【実施例】
【0017】
実施例に係る芝刈機について、
図1〜
図8に基づき説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従う。
【0018】
図1に示されるように、芝刈機10は、芝草を刈る歩行型自走式作業機であって、ハウジング11と、該ハウジング11の前部に備えた左右の前輪12と、該ハウジング11の後部に備えた左右の後輪13と、該ハウジング11の中央の内部に収納された芝刈用の上部及び下部カッタブレード14,15と、該ハウジング11の上部に備えたエンジン16(動力源16)と、該ハウジング11から後方へ延びた操作ハンドル17とからなる。なお、動力源16はエンジンに限定されず、例えば電動モータであってもよい。
【0019】
該芝刈機10は、該エンジン16によって該上部及び下部カッタブレード14,15を回転させることにより、芝草を刈り取るとともに、該ハウジング11内に空気の流れ(旋回風の旋回流)を発生させ、該旋回流により、該上部及び下部カッタブレード14,15によって刈った芝草を刈り芝収納体22(
図1参照)に送り込んで収納することができる。以下、該上部及び下部カッタブレード14,15によって刈られた芝草のことを「刈り芝」という。
【0020】
該ハウジング11は、下端面(
図1に示される芝地Grに対向する面)だけが全面的に開放された、いわゆる下方が開放されたハウジングである。該ハウジング11は、該上部及び下部カッタブレード14,15によって刈られた芝草を、旋回風によって旋回運動させつつ、刈り芝搬出通路21へ向かわせるためのスクロール部を有した、平面視渦巻状の部材、つまり渦巻ケーシング(spiral case、scroll case)である。該刈り芝搬出通路21の後端にはグラスバッグ等の刈り芝収納体22を取付け可能である。刈り芝は、ハウジング11の内部で出力軸16a回りを旋回しながら刈り芝搬出通路21へ送られる。
【0021】
該ハウジング11は、機体の役割を兼ねており、上面に該エンジン16を重ねてボルト止めすることによって、一体的に組み付けたものである。該エンジン16は、下端から下方の芝地Grへ向かって該ハウジング11内まで延びた、出力軸16aを有する。該出力軸16aは、該ハウジング11内に位置して、該ハウジング11の上下方向に延びた回転軸である。結果として、該出力軸16a(回転軸16a)は、水平な芝地Gr、つまり地面Grに対して略垂直になる。
【0022】
該回転軸16aには、ハウジング11内において、クラッチ(図示せず)を介して該上部及び下部カッタブレード14,15が取り付けられている。エンジン16によって上部及び下部カッタブレード14,15を駆動することにより、該上部及び下部カッタブレード14,15は、ハウジング11内において、回転軸16a(軸心SC)を回転中心として回転可能である。
【0023】
図2(a)は、
図1に示された該上部及び下部カッタブレード14,15を側方から見た構成を表している。
図2(b)は、
図2(a)に示された上部及び下部カッタブレード14,15を斜め上から見た構成を表している。
図2(c)は、
図2(b)に示された上部及び下部カッタブレード14,15をc矢視線方向から見た構成を表している。
【0024】
図2(a),(b)に示されるように、上部カッタブレード14は、回転軸16aに対し水平方向の両方へ延びた、平面視略平板状の細長い部材、つまり平面視略帯板状の部材である。該上部カッタブレード14は、長手方向の両端部31,31に、芝草を刈るために回転方向Raの前縁32に形成された一対の刃33,33を有する。
【0025】
図3〜
図5に示されるように、該下部カッタブレード15は、回転軸16aに対し水平方向の両方へ延びた、平面視略平板状の細長い部材、つまり平面視略帯板状の部材である。該下部カッタブレード15の長手方向の両端部41,41は、該下部カッタブレード15の回転方向Raの前縁42に形成された一対の刃43,43と、該前縁42から後上方(矢印Rb方向)へ湾曲しつつ延びた一対のエアリフト部44,44とを有している。以下、矢印Rb方向のことを、「エアリフト部44の湾曲方向Rb」という。
【0026】
図2(b),(c)に示されるように、該上部カッタブレード14の刃33,33の刃先33a,33aに対し、該下部カッタブレード15の刃43,43の刃先43a,43aの少なくとも一部は、回転方向Raに対して反対側にオフセットしている。
【0027】
次に、該下部カッタブレード15について詳しく説明する。以下、該下部カッタブレード15のことを、適宜「カッタブレード15」と言い換える。
【0028】
図3〜
図5に示されるように、該エアリフト部44,44は、該下部カッタブレード15が回転方向Raへ回転したときに、空気の旋回流及び上昇気流を発生させるための部分であり、該下部カッタブレード15に一体に形成されている。
【0029】
詳しく述べると、該エアリフト部44,44の前端44a,44aは、該刃43,43の近傍に位置している。例えば、該エアリフト部44の前端44aは、該刃43の刃先43aからエアリフト部44の後端44bまでの全幅Wa(
図2(c)参照)に対し、略中央に位置している。
【0030】
該一対のエアリフト部44,44には、回転軸16aを回転中心とした外周縁45,45のなかの、少なくとも回転方向Raの後半部から、下方へ折り曲げ形成された一対の折り曲げ部46,46を介して、下方へ延びる一対の垂下翼47,47が一体に形成されている。該垂下翼47,47は、該エアリフト部44,44の外周縁45,45に沿った縦板状に形成されている。該垂下翼47,47の前端47a,47aは、該エアリフト部44,44の前端44a,44aに位置している。
【0031】
図6は、
図3に示されるカッタブレード15の長手方向の端部41を拡大して表している。
図7(a)は、
図6の7a−7a線に沿った断面を表している。
図7(b)は、
図6の7b−7b線に沿った断面を表している。
図7(c)は、
図6の7c−7c線に沿った断面を表している。
【0032】
該折り曲げ部46,46の半径rbは、該エアリフト部44,44が回転方向Raの後上方へ湾曲するに従って、漸次大きくなるように設定されている。
【0033】
つまり、
図6及び
図7(a)に示されるように、該カッタブレード15の長手方向端面15aのなかの、垂下翼47の前端47aよりも回転方向Ra前側の部位には、折り曲げ部を有していない。
図6及び
図7(b)に示されるように、該垂下翼47の前端47aの部分の折り曲げ部46の半径rbは、極力小さく設定されている。
図6及び
図7(c)に示されるように、該垂下翼47の後部の部分の折り曲げ部46の半径rbは、前側よりも大きく設定されている。
【0034】
次に、上記構成の作用を説明する。
図8(a)は、比較例のカッタブレード15Aのエアリフト部44Aを示している。
図8(b)は、本発明の実施例のカッタブレード15のエアリフト部44を示している。
【0035】
図8(a)に示される比較例のカッタブレード15Aのエアリフト部44Aは、垂下翼を有していない他は、実施例のエアリフト部44と同じ構成である。該エアリフト部44Aには、回転軸を回転中心とした外周縁45には、空気の剥離や渦流fwを発生し得る。
【0036】
これに対し、
図8(b)に示される実施例のカッタブレード15のエアリフト部44は、垂下翼47を有している。つまり、該外周縁45には、下方へ延びる垂下翼47が形成されている。該垂下翼47は、該外周縁45に沿った縦板状に形成されている。このため、回転中のカッタブレード15の回転方向Raの後端部分に発生する、空気の剥離や渦流fwを極力低減することができる。該剥離や渦流の発生に伴う芝刈機10の騒音を極力低減することができる。
【0037】
さらには、
図3及び
図7に示されるように、該垂下翼47,47は、該エアリフト部44,44に対して下向きである。このため、芝刈り作業中に刈った芝草が、カッタブレード15の上面15bに堆積するのを、防ぐことができる。従って、芝刈機10の騒音の低減効果を、安定して得ることができる。しかも、該垂下翼47,47は、カッタブレード15の上面15bに沿って流れる空気の流れ場、つまり空気の旋回流に直接には晒されにくい。このため、該垂下翼47,47自体から生じる空気の剥離や渦流を軽減することができる。
【0038】
さらには、
図3、
図6及び
図7に示されるように、該垂下翼47,47は、該エアリフト部44,44の外周縁45,45から、下方へ折り曲げ形成された該折り曲げ部46,46を介して、下方へ延びている。このため、
図7に示されるように、該エアリフト部44,44の外周縁45,45と該垂下翼47,47の上端部とのコーナには、翼端から発生する微小な空気の渦流fwを、極力低減することができる。
【0039】
該エアリフト部44は高い部位ほど、つまり前端44aから後端44bへ向かうほど、垂下翼47に空気の剥離や渦流が多く発生して、騒音源となり得る。このため、折り曲げ部46の半径rbは大きいことが好ましい。
【0040】
しかし、
図6及び
図7に示されるように、エアリフト部44には、外周縁45のなかの回転方向Raの後半部にのみ、折り曲げ部46を介して垂下翼47が形成されている。言い換えると、該エアリフト部44のなかの、垂下翼47の前端47a近傍には、刃43がある。つまり、該カッタブレード15の長手方向端面15aのなかの、垂下翼47の前端47aよりも回転方向Ra前側の部位には、折り曲げ部を有していない。従って、垂下翼47の全範囲にわたり、該半径rbが一様に大きいままでは、該垂下翼47の前端47a部分を流れる空気の剥離や渦流fwの発生を、抑制することはできない。
【0041】
これに対し、本実施例では、垂下翼47の前端47aの部分の、折り曲げ部46の半径rbは、極力小さく設定されている。従って、該カッタブレード15の長手方向端面15aは、該前端47aの回転方向Ra前後での、形状の変化を小さくすることができる。この結果、該前端47a部分を流れる空気の剥離や渦流fwの発生を抑制することによって、騒音を抑制することができる。
【0042】
しかも、該折り曲げ部46の半径rbは、該エアリフト部44が回転方向Raの後上方へ湾曲するに従って、漸次大きくなる。回転中のカッタブレード15の回転方向Ra後端部分に発生する、空気の剥離や渦流fwを円滑に低減することができる。この結果、該剥離や渦流の発生に伴う騒音を、円滑に低減することができる。
【0043】
さらには、
図3に示されるように、該垂下翼47,47は、エアリフト部44,44に一体に形成されている。しかも、該垂下翼47,47は、該エアリフト部44,44の外周縁45,45に沿った縦板状に形成されている。このため、該垂下翼47,47は、該エアリフト部44,44を補強するための補強用リブの役割を果たすことができる。従って、該エアリフト部44,44の曲げ強度を高めることができる。