特許第6243243号(P6243243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243243
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】懸架装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20171127BHJP
   F16F 9/38 20060101ALI20171127BHJP
   B60G 11/16 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F16F9/32 B
   F16F9/38
   B60G11/16
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-23563(P2014-23563)
(22)【出願日】2014年2月10日
(65)【公開番号】特開2015-152022(P2015-152022A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000146010
【氏名又は名称】株式会社ショーワ
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中野 剛太
(72)【発明者】
【氏名】後藤 容白
(72)【発明者】
【氏名】柴崎 邦生
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−201307(JP,A)
【文献】 特開2009−068527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00− 9/58
B60G 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される振動を減衰する圧力緩衝装置と、
前記圧力緩衝装置の軸線に対して半径方向の外側に配置されるスプリングと、
前記圧力緩衝装置に固定され、前記スプリングの軸方向の端部を支持するスプリングシートと、
前記スプリングと前記スプリングシートとの間に配置され、前記スプリングシートの厚さ方向に突出して、前記スプリングシートの少なくとも一部に突き当たる凸部が形成されたシートラバーと
前記圧力緩衝装置の少なくとも一部を覆うように前記圧力緩衝装置と前記スプリングとの間に配置され、前記圧力緩衝装置の軸方向に沿って伸縮する蛇腹が形成され、前記蛇腹の先端が前記シートラバーの前記凸部に接続されるダストカバーと、を備え、
前記凸部は、前記蛇腹に対向し、折り畳まれた前記蛇腹が突き当たる蛇腹突き当て面を有し、
前記ダストカバーは、前記蛇腹の谷部が前記シートラバーの前記蛇腹突き当て面より内側である懸架装置。
【請求項2】
前記凸部は、前記シートラバーの内周側の端部において前記スプリングシートの厚さ方向に突出し、前記スプリングシートの端縁に突き当たる請求項1に記載の懸架装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記蛇腹突き当て面が前記スプリングシートの端縁に突き当たるシート突き当て面よりも内側に突出している請求項1又は2に記載の懸架装置。
【請求項4】
前記シートラバーと前記ダストカバーとは一体に形成された請求項1から3のいずれか1項に記載の懸架装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置に関する。
【背景技術】
【0002】
懸架装置は、油圧緩衝器と、懸架ばねと、スプリングシートと、シートラバーとを備えている。ここで、例えば特許文献1に示した懸架装置は、油圧緩衝器が、ダンパチューブとピストンロッドと懸架ばねを有し、ダンパチューブの外周部には下スプリングシートを取着し、ピストンロッドに上スプリングシートを取着し、懸架ばねを下スプリングシートと上スプリングシートの間にシートラバーを介して装着して構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−31181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示した懸架装置は、シートラバーが懸架ばね(スプリング)の端部とスプリングシートとの間に挟まれている。そして、懸架ばねの伸縮が繰り返されると、シートラバーが半径方向の外側または内側に送り出されて、シートラバーがスプリングシートの所定位置からずれてしまう場合がある。この場合、シートラバーのたるみなどが生じて、結果的にシートラバーの使用できる期間に影響を及ぼすおそれがある。
本発明は、シートラバーの使用可能期間を延長することができる懸架装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、入力される振動を減衰する圧力緩衝装置と、前記圧力緩衝装置の軸線に対して半径方向の外側に配置されるスプリングと、前記圧力緩衝装置に固定され、前記スプリングの軸方向の端部を支持するスプリングシートと、前記スプリングと前記スプリングシートとの間に配置され、前記スプリングシートの厚さ方向に突出して、前記スプリングシートの少なくとも一部に突き当たる凸部が形成されたシートラバーと、前記圧力緩衝装置の少なくとも一部を覆うように前記圧力緩衝装置と前記スプリングとの間に配置され、前記圧力緩衝装置の軸方向に沿って伸縮する蛇腹が形成され、前記蛇腹の先端が前記シートラバーの前記凸部に接続されるダストカバーと、を備え、前記凸部は、前記蛇腹に対向し、折り畳まれた前記蛇腹が突き当たる蛇腹突き当て面を有し、前記ダストカバーは、前記蛇腹の谷部が前記シートラバーの前記蛇腹突き当て面より内側である懸架装置である。
【0006】
本発明に係る懸架装置によれば、シートラバーに形成され、スプリングシートの厚さ方向に突出した凸部が、スプリングシートの一部に突き当たる。したがって、スプリングの伸縮動作によって、シートラバーに、半径方向の外側または内側に送り出す荷重が作用しても、シートラバーの凸部がスプリングシートの一部に突き当たって、シートラバーが半径方向の外側または内側に送り出されるのを阻止する。
これにより、本発明の懸架装置は、シートラバーのたるみを防止等することができ、結果としてシートラバーの使用可能期間を延長することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る懸架装置によれば、シートラバーの使用可能期間を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る懸架装置の全体を概観した部分断面図である。
図2図1におけるシートラバーを含む部分の詳細を示す図である。
図3】蛇腹が軸C方向に折り畳まれた状態を示す、図2相当の断面図である。
図4】スプリングの上側の端部に突き当たる、上側シートラバーの端末止めを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態である懸架装置100について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態に係る懸架装置100の全体を概観した部分断面図である。図2は、図1における上側シートラバー40を含む部分の詳細を示す図である。
なお、図示における上側、下側を、本実施の形態の説明における上側、下側とする。
【0010】
図1に示した懸架装置100は、入力される振動を減衰する圧力緩衝装置の一例であるダンパ10と、ダンパ10の軸線(軸C)に対して半径方向の外側に配置されるスプリング20と、ダンパ10に固定され、スプリングの軸C方向の上端部を支持する上側スプリングシート31と、スプリング20と上側スプリングシート31との間に配置され、上側スプリングシート31の厚さt方向(図2参照)に突出して、上側スプリングシート31の少なくとも一部に突き当たる内周側凸部41が形成された上側シートラバー40とを備えている。
【0011】
ここで、本実施の形態における上側シートラバー40は、本発明におけるシートラバーの一例に相当する。
また、本実施の形態における内周側凸部41は、本発明における凸部の一例に相当する。なお、本実施の形態においては、内周側凸部41は、上側シートラバー40の内周側の端部に形成されている。ここで、本実施の形態では、本発明における凸部の一例が、上側シートラバー40の内周側の端部に形成されていることから、内周側凸部41と称している。
しかし、本発明においては、凸部がシートラバーの内周側の端部に形成されていることに限定されない。したがって、本発明における凸部は、本発明におけるシートラバーの内周側の端部以外の部位に形成されていてもよい。
【0012】
また、内周側凸部41は、上側シートラバー40の内周側の端部において上側スプリングシート31の厚さt方向に突出し、上側スプリングシート31の端縁32A(図2参照)に突き当たる。なお、本発明においては、凸部(内周側凸部41)が突き当たるスプリングシート(上側スプリングシート31)の部位としては、スプリングシートの内周側の端縁(端縁32A)に限定されるものではない。したがって、本発明における凸部が突き当たるスプリングシートの部位は、スプリングシートの内周側の端縁以外の他の部位であってもよい。
【0013】
ダンパ10は、図示しない車両の車輪側に固定されるダンパチューブ11と、車両の車体側に固定されるピストンロッド16とを備えている。ピストンロッド16は、ダンパチューブ11に対して軸C方向に上下動してダンパ10全体として伸縮可能となっている。ダンパチューブ11の内部には、ピストンロッド16の上下動のエネルギすなわちダンパ10を伸縮させるエネルギを減衰させる減衰装置(図示省略)が設けられている。
ダンパチューブ11の外周部12には、下側スプリングシート13と、車輪側に固定される車輪側取付部材14とが取り付けられている。下側スプリングシート13にはゴムで形成された下側シートラバー70が取り付けられている。また、ダンパチューブ11の上部には、バンプストッパキャップ15Aと、ダンパ10の大きな圧縮時に後述するバンプラバー81が突き当たる当接板15Bとが設けられている。
バンプストッパキャップ15Aの下部には、後述するダストカバー53の下端に形成された被支持部54を支持するカバー支持部15Cが形成されている。
【0014】
ピストンロッド16の、ダンパチューブ11から上方に露出している部分には、バンプラバー81と、上側スプリングシート31を含むスプリング上側支持部材30と、図示しない車体に固定される車体側取付部材82とが取り付けられている。
バンプラバー81は、ピストンロッド16に圧入されてピストンロッド16を軸C方向に貫通している。バンプラバー81は、ダンパ10の大きな圧縮時に、ダンパチューブ11の上部に設けられた当接板15Bに突き当たる。これにより、バンプラバー81は、ダンパ10の過度の圧縮を止める。
スプリング上側支持部材30は、カバー38とカバープレート39と上側スプリングシート31とを備えている。カバー38は、図2に示すように、バンプラバー81の上面に接して配置されている。カバー38の上にカバープレート39の中央部39Aが固定されている。カバープレートの外周部39Bの下に上側スプリングシート31が固定されている。
上側スプリングシート31は概略円環状に形成されている。上側スプリングシート31の外周側の部分33は、軸C方向に対して交差する方向(例えば、軸C方向に対して略直交する方向)に延びている。この外周側の部分33は、カバープレート39の外周部39Bに固定されている。上側スプリングシート31の内周側の部分32は軸C方向に略沿って延びている。上側スプリングシート31にはゴムで形成された上側シートラバー40が配置されている。
【0015】
本実施の形態においては、図1に示すように、上側シートラバー40と後述するダストカバー53とが一体に形成されている。これら上側シートラバー40とダストカバー53とは、一体の結合カバー50を構成している。なお、本発明においては、シートラバーとダストカバーとを一体に構成するのではなく、別体に構成してもよい。
上側シートラバー40は、上側スプリングシート31の上述した形状に沿った形状に形成されている。詳しくは図2に示すように、内周側の端部に、上側スプリングシート31の内周側の部分32の厚さt方向に突出した内周側凸部41が形成されている。この内周側凸部41は、上側スプリングシート31の内周側の部分32の端縁32Aに突き当たるシート突き当て面42を有している。
【0016】
また、この内周側凸部41のうちシート突き当て面42に対して軸C方向の反対側には、蛇腹突き当て面43が形成されている。蛇腹突き当て面43は、ダストカバー53の後述する蛇腹51が突き当たる。
さらに、上側シートラバー40の外周側の端部には、外周側凸部44が形成されている。外周側凸部44は、スプリング20を構成する線材21の中心Sよりもスプリング20の軸Cを中心とする半径方向の外側の面21Aに接する。
そして、外周側凸部44は、スプリング20が軸Cを中心とする半径方向の外側に位置ずれするのを防止乃至抑制している。また、外周側凸部44は、上側シートラバー40自体が軸Cを中心とする半径方向の内側に位置ずれするのを防止乃至抑制している。
【0017】
車体側取付部材82は、図1に示すように、カバープレート39の上方に設けられている。この車体側取付部材82は、ベアリング83とワッシャ84とマウント部85とを備え、ナット86によってピストンロッド16に固定されている。
スプリング20は、軸C方向に圧縮された状態で、上側スプリングシート31と下側スプリングシート13との間に、それぞれ上側シートラバー40、下側シートラバー70を介して支持される。換言すると、上側シートラバー40は、スプリング20と上側スプリングシート31との間に配置され、下側シートラバー70は、スプリング20と下側スプリングシート13との間に配置されている。
なお、本実施の形態におけるスプリング20は、上側シートラバー40に対する軸C方向への圧力が、周方向で均一に接しないものであるが、本発明におけるスプリングは、この形態のものに限定されない。すなわち、本発明におけるスプリングは、シートラバーに対する軸C方向への圧力が、周方向で略均一な圧力で接するものであってもよい。
【0018】
また、本実施の形態の懸架装置100は、図2に示すように、ダンパ10の少なくとも一部を覆うようにダンパ10とスプリング20との間に配置され、ダンパ10の軸C方向に伸縮する蛇腹51が形成され、蛇腹51の先端52が上側シートラバー40の内周側凸部41に接続されるダストカバー53をさらに備え、上側シートラバー40の内周側凸部41は、蛇腹51に対向し、折り畳まれた蛇腹51が突き当たる蛇腹突き当て面43を有している。なお、蛇腹突き当て面43は、軸Cに向けて、シート突き当て面42よりも内側に突出している。
【0019】
ここで、本実施の形態においては、ダストカバー53は、ダンパチューブ11から露出したピストンロッド16を覆っている。
ここで、ダストカバー53の下端には、図1に示すように、被支持部54が形成されている。被支持部54は、ダンパチューブ11のバンプストッパキャップ15Aに形成されたカバー支持部15Cに支持される。そして、蛇腹51の上側の先端52は、上側シートラバー40の内周側凸部41の蛇腹突き当て面43に接続されている。
したがって、結合カバー50は、下端の被支持部54がダンパチューブ11のカバー支持部15Cに支持され、上端の上側シートラバー40がピストンロッド16に取り付けられた上側スプリングシート31に、スプリング20の弾性力によって押し付けられた状態で配置されている。
【0020】
図3は、蛇腹51が軸C方向に折り畳まれた状態を示す図2相当の断面図である。スプリング20およびダンパ10(図1参照)が軸C方向に圧縮されると、図3に示すように、蛇腹51が軸C方向に折り畳まれる。一方、スプリング20およびダンパ10が伸長すると、蛇腹51が軸C方向に伸びる。
上側シートラバー40の内周側凸部41に形成された蛇腹突き当て面43は、折り畳まれた蛇腹51を突き当てることにより、蛇腹51の軸C方向への移動を止める。これにより、蛇腹51が上側スプリングシート31の内周側の部分32よりも半径方向の内側に逃げるのを阻止している。
また、内周側凸部41自体は上側シートラバー40の他の部分(例えば、スプリング20と上側スプリングシート31に挟まれた部分46など)よりも厚さが厚いため、これら他の部分よりも剛性が高く、軸C方向に折り畳まれた蛇腹51が蛇腹突き当て面43に当たっても内周側凸部41がたるんだり変形したりすることがない。この結果、上側シートラバー40がめくれることがない。したがって、上側シートラバー40のめくれによって生じる、ダストの侵入やダストカバー53(図1参照)のいわゆる胴曲りを防止することができる。
【0021】
また、内周側凸部41は上側シートラバー40の内周側の端部に形成されているため、この内周側の端部の剛性を向上させることができ、蛇腹51の接続によっても容易に変形等しないようにすることができる。
しかも、内周側凸部41は、上側スプリングシート31の端縁32A(図2参照)に突き当たるため、上側スプリングシート31の他の部分が突き当てられる場合よりも、引っ掛り易くなり、上側シートラバー40の移動を阻止する効果を高めることができる。
なお、本発明においては、凸部(内周側凸部41)が突き当たるスプリングシート(上側スプリングシート31)の部位としては、スプリングシートの内周側の端縁(端縁32A)に限定されるものではない。したがって、本発明における凸部が突き当たるスプリングシートの部位は、スプリングシートの内周側の端縁以外の他の部位であってもよい。
【0022】
ここで、蛇腹突き当て面43の幅Kは、図3に示すように、折り畳まれた状態における蛇腹51の幅L(折り畳まれた状態における軸Cを中心として半径方向に径の大きい蛇腹51の山部51Aと径の小さい蛇腹51の谷部51Bとの間の半径方向の幅L)の1/2以上が突き当たること(L/2<K)が好ましい。蛇腹突き当て面43の幅Kが、折り畳まれた状態における蛇腹51の幅Lの1/2以上であることにより、蛇腹51の山部51Aと谷部51Bとの間の中心となる部分すなわち蛇腹51の重心Jを蛇腹突き当て面43に突き当てさせることができる。これにより、蛇腹51を有効に受け止めることができる。
さらに、この蛇腹突き当て面43の幅Kは、折り畳まれた状態における蛇腹51の幅Lの2/3以上が突き当たること(2L/3<K)がより好ましい。蛇腹突き当て面43の幅Kが、折り畳まれた状態における蛇腹の幅Lの2/3以上であることにより、蛇腹51を確実に受け止めることができる。
【0023】
なお、蛇腹突き当て面43が、折り畳まれた蛇腹51の谷部51Bよりも、軸Cを中心とする半径方向の内側まで伸びていてもよい。ただし、蛇腹51が折り畳まれた状態においては、ダンパ10が大きく圧縮した状態となる。このとき、バンプラバー81がダンパチューブ11の当接板15B(図1参照)に突き当たることにより、バンプラバー81は弾性変形し軸Cを中心とする半径方向の外側に膨らむ。これにより、蛇腹突き当て面43を過度に半径方向の内側まで伸ばすと、蛇腹突き当て面43が形成された内周側凸部41が、膨らんだバンプラバー81に干渉する可能性がある。
しかも、蛇腹突き当て面43のうち、折り畳まれた蛇腹51の谷部51Bよりの半径方向の内側に伸びた部分は、蛇腹51が谷部51Bよりも半径方向の内側に逃げるのを阻止する作用に対する影響は少ない。したがって、蛇腹突き当て面43の内周側が、折り畳まれた蛇腹51の谷部51Bまで伸びていれば必要十分である。
【0024】
また、本実施の形態では、蛇腹突き当て面43が蛇腹51に突き当たることで蛇腹51の胴曲りを防止しつつ、以下の効果も発揮する。すなわち、蛇腹突き当て面43はシート突き当て面42(図2参照)よりも、軸Cを中心とする半径方向の内側に突出している。換言すると、シート突き当て面42は蛇腹突き当て面43よりも半径方向の外側に位置する。これにより、バンプラバー81が半径方向の外側に膨らんだ場合、シート突き当て面42が蛇腹突き当て面43と同じ位置まで伸びているものや、蛇腹突き当て面43よりも半径方向の内側まで伸びているものよりも、バンプラバー81と内周側凸部41とが接触する可能性を低減することができる。
【0025】
以上のように構成された懸架装置100によると、スプリング20の伸縮動作の際、特にスプリング20が縮むときに、スプリング20の端部は図2に示すように、スプリング20を構成する線材21の中心S回りに、内側から外側に捩じられるように回転方向Rに回転する。そして、スプリング20の端部の線材21の外周面に接している上側シートラバー40は、線材21に連れ回るように回転する荷重が作用する。したがって、従来の懸架装置であれば、この荷重を受けた上側シートラバー40の全体が、線材21の回転に連れられて、軸Cを中心とする半径方向の外側に移動してしまう。
一方、スプリング20が縮んだ状態から復元するときは、回転方向Rに移動した上側シートラバー40は反対方向に戻るが、スプリング20の伸縮動作が繰り返されているうちに、上側シートラバー40は、軸Cを中心とする半径方向の外側に送り出され上側スプリングシート31の所定位置からずれるおそれがある。
【0026】
これに対して、本実施の形態の懸架装置100は、上側シートラバー40の内周側の端部に、上側スプリングシート31の内周側の部分32における厚さt方向に突出した内周側凸部41のシート突き当て面42が形成されている。このため、上側シートラバー40に、スプリング20の線材21の回転方向Rに連れ回るように回転する荷重が作用しても、シート突き当て面42が上側スプリングシート31の内周側の部分32の端縁32Aに突き当たる。
したがって、上側シートラバー40は、その全体が線材21の回転に連れ回ることがなく、上側シートラバー40が上側スプリングシート31の所定位置から外側にずれるのを防止乃至抑制することができる。また、上側シートラバー40は、外周側凸部44により、軸Cを中心とする半径方向の内側に位置ずれするのを防止乃至抑制することができる。
なお、上側シートラバー40が所定位置からずれると、上側シートラバー40のたるみ(めくれを含む。以下、同じ。)等が生じるが、本実施の形態の懸架装置100は、この上側シートラバー40のたるみ等が生じるのを防止することができる。
このように、上側シートラバー40のたるみが防止される等により、結果として上側シートラバー40の耐久性を向上することができ、上側シートラバー40の使用可能期間を延長することができる。
【0027】
また、本実施の形態の懸架装置100は、ダンパ10が縮んでダストカバー53の蛇腹51が折り畳まれたとき、蛇腹51は、図3に示すように、内周側凸部41に形成された蛇腹突き当て面43に突き当たって軸C方向への移動が止められる。これにより、蛇腹51が上側スプリングシート31の内周側の部分32よりも内側に逃げるのを阻止する。したがって、蛇腹51が上側スプリングシート31の内周側の部分32よりも内側に逃げることによって生じる蛇腹51と上側スプリングシート31との接触や、蛇腹51とバンプラバー81との接触を回避することができる。
【0028】
さらに、本実施の形態の懸架装置100によれば、上側シートラバー40が結合カバー50の一部としてダストカバー53と一体に形成されているため、ダンパ10の繰り返しの伸縮や過度の伸縮によっても、上側シートラバー40とダストカバー53とが分離することがなく、上側シートラバー40とダストカバー53とが分離することによる、ダストカバー53の内側へのダストや水分の侵入を防ぐことができる。
【0029】
図4はスプリング20の上側の端部22に突き当たる、上側シートラバー40の端末止め45を示す斜視図である。本実施の形態の懸架装置100は、図4に示すように、上側シートラバー40に、二点鎖線で示したスプリング20の上側の端部22の端面23に突き当たる端末止め45が形成されている。この上側シートラバー40の端末止め45がスプリング20の上側の端部22の端面23に突き当たることにより、スプリング20が軸C回りに回転するのを防止する。これにより、スプリング20の上側の端部22が、全周に亘って、上側シートラバー40に密着した状態を維持することができる。
【0030】
なお、本実施の形態の懸架装置100は、上側シートラバー40(シートラバー)に、上側スプリングシート31(スプリングシート)の端縁32Aに突き当たる内周側凸部41(凸部)が形成されたものであるが、本発明の懸架装置は、この形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の懸架装置は、下側シートラバー70に、下側スプリングシート13の端縁等一部に突き当たる凸部が形成されたものであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…ダンパ、20…スプリング、31…上側スプリングシート(スプリングシート)、40…上側シートラバー(シートラバー)、41…内周側凸部(凸部)、42…シート突き当て面、51…蛇腹、53…ダストカバー、100…懸架装置、C…軸
図1
図2
図3
図4