(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生成手段は、前記第1の再構成フィルタを用いて再構成された画像から、前記差分に所定の係数を乗算して成る画像成分を減算することにより、前記エイリアシングアーチファクトが低減された画像を生成する、請求項1に記載の画像生成装置。
放射線源及び検出器を用いた撮影対象のスキャンにより収集された投影データに基づき、第1の再構成フィルタを用いてフィルタ処理済み投影データを求めるフィルタ処理手段と、
前記収集された投影データに基づき、中低周波領域での強調度が実質的に互いに同じであり高周波領域での強調度が互いに異なる空間周波数特性をそれぞれ有する第2の再構成フィルタ及び第3の再構成フィルタを用いて生成される二つのフィルタ処理済み投影データの差分を求める差分算出手段と、
前記第1の再構成フィルタを用いて求められたフィルタ処理済み投影データと前記差分とを用いて、エイリアシングアーチファクト成分が低減された画像を生成する生成手段と、を備えた画像生成装置。
前記生成手段は、前記第1の再構成フィルタを用いて求められたフィルタ処理済み投影データから、前記差分に所定の係数を乗算して成る投影データ成分を減算して得られる投影データを逆投影処理することにより、前記エイリアシングアーチファクトが低減された画像を生成する、請求項3に記載の画像生成装置。
前記第1の再構成フィルタにおける高周波領域での強調度に対する前記第2の再構成フィルタ及び第3の再構成フィルタにおける高周波領域での強調度の変化率は、5%以内である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の画像生成装置。
前記第1、第2及び第3の再構成フィルタにおける中低周波領域での強調度は、実質的に互いに同じである、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の画像生成装置。
前記生成手段は、前記エイリアシングアーチファクトが低減された画像と前記第1の再構成フィルタを用いて再構成された画像とを、画像領域ごとに、該画像領域における画素値の大きさ及び/又はばらつき程度に応じた重み付けを用いて加重加算することにより、新たな画像を生成する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の画像生成装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、発明の実施形態について説明する。
【0026】
まず、本実施形態に係るX線CT装置の構成について説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係るX線CT装置の構成を概略的に示す図である。
【0028】
図1に示すように、X線CT装置100は、操作コンソール(console)1と、撮影テーブル(table)10と、走査ガントリ(gantry)20とを備えている。
【0029】
操作コンソール1は、操作者41からの入力を受け付ける入力装置2と、被検体(撮影対象)40の撮影を行うための各部の制御や画像を生成するためのデータ処理などを行うデータ処理装置3と、走査ガントリ20で取得したデータを収集するデータ収集バッファ(buffer)5と、画像を表示するモニタ(monitor)6と、プログラムやデータなどを記憶する記憶装置7とを備えている。
【0030】
撮影テーブル10は、被検体40を載せて走査ガントリ20の空洞部Bに搬送するクレードル(cradle)12を備えている。クレードル12は、撮影テーブル10に内蔵するモータ(motor)で昇降および水平直線移動される。なお、ここでは、被検体40の体軸方向すなわちクレードル12の水平直線移動方向をz軸方向、鉛直方向をy軸方向、z軸方向およびy軸方向に垂直な水平方向をx軸方向とする。
【0031】
走査ガントリ20は、回転可能に支持された回転部15を備えている。回転部15には、X線管21と、X線管21を制御するX線コントローラ(controller)22と、X線管21から発生したX線81をファンビーム(fan beam)或いはコーンビーム(cone beam)に整形するアパーチャ(aperture)23と、被検体40を透過したX線81を検出するX線検出器24と、X線検出器24の出力信号をデータとして収集するDAS25と、X線コントローラ22,アパーチャ23の制御を行う回転部コントローラ26とが搭載されている。走査ガントリ20の本体は、制御信号などを操作コンソール1や撮影テーブル10と通信する制御コントローラ29を備えている。回転部15と走査ガントリ20の本体とは、スリップリング(slip ring)30を介して電気的に接続されている。
【0032】
X線管21およびX線検出器24は、被検体40が載置される撮影空間、すなわち走査ガントリ20の空洞部Bを挟んで互いに対向して配置されている。回転部15が回転すると、X線管21およびX線検出器24は、互いの位置関係を維持したまま、被検体40の周りを回転する。X線管21から放射されアパーチャ23で整形されたファンビーム或いはコーンビームのX線81は、被検体40を透過し、X線検出器24の検出面に照射される。
【0033】
なおここでは、このファンビーム或いはコーンビームのX線81のxy平面における広がり方向をチャネル(channel)方向(CH方向)、z軸方向における広がり方向もしくはz軸方向そのものをスライス(slice)方向(SL方向)、xy平面において回転部15の回転中心に向かう方向をアイソセンタ(isocenter)方向(I方向)で表すことにする。
【0034】
X線検出器24は、チャネル方向およびスライス方向に配設された複数の検出素子24iにより構成されている。なお、検出素子24iのチャネル方向の数は、例えば60°の角度範囲において1000個程度、その配列間隔は、例えば1mm程度である。
【0035】
次に、本実施形態のX線CT装置(X-ray Computed Tomography System)における画像生成処理に係る部分の機能的な構成について説明する。
【0036】
図2は、本実施形態のX線CT装置における画像の生成に係る部分の機能的な構成を示すブロック図である。
図2に示すように、X線CT装置100は、撮影条件設定部31と、投影データ収集部32と、画像生成部33と、表示制御部37とを有している。なお、これら各部は、データ処理装置3が記憶装置7に記憶されているプログラムを読み出して実行することにより機能的に実現される。以下、これら各部の機能についてより詳しく説明する。
【0037】
撮影条件設定部31は、操作者41による操作に応じて撮影条件を設定する。撮影条件としては、例えば、X線管電圧、X線管電流、z軸方向(被検体40の体軸方向)における撮影範囲、スライス厚、ヘリカルピッチ(helical pitch)、自動露出機構を用いる際の目標画像ノイズレベル(noise level)、画像再構成に用いる再構成フィルタ(再構成関数)の種類などが含まれる。再構成フィルタは、空間周波数特性として高周波領域を強調するフィルタや、高周波領域を抑えたフィルタなど、撮影部位や目的用途に応じて複数種類が用意されている。
【0038】
投影データ収集部32は、設定された撮影条件に基づいて、被検体40のスキャンが行われるように撮影テーブル10および走査ガントリ20を制御する。このスキャンの実行により、被検体40の複数ビューの投影データが収集される。
【0039】
画像生成部33は、収集された投影データに基づいて画像を生成する。画像生成部33の詳細については後述する。
【0040】
表示制御部37は、生成された画像や文字などの情報を画面に表示するようモニタ6を制御する。
【0041】
ここで、画像生成部33の詳細について説明する。画像生成部33は、被検体40をスキャンして収集された複数ビューの投影データに基づき、撮影条件として設定された再構成フィルタを用いて、画像を生成する。この際、画像の空間分解能を妥協することなく、エイリアシングアーチファクトを簡便かつ確実に検出し、そのアーチファクトのみの低減を図る。
【0042】
以下、本実施形態におけるエイリアシングアーチファクトの検出及び低減の考え方及び手法について説明する。
【0043】
一般的に、エイリアシングアーチファクトは、ナイキスト周波数以下の空間周波数領域で考えた場合、中低周波領域に比べて主に高周波領域での情報が支配的になる。ナイキスト周波数とは、X線検出器24における検出素子の配列ピッチの逆数に基づいて規定される周波数であり、原理的に再現可能な空間周波数の限界に相当する。
【0044】
そのため、画像再構成に用いる再構成フィルタの空間周波数特性のうち高周波領域での強調度が異なると、再構成画像に現れるエイリアシングアーチファクトの強度も異なる。したがって、このような高周波領域において強調度がわずかに異なる二種類の再構成フィルタを用意し、それぞれの再構成フィルタによって得られた二つの画像の差分を求めれば、その差分からエイリアシングアーチファクト成分の情報を得ることができる。そして、その情報を用いて再構成画像に現れるエイリアシングアーチファクトを低減することができる。
【0045】
一般的なフィルタ逆投影法の計算式を次式に示す。
【数1】
【0046】
ここで、(x,y)は、実空間に対応した画像空間における水平方向x,鉛直方向yの直交座標を表し、θはxy直交座標の原点Oを中心としたxy平面内の角度、ωは空間周波数を表している。
【0047】
数式(3)は、基本的なフィルタ|ω|に係数h(W)を乗算して調整された再構成フィルタg(W)を表している。Wは個々のフィルタを特定するためのパラメータ(parameter)である。
【0048】
数式(2)は、xy直交座標を角度θだけ回転させたときのx軸上の座標をXとしたとき、角度θ方向の投影データg(X,θ)のXに対する1次元フーリエ変換(Fourier transform)に対して、空間周波数ωの領域でg(W)によって表される再構成フィルタを乗算し、フーリエ逆変換して、フィルタ処理済み投影データq(X,θ,W)を求めることを意味している。これは、投影データに再構成フィルタの関数をコンボリューション(convolution)してそのコンボリューションデータを得ること、ということもできる。なお、Xは、X=x・cosθ+y・sinθという関係式にて定義される。この数式(2)の部分がフィルタ補正に相当する。
【0049】
数式(1)は、フィルタ処理済み投影データq(X,θ,W)を、角度θの360度分について逆投影して、画像f(x,y,W)を得ることを意味している。
【0050】
つまり、数式(1)〜(3)は、投影データg(X,θ)に対して再構成フィルタg(W)でフィルタリング(filtering)を行い、フィルタ処理済み投影データq(X,θ,W)を生成した後、これを逆投影して画像f(x,y,W)を求めることを意味する。
【0051】
上記のような定義の下、エイリアシングアーチファクトが低減された補正画像を生成するための基本的な計算式は、次のように記述することができる。
【数2】
【0052】
ここで、g(W
1)は、第1の再構成フィルタである。第1の再構成フィルタg(W
1)は、画像再構成に用いる目的の再構成フィルタであり、撮影条件として設定される。また、g(W
2)及びg(W
3)は、それぞれ、第2の再構成フィルタ及び第3の再構成フィルタである。第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)は、空間周波数特性において、中低周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)と実質的に同じであり、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)とわずかに異なる再構成フィルタである。第2の再構成フィルタg(W
2)と第3の再構成フィルタg(W
3)とは互いに異なる。kは補正係数である。
【0053】
図3は、第1〜第3の再構成フィルタg(W
1),g(W
2),g(W
3)における空間周波数特性の一例を示す図である。この図は、空間周波数特性としてMTF(Modulation Transfer Function;変調伝達関数)曲線を表したものである。ここで、高周波領域は、ナイキスト周波数ω
NYに近接した領域を含んでおり、例えば、ナイキスト周波数ω
NY以下の周波数領域を100%としてナイキスト周波数ω
NYから低周波側に30%の範囲内の領域と定義することができる。
【0054】
本例では、第1の再構成フィルタg(W
1)は、空間周波数が高周波寄りになるにつれてMTF値が緩やかに下降していくMTF曲線を描く標準的なフィルタである。第2の再構成フィルタg(W
2)は、中低周波領域での強調度(MTF値)が第1の再構成フィルタg(W
1)と実質的に同じであり、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)よりわずかに大きい再構成フィルタである。また、第3の再構成フィルタg(W
3)は、中低周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)と実質的に同じであり、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)よりわずかに小さい再構成フィルタである。これにより、第1〜第3の再構成フィルタg(W
1),g(W
2),g(W
3)の間で強調周波数がわずかにずれることになる。
【0055】
図4は、第1〜第3の再構成フィルタをそれぞれ用いて再構成される各画像の比較概念図である。一般的に、再構成画像において、オブジェクトJは中低周波成分が支配的となり、エイリアシングアーチファクトAは高周波成分が支配的となる傾向が強い。また、第1から第3の再構成フィルタg(W
1)〜g(W
3)における空間周波数特性については、前述のとおり、中低周波領域での強調度は実質的に同じであるが、高周波領域での強調度は第1の再構成フィルタg(W
1)を中心に第2の再構成フィルタg(W
2)が若干大きく、第3の再構成フィルタg(W
3)は若干小さい。そのため、再構成画像において、オブジェクトJの強度(CT値)は、いずれの画像においても実質的に同じである。しかし、エイリアシングアーチファクトAの強度は、第1の再構成フィルタg(W
1)によるエイリアシングアーチファクトAを中心に、第2の再構成フィルタg(W
2)によるエイリアシングアーチファクトAが若干強く、第3の再構成フィルタg(W
3)によるエイリアシングアーチファクトAが若干弱くなる。
【0056】
したがって、上記の計算式の意味は、次のように説明することができる。
図5は、エイリアシングアーチファクトが低減された補正画像を生成するための計算式の意味を概念的に説明する図である。
図5に示すように、第1の再構成フィルタg(W
1)に対して高周波領域の強調度がわずかに異なる第2の再構成フィルタg(W
2)及び第3の再構成フィルタg(W
3)を用いて画像再構成することにより、エイリアシングアーチファクトの強度が異なる二つの画像を得ることができる。得られた二画像間の差分画像を求めることにより、エイリアシングアーチファクト成分が抽出される。そして、第1の再構成フィルタを用いて再構成された画像から、そのエイリアシングアーチファクト成分に適当な補正係数kを乗算して大きさを調整したものを減算することにより、エイリアシングアーチファクトが低減された補正画像を得ることができる。
【0057】
なお、エイリアシングアーチファクト成分の強度は、第1〜第3の再構成フィルタg(W
1),g(W
2),g(W
3)に依存するので、補正係数kは、これらの再構成フィルタに応じて最適な値が適用されることになる。
【0058】
また、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)は、その両方が、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)より大きいもの、あるいは小さいものであってもよい。
【0059】
ただし、好適な設定としては、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)の一方を、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)より大きいものとし、他方を、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)より小さいものとする。このようにすれば、第2の再構成フィルタg(W
2)と第3の再構成フィルタg(W
3)との差異を大きく確保しつつ、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)の第1の再構成フィルタg(W
1)に対する差異を小さくすることができる。その結果、抽出されるエイリアシングアーチファクト成分について、その成分を大きくしてノイズ(noise)に強くしつつ、その誤差を小さくすることができる。
【0060】
また、さらに好適な設定としては、第1の再構成フィルタと第2の再構成フィルタとの間における高周波領域での強調度の差異と、第1の再構成フィルタg(W
1)と第3の再構成フィルタg(W
3)との間における高周波領域での強調度の差異とを、略同程度にする。このようにすれば、第2の再構成フィルタg(W
2)と第3の再構成フィルタg(W
3)との差異を大きく確保することと、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)の第1の再構成フィルタg(W
1)に対する差異を小さくすることとを効率よくバランスさせることができる。その結果、抽出されるエイリアシングアーチファクト成分について、その成分を大きくしてノイズに強くすることと、その誤差を小さくすることとを、最も効率よく行うことができる。
【0061】
ところで、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)の空間周波数特性が、第1の再構成フィルタg(W
1)から大きく乖離してしまう場合を考えてみる。この場合、検出されるエイリアシングアーチファクト成分は、目的の再構成フィルタである第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて再構成される画像上に現れるエイリアシングアーチファクトから大きくずれてしまう。つまり、エイリアシングアーチファクトの検出精度が劣化してしまう。一方、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)の空間周波数特性が、第1の再構成フィルタg(W
1)と非常に近い場合を考えてみる。この場合、検出されるエイリアシングアーチファクト成分は小さくなり、ノイズに埋もれてしまう可能性がある。そのため、第1の再構成フィルタg(W
1)における高周波領域での強調度に対する第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)における高周波領域での強調度の変化率、すなわちMTF曲線におけるMTF値の変化率は、一定レベル以上、一定レベル以下にする必要がある。経験的には、その変化率は、例えば0.1%〜5%の範囲内が想定されるが、好ましくは0.5%〜2.5%の範囲内である。あるいは、第1の再構成フィルタg(W
1)における高周波領域での強調度と、第2及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)における高周波領域での強調度との変化幅、すなわちMTF曲線におけるMTF値の変化幅は、一定レベル以上、一定レベル以下にする必要がある。経験的には、その変化幅は、例えば、MTF値=1を100%として、0.06%〜3.0%の範囲内が想定されるが、好ましくは0.3%〜1.5%の範囲内である。
【0062】
次に、画像生成部33の構成について説明する。
【0063】
図6は、画像生成部33の構成を示す機能ブロック図である。画像生成部33は、
図6に示すように、さらに、再構成部331と、差分算出部332と、生成部333とを有している。
【0064】
再構成部331は、収集された投影データg(X,θ)に基づいて、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて第1の画像f(x,y,W
1)を再構成する。
【0065】
差分算出部332は、収集された投影データg(X,θ)に基づいて、第2の再構成フィルタ及び第3の再構成フィルタg(W
2),g(W
3)をそれぞれ用いて、第2の画像及び第3の画像f(x,y,W
2),f(x,y,W
3)を再構成し、第2の画像f(x,y,W
2)と第3の画像f(x,y,W
3)との差分を算出する。
【0066】
生成部333は、第1の画像f(x,y,W
1)から、第2の画像f(x,y,W
2)と第3の画像f(x,y,W
3)との差分に所定の係数を乗算して成る画像成分を減算することにより、第1の画像f(x,y,W
1)においてエイリアシングアーチファクトが低減された画像f′(x,y,W
1)を生成する。
【0067】
次に、X線CT装置において実行される処理の流れについて説明する。
【0068】
図7は、その処理の流れを示すフローチャートである。
【0069】
ステップ(step)S1では、撮影条件設定部31が、操作者41の操作に基づいて、画像再構成に用いる再構成フィルタの種類を含む撮影条件を設定する。設定された再構成フィルタを第1の再構成フィルタg(W
1)とする。
【0070】
ステップS2では、投影データ収集部32が、撮影条件に基づいて各部を制御して、被検体40のスキャンを実行させ、複数ビューの投影データg(X,θ)を収集する。
【0071】
ステップS3では、再構成部331が、収集された投影データg(X,θ)に基づいて、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて、第1の画像f(x,y,W
1)を再構成する。再構成部33は、例えば、次式にしたがって画像再構成処理を行う。
【数3】
【0072】
ステップS4では、再構成部331が、収集された投影データg(X,θ)に基づいて、第2の再構成フィルタg(W
2)を用いて第2の画像f(x,y,W
2)を再構成する。第2の再構成フィルタg(W
2)は、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)よりわずかに大きいフィルタである。再構成部331は、例えば、次式にしたがって画像再構成処理を行う。
【数4】
【0073】
ステップS5では、再構成部331が、収集された投影データg(X,θ)に基づいて、第3の再構成フィルタg(W
3)を用いて第3の画像f(x,y,W
3)を再構成する。第3の再構成フィルタg(W
3)は、高周波領域での強調度が第1の再構成フィルタg(W
1)よりわずかに小さいフィルタである。再構成部331は、例えば、次式にしたがって画像再構成処理を行う。
【数5】
【0074】
なお、第1〜第3の画像を再構成する順番は不問である。
【0075】
ステップS6では、差分算出部332が、第2の画像f(x,y,W
2)と第3の画像f(x,y,W
3)との差分画像を求める。この差分画像は、第1の画像f(x,y,W
1)に現れるエイリアシングアーチファクト成分を含んでいる。
【0076】
ステップS7では、生成部333が、第1の画像f(x,y,W
1)から、上記差分画像(f(x,y,W
2)−f(x,y,W
3))に所定の補正係数kを乗算して成る画像成分を減算することにより、第1の画像f(x,y,W
1)においてエイリアシングアーチファクトが低減された補正画像f′(x,y,W
1)を生成する。生成部333は、例えば、次式にしたがって補正画像を生成する。
【数6】
【0077】
ステップS8では、表示制御部37が、モニタ6を制御して、生成された補正画像f′(x,y,W
1)を画面に表示させる。
【0078】
図8に、本提案法を用いて生成した補正画像と一般法を用いて生成した通常画像との比較結果を示す。これらの画像は、頭部ファントムのアキシャル断層像である。左の画像は、標準的な再構成フィルタg(W)を用いて再構成した「通常画像」f(x,y,W)である。右の画像は、標準的な再構成フィルタg(W)を目的の再構成フィルタとして本提案法を用いて生成した「補正画像」f′(x,y,W)である。また、下の画像は、「通常画像」f(x,y,W)と「補正画像」f′(x,y,W)との差分画像Δf(x,y,W)である。この差分画像を見て分かる通り、被検体40の構造的な差分よりも、周期的に波を打つような縞模様のエイリアシングの情報が主に抜き出されている。このようなエイリアシングアーチファクトの情報が主体の情報を用いることにより、エイリアシングアーチファクトを効率よく的確に低減することができる。
【0079】
図9に、
図8に示した一般法による「通常画像」f(x,y,W)及び本提案法による「補正画像」f′(x,y,W)の一部拡大図と、そのエイリアシング部分のプロファイル(CT値の空間的な変化)とを示す。左の画像は「通常画像」f(x,y,W)の一部の拡大図、右の画像は「補正画像」f′(x,y,W)の同一部の拡大図である。また、下のグラフは、破線が、「通常画像」f(x,y,W)における直線Lに沿ったCT値のプロファイルを表しており、実線が、「補正画像」f′(x,y,W)における直線L′(直線Lと同じ位置)に沿ったCT値のプロファイルを表している。これらのプロファイルの比較からも明らかなように、主にエイリアシングアーチファクトを主として低減していることが分かる。
【0080】
これらの結果から、本提案法を用いて生成した画像では、ほぼエイリアシングアーチファクトのみが確実に低減されていることが分かる。
【0081】
(第二実施形態)
第一実施形態では、エイリアシングアーチファクト成分の抽出を画像空間上において行っているが、投影データ空間上、すなわち、コンボリューションデータ空間上において行うこともできる。したがって、画像生成部33は、例えば、次の計算式にしたがってエイリアシングアーチファクトが低減された画像を生成するようにしてもよい。
【0082】
【数7】
数式(14)は、角度θ方向の投影データg(X,θ)のXに対する1次元フーリエ変換に対して、第1の再構成フィルタg(W
1)を乗算し、フーリエ逆変換して、第1のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
1)を求めることを意味している。
【0083】
同様に、数式(15)は、第2の再構成フィルタg(W
2)による第2のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
2)を求めること、数式(16)は、第3の再構成フィルタg(W
3)による第3のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
3)を求めること、をそれぞれ意味している。
【0084】
数式(13)は、第1のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
1)から、第2のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
2)と第3のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
3)との差分に所定の補正係数kを乗算したものを減算して、エイリアシングアーチファクトに対応した成分が低減されたフィルタ処理済み投影データq′(X,θ,W
1)を求めることを意味している。なお、補正係数kは、これらの再構成フィルタに応じて最適な値が適用されることになる。
【0085】
数式(12)は、フィルタ処理済み投影データq′(X,θ,W
1)を角度θの360度分について逆投影処理して補正画像f′(x,y,W
1)を再構成することを意味している。
【0086】
(第三実施形態)
第一実施形態及び第二実施形態において、第2の再構成フィルタg(W
2)及び第3の再構成フィルタg(W
3)のいずれか一方を、第1の再構成フィルタg(W
1)そのもので代替してもよい。
【0087】
すなわち、第一実施形態においては、エイリアシングアーチファクト成分を、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて再構成される画像と第2の再構成フィルタg(W
2)または第3の再構成フィルタg(W
3)を用いて再構成される画像との差分により求めてもよい。この場合の計算式は、次のように記述することができる。
【0089】
この計算式は、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて再構成された画像f(x,y,W
1)から、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて再構成された画像と第2の再構成フィルタg(W
2)または第3の再構成フィルタg(W
3)を用いて再構成された画像との差分に所定の補正係数kを乗算して成る画像成分を減算して、エイリアシングアーチファクトが低減された画像f′(x,y,W
1)を求めることを意味している。
【0090】
また、第二実施形態においては、エイリアシングアーチファクト成分を、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いて求められるフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
1)と第2の再構成フィルタg(W
2)または第3の再構成フィルタg(W
3)を用いて求められるフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
2or3)との差分により求めてもよい。この場合の計算式は、次のように記述することができる。
【0092】
この計算式は、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いてフィルタリングされた第1のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
1)から、第1の再構成フィルタg(W
1)を用いてフィルタリングされた第1のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
1)と第2または第3の再構成フィルタg(W
2or3)を用いてフィルタリングされた第2または第3のフィルタ処理済み投影データq(X,θ,W
2or3)との差分に所定の補正係数kを乗算して成る投影データ成分を減算して、エイリアシングアーチファクト成分が低減されたフィルタ処理済み投影データq′(X,θ,W
1)を求め、これを角度θの360度分について逆投影することにより、エイリアシングアーチファクトが低減された画像f′(x,y,W
1)を再構成することを意味している。
【0093】
この第三実施形態の場合、目的の再構成フィルタである第1の再構成フィルタg(W
1)ともう一方の第2または第3の再構成フィルタg(W
2or3)との差異を第一実施形態と同様に保とうとすると、第1の再構成フィルタg(W
1)ともう一方の再構成フィルタg(W
2or3)との差異が大きくなるので、エイリアシングアーチファクトの誤差は若干大きくなる可能性がある。しかし、この場合には、画像再構成または投影データのフィルタリングを二種類の再構成フィルタについてのみ行えばよいので、計算量を少なくすることができる。
【0094】
(第四実施形態)
第一実施形態及び第二実施形態において、各周波数領域ごとにエイリアシングアーチファクトを選別して、各周波数領域ごとに補正係数を調整するようにしてもよい。すなわち、差分算出部332は、エイリアシングアーチファクトの周波数領域ごとに、この周波数領域に対して定義された第2及び第3の再構成フィルタを用いて上記「差分」を求め、生成部333は、エイリアシングアーチファクトの周波数領域ごとに、この周波数領域に対して定義された補正係数とこの周波数領域について求められた「差分」とを用いて、上記「減算」を行う。このようにすれば、エイリアシングアーチファクトの全周波数領域について、ほぼ最適な第2及び第3の再構成フィルタを用いて、エイリアシングアーチファクト成分の情報を抽出することができ、高い精度でエイリアシングアーチファクトを低減することができる。
【0095】
本手法を、例えば第一実施形態に適用する場合、計算式は、次のように記述することができる。
【0097】
また、本手法を、例えば第二実施形態に適用する場合、計算式は、次のように記述することができる。
【0098】
【数11】
ここで、mは各周波数領域を特定するパラメータ、W
2,m,W
3,mは、それぞれ周波数領域mに対して定義された第2の再構成フィルタ及び第3の再構成フィルタを特定するパラメータである。
【0099】
(第五実施形態)
第一から第四実施形態において、生成部333は、第1の再構成フィルタを用いて再構成された元画像f(x,y,W
1)とエイリアシングアーチファクトが低減された補正画像f′(x,y,W
1)とを、画像領域ごとに、この画像領域における画素値の大きさ及び/又はばらつき程度に応じた重み付けを用いて加重加算することにより、新たな画像f″(x,y,W
1)を生成するようにしてもよい。このようにすれば、例えば、画素値が大きくなったりそのばらつき程度が大きくなったりする骨部などの高コントラストな領域では、補正を控えめにして、被検体40の実像の情報を劣化させないようにすることができる。また例えば、画素値やそのばらつき程度が小さくなる軟部などの低コントラストな領域では、補正を強めにして、アーチファクトを積極的に低減するようにすることもできる。
【0100】
例えば、画像におけるCT値やSD値(CT値による標準偏差)によって、元画像f(x,y,W
1)と補正画像f′(x,y,W
1)のいずれを使用するかを画素ごとに判断し、元画像f(x,y,W
1)と補正画像f′(x,y,W
1)とを組み合わせるようにしてもよい。この場合の計算式は、次のように記述することができる。
【0102】
ここで、s(f(x,y,W
1))は、CT値やSD値によって元画像f(x,y,W
1)と補正画像f′(x,y,W
1)のどちらを適用するかを判断する関数である。本例では、s(f(x,y,W
1))=0の場合には元画像f(x,y,W
1)を、s(f(x,y,W
1))=1の場合には補正画像f′(x,y,W
1)を適用する。
【0103】
また例えば、画像におけるCT値やSD値(CT値による標準偏差)によって、元画像f(x,y,W
1)と補正画像f′(x,y,W
1)とを画素ごとにどの程度の割合で合成するかを判断し、それにより元画像f(x,y,W
1)と補正画像f′(x,y,W
1)とを合成するようにしてもよい。この場合の計算式は、次のように記述することができる。
【0105】
ここで、s(f(x,y,W
1))は、0から1の間の数値を持つ。
【0106】
なお、発明は上記の実施形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の形態にて実施可能である。
【0107】
例えば、上記の処理方法、計算式等は、単なる例であり、実際にはこれらの種々の組合せによるものが考えられる。
【0108】
また例えば、上記の実施形態は、X線CT装置であるが、上記の画像生成処理を行う画像生成装置も発明の実施形態の一例である。
【0109】
また例えば、コンピュータを、このような画像生成装置として機能させるためのプログラム、このプログラムが記憶された記憶媒体などもまた、発明の実施形態の一例である。
【0110】
また例えば、上記の実施形態は、X線CT装置であるが、発明は、X線CT装置とPETまたはSPECTとを組み合わせたPET−CT装置やSPECT−CT装置などにも適用可能である。