【実施例】
【0028】
a)本実施例のセラミック基板の製造工程について、
図3〜
図10に基づいて説明する。なお、ステップS100〜S170の工程の手順については、
図3にまとめて示す。
<土台準備工程(ステップS100)>
まず、
図4に示すように、例えば縦250mm×横250mm×厚み20mmのセラミック板からなる土台1を用意する。
【0029】
この土台1の表面には、後述するセラミックグリーンシート3(
図5参照)の外径形状、即ち、平面視が正方形の外径形状に沿うように、例えば縦(外径)170mm×横(外径)170mm×幅10mm×深さ10mmの正方形の各辺に沿った四角枠状の溝5が形成してある。但し、溝5の外形寸法は、セラミックグリーンシート3の外形寸法より若干小さい。
【0030】
なお、土台1を構成するセラミック板の材料としては、例えばアルミナ(Al
2O
3)等を採用できるが、セラミック以外の材料(例えば樹脂等)も使用できる。
<保護テープ準備工程(ステップS110)>
また、
図5(A)に示すように、片面テープである保護テープ(キャリアフィルム)7は、基材フィルム(図示せず)の一方の面に接着剤(粘着剤)からなる接着剤層(図示せず)が設けられたものである。
【0031】
基材フィルムの材料としては、ポリエステル(PET等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)等を採用でき、その厚みが30〜100μmのフィルムを用いることができる。
【0032】
なお、保護テープ7として、例えばポリエステルフィルムを用いる場合に、フィルムに固体粒子を分散させて、フィルムを構成する長鎖の分子がその途中で適宜遮られる構造とすることで、フィルムの剪断性を向上させることが好ましい。上記固体粒子としては、TiO
2、BaO
3 、Ba
2(SO
4)
3、アルミナ(Al
2O
3)、シリカ(SiO
2)等の粒子を用いることができる。
【0033】
接着剤層を構成する接着剤としては、接着及び剥離が可能な、例えばアクリル系、ゴム系等の感圧接着剤を採用できる。
<キャスティング工程(ステップS120)>
図5(B)に示すように、例えばセラミック粉末、バインダー、有機溶剤を含むセラミック材料を用いて、周知の泥しょう(スラリー)を作製する。そして、そのスラリーを用いて、例えばドクターブレード法により、保護テープ7上にスラリーを薄く延ばして塗布し、スラリー層9を形成する。
【0034】
ここで、セラミック材料としては、ホウケイ酸ガラスとアルミナとが混合された低温焼成セラミックや、アルミナからなる高温焼成セラミック等を用いることができる。
その後、
図5(C)に示すように、スラリー層9を乾燥させて、保護テープ7上に、周知の粘土状のセラミックグリーンシート3を形成する。これにより、例えば厚み30〜120μmのセラミックグリーンシート3が、キャスティング(テープ成形)される。
【0035】
なお、この保護テープ7付きのセラミックグリーンシート3は、例えば
図5(D)に示すように、通常、ロール状に巻かれて保存されるが、ロール状に巻かないでもよい。
<シート切断工程(ステップS130)>
キャスティング後に、セラミックグリーンシート3に保護テープ7を付けた状態で、図示しないカッターナイフを用いて、
図6(A)に示すように、セラミックグリーンシート3を保護テープ7と共に所定サイズ(例えば縦200mm×横200mm)に切断する。
【0036】
なお、以下では、一方の面に保護テープ7が貼り付けられたセラミックグリーンシート3を保護グリーンシート11と称することがある。
<シート載置工程(ステップS140)>
次に、
図6(B)に示すように、保護テープ7側を下にして、前記保護グリーンシート11を、土台1の溝5のある表面に配置する。
【0037】
詳しくは、
図7に示すように、溝5を全て覆うように、土台1の重心と保護グリーンシート11の重心を一致させ、且つ、土台1と保護グリーンシート11の各辺が平行になるようにして、土台1上に保護グリーンシート11を配置する。
【0038】
なお、
図7(C)に示すように、例えば溝5の幅W0が10mmの場合には、溝5より外側に張り出す保護グリーンシート11の幅L0は、溝5の幅W0以上の例えば15mmである。
【0039】
<超音波切断工程(ステップS150)>
次に、
図8に示すように、超音波カッター(即ち超音波振動する切断刃13)を用いて、保護グリーンシート11を切断する。
【0040】
詳しくは、
図8(A)に示すように、セラミックグリーンシート3の上方、即ち、溝5を覆うセラミックグリーンシートの上方のうち、溝の幅の中央部分に、溝5に沿って、切断刃13を配置する。
【0041】
具体的には、
図9に示すように、切断刃13は、先端側が尖った長方形の板状の部材(厚みL1:2.5mm×幅L2:10mm×長さL3:160mm)であるので、その直線状の刃先13aが溝5の長手方向と平行になるように配置する。
【0042】
そして、
図8(B)、(C)に示すように、超音波によって、切断刃13を、20kHZ以下の例えば20kHzの周波数にて、上限に振動させながら、徐々に下方に移動させながら、保護グリーンシート11を切断する。
【0043】
つまり、
図8(B)に示すように、切断刃13によって、下に押す力(F1)が保護グリーンシート11にかかると、摩擦力(F2)が加わるとともに、切断力(F3)によって保護グリーンシート11が切断される。
【0044】
詳しくは、特に本実施例では、切断力が加わる方向に溝5が設けられているので、切断刃13がセラミックグリーンシート3に押し当てられると、セラミックグリーンシート3及び保護テープ7が下方に引き延ばされつつ、徐々にセラミックグリーンシート3が切断されてゆく。
【0045】
このとき、セラミックグリーンシート3と保護テープ7との間にせん断力(F4)が働き、セラミックグリーンシート3と保護テープ7との間の密着力が弱くなる。
そして、切断刃13がセラミックグリーンシート3と保護テープ7との界面に到達すると、保護テープ7のみに下方に押す力を受けるため、セラミックグリーンシート3と保護テープ7との間に隙間15が生じ、この隙間15を広げながら保護テープ7が切断される。
【0046】
切断後は、振動する切断刃13の側面と保護テープ7との摩擦によって、保護テープ7がめくれる。
そして、同様な動作を、溝5の長手方向に沿って順次行うことにより、保護グリーンシート11の周囲が、所望の縦160mm×横160mmの正方形に切断される。
【0047】
<シート剥離工程(ステップS160)>
次に、
図10(A)に示すように、保護テープ7の一部(端部)は、セラミックグリーンシート3から僅かにめくれ上がっているので、
図10(B)に示すように、このめくれ上がっている部分7aを指等でつまんで、セラミックグリーンシート3から保護テープ7を剥がす。
【0048】
これによって、
図10(C)に示すようなセラミックグリーンシート3のみのシート体が得られる。
<脱脂・焼成工程(ステップS170)>
その後、前記セラミックグリーンシート3を、例えば240℃×10時間加熱することで脱脂し、さらに、840℃×60分で焼成する。これによって、
図10(D)に示すような(例えば縦120mm×横120mm×厚み1mmの)セラミック基板17が得られる。この場合において、低温焼成材料として、ガラスセラミックを用いた場合には約870℃で焼成する。
【0049】
b)次に、本実施例の効果を説明する。
本実施例では、土台1の(保護テープ7が配置される側の)表面には、切断刃13による切断箇所(即ちセラミックグリーンシート3を切断する箇所)に沿って溝5が形成されている。
【0050】
そして、この溝5に沿って(超音波カッターである)切断刃13を配置し、切断刃13を上下方向に振動させながら、セラミックグリーンシート3側より溝5の中に押し入れることによって、セラミックグリーンシート3及び保護テープ7を切断する。
【0051】
この切断の際には、切断刃13の刃先13aが保護テープ7に当たって、保護テープ7が押圧方向に撓むことによってセラミックグリーンシート3からめくれ上がるので、このめくれ上がっている部分7aをつまんで引っ張ることにより、保護テープ7をセラミックグリーンシート3から容易に剥がすことができる。
【0052】
従って、本実施例では、保護テープ7とセラミックグリーンシート3とが密着している場合でも、保護テープ7を容易に剥がすことができる。よって、従来のように、カッターナイフ等を保護テープ7とセラミックグリーンシート3との間に差し入れる必要が無いので、セラミックグリーンシート3が傷つくことがない。その結果、セラミックグリーンシート3や焼成後のセラミック基板17の製品の歩留まりが向上するという効果がある。
【0053】
また、従来のような土台シートを使用しないので、土台シートの切り屑が発生することはなく、その点からも、セラミックグリーンシート3やセラミック基板17の製品の歩留まりが向上するという効果がある。
【0054】
また、本実施例では、セラミックグリーンシート3の外形形状に対応して、平面視で四角枠状(正方形)の溝5が形成してあるので、この溝5に沿って切断することにより、所望の形状(正方形)のセラミックグリーンシート3を得ることができる。
【0055】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば溝が平面視で多角形の場合には、各辺に対応した溝にそれぞれ切断刃を配置してもよい。これにより、効率よく切断することができる。
【0056】
(2)前記実施例では、1枚のセラミックグリーンシート(単グリーンシート)からセラミック基板を製造したが、セラミックグリーンシートとして複数毎のセラミックグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を用いてもよい。