特許第6243258号(P6243258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243258
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】接着照査器およびID設定装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 19/14 20060101AFI20171127BHJP
   E01B 7/02 20060101ALI20171127BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20171127BHJP
   B61L 5/00 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   B61L19/14
   E01B7/02
   G08C19/00 X
   B61L5/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-38002(P2014-38002)
(22)【出願日】2014年2月28日
(65)【公開番号】特開2015-160562(P2015-160562A)
(43)【公開日】2015年9月7日
【審査請求日】2016年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000221616
【氏名又は名称】東日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝
(72)【発明者】
【氏名】本間 健一
(72)【発明者】
【氏名】市倉 庸宏
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−260882(JP,A)
【文献】 特開平10−129483(JP,A)
【文献】 特開平05−213199(JP,A)
【文献】 米国特許第05687935(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 19/14
B61L 5/00
E01B 7/02
G08C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トングレールと基本レール間の接着状態を照査する複数の接着照査器が伝送回線に接続され、自機に割り当てられたIDと前記伝送回線に伝送されている他機の照査結果情報とに基づいて判断した自機の送信タイミングで当該IDを含む自機の照査結果情報を送信する自主サイクリック伝送を行う接着照査器システムを構成し、前記伝送回線に接続されたID設定装置を介してIDを設定するために、IDを書き換え可能に記憶する記憶部、および、当該ID設定装置からのID設定信号に従ったIDを前記記憶部に更新記憶させるID設定部を備えた接着照査器であって、
自機の送信タイミング以外の期間に前記伝送回線から一時停止指令信号を受信した場合に、前記自主サイクリック伝送および前記ID設定手段の機能を一時停止する第1の一時停止手段と、
前記伝送回線から解除信号を受信した場合に、前記一時停止を解除し、前記自主サイクリック伝送を再開する再開手段と、
を備えた接着照査器。
【請求項2】
前記伝送回線から前記ID設定信号を受信した場合に、前記ID設定手段によるIDの更新記憶の後、前記自主サイクリック伝送を一時停止する第2の一時停止手段を更に備え、
前記再開手段は、前記伝送回線から前記解除信号を受信した場合に、前記第1の一時停止手段および前記第2の一時停止手段の一時停止を解除する、
請求項1に記載の接着照査器。
【請求項3】
複数の請求項1又は2に記載の接着照査器が接続された前記伝送回線に接続されるID設定装置であって、
前記自主サイクリック伝送において、前記照査結果情報が送信されない欠落時期に、前記一時停止指令信号を前記伝送回線に送信する一時停止指令信号送信手段と、
前記一時停止指令信号送信手段による前記一時停止指令信号の送信後に、前記ID設定信号を前記伝送回線に送信するID設定信号送信手段と、
前記ID設定信号送信手段による前記ID設定信号の送信後に、前記解除信号を前記伝送回線に送信する解除信号送信手段と、
を備えたID設定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本レールとトングレール間の接着状態を照査する接着照査器等に関する。
【背景技術】
【0002】
接着照査器は、トングレール接着区間における基本レールとトングレール間の接着状態を照査するための装置であり、接着状態として接着の有無や隙間量を測定する。接着照査器は、分岐器の定位/反位の状態を左右のレールそれぞれについて検知するために1つの分岐器に複数台設置されるのが一般的である。例えば、新幹線用として、左右レールそれぞれにトングレール接着区間の先端側と後端側との合計4箇所に設置される例が知られている。
【0003】
非特許文献1に接着照査器の従来例が記載されている。接着照査器の照査結果は、伝送回線を介して継電装置等の機器室内の装置に伝送されるが、設置スペースや施工コスト等に鑑みて、1つの分岐器に係る複数台の接着照査器を1本の伝送回線に接続する構成が採用されている。
【0004】
そのため、信号伝送方式は時分割方式である。具体的には、各接着照査器にはID(機器番号とも言われる)が割り当てられている。各接着照査器は、自機に割り当てられたIDと伝送回線Nに伝送されている他機の照査結果情報とに基づいて、自機の照査結果情報の送信タイミングを判断する。そして、自機の送信タイミングの到来に合わせて、自機のIDを含む自機の照査結果情報を送信する。この照査結果情報の送信を各接着照査器が自律的に順繰りに行うことから「自主サイクリック伝送」とも呼ばれる。
【0005】
接着照査器の照査結果は列車の進行信号を表示する条件であるため、転換完了後に速やかに進行信号を表示するためには、接着照査器は、転換した分岐器の照査結果を早期に機器室に通知する必要がある。そこで、上述した自主サイクリック伝送では、情報を伝送していない空白時間をできる限り短くし、各接着照査器による照査結果情報の順次伝送を高速化している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】本橋幸二、関弘行、内田貞雄、土屋勝、南澤政明、「ME接着照査器の開発」、日本鉄道電気技術協会、鉄道電気技術研究発表会論文集、1999年10月27日、第9巻、第163〜168ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、接着照査器はメンテナンスフリーが望まれており、耐振動性や耐水性等の耐候性を向上させるため、筐体を封印した密封構造を採用している。そのため、メンテナンスフリー化は実現されたが、故障時等の接着照査器の交換時に問題が生じていた。
【0008】
すなわち、従来の接着照査器には、自機のIDを設定するためのスイッチ回路が内蔵されている。しかし、接着照査器の製造時に筐体が封印されるため、現場でIDを設定することができない。そのため、故障に備えて、各IDに対応する接着照査器それぞれを準備しておく必要があった。また、故障した接着照査器のIDが事前に分からない場合には、実際の交換作業において、各IDに対応する接着照査器を現場に運ぶ必要があった。
【0009】
また、交換作業においては、交換対象でない稼働中の接着照査器を停止させた上、交換対象の接着照査器を交換する必要があった。
【0010】
考え方として、接着照査器内でのID設定を、伝送回線を通じて何らかの方法で外部から可能とさせる方法が考えられる。しかし、稼働中の自主サイクリック伝送においては、上述した通り空白時間は限られており、この空白時間内にID設定を行うことは困難であった。
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みて考案されたものであり、その目的とするところは、稼働中の自主サイクリック伝送において、接着照査器を簡単に交換可能とする技術を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための第1の発明は、
トングレールと基本レール間の接着状態を照査する複数の接着照査器が伝送回線に接続され、自機に割り当てられたIDと前記伝送回線に伝送されている他機の照査結果情報とに基づいて判断した自機の送信タイミングで当該IDを含む自機の照査結果情報を送信する自主サイクリック伝送を行う接着照査器システム(例えば図1の接着照査器システム1)を構成し、前記伝送回線に接続されたID設定装置を介してIDを設定するために、IDを書き換え可能に記憶する記憶部(例えば図3のID記憶部150)、および、当該ID設定装置からのID設定信号に従ったIDを前記記憶部に更新記憶させるID設定部(例えば図3のID設定部116、図4のステップS14)を備えた接着照査器(例えば図1,3の接着照査器CC)であって、
自機の送信タイミング以外の期間に前記伝送回線から一時停止指令信号を受信した場合に、前記自主サイクリック伝送および前記ID設定手段の機能を一時停止する第1の一時停止手段(例えば図3の一時停止制御部114、図4のステップS10)と、
前記伝送回線から解除信号を受信した場合に、前記一時停止を解除し、前記自主サイクリック伝送を再開する再開手段(例えば図3の一時停止制御部114、図4のステップS22)と、
を備えた接着照査器である。
【0013】
この第1の発明の接着照査器によれば、IDを書き換え可能に記憶する記憶部を有し、伝送回線からID設定信号を受信すると当該ID設定信号に従ったIDを記憶部に更新記憶させる。従って、外部からIDを設定することが可能となる。
【0014】
また、第1の発明の接着照査器は、自機の送信タイミング以外の期間に伝送回線から一時停止指令信号を受信した場合には、自主サイクリック伝送およびID設定の機能を一時停止する。従って、交換対象とされていない接着照査器を外部から一時停止させることができる。
【0015】
外部信号に基づくIDの設定および外部信号に基づく機能の一時停止は、伝送回線上に当該外部信号を伝送すれば良い。また、それらの外部信号の伝送は、交換対象の接着照査器の故障或いはその接着照査器を取り外すことで空いた、その接着照査器の送信タイミングに行うことが可能となる。従って、稼働中の自主サイクリック伝送において、接着照査器の交換を簡単に実現することが可能となる。
【0016】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記伝送回線から前記ID設定信号を受信した場合に、前記ID設定手段によるIDの更新記憶の後、前記自主サイクリック伝送を一時停止する第2の一時停止手段(例えば図3の一時停止制御部114、図4のステップS16)を更に備え、
前記再開手段は、前記伝送回線から前記解除信号が伝送されていることを検出した場合に、前記第1の一時停止手段および前記第2の一時停止手段の一時停止を解除する(例えば図4のステップS22)、
接着照査器である。
【0017】
この第2の発明によれば、ID設定手段によるIDの更新記憶の後、自主サイクリック伝送が一時停止される。従って、第2の発明の接着照査器を新たに取り付けて、IDが設定されると、自動的に一時停止の状態となる。これで、接着照査器システムの全ての接着照査器が一時停止の状態となっているため、あとは解除信号を伝送回線に伝送することで、自主サイクリック伝送を再開させることができる。
【0018】
また、第3の発明は、
複数の第1又は第2の発明の接着照査器が接続された前記伝送回線に接続されるID設定装置(例えば図1,5のID設定装置40)であって、
前記自主サイクリック伝送において、前記照査結果情報が送信されない欠落時期に、前記一時停止指令信号を前記伝送回線に送信する一時停止指令信号送信手段(例えば図5の一時停止指令制御部414、図6のステップS46)と、
前記一時停止指令信号送信手段による前記一時停止指令信号の送信後に、前記ID設定信号を前記伝送回線に送信するID設定信号送信手段(例えば図5のID設定信号送信制御部416、図6のステップS54)と、
前記ID設定信号送信手段による前記ID設定信号の送信後に、前記解除信号を前記伝送回線に送信する解除信号送信手段(例えば図5の一時停止指令制御部414、図6のステップS60)と、
を備えたID設定装置である。
【0019】
この第3の発明によれば、伝送回線上に接続して交換後の新たな接着照査器にIDを設定するID設定装置を実現できる。具体的には、交換対象の接着照査器が故障により照査結果情報を送信できなった時期、或いは、交換のために取り外されたことで照査結果情報を送信できなくなった時期に一時停止指令信号を送信することで、交換対象以外の接着照査器を一時停止させることができる。その上で、ID設定信号を伝送回線に送信することで、交換後に新たに取り付けられた接着照査器のIDを設定することができる。そして、IDの設定を終了した後に、解除信号を送信することで、交換対象以外の接着照査器および交換後の新たな接着照査器の自主サイクリック伝送を再開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】接着照査器システムの運用形態を説明するための図。
図2】接着照査器の交換時の状態を説明するための図。
図3】接着照査器の構成を説明するための図。
図4】接着照査器の処理の流れを示すフローチャート。
図5】ID設定装置の構成を説明するための図。
図6】ID設定装置の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を適用した接着照査器およびID設定装置の実施形態について説明する。
[運用形態]
図1は、接着照査器システム1の運用形態について説明するための図である。
接着照査器システム1は、本実施形態では4台の接着照査器CC(CC(1)〜CC(4))と、接続箱90とを有して構成される。接着照査器CCは、照査対象である分岐器Tの基本レールBR(BR1,BR2)とトングレールTR(TR1,TR2)との接着状態を照査する。接着状態には、接着の有無、および、基本レールBRとトングレールTR間の隙間量を含むが、接着の有無のみでも良い。また、本実施形態では、接着照査器CCは、左右のトングレールTR(TR1,TR2)それぞれの接着区間の先端側と後端側とに対応する4台が設置される。
【0022】
接着照査器CCは、機器室内の出力装置70との間を伝送回線Nで接続されており、自機のIDを含む照査結果情報を出力装置70に送信する。伝送回線Nは、接着照査器CCと接続箱90間のスター型の接続線や、接続箱90と出力装置70間の接続線を含む。また、接続箱90は分岐器Tの近傍に設置された通信ハブの機能を果たす装置である。機能的には接続箱90も伝送回線Nに含めることができる。
【0023】
接着照査器CCは、自主サイクリック伝送によって照査結果情報を送信する。自主サイクリック伝送は、時分割方式の伝送方式の一種である。各接着照査器CCにはID(機器番号とも言われる)が割り当てられている。各接着照査器CCは、照査結果とIDとを関連づけて照査結果情報として伝送回線Nに伝送する。自主サイクリック伝送における伝送の順番はIDの順番に従って定められる。このため、各接着照査器CCは、伝送回線N上に伝送されている他機の照査結果情報を監視し、どの接着照査器CCが照査結果情報を伝送中であるかを判断する。こうすることで自機の送信タイミングを判断する。そして、自機の送信タイミングの到来に合わせて、自機の照査結果情報を送信する。このように、各接着照査器CCが照査結果情報を自律的かつ順次に送信する自主サイクリック伝送が実現される。
【0024】
出力装置70は、自主サイクリック伝送によって、各接着照査器CCの照査結果情報を順次受信する。出力装置70は、各接着照査器CCの照査結果情報を突き合わせることで分岐器Tの転換状態を判定し、連動装置などに出力する。
【0025】
本実施形態の特徴の1つに、ID設定装置40がある。ID設定装置40は、必要に応じて伝送回線Nに接続される装置であり、主に接着照査器CCの交換時に接続される。なお、図1では、ID設定装置40を機器室内で伝送回線Nに接続する構成として図示しているが、伝送回線Nに接続できればID設定装置40の配置位置は任意であり、現場において伝送回線Nに接続することも勿論可能である。
【0026】
[接着照査器の交換に係る状態遷移]
図2は、接着照査器CCの交換時の状態を説明するための図である。接着照査器CCの交換時の各工程について、伝送回線Nに伝送されている情報(伝送フレーム)と、接着照査器CCの状態と、ID設定装置40の状態とを対応づけて示している。図2を参照して接着照査器CCおよびID設定装置40の交換時の処理について説明する。
【0027】
図2(A)は、接着照査器CCが正常動作している状態を示している。伝送回線Nには、各接着照査器CC(1)〜CC(4)が送信した照査結果情報が自主サイクリック伝送によって順次伝送されている。正常動作時にはID設定装置40は接続されていない。
【0028】
図2(B1)〜(B9)は、接着照査器CC(3)が故障し、新しい接着照査器CCに交換する際の各工程を示している。まず、図2(B1)のように、接着照査器CC(3)が故障すると、故障した接着照査器CC(3)からは照査結果情報が出力されなくなる。接着照査器CC(4)は、直前の接着照査器CC(3)の照査結果情報を確認できないが、接着照査器CC(1)や接着照査器CC(2)の照査結果情報を受信できるため、自機の送信タイミングを判断することができる。なお、故障した接着照査器CC(3)を取り外した場合も、この図2(B1)の状態と同じである。また、故障しておらず、定期的な交換によって接着照査器CC(3)を交換する場合も図2と同様となる。
【0029】
次に、ID設定装置40を伝送回線Nに接続する。そして、ID設定装置40に対して、操作員が、各接着照査器CCの照査結果情報の送信機能およびID設定機能を一時停止させる一時停止指令信号を送信させる操作を行う。すると、ID設定装置40は、伝送回線N上に伝送されている伝送フレーム(伝送時期)の空きを欠落時期として判定する。故障或いは取り外された接着照査器CC(3)の順番に対応する照査結果情報の伝送時期が欠落時期として判定される。ID設定装置40は、その欠落時期のタイミングに、一時停止指令信号を送信する。一時停止指令信号は、保守モード切替指令信号とも言える。この時の状態が図2(B2)である。
【0030】
一時停止指令信号を受信した各接着照査器CCは、待機信号の受信まで自主サイクリック伝送およびID設定に係る機能を一時停止させる保守モードに移行する。結果、図2(B3)のように、各接着照査器CCからの照査結果情報の送信は一時停止した状態となる。また、ID設定装置40は、伝送回線Nから照査結果情報を受信できなくなったことをもって、各接着照査器CCが保守モードに移行したと判断し、一時停止指令信号の送信を停止する。
【0031】
次いで、新たな接着照査器CCが取り付けられる。図2(B4)の状態である。なお、故障した接着照査器CC(3)をこの工程で取り外すこととしても図2(B1)〜(B3)の処理の流れは変わらない。
【0032】
新たな接着照査器CCには何らかのIDが初期設定されている。このため、取り付けを完了すると自動的に起動して自主サイクリック伝送を開始する。この状態が図2(B5)である。但し、他の接着照査器CCが照査結果情報を伝送していないため、伝送回線Nからは他機の照査結果情報を受信できない。そのため、新たな接着照査器CCは、所与の基準タイミングを基準として自機のIDの順番まで送信を待機し、照査結果情報を送信することを繰り返し実行することとなる。この状態が図2(B5)である。
【0033】
次いで、操作員が、ID設定装置40に対して、新たな接着照査器CCに設定する新たなIDを指定したID設定信号を送信させる操作を行う。すると、ID設定装置40は、新たな接着照査器CCが照査結果情報を送信している時期を避けて、ID設定信号を送信する。この状態が図2(B6)である。新たな接着照査器CCは、ID設定装置40からのID設定信号に従って新たなIDを設定・記憶させる。ここでは、交換元の接着照査器CC(3)のIDが設定されることとなる。
【0034】
新たなIDの設定が完了すると、新たな接着照査器CCは、保守モードに移行して自主サイクリック伝送を一時停止する。この状態が図2(B7)である。
【0035】
次いで、操作員が、ID設定装置40に対して、全ての接着照査器CCを再起動(復帰)させるための保守モードの解除信号を伝送回線Nに送信させる操作を行う。ID設定装置40は、送信操作に応じて解除信号を送信することとなる。この状態が図2(B8)である。
【0036】
すると、全ての接着照査器CCが自主サイクリック伝送の動作を開始し、一定時間経過後には図2(A)と同じ正常復帰を果たす。この状態が図2(B9)である。接着照査器CCの交換が完了したため、ID設定装置40は伝送回線Nから取り外すことができる。
【0037】
以上のように、交換対象ではない接着照査器CC(1)、CC(2)、CC(4)は、伝送回線Nに接続・稼働した状態のまま、交換対象である接着照査器CC(3)を交換することができる。また、交換した新たな接着照査器CC(3)は、外部からIDが設定可能であるため、現場の作業は、初期状態のIDのままの新たな接着照査器CC(3)を設置すれば済む。IDそれぞれに応じた接着照査器CCを用意しておく必要はない。
【0038】
[接着照査器の構成]
次に、本実施形態の接着照査器CCの構成を説明する。
図3は、接着照査器CCの機能を示すブロック図である。接着照査器CCは、処理部110と、記憶部130と、ID記憶部150と、センサー部160と、表示部180と、通信部190とを備える。
【0039】
処理部110は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算回路等で実現され、記憶部130に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、接着照査器CCの全体制御を行う。また、処理部110は、接着状態判定部111と、自主サイクリック伝送制御部112と、一時停止制御部114と、ID設定部116とを有し、制御プログラム131に従った処理(図4参照)を実行する。
【0040】
接着状態判定部111は、センサー部160が計測した基本レールBRとトングレールTRとの間の隙間量(距離)を所定の閾値条件と比較することで接着の有無を判定する。そして、接着の有無および隙間量を照査結果135として記憶部130に記憶する。
【0041】
自主サイクリック伝送制御部112は、上述した自主サイクリック伝送を司る機能部であり、伝送回線Nに伝送されている情報を監視して自機の送信タイミングを判断し、自機の送信タイミングに合わせて照査結果情報を伝送回線Nに送信する。照査結果情報は、照査結果135およびID151を含む情報である。
【0042】
一時停止制御部114は、一時停止指令信号を受信した場合に、自主サイクリック伝送制御部112およびID設定部116の機能を一時停止させ、接着照査器CCを保守モードに移行させる。この機能が第1の一時停止手段に相当する。また、一時停止制御部114は、ID設定部116によるID設定処理が完了した場合も同様に、自主サイクリック伝送制御部112およびID設定部116の機能を一時停止させ、接着照査器CCを保守モードに移行させる。この機能が第2の一時停止手段に相当する。
【0043】
ID設定部116は、ID設定信号を受信した場合に、そのID設定信号で指定されたIDをID記憶部150に更新記憶させ、新たなIDを設定する。なお、ID設定が完了した後の保守モードへの移行処理を、ID設定部116が担うこととしてもよい。
【0044】
記憶部130は、処理部110が接着照査器CCを統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部110の演算処理のための一時記憶領域として用いられ、センサー部160から入力されるデータや、通信部190による送受信データ等が一時的に格納される。本実施形態では、記憶部130には、制御プログラム131と、照査結果135とが記憶される。
【0045】
ID記憶部150は、接着照査器CCのID151を記憶する。
記憶部130およびID記憶部150は、例えば不揮発性メモリで構成される。記憶部130とID記憶部150とを機能的に別のブロックとして図示・説明したが、1つのメモリとして実現することも勿論可能である。
【0046】
センサー部160は、基本レールBRとトングレールTR間の隙間量を計測する計測器であり、光学式や超音波式等の距離センサーで構成される。計測した隙間量は、処理部110に出力される。
【0047】
表示部180は、LCD(Liquid Crystal Display)やLEDランプ等で構成され、処理部110の表示制御信号に従って表示或いはランプを点灯・消灯させる。
通信部190は、伝送回線Nに接続され、自主サイクリック伝送による通信を実現するための機能部であり、処理部110からの送信指示に従った照査結果情報の送信や、伝送回線Nに伝送されている照査結果情報や各種信号を随時受信して処理部110へ出力する。
【0048】
[接着照査器の動作]
次に、接着照査器CCの動作について、図4を参照して説明する。図4は、処理部110が制御プログラム131を実行することによる接着照査器CCの処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、処理部110は、起動後に自主サイクリック伝送を開始する(ステップS2〜S6)。すなわち、通信部190の受信データに基づいて伝送回線Nに伝送されている信号を監視し(ステップS2)、自機の送信タイミングか否かを判断する(ステップS4)。この判断は、伝送回線Nに伝送されている他機の照査結果情報に含まれるIDに基づいて行われる。IDは例えば1番からの昇順として定められるため、自機のIDと比較することで送信タイミングを判断することができる。受信されないIDがある場合には、当該IDに対応する時期は待機とする。他機のIDを全く受信できない場合には、所与の基準タイミングを基準として自機のIDに対応する時期まで待機することで自機の送信タイミングの到来を判断する。所与の基準タイミングは、例えば、他機のIDを受信できない時間が所定時間経過したタイミングとする等、適宜設定できる。従って、仮に、全ての接着照査器CCを同時に再起動或いは復帰させた場合であっても、IDが適切に設定されていれば、各接着照査器CCが適切な自機の送信タイミングを自律的に判断し、一定時間経過後には定常状態となる。
【0050】
自機の送信タイミングが到来した場合には(ステップS4:YES)、処理部110は、照査結果135およびID151を含む照査結果情報を生成して、通信部190に伝送回線Nに送信させる(ステップS6)。
【0051】
自機の送信タイミングでない場合には(ステップS4:NO)、伝送回線Nから一時停止指令信号を受信したか(ステップS8)、ID設定信号を受信したか(ステップS12)を判断し、何れでもない場合にはステップS2に処理を移行する。
【0052】
一時停止指令信号を受信した場合(ステップS8:YES)、処理部110は、自主サイクリック伝送およびIDの設定機能を一時的に停止する保守モードに移行させる(ステップS10)。
一方、ID設定信号を受信した場合(ステップS12:YES)、処理部110は、ID設定信号に含まれている新たなIDを、ID記憶部150に記憶・更新させることでIDを設定する(ステップS14)。新たなIDの設定が完了した場合、ステップS10と同様、保守モードに移行させる(ステップS16)。
【0053】
ステップS10又はS16の後、処理部11は、解除信号を受信するまで伝送回線Nに伝送されている信号を監視する待機状態となる(ステップS18〜S20:NO)。そして、解除信号を受信した場合(ステップS20:YES)、保守モードを解除して、自主サイクリック伝送を再開させ(ステップS22)、ステップS2に処理を移行する。
【0054】
[ID設定装置の構成]
次に、ID設定装置40の構成について説明する。
図5は、ID設定装置40の機能を示すブロック図である。ID設定装置40は、処理部410と、記憶部430と、操作部470と、表示部480と、通信部490とを備え、接着照査器CCの交換時に伝送回線Nに接続して利用される装置である。
【0055】
処理部410は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算装置で実現され、記憶部430に記憶されたプログラムやデータ等に基づいて、ID設定装置40の全体制御を行う。また、処理部410は、欠落時期判定部412と、一時停止指令制御部414と、ID設定信号送信制御部416とを有し、ID設定制御プログラム431に従ったID設定処理(図6参照)を実行する。
【0056】
欠落時期判定部412は、ID設定に係る処理においてID設定装置40が各種信号を伝送回線Nに伝送するに当たり、伝送回線Nに伝送されている情報を監視して自主サイクリック伝送において照査結果情報が送信されていない欠落時期を判定する機能部である。具体的には、自主サイクリック伝送では、IDの昇順に従って、各接着照査器CCから照査結果情報が順次送信されている。故障或いは取り外された接着照査器CCがある場合には、その接着照査器CCの送信時期は、照査結果情報が送信されない欠落時期となる。この欠落時期は周期的に到来する。
【0057】
一時停止指令制御部414は、操作部470からの操作信号に従って、一時停止指令信号を送信する制御を行い、伝送回線Nに接続されている接着照査器CCに対して、自主サイクリック伝送およびID設定に係る機能を一時停止する保守モードに移行させる。また、ID設定の完了後に、操作部470からの操作信号に従って、解除信号を送信する制御を行って、伝送回線Nに接続されている接着照査器CCの保守モードを解除させ、自主サイクリック伝送を再開させる。
【0058】
ID設定信号送信制御部416は、操作部470からの操作信号に従って、記憶部430に記憶されたID435を含むID設定信号を送信する制御を行って、このID435を、交換された接着照査器CCのID記憶部150に記憶・更新させる。
【0059】
記憶部430は、処理部410がID設定装置40を統合的に制御するためのプログラムやデータ等を記憶するとともに、処理部410の演算処理のための一時記憶領域として用いられる。本実施形態では、記憶部430には、ID設定制御プログラム431と、ID435とが記憶される。ID435は、交換後の接着照査器CCに設定する新たなIDであり、操作部470から操作入力される。
【0060】
操作部470は、ボタンやスイッチ、キーボード等で構成され、操作入力信号を処理部410へ出力する。表示部480は、LCD(Liquid Crystal Display)等で構成され、処理部410の表示制御に従った表示を行う。また、操作部470と表示部480とをタッチパネルで構成するとしてもよい。
通信部490は、伝送回線Nに接続して処理部110からの送信指示に従った各種信号の送信や、伝送回線Nに伝送されている情報を随時受信して処理部410へ出力する通信モジュールである。
【0061】
[ID設定装置の動作]
次に、ID設定装置40の動作について、図6を参照して説明する。図6は、処理部410がID設定制御プログラム431を実行することによるID設定装置40の処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
まず、処理部410は、一時停止指令信号の送信操作を待機する(ステップS42:NO)。操作部470に一時停止指令信号の送信操作がなされた場合(ステップS42:YES)、伝送回線Nに送信データが送信されていない欠落時期を判定し、その欠落時期に一時停止指令信号を送信する(ステップS44)。これを、伝送回線Nに接続されている全ての接着照査器CCが保守モードに移行した、すなわち、伝送回線Nに照査結果情報が送信されない状態となるまで繰り返す(ステップS44〜ステップS46)。
【0063】
そして、伝送回線Nに接続されている全ての接着照査器CCが保守モードに移行したことが確認されたならば(ステップS46:YES)、処理部410は、ID設定信号の送信操作を待機する(ステップS48:NO)。この待機の間、新たな接着照査器CCの取り付け作業が行われることとなる(図2のB4〜B5参照)。操作部470にID設定信号の送信操作がなされた場合には(ステップS48:YES)、処理部410は、欠落時期を判定し、記憶部430に記憶されているID435を指定したID設定信号を伝送回線Nに送信する(ステップS50)。ID設定信号の送信は、ID設定が完了するまで繰り返し行われる(ステップS52:NO)。ID設定の完了は次のようにして判断できる。すなわち、ID設定が完了すると、取り付けられた新たな接着照査器CCは保守モードに移行して、自主サイクリック伝送を一時停止した状態となる。このため、伝送回線Nには照査結果情報が伝送されない状態となる。この状態を判断することで、ID設定の完了を判断できる。
【0064】
ID設定の完了が確認できた場合(ステップS52:YES)、処理部410は、解除信号の送信操作を待機する(ステップS54:NO)。操作部470に解除信号の送信操作がなされた場合には(ステップS54:YES)、解除信号を送信して(ステップS56)、伝送回線Nに接続されている全ての接着照査器CCの保守モードを解除し、自主サイクリック伝送を再開させる。
これでID設定制御処理が終了となる。
【0065】
[作用効果]
以上の通り、本実施形態によれば、接着照査器CCは、IDを書き換え可能に記憶するID記憶部150を有する。そして、自機の送信タイミング以外の期間に一時停止指令信号を受信した場合には、自主サイクリック伝送による送信およびID設定の機能を一時停止する保守モードに移行する。従って、交換対象とされていない正常な接着照査器CCを外部から一時停止させることができる。
【0066】
また、交換して新たに取り付けられた接着照査器CCは、伝送回線NからID設定信号を受信すると、ID設定信号に従ったIDをID記憶部150に更新記憶する。従って、外部からIDを設定することが可能となる。
【0067】
外部信号に基づく一時停止、および、外部信号に基づくIDの設定は、伝送回線N上に所定の信号を伝送すれば良い。また、外部信号の伝送は、交換対象の接着照査器CCの故障或いは取り外すことで空いた、その接着照査器CCの送信タイミングに行われる。従って、稼働中の自主サイクリック伝送において、接着照査器CCの交換を簡単に実現することが可能となる。また、任意のIDを外部から設定できるため、各IDそれぞれに対応する接着照査器CCを用意する必要もない。
【0068】
また、ID設定装置40は、交換対象の接着照査器CCが故障により照査結果情報を送信できなった時期、或いは、交換のために取り外されたことで照査結果情報を送信できなくなった時期に一時停止指令信号を送信することで、交換対象以外の接着照査器CCを一時停止させることができる。その上で、ID設定信号を伝送回線Nに送信することで、交換後に新たに取り付けられた接着照査器CCのIDを設定することができる。そして、IDの設定が終了した後は、解除信号を送信することで、交換対象以外の接着照査器CCおよび交換後の新たな接着照査器CCの自主サイクリック伝送を再開させることができる。
【0069】
[変形例]
以上、本発明を適用した一実施形態について説明したが、本発明が適用できる形態は上記の実施形態に限られるものではない。
例えば、接着照査器CCは、ID設定後に自動的に保守モードに移行することとして説明したが、一時停止指令信号を受信した後に保守モードに移行することとしてもよい。その場合、照査結果情報に、ID設定完了を示す情報を含めて送信することとすれば、ID設定装置40側でID設定の完了を確認することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 接着照査器システム、CC 接着照査器、110 処理部、112 自主サイクリック伝送制御部、114 一時停止制御部、116 ID設定部、150 ID記憶部、151 ID、410 ID設定装置、410 処理部、412 欠落時期判定部、414 一時停止指令制御部、416 ID設定信号送信制御部、N 伝送回線
図1
図2
図3
図4
図5
図6