(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243248
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】印刷インキ組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/10 20140101AFI20171127BHJP
【FI】
C09D11/10
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-29554(P2014-29554)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-120869(P2015-120869A)
(43)【公開日】2015年7月2日
【審査請求日】2017年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-239875(P2013-239875)
(32)【優先日】2013年11月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】田島 哲士
(72)【発明者】
【氏名】古田 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】立川 正明
(72)【発明者】
【氏名】松田 信弘
【審査官】
菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−174678(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/109430(WO,A1)
【文献】
特開2002−322411(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/100944(WO,A1)
【文献】
特開2012−241024(JP,A)
【文献】
特開2009−057461(JP,A)
【文献】
特開2011−094052(JP,A)
【文献】
特開2014−065847(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0069468(US,A1)
【文献】
特開2011−225747(JP,A)
【文献】
特開2010−189538(JP,A)
【文献】
特開2008−156429(JP,A)
【文献】
特開2007−154182(JP,A)
【文献】
特開2002−338892(JP,A)
【文献】
特開2002−285060(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
黒色顔料としてカーボンブラックを含有し、ビヒクル成分としてロジン変性フェノール樹脂、ギルソナイト樹脂及びアルキッド樹脂を含有し、前記カーボンブラックの含有量が18〜30質量%であり、前記アルキッド樹脂の含有量が3/100.5〜25/100.5質量%である浸透乾燥型印刷インキ組成物。
【請求項2】
石油樹脂を含有する請求項1に記載の浸透乾燥型印刷インキ組成物。
【請求項3】
前記のアルキッド樹脂の油長が50〜90である請求項1または2に記載の浸透乾燥型印刷インキ組成物。
【請求項4】
JIS K5701−1に記載の方法で測定した位置Aが5μm以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の浸透乾燥型印刷インキ組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の浸透乾燥型印刷インキ組成物を用いて印刷された印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出版印刷、商業印刷、包装資材印刷等に用いられる印刷インキ組成物であって、印刷に際して印刷機のガイドロールの汚れや後胴残り等の少ない印刷インキ組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットやスマートフォンの普及にともない、雑誌、書籍、チラシ等の紙媒体の印刷数量は減少傾向にある。新聞業界も同様の傾向にあり、新聞各社は高速印刷機の導入、印刷資材の使用量削減等により収益性の維持・改善に努めている。
【0003】
印刷資材の中でも費用構成の高い印刷用紙については、用紙配合中のパルプ量を減らした安価な薄い軽量用紙(減斤紙)の採用が増加している。パルプ量が少なくなった減斤紙では繊維間結合が弱くなって紙面の表面強度が低下し、紙粉が発生して印刷版やブランケットなどに堆積しやすくなる。
【0004】
この表面強度の低下を補うために、減斤紙には用紙表面強化剤などの塗工剤の使用量を増やす傾向にあるが、一般に塗工剤が増えた用紙を使用すると印刷時にインキのセット性(印刷直後の紙への、主としてインキ中の溶剤分の浸透性)が早くなる。インキがセットすると用紙中には溶剤分が浸透し、用紙の表面には主として顔料や樹脂等の固形分濃度が高い状態のインキが残った状態となる。顔料や樹脂分は、印刷直後は紙面に強く定着しておらず、脱落しやすい傾向がある。
【0005】
そのためセット性の早い性質のある減斤紙を用いると、印刷直後の紙面の顔料等固形分が脱落しやすく、印刷上の不具合としてガイドロール汚れや後胴残りが増加する傾向がある。
ここでガイドロール汚れとは、印刷された紙を搬送し次工程に導くためのローラー上にインキや紙粉などが付着し、これらが印刷物の品質を低下させる現象をいう。
また後胴残りとは、多色印刷において先に印刷されたインキが、印刷機の後の胴のブランケットに堆積することにより、後刷りの印刷品質に支障をきたす現象をいう。
新聞業界において減斤紙は主流になりつつあり、それによって生じるこのような問題をインキの改良によって改善するように要求されることとなった。
【0006】
ガイドロール汚れや後胴残りに対する従来のインキ面の対処方法としては、インキのセット性を遅くする処方が一般的であり、適正なカーボンブラックの選定(吸油量の低いカーボンブラックや低ストラクチャーのカーボンブラックの採用)や粉体成分(着色顔料、有機顔料、体質顔料、有機ベントナイト等の無機顔料)の減量、ビヒクル成分の増量、ギルソナイト樹脂の増量などの方法により、ガイドロール汚れや後胴残りを低減することが試みられている。
しかし用紙の減斤化にともない、インキに対する要求品質が更に高くなり従来の方法では対処が困難になりつつあるのが現状である。
【0007】
特許文献1は、従来よりも着肉性、ミスト耐性、ガイドロール残り耐性に優れたオフセットインキに関するものであり、本発明と課題が共通する部分がある。しかしながら、その課題を解決する手段としてゲル状脂肪酸グリセリドを含有させることが示されており、アルキッド樹脂を用いる本発明とは構成が異なる。
【0008】
特許文献2には、アルキッド樹脂に残存する水酸基を除去し、印刷時の汚れや転移不良を解決した樹脂組成物を含む印刷インキ組成物が記載されている。本発明とは課題が異なり、又アルキッド樹脂を用いてガイドローラー汚れや後胴残りを低減するための手段や可能性についての記載や示唆は見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−213112号公報
【特許文献2】特開平2−251579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はアルキッド樹脂を含有する印刷インキであって、ガイドロール汚れ及び後胴残りの低減に優れた印刷インキ組成物、及びそれを用いて印刷された印刷物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来のインキ配合技術では、流動性付与や分散性向上のためにアルキッド樹脂を使用するのは一般的な手法であった。本発明者らはアルキッド樹脂の適切な使用により、ガイドロール汚れや後胴残りを低減することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
(1)本発明は、黒色顔料としてカーボンブラックを含有し、ビヒクル成分としてロジン変性フェノール樹脂及びアルキッド樹脂を含有する印刷インキ組成物である。
(2)さらに本発明は、ギルソナイト樹脂を含有する前記(1)に記載の印刷インキ組成物である。
(3)さらに本発明は、前記のアルキッド樹脂の油長が50〜90である前記(1)に記載の印刷インキ組成物である。
(4)さらに本発明は、前記のアルキッド樹脂を1〜30質量%含有する前記(1)に記載の印刷インキ組成物である。
(5)さらに本発明は、前記(1)〜(4)のいずれかに記載の印刷インキ組成物であって、その乾燥方式が浸透乾燥型である印刷インキ組成物である。
(6)さらに本発明は、前記(1)〜(5)のいずれかに記載の印刷インキ組成物を用いて印刷された印刷物である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の印刷インキ組成物は、アルキッド樹脂を含有する印刷インキであって、ガイドロール汚れ及び後胴残りの低減に優れた印刷インキ組成物を提供する。さらに減斤紙などの塗工剤が増量した軽量用紙を使用した印刷においても良好な印刷適性を有し、印刷における安定した作業性を実現できる。
【0013】
本発明の印刷インキは、出版印刷、商業印刷、包装材料印刷等の用途に、平版オフセット印刷及び各種凸版印刷による印刷方式で好適に用いることができる。また平版オフセット印刷や凸版印刷による新聞印刷に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の印刷インキ組成物は、黒色顔料としてカーボンブラックを含有し、アルキッド樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等を含むビヒクル成分の他に、石油系溶剤、植物油等を含有し、さらに体質顔料及びその他の助剤等を配合することができる。
助剤には、ドライヤー、皮張り防止剤、ゲル化剤等の粘度調整剤、ポリエチレン系やサゾール系、フッ素系の皮膜強化剤、分散剤、汚れ防止剤、乳化調整剤等が含まれる。
【0015】
本発明の印刷インキ組成物に用いるカーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、ランプブラック等が挙げられ、好ましくはファーネスブラックが用いられる。印刷インキ中カーボンブラックの含有量は18〜30質量%が好ましく、19〜25質量%がより好ましく、20〜22質量%が更に好ましい。
【0016】
カーボンブラックの具体例としては、「MA7、8、11、77、100、100R、100S、220、230、600」、「#650、#750、#40、#44B、#44、#45B、#47、#45、#33、#45L、#47、#50、#52、#2700、#2650、#2600、#200、#2350、#2300、#2200、#1000、#990、#980、#970、#960、#950、#900、#850、#32、#30、#25、#20、#10、#5、CF9、#95、#260」(以上三菱化学株式会社製)、「Special Black6、5、4A、4、101、550、350、250、100」、「Printex U、150T、V、140V、140U」、「PrinteX P、L6、L、G、ES23、ES22、A、95、90、85、80、75、60、55、45、40、35、300、30、3、25、200」、「Color Black S170、S160、FW2V、FW200、FW2、FW18、FW1」(以上オリオンエンジニアドカーボンズ社製)「Black Pearls 1000M、800、880、4630」、「Monarch 1300、700、880、4630」、「Regal 330R、660R、660、400R、415R、415」、「MOGUL E、L」(以上キャボット社製)、「Raven 7000、3500、5250、5750、5000ULTRAII、1255、1250、1190、1000、1020、1035、1100ULTRA、1170、1200」(以上コロンビアン・ケミカルズ社製)、「SUNBLACK SB200、210、220、230、240、250、260、270、280、300、305、320、400、410、600、700、705、710、715、720、725、805、900、910、935、960」(以上旭カーボン株式会社製)、「トーカブラック#8500、#8500F、#7550SB、#7550F」(以上東海カーボン株式会社製)などを挙げることができるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0017】
ビヒクルとは、石油系溶剤、植物油、植物油等を加工した加工油、樹脂を油等の溶剤に溶解した樹脂溶液や、それらを加熱する等の方法で粘度を調整したワニス等を総称したもので、印刷インキの液状成分である。ビヒクルは顔料を分散してこれに流展性を与えて印刷面に顔料を転移させ固着する役割を有する。
【0018】
ビヒクルの樹脂成分としては、アルキッド樹脂及びロジン変性フェノール樹脂を必須として含有する他に、フェノール樹脂、石油樹脂、石油樹脂変性ロジン変性フェノール樹脂、ロジンエステル、変性アルキッド樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ギルソナイト樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等、任意の樹脂系が用いられる。中でもギルソナイト樹脂及び石油樹脂が好ましく用いられる。
上記の樹脂成分と、植物油、再生植物油、植物油エステル等の植物由来成分、石油系溶剤等とを溶解し、必要に応じてゲル化剤や酸化防止剤を添加して樹脂溶液とすることもできる。一般に、ロジン変性フェノール樹脂を用いた樹脂溶液はロジン変性フェノール樹脂ワニスと呼ばれる。
【0019】
上記アルキッド樹脂はアルキド樹脂ともよばれ、多塩基酸(主として無水フタル酸)とポリオール(主としてグリセリンあるいはペンタエリスリトール)とのエステルを基体とし、これを油、脂肪酸で変性した樹脂の総称で、ロジン、各種天然樹脂、さらにフェノール樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂などの合成樹脂、あるいはスチレンなどの重合性単量体によって変性したものもアルキッド樹脂に含まれる。
【0020】
本発明の印刷インキ組成物に用いるアルキッド樹脂の油長は顔料の分散性や練肉性、インキの流動性に影響を及ぼす。一般に油長の低いアルキッド樹脂を用いた場合、顔料分散性とインキの流動性は低下する。したがって、アルキッド樹脂の油長としては50〜90が好ましい。
本発明で用いるアルキッド樹脂の印刷インキ中の含有量は1〜30質量%が好ましく、より好ましくは1〜15質量%である。ミスチング低減と適度の流動性付与の観点から1〜10質量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂は、(a)ロジン類(ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン、天然ロジン等)、(b)フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物、及び(c)ポリオール(グリセリン、ペンタエリスリトール等)を反応し合成したものである
本発明で用いるロジン変性フェノール樹脂の重量平均分子量は10000〜300000のものが好ましい。300000を超えるとインキの流動性が低下し、インキ物性が損なわれる。
本発明で使用するロジン変性フェノール樹脂ワニスの添加量としては、印刷インキ中の含有量は5〜50質量%が好ましく、さらに30〜50質量%が好ましい。
【0022】
上記ギルソナイト樹脂とは、天然鉱脈より採掘され天然アスファルタイトから抽出された軟化点110〜180℃の脂肪族炭化水素系樹脂である。主成分としてはアスファルテン、樹脂、油分からなる。ギルソナイト樹脂は従来からオフセット印刷において一般的に使用されているものである。一例としてアメリカンギルソナイト社製のものが使用できる。
【0023】
上記石油樹脂とは、石油化学の製造工程から得られる不飽和炭化水素を原料とし、これらを精製、重合して得られる芳香族および脂肪族の炭化水素樹脂である。石油樹脂は従来からオフセット印刷、出版グラビアインキなどにおいて一般的に使用されているものである。上記石油樹脂の具体的な製品として、ネオポリマー120、ネオポリマー140、ネオポリマー170S(JX日鉱日石エネルギー株式会社製)、ぺトコール120、ぺトコール140(東ソー株式会社製)等の製品が挙げられる。
【0024】
本発明の印刷インキに用いる石油系溶剤としては、炭素数6〜20のパラフィン系炭化水素が好ましく用いられる。例示すれば、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、2−メチルペンタン、n−ヘプタン、n−オクタン、トリメチルペンタンなどのパラフィン系溶剤、シクロヘキサン、シクロヘキシルメタン、オクタデシルシクロヘキサン、メチルイソプロピルシクロヘキサンなどのナフテン系溶剤、およびJX日鉱日石エネルギー株式会社製の「AF ソルベント4号」、「AF ソルベント5号」、「AF ソルベント6号」、「AF ソルベント7号」など、およびこれらの溶剤の相当品や混合物が挙げられる。
【0025】
本発明の印刷インキに用いられる植物油成分としては、ヒマシ油、落花生油、オリーブ油などの不乾性油、大豆油、綿実油、菜種油、ゴマ油、コーン油などの半乾性油、およびアマニ油、エノ油、キリ油などの乾性油、再生植物油、植物油エステル等の植物由来成分などが例示される。
【0026】
本発明の印刷インキに用いられる体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化ケイ素、水酸化アルミニウム、カオリンクレー、有機ベントナイト、シリカ、活性白土、珪藻土等が例示される。
【0027】
上記の構成材料を用いて本発明の印刷インキ組成物を製造するには公知の方法を使用可能である。例えば、必要量の溶剤、植物油、ビヒクル等を充分に混合した後、黒色顔料を添加し、攪拌機で充分に混合、プレミキシングを行う。
その後、必要量のビヒクル、溶剤、及び他の添加剤を添加し、ショットミル、ロールミル等の練肉機で練肉を行う。練肉後、ビヒクル、石油系溶剤、植物油、アルキッド樹脂、ワックス、酸化防止剤、乳化調整剤等の助剤を添加し、充分に混合する。これらの構成材料はインキに必要とされる粘度に合わせて使用量を調整することができ、練肉前に配合してもよい。
【実施例】
【0028】
以下に実施例によって本発明を具体的に説明する。配合組成その他の数値は特記しない限り重量部を表す。
<ロジン変性フェノール樹脂ワニスの調製>
コンデンサー、温度計、攪拌機を装着した四つ口フラスコにロジン変性フェノール樹脂(重量平均分子量10.0万、軟化点 161℃、酸価18.0)45部、大豆油25部
AFソルベント6号14.5部を仕込み、180℃で1時間加熱攪拌する。
その後AFソルベント6号15部、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート(ALCH−50F 川研ファインケミカル株式会社製)0.5部を加え、ロジン変性フェノール樹脂ワニスを調製した。このロジン変性フェノール樹脂ワニスを実施例及び比較例で使用した。
【0029】
<アルキッド樹脂の調製>
撹拌機、精留塔および温度計付きの反応釜に、大豆油800部、グリセリン31.9部、ペンタエリスリトール35.4部を配合し、250℃で1時間程度保持して、アルコール交換反応を行った。その後150℃に冷却し、イソフタル酸165.3部、さらに還流用のキシレンを加え、250℃まで徐々に加熱した後に、250℃に5時間程度保持して脱水しながら、エステル化反応を行った。次に、キシレンを脱溶剤するために、250℃を保持しながら減圧反応を2時間行い、アルキッド樹脂を得た。本アルキッド樹脂の油長は約80である。
【0030】
<ギルソナイト樹脂ワニスの調製>
コンデンサー、温度計、攪拌機を装着した四つ口フラスコに、ギルソナイト樹脂(アメリカンギルソナイト社製ER−125)25部、大豆油75部を仕込み、150℃で1時間加熱攪拌してギルソナイト樹脂ワニスを調製した。
【0031】
<印刷インキの調製>
カーボンブラック(カーボンブラック#32 三菱化学株式会社製)と炭酸カルシウム(白艶華T−DD 白石工業株式会社製)、前記により調製したロジン変性フェノール樹脂ワニス、アルキッド樹脂、ギルソナイト樹脂ワニスを用い、表1および表2に示す配合にしたがい、3本ロールミルにてインキ中の粗大粒子の粒径が5μm以下になるように練肉分散し、石油系溶剤(AFソルベント6号 JX日鉱日石エネルギー株式会社製)、植物油として大豆油(日新オイリオ株式会社製)、及び乾燥防止剤として2,6−ジ−ターシャリーブチル−4−クレゾール(H−BHT、本州化学工業株式会社製)を混合し、実施例1〜5および比較例1〜3の印刷インキ合計8点を得た。
【0032】
前記のインキ中の粗大粒子の粒径とは、JIS K5701−1に記載の練和度試験における練和度を指す。
JIS K5701−1(平成12年1月20日制定)の4.3練和度に規定された試験方法は次の通りである。
溝の深さが25μmから0μmまで直線的に変化しているグラインドメータのゲージ盤上の一番深いところにインキ等の試料を置き、スクレーパーを用いて掻き取るようにして溝内に試料の膜を作る。ゲージ盤上には溝の深さを示す目盛が刻まれている。
試料中に粗大粒子が存在すると、その粒子がスクレーパーで掻き取られて移動することにより、その粒子の大きさ(直径等)より浅い溝内に線が生じる。その線を観察し、10mm以上連続した線が、一つの溝について3本以上現れたところの目盛の値をAとし、10本以上現れたところの目盛の値の位置をBとする。
本実施例では前記位置Aにおける目盛の値をそのインキ中の粗大粒子の粒径とする。
【0033】
<インキ評価>
ガイドロール汚れの評価は以下の方法により行った。
実施例1〜5、比較例1〜3の印刷インキ組成物を用いてN−600型印刷機(東浜精機株式会社製)にて印刷を行う。印刷速度12万部/時、用紙は新聞用更紙を使用する。
各インキについて2万部連続印刷し、印刷後のガイドロール上の汚れ具合を評価する。印刷した紙面の品質については、ガイドロール汚れによる紙面へのコスレ汚れの具合を評価する。
評価は、実用上問題ない場合を○、ガイドロール上の汚れが実用上問題となるレベルを△、ガイドロール上の汚れ及び紙面へのコスレ汚れがともに実用上問題となるレベルを×とする。実施例1〜5の評価結果を表1に示し、比較例1〜3の評価結果を表2に示す。
【0034】
後胴残りの評価は以下の方法により行った。
後胴残りは多色印刷において発生する現象のため、社外の多色印刷機で検証を行った。実施例1、3、5、比較例1、3の印刷インキ組成物を用いて評価を実施した。
印刷速度12万部/時、用紙は新聞用更紙を使用する。
評価は、実用上問題ない場合を○、後刷り胴のブランケット上に支障をきたすレベルを△、後刷り胴のブランケット及び後刷りの印刷物に支障をきたすレベルを×とする。
実施例1、3,5について試験を行ない、評価結果を表1に示す。比較例1、3について試験を行い、評価結果を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の印刷インキ組成物は、出版印刷、商業印刷、包装材料印刷等の用途に、平版オフセット印刷及び各種凸版印刷による印刷方式で好適に用いることができる。また平版オフセット印刷や凸版印刷による新聞印刷に好適に用いることができる。
本発明によって得られる印刷インキ組成物は、用紙配合中のパルプ量を減らした安価な薄い軽量用紙(減斤紙)などを使用した時に発生しやすいガイドロール汚れ、後胴残り等の問題を低減し、高品質な印刷物を提供することができる。