【文献】
structural protein containing C-terminal lysozyme domain [Pseudomonas phage phiKMV], NP_877475, GenPept [online], 17-Apr-2009 uploaded, [retrieved on 2016-02-08] ,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_877475
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
細菌が、緑膿菌、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumanii)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、サルモネラ・インファンティス(Salmonella infantis)、赤痢菌属(Shigella)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、およびバークホルデリア・タイランデンシス(Burkholderia thailandensis)からなる群より選択される、請求項8記載の使用。
細菌が、緑膿菌、肺炎桿菌、大腸菌、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニ、ネズミチフス菌、サルモネラ・インファンティス、赤痢菌属、プロテウス・ミラビリス、およびバークホルデリア・タイランデンシスからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
I. 序論
ペプチドグリカン(ムレイン)小嚢は、大部分の細菌の細胞壁の必須の構造成分である。小嚢は、短いペプチドによって架橋されたグリカン鎖でできており、細菌細胞質膜を取り囲む閉じた袋形構造を形成する。小嚢は、25気圧までの浸透圧に耐えなくてはならない。小嚢は柔軟性があり、加圧下で可逆的膨張を可能にし、これにより大きなタンパク質分子でさえ拡散が可能である。例えば、Silhavy et al. (2010)
CSH Persp. Biol., 2:a000414;Vollmer et al. (2008)
FEMS Microbio. Revs 32:149-167;Bos et al. (2007)
Ann. Rev. Microbiol. 61:191-214;およびCosterton et al. (1974) Bact. Revs. 38:87-110を参照されたい。
【0036】
多くの抗生物質は、標的細菌種のペプチドグリカン層に対して作用する。したがって、この構造は、細菌標的の生存において重要な成分である。ペプチドグリカンの攻撃は、標的細菌宿主を死滅させるための合理的な戦略である。ペプチドグリカン層は典型的に約1〜3層の厚さであるが、外膜が、外部に適用されたムラリティック酵素がそれらの基質に到達するのを妨げる透過性障壁としての機能を果たす。
【0037】
本発明は、新たな実体を獲得するために、ムラリティック機能を膜透過性機能に結びつける。本明細書に記載されるキメラ(および連結された)構築物は、ペプチドグリカン分解酵素活性と膜横断機能を組み合わせている。いくつかの態様において、横断機能は、ムラリティック活性を有するタンパク質が細菌外膜を介して移動することを可能にするタンパク質セグメントによって達成される。いくつかの態様において、横断セグメント自体は膜移動事象を媒介し、それによって細菌外膜の外部から内部へムラリティック活性を移動させ、酵素とそのペプチドグリカン基質との接触を可能にする。いくつかの態様において、横断セグメントは、内因性の移動系にシグナルを送る目印モチーフを提示することにより、外膜においてその系を利用して、分子をペリプラズム空間に移入する。いくつかの態様において、横断セグメントはムラリティックポリペプチドを外膜の外葉に対して指向し、ムラリティックポリペプチドは外膜の外葉から内葉に素早く位置を変え、それによりムラリティックセグメントがペプチドグリカン基質に対して送達される。
【0038】
II. ムレイン分解酵素;リゾチームおよびリシン
ムラリティックドメイン(本明細書では触媒ドメインとも称される)は、例えばリゾチームタンパク質(Salazar and Asenjo (2007)
Biotechnol. Lett. 29:985-94)を含む。ペプチドグリカン構造の破壊は、少なくとも4つの状況において自然に起こる。1つは、構造自体の生合成である;細菌細胞は増殖し、分裂するにつれて、必然的にその構造を破壊しなくてはならない。例えば、Vollmer (2008)
FEMS Microbiol Rev. 32:287-306;Scheurwater, et al. (2008)
Int. J. Biochem. Cell Biol. 40:586-91;Keep, et al. (2006)
Trends Microbiol. 14:271-276、およびBaba and Schneewind (1998)
EMBO J. 17:4639-4646を参照されたい。細胞自体が、以前に合成された構造を再構成または修正しなくてはならない場合に、付加的な状況が存在する。これらの活性は、細菌自体に由来し得る。第2に、真核生物宿主は、例えばムタノリシンまたはリゾチームを用いて、感染の排除の際にその構造を分解する。例えば、Callewaert and Michiels (2010)
J. Biosci. 35: 127-60;Harder, et al. (2007)
Endocr. Metab. Immune Disord Drug Targets 7:75-82;およびLichtman, et al. (1992)
J. Clin. Invest. 90:1313-1322を参照されたい。これらの活性は、典型的に、その内部または上部で細菌が生存し得るかまたはコロニー形成し得る真核生物宿主に由来する。第3の領域はファージ複製においてであり、ファージは典型的に、エンドリシンを使用して、複製されたファージを放出し、細菌宿主細胞を溶解する。例えば、Srividhya and Krishnaswamy (2007)
J. Biosci. 32:979-90;およびLoessner (2005)
Curr. Opin. Microbiol. 8:480-487を参照されたい。これらの活性は、典型的に、バクテリオファージゲノム中に見出される。これは、内部からの細胞のペプチドグリカン層の溶解である。4つ目の状況は、Padmanabhan, et al. WO2007/130655に記載されているような、ファージ感染がペプチドグリカン障壁の横断を必要とする場合である。これは、細胞の外部からのペプチドグリカン層の分解である。これらの活性は、ファージビリオンの成分として見出され、典型的にファージゲノム中にコードされる。
【0039】
これらの機構はそれぞれ、ペプチドグリカン構造を分解するためのいくつかの手段を含む。したがって、ムラリティック活性は、細菌の真核生物宿主のゲノム中に、細菌ゲノム自体に、および宿主として細菌を標的化するファージ(および関連プロファージ)中に見出される。ムラリティックドメインは、これらの供給源のいずれかとの相同性によって見出すことができ、情報学を用いて、それらの各正準モチーフを有する候補遺伝子を同定することができる。
【0040】
ペプチドグリカン「分解活性」を、治療状況においてグラム陰性菌病原体に対して用いるための非常に効果的な殺菌活性に変換することができ、これには、ムラミニダーゼ、グルコサミニダーゼ、アミダーゼ、またはエントペプチダーゼ活性が含まれ得る。例示的なムラリティックドメインを同定し、ペプチドグリカン基質に送達するためのキメラ構築物中に組み入れ、産生させ、精製し、および外膜を有する細菌宿主に対して殺菌活性を有することを確認することができる。そのような活性を含む組換え構築物は、抗微生物組成物および製剤として顕著な有利な特性を有する。本発明のペプチドグリカン分解活性の多くは、グラム陰性菌、または外膜を有する細菌に対して指向されるが、他のものは、グラム陰性菌およびグラム陽性菌のいずれかまたは両方を含み得る標的特異性を有する。2種類の細菌のペプチドグリカン構造は、選択されたムラリティック活性の影響を受けやすいと考えられるある種の結合および構造を共有する。したがって、共有される結合を加水分解し得るムラリティックドメインは、そうでないものよりも広い標的範囲を有し得る。
【0041】
本発明の連結ポリペプチドの一例は、ファージφKMVと近縁である
シュードモナスファージP134由来のリゾチームドメインを含む断片を用いる。φKMVのORF36に相当するファージP134のORF36は、外膜が除去されたグラム陰性菌細胞を溶解する。構築物を、外膜が除去された後の種々の異なるグラム陰性菌と接触させると、細胞が破壊された。これらの結果から、異なるグラム陰性菌種に由来するペプチドグリカンがこのムラリティック活性の影響を受けやすいことが実証される。
【0042】
配列相同性検索により、ペプチドグリカン分解活性の代替供給源として使用され得る様々な他の類似のドメインが同定される。これらの活性を示す小さなサイズのポリペプチドは、効率的な大規模な生成を提供する。細菌標的において、関連する細胞壁標的成分、例えばペプチドグリカンへの接近性が提供され、インビボ投与に際して薬理学的分布も提供される。
【0043】
関連するムラリティック活性は、リゾチーム様スーパーファミリー、溶解性トランスグリコシラーゼ(LT)、ガチョウ卵白リゾチーム(GEWL);可溶性溶解性トランスグリコシラーゼ(SLT)、ガチョウ卵白リゾチーム(GEWL)、ニワトリ卵白リゾチーム(HEWL)、キチナーゼ、バクテリオファージλリゾチーム、エンドリシン、自己溶菌酵素、キトサナーゼをはじめとするいくつかのメンバーを含む、リゾチーム様ドメインを含むスーパーファミリーC100442内に見出すことができる。これらのメンバーはすべて、β-1,4-結合多糖の加水分解に関与する。ファージエンドリシンおよび細菌自己溶菌酵素中に、システイン・ヒスチジン依存性アミドヒドロラーゼ/ペプチダーゼ(CHAP)ドメインが見出される。CHAPドメインを含む大部分のタンパク質は、ペプチドグリカン加水分解酵素として機能し、一般にアミダーゼと関連している。Bateman and Rawlings (2003)
Trends Biochem. Sci. 5:234-237;およびPritchard, et al. (2004)
Microbiology 150:2079-2087を参照されたい。cazy.orgにおいて見られる糖質関連酵素(Carbohydrate-Active enZyme)データベースもまた参照されたい。CAZYデータベースは、グリコシド結合を分解する、修飾する、または生成する酵素の構造的に関連した触媒および糖質結合モジュール(または機能的ドメイン)のファミリーを記載している。エンドペプチダーゼの別の供給源は、merops.sanger.ac.uk/cgi-bin/clan_index?type=P.において見られるウェブサイトからのデータベースである。表Aは、本発明において使用され得るペプチドグリカン分解活性を有する酵素の例示的なリストを提供する。同様に注釈づけされ、リストのメンバーと特徴的モチーフを共有し、または該メンバーと相同的であるさらなる同様のまたは類似の活性も見出され得る。
【0044】
(表A)ムラリティックドメイン(MD)供給源
【0045】
III. 膜横断ドメイン
内部に到達し、宿主細胞に効率的に感染するためには、ファージは、細胞を取り囲む構造層を通過しなくてはならない。グラム陽性菌細胞の場合、これらは外側からペプチドグリカン層および内部細胞膜である。グラム陰性菌細胞では、ペプチドグリカン層を取り囲む付加的な脂質二重層外膜が存在する。この付加的な脂質二重層は、外膜と内膜との間に別の区画を形成し、これはペリプラズム空間である。例えば、Silhavy, et al. (2010)
CSH Persp. Biol. 2:a000414;Bos, et al. (2007)
Ann. Rev. Microbiol. 61:191-214;Nanninga (1998)
Microbiol and Molec. Biol. Revs. 62:110-129;およびCosterton, et al. (1974)
Bacteriol. Revs. 38:87-110を参照されたい。ペリプラズム空間の環境は、中間障壁として役立つ。ペプチドグリカンは、典型的に、グラム陽性菌におけるより厚いペプチドグリカン層と比較して、グラム陰性菌でははるかにより薄い。
【0046】
細菌外膜は連続した二重層であるため、これはペリプラズム空間に接近する、より大きな分子の障壁として働く。外膜は、抗生物質を含む環境中の有害な化合物から細胞を保護することができ、またより大きなタンパク質(例えば、ムラリティック酵素)をペリプラズム空間から効率的に排除する選択的半透性障壁である。
【0047】
付着しているムラリティックドメインの膜を介した輸送をもたらすために使用され得る輸送セグメントの供給源のリストには、哺乳動物細菌透過性増加タンパク質(BPI);P134およびその他のホリン;PRD1ファージ由来のタンパク質P11およびP7;シュードモナスファージのTAME;コレラ菌(V. cholorae)におけるVI型分泌系;(ヤギ)皮膚表面由来のホリン様タンパク質(Tmp1);アピダエシンペプチド1aおよび1b;ファージP22尾部スパイクタンパク質;大腸菌ファージφV10‐推定尾部繊維タンパク質;仮説尾部繊維腸内細菌ファージJK06;バクテリオファージK1F(T7様ファージ);バクテリオファージK1F(エンド-N-アセチルノイラミニダーゼを有するT7様ファージ);T7尾部繊維タンパク質‐腸内細菌ファージT7;尾部繊維タンパク質シュードモナスファージgh-1;ならびにP2 gpH腸内細菌ファージP2が含まれる。タンパク質データバンク(PDB)の最初の包括的でかつ最新の膜貫通タンパク質選択物であるPDBTMもまた参照されたい。PDBTMデータベースは、pdbtm.enzim.huにおいて見られるウェブサイトで、タンパク質構造研究グループ(Protein Structure Research Group)により酵素学研究所(Institute of Enzymology)において維持されている。同様に注釈づけされ、リストのメンバーと特徴的モチーフを共有し、または該メンバーと相同的であるさらなる同様のまたは類似の活性も見出され得る。表Bは、膜移動セグメントのさらなる例を提供する。
【0048】
(表B)膜移動ドメイン(MTD)供給源
【0049】
いくつかの態様において、移動機能は、タンパク質ドメインの代わりに化学構造によって達成され得る。上記のように、代替のムラリティックセグメントは、外膜を介した移行の異なる効率を有し得る。
【0050】
外膜を介した移行の割合は、いくつかの方法によって測定することができる。1つの方法は、移行の結果、例えばそのペリプラズム基質に到達するムラリティックセグメントの影響を間接的に評価することである。測定の基準は、測定可能な細胞内容物の放出、基質放出、または細胞溶解であってよい。細胞死滅はまた、ペプチドグリカン消化の代用測定であり得る。細胞に対する産物の結合について記載している以下の実施例の項を参照されたい。
【0051】
より直接的な方法は、例えば検出可能な標識を用いて、ペリプラズム空間に移行された分子の数を追跡することである。特定の移行セグメントの移行の効率は、多くの場合、移行されるパッセンジャーセグメントの量を測定することによって評価される。検出可能な標識を用いて、ペリプラズム空間状態(OMの外部よりもより多く酸化される)と細胞外環境とを区別することができる。Rajarao et al. (2002)
FEMS Microbiology Letters 215:267-272を参照されたい。
【0052】
効率的な膜移行セグメントは、膜移行セグメントがない場合と比較して、ムラリティックドメインによる標的宿主の死滅のレベルの少なくとも3倍の上昇、または移行のレベルの少なくとも3倍の上昇をもたらす。いくつかの態様において、膜移行セグメントは、膜移行セグメントがない場合と比較して、死滅または移行のレベルを少なくとも5、7、10、15、20、30、50、80、100、150、250倍、またはそれ以上上昇させる。アッセイは典型的に、適用に従って用いられ得る濃度に近い条件下で行われる。アッセイは典型的に、数分、例えば1、2、5、10、15、または30分から、1時間または2時間の時間をかけて、移行を測定する。
【0053】
IV. セグメントを結合するリンカー;化学的結合
本発明は、異種供給源に由来する2つの異なるドメインを含むキメラタンパク質を含む。いくつかの態様において、2つのドメインは、連続した(キメラ)タンパク質としての単一ポリペプチドの一部である。2つのセグメントはいずれの順番でも結合することができ、膜移行ドメイン(MTD)のN側近位にムラリティックドメインがくるか、またはその逆である。セグメントは、直接、またはリンカー(ペプチドもしくは非ペプチド)を用いて連結することができる。場合により、膜貫通ドメイン(TMD)という用語が用いられる。その機能は、ペプチドと疎水性膜二重層との熱力学的相互作用の生物物理学的特徴においてより受動的であってよく、または能動輸送過程と相互作用するセグメントとして、例えばグラム陰性菌の細菌外膜の外側から内側に実体を移行させる能動輸送機構の認識成分として働く能動的過程と相互作用していてもよい。
【0054】
いくつかの態様において、MTDは、原核生物産生宿主の内膜を介してムラリティックセグメントを移行させ得る。いくつかの態様において、MTDは、グラム陰性菌の外膜に対してMTD活性を保持しつつ、内膜を介してMDを移行させない。いくつかの態様において、本明細書に記載される構築物は、代わりに、真核細胞系において産生させることもできる。
【0055】
いくつかの態様において、成分セグメントは別個に産生され、化学的に連結される。場合により、合成重合法を用いて既存の配列にペプチドを付加する。
【0056】
化学結合または生物結合技術を用いることができる。例えば、Niemeyer (ed. 2010)
Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods (Methods in Molecular Biology) Humana Press;Hermanson (2008)
Bioconjugate Techniques (2d ed.) Academic Press;Lahann (ed. 2009)
Click Chemistry for Biotechnology and Materials Science Wiley;Rabuka (2010) 「Chemoenzymatic methods for site-specific protein modification」
Curr Opin Chem Biol. 14:790-96. Epub 2010 Oct 26;Tiefenbrunn and Dawson (2010) 「Chemoselective ligation techniques: modern applications of time-honored chemistry」
Biopolymers 94:95-106;Nwe and Brechbiel (2009) 「Growing applications of "click chemistry" for bioconjugation in contemporary biomedical research」
Cancer Biother Radiopharm. 24:289-302;de Graaf, et al. (2009) 「Nonnatural amino acids for site-specific protein conjugation」
Bioconjug Chem. 20:1281-95;the journal
Bioconjugate Chemistry (ACS);およびThordarson, et al. (2006) 「Well-defined protein-polymer conjugates-synthesis and potential applications」
Applied Microbiology and Biotechnology 73:243-254, DOI: 10.1007/s00253-006-0574-4を参照されたい。例えば、おそらくは、例えばシステイン残基のために、重要でないような残基が除去された構築物の両端に、特定のアミノ酸を組み入れるかまたは付加することができる。接近可能なシステイン残基を用いて、ジスルフィド結合によってセグメントを結合することができる。システイン残基はまた、チオエーテル結合を用いて二機能性マレイミドリンカーと連結することもできる。リンカーはまた、適切な長さの、例えば6、9、12、15、18、21、25、29、35、またはそれ以上の炭素鎖の炭化水素スペーサーを有し得る。
【0057】
構築物は、N末端およびC末端のいずれかまたは両方において、GP36 CDリゾチーム領域に隣接する接近可能なシステインを有して生成した。これらを用いて、種々の他の化学的部分を付着させることができる。例えば、ハロゲン化アルキルまたはアシル、例えば臭化パルミチルまたは塩化アシルを用いて、パルミチル基または類似の基を含む、より長い非ペプチド疎水性分子をCys残基に付着させることができる。アルキル型は安定したチオエーテル結合を提供するのに対して、アシル型は安定性のより低いチオエーテル結合を提供する。アルキルまたはアシル炭化水素は外膜外葉に組み込まれ得、これは、例えば温度を上昇させて、検出可能な割合で内葉に素早く位置を変える。
【0058】
V. 定義
「細胞壁分解活性」とは、細菌細胞壁(ペプチドグリカン層)を分解する、破壊する、崩壊させる、またはその完全性を減少もしくは低下させる酵素活性である。例えば内容により別段の指示がない限り、「ムラリティック」という用語は、一般的に「細胞壁分解性」を意味するために用いられる。大抵の壁分解触媒活性は加水分解性である。したがって、用いられる本専門用語の多くは、触媒機構が加水分解を伴わない場合でも、「ムラリティック」を指す。規定の基質または人工基質の分解を用いて、標的の集団に基づいてムラリティック活性または静的活性を測定することができる。ファージの状況における「細胞壁ムラリティック活性」は、通常、人工的条件下での試験に基づいてある構造に割り当てられた特徴であるが、このような特徴は、細菌の種、科、属、または亜綱(感受性によって定義され得る)に対して特異的であり得る。したがって、「細胞壁分解活性の影響を受けやすい細菌」とは、細胞壁が分解、破壊、崩壊されるか、または1種もしくは複数種の特定の細胞壁分解活性によって細胞壁の完全性が減少もしくは低下させられる細菌を意味する。本明細書で説明されるように、他の細胞壁分解活性は、宿主細菌細胞に由来するか、またはファージ構造上に存在する(例えば、侵入に役立つが、無傷のファージが放出されようとする前に宿主細胞にとって破壊的である場合には、ファージ複製は失敗に終わる)。侵入段階で有用な構造は、これらの活性が外部から正常な宿主上で作動するという点で、本発明に特に関連している。
【0059】
ある状況では、プロファージ配列が細菌ゲノム中に検出され得る。プロファージは、ある種の必須機能を失った可能性のある、組み込まれたファージゲノムの残遺物である場合が多く、したがって過去の生物学的機能を反映しつつ、その中に組み込まれている。例えば、Kropinski, et al. (2007)
Methods Mol. Biol. 394:133-75;Canchaya, et al. (2004)
Mol Microbiol. 53:9-18;Canchaya, et al. (2003)
Microbiol Mol Biol Rev. 67:238-76;およびCasjens (2003)
Mol Microbiol. 49:277-300を参照されたい。プロファージは溶菌ファージゲノムの機能のかなりの部分をコードし得るが、プロファージは通常、溶菌サイクルを通らない。溶菌ファージの構造成分の多くは、プロファージ配列から発見できる同等のまたは対応する形態を有する。情報学解析は典型的に、感染に用いられる溶解活性をひとたびコードした配列と、ファージの組み立て後に標的宿主細胞を溶解するために用いられるエンドリシン活性との違いを決定することができる。
【0060】
「結合セグメント」とは、細菌の外表面上の特定の構造を認識し得る標的化モチーフを指す。グラム陽性菌では、細菌の外表面は典型的にムレイン層(細胞壁)である。したがって、グラム陽性菌のための結合セグメントは、細胞表面実体、例えばタンパク質、脂質、糖、またはそれらの組み合わせを標的化し得る。リゾチーム、エンドリシンなどに由来する結合セグメントが公知であり、これらを用いることができる。細菌に結合する他のタンパク質には、以下に記載されるPGRP、TLR、鞭毛および線毛結合実体、ならびに標的認識に関与するファージ尾部タンパク質が含まれる。グラム陰性菌では、外膜は、特異的結合の標的となり得る様々な構造を示す。脂質二重層の外葉またはリポ多糖は、外部環境に曝露され得る。
【0061】
「膜移行ドメイン(MTD)」は、TMD(膜貫通ドメイン)、移動ドメイン、移行セグメント、および同様の用語としても称され、グラム陰性菌の外膜を介した、連結されたムラリティックセグメントの移行をもたらし得る分子実体、例えばポリペプチドドメインまたは化学的実体を指す。このようなドメインは、それ自体が、結合しているセグメントを膜を介して移動させる能力を有し得るか、または連結されている触媒セグメントの輸送をもたらす内因性の移動系によって認識され得る。キメラポリペプチドは、膜を介して無傷のまま移行され得るか、または移動中に修飾され得る。いくつかの態様において、MTDは発現宿主の内膜に有意に侵入しない。いくつかの態様において、MTDは真核細胞の細胞膜に有意に侵入しない。
【0062】
グラム陰性菌の外膜は多くの外部薬剤から細胞を保護するが、具体的には、LPS層を崩壊させ、疎水性薬剤に対するOMの透過性を増加させるのに役立つ、透過剤と総称される様々な薬剤によって、これを弱めることが可能である。透過剤とはOMを弱める化合物であり、したがって、細胞機能を阻害または破壊し得る外部物質の侵入を促進することにより、抗微生物剤の活性を高めることができる。この侵入は、OMを介してペリプラズム空間へ、そしておそらくは最終的に細胞の細胞質に達し得る。透過剤自体は殺菌性でなくてよいが、他の化合物の活性を増強し、よって相乗作用の可能性を提供し得る。透過剤の古典的な例はキレート剤EDTAであり、これは、タンパク質およびLPSとの静電相互作用を提供することによりOMの安定性に寄与する二価陽イオンを捕捉する。EDTAで処理すると、OMからLPSの大部分が放出されて、疎水性リン脂質が露出し、ある種の物質の疎水性経路が創出される。疎水性薬剤に対する感受性が増加するため、このことは注目すべきである。透過剤は、高濃度で細胞に対して毒性がある場合が多いため、治療の状況では適用できないと考えられる。他の状況において、例えば表面または装置の滅菌適用において、これらは有用であり得る。より低い濃度において、これらは外膜を透過性にする上で作用することができ、したがってペプチドグリカンに到達するための分子の接近性が可能になる。
【0064】
細菌の「環境」には、インビトロまたはインビボ環境が含まれ得る。インビトロ環境には、例えば単離または精製された細菌を保持する反応容器、滅菌されるべき表面(例えば、公衆衛生施設における)、設備、動物舎の表面、または水道施設、浄化施設、もしくは下水道施設などの公衆衛生施設が含まれ得る。他のインビトロ状態は、例えばいくつかの共生的な種または極めて接近して相互作用する種を含む、混合種集団を提供し得る。インビボ環境は、標的細菌に感染した宿主生物であってよい。インビボ環境には、器官、例えば膀胱、腎臓、肺、皮膚、心臓および血管、胃、毛皮、腸、肝臓、脳または脊髄、眼、耳、鼻、舌などの感覚器官、膵臓、脾臓、甲状腺などが含まれる。インビボ環境には、組織、例えば歯肉、神経組織、リンパ組織、腺組織、および体液、例えば血液、痰などが含まれる。体内に導入されるかまたは身体に取り付けられるカテーテル、チューブ、インプラント、およびモニターまたは治療装置は、通常使用における感染源であり得る。環境には、食物、例えば魚、肉、または植物材料の表面もまた含まれる。肉には、例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、シチメンチョウ肉、または他の家禽肉が含まれる。植物材料には、野菜、果物、または果物および/もしくは野菜から製造されたジュースが含まれ、または衣もしくは住が含まれ得る。いくつかの態様では、細菌が感染した食品と接触した表面を、VAME構築物またはキメラ、例えばGP36 CDセグメントまたはP225を含む本発明のタンパク質で処理する。スクロースおよび/またはソルビトールは、浸透圧を上昇させて、標的をペプチドグリカン層の分解の影響をより受けやすくさせるのに有用であり得る。
【0065】
ある環境に組成物を「導入する」ことは、化合物または組成物を適用または投与することを含み、その結果、標的化細菌は化合物または組成物に曝露される。該化合物または組成物の導入は、それらを産生または放出し得る生細菌または死細菌によって達成することができる。
【0066】
「細胞壁分解タンパク質」とは、接近可能な細胞壁またはその成分に対して検出可能な、例えば実質的な分解活性を有するタンパク質である。「ムラリティック」活性は、分解活性の結果であってよい。例示的な分解ポリペプチドには、例えば、GP36 CDセグメントまたはP225産物、ならびにその機能的な構造的に関連した実体、変異体、および変種が含まれる。細胞壁分解タンパク質の例は、配列リストに記載されており、または例えばファージφKMV(NC_005045を参照されたい)に、もしくはファージφKMV由来の高度に相同的なORF36(遺伝子ID 1482616;およびNP_877475を参照されたい)に由来する。類似の分解ドメインは、モチーフ解析、ファージゲノム(もしくは類似のプロファージ配列)におけるそれらの遺伝子位置、ファージ(もしくはプロファージ対応物)構造、例えば天然ファージの尾部もしくは接触点上でのそれらの構造的位置、変異型ファージ残遺物(例えば、ピオシン)由来の類似のモチーフによって同定され得るか、またはプロファージ配列によってコードされ得る。細胞壁分解ドメインは、例えば、ミオウイルス科ファージの尾部プレート、またはシホウイルス科(siphoviridae)ファージ由来の尾部の末端、および他のファージビリオンムラリティックポリペプチドに由来し得る。
【0067】
「GP36触媒ドメイン(CD)ポリペプチド」またはその文法的変形は、典型的に、ファージφKMVまたは近縁の変異体もしくは変種ファージのORF36と高度に相同的な
シュードモナスファージP134配列によってコードされる、溶解(静菌)活性を示すポリペプチド配列を指す。SEQ ID NO: 1は、ファージφKMVの対応するORF36と高度に相同的である
シュードモナスファージP134のセグメントの配列を提供する。例示的な変種ORF36ポリペプチドには、以下のようなポリペプチドの多型変種、対立遺伝子、変異体、および種間相同体が含まれる:(1) φKMVと相同的である
シュードモナスファージP134由来のORF36核酸によってコードされるアミノ酸配列(例えば、アクセッション番号1482616を参照されたい)と、好ましくは例えば少なくとも約8、12、17、25、33、50、65、80、100、200個、もしくはそれ以上のアミノ酸からなる1つもしくは複数の領域にわたり、約60%を上回るアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、もしくはそれ以上のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する、(2) ORF36の活性断片のアミノ酸配列および保存的に改変されたその変種を含む実質的に精製された免疫原に対して産生された抗体、例えばポリクローナル抗体に結合する;または(3) ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、ORF36ポリペプチドをコードする天然の核酸配列および保存的に改変されたその変種に対応するアンチセンス鎖と特異的にハイブリダイズする;または(4) ORF36をコードする核酸もしくはその断片をコードする核酸と、好ましくは少なくとも約25、50、100、150、200、250、300、400、500、600、700個等、もしくはそれ以上のヌクレオチドからなる領域にわたり、約65%、70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%を上回る、好ましくは約96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上を上回るヌクレオチド配列同一性を有する核酸配列を有する。GP36 CDの例は、アミノ酸737〜875 GP36にわたるリゾチームドメインである。本発明の核酸およびタンパク質には、天然分子または組換え分子の両方が含まれる。全長ORF36ポリペプチドおよびその切断型断片は、所望の特性に重要な境界を決定するために、細胞壁成分に対する分解活性について試験することができる。好ましい態様において、GP36触媒ドメインポリペプチドは、様々な
シュードモナス属、
エシェリキア属、
クレブシエラ属、
アシネトバクター属、
サルモネラ属、
プロテウス属、赤痢菌属、およびバークホルデリア属細菌に対して静菌活性を有する。いくつかの態様はまた、外膜を欠いているグラム陽性菌に対して活性を示し得る。濃度、作用時間、温度、および条件は、グラム陽性標的に対してそのような活性を有するように最適化することができる。
【0068】
細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸は、記載される細胞壁分解ポリペプチドの配列に基づいたPCRプライマーを用いて増幅することができる。例えば、プライマーを用いて、GP36 CDポリペプチド変種およびその断片、ならびに有力な壁分解活性候補をコードする核酸を増幅することができる。例えば、Vybiral et al. (2003)
FEMS Microbiol. Lett. 219:275-283を参照されたい。したがって、細胞壁分解ポリペプチドおよびその断片には、同定された細胞壁分解ポリペプチドの配列に基づいてPCRにより増幅された核酸によってコードされるポリペプチドが含まれる。好ましい態様において、静菌性ポリペプチドまたはその断片は、記載されるGP36 CD配列に関連するプライマーにより増幅された核酸によってコードされる。
【0069】
「ファージ粒子成分」とは、例えば、ファージ、例えばファージφKMVの頭部または尾部成分を指す。本発明は、多くの様々なファージ型が、ファージ成分に帰するムラリティック活性の供給源となり得ることを提供する。例えば、Piuri and Hatfull (2006)
Molecular Microbiology 62:1569-1585を参照されたい。関連配列が、プロファージまたは不完全なファージゲノム中に見出され得、典型的には細菌宿主染色体中に組み込まれた状態で見出される。尾部成分は、典型的に標的宿主に対するファージの認識および付着を媒介し、宿主中へのファージ成分の侵入を補助する細胞壁分解活性を有し得る。
【0070】
「GMP条件」とは、例えば米国政府の食品医薬品局(Food and Drug Administration)によって定義されているような、医薬品の製造管理および品質管理に関する基準(good manufacturing practice)を指す。類似した実施基準および規則が、欧州、日本、および大半の先進諸国に存在する。
【0071】
「実質的に純粋な」の上記定義における「実質的に」という用語は、一般的に、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、またはより好ましくは少なくとも約90%、およびさらにより好ましくは少なくとも約92%、95%、97%、もしくは99%純粋であることを意味し、タンパク質、核酸、または他の構造的分子もしくは他のクラスの分子を問わない。
【0072】
「アミノ酸」という用語は、天然および合成アミノ酸、ならびに天然アミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣体を指す。天然アミノ酸とは、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに後に修飾されたアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸、およびO-ホスホセリンである。アミノ酸類似体とは、天然アミノ酸と同じ基本化学構造、例えば、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合しているα炭素を有する化合物、例えばホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムを指す。このような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然アミノ酸のような基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣体とは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが、天然アミノ酸と同様の様式で機能する化学的化合物を指す。
【0073】
「タンパク質」、「ポリペプチド」、または「ペプチド」とは、モノマーの大部分またはすべてがアミノ酸であって、それらがアミド結合を介して共に結合しているポリマーを指し、あるいはポリペプチドとも称される。アミノ酸がα-アミノ酸である場合、L-光学異性体またはD-光学異性体のいずれかを用いることができる。加えて、非天然アミノ酸、例えばβ-アラニン、フェニルグリシン、およびホモアルギニンもまた含まれる。遺伝子によってコードされないアミノ酸もまた、本発明において用いることができる。さらに、適切な構造または反応基を含むように修飾されたアミノ酸もまた、本発明において用いることができる。本発明において用いられるアミノ酸は、D-異性体もしくはL-異性体、またはそれらの混合物であってよい。L-異性体が一般的に好ましい。加えて、他のペプチド模倣体もまた本発明において有用である。一般的な総説については、Spatola, A. F., in Weinstein, et al. (eds. 1983) CHEMISTRY AND BIOCHEMISTRY OF AMINO ACIDS, PEPTIDES AND PROTEINS, Marcel Dekker, New York, p. 267を参照されたい。
【0074】
細胞に関して用いられる場合の「組換え」という用語は、細胞が異種核酸を複製するか、または異種核酸によってコードされるペプチドもしくはタンパク質を発現することを示す。組換え細胞は、天然(非組換え)型の細胞中には見出されない遺伝子を含み得る。組換え細胞はまた、人為的な手段によって改変され、細胞中に再導入された、天然型の細胞中に見出される遺伝子を含み得る。この用語はまた、細胞から核酸を取り出すことなく改変された、細胞にとって内因性の核酸を含む細胞も包含する;このような改変には、遺伝子置換、部位特異的変異、および関連技法によって得られる改変が含まれる。具体的には、配列の融合物を作製することができ、例えば所望の配列の上流に上流分泌カセットを組み入れて、分泌型タンパク質産物を生成することができる。
【0075】
「融合タンパク質」、「キメラタンパク質」、「タンパク質複合物」、および同様の用語は、元のもしくは天然の全長タンパク質をコードするアミノ酸配列またはその部分配列に付加された、その代わりの、それに満たない、および/またはそれとは異なるアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。2つ以上の付加的なドメイン、例えば1つのエピトープタグもしくは精製タグ、または複数のエピトープタグもしくは精製タグを、本明細書に記載される細胞壁ムラリティックタンパク質に付加することができる。例えば、付加的なムラリティック活性(混合されたコロニーもしくはバイオフィルムの標的生物もしくは関連生物に対する)、標的化機能を付加し得るか、または生理的過程、例えば血管透過性もしくはバイオフィルムの完全性に影響を及ぼす付加的なドメインを付着させることができる。あるいは、異なるポリペプチド間の物理的親和性をもたらして複数鎖のポリマー複合体を生じるように、ドメインを結合することもできる。
【0076】
「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖型のデオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、または混合ポリマーを指し、他に限定されない限り、天然ヌクレオチドと同様の様式で核酸とハイブリダイズする天然ヌクレオチドの公知の類似体を包含する。別段の定めも文脈による定めもない限り、特定の核酸配列はその相補配列も含む。
【0077】
「組換え発現カセット」または単に「発現カセット」とは、そのような配列と適合する宿主において構造遺伝子の発現に影響を及ぼし得る核酸エレメントを有する、組換えまたは合成によって作製された核酸構築物である。発現カセットは典型的に、少なくともプロモーターおよび/または転写終結シグナルを含む。典型的に、組換え発現カセットは、転写されるべき核酸(例えば、所望のポリペプチドをコードする核酸)およびプロモーターを含む。発現をもたらすための付加的な因子も含まれ得る。特定の態様において、発現カセットは、宿主細胞からの発現されたタンパク質の分泌を指示するシグナル配列をコードするヌクレオチド配列もまた含み得る。転写終結シグナル、エンハンサー、および遺伝子発現に影響を及ぼす他の核酸配列もまた、発現カセット中に含めることができる。特定の態様において、細胞壁に対するムラリティック活性を含むアミノ酸配列をコードする組換え発現カセットが、細菌宿主細胞において発現される。
【0078】
「異種配列」または「異種核酸」とは、本明細書で用いられる場合、特定の宿主細胞にとって外来性の供給源に由来するか、または同じ供給源に由来する場合には、本来の形態から改変されたものである。異種配列の改変は、例えば、プロモーターに機能的に連結され得るDNA断片を生じるように、DNAを制限酵素で処理することによって行うことができる。部位特異的突然変異誘発などの技法もまた、異種配列の改変に有用である。
【0079】
「単離された」という用語は、酵素の活性を妨げる成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。本発明の糖類、タンパク質、または核酸に関して、「単離された」という用語は、その天然状態において見出される、その物質に通常付随する成分を実質的または本質的に含まない材料を指す。典型的に、本発明の単離された糖類、タンパク質、または核酸は、銀染色ゲル上でのバンド強度または純度を決定するための他の方法により測定して、少なくとも約80%純粋、通常は少なくとも約90%純粋、または少なくとも約95%純粋である。純度または均一性は、当技術分野で周知のいくつかの手段によって同定することができる。例えば、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって試料中のタンパク質または核酸を分離することができ、次にそのタンパク質または核酸を染色によって可視化することができる。ある種の目的のためには、タンパク質または核酸の高分離が望ましい場合があり、例えばHPLCもしくは質量分析または同様の精製手段を利用することができる。
【0080】
「機能的に連結された」という用語は、核酸発現制御配列(プロモーター、シグナル配列、または一連の転写因子結合部位など)と第2核酸配列との間の機能的な連結を指し、この場合、発現制御配列は、第2配列に対応する核酸の転写および/または翻訳に影響を及ぼす。
【0081】
2つまたはそれ以上の核酸またはタンパク質配列の状況における「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、配列比較アルゴリズムのうち1つを用いてまたは目視検査により測定して、最大限一致するように比較およびアライメントした場合に、同じであるか、または特定の割合の同じアミノ酸残基もしくはヌクレオチドを有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。ある種の同一性のアライメントでは、ギャップは許容されないが、他のアライメントでは、ギャップは適切なペナルティー基準を伴って許容される。
【0082】
2つの核酸またはタンパク質の状況における「実質的に同一の」という語句は、以下の配列比較アルゴリズムのうちの1つを用いてまたは目視検査により測定して、最大限一致するように比較およびアライメントした場合に、適切なセグメントにわたり、少なくとも約60%を上回る核酸またはアミノ酸配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%のヌクレオチドまたはアミノ酸残基同一性を有する、2つまたはそれ以上の配列または部分配列を指す。好ましくは、実質的な同一性は、少なくとも約13、15、17、23、27、31、35、40、50個、またはそれ以上のアミノ酸残基長に対応する配列の1つまたは複数の領域にわたって、より好ましくは少なくとも約60、70、80、または100残基の領域にわたって存在し、および最も好ましくは、これらの配列は少なくとも約150残基にわたって、または参照配列の全長にわたって実質的に同一である。具体的に記載される構築物のうちの3つが、23、23、および30アミノ酸の高疎水性の一続きを有することに留意されたく、活性を維持しつつ、アミノ酸残基23個のうちの少なくとも3個が非保存的残基で置換され得るというデータが示される。
【0083】
配列比較では、典型的には一方の配列が参照配列の役割を果たし、それに対して試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを用いる場合、試験配列および参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じて部分配列座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメーターを指定する。次に、配列比較アルゴリズムにより、指定されたプログラムパラメーターに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントが算出される。
【0084】
比較のための配列の最適なアライメントは、例えば、Smith and Waterman (1981) Adv. Appl. Math. 2:482の局部的相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch (1970) J. Mol. Biol. 48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman (1988) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 85:2444の類似性検索法によって、これらのおよび関連したアルゴリズムのコンピュータによる実行(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Dr., Madison, WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)によって、または目視検査(一般に、Current Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc. (1995 and Supplements) (Ausubel)を参照されたい)によって、実施することができる。
【0085】
配列同一性および配列類似性のパーセントを決定するのに適しているアルゴリズムの例は、BLASTおよびBLAST 2.0アルゴリズムであり、これらはそれぞれAltschul, et al.(1990) J. Mol. Biol. 215: 403-410およびAltschuel, et al. (1977) Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402に記載されている。BLAST解析を実施するためのソフトウェアは、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)(ncbi.nlm.nih.gov)または同様の情報源を通して公的に利用可能である
【0086】
2つの核酸配列またはタンパク質が実質的に同一であることのさらなる指標は、以下に記載されるように、第1核酸によってコードされるタンパク質が、第2核酸によってコードされるタンパク質と免疫学的に交差反応性であることである。したがって、例えば2つのペプチドが保存的置換によってのみ異なる場合、タンパク質は典型的には第2タンパク質と実質的に同一である。2つの核酸配列が実質的に同一であるという別の指標は、以下に記載されるように、2つの分子がストリンジェントな条件下で互いにハイブリダイズすることである。
【0087】
「あるタンパク質に特異的に結合する」または「〜と特異的に免疫反応性である」という語句は、抗体に言及する場合、タンパク質および他の生物製剤の不均一な集団の存在下でそのタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定の免疫測定条件下で、特定の抗体は特定のタンパク質に優先的に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で結合しない。このような条件下でのタンパク質への特異的結合は、特定のタンパク質に対する特異性に関して選択された抗体を必要とする。種々の免疫測定形式を用いて、特定のタンパク質と特異的に免疫反応性である抗体を選択することができる。例えば、タンパク質と特異的に免疫反応性であるモノクローナル抗体を選択するには、固相ELISA免疫測定法が日常的に用いられる。特異的免疫反応性を決定するために用いることができる免疫測定の形式および条件の記載については、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New Yorkを参照されたい。
【0088】
特定のポリヌクレオチド配列の「保存的改変変化」とは、同一もしくは本質的に同一のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを指し、またはポリヌクレオチドがアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の配列を指す。遺伝暗号の縮重により、数多くの機能的に同一の核酸が、任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンCGU、CGC、CGA、CGG、AGA、およびAGGはすべて、アミノ酸アルギニンをコードする。したがって、アルギニンがコドンによって指定されている各位置において、コードされるタンパク質を変化させることなく、コドンを、記載される対応するコドンのうちの別のものに変更することができる。このような核酸変化は、「保存的改変変化」の一種である「サイレント変化」である。タンパク質をコードする、本明細書に記載される各ポリヌクレオチド配列はまた、特に断りのない限り、考えられ得るサイレント変化を表す。当業者は、標準的な技法により、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるUGGを除く)を改変して、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。したがって、記載される各配列には、タンパク質をコードする核酸の各「サイレント変化」が典型的には暗に意味されている。
【0089】
当業者は、多くのアミノ酸が、タンパク質の機能に影響を及ぼすことなく、タンパク質において互いに置換され得ること、例えば、保存的置換が、開示される細胞壁ムラリティックタンパク質などのタンパク質の保存的に改変された変種の基礎であり得ることを認識する。保存的アミノ酸置換の不完全なリストは以下である。以下の8つの群はそれぞれ、通常は互いに保存的置換であるアミノ酸を含む:1) アラニン(A)、グリシン(G);2) アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E);3) アスパラギン(N)、グルタミン(Q);4) アルギニン(R)、リジン(K);5) イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、アラニン(A);6) フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W);7) セリン(S)、スレオニン(T)、システイン(C);および 8) システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton (1984) Proteinsを参照されたい)。
【0090】
さらに、コードされる配列中の単一アミノ酸またはほんの少数のアミノ酸(典型的には5%未満、より典型的には1%未満)を変更する、付加する、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加が、その変化によってアミノ酸が化学的に類似するアミノ酸で置換される場合に、効率的「保存的改変変化」であることを、当業者は認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野において周知である。
【0091】
当業者は、タンパク質、例えば細胞壁ムラリティックタンパク質、およびタンパク質をコードする核酸の多くの保存的変化が、本質的に同一の産物を生じることを理解するであろう。例えば、遺伝暗号の縮重により、「サイレント置換」(例えば、コードされるタンパク質の変化をもたらさない核酸配列の置換)は、アミノ酸をコードする各核酸配列の暗黙の特徴である。本明細書に記載されるように、配列は好ましくは、細胞壁ムラリティックタンパク質の産生に用いられる特定の宿主細胞(例えば、酵母、ヒトなど)における発現に関して最適化される。同様に、アミノ酸配列中の1個または数個のアミノ酸が、非常に類似した特性を有する異なるアミノ酸で置換される「保存的アミノ酸置換」もまた、特定のアミノ酸配列またはアミノ酸をコードする特定の核酸配列と非常に類似していると容易に見なされる。任意の特定配列のこのような保存的置換変化は、本発明の特徴である。Creighton (1984) Proteins, W.H. Freeman and Companyもまた参照されたい。加えて、コードされる配列中の単一アミノ酸またはほんの少数のアミノ酸を変更する、付加する、または欠失させる個々の置換、欠失、または付加もまた一般的に、「保存的改変変化」である。
【0092】
本発明の実施は、組換え核酸の構築、および宿主細胞、好ましくは細菌宿主細胞における遺伝子の発現を伴い得る。特定の宿主に対して最適化されたコドン使用が適用できる場合が多い。これらの目的を達成するための分子クローニング技法は、当技術分野において公知である。発現ベクターなどの組換え核酸の構築に適した多種多様なクローニング法およびインビトロ増幅法が、当業者に周知である。当業者を多くのクローニング実習に導くのに十分なこれらの技法および説明書の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology volume 152 Academic Press, Inc., San Diego, CA (Berger);およびCurrent Protocols in Molecular Biology, F.M. Ausubel, et al., eds., Current Protocols, a joint venture between Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., (1999 Supplement) (Ausubel)に見出される。組換えポリペプチドの発現に適した宿主細胞は当業者に公知であり、これには、例えば、大腸菌などの原核細胞、ならびに昆虫細胞(バキュロウイルス)、哺乳動物細胞(CHO細胞)、真菌細胞(例えば、酵母、ピキア属(Pichia)、クロコウジカビ(Aspergillus niger))、およびバクテリオファージ発現系を含む真核細胞が含まれる。原核細胞産生宿主では、N末端METが除去される場合が多いことに留意されたい。本明細書に記載されるキメラポリペプチドには、ペプチド成分のいずれかまたはすべてにおいてN末端メチオニンを有するおよび有さないものが含まれる。
【0093】
当業者を、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、Qβ-レプリカーゼ増幅法、およびRNAポリメラーゼを介したその他の技法を含むインビトロ増幅法に導くのに十分なプロトコールの例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis et al. (1987) 米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al. eds) Academic Press Inc. San Diego, CA (1990) (Innis);Arnheim & Levinson (October 1, 1990) C&EN 36-47;The Journal Of NIH Research (1991) 3:81-94;Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173;Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874;Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem. 35:1826;Landegren et al. (1988) Science 241:1077-1080;Van Brunt (1990) Biotechnology 8:291-294;Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560;およびBarringer et al. (1990) Gene 89: 117に見出される。インビトロで増幅された核酸をクローニングする改良法は、Wallace et al.、米国特許第5,426,039号に記載されている。
【0094】
VI. 商業的適用
本明細書に記載されるポリペプチドの様々な適用を直ちに認識することができる。多くの医学的状態は細菌感染に起因し、これらは感染症および医微生物学の教科書にさらに記載されている。例えば、Kasper and Fauci (2010)
Harrison's Infectious Diseases McGraw-Hill Professional, ISBN-10: 0071702938, ISBN-13: 978-0071702935;Mandel (2008)
Mandell, Douglas, and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases: Expert Consult Premium Edition (7th Ed.) Churchill Livingstone, ISBN-10: 0443068399, ISBN-13: 978-0443068393;Schlossberg (ed. 2008)
Clinical Infectious Disease Cambridge University Press, ISBN-10: 0521871123. ISBN-13: 978-0521871129;Bauman (2011)
Microbiology with Diseases by Body System (3d ed.) Benjamin Cummings, ISBN-10: 0321712714, ISBN-13: 978-0321712714;およびMurray, et al. (2008)
Medical Microbiology (with Student Consult Online Access, 6th ed.) Mosby, ISBN-10: 0323054706, ISBN-13: 978-0323054706を参照されたい。これらのポリペプチド構築物の治療的適用が理解されよう。
【0095】
本明細書に記載される外膜横断ムラリティックキメラタンパク質は、通常の使用において汚染される可能性がある物品の抗菌処理に用いることができる。標的細菌が公衆衛生上の危険要因となる場所、表面、設備、または環境を、本明細書に記載されるムラリティックポリペプチドを用いて処理することができる。関心対象となる場所には、標的細菌を含む材料が存在する公衆衛生施設が含まれる。これらの材料には、廃棄物、例えば液体、固体、または空気が含まれ得る。水性廃棄物処理工場は、廃液から標的細菌を除去するためにムラリティックポリペプチドを組み入れることができ、ムラリティックポリペプチドによる処理によるか、またはムラリティックポリペプチドを発現し放出する細胞によるかは問わない。固体廃棄物処理場は、標的宿主が大発生する可能性を最小限に抑えるために、ムラリティックポリペプチドを導入することができる。
【0096】
食品を調理する区域または設備を、ムラリティックポリペプチド組成物を用いて定期的に処理し、それによって標的細菌を効率的に除去するための手段を提供することができる。汚染されやすい医学的環境および他の公共の環境は、標的微生物の増殖および伝搬を最小限に抑えるために、同様の手段を用いることができる。本方法は、例えば集中治療室用の空気ろ過システムを含む、標的細菌の除去が望ましい状況において用いることができる。
【0097】
キメラムラリティックタンパク質は、タンパク質安定剤または保存剤として、すなわち標的細菌が不安定化物質である場合に、用いることができる。このような組成物は、薬物の製剤の一部、または肉もしくは他の食品用の保存剤として用いることができる。いくつかの態様において、ムラリティックポリペプチドは、例えば安定剤としてまたは保存料製剤の成分として、水産食品において用いることができる。このような適用は、防腐状態を保たなくてはならないが、古典的な抗生物質を含めることができない材料に特に有用である。
【0098】
別の適用には、獣医学的または医学的状況における使用が含まれる。特定の細菌の存在を決定するため、または特定の標的を同定するための手段は、集団または培養物に対する選択薬剤の作用を利用することができる。動物およびペットの洗浄を含め、洗浄剤に静菌活性を含めることが望ましい場合がある。
【0099】
本明細書に記載されるムラリティックポリペプチドを用いて、例えばヒト、動物、および植物の細菌感染症を治療することができる。ムラリティックポリペプチドは、対象に予防的に投与することができ、または細菌感染症を有する対象に投与することができる。加えて、本方法を展示動物(例えば、動物園の動物または演芸動物)、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコ、その他のペット)、競走動物(例えば、ウマ)、または家畜(例えば、乳牛および肉牛、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ニワトリ、魚、エビ、ロブスターなど)に適用することができ、この場合、細菌の存在を減少させるために組成物が適用される。ムラリティックポリペプチドは、殺傷機構が宿主細胞の複製に依存しないため、緩徐に複製する細菌によって引き起こされる感染症を治療するために用いることができる。多くの現在の抗菌剤、例えば抗生物質は、複製している細菌に対して最も有用である。例えば、ムラリティックポリペプチドを用いて、例えば約1〜72時間、1〜48時間、1〜24時間、1〜12時間、1〜6時間、1〜3時間、または1〜2時間の倍加時間で複製する細菌を標的化することができる。
【0100】
医学的に関連したグラム陰性球菌種には、
淋菌(Neisseria gonorrhoeae)およびスピロヘータ(性感染症を引き起こす);
髄膜炎菌(Neisseria meningitides)(髄膜炎を引き起こす);ならびに
モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)(呼吸器症状を引き起こす)が含まれる。医学的に関連したグラム陰性桿菌種には、
インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、
肺炎桿菌、
在郷軍人病菌(Legionella pneumophila)、バークホルデリア属、および
緑膿菌(呼吸障害);
大腸菌、
プロテウス・ミラビリス、
エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、および
霊菌(Serratia marcescens)(尿路障害)、ならびに
ピロリ菌(Helicobacter pylori)、
腸炎菌(Salmonella enteritidis)、
チフス菌(胃腸障害)、ならびにスピロヘータ(性感染症)が含まれる。院内感染症と関連したグラム陰性菌には
アシネトバクター・バウマニが含まれ、これは、例えば病院施設の集中治療室において、菌血症、二次性髄膜炎、および人工呼吸器関連肺炎を引き起こす。
【0101】
本発明のムラリティックポリペプチドを用いて標的化することのできる他の関連物にはグラム陰性種が含まれ、これには、
ステノトロホモナス属(Stenotrophomonas)、
ブデロビブリオ属(Bdellovibrio)、酢酸菌、ならびに
ウォルバキア属(Wolbachia)などのアルファ-プロテオバクテリア、藍色細菌、スピロヘータ、緑色硫黄細菌、および緑色非硫黄細菌が含まれる。
【0102】
ある条件下で外膜を有し得る(グラム染色でグラム不定性パターンを示す)グラム不定生物もまた、本発明のムラリティックポリペプチドを用いて標的化することができる。グラム不定菌には、例えば、
アクチノミセス属(Actinomyces)、
アルトバクター属(Arthobacter)、
コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、
マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、および
プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)が含まれ、これらは細胞分裂中の破損に特に敏感な細胞壁を有し、グラム陰性染色を示す。
バチルス属(Bacillus)、
ブチリビブリオ属(Butyrivibrio)、および
クロストリジウム属(Clostridium)の培養物では、増殖中のペプチドグリカンの厚さの減少が、グラム陰性に染まる細胞の数の増加と一致する。加えて、細菌培養物の齢数が、グラム染色の結果に影響を及ぼし得る。
【0103】
VII. 投与
本明細書に記載されるムラリティックポリペプチドの投与経路および投薬量は、感染した細菌株、感染の部位および程度(例えば、局部または全身)、ならびに治療を受ける対象によって異なる。投与経路には、経口、エアロゾルもしくは肺に送達するための他の装置、点鼻用スプレー、静脈内(IV)、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内、眼内、膣内、直腸内、局所、腰椎穿刺、くも膜下腔内、ならびに脳および/または髄膜への直接適用が含まれるが、これらに限定されない。治療物質を送達するための媒体として用いることができる賦形剤は、当業者には明らかであろう。例えば、ムラリティックポリペプチドは凍結乾燥形態であってよく、投与(例えば、IV注射による)の前に溶解(再懸濁)することができる。投薬量は、宿主感染症において細菌当たり0.03、0.1、0.3、1、3、10、30、100、300、1000、3000、10000、またはそれ以上のムラリティックポリペプチド分子の範囲内になるように企図される。タンパク質はそれ自体が直列に結合していても、または複数のサブユニット形態(二量体、三量体、四量体、五量体等)であっても、または1つもしくは複数の他の実体、例えば異なる特異性の酵素もしくは断片との組み合わせであってもよいが、そのタンパク質のサイズに応じて、用量は、約100万〜約10兆/kg/日、および好ましくは約1兆/kg/日であってよく、約10
6死滅単位/kg/日〜約10
13死滅単位/kg/日であってよい。
【0104】
殺傷能力を評価するための方法は、無傷の複製ファージ、例えばプラーク形成単位またはpfuを評価するために当業者によって用いられる方法に類似していてよいが、死滅単位は、死滅単位の力価測定後に生存細菌数を測定することによって、より良好に評価することができる。非複製ファージは細菌宿主叢上でプラークを形成しないため、死滅の定量は独特である。したがって、標準的なpfuの代わりに、段階希釈法を用いて「死滅」単位の量を評価することができる。殺傷組成物に曝露した細菌培養物の段階希釈物を用いて、死滅単位を定量することができる。全細菌数を生存コロニー単位と比較することができ、これによって細菌の生存割合、およびどれだけの割合が殺傷構築物に対して感受性があったかを確証することができる。静止活性を評価するための他の手段には、天然であるか負荷されたかを問わず、細胞内の内容物の放出、または天然の細胞壁構造に対応する規定のもしくは調製された基質に対する酵素活性が含まれ得る。
【0105】
治療物質は典型的に、病原性細菌の除去が成功裡に達成されるまで投与される。本発明は、本発明の組成物の単一の剤形および複数の剤形、ならびにこのような単一および複数の剤形を送達するための持続放出手段を遂行するための方法を企図する。感染株の特異的診断が判定されている間、広域スペクトル製剤を用いることができる。
【0106】
肺または他の粘膜表面へのエアロゾル投与の場合、治療組成物は、投与のために特別に設計されたエアロゾル製剤中に組み入れられる。多くのこのようなエアロゾルは当技術分野で公知であり、本発明はいかなる特定の製剤にも限定されない。このようなエアロゾルの例は、Schering-Ploughによって製造されるProventil(商標)吸入器であり、その噴射剤は、トリクロロモノフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、およびオレイン酸を含む。他の態様は、対象または患者の鼻経路および副鼻腔経路に投与するために設計された吸入器を含む。噴射剤成分および乳化剤の濃度は、治療に用いられる特定の組成物に基づいて必要に応じて調整される。エアロゾル治療ごとに投与されるべき酵素死滅単位の数は、典型的には約10
6〜10
13死滅単位の範囲内、例えば約10
12死滅単位である。
【0107】
典型的には、死滅により、宿主の複製能力は少なくとも3分の1、例えば10分の1、30分の1、100分の1、300分の1等から多数桁分の1に低下する。死滅させずに宿主複製速度を遅らせることもまた、有意な治療的価値または商業的価値を有し得る。遺伝的不活性化効率は、4、5、6、7、8、またはそれ以上の対数単位であってよい。
【0108】
VIII. 製剤
本発明はさらに、薬学的に許容される賦形剤中に提供される、本発明の少なくとも1種の細胞壁分解酵素、例えばムラミダーゼを含む薬学的組成物を企図する。したがって、本発明の製剤および薬学的組成物は、細菌宿主に特異的な単離された酵素セグメント;同じまたは典型的な細菌宿主に影響を及ぼす2、3、5、10、もしくは20種、またはそれ以上の酵素の混合物;および異なる細菌宿主または同じ細菌宿主の異なる株に影響を及ぼす2、3、5、10、もしくは20種、またはそれ以上の酵素の混合物、例えば複数のグラム陰性菌種の増殖をまとめて阻害する酵素のカクテル混合物を含む製剤を企図する。このようにして、本発明の組成物を患者の必要性に適応させることができる。化合物または組成物は、無菌またはほぼ無菌であってよい。
【0109】
「治療有効量」とは、投与される対象に効果、静菌性(細菌の増殖を減少させる)または殺菌性(細菌を死滅させる)の効果をもたらす用量である。厳密な用量は治療の目的に依存し、これは公知の技法を用いて当業者により確認され得る。例えば、Ansel, et al. (2010),
Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery;Lieberman (1992)
Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3), Dekker;Lloyd (1999)
The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding;およびPickar (1999)
Dosage Calculationsを参照されたい。当技術分野において公知であるように、タンパク質分解、全身送達対局部送達、ならびに年齢、体重、全体的健康状態、性別、食生活、投与時間、薬物相互作用、および病態の重症度に対する調整が必要である場合があり、これは当業者によって確認され得る。
【0110】
薬学的に許容される様々な賦形剤は、当技術分野において周知である。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される賦形剤」は、組成物の有効成分と組み合わされた場合に、その成分が生物活性を保持することを可能にし、かつ対象の免疫系との破壊的反応を引き起こさない材料を含む。このような賦形剤は、安定剤、保存剤、塩、または糖複合体もしくは結晶などを含む。
【0111】
例示的な薬学的担体には、無菌の水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液が含まれる。例には、リン酸緩衝生理食塩水溶液、水、油性/水性乳濁液などの乳濁液、および様々な種類の湿潤剤のような標準的な薬学的賦形剤が含まれるが、これらに限定されない。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には、生理食塩水および緩衝培地を含む、水、アルコール/水溶液、乳濁液、または懸濁液が含まれる。非経口媒体には、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油が含まれる。静脈内用媒体には、液体および栄養補充液、電解質補充液(リンゲルデキストロースに基づくものなど)などが含まれる。他の態様において、組成物は、徐放粒子、ガラスビーズ、包帯、眼内挿入物、および局所用形態を含む固体マトリックス中に組み入れられる。
【0112】
さらに、リポソーム送達用の製剤、および糖結晶を含むマイクロカプセル化酵素を含む製剤が含まれる。このような賦形剤を含む組成物は、周知の従来法によって製剤化される(例えば、
Remington's Pharmaceutical Sciences, Chapter 43, 14th Ed., Mack Publishing Colを参照されたい)。タンパク質をPEG化に供して、そこから生じる場合の多い利点を得てもよい。例えば、Jevsevar, et al. (2010)
Biotechnol. J. 5:113-128;Brocchini, et al. (2008)
Adv. Drug Delivery Revs. 60:3-12;Jain and Jain (2008)
Crit. Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 25:403-47, PMID: 190626331;およびShaunak, et al. (2006)
Nature Chemical Biology 2:312-313を参照されたい。同様の安定化結果を達成するための別法が存在する。例えば、Schellenberger, et al. (2009) Nature
Biotechnology 27:1186-1192を参照されたい。
【0113】
一般に、薬学的組成物は、顆粒剤、錠剤、丸剤、カプセル剤(例えば、経口送達用に適合化された)、坐剤、マイクロビーズ、マイクロスフェア、リポソーム剤、懸濁剤、軟膏剤、ローション剤などの様々な形態で調製することができる。経口使用および局所使用に適した製薬等級の有機または無機の担体および/または希釈剤を用いて、治療活性化合物を含む組成物を構成することができる。当技術分野で公知の希釈剤には、水性媒体、植物性および動物性の油脂が含まれる。製剤には、安定剤、湿潤剤および乳化剤、浸透圧を変更するための塩、または適切なpH値を保証するための緩衝剤を組み入れてもよい。
【0114】
薬学的組成物は、ムラリティックポリペプチドに加えて他の成分、例えば2種以上の有効成分、例えば2種もしくはそれ以上、3種もしくはそれ以上、5種もしくはそれ以上、または10種もしくはそれ以上の異なる酵素を含むことができ、その際、異なる酵素は同じ細菌、異なる細菌、または付随的な細菌に対して特異的であってよい。例えば、薬学的組成物は複数(例えば、少なくとも2種またはそれ以上)の既定の壁分解酵素を含むことができ、その場合、組成物中の酵素のうち少なくとも2種は、トランスグリコラーゼとエンドペプチダーゼの組み合わせのように、異なる細菌宿主特異性または異なるペプチドグリカン結合特異性を有する。このようにして、治療組成物を、異なる細菌の混合感染症を治療するために適合化することができ、または治療組成物は、特定の施設環境において一般に見られる様々な種類の感染症に対して有効となるように選択された組成物であってよい。例えば、感染症において存在するかまたは潜在的に存在する複数の株を標的化するように、異なる特異性の様々なバクテリオファージに由来する異なるグループの細胞壁分解実体を選択することによって、選択の組み合わせが起こり得る。上記のように、壁分解酵素は、従来の抗微生物剤、またはバイオフィルムもしくはカプセル形成培養物に対して有効性を提供する試薬などの他の薬剤と組み合わせて投与することができる。例えば、Davies and Marques (2009) J. Bacteriology 191:393-403;Kimura and Itoh (2002) Appl. and Env. Microbiology 69:2491-2497;Kim and Geider (2000) Phytopahtology 90:1263-1268;Hughes, et al. (1998) J. Appl. Microbiology 85:583-590;およびBartell and Orr (1969) J. Virology 4:580-584に、様々な材料が記載されている。いくつかの態様では、添加剤(例えば、脂肪酸)またはバイオフィルムデポリメラーゼを、キメラ構築物に対する付加的ドメインとして、製剤中の付加的成分として添加することができ、または細胞壁分解活性と組み合わせて、同時に、もしくは連続して投与することができる。記載されるファージ由来多糖デポリメラーゼに基づく活性構築物を、提供されるムラリティック活性と組み合わせることができる。
【0115】
IX. 産生改善のためのタンパク質配列の改変
MTDは典型的にはもともと疎水性であり、このようなMTDを含むキメラタンパク質は、大腸菌などの産生宿主で発現させた場合、不溶性となり得る。特性の予期せぬ組み合わせを示す構築物を作製することができる。実施例に示されるように、産生細胞宿主内で可溶性のままであるよう十分に親水性であり、産生宿主細胞を横断できないように、構築物を設計することができる。改変された構築物は驚くべきことに、細菌の外側細胞壁を横断するMTD機能を保持して、標的細菌死滅をもたらす。これは、細菌の細胞膜特性(および構造)が細菌の外膜と十分に異なるために、達成され得る。
【0116】
このように改善された産生構築物は、3つの特性を兼ね備える:(1) 宿主細胞、典型的にはグラム陰性大腸菌において、実質的に可溶型で産生される;(2) 細菌の外側細胞壁を横断する機能を保持して、ペリプラズム空間に接近し、そこでは基質ペプチドグリカンが触媒ドメインに接近可能である;および(3) 産生細胞の内膜の実質的破壊は起こらない。適切な対照(非改変構築物など)を組み入れて、細胞生存、発現、および触媒活性を定量するかまたは相対的に評価することを確実にする。
【0117】
親水性はタンパク質溶解度に良い影響を与え、疎水性の集中した領域を有するタンパク質は、そのような領域を破壊することによって、溶解性が増加し得る。MTDセグメントは典型的に、キメラ構築物の最も疎水性の高いセグメントの中に存在するため、MTDはアミノ酸置換の影響を最も受けやすい。
【0118】
これらのキメラからのある種の不溶性(または最小限に可溶性の)構築物では、MTDセグメントは短い膜貫通セグメントである。公知の疎水性測定を用いて膜貫通セグメントの位置を特定することができ、これは典型的には約20アミノ酸残基にまたがる。これらの領域の全体的な疎水性を減少させることにより、全体的なタンパク質溶解度が変化する場合が多い。
【0119】
疎水性の高い領域は、DAS TMD解析(例えば、Cserzo, et al. (1997) Protein Engineering 10(6):673-676を参照されたい)、隠れマルコフモデルを使った膜貫通(TMHMM)解析(例えば、Krogh, et al. (2001) J. Mol. Biol. 305(3):567-580を参照されたい)、一般的疎水性(例えば、Kyte and Doolittle (1982) J. Mol. Biol. 157(1):105-132を参照されたい)、またはハイドロパシーの総加算平均スコア(Grand Average of Hydropathy Score)(GRAVY;Gasteiger, et al (2005) 「Protein Identification and Analysis Tools on the ExPASy Server」 in Walker (ed. 2005)
The Proteomics Protocols Handbook, Humana Press, pp. 571-607を参照されたい)を用いて同定することができる。
【0120】
高密度アライメント表面(Dense Alignnment Surface)(DAS)予測サーバーは、膜タンパク質中の膜貫通ヘリックスを予測するためのものである。このプログラムは、膜タンパク質が、極性結合ループによって隔てられた、15〜30個の主に疎水性残基の一続きから構成されるという条件を用いる。このことは、膜貫通領域が、親水性または極性残基である残基が隣接している、主に疎水性アミノ酸から構成される断片を検出することを意味する。DASは、以前に導き出された特異的スコア行列を用いた、非相同的膜タンパク質の収集物に対する問い合わせ配列の低ストリンジェンシードットプロットに基づいている。内在性膜タンパク質は、水溶性球状タンパク質よりも疎水性の高い残基から構成されるため、このようなタンパク質はそれらの組成に従って識別され得る。DAS法と疎水性プロファイルに基づくプログラムとの原理の違いは、DASが3つのレベルにおいて疎水性セグメントを示す点である。疎水性のこの複雑なアプローチは、DAS法の感度の裏側にある重要な点である。
【0121】
DASプロットは、2.2 DASスコアにおいて「厳密な」カットオフを示し、1.7 DASスコアにおいて「緩い」カットオフを示す。2.2でのヒットは、一致セグメントの数に関して情報を提供するのに対して、1.7でのヒットは膜貫通セグメントの実際の位置を提供する。典型的には、タンパク質の長さにわたる3未満(例えば、2.8、2.5、または2.2未満)のDASスコアは、タンパク質が、宿主細胞内で過剰発現された場合に可溶性であることを示す。
【0122】
荷電した側鎖を有するアミノ酸には、それぞれハイドロパシースコアが-4.5、-3.2、および-3.9であるArg、His、Lys(正に荷電);ならびにいずれもハイドロパシースコアが-3.5であるGluおよびAsp(負に荷電)が含まれる。極性であるが非荷電性の側鎖を有するアミノ酸には、それぞれハイドロパシースコアが-0.8、-0.7、-3.5、および-3.2であるSer、Thr、Asn、およびGlnが含まれる。非極性(疎水性側鎖)を有するアミノ酸:ハイドロパシースコアが1.8、4.5、3.8、1.9、2.8、-0.9、-1.3、および4.2であるAla、Ile、Leu、Met、Phe、Trp、Tyr、およびVal。バリンに対して置換するためのアミノ酸の例には、チロシン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンが含まれる。イソロイシンに対して置換するためのアミノ酸の例には、チロシンもしくはトリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンが含まれる。ロイシンに対して置換するためのアミノ酸の例には、チロシン、トリプトファン、アルギニン、ヒスチジン、またはリジンが含まれる。
【0123】
例えば、
図1Aにおいて、ピーク測定値はC末端MTD領域に関して約3.5を上回る。このセグメントを、局部的DASプロファイルスコアを減少させるために改変したが、これは
図1Bに反映されている。典型的には、実質的ピークを標的化して(例えば、約3.1、3.0、2.9、2.7、2.5よりも高いピーク)、局部的ピーク値を約2.2、2.1、2.0、1.8、または1.5未満まで下げる。DASプロファイルスコアの減少は、典型的には少なくとも約0.2、0.3、0.4、または0.5 DAS単位である。しかしながら、MTDセグメントのDASプロファイルは、グラム陰性菌の外膜を介して、MTDを含むキメラタンパク質を効率的に輸送するために十分高いままでなくてはならない。
【0124】
TMHMMは、隠れマルコフモデルに基づくソフトウェア解析である。これは膜貫通ヘリックスを予測し、高い精度で可溶性タンパク質と膜タンパク質を識別する。疎水性解析のみを用いた膜貫通ヘリックスを予測するための方法は、必ずしも信頼できるとは限らない。この方法は、膜貫通(TM)セグメントを検出するための疎水性シグナルと、膜タンパク質の細胞質側の配列の一部で正荷電残基が豊富であるという電荷バイアスを暗に組み合わせて、1つの統合アルゴリズムにしている。ヘリックス膜タンパク質は、細胞質ループと非細胞質ループを交互に有する。TMHMMは、予測ための1つのモデルに疎水性、電荷バイアス、ヘリックス長、および文法的制約を組み入れ得る。このプログラムにより、ヘリックス間のどのループが細胞または細胞小器官の内部または外側にあるかという予測と共に、膜貫通αヘリックスの位置および介在ループ領域の位置を予測することが可能になる。このプログラムは、βシート膜貫通ドメインを検出しない。αヘリックスでは、脂質二重層をまたぐために約20アミノ酸を必要とする。プログラムは、疎水性アミノ酸を含む少なくとも約20アミノ酸長のαヘリックスの存在を探すことによって、これらの膜貫通ドメインを検出し得る。これが膜貫通ヘリックスの97〜98%を正確に予測するのに対して、高密度アライメント表面法(DAS)は、任意の内在性膜タンパク質中の膜貫通セグメントを予測する。DASは、TMHMMよりも包括的である2つのレベルのストリンジェンシーを有する。
【0125】
TMHMMで予測された膜貫通ドメインを含むタンパク質の溶解度を改善するには、疎水性アミノ酸を置換または改変して、例えば、TMDの確率を、約0.5、0.6、0.7、0.8またはさらには約0.9から、約0.2、0.3、0.4、または0.5減少させて、より低い値、例えば約0.6の範囲またはそれよりも低い範囲に低下させることができる。
【0126】
Kyte-Doolittleハイドロパシープロットは、膜貫通領域または表面領域を示す、タンパク質構造の別の予測尺度である。これは二次構造を予測せず、そのためαヘリックスとβシート膜貫通ドメインの両方を検出する。0よりも大きい数字は疎水性の増加を示し、0よりも小さい数字は親水性アミノ酸の増加を示す。
【0127】
最初に、各アミノ酸に4.6〜-4.6の疎水性スコアが付与される。4.6というスコアは最も疎水性が高く、-4.6というスコアは最も親水性が高い。その後、ウィンドウサイズを設定するが、これはその疎水性スコアが平均化され、ウィンドウ中の第1アミノ酸に割り当てられるアミノ酸の数である。初期設定のウィンドウサイズは9アミノ酸である。コンピュータプログラムはアミノ酸の第1ウィンドウから開始し、そのウィンドウ内の全疎水性スコアの平均値を算出する。次にコンピュータプログラムは1アミノ酸下がって移動し、第2ウィンドウ内の全疎水性スコアの平均値を算出する。各ウィンドウの平均スコアを計算し、そのウィンドウ内の第1アミノ酸にそれを割り当てながら、このパターンがタンパク質の末端まで続く。次に、平均値をグラフ上にプロットする。Y軸はハイドロパシースコアを表し、x軸はウィンドウ番号を表す。
【0128】
Kyte-Doolittleスケールは、タンパク質中の疎水性領域を検出するために広く用いられている。正の値を有する領域は疎水性であり、負の値はより親水性である。このスケールは、用いられるウィンドウサイズに応じて、表面露出領域および膜貫通領域の両方を同定するために用いることができる。5〜7の短いウィンドウサイズは一般的に、推定表面露出領域を予測するのに良好に働く。19〜21の大きなウィンドウサイズは、算出された値が約1.6を上回る場合に、膜貫通ドメインを見出すのによく適している。
【0129】
典型的には、タンパク質の長さにわたる3未満(例えば、2.8、2.5、2.2、または2.0未満)のKyte-Doolittleスコアは、タンパク質が、宿主細胞内で過剰発現された場合に可溶性であることを示す。これらの値はおおまかなやり方として用いられるべきであり、規則からの逸脱が起こり得る。
【0130】
KyteおよびDoolittleはまた総合GRAVYスコアについても記載しており、これはタンパク質中の全アミノ酸の平均ハイドロパシースコアである。内在性膜タンパク質は典型的に、球状タンパク質よりも高いGRAVYスコアを有する。この指数は、仮説翻訳遺伝子産物のための一般平均ハイドロパシシティ(hydropathicity)(GRAVY)スコアである。これは、各アミノ酸のハイドロパシー指数の和の算術平均値として算出される。
【0131】
GRAVYスコアを算出するためのソフトウェアは、expasy Protparamにおけるオンラインで無料で利用可能である。インプットは、一文字形式でのアミノ酸一次配列である。スコアは平均値であるため、選択されるべきパラメータは、個々のハイドロパシースコアを得るために平均化されるアミノ酸の数を調整するためのウィンドウサイズである。
【0132】
典型的には、負のGRAVYスコアを有するタンパク質は可溶性である(しかし、そのようなタンパク質は、膜固定化タンパク質と構造的および機能的に会合し得る)。また、いくつかの親水性タンパク質は、疎水性タンパク質との相互作用により親油性膜画分中に保持される(Althage, et al. (2004)
Biochim Biophys Acta 1659:73-82.;Guenebaut, et al. (1997) J. Mol. Biol. 265:409-418;およびGuenebaut, et al. (1998) J. Mol. Biol. 276:105-112)。GRAVYは単に線状ポリペプチド配列の全体的な疎水性を算出し、正のスコアの増加はより高い疎水性を示すが、残基の順番、三次元に折りたたまる方法、またはタンパク質の疎水性コア中に埋没している残基の割合を考慮しない。
【0133】
例えばDASと比較して、最も指標となる尺度ではないものの、1.5未満(例えば、1.2、1.0、または0.8未満)のGRAVYスコアは典型的に、タンパク質が、宿主細胞内で発現された場合に可溶性であることを示す。本明細書に記載されるMTDの状況において、MTDのGRAVYスコアは、MTDが外膜横断活性を保持することを確実にするために、-1を下回るべきではない。
【0134】
より長い膜貫通セグメントまたは疎水性セグメントに関しては、別法を用いて、高度に疎水性のセグメント、または置換を目的として標的化するためのアミノ酸の位置を特定することができる。例えば、表面露出アミノ酸残基およびそれらの疎水性指数を決定することができる。疎水性指数またはGRAVYスコアが負の側である場合には、親水性残基を用いて親水性の低い部分を置換することができる。例えば、接触可能表面積(ASA)または溶媒接触可能表面を決定することができる。ASAとは、溶媒に接触可能である生体分子の表面積である(Lee and Richards (1971) J. Mol. Biol. 55:379-400)。アミノ酸の溶媒露出は、タンパク質の三次構造中に残基がどれぐらい深く埋没しているかを測定し、タンパク質の構造および機能を解析および予測するのに有用であり得る(Li, et al. (2011) Proteomics 11:3793-801;Ahmad, et al. (2003) Proteins 50:629-35)。
【0135】
表面露出残基を予測するために、ニューラル・ネットワークを用いることもできる。タンパク質結晶構造のデータを用いて、配列から表面露出を予測するためのコンピュータシミュレート化ネットワーク規則を学ばせる。訓練を受けたこれらのネットワークは、表面露出を正確に予測することができる。例えば、Holbrook, et al. (1990) Protein Eng. 3:659-665;Rost and Sander (1994) Proteins 20:216-226;Lebeda, et al. (1998) J. Protein Chem. 17:311-318;Pollastri, et al. (2002) Proteins 47:142-153;およびAhmad and Gromiha (2002) Bioinformatics 18:819-824を参照されたい。その他のアプローチには、ロジスティック関数(Mucchielli-Giorgi, et al. (1999 Bioinformatics 15:176-177);Bayersian解析(Mucchielli-Giorgi, et al. (1999) Bioinformatics 15:176-177);情報理論(Naderi-Manesh, et al. (2001) Proteins 42:452-459;Richardson and Barlow (1999) Protein Eng. 12:1051-1054;およびCarugo (2000) Protein Eng. 13:607-609);ならびに置換行列(Pascarella, et al. (1998) Proteins 32:190-199)が含まれる。溶媒接触性を予測するための定量性の低いアプローチは、単に疎水性プロットに基づいている(Lesk (2002)
Introduction to Bioinformatics Oxford University Pressを参照されたい)。
【0136】
これらの方法は、各残基の接触性(露出、埋没、およびおそらくその中間)を示す。溶媒に露出している残基は、溶解度に影響を及ぼし、かつ水溶液と相互作用する可能性がより高い。発現時のタンパク質またはドメインの溶解度を改善するために、露出残基を極性または親水性のより高い残基で置換することができる。
【0137】
以下の参考文献は、タンパク質溶解度を改善するためのさらなる指導を提供する:Trevino, et al. (2007)
J. Mol. Biol. 366:449-160;Magnan, et al. (2009) Bioinformatics 25:2200-2207;Ahuja, et al. (2006) Malaria Journal 5:52;Smialowski, et al. (2007) Bioinformatics 23:2536-2542;Trevino, et al. (2008) J. Pharni Sci 97:4155-66;Makrides (1996) Microbiological Reviews 60:512-538;Karlsson, et al. (2005) J. Biol. Chem. 280:25558-564;Maxwell, et al. (1999) Protein Sci. 8:1908-1911;およびWilkinson and Harrison (1991) BioTechnology 9:443448。
【0138】
X. 半減期、安定性、貯蔵改善のためのタンパク質の改変
ポリペプチドまたは他の分子に対するポリアルキレングリコール(PAG)成分の付加は、PAG化と称される。PAG化(典型的にはPEG化)は、ポリペプチドの薬物動態学的特性および薬力学的特性を改善すること、例えば、インビトロおよびインビボの活性および安定性を高める、半減期を延長する、タンパク質分解を減少させる、免疫原性を減少させる、ならびに生物学的利用能および生体内分布を改善することができる。PAG化のために通常標的化されるアミノ酸は、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、チロシン、セリン、スレオニン、ヒスチジン、システイン、およびリジンである。PAG化のために、通常はリジンの側鎖上のε-アミノ基が標的化される。
【0139】
ポリエチレングリコール(PEG)は、300 g/mol〜10,000,000 g/molの広範囲の分子量にわたって市販されている。重合過程に異なる開始剤を用いて、異なる形態のPEGが作製され得るが、その最も一般的なものは、mPEGと称される単官能性メチルエーテルPEG(メトキシポリ(エチレングリコール))である。低分子量PEGもまた、単分散の、均一な、または離散したと称される、より純粋なオリゴマーとして入手可能である。
【0140】
PEG分子は異なる形状を有し得る。分岐型PEGは、中心コア基から生じる3〜10本のPEG鎖を有する。星型PEGは、中心コア基から生じる10〜100本のPEG鎖を有する。櫛型PEGは、通常ポリマー骨格に移植された複数のPEG鎖を有する。
【0141】
融点は、ポリマーのMWに応じて異なる。PEGは、構造:
HO-CH
2-(CH
2-0-CH
2-)
n-CH
2-OH
を有し、n=9の場合、およそ400ダルトンの平均分子量を有する(PEG 400)。理想的には、治療の一貫性および規制の理由で、ポリペプチドに付加されるPEGポリマーは高度に均一(低分散度)である。約5 KDaのMWに関しては、nは約100であり;約20 KDaのMWに関しては、nは約400である。
【0142】
アミノ酸付着部位に加えて、PEG化反応に関する考慮には、開始剤PEG化試薬、PEG:タンパク質比、pH、反応時間、および温度が含まれる(例えば、Seely et al. (2005) 「Making Site-specific PEGylation Work: Purification and analysis of PEGylated protein pharmaceuticals presents many challenges」 BioPharm Internationalを参照されたい)。
【0143】
Cys特異的試薬にはヨードアセトアミドまたはクロロアセトアミド化学が含まれ、マレイミド化学も適用されている(Kalia and Raines (2010) Curr Org Chem. 14:138-147)。したがって、PEGマレイミド、PEGヨード酢酸、PEGチオール、およびPEGビニルスルホンは、穏和な条件下でシステイン特異的PEG化を可能にする有用な試薬である。
【0144】
所与のポリペプチドのN末端アミノ酸にPEGを付加する剤には、PEG NHSエステル、PEGトレシレート(tresylate)、PEGアルデヒド、PEGイソチオシアネート、およびいくつかの他のものが含まれる(Nucci et al. (1991) Adv. Drug Del. Rev. 6:133-151;Harris, et al. (1984) J. Poly. Sci: Polymer Chem. Ed. 22:341-352;Bailon and Berthold (1998) Pharm. Sci. Technol. Today 1:352-356)。いずれも穏和な条件下で反応し、アミノ基に対して非常に特異的である。一般に、α-アミノ基のpKは、リジン残基のε-アミノ基よりも1〜2 pH単位低い。pH 7またはそれ未満で分子をPEG化することにより、N末端の高い選択性が達成される。
【0145】
PEG分子およびPEG化のための条件は、当技術分野で公知である。例えば、Abuchowski, et al. (1984)
Cancer Biochem. Biophys. 7:175-186;Abuchowski, et al. (1977)
J. Biol. Chem. 252:3582-3586;Jackson, et al. (1987)
Anal. Biochem. 165:114-127;Koide, et al. (1983)
Biochem. Biophys. Res. Commun. 111:659-667;トレシレート(Nilsson, et al. (1984)
Methods Enzymol. 104:56-69;Delgado, et al. (1990)
Biotechnol. Appl. Biochem. 12:119-128);N-ヒドロキシスクシンイミド由来活性エステル(Buckmann, et al. (1981)
Makromol. Chem. 182:1379-1384;Joppich, et al. (1979)
Makromol. Chem. 180:1381-1384;Abuchowski, et al. (1984)
Cancer Biochem. Biophys. 7:175-186;Katre, et al. (1987)
Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:1487-1491;Kitamura, et al. (1991)
Cancer Res. 51:4310-4315;Boccu, et al. (1983)
Z. Naturforsch. 38C:94-99);炭酸塩(Zalipsky, et al. pp. 347-370 in Harris (ed. 1992)
Poly(ethylene glycol) Chemistry: Biotechnical and Biomedical Applications Plenum Press, New York;Zalipsky, et al. (1992)
Biotechnol. Appl. Biochem. 15:100-114;Veronese, et al. (1985)
Appl. Biochem. Biotech. 11:141-152);ギ酸イミダゾリル(Beauchamp, et al. (1983)
Anal. Biochem. 131:25-33;Berger, et al. (1988)
Blood 71:1641-1647);4-ジチオピリジン(Woghiren, et al. (1993)
Bioconiugate Chem. 4:314-318);イソシアネート(Byun, et al. (1992)
ASAIO Journal M649-M653);およびエポキシド(Noishiki, et al. (1989)に交付された米国特許第4,806,595号)を参照されたい。その他の連結基には、アミノ基と活性化PEGとの間のウレタン結合が含まれる(Veronese et al. (1985) Appl. Biochem. Biotechnol. 11:141-152。
【0146】
本明細書に記載されるキメラタンパク質のムラリティックドメインとMTDのリンカーとして、二官能性PEGを用いることができる。例えば、ホモ二官能性PEGを用いて、MTDのN末端を触媒ドメインのN末端に(またはその逆に)結合することができる。いくつかの態様では、Yの一方の分岐部がN末端特異的な基(例えば、アルデヒド反応基)を有し、他方がC末端特異的な基(例えば、ヒドラジン)を有するY構造PEG誘導体が用いられる。いくつかの態様では、両末端に反応基を有する線状PEGが用いられる。
【0147】
いくつかの態様では、システイン残基がドメインのN末端またはC末端に導入され、ヘテロ二官能性PEG(例えば、チオール-PEG-アミン、一方の末端がチオールであり、他方の末端がアミンである生成物)が用いられる。アミン基を保護するために、BocまたはFmocが使用され得る。
【0148】
結合反応は連続して行うことができ、望ましくない反応物および生成物を除去するための精製段階を含み得る。精製法は一般的には典型的なペプチド精製法であり、その多くがタンパク質化学において公知である。これらには、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー等が含まれ得る。
【0149】
C末端用のPEG反応基は、ヒドラジンまたは同様の特異的反応基であってよい。反応は典型的には、0.5〜18時間かけて;適切な反応温度、例えば20〜40℃で;適切なペプチド濃度、例えば0.5〜3 mg/mlで;適切なPEG試薬濃度、例えばタンパク質標的に対して約1〜10倍過剰のPEGで;および適切なpH、例えばpH 4〜7で行われる。反応を終了し、反応物を除去し、所望のPEG化ポリペプチドを単離することができる。
【0150】
ドメイン-PEG反応基を他方のドメインのN末端に連結する反応は、アルデヒドまたは同様の特異的反応基であってよい。この場合も同様に、反応は、適切な時間をかけて、適切な反応温度で、適切なペプチド濃度で、および適切な試薬濃度で、ならびに適切なpHで行うことができる。
【0151】
標的タンパク質のリジン特異的PEG化には、メトキシポリエチレングリコールトレシレート(mPEG-トレシレート MW 5 kDA)を用いることができる。典型的には、mPEG-トレシレートをタンパク質と共に30℃で3時間インキュベートする。
【0152】
所望のタンパク質をPEG化するためには、システイン特異的PEG標的化試薬であるメトキシポリエチレングリコールマレイミド(mPEG-マレイミド、MW 5 kDA)を用いることができる。典型的には、mPEG-マレイミドをタンパク質と共に30℃で3時間反応させる。
【0153】
メトキシポリエチレングリコールプロピレンアルデヒドは、N末端特異的PEG標的化試薬である(mPEG-アルデヒド、MW 20 kDA)。典型的には、mPEG-アルデヒドを所望のタンパク質と共に30℃で3〜4時間インキュベートする。
【0154】
PEG化反応および誘導体化の生成物をモニターするためには、標準的なSDS-PAGE電気泳動が日常的に使用される。分子量マーカーと比較した変則的なSDS-PAGE移動は、典型的にはPEG化生成物の非線形性質によって起こる。具体的には、PEGはタンパク質と比較して異なるSDS結合をもたらすため、標準的なタンパク質性分子量マーカーの移動は、異なる整数のPEG成分で誘導体化されたタンパク質の移動と相関しない。PEGに対するSDSの結合の化学量論は線状タンパク質と異なり、電荷比は非線形である。
【0155】
PEG化の程度は、マイクロ流体に基づく電気泳動システム、Agilent 2100バイオアナライザー(P230アッセイ)を用いて決定することができる。バイオアナライザーに関して、タンパク質の負荷およびオンチップ(on-chip)試料解析は、製造業者のプロトコールに記載されている通りに行った。Protein 230 Kit Guide、Agilent Technologies Publication Number G2938-90054を参照されたい。PEG化反応は典型的には、異なる数のPEG成分が付着して、異なってPEG化されたタンパク質種(非-、モノ-、ジ-、トリ-等)をもたらす。
【0156】
XI. 方法論
本明細書に記載されるキメラポリペプチドの生成および使用は、一般臨床微生物学の周知の方法、バクテリオファージを取り扱うための一般的方法、ならびにバイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法を含む。このような方法に関する参考文献を下記に列挙する。
【0157】
A. 一般臨床微生物学
一般微生物学とは微生物の研究である。例えば、Sonenshein, et al. (ed. 2002)
Bacillus Subtilis and Its Closest Relatives: From Genes to Cells Amer. Soc. Microbiol.;Alexander and Strete (2001)
Microbiology: A Photographic Atlas for the Laboratory Benjamin/Cummings;Cann (2001)
Principles of Molecular Virology (3d ed.);Garrity (ed. 2005)
Bergey's Manual of Systematic Bacteriology (2 vol. 2d ed.) Plenum,;Salyers and Whitt (2001)
Bacterial Pathogenesis: A Molecular Approach (2d ed.) Amer. Soc. Microbiol.;Tierno (2001)
The Secret Life of Germs: Observations and Lessons from a Microbe Hunter Pocket Star;Block (ed. 2000)
Disinfection, Sterilization, and Preservation (5th ed.) Lippincott Williams & Wilkins Publ.;Cullimore (2000)
Practical Atlas for Bacterial Identification Lewis Pub.;Madigan, et al. (2000)
Brock Biology of Microorganisms (9th ed.) Prentice Hall;Maier, et al. (eds. 2000)
Environmental Microbiology Academic Pr.;Tortora, et al. (2000)
Microbiology: An Introduction including Microbiology Place(TM) Website, Student Tutorial CD-ROM, and Bacteria ID CD- ROM (7th ed.), Benjamin/Cummings;Demain, et al. (eds. 1999)
Manual of Industrial Microbiology and Biotechnology (2d ed.) Amer. Soc. Microbiol.;Flint, et al. (eds. 1999)
Principles of Virology: Molecular Biology, Pathogenesis, and Control Amer. Soc. Microbiol.;Murray, et al. (ed. 1999)
Manual of Clinical Microbiology (7th ed.) Amer. Soc. Microbiol.;Burlage, et al. (eds. 1998)
Techniques in Microbial Ecology Oxford Univ. Press;Forbes, et al. (1998)
Bailey & Scott's Diagnostic Microbiology (10th ed.) Mosby;Schaechter, et al. (ed. 1998)
Mechanisms of Microbial Disease (3d ed.) Lippincott, Williams & Wilkins;Tomes (1998)
The Gospel of Germs: Men, Women, and the Microbe in American Life Harvard Univ. Pr.;Snyder and Champness (1997)
Molecular Genetics of Bacteria Amer. Soc. Microbiol., ISBN: 1555811027;Karlen (1996)
MAN AND MICROBES: Disease and Plagues in History and Modern Times Touchstone Books;およびBergey (ed. 1994)
Bergey's Manual of Determinative Bacteriology (9th ed.) Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい。
【0158】
B. バクテリオファージを取り扱うための一般的方法
バクテリオファージを取り扱うための一般的方法は周知であり、例えば、Snustad and Dean (2002)
Genetics Experiments with Bacterial Viruses Freeman;O'Brien and Aitken (eds. 2002)
Antibody Phage Display: Methods and Protocols Humana;Ring and Blair (eds. 2000)
Genetically Engineered Viruses BIOS Sci. Pub.;Adolf (ed. 1995)
Methods in Molecular Genetics: Viral Gene Techniques vol. 6, Elsevier;Adolf (ed. 1995)
Methods in Molecular Genetics: Viral Gene Techniques vol. 7, Elsevier;およびHoban and Rott (eds. 1988)
Molec. Biol. of Bacterial Virus Systems (Current Topics in Microbiology and Immunology No. 136) Springer-Verlagを参照されたい。
【0159】
C. バイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法
バイオテクノロジーの一般的基礎、原理、および方法は、例えば、Alberts, et al. (2002)
Molecular Biology of the Cell (4th ed.) Garland;Lodish, et al. (1999)
Molecular Cell Biology (4th ed.) Freeman;Janeway, et al. (eds. 2001 )
Immunobiology (5th ed.) Garland,;Flint, et al. (eds. 1999)
Principles of Virology: Molecular Biology, Pathogenesis, and Control, Am. Soc. Microbiol.;Nelson, et al. (2000)
Lehninger Principles of Biochemistry (3d ed.) Worth;Freshney (2000)
Culture of Animal Cells: A Manual of Basic Technique (4th ed.) Wiley-Liss;Arias and Stewart (2002)
Molecular Principles of Animal Development, Oxford University Press;Griffiths, et al. (2000)
An Introduction to Genetic Analysis (7th ed.) Freeman,;Kierszenbaum (2001)
Histology and Cell Biology, Mosby;Weaver (2001) Molecular Biology (2d ed.) McGraw-Hill;Barker (1998)
At the Bench: A Laboratory Navigator CSH Laboratory;Branden and Tooze (1999)
Introduction to Protein Structure (2d ed.), Garland Publishing;Sambrook and Russell (2001)
Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3 vol., 3d ed.), CSH Lab. Press;Scopes (1994)
Protein Purification: Principles and Practice (3d ed.) Springer Verlag;Simpson, et al. (eds. 2009) Basic Methods in Protein Purification and Analysis: A Laboratory Manual, CSHL Press, NY, ISBN 978-087969868-3;Friedmann and Rossi (eds. 2007) Gene Transfer: Delivery and Expression of DNA and RNA, A Laboratory Manual, CSHL Press, NY, ISBN 978-087969764-8;Link and LaBaer (2009) Proteomics: A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manual, CSHL Press, NY, ISBN 978-087969793-8;およびSimpson (2003) Proteins and Proteomics: A Laboratory Manual, CSHL Press, NY, ISBN 978-087969554-5に記載されている。バイオインフォマティクスに向けられたその他の参考文献には、例えば、Mount (2004) Bio informatics: Sequence and Genome Analysis (2d ed.), CSHL Press, NY, ISBN 978-087969687-0;Pevsner (2009) Bioinformatics and Functional Genomics (2d ed.) Wiley-Blackwell, ISBN-10: 0470085851, ISBN-13: 978-0470085851;Lesk (2008) Introduction to Bioinformatics (3d ed.) Oxford Univ. Press, ISBN-10: 9780199208043, ISBN-13: 978-0199208043;Zvelebil and Baum (2007) Understanding Bioinformatics, Garland Science, ISBN-10: 0815340249, ISBN-13: 978-0815340249;Baxevanis and Ouellette (eds. 2004) Bioinformatics: A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins (3d ed.) Wiley-Interscience; ISBN-10: 0471478784, ISBN-13: 978-0471478782;Gu and Bourne (eds. 2009) Structural Bioinformatics (2d ed.),Wiley-Blackwell, ISBN-10: 0470181052, ISBN-13: 978-0470181058;Selzer, et al. (2008) Applied Bioinformatics: An Introduction, Springer, ISBN-10: 9783540727996, ISBN-13: 978-3540727996;Campbell and Heyer (2006) Discovering Genomics, Proteomics and Bioinformatics (2d ed.), Benjamin Cummings, ISBN-10: 9780805382198, ISBN-13: 978-0805382198;Jin Xiong (2006) Essential Bioinformatics, Cambridge Univ Press, ISBN-10: 0521600820, ISBN-13: 978-0521600828;Krane and Raymer (2002) Fundamental Concepts of Bioinformatics, Benjamin Cummings, ISBN-10: 9780805346336, ISBN-13: 978-0805346336;He and Petoukhov (2011) Mathematics of Bioinformatics: Theory, Methods and Applications (Wiley Series in Bioinformatics), Wiley-Interscience, ISBN-10: 9780470404430, ISBN-13: 978-0470404430;Alterovitz and Ramoni (2011) Knowledge-Based Bioinformatics: From analysis to interpretation, Wiley, ISBN-10: 9780470748312, ISBN-13: 978-0470748312;Gopakumar (2011) Bioinformatics: Sequence and Structural Analysis, Alpha Science Intl Ltd., ISBN-10: 184265490X, ISBN-13: 978-1842654903;Barnes (ed. 2007) Bioinformatics for Geneticists: A Bioinformatics Primer for the Analysis of Genetic Data (2d ed.) Wiley, ISBN-10: 9780470026199, ISBN-13: 978-0470026199;Neapolitan (2007) Probabilistic Methods for Bioinformatics, Kaufmann Publishers, ISBN-10: 0123704766, ISBN-13: 978-0123704764;Rangwala and Karypis (2010) Introduction to Protein Structure Prediction: Methods and Algorithms (Wiley Series in Bioinformatics), Wiley, ISBN-10: 0470470593, ISBN-13: 978-0470470596;Ussery, et al. (2010) Computing for Comparative Microbial Genomics: Bioinformatics for Microbiologists (Computational Biology), Springer, ISBN-10: 9781849967631, ISBN-13: 978-1849967631;およびKeith (ed. 2008) Bioinformatics: Volume I: Data, Sequence Analysis and Evolution (Methods in Molecular Biology), Humana Press, ISBN-10: 9781588297075, ISBN-13: 978-1588297075が含まれる。
【0160】
以下の参考文献は、融合タンパク質およびキメラタンパク質に関するさらなる指導を提供する:Hammarstrom, et al. (2001) Protein Science 11:313-321;Harrison (1999) InNovations 11:4-7;Banerjee and Padmanabhan WO/2010/125588。
【0161】
D. 突然変異誘発;部位特異的、ランダム、シャッフリング
本明細書に提供される構造および機能の説明に基づいて、相同体および機能的変種を作製することができる。構造相同性により、侵入機能を有するセグメントを見出すことができる。ファージ尾部遺伝子は、典型的には特定の遺伝子配置中に見出され、対応する配置中に見出される他の実体を、細胞壁分解機能について試験することができる。これらはまた、構造の変種をスクリーニングするための開始点としても役立つ場合があり、例えば、このような構造を突然変異誘発し、所望の特徴、例えばより広範な基質特異性を有するものをスクリーニングする。突然変異誘発の標準的方法を用いることができ、例えば、Johnson-Boaz, et al. (1994) Mol. Microbiol. 13:495-504;米国特許第6,506,602号、第6,518,065号、第6,521,453号、第6,579,678号を参照されたい。
【0162】
膜移行セグメントも同様に同定することができ、一般的なまたは特定の標的モチーフを、それらと特異的に相互作用する受容体ドメインに関してスクリーニングすることができる。標的は、様々な標的株上に見出される表面発現タンパク質、糖質、または脂質含有構造であってよい。突然変異誘発を用いて、結合選択性を広げるか、またはセグメントもしくは構築物全体の安定性を高めることができ、欠失戦略により、外来性セグメントを除去することができる。
【0163】
グラム陽性菌細胞壁の成分は、グラム陰性細胞壁の成分と、または他のマイコバクテリアもしくは胞子と共有され得る。必要に応じて、より複雑なグラム陰性細胞壁構造に侵入させるために、他のファージ由来活性を組み合わせることができる。具体的には、複数の触媒セグメントを用いて複数の活性を提供することができ、それらは単一の構築物内で、または別の治療物質、例えば抗生物質もしくは抗微生物剤と併用した場合に相乗効果を提供し得る。
【0164】
標的化部分は活性部分の局部濃度を上昇させ得るが、適切な長さのリンカーもまた、壁分解事象の数を局部的に増加させ得る。したがって、標的および細胞壁分解セグメントと適合性があるか、または適切な長さのリンカーを用いて、標的細菌の静止または死滅をもたらす細胞壁侵入活性を高めることができる。
【0165】
ファージは、細胞外で、しばしば生物学的に住みにくい条件下で生存するように選択された。したがって、その構造は特に丈夫かつ頑強で、通常であれば酵素または触媒実体を不活性化し得る環境条件に耐性である可能性が高い。住みにくい環境、例えば、温度、塩、極度の酸化または反応性、高圧等の極端な環境中に生息する細菌は、そのような状況を生き抜くのに特に適応したファージによって標的化される。これらのファージに由来するポリペプチドは、様々な精製過程、貯蔵、および薬理学的使用条件においてより安定である可能性が高い。
【0166】
E. スクリーニング
変異体または新規の候補ムラリティックセグメントを評価するためのスクリーニング法を考案することができる。ファージ粒子の精製調製物を、ファージ構造上のこのような遺伝子産物の存在に関してスクリーニングすることができる。
【0167】
ムラリティック活性スクリーニングは、標的細胞上の基質部位の親和性および数を決定するために、粗製細菌培養物、単離された細菌細胞壁成分、ペプチドグリカン調製物、合成基質、または精製試薬を使用し得る。標的株の外膜の完全性を評価するために、侵入または壁分解アッセイを組み入れることができ、これは菌叢阻害アッセイ、培養物の生存度試験、細胞壁調製物もしくは他の基質に対する活性、またはムラリティック作用の際の細胞壁の成分(例えば、糖、アミノ酸、ポリマー)の放出である。アミダーゼ活性は、可溶性N-アセチルヘキソースアミンの放出(例えば、改変モルガン・エルソン反応)によって測定することができ、またはエンドペプチダーゼ活性は、DNFBアッセイを用いた遊離アミノ基(ala-glyエンドペプチダーゼについてはL-アラニン、gly-glyエンドペプチダーゼについてはL-グリシン)のアッセイによって測定することができ、これらのアッセイは3つともすべて、Petit et al.(1966) Biochemistry 5:2764-76に基づいている。gly-glyエンドペプチダーゼ活性はまた、N-アセチル化ヘキサグリシン(アセチル-Gly6)からの遊離アミノ基の放出として測定することともできる。Kline, et al.(1994) Anal. Biochem. 217:329-331を参照されたい。
【0168】
リンカーを試験して、膜移行もしくは分解に及ぼす影響を比較するか、または活性断片の様々な向きの活性を比較することができる。細胞壁分解断片を用いて、標的のパネル(例えば、グラム陰性、グラム陽性、マイコバクテリア、および胞子)をスクリーニングして、どの断片がより広いまたはより狭い範囲の標的に作用するかを決定することができる。
【0169】
細胞壁分解活性を試験するための1つの方法は、穏やかな洗浄剤または変性剤でファージを処理して、ビリオンと結合しているタンパク質を遊離させることである。細菌細胞に対する壁分解またはムラリティック活性について、これらのタンパク質をさらに試験する。別の方法は、ファージ耐性宿主に対する細胞壁分解活性または外因性溶菌(LO)を決定することである。ファージの構造成分と関連した壁分解またはムラリティック活性を評価するための第3の方法は、ザイモグラムアッセイの実施であり、例えば、純粋なファージ調製物を、オートクレーブした宿主細胞を組み入れたSDS-ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動する。ゲル上のタンパク質はインサイチューで復元され、次いで細胞壁成分に作用して、メチレンブルー色素でゲルの残りが青色に染色された場合に、透明な「ムラリティック」ゾーンを生じる。例えば、Lepeuple, et al,(1998)
Appl. Environ. Microbiol. 64:4142-428を参照されたい。透明なゾーンを可視化し、各ゾーンからタンパク質バンドを溶出する。タンパク質は、例えばN末端配列決定または質量分析によって同定することができる。次いで、分解タンパク質のコード配列を単離することができる。
【0170】
XII. MTDおよび/またはムラリティックドメインをコードする核酸の単離
さらに、細胞壁分解ドメインまたは膜移行ドメインをコードする核酸を提供する。このようなポリヌクレオチドは、CHAPドメイン(特にC末端CHAPドメイン)を有するタンパク質および細胞壁分解活性を有する他のタンパク質を含む、本明細書に記載されるムラリティックタンパク質をコードする。
【0171】
細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸は、本発明の核酸態様に関連している。これらの核酸(例えば、cDNA、ゲノム、または部分配列(プローブ))は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)、リガーゼ連鎖反応法(LCR)、転写に基づく増幅系(TAS)、または自律的配列複製系(SSR)などのインビトロ法によってクローニングまたは増幅することができる。合成方法論の他に、多種多様なクローニングおよびインビトロ増幅の方法論が当業者に周知である。当業者を多くのクローニング実習に導くのに十分なこれらの技法および説明書の例は、Berger and Kimmel, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology 152 Academic Press, Inc.;Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd ed.) Vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Press;Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., Current Protocols (Greene Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., 1994 Supplement);Cashion et al.、US5017478;およびCarr、欧州特許第0246864号に見出される。
【0172】
細胞壁分解ポリペプチドをコードするDNAは、例えば制限酵素を用いた適切な配列のクローニングおよび制限を含む、上記の適切な方法によって調製することができる。細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸は、日常的なクローニング法によって単離することができる。例えばアクセッション番号YP_024486における細胞壁分解ポリペプチドの例示的なヌクレオチド配列を用いて、全核酸試料中で(例えば、サザンまたはノーザンブロットにおいて)、細胞壁分解タンパク質をコードする遺伝子;またはmRNAと特異的にハイブリダイズするプローブを設計することができる。細胞壁分解タンパク質をコードする標的核酸が同定されたならば、当業者に公知の標準的方法に従ってこれを単離することができる。さらに、単離された核酸を制限酵素で切断して、全長細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸、または例えば細胞壁分解ポリペプチドの触媒ドメインの少なくとも部分配列をコードする部分配列を含む、その部分配列を作製することができる。次に、細胞壁分解ポリペプチドまたはその部分配列をコードするこれらの制限酵素断片を連結して、例えば、細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸を生成することができる。
【0173】
同様の方法を用いて、適切な細胞壁結合断片または断片間のリンカーを作製することができる。
【0174】
適切なポリペプチドをコードする核酸またはその部分配列は、発現産物をアッセイすることによって特徴づけることができる。発現されたポリペプチドの物理的、化学的、または免疫学的特性の検出に基づいたアッセイ法を用いることができる。例えば、核酸によってコードされるポリペプチドが、例えば本明細書に記載されるように細菌細胞を分解または消化する能力により、細胞壁分解ポリペプチドを同定することができる。
【0175】
また、所望のポリペプチドをコードする核酸またはその部分配列は、化学合成することもできる。適切な方法には、Narang et al. (1979) Meth.Enzymol. 68: 90-99のリン酸トリエステル法;Brown et al. (1979) Meth. Enzymol. 68: 109-151のリン酸ジエステル法;Beaucage et al. (1981) Tetra. Lett., 22: 1859-1862のジエチルホスホラミダイト法;および米国特許第4,458,066号の固体支持体法が含まれる。化学合成は、一本鎖オリゴヌクレオチドを生成する。相補的配列とのハイブリダイゼーションによって、または鋳型として一本鎖を用いたDNAポリメラーゼによる重合によって、これを二本鎖DNAに変換することができる。当業者は、DNAの化学合成は約100塩基の配列に限定される場合が多いが、より短い配列のライゲーションによって、より長い配列が得られ得ることを認識する。
【0176】
所望のポリペプチドをコードする核酸またはその部分配列は、ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)などのDNA増幅法を用いてクローニングすることができる。したがって、例えば、1つの制限酵素部位(例えば、NdeI)を含むセンスプライマーおよび別の制限酵素部位(例えば、HindIII)を含むアンチセンスプライマーを用いて、核酸配列または部分配列をPCR増幅する。これにより、所望のポリペプチドまたは部分配列をコードし、かつ末端の制限酵素部位を有する核酸が生成される。次にこの核酸を、第2分子をコードし、かつ適切な対応する制限酵素部位を有する核酸を含むベクター中に容易に連結することができる。適切なPCRプライマーは、GenBankまたは他の情報源において提供される配列情報を用いて、当業者により決定され得る。また、部位特異的突然変異誘発により、適切な制限酵素部位を、細胞壁分解ポリペプチドまたはそのポリペプチド部分配列をコードする核酸に付加することもできる。細胞壁分解ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列または部分配列を含むプラスミドを、適切な制限エンドヌクレアーゼで切断し、次に標準的な方法に従って、増幅および/または発現用の適切なベクター中に連結する。当業者をインビトロ増幅法に導くのに十分な技法の例は、Berger、Sambrook、およびAusubel、ならびにMullis et al. (1987) 米国特許第4,683,202号;PCR Protocols A Guide to Methods and Applications (Innis et al., eds) Academic Press Inc. (1990);Arnheim & Levinson (October 1, 1990) C&EN 36-47;The Journal Of NIH Research (1991) 3: 81-94;Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 1173;Guatelli et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 1874;Lomell et al. (1989) J. Clin. Chem., 35: 1826;Landegren et al., (1988) Science 241: 1077-1080;Van Brunt (1990) Biotechnology 8: 291-294;Wu and Wallace (1989) Gene 4: 560;およびBarringer et al. (1990) Gene 89: 117に見出される。
【0177】
細胞壁分解ポリペプチドをコードするいくつかの核酸は、同定されたポリペプチドの配列に基づいたPCRプライマーを用いて増幅することができる。
【0178】
例えば特定の核酸から発現される組換え細胞壁分解ポリペプチドの、他の物理的特性を公知の所望のポリペプチドの特性と比較して、例えば、細菌特異性、結合特異性、および/または触媒活性の決定因子である、細胞壁分解タンパク質の適切な配列またはドメインを同定する別の方法を提供することができる。あるいは、細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸または組換え細胞壁分解ポリペプチド遺伝子を変異させることができ、未変異、天然、または対照の細胞壁分解ポリペプチドによって通常は増強される細菌「溶解」の変動を検出することによって、細胞壁分解ポリペプチドとしてのその役割、または特定の配列もしくはドメインの役割を確立することができる。当業者は、本発明の細胞壁分解ポリペプチドの変異または改変が、ポリペプチドをコードする核酸を操作するための分子生物学技法、例えばPCRによって促進され得ることを認識するであろう。その他の突然変異誘発技法または遺伝子シャッフリング技法を、壁分解活性、壁結合特性、またはキメラ構築物と適合性のあるリンカー特徴を含む、本明細書に記載される機能的断片に適用することができる。
【0179】
新たに同定された細胞壁分解ポリペプチドの機能的ドメインは、ポリペプチドを変異させるかまたは改変するための標準的方法を使用し、本明細書に記載されるようにアクセプター基質活性および/または触媒活性などの活性についてそれらを試験することによって、同定することができる。様々な細胞壁分解タンパク質の機能的ドメインの配列を用いて、1つまたは複数の細胞壁分解ポリペプチドの機能的ドメインをコードするか、またはそれらを組み合わせる核酸を構築することができる。次に、これらの複数活性ポリペプチド融合物を、所望の静菌活性または溶菌活性について試験することができる。細胞壁分解ポリペプチドの供給源の具体例には、機能的ファージゲノムの不完全な残遺物、またはファージ様遺伝子セグメントに由来する粒子を含むピオシン様構造、例えば細菌のDNA中に残存する欠失もしくは変異した遺伝子残遺物を含む、プロファージ配列が含まれる。
【0180】
細胞壁分解ポリペプチドをコードする核酸は、例えば相互の配列同一性の量を決定するための、細胞壁分解ポリペプチドの公知の核酸またはアミノ酸配列とのアライメントおよび比較によって同定することができる。この情報を用いて、関心対象のポリペプチド間の配列同一性の量に基づいて、細胞壁分解ポリペプチド活性、例えば標的細菌特異性もしくは結合特異性および/または分解活性を付与するかまたは調節するポリペプチドドメインを同定および選択することができる。例えば、関心対象の細胞壁分解ポリペプチドとの配列同一性を有し、かつ公知の活性と関連するドメインを用いて、そのドメインおよび他のドメインを含み、かつそのドメインと関連した活性(例えば、細菌特異性もしくは結合特異性および/または壁分解活性)を有するポリペプチドを構築することができる。同様の戦略を適用して、細胞壁構造、ペプチドグリカン認識タンパク質(PGRP)、ファージ尾部「ムラリティック」ポリペプチド、またはドメイン間で間隔を取るためのリンカーに結合する細菌SH3ドメインを単離することができる。
【0181】
XIII. 宿主細胞における所望のポリペプチドの発現
本明細書に記載されるタンパク質は、大腸菌、他の細菌宿主、および酵母を含む種々の宿主細胞において発現させることができる。宿主細胞は、例えば、酵母細胞、細菌細胞、または糸状菌細胞などの微生物であってよい。適切な宿主細胞の例には、数あるなかでも、例えば、アゾトバクター属(Azotobacter)種(例えば、A. ビネランジイ(vinelandii))、シュードモナス属種、リゾビウム属(Rhizobium)種、エルウィニア属(Erwinia)種、エシェリキア属種(例えば、大腸菌)、バチルス属、シュードモナス属、プロテウス属、サルモネラ属、セラチア属、赤痢菌属、根粒菌属(Rhizobia)、ビトレオシラ属(Vitreoscilla)、パラコッカス属(Paracoccus)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、およびクレブシエラ属種が含まれる。これらの細胞は、サッカロマイセス属(Saccharomyces)(例えば、S. セレビシエ(cerevisiae))、カンジダ属(Candida)(例えば、トルラ酵母(C. utilis)、C. パラプシローシス(parapsilosis)、C. クルセイ(krusei)、C. バーサチリス(versatilis)、C. リポリティカ(lipolytica)、C. ゼイラノイデス(zeylanoides)、C. ギリエルモンジイ(guilliermondii)、C. アルビカンス(albicans)、およびC. フミコラ(humicola))、ピキア属(例えば、P. ファリノサ(farinosa)およびP. オーメリ(ohmeri))、トルロプシス属(Torulopsis)(例えば、T. カンジダ(candida)、T. スファエリカ(sphaerica)、T. キシリナス(xylinus)、T. ファマタ(famata)、およびT. バーサチリス(versatilis))、デバリオマイセス属(Debaryomyces)(例えば、D. サブグロボサス(subglobosus)、D. カンタレリイ(cantarellii)、D. グロボサス(globosus)、D. ハンセニイ(hansenii)、およびD. ジャポニカス(japonicus))、ジゴサッカロマイセス属(Zygosaccharomyces)(例えば、Z. ロウキシイ(rouxii)およびZ. バイリイ(bailii))、クルイベロマイセス属(Kluyveromyces)(例えば、K. マルキシアヌス(marxianus))、ハンゼヌラ属(Hansenula)(例えば、H. アノマラ(anomala)およびH. ジャジニイ(jadinii))、ならびにブレタノマイセス属(Brettanomyces)(例えば、B. ランビカス(lambicus)およびB. アノマラス(anomalus))を含む、いくつかの属のいずれかのものであってよい。有用な細菌の例には、エシェリキア属、エンテロバクター属、アゾトバクター属、エルウィニア属、クレブシエラ属、バチルス属、シュードモナス属、プロテウス属、およびサルモネラ属が含まれるが、これらに限定されない。産生には、真核細胞、例えばCHO細胞を用いることもできる。
【0182】
宿主細胞において発現されたならば、細胞壁分解ポリペプチドを用いて、標的細菌の増殖を妨げるか、または標的細菌を死滅させることができる。いくつかの態様において、P225ポリペプチド(SEQ ID NO:9)は、グラム陰性菌の増殖を減少させるために用いられる。いくつかの態様において、このタンパク質は、例えば緑膿菌といったシュードモナス属細菌の増殖を減少させるために用いられる。ペプチダーゼ触媒活性およびアミダーゼ触媒活性(gly-gly結合およびgly-ala結合の両方を切断する)の両方を含む複数の壁分解活性を含む融合タンパク質を含む、このような断片を組み合わせた融合構築物を作製することができる。
【0183】
典型的には、細胞壁分解ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、所望の宿主細胞中で機能的であるプロモーターの制御下に配置される。極めて多種多様なプロモーターが周知であり、特定の適用に応じて、本発明の発現ベクター中で用いることができる。通常、選択されるプロモーターは、その内部でプロモーターが活性を有する細胞に依存する。リボソーム結合部位および転写終結部位などの、他の発現制御配列を含めることもできる。これらの制御配列のうちの1つまたは複数を含む構築物は、「発現カセット」と称される。したがって、本発明は、例えば細胞壁分解断片と外膜結合断片を組み合わせた融合タンパク質をコードする核酸が、所望の宿主細胞において発現するよう組み入れられた発現カセットを提供する。
【0184】
特定の宿主細胞において使用するのに適した発現制御配列は、その細胞で発現される遺伝子をクローニングすることによって得ることができる。一般に使用される原核生物制御配列は、本明細書において、リボソーム結合部位配列と共に、任意でオペレーターと共に、転写開始のためのプロモーターを含むと定義され、これには、β-ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトース(lac)プロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., Nucleic Acids Res. (1980) 8: 4057)、tacプロモーター(DeBoer, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. (1983) 80:21-25);ならびにλ由来P
LプロモーターおよびN遺伝子リボソーム結合部位(Shimatake et al. (1981) Nature 292: 128)のような一般に用いられるプロモーターが含まれる。様々な実施例においてバクテリオファージT7プロモーターが用いられるが、当業者は、特定のプロモーター系が本発明にとって重要でないことを認識するであろう。
【0185】
大腸菌以外の原核細胞において細胞壁分解ポリペプチドを発現させる場合、特定の原核生物産生種において機能するプロモーターが用いられる。このようなプロモーターは、その種からクローニングされた遺伝子から得ることができ、または異種プロモーターを用いることもできる。例えば、ハイブリッドtrp-lacプロモーターは、大腸菌に加えてバチルス属においても機能する。
【0186】
タンパク質の過剰発現は、封入体形成をもたらし得る。プロモーターが強いほど、細胞当たりのタンパク質収量が高くなり、場合によっては、中間の強さのプロモーターが、強力なプロモーターと比較してより高い収量の可溶性タンパク質をもたらす。いくつかの例には、T7プロモーター、アラビノースプロモーター、T5、およびハイブリッドプロモーター等が含まれる。さらに、いくつかの毒性タンパク質は、細菌細胞における漏出性発現のために、発現させるのが難しいことが見出された。そのような漏出性発現は、アラビノースプロモーターのような強力に調節を受けるプロモーターを用いることによって回避され得る。例えば、Correa and Oppezzo (2011) Biotechnol. J. 6:715-730、およびAlakomi (2007) 「Weakening of the Gram-negative bacterial outer membrane: A tool for increasing microbiological safety」 thesis, Univ Helsinki, June 2007を参照されたい。
【0187】
リボソーム結合部位(RBS)は、本発明の発現カセット中に都合よく含まれる。大腸菌における例示的なRBSは、開始コドンの3〜11ヌクレオチド上流に位置する、3〜9ヌクレオチド長のヌクレオチド配列からなる(Shine and Dalgarno (1975) Nature 254:34;Steitz (1979) In Biological regulation and development: Gene expression (ed. R.F. Goldberger), vol. 1, p. 349, Plenum Publishing, NY)。
【0188】
酵母においてタンパク質を発現させる場合、簡便なプロモーターには、GAL1-10(Johnson and Davies (1984) Mol. Cell. Biol. 4:1440-1448)、ADH2(Russell et al. (1983) J. Biol. Chem. 258:2674-2682)、PHO5(EMBO J. (1982) 6:675-680)、およびMFα(Herskowitz and Oshima (1982) in The Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces (eds. Strathern, Jones, and Broach) Cold Spring Harbor Lab., Cold Spring Harbor, N.Y., pp. 181-209)が含まれる。酵母において使用するための別の適切なプロモーターは、Cousens et al. (1987) Gene 61:265-275に記載されているADH2/GAPDHハイブリッドプロモーターである。例えば真菌アスペルギルス属(Aspergillus)の株のような糸状菌の場合(McKnight et al.、米国特許第4,935,349号)、有用なプロモーターの例には、ADH3プロモーター(McKnight et al., EMBO J. 4: 2093 2099 (1985))およびtpiAプロモーターなど、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)解糖系遺伝子に由来するものが含まれる。適切なターミネーターの例は、ADH3ターミネーターである(McKnight et al.)。
【0189】
構成的プロモーターまたは調節的プロモーターのいずれかを、本発明において用いることができる。融合タンパク質の発現が誘導される前に、宿主細胞が高密度まで増殖することができるため、調節的プロモーターが有利であり得る。異種ポリペプチドの高レベル発現は、いくつかの状況において細胞増殖を遅らせる。誘導性プロモーターとは、例えば、温度、pH、嫌気的または好気的条件、光、転写因子、および化学物質などの環境因子または発育因子によって発現レベルが変更可能である、遺伝子の発現を指示するプロモーターである。このようなプロモーターは本明細書において「誘導性」プロモーターと称され、所望のポリペプチドの発現時期を制御することを可能にする。大腸菌および他の細菌宿主細胞に関して、誘導性プロモーターは当業者に公知である。これらには、例えば、lacプロモーター、バクテリオファージλP
Lプロモーター、ハイブリッドtrp-lacプロモーター(Amann et al. (1983) Gene 25: 167;de Boer et al. (1983) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 80: 21)、およびバクテリオファージT7プロモーター(Studier et al. (1986) J. Mol. Biol.;Tabor et al. (1985) Proc. Nat'l. Acad. Sci. USA 82: 1074-8)が含まれる。これらのプロモーターおよびそれらの使用は、Sambrook, et al.、前記において考察されている。
【0190】
ポリヌクレオチド構築物の構築は、一般に、細菌中で複製することができるベクターの使用を必要とする。細菌からプラスミドを精製するための極めて多数のキットが市販されている(例えば、いずれもPharmacia Biotech社製のEasyPrepJ、FlexiPrepJ;Stratagene社製のStrataCleanJ;およびQIAexpress発現系、Qiagenを参照されたい)。次に、単離および精製されたプラスミドをさらに操作して他のプラスミドを作製し、細胞をトランスフェクトするために使用することができる。ストレプトマイセス属(Streptomyces)またはバチルス属におけるクローニングもまた可能である。
【0191】
選択マーカーは、本発明のポリヌクレオチドを発現させるために用いられる発現ベクターに組み入れられる場合が多い。これらの遺伝子は、選択培地中で増殖する形質転換宿主細胞の生存または増殖に必要な、ポリペプチドなどの遺伝子産物をコードし得る。いくつかの選択マーカーが当業者に公知であり、例えばSambrook, et al.、前記に記載されている。
【0192】
上記の成分のうちの1つまたは複数を含む適切なベクターの構築では、上記で引用した参考文献に記載されているような標準的なライゲーション技法を使用する。必要とされるプラスミドを作製するために望ましい形態で、単離されたプラスミドまたはDNA断片を切断し、調整し、再度連結する。構築されたプラスミド中の正確な配列を確認するために、制限エンドヌクレアーゼ消化、および/または公知の方法による配列決定などの標準的技法によって、プラスミドを解析することができる。これらの目標を達成するための分子クローニング技法は、当技術分野で公知である。組換え核酸の構築に適した多種多様なクローニング法およびインビトロ増幅法が、当業者に周知である。
【0193】
本発明の発現ベクターを構築するための開始材料として使用するのに適した種々の一般的ベクターは、当技術分野において周知である。細菌中でクローニングする場合、一般的なベクターには、pBLUESCRIPT(商標)などのpBR322由来のベクター、およびλファージ由来のベクターが含まれる。酵母の場合、ベクターには、酵母組込みプラスミド(例えば、YIp5)および酵母複製プラスミド(YRp系プラスミド)ならびにpGPD-2が含まれる。哺乳動物細胞における発現は、pSV2、pBC12BI、およびp91023を含む、種々の一般に入手可能なプラスミド、ならびに溶菌ウイルスベクター(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、およびバキュロウイルス)、エピソームウイルスベクター(例えば、ウシパピローマウイルス)、およびレトロウイルスベクター(例えば、マウスレトロウイルス)を用いて達成することができる。
【0194】
当業者に公知である標準的な方法を用いて、発現ベクターを選択された宿主細胞に導入することができる。例えば、発現ベクターは、塩化カルシウム形質転換によって、大腸菌を含む原核細胞に導入することができ、およびリン酸カルシウム処理またはエレクトロポレーションによって、真核細胞に導入することができる。
【0195】
翻訳共役を用いて、発現を増強することができる。この戦略は、プロモーターの下流に配置された、その翻訳系に固有の高発現遺伝子に由来する上流の短いオープンリーディングフレーム、および数個のアミノ酸コドンの後に終止コドンが続くリボソーム結合部位を使用する。終止コドンの直前に第2のリボソーム結合部位があり、終止コドンの後に翻訳開始のための開始コドンがある。この系により、RNA中の二次構造が解消されて、効率的な翻訳開始が可能になる。Squires, et al. (1988), J. Biol. Chem. 26: 16297-16302を参照されたい。
【0196】
本発明の様々なポリペプチドは、細胞内で発現させることができ、または細胞から分泌させることもできる。細胞内発現は、多くの場合に高い収率をもたらす。必要であれば、再折りたたみ手順を行うことにより、可溶性の活性融合ポリペプチドの量を増加させることができる(例えば、Sambrook et al.、前記;Marston et al. (1984) Bio/Technology 2:800;Schoner et al. (1985) Bio/Technology 3:151を参照されたい)。ポリペプチドがペリプラズム中または細胞外媒体中のいずれかに分泌される態様において、DNA配列は、切断可能なシグナルペプチド配列に連結される場合が多い。シグナル配列は、細胞膜を通した融合ポリペプチドの移動を指示する。プロモーター-シグナル配列単位を含む、大腸菌で使用するのに適したベクターの例はpTA1529であり、これは大腸菌phoAプロモーターおよびシグナル配列を有する(例えば、Sambrook et al.、前記;Oka et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:7212;Talmadge et al. (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:3988;Takahara et al. (1985) J. Biol. Chem. 260:2670を参照されたい)。別の態様において、融合ポリペプチドは、例えば精製、分泌、または安定性を促進するために、プロテインAまたはウシ血清アルブミン(BSA)の部分配列に融合される。例えば触媒断片の基質を用いた親和性方法が、適切である場合がある。
【0197】
本発明の細胞壁分解ポリペプチドはまた、他のポリペプチドセグメント、例えばバイオフィルムデポリメラーゼセグメントにさらに連結することもできる。通常の原核生物制御配列は転写および翻訳を指示するため、このアプローチは多くの場合に高収率をもたらす。大腸菌では、異種タンパク質を発現させるために、lacZ融合物が用いられる場合が多い。pUR、pEX、およびpMR100系など、適切なベクターが容易に入手可能である。ある種の適用では、精製後に融合ポリペプチドから外来性配列を切断することが望ましい場合がある。これは、臭化シアン、プロテアーゼ、または第X
a因子による切断を含む、当技術分野で公知のいくつかの方法のいずれかによって達成することができる(例えば、Sambrook et al.、前記;Itakura et al. (1977) Science 198:1056;Goeddel et al. (1979) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:106;Nagai et al. (1984) Nature 309:810;Sung et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:561を参照されたい)。切断部位は、所望の切断点において、融合ポリペプチドの遺伝子中に設計することができる。
【0198】
単一の発現ベクター中に複数の転写カセットを配置することにより、またはクローニング戦略で使用される各発現ベクターに対して異なる選択マーカーを使用することにより、2つ以上の組換えポリペプチドを単一の宿主細胞中で発現させることができる。
【0199】
N末端の完全性を維持する、大腸菌由来の組換えタンパク質を得るのに適した系は、Miller et al. (1989) Biotechnology 7:698-704によって記載されている。この系では、関心対象の遺伝子は、ペプチダーゼ切断部位を含む酵母ユビキチン遺伝子の最初の76残基に対するC末端融合物として生成される。2つの部分の連結部で切断されると、無傷の真のN末端残基を有するタンパク質が生成される。
【0200】
XIV. 所望のポリペプチドの精製
本明細書に記載される発現された細胞内ポリペプチドまたは分泌ポリペプチドを含む粗製細胞抽出物を、本発明の方法において用いることができる。
【0201】
ポリペプチドはまた、硫酸アンモニウム沈殿法、アフイニティーカラム、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動などを含む、当技術分野の標準的手順に従って精製することもできる(一般に、R. Scopes (1982) Protein Purification, Springer-Verlag, N.Y., Deutscher (1990) Methods in Enzymology Vol. 182: Guide to Protein Purification., Academic Press, Inc. N.Y.を参照されたい)。分解セグメントは、少なくとも、安定性に関して選択されたファージタンパク質に由来するため、精製は混入物質の変性を含み得る。実質的に純粋な組成物は、典型的に約70、75、80、85、90、92、95、98〜99%、またはそれ以上均一である。精製されたポリペプチドは、例えば抗体産生のための免疫原として使用することもでき、この抗体は免疫選択精製法において用いることができる。
【0202】
本発明のポリペプチドの精製を容易にするために、それらをコードする核酸はまた、親和性結合試薬が利用可能なエピトープまたは「タグ」、例えば精製タグのコード配列を含み得る。適切なエピトープの例には、mycおよびV-5レポーター遺伝子が含まれる;これらのエピトープを有する融合ポリペプチドの組換え体産生に有用な発現ベクターが市販されている(例えば、Invitrogen(Carlsbad CA) ベクターpcDNA3.1/Myc-HisおよびpcDNA3.1/V5-Hisが、哺乳動物細胞における発現に適している)。本発明のポリペプチドにタグを付着させるのに適したさらなる発現ベクターおよび対応する検出系が当業者に公知であり、いくつかが市販されている(例えば、FLAG、Kodak、Rochester NY)。適切なタグの別の例はポリヒスチジン配列であり、これは金属キレート親和性リガンドに結合し得る。典型的には、6個の隣接したヒスチジン
(SEQ ID NO:24)が用いられるが、6個よりも多いまたは少ないヒスチジンを用いることもできる。ポリヒスチジンタグに対する結合部分として機能し得る適切な金属キレート親和性リガンドには、ニトリロ三酢酸(NTA)(Hochuli (1990) Genetic Engineering: Principles and Methods, J.K. Setlow, Ed., Plenum Press, NY;Qiagen(Santa Clarita, CA)から市販されている)が含まれる。精製タグには、マルトース結合ドメインおよびデンプン結合ドメインもまた含まれる。マルトース結合ドメインタンパク質の精製は、当業者に公知である。
【0203】
タグとして使用するのに適した他のハプテンが当業者に公知であり、例えば、Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (6th Ed., Molecular Probes, Inc., Eugene OR)に記載されている。例えば、ジニトロフェノール(DNP)、ジゴキシゲニン、バルビツール酸(例えば、米国特許第5,414,085を参照されたい)、およびいくつかの種類のフルオロフォアがハプテンとして有用であり、これらの化合物の誘導体も有用である。ハプテンおよび他の部分をタンパク質および他の分子に連結するためのキットが市販されている。例えば、ハプテンがチオールを含む場合、SMCCなどのヘテロ二官能性リンカーを用いて、捕捉試薬上に存在するリジン残基にタグを付着させることができる。
【0204】
当業者は、ポリペプチドの触媒ドメインまたは機能的ドメインに対して、それらの生物活性を減少させることなく、ある種の改変を行うことができることを認識するであろう。いくつかの改変は、触媒ドメインのクローニング、発現、または融合ポリペプチドへの組込みを容易にするために行うことができる。このような改変は当業者に周知であり、これには、例えば、触媒ドメインをコードするポリヌクレオチドのいずれかの末端へのコドン付加、例えば開始部位を提供するためにアミノ末端に付加されるメチオニン、または都合よく配置された制限酵素部位もしくは終止コドンもしくは精製配列を作製するためにいずれかの末端に配置される付加的なアミノ酸(例えば、ポリHis)が含まれる。
【0205】
以下の本発明の考察は、例証および説明を目的とするものであり、本発明を、本明細書に開示されている1つまたは複数の形態に限定することを意図するものではない。本発明の説明は、1つまたは複数の態様ならびに特定の変形物および修正物の説明を含めたが、例えば、本開示を理解した後に当業者の技術および知識の範囲内となり得るような他の変形物および修正物も本発明の範囲に含まれる。本明細書で引用される出版物、特許、特許出願、Genbank番号、およびウェブサイトはすべて、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【実施例】
【0206】
XV. 実施例
実施例1. GP36酵素試験構築物
A. ムラリティックドメイン構築物
本発明者らは、シュードモナスファージP134からORF36配列を単離した(SEQ ID NO: 1)。翻訳産物は、SEQ ID NO:2として示される。配列の解析に基づき、ムレイン分解触媒ドメイン断片は、SEQ ID NO:2のアミノ酸737〜875にまたがると同定された。核酸構築物がアミノ酸683〜898をコードするように、アミノ酸683にプロモーターおよび隣接する開始コドンが連結した発現ベクターを構築した。SEQ ID NO: 5を参照されたく、これはSEQ ID NO: 6として翻訳される。このセグメントをGP36 CD断片と命名した。
【0207】
6 His
(SEQ ID NO:24)精製タグ(ニッケルカラムでの精製用)を含む13アミノ酸の伸長を提供するために、配列を付加した(それによってGP36の末端から終止コドンが除去される)。この構築物は、SEQ ID NO: 7を有するポリペプチドを生じる。
【0208】
発現構築物を大腸菌に導入し、タンパク質の産生を誘導し、細胞を回収した。細胞ペレットを処理してタンパク質を単離し、標準的な技法を使用してNi-NTA樹脂上でのアフィニティークロマトグラフィーを用いて精製した。SDS-PAGEにより、このタンパク質は95%を超えて純粋であると解析された。
【0209】
B. 細菌死滅アッセイ
上記のように、グラム陰性菌の細菌外膜は、細胞の外部環境からのペプチドグリカンへの接近を妨げるが、外膜は、膜の完全性を損なう薬剤の影響を受けやすい。緑膿菌細胞をクロロホルム(外膜を損なう)で処理し、次に精製GP36 CD断片で処理した。GP36 CD断片は、ODの迅速な濃度依存的減少(細菌の溶解)をもたらした。さらなる試験および対照を実施して、死滅の時間経過およびGP36 CDの量の力価測定を用いて活性を確認した。細菌溶解はクロロホルム処理に依存し、ムラリティックドメインが、ひとたびペプチドグリカン層に到達した場合にグラム陰性標的を死滅させ得ることが確認された。
【0210】
C. 細菌標的
上記のように、大部分のグラム陰性菌のペプチドグリカン層は比較的薄い。GP36 CD構築物を、グラム陰性標的細菌の臨床的に関連した様々な種のペプチドグリカンに対して試験した。同様の実験を、
アシネトバクター・バウマニ、
肺炎桿菌、
大腸菌、
ネズミチフス菌、
家禽チフス菌(Salmonella gallinarum)、
腸炎菌、および
サルモネラ・ダブリン(Salmonella dublin)に対して実施した。GP36 CDは同様に、試験したすべての種のクロロホルム処理細菌の迅速な濃度依存的溶解をもたらした。
【0211】
実施例2. 膜移行ドメイン
A. ムラリティックドメインおよび膜移行ドメインを含むキメラ
通常のグラム陰性細菌標的のペプチドグリカン層に接近させるため、細菌外膜障壁に侵入させるための生理的に適合性のある手段を考慮した。具体的には、侵入活性は、真核細胞に対して顕著な負の影響を及ぼすことなく、細菌外膜に特異的でなければならない。
【0212】
GP36 CD酵素セグメントを、ヒト細菌透過性増加(BPI)タンパク質由来の膜移行ドメインに連結した。ヒトBPI核酸配列はNM_001725.2(SEQ ID NO: 3を参照されたい)であり、これはタンパク質配列BAG37729(SEQ ID NO: 4を参照されたい)をコードする。ポリ-His(精製用)を含む22アミノ酸N末端伸長、それに続くGP36の残基683〜898、3つのアルギニン残基によりこれに連結されたBPI TMDセグメント(SEQ ID NO: 4)のアミノ酸16〜39、それに続く付加的な3つのC末端アルギニン残基を有する構築物を設計した。TMDとは、膜透過活性を有するセグメント、例えば膜貫通ドメインの名称である。このポリヌクレオチド構築物はSEQ ID NO: 8に指定され、これはP225と命名されたポリペプチド(SEQ ID NO: 9)をコードする。
【0213】
上記のように、発現構築物を大腸菌に導入し、タンパク質の産生を誘導し、細胞を回収した。細胞ペレットを処理してタンパク質を単離したが、これは主に封入体中に位置した。タンパク質を可溶化し、Ni-NTAカラムクロマトグラフィーを用いて産物を精製した。SDS-PAGEにより、このタンパク質は95%を超えて純粋であった。
【0214】
B. 細菌死滅アッセイ
緑膿菌細胞を精製P225に曝露したところ、付加的な透過剤(例えば、クロロホルム)の非存在下で、迅速な濃度依存的なOD減少(すなわち、細菌溶解)が生じた。さらなる試験および対照を実施して、1時間の時点でタンパク質の量を力価測定して、活性を確認した。異なるCFU低下アッセイを用いて、細菌死滅が観察された。生存グラム陰性菌の死滅により、BPI TMDが、細菌外膜の内側にあるペプチドグリカン層へのGP36酵素ドメインの接近をうまく提供し得ることが実証される。
【0215】
C. 他の細菌標的
P225構築物を、グラム陰性標的細菌の臨床的に関連した様々な種のペプチドグリカンに対する活性について試験した。同様の実験を、
緑膿菌のさらなる株、
大腸菌、
クレブシエラ属(多くの抗生物質に対して高度に耐性である)、および
アシネトバクター・バウマニに対して実施したが、そのすべてが効率的に死滅した。
【0216】
実施例3:P266構築物および生物活性
SEQ ID NO:10は、P266と命名されたP225の変種を示す(SEQ ID NO: 11によってコードされる)。ポリペプチドがGlyで始まるように、N末端Metは除去され得る。P225と比較して、P226はより短い6個のN側近位のHis
(SEQ ID NO:24)タグを有し、ヒスチジン後のセグメントを欠いている。これは、セグメント:6×Hisタグ‐GP36 CD‐RRR‐BPI TMD‐RRRを有する構築物を提供した。GP36 CDはおよそGly(9)からGlu(224)に及び、最初のRRRはR(225)からR(227)に相当し、BPI TMDはAla(228)からR(251)に相当し、最後のRRRは残基252〜254に相当する。推定分子量は約27.6 kDaであり、pIは約9.48である。これはN末端Metを含むが、このMetは除去され得る。
【0217】
P225構築物と同様に、P266も、IPTGによる誘導後に大腸菌BL21(DE3)細胞で発現された場合に不溶性となった。誘導細胞のペレットを溶解緩衝液(50 mM Trisベース、0.1 M NaCl、0.1% TritonX100)中に再懸濁し、13 mmプローブを用いて10分間超音波処理した。超音波処理した細胞ペレットを16,000 rpmで10分間遠心分離し、封入体ペレットを回収した。ペレットを緩衝液A(6 M GuHCl、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 8.0)中に再懸濁することによって封入体ペレットを可溶化し、室温で30分間にわたり振動を続けた。IB:緩衝液容量の比率は、40 mlの緩衝液Aに対して1グラム湿重量のIBであった。可溶化されたタンパク質を16,000 rpmで10分間遠心分離し、透明な上清を回収した。Ni-NTAマトリックスを、平衡化に5カラム容量を用いて、緩衝液B(8 M尿素、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 8.0)で平衡化した。可溶化された透明な上清を平衡化Ni-NTAカラム上に負荷し、重力モードで通過させ、通過画分を回収した。カラムを10カラム容量の緩衝液Bで洗浄して、不純物および非結合タンパク質を除去した。次に、カラムを10〜15カラム容量の緩衝液C(8 M尿素、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 6.5)で洗浄した。タンパク質の溶出を、緩衝液E(8 M尿素、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 4.5)で行った。画分を回収し、SDS PAGEによって解析した。SDS PAGEゲルで観察して、関心対象のタンパク質を豊富に含む画分をプールし、段階様式で透析した。
【0218】
透析は、1段階目は20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0中の4 M尿素に対して4℃で5時間;2段階目は20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0中の2 M尿素に対して4℃で5時間;ならびに3段階目は5%スクロース、5%ソルビトール、および0.2% Tween 80を含む20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0に対して4℃で5時間という3段階で、プールした溶出液容量の約100倍の緩衝液容量に対して行った(例えば、緩衝液1リットルに対して溶出液10 mlを透析する)。スクロース、ソルビトール、およびTween80成分は、凝集および沈殿からタンパク質を安定化するのに役立つ。透析後に得られた溶出液を遠心分離して、いかなる沈殿物も分離した。清澄化された上清を回収し、活性アッセイのためにタンパク質含量を推定した。最終産物は、クーマシーブルー染色および銀染色を用いたSDS PAGEにより、約85〜95%均一であった。
【0219】
精製されたタンパク質を、CFU低下アッセイを用いて細菌死滅についてアッセイし、典型的にはタンパク質産物による16時間の処理が終了した時点の残存OD600について同時にモニターした。対数期PA01緑膿菌標的細胞を、約1E7個細胞に相当する1.0の吸光度にて、適切な緩衝液中に再懸濁した。タンパク質を酢酸緩衝液またはグリシン緩衝液のいずれかにおいて50μgで試験した。アッセイは、20 mM酢酸ナトリウム(pH 6.0)または50 mMグリシン-NaOH(pH 7.0)のいずれかを用いて、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)、5%スクロース、5%ソルビトール、および0.2% Tween80中で、200 rpmで撹拌しながら37℃で2時間行った。
【0220】
酢酸ナトリウム緩衝液中でのCFU低下アッセイは、上記タンパク質による処理後に約5対数の低下をもたらし、グリシン緩衝液中では少なくとも7対数の低下をもたらした。残存OD600によると、酢酸緩衝液は対照と比較して約80%の減少をもたらし、グリシン緩衝液は対照と比較して約95%の残存減少をもたらした。
【0221】
グリシン緩衝液(pH 7.0)中でのCFU低下アッセイを、インキュベーション中にスクロース、ソルビトール、およびtween80安定剤を含めずに評価した。安定剤なしでのCFU低下は、アッセイ中に安定剤を含めた場合と同じであり、少なくとも7対数の低下であった。多くの場合、他の安定剤または添加剤が有用または重要であり得る。これらには、ポリオール、例えばソルビトールおよび関連化合物;例えば0〜10%の範囲のグリセロール;例えば0〜5%の範囲のスクロースなどの糖;例えば0.1%〜0.5%の範囲の、Triton X100、Brij 35、NP-40、Tween 20、オクチルβグリコシド、サルコシル、Tween80などの洗浄剤または界面活性剤、好ましくはtween80;および例えば50μM〜100μMの範囲の、EGTA、EDTAなどの金属キレート剤、好ましくはEDTAのような物質が含まれ得る。
【0222】
P266の生物活性を、PA01標的株に対して、タンパク質濃度にわたって力価測定した。CFU低下および残存OD600はいずれも、タンパク質が5、10、25、および50μgタンパク質と増加するにつれて、2時間のインキュベーションで進行した。50μg P266を用いて37℃で2時間インキュベートするという、CFU低下および残存OD600の両方により試験した条件下において、処理は、アッセイ中に1E6個および1E7個の細胞が存在する場合に実質的にすべての細胞を死滅させることができたが、アッセイ中に1E8個またはそれ以上の細胞が存在する場合には、はるかに減少した死滅を示した。1〜4時間の範囲にわたるインキュベーション時間は、PA01死滅アッセイに対して劇的な影響を及ぼさないようであった。
【0223】
様々な温度でP266の安定性を試験したところ、このタンパク質は、37℃、42℃、および65℃への1時間の曝露後に死滅活性を維持すると考えられた。この産物は、65℃で1時間までは比較的熱安定性であると考えられる。
【0224】
標的死滅効率を試験したところ、P266は、CFU低下アッセイおよびOD600低下アッセイの両方により、緑膿菌、NDM1プラスミド保有肺炎桿菌、NDM1プラスミド保有大腸菌、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマニ、ネズミチフス菌、サルモネラ・インファンティス、および大腸菌分離株に対して実質的な死滅活性を有した。P266は、同一の条件および濃度を用いて、赤痢菌属、プロテウス・ミラビリス、およびバークホルデリア・タイランデンシス分離株に対して、より低い死滅活性を有した。同様に、グラム陽性菌株に対するP266死滅活性は緑膿菌の場合よりも低かったが、より長いインキュベーションまたはより高濃度にすることで、活性が増加し得る可能性が高い。しかしながらこの結果から、P266が広範囲の標的細菌を有すること、すなわち任意の公知のファージの標的範囲よりも広い範囲を有することが示される。
【0225】
P266のヒト赤血球とのインキュベーションの影響は、試験した最も高い25μgおよび50μg量において最小であった。1時間のインキュベーションで、赤血球は、例えばヘモグロビンを含有して完全性を維持し、赤血球は沈降してペレットを生じ得た。したがって、P266は真核細胞膜を破壊せず、このタンパク質産物のインビボ使用との適合性が示唆される。
【0226】
実施例4:可溶性P266変種;P275
P266は、大腸菌で発現させた場合に不溶性であり、これが産生を難しくする。この不溶性は、可溶化するためにタンパク質の精製および変性を必要とし、再折りたたみは活性タンパク質の顕著な喪失を引き起こし得る。加えて、タンパク質の酸化は、活性をさらに減少させ得る。
【0227】
BPIセグメント(23アミノ酸MTD)における疎水性を減少させるために、P266の変種を設計した。目的は、タンパク質の折りたたみ構造をわずかに破壊して、水溶液に対して疎水性内部のより多くを露出させること、例えばいくつかの折りたたみタンパク質の表面上にある疎水性パッチ上に生じる水分子の殻を除去することであった。具体的には、V232からEに;V234からDに;およびI236からKに変換して、P275と命名されたP266由来の変種タンパク質を生じるように、核酸構築物を設計した。SEQ ID NO: 12および13を参照されたい。
【0228】
図1は、P266とP275のDASプロットの比較を示す。
図2は、P266とP275のTMHMMプロットの比較を示す。BPIドメインおよびその変種の相対的GRAVYスコアを以下に示す。
【0229】
P275は、いくつかの驚くべきかつ予想外の特性を示す。P266発現と同様に、37℃、1 mM IPTGで誘導することで、この発現構築物を大腸菌BL21(DE3)で発現させた。しかしながら、P275は封入体を形成せず、タンパク質産物の大部分は可溶性画分に限定された。さらに、そして予期せぬことに、可溶性タンパク質は細菌細胞膜を横断してペプチドグリカン層(ペリプラズム空間に位置する)に接近することなく、グラム陰性大腸菌産生細胞宿主を死滅させなかった。この結果から、細胞で発現させた場合に可溶性となるが、細菌細胞膜を横断できないように、MTDを操作できるがことが示される。しかしながら、操作されたMTDは、構築物がグラム陰性菌の外膜を横断することを可能にする機能を保持する。したがって、操作されたMTD-ムラリティックドメインキメラは、グラム陰性菌の感受性ペプチドグリカン層に接近することができる。
【0230】
可溶性P275産物は、精製および回収の点で取り扱いがはるかにより簡便であり、活性タンパク質のはるかにより高い収量をもたらした。可溶性P275タンパク質をpH 8.0にてNi-NTAカラムで精製し;pH 4.5にてイミダゾールで溶出し、イミダゾールを除去するために透析し、アッセイ緩衝液中で再度製剤化した。P275誘導細胞のペレットを溶解緩衝液(50 mM Trisベース、0.1 M NaCl、0.1% TritonX100)中に再懸濁し、超音波処理した。超音波処理した細胞ペレットを16,000 rpmで10分間遠心分離し、上清を回収し、pHを8.0に調整した。Ni-NTAマトリックスを、5カラム容量を用いて(50 mM Tris.Cl、pH 8.0)で平衡化した。可溶化されたタンパク質を平衡化Ni-NTAカラム上に負荷し、通過させた。通過画分を回収し、再度カラムを通過させた。カラムを10〜15カラム容量の20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.5で洗浄し、次に5カラム容量の20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 4.5で洗浄した。タンパク質の溶出を、20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 4.5中の1 Mイミダゾールで行った。溶出された画分を回収し、SDS PAGEによって解析した。SDS PAGEゲルで観察して、関心対象のタンパク質を豊富に含む画分をプールし、透析した。透析は、それぞれ4℃で5時間にわたり、20 mMリン酸緩衝液、pH 6.0に対して3回交換して、プールした溶出液容量の約100倍の緩衝液容量に対して行った。透析後に得られた溶出液を遠心分離して、いかなる沈殿物も分離し、上清を回収し、付加的なスクロース、ソルビトール、およびTween80をそれぞれ5%、5%、および0.2%の最終濃度で添加した。活性アッセイのためにタンパク質含量を推定した。
【0231】
P275産物は可溶性であり精製が容易であり、これによって費用効率がより高い下流の操作が可能となり、変性剤の必要性が回避され、かつ単純な工程で約85%の純度が達成されて、生物活性のある産物が生じる。さらに、そして驚くべきことに、P275は、標準的な50 ugタンパク質量の37℃における2時間のインキュベーション時間でのCFU低下アッセイにおいて、匹敵するかまたはより優れた活性を有した。
【0232】
実施例5:キメラタンパク質(例えば、P275)に及ぼす酸化の影響
P275を、タンパク質の酸化が生物活性に影響を及ぼし得るかどうかを調べるために試験した。最も酸化を起こしやすい2つのアミノ酸は、CysおよびMetである。P275はCys残基をもたないが、Metは酸化を受けやすいと考えられる。メチオニンまたはチオ硫酸ナトリウムの存在下でのアッセイは、タンパク質の酸化を最小限に抑え得る。0.05%メチオニンまたは0.1%チオ硫酸ナトリウムの存在下でP275タンパク質についてCFU低下アッセイを行った場合、CFU低下はいずれの剤の非存在下よりも実質的に高かった。したがって、例えば酸化が起こり得る貯蔵またはアッセイ条件において、生物活性を保持するために、酸化を減少させる剤、例えばそれぞれ0.001〜0.2%、0.001〜0.3%、および1〜100 mMの範囲のメチオニン、チオ硫酸ナトリウム、またはアスコルビン酸、例えば0.05%、0.1%、および5 mMのこれらの剤を含む、本明細書に記載されるキメラタンパク質の製剤を添加することができる。
【0233】
タンパク質中で起こり得る酸化を最小限にするために、例えば部位特異的突然変異誘発によって、met残基を除去/置換してもよい。これは、アラニンスキャン突然変異誘発について記載されているように、比較的単純で簡単である。例えば、Kristensen, et al. (1997)
J. Biol. Chem. 272:12978-12983を参照されたい。1つまたは複数のMetをより影響されにくい別のアミノ酸、例えばスレオニンで置換することで、タンパク質構築物に及ぼす酸化の影響は最小限に抑えられる。部位特異的突然変異誘発に取り組む前に、酸化により活性を失うことへの感受性について、構築物を最初に試験することができる。
【0234】
以下の参考文献は、酸化に関する安定性の問題に取り組むためのさらなる指導を提供する:Yokota, et al. (2000) J. Pharmaceutical and Biomedical Analysis 24:317-324;Grune, et al. (1997); FASEB J.11:526-534;Lam, et al. (2003) J. Pharmaceutical Sci. 86:1250-1255;Kenley and Warne (1994) Pharmaceutical Research 11:72-76。
【0235】
実施例6:代替MTDによるBPIの置換
表Bは、表Aに記載される触媒ムラリティックセグメントと組み合わせることができるMTDセグメントを示す。P225、P266、およびP275において、触媒ドメインはMTDのN側近位にある。触媒ドメインのN側近位にMTDがくるように、2つのドメインの相対的位置を逆にすることもできる。もし含めるのであれば、例えばMTDを負荷電外膜に誘引するために、正荷電セグメント、例えばRRR、KKK、NNN、QQQ、またはこれらの正荷電アミノ酸の混合物を、典型的にはMTDに隣接させる。
【0236】
適切なドメインの配列はGenBankおよび文献から入手可能であり、キメラ発現ベクターを生成するように、適切な構築物を作製することができる。ドメインの様々な組み合わせ(例えば、表AおよびB中のドメインの選択されたサブセット)を用いて、キメラ発現構築物を作製することができる。組み合わせが構築されたならば、発現ベクターを適切な発現宿主に導入することができる。発現されると、その産物を、標的細菌に対する生物活性について、CFU低下アッセイまたはOD600低下アッセイを用いて試験することができる。活性を有する産物を、活性パラメータ、タンパク質安定性、標的特異性、重要な残基またはドメインの境界、および示されるような他の特徴について、改変するかまたは最適化することができる。
【0237】
例えば、選択された触媒ドメイン、例えばGP36セグメントと共に、BPIの代わりとして、シュードモナスファージP134ホリン由来の膜移動ドメイン(MTD)をMTD機能のために用いることができる。上記のBPI以外の、付加的な5つの代替MTDセグメントに関する構築物について説明する。
【0238】
置換された5つのMTD構築物は以下の通りである:
A. 10×His‐GP36 CD‐RRR‐P134ホリンMTD‐RRR
B. 10×His‐GP36 CD‐RRR‐LPS BPペプチド‐RRR
C. GP36 CD‐T4ファージgp5 βヘリックス‐LE‐6×His
D. GP36 CD‐S型ピオシンOM結合ドメイン‐LE‐6×His
E. GP36 CD‐P22尾部スパイク‐LE‐6×His
【0239】
A. P134ホリンTMD:(SEQ ID NO: 14および15)
ファージP134ホリン膜貫通ドメインを、ファージP134のホリン遺伝子から導出した。P134ホリン由来のMTDは、膜貫通ヘリックス予測プログラム、DASおよびTMHMMに基づいて同定した。23 aa TMDを、リンカーおよび末端アルギニンと共にGP36CDのC末端側にクローニングする。GP36CD‐RRR‐P134TMD‐RRRを、N末端10×
His
(SEQ ID NO:30)タグと同様にクローニングする。10×His
(SEQ ID NO:30)タグおよびベクター由来の付加的なベクター配列を有するGP36CD‐RRR‐P134ホリンTMD‐RRRという804ヌクレオチドの構築物は、SEQ ID NO: 14に記載される。
NT 1〜66は、ベクター‐10×His;残基1〜22をコードする(Metは原核生物において除去される)
NT 67〜714は、GP36ムラリティックドメイン;残基23〜238をコードする
NT 715〜723は、RRRリンカー;残基239〜241をコードする
NT 724〜792は、P134ホリンMTD;残基242〜264をコードする
NT 793〜801は、C末端RRR;残基265〜267をコードする
NT 802〜804は終止コドンをコードする
【0240】
改変を目的として標的化するためのP134 MTD中の高度に疎水性の残基を、以下に、「変種」において野生型アミノ酸と置換した残基として下線で示す。溶解度を高めるために置換され得る野生型残基には、Ile243;Leu246、Ala248、Ala249、Val250 Val256、Ile261、およびLeu264が含まれる(SEQ ID NO:15を参照されたい)。残基はSEQ ID NO: 15に従って番号づけしてあり、これは産生において除去されるN末端Metを含む。代替アミノ酸は典型的に、同様のサイズを有する側鎖を伴うアミノ酸である。置換の例には、
Ileから
Arg、
Asp、
Asn、または
Lys;
Leuから
Pro、
Arg、または
Lys;
Valから
Asp、
Lys、または
Arg;および
Alaから
Lysが含まれるが、これらに限定されない。
【0241】
B. リポ多糖結合タンパク質ペプチド(SEQ ID NO: 16および17):
グラム陰性菌のLPSへの結合に関与する30アミノ酸の一続きを同定し、代替MTDとして選択した。Horwitz, Williams, and Nowakowski (1995) Infection and Immunity 63:522-527を参照されたい。この報告から導出された;タンパク質ID:CAA67226 (AA 106〜135)。この配列をGP36触媒ドメイン(CD)に融合して、分子GP36CD‐RRR‐LBPペプチド‐RRRをコードする825ヌクレオチド構築物を作製する。これをN末端ヒスチジンタグと共にクローニングする。この構築物は825ヌクレオチドであり、274残基(N末端Metを含むが、これは原核宿主において除去されるはずである) Mw:30.38 kDa、およびpI:9.72と予測される。
NT 1〜3は開始M
etであり、これは大部分の原核宿主において除去される
NT 4〜66は、ベクターセグメント‐10×His;残基2〜22をコードする
NT 67〜714は、GP36ムラリティックドメイン;残基23〜238をコードする
NT 715〜723は、RRRリンカー;残基239〜241をコードする
NT 724〜813は、LPS BP MTD;残基242〜271をコードする
NT 814〜822は、RRRリンカー;残基272〜274をコードする
NT 823〜825は終止コドンをコードする
【0242】
LPS結合タンパク質由来MTDは、SEQ ID NO: 17に記載される。より溶解度の高い変種を作製するために置換が示唆される残基には、Val248;Val267;Val269;Phe258;およびPhe259が含まれる。
【0243】
C. T4ファージgp5 βヘリックス(SEQ ID NO: 18および19):
ファージT4のタンパク質gp5に由来するC末端βヘリックスドメインは、感染過程における細菌細胞の外膜の侵入に関与することが報告されている。Leiman, et al. (2010) Virology J. 7:355を参照されたい。gp5 βヘリックス配列(187 aa;NP_049757.1残基389〜575に由来)を、C末端6×ヒスチジン
(SEQ ID NO:24)タグと共にGP36CDのC末端側にクローニングする。この構築物は1245ヌクレオチドであり;N末端Metが切断されずに、414残基と予測され、予測pI/Mw:5.43/45353.99を有する。
NT 1〜651は、開始METおよびGP36ムラリティックドメイン;残基1〜217をコードする
NT 652〜657は、KL(制限酵素部位Hind IIIによって生じる);残基218〜219をコードする
NT 658〜1218は、T4ファージgp5 β-ヘリックス;残基220〜406をコードする
NT 1219〜1224は、LE(制限酵素部位XhoIによって生じる);残基407〜408をコードする
NT 1225〜1242は、6×His
(SEQ ID NO:24);残基409〜414をコードする
NT 1243〜1245は終止コドンをコードする
【0244】
D. S型ピオシン外膜移動(OMT)ドメイン(SEQ ID NO: 20および21):
S型ピオシン由来の外膜移動ドメインは、緑膿菌の外膜を介して移動する。Ling, Saeidi, Rasouliha, and Chang (2010) 「A predicted S-type pyocin shows a bactericidal activity against clinical Pseudomonas aeruginosa isolates through membrane damage」 FEBS Letters 584:3354-3358を参照されたい。OMTドメイン(181残基;タンパク質アクセッション番号EHS39709、残基217〜397;緑膿菌MPAO/P1を参照されたい)を、C末端におけるヒスチジンタグと共に、GP36CDのC末端側にクローニングした。1227ヌクレオチドのこの構築物は、408アミノ酸(典型的には原核宿主によって除去されるN末端Metを含む)をコードし、これは予測pI/Mw:8.44/44543.37を有する。
NT 1〜651は、開始METおよびGP36ムラリティックドメイン;残基1〜217をコードする
NT 652〜657は、KL(Hind III部位によって生じる);残基218〜219をコードする
NT 658〜1200は、OM移動ドメイン;残基220〜400をコードする
NT 1201〜1206は、LE(制限酵素部位XhoIによって生じる);;残基401〜402をコードする
NT 1207〜1224は、6×His
(SEQ ID NO:24);残基403〜408をコードする
NT 1225〜1227は終止コドンをコードする
【0245】
E. P22尾部スパイクタンパク質(SEQ ID NO: 22および23):
ファージP22の尾部スパイクタンパク質は、O抗原を改変し、よってサルモネラ属のリポ多糖の構造を損ない得るエンドラムノシダーゼ活性を有する。例えば、Steinbacher, et al. (1997) 「Phage P22 tailspike protein: crystal structure of the head-binding domain at 2.3 A, fully refined structure of the endorhamnosidase at 1.56 A resolution, and the molecular basis of O-antigen recognition and cleavage」 J Mol Biol. 267:865-80;およびWaseh, et al. (2010) 「Orally Administered P22 Phage Tailspike Protein Reduces Salmonella Colonization in Chickens: Prospects of a Novel Therapy against Bacterial Infections」 PLoS One 5(11): el3904を参照されたい。サルモネラ属尾部スパイクタンパク質(タンパク質ID:NP_059644、アミノ酸2〜667を参照されたい)を、C末端におけるヒスチジンタグと共に、GP36CDのC末端側にクローニングした。理論上のサイズは、893アミノ酸;pI/Mw:5.76/96694.40である。
NT 1〜651は、開始METおよびGP36ムラリティックドメイン;残基1〜217をコードする
NT 652〜657は、KL(制限酵素部位Hind IIIによって生じる)、残基218〜219をコードする
NT 658〜2655は、P22尾部スパイクタンパク質ドメイン、残基220〜885をコードする;
NT 265
6〜266
1は、LE(制限酵素部位XhoIによって生じる)、残基886〜887をコードする
NT 266
2〜26
79は、6×His
(SEQ ID NO:24);残基888〜893をコードする
NT 268
0〜268
2は終止コドンをコードする
【0246】
実施例7 キメラタンパク質の発現、精製、および検証
以下の記載は、さらなるキメラ構築物をいかにして調製し検証するかの例である。緩衝液、培地、時間、および他の条件は、タンパク質の発現および設計の技術分野の当業者によって理解されるように、修正することができる。
【0247】
大腸菌における発現(コドン偏位)のためのコドン最適化、GC含量の変更、代わりの融合タグ(多くの可能性がある中で、例えば、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、nusA転写伸長因子、マルトース結合タンパク質(MBP)、インテイン)の組込み、様々な誘導因子濃度、温度、折りたたみ改善のためのシャペロンを用いた発現、および異なる発現宿主を用いて、所望の構築物の発現を改善することができる。
【0248】
例えば、産生宿主、例えば
大腸菌のコンピテント細胞をそれぞれのプラスミドで形質転換し、LB+アンピシリン(100μg/ml)またはカナマイシン(20μg/ml)上にプレーティングし、37℃で一晩インキュベートする。プレートからの培養物を掻き取って、典型的には液体であるLB+抗生物質中に移し、OD
600約0.8から1.0まで増殖させる。次に細胞を1 mMのIPTGで誘導し、37℃で4時間インキュベートする。8000 rpmで10分間遠心分離することによって細胞を回収し、ペレットを-80℃で保存する。
【0249】
構築物が封入体中に蓄積する場合には、誘導細胞のペレットを溶解緩衝液(50 mM Trisベース、0.1 M NaCl、0.1% TritonX100)中に再懸濁し、13 mmプローブを用いて10分間超音波処理する。超音波処理した細胞ペレットを16,000 rpmで10分間遠心分離し、封入体(IB)を含むペレットを回収する。封入体ペレットを緩衝液A(6 M GuHCl、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 8.0)中に再懸濁することによって可溶化し、室温で30分間にわたり振動を続ける。IB:緩衝液容量の比率は、典型的には40 mlの緩衝液Aに対して1グラム湿重量のIBである。溶解物を16,000 rpmで10分間遠心分離し、透明な上清を回収する。Ni-NTAマトリックスを、平衡化に5カラム容量を用いて、緩衝液B(8 M尿素、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 8.0)で平衡化する。IBからの上清を平衡化Ni-NTAカラム上に負荷し、重力モードで通過させ、通過画分を回収する。カラムを10カラム容量の緩衝液Bで洗浄して、不純物および非結合タンパク質を除去する。次に、カラムを10〜15カラム容量の緩衝液C(8 M尿素、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 6.5)で洗浄する。付着タンパク質の溶出を、緩衝液E(8 M尿素、100 mM NaH
2PO
4、10 mM TrisCl、pH 4.5)で行う。画分を回収し、SDS PAGEによって解析する。SDS PAGEゲルで観察して、関心対象のタンパク質を豊富に含む画分をプールし、段階様式で透析する。プールした画分を、プールした溶出液容量の約100倍の緩衝液容量に対して行う透析に供す(例えば、緩衝液1リットルに対して溶出液10 mlを透析する)。透析は、最初に20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0中の4 M尿素に対して4℃で5時間行い;次の2回目は20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0中の2 M尿素に対して4℃で5時間行い;ならびに3回目は5%スクロース、5%ソルビトール、および0.2% tween80を含む20 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 6.0に対して4℃で5時間行う。透析後に得られた溶出液を遠心分離して、いかなる沈殿物質も分離する。清澄化された上清を回収し、活性アッセイのためにタンパク質含量を推定する。
【0250】
活性(細菌細胞死滅活性)を検証するために、CFU低下アッセイを以下のように行うことができる。600 nmでの吸光度が0.8〜1.0の範囲に達するまで、細菌細胞をLBブロス中で増殖させる。次に、培養物1 mlを13000rpmで1分間遠心し、上清を廃棄する。細胞ペレットを1 mlの50 mMグリシン-NaOH緩衝液(pH 7.0)中に再懸濁し、細胞数を約1×10
8個/mlになるよう調整する。試験タンパク質を約50μgの最終濃度となるように100μl細胞に添加し、添加物を含む20 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)で容量を200μlに調整する。タンパク質を細胞と共に、200 rpmで撹拌しながら37℃で2時間インキュベートし、次に試料をLBブロスで対数希釈してLBアガー上にプレーティングし、残存CFUを定量する。コロニーを増殖させるために、プレートを37℃で一晩インキュベートする。
【0251】
代謝性色素減少アッセイを用いて、生細胞数を決定することもできる。このアッセイは、生細胞が、代謝指標色素であるヨード-ニトロテトラゾリウム(INT)を減少させるという原理に基づいている。簡潔に説明すると、マイクロタイタープレートウェル中で、100μl容量中の1×10
7個の標的細胞、例えば緑膿菌を、100μl中の試験タンパク質と約50μgの最終濃度となるように混合し、添加物を含む20 mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 6.0)で容量を200μlに調整する。細胞対照も同様に維持する。試料を200 rpmで37℃にて2時間インキュベートし、INT色素(1×)を全試料に添加する。マイクロプレートを暗下で室温にて20分間インキュベートし、492 nmにおける吸光度を記録する。10×INT保存液は、30 mgテトラゾリウムバイオレット(Loba Chemie、India)を10 mlの50 mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH 7.5中に溶解することによって調製する。
【0252】
実施例8. 細菌細胞結合の検出
グラム陰性菌では、外膜(OM)とペプチドグリカンがリポタンパク質によって連結されている。OMはポリンを含み、これは小さな親水性分子の通過を可能にする。例えば、Cabeen and Jacobs-Wagner (2005) 「Bacterial Cell Shape」 Nature Revs Microbiology 3:601-610;Nikaido (2003) Microbiol. Mol. Biol. Rev. 67:593-656を参照されたい。細胞の最も外側の層の構造および組成は、異なる細菌間で異なることが報告されている。細胞は外殻上に、多糖莢膜(例えば、Sutherland (1999) Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 16:217-29;およびSnyder, et al. (2006) Carbohydr. Res. 341:2388-97.を参照されたい)またはタンパク質S層(Antikainen, et al. (2002) Mol. Microbiol. 46:381-94;Schaffer and Messner (2005) Microbiology. 151:643-51;およびAvail-Jaaskelainen and Palva (2005) FEMS Microbiol Rev. 29:511-29)を有すると考えられ、これは好ましくない状況下で細菌を保護し、かつそれらの接着に影響を及ぼす。脂質とヘテロ多糖が共有結合しているリポ多糖(LPS)の基本構造は、研究されたすべてのLPS分子に共通しているが、細菌の属、種、および株によって変動がある。例えば、Trent, et al. (2006) J. Endotoxin Res. 12:205-23;Raetz and Whitfield (2002) Ann. Rev. Biochem. 71:635-700;Yethon and Whitfield (2001) Curr. Drug Targets Infect. Disord. 1:91-106;およびYethon and Whitfield (2001) J. Biol. Chem. 276:5498-504を参照されたい。
【0253】
したがって、本明細書に記載されるキメラ構築物を、標的細菌への結合について試験することができる。構築物(MTDを有する)がペプチドグリカン層に到達するかどうかについての様々なアッセイ法を、ここで説明する。SDS-PAGEを用いて、細胞に対するタンパク質の結合を検出することができる。例えば、10
7個の細胞を適量のタンパク質でおよそ2時間処理する。次に遠心分離によって細胞をペレット化し、上清中のタンパク質の量をSDS-PAGEで調べ、染色する。このタンパク質は細胞に吸着するものとして分類され、細胞への吸着前のタンパク質の強度が吸着後のタンパク質の強度よりも高い場合には、その違いは細胞結合による可能性が高い。結合はまた、例えばキメラ構築物への曝露時の細菌OMの変化を検出するために共焦点画像法を用いて、検出することもできる。当業者によって認識されるように、蛍光タグまたはルシフェラーゼを用いることもできる。
【0254】
非公式の配列表
SEQ ID NO: 1 (P134 GP36全長DNA配列:遺伝子ID 1482616と高度に相同的)
SEQ ID NO: 2 (SEQ 1(GP36)のAA翻訳;NP877475と高度に相同的)
SEQ ID NO: 3 (ヒト(Homo sapiens) cDNA、FLJ96367、ヒト殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、mRNAと高度に類似;GenBank:AK315328.1)
SEQ ID NO: 4 (BPI;無名のタンパク質産物[ヒト] GenBank:BAG37729.1)
SEQ ID NO: 5 (GP36 CD核酸;最初のCHC13試験構築物)
SEQ ID NO: 6 (24 Kda構築物;SEQ ID NO: 5の翻訳産物、217アミノ酸)
SEQ ID NO: 7 [精製の目的で24 Kdaに13 aa C末端伸長を付着]
SEQ ID NO: 8 {BPIセグメントに連結されたキメラGP36セグメントをコード;P225}
SEQ ID NO: 9 [リンカー‐GP36ムラリティックドメイン‐RRR‐BPI TMD‐RRR;P225ポリペプチド]
【0255】
SEQ ID NO:1 (P134 GP36全長DNAコード配列:[遺伝子ID 1482616と密接な相同体])
P134 GP36のヌクレオチド配列:
【0256】
SEQ ID NO:2 (SEQ
ID NO:1(P134 GP36)のAA翻訳;NP877475と高度に相同的)
P134 GP36のアミノ酸配列:
【0257】
SEQ ID NO:3 (ヒトcDNA、FLJ96367、ヒト殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、mRNAと高度に類似;GenBank:AK315328.1)
起源
【0258】
SEQ ID NO:4 (BPI;無名のタンパク質産物[ヒト] GenBank:BAG37729.1)
起源
【0259】
SEQ ID NO: 5 (P134 GP36
CD核酸;最初のCHC13試験構築物)
【0260】
SEQ ID NO: 6 (24 Kda構築物;SEQ ID NO: 5の翻訳産物、217アミノ酸。N末端Metは原核生物産生宿主において除去され得るため、タンパク質のN末端はGで始まり得る。)
【0261】
SEQ ID NO: 7 [精製の目的で24 Kdaに13 aa C末端伸長を付着]
【0262】
SEQ ID NO: 8 [BPIセグメントに連結されたキメラGP36セグメントをコード;P225]
a. 構築物ヌクレオチド配列:P225
第1部(1〜66)は、精製のためのポリHisを含むN末端伸長(22 aa)である
第2部(67〜714)は、GP36ムラリティック断片ドメインセグメント(aa 683〜898;217 aa)である
第3部(715〜804)は、リンカー(RRR)およびBPI TMDドメインセグメント(aa 16〜39)およびRRR C末端(33 aa)である。
【0263】
SEQ ID NO: 9 [ベクター配列‐GP36ムラリティックドメイン‐RRR‐BPI TMD‐RRR;P225ポリペプチド;N末端は、原核生物産生宿主において除去されるMetを有し得る]
【0264】
SEQ ID NO: 10 P266構築物核酸:
1〜6=ATG(開始コドン) GGC:クローニング酵素(NheI)部位によって生じた塩基
7〜24=6×
His
(SEQ ID NO:24)タグをコードする配列
25〜672=GP36CD配列をコードする配列
673〜681=リンカーアルギニンをコードする配列
682〜753=BPI MTDをコードする配列
754〜762=末端アルギニンをコードする配列
763〜765=TGA:終止コドンをコードする配列
【0265】
SEQ ID NO: 11 P266アミノ酸配列(254 aa):
1=M(開始コドン;産生coli宿主によって除去される)
2=G:クローニング酵素部位によって生じたアミノ酸
3〜8=6×
His
(SEQ ID NO:24)タグ
9〜2
24=GP36触媒(ムラリティック)ドメイン配列
2
25〜2
27=リンカーアルギニン
228〜251=BPI TMD
252〜254=N末端アルギニン
[ベクター配列‐his6‐GP36ムラリティックドメイン‐RRR‐BPI TMD‐RRR;P266ポリペプチド]
【0266】
SEQ ID NO: 12 P275構築物のヌクレオチド配列
【0267】
SEQ ID NO: 13 P275ポリペプチド構築物;BPIドメイン中、V232からE;V234からD;I236からK
【0268】
SEQ ID NO: 14 GP36 MD‐P134ホリンMTDキメラ構築物
【0269】
SEQ ID NO: 15 GP36 MD‐P134ホリンMTDポリペプチド配列
【0270】
SEQ ID NO: 16 GP36 MD‐リポ多糖結合タンパク質MTD構築物
【0271】
SEQ ID NO: 17 GP36 MD‐LPS結合タンパク質MTD構築物ポリペプチド配列
【0272】
SEQ ID NO: 18 GP36 MD‐T4ファージ、gp5 βヘリックスMTDキメラ構築物
【0273】
SEQ ID NO: 19 GP36 MD‐T4ファージ、gp5 βヘリックスMTDキメラポリペプチド
【0274】
SEQ ID NO: 20 GP36 MD‐S型ピオシン外膜移動(OMT)ドメインキメラ構築物
【0275】
SEQ ID NO: 21 GP36 MD‐S型ピオシン(OMT)ドメインキメラポリペプチド
408 aa. 理論上のpI/Mw:8.44/44543.37
【0276】
SEQ ID NO: 22 GP36 MD‐P22尾部スパイクタンパク質MTDキメラ構築物
【0277】
SEQ ID NO: 23 GP36‐P22尾部スパイクタンパク質MTDポリペプチド