(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243354
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】リフィル容器用注出構造
(51)【国際特許分類】
B65D 47/36 20060101AFI20171127BHJP
B65D 75/58 20060101ALI20171127BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20171127BHJP
B65D 47/08 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
B65D47/36BRG
B65D47/36BSF
B65D75/58
B65D47/06
B65D47/08 130
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-554248(P2014-554248)
(86)(22)【出願日】2013年11月21日
(86)【国際出願番号】JP2013081367
(87)【国際公開番号】WO2014103574
(87)【国際公開日】20140703
【審査請求日】2016年4月1日
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2012/084102
(32)【優先日】2012年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000590
【氏名又は名称】特許業務法人 小野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塙 敦士
(72)【発明者】
【氏名】國分 剛士
(72)【発明者】
【氏名】石井 敢歩
【審査官】
宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−214251(JP,A)
【文献】
特開2012−158361(JP,A)
【文献】
特開2011−016581(JP,A)
【文献】
特開平06−122461(JP,A)
【文献】
実開昭63−086021(JP,U)
【文献】
特開2004−231217(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0108681(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44−35/54
B65D 39/00−55/16
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
詰め替え先容器の口頸部に被冠して、詰め替え先容器の口部より、または詰め替え先容器口部に取り付けられた中栓の吐出口より内容物を詰め替え可能なリフィル容器用注出構造であって、底部と該底部の周縁から立設する周壁により詰め替え先容器の口頸部が挿入可能な挿入部を形成するキャップと、天壁と該天壁の周縁から垂下する周壁を有し、前記挿入部内において前記キャップの周壁と軸方向に摺動可能に設けられた摺動部材とを備え、前記キャップの底部には破断可能なシール部により閉塞された注出口が形成され、前記摺動部材の天壁には前記詰め替え先容器の口部または前記中栓の吐出口に挿入可能な注出ノズルが立設されるとともに天壁の下面には押圧部が下方へ突設され、該注出ノズルから押圧部にかけて注出路が貫通形成されており、摺動部材がキャップ内に押し込まれることにより前記シール部に当接する押圧部の先端部がシール部を破断することを特徴とするリフィル容器用注出構造。
【請求項2】
前記シール部が板状に形成され、その周縁に押圧により破断可能な程度の肉厚に形成された易破断部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項3】
前記シール部の周縁の一部に前記易破断部よりも肉厚に形成され、押圧では破断されない接続部を設けたことを特徴とする請求項2に記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項4】
前記シール部が押圧により破断可能なフィルム状もしくはシート状の素材により形成されていることを特徴とする請求項1に記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項5】
前記キャップの周壁の上端には前記挿入部の開口を封止するための蓋部が開閉自在に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項6】
前記キャップの周壁内周面と前記摺動部材の周壁外周面には、互いに係止可能な係止手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項7】
前記キャップの周壁内周面に設けられた係止手段が、周方向に連続して凸設された係止突起であり、前記摺動部材の周壁外周面に設けられた係止手段が、周方向に連続して上下2箇所設けられた前記係止突起を係止可能な係止溝であることを特徴とする請求項6に記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項8】
前記摺動部材の天壁上面には凸条部が凸設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項9】
前記摺動部材の注出ノズルの外径が、該注出ノズルと、前記詰め替え先容器の口部または前記中栓の吐出口との間にわずかな空隙を設けてリフィル時に容器内の空気が逃げるように形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項10】
詰め替え先容器口部に取り付けられた中栓の吐出口より内容物を詰め替え可能な請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項11】
前記押圧部の先端部の一部において、他の部分よりも下方へ突出する突出部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項12】
前記押圧部の先端部が斜めに形成されていることを特徴とする請求項11に記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項13】
前記押圧部の先端部において、前記突出部が前記易破断部に当接する部分に設けられていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項14】
前記キャップの周壁内周面と前記摺動部材の周壁外周面には、摺動部材のキャップ内における周方向の回転防止手段が設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項13のいずれかに記載のリフィル容器用注出構造。
【請求項15】
前記回転防止手段が、キャップの周壁内周面に垂直方向に延伸して突設する凸条部と、摺動部材の周壁外周面に垂直方向に延伸して凹設され、前記凸条部を装入可能な凹溝部であることを特徴とする請求項14に記載のリフィル容器用注出構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料や液状洗剤、液状の飲食品、薬品等、液体を容器に詰め替えるためのリフィル用容器注出構造(スパウト)に関し、更に詳細には、容器本体について改良を加えることなく、リフィル容器に装着されて容易且つ確実に内容物を詰め替えることが可能なリフィル容器用注出構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗剤やシャンプー、リンス類の詰め替え(リフィル)のために内容物のみ販売することは一般的に行われているが、近年、高価な液状化粧料についても詰め替え用に化粧料のみが販売されるケースが増えている。そして、高価な化粧料の場合には、安価なシャンプーやリンスなどとは異なり、多少なりとも内容物が無駄にならないよう、内容物をこぼすことなく確実に詰め替えたいという要請が特に強い。
【0003】
ところで、液状化粧料は通常ビンなどの容器に入れられて販売されているが、かかる容器の口部は、吐出用としては、内容物の吐出量を適量にコントロールするために口径は適度に小さい方が好ましい。そのため、容器の口部先端を直接小口径に成形する場合もあるが、一方で、内容物を充填する充填口としては、容器への充填効率が下がらないよう口部の口径をできるだけ広くとることが好ましい。そこで、吐出用に容器口部に小口径の吐出口を備えた中栓を取り付ける方法が、両者を満足できるメリットを有するため、広く行われている。この中栓の吐出口は、内容物の液体の粘性などによってその口径寸法が決まるが、一般に3mm〜12mm程度であり、シャンプーやリンスなどよりも粘性が低い化粧水、乳液などの液状化粧料の場合には、一般に3mm〜8mm程度とその口径はより小さく形成される傾向にある。そのため、容器本体から中栓を外すことなくその吐出口からリフィルすることは困難であった。
【0004】
そこで、液状化粧料の詰め替えを行う場合は、容器の中栓を取り外して行うことが一般的となっている。しかしながら、中栓は通常の使用で取れることがないように容器口部に対して無理嵌合されており、取り外し作業が煩雑であった。また、中栓を取り外す際に誤って容器内に残っている化粧料をこぼしてしまうおそれもあった。
【0005】
以上の課題を解決すべく、特許文献1及び2には中栓が容器の口部に取り外し可能に取り付けられた詰替用容器が開示されている。これらのものは、上記のような中栓の取り外しに伴う煩わしさを解消するものであるが、中栓をキャップ状として形成しているため、その上から被冠される外蓋が容器口部に対して大きくなってしまい、容器のデザイン的なバランスがくずれるおそれがあった。また、中栓を外すことにより注入作業は容易になるものの、詰め替え中にリフィル容器の注出口が容器口部から外れてしまったり、容器を倒してしまったりするなどして内容物がこぼれるおそれがあった。さらに、化粧水や乳液などの液状化粧料は一般に6,000mPa・s(25℃)程度より低い粘度であることが多く、シャンプーやリンスなどと比べても粘性が低いため、リフィル容器の注出口を下に向けて容器口部にまで持ってくるまでの間にリフィル容器から内容物がこぼれてしまうおそれもあった。
【0006】
そこで、特許文献3及び4には、詰め替え時の内容物のこぼれを防ぐために、詰替容器の口部に取り付けられる内キャップ(装着筒)と、該内キャップ(装着筒)に対して容器軸方向にスライド移動可能に取り付けられた外キャップ(操作部材)とを備え、かかる内キャップ(装着筒)には注出口を閉塞するシール部を設けた詰め替え容器が開示されている。
【0007】
しかしながら、これらのものは、シャンプーやリンスのディスペンサー容器のように詰め替え時に詰め替え先の容器本体の口部が広く開口した状態のものを対象としており、化粧料容器のように中栓付きの容器についての使用は想定されておらず、中栓を外すことなく詰め替えることは困難であった。さらに、これらの容器は、誤って外キャップ(操作部材)が移動してシール部を破断しないようにその移動を規制する部材が必要であるなど、構造も複雑であった。
【0008】
【特許文献1】実開平7−33861
【特許文献2】特許第4793813号
【特許文献3】特開2011−157097
【特許文献4】特開2012−30856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、従来のリフィル容器の詰め替え機構のかかる欠点を克服し、化粧料容器をはじめ一般的な液体用の容器について、中栓装着の有無に関わらず汎用的に使用することができ、とりわけ小口径の吐出口を有する中栓を装着した詰め替え先容器に対し、中栓装着のままの状態で詰め替え先容器の口頸部に被冠して内容物を確実且つ容易に詰め替え可能なリフィル容器用注出構造の提供をその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、詰め替え先容器の口頸部に被冠して、詰め替え先容器の口部より、または詰め替え先容器口部に取り付けられた中栓の吐出口より内容物を詰め替え可能なリフィル容器用注出構造であって、底部と該底部の周縁から立設する周壁により詰め替え先容器の口頸部が挿入可能な挿入部を形成するキャップと、天壁と該天壁の周縁から垂下する周壁を有し、前記挿入部内において軸方向に摺動可能に設けられた摺動部材とを備え、前記キャップの底部には破断可能なシール部により閉塞された注出口が形成され、前記摺動部材の天壁には前記詰め替え先容器の口部または前記中栓の吐出口に挿入可能な注出ノズルが立設されるとともに天壁の下面には押圧部が下方へ突設され、該注出ノズルから押圧部にかけて注出路が貫通形成されており、摺動部材がキャップ内に押し込まれることにより前記シール部に当接する押圧部の先端部がシール部を破断することを特徴とするリフィル容器用注出構造である。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかるリフィル容器用注出構造はリフィル容器を逆さにしても内容物がこぼれるおそれがなく、詰め替え先容器の口部をキャップ内に挿入してシール部を破断することによりはじめて内容物が注出されるため、容易且つ確実に内容物を詰め替えることができる。
【0012】
また、本発明にかかるリフィル容器用注出構造は、小口径の吐出口を備えた中栓が装着されている化粧料等の容器についても、容器口頸部に被冠することで注出ノズルが中栓吐出口に挿入されるため、中栓を詰め替え先の容器から取り外すことなく、容易且つ確実に内容物を詰め替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)本発明のリフィル容器用注出構造のキャップ部の正面図、(b)同平面図、(c)同中央縦断面図
【
図2】(a)本発明のリフィル容器用注出構造の摺動部材の正面図、(b)同平面図、(c)同断面図
【
図3】(a)本発明のリフィル容器用注出構造の他の態様における、注出ノズルの横断面図、(b)さらに別の態様における同横断面図
【
図5】(a)本発明のリフィル容器用注出構造の使用状態の一態様を表した断面図、(b)本発明のリフィル容器用注出構造の使用状態の一態様を表した断面図
【
図6】(a)本発明のリフィル容器用注出構造の第二態様におけるキャップ部の正面図、(b)同平面図、(c)同中央縦断面図
【
図7】(a)本発明のリフィル容器用注出構造の第二態様における摺動部材の正面図、(b)同平面図、(c)同中央縦断面図
【
図8】(a)本発明のリフィル容器用注出構造の第二態様においてキャップ部に摺動部材を挿入した状態を表した断面図、(b)本発明のリフィル容器用注出構造の第二態様においてシール部を開封した状態を表した断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のリフィル容器用注出構造の実施態様を、図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明はこれら実施態様に何ら制約されるものではない。
【0015】
図1(a)は本発明のリフィル容器用注出構造のキャップ部の正面図、(b)は同平面図、(c)は同中央縦断面図、
図2(a)は本発明のリフィル容器用注出構造の摺動部材の正面図、(b)は同平面図、(c)は同断面図である。図中、1はキャップ、2は摺動部材、11は底部、12は周壁、13は蓋部、14は下部周壁、15は開口、16は注出口、17はシール部、18は周壁、19は挿入部、21は天壁、22は周壁、23は注出ノズル、24は押圧部、25は注出路、121は係止突起、122は滑り止め部、131は押さえ部、132は係合部、141は取付部、171は易破断部、172は接続部、211は凸条部、221aは係止溝、221bは係止溝、241は先端部をそれぞれ示す。
【0016】
本発明のリフィル容器用注出構造は、リフィル容器本体に取り付けられ、詰め替え先の容器の口頸部に被冠されるキャップ1と、キャップ1の内部で軸方向に摺動可能に設けられた摺動部材2から構成される。以下、各部について詳述する。
【0017】
図1に示すように、キャップ1は、底部11と底部11の周縁から立設する周壁12により化粧料容器の口頸部を挿入可能な挿入部19を形成しており、周壁12上端には挿入部19の上部開口15を封止するための蓋部13が開閉自在に設けられている(
図1で蓋部13は開状態である)。また、底部11の裏面には筒状の下部周壁14が垂下し、リフィル容器本体が取り付けられる取付部141が横方向に突出して設けられている。
【0018】
キャップ1の底部11には、その中央に注出口16が設けられており、この注出口16の周縁部を囲むようにして周壁18が挿入部19内へ立設している。そして、注出口16はシール部17によってその開口が閉塞され、かかるシール部17は押圧により破断可能な程度の肉厚に形成された易破断部171により周壁18の内周面に連接されている。かかる易破断部171はシール部17の全周縁に設けても良いが、シール部17の周縁の一部に易破断部171よりも肉厚にして押圧では破断されない接続部172を設けても良い。なお、本実施態様において、シール部17はキャップ1の他の部分と同一の材質により板状に形成されているが、保管時において注出口16を確実に閉塞でき、且つ、リフィル時には押圧で破断開封できるものであればよく、例えば、破断可能なフィルム状の素材やシート状の素材によりシール部17を形成しても良い。その場合、シール部自体が破断できるため、その周縁に易破断部を別に設ける必要がない。
【0019】
キャップ1の周壁12の内周面の下部には、係止突起121が周方向に連続して凸設され、周壁12の外周面には複数の滑り止め部122が凸設されている。また、本実施態様では、周壁12の上端に開閉自在の蓋部13が一体に設けられているが、蓋部13は周壁12から独立した着脱自在な部材としても良い。かかる蓋部13の裏側からは係合部132が垂設され、蓋部13を閉じたときにキャップ1の周壁12の内周面に係合可能となっている。さらに、蓋部13の裏側の中央には押さえ部131が突設している。
【0020】
図2に示すように、摺動部材2は天壁21と天壁21の周縁から垂下する周壁22により有蓋筒状に形成されている。そして、天壁21の上面からは注出ノズル23が上方へ突出して設けられており、天壁21の下面からは押圧部24が周壁22の下端より下方へ突出するように設けられている。これら注出ノズル23と押圧部24内には注出路25が貫通形成されている。注出ノズル23は化粧料等容器の中栓の吐出口421に挿入可能な外径に形成されているが、注出ノズル23と中栓吐出口421の間にはわずかな空隙を設けてリフィル時に容器内の空気が逃げるようにその外径を設定するのが好ましい。また、天壁21の上面には凸条部211が放射状に複数凸設されている。さらに、周壁22の外周面には周方向に連続して係止溝221aおよび係止溝221bが上下2箇所設けられている。なお、上記では、詰め替え先の容器に中栓が装着されている場合について説明したが、本発明にかかるリフィル容器用注出構造は容器の口部から中栓を取り外した状態でも口部から直接リフィルすることができ、さらに、中栓を有さずに容器の口部先端に直接小口径の吐出口を有する容器についても吐出口からリフィル可能となっている。これらの場合でも、詰め替え先容器の口部(吐出口)と注出ノズル23との間にわずかな空隙を設けてリフィル時に容器内の空気が逃げるようにその外径を設定するのが好ましい。
【0021】
なお、上記実施態様においては、注出ノズル23の内壁の形状、即ち注出路25の横断面の形状は
図2(b)に示すように円形であるが、注出路25をより広くするために、例えば
図3(a)に示すように注出ノズル23の内壁の一部に一または複数の縦凹溝26を形成してもよい。縦凹溝26の横断面形状は
図3(a)では略半円形状であるが、これに限定されず、頂角を一または複数有する多角形の横断面形状の、例えば
図3(b)のような形状のものであってもよい。また、縦凹溝26は注出路25の軸線に対し平行に設けてもよいが、内容物の注出を妨げない範囲内において、螺旋状に設けてもよい。
【0022】
図4は、キャップ1内に摺動部材2を取り付けたリフィル前の状態を表す断面図である。キャップ1の挿入部19内において、摺動部材2は注出ノズル23を上に向けた状態で装着される。図に示すように、摺動部材2の周壁22の外径はキャップ1の周壁12の内径とほぼ同一に形成されており、互いに係止していない状態では、軸方向(図面では上下方向)に摺動部材2がスライド移動可能に形成されている。
図3は使用前の係止状態であり、キャップ1の係止突起121が、摺動部材2の係止溝221aに係止した状態となっている。
【0023】
かかる係止状態において、摺動部材2の押圧部24の下部はキャップ1の周壁18内に挿入された状態となっており、その先端部241がシール部17に環状に当接した状態となっている。具体的には、押圧部24は筒状に下方へ突出しており、その先端部241がシール部17の周縁の易破断部171に沿う形で接している。なお、本実施態様のように、押圧部24の周壁が先端にいくにつれて肉薄に形成され、その先端部241でもっとも薄くなるようにすることで、易破断部171に押圧が集中して確実に破断できるため好ましい。また、蓋部13は閉状態となっているが、この状態で蓋部13の裏面に設けられている押さえ部131が注出ノズル23の先端に当接する状態となっている。これにより、摺動部材2は上から抑えられている状態となり、押圧部24の先端部241が当接するシール部17も間接的に蓋部13により上から抑えられた状態となる。すなわち、摺動部材2はキャップ1に対して上述のとおり係止溝221aと係止突起121の係止により固定保持されているが、これに加えて蓋部13で固定されることにより、シール部17も上から抑えられ、使用者がリフィル容器(特にパウチ)を強く把持した場合に容器の内圧上昇によってシール部17や易破断部171が注出路25側へ破断することを防ぐことができる。また、蓋部13を閉じた状態では、摺動部材2は外部から接触できない状態であるため、誤って上部から押されてシール部17を破断するおそれもなく、その移動を規制する部材も必要ない。
【0024】
以下に、本発明にかかるリフィル容器用注出構造を用いて内容物をリフィルする方法について、中栓が装着された状態の化粧料容器を例にとって説明する。本発明にかかるリフィル容器用注出構造はリフィル容器3の口部に取り付けられている。また、詰め替え先の化粧料容器4は中栓42の吐出口421から内容物を注出するタイプのものであり、粘度が低い液状化粧料を内容物とするため、中栓吐出口421の径は小さめに形成されている。かかる化粧料容器4へのリフィル作業の手順は以下の通りである。まず、リフィル容器3を倒立させて、キャップ1が下を向いた状態で保持し、蓋部13を開く。この状態では、シール部17は閉塞状態となっているため、リフィル容器3の内容物が漏れるおそれはない。次に、
図5(a)に示すように、キャップ1の挿入部19内に開口15より詰め替え先の化粧料容器4の口頸部41を挿入し、化粧料容器4の中栓42に設けられている中栓吐出口421に注出ノズル23を挿入する。なお、本実施態様とは異なり、中栓を取り外した状態の化粧料容器にリフィルする場合は容器口部に、また、中栓を有さずに容器の口部先端に直接小口径の吐出口を有する容器にリフィルする場合は該吐出口に注出ノズル23を挿入する。
【0025】
次に、化粧料容器4の中栓42の天面に摺動部材2の凸条部211が接する状態になるまで挿入部19内に化粧料容器4の口頸部41を挿入する。そして、中栓42と摺動部材2の凸条部211が接したら、さらに化粧料容器4の口頸部41を挿入部19内に挿入するために押し込む。これにより摺動部材2には口頸部41により上方向への力が加わるが、かかる上方向への押圧が一定以上になると、係止溝221aと係止突起121の係止が外れ、摺動部材2はさらに上方へと摺動可能となる。
【0026】
係止溝221aと係止突起121の係止が外れると、摺動部材2の移動を妨げているのは押圧部24とシール部17の接触のみであるため、押圧部24の先端部241とシール部17の接触部分に押圧が集中する。そして、その押圧が一定以上になるとシール部17周縁が接続部172を残して易破断部171から破断し、注出口16が開封されて押圧部24の先端部241が注出口16内へと進入する。このとき、接続部172を残して易破断部171のみ破断するため、
図5(b)に示すように接続部172でつながった状態のままシール部17がキャップ1内に押し込まれる状態となる。なお、摺動部材2が最も深く挿入部19内に挿入された状態では、キャップ1の係止突起121が摺動部材2の係止溝221bに係止した状態となっている。これにより、注出口16のシール部17による閉塞は開封されて内容物が注出可能な状態となる。
【0027】
図5(b)の状態で、内容物は開放された注出口16より摺動部材2の注出路25を通って詰め替え先の容器へと注出される(矢印A)。このとき、詰め替え先の容器の空気が抜けることにより内容物がスムーズに注入されるが、注出ノズル23の周りには空気抜き用の空隙がつくられるように中栓42の吐出口421の内径が設定されており、さらに、摺動部材2の天壁21と中栓42は、凸条部211により密着が妨げられるため空隙が生じ、かかる空隙から容器内の空気を逃がすことができるため、スムーズにリフィル作業を行うことができる。このように、注出ノズル23が中栓42の吐出口421に挿入された状態でリフィルが行われるため、容器本体から中栓を外す必要がなく、また、詰め替え作業中に化粧料容器の口部から誤って注出口が外れて内容物がこぼれるおそれもない。
【0028】
次に、
図6ないし
図8により、本発明のリフィル容器用注出構造の第二の実施態様について説明する。基本的な構成は上記で説明した第一の態様のものと共通するため、以下では相違点について説明する。まず、
図7に示すように、本実施態様の摺動部材2は、押圧部24の先端部241が側面視で斜めに形成され、本図では正面側が他の部分に対してより下方へ突出して突出部241aを形成している。本実施態様では、押圧部24の正面側が突出しているが、突出するのは正面側に限らず、左右のいずれかの側面、又は背面側の先端に突出部241aを突出させ形成しても良い。さらに、本実施態様では押圧部24の先端部241はほぼ直線的に傾斜するように形成されているが、先端部241は曲線的に傾斜するよう形成してもよく、また、先端部241の一部または全部を波形や山型の曲線により構成して、該波形あるいは山型の頂部が他の部分よりも突出するようにしてもよい。このように、押圧部24の先端部241の一部を他の部分よりも突出するように突出部241aを形成することで、かかる突出部241aの頂部がシール部17に当接することになる。そしてリフィル作業時には、当該部分に押圧が集中するため、易破断部171をより確実に破断し、シール部17を開封することができる。
【0029】
押圧部24の先端部241において突出部241aは任意の位置に設けることができるが、リフィル作業時に該突出部241aが確実に易破断部171に当接する位置に設けることが好ましい。なお、キャップ1内において摺動部材2が周方向に回転することにより、かかる突出部241aと易破断部171との相対的な位置関係がずれてしまうことを防ぐために、キャップ1と摺動部材2には、後述する摺動部材2の回転防止手段を設けることが好ましい。
【0030】
本実施態様のキャップ1の周壁12の内周面には、摺動部材2の回転防止手段として、凸条部123が垂直方向に延伸するように凸設されている。この凸条部123の位置や数は適宜選択することができるが、本実施態様のように、少なくとも2箇所設けることが好ましい。
【0031】
本実施態様の摺動部材2には、周壁22の外周面に凹溝部222が垂直方向に延伸するように凹設されている。かかる凹溝部222はキャップ1の凸条部123に対応する位置に設けられており、凸条部123が挿入可能に形成されている。このように、凸条部123が凹溝部222内に挿入されることにより、摺動部材2のキャップ1内における周方向の回転を防止することができる。
【0032】
なお、本実施態様のキャップ1の蓋部13は、キャップ1側面の周壁12上端に設けられているが、蓋部13の取付位置はこれに限定されず、第一の実施態様のようにキャップ1の背面側に設けても良い。
【0033】
図8(a)は、本実施態様のキャップ1内に摺動部材2が挿入され、シール部17が未開封の状態を示す。図に示すように、押圧部24の先端部241は斜めに形成されているため、他の部分よりも下方に突出した突出部241aにおいて易破断部171に当接した状態となっている。そして、リフィル作業時に摺動部材2を挿入部19内に更に押し込むと、先端部241の突出部241aと易破断部171の当接部分に押圧が集中する。よって、かかる易破断部171と突出部241aの当接部分から破断が開始して、シール部17は開封状態となる(
図8b)。
【0034】
本発明にかかるリフィル容器用注出構造のキャップ1と摺動部材2は、それぞれを同種または異なる素材により形成することができ、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、再生ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド樹脂(ナイロン等)、ポリアセタール樹脂(POM)、アクリル樹脂等の種々の合成樹脂で形成することができる。また、キャップ1に取り付けられるリフィル容器の材質について特に制限はないが、ポリエチレンなどの合成樹脂フィルムで形成されるパウチが注出ノズル23のような細い注出口からもスムーズに注出できるため好ましい。
【0035】
本発明において、容器に詰め替えられる液体の種類は特に限定されず、液状であれば化粧料や洗剤、皮膚外用剤、飲料、食品、薬品、文房具、インク、染色剤、塗料等、種々の液体製品において本発明の効果を利用することができるが、とりわけ化粧料や皮膚外用剤、薬品等、内容物が高価なものにおいて、本発明の効果を特に有効に享受することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 … … キャップ
2 … … 摺動部材
3 … … リフィル容器本体
4 … … 化粧料容器
11 … … 底部
12 … … 周壁
13 … … 蓋部
14 … … 下部周壁
15 … … 開口
16 … … 注出口
17 … … シール部
18 … … 周壁
19 … … 挿入部
21 … … 天壁
22 … … 周壁
23 … … 注出ノズル
24 … … 押圧部
25 … … 注出路
26 … … 縦凹溝
41 … … 口頸部
42 … … 中栓
121 … … 係止突起
122 … … 滑り止め部
123 … … 凸条部
131 … … 押さえ部
132 … … 係合部
141 … … 取付部
171 … … 易破断部
172 … … 接続部
211 … … 凸条部
221a … … 係止溝
221b … … 係止溝
222 … … 凹溝部
241 … … 先端部
241a … … 突出部
421 … … 中栓吐出口