(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
放射線源と複数の検出素子がチャネル方向に配列された検出器とを対象の周りに回転させるスキャンにより収集された複数ビューのファンビーム投影データを受け取る手段と、
撮像視野領域における複数の分割領域の各々について、前記複数ビューのファンビーム投影データに該分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理を行って、該分割領域画像再構成用の複数ビューの等間隔パラレルビーム投影データを得るデータ変換手段と、
前記分割領域別に、該分割領域画像再構成用の複数ビューの等間隔パラレルビーム投影データに逆投影処理を行って、該分割領域を含む画像を再構成する再構成手段と、
前記複数の分割領域の各々について再構成された該分割領域を含む画像を合成することにより、前記撮像視野領域の画像を生成する生成手段と、を備えており、
前記分割領域画像再構成用ファン−パラ変換処理は、ビュー方向の補間処理、並び替え処理、およびチャネル方向の補間処理を含み、
前記ビュー方向の補間処理は、前記複数ビューのファンビーム投影データのサイノグラム上において、ビュー方向に平行な直線を、該分割領域内の代表的な位置に対応する点が描く軌跡に近づくように変形または回転させて成る曲線または直線に沿った方向に行う補間処理を含む、画像生成装置。
前記生成手段は、前記複数の分割領域の各々について再構成された該分割領域を含む画像を、該分割領域の主要部が実質的に100%となる重み付けにより加重加算する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像生成装置。
前記チャネル方向の補間処理は、前記等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の間隔が、前記検出素子のチャネル方向の配列間隔を、前記放射線源および検出器の回転中心を基準にしたときの前記検出器の検出面における投影拡大率で除して成る基準間隔より小さい処理である請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の画像生成装置。
前記等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の位置は、前記ファンビーム投影データに対してビュー方向の補間処理および並び替え処理を行って得られる不等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の位置と、前記回転中心の近傍において実質的に重なるように設定される請求項10または請求項11に記載の画像生成装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、補間処理を行って得られた等間隔パラレルビーム投影データは、補間処理前のデータと比較すると、真値からのエラー(error)をより多く含んでしまうため、再構成画像における空間分解能の低下につながる。特に、撮像視野領域の中心、すなわちアイソセンタ(iso-center)に対応する位置から離れるに従い、空間分解能の低下は顕著となる。
【0008】
このような事情により、ファン−パラ変換を行っても再構成画像における空間分解能の低下を抑えることができる技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の観点の発明は、
放射線源と複数の検出素子がチャネル方向に配列された検出器とを対象の周りに回転させるスキャン(scan)により収集された複数ビューのファンビーム投影データを受け取る手段と、
撮像視野領域における複数の分割領域の各々について、前記複数ビューのファンビーム投影データに該分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理を行って、該分割領域画像再構成用の複数ビューの等間隔パラレルビーム投影データを得るデータ変換手段と、
前記分割領域別に、該分割領域画像再構成用の複数ビューの等間隔パラレルビーム投影データに逆投影処理を行って、該分割領域を含む画像を再構成する再構成手段と、
前記複数の分割領域の各々について再構成された該分割領域を含む画像を合成することにより、前記撮像視野領域の画像を生成する生成手段と、を備えており、
前記分割領域画像再構成用ファン−パラ変換処理は、ビュー方向の補間処理、並び替え処理、およびチャネル方向の補間処理を含み、
前記ビュー方向の補間処理は、前記複数ビューのファンビーム投影データのサイノグラム(sinogram)上において、ビュー方向に平行な直線を、該分割領域内の代表的な位置に対応する点が描く軌跡に近づくように変形または回転させて成る曲線または直線に沿った方向に行う補間処理を含む、画像生成装置を提供する。
【0010】
第2の観点の発明は、
前記複数の分割領域が、前記撮像視野領域における中央領域と複数の周辺領域とを含む、上記第1の観点の画像生成装置を提供する。
【0011】
第3の観点の発明は、
前記中央領域が、円領域である、上記第2の観点の画像生成装置を提供する。
【0012】
第4の観点の発明は、
前記複数の周辺領域が、前記撮像視野領域における上側領域、下側領域、左側領域および右側領域を含む、上記第2の観点または第3の観点の画像生成装置を提供する。
【0013】
第5の観点の発明は、
前記分割領域内の代表的な位置が、該分割領域における中央または中央近傍の位置である、上記第1の観点から第4の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置を提供する。
【0014】
第6の観点の発明は、
前記生成手段が、前記複数の分割領域の各々について再構成された該分割領域を含む画像を、該分割領域の主要部が実質的に100%となる重み付けにより加重加算する、上記第1の観点から第5の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置を提供する。
【0015】
第7の観点の発明は、
前記ビュー方向の補間処理が、実測ビュー間の仮想的なビューにおけるチャネルのデータを求める処理を含んでおり、
該処理が、前記サイノグラム上において、前記代表的な位置に対応する点が描く軌跡または該軌跡に近似する曲線とチャネル方向において平行であり前記チャネルを通る曲線上の仮想的なチャネルのデータを、前記仮想的なビューに近接する複数の実測ビューにおけるチャネルのデータの補間処理により複数求め、該求められた複数のデータの補間処理により、前記仮想的なビューにおけるチャネルのデータを求める処理である上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置を提供する。
【0016】
第8の観点の発明は、
前記ビュー方向の補間処理が、実測ビュー間の仮想的なビューにおけるチャネルのデータを求める処理を含んでおり、
該処理が、前記サイノグラム上において、前記代表的な位置に対応する点が描く軌跡または該軌跡に近似する曲線における前記仮想的なビューに対応する位置での接線に平行であり前記チャネルを通る直線上の仮想的なチャネルのデータを、前記仮想的なビューに近接する複数の実測ビューにおけるチャネルのデータの補間処理により複数求め、該求められた複数のデータの補間処理により、前記仮想的なビューにおけるチャネルのデータを求める処理である上記第1の観点から第6の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置を提供する。
【0017】
第9の観点の発明は、
前記軌跡に近似する曲線が、三角関数で表される曲線である上記第1の観点から第8の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置を提供する。
【0018】
第10の観点の発明は、
前記チャネル方向の補間処理が、前記等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の間隔が、前記検出素子のチャネル方向の配列間隔を、前記放射線源および検出器の回転中心を基準にしたときの前記検出器の検出面における投影拡大率で除して成る基準間隔より小さい処理である上記第1の観点から第9の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置を提供する。
【0019】
第11の観点の発明は、
前記等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の間隔が、前記基準間隔のN分の1(Nは2以上の整数)である上記第10の観点の画像生成装置を提供する。
【0020】
第12の観点の発明は、
前記等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の位置が、前記ファンビーム投影データに対してビュー方向の補間処理および並び替え処理を行って得られる不等間隔パラレルビーム投影データのチャネル方向の位置と、前記回転中心の近傍において実質的に重なるように設定される上記第10の観点または第11の観点の画像生成装置を提供する。
【0021】
第13の観点の発明は、
放射線源と、
複数の検出素子がチャネル方向に配列された検出器と、
前記放射線源および検出器を対象の周りに回転させるスキャンにより複数ビューのファンビーム投影データを収集するデータ収集手段と、
撮像視野領域における複数の分割領域の各々について、前記複数ビューのファンビーム投影データに該分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理を行い、該分割領域画像再構成用の複数ビューの等間隔パラレルビーム投影データを得るデータ変換手段と、
前記分割領域別に、該分割領域画像再構成用の複数ビューの等間隔パラレルビーム投影データに逆投影処理を行い、該分割領域を含む画像を再構成する再構成手段と、
前記複数の分割領域の各々について再構成された該分割領域を含む画像を合成することにより、前記撮像視野領域の画像を生成する生成手段と、を備えており、
前記分割領域画像再構成用ファン−パラ変換処理が、ビュー方向の補間処理、並び替え処理、およびチャネル方向の補間処理を含み、前記ビュー方向の補間処理は、前記複数ビューのファンビーム投影データのサイノグラム上において、ビュー方向に平行な直線を、該分割領域内の代表的な位置に対応する点が描く軌跡に近づくように変形または回転させて成る曲線または直線に沿った方向に行う補間処理を含む、放射線断層撮影装置を提供する。
【0022】
第14の観点の発明は、
コンピュータ(computer)を、上記第1の観点から第12の観点のいずれか一つの観点の画像生成装置として機能させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0023】
上記観点の発明によれば、撮像視野領域を複数の領域に分割し、複数の分割領域の各々について、投影データに対するその分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理および画像再構成処理を行い、得られた複数の再構成画像を合成して撮像視野領域の画像を生成することとし、その分割領域画像再構成用のファン−パラ変換において、ファンビーム投影データをビュー方向に補間する際に、サイノグラム上において、ビュー方向に平行な直線を、分割領域内における代表的な位置に対応する点が描く軌跡に近づくように変形または回転させて成る曲線または直線に沿った方向にて行うので、各代表的な位置に近い領域の画像を再構成する上で、位置矛盾、すなわち上記補間により得られた投影データのプロファイル(profile)がチャネル方向にブロード(broad)になるのを抑え、誤差の少ないより適正な補間を行うことができ、ファン−パラ変換を行っても撮像視野領域の画像における空間分解能の低下を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0026】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【0027】
X線CT装置100は、操作コンソール(console)1と、撮影テーブル(table)10と、走査ガントリ(gantry)20とを備えている。
【0028】
操作コンソール1は、操作者からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体40の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理などを行う中央処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0029】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の空洞部Bに搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz方向、鉛直方向をy方向、z方向およびy方向に垂直な水平方向をx方向とする。
【0030】
走査ガントリ20は、回転可能に支持された回転部15を備えている。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線81をファンビーム或いはコーンビーム(cone beam)に整形するアパーチャ(aperture)23と、被検体40を透過したX線81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力信号をデータとして収集するDAS25と、X線コントローラ22,アパーチャ23の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。走査ガントリ20の本体は、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と走査ガントリ20の本体とは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0031】
X線管21およびX線検出器24は、被検体40が載置される撮影空間、すなわち走査ガントリ20の空洞部Bを挟んで互いに対向して配置されている。回転部15が回転すると、X線管21およびX線検出器24は、その位置関係を維持したまま、被検体40の周りを回転する。X線管21から放射されアパーチャ23で整形されたファンビーム或いはコーンビームのX線81は、被検体40を透過し、X線検出器24の検出面に照射される。
【0032】
なおここでは、このファンビーム或いはコーンビームのX線81のxy平面における広がり方向をチャネル方向(CH方向)、z方向における広がり方向もしくはz方向そのものをスライス(slice)方向(SL方向)、xy平面において回転部15の回転中心に向かう方向をアイソセンタ方向(I方向)で表すことにする。
【0033】
X線検出器24は、チャネル方向およびスライス方向に配設された複数の検出素子24iにより構成されている。なお、検出素子のチャネル方向の数は、例えば60°の角度範囲において900個程度、その配列間隔は、例えば1mm程度である。
【0034】
図2は、X線CT装置における画像生成処理に係る部分の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、X線CT装置100は、投影データ収集部31と、撮像視野領域分割部32と、領域別ファン−パラ変換部33と、領域別画像再構成部34と、画像合成部35と、表示制御部36とを備えている。なお、これら各部は、中央処理装置3が記憶装置7に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより機能的に実現される。
【0035】
以下、これら各部の機能をより詳しく説明する。
【0036】
図3は、投影データ収集時のジオメトリを示す図である。
【0037】
投影データ収集部31は、撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御してスキャンを実行し、複数ビューのファンビーム投影データを収集する。ファンビーム投影データは、各チャネルのデータに対応するX線パスがファンビーム状に、すなわちX線焦点から放射状に所定の角度範囲で広がった投影データである。
【0038】
本例では、
図3に示すように、上記スキャンを、1ビューに対応する回転角度が、検出素子のチャネル方向の配列間隔に対応する回転角度分Δαと実質的に等しくなるように、1回転分の回転角度に対して所定数のビューを均等に割り当てて行うものとする。また、本例では、1回転分の回転角度に対して割り当てる、実データの収集を行うビューの数は、例えば、1000ビュー程度とする。
【0039】
撮像視野領域分割部32は、撮像視野領域SFOV(SFOV;Scan Field Of View)を複数の領域に分割する。撮像視野領域SFOVは、X線間21およびX線検出器24との幾何学的位置関係により規定される撮像可能な円領域である。撮像視野領域SFOVにおける複数の分割領域の各々は、後述する特徴的なファン−パラ変換処理により画質向上が図られる領域の単位となる。
【0040】
領域別ファン−パラ変換部33は、撮像視野領域SFOVにける複数の分割領域の各々について、収集された複数ビューのファンビーム投影データに対してその分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理を行い、その分割領域画像再構成用の等間隔パラレルビーム投影データを得る。分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理は、その分割領域の画像再構成に適したファン−パラ変換処理であり、その分割領域の再構成画像における画質の向上が図られる特徴的な変換処理である。当該処理については後ほど詳述する。
【0041】
領域別画像再構成部34は、撮像視野領域SFOVにおける分割領域別に、その分割領域画像再構成用の等間隔パラレル投影データに対して、逆投影処理を行うことにより、その分割領域を含む画像を再構成する。逆投影処理としては、例えば、フィルタ逆投影処理(filtered back-projection process)、コンボリューション逆投影処理(convolution back-projection process)などを用いることができる。フィルタ逆投影処理は、投影データのフーリエ変換に周波数空間で再構成関数(フィルタ関数)を乗算し、逆フーリエ変換して画像を再構成する処理である。また、コンボリューション逆投影処理は、再構成関数の逆フーリエ変換を求め、これを実空間上で投影データに重畳すなわちコンボリューションして逆投影することにより、画像を再構成する処理である。
【0042】
画像合成部35は、複数の分割領域別の各々ついて再構成されたその分割領域を含む画像を合成して、画像領域全体の画質が改善された撮像視野領域SFOVの画像を生成する。
【0043】
表示制御部36は、画像合成により生成された撮像視野領域SFOVの画像等を画面に表示するようモニタ6を制御する。
【0044】
ここで、本実施形態によるファン−パラ変換の考え方および処理について説明する。
【0045】
図4は、ファン−パラ変換時のジオメトリ(geometry)を示しており、左側がファンビームのジオメトリ、右側がパラレルビームのジオメトリである。
【0046】
ファン−パラ変換処理は、データ収集部31により収集された複数ビューのファンビーム投影データに対して、ビュー方向の補間処理、並び替え処理、およびチャネル方向の補間処理を行い、複数のビュー方向について等間隔パラレルビーム投影データを得る処理である。
【0047】
まず、ビュー方向の補間処理について説明する。ビュー方向の補間処理は、後述の並び替え処理を行ったときに、各チャネルのデータのX線パス(path)が、互いに平行となるパラレル投影データが得られるようにするための処理である。
【0048】
図5は、回転部15の回転中心であるアイソセンタISOから離れた位置にあるオブジェクトJのサイノグラムSGを示す図である。サイノグラムとは、スキャン時に収集された各ビュー(投影角度位置)におけるX線検出器からの出力プロファイル(profile)を示したものであり、X線検出器24の各チャネルの出力データを輝度表示とし、時系列で表したものである。サイノグラムは、通常、横軸にチャネル(番号)、縦軸にビュー(番号)を取る。なお、この例では、オブジェクト(object)Jとして、微小球体を想定している。
【0049】
図5左図のように、オブジェクトJがアイソセンタISOの上側(+y方向)に位置しており、X線管21をD−A−B−C−Dの各位置を順番に通るように1回転させてスキャンした場合、
図5右図のようなサイノグラムSGが得られる。このサイノグラムSG上には、オブジェクトJに対応する点(信号)の軌跡KJがS字状に描かれる。この時、X線管21がA,B,C,Dの各位置の近傍にあるときのX線検出器24の出力プロファイルを、それぞれ3ビュー分ずつ、その軌跡に重ねて示す。PA,PB,PC,PDは、それぞれ、位置A,B,C,Dに対応する3ビュー分の出力プロファイルである。ここで、X線管21が位置Aおよび位置Cの近傍にある場合、サイノグラムSG上のオブジェクトJに対応する位置は、X線検出器24上でチャネル番号が最小または最大となるチャネルの変曲点に位置する。そのため、この位置での軌跡KJに沿った方向は、それぞれ、DA,DCで示すように、ビュー方向にほぼ平行になり、すなわちチャネル方向にほぼ直交し、その3ビュー分のプロファイルは、チャネル方向においてほぼ重なる。一方、X線管21が位置Bおよび位置Dの近傍にある場合、サイノグラムSG上のオブジェクトJに対応する位置は、X線検出器24の中心あたりに位置するが、チャネル番号が最小または最大となるチャネルからその反対側へ移動する過程である。そのため、この位置での軌跡KJに沿った方向は、それぞれ、DB,DDで示すように、ビュー方向から大きく傾いており、その3ビュー分のプロファイルは、チャネル方向における位置として、比較的大きなずれが生じる。このような場合、従来のようにビュー方向に同じチャネル番号のデータ同士で補間処理を行うと、補間処理後のデータは、チャネル方向における位置矛盾が比較的大きいプロファイルをそのまま使って求めることになる。そのため、補間処理後のデータは、ブロード(broad)なプロファイルとなり、結果として空間分解能を失うこととなる。
【0050】
そこで、本実施形態では、ビュー方向の補間処理を行う際に、補間処理後のデータが、上記のようなチャネル方向にブロードなプロファイルとならないよう、補間処理を行う方向を調整する。すなわち、撮像視野領域SFOVにおいて所定の位置を想定し、その所定の位置に置かれた微小球体のオブジェクトをスキャンしたときのサイノグラムを求める。さらに、このサイノグラム上において、上記オブジェクトに対応する点(プロファイル)がビュー方向に描く軌跡を求める。そして、上記の所定の位置付近の領域の画像再構成に用いる各ビューのファンビーム投影データに対して、上記の軌跡に沿った方向にてビュー方向の補間処理を行う。なお、ここでは、撮像視野領域SFOV内のオブジェクトをスキャンしたときのサイノグラム上において、このオブジェクトに対応する点が描く軌跡のことを、サイノグラム軌跡と呼ぶことにする。
【0051】
ちなみに、従来は、DAS25のサンプリング(sampling)数を増やしてガントリ1回転当たりのビュー数を増大させると、撮像視野領域SFOVの周辺部で空間分解能が改善するため、その周辺部でビュー密度が不足しているとの認識が強かった。しかし、その認識は、実は誤解である。実際には、ガントリ1回転当たりのビュー数を増大させると、ビュー同士の間の距離が小さくなる。すると、ビュー方向の補間処理を行う際に、ファンビーム投影データのプロファイルがチャネル方向にブロードになるといった位置矛盾が小さくなる。その結果、撮像視野領域SFOVの周辺部で空間分解能が改善されていたのである。つまり、ガントリ1回転当たりのビュー数を増大させなくても、ビュー方向の補間処理を、正しい方向、すなわちサイノグラム軌跡に沿った方向にて行うことにより、空間分解能の改善を行うことができるのである。
【0052】
ここで、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理の方法の例として、2つの方法を説明する。
【0053】
まず、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理の第1の方法について説明する。
図6は、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理の第1の方法を説明するための図である。
【0054】
図6に示すように、サイノグラムSGには、実測された第1のビューV1のファンビーム投影データと、実測された第2のビューV2のファンビーム投影データとが含まれている。第1のビューV1と第2のビューV2とは、ビュー方向において隣り同士である。
【0055】
今、第1のビューV1と第2ビューV2との間に仮想的な第3のビューV3を想定し、この第3のビューV3のファンビーム投影データを、実測された第1のビューV1および第2のビューV2のファンビーム投影データの補間処理により求めることを考える。なお、
図6のサイノグラムSGにおいて、黒丸は実測されたチャネルのデータ、白丸は仮想的なチャネルのデータをそれぞれ示している。
【0056】
まず、第3のビューV3のファンビーム投影データのチャネルCiに注目する。サイノグラムSG上において、撮像視野領域SFOVにおける所定の位置に対応する点のサイノグラム軌跡KJを特定する。
【0057】
次に、サイノグラム軌跡KJとチャネル方向において平行であり、チャネルCiを通る曲線Miを想定する。曲線Mi上の仮想的なチャネルのデータを、第3のビューV3に近接する複数の実測ビューにおけるチャネルのデータの補間処理により求める。本例では、第1のビューV1におけるチャネルCa,Cbのデータを用いた補間処理により、第1のビューV1における曲線Mi上の仮想的なチャネルCcのデータを求める。また、第2のビューV2におけるチャネルCd,Ceのデータを用いた補間処理により、第2のビューV2における曲線Mi上の仮想的なチャネルCfのデータを求める。
【0058】
そして、先に求められた曲線Mi上の仮想的なチャネルのデータを用いた補間処理により、仮想的な第3のビューV3のチャネルCiのデータを求める。本例では、第1のビューV1のチャネルCcのデータと、第2のビューV2のチャネルCfのデータとの補間処理により、第3のビューV3のチャネルCiのデータを求める。
【0059】
次に、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理の第2の方法について説明する。
図7は、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理の第2の方法を説明するための図である。
【0060】
図7に示すように、サイノグラムSGには、実測された第1のビューV1のファンビーム投影データと、実測された第2のビューV2のファンビーム投影データとが含まれている。第1のビューV1と第2のビューV2とは、ビュー方向において隣り同士である。
【0061】
第1の方法と同様、第1のビューV1と第2ビューV2との間に仮想的な第3のビューV3を想定し、この第3のビューV3のファンビーム投影データを、実測された第1のビューV1および第2のビューV2のファンビーム投影データの補間処理により求めることを考える。なお、
図7のサイノグラムSGにおいて、黒丸は実測されたチャネルのデータ、白丸は仮想的なチャネルのデータをそれぞれ示している。
【0062】
まず、第3のビューV3のファンビーム投影データのチャネルCiに注目する。サイノグラムSG上において、撮像視野領域SFOVにおける所定の位置に対応する点のサイノグラム軌跡KJを特定する。特定されたサイノグラム軌跡KJにおける第3のビューV3に対応する位置Kを特定する。
【0063】
次に、サイノグラム軌跡KJ上の位置Kにおいて、その接線に平行であり、チャネルCiを通る直線Liを想定する。直線Li上の仮想的なチャネルのデータを、第3のビューV3に近接する複数の実測ビューにおけるチャネルのデータの補間処理により求める。本例では、第1のビューV1におけるチャネルCa,Cbのデータを用いた補間処理により、第1のビューV1における直線Li上の仮想的なチャネルCc′のデータを求める。また、第2のビューV2におけるチャネルCd,Ceのデータを用いた補間処理により、第2のビューV2における直線Li上の仮想的なチャネルCf′のデータを求める。
【0064】
そして、先に求められた直線Li上の仮想的なチャネルのデータを用いた補間処理により、仮想的な第3のビューV3のチャネルCiのデータを求める。本例では、第1のビューV1のチャネルCc′のデータと、第2のビューV2のチャネルCf′のデータとの補間処理により、第3のビューV3のチャネルCiのデータを求める。
【0065】
なお、ここでの補間処理は、例えば、線形補間(一次補間)を考えることができる。ただし、仮想的なチャネルのデータを3つ以上求めて、それらを用いた多次補間により、仮想的な第3のビューV3のチャネルCiのデータを求めるようにしてもよい。多次補間としては、例えば、スプライン(spline)補間、ラグランジェ(Lagrange)補間、ニュートン(Newton)補間、バイリニア(bi-linear)補間などが挙げられる。
【0066】
また、サイノグラム軌跡は、sinθあるいはcosθなどの三角関数で表される曲線に近似していることから、サイノグラム軌跡KJの代わりに、これに近似する三角関数の曲線を求めて用いるようにしてもよい。
【0067】
このようなサイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理を、仮想的な第3のビューV3における各チャネルCiについて行うことにより、第3のビューV3におけるファンビーム投影データ全体を求める。また、第3のビューV3におけるファンビーム投影データを求める処理と同様の処理を、補間が必要な各仮想的なビューについて行うことにより、複数ビューのファンビーム投影データ全体に対して、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理を行う。
【0068】
なお、本例では、仮想的なビューのデータを、この仮想的なビューに近接する2つの実測ビューのデータの補間処理により求めているが、もちろん、この仮想的なビューに近接する3つ以上の実測ビューのデータの補間処理により求めてもよい。ただし、この場合にも、上記の曲線Miまたは直線Li上の仮想的なチャネルのデータを求めてから、さらにこれらの補間処理を行うようにする。
【0069】
ところで、サイノグラム軌跡は、そのオブジェクトの位置によってそれぞれ異なることは明らかである。したがって、ビュー方向の補間処理をサイノグラム軌跡に沿った方向にて行うことにより、撮像視野領域SFOVの再構成画像における空間分解能を全体的に改善しようとする場合には、局所領域ごとに、その局所領域の画像再構成に用いるファンビーム投影データのビュー方向の補間処理を、その局所領域に位置するオブジェクトのサイノグラム軌跡に沿った方向にて行う必要がある。そうでないと、ファンビーム投影データの矛盾はかえって大きくなり、再構成画像の画質が劣化する。
【0070】
そこで、本実施形態では、撮像視野領域SFOVを複数の領域に分割し、その分割領域ごとに、その分割領域の画像再構成に用いるファンビーム投影データのビュー方向の補間処理を、その分割領域内の代表的な位置にあると想定されたオブジェクトのサイノグラム軌跡に沿った方向にて行うようにする。分割領域内の代表的な位置は、例えば、分割領域における中央または中央近傍の位置である。
【0071】
なお、この特徴的なビュー方向の補間処理による再構成画像全体の画質向上効果は、撮像視野領域SFOVの分割領域の数が多いほど大きくなる。特に、撮像視野領域SFOVを、再構成画像を構成する各画素領域単位で分割する場合に、画質向上効果は最大となる。しかし、分割領域の数を増やすと、その分、計算量が増大し処理時間が長くなる。そのため、実際には、分割領域の数は、期待する画質向上効果の大きさと、許容できる処理時間(待ち時間)もしくは許容できる中央処理装置3への負荷の大きさとのバランスにより決定される。現時点においては、実施環境を考慮すると、再構成画像のサイズを128×128画素とした場合に、例えば、分割領域の数は2〜10程度が適当であると考えられる。
【0072】
また、この特徴的なビュー方向の補間処理による画質向上の効果は、対象となる分割領域内の代表的な位置を中心として半径方向に徐々に弱くなっていくと考えられる。さらには、撮像視野領域SFOVにおいて関心が持たれる領域は、撮像視野領域SFOVの中央領域であることが多い。
【0073】
そこで、撮像視野領域SFOVの領域分割の方法としては、例えば、撮像視野領域SFOVをその中央領域と複数の周辺領域とに分割する方法が考えられる。より具体的には、例えば、撮像視野領域SFOVを、その中央領域である円領域と、撮像視野領域SFOVからその円領域を除いた領域を撮像視野領域SFOVの中心から放射状に伸びる直線で等分した2〜8つの領域とに分割する方法が考えられる。
【0074】
図8は、撮像視野領域SFOVにおける領域分割の一例と、それぞれの分割領域における代表的な位置にあると想定されたオブジェクトのサイノグラム軌跡とを示す図である。
【0075】
本実施形態では、上述の観点から、
図8に示すように、撮像視野領域SFOVを、5つの領域、すなわち、上側領域である第1の領域R1と、下側領域である第2の領域R2と、左側領域である第3の領域R3と、右側領域である第4の領域R4と、中央領域である第5の領域R5とに分割する。
【0076】
そして、
図8に示すように、第1の領域R1の画像再構成に用いるファンビーム投影データのビュー方向の補間処理は、第1の領域R1内の代表的な位置にあると想定された第1のオブジェクトJ1のサイノグラム軌跡KJ1に沿った方向にて行う。この場合、第1の領域R1から離れた領域では、正しい補間処理にはならない。しかし、第1の領域R1から離れた領域では、第2の領域R2〜第5の領域R5での正しいビュー方向の補間処理および画像再構成によりフォローされる。
【0077】
また、第2の領域R2の画像再構成に用いるファンビーム投影データのビュー方向の補間処理は、第2の領域R2内の代表的な位置にあると想定された第2のオブジェクトJ2のサイノグラム軌跡KJ2に沿った方向にて行う。この場合、第2の領域R2から離れた領域では、正しい補間処理にはならない。しかし、第2の領域R2から離れた領域では、第1の領域R1,第3の領域R3〜第5の領域R5での正しいビュー方向の補間処理および画像再構成によりフォロー(follow)される。
【0078】
第3の領域R3〜第5の領域R5についても同様に、ビュー方向の補完処理を、それぞれの領域内の代表的な位置にあると想定されるオブジェクトのサイノグラム軌跡に沿った方向にて行う。すなわち、第3の領域R3については、第3のオブジェクトJ3のサイノグラム軌跡KJ3を用い、第4の領域R4については、第4のオブジェクトJ4のサイノグラム軌跡KJ4を用い、第5の領域R5については、第5のオブジェクトJ5のサイノグラム軌跡KJ5を用いて、ビュー方向の補間処理が行われる。それぞれの領域での正しいビュー方向の補完処理ではカバー(cover)できない領域については、他の領域での正しいビュー方向の補間処理によりフォローされる。
【0079】
なお、第5の領域R5は、撮像視野領域SFOVの中央に位置する領域なので、代表的な位置が撮像視野領域SFOVの中心、すなわちアイソセンタISOに対応する位置となる。そのため、サイノグラム軌跡KJ5は、チャネル方向の中央に位置しビュー方向に伸びる直線状の軌跡となり、この場合のビュー方向の補間処理だけ従来法と変わらない。
【0080】
次に、並べ替え処理について説明する。並び替え処理は、第1の領域R1〜第5の領域R5の領域ごとに行われる。並び替え処理は、サイノグラム軌跡に沿った方向でのビュー方向の補間処理によって得られた複数ビューのファンビーム投影データ(実測データを含む)を、各チャネルのデータごとにばらして並べ替えることにより、複数のビュー方向について、X線パスが平行なパラレルビーム投影データを得る処理である。
【0081】
図4に示すジオメトリから分かるように、並び替え処理後に得られるパラレルビーム投影データでは、各チャネルのデータに対応するX線パスのアイソセンタISOからの距離Dαは、Dα=Fi×sin(α)で表される。ここで、FiはX線焦点とアイソセンタISOとの距離、αはある検出素子24iの回転角度である。つまり、この並び替え処理後に得られるパラレルビーム投影データは、各チャネルのデータに対応するX線パスがチャネル方向に不等間隔に並んだ不等間隔パラレルビーム投影データである。
【0082】
投影データ収集部31により実行されるスキャンは、上述の通り、1ビューに対応する回転角度が、検出素子24iのチャネル方向の配列間隔に対応する回転角度分Δαと実質的に等しくなるように、1回転分の回転角度に対して所定数のビューを均等に割り当てて行うものとしている。そのため、不等間隔パラレルビーム投影データにおけるX線パスのチャネル方向の間隔は、アイソセンタISO近傍において、X線検出器24における検出素子24iのチャネル方向の配列間隔を、アイソセンタISOを基準としたときの検出面での投影拡大率(X線拡大率ともいう)で除して成る間隔Δdになる。すなわち、この間隔Δdは、
図3に示すように、X線焦点21fからアイソセンタISO近傍を通ってある1つの検出素子24iの中心までを結ぶ直線と、X線焦点21fからこの検出素子24iに隣接する検出素子24iの中心までを結ぶ直線とを想定したとき、アイソセンタISO近傍でのこの2直線間の距離に相当するものである。再構成画像における空間分解能は、幾何学的にみると、この間隔Δdよりも高めることができず、この間隔Δdは、再構成画像における空間分解能を最も高める限界条件と考えられている。ここでは、この間隔Δdを「基準間隔」と呼ぶことにする。なお、検出素子のチャネル方向の配列間隔が1mm程度である場合、基準間隔Δdは、例えば0.5mm程度である。
【0083】
次に、チャネル方向の補間処理について説明する。チャネル方向の補間処理は、第1の領域R1〜第5のR5の領域ごとに行われる。チャネル方向の補間処理は、ビュー方向の補間処理、および並び替え処理によって得られた不等間隔パラレルビーム投影データに対して補間処理を行い、各データに対応するX線パスが平行かつチャネル方向に等間隔に並んだ等間隔パラレルビーム投影データを得る処理である。なお、このチャネル方向の補間処理においては、等間隔パラレルビーム投影データにおけるX線パスの位置は、不等間隔パラレルビーム投影データにおけるX線パスと、アイソセンタ近傍において実質的に重なるように設定する。
【0084】
ここで、チャネル方向の補間処理について、一般的な方法と本実施形態による方法とを比較して説明する。
【0085】
図9は、一般的な方法によるチャネル方向の補間処理を説明するための図である。
図9の上側の矢印群(non-normalized Fan Data)は、不等間隔パラレルビーム投影データP1におけるX線パスを簡略化して表したものである。また、
図9の下側の矢印群(normalized Fan Data)は、一般的な方法による補間処理後の等間隔パラレルビーム投影データP2におけるX線パスを簡略化して表したものである。
【0086】
一般的な方法では、
図9に示すように、等間隔パラレルビーム投影データP2におけるX線パスのチャネル方向の間隔は、基準間隔Δdと実質的に同じになるように設定する。つまり、得ようとする等間隔パラレルビーム投影データP2のX線パスの間隔すなわちチャネル方向のサンプリング間隔の設定は、再構成画像における空間分解能を最も高くできるとされる上限に既に達しており、これ以上細かくサンプリングしても、計算処理量が増えるだけで、空間分解能の向上に寄与しないと考えられている設定が成される。
【0087】
不等間隔パラレルビーム投影データP1におけるX線パスの間隔と、等間隔パラレルビーム投影データP2におけるX線パスの間隔との差は、実際には微小である。しかし、不等間隔パラレルビーム投影データP1におけるX線パスと、等間隔パラレルビーム投影データP2におけるX線パスとの位置関係は、アイソセンタISO近傍ではずれがなく、アイソセンタISOから離れるにつれ微小なずれが生じ始める。そして、アイソセンタISOからの距離が大きくなるに連れて、その微小なずれが積み重なって徐々に大きくなり、ある位置で極大点をとる。この極大点の周辺では、空間分解能を維持するのに必要な情報が失われる。この極大点を過ぎると、X線パスの位置的なずれは徐々に小さくなり、ある位置ではずれがなくなり、X線パス同士が一致する。その後、また徐々にずれが大きくなり、再び極大点をとる。
【0088】
このように、空間分解能、例えばその指標であるMTF(Modulation Transfer Function)は、アイソセンタISOからの距離に応じて周期性を伴って低下していく。
【0089】
図10は、一般的な方法による再構成画像におけるアイソセンタISOからの距離に応じた空間分解能の変化を表すグラフ(graph)であり、シミュレーション(simulation)によって得られたものである。左側のグラフは、MTF値が50%になるときの1cm当たりのラインペア(line pair)数を画像上の各位置で求め、それらをプロット(plot)したものである。また、右側のグラフは、MTF値が10%になるときの1cm当たりのラインペア数を画像上の各位置で求め、それらをプロットしたものである。いずれのグラフにも、参考のために、ファンビーム投影データを基にした再構成画像における空間分解能の変化曲線を入れてある。これらのグラフにおいても、一般的な方法による再構成画像においては、空間分解能がアイソセンタISOからの距離に応じて周期性を伴って低下していく様子が観測される。
【0090】
一般的な方法の場合、不等間隔パラレルビーム投影データにおけるX線パスと、等間隔パラレルビーム投影データにおけるX線パスとの位置的なずれ量が部分的に大きくなり、その周辺で空間分解能が低下してしまう。
【0091】
図11は、本実施形態の方法によるチャネル方向の補間処理を説明するための図である。
図11の上側の矢印群は、不等間隔パラレルビーム投影データP1におけるX線パスを簡略化して表したものである。また、
図11の下側の矢印群は、本実施形態の方法による補間処理後の等間隔パラレルビーム投影データP3におけるX線パスを簡略化して表したものである。
【0092】
本実施形態の方法では、
図11に示すように、等間隔パラレルビーム投影データP3におけるX線パスのチャネル方向の間隔は、基準間隔Δdより小さく設定し、さらには、基準間隔Δdの1/N(Nは2以上の整数)と実質的に同じになるように設定する。
【0093】
一見すると、このようにしても、空間分解能の向上には寄与しないと思われるかもしれない。しかし、実は、このように、等間隔パラレルビーム投影データP3におけるX線パスのチャネル方向の間隔を、基準間隔Δdよりも小さくすると、確度の高い補間前のデータすなわち不等間隔パラレルビーム投影データP1におけるデータそのものまたはこれに近い補間後のデータが逆投影処理に用いられる機会を増大させることができ、再構成画像における空間分解能の低下を抑えることが可能となる。
【0094】
また、さらには、等間隔パラレルビーム投影データP3におけるX線パスのチャネル方向の間隔を、基準間隔Δdの1/N(Nは2以上の整数)とすることで、等間隔パラレルビーム投影データP3の中に、不等間隔パラレルビーム投影データP1におけるデータそのもの、またはこれに近いデータを、より多く含めることができ、再構成画像における空間分解能の低下をより抑えることが可能となる。
【0095】
なお、上記の整数Nが大きいほど、空間分解能低下の抑制効果は大きくなるが、その効果は徐々に頭打ちになる一方、計算処理量は増大し続ける。そのため、効果と計算量とのバランス(balance)を考慮すると、現時点における設定としては、例えばN=2〜4程度が望ましい。
【0096】
また、上記の補間処理としては、例えば、線形補間(一次補間)のほか、スプライン(spline)補間、ラグランジェ(Lagrange)補間、ニュートン(Newton)補間、バイリニア(bi-linear)補間などの多次補間を用いることができる。
【0097】
上記の補間処理として多次補間を用いる場合には、補間処理の次数を、この補間処理により得ようとするデータに対応するX線パスのアイソセンタISOからの距離に応じて変えるようにしてもよい。例えば、この距離が小さいときは、補間処理の次数を小さくし、この距離が大きくなるほど、補間処理の次数を大きくしていくようにしてもよい。このようにすれば、再構成画像におけるアイソセンタISOに対応する中心からの半径方向での空間分解能の高低傾向により適した補間処理を適用することができ、空間分解能の低下をさらに抑制することが期待できる。
【0098】
また、補間処理に用いる元のデータに対する重み付けを、この補間処理により得ようとするデータに対応するX線パスと、この補間処理に用いる元のデータに対応するX線パスとの距離に応じて変えるようにしてもよい。つまり、重み付けに非線形性を与えるようにしてもよい。例えば、この距離が小さいときは、重みを大きくし、この距離が大きくなるほど、重みを小さくしていくようにしてもよい。このようにすれば、補間後のデータに対応するX線パスが、その補間処理に用いる元のデータに対応するX線パスに十分近いと判断できるときに、その元のデータに対する重み付けを線形補間の場合よりもより大きくして、実データにより近いデータを得ることができ、空間分解能の低下をさらに抑制することが期待できる。
【0099】
なお、ビュー方向の補間処理、並び替え処理、およびチャネル方向の補間処理は、アルゴリズム(algorithm)上において、それぞれ分けて段階的に行ってもよいし、一つの処理にまとめて行ってもよい。
【0100】
本実施形態に係るX線CT装置における画像生成処理の流れを説明する。
【0101】
図12は、本実施形態に係るX線CT装置における画像生成処理の流れを示すフローチャート(flowchart)である。
【0102】
ステップ(step)S1では、データ収集部31が、被検体40に対するスキャンを実行して、複数ビューのファンビーム投影データを収集する。このとき、例えば、実データの収集を行う各ビューを、検出素子24iの配列間隔分に相当する回転角度幅ごとに割り当てる。なお、これに相当するビュー数のファンビーム投影データを、実データによるビュー方向の補間を含めて生成する場合には、実データの収集を行うビューを、スキャン1回転分の回転角度に対して少なくとも1000以上割り当てるようにする。
【0103】
ステップS2では、撮像視野領域分割部32が、撮像視野領域SFOVを上記第1の領域R1〜第5の領域R5に分割する。
【0104】
ステップS3では、領域別ファン−パラ変換部33が、第1〜第5の領域R1〜R5の領域ごとに、ステップS1にて収集された複数ビューのファンビーム投影データに対して、その領域の再構成画像における画質向上に適したファン−パラ変換を行い、等間隔パラレルビーム投影データを得る。ファン−パラ変換では、ビュー方向の補間処理、並び替え処理、およびチャネル方向の補間処理を行う。このとき、ビュー方向の補間処理は、関心領域の中心点のサイノグラム軌跡に沿った方向にて行う。また、チャネル方向の補間処理は、X線パスのチャネル方向の間隔が、基準間隔Δdの1/N(Nは例えば2〜4の整数)となるように行う。
【0105】
ステップS4では、領域別画像再構成部34が、第1〜第5の領域R1〜R5の領域ごとに、ステップS3にて得られた等間隔パラレルビーム投影データに対して逆投影処理を行う。これにより、第1の領域R1の画質が最適化された第1の画像G1〜第5の領域R5の画質が最適化された第5の画像G5である5つの画像が再構成される。
【0106】
なお、ステップS3およびS4に関し、本例では、第1〜第5の領域R1〜R5の領域ごとにファン−パラ変換を行った後、第1〜第5の領域R1〜R5の領域ごとに画像再構成を行っているが、第1〜第5の領域R1〜R5の領域ごとに、ファン−パラ変換および画像再構成を行うようにしてもよい。
【0107】
ステップS5では、画像合成部35が、第1の画像G1〜第5の画像G5を加重加算して合成することにより、撮像視野領域全体の画質が最適化された画像GAを生成する。この際、第1の画像G1の加重加算における重み付け、すなわち合成比率は、第1の領域R1の主要部が実質的に100%となるようにする。そして、第1の領域R1の境界をまたぐ境界付近の領域においては、その重み付けが第1の領域R1の内側から外側に向かって100%から0%へ徐々に減少するよう調整する。第2の画像G2〜第5の画像G5においても同様である。これにより、撮像視野領域の画像GAを、第1の領域から第5の領域の境界において違和感のない自然な画像にすることができる。
【0108】
ステップS6では、表示制御部36が、ステップS5にて生成された画像を表示する。
【0109】
なお、上記のフローでは、ビュー方向の補間処理を、サイノグラム軌跡の方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、チャネル方向の間隔が基準間隔Δdより小さくなるよう行っているが、いずれか一方の補間処理を、従来通りの一般的な方法にて行うようにしてもよい。
【0110】
なお、本実施形態では、撮像視野領域SFOVにおいて分割する複数の領域は、所定の領域に固定されているが、手動または自動で任意に設定できるようにしてもよい。自動で設定する場合には、例えば、撮影部位ごとに分割する領域を予め決めておき、従来法によって再構成された断層像の画像認識処理により撮影部位を認識し、認識された撮影部位に応じて分割する領域を決定するようにしてもよい。このようにすれば、撮影部位ごとに、関心が高いと想定される領域の画質をピンポイントで改善することが可能である。
【0111】
これより、一般法による画像と本法による画像との比較結果について説明する。
【0112】
図13は、一般法による画像と本法による画像との第1の比較例を示す図である。本例は、スリットファントム(phantom)を、その中心がアイソセンタISOから半径90mmの位置に来るよう配置してスキャンしたときの例である。左上の画像G11(Orig)は、一般法によるオリジナル画像であり、ビュー方向の補間処理を、チャネル方向と直交する方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔が基準間隔Δdとなるように行ったときのものである。左下の画像G12(Sinov)は、ビュー方向の補間処理を、スリットファントムの中心点のサイノグラム軌跡に沿った方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、従来通り、X線パスの間隔が基準間隔Δdとなるように行ったときのものである。右上の画像G13(Chup2)は、ビュー方向の補間処理を、従来通り、チャネル方向に直交する方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔が基準間隔Δdの1/2となるように、すなわちチャネル方向のサンプリング(sampling)が2倍密となるように行ったときのものである。また、右下の画像G14(Chup2&Sinov)は、ビュー方向の補間処理を、スリットファントムの中心点のサイノグラム軌跡に沿った方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔が基準間隔Δdの1/2となるように行ったときのものである。それぞれの画像内の右下側には、各画像の一部拡大図が示されている。
【0113】
この第1の比較例から、一般法による画像G11より、本法による画像G12〜G14の方が、空間分解能が改善されているのが分かる。特に、本法による画像G14では、ビュー方向の補間処理をサイノグラム軌跡に沿った方向にて行うことと、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔が基準間隔Δdの1/2となるように行うこととによる相乗効果が非常によく現れている。
【0114】
図14は、一般法による画像と本法による画像との第2の比較例を示す図である。本例は、頭部ファントムをスキャンしたときの例であり、画像は、アイソセンタから半径125mmの位置にある内耳骨部分の構造を示している。左上の画像G21(org)は、一般法によるオリジナル画像であり、ビュー方向の補間処理を、チャネル方向と直交する方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔がΔdとなるように行ったときのものである。左下の画像G22(Sinov)は、本法による画像であり、ビュー方向の補間処理を、内耳骨の中心点のサイノグラム軌跡に沿った方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、従来通り、X線パスの間隔がΔdとなるように行ったときのものである。右上の画像G23(Chup2)は、ビュー方向の補間処理を、従来通り、チャネル方向に直交する方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔が基準間隔Δdの1/2となるように行ったときのものである。また、右下の画像G24(Chup2&Sinov)は、ビュー方向の補間処理を、内耳骨の中心点のサイノグラム軌跡に沿った方向にて行い、チャネル方向の補間処理を、X線パスの間隔が基準間隔Δdの1/2となるように行ったときのものである。それぞれの画像内の右下側には、各画像の一部拡大図が示されている。
【0115】
この第2の比較例からも、本法による画像では、内耳の骨構造の空間分解能が改善されていることが分かる。特に、画像G24では、内耳骨の微細構造が非常に高い空間分解能で表されている。
【0116】
次に、本法により生成される撮像視野領域全体を表す画像のサンプルを示す。
【0117】
図15は、本法により生成された撮像視野領域全体を表すサンプル画像を示す図である。このサンプル画像G3は、人の胸部ファントムのアキシャル断層像であり、
図15に示すように、撮像視野領域SFOVを第1〜第5の領域R1〜R5に分割して画質向上が成されたものである。胸部の場合には、撮像視野領域SFOVにおいて肺の細かい血管組織が左右に離れて現れる。従来法では、中央領域の画質のみが向上し周辺領域の画質が劣化するので、関心が持たれる肺の細かい血管組織の空間分解能が低下する傾向が強い。一方、本法では、中央領域だけでなく左右両側の周辺領域においても画質が向上しており、肺の細かい血管組織の空間分解能が低下することなく高く維持される。
【0118】
このように、本実施形態によれば、撮像視野領域を複数の領域に分割し、複数の分割領域の各々について、投影データに対するその分割領域画像再構成用のファン−パラ変換処理および画像再構成処理を行い、得られた複数の再構成画像を合成して撮像視野領域の画像を生成することとし、その分割領域画像再構成用のファン−パラ変換において、ファンビーム投影データをビュー方向に補間する際に、サイノグラム上において、ビュー方向に平行な直線を、分割領域内における代表的な位置に対応する点が描く軌跡に近づくように変形または回転させて成る曲線または直線に沿った方向にて行うので、各代表的な位置に近い領域の画像を再構成する上で、位置矛盾、すなわち上記補間により得られた投影データのプロファイル(profile)がチャネル方向にブロード(broad)になるのを抑え、誤差の少ないより適正な補間を行うことができ、ファン−パラ変換を行っても撮像視野領域の画像における空間分解能の低下を抑えることができる。
【0119】
また、本実施形態によれば、チャネル方向の補間処理を、X線パスのチャネル方向の間隔が、検出素子のチャネル方向の配列間隔を、いわゆるアイソセンタを基準にしたときの検出器の検出面における投影拡大率で除して成る基準間隔より小さい間隔となるように行っているので、確度の高い補間前のデータまたはこれに近い補間後のデータをより多く逆投影処理に用いることができ、ファン−パラ変換を行っても再構成画像における空間分解能の低下を抑えることができる。
【0120】
なお、本実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更・追加等が可能である。
【0121】
例えば、本実施形態では、ビュー方向の補間処理を、サイノグラム軌跡またはそれに近い曲線または直線に沿った方向にて行っているが、ビュー方向に平行な直線を、撮像視野領域内の所望の位置のサイノグラム軌跡に近づくように変形または回転させて成る曲線または直線に沿った方向にて行うだけでも、チャネル方向の位置矛盾を抑えることができ、再構成画像における上記所望の位置付近での空間分解能の低下を抑える効果がある。
【0122】
また例えば、本実施形態では、ビュー方向の補間処理において、すべての補間処理をサイノグラム軌跡またはそれに近づけられた曲線または直線に沿った方向にて行っているが、そのうちの一部の補間処理だけをサイノグラム軌跡またはそれに近づけられた曲線または直線に沿った方向にて行うようにしてもよい。
【0123】
また例えば、本実施形態は、X線CT装置であるが、上記の画像生成処理を行う画像生成装置も発明の実施形態の一例である。また、コンピュータを、このような画像生成装置として機能させるためのプログラム、このプログラムが記憶された記憶媒体などもまた、発明の実施形態の一例である。
【0124】
また例えば、本実施形態は、X線CT装置であるが、発明は、X線CT装置とPETまたはSPECTとを組み合わせたPET−CT装置やSPECT−CT装置、一般撮影装置などにも適用可能である。