を提供することができると共に、衝突時における歩行者等への損傷等を軽減することができ歩行者等の保護に優れたフードモールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、
車両のフードに取り付けられるフードモールであって、
表面側に配設される表面側フードモールと、
車両のフード側に取り付けられる車両側フードモールと、
表面側フードモールの車両側フードモール側に取り付けられるブラケットと、
を含んで構成され、
前記表面側フードモールには、当該表面側フードモールから分岐して前記車両側フードモール側に突出して再び当該表面側フードモールに合流するリブ部が設けられていると共に、
前記表面側フードモールの前記車両側フードモール側に前記ブラケットを配置し、スクリュウを、前記リブ部に対して、前記車両側フードモール側から前記表面側フードモール側に向かってねじ込むことで、前記ブラケットを前記表面側フードモールに締結固定するようにしたものにおいて、
前記スクリュウの軸部を挟んで両側に、前記スクリュウの軸部先端より表面側に突出する突出抑制リブを、前記表面側フードモールのリブ部に設け
ると共に、
前記突出抑制リブは、前記スクリュウが螺合されるネジ部の周り止めとして機能するように形成される
ことを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記突出抑制リブの先端は、衝突による変形が発生していない状態において、前記リブ部の表面側にある表面側フードモールの裏面と接触しない高さであることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、複数の部品を締結等によって一体的に構成する分割式フードモールにおいて、表面のうねりなどが抑制され見栄えが良い外観を提供することができると共に、衝突時における歩行者等への損傷等を軽減することができ歩行者等の保護に優れたフードモールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る一実施の形態を、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0019】
本発明の一実施の形態に係る分割式フードモール100は、
図1に示すように、車両の表面側(外側)に配設される表面側フードモール120と、車両側に取り付けられる車両側フードモール130と、ブラケット140と、を含んで構成される。
【0020】
表面側フードモール120は、例えば比較的剛性の低いABS樹脂などの樹脂製とすることができ、車両側フードモール130は、比較的剛性の高いPP(ポリプロピレン)などの樹脂製とすることができる。
【0021】
ブラケット140は、アルミ、鉄、チタンなどの金属材料或いは比較的剛性の高い樹脂材料、更には炭素繊維などと樹脂材料(プラスチック)との複合材料などにより形成することができる。
【0022】
なお、表面側フードモール120を覆うように、装飾用の樹脂製フードモール160が嵌め合い係合等によって、表面側フードモール120の表面側に取り付けるように構成することも可能である。
【0023】
図2に示すように、車両側フードモール130は、車両の前部に開閉可能に取り付けられているフード110(エンジンフード或いはトランクフード)の先端部分に、従来同様の手法により取り付けられる。
【0024】
例えば、車両側フードモール130は、両面テープ、クリップ等による係合、スクリュウ等による締結等の従来同様の手法により、車両側のフード110に取り付けられることができる。
【0025】
そして、本実施の形態では、
図1、
図2に示すように、表面側フードモール120の両端付近の車両側(内側)には、ブラケット140を間に挟んで、車両側フードモール130がスクリュウ150により固定されるようになっている。
【0026】
スクリュウ150は、例えば、表面側フードモール120側に廻り止めされるように挿入固定される矩形のケースナット155のネジ止め孔155Aに螺合されるようになっている。
【0027】
ケースナット155は、例えば、
図1〜
図3に示すように、折り返された金属プレートにより構成されることができ、この折り返された金属プレートには、スクリュウ150と螺合可能なネジ止め孔155Aが形成されていると共に、折り返された金属プレートの開放端側を、
図1、
図3に示すように、横方向(表面側フードモール120の長手方向)から、表面側フードモール120のブリッジ状のリブ部121を挟み込むように装着することで、スクリュウ150をネジ止め孔155Aに螺合する際の廻り止めを行うことができるように取り付けられている。なお、表面側フードモール120のリブ部121には、スクリュウ150を通過させるための穴が開口されている。
【0028】
このように、ABSなどの樹脂製の表面側フードモール120より剛性の高いブラケット140を、表面側フードモール120と、車両側フードモール130と、の間に取り付けることにより、表面側フードモール120の両端付近の剛性が高められ、以って表面にうねりなどが生じることが抑制され、見栄えの改善に貢献することになる。
すなわち、ブラケット140は補強部材(補強プレート)として機能するものであり、本発明に係るブラケットの一例に相当する。
【0029】
両端にブラケット140が取り付けられて剛性が高められた表面側フードモール120のブラケット140が存在しない部分については、
図1に示すように、車両側フードモール130に、装着ボルト170を介して、取り付けられる。
【0030】
装着ボルト170は、その矩形の頭部171を、表面側フードモール120のリブ部122に、
図1に示したように、横方向(表面側フードモール120の長手方向)から装着されて取り付けられることで、装着ボルト170にナット180を締結する際における廻り止めがなされるようになっている。
【0031】
表面側フードモール120のリブ部122に取り付けられた装着ボルト170は、車両側フードモール130のリブ部131に設けられているボルト穴132に挿通された後、ナット180によって締結固定される。なお、装着ボルト170の頭部の表面側フードモール120側は、平坦に形成されることができる。
【0032】
また、表面側フードモール120の両端付近のリブ部123にも、同様の装着ボルト170が装着され、両端付近の装着ボルト170は、ぞれぞれ、ブラケット140に設けられているボルト穴141に挿通されて、ナット180によって締結固定されるようになっている。
【0033】
このように、表面側フードモール120とブラケット140とを、スクリュウ150、装着ボルト170により、車両側フードモール130に締結することで、表面側フードモール120と、車両側フードモール130と、が略一体化されて、車両のフード110に取り付けられることになる。
【0034】
なお、比較的長尺のフードモールであって、本実施の形態のように、比較的剛性の低い柔らかな表面側フードモール120を採用した場合であっても、その両端側を、比較的剛性の高いブラケット140を介して車両側フードモール130に取り付けることで曲げ剛性やねじり剛性を確保することができるようにしたので、表面のうねりなどが抑制され見栄えが良い外観を提供することができる。
【0035】
ここにおいて、本実施の形態では、スクリュウ150の軸部先端151が、衝突時におけるフード110や表面側フードモール120の変形等によって外側への突起となってしまうことを抑制して、衝突時における歩行者等への損傷等を軽減することができるように構成されている。
【0036】
具体的には、スクリュウ150が螺合されるケースナット155が装着される表面側フードモール120のリブ部121から、スクリュウ150の軸部先端151の先端側と同一方向に突出する突出抑制リブ200A,200Bが、リブ部121のケースナット155を挟んで両側に、例えば、樹脂成形等により、リブ部121と一体的に形成されている。
【0037】
なお、表面側フードモール120のリブ部121は、表面側フードモール120の裏面から一旦分岐して車両側フードモール130側に突出して再び表面側フードモール120の裏面に合流するようなブリッジ状の部分を有して構成されている。
【0038】
ところで、突出抑制リブ200A,200Bは、リブ部121延いては表面側フードモール120と一体成形することができるが、別体に形成した後、接着、係合などの方法により取り付けることで、一体的な構成とすることも可能である。
【0039】
また、突出抑制リブ200A,200Bは、
図2、
図3に示すように、ケースナット155の上下方向両側に配置されているので、ケースナット155のスクリュウ150の締結時における廻り止めとしての機能も兼ね備えることができる。
【0040】
このように、突出抑制リブ200A,200Bを、表面側フードモール120のリブ部121の幅方向(表面側フードモール120の長手方向)に沿って、かつ、ケースナット155の上下方向両側に延在させることで、ケースナット155と螺合されるスクリュウ150の軸部先端151の付近に突出抑制リブ200A,200Bを存在させるようにしたので、
図2に示すように、衝突等によって表面側フードモール120が変形した場合であっても、スクリュウ150の軸部先端151の先端が外側に突出することを効果的に抑制することができる。
【0041】
突出抑制リブ200A、200Bの高さ(リブ部121の車両外側表面からの突出量)は、スクリュウ150の軸部先端151の突出量より大きくすることが、より確実な歩行者等への保護の観点から好ましい。
【0042】
この一方で、表面側フードモール120の外側からの見栄えの観点からは、衝突等による変形が発生していない状態(通常時)において、表面側フードモール120の内側(裏面)と、突出抑制リブ200A,200Bの先端と、の間には隙間Aがあることが好ましい。例えば、表面側フードモール120の内側(裏面)と、突出抑制リブ200の先端と、を接触(当接)させてしまうと、突出抑制リブ200A,200Bの先端が、表面側フードモール120を押すこととなり、それによって生じる僅かな変形が、表面側フードモール120の表側から見たときに表面側フードモール120の表面に凹凸などとして現われて見栄えを悪化させることになるが、隙間Aを設けることで、このような現象を回避することができる。
【0043】
また、表面側フードモール120の内側(裏面)と、突出抑制リブ200の先端と、を樹脂成形の際に一体成形して連続するようにした場合には、樹脂の流れが均一にできないため、表面側フードモール120の表側から見たときに、表面側フードモール120の表面に凹凸などとして現われて見栄えを悪化させることになるが、隙間Aを設け、表面側フードモール120の内側(裏面)と、突出抑制リブ200の先端と、を分離させることで、このような現象を回避することができる。
【0044】
なお、本実施の形態では、突出抑制リブ200A,200Bを、ケースナット155の上下方向(表面側フードモール120の短軸方向)両側に設けた場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ケースナット155の左右方向(表面側フードモール120の長軸方向)両側に設けた構成とすることもできる。
【0045】
このように、本実施の形態に係る分割式フードモール100によれば、簡単かつ低コストな構成でありながら、複数の部品を締結等によって一体的に構成する分割式フードモールにおいて、表面のうねりなどが抑制され見栄えが良い外観を提供することができると共に、衝突時における歩行者等への損傷等を軽減することができ歩行者等の保護に優れたフードモールを提供することができる。
【0046】
本実施の形態では、表面側フードモール120と、ブラケット140と、車両側フードモール130と、をスクリュウ150にて締結固定する際に、ケースナット155を用いる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば金属製の薄板状のプレート(ナットとして機能)を表面側フードモール120の成型時に鋳込んだリすることも可能である。
【0047】
また、本実施の形態では、表面側フードモール120と、ブラケット140と、車両側フードモール130と、をスクリュウ150にて締結固定する場合を例に説明したが、これに限らず、車両側フードモール130を共締めすることなく、表面側フードモール120とブラケット140とだけをスクリュウ150によってリブ部121に締結固定する場合にも、本発明は適用可能である。
【0048】
すなわち、本発明は、表面側フードモール120の車両側フードモール130側にブラケット140を配置し、スクリュウ150を、表面側フードモール120から分岐して車両側フードモール130側に突出して再び表面側フードモール120に合流するリブ部121に対して、車両側フードモール130側から表面側フードモール120側に向かってねじ込むことで、ブラケット140を表面側フードモール120のリブ部121に締結固定するようにしたものに適用可能である。
【0049】
本発明は、上述した発明の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは可能である。