(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243247
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】チャイルドシートのロック装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20171127BHJP
B60N 2/28 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/28
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-27267(P2014-27267)
(22)【出願日】2014年2月17日
(65)【公開番号】特開2015-151030(P2015-151030A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2017年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100097054
【弁理士】
【氏名又は名称】麻野 義夫
(72)【発明者】
【氏名】浅枝 直徳
(72)【発明者】
【氏名】遠地 淳司
【審査官】
永安 真
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−060124(JP,A)
【文献】
特開2001−199268(JP,A)
【文献】
特開2001−199271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B60N 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションパッドを被覆する表皮に、挿入用スリットが形成され、前記スリットに対応する前記クッションパッドに、底面を有する凹部が形成されたシートクッションと、前記凹部の底面の上方に臨むよう車体側に固定されたアンカーとを備え、
チャイルドシートのキャッチは、前記スリットから前記クッションパッドの凹部内に挿入され、前記底面で誘導されながら前記アンカーに着脱可能にロックされるチャイルドシートのロック装置において、
前記スリットの内方を目隠しする可撓性の目隠し部材が前記凹部内に臨まされた状態で前記表皮に取付けられ、前記目隠し部材の底部または前記凹部の底面に、前記チャイルドシートのキャッチを前記底面に沿って前記アンカーに誘導するために、前記クッションパッドよりも硬質の誘導面部が設けられており、
前記誘導面部は、前記目隠し部材の底部の裏面に取付けられた硬質板であることを特徴とするチャイルドシートのロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャイルドシートのロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャイルドシートのロック装置としては、
図5(a)(b)のように、クッションパッド20を被覆する表皮21に挿入用スリット22が形成されている。このスリット22に対応するクッションパッド20に凹部23が形成されたシートクッション24を備えている。また、凹部23に臨むよう車体側に固定されたアンカー25を備えている(特許文献1参照)。
【0003】
そして、チャイルドシートのキャッチ26がスリット22からクッションパッド20の凹部23内に挿入され、アンカー25に着脱可能にロックされるようになる。
【0004】
特許文献1では、チャイルドシートのキャッチ26をスリット22からアンカー25に案内する略コ字型のガイド部材27は、両側部27aの切欠き27bをアンカー25に嵌め込むことで、凹部23内に位置させている。このガイド部材27の誘導によって、キャッチ26の先端部がスリット22の周囲の表皮21に噛み込むのを防ぐようになっている。また、キャッチ26の先端部が凹部23内でクッションパッド20を刺して砕くのを防ぐようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−233104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のガイド部材27は、形状が複雑であり、アンカー25に組み付ける工程が必要であるから、製造コストや組み付けコストが高くなるという問題があった。
【0007】
本発明は、前記問題を解消するためになされたもので、挿入用スリットの目隠し部材に着目し、この目隠し部材に関連させてキャッチの誘導部を付加することで、コスト安になるチャイルドシートのロック装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は、クッションパッドを被覆する表皮に、挿入用スリットが形成され、前記スリットに対応する前記クッションパッドに、底面を有する凹部が形成されたシートクッションを備えている。また、前記凹部の底面の上方に臨むよう車体側に固定されたアンカーを備えている。チャイルドシートのキャッチは、前記スリットから前記クッションパッドの凹部内に挿入され、前記底面で誘導されながら前記アンカーに着脱可能にロックされるチャイルドシートのロック装置である。前記スリットの内方を目隠しする可撓性の目隠し部材が前記凹部内に臨まされた状態で前記表皮に取付けられている。前記目隠し部材の底部または前記凹部の底面に、前記チャイルドシートのキャッチを前記底面に沿って前記アンカーに誘導するために、前記クッションパッドよりも硬質の誘導面部が設けられて
おり、前記誘導面部は、前記目隠し部材の底部の裏面に取付けられた硬質板であることを特徴とするものである。
【0009】
本発明によれば、表皮に取付ける目隠し部材の底部、または目隠し部材の底部の直ぐ背後のクッションパッドの凹部の底面、つまり、目隠し部材に関連させて、クッションパッドよりも硬質の誘導面部を設けたものである。これにより、キャッチの先端部が目隠し部材を介して凹部の底面に食い込んで差し込みにくくなる事態が解消され、キャッチは、底面に沿って硬質の誘導面部でアンカーにスムーズに誘導されるようになる。
【0010】
そして、硬質の誘導面部は形状が簡単であり、アンカーに組み付ける必要も無いから、製造コストや組み付けコストが安くなる。また、キャッチの先端部は、目隠し部材の両側部で左右方向がガイドされるから、キャッチはアンカーに、よりスムーズに誘導されるようになる。さらに、車体のフレーム等を加工する必要が無く、車体のフレーム等に部品を取付ける必要も無く、シートクッション内での簡単な加工だけで対応することができる。
【0012】
また、目隠し部材の底部の裏面に、フラットな硬質板を縫着若しくは接着で取付けるだけで良く、製造コストや組み付けコストがより安くなる。また、目隠し部材に硬質板を取付けることで、硬質板の位置ずれが防止できる。さらに、硬質板を目隠し部材の裏面に取付けることで、硬質板がスリットから見えることがない。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、目隠し部材に関連させてキャッチの誘導部を付加することで、コスト安になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る車両用シートであり、(a)は斜視図、(b)は表皮を省略したシートクッションの斜視図である。
【
図2】(a)(b)は車両用シートにチャイルドシートをロックする要領の側面図である。
【
図3】(a)は表皮のスリット部分の表面側の斜視図、(b)は表皮のスリット部分の裏面側の斜視図である。
【
図4】(a)〜(c)は、それぞれ誘導面部の実施形態の断面図である。
【
図5】特許文献1の車両用シートのシートクッションであり、(a)は要部分解斜視図、(b)は組み立て時の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は車両用シートであり、(a)は斜視図、(b)は表皮4を省略したシートクッション1の斜視図である。
図2(a)(b)は車両用シートにチャイルドシートをロックする要領の側面図である。
【0020】
車両用シート、例えばリアシートは、シートクッション1とシートバック2とが連結されて構成されている。シートクッション1とシートバック2は、いずれもフレーム(不図示)の外面がクッションパッド3で覆われ、このクッションパッド3が表皮(トリム)4で被覆されている。
【0021】
シートクッション1は、後端部が上方へ円弧状に隆起した形状に形成され、この隆起部1aの前側の円弧面の表皮4には、
図3(a)のように、着座位置の左右両側に上下方向に長い挿入用スリット4aがそれぞれ形成されている。
【0022】
この各スリット4aに対応するクッションパッド3には、底面3bを有する凹部3aがそれぞれ形成されている。そして、この凹部3aの底面3bの上方に臨むように、棒状のアンカー5が車体側に固定されている。なお、底面3bは、後上がりの斜面であってもよい。
【0023】
チャイルドシート6には、各スリット4aに対応する位置から後方に延在するアーム状のキャッチ7がそれぞれ取付けられている。キャッチ7の先端部にはアンカー5に嵌まり込み可能な切り込み7aが形成されている。
【0024】
具体的に図示しないが、キャッチ7の先端部には、切り込み7aがアンカー5に嵌まり込んだときに、アンカー5に係止されるロックレバーが設けられている。このロックレバーは、チャイルドシート6の前部の操作レバー8で係止解除操作をすることができる。
【0025】
そして、
図2(a)のように、シートクッション1の上にチャイルドシート6を載せ、チャイルドシート6をシートバック2の方向に移動させながら、キャッチ7をスリット4aに挿入する。これにより、キャッチ7の切り込み7aがアンカー5に嵌り込み、ロックレバーがアンカー5に係止されることで、チャイルドシート6は、シートクッション1にロックされるようになる。
【0026】
チャイルドシート6のキャッチ7は、その先端部をクッションパッド3の凹部3aの底面3bで誘導しながら、切り込み7aがアンカー5に嵌まり込むようになる。
【0027】
表皮4のスリット4aからは、シートクッション1の内部の部品が見えることから、
図3(a)(b)のように、スリット4aの内方を目隠しする目隠し部材10が設けられている。
【0028】
目隠し部材10には、通常、1mm厚程度の可撓性の不織布マットが用いられ、略U字状に折り曲げられて凹部3a内に臨まされた状態で、両端縁がスリット4aの両端縁に縫い糸aで取付けられている。
【0029】
目隠し部材10の上部には、キャッチ7の先端部の切り込み7aをアンカー5に嵌まり込ませるための開口10aが形成されている。また、目隠し部材10の下部は、スリット4aの下端縁に縫い糸bで取付けられている。この目隠し部材10の底部は、クッションパッド3の凹部3aの底面3bに接触するように形成されている。
【0030】
したがって、目隠し部材10がこのままの状態では、キャッチ7の先端部が目隠し部材10を介して凹部3aの柔らかい底面3bに食い込んで差し込みにくくなる事態が発生する。
【0031】
そこで、目隠し部材10に関連させてキャッチ7の誘導部を付加している。すなわち、目隠し部材10の底部または凹部3aの底面3bに、キャッチ7を底面3bに沿ってアンカー5に誘導するために、クッションパッド3よりも硬質の誘導面部12A,12B,12Cを設けている。
【0032】
図4(a)の誘導面部12Aは、目隠し部材10の底部の裏面に、長方形状の硬質板13を縫い糸cで取付け若しくは接着で取付けたものである。この誘導面部12Aでは、目隠し部材10の底部が長方形状で硬質化・フラット化されることになる。なお、
図4(a)では、硬質板13は、凹部3aの底面3bから浮き上がっているが、キャッチ7の先端部が当接したときに、目隠し部材10が伸びることで、凹部3aの底面3bに接着するようになる。
【0033】
硬質板13としては、合成樹脂製(例えば1mm厚程度のPP板)が好ましいが、金属製(例えばアルミニウム板)でもよい。なお、目隠し部材10の底部を溶融等して硬質化することで、硬質板13を省略することもできる。
【0034】
図4(b)の誘導面部12Bは、目隠し部材10の底部が接触する凹部3aの底面3bに、合成樹脂製の長方形状の硬質板13を接着で取付けたものである。この誘導面部12Bでは、凹部3aの底面3bが長方形状で硬質化・フラット化されることになる。
【0035】
図4(c)の誘導面部12Cは、目隠し部材10の底部が接触する凹部3aの底面3bを、異硬度成形等で硬質性の表面部分3c(クロスハッチング参照)としたものである。この誘導面部12Cでは、凹部3aの底面3bの表面部分3cが長方形状で硬質化・フラット化されることになる。
【0036】
前記のような構成であれば、表皮4に取付ける目隠し部材10の底部、または目隠し部材10の底部の直ぐ背後のクッションパッド3の凹部3aの底面3b、つまり、目隠し部材10に関連させて、クッションパッド3よりも硬質の誘導面部12A〜12Cを設けるものである。
【0037】
これにより、キャッチ7の先端部が目隠し部材10に食い込んで、または目隠し部材10を介して凹部3aの底面3bに食い込んで、差し込みにくくなる事態が解消される。これにより、キャッチ7は、底面3bに沿って硬質の誘導面部12A〜12Cでアンカー5にスムーズに誘導されるようになる。
【0038】
そして、硬質の誘導面部12A〜12Cは形状が簡単であり、アンカー5に組み付ける必要も無いから、製造コストや組み付けコストが安くなる。また、キャッチ7の先端部は、目隠し部材10の両側部で左右方向がガイドされるから、キャッチ7はアンカー5に、よりスムーズに誘導されるようになる。
【0039】
さらに、車体のフレーム等を加工する必要が無く、車体のフレーム等に部品を取付ける必要も無く、シートクッション1内での簡単な加工だけで対応することができる。
【0040】
また、誘導面部12Aは、目隠し部材10の底部の裏面に、フラットな硬質板13を縫着若しくは接着で取付けるだけで良く、製造コストや組み付けコストがより安くなる。さらに、目隠し部材10に硬質板13を取付けることで、硬質板13の位置ずれが防止できる。また、硬質板13を目隠し部材10の裏面に取付けることで、硬質板13がスリット4aから見えることがない。
【0041】
また、誘導面部12Bは、目隠し部材10の底部が接触するクッションパッド3の凹部3aの底面3bに、フラットな硬質板13を接着で取付けるだけで良く、製造コストや組み付けコストがより安くなる。さらに、凹部3aの底面3bに硬質板13を取付けることで、硬質板13の位置ずれが防止できる。また、硬質板13を凹部3aの底面3bに取付けることで、硬質板13がスリット4aから見えることがない。
【0042】
また、誘導面部12Cは、目隠し部材10の底部が接触するクッションパッド3の凹部3aの底面3bを、異硬度成形等で硬質性の表面部分3cとするだけで良く、製造コストや組み付けコストがより安くなる。さらに、凹部3aの底面3bを硬質性の表面部分3cとすることで、硬質性の表面部分3cの位置ずれが防止できる。また、硬質性の表面部分3cを凹部3aの底面3bとすることで、硬質性の表面部分3cがスリット4aから見えることがない。
【符号の説明】
【0043】
1 シートクッション
3 クッションパッド
3a 凹部
3b 底面
3c 表面部分
4 表皮
4a 挿入用スリット
5 アンカー
6 チャイルドシート
7 キャッチ
7a 切り込み
10 目隠し部材
12A〜12C 誘導部
13 硬質板