特許第6243199号(P6243199)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243199
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】セラミック基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/00 20060101AFI20171127BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20171127BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20171127BHJP
   B26D 1/04 20060101ALI20171127BHJP
   B26D 7/20 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B26D3/00 601Z
   H05K3/00 J
   H05K3/46 H
   B26D1/04 Z
   B26D7/20
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-235365(P2013-235365)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93363(P2015-93363A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】西尾 賢治
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−300190(JP,A)
【文献】 特開平10−065337(JP,A)
【文献】 特開平09−066491(JP,A)
【文献】 特開2007−261116(JP,A)
【文献】 特開2012−106329(JP,A)
【文献】 特開2006−121035(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0235795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00−11/00
H05K 3/00− 3/46
B65H 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に保護テープが貼り付けられたセラミックグリーンシートを、前記保護テープ側を土台側にして該土台上に配置する第1工程と、
前記土台上に配置された前記保護テープ及び前記セラミックグリーンシートを、切断刃を用いて所定形状に切断する第2工程と、
前記切断後の前記保護テープ及び前記セラミックグリーンシートに対して、前記セラミックグリーンシートから前記保護テープを剥がす第3工程と、
前記保護テープが剥がされた前記セラミックグリーンシートを焼成してセラミック基板を製造する第4工程と、
を有するセラミック基板の製造方法であって、
前記土台の前記保護テープが配置される側の表面には、前記切断刃による切断箇所に沿って溝が形成されており、
前記第2工程において、前記溝に沿って前記切断刃を配置し、該切断刃を上下方向に振動させながら、前記セラミックグリーンシート側より前記溝の中に押し入れることによって、前記セラミックグリーンシート及び前記保護テープを切断し、
前記第3工程において、前記切断の際に前記セラミックグリーンシートからめくれ上がった部分をつまんで、前記セラミックグリーンシートから前記保護テープを剥がすことを特徴とするセラミック基板の製造方法。
【請求項2】
前記切断刃は、超音波振動する切断刃であることを特徴とする請求項1に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記溝は、平面視が枠状の多角形であることを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項4】
前記切断刃は、前記多角形の各辺に沿ってそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項3に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項5】
前記セラミックグリーンシートは、1枚の前記セラミックグリーンシートからなる単グリーンシート、又は、複数枚の前記セラミックグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。
【請求項6】
前記溝の幅W0と、前記保護テープの切断時における前記土台の表面における前記切断刃の幅W1と、前記保護テープの厚みtは、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセラミック基板の製造方法。
(W0−W1)/2≧k1・t ・・・(1)
(k1は係数)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックグリーシートからセラミック基板を製造するセラミック基板の製造方法に関し、詳しくは土台上に配置した保護テープ付きのセラミックグリーシートを好適に切断できる切断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば配線基板などに用いられるセラミック基板の製造方法として、下記に示すように、ロール状に巻かれた保護テープ(保護フィルム)付きのセラミックグリーンシートを所定寸法に切断し、その後、その切断されたセラミックグリーンシートから保護テープを剥がし、その後、セラミックグリーンシートを焼成して、セラミック基板を製造する技術が知られている。なお、フィルム状の部材を剥離する技術としては、特許文献1に記載の技術が開示されている。
【0003】
以下に、このセラミック基板の製造工程を具体的に示す。
図11(A)に示すように、まず、例えば金属製の土台P1上に、塩化ビニール製の土台シートP2を配置し、その上に、保護テープP3付きのセラミックグリーンシートP4を、保護テープP3を土台シートP2側(下向き)にして配置する。
【0004】
次に、図11(B)に示すように、セラミックグリーンシートP4の上方に、切断箇所に沿って切断刃P5を配置する。そして、切断刃P5を下方に移動させて、土台シートP2の中央部分まで押し下げることによって、保護テープP3とともにセラミックグリーンシートP4を切断する。
【0005】
次に、図11(C)に示すように、切断されたセラミックグリーンシートP4を、保護テープP3が上方になるように配置し、保護テープP3とセラミックグリーンシートP4との間にカッターナイフP6等を差し込んで、セラミックグリーンシートP4から保護テープP3を浮かす。
【0006】
次に、図11(D)に示すように、浮かされた保護テープP3の端を指等でつまんで、セラミックグリーンシートP4から保護テープP3を剥がす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−157187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来技術では、下記のような問題があり、その改善が求められている。
具体的には、保護テープとセラミックグリーンシートとは密着しているので、保護テープを容易に剥がすことはできず、そのため、カッターナイフ等を保護テープとセラミックグリーンシートとの間に差し入れると、セラミックグリーンシートが傷つくことがあった。その結果、セラミックグリーンシート自体や焼成後のセラミック基板の製品の歩留まりが低下するという問題があった。
【0009】
また、塩化ビニール製の土台シートまで切断刃を入れるので、土台シートの切り屑が発生することがあり、その切り屑がセラミックグリーンシートに付着することがあった。その結果、セラミックグリーンシート自体や焼成後のセラミック基板の製品の歩留まりが低下するという問題があった。
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、セラミックグリーンシートから好適に保護テープを剥がして、容易にセラミック基板を製造できるセラミック基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明は、第1態様として、一方の面に保護テープが貼り付けられたセラミックグリーンシートを、前記保護テープ側を土台側にして該土台上に配置する第1工程と、前記土台上に配置された前記保護テープ及び前記セラミックグリーンシートを、切断刃を用いて所定形状に切断する第2工程と、前記切断後の前記保護テープ及び前記セラミックグリーンシートに対して、前記セラミックグリーンシートから前記保護テープを剥がす第3工程と、前記保護テープが剥がされた前記セラミックグリーンシートを焼成してセラミック基板を製造する第4工程と、を有するセラミック基板の製造方法であって、前記土台の前記保護テープが配置される側の表面には、前記切断刃による切断箇所に沿って溝が形成されており、前記第2工程において、前記溝に沿って前記切断刃を配置し、該切断刃を上下方向に振動させながら、前記セラミックグリーンシート側より前記溝の中に押し入れることによって、前記セラミックグリーンシート及び前記保護テープを切断し、前記第3工程において、前記切断の際に前記セラミックグリーンシートからめくれ上がった部分をつまんで、前記セラミックグリーンシートから前記保護テープを剥がすことを特徴とする。
【0012】
本第1態様では、土台の保護テープが配置される側の表面には、切断刃による切断箇所(即ちセラミックグリーンシートを切断する箇所)に沿って溝が形成されている。そして、この溝に沿って切断刃を配置し、切断刃を上下方向に振動させながら、セラミックグリーンシート側より溝の中に押し入れることによって、セラミックグリーンシート及び保護テープを切断する。
【0013】
この切断の際には、切断刃の先端が保護テープに当たって、保護テープが押圧方向に撓むことによってセラミックグリーンシートからめくれ上がるので、このめくれ上がった部分をつまんで、保護テープをセラミックグリーンシートから容易に剥がすことができる。
【0014】
従って、本第1態様では、保護テープとセラミックグリーンシートとが密着している場合でも、保護テープを容易に剥がすことができる。よって、従来のように、カッターナイフ等を保護テープとセラミックグリーンシートとの間に差し入れる必要が無いので、セラミックグリーンシートが傷つくことがない。その結果、セラミックグリーンシート自体や焼成後のセラミック基板の製品の歩留まりが向上するという効果がある。
【0015】
また、塩化ビニール製の土台シートを使用しないので、土台シートの切り屑が発生することはなく、その点からも、セラミックグリーンシート自体や焼成後のセラミック基板の製品の歩留まりが向上するという効果がある。
【0016】
(2)本発明は、第2態様として、前記切断刃は、超音波振動する切断刃であることを特徴とする。
本発明は、好適な切断刃を例示したものである。つまり、超音波振動する切断刃(超音波カッター)を用いることにより、容易に、セラミックグリーンシート及び保護テープを切断することができる。
【0017】
(3)本発明は、第3態様として、前記溝は、平面視が枠状の多角形であることを特徴とする。
本第3態様は、好適な溝の形状を例示したものである。つまり、切断したいセラミックグリーンシートの平面形状が正方形等の多角形の場合には、その外周形状に沿った多角形の溝を設けておけば、その溝に沿って切断刃を使用することにより、容易に所望の形状のセラミックグリーンシートを形成することができる。
【0018】
(4)本発明は、第4態様として、前記切断刃は、前記多角形の各辺に沿ってそれぞれ配置されていることを特徴とする。
本第4態様では、(溝の)多角形の各辺に沿って切断刃が配置されているので、効率よく切断を行うことができる。なお、切断刃は、溝の幅方向における中央に配置されることが望ましい。
【0019】
(5)本発明は、第5態様として、前記セラミックグリーンシートは、1枚の前記セラミックグリーンシートからなる単グリーンシート、又は、複数枚の前記セラミックグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体であることを特徴とする。
【0020】
本第5態様は、セラミックグリーンシートの態様を例示したものである。
(6)本発明は、第6態様として、前記溝の幅W0と、前記保護テープの切断時における前記土台の表面における前記切断刃の幅W1と、前記保護テープの厚みtは、下記式(1)の関係を満たすことを特徴とする。
【0021】
(W0−W1)/2≧k1・t ・・・(1)
(k1は係数)
図1に例示するように、WOは溝の幅(刃先の伸びる方向(紙面と垂直方向)と垂直方向の幅)、W1は保護テープの切断時における土台の表面における切断刃の幅、tは保護テープの厚み、Dは保護テープの撓み量である。なお、k1は保護テープの物性によって定まる係数である。
【0022】
なお、W1は、例えば切断刃の最大幅の半分のようにして求めることができる。
図2(A)に、前記式(1)をグラフで表す。同図の斜線で表す領域Rが、前記式(1)を満たす範囲、即ち、切断時に好適に保護テープの切断部分近傍をセラミックグリーンシートから分離できる領域(保護テープが剥がれやすい領域)である。
【0023】
図2(B)及び下記式(2)に、保護テープの撓み量と保護テープの厚みとの関係を示すが、溝の幅W0が一定の場合は、保護テープの厚みが大きくなるほど撓み量が小さくなることが分かる。なお、k2は保護テープの物性によって定まる係数である。
【0024】
D=k2・1/t・・・(2)
(但し、W0が一定の場合)
図2(C)及び下記式(3)に、保護テープの撓み量と溝の幅との関係を示すが、保護テープの厚みが一定の場合は、溝の幅が大きくなるほど撓み量が大きくなることが分かる。なお、k3は保護テープの物性によって定まる係数である。
【0025】
D=k3・W0・・・(3)
(但し、tが一定の場合)
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】溝の幅、切断刃の幅、保護テープの厚み、撓み量等を示す説明図である。
図2】(A)は式(1)を示すグラフ、(B)は式(2)を示すグラフ、(C)は式(3)を示すグラフである。
図3】セラミック基板の製造工程を説明する工程図である。
図4】(A)は土台の平面図、(B)は(A)のX1−X1断面図である。
図5】セラミック基板の製造方法の一部を示す説明図である。
図6】セラミック基板の製造方法の一部を示す説明図である。
図7】(A)は土台の表面に(保護テープつき)セラミックグリーンシートを配置した状態を示す平面図、(B)は(A)のX2−X2断面図で、(C)は(B)におけるY部を拡大して模式的に示す断面図である。
図8】切断を行う際の状態を、土台を厚み方向に且つ溝の伸びる方向に垂直に破断して示し、(A)はセラミックグリーンシート上に切断刃を配置した状態を示す説明図、(B)は切断刃が保護テープに当たって撓ませる状態を拡大して示す説明図、(C)は切断刃が保護テープを切断した状態を拡大して示す説明図である。
図9】切断刃と溝との位置関係を示す斜視図である。
図10】セラミック基板の製造方法の一部(切断後の工程)を示す説明図である。
図11】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本発明を実施するための形態として、セラミック基板の製造方法の実施例について説明する。
【実施例】
【0028】
a)本実施例のセラミック基板の製造工程について、図3図10に基づいて説明する。なお、ステップS100〜S170の工程の手順については、図3にまとめて示す。
<土台準備工程(ステップS100)>
まず、図4に示すように、例えば縦250mm×横250mm×厚み20mmのセラミック板からなる土台1を用意する。
【0029】
この土台1の表面には、後述するセラミックグリーンシート3(図5参照)の外径形状、即ち、平面視が正方形の外径形状に沿うように、例えば縦(外径)170mm×横(外径)170mm×幅10mm×深さ10mmの正方形の各辺に沿った四角枠状の溝5が形成してある。但し、溝5の外形寸法は、セラミックグリーンシート3の外形寸法より若干小さい。
【0030】
なお、土台1を構成するセラミック板の材料としては、例えばアルミナ(Al)等を採用できるが、セラミック以外の材料(例えば樹脂等)も使用できる。
<保護テープ準備工程(ステップS110)>
また、図5(A)に示すように、片面テープである保護テープ(キャリアフィルム)7は、基材フィルム(図示せず)の一方の面に接着剤(粘着剤)からなる接着剤層(図示せず)が設けられたものである。
【0031】
基材フィルムの材料としては、ポリエステル(PET等)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルイミド(PEI)等を採用でき、その厚みが30〜100μmのフィルムを用いることができる。
【0032】
なお、保護テープ7として、例えばポリエステルフィルムを用いる場合に、フィルムに固体粒子を分散させて、フィルムを構成する長鎖の分子がその途中で適宜遮られる構造とすることで、フィルムの剪断性を向上させることが好ましい。上記固体粒子としては、TiO、BaO 、Ba(SO、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)等の粒子を用いることができる。
【0033】
接着剤層を構成する接着剤としては、接着及び剥離が可能な、例えばアクリル系、ゴム系等の感圧接着剤を採用できる。
<キャスティング工程(ステップS120)>
図5(B)に示すように、例えばセラミック粉末、バインダー、有機溶剤を含むセラミック材料を用いて、周知の泥しょう(スラリー)を作製する。そして、そのスラリーを用いて、例えばドクターブレード法により、保護テープ7上にスラリーを薄く延ばして塗布し、スラリー層9を形成する。
【0034】
ここで、セラミック材料としては、ホウケイ酸ガラスとアルミナとが混合された低温焼成セラミックや、アルミナからなる高温焼成セラミック等を用いることができる。
その後、図5(C)に示すように、スラリー層9を乾燥させて、保護テープ7上に、周知の粘土状のセラミックグリーンシート3を形成する。これにより、例えば厚み30〜120μmのセラミックグリーンシート3が、キャスティング(テープ成形)される。
【0035】
なお、この保護テープ7付きのセラミックグリーンシート3は、例えば図5(D)に示すように、通常、ロール状に巻かれて保存されるが、ロール状に巻かないでもよい。
<シート切断工程(ステップS130)>
キャスティング後に、セラミックグリーンシート3に保護テープ7を付けた状態で、図示しないカッターナイフを用いて、図6(A)に示すように、セラミックグリーンシート3を保護テープ7と共に所定サイズ(例えば縦200mm×横200mm)に切断する。
【0036】
なお、以下では、一方の面に保護テープ7が貼り付けられたセラミックグリーンシート3を保護グリーンシート11と称することがある。
<シート載置工程(ステップS140)>
次に、図6(B)に示すように、保護テープ7側を下にして、前記保護グリーンシート11を、土台1の溝5のある表面に配置する。
【0037】
詳しくは、図7に示すように、溝5を全て覆うように、土台1の重心と保護グリーンシート11の重心を一致させ、且つ、土台1と保護グリーンシート11の各辺が平行になるようにして、土台1上に保護グリーンシート11を配置する。
【0038】
なお、図7(C)に示すように、例えば溝5の幅W0が10mmの場合には、溝5より外側に張り出す保護グリーンシート11の幅L0は、溝5の幅W0以上の例えば15mmである。
【0039】
<超音波切断工程(ステップS150)>
次に、図8に示すように、超音波カッター(即ち超音波振動する切断刃13)を用いて、保護グリーンシート11を切断する。
【0040】
詳しくは、図8(A)に示すように、セラミックグリーンシート3の上方、即ち、溝5を覆うセラミックグリーンシートの上方のうち、溝の幅の中央部分に、溝5に沿って、切断刃13を配置する。
【0041】
具体的には、図9に示すように、切断刃13は、先端側が尖った長方形の板状の部材(厚みL1:2.5mm×幅L2:10mm×長さL3:160mm)であるので、その直線状の刃先13aが溝5の長手方向と平行になるように配置する。
【0042】
そして、図8(B)、(C)に示すように、超音波によって、切断刃13を、20kHZ以下の例えば20kHzの周波数にて、上限に振動させながら、徐々に下方に移動させながら、保護グリーンシート11を切断する。
【0043】
つまり、図8(B)に示すように、切断刃13によって、下に押す力(F1)が保護グリーンシート11にかかると、摩擦力(F2)が加わるとともに、切断力(F3)によって保護グリーンシート11が切断される。
【0044】
詳しくは、特に本実施例では、切断力が加わる方向に溝5が設けられているので、切断刃13がセラミックグリーンシート3に押し当てられると、セラミックグリーンシート3及び保護テープ7が下方に引き延ばされつつ、徐々にセラミックグリーンシート3が切断されてゆく。
【0045】
このとき、セラミックグリーンシート3と保護テープ7との間にせん断力(F4)が働き、セラミックグリーンシート3と保護テープ7との間の密着力が弱くなる。
そして、切断刃13がセラミックグリーンシート3と保護テープ7との界面に到達すると、保護テープ7のみに下方に押す力を受けるため、セラミックグリーンシート3と保護テープ7との間に隙間15が生じ、この隙間15を広げながら保護テープ7が切断される。
【0046】
切断後は、振動する切断刃13の側面と保護テープ7との摩擦によって、保護テープ7がめくれる。
そして、同様な動作を、溝5の長手方向に沿って順次行うことにより、保護グリーンシート11の周囲が、所望の縦160mm×横160mmの正方形に切断される。
【0047】
<シート剥離工程(ステップS160)>
次に、図10(A)に示すように、保護テープ7の一部(端部)は、セラミックグリーンシート3から僅かにめくれ上がっているので、図10(B)に示すように、このめくれ上がっている部分7aを指等でつまんで、セラミックグリーンシート3から保護テープ7を剥がす。
【0048】
これによって、図10(C)に示すようなセラミックグリーンシート3のみのシート体が得られる。
<脱脂・焼成工程(ステップS170)>
その後、前記セラミックグリーンシート3を、例えば240℃×10時間加熱することで脱脂し、さらに、840℃×60分で焼成する。これによって、図10(D)に示すような(例えば縦120mm×横120mm×厚み1mmの)セラミック基板17が得られる。この場合において、低温焼成材料として、ガラスセラミックを用いた場合には約870℃で焼成する。
【0049】
b)次に、本実施例の効果を説明する。
本実施例では、土台1の(保護テープ7が配置される側の)表面には、切断刃13による切断箇所(即ちセラミックグリーンシート3を切断する箇所)に沿って溝5が形成されている。
【0050】
そして、この溝5に沿って(超音波カッターである)切断刃13を配置し、切断刃13を上下方向に振動させながら、セラミックグリーンシート3側より溝5の中に押し入れることによって、セラミックグリーンシート3及び保護テープ7を切断する。
【0051】
この切断の際には、切断刃13の刃先13aが保護テープ7に当たって、保護テープ7が押圧方向に撓むことによってセラミックグリーンシート3からめくれ上がるので、このめくれ上がっている部分7aをつまんで引っ張ることにより、保護テープ7をセラミックグリーンシート3から容易に剥がすことができる。
【0052】
従って、本実施例では、保護テープ7とセラミックグリーンシート3とが密着している場合でも、保護テープ7を容易に剥がすことができる。よって、従来のように、カッターナイフ等を保護テープ7とセラミックグリーンシート3との間に差し入れる必要が無いので、セラミックグリーンシート3が傷つくことがない。その結果、セラミックグリーンシート3や焼成後のセラミック基板17の製品の歩留まりが向上するという効果がある。
【0053】
また、従来のような土台シートを使用しないので、土台シートの切り屑が発生することはなく、その点からも、セラミックグリーンシート3やセラミック基板17の製品の歩留まりが向上するという効果がある。
【0054】
また、本実施例では、セラミックグリーンシート3の外形形状に対応して、平面視で四角枠状(正方形)の溝5が形成してあるので、この溝5に沿って切断することにより、所望の形状(正方形)のセラミックグリーンシート3を得ることができる。
【0055】
尚、本発明は前記実施例になんら限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
(1)例えば溝が平面視で多角形の場合には、各辺に対応した溝にそれぞれ切断刃を配置してもよい。これにより、効率よく切断することができる。
【0056】
(2)前記実施例では、1枚のセラミックグリーンシート(単グリーンシート)からセラミック基板を製造したが、セラミックグリーンシートとして複数毎のセラミックグリーンシートが積層されたグリーンシート積層体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…土台
3…セラミックグリーンシート
5…溝
7…保護テープ
13…切断刃
17…セラミック基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11