特許第6243368号(P6243368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6243368エネルギー線硬化型接着剤により部品を接着する接着方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243368
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】エネルギー線硬化型接着剤により部品を接着する接着方法
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/347 20060101AFI20171127BHJP
   C09J 201/00 20060101ALN20171127BHJP
【FI】
   G01D5/347 110Z
   !C09J201/00
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-39096(P2015-39096)
(22)【出願日】2015年2月27日
(65)【公開番号】特開2016-160320(P2016-160320A)
(43)【公開日】2016年9月5日
【審査請求日】2016年6月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(74)【代理人】
【識別番号】100159684
【弁理士】
【氏名又は名称】田原 正宏
(72)【発明者】
【氏名】尾高 俊一
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−011822(JP,A)
【文献】 特開2003−099946(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/114567(WO,A1)
【文献】 特開2008−002970(JP,A)
【文献】 特開2007−278927(JP,A)
【文献】 特開2004−325231(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/114567(WO,A1)
【文献】 特開2007−121142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
G01D 5/26− 5/38
C09K11/00− 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の波長領域のエネルギー線を透過できない材料からなる第1の部品(2)と第2の部品(3)とからなる組立体の組立において、前記組立体が光学式エンコーダであり、前記第1の部品(2)が、前記光学式エンコーダに用いられるスリット板である場合に、前記第1の部品(2)と前記第2の部品(3)とを互いに接着する接着方法であって、
前記第1の波長領域のエネルギー線の照射により硬化するエネルギー線硬化型接着剤(5)と、前記第1の部品(2)を透過可能な第2の波長領域のエネルギー線(7)を前記第1の波長領域のエネルギー線に変換して当該第1の波長領域のエネルギー線を放出する波長変換体(4)とを、前記第1の部品(2)および前記第2の部品(3)のうちの一方の部品に付着させ、
前記一方の部品の、前記エネルギー線硬化型接着剤と前記波長変換体とが付着された部位に、前記第1の部品(2)および前記第2の部品(3)のうちの他方の部品を接触させ、
前記第2の波長領域のエネルギー線(7)を前記第1の部品(2)に透過させて前記エネルギー線硬化型接着剤(5)および前記波長変換体(4)に照射し、それにより前記エネルギー線硬化型接着剤を硬化させるようにした、接着方法。
【請求項2】
前記エネルギー線硬化型接着剤(5)が、紫外線から青の波長領域内の光の照射により硬化する紫外線硬化型接着剤であり、
前記第2の波長領域のエネルギー線(7)が、X線、または該X線よりも透過性の高いエネルギー線であり、
前記波長変換体(4)が、前記X線、または該X線よりも透過性の高いエネルギー線を受けて、紫外線から青の波長領域内の光を発光する蛍光体であることを含む、請求項1に記載の接着方法。
【請求項3】
前記第1の部品(2)がポリエーテルイミド樹脂から作製されている、請求項1または2に記載の接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の接着方法、特に、エネルギー線硬化型接着剤、例えば紫外線硬化型接着剤により部品を接着する接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの部品を結合したいとき、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化型接着剤(以下、UV接着剤と略す。)がよく利用される。UV接着剤は、機械的な結合機構を部品に取付ける必要がないという利点がある。また、UV接着剤に紫外線が照射されるまでUV接着剤は未硬化の状態であるので、硬化前に2つの部品の相対的位置を調整できるという利点もある。その一方で、UV接着剤を硬化させるときは紫外線をUV接着剤に確実に到達させる必要がある。この要求に対して、紫外線透過材料により部品を作製することが考えられる。また、紫外線透過材料を使用できない場合には、紫外線を部品間のUV接着剤に導く経路を確保することが考えられる。
【0003】
上述した要求は、例えば光学式ロータリーエンコーダを構成する部品をUV接着剤により結合する際に発生する。ここで、図3Aは従来例としての光学式ロータリーエンコーダの側面図を示し、図3B図3Aに示したロータリーエンコーダの斜視図を示す。さらに、図4A図3Aに示したロータリーエンコーダを2つの部品に分解した態様の側面図を示し、図4B図4Aに示される態様の斜視図を示す。なお、これらの図面に基づいた以下の説明では各図面の上下方向を鉛直方向とする。
【0004】
光学式ロータリーエンコーダでは、図3A図3B図4Aおよび図4Bに示すように、第1の板状部材1と第2の板状部材2とが対向して配置されている。第2の板状部材2は円板からなり、円板上に透過部と非透過部とからなる複数のスリット(不図示)が円周方向に形成されている。また、第2の板状部材2が対向する第1の板状部材1の面にも複数のスリット(不図示)が、第2の板状部材2と同じように設けられている。
【0005】
さらに、各板状部材1、2の中心部にはそれぞれ、シャフト3を挿通するシャフト挿通穴1a、2aが形成されている。シャフト3は第1の板状部材1のシャフト挿通穴1a内にて自由に回転可能である。そして、第1の板状部材1はシャフト3と共に回転しないように、固定機構(不図示)により固定されている。一方、第2の板状部材2はシャフト3と共に回転するように、シャフト3と接続されている。
【0006】
上記のように組立てられた板状部材1、2(図3A参照)を発光素子と受光素子との間の光路(不図示)に設置する。さらに、各板状部材1、2の、スリットが設けられている面を上記光路と直交させる。このような構成において、第1の板状部材1のスリットの透過部と第2の板状部材2のスリットの透過部とが完全に重なっているとき、発光素子からの全光量が両板状部材1、2を通過して受光素子に到達する。これに対し、第2の板状部材2をシャフト3により回転させると、受光素子に到達する光量が変化する。この光量の変化に基づき、第1の板状部材1に対する第2の板状部材2の位置、すなわち回転角度を検出することが可能である。
【0007】
このように回転角度が検出可能なエンコーダにおいては、対向する2つの板状部材1、2の平行度を高くすることが要求される。このため、第2の板状部材2を回転させるシャフト3に第1の板状部材1と第2の板状部材2の間の間隔を一定に規定する間隔規定部を設けている。この間隔規定部としては、第2の板状部材2のシャフト挿通穴2aに挿入されるべきシャフト部分3aより径が拡大したシャフト部分(以下、径大部と呼ぶ。)3bが利用されている。
【0008】
シャフト部分3aを第2の板状部材2のシャフト挿通穴2aに挿入し、径大部3bの上面を第2の板状部材2に突当てた状態にして、第2の板状部材2とシャフト部分3aとを結合する。両者の結合のために機械的な結合機構、例えばネジを使用すると、第2の板状部材2に局所的に応力が加わってしまい、第2の板状部材2が変形する虞がある。これを防止するため、第2の板状部材2を径大部3bに固定する手段として接着剤が使用されている。
【0009】
また、第2の板状部材2を第1の板状部材1に接近させることにより、第1の板状部材1と第2の板状部材2とを透過する光の平行性を高めることと、スリットの透過部の縁部にて発生する回折を抑制することができる。このため、シャフト部分3bと第2の板状部材2との間には、機械的な結合機構の介在が望まれず、接着剤が使用されている。
【0010】
さらに、シャフト部分3aとシャフト挿通穴2aとを嵌合させることにより、第2の板状部材2の径方向の位置を第1の板状部材1に対して精度よく位置決めすることが行われている。つまり、シャフト部分3aおよびシャフト挿通穴2aの加工精度を利用して、シャフト部分3aの外周面とシャフト挿通穴2aの内周面とを径方向に接触させることにより板状部材2を位置決めする方法が行われている。また、より高い位置決め精度を必要とする場合、シャフト部分3aの外周面とシャフト挿通穴2aの内周面との間にわずかな隙間を設け、径方向に板状部材2の位置を調整してから固定する方法も行われる。径方向に接触させずに板状部材2を位置決めし固定する場合は、シャフト挿通穴2aを、板状部材2を貫通しない穴として形成することもできる。
さらに、ロータリーエンコーダに回転方向の基準を設ける場合、板状部材2とシャフト部分3aとを互いに軸方向に回転させて回転方向の基準(図示せず)にあわせてから固定することも行われる。勿論、この回転方向の位置合わせは、前述のようにシャフト部分3aとシャフト挿通穴2aとを嵌合させるか、あるいは、シャフト部分3aとシャフト挿通穴2aとを径方向に接触させずに位置決めするときに行われている。
【0011】
以上のような方法により第2の板状部材2を固定する場合、接着剤を径大部3bの上面に塗布し、シャフト部分3aとシャフト挿通穴2aとを嵌合させながら、第2の板状部材2を径大部3bの上面に接着させる。この工程では、接着剤を塗布してから第1の板状部材1と第2の板状部材2との嵌合が完了するまでの間に接着剤が硬化しないことが要求される。このため、上記の接着剤としては、UV接着剤が使用されている。
【0012】
なお、特許文献1および特許文献2は、光学式エンコーダ用部品をUV接着剤により接合する方法を開示している。
特許文献1には、光学式エンコーダの組立において、ガラス製スリット板をUV接着剤によって金属製ハブ上に接着する方法が開示されている。さらに、特許文献1には、ガラス製スリット板と金属製ハブとの間に介在するUV接着剤の一端部に対して斜め方向から紫外線を照射して、UV接着剤を硬化させることが記載されている。
【0013】
また、特許文献2には、光学式エンコーダの組立において、スリット円板の裏面の中心部と回転軸の一端部とをUV接着剤により結合する方法が開示されている。さらに、特許文献2には、スリット円板を光学樹脂またはガラスにより作製し、スリット円板上のスリットの非透過部を、クローム膜ではなく、紫外光から可視光までの光線を透過する物質により形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−002970号公報
【特許文献2】特開2007−278927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図3Aおよび図3Bに示した光学式ロータリーエンコーダでは、第2の板状部材2の径方向の位置を第1の板状部材1に対して精度よく位置決めする必要がある。このため、シャフト部分3aとシャフト挿通穴2aとを嵌合させ、その嵌合の公差をできるだけ小さくすることが望まれている。
【0016】
上記の嵌合作用では、シャフト部分3aの外周面とシャフト挿通穴2aの内周面との間に隙間が殆ど無い。このため、第2の板状部材2と径大部3bとの間に挟まれたUV接着剤を硬化させるときには、紫外線を第1の板状部材1と第2の板状部材2との間からUV接着剤に照射することとなる。さらに、第2の板状部材2と径大部3bとの間のUV接着剤は結合時に押圧されて薄膜の接着層となる。したがって、第2の板状部材2と径大部3bとの間から露出した薄膜のUV接着剤の一縁部に紫外線を照射しても、UV接着剤全体を十分に硬化させられない。
【0017】
以上のことから、上記の嵌合を採用する場合には、第1および第2の板状部材1、2の少なくとも一方を、紫外線を透過するガラスや樹脂などから作製する必要がある。言い換えれば、紫外線非透過材料により板状部材1、2を作製したい要求には応えられないという問題点がある。
【0018】
そこで、上記の嵌合の公差を大きくして、シャフト部分3aの外側面とシャフト挿通穴2aの内側面との間に大きな隙間Xを形成することが考えられる。そのような隙間Xを形成した態様の斜視図を図5に示している。この態様では、まず、シャフト部分3aを第2の板状部材2のシャフト挿通穴2aに挿入し、径大部3bの上面を第2の板状部材2に突当てる。そして、UV接着剤を隙間Xに充填した後、隙間Xに在るUV接着剤に紫外線を照射させてUV接着剤を硬化させる。このような方法によると、UV接着剤全体を硬化させることが容易となる。このため、板状部材1、2の材料は紫外線透過材料に限定されないという利点がある。
しかし、上記の態様では、第2の板状部材2の径方向の位置を第1の板状部材1に対して精度よく位置決めすることが難しいという問題点がある。
【0019】
なお、特許文献1には、ガラス製スリット板と金属製ハブとの間に介在するUV接着剤の一縁部に対して斜め方向から紫外線を照射する方法が提案されている。この方法によると、UV接着剤の一縁部に対して斜め方向から照射された紫外線は、ガラス製スリット板に侵入する。そして、スリット板上の非透過部とスリット板の下側のハブとの間で紫外線の反射が繰返される。この結果、紫外線が紫外線硬化型接着剤の一方の縁部から反対側の縁部まで行き渡って、紫外線硬化型接着剤が硬化される。
しかし、特許文献1は、紫外線を透過するガラス材料により作製されたスリット板を接着する方法を開示しているに過ぎない。つまり、特許文献1には、紫外線非透過材料からなるスリット板とハブとの間に介在するUV接着剤を十分に硬化させる方法については何ら記載されていない。
【0020】
また、特許文献2には、スリット円板上のスリットの非透過部が、紫外光から可視光までの光線を透過する物質により形成することが提案されている。このようなスリット円板によれば、非透過部により紫外線が遮断されないため、紫外線をスリット円板の上方からスリット円板の下方のUV接着剤に照射することができる。しかし、特許文献2に開示されている方法においても、紫外線透過材料からなるスリット円板を前提としている。つまり、特許文献2においても、紫外線非透過材料からなるスリット円板と回転軸の一端部との間に介在するUV接着剤を十分に硬化させる方法については何ら記載されていない。
【0021】
そこで本発明は、上述した実情に鑑み、一方がエネルギー線非透過材料、例えば紫外線非透過材料からなる2つの部品を結合するために2つの部品間にエネルギー線硬化型接着剤を介在させた構成に対して、該エネルギー線硬化型接着剤を十分に硬化させることができる、接着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第一の態様によれば、第1の波長領域のエネルギー線を透過できない材料からなる第1の部品と第2の部品とからなる組立体の組立において、第1の部品と第2の部品とを互いに接着する接着方法が提供される。
さらに、第一の態様の接着方法は、
第1の波長領域のエネルギー線の照射により硬化するエネルギー線硬化型接着剤と、第1の部品を透過可能な第2の波長領域のエネルギー線を第1の波長領域のエネルギー線に変換して当該第1の波長領域のエネルギー線を放出する波長変換体とを、第1の部品および第2の部品のうちの一方の部品に付着させ、
一方の部品の、エネルギー線硬化型接着剤と波長変換体とが付着された部位に、第1の部品および第2の部品のうちの他方の部品を接触させ、
第2の波長領域のエネルギー線を第1の部品に透過させてエネルギー線硬化型接着剤および波長変換体に照射し、それによりエネルギー線硬化型接着剤を硬化させることを特徴とする。
上記第一の態様により前述の課題が解決される。しかし、本発明は、第一の態様に限られず、以下の第二ないし第四の態様のいずれかの接着方法を提供することもできる。
【0023】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様の接着方法において、エネルギー線硬化型接着剤が紫外線から青の波長領域内の光の照射により硬化する紫外線硬化型接着剤であり、第2の波長領域のエネルギー線が、X線、または該X線よりも透過性の高いエネルギー線であり、波長変換体が、前記X線、または該X線よりも透過性の高いエネルギー線を受けて、紫外線から青の波長領域内の光を発光する蛍光体であることを含む、部品の接着方法が提供される。
【0024】
本発明の第三の態様によれば、第一または第二の態様の接着方法において、第1の部品がポリエーテルイミド樹脂から作製されている、接着方法が提供される。
【0025】
本発明の第四の態様によれば、第一から第三の態様のいずれかの接着方法において、組立体が光学式エンコーダであり、第1の部品が、光学式エンコーダに用いられるスリット板である、接着方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
本発明の第一の態様によれば、第1の波長領域のエネルギー線の照射により硬化するエネルギー線硬化型接着剤を使用して第1の部品と第2の部品とを互いに接着するとき、そのエネルギー線硬化型接着剤に波長変換体を加えている。さらに、その波長変換体は、第1の部品を透過可能な第2の波長領域のエネルギー線の照射により第1の波長領域のエネルギー線を放射するものである。
したがって、第2の波長領域のエネルギー線を第1の部品に透過してエネルギー線硬化型接着剤および波長変換体に照射することにより、エネルギー線硬化型接着剤を硬化可能な第1の波長領域のエネルギー線が波長変換体から放出される。それにより、エネルギー線硬化型接着剤が十分に硬化されることとなる。このため、第1の波長領域のエネルギー線を透過できない材料により第1の部品が作製することができる。さらに、第1の波長領域のエネルギー線を接着剤に導入するための構成を、第1の部品と第2の部品とからなる組立品に対して設ける必要もない。
【0027】
本発明の第二の態様によれば、第一の態様の部品接着方法を良好に実施することができる。
【0028】
本発明の第三の態様によれば、第1の部品がポリエーテルイミド樹脂からなるので、第1の部品の耐環境性、耐衝撃性、耐熱性、および化学的安定性を高めることができる。
【0029】
本発明の第四の態様によれば、耐環境性、耐衝撃性、耐熱性、および化学的安定性を良好に備えたスリット板を有する光学式エンコーダを提供することができる。
【0030】
添付図面に示される本発明の典型的な実施形態の詳細な説明から、本発明のこれらの目的、特徴および利点ならびに他の目的、特徴および利点がさらに明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の接着方法が適用可能な光学式ロータリーエンコーダの分解斜視図である。
図2A】本発明を適用可能な光学式ロータリーエンコーダを組立てるときの第1の工程段階を示す図である。
図2B】本発明を適用可能な光学式ロータリーエンコーダを組立てるときの第2の工程段階を示す図である。
図2C】本発明を適用可能な光学式ロータリーエンコーダを組立てるときの第3の工程段階を示す図である。
図2D】本発明を適用可能な光学式ロータリーエンコーダを組立てるときの第4の工程段階を示す図である。
図3A】従来例としての光学式ロータリーエンコーダの側面図である。
図3B図3Aに示したロータリーエンコーダの斜視図である。
図4A図3Aに示したロータリーエンコーダを2つの部品に分解した態様の側面図である。
図4B図4Aに示される態様の斜視図である。
図5図2Bに示した第2の板状部材のシャフト挿通穴とシャフト部分との嵌合を緩めた場合の態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図面においては、背景技術の欄で説明した構成要素には同一の参照符号が付けられている。さらに、理解を容易にするために、これらの図面は縮尺を適宜変更している。また、以下では、本発明の接着方法が適用可能な組立品として光学式ロータリーエンコーダを例にして説明するが、本発明はこれに限られない。
【0033】
図1は本発明の接着方法が適用可能な光学式ロータリーエンコーダの分解斜視図を示している。
光学式ロータリーエンコーダでは、図1に示すように、第1の板状部材1と第2の板状部材2とが対向して配置される。第2の板状部材2は回転スリット板である。光学式エンコーダ用の回転スリット板はコード板とも呼ばれる。第2の板状部材2上には、透過部と非透過部とからなる複数のスリット(不図示)が円周方向に形成されている。また、第2の板状部材2が対向する第1の板状部材1の面にも複数のスリット(不図示)が、第2の板状部材2と同じように設けられている。
【0034】
さらに、各板状部材1、2の中心部にはそれぞれ、シャフト3を挿通するシャフト挿通穴1a、2aが形成されている。シャフト3は第1の板状部材1のシャフト挿通穴1a内にて自由に回転可能である。そして、第1の板状部材1はシャフト3と共に回転しないように、固定機構(不図示)により固定されている。一方、第2の板状部材2はシャフト3と共に回転するように、シャフト3と接続されている。
【0035】
図2A図2B図2C、および図2Dは、それぞれ、上記光学式ロータリーエンコーダの組立においてシャフト3に第2の板状部材2を結合させるときの第1の工程段階、第2の工程段階、第3の工程段階、および第4の工程段階を順次示している。これらの図は、図3Aおよび図3Bに示したシャフト3および板状部材2の縦断面を用いて各工程段階を示している。以下、各図面の上方向を鉛直上向きとし、各図面の下方向を鉛直下向きとして、本発明の実施形態を説明する。
【0036】
図2Aに示すように、まず、シャフト3を設ける。シャフト3は、板状部材2のシャフト挿通穴2aに挿入されるべきシャフト部分3aより径が拡大した部分、すなわち径大部3bを有している。シャフト挿通穴2aとシャフト部分3aとの嵌合の公差はできるだけ小さく設定されている。例えば、シャフト挿通穴2aとシャフト部分3aとが、中間ばめの公差に基づいて嵌合されることが好ましい。
このような嵌合の公差を採用することにより、シャフト部分3aにシャフト挿通穴2aを挿入している間に板状部材2の径方向の位置をシャフト部分3aの中心に対して精度よく位置決めすることができる。
【0037】
次に、図2Bに示すように、シャフト3の径大部3bの上面に波長変換体4を付着させる。本実施形態の波長変換体4には、X線の照射により紫外線から青の波長領域内の光を発光する蛍光体が使用されている。言い換えれば、波長変換体4は、約0.01nm〜約1nmの波長領域の第1のエネルギー線を約10nm〜約450nmの波長領域の第2のエネルギー線に変換して第2のエネルギー線を放出する蛍光体である。
さらに、図2Cに示すように、紫外線硬化型接着剤(以下、UV接着剤と称す。)5を波長変換体4上に付着させる。UV接着剤5は紫外線から青の波長領域(約10nm〜約450nm)内の光の照射により硬化するものである。
【0038】
その後、図2Dに示すように、シャフト部分3aを板状部材2のシャフト挿通穴aに嵌合させながら、板状部材2をシャフト3の径大部3bの上面に接触させる。これにより、板状部材2が、波長変換体4とUV接着剤5とからなる接着層6によってシャフト3の径大部3bの上面に接着される。
この嵌合工程において、シャフト挿通穴2aとシャフト部分3aとの嵌合の公差を中間ばめの公差に設定しているため、第2の板状部材2の径方向の位置はシャフト部分3aの中心に対して精度よく位置決めされる。
【0039】
なお、本実施形態の板状部材2の材料としては、紫外線非透過材料が使用されている。当該材料には、例えば、PEI(Polyetherimide:ポリエーテルイミド)樹脂である(例えば、製品名:Ultem(登録商標))、アルミニウム、ステンレス鋼などを適用できる。PEI樹脂を板状部材2の材料に適用することにより、回転スリット板の耐環境性、耐衝撃性、耐熱性、および化学的安定性を高めることができる。
また、図2Bおよび図2Cに示した工程では、波長変換体4をシャフト3の径大部3b上に付着させ、この上にUV接着剤5を塗布しているが、本発明はそのような工程に限られない。例えば、粒状にした波長変換体4をUV接着剤5に混合し、この混合物をシャフト3の径大部3b上に塗付してもよい。また、そのような混合物もしくは波長変換体4をシャフト3の径大部3b上に付着させるのではなく、シャフト3の径大部3bの上面に突当てられるべき板状部材2の下部に付着させてもよい。
【0040】
次に、図2Dに示すように、X線7を板状部材2の上方からシャフト3の径大部3b上の接着層6に向けて照射する。X線7は、PEI樹脂により作製された板状部材2を透過することができ、接着層6の波長変換体4に到達する。波長変換体4はX線7を受けると、紫外線から青の波長領域内の光を発する。そして、紫外線から青の波長領域内の光が接着層6のUV接着剤5全体に照射され、接着層6のUV接着剤5が十分に硬化する。したがって、板状部材2の下面とシャフト3の径大部3bの上面とを接合する接合部(接着層6の部分)の機械的強度を確保することができる。
【0041】
以上の工程により組立てられる組立品の場合、図2Dに示されるUV接着剤5の殆どが、板状部材2の下面とシャフト3の径大部3bの上面との間に挟まれている。接着層6においては接着層6の一縁部が露出されているだけである。さらに、板状部材2は紫外線非透過材料から作製されているため、UV接着剤5全体に紫外線を照射することが困難である。
そこで、前述したように、紫外線よりも透過性の高いX線7を板状部材2に透過させて接着層6の波長変換体4に照射する。これにより、波長変換体4が紫外線から青の波長領域内の光を放出し、UV接着剤5は紫外線から青の波長領域内の光を受けて硬化する。このため、UV接着剤5の殆どが、紫外線非透過部材により覆われていても、上述した蛍光体4を用いた接着方法によれば、UV接着剤5を十分に硬化させることができる。
さらに、第2の板状部材2の材料としてPEI樹脂を使用できるだけでなく、第2の板状部材2に対向して配置される第1の板状部材1(図1参照)にもPEI樹脂を使用できる。
【0042】
なお、本実施形態の各工程段階では、図2A図2Dに示すようにシャフト3をシャフト部分3aが鉛直上向きになるように設置している。このようにシャフト3の姿勢を固定してシャフト3と板状部材2との接合を実施すると、図2A図2Dに示される全ての工程段階での作業を上方からの作業に統一できるので、自動化しやすい利点がある。シャフト3の径大部3b上に付着させる波長変換体4およびUV接着剤5の量を制御しやすい利点もある。
【0043】
(その他の実施形態)
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
上述の実施形態では、板状部材2とシャフト3とを接着する接着剤として、紫外線から青の波長領域内の光の照射により硬化するUV接着剤5を使用している。しかし、本発明に適用可能な接着剤は、そのようなUV接着剤5に限られない。つまり、接着剤は、紫外線から青の波長領域外の波長領域の光、例えば青緑、緑などの光の照射により硬化するエネルギー線硬化型樹脂であってもよい。
紫外線、紫、青、青緑、または緑の光の照射により硬化するエネルギー線硬化型樹脂を接着剤として使用する場合、波長変換体4には、X線の照射により紫外線、紫、青、青緑、または緑の光を発光する蛍光体を使用することが好ましい。そのようなX線用蛍光体を表1に例示する。
【表1】
【0044】
板状部材2とシャフト3とを接着する接着剤として、紫外線、紫、青、青緑、または緑の光の照射により硬化するエネルギー線硬化型接着剤を使用する場合には、その硬化に必要な発光色に応じて、表1中のいずれかのX線用蛍光体を選択すればよい。
【0045】
表1から分かるように、紫外線の光により硬化する接着剤を使用する場合には、YTaO(タンタル酸イットリウム)からなるX線用蛍光体を波長変換体4に使用することが好ましい。また、表1中に示していないが、紫外線を発光するX線用蛍光体として、ダイヤモンド、AlN(窒化アルミニウム)などの固体蛍光体も在る。
【0046】
紫の光により硬化する接着剤を使用する場合には、BaSO:Eu(ユーロピウムをドープした硫酸バリウム)、BaFCl:Eu(ユーロピウムをドープした塩化フッ化バリウム)、またはBaFBr:Eu(ユーロピウムをドープしたバリウムフルオロブロミド)などからなるX線用蛍光体を波長変換体4に使用することが好ましい。
【0047】
青の光により硬化する接着剤を使用する場合には、CaWO(タングステン酸カルシウム)、LaOBr:Tm(ツリウムをドープしたオキシ臭化ランタン)、YTaO:Nb(ニオブをドープしたタンタル酸イットリウム)、YTaO:Tm(ツリウムをドープしたタンタル酸イットリウム)、ZnS:Ag(銀をドープした硫化亜鉛)、BiGe12(ゲルマン酸ビスマス単結晶)、またはCsI:Na(ナトリウムをドープしたヨウ化セシウム)などからなるX線用蛍光体を波長変換体4に使用することが好ましい。また、表1中に示していないが、青を発光するX線用蛍光体として、NaI(Tl)(タリウムをドープしたヨウ化ナトリウム)、KI(ヨウ化カリウム)なども在る。
【0048】
青緑の光により硬化する接着剤を使用する場合には、CdWO(タングステン酸カドミウム)からなるX線用蛍光体を波長変換体4に使用することが好ましい。
【0049】
緑の光により硬化する接着剤を使用する場合には、CdS:Tb(テルビウムをドープしたオキシ硫化カドミウム)、(Zn,Cd)S:Ag(銀をドープした硫化亜鉛または硫化カドミウム)、CdS:Pr(プラセオジムをドープしたオキシ硫化カドミウム)、またはCsI:Tl(タリウムをドープしたヨウ化セシウム)などからなるX線用蛍光体を波長変換体4に使用することが好ましい。
【0050】
例えば、前述した実施形態において、図2Dに示されるようにX線7を板状部材2に透過させて、YTaO(タンタル酸イットリウム)の波長変換体4に照射させたとき、波長変換体4から紫外線が放出されるため、UV接着剤5を十分に硬化させることができる。
【0051】
なお、波長変換体4には、表1に示されるような無機物からなるX線用蛍光体だけでなく、有機物からなるX線用蛍光体も使用することができる。例えば、X線の照射により紫から青の波長領域内の光を発光する有機物の蛍光体としては、アントラセン結晶ならびに、ポリスチレンやポリビニルトルエンなどの有機固体、などがある。ピーク発光波長に関して、アントラセン結晶は440nmであり、ポリスチレンやポリビニルトルエンは450nmである。
【0052】
また、前述したNaI(Tl)やCsI:Tlなどの蛍光体は、γ線に対して発光効率が良い蛍光体である。したがって、上述した実施形態ではX線7を用いているが、蛍光体の種類に応じてγ線を選択してもよい。つまり、波長変換体4としての蛍光体を発光させるためのエネルギー線はX線7に限定されず、結合を望む部品の材料を透過可能な波長領域のエネルギー線、例えばα線、β線、γ線などであってもよい。
【0053】
さらに、結合を望む部品の材料を透過できるエネルギー線には、当該材料が金属でなければマイクロ波を適用することも考えられる。但し、マイクロ波に対して使用される波長変換体4は、マイクロ波を電圧に変換して、その電圧により紫外線から青の波長領域内の光を放出するものである必要がある。そのようなものには、例えば紫外線LEDを適用できる。
【0054】
さらに、上述した実施形態では光学式ロータリーエンコーダを例にして本発明を説明したが、本発明を適用可能な組立品は光学式ロータリーエンコーダに限定されない。すなわち、エネルギー線硬化型接着剤によって第1の部品の任意面と第2の部品の任意面とを接合する接合部を備えた組立品であれば本発明を適用可能である。特に、第1の部品および第2の部品のうち少なくとも一方が、エネルギー線硬化型接着剤の硬化に必要なエネルギー線を透過できない材料からなる組立体に本発明を適用可能である。
【0055】
以上では典型的な実施形態を示したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の思想を逸脱しない範囲で上述の実施形態を様々な形、構造や材料などに変更可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 第1の板状部材
2 第2の板状部材(第1の部品)
2a シャフト挿通穴
3 シャフト(第2の部品)
3a シャフト部分
3b 径大部
4 波長変換体
5 UV接着剤(エネルギー線硬化型樹脂)
6 接着層
7 X線
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5