特許第6243251号(P6243251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243251活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243251
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20171127BHJP
【FI】
   C09D11/101
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-30571(P2014-30571)
(22)【出願日】2014年2月20日
(65)【公開番号】特開2015-155499(P2015-155499A)
(43)【公開日】2015年8月27日
【審査請求日】2017年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】若原 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】余語 梓
(72)【発明者】
【氏名】山本 誓
(72)【発明者】
【氏名】奥田 竜志
【審査官】 小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−035730(JP,A)
【文献】 特開2012−021153(JP,A)
【文献】 特表2013−503929(JP,A)
【文献】 特開2013−095775(JP,A)
【文献】 特開2008−163342(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1693385(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色顔料、光重合開始剤組成物(A)、光重合開始剤組成物(B)、光重合開始剤組成物(C)、4官能以上の重合性アクリレートモノマー、重合基を有する樹脂オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物であって、
前記(A)が数平均分子量350以上1000以下であるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及び
前記(B)が数平均分子量320以上1000以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤であり、
且つ前記(C)が数平均分子量300以上1400以下であるチオキサントン系光重合開始剤であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項2】
前記(A)が2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、からなる群から選ばれる1つ以上であり、
前記(B)が、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}−2−メチルプロパノンからなる群から選ばれる1つ以上である請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項3】
前記(A)の含有量が全量の1〜5重量%、前記(B)の含有量が全量の1〜8重量%、4官能以上の重合性アクリレートモノマーが全量の20重量%以上、重合基を有する樹脂オリゴマーが全量の20〜65重量%である請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項4】
前記4官能以上の重合性アクリレートモノマーが、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物であって、全量の10重量%以上含有する請求項1〜3の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項5】
更にビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを、全量の0.1〜2.5重量%の範囲で含有する請求項1〜4の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項6】
更に数平均分子量300以上1000以下の3級アミン化合物を全量の0.1〜5重量%の範囲で含有する請求項1〜5の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項7】
前記着色顔料として、カーボンブラックを全量の10〜25重量%含有する請求項1〜6の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか1つに記載の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を用いてオフセット印刷された印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線条件下で良好に硬化する玩具及び食品包装用途のための低毒性・低マイグレーション等安全性に配慮した活性エネルギー線硬化型オフセットインキの発明、並びにその印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線条件下で硬化する、中でも紫外線硬化型オフセットインキは、瞬間乾燥の特性の利便性から、玩具や紙器等の食品包装向けパッケージ印刷の分野で広く使用されている。
【0003】
紫外線硬化型オフセットインキは菓子箱、飲料パックといった食品包装用途に広く用いられているが、近年、欧米各国を中心にインキ成分の内包食品への移行(マイグレーション)が問題視される風潮が広まりつつあり、印刷物作成の為の諸材料の一つでもある印刷インキについても安全性向上が強く要望されている。
【0004】
紫外線硬化型オフセットインキの処方として、比較的低分子量である光重合開始剤や増感剤の成分の内包食品へのマイグレーションが問題になりやすい。
【0005】
例えば、玩具及び食品包装用途のインキジェットジェットインキ組成物として、高分子材料を用いたインキ組成物が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし該技術は、インクジェット印刷と比較して遥かに高い生産性を要求されるオフセット印刷において乾燥性が不足しており、十分な低マイグレーション性能を発現することは出来ない。
【0006】
加えて、内包食品向けのマイグレーションの量の多少のみならず、食品包装用インキに用いる原材料自体の安全性、毒性の有無にも配慮する必要がある。
【0007】
具体的に光重合開始剤の例を上げると、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オンであるIRGACURE907(BASF社製)は極めて優れた硬化性(インキ乾燥性)を有し、特に紫外線硬化型オフセットインキに広範に使用されているが、生殖毒性の高懸念物質であることから(GHS分類:生殖毒性区分1B(生殖能力)および1B(胎児))、これに依存する事なく、なお且つ低マイグレーション性、低臭気、優れた乾燥性および流動性等、オフセットインキに必要とされるより高い印刷適性を可能とさせたのが本発明である。
【0008】
更に光重合開始剤の例として、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイドであるDAROCURE TPO(BASF社製)は優れた内部硬化性能を有し、同様に広範に使用されているが、安全性面では旧第二種監視化学物質として公示され、長期毒性の疑いがあることから、これに依存する事なく、なお且つ低マイグレーション性、低臭気、優れた乾燥性および流動性等、オフセットインキに必要とされるより高い印刷適性を可能とさせたのが本発明である。
【0009】
また原料樹脂の例として、ジアリルフタレート樹脂(DAP樹脂)であるダイソーダップシリーズ(ダイソーダップA、ダイソーダップS、ダイソーダップK、ダイソーイソダップ、いずれもダイソー社製)は優れた皮膜強度を有することから既存UVオフセットインキに極めて広範に使用されているが、樹脂中に残存する未反応のジアリルフタレートモノマー(フタル酸ジアリル、CAS番号131−17−9)が旧第二種監視化学物質であり、また変異原性の高懸念物質であることから(GHS区分1B(生殖細胞変異原性))、これに依存する事なく、乾燥性に優れかつ安全性に配慮した食品包装用インキの提供を可能とさせたのが本発明である。
【0010】
【特許文献1】特表2011−502188
【特許文献2】特表2011−500932
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、良好な乾燥性及び玩具、食品包装用途のための低毒性、低マイグレーション性を兼ね備えつつ、オフセット印刷における優れた乾燥性による生産性向上及び流動性を有する活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、従来に比べ高分子の光重合開始剤や増感剤と、反応性の優れた多官能モノマー及び重合性オリゴマーを適宜組合せ採用することで、上記課題を達成できることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち本発明は、着色顔料、光重合開始剤組成物(A)、光重合開始剤組成物(B)、光重合開始剤組成物(C)、4官能以上の重合性アクリレートモノマー、重合基を有する樹脂オリゴマーを含有する活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物であって、前記(A)が数平均分子量350以上1000以下であるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤であり、且つ前記(B)が数平均分子量320以上1000以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤であり、且つ前記(C)が数平均分子量300以上1400以下であるチオキサントン系光重合開始剤であることを特徴とする活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物により、従来の乾燥性は高いものの毒性がありマイグレーションも高い、玩具、食品包装に適さないインキ組成に対し、乾燥性に遜色なく、毒性が低く、低マイグレーション性を兼ね備えた玩具、食品包装向け活性エネルギー線硬化型オフセットインキを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物を用いて展色した印刷物に紫外線照射し、インキ層を硬化させた印刷物を示す図である。
図2】紫外線照射後の印刷物の上面に、ミルクカートン白紙の裏面が接する様に重ね合わせ、プレスする図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、着色顔料、数平均分子量350以上1000以下であるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、数平均分子量320以上1000以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、数平均分子量300以上1400以下であるチオキサントン系光重合開始剤、4官能以上の重合性アクリレートモノマー、重合基を有する樹脂オリゴマーの全てを適量含有することで目的とする本発明の効果を奏するものである。
【0017】
ここで述べる光重合開始剤組成物(A)は、数平均分子量350以上1000以下であるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤であり、光重合開始剤組成物(B)は、数平均分子量320以上1000以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤であり、光重合開始剤組成物(C)は数平均分子量300以上1400以下であるチオキサントン系光重合開始剤である。
【0018】
α−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤について、数平均分子量350を下回ると、内包物への光重合開始剤成分移行の移行に伴うマイグレーション量が増加する傾向にあり、数平均分子量1000を超えるとインキ自体の流動性の低下、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存安定性低下、印刷後の皮膜乾燥性の低下に繋がる。
【0019】
同様に、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤についても、数平均分子量320を下回るとマイグレーション量が増加する傾向にあり、数平均分子量1000を超えるとインキ自体の流動性の低下、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存性低下、印刷後の皮膜乾燥性の低下に繋がる。
【0020】
同様に、チオキサントン系光重合開始剤についても、数平均分子量300を下回るとマイグレーション量が増加する傾向にあり、数平均分子量1400を超えるとインキ自体の流動性の低下、光重合開始剤の結晶化に伴う再析出による保存性低下、印刷後の皮膜乾燥性の低下に繋がる。
【0021】
また、上記開始剤成分をエステル化等の手法により多価アルコール類や脂肪酸類等の共役二重結合を有さない成分を化学的に結合させることによって、数平均分子量1000を超えても溶解性に優れる化合物を提供することも技術的には可能であるが、数平均分子量の増加に伴い、化合物中における開始剤の実効成分濃度(紫外線吸収能を有する共役二重結合の割合)が低下することから十分な乾燥性を得ることが困難である。
【0022】
前記した数平均分子量350以上1000以下であるα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤としては、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンー1(数平均分子量:366.5)、2−(ジメチルアミノ)−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(数平均分子量:380.5)等が挙げられ、これらはどれか1つ以上含まれればよく、複数組み合わせて用いてもよい。同じα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤である2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モノフォリノプロパン−1−オン等は数平均分子量(279.4)であり、これに含まれない。
【0023】
前記した数平均分子量320以上1000以下であるα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(数平均分子量:340.4)、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン)(数平均分子量:424.57)、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)フェノキシ〕フェニル}−2−メチルプロパノン(数平均分子量:342.39)等があげられ、これらはどれか1つ以上含まれればよく、複数組み合わせて用いてもよい。同じα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(数平均分子量:204.3)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(数平均分子量:164.2)等はこれらに含まれない。
【0024】
前記した数平均分子量300以上1400以下であるチオキサントン系光重合開始剤としては、高分子量化されたチオキサントン系光重合開始剤としてIGM社製の「Omnipol TX(数平均分子量:660)」や、RaHN社製の「Genopol TX−1(数平均分子量:820)」等があげられ、これらはどれか1つ以上含まれればよく、複数組み合わせて用いてもよい。同じチオキサントン系光重合開始剤 2,4−ジエチルチオキサントン(数平均分子量:268.3)、2−イソプロピルチオキサントン(数平均分子量:254.3)等はこれらに含まれない。
【0025】
前記したα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤のインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し1〜5重量%の範囲にあることが好ましい。1重量%未満の添加量では良好な乾燥性を得ることが困難であり、また5重量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、乾燥性の向上度合いが低下するだけでなく、開始剤のインキ中液体成分への溶解性が低下しインキ流動性が低下し、更に未反応開始剤量が増え低マイグレーション性能を損なうことから好ましくない。
【0026】
前記したα−ヒドロキシケトン系光重合開始剤のインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し1〜8重量%の範囲にあることが好ましい。1重量%未満の添加量では良好な乾燥性を得ることが困難であり、また8重量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、同様にインキ流動性や低マイグレーション性能を損なうことから好ましくない。
【0027】
前記したチオキサントン系光重合開始剤のインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し、0.5%〜10重量%の範囲にあることが好ましい。0.5重量%未満の添加量では良好な乾燥性を得ることが困難であり、また10重量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、同様にインキ流動性や低マイグレーション性能を損なうことから好ましくない。
【0028】
前記したα−アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤及びチオキサントン系光重合開始剤の他、オキシムエステル系光重合開始剤もインキ乾燥性と低マイグレーション性を付与する目的で利用できる。オキシムエステル系光重合開始剤の例として、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)](製品名IRGACURE OXE01、BASF社製)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(製品名IRGACURE OXE02、BASF社製)等を挙げることが出来、これらオキシムエステル系開始剤は分子量が高く低マイグレーション性に優れており、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で用いてもよい。
【0029】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の必須成分として、4官能以上の重合性アクリレートモノマーが挙げられる。4官能の重合性アクリレートモノマーの具体的な例としては、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(EO−PETA)、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PO−PETA)、等が挙げられる。5官能性の重合性アクリレートモノマーの具体的な例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等が、6官能性の重合性アクリレートモノマーの具体的な例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。これらは、単独でも、複数組合せて用いてもよい。
【0030】
前記した4官能以上の重合性アクリレートモノマーのインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し20重量%以上であることが好ましく、20重量%未満であると、すなわちインキ化に際して3官能以下の重合性アクリレートモノマーを使用することに繋がり硬化性が低下し乾燥性及び低マイグレーション性が悪くなる。また、前記5官能の重合性アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールペンタアクリレートおよび6官能の重合性アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートに関しては、使用量がインキ全量に対し10重量%以上であることが好ましい。通常、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートは単体もしくは混合物の状態で製造販売されており、製品名として「DPHA(サートマー社製、製品中のヘキサアクリレートの割合:ほぼ100重量%)」「アロニックスM−400(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:40〜50重量%)」「アロニックスM−402(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:30〜40重量%)」「アロニックスM−403(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:50〜60重量%)」「アロニックスM−404(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:30〜40重量%)」「アロニックスM−405(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:10〜20重量%)」「アロニックスM−406(東亞合成社製、製品中のペンタアクリレートの割合:25〜35重量%)」「LUMICURE DPA−600T(張家港東亜油愛生化学有限公司社製)」「カヤラッドDPHA(日本化薬社製)」「SR399(サートマー社製、製品中のペンタアクリレートの割合:ほぼ100重量%)」「MIRAMER M600(MIWON社製、製品中のヘキサアクリレートの割合:ほぼ100重量%)」等が挙げられ、5官能および6官能アクリレートの混合比率は各々異なるが、いずれも本発明において好適に使用することができる。
【0031】
更に、本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物の必須成分として、重合基を有する樹脂オリゴマーが挙げられる。分子中に重合性基を有さない非反応性樹脂類(イナート樹脂)と比較して反応性が高く、より優れた低マイグレーション性を付与することが可能である。重合基を有する樹脂オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート、脂肪族アクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0032】
前記した重合基を有する樹脂オリゴマーのインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し20〜65重量%の範囲にあることが好ましい。20重量%未満であると十分な皮膜乾燥性やオフセット印刷適性が得られず、また65重量%を超える添加量では、一般にこれら重合性オリゴマーは高粘度である為に本発明の実施例で述べる組成においてオフセットインキとして好適な粘度を得ることが困難となる。また一方で粘度調整の為に低粘度の低分子モノマー類(一般に単官能及び2官能アクリレートモノマー)を多量併用することで重合性オリゴマーが65重量%を超える割合で添加した場合は、好適な粘度を得ることができたとしても低マイグレーション性が損なわれる。
【0033】
更に本発明では、ビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を添加しても良く、特にビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイドを、インキ全量に対して0.1〜2.5重量%の範囲で使用することが好ましい。
【0034】
0.1重量%未満の添加量では乾燥性向上効果が殆ど無く、また2.5重量%を超える添加量では、開始剤量が過剰となり、乾燥性の更なる向上が期待出来ない上、オフセットインキ中に溶解させることが困難であり、インキ流動性の低下及び析出に起因する保存安定性の悪化を招くことから好ましくない。
【0035】
更に本発明では、増感剤として芳香族3級アミン化合物を添加してもよい。中でも高分子量化されたアミノベンゾエート類である、Rahn.AG社製の「Genopol AB−1(数平均分子量:860)」や、IGM社製の「Ominipol ASA(数平均分子量:488〜532)」又はLamberti社製の「Esacure A198(数平均分子量:413)」は、比較的分子量が高くマイグレーションし難い点において好ましい。紫外線硬化型インキ用に使用される芳香族3級アミンとしてはアルキルアミノベンゾエート類があり、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(数平均分子量193.2)、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート(数平均分子量193.2)、2−エチルヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート(数平均分子量277.4)、等が挙げられるが、比較的低分子量でありマイグレーションし易いことから好ましくない。
【0036】
前記した芳香族3級アミン化合物のインキ組成物中の含有率は、インキ全量に対し1〜10重量%の範囲にあることが好ましい。1重量%未満の添加量では乾燥速度の更なる向上が得られない点で望ましくなく、また10重量%を超えて添加しても、使用しただけの効果が認められず好ましくない。
【0037】
尚、特表2013−544930に例示されるような、チオキサントン誘導体とα―ヒドロキシケトン類との組み合わせでは、十分な硬化性、低マイグレーション性及び内部硬化性を得られない。前記した光重合開始剤A、B及びCの何れか一つが欠如しても十分な性能を得ることができない。
【0038】
着色顔料としては公知公用の着色用有機顔料を挙げることができ、例えば「有機顔料ハンドブック(著者:橋本勲、発行所:カラーオフィス、2006年初版)」に掲載される印刷インキ用有機顔料等が挙げられ、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、金属フタロシアニン顔料、無金属フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、アンスラキノン系顔料、キノフタロン顔料、金属錯体顔料、ジケトピロロピロール顔料、カーボンブラック顔料、その他多環式顔料等が使用可能である。
【0039】
前記着色顔料を含む紫外線硬化型インキにおいては、特に紫外線吸収能の極めて高いカーボンブラックを添加量10〜25重量%の範囲で用いた墨インキにおいては光重合開始剤を活性化せしめる紫外線エネルギーの損失が多く、他の着色顔料と比較して特にインキ皮膜底部における光重合反応が進行し難い為、十分な乾燥性および低マイグレーション性能を得ることが困難であるが、本発明で述べるオフセットインキ組成物はカーボンブラックを10〜25重量%用いた墨インキについても好適な乾燥性を付与することが可能である。
【0040】
しかし、カーボンブラックの添加量が25重量%を超える紫外線硬化型インキにおいては、カーボンブラックによる紫外線エネルギーの損失が莫大となり、好適な乾燥性が得られないことから好ましくない。前記カーボンブラックの平均一次粒子径は、15〜70nmの範囲にあることが好ましく、20〜40nmの範囲にあることが特に好ましい。平均一次粒子径が15nm未満である場合、カーボンブラックによる紫外線エネルギーの損失が莫大となり、好適な乾燥性が得られないことから好ましくなく、また70nmを超える場合、墨インキの黒色感が損なわれることから好ましくない。
【0041】
前記カーボンブラックはファーネス法、サーマル法、コンタクト法などの公知の手法により製造されたものを挙げることができ、例えば、ラーベン14、ラーベン450、ラーベン860Ultra、ラーベン1035、ラーベン1040、ラーベン1060Ultra、ラーベン1080Ultra、ラーベン1180、ラーベン1255(以上、コロンビアンケミカル社製)、リーガル400R、リーガル330R、リーガル660R、モーグルL(以上、キャボット社製)、MA7、MA8、MA11(以上、三菱化学社製)等を挙げることができ、これらは単独で使用してもよく、また2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0042】
本発明の印刷物で使用する印刷基材としては、特に限定は無く、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、模造紙、薄紙、厚紙等の紙、各種合成紙、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール共重合体、エチレンメタクリル酸共重合体、ナイロン、ポリ乳酸、ポリカーボネート等のフィルム又はシート、セロファン、アルミニウムフォイル、その他従来から印刷基材として使用されている各種基材を挙げることが出来る。
【0043】
本発明で述べるオフセット印刷インキの製造は、従来の紫外線硬化型インキと同様に、前記着色顔料、重合性アクリレートモノマー、重合基を有する樹脂オリゴマー、光重合開始剤、増感剤、その他添加剤等を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉することで製造される。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。
【0045】
〔インキ組成物の製造方法〕
表1、表2の組成に従って、実施例1〜6および比較例1〜10のインキを三本ロールミルにて練肉することによって、各種の紫外線硬化型インキ組成物を得た。
尚、色材としてはカーボンブラックとしてラーベン1060Ultraをインキ組成物全量の16重量%、補色成分としてフタロシアニンブルー3重量%及びジオキサジンバイオレット2重量%(色材合計21重量%)、粘度及び流動性調整剤としてタルク2重量%及び炭酸マグネシウム2重量%(合計4重量%)、その他助剤としてワックス2重量%及び安定剤溶液(p−メトキシフェノール10重量%とエチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート90重量%の混合物)1重量%(助剤合計3重量%)を、全ての実施例に共通に添加した。 尚、補色成分であるフタロシアニンブルー及びジオキサジンバイオレットはカーボンブラック自体が呈する黄味を打ち消し、インキの漆黒性を更に高める目的で少量配合している。このようなインキの色相調整は「補色」と呼ばれ、一般に広く知られる手法である。
【0046】
〔印刷物の製造方法〕
かくして得た紫外線硬化型インキ組成物を、簡易展色機(RIテスター、豊栄精工社製)を用い、インキ0.10mlを使用して、RIテスターのゴムロール及び金属ロール上に均一に引き伸ばし、ミルクカートン紙(ポリエチレンラミネート紙、テトラ・レックス、テトラパック社製)の表面に墨濃度1.6〜1.8(X−Rite社製SpectroEye濃度計で計測)の範囲に均一に塗布されるように展色し、印刷物を作製した。なおRIテスターとは、紙やフィルムにインキを展色する試験機であり、インキの転移量や印圧を調整することが可能である。
【0047】
〔UVランプ光源による乾燥方法〕
インキ塗布後の印刷物にUV照射を行い、インキ皮膜を硬化乾燥させた。水冷メタルハライドランプ(出力100W/cm1灯)およびベルトコンベアを搭載したUV照射装置(アイグラフィックス社製、コールドミラー付属)を使用し、印刷物をコンベア上に載せ、ランプ直下(照射距離11cm)を以下に述べる所定条件で通過させた。各条件における紫外線照射量は紫外線積算光量系(ウシオ電機社製UNIMETER UIT−150−A/受光機UVD−C365)を用いて測定した。
【0048】
〔インキ組成物の評価方法1:乾燥性〕
硬化性は、照射直後に爪スクラッチ法にて印刷物表面の傷付きの有無を確認した。前記UV照射装置のコンベア速度(m/分)を変化させながら印刷物に紫外線を照射し、傷付きが無い最速のコンベア速度を記載した。従ってコンベア速度が速いほどインキの乾燥性が良好である。
【0049】
〔インキ組成物の評価方法2:開始剤溶解性〕
作成したインキを冷蔵庫内(4℃)にて1週間保管し、その後インキ約1グラムを金属グラインドゲージ(溝深さ0〜25ミクロン)上に載せ、金属スクレーパーでゲージ上のインキをかき取り、インキ中の光重合開始剤の溶解性低下に伴う析出の状態を目視で確認し、次の3段階で評価した。光重合開始剤が析出し結晶化した場合、グラインドゲージ上に開始剤結晶由来のスジが新たに発生する。本評価項目において析出の発生する組成では、冬場等、低温環境下においては十分な製品性能を発揮することが出来ない。
○:析出は見られない。
△:ごく僅かに析出が確認できる。
×:析出が確認できる。
【0050】
〔インキ組成物の評価方法3:流動性〕
インキ流動性はスプレッドメーター法(平行板粘度計)によりJIS K5101,5701に則った方法で測定を実施し、水平に置いた2枚の平行板の間に挟まれたインキが、荷重板の自重(115グラム)によって、同心円状に広がる特性を経時的に観察し、60秒後のインキの広がり直径をダイアメーター値(DM[mm])とし、インキ印刷適性が良好となる次の3段階で評価した。本評価項目においてDMが27mm未満となる組成では、印刷機上で壺切れ、インキローラ間の転移不良といった印刷適性面での不良が発現し易くなる。
○:DM30mm以上
△:DM27以上〜30nm未満
×:DM27mm未満
【0051】
〔印刷物の評価方法4:低マイグレーション性〕
低マイグレーション性の評価に関しては、基本的な評価手順は欧州印刷インキ評議会であるEuPIA(European Printing Ink Association)のガイドライン(EuPIA Guideline on Printing Inks、applied to the non−food contact surface of food packaging materials and articles、November 2011(Replaces the September 2009 version))に準拠した。
先ず上述の印刷物はコンベア速度40m/min.で2回UV照射することによりインキ層を乾燥させた。本条件における紫外線積算光量は約120mJ/cmであった。続いて印刷物上面の硬化インキ層にミルクカートン白紙(以後、インキが展色されていない非印刷状態のミルクカートン紙をミルクカートン白紙と呼ぶ)の裏面が接するよう重ね合わせ、油圧プレス機を用いてプレス圧力40kg/cm、室温25℃雰囲気下で48時間加圧することで、硬化インキ層中の未反応成分をミルクカートン白紙の裏面に移行(マイグレーション)させた(図1及び2参照)。プレス後にミルクカートン白紙を取り外して成形し、1000ml容積の液体容器を作製した。この液体容器においてインキ成分の移行した裏面は内側に面している。次に擬似液体食品として用意したエタノール水溶液(エタノール95重量%と純水5重量%の混合溶液)1000mlを液体容器に注ぎ密閉した。なお、本条件においてエタノール水溶液1000mlと接触する液体容器内面の総面積はおよそ600cmであった。密閉した液体容器を室温25℃雰囲気下で24時間静置し、ミルクカートン白紙裏面に移行したインキ成分をエタノール水溶液中に抽出した。この後液体容器からエタノール水溶液を取り出し、液体クロマトグラフ質量分析にて使用した開始剤の同定及び各々の溶出濃度(マイグレーション濃度)を定量し、各開始剤成分のマイグレーション濃度の合計値から、3段階でマイグレーション性能を評価した。例として、開始剤A、B、C3種を使用した紫外線硬化型インキを用いた印刷物においては、開始剤Aのマイグレーション濃度が10ppb、開始剤Bのマイグレーション濃度が5ppb、開始剤Cのマイグレーション濃度が15ppbであった場合、開始剤成分のマイグレーション濃度の合計値は、A+B+C=10+5+15=30ppbと評価される。なお液体クロマトグラフ質量分析の定量に際しては、使用する全開始剤について各々上記エタノール水溶液を用いた検量線を予め作成し、これを用いることで算出した。
○:30ppb未満
△:30ppb以上〜60ppb未満
×:60ppb以上
【0052】
〔インキ組成物の評価方法5:内部硬化性〕
内部硬化性は、コロナ処理を施したPETフィルム原反にRIテスターを使用して墨濃度2.2でインキを展色し、その展色物をメタルハライドランプ約120mJ/cmの紫外線を照射することでインキを乾燥させた。乾燥後カッターナイフを用いて、インキ面に2mmピッチで碁盤の目状に傷を付け、セロファンテープ(ニチバン社製)を添付した。セロファンテープを一定の速度でインキ面から法線方向に引きはがし、セロファンテープ面に取られたインキの量及びインキ面の傷つきの量を測定した。したがってセロファンテープ面へのインキの取られ、インキ面の傷つきが少ないほど、インキの内部乾燥性が良好である。
セロファンテープ面へのインキの取られ、インキ面の傷つきが生じる面積率が
○:5%未満
△:5%以上〜20%未満
×:20%以上
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
表1及び表2中の数値は重量%である。
表1、2に示す諸原料及び略を以下に示す。
・ラーベン1060Ultra:カーボンブラック、平均一次粒子径30nm、比表面積(NSA)66m/g、コロンビアンケミカル社製
・フタロシアニンブルー:銅フタロシアニン、FASTOGEN BLUE TGR−1、DIC社製
・ジオキサジンバイオレット:ジオキサジンバイオレット、ホスターパームバイオレット RL 02、クラリアント社製
・タルク:含水ケイ酸マグネシウム、ハイフィラー #5000PJ、松村産業社製
・炭酸マグネシウム:塩基性炭酸マグネシウム、炭酸マグネシウムTT、ナイカイ塩業社製
・ワックス:ポリオレフィンワックス、S−381−N1、シャムロック社製
・安定剤溶液:p−メトキシフェノール(メトキノン、精工化学社製)10重量%とエチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(SR494NS、サートマー社製)90重量%の混合溶液
・Irgacure369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、数平均分子量366.5、 BASF社製
・Irgacure127:2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2-ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、数平均分子量340.4、 BASF社製
・Omnipol TX:ポリブチレングリコール−ビス(9−オキソ−9H−チオキサンテニロキシ)アセテート
、数平均分子量660、IGM社製
・Genopol TX−1:チオキサントン誘導体ポリマー
ポリブチレングリコールビス(9−オキソ−9H−チオキサンテニロキシ)アセテート、数平均分子量820、RAHN AG社製
・SPEEDCURE DETX:2,4−ジエチルチオキサンテン−9−オン
、数平均分子量268.3、LAMBSON社製
・SPEEDCURE ITX:
2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物、数平均分子量254.3、LAMBSON社製
・Irgacure819:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、BASF社製
・Esacure1001:1−[4−[(4−ベンゾイル-フェニル)−チオ]−フェニル]−2−メチル−2−[(4−メチル−フェニル)−スルホニル]−プロパン−1−オン、数平均分子量、Lamberti社製
・アロニックスM−400:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(製品中のペンタアクリレートの割合:40〜50重量%)、東亞合成社製
・SR494NS:エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート、サートマー社製
・DICLITE UE−8200T:ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート
・Esacure A198:(メチルイミノ)ジエタン−2,1−ジイル−ビス(4−ジメチルアミノベンゾエート)
、数平均分子量413、Lamberti社製
・Omnipol ASA:ポリ(エチレングリコール)−ビス−ジメチルアミノベンゾエート
ポリ(エチレングリコール)ビスジ−メチルアミノベンゾエート、数平均分子量488〜532、IGM社製
・Genopol AB−1:アミノベンゾエート誘導体ポリマー
ポリ(エチレングリコール)ビスジメチルアミノベンゾエート、数平均分子量860、RAHN AG社製
【0056】
(数平均分子量の測定)
尚、本発明におけるGPCによる数平均分子量(ポリスチレン換算)の測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR−Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0057】
実施例に述べる活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物では、紫外線光源により良好な乾燥性が得られた。また各原材料を前記の重量%の範囲で配合することにより、本願発明の必要特性である開始剤析出による保存安定性、印刷適性に影響を与える流動性、内包物へのマイグレーションの低減、及び内部硬化性といった評価項目において良好な結果となった。
【0058】
比較例の結果においては、開始剤析出は見られないものの、光重合開始剤組成物(A)、光重合開始剤組成物(B)、光重合開始剤組成物(C)、4官能以上の重合性アクリレートモノマー、重合基を有する樹脂オリゴマーいずれかが欠如しても、十分な乾燥性、内包物へのマイグレーションの低減が得られないことを確認した。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活性エネルギー線硬化型オフセットインキ組成物およびそれを用いた印刷物は、安全性、衛生性を重んじる玩具、各種食品包材に加え、サニタリー・コスメ・医薬品等の包装、充填用途に幅広く展開され得る。
【符号の説明】
【0060】
1 硬化インキ層
2 ミルクカートン紙
3 ミルクカートン白紙
図1
図2