(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243338
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】粒子状陰極材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20171127BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20171127BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20171127BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20171127BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20171127BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01M4/48
H01M4/38 Z
H01M12/06 D
H01M10/052
H01M4/36 C
【請求項の数】25
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-530062(P2014-530062)
(86)(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公表番号】特表2014-534142(P2014-534142A)
(43)【公表日】2014年12月18日
(86)【国際出願番号】CA2012050651
(87)【国際公開番号】WO2013040705
(87)【国際公開日】20130328
【審査請求日】2015年9月3日
(31)【優先権主張番号】2,752,844
(32)【優先日】2011年9月19日
(33)【優先権主張国】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】591117930
【氏名又は名称】ハイドロ−ケベック
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100102990
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 良博
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100111903
【弁理士】
【氏名又は名称】永坂 友康
(72)【発明者】
【氏名】カリム ザギブ
(72)【発明者】
【氏名】アブデルバスト ギルフィ
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク ルブラン
【審査官】
小野 久子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−087546(JP,A)
【文献】
特開2008−112710(JP,A)
【文献】
特表2011−513900(JP,A)
【文献】
特開2004−185810(JP,A)
【文献】
国際公開第2011/060433(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/067677(WO,A1)
【文献】
特開2010−219047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
H01M 4/36
H01M 4/38
H01M 4/48
H01M 10/052
H01M 12/06
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第IVa族の元素、その酸化物またはその合金の粒子を含む粒子状材料を調製する方法であって、
(a)第IVa族の元素、その酸化物またはその合金のインゴットから粒子を乾式粉砕して、マイクロメートルサイズの粒子を得る工程;
(b)溶媒担体中に分散された該マイクロメートル粒子を湿式粉砕して、10〜100ナノメートルの範囲の大きさを有する、ナノメートルサイズの粒子を得る工程、
(d)該ナノメートルサイズの粒子を、炭素前駆体と混合する工程、および
(e)その混合物を熱分解して、それによって該粒子の表面上の少なくとも一部に伝導性炭素の被覆を形成する工程、
を含んでなり、
第IVa族の元素がSiであり、かつ
該溶媒担体の量が、該粒子状材料の5〜20質量%であるように調整される、
方法。
【請求項2】
前記合金が、Li、Al、Mg、Fe、Ge、C、Bi、Ag、Sn、Zn、B、Ti、Sr、PおよびOの少なくとも1種を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記合金元素が、前記粒子状材料の2質量%以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
(c)前記ナノメートルサイズの粒子を乾燥する工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程(a)が、ビーズミルを用いて;パックアンドリングミル;ジェットミル;またはサイクロンミル中で行われる、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒担体が、有機溶媒または水である、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒が、イソプロパノールまたはシクロヘキサンである、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
上記溶媒担体の量が、前記粒子状材料の8〜15質量%であるように調整される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒担体の量が、前記粒子状材料の10質量%であるように調整される、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記炭素前駆体が、有機材料である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記炭素前駆体が、架橋性モノマー、オリゴマー、ポリマーまたは共重合体である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記炭素前駆体が、ポリ(無水マレイン酸−1−alt−オクタデセン)である、請求項1〜9のいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
形成される伝導性炭素の量が、前記粒子状材料の0.1〜10質量%である、請求項1記載の方法。
【請求項14】
形成される伝導性炭素の量が、前記粒子状材料の2〜5質量%である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
工程(e)が、600〜800℃の温度で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項16】
工程(e)が、3〜10℃/分の速度で行われる、請求項1または15記載の方法。
【請求項17】
工程(e)が、30分間〜2時間行われる、請求項1、15または16記載の方法。
【請求項18】
工程(e)が、不活性雰囲気の下で行われる、請求項1および15〜17のいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記伝導性炭素が、非粉末状である、請求項1および15〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
安定化剤が、前記湿式粉砕の間もしくは後に加えられ、前記安定化剤が、界面活性剤である、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
安定化剤が、前記湿式粉砕の間もしくは後に加えられ、前記安定化剤が、Triton 100Xである、請求項1〜19のいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記粒子状材料が、電気化学的貯蔵エネルギー装置中の陰極として用いられる、請求項1〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
前記電気化学的貯蔵エネルギー装置が、リチウムイオン電池である、請求項22記載の方法。
【請求項24】
上記電気化学的貯蔵エネルギー装置が、ケイ素−空気電池である、請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記電気化学的貯蔵エネルギー装置が、ポリマー電池である、請求項22記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包括的には、高い電気化学的エネルギー貯蔵能力を有する粒子状材料に関する。より具体的には、本発明は、第IVa族元素、好ましくはケイ素、その酸化物またはその合金を含む粒子状陰極材料に関する。本発明によるこの材料は、その上に、伝導性炭素が堆積されていることができる。その調製方法は、乾式および湿式粉砕工程を含んでいる。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、リチウム挿入電極を基にした、90年代早期におけるソニーによる初期の仕事から、技術的な成功および商業的な成長を示してきており、J.B. Goodenoughによって発明された高電圧酸化コバルト陽極(米国特許第5,910,382号および第6,391 ,493号明細書)およびコークスもしくは黒鉛化された炭素質材料を用いた炭素陰極から本質的になっている。
【0003】
それ以来、リチウムイオン電池は、大抵の携帯用エレクトロニクス用途におけるその優れた性能のために、既存のNi−CdおよびNi−MH電池を順次に取って代わってきている。しかしながら、その費用および、特にその完全に充電された状態における、劣悪な条件の下での固有の不安定性のために、単に、小さい寸法および形態(format)の電池だけが成功裏に商業化されている。
【0004】
既存のリチウムイオン電池は、グラファイトから作られた陰極に依存している。しかしながら、炭素質材料を基にした陰極は、わずか372mAh/g(844mAh/cc)の最大理論容量しか有しておらず、従って、容量の増加の制約に悩まされている。リチウム金属は、陰極材料としての使用が研究されており、高エネルギー密度を有しており、そして従って、高容量を実現する可能性があるが、しかしながら、デンドライトの成長に起因する安全性および、電池が繰り返し充電/放電された時の短縮された充電/放電ライフサイクルに伴う問題を提起している。これらの不利益および問題のために、多くの研究がなされ、そして高容量を示し、そして金属としてリチウムを置き換えることができる可能性のある候補材料として、ケイ素、スズまたはそれらの合金を用いるという提案がなされてきた。例えば、ケイ素(Si)は、可逆的にケイ素とリチウムとの間の反応をとおして、リチウムイオンを可逆的に吸収(挿入する)および脱着(deintercaltes)し、そして約4200mAh/g(9366mAh/cc、2.23の比重)の最大理論容量を有しており、これは、炭素質材料よりも実質的に高く、そして従って高容量陰極材料として有望である。
【0005】
ケイ素系陰極は、理論的には、グラファイトよりも10倍ほどの容量の向上を示す。しかしながら、ケイ素系陰極は、実用的な用途における繰り返しに十分には安定ではない。ケイ素系陰極の繰り返し性能を向上させる1つの方法は、陰極の製造
に用いられる材料の粒子の大きさを低減させることで
ある。用いられる材料中の粒子の炭素でのコーティングもまた、有益であることが見出されている。より小さなサイズは、Si粒子中の体積変化および応力(stresses)を制御するのを援ける。ケイ素表面上の炭素コーティングは、電気経路のように作用し、それによって、体積変化があった場合にさえも、集電装置との接触が失われない。
【0006】
ケイ素は、アーク炉中での、二酸化ケイ素(珪岩)の炭素(石炭、炭、石油コークス、木材)での炭素熱還元反応によって、工業的に生成されており、その反応は、理想化された形では、下記のように記すことができる。
【0007】
【化1】
【0008】
工業においては、入手可能な原材料は、純粋ではなく、そして製品は、通常は他の元素、例えばFe、Al、CaおよびTiを含んでいる。不純物のない操作ならびに純粋な原材料および電極で、他の元素が1〜2%未満のケイ素を得ることが可能である。固体ケイ素は金属ではないけれども、この製品は、伝統的に冶金学的品種のケイ素金属と称されている。
【0009】
もしもより高い純度が求められる場合には、冶金学的な処理、例えば、1410℃より高い温度でのガス吹き込み(乾燥空気、O
2、Cl
2)で、アルカリ種(K、Na、Mg、Ca、Al、Sr)を低減させることができる。これらの種は、液体金属表面から蒸発させるか、またはスラグ相中に物理的に分離するかのいずれかであることができる。遷移金属、例えば、Fe、Ti、Cu、Cr、Mn、V、Ni、Zn、Zrなどを減少させる必要がある場合には、方向性凝固を用いることができる。他の効果的な方法は、固体ケイ素を微細に粉砕し、そして金属間相を酸(HF、HCl、H
2SO
4、または混合物)に暴露することからなっている。これらの冶金的処理で、ケイ素金属の純度は、99.999%(5N純度水準)に達することができる。
【0010】
より高純度のためには、前駆体種、例えばSiHCl
3またはSiH
4からの化学気相堆積が必要とされる。いわゆるシーメンス法が、絶好の例である。このプロセスでは、9Nの純度水準に、容易に到達することができる。
【0011】
ケイ素系陰極材料は、固体結晶インゴットまたは慣用の粉砕法(ジョークラッシャー、コーンクラッシャー、ロールクラッシャー、ジェットミルなど)によるミクロンサイズの粉末から、低コストで調製することができる。機械的磨滅法は、微細粒子を生成するための、最も用いられる方法の1つである。工業的な湿式ナノ粉砕ビーズミル装置が、商業的に入手可能であり、これを、粒子径を10〜20nmに低減させるのに用いることができる(例えば、リチウム金属リン酸塩超微細粉砕について、国際公開2007/100918号を参照)。それらの技術は、高純度Siについて、特に有用である。
【0012】
複合金属合金陰極粉末、そしてより具体的にはSi系材料の低電子伝導率の問題に対する1つの有意の改善が、有機炭素前駆体の使用で得られ、有機炭素前駆体は、陰極材料またはその前駆体上に熱分解されて、電気伝導率を、陰極粒子の水準で、向上させる。
【0013】
また、ケイ素粉末の電気伝導率は、伝導性カーボンブラックまたはグラファイト粉末を、Si粉末もしくはSi合金と、粉砕の前に、親密に混合することによって向上される。カーボンブラックまたはグラファイト粉末のそのような添加は、良好な結合性を得るには、通常は比較的に大量のCを必要とし、そしてケイ素系材料結晶構造への、Cの良好な結合をもたらさない。この親密な結合は、長期の繰り返しの間の体積変化にもかかわらず、接触を維持するために、必須であると判断される特徴である。
【0014】
本発明者らは、以下の文献が、本発明に関連すると承知している:Scoyerらの国際公開第2012/000854号および第2012/000858号、Kawadaの米国特許出願公開第2011/0244334号および第2011/0244333号明細書、ならびにLiangらの国際公開第2008/067677号。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
高い電気化学的エネルギー貯蔵能力の陰極の製造を可能にする粒子状ケイ素系材料の調製のための改善された方法への必要性がなお存在している。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、第IVa族の元素、好ましくはケイ素、その酸化物、またはその合金を含む粒子状材料、の調製方法を立案した。この方法は、ナノメートルサイズの粒子をもたらす乾式および湿式粉砕工程を含んでいる。このナノメートルサイズの粒子は、伝導性炭素でコーティングされていることができる。第IVa族の元素は、Siであることができる。この合金は、Li、Al、Mg、Fe、Ge、C、Bi、Ag、Sn、Zn、B、Ti、Sr、PおよびOの少なくとも1種を含むことができる。本発明による方法によって調製されたこの材料は、陰極として用いられる。
【0017】
態様によれば、本発明は、以下のものを提供する。
(1)第IVa族の元素、その酸化物またはその合金の粒子を含む粒子状材料を調製する方法であって、
(a)第IVa族の元素、その酸化物またはその合金のインゴットから粒子を乾式粉砕して、マイクロメートルサイズの粒子を得る工程;および
(b)溶媒担体中に分散されたこのマイクロメートル粒子を湿式粉砕して、10〜100ナノメートルの範囲の大きさを有する、ナノメートルサイズの粒子を得る工程、随意選択的に、安定化剤が、湿式粉砕の間もしくは後に加えられる、
を含んでなる方法。
(2)元素がSiである、上記(1)記載の方法。
(3)酸化物が、Si酸化物(SiO
x)である、上記(1)記載の方法。
(4)合金が、Li、Al、Mg、Fe、Ge、C、Bi、Ag、Sn、Zn、B、Ti、Sr、PおよびOの少なくとも1種を含む、上記(1)記載の方法。
(5)合金化元素が、粒子状材料の約2質量%以下である、上記(1)または(4)記載の方法。
(6)(c)ナノメートルサイズの粒子を乾燥する工程を更に含む、上記(1)記載の方法。
(7)(d)ナノメートルサイズの粒子を、炭素前駆体と混合する工程、および(e)この混合物を熱分解して、それによってこの粒子の表面上の少なくとも一部に伝導性炭素の被覆を形成する工程、を更に含む、上記(1)または(6)記載の方法。
(8)工程(a)が、ビーズミル、好ましくはジルコニアビーズを用いて;パックアンドリングミル;ジェットミル;またはサイクロンミル中で行われる、上記(1)〜(7)のいずれか1項記載の方法。
(9)前記担体溶媒が、有機溶媒または水である、上記(1)〜(8)のいずれか1項記載の方法。
(10)前記溶媒が、イソプロパノールまたはシクロヘキサンである、上記(1)〜(8)のいずれか1項記載の方法。
(11)前記溶媒担体の量が、前記粒子状材料の約5〜20質量%であるように調整される、上記(1)〜(10)のいずれか1項記載の方法。
(12)上記溶媒担体の量が、前記粒子状材料の約8〜15質量%であるように調整される、上記(1)〜(10)のいずれか1項記載の方法。
(13)上記溶媒担体の量が、前記粒子状材料の約10質量%であるように調整される、上記(1)〜(10)のいずれか1項記載の方法。
(14)前記炭素前駆体が、有機材料である、上記(1)〜(13)のいずれか1項記載の方法。
(15)前記炭素前駆体が、架橋性モノマー、オリゴマー、ポリマーまたは共重合体である、上記(1)〜(13)のいずれか1項記載の方法。
(16)前記炭素前駆体が、ポリ(無水マレイン酸−1−alt−オクタデセン)である、上記(1)〜(13)のいずれか1項記載の方法。
(17)形成される伝導性炭素の量が、前記粒子状材料の約0.1〜10質量%である、上記(7)記載の方法。
(18)形成される伝導性炭素の量が、前記粒子状材料の約2〜5質量%である、上記(7)記載の方法。
(19)工程(e)が、約600〜800℃、好ましくは約650〜750℃、より好ましくは約730℃の温度で行われる、上記(7)記載の方法。
(20)工程(e)が、約3〜10℃/分、好ましくは約6℃/分の速度で行われる、上記(7)または(19)記載の方法。
(21)工程(e)が、約30分間〜2時間、好ましくは約1時間行われる、上記(7)、(19)または(20)記載の方法。
(22)工程(e)が、不活性雰囲気、好ましくはアルゴン雰囲気の下で行われる、上記(7)および(19)〜(21)のいずれか1項記載の方法。
(23)前記伝導性炭素が、非粉末状である、上記(7)および(17)〜(22)のいずれか1項記載の方法。
(24)前記安定化剤が、界面活性剤である、上記(1)〜(23)のいずれか1項記載の方法。
(25)前記安定化剤が、Triton 100Xである、上記(1)〜(23)のいずれか1項記載の方法。
(26)前記粒子状材料が、電気化学的電池または電気化学的貯蔵エネルギー装置中の陰極として用いられる、上記(1)〜(25)のいずれか1項記載の方法。
(27)前記電気化学的貯蔵エネルギー装置が、リチウムイオン電池である、上記(26)記載の方法。
(28)上記電気化学的貯蔵エネルギー装置が、ケイ素−空気電池である、上記(26)記載の方法。
(29)前記電気化学的貯蔵エネルギー装置が、ポリマー電池である、上記(26)記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明による方法を説明するプロセスフローダイヤグラムを示している。
【
図2】
図2は、本発明によるマイクロメートルサイズの粒子の試料の、レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、堀場)から得られた粒子径分布のグラフを示している。
【
図3】
図3は、乾式粉砕の間の、経時の平均粒子径(d
50)の進展を示している。
【
図4】
図4は、本発明によるマイクロメートルサイズの粒子の更なる試料の、レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、堀場)から得られた粒子径分布のグラフを示している。
【
図5】
図5は、本発明によるマイクロメートルサイズの粒子の、なお更なる試料の、レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、堀場)から得られた粒子径分布のグラフを示している。
【
図6】
図6は、湿式粉砕の間の、経時での平均粒子径(d
50)の進展を示している。
【
図7】
図7は、本発明によるナノメートルサイズの粒子の試料の、レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、堀場)から得られた粒子径分布のグラフを示している。
【
図8】
図8は、更なる湿式粉砕の間の、経時での平均粒子径(d
50)の進展を示している。
【
図9】
図9は、本発明によるナノメートルサイズの粒子の更なる試料の、レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、堀場)から得られた粒子径分布のグラフを示している。
【
図10】
図10は、1M LiPF
6−EC−DEC中のLi/Si複合材陰極の電圧プロファイルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者らは、第IVa族元素、好ましくはケイ素、その酸化物またはその合金を含む、粒子状材料の調製方法を設計した。本方法は、ナノメートルサイズの粒子を得るための乾式および湿式の粉砕工程を含んでいる。ナノメートルサイズの粒子は、伝導性炭素でコーティングされていることができる。第IVa族元素は、Siであることができる。合金は、Li、Al、Mg、Fe、Ge、C、Bi、Ag、Sn、Zn、B、Ti、Sr、PおよびOの少なくとも1種を含むことができる。本発明の方法によって調製される材料は、陰極として用いられる。
【0020】
本発明の好ましい態様では、第IVa族元素は、Siであるか、または、酸化物は、Si酸化物である(SiO
x)。本発明による方法のプロセスフローダイヤグラムが、
図1中に略述されている。
【0021】
粒子表面の少なくとも一部が導電性炭素で被覆されていてることができる、粒子状Si材料の調製方法。この方法は、以下の工程を含んでいる:(a)SiまたはSiOxのインゴットからのSi粒子を乾式粉砕して、マイクロメートルサイズの粒子を得る工程;および(b)溶媒担体中に分散されたマイクロメートル粒子を湿式粉砕して、10〜100ナノメートルの範囲のサイズを有するナノメートルサイズの粒子を得る工程。随意選択的に、この湿式粉砕工程の間または後に、安定化剤を加えることができる。そのような薬剤は、粒子の集塊を回避するのを援ける。また、そのような薬剤は、溶媒担体中の粒子の効果的な分散を可能にする。好適な安定化剤は、例えば、国際公開第WO 2008/067677号中に記載されている。それらは、通常は商業的に入手可能であり、例えば、界面活性化剤、例えば界面活性剤が挙げられる。当業者には理解されるように、いずれかの他の好適な安定化剤を用いることができる。
【0022】
本方法は、(c)ナノメートルサイズの粒子を乾燥する、更なる工程を含むことができる。更には、本方法は、(d)工程(b)または工程(c)のいずれかで得たナノメートルサイズの粒子を、炭素前駆体と混合する工程;ならびに(e)この混合物を熱分解して、それによって、これらの粒子の表面の少なくとも一部の上に伝導性炭素の被覆を形成する工程、を更に含むことができる。
【0023】
工程(a)で用いられるSi粒子は、ミリメートルのサイズの粒子であり、以下の工程で得ることができる:(a1)商業的に入手可能な冶金学的品種のSiを準備する工程;(a2)このSiを溶融させる工程;(a3)溶融したSiを注型し、そして冷却してインゴットを得る工程;および(a4)このインゴットを粉砕して、ミリメートルサイズのSi粒子を得る工程。出発材料の溶融は、グラファイトるつぼを用いた誘導炉中で行うことができる。当業者には理解されるであろうように、溶融のためのいずれかの他の好適な方法を、このプロセスで用いることできる。また、この溶融プロセスは、不活性の雰囲気の下で行われ、不活性ガス、例えばアルゴンが用いられる。
【0024】
溶融したSiの温度は、約1410〜1650℃、好ましくは約1450℃に昇温され、そして次いでそれは型内に注型され、そして室温に冷却される。このプロセスに用いられる好適な型の種類は、例えばグラファイト型であることができるが、当業者によって理解されるであろうように、いずれかの他の好適な型の種類も用いることができる。溶融したSiを冷却した後に形成されるインゴットは、センチメートルサイズの粒子に、次いでミリメートルサイズの粒子に粉砕される。粉砕は、ジョークラッシャーを用いて行うことができ、ジョークラッシャーは、摩損抵抗性ライナー、例えばジルコニアまたは炭化タングステンを有することができる。そのような粉砕は、通常はセンチメートルサイズの粒子を生じるが、それは、例えばロール粉砕機を用いてミリメートルサイズの粒子へと更に粉砕される。
【0025】
本発明の態様では、ミリメートルサイズのSi粒子のマイクロメートル粒子への乾式粉砕(上記で略述した工程(a))は、ジェットミル、ビーズミル、パックアンドリングミル、またはサイクロンミルで行うことができる。当業者には理解されるであろうように、いずれかの他の好適な粉砕手段を用いることができる。ビーズミルで用いられるビーズは、例えば5mmのジルコニアビーズであることができる。
【0026】
マイクロメートルサイズのSi粒子は、溶媒担体中に分散され、次いでナノメートルサイズの粒子への粉砕(湿式粉砕)に掛けられる(上記で略述した工程(b))。この工程は、例えば、0.3mmのジルコニアビーズを備えたビーズミル中で行うことができる。溶媒担体は、有機溶剤であることができる。例えば、担体溶媒は、アルコール、例えばC
1〜C
12アルコールまたは水であることができる。本発明の態様では、マイクロメートルサイズの粒子は、イソプロパノールまたはフルフリルアルコール中に分散されたが、しかしながら、当業者には理解されるであろうように、いずれかの他の好適な溶媒も、本プロセスに用いることができる。溶媒担体は、Siの量の約5〜20質量%、より好ましくは約8〜15質量%、より好ましくは約10質量%の量で用いられる。
【0027】
ナノメートルサイズのSi粒子は、炭素前駆体と更に混合することができる(上記で略述した工程(c))。本発明の態様では、これらの粒子は、湿潤形態、すなわち、なお溶媒担体中にある(上記で略述した工程(b)から得られた粒子)。他の態様では、これらの粒子は湿潤形態にある(上記で略述した工程(c)から得られた粒子)。炭素前駆体は、粒子表面への浸透が得られるように、Si粒子と均質に混合され、それによって、熱分解(上記で略述した工程(e))の後に、堆積された伝導性炭素が、粒子と密接に接触しているようになる。
【0028】
炭素前駆体は、有機炭素前駆体であることができる。更には、炭素前駆体は、例えば、架橋性モノマー、オリゴマー、ポリマーもしくは共重合体、好ましくはポリ(無水マレイン酸−1−alt−オクタデセン)であることができる。当業者には理解されるであろうように、ナノメートルサイズのSi粒子の表面上に吸着される、例えば、熱分解の後に、伝導性炭素の層をその表面上に残しておく、ことができるいずれかの好適な材料を、本プロセスで用いることができる。本発明の態様では、用いられる炭素前駆体の量は、例えば、Siの量の約2〜10質量%、好ましくは約5質量%であることができる。
【0029】
ナノメートルサイズのSi粒子および炭素前駆体の混合物は、熱分解に掛けられる(上記で略述した工程(e))。この工程は、炭素前駆体の焼成および伝導性炭素の層のナノメートルサイズのSi粒子の表面上への堆積を可能とする。堆積された伝導性炭素は、好ましくは、非粉末状である。本発明の態様では、この混合物の熱分解は、約600〜800℃、好ましくは約650〜750℃、より好ましくは約725℃の温度で行われる。熱分解の間の乾燥速度は、例えば約3〜10℃/分、好ましくは約6℃/分であることができる。そして、乾燥時間は、例えば約30分間〜2時間、好ましくは約1時間であることができる。この工程は、不活性雰囲気、例えばアルゴン雰囲気の下で行うことができる。
【0030】
本発明の態様では、熱分解された混合物を冷却する次の工程が行われる。この工程は、約2℃/分の冷却速度で行われる。
【0031】
本発明によるプロセスで、特には乾式工程(a)で得られたマイクロメートルサイズのSi粒子は、0.1〜100μmの平均径を与える。本発明によるプロセスで、特には湿式粉砕工程(b)で得られたナノメートルサイズのSi粒子は、工程(b)で得られたナノメートルサイズの粒子の、10〜100nmである平均径を与える。
【0032】
本発明による態様では、本発明による、そして上記で説明された方法によって調製された粒子状Si材料を提供する。本発明の態様では、粒子の平均径は約10〜100nm、好ましくは約50〜90nm、より好ましくは約70nmである。更には、本発明の態様では、この材料は、約0.5〜10質量%、好ましくは約2〜5質量%の炭素含有量を有している。
【0033】
本発明の他の態様では、本発明による、そして上記で説明した材料を用いて作られた陰極を提供する。
【0034】
本発明の更に他の態様では、本発明による、そして上記で説明した陰極を含む、電気化学的セルまたは電気化学的貯蔵エネルギー装置を提供する。
【0035】
本発明の更なる態様では、本発明による、そして上記で説明した陰極を含む、電気化学的貯蔵エネルギー装置を提供する。この電気化学的貯蔵装置は、リチウムイオン電池、ケイ素空気電池またはポリマー電池であることができる。
【実施例】
【0036】
例1
10kgの商業的に入手可能な冶金学的品種のケイ素(Si)を、グラファイトるつぼを用いて、アルゴン雰囲気の下で、誘導炉中で溶融させた。液状のケイ素を、1450℃の温度で、完全な均一化のために10分間保持し、そしてグラファイト型中に注型して、室温に冷却させた。得られたインゴットの、X線蛍光分光法によって測定された不純物含有量は、この材料の2質量%未満であった。
【0037】
例2
例1のインゴットを、金属汚染を減らすように、摩損抵抗ジルコニアライナーを備えた、ジョークラッシャー(JCA-100、Makino)を用いて、センチメートルサイズの粒子に粉砕した。
【0038】
例3
例2のセンチメートルサイズの粒子を、ミリメートルサイズの粒子を得るために、ジルコニアロールを有するロール粉砕機(MRCA-1、Makino)を用いることによって、更に粉砕した。
【0039】
例4
例3のミリメートルサイズの粒子を、マイクロメートルサイズの粒子を得るために、5mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミル(PV-250、Hosokawa)で粉砕した。レーザー散乱分析計観察(LA- 950V2、Horiba)によって、乾式粉砕は、0.3μm〜3μmの範囲の、マイクロメートルサイズの一次粒子をもたらすことが示される(
図2)。
【0040】
例5
例3のミリメートルサイズの粒子を、マイクロメートルサイズの粒子を得るために、炭化タングステンライナーを用いたパックアンドリングミル(Pulverisette 9、Fritsch)で粉砕した(
図3)。
【0041】
レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、Horiba)は、乾式粉砕は、300秒間後に、0.3〜100μmの範囲のマイクロメートルサイズの一次粒子をもたらすことを示している(
図4)。
【0042】
例6
例3のミリメートルサイズの粒子を、マイクロメートルサイズの粉末を得るために、サイクロンミル(150BMW、Shizuoka plant)を用いることによって粉砕した。レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、Horiba)は、乾式粉砕は、1回の通過の後に、0.2μm〜20μmの範囲のマイクロメートルサイズの一次粒子をもたらすことを示している(
図5)。
【0043】
例7
例6のマイクロメートルサイズの粉末を、Triton 100X界面活性剤(固形分に対して0.5質量%)の存在下に、
固形分濃度の10%のイソプロピルアルコール(IPA)溶液中に分散させ、そして次いで、ナノメートルサイズの粒子を得るために、0.3mmのジルコニアビーズを用いて、ビーズミル(SC100/32-ZZミル、Nippon Coke)で粉砕した(
図6)。
【0044】
レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、Horiba)は、湿式粉砕は、300分間後に、100nm〜1000nmの範囲のナノメートルサイズの一次粒子をもたらすことを示している(
図7)。
【0045】
例8
例7の粒子分散液を、ナノメートルサイズの粒子を得るために、0.03mmのジルコニアビーズを用いた、ビーズミル(MSC-100-ZZ粉砕機、Nippon Coke)で粉砕した(
図8)。
【0046】
レーザー散乱分析計観察(LA-950V2、Horiba)は、湿式粉砕は、695分間後に、40nm〜150nmの範囲のナノメートルサイズの一次粒子をもたらすことを示している(
図9)。
【0047】
例9
この実験は、マイクロメートルサイズの粉末がシクロヘキサン(IPAの代わりに)中に分散されたこと以外は、例7中で上記に略述したように行った。湿式粉砕の後に、粒子サイズは、700分間の後に、80nm〜180nmの範囲であった。
【0048】
例10
最後の工程で、IPA中に溶解されたポリ(無水マレイン酸−1−alt−オクタデセン)の溶液を、Siに対して5質量%のポリ(無水マレイン酸−1−alt−オクタデセン)の比率で、IPA中のSiと混合した。混合された溶液を完全に撹拌し、そして次いで、撹拌しながら乾燥空気を吹き付けることによって、室温で乾燥させた。
【0049】
乾燥された粉末は、アルゴン流の下で、回転炉中で、6℃/分で、725℃に加熱し、そして725℃で1時間保持し、そして、次いで、2℃/分の冷却速度で冷却した。この処理の後に、50〜200nmの平均径を有する、炭素が被覆されたナノ粒子の、大きな凝集体が得られた。熱分解炭素含有量は、C,S分析計(LECO法)で測定して、1.4%である。このように得られた製品は、C−Siによって示された。
【0050】
例11
電気化学的評価のために、Si粉末を、炭素導体およびアルギン酸塩水溶性バインダーおよびH
2Oと混合することによって、陰極が調製された。その後、このスラリーを、銅箔に塗布し、そして真空で、12時間、120℃で乾燥した。電気化学的特性決定を、リチウム金属を1M LiPF
6−EC−DEC中に陰極として備えた、コイン型のセルで行った。3種類の陰極複合材電極を評価した:乾式粉砕したSi(例4)、IPA中のナノ−Si(例8)、およびシクロヘキサン中のナノ−Si(例9)。これらのセルは、2.5Vおよび10mVの間で、反復させた。
図10中の最初の放電は、粒子径が、セルの電圧プロファイルに影響を与えることを示している。また、粉砕の媒質として異なる溶媒を用いることによって、粒子径を更に低減させるのを援ける。粒子径が減少する場合には、平均電圧は、徐々に増加する:Si−乾式粉砕物では35mV(0.3〜3.0μm)、ナノ−Si−シクロヘキサンでは78mV(80〜180nm)、そしてナノ−Si−IPAでは92mV(50〜150mV)。粒子径を低下させることは、この材料の性能を向上させ、そしてまた放電電圧を零ボルトから少し増加させ、このことは、電池の安全性が向上されることを示している。
【0051】
本発明を、上記に、その特定の態様によって説明してきたが、それは、添付の特許請求の範囲に規定した主題の発明の精神および本質から逸脱することなく、変更することができる。
【0052】
本明細書では多くの文献を参照しており、その内容は、参照することによってそれらの全体を本明細書の内容とする。