(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
減衰特性を有するダンパーの下端部が下部構造物に接合され、前記ダンパーの上端部が、前記下部構造物に立設された柱部材の側面に接合され、前記ダンパーは前記柱部材の側面に略平行であり、
前記ダンパーは、
軸力材と、前記軸力材を補剛する補剛材と、前記軸力材の一方の端部および前記補剛材の一方に接続された第1接続部材と、前記軸力材の他方の端部に接続された第2接続部材と、を具備し、
前記第2接続部材の外周に突出したストッパーが形成され、
前記補剛材の端部に、前記ストッパーを挟んで対向した第1反力部および第2反力部、が形成され、
前記軸力材が収縮した際、前記補剛材の第1反力部に、前記ストッパーが当接し、前記軸力材が伸長した際、前記補剛材の第2反力部に、前記ストッパーが当接することを特徴とすることを特徴とする橋脚構造。
減衰特性を有するダンパーの下端部が地面に設置された反力基礎に接合され、前記ダンパーの上端部が、地盤内に埋設された下部構造物に立設された柱部材の側面に接合され、前記ダンパーは前記柱部材の側面に略平行であり、
前記ダンパーは、
軸力材と、前記軸力材を補剛する補剛材と、前記軸力材の一方の端部および前記補剛材の一方に接続された第1接続部材と、前記軸力材の他方の端部に接続された第2接続部材と、を具備し、
前記第2接続部材の外周に突出したストッパーが形成され、
前記補剛材の端部に、前記ストッパーを挟んで対向した第1反力部および第2反力部、が形成され、
前記軸力材が収縮した際、前記補剛材の第1反力部に、前記ストッパーが当接し、前記軸力材が伸長した際、前記補剛材の第2反力部に、前記ストッパーが当接することを特徴とする橋脚構造。
前記ダンパーは減衰特性を有するものであって、軸方向ダンパー、せん断ダンパー、粘弾性ダンパー、曲げダンパー、シリンダーピストン型ダンパー、座屈拘束ブレース、アンボンドブレース、履歴減衰ダンパーおよび摩擦ダンパーの何れかであることを特徴とする請求項1〜10の何れか一項に記載の橋脚構造。
前記柱部材は、高さ方向の全長に配置された全長鉄筋と、高さ方向の下方範囲に配置された下方鉄筋とを具備する段落しされた鉄筋コンクリート構造であって、前記ダンパーの上端部が、前記下方鉄筋の上端よりも上方において、前記柱部材の側面に接合されていることを特徴とする請求項1〜11の何れか一項に記載の橋脚構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された発明によれば、地震時の柱部材の変形(フーチングに対する倒れ)によって、斜材が伸縮する。このため、斜材が履歴減衰性能を発揮することにより、柱構造の制震効果が得られ、地震荷重を減衰させ、効率のよい耐震補強が可能になる。
しかしながら、この発明によると、斜材を柱部材に対して柱側方に方杖状に設置するため、斜材のフーチングとの接合端は、柱部材の外周から大きく張り出すことになる。すなわち、補強材である斜材が広い面積を占有する。
このため、例えば、橋梁の橋脚などのように、橋脚の至近に道路や通路や護岸などの占有物がある場合には、当該発明を適用することができないという問題があった。また、例えば、橋脚が河川、湖沼、海域にある場合には、水域に補強材が大きく張り出して、広い面積を占有するため、河川流域面積の阻害などの理由により、当該発明を適用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題を解決するものであって、柱部材の外周から大きく張り出すことなく、補強材の占有面積を抑えながら、地震荷重を減衰させることができる橋脚構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る橋脚構造は、減衰特性を有するダンパーの下端部が下部構造物に接合され、前記ダンパーの上端部が、前記下部構造物に立設された柱部材の側面に接合され、前記ダンパーは前記柱部材の側面に略平行であ
り、前記ダンパーは、軸力材と、前記軸力材を補剛する補剛材と、前記軸力材の一方の端部および前記補剛材の一方に接続された第1接続部材と、前記軸力材の他方の端部に接続された第2接続部材と、を具備し、前記第2接続部材の外周に突出したストッパーが形成され、前記補剛材の端部に、前記ストッパーを挟んで対向した第1反力部および第2反力部、が形成され、前記軸力材が収縮した際、前記補剛材の第1反力部に、前記ストッパーが当接し、前記軸力材が伸長した際、前記補剛材の第2反力部に、前記ストッパーが当接することを特徴とする。
(2)また、前記ダンパーの下端部および上端部に、ダンパーピン孔がそれぞれ設けられ、前記下部構造物に、下部構造物ピン孔が設けられた下部構造物ブラケットが設置され、前記柱部材の側面に、柱部材ピン孔が設けられた柱部材ブラケットが設置され、
前記ダンパーピン孔と前記下部構造物ピン孔とに挿入された下側ピンによって下部ピン構造が形成され、該下部ピン構造によって前記ダンパーと前記下部構造物とが接合され、
前記ダンパーピン孔と前記柱部材ピン孔とに挿入された上側ピンによって上側ピン構造が形成され、該上側ピン構造によって前記ダンパーと前記柱部材とが接合されていることを特徴とする
。
(3)また、前記下部構造物は、上面が地盤から突出した台座を具備し、前記台座の上面に前記下部構造物ブラケットが設けられていることを特徴とする。
(4)さらに、本発明に係る橋脚構造は、減衰特性を有するダンパーの下端部が地面に設置された反力基礎に接合され、前記ダンパーの上端部が、地盤内に埋設された下部構造物に立設された柱部材の側面に接合され、前記ダンパーは前記柱部材の側面に略平行であり、前記ダンパーは、軸力材と、前記軸力材を補剛する補剛材と、前記軸力材の一方の端部および前記補剛材の一方に接続された第1接続部材と、前記軸力材の他方の端部に接続された第2接続部材と、を具備し、前記第2接続部材の外周に突出したストッパーが形成され、前記補剛材の端部に、前記ストッパーを挟んで対向した第1反力部および第2反力部、が形成され、前記軸力材が収縮した際、前記補剛材の第1反力部に、前記ストッパーが当接し、前記軸力材が伸長した際、前記補剛材の第2反力部に、前記ストッパーが当接することを特徴とする。
(5)また、前記(4)において、前記ダンパーの両端部に、ダンパーピン孔がそれぞれ設けられ、前記反力基礎に、反力基礎ピン孔が設けられた反力基礎ブラケットが設置され、前記柱部材の側面に、柱部材ピン孔が設けられた柱部材ブラケットが設置され、前記ダンパーピン孔と前記反力基礎ピン孔とに挿入された下側ピンによって下部ピン構造が形成され、該下部ピン構造によって前記ダンパーと前記反力基礎とが接合され、
前記ダンパーピン孔と前記柱部材ピン孔とに挿入された上側ピンによって上側ピン構造が形成され、該上側ピン構造によって前記ダンパーと前記柱部材とが接合されていることを特徴とする。
【0007】
(6)また、前記(2)または(5)において、前記上側ピンが断面円形で、前記柱部材ピン孔が高さ方向に長い長孔であって、
前記上側ピンは前記ダンパーピン孔に固定された状態で、前記長孔に侵入し、
前記上側ピンの外周最上点と前記長孔の内周最上点との間に上隙間が形成され、前記上側ピンの外周最下点と前記長孔の内周最下点との間に下隙間が形成されていることを特徴とする。
(7)また、前記(2)または(5)において、前記上側ピンが断面円形で、前記ダンパーの上端部に設けられた前記ダンパーピン孔が高さ方向に長い長孔であって、
前記上側ピンは前記柱部材ピン孔に固定された状態で、前記長孔に侵入し、
前記上側ピンの外周最上点と前記長孔の内周最上点との間に上隙間が形成され、前記上側ピンの外周最下点と前記長孔の内周最下点との間に下隙間が形成されていることを特徴とする。
(8)また、前記(6)または(7)において、前記柱部材が矩形断面であって、対向する面にそれぞれ前記ダンパーが設置され、
前記上隙間(△)と前記下隙間(△)とは等しく、
前記柱部材の柱部材高さがH、前記ダンパー同士の距離であるダンパー間隔がL、前記柱部材の耐力が低下するときの前記柱部材の水平変位である許容水平変位がδuのとき、水平変位(δu)は、前記上隙間(△)と前記柱部材高さ(H)の積の2倍を、前記ダンパー間隔(L)で除したもの(δu=2・△・H/L)であることを特徴とする。
(9)さらに、前記(6)〜(8)の何れかにおいて、前記長孔の内周下端および内周上端に橋脚ピン下係止部および橋脚ピン上係止部がそれぞれ形成され、
前記上側ピンは、前記橋脚ピン下係止部に到達した際、前記橋脚ピン下係止部に抜け出し不可能に係止し、前記橋脚ピン上係止部に到達した際、前記橋脚ピン上係止部に抜け出し不可能に係止することを特徴とする。
【0008】
(10)また、前記(1)〜(9)の何れかにおいて、前記柱部材が断面矩形で、前記柱部材の側面が平面であって、
一対の前記ダンパーが、前記柱部材の側面のうちの少なくとも1つの側面に平行に配置され、
前記一対のダンパーの上端部同士の距離と、前記一対のダンパーの下端部同士の距離とが相違していることを特徴とする。
(11)また、前記(1)〜(10)の何れかにおいて、前記ダンパーは減衰特性を有するものであって、軸方向ダンパー、せん断ダンパー、粘弾性ダンパー、曲げダンパー、シリンダーピストン型ダンパー、座屈拘束ブレース、アンボンドブレース、履歴減衰ダンパーおよび摩擦ダンパーの何れかであることを特徴とする。
【0009】
(12)さらに、前記(1)〜(11)の何れかにおいて、前記柱部材は、高さ方向の全長に配置された全長鉄筋と、高さ方向の下方範囲に配置された下方鉄筋とを具備する「段落し」された鉄筋コンクリート構造であって、前記ダンパーの上端部が、前記下方鉄筋の上端よりも上方において、前記柱部材の側面に接合されていることを特徴とする。
(13)また、前記(1)〜(12)の何れかにおいて、前記軸力材は、前記柱部材に前記ダンパーが設置されなかった場合に、前記柱部材に許容される柱部材許容変位から、前記柱部材の設計エネルギーから決まる設計最大変位まで、前記柱部材が変形した際の前記柱部材の吸収エネルギーの値と、前記ダンパーが変形を開始してから、前記柱部材許容変位に相当する変位まで変位した際の前記ダンパーの吸収エネルギーとが、等しくなる長さに同じ長さ、または、前記等しくなる長さに同じ長さよりも短い長さであることを特徴とする。
【0010】
(14)また、前記(1)〜(13)において、前記補剛材が、第2補剛材によって補剛され、前記第2補剛材の一方の端部が前記第1接続部材に接続されていることを特徴とする。
【0011】
(15)さらに、前記(1)〜(
14)の何れかにおいて、前記ダンパーは、前記柱部材の上端部と前記下部構造物との距離が拡大するように、前記柱部材を伸長させるプレロードが作用していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
(i)本発明に係る橋脚構造は、減衰特性を有するダンパーの端部がそれぞれ下部構造物に立設された柱部材の側面(例えば、フーチングに立設された橋脚の橋脚側面)に接合されているから、地震時の柱部材の変形(下部構造物に対する倒れ)によって、ダンパーが伸縮するため、制震効果が得られ、地震荷重は減衰され、効率よく耐震補強される。
また、ダンパーが柱部材の側面に略平行に設置されているから、ダンパーが柱部材の外周から大きく張り出すことがなく、補強材であるダンパーが占有する面積は狭いため、例えば、橋脚の至近に道路や通路や護岸などの占有物がある場合や、例えば、橋脚が河川、湖沼、海域にある場合にも、適用することができる。
(ii)また、柱部材、ダンパーおよび下部構造物がピン構造によって接合されているから、ダンパーにはその軸方向の力のみが作用し、ダンパーを曲げるような力が作用しないから、ダンパーの設計が容易になると共に、ダンパーの減衰特性を十分に発揮させることができる。
(iii)一対のダンパーが柱部材の平面状の側面に平行で、一対のダンパーは、三角形状または台形状に配置されているから、一対のダンパーによって、当該側面に対して平行な方向の地震の揺れに対して制震効果が得られる。すなわち、ダンパーが設置される柱部材の側面を限定することができるから、ダンパーを設置する側面を選定する自由度が増すため、ダンパーが設置されない側面を設けることによって、景観の向上を図ることができる。
(iv)さらに、地盤から突出した台座の上面に設けられた下部構造物ブラケットに、ダンパーの下端部が接続され、ダンパーが地盤から離れているから、腐食の進行が抑えられ、また、ダンパーの交換が容易である。
(v)そして、ダンパーは履歴減衰特性を有するものであって、慣用されているものであるから、選定や調達が容易であり、橋脚構造を安価に製造することができる。
【0013】
(vi)さらに、柱部材は段落しされた鉄筋コンクリート構造であり、ダンパーの上端部が段落し部よりも高い位置にあるから、段落し部よりも高い範囲も補強され、耐震性が向上すると共に、補強材であるダンパーが占有する面積は狭いため、設置場所の制約が少なくなる。
(vii)また、軸力材が、柱部材許容変位から設計最大変位まで変形した際の柱部材の吸収エネルギーの値と、柱部材許容変位に相当するダンパー許容変位まで変位した際のダンパーの吸収エネルギーとが「等しくなる長さに同じ長さ」、または、前記「等しくなる長さに同じ長さ」よりも短い長さであるから、より確実に耐震性が向上する。
【0014】
(viii)また、ストッパーを有し、軸力材および補剛材の両方が圧縮力を支持するから、軸力材の座屈が防止され、耐震性が向上する。
(ix)また、ストッパーを有し、軸力材および補剛材の両方が圧縮力を支持するから、軸力材の座屈が防止され、また、軸力材および補剛材の両方が引張力を支持するから、軸力材の塑性変形量が抑えられ、耐震性が向上する。
(x)また、第2補剛材を有するから、軸力材の座屈がより確実に抑えられ、耐震性がさらに向上する。
【0015】
(xi)さらに、本発明に係る橋脚構造は、ダンパーの下端部が反力基礎に接合されているから、フーチングが地盤に埋設された場合であっても、ダンパーを過剰に長くすることなく、ダンパーを柱部材の側面に略平行に設置することが可能になる。
(xii)また、柱部材、ダンパーおよび反力基礎がピン構造によって接合されているから、ダンパーにはその軸方向の力のみが作用し、ダンパーを曲げるような力が作用しないから、ダンパーの設計が容易になると共に、ダンパーの減衰特性を十分に発揮させることができる。
【0016】
(xiii)ダンパーと柱部材とが、上隙間および下隙間を介して接続されているから、上隙間または下隙間に対応した水平変位をした後に、ダンパーに地震力の一部が作用するから、柱部材が吸収するエネルギーを効果的に増加させることが可能になる。したがって、柱部材の見掛け上の変形量が増し、耐震性が向上する。
(xiv)また、上隙間(△)と下隙間(△)とは等しく、柱部材の耐力が低下するときの柱部材の水平変位である許容水平変位(δu)は、上隙間△と柱部材高さHの積の2倍を、ダンパー間隔Lで除したもの(δu=2・△・H/L)であるから、より確実に耐震性が向上する。
(xiv)また、ダンパーと柱部材とが、上隙間または下隙間に相当する距離を変位した後は、上側ピンは橋脚ピン下係止部または橋脚ピン上係止部に抜け出し不可能に係止するから、上隙間または下隙間を有しない橋脚構造として挙動するため、大きなエネルギー吸収性能を有している。
(xv)さらに、柱部材を伸長させるプレロードが作用しているから、柱部材に作用する圧縮力が低減され、より確実に耐震性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[実施の形態1]
図1〜
図3は本発明の実施の形態1に係る橋脚構造を説明するものであって、
図1は側面図、
図2は正面図、
図3は平面視(
図1におけるA矢視)の断面図である。なお、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0019】
(橋脚構造)
図1〜
図3において、橋脚構造100は、減衰特性を有するダンパー30a、30b、30c、30dの下端部が、フーチング(下部構造物に同じ)10の上面11にそれぞれ接合され、ダンパー30a、30b、30c、30dの上端部が、フーチング10に立設された橋脚(柱部材に同じ)20の橋脚側面21a、21b、21c、21dにそれぞれ接合されたものである。
このとき、ダンパー30a、30b、30c、30dはそれぞれ、橋脚側面21a、21b、21c、21dに略平行になっている。なお、以下、説明の便宜上、構造が同じである部材の説明においては、部材の符号および部位の符号に付した添え字「a、b、c、d」の記載を省略する場合がある。
なお、橋脚構造100は、柱部材として橋脚20を具備しているが、本発明はこれに限定するものではなく、下部構造物に設置され、上部構造物を支持する柱部材を具備するものであればよい。
【0020】
ダンパー30の下端部および上端部には、図示しないダンパーピン孔がそれぞれ設けられている。一方、フーチング10の上面11には、図示しないフーチングピン孔が設けられたフーチングブラケット12が設置され、橋脚20の橋脚側面21には、図示しない脚部ピン孔が設けられた橋脚ブラケット(柱部材ブラケットに同じ)22が設置されている。
そして、図示しないダンパーピン孔とフーチングピン孔とに挿入された下側ピン31によってフーチング側ピン構造が形成され、かかるフーチング側ピン構造によってダンパー30とフーチング10とが接合されている。
また、図示しないダンパーピン孔と脚部ピン孔とに挿入された上側ピン32によって脚部側ピン構造が形成され、かかる脚部側ピン構造によってダンパー30と橋脚20とが接合されている。
【0021】
なお、フーチング10は地盤90内に埋め込まれ、フーチング10の上面11は地盤90の表面(以下「地表面92」と称す)の下方に位置し、地盤90に設置された複数本の杭91によって支持されている。
また、橋脚側面21aおよび橋脚側面21cには、それぞれ、梁40aおよび梁40cが設置され、梁40aおよび梁40cの上面41aおよび上面41cに、それぞれ桁51a、52aおよび桁51c、52cが設置され、桁51a、52a、51c、52cは、床板(上部構造物に同じ)60を支持している。したがって、橋脚側面21bおよび橋脚側面21dが、橋軸方向(矢印にて示す)に平行になっている。
【0022】
(作用)
図4〜
図6は本発明の実施の形態1に係る橋脚構造を説明するものであって、
図4は地震時の変形を示す正面図、
図5は地震時に作用する力と変形量との関係を示す正面図、
図6は地震荷重と水平変位量との関係を示す相関図である。なお、各部は模式的に示すものであって、また、
図1〜3に示す部位と同じ部位には同じ符号を付している。
図4において、地震発生前は、橋脚20(橋脚側面21aおよび橋脚側面21c)はフーチング10の上面11に垂直に設置されているから、ダンパー30a(下側ピン31aの中心と上側ピン32aの中心とを結ぶ線)およびダンパー30c(下側ピン31cの中心と上側ピン32cの中心とを結ぶ線)は上面11に対して垂直である(何れも、破線にて示す)。
そして、地震が発生すると、橋脚20の下端に近い範囲は曲げられてフーチング10の上面11に対して傾斜し、橋脚側面21aは伸長し、橋脚側面21cは短縮する。このため、ダンパー30aの上端部(上側ピン32a)は斜め上方に移動するから、ダンパー30aは距離(以下「伸長量」と称す)34aだけ伸長し、一方、ダンパー30cの上端部は斜め下方に移動するから、ダンパー30cは距離(以下「短縮量」と称す)34cだけ短縮する。
【0023】
図5において、橋脚20の頭部に作用する地震力(以下「ダンパー抵抗力Pd」と称す)と、ダンパー30に作用する力(以下「ダンパー軸力F」と称す)との関係を求める。
橋脚20の高さを「H」、橋脚20の頭部の水平方向の変位量(橋脚水平変位量に同じ)を「δ」とし、ダンパー30の高さを「D」、ダンパー30aとダンパー30cとの間隔を「L」、ダンパー30aの伸長量(ダンパー30cの短縮量に同じ)を「d」とする。
そうすると、ダンパー抵抗力Pdによる曲げモーメントとダンパー軸力Fによる曲げモーメントとは釣り合って、「Pd×H=F×L」となるから、ダンパー抵抗力Pdは、「Pd=F×L/H」から求まる。すなわち、ダンパー30の取り付け間隔Lが大きい(広い)程、ダンパー抵抗力Pdは大きくなる。
また、ダンパー30aの伸長量dと橋脚20の頭部の橋脚水平変位量δとは、「δ/H=2×d/L」の関係から、橋脚水平変位量δは「δ=2×d×H/L」から求まる。
なお、ダンパー30の断面積を「A」、ダンパー30の弾性係数を「E」とすると、「F=A×E×d/D」より、ダンパー30aの伸長量dは「d=F×D/(A×E)」から求まる。
【0024】
図6は、縦軸は橋脚20に作用する地震荷重で、横軸は橋脚の橋脚水平変位量(δ)である。
図6において、ダンパー30が設置される前の橋脚20においては、橋脚水平変位量(δ)が橋脚20が降伏する変位(以下「橋脚降伏時変位量δy」と称す)に到達するまでは、地震荷重は弾性的に徐々に増加し、橋脚降伏時変位量δyに到達した後は、橋脚水平変位量(δ)が増加しても地震荷重は一定値のままである。
一方、ダンパー30それ自体は、橋脚水平変位量(δ)がダンパー30が降伏する変位量(以下「ダンパー降伏時変位量δdy」と称す)に到達するまでは、地震荷重は弾性的に徐々に増加し、ダンパー降伏時変位量δdyに到達した後は、橋脚水平変位量(δ)が増加しても地震荷重は一定値のままである。
このとき、橋脚降伏時変位量δyよりも、ダンパー降伏時変位量δdyの方が大きな値になっている。
したがって、ダンパー30が設置された橋脚20は、ダンパー30が設置される前の橋脚20の挙動とダンパー30のみの挙動とが重なって、
図6における実線で示すものになる。
【0025】
このとき
・ダンパー30の降伏時の伸縮量(伸長量d=短縮量d)はダンパー30の長さDに比例する。
・ダンパー30の長さDを調整することによって、降伏時の伸縮量である橋脚水平変位量を調整することができる。
・ダンパー30の長さDを調整することによって、橋脚20が降伏するときの橋脚水平変位量δに対して、ダンパー30の降伏の前後関係を調整することができる。
・ダンパー30の長さDを調整することによって、橋脚20が弾性範囲にある場合にはダンパー30も降伏しないように調整することができる。
【0026】
以上のように、橋脚構造100は、橋脚20を効率よく耐震補強する。また、ダンパー30が橋脚20の橋脚側面21から大きく張り出すことがなく、補強材であるダンパー30が占有する面積は狭いため、例えば、橋脚20の至近に道路や通路や護岸などの占有物がある場合や、例えば、橋脚20が河川、湖沼、海域にある場合にも、適用することができる。
また、ダンパー30がピン構造によって接合されているから、ダンパーにはその軸方向の力のみが作用し、ダンパー30を曲げるような力が作用しないため、ダンパー30の設計が容易になると共に、ダンパーの減衰特性を十分に発揮させることができる。
そして、ダンパー30は減衰特性を有する限り限定するものではなく、慣用されているものであるから、選定や調達が容易であり、橋脚構造100を安価に製造することができる。
【0027】
[実施の形態2]
図7は本発明の実施の形態2に係る橋脚構造を説明するものであって、(a)は正面図、(b)は一部を示す平面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0028】
(橋脚構造)
図7において、橋脚構造200は、フーチング10の上面11に立ち上がった台座13a、13b、13c、13dを具備し、台座13a、13b、13c、13dにフーチングブラケット12a、12b、12c、12dが設置され、これを除く構成は、橋脚構造100(実施の形態1)に同じである。
このとき、台座13a、13b、13c、13dの上面は地表面92の上方に突出しているから、フーチングブラケット12a、12b、12c、12dは地表面92の上方に露出している。
したがって、ダンパー30の腐食防止を図ることができ、また、ダンパー30自体またはダンパー30を構成する部材の交換時に、地盤90を掘削する必要がなくなる。
【0029】
[実施の形態3]
図8〜
図11は本発明の実施の形態3に係る橋脚構造を説明するものであって、
図8は左側面図、
図9は右側面図、
図10は正面図、
図11は平面視(
図8におけるA矢視)の断面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0030】
(橋脚構造)
図8〜
図11において、橋脚構造300は、フーチング10の上面11において、橋脚20の橋脚側面21a、21cに沿って台座13a、13cを具備し、橋脚側面21b、21dに沿っては台座を具備しない。また、橋脚側面21aと平行にダンパー30e、30fが配置され、橋脚側面21cと平行にダンパー30g、30hが配置され、橋脚側面21b、21dに沿ってダンパーは配置されていない。
なお、ダンパー30e、30f、30g、30hを配置するための構成を除く構成は、橋脚構造200(実施の形態2)に同じである。また、ダンパー30e、30f、30g、30hはダンパー30に同じである。そして、以下、説明の便宜上、構造が同じである部材の説明においては、部材の符号および部位の符号に付した添え字「e、f、g、h」の記載を省略する場合がある。
【0031】
橋脚側面21aに沿った台座13aには、図示しないフーチングピン孔が設けられたフーチングブラケット12eと、図示しないフーチングピン孔が設けられたフーチングブラケット12fとが設置され、橋脚側面21aの水平方向の中央には、図示しない脚部ピン孔が設けられた橋脚ブラケット22aが設置されている。
また、同様に、橋脚側面21cには、図示しないフーチングピン孔が設けられたフーチングブラケット12gと、図示しないフーチングピン孔が設けられたフーチングブラケット12hとが設置され、橋脚側面21cの水平方向の中央には、図示しない脚部ピン孔が設けられた橋脚ブラケット22cが設置されている。
【0032】
橋脚側面21a側では、ダンパー30eに設けられたダンパーピン孔(図示しない)とフーチングピン孔とに挿入された下側ピン31eによってフーチング側ピン構造が形成され、ダンパー30eに設けられたダンパーピン孔(図示しない)と脚部ピン孔とに挿入された上側ピン32aによって脚部側ピン構造が形成され、同様に、ダンパー30fに設けられたダンパーピン孔(図示しない)とフーチングピン孔とに挿入された下側ピン31fによってフーチング側ピン構造が形成され、ダンパー30fに設けられたダンパーピン孔(図示しない)と脚部ピン孔とに挿入された上側ピン32aによって脚部側ピン構造が形成されている。
したがって、ダンパー30eとダンパー30fとは、上端において上側ピン32aによってピン接続され、逆V字状を呈している。
また、同様に、橋脚側面21c側では、ダンパー30gとダンパー30hとは、上端において上側ピン32cによってピン接続され、逆V字状を呈している。
【0033】
(作用)
図12は本発明の実施の形態3に係る橋脚構造を説明するものであって、地震時の変形を示す正面図である。なお、各部は模式的に示すものであって、また、
図8〜10に示す部位と同じ部位には同じ符号を付している。
図12において、地震発生前は、橋脚20(橋脚側面21aおよび橋脚側面21c)はフーチング10の上面11に垂直に設置されているから、ダンパー30eとダンパー30fとは二等辺三角形の斜辺を構成している(破線にて示す)。同様に、ダンパー30gとダンパー30hとは二等辺三角形の斜辺を構成している(図示しない)。
そして、地震が発生すると、橋脚20の下端に近い範囲は曲げられてフーチング10の上面11に対して傾斜する。このため、ダンパー30eの上端部およびダンパー30fの上端部(共に、上側ピン32aにピン接続されている)は、略水平方向(正確には、僅かに斜め下方)に移動し、ダンパー30eは34eで示す距離(以下「伸長量」と称す)だけ伸長し、一方、ダンパー30fは34fで示す距離(以下「短縮量」と称す)だけ短縮する。
【0034】
また、同様に、橋脚側面21c側では、ダンパー30gは伸長量34eだけ伸長し、一方、ダンパー30hは短縮量34fだけ短縮する(図示しない)。
したがって、橋脚構造100は、橋脚構造100、200(実施の形態1、2)と同様の作用効果を奏する。
なお、以上は、ダンパー30eの上端部およびダンパー30fの上端部とが一致しているが、本発明はこれに限定するものではなく、ダンパー30eの上端部およびダンパー30fの上端部同士の距離と、ダンパー30eの下端部およびダンパー30fの下端部同士の距離とが相違する限り、ダンパー30eの上端部およびダンパー30fの上端部が離れてもよい。すなわち、ダンパー30eとダンパー30fとは台形状に配置されてもよい。このとき、上端部同士の距離は下端部同士の距離よりも、長くても、短くてもよい。
さらに、ダンパー30eとダンパー30fとは、下端部同士が一致した三角形状であってもよい。
【0035】
[実施の形態4]
図13〜
図15は本発明の実施の形態4に係る橋脚構造を説明するものであって、
図13の(a)は一部を断面にした側面図、
図13の(b)は曲げモーメントの分布を示すモーメント図、
図13の(c)は比較ダンパーを設置した場合の曲げモーメントの分布を示すモーメント図、
図14の(a)および(b)は一部(ダンパー)を示す側面図、
図15の(a)は地震荷重と水平変位量との関係を示す相関図、
図15の(b)は一部(ダンパーの軸力材)の長さの決め方を説明する力と変位量との関係を示す相関図である。
なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0036】
(段落し)
図13の(a)において、橋脚構造400は、橋脚構造100における柱部材としての橋脚20を、「段落し」が設けられた橋脚420に変更し、ダンパー30をダンパー430に変更したものである。
すなわち、橋脚420は、高さ方向の全長に配置された全長鉄筋421と、高さ方向の下方範囲に配置された下方鉄筋422と、コンクリート423とを具備し、下方鉄筋422の上端に相当する高さに、段落し424が形成されている。また、橋脚420の橋脚側面21b、21dで、段落し424よりも高い位置に橋脚ブラケット22b、22dが設けられている。
そして、ダンパー430b、430d(ダンパー430と総称する場合がある)の上端部は、橋脚ブラケット22b、22dに接続されている。すなわち、フーチング10の上面から下方鉄筋422の上端までの距離を「ダンパー設置最低高さ」と称すると、ダンパー430は、「ダンパー設置最低高さ」を確保した長さになっている。
なお、説明の便宜上、ダンパー430b、430dが設置された場合について説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、橋脚420の4面にダンパー430bに同じダンパーが、それぞれ設置されたものであってもよい。
【0037】
(抵抗モーメント)
図13の(b)において、橋脚420に作用する地震時曲げモーメント(右下がりの直線にて示す)は、上部は小さく、フーチング10に近くなるほど大きくなる。
これに合わせて、橋脚420は、高さ方向の中間位置で鉄筋量を変化させる「段落し424」を設けているため、橋脚420の曲げ抵抗力(抵抗モーメント)は、上部は小さく、下部は大きく、段落し424において、急激に変化している(一点鎖線にて示す)。
そして、ダンパー430は、抵抗モーメントが急変する段落し424を覆う範囲に、配置されているから、下方鉄筋422によって補強されていない範囲(高さKと高さDとに挟まれた範囲に同じ)における抵抗モーメントの値を大きくしている(太い実線にて示す)。
図13の(c)において、「ダンパー設置最低高さ」に満たない短いダンパー(以下「比較ダンパー」と称す)を設置した場合は、段落し424よりも低い範囲、すなわち、全長鉄筋421および下方鉄筋422によって補強された範囲における抵抗モーメントの値は大きくなるものの、段落し424よりも上の範囲、すなわち、下方鉄筋422によって補強されていない範囲(高さDと高さKとに挟まれた範囲に同じ)における抵抗モーメントの値を大きくすることができない(太い実線にて示す)。
【0038】
(ダンパーの形状)
図14の(a)において、ダンパー430(説明の便宜上、「ダンパー430L」と称す)は、軸力管長L1を具備する軸力材431と、軸力材431を包囲する補剛材432と、軸力材431および補剛材432の上側の端部に接続された上口金433と、上口金433に接続された上クレビス434と、軸力材431の下側の端部に接続された下口金兼補強管435と、下口金兼補強管435に接続された下クレビス436と、を具備している。
図14の(b)において、ダンパー430(説明の便宜上、「ダンパー430S」と称す)は、ダンパー430Lと同じ構造であって、軸力材431の軸力管長L2が、ダンパー430Lの軸力管長L1よりも短く、下口金兼補強管435の長さが長くなっている。
【0039】
(地震荷重)
図15の(a)において、縦軸は橋脚の地震荷重、横軸は橋脚の水平変位量である。軸力材431の長さが長いダンパー430Lでは、橋脚水平変位量δLに到達するまでは弾性変形し、橋脚水平変位量δLに到達した後は、一定荷重で塑性変形をする(点線にて示す)。一方、軸力材431の長さが短いダンパー430Sは、橋脚水平変位量δLよりも小さい橋脚水平変位量δSに到達するまで弾性変形し、橋脚水平変位量δSに到達した後は、一定荷重で塑性変形をする(破線にて示す)。
また、橋脚420本体は、橋脚水平変位量δまでは弾性変形し、橋脚水平変位量δに到達した後は、一定荷重で塑性変形をする(一点鎖線にて示す)。
そうすると、ダンパー430Lを具備する橋脚420が支持する地震荷重は、橋脚水平変位量δと橋脚水平変位量δLにおいて変化する(細い実線にて示す)。また、ダンパー430Sを具備する橋脚420が支持する地震荷重は、橋脚水平変位量δと橋脚水平変位量δSにおいて変化する(太い実線にて示す)。
【0040】
すなわち、軸力材431の降伏時伸縮量は、軸力材431の長さに比例する。また、ダンパー430の全長が一定の場合でも、軸力材431の長さを変化させることで、ダンパー430の降伏時伸縮量を調整することができる。
このとき、ダンパー430の全長は「ダンパー設置最低高さ」を確保する必要があるが、この場合でも、軸力材431の長さを短くし、下口金兼補強管435の長さを長くすることにより、エネルギー吸収性能がよい構造を提供することができる。
【0041】
図15の(b)において、橋脚420本体(ダンパー430が設置されていない状態)が支持する地震荷重は、許容される許容変位(柱部材許容変位に同じ)δuまで塑性変形した後、直線的に低下し、その後は、一定の値のまま、橋脚420の設計エネルギーから決まる設計変位量δ0まで変形する。すなわち、橋脚420は、許容変位量δu以上に変位した後も、左下がりの斜線にて示す範囲に相当するエネルギーE420を吸収する。
一方、ダンパー430Sは、許容変位量δuまで変位する間に、右下がりの斜線にて示す範囲に相当するエネルギーE430を吸収するから、エネルギーE430がエネルギーE420と同じ値か、エネルギーE430がエネルギーE420よりも大きな値になるように、ダンパー430Sの軸力材431の長さが決められている。
【0042】
[実施の形態5]
図16および
図17は本発明の実施の形態5に係る橋脚構造を説明するものであって、
図16の(a)、(b)および(c)は一部(ダンパー)を示す側面図、
図17は橋脚の地震荷重と橋脚の平変位量との関係を示す相関図である。なお、実施の形態4と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図示しない橋脚構造500は、橋脚構造400(実施の形態4)におけるダンパー430を、以下に説明するダンパー530T、530V、または530Wに変更したものであり、これを除く部分は橋脚構造400に同じである。以下、変更した部分について説明する。
(ストッパー)
図16の(a)において、ダンパー530Tは、ダンパー430Sにおける下口金兼補強管435の外周に突出するストッパー531が設置され、ストッパー531の上面と、補剛材432の下端との間には隙間△が形成されている。したがって、軸力材431が収縮して、補剛材432の下端がストッパー531に当接した後は、軸力材431および補剛材432の両方が、圧縮力を支持することになる。
【0043】
(反力部材)
図16の(b)において、ダンパー530Vは、ダンパー430Sにおける下口金兼補強管435の外周に突出するストッパー531が設置され、さらに、補剛材432の下端に反力部材535が設置されている。反力部材535は、ストッパー531の上面との間に隙間△を形成する上反力板(上反力部に同じ)532と、ストッパー531の下面との間に隙間△を形成する下反力板(下反力部に同じ)534と、上反力板532と下反力板534とを連結し、ストッパー531を収納する反力筒533とを具備している。
したがって、軸力材431が収縮して、上反力板532の下面がストッパー531の上面に当接した後は、軸力材431および補剛材432の両方が、圧縮力を支持することになり、反対に、軸力材431が伸長して、下反力板534の上面がストッパー531の下面に当接した後は、軸力材431および補剛材432の両方が、引張力を支持することになる。
【0044】
(第2補剛材)
図16の(c)において、ダンパー530Wは、ダンパー530Vの補剛材432を包囲する第2補剛材536を、上口金433に設置したものである。
したがって、第2補剛材536の下端と上反力板532の上面との間には、隙間▲が設けられている。したがって、軸力材431および補剛材432は、第2補剛材536によって補剛され、軸力材431および補剛材432の座屈の発生が抑えられる。そして、軸力材431が収縮して、上反力板532の下面がストッパー531の上面に当接した後は、軸力材431および補剛材432の両方が、圧縮力を支持し、さらに、収縮が増すと、上反力板532の上面が第2補剛材536の下端に当接し、軸力材431、第2補剛材536および補剛材432の三者が、圧縮力を支持することになる。
以上のように、ダンパー530Wは、圧縮力を分担する部材の数が増しているため、各部材に作用する圧縮力が低下することによって、座屈の発生が抑えられている。
【0045】
図17において、ダンパー530Tにおいて、ストッパー531の上面と補剛材432の下端との間の隙間△の値が、「δu=2・△・H/L」を満足する値になっている。このとき、δuは許容変位(柱部材許容変位に同じ)、Hは橋脚420の高さ、Dは対向するダンパー530T同士の間隔である(
図5参照)。
したがって、ダンパー530Tに圧縮力が作用して、収縮量が△に達したところで、補剛材432の下端はストッパー531に当接するから、その後の圧縮力は、軸力材431および補剛材432の両方が支持することになり、地震荷重が増加する。そして、変位がδvに到達したところで、補剛材432も塑性変形を開始する(破線にて示す)。
したがって、ダンパー530Tが設置された橋脚420は、ダンパー430Sが設置された橋脚420(細い実線にて示す)に比べ、橋脚420が許容変位量δu以上に変位した後の、地震荷重の低下量が少なくなっている(太い実線にて示す)。
【0046】
[実施の形態6]
図18および
図19は本発明の実施の形態6に係る橋脚構造を説明するものであって、
図18は側面図、
図19は地震荷重と水平変位量との関係を示す相関図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0047】
(プレロード)
図18において、橋脚構造600は、橋脚構造100に同じであるが、ダンパー30b、30dに、床板60を持ち上げる方向の力を付与するプレロードが作用している。すなわち、橋脚20は、橋脚ブラケット22とフーチング10の上面11との間が、ダンパー30b、30dによって常時(地震時を除いて)、引き伸ばされている。
なお、ダンパー30b、30dは、予め、圧縮した状態で、橋脚20に設置されるものであるが、プレロードを付与する機構は限定するものではない。また、ダンパー30b、30dにプレロードを付与するものを示しているが、本発明はこれに限定するものではなく、ダンパー30a、30cにもプレロードを付与してもよい。また、橋脚構造200〜500(実施の形態2〜5)においても、同様にプレロードを付与してもよい。
【0048】
(地震荷重)
図19において、縦軸は橋脚20に作用する地震荷重で、横軸は橋脚の橋脚水平変位量である。
図19において、橋脚20本体の抵抗力は抵抗力R20で一定になった後、直線的に減少する。このとき、橋脚20に作用する鉛直荷重が大きいと、抵抗力R20の範囲が狭く、水平変位が比較的小さい範囲で抵抗力は減少し(点線にて示す)、反対に、橋脚20に作用する鉛直荷重が小さいと、抵抗力R20の範囲が広がり、水平変位が比較的大きな範囲で抵抗力は減少する(一点鎖線にて示す)。
また、ダンパー30b、30dの抵抗力は直線的に増加した後、抵抗力R30で一定に維持される(破線にて示す)。
したがって、橋脚20にダンパー30b、30dを設置し、プレロードを付与しない場合、すなわち、橋脚20に作用する鉛直荷重が大きい場合、抵抗力は、水平変位量が比較的小さいところで減少することになる(細い実線にて示す)。
一方、橋脚20にダンパー30b、30dを設置し、プレロードを付与した場合、すなわち、橋脚20に作用する鉛直荷重は小さくなるから、抵抗力は、水平変位量が比較的大きいところで減少することになる(太い実線にて示す)。このとき、床板60の自重等による鉛直荷重を「N2」、ダンパー30b、30dそれぞれに付与するプレロードを「ND」とすると、橋脚20の下部(橋脚ブラケット22b、22dよりも下の範囲)に作用する鉛直荷重N1は、「N1=N2−2・ND」となる。
【0049】
[実施の形態7]
図20および
図21は本発明の実施の形態7に係る橋脚構造を説明するものであって、
図20の(a)は側面図、
図20の(b)は側面図、
図21の(a)は側面図、
図21の(b)は正面図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0050】
(反力基礎)
図20の(a)において、橋脚構造710は、地盤90内にフーチング(下部構造物に同じ)10が埋設され、フーチング10に橋脚(柱部材に同じ)20が立設されている。
また、フーチング10の上方において、反力基礎70b、70dが地盤90に設置され、反力基礎70b、70dの地表面92から露出している反力基礎上面71b、71dに、反力基礎ブラケット72b、72dがそれぞれ設置されている。また、反力基礎70b、70dはグランドアンカー73b、73dによって、地盤90に固定されている。
そして、減衰特性を有するダンパー30b、30dの上端部が、橋脚20の橋脚側面21b、21dに設けられた橋脚ブラケット22b、22dにそれぞれ接合され、下端部が、反力基礎ブラケット72b、72dにそれぞれ接合されている。
【0051】
図20の(b)において、橋脚構造720は、橋脚構造710におけるグランドアンカー73b、73dを、反力杭74b、74dに変更したものである。
すなわち、橋脚構造710、720は、フーチング10の上部の土被りが大きいため、フーチング10周辺の建築物や道路などによってダンパー30b、30dの下端をフーチング10に定着させることが困難な場合がある。
このような場合には、グランドアンカー73b、73dや反力杭74b、74dを、地表面92からフーチング10と干渉しないように打設し、その頭部に反力基礎70b、70dを設置し、これにダンパー30b、30dの下端を固定することによって、ダンパー30b、30dの設置を可能にしている。
【0052】
(反力梁)
図21において、橋脚構造800は、地盤90内にフーチング(下部構造物に同じ)10が埋設され、フーチング10に橋脚(柱部材に同じ)20が立設されている。
また、フーチング10の上方において、フーチング10の橋軸直角方向の長さよりも長い長さの反力梁80b、80dが地盤90に設置され、反力梁上面81b、81dに、反力梁ブラケット82b、82dがそれぞれ設置されている。また、反力梁80b、80dは反力杭83b、83dによって、地盤90に固定されている。
【0053】
そして、減衰特性を有するダンパー30b、30dの上端部が、橋脚20の橋脚側面21b、21dに設けられた橋脚ブラケット22b、22dにそれぞれ接合され、下端部が、反力梁ブラケット82b、82dにそれぞれ接合されている。
したがって、橋脚構造800は、フーチング10の橋軸直角方向の長さが長く、反力基礎70b、70dでは、グランドアンカー73b、73dあるいは反力杭74b、74dを設置することが困難であるものの、反力梁ブラケット82b、82dを具備しているから、これを反力杭83b、83dによって地盤90に固定することが可能になっている。
なお、以上の形態は、段落し424を具備する橋脚420(橋脚構造400参照)についても採用することができ、さらに、プレロード(橋脚構造600参照)を付与してもよい。
【0054】
[実施の形態8]
図22および
図23は本発明の実施の形態8に係る橋脚構造を説明するものであって、
図22は一部を示す側面図、
図23の(a)は地震荷重と水平変位量との関係を示す相関図、
図23の(b)は地震荷重と水平変位量との関係を示す相関図、
図24は繰り返し地震荷重と繰り返し水平変位量との関係を示す相関図である。なお、実施の形態4(
図13)と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0055】
(柱部材ピン孔)
図22において、橋脚構造900は、橋脚構造400の橋脚20に設置された橋脚ブラケット22bおよび橋脚ブラケット22dに代えて、橋脚20に橋脚ブラケット922b(図示しない)および橋脚ブラケット922dを設置したものである。
そして、橋脚ブラケット922bとフーチングブラケット12bとにダンパー430bの両端が接続され(何れも図示しない)、橋脚ブラケット922dとフーチングブラケット12dとにダンパー430dの両端が接続されている。
以下、橋脚ブラケット922b(図示しない)は橋脚ブラケット922dと同じ形状であるため、橋脚ブラケット922dについて説明する。
橋脚ブラケット922dには高さ方向に長い長孔である橋脚ピン孔(柱部材ピン孔に相当する)924dが形成されている。
一方、ダンパー430dの上クレビス434dに形成された図示しないダンパーピン孔に断面円形の上側ピン32dが固定されている。
【0056】
そして、上側ピン32dが橋脚ピン孔924dに侵入している。このとき、上側ピン32dの外周最上点と長孔である橋脚ピン孔924dの内周最上点との間に上隙間△が形成され、上側ピン32dの外周最下点と長孔である橋脚ピン孔924dの内周最下点との間に下隙間△が形成されている。
このとき、上隙間△の値と下隙間△の値とは等しく、橋脚20の高さが高さH、ダンパー430b(図示しない、
図13参照)とダンパー430dとの距離が間隔L、橋脚20の耐力が低下するときの橋脚20の水平変位が許容変位量δuのとき、「δu=2・△・H/L」である(
図5参照)。
【0057】
図23の(a)において、縦軸は橋脚の地震荷重、横軸は橋脚の水平変位量である。橋脚20本体の抵抗力は、直線的に上昇した後、水平変位量が橋脚20の許容変位量δuに到達するまで一定の値(フーチング10の基礎の許容荷重に同じ)を保持し(実線にて示す)、許容変位量δuに到達したところで、直線的に減少し、再度、一定の値を保持する(一点鎖線にて示す)。
ダンパー430dの抵抗力は直線的に上昇した後、一定の値を保持した後、直線的に減少するものであるから、上隙間△(下隙間△でも同じ)が前記「δu=2・△・H/L」を満足する場合、橋脚20の水平変位量が許容変位量δuに到達したところから、抵抗力は上昇し(破線にて示す)、図中右下がりの斜線を付した範囲が、ダンパー430の吸収エネルギー領域Bに相当する。
【0058】
図23の(b)において、縦軸は橋脚の地震荷重、横軸は橋脚の水平変位量である。橋脚20の水平変位量が橋脚20の許容変位量δuに到達した後、地震時変位量まで、水平変位した際の、橋脚20の吸収エネルギー領域Aは、左下がりの斜線を付した範囲に相当する。
そうすると、ダンパー430の吸収エネルギー領域Bの大きさと橋脚20の吸収エネルギー領域Aの大きさとが等しくなるような、ダンパー430dを選定しておけば、橋脚20に橋脚ブラケット922dを介してダンパー430dが設置された橋脚構造900は、橋脚20の許容変位量δuを超える水平変位をした後、吸収エネルギー領域Aおよび吸収エネルギー領域Bを合計した大きさに相当するエネルギーを吸収することになる。
すなわち、水平変位が、ダンパー430設置後の許容変位量δvに到達するまで、フーチング10の基礎の許容荷重を支持することが可能になる(太い実線にて示す)。
【0059】
図24において、橋脚20本体の抵抗力は、直線的に上昇した後、水平変位量が橋脚20のダンパー430設置前の許容変位量δuに到達するまで一定の値(フーチング10の基礎の許容荷重に同じ)を保持し(細い実線にて示す)、その後、減少し、やがて、一定の値を維持する。
そして、ダンパー430設置後の許容変位量δvに到達したところで、今までとは反対方向の地震荷重が作用したとすると、橋脚20本体の抵抗力は、まず、地震荷重が0(ゼロ)になるまで、弾性的に復元し、その後、反対方向の地震荷重が作用すると、反対方向に向かって、地震荷重に比例して変位する。そして、反対方向のダンパー430設置後の許容変位量δvにまで変位したところで、当初の方向の地震荷重が作用すると、前記のように弾性復元し、さらに、当初の方向に向かって、地震荷重に比例して変位する(点線にて示す)。したがって、橋脚20本体は点線で示す平行四辺形の履歴曲線を呈する。
【0060】
また、ダンパー430は、ダンパー430設置前の許容変位量δuに到達したところで、地震荷重の一部が作用し始め、負担する荷重は直線的に増加し、やがて、一定の値を維持する。そして、ダンパー430設置後の許容変位量δvに到達したところで、今までとは反対方向の地震荷重が作用したとすると、負担する荷重が0(ゼロ)になるまで直線的に減少する。その後は、反対方向のダンパー430設置前の許容変位量δuに到達するまで、荷重は0(ゼロ)のままで、反対方向のダンパー430設置前の許容変位量δuに到達したところで、当初とは反対方向の荷重を負担することになる(二点鎖線で示す)。
【0061】
そうすると、橋脚構造900の抵抗力は、ダンパー430設置後の許容変位量δvに到達したところで、反対方向の地震荷重が作用すると、地震荷重が0(ゼロ)になるまで、橋脚20本体の抵抗力とダンパー430の抵抗力とを合わせた抵抗力の減少量で減少して、地震荷重が0(ゼロ)になる。さらに、反対方向の地震荷重が作用すると、上側ピン32dは橋脚ブラケット922dに当接していないから、橋脚20本体の抵抗力の減少割合で減少し(一点鎖線にて示す)、その後、反対方向のダンパー430設置前の許容変位量δuにまで変位したところで、上側ピン32dは橋脚ブラケット922dに当接し、ダンパー430の抵抗力の増加が加算されて増加する。
したがって、橋脚構造900の抵抗力は、太い破線にて示す履歴曲線を呈することになる。
【0062】
[実施の形態9]
図25および
図26は本発明の実施の形態9に係る橋脚構造を説明するものであって、
図25の(a)は動作する前の一部を示す側面図、
図25の(b)は動作する前の一部を示す側面図、
図26は繰り返し地震荷重と繰り返し水平変位量との関係を示す相関図である。なお、実施の形態8(
図22〜
図24)と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。また、各部は模式的に示すものであって、本発明は図示された形態(形状や相対的な大きさ)に限定されるものではない。
【0063】
図25において、橋脚構造1000は、橋脚構造900の橋脚20に設置された橋脚ブラケット922b(図示しない)および橋脚ブラケット922dに代えて、橋脚ブラケット923b(図示しない)および橋脚ブラケット923dを設置したものである。
以下、橋脚ブラケット923b(図示しない)は橋脚ブラケット923dと同じ形状であるため、橋脚ブラケット923dについて説明する。
橋脚ブラケット923dには高さ方向に長い長孔である橋脚ピン孔(柱部材ピン孔に相当する)924dが形成され、橋脚ピン孔924dの内周下端および内周上端に、上側ピン32dが係止可能(侵入可能)な橋脚ピン下係止部925dおよび橋脚ピン上係止部926dが、それぞれ形成されている。
一方、ダンパー430dの上クレビス434dの頂点にダンパー上ロッド937dが設置され、ダンパー上ロッド937dにバネ938dの一方の端部が接続されている。そして、バネ938dの他方の端部は橋脚20の橋脚側面21dに接続され、バネ938dは、ダンパー上ロッド937dを橋脚側面21dに近づく方向に付勢している(
図23の(a)参照)。
【0064】
したがって、橋脚構造1000では、ダンパー430が圧縮され、上側ピン32dが橋脚ピン孔924dの内周下端に到達した際、バネ938dの付勢によって、ダンパー430は傾動し、上側ピン32dは橋脚ピン下係止部925dに抜け出し不能に侵入する(
図23の(b)参照)。一方、ダンパー430が引っ張られ、上側ピン32dが橋脚ピン孔924dの内周上端に到達した際、バネ938dの付勢によって、ダンパー430は傾動し、上側ピン32dは橋脚ピン上係止部926dに抜け出し不能に侵入する。
【0065】
図26において、橋脚構造1000では、上側ピン32dが橋脚ピン下係止部925dまたは橋脚ピン上係止部926dに抜け出し不能に侵入した後は、隙間△のない橋脚構造400と同様に挙動する。
すなわち、橋脚構造1000の抵抗力は、ダンパー430設置後の許容変位量δvに到達したところで、反対方向の地震荷重が作用すると、橋脚20本体の履歴曲線(点線にて示す)とダンパー430の履歴曲線(二点鎖線にて示す)とを合わせた履歴曲線(太い破線にて示す)を呈する。よって、橋脚構造1000は大きなエネルギー吸収性能を有している。