特許第6243205号(P6243205)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243205
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】サスペンション装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/08 20060101AFI20171127BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20171127BHJP
   B60G 13/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B60G17/08
   F16F9/46
   B60G13/08
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-242564(P2013-242564)
(22)【出願日】2013年11月25日
(65)【公開番号】特開2015-101183(P2015-101183A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】政村 辰也
(72)【発明者】
【氏名】作田 敦
【審査官】 三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭62−032245(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0045067(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 17/00 − 17/08
B60G 13/00 − 13/18
F16F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、上記シリンダ内に移動自在に挿入されて上記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンとを備えたダンパと、
ポンプと、
上記ポンプの吸込側に接続されるリザーバと、
上記ポンプの吐出側に接続される供給路を上記伸側室と上記圧側室の一方へ選択的に接続するとともに上記伸側室と上記圧側室の他方を上記リザーバへ通じる排出路に接続する切換手段と、
上記ポンプから供給される流体圧を調整可能な制御弁と、
上記排出路の途中に設けられる開閉弁と、
上記圧側室と上記リザーバとを連通する吸込通路と、
上記吸込通路の途中に設けられて上記リザーバから上記圧側室へ向かう流体の流れのみを許容する吸込逆止弁と
を備えたことを特徴とするサスペンション装置。
【請求項2】
上記供給路を上記排出路の途中であって上記開閉弁よりも上流側に接続する接続路と、
上記接続路の途中に設けられて上記排出路側から上記供給路側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁とを備え、
上記切換手段は、上記供給路を上記伸側室へ連通するとともに上記排出路を上記圧側室へ連通する第一ポジションと、上記供給路を上記圧側室へ連通するとともに上記排出路を上記伸側室へ連通する第二ポジションとを備えた方向切換弁であって、非通電時には第一ポジションを採り、
上記開閉弁は、連通ポジションと遮断ポジションとを備えた電磁開閉弁であって、非通電時に遮断ポジションを採ること
を特徴とする請求項1に記載のサスペンション装置。
【請求項3】
上記制御弁は、電磁圧力制御弁であって、非通電時には減衰弁として機能することを特徴とする請求項1または2に記載のサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のサスペンション装置としては、たとえば、車両の車体と車軸との間に介装されるアクティブサスペンションとして機能するものがあり、具体的には、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内に圧力室を区画するピストンと、ピストンに連結されるロッドと、圧力室を連通する流路と、圧力室に圧油を供給する油圧ポンプとを備えて構成されるもの(たとえば、特許文献1参照)がある。
【0003】
また、セミアクティブサスペンションとして機能するサスペンション装置としては、たとえば、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されてシリンダ内に伸側室と圧側室を区画するピストンと、ピストンに連結されるロッドと、伸側室と圧側室とを連通する流路と、流路の途中に設けた減衰力可変バルブとを備えて構成されるもの(たとえば、特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭63−176710号公報
【特許文献2】特開平5−155224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したアクティブサスペンションとして機能するサスペンション装置にあっては、絶えず、油圧ポンプを駆動しておりエネルギ消費が大きく、システムが複雑で、コスト高となって不経済となるという問題がある。
【0006】
他方、上記したセミアクティブサスペンションとして機能するサスペンション装置では、エネルギを大きく消費する油圧ポンプを備えていないことからエネルギ消費は少なく、システムは簡易で低コストであるものの、パッシブダンパであるため能動的な力、つまり、伸縮方向と同方向の力を積極的に発揮することができないので、車両の振動抑制効果の点でアクティブサスペンションに劣る面がある。
【0007】
そこで、上記問題を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、アクティブサスペンションとして機能できるとともに、エネルギ消費が少なく、簡単な構成でコストも安価なサスペンション装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段におけるサスペンション装置は、シリンダと、上記シリンダ内に移動自在に挿入されて上記シリンダ内を伸側室と圧側室とに区画するピストンとを備えたダンパと、ポンプと、上記ポンプの吸込側に接続されるリザーバと、上記ポンプの吐出側に接続される供給路を上記伸側室と上記圧側室の一方へ選択的に接続するとともに上記伸側室と上記圧側室の他方を上記リザーバへ通じる排出路に接続する切換手段と、上記ポンプから供給される流体圧を調整可能な制御弁と、上記排出路の途中に設けられる開閉弁と、上記供給路を上記排出路の途中であって上記開閉弁よりも上流側に接続する接続路と、上記接続路の途中に設けられて上記排出路側から上記供給路側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁と、上記圧側室と上記リザーバとを連通する吸込通路と、上記吸込通路の途中に設けられて上記リザーバから上記圧側室へ向かう流体の流れのみを許容する吸込逆止弁とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のサスペンション装置によれば、アクティブサスペンションとして機能することができるだけでなく、ポンプの駆動が必要なときにのみ駆動すればよいので、エネルギ消費が少なく、また、構成も簡単であるのでコストも安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施の形態におけるサスペンション装置を示した図である。
図2】制御弁の圧力流量特性を示した図である。
図3】一実施の形態におけるサスペンション装置の推力とピストン速度の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態におけるサスペンション装置Sは、図1に示すように、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されてシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画するピストン2とを備えたダンパDと、ポンプ4と、ポンプ4の吸込側に接続されるリザーバRと、ポンプ4の吐出側に接続される供給路5を伸側室R1と圧側室R2の一方へ選択的に接続するとともに伸側室R1と圧側室R2の他方をリザーバRへ通じる排出路6に接続する切換手段としての方向切換弁7と、ポンプ4から供給される流体圧を調整可能な制御弁8と、排出路6の途中に設けられる開閉弁9と、供給路5を排出路6の途中であって開閉弁9よりも上流側に接続する接続路10と、接続路10の途中に設けられて排出路6側から供給路5側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁11と、圧側室R2とリザーバRとを連通する吸込通路12と、吸込通路12の途中に設けられてリザーバRから圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する吸込逆止弁13とを備えて構成されている。
【0012】
また、このサスペンション装置Sにあっては、ダンパDは、シリンダ1内に移動自在に挿入されてピストン2に連結されるロッド3を備えており、このロッド3が伸側室R1内のみに挿通されていて、ダンパDは、所謂、片ロッド型のダンパとされている。また、ダンパDは、シリンダ1の外周側に配置される外筒14を備えていて、シリンダ1と外筒14との間の環状隙間でリザーバRが形成されている。
【0013】
なお、サスペンション装置Sを車両に適用する場合、シリンダ1を車両のばね上部材およびばね下部材のうち一方に連結し、ロッド3をばね上部材およびばね下部材のうち他方に連結して、ばね上部材とばね下部材との間に介装すればよい。
【0014】
そして、伸側室R1および圧側室R2には流体として、たとえば、作動油等の液体が充満され、リザーバR内にも液体と気体が充填される。伸側室R1、圧側室R2およびリザーバR内に充填される液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体を使用することもできる。また、本発明では、伸長行程時に圧縮される室を伸側室R1とし、収縮行程時に圧縮される室を圧側室R2としてある。
【0015】
ポンプ4は、吸込側から流体を吸い込んで吐出側から流体を吐出する一方向吐出型に設定され、モータ15によって駆動されるようになっている。また、このポンプ4は、モータ15によって駆動されるが、ポンプ4を通過しようとする流体の流れによっては回転不能な非可逆なポンプとされている。モータ15には、直流、交流を問わず、種々の形式のモータ、たとえば、ブラシレスモータ、誘導モータ、同期モータ等を採用することができる。
【0016】
そして、ポンプ4の吸込側は流路19によってリザーバRに接続されており、吐出側は供給路5に接続されている。したがって、ポンプ4は、モータ15によって駆動されると、リザーバRから流体を吸い込んで供給路5へ流体を吐出するようになっている。
【0017】
切換手段としての方向切換弁7は、4ポート2位置の電磁切換弁とされており、ポートAとポートPとを連通するとともにポートBとポートTを連通する第一ポジション7bと、ポートAとポートTとを連通するとともにポートBとポートPを連通する第二ポジション7cとを備えた弁体7aと、弁体7aを附勢するばね7dと、上記ばね7dに対抗する推力を弁体7aに与えるソレノイド7eとを備えている。そして、ソレノイド7eへ電力供給しない非通電時には、弁体7aはばね7dによって附勢されて第一ポジション7bを採り、ソレノイド7eへ通電すると弁体7aはソレノイド7eからの推力で押されて、第二ポジション7cを採るようになっている。
【0018】
そして、方向切換弁7のポートPは、供給路5を介してポンプ4の吐出側へ接続され、ポートTは、排出路6を介してリザーバRへ接続され、ポートAは流路16を介して伸側室R1へ接続され、ポートBは流路17を介して圧側室R2へ接続されている。
【0019】
したがって、方向切換弁7が第一ポジション7bを採る場合、供給路5が流路16を通じて伸側室R1に連通されるとともに、排出路6が流路17を通じて圧側室R2に連通され、この状態でポンプ4が駆動されると伸側室R1に流体が供給されて圧側室R2からリザーバRへ流体が排出されるので、ダンパDを収縮させることができる。他方、方向切換弁7が第二ポジション7cを採る場合、供給路5が流路17を通じて圧側室R2に連通されるとともに、排出路6が流路16を通じて伸側室R1に連通され、この状態でポンプ4が駆動されると圧側室R2に流体が供給されて伸側室R1からリザーバRへ流体が排出されるので、ダンパDを伸長させることができる。
【0020】
供給路5の途中には、リザーバRに通じる圧力制御通路18が設けられている。そして、この圧力制御通路18の途中に制御弁8が設けられている。制御弁8は、この例では、電磁圧力制御弁とされており、弁体8aと、弁体8aに供給路5側である上流側の圧力をパイロット圧として弁体8aを開弁方向に作用させるパイロット通路8bと、弁体8aに推力を与えるソレノイド8cとを備えている。ソレノイド8cは、図示しないばねとコイルとで構成されている。ソレノイド8cにおけるばねは、常に弁体8aを開弁方向へ附勢しており、対して、ソレノイド8cは、通電時には、弁体8aを附勢するばねに抗する推力を発生することができるようになっている。よって、ソレノイド8cへの通電量を調節することで制御弁8の開弁圧を高低調節することができ、供給路5内の圧力を制御弁8の開弁圧に制御することができる。
【0021】
また、図2に示すように、制御弁8のソレノイド8cへ開弁圧制御のために所定の最低電流Iminを供給すると図2中の線aで示すように開弁圧が最小となり、最大電流Imaxを与えると図2中の線bで示すように開弁圧が最大となるようになっており、ソレノイド8cへ与える電流量の調整で開弁圧を制御できるようになっている。また、ソレノイド8cへ電力供給不能な際には、制御弁8は、図2中破線で示すようにパッシブな減衰弁として機能するようになっている。
【0022】
さらに、排出路6の途中には、開閉弁9が設けられている。この開閉弁9は、2ポート2位置の電磁開閉弁とされており、遮断ポジション9bと連通ポジション9cを備えた弁体9aと、弁体9aが遮断ポジション9bとなる方向へ弁体9aを附勢するばね9dと、ばね9dとは対向する推力を発揮するソレノイド9eとを備えている。したがって、ソレノイド9eへ通電する際には、開閉弁9は連通ポジション9cを採り、ソレノイド9eへ電量供給しないと、開閉弁9は遮断ポジション9bを採るようになっている。開閉弁9は、遮断ポジション9bを採ると、方向切換弁7がいずれのポジションをとろうとも、伸側室R1および圧側室R2のリザーバRへの排出路6を通じての連通が断たれるようになっている。他方、開閉弁9は、連通ポジション9cを採ると、方向切換弁7によって選択される伸側室R1或いは圧側室R2が排出路6を通じてリザーバRに連通される。
【0023】
圧側室R2とリザーバRは、吸込通路12を通じて連通されている。吸込通路12の途中には、リザーバRから圧側室R2へ向かう流体の流れのみを許容する吸込逆止弁13が設けられている。
【0024】
またさらに、供給路5と排出路6の途中であって開閉弁9よりも上流側とが接続路10を通じて接続されており、この接続路10の途中に排出路6側から供給路5側へ向かう流体の流れのみを許容する逆止弁11が設けられている。なお、接続路10と逆止弁11は、後述するサスペンション装置Sのフェールセーフモードへ移行した際にダンパDをパッシブダンパとして機能させるために設けており、フェールセーフモードを実装しない場合には省略することもできる。
【0025】
サスペンション装置Sは、以上のように構成されており、続いて、その作動について説明する。まず、ポンプ4、方向切換弁7、制御弁8、開閉弁9および吸込逆止弁13を正常に動作させることができる通常時における作動を説明する。
【0026】
ポンプ4を駆動し、伸側室R1と圧側室R2のうち方向切換弁7によってポンプ4に接続する室にポンプ4が吐出する流体を供給し、開閉弁9を連通ポジション9cとすることで排出路6を開放して他方の室をリザーバRに連通させることで、ダンパDを積極的に伸長或いは収縮させてアクチュエータとして機能させることができる。また、制御弁8によって供給路5の圧力を調節することでダンパDの伸長方向或いは収縮方向の推力の大きさも制御することができる。
【0027】
次に、ダンパDが外力によって伸長作動している状況を考える。この状況でピストン2を下方に押し下げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合、ダンパDは、パッシブなダンパとして機能すればよく、伸側室R1内の圧力を制御することで目的の推力を発揮させることができる。したがって、この場合、方向切換弁7を第一ポジション7bとして伸側室R1を供給路5に接続するとともに圧側室R2を排出路6に接続する。開閉弁9を連通ポジション9cとして排出路6を介して圧側室R2をリザーバRへ連通する。なお、ポンプ4は、積極的に伸側室R1へ流体を供給する必要はないので、停止しておくか、極低回転に制御され、ポンプ4からの流量を略0とする。ダンパDは伸長作動しているので、圧縮される伸側室R1から供給路5へ流体が押し出されて圧力制御通路18、制御弁8を通りリザーバRへ流れ、拡大する圧側室R2内には排出路6或いは吸込通路12を介してリザーバRから流体が供給される。伸側室R1から排出される流体は制御弁8を通過してリザーバRへ流れるため、制御弁8の開弁圧を調節することで伸側室R1内の圧力を制御することができる。ここで、目標の推力をFとし、制御弁8の開弁圧をPとし、ピストン2の断面積をApとし、ロッド3の断面積をArとすると、F=P・(Ap−Ar)が成り立つので、目標の推力Fから逆算して制御弁8の開弁圧Pを求めて、制御弁8の開弁圧が求めた開弁圧Pとなるように電流供給すれば、所望する推力Fを得ることができ、サスペンション装置Sは伸長方向の作動に対してこれを抑制する推力Fを発揮することができる。図3に示すように、ピストン2のシリンダ1に対する軸方向の移動速度であるピストン速度を伸長方向で正とし、ピストン2を押し下げる方向の推力を正とすると、このようにサスペンション装置Sは、図3中の第一象限の領域で推力Fを発揮することができる。
【0028】
つづいて、ダンパDが外力を受けて伸長する場面にあって、ピストン2を上方に押し上げる力を発生させる場合には、ダンパDは、パッシブなダンパとしてではなく、積極的に推力を発揮するアクチュエータとして機能する必要があり、圧側室R2内の圧力を制御することで目的の推力を発揮させることができる。したがって、この場合、方向切換弁7を第二ポジション7cとして伸側室R1を排出路6に接続するとともに圧側室R2を供給路5に接続する。また、開閉弁9を連通ポジション9cとして排出路6を介して伸側室R1をリザーバRへ連通する。ダンパDが伸長する速度をVとすると、ポンプ4は拡大する圧側室R2へ圧側室R2の単位時間当たりの容積拡大量よりも多い流量の流体を供給する必要があるため、ポンプ4の吐出流量は、V・Ap以上の流量に制御される。ダンパDは伸長作動しているので、圧縮される伸側室R1から排出路6へ流体が押し出されポンプ4の吸込側へ流れ、拡大する圧側室R2内には供給路5を介してポンプ4から流体が供給される。ポンプ4の吐出流量に対して伸側室R1から当該ポンプ4の吐出側へ供給される流体は、シリンダ1内からロッド3が退出する体積分が不足するが、この不足分がリザーバRから供給され、ポンプ4が吐出する流体流量のうち余剰の流量は制御弁8を通過してポンプ4の吸込側へ還流される。ここで、ダンパDの推力は、P・Apとなるため、目標とする推力Fから逆算して制御弁8の開弁圧Pを求めて、制御弁8の開弁圧が求めた開弁圧Pとなるように電流供給すれば、所望する推力Fを得ることができ、サスペンション装置Sは伸長方向の作動に対してこれを助勢する推力Fを発揮することができる。このときのサスペンション装置Sは、図3中の第四象限の領域で推力Fを発揮することができる。
【0029】
さらに、ダンパDが外力によって収縮作動している状況を考える。この状況でピストン2を上方に押し上げる推力をサスペンション装置Sに発揮させる場合、ダンパDは、パッシブなダンパとして機能すればよく、圧側室R2内の圧力を制御することで目的の推力を発揮させることができる。したがって、この場合、方向切換弁7を第二ポジション7cとして伸側室R1を排出路6に接続するとともに圧側室R2を供給路5に接続する。なお、ポンプ4は、積極的に圧側室R2へ流体を供給する必要はないので、停止しておくか、極低回転に制御され、ポンプ4からの流量を略0とする。ダンパDは収縮作動しているので、圧縮される圧側室Rから供給路5へ流体が押し出されて圧力制御通路18、制御弁8を通りリザーバRへ流れ、拡大する伸側室R1内には排出路6を介してリザーバRから流体が供給される。圧側室R2から排出される流体は制御弁8を通過してリザーバRへ流れるため、制御弁8の開弁圧を調節することで圧側室R2内の圧力を制御することができる。ここで、サスペンション装置Sが発生する推力は、P・Apとなるため、目標の推力Fから逆算して制御弁8の開弁圧Pを求めて、制御弁8の開弁圧が求めた開弁圧Pとなるように電流供給すれば、所望する推力Fを得ることができ、サスペンション装置Sは収縮方向の作動に対してこれを抑制する推力Fを発揮することができる。このときのサスペンション装置Sは、図3中の第三象限の領域で推力Fを発揮することができる。
【0030】
また、ダンパDが外力を受けて収縮する場面にあって、ピストン2を下方に押し下げる力を発生させる場合には、ダンパDは、パッシブなダンパとしてではなく、積極的に推力を発揮するアクチュエータとして機能する必要があり、伸側室R1内の圧力を制御することで目的の推力を発揮させることができる。したがって、この場合、方向切換弁7を第一ポジション7bとして伸側室R1を供給路5に接続するとともに圧側室R2を排出路6に接続する。開閉弁9を連通ポジション9cとして排出路6を介して圧側室R2をリザーバRへ連通する。ダンパDが収縮する速度をVとすると、ポンプ4は拡大する伸側室R1へ伸側室R1の単位時間当たりの容積拡大量よりも多い流量の流体を供給する必要があるため、ポンプ4の吐出流量は、V・(Ap−Ar)以上の流量に制御される。ダンパDは収縮作動しているので、圧縮される圧側室R2から排出路6へ流体が押し出されポンプ4の吸込側へ流れ、拡大する伸側室R1内には供給路5を介してポンプ4から流体が供給される。ポンプ4の吐出流量に対して圧側室R2から当該ポンプ4の吐出側へ供給される流体は、シリンダ1内へ侵入するロッド3の体積分が過剰となるため、この過剰の流量がリザーバRによって吸収される。ポンプ4が吐出する流体流量のうち余剰の流量は制御弁8を通過してポンプ4の吸込側へ還流される。ここで、ダンパDの推力は、P・(Ap−Ar)となるため、目標とする推力Fから逆算して制御弁8の開弁圧Pを求めて、制御弁8の開弁圧が求めた開弁圧Pとなるように電流供給すれば、所望する推力Fを得ることができ、サスペンション装置Sは収縮方向の作動に対してこれを助勢する推力Fを発揮することができる。このときのサスペンション装置Sは、図3中の第二象限の領域で推力Fを発揮することができる。
【0031】
なお、サスペンション装置Sが図3中の各象限にて発生可能な推力Fの範囲は、制御弁8の開弁圧の上限値とポンプ4の吐出流量およびモータ15の上限トルクによって決せられる。
【0032】
そして、ポンプ4の流量の調整と制御弁8の開弁圧の制御によって、ダンパDをパッシブなダンパとしても機能させるだけでなく、積極的に推力を発揮するアクチュエータとしても機能させることができる。
【0033】
このように、本発明のサスペンション装置Sでは、ダンパDを積極的に伸縮させてアクティブサスペンションとして機能することができるだけでなく、パッシブなダンパとして発生力の発揮が期待される場面では、ポンプ4の駆動が必須ではなく、ポンプ4の駆動が必要なときにのみ駆動すればよいので、エネルギ消費が少なく、また、構成も簡単であるのでコストも安価となる。
【0034】
よって、本発明のサスペンション装置Sによれば、アクティブサスペンションとして機能できるとともに、エネルギ消費が少なく、簡単な構成でコストも安価となる。
【0035】
最後に、サスペンション装置S或いはサスペンション装置Sを制御する制御装置に何らかの異常が認められるか、ポンプ4を駆動するモータ15、方向切換弁7、制御弁8および開閉弁9の一部または全部に電力供給が不能となる事態となると、サスペンション装置Sは、上記した通常制御モードからフェールセーフモードへ移行する。フェールセーフモードでは、モータ15、方向切換弁7、制御弁8および開閉弁9への通電が正常に行えないために通電を停止するか、或いは、通電不能状態に陥っているために、モータ15、方向切換弁7、制御弁8および開閉弁9への通電が停止された状態となる。
【0036】
このフェールセーフモードでは、ポンプ4が停止し、方向切換弁7は第一ポジション7bをとって、伸側室R1を供給路5に接続するとともに圧側室R2を排出路6に接続する。開閉弁9は遮断ポジション9bに切換り、排出路6が閉鎖される。ダンパDが外力によって伸長作動する場合、伸側室R1が圧縮されるため伸側室R1内から押し出された流体は、制御弁8を通過してリザーバRへ流れる。拡大する圧側室R2には、吸込通路12を介してリザーバRから流体が供給される。制御弁8は、圧縮される伸側室R1内の圧力を非通電時における通過する流量に対する圧力損失に見合った圧力に制御する。ここで、ダンパDの推力は、非通電時の制御弁8の通過する流量に対する圧力損失をPfとすると、Pf・(Ap−Ar)となり、サスペンション装置Sは、フェールセーフモード時にあってもPf・(Ap−Ar)の大きさの伸長作動を抑制する減衰力を発揮することができる。他方、ダンパDが外力によって収縮作動する場合、圧側室R2が圧縮されるため圧側室R2内から押し出された流体は、逆止弁11を介して拡大する伸側室R1へ移動するとともに、伸側室R1で吸収しきれないロッド3がシリンダ1内に侵入する体積分の流体が制御弁8を通過してリザーバRへ流れる。制御弁8は、伸側室R1および圧側室R2内の圧力を非通電時における通過する流量に対する圧力損失に見合った圧力に制御する。ここで、ダンパDの推力は、Pf・Arとなり、サスペンション装置Sは、フェールセーフモード時にあってもPf・Arの大きさの収縮作動を抑制する減衰力を発揮することができる。
【0037】
上述したように、接続路10と、接続路10の途中に設けた逆止弁11とを備え、切換手段としての方向切換弁7が供給路5を伸側室R1へ連通するとともに排出路6を圧側室R2へ連通する第一ポジション7bと、供給路5を圧側室R2へ連通するとともに排出路6を伸側室R1へ連通する第二ポジション7cとを備えて非通電時には第一ポジション7bを採り、開閉弁9が非通電時に遮断ポジション9bを採ることによって、方向切換弁7および開閉弁9へ電力供給することができなくなったフェールセーフモードにおいて、ダンパDをパッシブなダンパとして機能させることができる。
【0038】
なお、制御弁8には、非通電時に減衰弁として機能するのではなく、リリーフ弁としてのみ機能するものを採用することも可能であるが、制御弁8が電磁圧力制御弁であって非通電時には減衰弁として機能するようにしておくことで、フェールセーフモードにおいて、ダンパDが発生する減衰力を車両のサスペンションに適したものに設定することができ、フェールセーフモード時にあっても車両における乗り心地を良好なものとすることができる。
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
1 シリンダ
2 ピストン
4 ポンプ
5 供給路
6 排出路
7 切換手段としての方向切換弁
7b 第一ポジション
7c 第二ポジション
8 制御弁
9 開閉弁
9b 遮断ポジション
9c 連通ポジション
10 接続路
11 逆止弁
12 吸込通路
13 吸込逆止弁
D ダンパ
R リザーバ
R1 伸側室
R2 圧側室
S サスペンション装置
図1
図2
図3