(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
50〜95質量%のポリスチレン系樹脂成分と5〜50質量%のポリオレフィン系樹脂成分とを含む複合樹脂(ただし、該ポリスチレン系樹脂成分と該ポリオレフィン系樹脂成分の合計量は100質量%である。)から構成される複合樹脂発泡粒子に、下記(a)及び/又は(b)の塩素を含まないカチオン系帯電防止剤を該複合樹脂発泡粒子100質量部に対して0.4〜3.5質量部塗布することを特徴とする帯電防止性複合樹脂発泡粒子の製造方法。
(a)脂肪族第4級アンモニウム硫酸塩
(b)イミダゾリウム硫酸塩と脂肪族アミノアルコールとの混合物
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の帯電防止性複合樹脂発泡粒子の製造方法、及び該方法により得られる帯電防止性複合樹脂発泡粒子成形体について詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、例えば、まず複合樹脂粒子を製造し(複合樹脂粒子製造工程)、該複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、さらに発泡させて複合樹脂発泡粒子(複合樹脂発泡粒子製造工程)とする。次に、該発泡粒子に帯電防止剤を塗布すること(帯電防止剤塗布工程)により帯電防止性複合樹脂発泡粒子が得られる。
【0012】
[帯電防止性塗布工程]
本発明方法に使用する帯電防止剤としては、カチオン系帯電防止剤が用いられる。ポリエチレン等のポリオレフィン系ポリマーは一般にマイナスに帯電し易いことから、カチオン系帯電防止剤を使用すると優れた帯電防止性能を示すと考えられる。なお、塩化物イオンは成形用金型等の金属を腐食させるおそれがあることから、対イオンとして塩化物イオンを含まないものを用いることが好ましい。
【0013】
該カチオン系帯電防止剤としては、次の(a)、(b)が好ましいものとして挙げられる。
(a)脂肪族第4級アンモニウム硫酸塩
(b)イミダゾリウム硫酸塩と脂肪族アミノアルコールとの混合物
【0014】
前記(a)としては、例えば下記の(1)式であらわされる化合物が挙げられる。
【化1】
【0015】
(1)式において、R
1〜R
4基は、それぞれ炭素数1〜17のアルキル基を表す。
(1)式のR
2〜R
4基はそれぞれ炭素数1〜3の直鎖飽和アルキル基であることが好ましく、R
1基は炭素数5〜17の直鎖飽和アルキル基であることが好ましい。特に、R
1基が炭素数12の直鎖飽和アルキル基、R
2基がエチル基、R
3,R
4基がメチル基であるラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートが好ましい。
帯電防止剤(a)の具体例としては、例えば第一工業製薬株式会社製のラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート「カチオーゲンES-L」が挙げられる。
【0016】
前記(b)の脂肪族アミノアルコールとしては、下記(2)式であらわされる化合物が挙げられる。
【化2】
【0017】
(2)式において、R
5OH、R
6OHはそれぞれ炭素数1〜3の直鎖飽和アルコール鎖であることが好ましく、該直鎖飽和アルコール鎖はエタノールであることがより好ましい。また、直鎖アルキル基R
7における炭素数は5〜17の整数であることが好ましく、炭素数が12であることが特に好ましい。
【0018】
また、前記(b)のイミダゾリウム硫酸塩としては、例えば(3)式であらわされる化合物が挙げられる。
【0019】
(3)式で示されるイミダゾリウム硫酸塩のイミダゾリウム化合物としては、R
8基、R
9基の炭素数がそれぞれ1〜3のアルキル基であることが好ましく、R
8基、R
9基がそれぞれメチル基、エチル基である1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェートがより好ましい。
【0020】
また、帯電防止剤(b)の脂肪族アミノアルコールとイミダゾリウム硫酸塩との混合割合としては、重量比で10:90〜50:50が好ましく、20:80〜40:60であることがより好ましい。この範囲であれば効果的に帯電防止性能を発揮する発泡粒子とすることができる。
【0021】
帯電防止剤(b)の具体例としては、例えば日油株式会社製の1−エチル−3−メチルイミダゾリウムエチルサルフェート「エレガンC607L」が挙げられる。
【0022】
前記(a)及び/又は(b)に代表されるカチオン系帯電防止剤を用いることにより、複合樹脂発泡粒子の帯電防止性能が向上し、該複合樹脂粒子を型内成形して得られる成形体は、融着性に優れ、収縮変形が小さくなる。前記の通り、ポリエチレン等のポリオレフィン系ポリマーは一般にマイナスに帯電し易いことから、(a)、(b)等のカチオン系帯電防止剤を使用した際に優れた帯電防止性能を示すと考えられる。また、塩化物イオンは成形用金型等の金属を腐食させるおそれがあることから、本発明で使用する帯電防止剤は対イオンとして塩化物イオンを含まないものを用いる。
【0023】
本発明方法においては、帯電防止剤の塗布量は、複合樹脂発泡粒子100質量部に対して、0.4〜3.5質量部の割合で帯電防止剤を塗布する。塗布量が少なすぎると十分な帯電防止性能を発現する事ができなくなってしまうおそれがある。また、塗布量が多すぎると発泡粒子を金型に充填する際に、発泡粒子が塊状になってしまい、金型への充填性が低下してしまう。
上記観点から、帯電防止剤の塗布量は複合樹脂発泡粒子100質量部に対して、0.5〜3質量部が好ましく、0.7〜2.5質量部がより好ましい。
【0024】
前記塗布量に対して、実際の発泡粒子への帯電防止剤の付着量は若干少なくなり、85〜95重量%程度となる。
なお、帯電防止剤の付着量は、帯電防止剤塗布後に充分乾燥させた複合樹脂発泡粒子の重量から塗布前の複合樹脂発泡粒子の重量を引くことで求められる。
【0025】
前記帯電防止剤は、複合樹脂発泡粒子へ塗布することが重要である。核粒子や複合樹脂粒子を重合する際に前記帯電防止剤を練り込む方法では、重合が阻害されて良好な発泡性複合樹脂粒子が得られない虞や、仮に発泡粒子が得られたとしても十分な帯電防止性能が得られないおそれがある。帯電防止剤を圧力容器内で含浸する方法では、成形体にした場合、融着率が低下したり、成形体が収縮変形してしまうおそれがある。また、複合樹脂発泡粒子成形体に塗布する方法では、複合樹脂発泡粒子へ塗布する方法に比べて、帯電防止剤を塗布する際にムラが生じやすいことから帯電防止性能が不均一となり、帯電防止性能が不十分となる部分ができるおそれがある。
【0026】
前記帯電防止剤の複合樹脂発泡粒子への塗布方法としては、吹付け塗布、エアレス塗布、浸漬塗布、ブレンド法或いはこれらの方法、原理を基本としたその他の塗布方法が挙げられる。なお、吹付塗布においては、複合樹脂発泡粒子に吹付けする際に帯電防止剤を流動状態とするか、または吹付け後に複合発泡粒子を攪拌して複合樹脂発泡粒子全面に帯電防止剤溶液が付着する様にすることが好ましい。
【0027】
なお、塗布に使用される帯電防止剤は、原液、粉体、水またはアルコール等の希釈液でもよく、その濃度に制限はない。さらに、発泡粒子に帯電防止剤を塗布する際の容器は、密閉系、開放系のどちらでもよく、温度も複合樹脂発泡粒子の耐熱温度以下であればよい。具体的には、例えば帯電防止剤を水で希釈して水溶液とし、該水溶液を複合樹脂発泡粒子に塗布した後に、複合樹脂粒子を撹拌混合して複合樹脂発泡粒子に帯電防止剤を均一に塗布することが可能である。なお、本発明方法においては、前記のいずれかの塗布方法、もしくはそれらを組み合わせることができる。
【0028】
[複合樹脂粒子製造工程]
本発明に用いられる複合樹脂粒子(以下、単に樹脂粒子ともいう。)の製造方法としては、含浸重合法が挙げられる。具体的には、先にポリエチレン等からなるポリオレフィン系樹脂粒子(核粒子)を押出機等で作製し、該ポリオレフィン系樹脂粒子を耐熱耐圧反応容器に分散媒、分散剤、スチレン系モノマー、重合開始剤等と共に入れ、加熱、撹拌する事でスチレン系モノマーをオレフィン粒子に含浸させ、重合して複合樹脂粒子を製造する。上記含浸重合法の他、押出溶融混練法、更にこれらの方法、原理を基本としたその他の製造方法を採用することができる。
【0029】
本発明に使用する前記ポリオレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン−メタクリル酸アルキルエステル共重合体等のエチレン系樹脂を用いることができる。また、プロピレンホモ重合体、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−4−メチルペンテン−1共重合体等のプロピレン系樹脂を用いることができる。更に、これらの2種以上の混合物を利用することもできる。
【0030】
前記ポリオレフィン系樹脂の融点は、70℃〜160℃であることが好ましく、85℃〜145℃であることがより好ましい。融点が低すぎる場合には、前記複合樹脂発泡粒子を製造する際に粒子相互の固着を防止するために、固着の防止措置を行う必要が生じる。そのため、製造コストが増大してしまうおそれがある。また、この場合には、前記複合樹脂発泡粒子成形体の耐熱性能が著しく低下し、高温環境下での使用が困難になり、実用性が悪くなるおそれがある。一方、融点が高すぎる場合には、型内成形により複合樹脂発泡粒子を成形する際に、型内成形に必要な加熱媒体の温度が高くなりすぎて、既存の成形機での成形が困難になるおそれがある。尚、上記オレフィン系樹脂種粒子の融点は、JIS K7121(1987)の熱流束DSC『一定の熱処理を行った後、融解温度を測定する場合』に基づいて、該オレフィン系樹脂粒子2〜4mgを10℃/分の昇温速度で加熱して得られるDSC曲線における吸熱ピークの頂点温度である。
【0031】
その他の添加剤として、前記ポリオレフィン系樹脂粒子には、本発明の効果を損なわない限り、気泡調整剤、顔料、スリップ剤、難燃剤等の添加剤を含有することができる。また、前記複合樹脂発泡粒子の平均気泡径を調整するための気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ホウ酸亜鉛等の従来公知の無機系、或いはポリテトラフルオロエチレン粉末等の有機系のものを用いることができる。
【0032】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子の製造方法としては、前記ポリオレフィン系樹脂に上記添加剤等を配合し、溶融混練してから細粒化する方法が挙げられる。溶融混練および細粒化は押出装置により行うことができる。このとき、添加剤をそのまま基材樹脂に練り込むこともできるが、より均一な混練を行うために、通常は前記ポリオレフィン系樹脂に上記添加剤を分散させたマスターバッチを作製し、該マスターバッチと前記ポリオレフィン系樹脂とを押出機に供給して混練する方法を用いることが好ましい。
【0033】
前記ポリオレフィン系樹脂粒子を得るための細粒化は、前記押出機による溶融混練物を、ストランドカット方式、ホットカット方式、又は水中カット方式等によりペレタイズすることにより得ることができる。なお、所望のポリオレフィン系樹脂粒子が得られる方法であれば他の方法により行うこともできる。
【0034】
前記複合樹脂粒子を製造するために、前記核粒子に含浸させるスチレン系モノマーとしては、スチレン、及びスチレン誘導体であるα−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0035】
前記複合樹脂粒子発泡粒子を製造する上で、核粒子に含浸させるスチレン系モノマーは、50〜95質量%がポリスチレン系樹脂成分、5〜50質量%がポリオレフィン系樹脂成分を含む複合樹脂となるように添加される。該複合樹脂粒子中のポリスチレン系樹脂成分は60〜90質量%が好ましく、65〜85質量%がより好ましく、ポリオレフィン系樹脂成分は10〜40質量%が好ましく、15〜35質量%がより好ましい。
【0036】
本発明方法においては、前記スチレン系モノマーと共重合可能なモノマーを併用することができる。共重合可能なモノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル等が挙げられる。また、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有不飽和化合物等が挙げられる。これらのスチレン系モノマーと共重合可能なモノマー成分は、単独でまたは二種以上を組み合わせて、スチレン系モノマーと共重合させることができる。前記スチレン系モノマーに対する共重合モノマー成分の割合は、スチレン系モノマー100質量部に対し0.5〜10質量部であることが好ましい。
【0037】
複合樹脂粒子製造工程においては、前記ポリオレフィン系樹脂粒子内でスチレン系モノマーを均一に重合させるために、スチレン系モノマーをポリオレフィン系樹脂粒子に含浸させてから重合させることが重要である。この場合、スチレン系モノマーの重合と共に架橋が生じることがある。そこで、スチレン系モノマーの重合において重合開始剤と共に必要に応じて架橋剤を併用して架橋反応を意図的に生じさせることができる。重合開始剤、架橋剤を使用する際には、予めスチレン系モノマーに溶解しておくことが好ましい。
なお、スチレン系モノマーの重合過程においては、前記ポリオレフィン系樹脂粒子中に含まれるオレフィンの架橋が生じる場合があることから、本明細書において、「重合」は「架橋」を含む意味で用いられる。
【0038】
前記重合開始剤としては、周知のポリスチレン樹脂を得る際のスチレン系モノマーの懸濁重合法に用いられるもの、例えばスチレン系モノマーに可溶で、10時間半減期温度が50〜120℃であるものを用いることができる。具体的には、例えばクメンヒドロキシパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を用いることができる。これらの重合開始剤は1種類または2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
前記架橋剤としては、重合温度では分解せず、架橋温度で分解するものを用いることができる。具体的には、例えばジクミルパーオキサイド、2,5−t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン等の過酸化物を用いることができる。前記架橋剤は、単独または2種類以上併用して用いることができる。前記架橋剤の配合量は、スチレン系モノマー100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。なお、前記重合開始剤及び前記架橋剤として同じ化合物を採用することもできる。
【0040】
スチレン系モノマーには、必要に応じて可塑剤、油溶性重合禁止剤、難燃剤、染料、気泡調整剤等のその他の添加剤を添加することができる。
【0041】
また、本発明の効果を妨げない範囲であれば、重合後に脱水乾燥した前記複合樹脂粒子に表面被覆剤を添加することができる。前記表面被覆剤としては、例えば、ジンクステアレート、ステアリン酸トリグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、ひまし硬化油等が挙げられる。
【0042】
[複合樹脂発泡粒子製造工程]
本発明に用いられる複合樹脂発泡粒子は、例えば、分散媒放出発泡方法により作製することができる。具体的には、作製した樹脂粒子を密閉容器中で水性媒体中へ分散、加熱して物理発泡剤を含浸させて発泡性樹脂粒子とし、該発泡性樹脂粒子を発泡適性温度で密閉容器から水性媒体と共に放出して、発泡粒子を製造することができる。この方法においては、発泡剤含浸工程、発泡工程をそれぞれ別の工程として行なうこともできるが、通常では、前記の通り発泡剤含浸工程と発泡工程は連続して行なわれる。
【0043】
前記複合樹脂発泡粒子の製造に際して、前記複合樹脂粒子を分散させる分散媒体としては、前記複合樹脂粒子を溶解させない媒体を使用することができる。このような分散媒体としては、例えばエチレングリコール、グリセリン、メタノール、エタノール等を用いることができるが、好ましくは水が用いられる。
前記分散媒体中には、必要に応じて、前記複合樹脂粒子が分散媒体中に均一に分散するように、酸化アルミニウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、酸化亜鉛、カオリンなどの難水溶性無機物質等の分散剤、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤等の分散助剤を分散させることが好ましい。
【0044】
前記複合樹脂発泡粒子を製造する際に分散媒体中に添加される分散剤の量は、前記複合樹脂粒子の質量を基準として決定することができ、前記複合樹脂粒子の質量と分散剤の質量との比率(前記複合樹脂粒子の質量/分散剤の質量)を20〜2000とすることが好ましく、30〜1000とすることがより好ましい。また、分散剤の質量と分散助剤の質量との比率(分散剤の質量/分散助剤の質量)は0.1〜500とすることが好ましく、1〜50とすることがより好ましい。
【0045】
また、物理発泡剤を上記耐圧容器内に圧入することにより樹脂粒子に物理発泡剤を含浸させる工程においては、液相含浸法や気相含浸法を適宜選択できる。ガス含浸予備発泡方法において物理発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気、ヘリウム、水等の無機ガス、メタン、エタン、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、シクロペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン等の有機揮発性ガス等が使用できる。
【0046】
前記物理発泡剤の配合量は、目的とする前記複合樹脂発泡粒子の見掛け密度、基材樹脂の組成、または物理発泡剤の種類等を考慮して決定されるが、概ね、複合樹脂粒子100質量部に対して0.5〜30質量部の範囲で含浸されるように配合される。
【0047】
分散媒放出発泡方法においては、耐圧容器内で物理発泡剤が含浸された軟化状態の複合樹脂粒子を分散媒体と共に該耐圧容器から該容器内よりも低圧域(通常は大気圧下)に放出することにより発泡性複合樹脂粒子を発泡させて複合樹脂発泡粒子を得る。なお、該耐圧容器内から発泡性複合樹脂粒子を放出する際には、得られる発泡粒子の見掛け密度や気泡径のバラツキを小さくするために、該耐圧容器内の温度および圧力を一定に保つこと、或は徐々に高めることが好ましい。この場合、耐圧容器内の圧力調整は、発泡剤と同様のガス、或いは窒素、空気等の無機ガスで耐圧容器内に背圧をかけて該容器内の圧力が急激に低下しないようにして、内容物を放出することにより行なわれる。
【0048】
本発明方法で使用可能な複合樹脂粒子の発泡方法は前述の方法に限定される事はなく、金型内に充填して加熱する事で成形体を得る事が可能であれば如何なる方法でも良い。
【0049】
前記のようにして得られた発泡粒子は、見掛け密度10〜300kg/m
3であることが好ましく、より好ましくは20〜200kg/m
3である。
【0050】
[帯電防止性複合樹脂発泡粒子成形体]
本発明の帯電防止性複合樹脂発泡粒子成形体(以下、単に発泡粒子成形体ともいう。)は、前述の方法によって得られた帯電防止剤性複合樹脂粒子を金型内に充填し、飽和水蒸気などの加熱媒体により加熱する型内成形により得ることができる。前記複合樹脂発泡粒子から得られる複合樹脂発泡粒子成形体は、優れた帯電防止性能を有し、発泡粒子相互の融着性、寸法安定性においても優れるものである。
【0051】
前記発泡粒子成形体を構成している複合樹脂発泡粒子の相互の融着状態の指標としての融着率は、60%以上、更に70%以上、特に80%以上であることが好ましい。なお、本発明においてはカチオン系帯電防止剤を用いているので、発泡粒子の相互の融着状態が良好なものとなる。
【0052】
複合樹脂発泡粒子成形体の密度は10〜200kg/m
3、特に15〜100kg/m
3であることが好ましい。成形体密度がこの範囲であれば、成形加熱時に熱収縮を起こすことがなく、大幅な成形蒸気圧の上昇や発泡粒子成形体の密度バラツキに起因して機械的物性が不十分となるおそれもない。
【0053】
複合樹脂発泡粒子成形体のJIS K 6271に基づく表面抵抗率は、1×10
13Ω/□以下であることが好ましく、5×10
12Ω/□以下であることがより好ましく、2×10
12Ω/□以下であることがさらに好ましい。
また、複合樹脂発泡粒子成形体の帯電圧減衰時間は、10秒以内であることが好ましく、5秒以下であることがより好ましく、3秒以下であることが特に好ましい。
【0054】
前記帯電圧減衰時間はCPM(charged plate monitor)を用いて測定される。具体的には、成形体からスキン面が残るように試験片を切り出し、23℃湿度50%雰囲気下で24時間以上静置した試験片をCPM(charged plate monitor)を用いて、検知プレートにスキン面が接するように置き、検知プレートを1.25kVにチャージしてサンプル上面のスキン面にアースを接触させて検知プレートの電圧が1.0kVから0.1kVに低下するまでの時間から帯電圧減衰時間を測定する。
【0055】
なお、本発明における複合樹脂発泡粒子成形体は、前記表面抵抗率と帯電圧減衰時間との両方において上記範囲を満足することが好ましい。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明について、実施例、比較例により詳細に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0057】
〔実施例1〕
[複合樹脂粒子製造工程]
(1)核粒子の作製
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製、商品名:ニポロン9P51A)14.36kgと酢酸ビニル成分含有量が15質量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名:ウルトラセン625)4.98kg、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(東ソー(株)製、商品名:ニポロン9P51A)にホウ酸亜鉛(富田製薬(株)製、ホウ酸亜鉛2335、平均粒子径:6μm)を10質量%含有したホウ酸亜鉛10%マスターバッチ0.66kgを押出機(アイケージー(株)製、型式:MS50−28;50mmφ単軸押出機、マドックタイプのスクリュ)にて230〜250℃で溶融混練後、押出し、水中カット方式により0.4〜0.6mg/個(平均0.5mg/個)のポリエチレン系樹脂粒子(核粒子)を得た。
【0058】
(2)複合樹脂粒子の作製
撹拌装置の付いた内容積が3Lのオートクレーブに、脱イオン水1000gを入れ、更にピロリン酸ナトリウム6gを加えた後、粉末状の硝酸マグネシウム・6水和物12.9gを加え、室温で30分撹拌した。これにより、懸濁剤としてのピロリン酸マグネシウムスラリーを作製した。
次に、この懸濁剤に界面活性剤としてのラウリルスルホン酸ナトリウム(10重量%水溶液)1.5g、水溶性重合禁止剤としての亜硝酸ナトリウム(1重量%水溶液)5.0g、及び核粒子150gを投入した。
次いで、重合開始剤としての過酸化ベンゾイル1.715g(日油(株)製「ナイパーBW」、水希釈粉体品)とt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート0.258g(日油(株)製「パーブチルE」)、及び架橋剤としての1,1−ジ(ターシャリブチルパーオキシ)シクロヘキサン(アルケマ吉富(株)製「ルペロックス331M70」)4.38gを、モノマーとしてのスチレン335g及びアクリル酸ブチル15gに溶解させ、溶解物を撹拌速度500rpmで撹拌しながらオートクレーブ内の懸濁剤中に投入した。
【0059】
次いで、オートクレーブ内を窒素置換した後、昇温を開始し、1時間半かけて温度88℃まで昇温させた。昇温後、この温度88℃で30分間保持した後、撹拌速度を450rpmに下げ、温度82℃まで15分かけて冷却した。冷却後、この温度82℃で5時間保持した。次いで、温度120℃まで2時間かけて昇温させ、温度120℃で5時間保持した。
その後、温度90℃まで1時間かけて冷却し、撹拌速度を400rpmに下げ、温度90℃で3時間保持した。さらに、温度105℃まで2時間かけて昇温し、温度105℃で5時間保持した後、温度30℃まで約6時間かけて冷却した。
冷却後、内容物を取り出し、硝酸を添加し複合樹脂粒子の表面に付着したピロリン酸マグネシウムを溶解させた。その後、遠心分離機で脱水・洗浄し、気流乾燥装置で表面に付着した水分を除去し、平均粒径(d63)が約1.5mmの複合樹脂粒子(ポリスチレン成分69重量%、ポリエチレン成分31重量%)を得た。
【0060】
[複合樹脂発泡粒子製造工程]
前記複合樹脂粒子製造工程で得た複合樹脂粒子500gを分散媒体として水3.5Lを攪拌機を備えた5Lの耐圧容器内に仕込み、更に耐圧容器内に、分散剤としてのカオリン3g、及び界面活性剤としてのアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.04gを添加した。次いで、300rpmで攪拌しながら160℃まで昇温した後に耐圧容器内に無機系物理発泡剤としての二酸化炭素を4.0MPaまで圧入し攪拌下で15分間保持して、発泡性樹脂粒子とした。その後、二酸化炭素の背圧で耐圧容器内の圧力を4.0MPaに保ちながらバルブを開放して発泡させ、複合樹脂発泡粒子を配管に通して受け網槽に送り、60℃のオーブンで3時間乾燥させる事で見掛け密度49kg/m
3の複合樹脂発泡粒子を得た。
【0061】
[帯電防止剤塗布工程]
前記複合樹脂発泡粒子100質量部に対して、帯電防止剤として、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート0.5質量部(第一工業製薬株式会社製「カチオーゲンES-L」(有効成分50%)1質量部)を水4質量部で希釈したものを50Lポリ袋に入れて口をとじた。これをよく振り混ぜた後、袋ごとタンブラーに入れて30分間混合し、発泡粒子に帯電防止剤を塗布した。塗布後の複合樹脂発泡粒子を40℃のオーブンで12時間乾燥させた。
【0062】
[型内成形]
前記帯電防止性複合樹脂発泡粒子を型内成形機を用いて、縦200mm×横700mm×厚み50mmの平板金型に充填率110%で充填し、成形を行った。成形条件は、成形後の成形体の表面平滑性が目視で良好となるスチーム圧力0.1MPa(ゲージ圧)で15秒間加熱し、大気圧に戻した後、水冷を行い、面圧計が0.02MPa(ゲージ圧)に到達したときに金型を開き成形体を離型した。
得られた発泡成形体は、CPM帯電圧減衰時間が1.3秒、表面抵抗率が7.7×10
12Ωと帯電防止性能に優れたものであった。
【0063】
〔実施例2〕
実施例1の帯電防止剤塗布工程において、複合樹脂発泡粒子100質量部に対してラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート3質量部を塗布した以外は同じ手法で発泡粒子を作製した。実施例1に比べ、塗布量が3質量部と多いため、より帯電防止性能に優れた成形体が得られた。
【0064】
〔実施例3〕
実施例1に記載の帯電防止剤塗布工程において、複合樹脂発泡粒子100質量部に対して、1−エチル3−メチルイミダソリウムエチルサルフェート(33重量%)とラウリルジエタノールアミン(67重量%)の混合物1質量部(日油(株)製「エレガンC607L」)を塗布した以外は同じ手法で発泡粒子を作製した。
前記帯電防止剤を使用した場合でも、帯電防止性能に優れた発泡粒子成形体が得られた。
【0065】
〔比較例1〕
実施例1に記載の帯電防止剤塗布工程において、塗布量を本発明の範囲よりも少ない量とした例である。複合樹脂発泡粒子100質量部に対してラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートが0.25質量部として塗布した以外は実施例1と同様にして作製した。帯電防止剤の量が少なすぎたため、帯電圧減衰時間と表面固有抵抗の値が大きく、十分な帯電防止性能が得られなかった。
【0066】
〔比較例2〕
実施例1に記載の帯電防止剤塗布工程において、塗布量を本発明の範囲よりも多い量とした例である。複合樹脂発泡粒子100質量部に対してラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートが4質量部と多すぎたため、金型充填性が悪くなり、良好な複合樹脂発泡粒子成形体が得られなかった。
【0067】
〔比較例3〕
実施例1の複合樹脂粒子製造工程において、押出機に複合樹脂発泡粒子100質量部に対してラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェートを1質量部(第一工業製薬株式会社製「カチオーゲンES−L」(有効成分50%)2質量部)となるように核粒子の作製時に練り込んで加えた以外は実施例1と同じ手法で複合樹脂粒子の作製を試みた。その結果、重合が阻害されて良好な発泡性複合樹脂粒子が得られなかった。
【0068】
〔比較例4〕
実施例1と同様の手法により複合樹脂粒子作製後、複合樹脂粒子100質量部と帯電防止剤としてラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート1質量部(第一工業製薬株式会社製「カチオーゲンES-L」(有効成分50%)2質量部)を10Lポリ袋に入れて口を閉じた。これをよく振り混ぜた後40℃のオーブンで12時間乾燥させた。乾燥後、複合樹脂粒子500gを内容積5リットルの密閉容器内にカオリン3g、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS20‐F」)0.04gを配合した3500gの水に分散させ、300rpmで攪拌しながら165℃まで昇温して容器内に発泡剤として二酸化炭素を容器内圧力が4.0MPaになるまで導入して、15分間保持した後、二酸化炭素を容器内に導入して発泡剤の平衡蒸気圧に等しい背圧をかけ、容器内圧を一定に保持するようにして耐圧容器内の内容物を大気圧下に放出し、見掛け密度49g/Lの複合樹脂発泡粒子を得た。得られた複合樹脂発泡粒子を用いて帯電防止剤の塗布を行わないこと以外、実施例1と同様に型内成形を行った。帯電防止剤を発泡前の複合樹脂粒子の段階で塗布した場合、表面抵抗率が高すぎて測定不能であることに加えて、帯電圧減衰時間が10秒よりも長く、十分な帯電防止性能が得られなかった。
【0069】
〔比較例5〕
実施例1と同様の手法により複合樹脂粒子作製後、複合樹脂粒子500gを内容積5Lの密閉容器内にカオリン3g、分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業製薬株式会社製「ネオゲンS20‐F」)0.04gを配合した3500gの水に分散させ、300rpmで攪拌しながら165℃まで昇温して容器内に発泡剤として二酸化炭素を容器内圧力が4.0MPaになるまで導入して、15分間保持した後、二酸化炭素を容器内に導入して発泡剤の平衡蒸気圧に等しい背圧をかけ、容器内圧を一定に保持するようにして耐圧容器内の内容物を大気圧下に放出し、見掛け密度49g/Lの複合樹脂発泡粒子を得た。得られた複合樹脂発泡粒子を用いて帯電防止剤の塗布を行わないこと以外、実施例1と同様に型内成形を行った。
発泡工程で帯電防止剤を添加した場合、表面抵抗率が10
15Ω以上であることに加えて、帯電圧減衰時間が10秒よりも長く、十分な帯電防止性能が得られなかった。また、得られた成形体に収縮変形による凹みが見られ、良好な成形体を得られなかった。
【0070】
〔比較例6〕
帯電防止剤を発泡粒子に塗布しない以外、実施例1と同様に成形体を作製し、得られた成形体表面全体に複合樹脂発泡粒子100質量部に対して、ラウリルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート1質量部(第一工業製薬株式会社製「カチオーゲンES−L」(有効成分50%)を2質量部)を水4質量部で希釈したものを刷毛で塗布した後に40℃のオーブンで12時間以上乾燥させた。
成形体に帯電防止剤を塗布した場合、帯電圧減衰時間が10秒よりも長く、十分な帯電防止性能が得られなかった。また、成形体に帯電防止剤を刷毛で塗布する方法では、帯電防止剤が均一に塗布されず帯電防止性能にムラができてしまった。
【0071】
〔比較例7〕
複合樹脂発泡粒子100質量部に対して、ポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル燐酸エステル1質量部(第一工業製薬株式会社製「プライサーフA208F」)を塗布した以外は、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子を作製した。表面抵抗率が1.3×10
14Ωであり、十分な表面抵抗率が得られなかった。
【0072】
〔比較例8〕
帯電防止剤塗布工程において、帯電防止剤を変えた例である。複合樹脂発泡粒子100質量部に対してポリオキシエチレンアルキルアミンエーテル1質量部(第一工業製薬株式会社製「アミラヂンC1802」)を塗布した以外は、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子を作製し、更に実施例1と同様にして成形体を作製した。得られた成形体の帯電圧減衰時間が10秒よりも長く、十分な帯電防止性能が得られなかった。
【0073】
〔比較例9〕
実施例1に対して帯電防止剤を変えた例である。複合樹脂発泡粒子100質量部に対してアルキル硫酸ナトリウム1質量部(花王株式会社製、「エレクトロストリッパーME2」(有効成分50%)を2質量部)を塗布した以外は、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子を作製し、更に実施例1と同様にして成形体を作製した。得られた成形体の表面抵抗率が10
13Ω以上であることに加えて、帯電圧減衰時間が10秒よりも長くなり、十分な帯電防止性能が得られなかった。
【0074】
〔比較例10〕
実施例1に対して帯電防止剤を変えた例である。複合樹脂発泡粒子100質量部に対してラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインを1質量部(第一工業製薬株式会社製「アモーゲンS」(有効成分38%)を2.6質量部)塗布した以外は、実施例1と同様にして複合樹脂発泡粒子を作製し、更に実施例1と同様にして成形体を作製した。得られた成形体の表面抵抗率が10
15Ω以上となり、十分な帯電防止性能が得られず、帯電圧減衰時間が10秒よりも長く、十分な帯電圧減衰性能が得られなかった。
【0075】
実施例、比較例における帯電防止剤の種類、有効成分などについては表1に、製造条件、発泡粒子及び発泡粒子成形体の物性、評価を実施例については表2に、比較例については表3、4に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
実施例、比較例における各物性の測定、評価は以下の方法により行った。
〔帯電防止剤付着量測定〕
帯電防止剤塗布工程において、まず帯電防止剤塗布前の発泡粒子重量を精秤した。その後、所要の方法により、複合樹脂発泡粒子に任意の帯電防止剤塗布量(有効成分量)で塗布した後、40℃、24時間乾燥後に発泡粒子の重量を測定した。塗布後の重量から塗布前の重量を引いた値を精秤した帯電防止剤塗布前の複合樹脂発泡粒子重量で除して、その値に100を掛けて複合樹脂発泡粒子100質量部に対する帯電防止剤の付着量を求めた。
【0081】
〔発泡粒子の見掛け密度〕
発泡粒子を40℃のオーブンで12時間乾燥させた後に温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後に適量の発泡粒子の重量を測定した。その発泡粒子を水の入ったメスシリンダーに水没させて体積を求めた。重量を体積にて除し、単位換算することにより複合樹脂発泡粒子の見掛け密度(kg/m
3)を求めた。
【0082】
〔発泡粒子成形体密度〕
温度23℃、相対湿度50%の環境下で24時間放置した発泡粒子成形体の外形寸法から体積を求めた。次いで該発泡粒子成形体の重量を体積にて除し、単位換算することにより複合樹脂発泡粒子成形体の成形体密度(kg/m
3)を求めた。
【0083】
〔帯電圧減衰性評価〕
成形体の帯電圧減衰性能を評価した。23℃湿度50%雰囲気下で24時間以上静置した、スキン面(150×150)×厚み(50mm)サイズの帯電防止剤を塗布した成形体サンプルをトレック・ジャパン株式会社製ハンドヘルドチャージドプレートモニター(159HH)の検知プレートにスキン面が接するように置き、検知プレートを1.25kVにチャージした。サンプル上面のスキン面にアースを接触させて検知プレートの電圧が1.0kVから0.1kVに低下するまでの減衰時間を測定した。
なお、30秒経過しても電圧が0.1kVまで減衰しなかった場合は「減衰せず」とした。
帯電圧減衰性評価は減衰時間が10秒以内であれば○、10秒より長い場合を×とした。
【0084】
〔表面抵抗率〕
成形体の帯電防止性能は表面抵抗率を測定し評価した。JIS K 6271(2008年)に準拠した方法により、成形体を23℃、50%湿度条件下で1日養生した後に表面抵抗率を測定した。表中の表面抵抗率は、発泡成形体を縦200mm×横200mm×厚み50mmに切り出して測定試験片を作製し、該測定試験片を用いてスキン面を4点測定した値の相乗平均値である。尚、表面抵抗率が10
15Ω以上となった箇所が1点でもあったものは「10
15<」と表記した。10
13Ω以下のものを良品とした。測定装置として三菱化学株式会社製「ハイレスタMCP−HT450」を使用した。
【0085】
〔金型充填性評価〕
発泡粒子を成形機に送粒して型内成形を実施した際、正常に充填可能か否か評価した。正常に充填可能であれば○、発泡粒子の塊がみられ、金型に円滑に充填できない状態になった場合を×として評価した。
【0086】
〔融着性評価〕
発泡粒子成形体を折り曲げ略等分に破断させ、破断面を観察して破断している発泡粒子の数を、該破断面に存在している全ての発泡粒子の数にて除して100を掛けて融着率(百分率)を求め、融着率が60%以上のものを○、60%未満を×とした。
【0087】
〔成形体収縮変形性評価〕
発泡粒子を成形し、成形体を23℃、50%湿度条件下で1日養生後、作製した成形体が収縮変形していないかどうかを目視で判定し、凹みがないものを○、凹みが見られたものを×とした。