(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
A.一実施形態
[A1.車両10の構成]
(A1−1.車両10の全体構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るサスペンション装置12を搭載した車両10の一部を簡略的に示す概略構成図である。サスペンション装置12は、各車輪24に対応するコイルばね20及びダンパ22を有する。
【0020】
(A1−2.コイルばね20)
コイルばね20は、車体26とスプリングシート48との間に配置され、路面300から車輪24に入力される振動(路面振動)を吸収する。
【0021】
(A1−3.ダンパ22)
(A1−3−1.ダンパ22の全体構成)
ダンパ22は、コイルばね20(又は車体26)の変位を減衰させる。
図1に示すように、ダンパ22は、ダンパ本体30と、油圧機構32と、第1加速度センサ34と、第2加速度センサ36と、電子制御装置38(以下「ECU38」という。)とを備える。
【0022】
(A1−3−2.ダンパ本体30)
ダンパ本体30は、スプリングシート48に加え、油圧シリンダ40、ピストンヘッド42、ピストンロッド44及びピストンバルブ46を備える。油圧シリンダ40は、円筒状の部材であり、ピストンヘッド42により、その内部が第1油圧室50及び第2油圧室52に区画される。第1油圧室50及び第2油圧室52には油が充填されている。ピストンロッド44は、油圧シリンダ40の内周面と略等しい直径のピストンヘッド42をその一端に固定すると共に、他端が車体26に固定されている。ピストンバルブ46は、ピストンヘッド42内に形成され、第1油圧室50と第2油圧室52とを連通させる。スプリングシート48は、油圧シリンダ40の外周に形成されてコイルばね20の一端を支持する。
【0023】
(A1−3−3.油圧機構32)
油圧機構32は、ダンパ22における油の流通を制御するものであり、油圧ポンプ60と、油流路62と、アキュムレータ64と、電磁モータ66(以下「モータ66」ともいう。)とを備える。油流路62内の油は、油圧ポンプ60によりその流れの向き及び圧力が制御される。モータ66は、ECU38からの指令に基づき油圧ポンプ60を動作させる。本実施形態の電磁モータ66は、直流(DC)式であるが、交流(AC)式としてもよい。また、モータ66を動作させるための図示しないバッテリ(蓄電装置)が設けられる。前記バッテリには、モータ66の回生電力を充電してもよい。
【0024】
(A1−3−4.第1加速度センサ34及び第2加速度センサ36)
第1加速度センサ34(以下「ばね下センサ34」又は「加速度センサ34」ともいう。)は、コイルばね20よりも車輪24側(すなわち、ばね下)に配置されて、ばね下の上下方向Z1、Z2の加速度x
1’’(以下「ばね下加速度x
1’’」ともいう。)[m/s/s]を検出して、ECU38に出力する。
【0025】
第2加速度センサ36(以下「ばね上センサ36」又は「加速度センサ36」ともいう。)は、コイルばね20よりも車体26側(すなわち、ばね上)に配置されて、ばね上の上下方向Z1、Z2の加速度X
2’’ (以下「ばね上加速度x
2’’」ともいう。)[m/s/s]を検出して、ECU38に出力する。
【0026】
(A1−3−5.ECU38)
図1に示すように、ECU38は、入出力部70、演算部72及び記憶部74を有する。入出力部70は、加速度センサ34、36、モータ66等との信号の入出力を行う。
【0027】
演算部72は、ダンパ22の各部を制御するものであり、制御量算出部80及びモータ制御部82を備える。制御量算出部80及びモータ制御部82は、記憶部74に記憶された制御プログラムを起動することにより実現される。
【0028】
制御量算出部80は、モータ66の制御量u(本実施形態では、入力電流Imot[A]の目標値(以下「目標モータ電流Imottar」又は「目標電流Imottar」という。))を算出する。制御量算出部80は、ばね下制御部90と、ばね上制御部92とを有する。モータ制御部82は、制御量算出部80が算出したモータ66の制御量uに基づいてモータ66を制御する。
【0029】
記憶部74は、演算部72で用いる制御プログラム等の各種のプログラムやデータを記憶する。
【0030】
[A2.本実施形態における制御]
(A2−1.前提)
図2は、本実施形態のサスペンション装置12の動作を説明するための等価モデルを示す図である。
図2における各種の値の内容は、下記の通りである。
x
0:路面300の上下方向変位量[m]
x
1:ばね下部材100の上下方向変位量[m]
x
2:ばね上部材102の上下方向変位量[m]
M
1:ばね下部材100の質量[kg]
M
2:ばね上部材102の質量[kg]
k
1:ばね下部材100のばね定数[N/m]
k
2:コイルばね20のばね定数[N/m]
C
2:ダンパ本体30の減衰係数[N/m/s]
u:電磁モータ66に入力される制御量[A]
【0031】
ばね下部材100としては、例えば、車輪24、第1加速度センサ34及び油圧シリンダ40が含まれる。ばね上部材102としては、例えば、車体26及び第2加速度センサ36が含まれる。ばね下部材100の変位量x
1は、ばね下センサ34の検出値であるばね下加速度x
1’’に基づいて算出することが可能である。ばね上部材102の変位量x
2は、ばね上センサ36の検出値であるばね上加速度x
2’’に基づいて算出することが可能である。
【0032】
本実施形態では、ばね下加速度x
1’’、ばね上加速度x
2’’を積分したばね下速度x
1’、ばね上速度x
2’を用いる。これにより、ばね上のみならず、ばね下の影響を考慮して路面入力を低減することが可能となる。
【0033】
(A2−2.具体的な処理)
(A2−2−1.全体的な流れ)
図3は、本実施形態におけるECU38によるモータ66の制御を示すフローチャートである。
図3のステップS1、S2は、ECU38の制御量算出部80が実行する。ステップS3、S4は、ECU38のモータ制御部82が実行する。
【0034】
図3のステップS1において、ECU38は、第1加速度センサ34からばね下加速度x
1’’を、第2加速度センサ36からばね上加速度x
2’’を取得する。ステップS2において、ECU38は、ばね下加速度x
1’’及びばね上加速度x
2’’それぞれに対して1次フィルタ処理を行ってばね下速度x
1’及びばね上速度x
2’を算出する(詳細は、
図4等を参照して後述する。)。
【0035】
ステップS3において、ECU38は、ばね下加速度x
1’’、ばね上加速度x
2’’、ばね下速度x
1’及びばね上速度x
2’に基づいてモータ66の制御量u(目標モータ電流Imottar)を設定する。続くステップS4において、ECU38は、目標モータ電流Imottarに基づいてモータ66を制御する。
【0036】
(A2−2−2.目標モータ電流Imottarの設定(
図3のS2、S3))
図4は、モータ66の目標電流Imottarの設定を説明するためのブロック図である。
図4に示すように、ECU38は、第1〜第4ゲイン110a〜110dと、1次フィルタ112a、112bと、第1〜第3加算器114a〜114cと、目標トルク算出部116と、目標電流算出部118と、PID演算部120とを有する。
【0037】
第1ゲイン110aは、第1加速度センサ34からのばね下加速度x
1’’に対し、正の係数G
1を乗算して第1加算器114aに出力する。1次フィルタ112a(以下「ばね下1次フィルタ112a」ともいう。)は、第1加速度センサ34からのばね下加速度x
1’’に対し、1次フィルタ処理を実行する。1次フィルタ処理について、
図5A及び
図5Bを参照して後述する。
【0038】
第2ゲイン110bは、1次フィルタ112aから出力されたばね下加速度x
1’’に対して正の係数G
2を乗算して第1加算器114aに出力する。第1加算器114aは、第1ゲイン110aからのG
1・x
1’’と、第2ゲイン110bからのG
2・x
1’との和G
1・x
1’’+G
2・x
1’を第3加算器114cに出力する。
【0039】
第3ゲイン110cは、第2加速度センサ36からのばね上加速度x
2’’に対し、係数G
3を乗算して第2加算器114bに出力する。1次フィルタ112b(以下「ばね上1次フィルタ112b」ともいう。)は、第2加速度センサ36からのばね上加速度x
2’’に対し、1次フィルタ処理を実行する。ここでの1次フィルタ処理は、ばね下1次フィルタ112aでの処理と同様である。
【0040】
第4ゲイン110dは、ばね上1次フィルタ112bから出力されたばね上加速度x
2’’に対して正の係数G
4を乗算して第2加算器114bに出力する。第2加算器114bは、第3ゲイン110cからのG
3・x
2’’と、第4ゲイン110dからのG
4・x
2’との和G
3・x
2’’+G
4・x
2’を第3加算器114cに出力する。
【0041】
第3加算器114cは、第1加算器114aからの和G
1・x
1’’+G
2・x
1’と、第2加算器114bからの和G
3・x
2’’+G
4・x
2’とを加算した和G
1・x
1’’+G
2・x
1’+G
3・x
2’’+G
4・x
2’を目標トルク算出部116に出力する。
【0042】
目標トルク算出部116は、和G
1・x
1’’+G
2・x
1’+G
3・x
2’’+G
4・x
2’に基づいてモータ66のトルクの目標値(以下「目標モータトルクTmottar」又は「目標トルクTmottar」という。)を算出して目標電流算出部118に出力する。目標電流算出部118は、目標モータトルクTmottarに対応する目標モータ電流Imottarを算出する。なお、目標モータトルクTmottarの算出を行わずに、和G
1・x
1’’+G
2・x
1’+G
3・x
2’’+G
4・x
2’から直接目標モータ電流Imottarを算出してもよい。
【0043】
PID演算部120は、目標電流算出部118からの目標モータ電流Imottarと図示しない電流センサからのモータ電流Imotとに基づくPID演算(PID:Proportional-Integral-Derivative)を行う。ECU38(モータ制御部82)は、PID演算部120の演算結果に基づいてモータ66を制御する。
【0044】
(A2−2−3.1次フィルタ112a、112b)
図5Aは、1次フィルタ112a、112bを通過する信号Sp(以下「通過信号Sp」ともいう。)の周波数fpと、通過信号Spの振幅Mpとの関係を示す。
図5Bは、通過信号Spの周波数fpと、通過信号Spの位相Ppとの関係を示す。
図5A及び
図5Bを合わせて、本実施形態における1次フィルタ112a、112bのフィルタ特性を示すボード線図を構成する。
【0045】
図5A及び
図5Bにおいて、線200、210は、1/sの特性である。ここでのsは、ラプラス演算子を示す。
図5Aにおいて、線202、204、206、208は、1/(1+T・s)の特性である。
図5Bにおいて、線212、214、216、218は、1/(1+T・s)の特性である。ここでのTは、時定数を示す。線202、212は、1/(1+s)の特性(T=1)である。線204、214は、1/(1+2s)の特性(T=2)である。線206、216は、1/(1+4s)の特性(T=4)である。線208、218は、1/(1+10s)の特性(T=10)である。
【0046】
図5Bにおける矢印220は、本実施形態において使用する周波数fpの範囲(以下「使用範囲220」ともいう。)を示す。すなわち、本実施形態では、位相Ppが略−90°となる領域を用いる。
【0047】
上記のように、本実施形態では、ばね下加速度x
1’’の積分値としてのばね下速度x
1’を算出するために1次フィルタ112aを用いる。ばね下センサ34の出力信号(DC信号)には、真値とは関係がない変動成分(ドリフト成分)が含まれている。このため、仮に、ばね下センサ34の検出値(ばね下加速度x
1’’)を単に積算する積分器を用いてばね下速度x
1’を求める場合、当該ドリフト成分の変動による誤差(ドリフト誤差)が累積する。従って、前記積分器から出力されるばね下速度x
1’にはドリフト誤差が含まれる分、精度が落ちる可能性がある。
【0048】
本実施形態では、ばね下加速度x
1’’に対して1次フィルタ112aによる1次フィルタ処理を行ってばね下速度x
1’を算出する。このため、ばね下センサ34の出力信号(DC信号)のうち例えば高周波成分を除去することによりドリフト誤差を回避し、ばね下速度x
1’を高精度に求めることが可能となる。
【0049】
ばね上速度x
2’についても同様のことが言える。
【0050】
[A3.本実施形態及び第1・第2比較例における振動伝達特性の例]
図6は、本実施形態に係るサスペンション装置12を用いた場合におけるばね下の振動伝達特性の例(以下「振動伝達特性230」という。)と、第1・第2比較例に係るサスペンション装置を用いた場合におけるばね下の振動伝達特性の例(以下「振動伝達特性232、234」という。)とを示す図である。
図6において、横軸は、ばね下加速度x
1’’の周波数fx1であり、縦軸は、ばね下加速度x
1’’の振幅Mx1である。
【0051】
図7は、本実施形態に係るサスペンション装置12を用いた場合におけるばね上の振動伝達特性の例(以下「振動伝達特性240」という。)と、第1・第2比較例に係るサスペンション装置を用いた場合におけるばね上の振動伝達特性の例(以下「振動伝達特性242、244」という。)とを示す図である。
図7において、横軸は、ばね上加速度x
2’’の周波数fx2であり、縦軸は、ばね上加速度x
2’’の振幅Mx2である。
【0052】
図6及び
図7において、第1比較例は、アクティブ制御を実行しない例であり、第2比較例は、ばね上のみフィードバック(FB)制御を行う例である。すなわち、第2比較例では、特許文献1と同様、ばね上加速度x
2’’及びばね上速度x
2’のFB制御を行う(特許文献1の第4図参照)。
【0053】
図6及び
図7に示されるように、第1比較例(振動伝達特性232、242)では、ばね下の制振効果は優れるものの、ばね上の制振効果は、本実施形態及び第2比較例よりも劣る。また、第2比較例(振動伝達特性234、244)では、ばね上の制振効果は優れるものの、ばね下の周波数fx1の一部において、振幅Mx1が著しく高くなる(矢印236参照)。このため、ばね下部材100が過度に振動してしまう。
【0054】
一方、本実施形態(振動伝達特性230、240)では、ばね上の制振効果を高く保ちつつ、ばね下の振幅Mx1を第2比較例よりも低減可能となる。特に、ヒトが感じ易い5Hz周囲のばね上の振幅Mx2を効果的に抑制しつつ(矢印246参照)、第2比較例に対してばね下の振幅Mx1の最大値を大幅に低減可能となる。
【0055】
[A4.本実施形態における効果]
以上のような本実施形態によれば、ばね上加速度x
2’’及びばね上速度x
2’のフィードバック項G
3・x
2’’、G
4・x
2’を用いるばね上フィードバック(FB)制御と、ばね下加速度x
1’’及びばね下速度x
1’のフィードバック項G
1・x
1’’、G
2・x
1’を用いるばね下フィードバック(FB)制御とを組み合わせて実行する(
図3及び
図4参照)。これにより、ばね上に加え、ばね下の制振効果を得ることが可能となる。
【0056】
さらに、本実施形態によれば、ばね下加速度x
1’’に対して1次フィルタ処理を実行して算出したばね下速度x
1’と、ばね上加速度x
2’’に対して1次フィルタ処理を実行して算出したばね上速度x
2’の両方を用いる(
図3及び
図4参照)。これにより、ばね下及びばね上の制振効果を向上することが可能となる。
【0057】
すなわち、一般に、ばね下センサ34の出力信号には、真値とは関係がない変動成分(ドリフト成分)が含まれている。このため、仮に、ばね下センサ34の検出値(ばね下加速度x
1’’)を単に積算する積分器を用いてばね下速度x
1’を求める場合、当該ドリフト成分の変動による誤差(ドリフト誤差)が累積する。従って、前記積分器から出力されるばね下速度x
1’にはドリフト誤差が含まれる分、精度が落ちる可能性がある。
【0058】
本実施形態によれば、ばね下加速度x
1’’に対して1次フィルタ112aによる1次フィルタ処理を行ってばね下速度x
1’を算出する(
図3及び
図4参照)。このため、ドリフト誤差を回避し、ばね下速度x
1’を高精度に求め、ばね下の制振性能を向上することが可能となる。ばね上加速度x
2’’の場合も同様にばね上速度x
2’を高精度に求めることが可能となり、ばね上の制振性能を向上することが可能となる。
【0059】
本実施形態において、ばね下1次フィルタ112a(
図4)は、ばね下加速度x
1’’の位相を−90°変化させてばね下速度x
1’を算出する(
図5B)。加えて、ばね上1次フィルタ112b(
図4)は、ばね上加速度x
2’’の位相を−90°変化させてばね上速度x
2’を算出する(
図5B)。これにより、ばね下速度x
1’及びばね上速度x
2’を高精度に算出することが可能となる。
【0060】
B.変形例
なお、本発明は、上記実施形態に限らず、本明細書の記載内容に基づき、種々の構成を採り得ることはもちろんである。例えば、以下の構成を採用することができる。
【0061】
[B1.適用対象]
上記実施形態では、サスペンション装置12を車両10に適用した例を説明した(
図1)。しかしながら、例えば、ばね下のFB制御に着目すれば、これに限らない。例えば、振動減衰性能を要するその他の装置(例えば、船舶、飛行機又は製造装置)にサスペンション装置12を適用することも可能である。
【0062】
[B2.サスペンション装置12]
(B2−1.コイルばね20)
上記実施形態では、路面振動(入力振動)を吸収するためのばねとしてコイルばね20を用いた(
図1)。しかしながら、例えば、路面振動(入力振動)を吸収する観点からすれば、その他の種類のばね(例えば、板ばね)を用いることも可能である。
【0063】
(B2−2.ダンパ22)
上記実施形態では、油圧機構32を備えるダンパ22を用いた(
図1)。しかしながら、例えば、ばね下のFB制御に着目すれば、これに限らない。例えば、ボールねじ式、ラック&ピニオン式、ダイレクト式(リニアモータ)等の構成を適用可能である。
【0064】
(B2−3.油圧機構32)
上記実施形態では、モータ66による減衰力を、油を介して伝達した(
図1)。しかしながら、例えば、モータ66による減衰力を伝達する観点からすれば、油以外の流体(例えば、エア)を用いることも可能である。
【0065】
(B2−4.ECU38)
上記実施形態では、ばね下加速度x
1’’及びばね上加速度x
2’’からばね下速度x
1’及びばね上速度x
2’を求めるために1次フィルタ112a、112bを用いた(
図4)。しかしながら、例えば、ばね下又はばね上のFB制御に着目すれば、これに限らない。例えば、1次フィルタ112a、112bの少なくとも一方の代わりに、入力値を単純に累積加算する積分器としてもよい。
【0066】
上記実施形態では、1次フィルタ112a、112bによる1次フィルタ処理をECU38内で行った(
図1参照)。換言すると、1次フィルタ処理はデジタル信号に対して行うことを前提としていた。しかしながら、例えば、1次フィルタ処理を行う観点からすれば、これに限らない。例えば、加速度センサ34、36からのアナログ信号に1次フィルタ処理を行い、1次フィルタ処理後の信号をECU38に入力してもよい。この場合、加速度センサ34、36とECU38の間にアナログ回路としての1次フィルタ112a、112bを配置することとなる。
【0067】
[B3.制御]
上記実施形態では、ばね下加速度x
1’’のFB項G
1・x
1’’、ばね下速度x
1’のFB項G
2・x
1’、ばね上加速度x
2’’のFB項G
3・x
2’’及びばね上速度x
2’のFB項G
4・x
2’を用いて目標モータトルクTmottar(目標モータ電流Imottar)を算出した(
図3及び
図4)。
【0068】
しかしながら、例えば、ばね下加速度x
1’’のFB項G
1・x
1’’及びばね下速度x
1’のFB項G
2・x
1’の少なくとも一方と、ばね上加速度x
2’’のFB項G
3・x
2’’及びばね上速度x
2’のFB項G
4・x
2’の少なくとも一方を組み合わせる観点からすれば、これに限らない。例えば、ばね下加速度x
1’’のFB項G
1・x
1’’と、ばね上加速度x
2’’のFB項G
3・x
2’’とを組み合わせて用いることも可能である。
【0069】
或いは、ばね下のFB制御に着目すれば、ばね下加速度x
1’’のFB項G
1・x
1’’及びばね下速度x
1’のFB項G
2・x
1’の少なくとも一方のみを用いることも可能である。
【0070】
上記実施形態では、係数G
1〜G
4をいずれも正の値とした。しかしながら、例えば、ばね上の制振効果又はばね下の振幅Mx1の抑制の観点からすれば、これに限らない。例えば、ばね下加速度x
1’’に用いる係数G
1又はばね下速度x
1’に用いる係数G
2を負の値とすることも可能である。
【0071】
図8は、第1〜第4変形例に係るサスペンション装置12を用いた場合におけるばね下の振動伝達特性の例(以下「振動伝達特性250、252、254、256」という。)と、第1・第2比較例に係るサスペンション装置を用いた場合におけるばね下の振動伝達特性の例(以下「振動伝達特性258、260」という。)とを示す図である。
図8において、横軸は、ばね下加速度x
1’’の周波数fx1であり、縦軸は、ばね下加速度x
1’’の振幅Mx1である。第1・第2比較例は、
図6におけるものと同様である。すなわち、
図8の第1比較例は、アクティブ制御を実行しない例であり、
図8の第2比較例は、ばね上のみFB制御を行う例である。
【0072】
第1変形例は、ばね下加速度x
1’’、ばね下速度x
1’、ばね上加速度x
2’’及びばね上速度x
2’全てのFB制御を組み合わせた例(上記実施形態と同等の例)である。第2変形例は、ばね下加速度x
1’’、ばね下速度x
1’、ばね上加速度x
2’’及びばね上速度x
2’全てのFB制御を組み合わせ、ばね下加速度x
1’’のFB係数G
1を増大させた例である。第3変形例は、ばね下加速度x
1’’、ばね下速度x
1’、ばね上加速度x
2’’及びばね上速度x
2’全てのFB制御を組み合わせ、ばね下加速度x
1’’のFB係数G
1を減少させて負の値とした例である。第4変形例は、ばね下加速度x
1’’及びばね下速度x
1’のみのFB制御を用いる例である。
【0073】
ばね下加速度x
1’’のFB係数G
1を変化させると、見かけ上のばね下質量M
1が変化する。すなわち、FB係数G
1を増加させると、見かけ上のばね下質量M
1が増加し、ばね下固有振動数が減少する。また、FB係数G
1を減少させると、見かけ上のばね下質量M
1が減少し、ばね下固有振動数が増加する。
【0074】
図8からわかるように、ばね下加速度x
1’’の振幅Mx1の観点からすれば、第1〜第4変形例のいずれについても、第2比較例よりも優れる。特に第3変形例は、ばね下加速度x
1’’及びばね下速度x
1’のFB制御を行いつつ、ばね下加速度x
1’’の振幅Mx1を第1・第2変形例よりも低減することが可能となっている。