(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
鉄道車両では、走行する前後の台車の上方に車体が設けられている。そして、各台車の枕木方向の両端に、それぞれ空気バネが載置されていて、車体が各空気バネによって支持されている。これら空気バネは、空気溜めから圧縮空気が供給されると、伸張して車体の高さ位置を上昇させ、貯留する圧縮空気を排出すると、収縮して車体の高さ位置を下降させるようになっている。
【0003】
このように圧縮空気の給排気を行うために、従来から、各空気バネと空気溜めの間にレベリングバルブ装置を備えた鉄道車両がある。レベリングバルブ装置は、車体の高さ位置に応じて、圧縮空気の供給と排気と遮断とを機械的な動作によって自動的に切換えることができる自動高さ調整弁装置である。これにより、車体の高さ位置が変化すると、レベリングバルブ装置のレベリングバルブの開閉が切換えられて、空気バネに対する圧縮空気の給排気が行われる。
【0004】
例えば、乗客が増加して車体の高さ位置が下降しようとすると、レベリングバルブが空気バネに圧縮空気を供給する側に切換えられて、空気溜めの圧縮空気がレベリングバルブを通って空気バネへ供給される。これにより、空気バネが伸張して、車体の高さ位置が上昇する。一方、乗客が減少して車体の高さ位置が上昇しようとすると、レベリングバルブが圧縮空気を大気に排気する側に切換えられて、空気バネの圧縮空気がレベリングバルブを通って大気へ排気される。これにより、空気バネが収縮して、車体の高さ位置が下降する。こうして、レベリングバルブ装置によって、車体が水平で且つ一定の高さ位置に受動的に調整される。
【0005】
ところで、近年、各空気バネに対する圧縮空気の給排気を利用して、鉄道車両の車体傾斜制御が実現されている。車体傾斜制御は、鉄道車両が曲線路を走行する際に、車体を曲線路の内軌側に傾ける制御方法である。具体的には、鉄道車両が直線路から曲線路の円曲線に到達する前に、曲線路の外軌側に設けられている空気バネを伸張させて、車体が曲線路の内軌側に傾くように上昇傾斜させる。
【0006】
これにより、鉄道車両が曲線路を走行する際に、車体に作用する横方向の加速度が減少する。この結果、乗客に作用する横方向の遠心力を減少させることができて、乗り心地を向上させることができる。また、鉄道車両が曲線路を走行する際の車速を向上させることができる。なお、鉄道車両が曲線路の円曲線から直線路に到達する前には、曲線路の外軌側に設けられている空気バネを収縮させて、車体が水平になるように傾斜復帰させる。
【0007】
ここで、下記特許文献1には、本出願人によるレベリングバルブ装置を用いた鉄道車両の車体傾斜装置が記載されている。この車体傾斜装置100では、
図11に示すように、車体101に取付けられているパッシブレベリングバルブ121Aと、台車102に支持される第1支持柱123Aと、パッシブレベリングバルブ121Aと第1支持柱123Aとに連結された第1アーム122Aと、パッシブレベリングバルブ121Aと空気バネ103との間の空気配管150Aで圧縮空気の流れを許容又は禁止する第1電磁弁131Aとが設けられている。パッシブレベリングバルブ121Aは、空気溜め104に空気配管151Aで接続されている。
【0008】
更に、この車体傾斜装置100には、車体101に取付けられている傾斜レベリングバルブ121Bと、台車102に支持される第2支持柱123Bと、傾斜レベリングバルブ121Bと第2支持柱123Bとに連結された第2アーム122Bと、傾斜レベリングバルブ121Bと空気バネ103との間の空気配管150Bで圧縮空気の流れを許容又は禁止する第2電磁弁131Bとが設けられている。傾斜レベリングバルブ121Bは、空気溜め104に空気配管151Bで接続されている。
【0009】
そして、
図11に示すように、第2支持柱123Bが第1支持柱123Aより長いため、車体101が通常高さ位置にあるときに、第1アーム122Aが水平に延びて、パッシブレベリングバルブ121Aが圧縮空気の流れを遮断する側に設定されるのに対して、第2アーム122Bが傾斜レベリングバルブ121Bから上方傾斜して延びて、傾斜レベリングバルブ121Bが空気バネ103に圧縮空気を供給する側に設定されている。
【0010】
こうして、この車体傾斜装置100では、車体傾斜制御を行わないときに、車体傾斜制御部140が、第1電磁弁131Aで圧縮空気の流れを許容し且つ第2電磁弁131Bで圧縮空気の流れを禁止するように制御する。これにより、空気溜め104の圧縮空気は傾斜レベリングバルブ121Bを通過できるものの、第2電磁弁131Bを通過することができない。つまり、傾斜レベリングバルブ121Bが実質的に機能しないようになっている。
【0011】
このため、パッシブレベリングバルブ121Aのみが実質的に機能していて、例えば乗客が減少して車体1の高さ位置が上昇しようとすると、
図12に示すように第1アーム122Aがパッシブレベリングバルブ121Aから下方傾斜して、パッシブレベリングバルブ121Aが圧縮空気を大気に排気する側に切換えられる。これにより、空気バネ103の圧縮空気が空気配管150Aとパッシブレベリングバルブ121Aを通って大気中に排気される。この結果、空気バネ103が収縮して車体1の高さ位置が自動的に下降するようになっている。
【0012】
一方、車体傾斜制御を行うとき、即ち鉄道車両が曲線路を走行する際に車体101を上昇傾斜させるとき、車体傾斜制御部140が、第1電磁弁131Aで圧縮空気の流れを禁止し且つ第2電磁弁131Bで圧縮空気の流れを許容するように制御する。これにより、パッシブレベリングバルブ121Aが実質的に機能しなくなるのに対して、傾斜レベリングバルブ121Bが実質的に機能する。そして、このときには、上述したように、第2アーム122Bが傾斜レベリングバルブ121Bから上方傾斜して延びて(
図11参照)、傾斜レベリングバルブ121Bが空気バネ103に圧縮空気を供給する側に予め設定されているため、第2電磁弁131Bで圧縮空気の流れが許容されると、空気溜め104の圧縮空気が空気配管151Bと傾斜レベリングバルブ121Bと空気配管150Bを通って空気バネ103に供給される。
【0013】
これにより、空気バネ103が伸張して、車体101を上昇傾斜させることができる。ここで、車体101を上昇傾斜させる際には、台車102の枕木方向の両端に設けられている各空気バネ103のうち、曲線路の外軌側に設けられている空気バネ103を伸張させることになる。こうして、この車体傾斜装置100は、二つのレベリングバルブ121A,121Bを用いて、第2電磁弁131Bで圧縮空気の流れが許容されるとすぐに空気バネ103に対する圧縮空気の供給が始まるため、一つのレベリングバルブを用いる車体傾斜装置に比べて、車体101を上昇傾斜させる速度を大きくできるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、近年では、鉄道車両の更なる高速化が検討されていて、曲線路を走行する際の車速を少しでも向上させることが求められている。しかし、車体傾斜制御を行う場合、鉄道車両が直線路から曲線路の円曲線に到達する前に、車体の上昇傾斜を確実に完了させなければならない。同様に、鉄道車両が曲線路の円曲線から直線路に到達する前に、車体の傾斜復帰を確実に完了させなければならない。従って、曲線路を走行する際の車速を向上させるためには、車体を上昇傾斜させる速度及び車体を傾斜復帰させる速度を従来から大幅に向上させることが求められている。しかし、上記特許文献1に記載された鉄道車両の車体傾斜装置100では、求められている車体の傾斜速度が十分に得られていないという問題点があった。
【0016】
ここで、車体101を上昇傾斜させる速度及び車体101を傾斜復帰させる速度を向上させるために、傾斜レベリングバルブ121Bやパッシブレベリングバルブ121Aを、圧縮空気の流量が大きいものに変更する方法が考えられる。しかし、この方法の場合、車体101を傾斜復帰させる際に、圧縮空気がパッシブレベリングバルブ121Aから勢い良く大気へ排気され、車体101の高さ位置が通常高さ位置よりも下降し過ぎて、ハンチングするおそれがある。また、傾斜レベリングバルブ121Bで流れる圧縮空気の流量が多くなっても、ハンチングし易くなる。
【0017】
これに対して、傾斜レベリングバルブ121Bとパッシブレベリングバルブ121Aを有するレベリングバルブ装置を用いずに、センサで検出した車体の高さ位置に基づいて圧縮空気の流量をコントロールする電磁開閉弁を用いて、空気バネに対する圧縮空気の給排気を行う方法も考えられる。しかし、レベリングバルブ装置は、主に機械的に作動するものであり、技術的蓄積が大きくて故障に対する信頼性が高いものである。そして、センサ及び電磁開閉弁等の新たな電子機器を用いると構造が複雑になり、コストが上昇する。こうして、信頼性が高いレベリングバルブ装置を用いつつ、車体の傾斜速度を大幅に向上させることが求められていた。
【0018】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、信頼性が高いレベリングバルブ装置を用いつつ、車体を上昇傾斜させる速度及び車体を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができる鉄道車両の車体傾斜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置は、台車に載置されていて車体を支持する空気バネと、前記空気バネに供給するための圧縮空気を貯留する空気溜めと、前記空気バネと前記空気溜めの間の空気流路に設けられて前記車体の通常高さ位置に応じて圧縮空気の供給と排気と遮断とを行うレベリングバルブ装置とを備え、前記レベリングバルブ装置は、前記車体が通常高さ位置にあるときに圧縮空気の流れを遮断する側に設定され、前記車体が上昇位置にあるときに圧縮空気を大気に排気する側に設定されるパッシブレベリングバルブと、前記車体が通常高さ位置にあるときに前記空気バネに圧縮空気を供給する側に設定され、前記車体が上昇位置にあるときに圧縮空気の流れを遮断する側に設定される傾斜レベリングバルブとを有し、前記パッシブレベリングバルブと前記空気バネの間のパッシブ側流路で圧縮空気の流れを許容又は禁止すると共に、前記傾斜レベリングバルブと前記空気バネの間の傾斜側流路で圧縮空気の流れを許容又は禁止する電磁弁装置が設けられ、前記車体を前記通常高さ位置から前記上昇位置へ上昇傾斜させるときに、前記傾斜側流路で圧縮空気の流れを許容するように前記電磁弁装置を制御し、前記車体を前記上昇位置から前記通常高さ位置へ傾斜復帰させるときに、前記パッシブ側流路で圧縮空気の流れを許容するように前記電磁弁装置を制御する車体傾斜制御部が設けられているものであって、前記傾斜側流路には、前記車体が通常高さ位置にあるときに前記空気溜めから送り込まれる圧縮空気を取り込んで、前記車体を上昇傾斜させるときに取り込んだ圧縮空気を前記空気バネに送り込む傾斜側貯留部が設けられ、前記パッシブ側流路には、前記車体が上昇位置にあるときに内部の圧縮空気を前記パッシブレベリングバルブを通して大気に排気して、前記車体を傾斜復帰させるときに前記空気バネから送り込まれる圧縮空気を取り込むパッシブ側貯留部が設けられていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置によれば、車体が通常高さ位置にあるときに、傾斜レベリングバルブが空気バネに圧縮空気を供給する側に設定されていて、傾斜側貯留部が空気溜めから送り込まれる圧縮空気を取り込んでいる。このため、傾斜側貯留部が所定の容量で予め高圧状態になっている。そして、車体を上昇傾斜させるとき、車体傾斜制御部は、傾斜側流路で圧縮空気の流れを許容するように電磁弁装置を制御する。これにより、傾斜側貯留部は、取り込んでいた圧縮空気を空気バネに勢い良く送り込むことができる。この結果、傾斜側流路で圧縮空気の流れが許容されるとすぐに空気バネが素早く伸張して、車体を上昇傾斜させる速度を大幅に向上させることができる。
【0021】
一方、車体が上昇位置にあるときに、パッシブレベリングバルブが圧縮空気を大気に排気する側に設定されていて、パッシブ側貯留部が内部の圧縮空気をパッシブレベリングバルブを通して大気に排気している。このため、パッシブ側貯留部が所定の容量で予め低圧(大気圧)状態になっている。そして、車体を傾斜復帰させるとき、車体傾斜制御部は、パッシブ側流路で圧縮空気の流れを許容するように電磁弁装置を制御する。これにより、パッシブ側貯留部は、空気バネから送り込まれる圧縮空気を勢い良く取り込むことができる。この結果、パッシブ側流路で圧縮空気の流れが許容されるとすぐに空気バネが素早く収縮して、車体を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができる。
【0022】
こうして、傾斜レベリングバルブやパッシブレベリングバルブを圧縮空気の流量が大きいものに変更しないで、車体の高さ位置がハンチングすることを防止しつつ、車体を上昇傾斜させる速度及び車体を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができる。そして、センサ及び電磁開閉弁等の新たな電子機器を用いずに、信頼性が高いレベリングバルブ装置を用いつつ、傾斜側貯留部及びパッシブ側貯留部を設けるだけであるため、低コストで信頼性が高い車体傾斜装置を構成することができる。
【0023】
また、本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置において、前記傾斜側貯留部が圧縮空気を取り込むことができる容量は、前記車体を上昇傾斜させる速度に基づいて設定されていて、前記パッシブ側貯留部が圧縮空気を取り込むことができる容量は、前記車体を傾斜復帰させる速度に基づいて設定されていると良い。
この場合には、設定される傾斜側貯留部の容量によって、車体を上昇傾斜させる速度を最適に調整でき、設定されるパッシブ側貯留部の容量によって、車体を傾斜復帰させる速度を最適に調整できる。
【0024】
また、本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置において、前記傾斜側貯留部は、前記傾斜側流路に接続される傾斜側貯留配管と、この傾斜側貯留配管から圧縮空気が送り込まれる傾斜側リザーバタンクとを有して構成されていて、前記パッシブ側貯留部は、前記パッシブ側流路に接続されるパッシブ側貯留配管と、このパッシブ側貯留配管から圧縮空気が送り込まれるパッシブ側リザーバタンクとを有して構成されていると良い。
この場合には、傾斜側貯留配管及び傾斜側リザーバタンクの簡易な構成によって、圧縮空気を取り込むために必要な容量を十分に確保することができる。同様に、パッシブ側貯留配管及びパッシブ側リザーバタンクの簡易な構成によって、パッシブ側貯留部が圧縮空気を取り込むために必要な容量を十分に確保することができる。
【0025】
また、本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置において、前記傾斜側貯留配管には、前記傾斜側リザーバタンクから前記傾斜側流路へ圧縮空気を流す状態と前記傾斜側流路から前記傾斜側リザーバタンクへ圧縮空気を流す状態とを切換える傾斜側電磁切換弁が設けられ、前記パッシブ側貯留配管には、前記パッシブ側リザーバタンクから前記パッシブ側流路へ圧縮空気を流す状態と前記パッシブ側流路から前記パッシブ側リザーバタンクへ圧縮空気を流す状態とを切換えるパッシブ側電磁切換弁が設けられていても良い。
この場合には、傾斜側電磁切換弁による圧縮空気の流れを適宜切換えることで、傾斜側リザーバタンクから空気バネへ供給される圧縮空気の容量(圧力)を調整することができる。これにより、空気バネの伸張を調整して、車体を上昇傾斜させる速度を微調整することができる。また、パッシブ側電磁切換弁による圧縮空気の流れを適宜切換えることで、パッシブ側リザーバタンクが空気バネから取り込む圧縮空気の容量を調整することができる。これにより、空気バネの収縮を調整して、車体を傾斜復帰させる速度を微調整することができる。
【0026】
また、本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置において、前記傾斜側貯留部は、前記傾斜側流路に接続される傾斜側貯留配管と、この傾斜側貯留配管から圧縮空気が送り込まれる兼用リザーバタンクとを有して構成されていて、前記パッシブ側貯留部は、前記パッシブ側流路に接続されるパッシブ側貯留配管と、このパッシブ側貯留配管から圧縮空気が送り込まれる前記兼用リザーバタンクとを有して構成されていて、前記兼用リザーバタンクと前記傾斜側貯留配管の間の圧縮空気の流れを許容し且つ前記兼用リザーバタンクと前記パッシブ側貯留配管の間の圧縮空気の流れを禁止する状態と、前記兼用リザーバタンクと前記傾斜側貯留配管の間の圧縮空気の流れを禁止し且つ前記兼用リザーバタンクと前記パッシブ側貯留配管の間の圧縮空気の流れを許容する状態とを切換える兼用電磁切換弁が設けられていても良い。
この場合には、兼用電磁切換弁による圧縮空気の流れを適宜切換えることで、上述した場合のように、車体を上昇傾斜させる速度及び車体を傾斜復帰させる速度を微調整することができる。一方、上述した場合と異なり二つのリザーバタンク(傾斜側リザーバタンク、パッシブ側リザーバタンク)を用いる必要がなく、単一の兼用リザーバタンクで済む。また、二つの電磁切換弁(傾斜側電磁切換弁、パッシブ側電磁切換弁)を用いる必要がなく、単一の兼用電磁切換弁で済む。従って、車体を上昇傾斜させる速度及び車体を傾斜復帰させる速度を微調整できる構造を、できるだけコンパクト且つ簡易に構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の鉄道車両の車体傾斜装置によれば、信頼性が高いレベリングバルブ装置を用いつつ、車体を上昇傾斜させる速度及び車体を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができる。これにより、曲線路を走行する際の車速を向上させても、鉄道車両が直線路から曲線路の円曲線に到達する前に、車体の上昇傾斜を確実に完了させることができる。また、鉄道車両が曲線路の円曲線から直線路に到達する前に、車体の傾斜復帰を確実に完了させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<第1実施形態>
本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置の各実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、鉄道車両に設けられている車体1と台車2F,2Bと空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRを模式的に示した斜視図である。
【0030】
車体1は、走行する前後2つの台車2F,2Bの上方に設けられている。各台車2F,2Bの枕木方向の両端には、それぞれ空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRが載置されていて、各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRによって車体1が支持されている。これら各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRは、空気溜め4から圧縮空気が供給されると、伸張して車体1の高さ位置を上昇させ、貯留する圧縮空気を排出すると、収縮して車体1の高さ位置を下降させるようになっている。空気溜め4は、空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRに供給するための圧縮空気を貯留していて、高圧状態になっている。
【0031】
この鉄道車両では、各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRの圧縮空気の給排気を利用して、曲線路を走行する際に車体1を曲線路の内軌側に傾ける車体傾斜制御が実現化されている。例えば、鉄道車両が
図1の矢印側に向かって走行して右向きに曲がる場合、曲線路の円曲線(曲線路は入口緩和曲線と円曲線と出口緩和曲線とで構成され、曲線路のうち曲率が最大でほぼ一定になっている部分が円曲線である)に到達する前に、曲線路の外軌側に設けられている空気バネ3FL,3BLを伸張させて、車体1のうち曲線路の外軌側を通常高さ位置から上昇位置へ上昇させる。
【0032】
これにより、車体1が曲線路の内軌側に傾くように上昇傾斜して、曲線路を走行する際に、車体1に作用する横方向の加速度が減少する。この結果、乗客に作用する横方向の遠心力を減少させることができ、乗り心地を向上させることができる。そして、鉄道車両が曲線路の円曲線から直線路に到達する前に、曲線路の外軌側に設けられている空気バネ3FL,3BLを収縮させて、車体1のうち曲線路の外軌側を上昇位置から通常高さ位置まで下降させる。この結果、車体1が水平になって傾斜復帰するようになっている。
【0033】
このような車体傾斜制御を行うための車体傾斜装置10FL,10FR,10BL,10BRが、各空気バネ3FL,3FR,3BL,3BRに対応して設けられている。各車体傾斜装置10FL,10FR,10BL,10BRの構成はそれぞれ同様であるため、以下では、車体傾斜装置10FLの構成を代表して説明する。ここで、
図2は、
図1に示した車体傾斜装置10FLの構成を模式的に示した図である。そして、
図2は車体1が通常高さ位置にある状態を示した図であり、
図3は車体1が上昇位置にある状態を示した図である。
【0034】
車体傾斜装置10FLは、
図2に示すように、主に空気バネ3FLと、空気溜め4と、レベリングバルブ装置20と、電磁弁装置30と、車体傾斜制御部40とを備えて構成されている。レベリングバルブ装置20は、空気バネ3FLと空気溜め4の間の空気流路に設けられていて、車体1の高さ位置に応じて圧縮空気の給気と排気と遮断とを行うものである。このレベリングバルブ装置20は、パッシブレベリングバルブ21Aと第1アーム22Aと第1支持柱23Aを有すると共に、傾斜レベリングバルブ21Bと第2アーム22Bと第2支持柱23Bを有している。
【0035】
パッシブレベリングバルブ21Aは、車体1に取付けられていて、車体1の高さ位置に応じて圧縮空気の流れを遮断する側a1(
図4参照)と、圧縮空気を大気に排気する側a2と、空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側a3とに切換えられるようになっている。第1アーム22Aは、一端がパッシブレベリングバルブ21Aに接続されていて、他端が第1支持柱23Aに接続されている。第1支持柱23Aは、台車2Fに起立した状態で取付けられていて、車体1と台車2Fとの間の距離(車体1の高さ位置)に応じて第1アーム22Aを傾動させることができる。
【0036】
これにより、
図2に示すように、車体1が通常高さ位置にあるとき、第1アーム22Aは水平状に延びて、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気の流れを遮断する側a1に設定されている。そして、
図3に示すように、車体1が上昇位置にあるときに、第1アーム22Aはパッシブレベリングバルブ21Aから下方傾斜して延びて、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気を大気に排気する側a2に設定される。一方、車体が下降位置にあるときに(図示省略)、第1アーム22Aはパッシブレベリングバルブ21Aから上方傾斜して延びて、パッシブレベリングバルブ21Aは空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側a3に設定される。
【0037】
このパッシブレベリングバルブ21Aは、車体1が通常高さ位置にあるとき、車体1が瞬間的に振動や傾斜等を起こしても、圧縮空気の流れを遮断していて、空気バネ3FLに対して圧縮空気の給排気を開始するまでに一定のタイムラグを生じさせるようになっている。つまり、パッシブレベリングバルブ21Aは、作動時間遅れを有する遅延タイプのレベリングバルブで構成されている。これにより、車体1が瞬間的に振動や傾斜等を起こしても、圧縮空気の給排気によるハンチングを防止して、圧縮空気の浪費を防止できるようになっている。
【0038】
傾斜レベリングバルブ21Bは、車体1に取付けられていて、車体1の高さ位置に応じて圧縮空気の流れを遮断する側b1(
図4参照)と、圧縮空気を大気に排気する側b2と、空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3とに切換えられるようになっている。第2アーム22Bは、一端が傾斜レベリングバルブ21Bに接続されていて、他端が第2支持柱23Bに接続されている。第2支持柱23Bは、台車2Fに起立した状態で取付けられていて、車体1と台車2Fとの間の距離に応じて第2アーム22Bを傾動させることができる。
【0039】
ここで、
図2に示すように、第2支持柱23Bが第1支持柱23Aより長いため、車体1が通常高さ位置にあるとき、第2アーム22Bは傾斜レベリングバルブ21Bから上昇傾斜して延びている。これにより、傾斜レベリングバルブ21Bは、空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に予め設定されている。但し、傾斜レベリングバルブ21Bと空気バネ3FLの間の空気流路には電磁弁装置30が設けられていて、その電磁弁装置30の電磁切換弁31(
図4参照)が圧縮空気の流れを許容した状態になっていなければ、圧縮空気が傾斜レベリングバルブ21Bを通って空気バネ3FLに供給されることはない。
【0040】
一方、
図3に示すように、車体1が上昇位置にあるとき、第2アーム22Bは水平状に延びて、傾斜レベリングバルブ21Bは圧縮空気の流れを遮断する側b1に設定される。傾斜レベリングバルブ21Bとパッシブレベリングバルブ21Aは、車体1が通常高さ位置にあるときの設定状態が異なること以外は同様の構成であり、それらの詳細な構成は、本出願人による上記特許文献1の
図3に記載されているため、その説明を省略する。
【0041】
電磁弁装置30は、パッシブレベリングバルブ21Aと空気バネ3FLの間のパッシブ側流路50Aで圧縮空気の流れを許容又は禁止すると共に、傾斜レベリングバルブ21Bと空気バネ3FLの間の傾斜側流路50Bで圧縮空気の流れを許容又は禁止するものである。この電磁弁装置30は、電磁切換弁31を有していて、車体傾斜制御部40が電磁切換弁31による圧縮空気の流れを切換えるようになっている。ここで、
図4は、第1実施形態の車体傾斜装置10FLの空気回路図である。
【0042】
図4に示すように、パッシブレベリングバルブ21Aと電磁切換弁31との間に、圧縮空気が流れる空気配管51Aが設けられ、パッシブレベリングバルブ21Aと空気溜め4との間に、圧縮空気が流れる空気配管52Aが設けられている。また、傾斜レベリングバルブ21Bと電磁切換弁31との間に、圧縮空気が流れる空気配管51Bが設けられ、傾斜レベリングバルブ21Bと空気溜め4との間に、圧縮空気が流れる空気配管52Bが設けられている。そして、電磁切換弁31と空気バネ3FLとの間に、圧縮空気が流れる空気配管53が設けられている。
【0043】
電磁切換弁31は、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れを許容していて、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れを禁止している。そして、電磁切換弁31は、車体傾斜制御部40によって通電されると、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れを禁止し、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れを許容するようになっている(
図6参照)。
【0044】
車体傾斜制御部40は、CPUとRAMとROMとを備え、車体傾斜制御を行うための制御プログラムを実行するものである。具体的には、車体傾斜制御部40は、鉄道車両の車速と鉄道車両の走行位置とデータベースに記憶されている走行路線データに基づいて、曲線路を走行していると判断するときに電磁切換弁31への通電を制御する。これにより、電磁切換弁31による圧縮空気の流れが切換えられて、車体傾斜制御が行われる。なお、鉄道車両の車速は加速度センサや速度発電機等を用いた周知の方法によって逐次演算されていて、車体傾斜制御部40に逐次入力されている。また、鉄道車両の走行位置は、データベースに記憶されている走行路線データと車速から演算される走行距離等を用いた周知の方法によって求められていて、車体傾斜制御部40に逐次入力されている。
【0045】
次に、レベリングバルブ装置20の動作について説明する。先ず、車体1の高さ位置が
図2に示す通常高さ位置から上下に受動的に変化する場合を例にして説明する。この場合には、車体傾斜制御を行わないため、車体傾斜制御部40は電磁切換弁31に通電しておらず、電磁切換弁31は空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れを許容していて、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れを禁止している。これにより、空気溜め4の圧縮空気が傾斜レベリングバルブ21Bを通過しても電磁切換弁31を通過できないため、傾斜レベリングバルブ21Bが実質的に機能しないようになっている。
【0046】
このため、パッシブレベリングバルブ21Aのみが実質的に機能していて、例えば乗客が減少して車体1の高さ位置が上昇しようとすると、
図3に示すように第1アーム22Aがパッシブレベリングバルブ21Aから下方傾斜して、パッシブレベリングバルブ21Aが、圧縮空気の流れを遮断する側a1から圧縮空気を大気に排気する側a2に切換えられる。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気が、空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って、大気中に排気される。この結果、空気バネ3FLが収縮し、その他の車体傾斜装置10FR,10BL,10BRの空気バネ3FR,3BL,3BRも同様に収縮して、車体1の高さ位置が下降する。
【0047】
一方、乗客が増加して車体1の高さ位置が下降しようとすると、第1アーム22Aがパッシブレベリングバルブ21Aから上方傾斜して、パッシブレベリングバルブ21Aが、圧縮空気の流れを遮断する側a1から空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側a3に切換えられる。これにより、空気溜め4の圧縮空気が、空気配管52Aとパッシブレベリングバルブ21Aと空気配管51Aと電磁切換弁31と空気配管53を通って、空気バネ3FLに供給される。この結果、空気バネ3FLが伸張し、その他の車体傾斜装置10FR,10BL,10BRの空気バネ3FR,3BL,3BRも同様に伸張して、車体1の高さ位置が上昇する。なお、空気溜め4の圧縮空気の圧力は、空気バネ3FLの圧縮空気の圧力及び大気圧より高い約800kPaになっていて、空気バネ3FLの圧縮空気の圧力は、大気圧より高い約400kPaになっている。
【0048】
続いて、鉄道車両が
図1の矢印側に向かって走行して右向きに曲がる際に、車体傾斜制御を行う場合を例にして説明する。この車体傾斜制御では、鉄道車両が直線路から曲線路の円曲線に到達する前に、空気バネ3FL,3RLを伸張させて、車体1を上昇傾斜させることになる。そこで、車体傾斜制御部40は、走行中に曲線路の入口緩和曲線を認識して、鉄道車両が曲線路の入口緩和曲線に進入した時点で、電磁切換弁31に通電する。
【0049】
これにより、電磁切換弁31による圧縮空気の流れが切換えられて、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れが禁止され、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れが許容される(
図6参照)。こうして、パッシブレベリングバルブ21Aが実質的に機能しなくなるのに対して、傾斜レベリングバルブ21Bが実質的に機能する。そして、このときには、傾斜レベリングバルブ21Bが空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に予め設定されているため、空気溜め4の圧縮空気が、空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと電磁切換弁31と空気配管53を通って、空気バネ3FLに供給される。
【0050】
この結果、空気バネ3FLが伸張し、車体傾斜装置10BLの空気バネ3RLも同様に伸張して、車体1が曲線路の内軌側に傾くように上昇傾斜する。なお、車体1を上昇傾斜させるとき、本実施形態では、空気バネ3FR,3BRを伸張させなくて、車体1のうち曲線路の内軌側の高さ位置を変化させていないが、変形実施形態として、空気バネ3FR,3BRを収縮させて、車体1のうち曲線路の内軌側の高さ位置を下降させても良い。
【0051】
こうして、車体1の上昇傾斜によって、車体1のうち曲線路の外軌側は上昇位置になるため(
図3参照)、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気を大気に排気する側a2に切換えられて、傾斜レベリングバルブ21Bは圧縮空気の流れを遮断する側b1に切換えられる(
図7参照)。これにより、空気配管51Aの内部の圧縮空気はパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気される。
【0052】
そして、鉄道車両は車体1が上昇傾斜した状態で曲線路の円曲線を通過した後、直線路に到達する前に、伸張した空気バネ3FL,3RLを収縮させて、車体1を傾斜復帰させる。つまり、鉄道車両が直線路に到達する前に、車体1のうち曲線路の外軌側を上昇位置から通常高さ位置まで下降させる。そこで、車体傾斜制御部40は、走行中に曲線路の出口緩和曲線を認識して、出口緩和曲線に進入した時点で、電磁切換弁31への通電を解除する。
【0053】
これにより、電磁切換弁31による圧縮空気の流れが切換えられて、空気配管51Aと空気配管53との間で圧縮空気の流れが許容され、空気配管51Bと空気配管53との間で圧縮空気の流れが禁止される(
図8参照)。こうして、空気バネ3FLの圧縮空気が、空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気される。
【0054】
この結果、空気バネ3FLが収縮して、車体傾斜装置10BLの空気バネ3RLも同様に収縮して、車体1が水平になるように傾斜復帰する。こうして、車体1の傾斜復帰によって、車体1(車体のうち曲線路の外軌側)は通常高さ位置になるため(
図2参照)、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気の流れを遮断する側a1に切換えられて、傾斜レベリングバルブ21Bは空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に切換えられる。これにより、空気バネ3FLの圧縮空気がパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気されなくなる。
【0055】
ところで、近年では、鉄道車両の更なる高速化が検討されていて、曲線路を走行する際の車速を少しでも向上させることが求められている。しかし、鉄道車両は曲線路のうち円曲線を通過しているときに車体1に作用する横方向の加速度(遠心力)が最も大きくなるため、車体傾斜制御を行う場合、鉄道車両が直線路から曲線路の円曲線に到達する前に、車体の上昇傾斜を確実に完了させなければならない。同様に、鉄道車両が曲線路の円曲線から直線路に到達する前に、車体の傾斜復帰を確実に完了させなければならない。従って、曲線路を走行する際の車速を向上させるためには、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を従来から大幅に向上させることが求められている。しかし、従来の鉄道車両の車体傾斜装置では、求められている車体の傾斜速度が十分に得られていないという問題点があった。
【0056】
ここで、車体1の傾斜速度を向上させるために、傾斜レベリングバルブ21Bやパッシブレベリングバルブ21Aを、圧縮空気の流量が大きいものに変更する方法が考えられる。しかし、この方法の場合、車体1を傾斜復帰させる際に、圧縮空気がパッシブレベリングバルブ21Aから勢い良く大気へ排気され、車体1の高さ位置が通常高さ位置よりも下降し過ぎて、ハンチングするおそれがある。また、傾斜レベリングバルブ21Bで流れる圧縮空気の流量が多くなっても、ハンチングし易くなる。
【0057】
これに対して、傾斜レベリングバルブ21Bとパッシブレベリングバルブ21Aを有するレベリングバルブ装置20を用いずに、センサで検出した車体の高さ位置に基づいて圧縮空気の流量をコントロールする電磁開閉弁を用いて、空気バネ3FLに対する圧縮空気の給排気を行う方法も考えられる。しかし、レベリングバルブ装置20は、主に機械的に作動するものであり、技術的蓄積が大きくて故障に対する信頼性が高いものである。そして、センサ及び電磁開閉弁等の新たな電子機器を用いると構造が複雑になり、コストが上昇する。
【0058】
そこで、本実施形態の車体傾斜装置10FLは、信頼性が高いレベリングバルブ装置20を用いつつ、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができるように構成されている。具体的には、
図2〜
図4に示すように、空気配管51Bに傾斜側貯留配管61Bが接続されていて、この傾斜側貯留配管61Bから圧縮空気が送り込まれる傾斜側リザーバタンク62Bが設けられている。また、空気配管51Aにパッシブ側貯留配管61Aが接続されていて、このパッシブ側貯留配管61Aから圧縮空気が送り込まれるパッシブ側リザーバタンク62Aが設けられている。
【0059】
傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bは、簡易な構成によって所定の容量の圧縮空気を取り込むことができるものであり、車体1が通常高さ位置にあるときに、空気溜め4の圧縮空気を空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bを通して取り込むことができる。そして、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bは、車体1を上昇傾斜させるときに、取り込んだ圧縮空気を空気配管51Bと電磁切換弁31と空気配管53を通して、空気バネ3FLに送り込むようになっている。これら傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bが、本発明の「傾斜側貯留部」に相当する。
【0060】
パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aは、簡易な構成によって所定の容量の圧縮空気を取り込むことができるものであり、車体1が上昇位置にあるときに、内部の圧縮空気を空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通して大気中に排気するようになっている。そして、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aは、車体1を傾斜復帰させるときに、空気バネ3FLの圧縮空気を空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aを通して取り込むようになっている。これらパッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aが、本発明の「パッシブ側貯留部」に相当する。
【0061】
この車体傾斜装置10FLにおいて、車体傾斜制御が実行される際の空気回路の状態を
図5〜
図8を参照して説明する。なお、車体傾斜装置10FLの状態と車体傾斜装置10BLの状態は同様であるため、車体傾斜装置10FLの状態についてのみ説明する。上述したように、空気溜め4の圧縮空気の圧力は、空気バネ3FLの圧縮空気の圧力及び大気圧より非常に高圧であり、以下では「MR圧」と呼ぶことにする。また、空気バネ3FLの圧縮空気の圧力は、大気圧より高圧になっていて、以下では「AS圧」と呼ぶことにする。そして、
図5〜
図8では、圧力の状態を模式的に説明するために、「MR圧」になっている部分が太い実線で示され、「AS圧」になっている部分が太い破線で示され、「大気圧」になっている部分が太い一点鎖線で示されている。
【0062】
図5は、車体1を上昇傾斜させる前の空気回路の状態を示した図である。
図5に示すように、車体1を上昇傾斜させる前、傾斜レベリングバルブ21Bが空気バネ3FLに圧縮空気を供給する側b3に設定されており、且つ電磁切換弁31が空気配管51Bと空気配管53の間で圧縮空気の流れを禁止しているため、空気配管52A,52B,51Bでは「MR圧」になっている。そして、本実施形態の車体傾斜装置10FLでは、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bが設けられているため、空気溜め4の圧縮空気を取り込んでいて「MR圧」になっている。即ち、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bでは、車体1を上昇傾斜させる前に、貯留した圧縮空気で高圧状態になっている。
【0063】
図6は、車体1の上昇傾斜を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。
図6に示すように、電磁切換弁31による圧縮空気の流れを切換えると、空気溜め4の圧縮空気が空気配管52Bと傾斜レベリングバルブ21Bと空気配管51Bと電磁切換弁31と空気配管53を通って空気バネ3FLに送り込まれる。このとき、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bは、貯留した圧縮空気で高圧状態になっているため、高圧の圧縮空気を空気配管51Bと電磁切換弁31と空気配管53を通して、空気バネ3FLに勢い良く送り込む。つまり、傾斜レベリングバルブ21Bは、圧縮空気を空気バネ3FLに供給できる流量が大きいものではないのに対して、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bは、圧縮空気を送り込むことができる容量を十分確保しているため、電磁切換弁31が切換えられるとすぐに圧縮空気が空気バネ3FLに供給される。こうして、車体1の上昇傾斜を開始した直後に空気バネ3FLが素早く伸張して、車体1を上昇傾斜させる速度を従来より大幅に向上させることができる。
【0064】
図7は、車体1が上昇傾斜している最中の空気回路の状態を示した図である。
図7に示すように、車体1が上昇傾斜している途中で、車体1(車体1のうち曲線路の外軌側)が上昇位置になるため、パッシブレベリングバルブ21Aが圧縮空気を大気に排気する側a2に切換わる。これにより、空気配管51Aの内部の圧縮空気が、パッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気されると共に、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aの内部の圧縮空気が、空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って大気中に排気される。こうして、空気配管51Aとパッシブ側貯留配管61Aとパッシブ側リザーバタンク62Aの圧力は、「大気圧」になっている。即ち、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aは、車体1を傾斜復帰させる前に圧縮空気を大気に排気して低圧状態になっている。
【0065】
図8は、車体1の傾斜復帰を開始させたときの空気回路の状態を示した図である。
図8に示すように、電磁切換弁31による圧縮空気の流れを切換えると、空気バネ3FLの圧縮空気が、空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aとパッシブレベリングバルブ21Aを通って、大気中に排気され始める。このとき、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aは、予め低圧状態になっているため、空気バネ3FLの圧縮空気を空気配管53と電磁切換弁31と空気配管51Aを通して勢い良く取り込む。つまり、パッシブレベリングバルブ21Aは圧縮空気を大気に排気できる流量が十分大きいものではないのに対して、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aは圧縮空気を取り込むことができる容量を十分確保しているため、電磁切換弁31が切換えられるとすぐに空気バネ3FLの圧縮空気がパッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aの方へ送り込まれる。こうして、車体1の傾斜復帰を開始した直後に空気バネ3FLが素早く収縮して、車体1を傾斜復帰させる速度を従来より大幅に向上させることができる。その後、車体1の傾斜復帰が完了すると、空気回路の状態は
図5に示した状態になる。
【0066】
ここで、本実施形態において、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bが圧縮空気を取り込むことができる容量と、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aが圧縮空気を取り込むことができる容量について説明する。車体1を上昇傾斜させる速度は、鉄道車両が走行し得る曲線路の形状(曲率、カント、向き等)と、曲線路を走行するときの車速とに基づいて最適値が決定されるようになっている。そして、最適値として決定された車体1を上昇させる速度と、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bが圧縮空気を取り込むことができる容量とは相関関係がある。
【0067】
このため、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bが圧縮空気を取り込むことができる容量を適切に設定しておけば、最適値として決定された車体1を上昇傾斜させる速度を達成することができる。こうして、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bが圧縮空気を取り込むことができる容量は、車体1を上昇傾斜させる速度に基づいて予め設定されている。
【0068】
同様に、車体1を傾斜復帰させる速度は、鉄道車両が走行し得る曲線路の形状(曲率、カント、向き等)と、曲線路を走行するときの車速と、空気バネ3FLの容量とに基づいて最適値が決定されるようになっている。そして、最適値として決定された車体1を傾斜復帰させる速度と、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aが圧縮空気を取り込むことができる容量とは相関関係がある。
【0069】
このため、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aが圧縮空気を取り込むことができる容量を適切に設定しておけば、最適値として決定された車体1を傾斜復帰させる速度を達成することができる。こうして、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aが圧縮空気を取り込むことができる容量は、車体1を傾斜復帰させる速度に基づいて予め設定されている。
【0070】
以上の説明から分かるように、本実施形態の車体傾斜装置10FLは、レベリングバルブ(21B,21A)と電磁切換弁31との間に設けた配管(61B,61A)及びリザーバタンク(62B,62A)を用い、圧力差(「MR圧」と「AS圧」の差、「AS圧」と「大気圧」の差)を上手く利用して、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を従来から大幅に向上させるという従来にない技術的思想を有している。更に、鉄道車両が走行し得る曲線路に対応させるために、それら配管(61B,61A)及びリザーバタンク(62B,62A)の容量を適切に設定して、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を最適に調節するという技術的思想を有している。
【0071】
第1実施形態の作用効果について説明する。
第1実施形態の車体傾斜装置10FLによれば、車体1を上昇傾斜させるときに、
図6に示すように、電磁切換弁31による圧縮空気の流れを切換えると、傾斜側貯留配管61B及び傾斜側リザーバタンク62Bは、取り込んでいた圧縮空気を空気バネ3FLに勢い良く送り込むことができる。これにより、空気バネ3FLが素早く伸張して、車体1を上昇傾斜させる速度を大幅に向上させることができる。一方、車体1を傾斜復帰させるときに、
図8に示すように、電磁切換弁31による圧縮空気の流れを切換えると、パッシブ側貯留配管61A及びパッシブ側リザーバタンク62Aは、空気バネ3FLから送り込まれる圧縮空気を勢い良く取り込むことができる。これにより、空気バネ3FLが素早く収縮して、車体1を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができる。
【0072】
こうして、第1実施形態の車体傾斜装置10FLでは、傾斜レベリングバルブ21Bやパッシブレベリングバルブ21Aを圧縮空気の流量が大きいものに変更しないで、車体1の高さ位置がハンチングすることを防止しつつ、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を大幅に向上させることができる。そして、センサ及び電磁開閉弁等の新たな電子機器を用いずに、信頼性が高いレベリングバルブ装置20を用いつつ、傾斜側貯留配管61Bと傾斜側リザーバタンク62B、及びパッシブ側貯留配管61Aとパッシブ側リザーバタンク62Aを設けるだけであるため、低コストで信頼性が高い車体傾斜装置10FLになっている。
【0073】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、第2実施形態の車体傾斜装置70FLの空気回路である。
図9に示すように、傾斜側貯留配管61Bには、傾斜側電磁切換弁63Bが設けられていて、パッシブ側貯留配管61Aには、パッシブ側電磁切換弁63Aが設けられている。
【0074】
傾斜側電磁切換弁63Bは、車体傾斜制御部40の制御によって、圧縮空気の流れを切換えるようになっている。即ち、傾斜側電磁切換弁63Bは、空気配管51Bから傾斜側リザーバタンク62Bに圧縮空気を流すことができる状態になっていて、傾斜側リザーバタンク62Bが取り込んでいる圧縮空気は傾斜側電磁切換弁63Bを通って空気配管51Bへ流れ込むことができない状態になっている。そして、傾斜側電磁切換弁63Bは、車体傾斜制御部40によって通電されると、傾斜側リザーバタンク62Bから空気配管51Bへ圧縮空気を流すことができる状態に切換えられる。
【0075】
こうして、車体1を上昇傾斜させるとき、車体傾斜制御部40が傾斜側電磁切換弁63Bに通電すると、傾斜側リザーバタンク62Bが取り込んだ圧縮空気を空気バネ3FLに供給することができる。そして、車体傾斜制御部40が傾斜側電磁切換弁63Bへの通電を停止すると、傾斜側リザーバタンク62Bから空気バネ3FLへの圧縮空気の供給を停止させることができ、空気バネ3FLの伸張を遅くすることができる。
【0076】
パッシブ側電磁切換弁63Aは、車体傾斜制御部40の制御によって、圧縮空気の流れを切換えるようになっている。即ち、パッシブ側電磁切換弁63Aは、パッシブ側リザーバタンク62Aが取り込んでいる圧縮空気を空気配管51Aに流すことができる状態になっていている。そして、パッシブ側電磁切換弁63Aは、車体傾斜制御部40によって通電されると、空気配管51Aからパッシブ側リザーバタンク62Aに圧縮空気を流すことができ且つパッシブ側リザーバタンク62Aが取り込んでいる圧縮空気を空気配管51Aに流すことができない状態に切換えられる。
【0077】
こうして、車体1が上昇傾斜しているときに、車体傾斜制御部40がパッシブ側電磁切換弁63Aに通電しておらず、パッシブ側リザーバタンク62A及びパッシブ側貯留配管61Aの内部の圧縮空気がパッシブレベリングバルブ21Aを通して大気中に排気され、パッシブ側リザーバタンク62A及びパッシブ側貯留配管61Aの圧力が大気圧になっている。そして、車体1を傾斜復帰させるとき、車体傾斜制御部40がパッシブ側電磁切換弁63Aに通電して、パッシブ側リザーバタンク62Aが空気バネ3FLの圧縮空気を取り込むことができる。このとき、車体傾斜制御部40がパッシブ側電磁切換弁63Aに対する通電を解除すると、パッシブ側リザーバタンク62Aが空気バネ3FLの圧縮空気を取り込まなくなり、空気バネ3FLの収縮を遅くすることができる。
【0078】
第2実施形態の作用効果について説明する。
第2実施形態の車体傾斜装置70FLによれば、車体傾斜制御部40が傾斜側電磁切換弁63Bによる圧縮空気の流れを適宜切換えることで、傾斜側リザーバタンク62Bから空気バネ3FLへ供給される圧縮空気の容量(圧力)を調整することができる。これにより、空気バネ3FLの伸張を調整して、車体1を上昇傾斜させる速度を微調整することができる。また、車体傾斜制御部40がパッシブ側電磁切換弁63Aによる圧縮空気の流れを適宜切換えることで、パッシブ側リザーバタンク62Aが空気バネ3FLから取り込む圧縮空気の容量を調整することができる。これにより、空気バネ3FLの収縮を調整して、車体1を傾斜復帰させる速度を微調整することができる。第2実施形態のその他の作用効果は、上記した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0079】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、第2実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図10は、第3実施形態の車体傾斜装置80FLの空気回路である。
図10に示すように、車体傾斜装置80FLでは、傾斜側貯留配管61Bとパッシブ側貯留配管61Aとに、単一の兼用電磁切換弁64が設けられている。そして、傾斜側貯留配管61B及びパッシブ側貯留配管61Aのそれぞれから、圧縮空気が送り込まれる単一の兼用リザーバタンク65が設けられている。
【0080】
兼用電磁切換弁64は、車体傾斜制御部40の制御によって、圧縮空気の流れを切換えるようになっている。即ち、兼用電磁切換弁64は、兼用リザーバタンク65と傾斜側貯留配管61Bの間で圧縮空気の流れを許容し且つ兼用リザーバタンク65とパッシブ側貯留配管61Aの間で圧縮空気の流れを禁止する状態になっている。そして、兼用電磁切換弁64は、車体傾斜制御部40によって通電されると、兼用リザーバタンク65と傾斜側貯留配管61Bの間の圧縮空気の流れを禁止し且つ兼用リザーバタンク65とパッシブ側貯留配管61Aの間の圧縮空気の流れを許容する状態に切換えられる。
【0081】
こうして、車体1を上昇傾斜させるとき、車体傾斜制御部40が兼用電磁切換弁64に通電しないと、兼用リザーバタンク65が取り込んだ圧縮空気を空気バネ3FLに供給することができる。そして、車体1を上昇傾斜させている途中で、車体傾斜制御部40が兼用電磁切換弁64へ通電すると、兼用リザーバタンク65から空気バネ3FLへの圧縮空気の供給を停止させることができ、空気バネ3FLの伸張を遅くすることができると共に、兼用リザーバタンク65の内部の圧縮空気がパッシブレベリングバルブ21Aを通して大気中に排気される。
【0082】
また、車体1を傾斜復帰させるとき、車体傾斜制御部40が兼用電磁切換弁64へ通電していると兼用リザーバタンク65が空気バネ3FLの圧縮空気を取り込むことができる。そして、車体傾斜制御部40が兼用電磁切換弁64へ通電を停止すると、空気バネ3FLの圧縮空気が兼用リザーバタンク65に送り込まれなくなり、空気バネ3FLの収縮を遅くすることができる。
【0083】
第3実施形態の作用効果について説明する。
第3実施形態の車体傾斜装置80FLによれば、車体傾斜制御部40が兼用電磁切換弁64による圧縮空気の流れを適宜切換えることで、第2実施形態の車体傾斜装置70FLと同様、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を微調整することができる。一方、第2実施形態の車体傾斜装置70FLと異なり、二つのリザーバタンク(傾斜側リザーバタンク62B、パッシブ側リザーバタンク62A)を用いる必要がなく、単一の兼用リザーバタンク65で済む。また、二つの電磁切換弁(傾斜側電磁切換弁63B、パッシブ側電磁切換弁63A)を用いる必要がなく、単一の兼用電磁切換弁64で済む。従って、車体1を上昇傾斜させる速度及び車体1を傾斜復帰させる速度を微調整できる構造を、できるだけコンパクト且つ簡易に構成することができる。第3実施形態のその他の作用効果は、上記した第1実施形態の作用効果と同様であるため、その説明を省略する。
【0084】
以上、本発明に係る鉄道車両の車体傾斜装置の各実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、傾斜側貯留配管61Bと傾斜側リザーバタンク62Bとパッシブ側貯留配管61Aとパッシブ側リザーバタンク62Aとを設け、第3実施形態では、傾斜側貯留配管61Bとパッシブ側貯留配管61Aと兼用リザーバタンク65とを設けた。しかしながら、傾斜側貯留配管61Bのみによって圧縮空気を取り込むために必要な容量を確保でき、パッシブ側貯留配管61Aのみによって圧縮空気を取り込むために必要な容量を確保できる場合には、傾斜側リザーバタンク62B、パッシブ側リザーバタンク62A、兼用リザーバタンク65は必ずしも設けなくても良い。