特許第6243389号(P6243389)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243389
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】加熱炉及び加熱方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 17/00 20060101AFI20171127BHJP
   H05B 6/80 20060101ALI20171127BHJP
   H05B 6/64 20060101ALI20171127BHJP
【FI】
   F27B17/00 C
   H05B6/80 Z
   H05B6/64 C
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2015-215287(P2015-215287)
(22)【出願日】2015年10月30日
(65)【公開番号】特開2017-83150(P2017-83150A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000123354
【氏名又は名称】音羽電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖中 秀行
(72)【発明者】
【氏名】塚本 直之
(72)【発明者】
【氏名】東條 孝俊
(72)【発明者】
【氏名】牛田 拓造
(72)【発明者】
【氏名】奥村 章太郎
【審査官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−354041(JP,A)
【文献】 特開昭63−163782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 17/00−17/02
F27B 5/00− 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物が中央部に配置される炉本体と、
前記炉本体の内壁面と前記炉本体の中央部との間に設置される障壁と、
前記炉本体の内壁面と前記障壁との間において、前記炉本体の炉床から上部に向う火炎を形成するガスバーナと、
前記炉本体内のガスを前記炉床側から外部に排出する排出口と、
前記炉本体内にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、
前記炉本体内の温度より低温のガスを前記障壁で取り囲まれた空間に上方から供給する低温ガス供給装置とを備えることを特徴とする加熱炉。
【請求項2】
前記ガスバーナ又は前記マイクロ波発振器の少なくとも何れかは、前記炉本体の中心の垂直軸を含む垂直面に対して面対称、又は前記炉本体の中心の垂直軸に対して回転対称に配置されることを特徴とする請求項1に記載の加熱炉。
【請求項3】
前記低温ガス供給装置は、酸素濃度を制御するためのガスを前記低温のガスとして供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱炉。
【請求項4】
本体の内壁面内の障壁で前後左右を取り囲まれた空間内に被加熱物を配置する配置工程と、
前記炉本体の内壁面と前記障壁との間において、前記炉本体の炉床から上部に向う火炎を形成すると共に、前記炉本体内にマイクロ波を照射すると同時に、前記障壁で取り囲まれた空間に当該空間内の温度より低温のガスを上方から供給しながら、前記被加熱物を焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする加熱方法。
【請求項5】
前記低温のガスは、酸素濃度を制御するためのガスであることを特徴とする請求項4に記載の加熱方法。
【請求項6】
前記炉本体の内壁面と前記障壁との間において、前記炉本体の炉床から上部に向う火炎を形成すると共に、前記炉本体内にマイクロ波を照射すると同時に、前記炉本体内の温度より低温のガスを前記障壁で取り囲まれた空間に上方から供給し、前記被加熱物を脱脂する脱脂工程を備え、
前記脱脂工程後、前記火炎又は前記マイクロ波の少なくとも何れか一方を増大させて前記本体炉内の温度を上昇させることにより、前記焼成工程を行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の加熱方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱炉及び加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
倒炎式ガス炉を基本構造としてマイクロ波加熱を併用したマイクロ波ガス複合炉による焼成方法が陶磁器を対象に実用化されている(例えば、特許文献1参照)。この方法により、倒炎式ガス炉で焼成した場合と比較して、焼成工程の短時間化と省エネルギー化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−246679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のマイクロ波ガス複合炉は、セラミックス電子部品の焼成には適していない。
【0005】
陶磁器は外観の仕上がりによって製品の良否が判定されるが、セラミックス電子部品は、外観の仕上がりだけでなく、電気性能などの厳密な規格を満足する必要がある。従来のマイクロ波ガス複合炉で焼成すると、炉本体内の配置位置によって、セラミックス電子部品の電気特性に大きなバラツキが生じる。これは、炉本体内の温度分布が不均一であるため、焼成後の微細構造が不均一となったためであると考えられる。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、炉本体内温度均一性の向上を図ることが可能な加熱炉及び加熱方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の加熱炉は、被加熱物が中央部に配置される炉本体と、前記炉本体の内壁面と前記炉本体の中央部との間に設置される障壁と、前記炉本体の内壁面と前記障壁との間において、前記炉本体の炉床から上部に向う火炎を形成するガスバーナと、前記炉本体内のガスを前記炉床側から外部に排出する排出口と、前記炉本体内にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器と、前記炉本体内の温度より低温のガスを前記障壁で取り囲まれた空間に上方から供給する低温ガス供給装置とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の加熱炉は、倒炎式ガス炉にマイクロ波発振器を併用したマイクロ波ガス複合炉において、障壁で取り囲まれ、被加熱物が配置される空間に、炉本体内の温度より低温のガスを上方から供給する低温ガス供給装置を追加した構成である。
【0009】
従来のマイクロ波ガス複合炉においては、倒炎式ガス炉の性質上、炉本体内において、上方から下方に向って温度が下降する。しかし、低温ガス供給装置によって、障壁で取り囲まれた空間に当該空間の温度より低温のガスを上方から供給するので、当該空間の上下方向における温度の均一性の向上を図ることが可能となる。これにより、被加熱物の配置に拘わらず、均一な温度で焼成することができ、焼成物の特性のバラツキの解消を図ることが可能となる。
【0010】
なお、例えば、加熱炉内に複数個の匣鉢を積み重ね、各匣鉢に被加熱物を配置する場合、匣鉢の炉内壁側の側壁が連なって障壁となる。このように、障壁は、単一の壁からなるものでなくても、複数の壁が連なってなるものであってもよい。
【0011】
本発明の加熱炉において、前記ガスバーナ又は前記マイクロ波発振器の少なくとも何れかは、前記炉本体の中心の垂直軸を含む垂直面に対して面対称、又は前記炉本体の中心の垂直軸に対して回転対称に配置されることが好ましい。
【0012】
例えば、ガスバーナ又はマイクロ波発振器の少なくとも何れかを、炉本体の中心の垂直軸を含む左右方向の垂直面に対して、左右対称に配置してもよい。又は、ガスバーナ又はマイクロ波発振器の少なくとも何れかを、炉本体の中心の垂直軸に対して、回転対称に、複数個、均等に配置してもよい。
【0013】
この場合、障壁で取り囲まれた空間において、上下方向だけでなく水平方向にも温度の均一性を図ることが可能となる。これにより、焼成物の特性のバラツキのさらなる解消を図ることが可能となる。
【0014】
従来のマイクロ波ガス複合炉においては、倒炎式ガス炉の性質上、炉本体内において、上方から下方に向ってガス圧が下降する。
【0015】
そこで、本発明の加熱炉において、前記低温ガス供給装置は、酸素濃度を制御するためのガスを前記低温のガスとして供給することが好ましい。なお、酸素濃度を制御するためのガスとは、酸素ガスの濃度を変化させることが可能なガスであって、酸素ガス又は酸素ガスを含むガスである他、例えば、水素ガスと、これと反応して酸素ガスを発生させる炭酸ガスとの混合ガスなどのガスであってもよい。
【0016】
この場合、低温ガス供給装置によって、障壁で取り囲まれた空間内に酸素濃度を制御するためのガスを含むガスを上方から供給するので、ガス圧の高い炉内上方から低い炉底方向へとスムーズにガスを導入することができ、熱拡散によって当該空間の上下方向における酸素濃度の均一性を図ることが可能となる。これにより、被加熱物の配置に拘わらず、均一な酸素濃度で焼成することができ、焼成物の特性のバラツキのさらなる解消を図ることが可能となる。
【0017】
本発明の加熱方法は、炉本体の内壁面内の障壁で前後左右を取り囲まれた空間内に被加熱物を配置する配置工程と、前記炉本体の内壁面と前記障壁との間において、前記炉本体の炉床から上部に向う火炎を形成すると共に、前記炉本体内にマイクロ波を照射すると同時に、前記障壁で取り囲まれた空間に当該空間内の温度より低温のガスを上方から供給しながら、前記被加熱物を焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の加熱方法は、倒炎式ガス炉にマイクロ波発振器を併用したマイクロ波ガス複合炉を用いたマイクロ波ガス複合加熱法において、障壁で取り囲まれ、被加熱物が配置される空間に、炉本体内の温度より低温のガスを上方から供給することを追加した焼成方法となっている。
【0019】
従来のマイクロ波ガス複合加熱法においては、倒炎式ガス炉の性質上、炉本体内において、上方から下方に向って温度が下降する。しかし、障壁で取り囲まれた空間の温度より低温のガスを当該空間の上方から供給するので、当該空間の上下方向における温度の均一性の向上を図ることが可能となる。これにより、被加熱物の配置に拘わらず、均一な温度で焼成することができ、焼成物の特性のバラツキの解消を図ることが可能となる。
【0020】
従来のマイクロ波ガス複合加熱法においては、倒炎式ガス炉の性質上、炉本体内において、上方から下方に向ってガス圧が下降する。
【0021】
そこで、本発明の加熱方法において、前記低温のガスは、酸素濃度を制御するためのガスであることが好ましい。
【0022】
この場合、障壁で取り囲まれた空間に酸素濃度を制御するためのガスを上方から供給するので、ガス圧の高い炉内上方から低い炉底方向へとスムーズにガスを導入することができ、熱拡散によって当該空間の上下方向における酸素濃度の均一性を図ることが可能となる。これにより、被加熱物の配置に拘わらず、均一な酸素濃度で焼成することができ、焼成物の特性のバラツキのさらなる解消を図ることが可能となる。
【0023】
本発明の加熱方法において、前記炉本体の内壁面と前記障壁との間において、前記炉本体の炉床から上部に向う火炎を形成すると共に、前記炉本体内にマイクロ波を照射すると同時に、前記炉本体内の温度より低温のガスを前記障壁で取り囲まれた空間に上方から供給し、前記被加熱物を脱脂する脱脂工程を備え、前記脱脂工程後、前記火炎又は前記マイクロ波の少なくとも何れか一方を増大させて前記本体炉内の温度を上昇させることにより、前記焼成工程を行うことが好ましい。
【0024】
この場合、被加熱物の脱脂工程と焼成工程とを連続して一貫で行うことが可能となり、処理時間の短縮化を図ることができる。さらに、後述する実施例8に示すように、脱脂工程において排出される排気ガスは、脱臭せずに大気中に排気することが可能であり、脱臭装置を設置する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施形態に係る加熱炉の模式的縦断面図。
図2図1のII−II線模式的断面図。
図3A図3Aは空間Sに複数段の棚板を設置した場合を示す模式的縦断面図。
図3B図3Bは炉内に複数段の匣鉢を収めた場合を示す模式的縦断面図。
図4】熱電対が計測した温度と単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態に係る加熱炉100について図面を参照して説明する。
【0027】
図1及び図2に示すように、加熱炉100は、倒炎式ガス炉にマイクロ波発振器10を追加したマイクロ波複合ガス炉であり、炉本体20内の被加熱物A(図3A及び図3B参照)を主として焼成するための焼成炉である。
【0028】
被加熱物Aは、例えば、セラミックスを主成分とする成形体であり、セラミックス粉体が有機バインダなどで結合されたものである。被加熱物Aは、加熱炉100などで焼成(焼結)することにより、例えば、セラミックス電子部品、粉末冶金部品となる。セラミックスは、限定されないが、例えばZnO、BaTiO3、フェライト、遷移金属酸化物である。さらに、被加熱物Aは、セラミックスを主成分とする成形体以外のもの、例えば、粉末冶金材料などであってもよい。
【0029】
加熱炉100は、被加熱物Aが中央部に配置される炉本体20と、炉本体20の内壁面20aと炉本体20の中央部との間に設置される障壁(マッフル)30と、炉本体20の内壁面20aと障壁30との間において、炉本体20の炉床21から上部に向う火炎を形成するガスバーナ40と、炉本体20内のガスを炉床21側から外部に排出する排出口50と、炉本体20内にマイクロ波を照射するマイクロ波発振器10と、炉本体20内の温度より低温のガスを障壁30で取り囲まれた空間Sに上方から供給する、低温ガス供給装置60とを備える。
【0030】
炉本体20は、ステンレス鋼などのマイクロ波を反射する素材からなる炉外殻22と、炉外殻22の内面に配置され、アルミナボード、耐火断熱性煉瓦などのマイクロ波が透過する断熱材からなる炉壁23とから構成されている。
【0031】
炉本体20には、炉本体20内に被加熱物Aを出し入れするなどのために扉24が設けられている。なお、図示しないが、扉24には、炉本体20内を観測するための観測窓が設けられている。
【0032】
障壁30は、熱伝導性に優れるアルミナなどの素材を主成分とした壁材を積み重ねることにより、構成されている。障壁30は、上部にガス流入孔30aを有し、下部の後方側には開口30bが形成されている。
【0033】
障壁30で取り囲まれた空間S内には、被加熱物Aを配置するための構成が設けられている。その構成は、任意の既知のものであってもよいが、例えば、図3Aに示すように、複数段の棚板71を設置したものであってもよい。この場合、炉床21から支柱72を設け、支柱72の上に、棚板71を載置し、棚板71の上に敷き板74を介して被加熱物Aを載置すればよい。棚板71はその間に支柱73を設けて複数段を積み重ねればよい。
【0034】
また、図3Bに示すように、支柱81の上に、上面が開放されたムライト、コーディエライト、アルミナなどの耐火材料からなる箱状の匣鉢(さや)82を複数段積み重ね、匣鉢(さや)82内に被加熱物Aを敷き板83を介して納め、最上段にも上面が開放された箱状の匣鉢82を載置したものであってもよい。最上段の匣鉢82の上をガス流入孔を設けた棚板84で蓋をしてもよい。なお、匣鉢82は、例えば、直方体又は短円柱形の箱状のものであるが、任意の市販品を使用してもよい。
【0035】
さらに、空間S内には、熱電対式温度計25が設けられ、常時、空間S内の温度を検出している。
【0036】
ガスバーナ40は、ブンゼン強制燃焼式ガスバーナなどの強制燃焼式のガスバーナである。ガスバーナ40は、炉本体20の中心の垂直軸を含む垂直面に対して面対称又は前記炉本体20の中心の垂直軸に対して回転対称に配置されることが好ましい。
【0037】
ここでは、炉本体20の左右方向の中心に位置する垂直面に対して左右対称に、偶数個、ここでは、8個炉床21に配置されている。また、炉本体20の中心の垂直軸に対して回転対称に、複数個、例えば、5個、6個などと均等に配置してもよい。なお、各ガスバーナ40は、同じ出力を有する同種の製品であることが好ましい。
【0038】
ガスバーナ40は、炉本体20の内壁面20aと障壁30との間において、炉床21から上方に向って火炎を形成するように構成されている。これにより、ガスバーナ40で放出された燃焼ガスは、炉本体20の内壁面20aと障壁30との間の空間を上昇した後、空間S内を下降し、その後、炉床21の後方に形成された排出口50から排出される。
【0039】
ガスバーナ40は、炉床21に左右対称に配置して、空間S内に燃焼ガスが偏在することなく行き渡るようにしている。燃焼ガスが空間S内を下降する際に、空間S内に配置された被加熱物Aが加熱される。
【0040】
ガスバーナ40には、プロパンガス又は都市ガスと空気との混合ガスである燃料ガスが1本のガス配管41によって供給される。ガス配管41には、元閉弁42、2個の電磁弁43、及びコントロール弁44が直列に接続されている。これらの弁43,44には、図示しない制御手段が接続されており、熱電対式温度計25によって検出される空間S内の温度に基づき、2個の電磁弁43によって燃料ガス流路の遮断又は開放を行い、コントロール弁44によってガス圧を制御することにより、ガスバーナ40に供給される燃料ガス量を自動的に制御することが可能となっている。
【0041】
燃焼ガスは、排出口50から、排出口50と連通して奥側に水平に延びる水平煙道51及び水平煙道51の奥側端から上方に垂直に延びる垂直煙道52を通って、外気と連通された排気筒53から加熱炉100の外部に排出される。
【0042】
炉壁23の外には、マイクロ波発振器10及びマイクロ波発振器10から延びる導波管11が設けられている。導波管11はマイクロ波を照射するものであり、炉外殻22に形成された開口にその端部が嵌め込まれている。
【0043】
マイクロ波発振器10は、炉本体20の中心の垂直軸を含む垂直面に対して面対称、又は炉本体20の中心の垂直軸に対して回転対称に配置されることが好ましい。
【0044】
ここでは、マイクロ波発振器10は、炉本体20の左右方向の中心に位置する垂直面に対して左右対称に、偶数個、ここでは、4個配置されている。また、炉本体20の中心の垂直軸に対して回転対称に、複数個、例えば、5個、6個などと均等に配置してもよい。なお、各マイクロ波発振器10は、同じ出力を有する同種の製品であることが好ましい。
【0045】
マイクロ波は、炉本体20のマイクロ波の吸収率の低い断熱材からなる炉壁23を透過して被加熱物Aに照射される。そして、マイクロ波は、拡散ファン12で拡散されて、均一化を図って炉本体20内に照射される。また、マイクロ波発振器10には、図示しない制御手段が接続されており、マイクロ波の照射強度を調整することが可能となっている。
【0046】
低温ガス供給装置60は、炉本体20の上部に形成されたガス路用孔20bを介して、空間Sと炉本体20の外部とを連通し、ステンレスパイプなどからなるガス路61と、ガス路61内にガスを供給するガス供給部62と、ガス供給部62又はガス路61内のガスを加熱する加熱部63と、ガス路61から空間S内に供給されるガス量を調整可能な調整弁64とから構成されている。
【0047】
ここで、低温のガスは、酸素濃度を制御するためのガスであることが好ましい。なお、酸素濃度を制御するためのガスとは、酸素ガスの濃度を変化させることが可能なガスであって、酸素ガス又は酸素ガスを含むガスである他、例えば、水素ガスと、これと反応して酸素ガスを発生させる炭酸ガスとの混合ガスなどのガスであってもよい。
【0048】
そして、加熱部63と調整弁64は、図示しない制御手段に接続されており、ガス路61から空間Sに供給されるガスの量及び温度を調整することが可能となっている。
【0049】
以下、本発明の実施形態に係る加熱炉100を用いた加熱方法について説明する。
【0050】
まず、空間S内に被加熱物Aを配置する配置工程を行う。例えば、上述したように図3A又は図3Bに示すように被加熱物Aを配置する。ここで、被加熱物Aは、セラミックス粉体を有機バインダなどで結合した成形体に対して、脱脂処理を行ったものである。
【0051】
次に、ガスバーナ40によって火炎を形成すると共に、マイクロ波発振器10によってマイクロ波を照射すると同時に、低温ガス供給装置60によって、空間S内の温度より低温のガスを空間S内に上方から供給し、被加熱物Aを焼成する焼成工程を行う。ここで、低温のガスは、酸素濃度を制御するためのガスである。
【0052】
従来のマイクロ波ガス複合加熱法では、倒炎式ガス炉の性質上、空間Sにおいては、上方から下方に向って温度が下降する。本実施形態では、低温ガス供給装置60によって、この空間Sの温度より低温のガスを空間S内に上方から供給するので、熱拡散によって空間Sの上下方向における温度の均一性を図ることが可能となる。これにより、被加熱物Aの配置に拘わらず、均一性が良好な温度で焼成することができ、被加熱物Aを焼成した焼成物の特性のバラツキの解消を図ることが可能となる。
【0053】
さらに、従来のマイクロ波ガス複合加熱法においては、倒炎式ガス炉の性質上、空間Sにおいて、上方から下方に向ってガス圧が下降する。本実施形態では、低温ガス供給装置60によって、低温のガスとして、酸素濃度を制御するためのガスを、空間Sに上方から供給するので、ガス圧の高い炉内上方から低い炉底方向へとスムーズにガスを導入することができ、空間Sの上下方向における酸素濃度の均一性を図ることが可能となる。これにより、被加熱物Aの配置に拘わらず、均一性の良好な酸素濃度で焼成することができ、焼成物の特性のバラツキのさらなる解消を図ることが可能となる。
【0054】
また、ガスバーナ40によって火炎を形成すると共に、マイクロ波発振器10によってマイクロ波を照射すると同時に、低温ガス供給装置60によって、空間S内の温度より低温のガスを空間S内に上方から供給し、脱脂処理前の被加熱物Aを脱脂する脱脂工程を行ってもよい。この場合、脱脂工程後、ガスバーナ40又はマイクロ波発振器10の少なくとも何れか一方の出力を増大させて空間S内の温度を上昇させることにより、焼成工程を行う。
【0055】
これにより、被加熱物Aの脱脂工程と焼成工程を連続して一貫で行うことが可能となり、処理時間の短縮化を図ることができる。さらに、後述する実施例8に示すように、脱脂工程において排出される排気ガスは、脱臭せずに大気中に排気することが可能であり、脱臭装置を設置する必要がない。
【0056】
なお、加熱炉100においては、マイクロ波、ガス燃焼、あるいは両者の複合による加熱で脱脂処理をすることが可能であるが、少なくともガス燃焼を伴う加熱で脱脂処理を行うことにより、排気ガス中の悪臭成分濃度が減少する。これにより、脱臭装置を設置することなく、排気ガスを直接大気中に放出することが可能となる。これは、炉本体20内に熱風を送風する場合に比べ、マイクロ波によるバインダの分解促進効果に加えて、ガス燃焼の炎によって排気ガス中の悪臭成分の分解、燃焼が進むためと考えられる。また、脱脂処理後の炉本体20内には、タール成分などの脱脂に伴って発生する残渣成分は検出されず、清掃作業を必要としない。
【0057】
(均一性の評価方法)
焼成物の形状寸法、機械的強度及び電気特性などの緒特性の不均一は、焼成物の微細構造の不均一性に基づくものであり、焼成物の微細構造は焼成時の温度とガス雰囲気に依存する。焼成物の緒特性の均一化を図るためには、炉本体20内の温度及びガス雰囲気を均一化することが不可欠である。しかし、炉本体20内の様々な箇所における温度とガス雰囲気を網羅的に測定することは非常に困難であり、その評価方法を見つけ出す必要がある。
【0058】
例えば、炉本体20内の温度は、メスリング又はリファサーモなどの温度計測用の成形体個片を炉本体20内に配置して焼成収縮後の寸法から求める方法が一般的である。しかし、マイクロ波ガス複合炉の場合には、温度計測用の成形体個片とセラミックス電子部品を製造するための被加熱物Aとではマイクロ波の吸収効率が異なるので、温度計測用の成形体個片により計測した温度と被加熱物Aの実温度とにズレが発生する。また、匣鉢82(図3B参照)内に収められた個々の被加熱物Aの実温度を把握することは極めて困難である。
【0059】
さらに、炉本体20内のガス雰囲気は、倒炎式ガス炉を基本構造としているのでガス気流の均一化及び安定化が図られているが、炉本体20内の細部にわたって酸素濃度を測定することも非常に困難である。
【0060】
そこで、本願の発明者は、被加熱物Aを焼成して得たセラミックス電子部品の電気特性の測定結果を基に、炉本体20内の温度及び酸素濃度の分布状況などのバラツキを評価することが可能であることを見出した。
【0061】
(炉内均一性の評価方法)
まず、マイクロ波の吸収効率の高い材料を主成分とし、焼成温度及び酸素濃度によって電気特性が大きく変化するZnOバリスタに注目した。ZnOバリスタの電気特性のうち、バリスタ電圧V1mA(1mAの電流を流したときの電圧)は粒界の数に比例し、粒界の数は粒子径に反比例し、粒成長は焼成温度の上昇と共に増加するので、炉本体20内に配置したZnOバリスタ素子の単位厚み当りのV1mAの分布を調べれば、炉本体20内の温度の実質的なバラツキを評価することができるといえる。
【0062】
また、ZnOバリスタ素子の非オーム性は簡易的にV10μA/V1mA(10μAと1mAの電流を流したときの電圧の比であり、1に近いほど非オーム性に優れる)で示される。このV10μA/V1mAは、焼成中の酸素濃度が大気中と同等であれば高い値を示し、酸素濃度が低下するに従って減少する。そこで、V10μA/V1mAを求めることで炉本体20内の酸素濃度の分布を評価することができる。
【0063】
即ち、ZnOバリスタ素子の素材となる被加熱物Aを炉本体20内の各部に配置して焼成し、その電気特性を評価することにより、実質的な炉本体20内の温度及び酸素濃度の分布を評価することができると考えられる。
【0064】
(参考例1)
主成分であるZnOに、Bi:0.5mol%、Sb:1.0mol%、Co:0.5mol%、MnO:0.5mol%、Al(NO)・9HO:0.01mol%を添加して水と分散剤を加えて混合した後、バインダを加えてスラリーを製作し、これをスプレードライヤーで噴霧して造粒粉を作製し、金型成形して、円板状の成形体を得た。
【0065】
本評価法において、個々の被加熱物Aが均一であることが前提になる。そこで、原料を十分に混合し、成形体の形状を直径10mm、厚さ3mm程度の小型の円板とすることにより、組成的及び成形密度の均一性を確保することとした。
【0066】
前述した成形体を熱風循環乾燥機を用いて、400℃を2時間維持して脱脂処理し、被加熱物Aを得た。
【0067】
加熱炉100の炉本体20は、ステンレス鋼からなる炉外殻22と、アルミナボードからなる炉壁23とから構成されており、その内寸は、高さ600mm、幅550mm、奥行き600mmであった。加熱炉100は、ガスバーナ40としてブンゼン強制燃焼式ガスバーナ8基を左右の炉底に対称に配置し、マイクロ波発振器10として最大出力1.5kWのマグネトロン合計4台を左右の炉壁にそれぞれ左右2台ずつ対称的に配置した。なお、ここでは、加熱炉100に障壁30は設けられていない。
【0068】
図3Aを参照して、炉本体20内に支柱72を用いて炉床21から150mmの間隔をあけてSiC製の棚板71を設置し、その上に支柱73を用いて70mmの間隔で合計3段のSiC製の棚板71を設け、3段目の棚板71の上にもSiC製の棚板71を載せて天井カバーとした。各SiC製の棚板71は、1辺300mm、厚み10mmの正方形板状であった。そして、各棚板71の上に、マグネシウム・スピネル系の敷き板74を介して各段に、被加熱物Aを前後方向に3個ずつ並べて配置し、それぞれの成形体のそばに熱電対及び酸素濃度計を配置した。
【0069】
焼成後の焼成体を取り出して、各焼成体のバリスタ電圧V1mA、V10μAを測定した。また、焼成中、各熱電対で温度を計測し、各酸素濃度計で酸素濃度を測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1の測定結果から、各段内では、単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAの最大差は6V/mm以下で、熱電対が計測した温度の最大差も7℃と小さく、均熱性に優れていることが分った。しかし、上段から下段に向って温度が低下し、炉内全体ではその差が14℃に増加することが分った。これは、加熱炉100は、倒炎式ガス炉を基本構造としているので、ガス気流が炉本体20上部で高温になり、底部の排出口50に向って排気ガスが冷却されるためであると考えられる。
【0072】
さらに、表1の測定結果から、図4のグラフに示したように、熱電対が計測した温度と単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAとの間に、明確な相関性が確認された。よって、炉本体20内に配置した成形体の単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAの分布を得ることができれば、炉本体20内の実質的な温度のバラツキを評価するが可能であることが分る。
【0073】
また。各酸素濃度計の酸素濃度の測定値は、全て大気中の酸素濃度に近い値を示しており、V10μA/V1mAの値も最大差が0.01、とバラツキが小さいことが分った。よって、炉本体20内の酸素濃度はほぼ均一化されていると考えられる。
【0074】
(比較例1乃至比較例3)
加熱炉100で大型形状の被加熱物Aを均一に焼成できるのかを確認するために、参考例1と同じように作製した造粒粉を用い、金型成形して直径50mm、高さ50mmの円柱状の成形体として製造した。
【0075】
この成形体を熱風循環乾燥機を用いて、400℃に2時間維持して脱脂処理して、被加熱物Aを得た。
【0076】
参考例1と同じ加熱炉100を用いて、棚板71の構成も同じとした。
【0077】
各段に被加熱物Aを9個ずつをマグネシウム系の敷き板74を介してSiC製の棚板71の上に、左右方向に3個、前後方向に3個並べて載置した。
【0078】
そして、比較例1では、被加熱物Aを炉本体20内を1200℃に維持した状態で2時間焼成した。比較例2では1100℃で、比較例3では1000℃にそれぞれ維持した状態で2時間焼成した。
【0079】
焼成後の焼成体を取り出して、各焼成体のバリスタ電圧V1mA、V10μAを測定した。これの比較例1の測定結果を表2に、比較例2の測定結果を表3に、比較例3の測定結果を表4にそれぞれ示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
【表4】
【0083】
表2の測定結果から、焼成温度が1200℃の場合は、各段内では、単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAは6V/mm以下であり、均熱性に優れていることが分った。そして、参考例1と同様に上段から下段に向って単位厚み当りのバリスタ電圧は増加しており、その最大差は9Vであり、温度差が大きいことが分った。
【0084】
一方、表3及び表4の結果から、焼成温度が1100℃及び1000℃の場合は、各段内での単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAの最大差が11V/mmから17V/mmと増加しており、均熱性にやや劣ることが分った。また、単位厚み当りのバリスタ電圧の標準偏差/平均値は1200℃では1.65%と小さいが、1100℃では2.48%、1000℃では3.42%となり、処理温度が下がるとバラツキが増大することが分った。
【0085】
表2の測定結果から、焼成温度が1200℃の場合は、V10μA/V1mAの値は0.926と優れた非オーム性を示し、最大差が0.02、とバラツキが小さく、炉本体20内の酸素濃度はほぼ均一化されていることが分った。
【0086】
一方、表3及び表4の測定結果から、焼成温度が1100℃及び1000℃の場合は、V10μA/V1mAの値が0.89から0.84と低く、非オーム性が著しく低下することが分った。
【0087】
これは、炉本体20内の酸素濃度が低下し且つ不均一であるためというよりは、ガス燃焼による気流中に炭酸ガスや水蒸気などのガスが含まれるので、炉本体20内が還元性雰囲気傾向になり、被加熱物A中の残留カーボンの燃焼が抑制され、特に1000℃の焼成温度では被加熱物Aの残留カーボンが完全に燃焼しないため、非オーム性が極端に低下し、さらに残留カーボン量のバラツキにより単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAのバラツキが増加したからであると推測される。
【0088】
(実施例1乃至実施例3)
加熱炉100の炉本体20内に、アルミナを主成分として、上部にガス流入孔30aを有し、下部に開口30bが形成され、高さ方向に4段に分割された障壁30を、比較例1乃至比較例3と同じように配置した3段積みの棚板71全体を覆うように設置した。
【0089】
比較例1乃至比較例3で作製した成形体と同じ成形体を、熱風循環乾燥機を用いて、400℃を2時間維持して脱脂処理して、被加熱物Aを得た。そして、この被加熱物Aを、比較例1から3と同じように棚板71上に配置した。
【0090】
そして、実施例1では、被加熱物Aを炉本体20内を1200℃に維持した状態で2時間焼成した。実施例2では1100℃で、実施例3では1000℃にそれぞれ維持した状態で2時間焼成した。
【0091】
なお、実施例1乃至実施例3では、焼成中、炉外から300℃の酸素ガスをガス路61を介して空間S内に2L/minで供給して、障壁30の上部から下部に向って流した。
【0092】
焼成後の焼成体を取り出して、各焼成体のバリスタ電圧V1mA、V10μAを測定した。これの実施例1の測定結果を表5に、実施例2の測定結果を表6に、実施例3の測定結果を表7にそれぞれ示す。
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
表5乃至表7の測定結果から、焼成温度が1200℃、1100℃、1000℃の何れの場合も、各段内では、単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAの最大差が6V/mmから11V/mmとバラツキが小さく、均熱性に優れていることが分った。
【0097】
そして、比較例1乃至比較例3の場合と異なり、上段から下段に向って単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAが減少しており且つ、その最大差が9V/mmから16V/mm、その標準偏差/平均値は1.52から1.62%と、何れも比較例1乃至比較例3での最大差9から34V、標準偏差/平均値は1.65%から3.42%と比較して小さいことが分った。これは、空間S内の温度よりも低温のガスを上部から空間S内に供給したことによって、空間Sの上下方向における温度分布が逆転すると共に、温度差が減少したためであると考えられる。
【0098】
これにより、空間Sに供給するガスの流量と温度を適宜なものとすることにより、空間S内の上下方向の温度のさらなる均一化を図ることが可能となると推測される。適度の均一化が可能なガスの流量と温度は、設定値を変えて複数回の実験を行うことにより、得ることができると考えられる。
【0099】
また、表5乃至表7の結果から、焼成温度が1200℃、1100℃、1000℃の何れの場合も、V10μA/V1mAの値は0.91以上であって優れた非オーム性を示しており、空間S内の酸素濃度はほぼ均一化されていることが分った。これは、空間S内に酸素ガスを供給して酸素濃度を上昇させたことによって、焼成温度が1000℃と低くても、被加熱物A中の残留カーボンの燃焼が進んで非オーム性が回復したものと考えられる。
【0100】
なお、ガス流通方向を炉底から上方にした場合は、ガス流量を30L/minに増やしてもV10μA/V1mAの値は改善しなかった。
【0101】
(実施例4、実施例5及び比較例4)
前述した加熱炉100と同構造であるが大型化した加熱炉を用いた。この炉本体20の内寸は、高さ1200mm、幅1100mm、奥行き1000mmであった。そして、加熱炉100には、ガスバーナ40としてブンゼン強制燃焼式ガスバーナ12基を左右の炉底に対称に配置し、マイクロ波発振器10として最大出力1.2kWのマグネトロン計12台を左右の炉壁にそれぞれ対称的に配置されている。
【0102】
図3Aを参照して、空間S内に炉床21から150mmの間隔をあけて、SiC製の棚板71を設置し、その上に70mmの間隔で合計10段のSiC製の棚板71を設け、10段目の棚板71の上にもSiC製の棚板71を載せて天井カバーとした。各SiC製の棚板71は、長辺300mm、短辺250mm、厚み10mmの長方形板状であった。
【0103】
さらに、加熱炉100の炉本体20内に、アルミナを主成分として、上部にガス流入孔30aを有し、下部に開口30bが形成され、高さ方向に5段に分割され障壁30を、10段積みの棚板71全体を覆うようにしたユニットを設置した。このユニットと同じものを左右前後に合計4組を炉内に配置した。
【0104】
比較例1乃至比較例3で作製した成形体と同じ成形体を、熱風循環乾燥機を用いて、400℃を2時間維持して脱脂処理して、被加熱物Aを得た。そして、この被加熱物Aを、比較例1乃至比較例3と同じように敷き板74を介して棚板71上に配置した。
【0105】
そして、被加熱物Aを炉本体20内を1000℃に維持した状態で2時間焼成した。
【0106】
ただし、実施例4では、焼成中、炉外から500℃の酸素ガスをガス路61を介して空間S内に2L/minで供給して、空間Sの上部から下部に向って流した。実施例5では、焼成中、炉外から500℃の空気をガス路61を介して空間S内に2L/minで供給して、空間Sの上部から下部に向って流した。比較例4では、焼成中、炉外から空間S内にガスを供給しなかった。
【0107】
焼成後の焼成体を取り出して、各焼成体のバリスタ電圧V1mA、V10μAを測定した。この実施例4の測定結果を表8に、実施例5の測定結果を表9に、比較例4の測定結果を表10にそれぞれ示す。
【0108】
【表8】
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
表8乃至表9の測定結果から、何れの場合も、各段内では、単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAの最大差が10V/mmから15V/mm、炉内全体の単位厚み当りのバリスタ電圧の標準偏差/平均値が1.42%から1.63%とバラツキが小さく、均熱性に優れていることが分った。
【0112】
そして、表10の測定結果から、比較例4では上段から下段に向って単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAが増加し、温度が下降しているのに対して、実施例4及び実施例5では上段から下段に向って単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAが減少し、温度が上昇していることが分った。これは、空間S内の温度よりも低温のガスを上部から空間S内に供給したことによって、空間S内の上下方向における温度分布が逆転したためであると考えられる。
【0113】
これにより、空間S内に供給するガスの流量と温度を適宜なものとすることにより、空間S内の上下方向の温度を均一化を図ることが可能となると推測される。適度の均一化が可能なガスの流量と温度は、設定値を変えて複数回の実験を行うことにより、得ることができると考えられる。
【0114】
また、実施例4では、V10μA/V1mAの値は0.91以上であって、優れた非オーム性を示しており、空間S内の酸素濃度は適正な状態で均一化されていることが分った。これは、空間S内に酸素ガスを供給して酸素濃度を上昇させたことによって、焼成温度が1000℃と低くても、被加熱物A中の残留カーボンの燃焼が進んで非オーム性が回復したものと考えられる。
【0115】
実施例5では、実施例4ほどではないが、比較例4と比べれば、V10μA/V1mAの値は0.87と明らかに増加しており、非オーム性は向上することが分った。これは、空間S内に空気を供給して酸素濃度を上昇させたことによって、被加熱物A中の残留カーボンの燃焼が進んで非オーム性が回復したものと考えられる。
【0116】
(実施例6)
実施例4及び実施例5と同じ加熱炉を用いた。
【0117】
ただし、図3Bを参照して、炉本体20内に炉床21から150mmの間隔をあけて、ムライト製の匣鉢82を設置し、その上に合計5段のムライト製の匣鉢82を設け、最上段の匣鉢82の上に直径30mmの貫通穴を中央に開けたSiC製の棚板84を載せて天井カバーとした。匣鉢82は、長辺350mm、短辺300mmの長方形状の底面を有し、厚み15mm、高さ150mmであり、上面が開放された箱状であった。なお、匣鉢82の中央部に直径30mmの貫通孔が形成されている。さらに、これと同じ5段積の匣鉢を左右前後に合計4組を炉内にセットした。
【0118】
実施例4及び実施例5で作製した成形体と同じ成形体を、熱風循環乾燥機を用いて、400℃を2時間維持して脱脂処理して、被加熱物Aを得た。そして、この被加熱物Aを、ムライト製の匣鉢82内に、それぞれ12個ずつ収めた。そして、これら匣鉢82を、各匣鉢82の中に、マグネシウム・スピネル製の敷き板83を介して、前後方向に3個、左右方向に4個、合計12個の被加熱物Aをそれぞれ載置した。
【0119】
そして、被加熱物Aを炉本体20内を1200℃に維持した状態で2時間焼成した。
【0120】
焼成中、炉外から500℃の酸素ガスをガス路61を介して空間S内に3L/minで供給して、空間Sの上部から下部に向って流した。
【0121】
焼成後の焼成体を取り出して、各焼成体のバリスタ電圧V1mA、V10μAを測定した。測定結果を表11に示す。
【0122】
【表11】
【0123】
表11の結果から、各段内では、単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAは最大差が7V/mmから8V/mm、炉内全体での最大差も9V/mmとバラツキが小さく、その標準偏差/平均値は1.64%であり、非常に均熱性に優れていることが分った。
【0124】
そして、上段から下段に向って温度が上昇していることが分った。これは、空間Sの温度よりも低温のガスを上部から空間S内に供給したことによって、空間S内の上下方向における温度分布が逆転したためであると考えられる。
【0125】
また、V10μA/V1mAの値は0.93以上であって、非常に非オーム性に優れており、空間S内の酸素濃度は適正な状態で均一化されていることが分った。
【0126】
(実施例7)
実施例6と同じ加熱炉100内に、脱脂処理前の被加熱物Aを実施例6と同じように配置した。
【0127】
そして、加熱炉100の炉本体20内を400℃に2時間維持して脱脂処理をした。その後、引き続き、炉本体20内を1200℃に維持した状態で被加熱物Aを2時間焼成した。
【0128】
脱脂処理中及び焼成中、炉外から500℃の酸素ガスをガス路61を介して空間S内に2L/minで供給して空間Sの上部から下部に向って流した。
【0129】
焼成後の焼成体を取り出して、各焼成体のバリスタ電圧V1mA、V10μAを測定した。測定結果を表12に示す。さらに、脱脂処理時に加熱炉100から排出される排気ガスを、三点比較式臭袋試験によって評価した。
【0130】
【表12】
【0131】
表12の測定結果から、各段内では、単位厚み当りのバリスタ電圧V1mAの最大差が8V/mm以下,炉内全体での最大差も9Vでバラツキが小さく、その標準偏差/平均値も1.56%とバラツキが小さく、均熱性に優れていることが分った。
【0132】
そして、上段から下段に向って温度が上昇していることが分った。これは、空間S内の温度よりも低温のガスを上部から空間S内に供給したことによって、空間S内の上下方向における温度分布が逆転したためであると考えられる。
【0133】
また、V10μA/V1mAの値は0.93以上であって、非常に非オーム性に優れており、電気特性は実施例6の場合とほぼ同等であることが分った。
【0134】
脱脂処理中に加熱炉100から排出される排気ガスは、三点比較式臭袋試験による評価が大気中に直接放出可能である基準値を下回っており、加熱炉100で脱脂処理を行うことにより排気ガスが無臭化することが分った。よって、排気ガスを脱臭せずに大気中に放出することが可能であり、脱臭装置を設置する必要がないことが確認された。さらに、炉本体20内にもタール成分などの脱脂に伴って発生する残渣成分は検出されず、清掃作業を必要としなかった。
【0135】
よって、同じ加熱炉100で一貫して脱脂処理と焼成処理を行うことができ、これらの合計処置時間を短縮することが可能となる。
【0136】
(他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されない。例えば、実施形態では、加熱炉100は、マイクロ波発振器10及びガスバーナ40を複数個備える場合について説明したが、これに限定されない。例えば、マイクロ波発振器10及びガスバーナ40はそれぞれ1個のみ備える加熱炉であってもよい。この場合、空間S内の水平方向の加熱の均一性は加熱炉100に対して劣るが、低温ガス供給装置60で低温のガスを空間S内に上方から供給するので、空間S内の上下方向の加熱の均一性の向上を図ることが可能である。
【0137】
また、実施形態では、低温ガス供給装置60から低温のガスとして酸素ガス又は酸素ガスを含むガスを供給する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、低温ガス供給装置60は、低温のガスとして酸素ガスを含まないガスを供給してもよい。この場合、空間S内の酸素濃度の均一性は加熱炉100に対して劣るが、空間S内の上下方向の加熱の均一性の向上を図ることは可能である。
【0138】
(実施例8)
実施例6において、熱風循環乾燥機で脱脂した際に、処理する被焼成物の数量が増えたので、脱脂に伴って発生する排気ガスの異臭がきつくなり、環境上の課題が発せする可能性が確認された。そこで、三点比較式臭袋法による評価を実施したところ、大気中に直接放出可能な基準値を超えることが確認された。
【0139】
従って、熱風循環乾燥機で脱脂する場合には、排気ガスを脱臭装置で処理しなければならず、製造設備の価格が増大するという問題が明らかになった。これを回避する方法について検討した。
【0140】
結果、マイクロ波ガス複合炉で脱脂することで排気ガスの無臭化が進むことが見出された。熱風循環乾燥機を用いた脱脂の際と同様に、三点比較式臭袋法によって排気ガスの評価を実施した結果、大気中に直接放出しても全く問題のないレベルになることが確認された。さらに、脱脂処理後のマイクロ波ガス複合炉の炉内を観察したところ、炉壁や扉の温度の低い部分にもタール成分などの付着物は観察されず、脱脂前と同じ状態に保たれていることも確認された。よって、排気ガスを脱臭せずに大気中にすることが可能であり、脱臭装置を設置する必要がない。
【0141】
脱脂に伴って発生する排ガスの悪臭は、成形体中のバインダや可塑剤の主成分である有機成分の燃焼・分解によって発生すると考えられるが、マイクロ波ガス複合炉では、マイクロ波によって有機成分の分解が促進されると共に、ガス燃焼によって排気ガスが完全燃焼化が進むことによって、排気ガスの無臭化が図られるものと考えられる。
【符号の説明】
【0142】
10…マイクロ波発振器、 11…導波管、 12…拡散ファン、 20…炉本体、 20a…内壁面、 20b:ガス路用孔、21…炉床、 22…炉外殻、 23…炉壁、 24:扉、 25…熱電対式温度計、 30…障壁、 30a…ガス流入孔、 30b…開口、40…ガスバーナ、 50…排出口、 51…水平煙道、 52…垂直煙道、 53…排気筒、 60…低温ガス供給装置、 61…ガス路、 62…ガス供給部、 63…加熱部、 64…調整弁、 71…棚板、 72、73:支柱 74…敷き板、 81:支柱、82…匣鉢、 83…敷き板、 84:棚板、100…加熱炉、 A…被加熱物、S…空間。
図1
図2
図3A
図3B
図4