(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に例示されるように、毎回の部品吸着動作及び部品搭載動作について撮像を行う技術では、部品の搭載不良があった場合に参考となる画像データを得やすい。しかしながら、画像データを保存するための画像保存部として、膨大な記憶容量の外部ストレージメモリを必要とする。特に、静止画データでなく動画データを保存するためには、一層大きな記憶容量が必要になる。さらに、後で必要な画像データを検索する際に、多大な手間および検索時間がかかってしまうという問題点もある。
【0007】
一方、特許文献2に例示されるように、装着エラーが発生したときの画像データのみを保存する技術では、記憶容量を節約できる点は好ましい。しかしながら、エラーが発生したときに、エラー発生時の作業の実施状況しか確認できない。このため、エラー発生以前に軽微な兆候事象が有ったか否かを確認できず、兆候事象がエラーに進展する状況も確認できない。したがって、エラー発生時の原因の究明および今後の予防対策の検討などに対して、必ずしも十分な画像データを提供できない。
【0008】
部品実装機における部品装着エラーなどの作業エラーは、アトランダムに発生するのでなく、何らかの変化事象に起因して発生する場合の多いことが経験的および統計的に知られている。例えば、変化事象として、装着ノズルを変更したときや部品ロットを変更したとき、その直後に作業エラーは発生しやすい。また、作業エラーは突発的に発生するのでなく、エラーよりも軽微なエラー兆候事象がまず発生し、これが作業エラーにまで進展する場合が多い。したがって、変化事象およびエラー兆候事象を検出することで、作業の実施状況の撮像時期や画像データの保存方法を効率化できると考えられる。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、作業エラーを未然に防止することができ、動画データを保存するためのメモリ装置の記憶容量を低減でき、作業エラーやその兆候事象が発生したときに効率的な対応を可能とする基板生産状況監視装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する請求項1に係る基板生産状況監視装置の発明は、基板に所定の作業を施す基板用作業機器に設けられ、前記作業の実施状況を動画で撮像して動画データを出力するカメラ部と、前記動画データを受け取り、保存して、表示するデータ操作部と、前記基板用作業機器内で前記作業の実施条件が変化する変化事象、および前記作業が作業エラーとなる兆候を示すエラー兆候事象の少なくとも一方をトリガー事象として検出するトリガー事象検出部と、前記トリガー事象検出部が前記トリガー事象を検出すると、前記カメラ部に動画撮像を開始させ、前記データ操作部に当該動画データを所定データ長単位で一時記憶させる撮像開始手段と、を備えた。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記作業エラーを検出する作業エラー検出部と、前記作業エラー検出部が前記作業エラーを検出すると、当該作業エラーを検出した時点での前記所定データ長単位の前記動画データを前記データ操作部に保存させるデータ保存手段と、をさらに備えた。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項2において、前記作業エラー検出部が前記作業エラーを検出すると、当該作業エラーを検出した時点での前記所定データ長単位の前記動画データを前記データ操作部に表示させるエラー時表示手段をさらに備えた。
【0013】
請求項4に係る発明は、
請求項2または3において、前記撮像開始手段は、相対的に小記憶容量のバッファメモリに前記動画データを一時記憶し、前記データ保存手段は、相対的に大記憶容量の外部ストレージメモリに前記動画データを保存する。
【0014】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか一項において、前記トリガー事象検出部が前記変化事象を検出してから所定時間が経過した後、および、前記トリガー事象検出部が検出していた前記エラー兆候事象が消失して正常動作範囲内に戻った
後に、前記カメラ部に前記動画撮像を終了させ、前記データ操作部に前記動画データの一時記憶を終了させる撮像終了手段をさらに備えた。
【0015】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか一項において、前記エラー兆候事象を発生させる要因の候補である要因候補、および当該要因候補を解消する対策の候補である対策候補を保持したデータベース部と、前記トリガー事象検出部が前記エラー兆候事象を検出すると、当該エラー兆候事象を検出した時点での前記所定データ長単位の前記動画データを前記データ操作部に表示させ、当該エラー兆候事象に係る前記要因候補および前記対策候補を前記データベース部に表示させる兆候時表示手段と、をさらに備えた。
【0016】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか一項において、前記基板用作業機器は、基板を搬送経路に沿って搬入し位置決めし搬出する基板搬送装置と、複数の部品を保持する部品供給リールを装備した部品供給フィーダを複数有して前記部品を供給する部品供給装置と、前記部品供給装置から前記部品を吸着して位置決めされた基板に装着する装着ノズルおよび前記装着ノズルを保持して移動する装着ヘッドを有する部品移載装置と、を備えた部品実装機を含み、前記カメラ部は、前記部品実装機に設けられ、前記装着ノズルによる前記部品の吸着および装着の少なくとも一方の実施状況を動画で撮像して
前記動画データを出力し、前記変化事象は、前記部品供給フィーダ、前記装着ノズル、および前記装着ヘッドのいずれかを変更した事象、あるいは、前記部品供給リールを交換して部品ロットを変更した事象、あるいは、前記基板搬送装置、前記部品供給装置、および前記部品移載装置の少なくとも一装置で所定稼働時間が経過した事象、のいずれかを含み、前記エラー兆候事象は、前記装着ノズルが前記部品を吸着するときの吸着精度低下、および前記装着ノズルが前記部品を装着するときの装着精度低下のいずれかを含む。
【0017】
請求項8に係る発明は、請求項7において、前記基板用作業機器は、前記基板に装着された
前記部品の位置および姿勢を検査する基板外観検査機を含み、前記基板外観検査機は、前記トリガー事象検出部として前記部品が装着精度低下となる
前記エラー兆候事象を検出し、
前記作業エラーを検出する作業エラー検出部として前記部品が未装着または装着精度エラーとなる
前記作業エラーを検出する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る基板生産状況監視装置の発明では、トリガー事象検出部は、作業の実施条件が変化する変化事象および作業エラーの兆候を示すエラー兆候事象の少なくとも一方をトリガー事象として検出し、撮像開始手段は、トリガー事象が発生したときにカメラ部に動画撮像を開始させ、データ操作部に当該動画データを所定データ長単位で一時記憶させる。ここで、変化事象の後は比較的に作業エラーが発生しやすく、エラー兆候事象は作業エラーに進展しやすい。つまり、本発明では、たとえ作業エラーが発生していなくとも、作業エラーが発生しやすいと想定される時期に作業の実施状況を動画で撮像し、動画データを一時的に残すようにする。
【0019】
したがって、オペレータは、作業エラーが発生するリスクを事前に把握し、必要に応じて対策を実施して作業エラーを未然に防止することができる。また、実際に作業エラーが発生したときには、動画データを再生することで作業エラーの前後の作業の実施状況を確認できるので、効率的な対応が可能になる。さらに、トリガー事象が発生しない常時は動画撮像を行わないので、動画データを保存するためのメモリ装置の記憶容量を低減でき、装置構成や装置操作を簡素化して、装置費用を低減できる。
【0020】
請求項2に係る発明では、作業エラー検出部が作業エラーを検出すると、作業エラーを検出した時点での動画データを保存する。つまり、重要となる作業エラー発生時の動画データは、一時記憶でなく長期にわたって保存するようにする。これにより、メモリ装置の限られた記憶容量を有効に使用して、重要な作業エラー発生時の動画データを逐次蓄積してゆくことができる。仮に、従来技術のように毎回の作業の動画データを全て保存すると、多数の正常動作時の動画データにより短期間でメモリ装置の空き容量が無くなり、非効率である。さらに、今回の作業エラーの発生状況を過去の作業エラー発生時比較したりできるので、作業エラー発生時の効率的な対応が可能になる。
【0021】
請求項3に係る発明では、作業エラー検出部が作業エラーを検出すると、エラー時表示手段は動画データを自動で表示させる。したがって、オペレータは直ちに作業エラーが発生したときの作業の実施状況を確認でき、迅速かつ正確な対応が可能になる。
【0022】
請求項4に係る発明では、
相対的に小記憶容量のバッファメモリに動画データを一時記憶し、相対的に大記憶容量の外部ストレージメモリに動画データを保存する。このように、2種類のメモリ装置を使い分けることで、装置構成を適正化してコストパフォーマンスを向上できる。
【0023】
請求項5に係る発明では、変化事象が発生してから所定時間が経過した後、および、エラー兆候事象が消失して正常動作範囲内に戻った
後に、動画撮像を終了する。これにより、重要度の低い正常動作時の動画撮像を延々と続けることがなくなり、メモリ装置を効率的に使用できる。
【0024】
請求項6に係る発明では、エラー兆候事象の要因候補および対策候補を保持したデータベース部を備え、エラー兆候事象が発生したときに動画データと要因候補および対策候補とを表示させる。これにより、作業エラーが発生する以前の軽微なエラー兆候事象が発生している時期に、オペレータは要因候補および対策候補と動画データとを照合して好ましい対策を実施できるので、エラー兆候事象が作業エラーに進展する以前に確実に未然防止することができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、基板用作業機器は部品実装機を含み、カメラ部は
部品実装機に設けられて装着ノズルによる部品の吸着および装着の少なくとも一方の実施状況を動画で撮像する。本発明は、部品実装機で実施することができ、部品実装機における変化事象およびエラー兆候事象に対して、前記各請求項の効果が顕著になる。
【0026】
請求項8に係る発明では、基板用作業機器は基板外観検査機を含み、基板外観検査機はエラー兆候事象および作業エラーを検出する。本発明は、部品実装機と基板外観検査機とを組み合わせた構成で実施することができ、前記各請求項の効果が顕著になる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1実施形態の基板生産状況監視装置1について、
図1〜
図4を参考にして説明する。
図1は、第1実施形態の基板生産状況監視装置1の装置構成を示す構成図である。図示されるように基板生産状況監視装置1は、基板生産ライン9に装備されている。
【0029】
まず、基板生産ライン9の構成の概要について説明する。基板生産ライン9は、部品実装機91、基板外観検査機92、およびリフロー機93が共通ベース99上に並設され、図略の基板搬送装置で連結されて構成されている。また、リフロー機93の前側にホストコンピュータ94が配設されている。基板生産ライン9の構成は、上記に限定されず、はんだ印刷機および印刷検査機を含んでもよく、あるいは複数台の部品実装機が並設されていてもよい。
【0030】
部品実装機91は、前述した基板搬送装置の他に、図略の部品供給装置、部品移載装置、および部品カメラを有している。基板搬送装置は、基板を搬送経路に沿って搬入し位置決めし搬出する。部品供給装置は、フィーダ方式の装置であり、複数の部品供給フィーダ911が並設されて構成されている。部品供給フィーダ911には、部品供給リール912が回転可能に装着されている。部品供給リール912には、多数の部品を一定の間隔で保持したキャリアテープが巻回されており、キャリアテープが引き出されて順次部品が供給される。
図1のA部は、部品実装機91の内部の一部を拡大しており、1台の部品供給フィーダ911が例示されている。
【0031】
部品供給フィーダ911は、オペレータMの操作により、部品供給リール912とともに交換して変更されるようになっている。また、部品供給リール912のみが、オペレータMの操作で交換されることもある。部品供給フィーダ911または部品供給リール912の交換により、供給される部品の部品ロットが変更される。部品供給フィーダ911や部品供給リール912の変更は、本発明の変化事象に該当する。
【0032】
部品移載装置は、直交2軸方向に移動可能ないわゆるXYロボットタイプの装置である。部品移載装置は、2軸駆動機構によって直交2軸方向に駆動される装着ヘッド915を有している。装着ヘッド915は、1個または複数個の装着ノズル916を昇降可能に保持している。装着ノズル916は、負圧を利用して部品供給フィーダ911から部品を吸着し、位置決めされた基板に装着する。装着する部品の種類や大きさなどに応じて、装着ヘッド915および装着ノズル916は変更されるようになっている。装着ヘッド915や装着ノズル916の変更は、本発明の変化事象に該当する。
【0033】
部品カメラは、部品移載装置の装着ノズル916が部品を吸着したときの状態を撮像する。部品カメラは、得られた撮像データに基づいて装着ノズル916の部品吸着状態、換言すると部品の正規位置を吸着しているか否か、および部品の姿勢は適正であるか否かを判定する。部品カメラは、装着ノズル916の部品吸着状態が不良である場合は吸着作業エラーと判定し、当該部品を廃棄するように指令する。装着ノズル916が部品を吸着できなかった未吸着や、部品を途中で落下させた場合も、当然作業エラーになる。また、部品カメラは、吸着作業エラー未満の軽微な不具合を吸着精度低下と判定する。装着ノズル916が部品を吸着したときの吸着精度低下は、本発明のエラー兆候事象に該当する。
【0034】
また、部品実装機91を構成する基板搬送装置、部品供給装置、および部品移載装置の稼働時間は、それぞれ管理されている。所定稼働時間が経過したときに、オペレータはこれらの装置の点検および手入れを実施することが多い。点検および手入れを実施したか否かに関わらず、本第1実施形態では、所定稼働時間の経過を変化事象として扱う。
【0035】
基板外観検査機92は、部品実装機91の後工程側に配置されて、基板の外観を検査する。詳述すると、基板外観検査機92は、各部品が基板上の指定された装着位置に正確にかつ正しい姿勢で装着されているか否かを検査する。基板外観検査機92は、部品の装着位置が許容誤差以上偏移していたり、装着姿勢が誤っていたりすると、装着作業エラーと判定する。部品が装着されていない未装着も、当然ながら作業エラーになる。また、基板外観検査機92は、装着作業エラー未満の軽微な不具合を装着精度低下と判定する。装着精度低下は、本発明のエラー兆候事象に該当する。
【0036】
リフロー機93は、基板外観検査機92の後工程側に配置されており、基板外観検査機92で合格と判定された基板が搬入される。リフロー機93は、基板母材と部品との間のペースト状はんだを加熱して再溶融させた後に冷却して固化させ、はんだ付け作業を完了させる。
【0037】
ホストコンピュータ94は、部品実装機91、基板外観検査機92、およびリフロー機93と通信線で接続されており、これらの機器91〜93の作業進捗を総括的に管理する。部品実装機91で発生した変化事象、部品吸着精度低下のエラー兆候事象、および部品吸着作業エラーなどの作業エラーの情報は、ホストコンピュータ94に伝送される。同様に、基板外観検査機92で発生した部品装着精度低下のエラー兆候事象、および装着作業エラーなどの作業エラーの情報も、ホストコンピュータ94に伝送される。
【0038】
次に、基板生産状況監視装置1の構成について説明する。
図1に示されるように、基板生産状況監視装置1は、カメラ部2、動画保存用コンピュータ3、および外部ストレージメモリ4で構成されている。カメラ部2は、部品実装機91の内部に配設されている。動画保存用コンピュータ3および外部ストレージメモリ4は、基板生産ライン9の傍らや、基板生産ライン9から離れた監視室内に配設でき、特に配置の制約はない。
【0039】
カメラ部2は、部品実装機91の部品移載装置に組み込まれており、2軸駆動機構によって装着ヘッド915とともに移動するようになっている。カメラ部2は、装着ノズル916による部品の吸着および装着の実施状況を動画で撮像して動画データを出力する。上述に限定されず、吸着および装着の一方の実施状況だけを撮像してもよく、あるいは、2台の固定カメラで吸着および装着を分担して撮像するようにしてもよい。
【0040】
動画保存用コンピュータ3は、汎用のハードウェア、および基板の生産状況を監視するための専用のソフトウェアで構成されている。動画保存用コンピュータ3のハードウェアとして、図略のCPU、記憶装置、ディスプレイ31、キーボード32などを例示でき、これに限定されない。動画保存用コンピュータ3は、カメラ部2と通信線33で接続されている。動画保存用コンピュータ3は、カメラ部2の撮像動作を制御するとともに、撮像動作によって得られた動画データをカメラ部2から受け取る。動画保存用コンピュータ3の記憶装置は、バッファメモリとして動画データを一時記憶できるようになっている。ただし、バッファメモリの記憶容量には制約があるため、一時記憶された動画データは古いものから順番に消去される。
【0041】
また、動画保存用コンピュータ3は、基板生産ライン9のホストコンピュータ94と通信線34で接続されている。動画保存用コンピュータ3は、ホストコンピュータ94から変化事象、エラー兆候事象、および作業エラーの情報を受け取る。この情報の受け取りは、一定時間間隔の通信で行うようにしてもよく、あるいは、臨時の割り込み処理によって行うようにしてもよい。
【0042】
外部ストレージメモリ4は、動画保存用コンピュータ3のバッファメモリよりも格段に大きな記憶容量を有する記憶装置である。外部ストレージメモリ4は、動画保存用コンピュータ3と通信線35で接続されている。外部ストレージメモリ4は、動画保存用コンピュータ3から制御され、伝送された動画データの保存及び読み出しができるようになっている。外部ストレージメモリ4では、動画保存用コンピュータ3のバッファメモリと異なり、伝送された動画データを全て保存しても記憶容量が不足する懸念は生じない。
【0043】
本発明のデータ操作部、トリガー事象検出部、撮像開始手段、作業エラー検出部、データ保存手段、エラー時表示手段、および撮像終了手段は、動画保存用コンピュータ3のソフトウェアによって実現されている。
【0044】
データ操作部は、カメラ部2から動画データを受け取り、この動画データを保存して、表示する。データ操作部の実態は、動画保存用コンピュータ3がカメラ部2から動画データを受け取って記憶装置に一時記憶または保存し、ディスプレイ31に表示することである。具体的な動画データの保存先、保存方法、および表示方法は、後述の各手段により詳細に規定される。
【0045】
トリガー事象検出部は、部品実装機91内で装着ノズル916が部品を吸着および装着する作業の実施条件が変化する変化事象、および吸着および装着作業が作業エラーとなる兆候を示すエラー兆候事象をトリガー事象として検出する。トリガー事象検出部の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94から変化事象およびエラー兆候事象の情報を受け取ることである。基板生産ライン9は、トリガー事象検出部の機能の一部を分担している。
【0046】
撮像開始手段は、トリガー事象検出部がトリガー事象を検出すると、カメラ部2に動画撮像を開始させ、データ操作部に当該動画データを所定データ長単位で一時記憶させる。撮像開始手段の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94から変化事象およびエラー兆候事象の情報を受け取ると、カメラ部2に撮像を開始する指令を発し、カメラ部2から受け取った動画データをバッファメモリに所定データ長単位で一時記憶することである。
【0047】
エラー検出部は、作業エラーを検出する。エラー検出部の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94からエラー事象の情報を受け取ることである。基板生産ライン9は、エラー検出部の機能の一部を分担している。
【0048】
データ保存手段は、作業エラー検出部が作業エラーを検出すると、当該作業エラーを検出した時点での所定データ長単位の動画データをデータ操作部に保存させる。データ保存手段の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94から作業エラーの情報を受け取ると、カメラ部2から受け取った動画データを外部ストレージメモリ4に所定データ長単位で保存することである。
【0049】
エラー時表示手段は、作業エラー検出部が作業エラーを検出すると、当該作業エラーを検出した時点での所定データ長単位の動画データをデータ操作部に表示させる。エラー時表示手段の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94からエラー事象の情報を受け取ると、バッファメモリまたは外部ストレージメモリ4から動画データを読み出して、ディスプレイ31に表示することである。
【0050】
撮像終了手段は、トリガー事象検出部が変化事象を検出してから所定時間が経過した後、
および、トリガー事象検出部が検出していたエラー兆候事象が消失して正常動作範囲内に戻った後に、カメラ部2に動画撮像を終了させ、データ操作部に動画データの一時記憶を終了させる。撮像終了手段の実態は、動画保存用コンピュータ3で予め前記の所定時間を設定しておき、ホストコンピュータ94から変化事象の情報を受け取ってから所定時間が経過してもエラー事象の情報を受け取らなかったときに、カメラ部2に撮像を終了する指令を発することである。さらにまた、撮像終了手段の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94からエラー兆候事象の情報を受け取っている間はカメラ部2に動画撮像を継続させ、エラー兆候事象の情報が消失したときにカメラ部2に撮像を終了する指令を発することである。
【0051】
次に、上述のように構成された第1実施形態の基板生産状況監視装置1の動作について説明する。
図2は、第1実施形態の装置1で変化事象が発生したときの動作を示すフローチャートである。また、
図3は、第1実施形態の装置1でエラー兆候事象が発生したときの動作を示すフローチャートである。
図2および
図3のフローチャートは、基板生産ライン9が稼働している間を通して機能する。
【0052】
図2のステップS1で、動画保存用コンピュータ3は、ホストコンピュータ94から変化事象の情報を受信していないか逐次確認する。変化事象の情報を受信していなければステップS1を繰り返し、変化事象の情報を受信するとステップS2に進む。ステップS2で、動画保存用コンピュータ3は、カメラ部2に動画撮像を開始させる。さらに、次のステップS3では、動画保存用コンピュータ3は、所定時間にわたって得られた動画データをバッファメモリに一時記憶する。
【0053】
次にステップS4で、動画保存用コンピュータ3は、ホストコンピュータ94からエラー事象の情報を受信しているか否かを調査する。エラー事象の情報を受信していなければステップS1に戻り、受信していればステップS5に進む。ステップS5で、動画保存用コンピュータ3は、所定時間の動画データをディスプレイ31に表示し、かつ所定時間の動画データをバッファメモリから外部ストレージメモリ4に転送して保存する。
【0054】
また、
図3のステップS11で、部品実装機91は部品の吸着および装着の作業を行う。このとき、ホストコンピュータ94はエラー兆候事象の有無を把握している。次のステップS12で、動画保存用コンピュータ3は、ホストコンピュータ94からエラー兆候事象の情報を受信していないか逐次確認する。エラー兆候事象の情報を受信していなければステップS11に戻り、エラー兆候事象の情報を受信するとステップS13に進む。ステップS13で、動画保存用コンピュータ3はカメラ部2に動画撮像を開始させ、さらに得られた動画データをバッファメモリに一時記憶する。
【0055】
次にステップS14で、動画保存用コンピュータ3は、ホストコンピュータ94からエラー事象の情報を受信しているか否かを調査する。エラー事象の情報を受信していなければステップS11に戻り、受信していればステップS15に進む。ステップS15では、動画保存用コンピュータ3は、動画データをディスプレイ31に表示し、かつ動画データをバッファメモリから外部ストレージメモリ4に転送して保存する。
【0056】
なお、変化事象およびエラー兆候事象のどちらも発生せずに、突発的にエラー事象の発生するおそれが皆無でない。この場合に、動画保存用コンピュータ3は、ホストコンピュータ94からエラー事象の情報を受け取った時点で、直ちにカメラ部2に動画撮像を開始させて動画データをバッファメモリに一時記憶し、さらに、動画データを外部ストレージメモリ4に転送して保存する。
【0057】
次に、
図4は、第1実施形態の基板生産状況監視装置1の監視機能を概念的に例示説明する図である。
図4で、横軸は特定部品の装着実施回数を示し、縦軸は特定部品の装着精度を示している。さらに、タイミングTは、特定部品を供給する部品供給フィーダ911の変更、すなわち変化事象が発生したタイミングTであることを示している。また、縦軸方向には、装着精度低下を判定する精度低下判定値E1、および装着エラーを判定するエラー判定値E2が示されている。
【0058】
図4の例では、変化事象の発生タイミングT以前は、特定部品の装着精度は精度低下判定値E1未満で良好に安定しており、カメラ部2による動画撮像は行われていない。そして、タイミングTで部品供給フィーダ911が変更されると、カメラ部2による動画撮像が開始されて、所定時間の動画データ、例えば装着実施回数10回分の動画データが一時記憶される。
【0059】
ここで、変化事象が発生したタイミングT以降も特定部品の装着精度が良好に安定していれば、10回分の動画データの重要度は低い。しかしながら、
図4の例では、特定部品の装着精度は不安定にばらついており、精度低下判定値E1およびエラー判定値E2を超過する場合が生じている。そして、特定部品の装着精度が大きなエラー値E3となってエラー判定値E2を超過した時点で、エラー事象と判定される。したがって、重要度の高いエラー事象が発生した前後の装着実施回数10回分の動画データを、一時記憶から長期的な保存に移行させることができる。また、その後のエラー値E4、E5のエラー事象についても、発生前後の動画データを長期的に保存できる。
【0060】
なお、
図4で説明した監視機能は部品供給フィーダ911を変更したときの例であり、別法を採用することもできる。例えば、装着ヘッド915や装着ノズル916を変更したときには、特定部品に限定することなく、全ての部品を対象として吸着精度および装着精度の低下やエラーを監視することが好ましい。
【0061】
第1実施形態の基板生産状況監視装置1では、作業エラーが発生しやすいと想定されるトリガー事象、すなわち変化事象およびエラー兆候事象の発生時にカメラ部2で作業の実施状況を動画で撮像し、動画データを一時的に残すようにする。さらに、作業エラーを検出した時点で、重要となる作業エラー時の動画データは、一時記憶でなく長期にわたって保存して、データ蓄積する。したがって、オペレータは、作業エラーが発生するリスクを事前に把握し、必要に応じて対策を実施して、作業エラーを未然に防止することができる。また、実際に作業エラーが発生したときには、動画データが自動で表示されるので、作業エラーの前後の作業の実施状況を確認でき、加えて過去の作業エラーとも比較できるので、効率的な対応が可能になる。
【0062】
さらに、バッファメモリによる一時記憶と外部ストレージメモリ4による長期の保存の使い分けに加えて、トリガー事象が発生しない常時はカメラ部2による動画撮像を行わない。したがって、動画データを保存するためのバッファメモリや外部ストレージメモリ4の記憶容量を低減して有効に使用できる。これにより、装置構成や装置操作を簡素化して装置費用を低減でき、あるいは、装置構成を適正化してコストパフォーマンスを向上できる。
【0063】
次に、第2実施形態の基板生産状況監視装置1Aについて、第1実施形態と異なる点を主に説明する。
図5は、第2実施形態の基板生産状況監視装置1Aの装置構成を示す構成図である。図示されるように、第2実施形態ではインプロセス品質管理システム5( In Process Quality Control System、以下IPQCシステム5と略記)が余分に組み込まれている。第2実施形態の基板生産状況監視装置1Aは、第1実施形態の装置1の全ての機能を有するとともに、IPQCシステム5の機能が付与されている。
【0064】
IPQCシステム5は、作業エラーの未然防止の機能を向上するためのシステムである。
図5に示されるように、IPQCシステム5は、データベースサーバ51、データベース部52、および各種の入出力装置53で構成されている。データベースサーバ51は、データベース部52を管理し、各種の演算や、解析、推論などを行うコンピュータである。データベースサーバ51は、通信線36、37で動画保存用コンピュータ3およびホストコンピュータ94に接続されており、相互にデータを交換できるようになっている。なお、データベースサーバ51は、外部ストレージメモリ4を経由して動画保存用コンピュータ3に接続されていてもよい。
【0065】
データベースサーバ51は、ホストコンピュータ94から、変化事象、エラー兆候事象、および作業エラーの情報に加えて、作業の実施状況を表すあらゆるデータをリアルタイムに取得する。あらゆるデータの例として、部品の吸着精度や装着精度などを例示できる。データベースサーバ51は、これらのデータの安定度を解析し、安定度が低下したときに変化事象の発生箇所との関係を関連付ける。
【0066】
一方、データベース部52には、エラー兆候事象を発生させる要因の候補である要因候補、および当該要因候補を解消する対策の候補である対策候補が保持されている。したがって、データベースサーバ51は、データベース部52を検索することで、エラー兆候事象の要因候補および対策候補を推論できる。推論された要因候補および対策候補は、
図5の白抜き矢印Bに示されるように、入出力装置53に出力されて表示され、オペレータMに提供される。これは、本発明の兆候時表示手段の一部に該当する。
【0067】
また、本発明の兆候時表示手段の残部は、動画保存用コンピュータ3のソフトウェアによって実現されている。すなわち、兆候時表示手段は、トリガー事象検出部がエラー兆候事象を検出すると、当該エラー兆候事象を検出した時点での所定データ長単位の動画データをデータ操作部に表示させる。兆候時表示手段の実態は、動画保存用コンピュータ3がホストコンピュータ94からデータベースサーバ51を経由してエラー兆候事象の情報を受け取ると、バッファメモリまたは外部ストレージメモリ4から動画データを読み出して、ディスプレイ31に表示することである。
【0068】
例えば、
図6は、第2実施形態で、エラー兆候事象の例である装着精度低下が発生したときを示す図である。
図6で、オペレータMは、装着ノズル917を交換して部品実装機91Aにセットしており、変化事象が発生している。そして、その後に部品実装機91A内で装着ノズル917が部品Pを基板Kに装着したところ、理想位置Rから偏移して装着精度低下、すなわちエラー兆候事象が発生している。
【0069】
このとき、データベースサーバ51は、装着精度低下と装着ノズル917の交換とを関連付け、他の要因候補があれば併せて関連付ける。さらに、データベースサーバ51は、全ての要因候補に対するあらゆる対策候補を推論する。一方、動画保存用コンピュータ3は、当該の部品Pを装着した作業の実施状況の画像データをディスプレイ31に再生表示する。
【0070】
このように、オペレータMは、エラー兆候事象が発生しているときに、要因候補および対策候補と動画データとを照合して確認し、好ましい対策を検討して実施できる。さらに、オペレータMは、
図5の白抜き矢印Cに示されるように、入出力装置53を用いて実施した対策内容を入力することができる。これにより、データベースサーバ51は、エラー兆候事象のその後の変化の様子と実施した対策内容との関係を解析し、対策内容の効果を入出力装置53に出力して表示できる。
【0071】
第2実施形態の基板生産状況監視装置1Aでは、第1実施形態と同様の効果が発生し、さらに、作業エラーの未然防止の機能が向上する。つまり、作業エラーが発生する以前の軽微なエラー兆候事象が発生している時期に、オペレータMは、要因候補および対策候補と動画データとを照合して好ましい対策を実施できるので、エラー兆候事象が作業エラーに進展する以前に確実に未然防止することができる。
【0072】
なお、変化事象、エラー兆候事象、および作業エラーは、上記した内容に限定されず、他の事象であってもよい。また、第1および第2実施形態で、カメラ部2は部品実装機91、91Aに組み込まれているとしたがこれに限定されない。例えば、インクジェット装置やディスペンサ装置を用いた描画方式のはんだ印刷機にカメラ部2を組み込んで、はんだ印刷の実施状況を監視するようにしてもよい。その他、本発明は様々な応用や変形が可能である。