特許第6243391号(P6243391)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6243391
(24)【登録日】2017年11月17日
(45)【発行日】2017年12月6日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2484 20160101AFI20171127BHJP
   H01M 8/24 20160101ALI20171127BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20171127BHJP
【FI】
   H01M8/24 M
   H01M8/24 E
   !H01M8/10
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-217267(P2015-217267)
(22)【出願日】2015年11月5日
(65)【公開番号】特開2017-91669(P2017-91669A)
(43)【公開日】2017年5月25日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 基宏
(72)【発明者】
【氏名】近藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩光
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−236841(JP,A)
【文献】 特開2009−224195(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/106753(WO,A1)
【文献】 特開2009−76211(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/008315(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/2484
H01M 8/24
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の両面に電極が設けられた電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層される発電セルを有し、複数の前記発電セルが積層されて積層方向両端にエンドプレートが配設されるとともに、一方のエンドプレートには、冷却媒体、燃料ガス又は酸化剤ガスである流体を流通させる樹脂製流体マニホールドが設けられる燃料電池スタックであって、
前記一方のエンドプレートには、前記流体を前記積層方向に流通させる連通孔が設けられ、
前記樹脂製流体マニホールドは、前記一方のエンドプレートに当接する当接面のうち前記一方のエンドプレートの前記連通孔に対向しない箇所に、複数の凹み部がリブ部を介して設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1記載の燃料電池スタックであって、前記樹脂製流体マニホールドは、前記一方のエンドプレートに当接するマニホールドベース部材と、
前記マニホールドベース部材に重ねて固定されるマニホールドカバー部材と、
を備え、
前記マニホールドベース部材の前記一方のエンドプレートとの当接面には、前記複数の凹み部が前記リブ部を介して設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項3】
請求項2記載の燃料電池スタックであって、前記マニホールドベース部材の両端には、それぞれ前記流体を前記積層方向に流通させる流体連通孔が設けられるとともに、
前記マニホールドベース部材には、前記流体連通孔の間の領域に位置して前記複数の凹み部が前記リブ部を介して設けられることを特徴とする燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜の両面に電極が設けられた電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層される発電セルを有し、複数の前記発電セルが積層されて積層方向両端にエンドプレートが配設される燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる電解質膜の一方の面にアノード電極が、他方の面にカソード電極が、それぞれ配設された電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体は、セパレータによって挟持されることにより、発電セル(単位セル)が構成されている。通常、所定の数の発電セルが積層されることにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして燃料電池車両(燃料電池電気自動車等)に組み込まれている。
【0003】
燃料電池スタックでは、セパレータの面内に、アノード電極に燃料ガスを流すための燃料ガス流路と、カソード電極に酸化剤ガスを流すための酸化剤ガス流路とが設けられている。また、互いに隣接する発電セルのセパレータ間には、冷却媒体を流すための冷却媒体流路が前記セパレータの面方向に沿って設けられている。
【0004】
さらに、積層方向に貫通して燃料ガスを流通させる燃料ガス連通孔と、酸化剤ガスを流通させる酸化剤ガス連通孔と、冷却媒体を流通させる冷却媒体連通孔とが設けられた内部マニホールド型燃料電池スタックが採用されている。燃料ガス連通孔(流体連通孔)は、燃料ガス供給連通孔及び燃料ガス排出連通孔を有し、酸化剤ガス連通孔(流体連通孔)は、酸化剤ガス供給連通孔及び酸化剤ガス排出連通孔を有している。冷却媒体連通孔(流体連通孔)は、冷却媒体供給連通孔及び冷却媒体排出連通孔を有している。
【0005】
上記の燃料電池スタックでは、少なくとも一方のエンドプレートに、各流体連通孔に連なって燃料ガス、酸化剤ガス又は冷却媒体である流体を供給又は排出する流体マニホールドが設けられている。例えば、特許文献1に開示されている燃料電池スタックでは、一方のエンドプレートに樹脂製マニホールドが設けられるとともに、前記樹脂製マニホールドの端部には、前記一方のエンドプレートに保持される補強部が設けられている。
【0006】
また、特許文献2に開示されている燃料電池スタックでは、流体マニホールドがゴム製本体部を有している。ゴム製本体部には、エンドプレートとの接合部にゴム製フランジ部が一体に設けられるとともに、前記ゴム製フランジ部は、前記エンドプレートに固定される金属製止め部材により該エンドプレートに押圧保持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−224195号公報
【特許文献2】特開2015−60716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、この種の技術に関連してなされたものであり、樹脂製流体マニホールド自体の強度を良好に確保するとともに、軽量化を図ることが可能な燃料電池スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る燃料電池スタックは、電解質膜の両側に電極が設けられた電解質膜・電極構造体とセパレータとが積層される発電セルを有し、複数の前記発電セルが積層されて積層方向両端にエンドプレートが配設されている。一方のエンドプレートには、冷却媒体、燃料ガス又は酸化剤ガスである流体を流通させる樹脂製流体マニホールドが設けられている。
【0010】
燃料電池スタックでは、前記一方のエンドプレートには、前記流体を前記積層方向に流通させる連通孔が設けられ、樹脂製流体マニホールドは、一方のエンドプレートに当接する当接面のうち前記一方のエンドプレートの前記連通孔に対向しない箇所に、複数の凹み部がリブ部を介して設けられている。
【0011】
また、この燃料電池スタックでは、樹脂製流体マニホールドは、一方のエンドプレートに当接するマニホールドベース部材と、前記マニホールドベース部材に重ねて固定されるマニホールドカバー部材と、を備えることが好ましい。その際、マニホールドベース部材の一方のエンドプレートとの当接面には、複数の凹み部がリブ部を介して設けられることが好ましい。
【0012】
さらに、この燃料電池スタックでは、マニホールドベース部材の両端には、それぞれ流体を積層方向に流通させる流体連通孔が設けられることが好ましい。その際、マニホールドベース部材には、流体連通孔の間の領域に位置して複数の凹み部がリブ部を介して設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、樹脂製流体マニホールドの当接面に、複数の凹み部がリブ部を介して設けられている。このため、複数の凹み部により、樹脂製流体マニホールドの薄肉化を図ることができ、前記樹脂製流体マニホールド自体の軽量化が確実に遂行される。しかも、各凹み部間には、リブ部が設けられている。従って、リブ部による補強機能が得られ、樹脂製流体マニホールド自体の強度を良好に確保することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る燃料電池スタックの第2エンドプレート側からの斜視説明図である。
図2】前記燃料電池スタックの第1エンドプレート側からの一部分解斜視説明図である。
図3】前記燃料電池スタックを構成する発電セルの要部分解斜視説明図である。
図4】前記燃料電池スタックを構成する冷却媒体供給マニホールドの分解斜視説明図である。
図5】前記冷却媒体供給マニホールドを構成するマニホールドベース部材の正面説明図である。
図6】前記冷却媒体供給マニホールドを構成するマニホールドカバー部材の外面説明図である。
図7】前記マニホールドカバー部材の内面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1及び図2に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車に搭載される。燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が電極面を立位姿勢にして水平方向(矢印B方向)に積層された積層体12asを備える(図2参照)。なお、燃料電池スタック10は、複数の発電セル12を重力方向(矢印C方向)に積層してもよい。
【0016】
図2に示すように、発電セル12の積層方向一端(積層体12asの一端)には、第1ターミナルプレート14a、第1絶縁プレート16a及び第1エンドプレート18aが、外方に向かって、順次、配設される。発電セル12の積層方向他端(積層体12asの他端)には、第2ターミナルプレート14b、第2絶縁プレート16b及び第2エンドプレート18bが、外方に向かって、順次、配設される。
【0017】
横長形状(長方形状)の第1エンドプレート18aの略中央部(中央部から偏心していてもよい)からは、第1ターミナルプレート14aに接続された第1電力出力端子20aが外方に向かって延在する。横長形状(長方形状)の第2エンドプレート18bの略中央部(中央部から偏心していてもよい)からは、第2ターミナルプレート14bに接続された第2電力出力端子20bが外方に向かって延在する。
【0018】
第1エンドプレート18aと第2エンドプレート18bの各辺間には、連結バー22の両端がねじ24により固定され、複数の積層された発電セル12に積層方向(矢印B方向)の締め付け荷重を付与する。
【0019】
燃料電池スタック10は、必要に応じてケーシング26を備える。ケーシング26は、矢印B方向両端の2辺(面)が第1エンドプレート18a及び第2エンドプレート18bにより構成される。ケーシング26の矢印A方向両端の2辺(面)は、横長プレート形状の第1サイドパネル28a及び第2サイドパネル28bにより構成される。ケーシング26の高さ方向(矢印C方向)両端の2辺(面)は、上方サイドパネル30a及び下方サイドパネル30bにより構成される。上方サイドパネル30a及び下方サイドパネル30bは、横長プレート形状を有する。
【0020】
図2に示すように、第1エンドプレート18a及び第2エンドプレート18bには、各辺にねじ穴32が設けられる。第1サイドパネル28a、第2サイドパネル28b、上方サイドパネル30a及び下方サイドパネル30bには、各ねじ穴32に対向して孔部34が形成される。各孔部34に挿入されるねじ36は、各ねじ穴32に螺合することにより、ケーシング26が一体に固定される。
【0021】
図3に示すように、発電セル12は、電解質膜・電極構造体40と、前記電解質膜・電極構造体40を挟持するカソードセパレータ42及びアノードセパレータ44とを備える。
【0022】
カソードセパレータ42及びアノードセパレータ44は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいはその金属表面に防食用の表面処理を施した金属板により構成される。カソードセパレータ42及びアノードセパレータ44は、平面が矩形状を有するとともに、金属製薄板を波形状にプレス加工することにより、断面凹凸形状に成形される。なお、カソードセパレータ42及びアノードセパレータ44は、金属セパレータに代えて、例えば、カーボンセパレータを使用してもよい。
【0023】
発電セル12の長辺方向(矢印A方向)の一端縁部には、矢印B方向に互いに連通して、酸化剤ガス供給連通孔46a及び燃料ガス排出連通孔48bが設けられる。酸化剤ガス供給連通孔46aは、酸化剤ガス(流体)、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、燃料ガス排出連通孔48bは、燃料ガス(流体)、例えば、水素含有ガスを排出する。
【0024】
発電セル12の長辺方向の他端縁部には、矢印B方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス供給連通孔48aと、酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス排出連通孔46bとが設けられる。
【0025】
発電セル12の短辺方向(矢印C方向)の両端縁部一方側(水平方向一端側)には、すなわち、酸化剤ガス供給連通孔46a及び燃料ガス排出連通孔48b側には、冷却媒体供給連通孔50aが上下に設けられる。冷却媒体供給連通孔50aは、冷却媒体(流体)を供給するために、矢印B方向にそれぞれ連通しており、対向する辺に上下に1個ずつ(2個ずつでもよい)設けられる。
【0026】
発電セル12の短辺方向の両端縁部他方側(水平方向他端側)には、すなわち、燃料ガス供給連通孔48a及び酸化剤ガス排出連通孔46b側には、冷却媒体排出連通孔50bが上下に設けられる。冷却媒体排出連通孔50bは、冷却媒体を排出するために、矢印B方向にそれぞれ連通しており、対向する辺に上下に1個ずつ(2個ずつでもよい)設けられる。
【0027】
電解質膜・電極構造体40は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜52と、前記固体高分子電解質膜52を挟持するカソード電極54及びアノード電極56とを備える。
【0028】
カソード電極54及びアノード電極56は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層(図示せず)を有する。白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子は、ガス拡散層の表面に一様に塗布されることにより、電極触媒層(図示せず)が形成される。電極触媒層は、固体高分子電解質膜52の両面に形成される。
【0029】
カソードセパレータ42の電解質膜・電極構造体40に向かう面42aには、酸化剤ガス供給連通孔46aと酸化剤ガス排出連通孔46bとを連通する酸化剤ガス流路58が形成される。酸化剤ガス流路58は、矢印A方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0030】
アノードセパレータ44の電解質膜・電極構造体40に向かう面44aには、燃料ガス供給連通孔48aと燃料ガス排出連通孔48bとを連通する燃料ガス流路60が形成される。燃料ガス流路60は、矢印A方向に延在する複数本の波状流路溝(又は直線状流路溝)により形成される。
【0031】
互いに隣接するアノードセパレータ44の面44bとカソードセパレータ42の面42bとの間には、冷却媒体供給連通孔50a、50aと冷却媒体排出連通孔50b、50bとに連通する冷却媒体流路62が形成される。冷却媒体流路62は、水平方向に延在しており、電解質膜・電極構造体40の電極範囲にわたって冷却媒体を流通させる。
【0032】
カソードセパレータ42の面42a、42bには、このカソードセパレータ42の外周端縁部を周回して第1シール部材64が一体成形される。アノードセパレータ44の面44a、44bには、このアノードセパレータ44の外周端縁部を周回して第2シール部材66が一体成形される。
【0033】
第1シール部材64及び第2シール部材66としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が用いられる。
【0034】
図2に示すように、第1エンドプレート18aには、酸化剤ガス供給マニホールド68a、酸化剤ガス排出マニホールド68b、燃料ガス供給マニホールド70a及び燃料ガス排出マニホールド70bが取り付けられる。酸化剤ガス供給マニホールド68a、酸化剤ガス排出マニホールド68b、燃料ガス供給マニホールド70a及び燃料ガス排出マニホールド70bは、電気絶縁性を有する樹脂からなる。
【0035】
酸化剤ガス供給マニホールド68aと酸化剤ガス排出マニホールド68bとは、酸化剤ガス供給連通孔46aと酸化剤ガス排出連通孔46bとに連通する。燃料ガス供給マニホールド70aと燃料ガス排出マニホールド70bとは、燃料ガス供給連通孔48aと燃料ガス排出連通孔48bとに連通する。
【0036】
図1に示すように、第2エンドプレート(一方のエンドプレート)18bには、上下にそれぞれ1個の冷却媒体供給連通孔50aに連通する樹脂製の冷却媒体供給マニホールド(樹脂製流体マニホールド)72aが取り付けられる。第2エンドプレート18bには、上下にそれぞれ1個の冷却媒体排出連通孔50bに連通する樹脂製の冷却媒体排出マニホールド(樹脂製流体マニホールド)72bが取り付けられる。冷却媒体供給マニホールド72a及び冷却媒体排出マニホールド72bは、電気絶縁性を有することが好ましい。
【0037】
図1及び図4に示すように、冷却媒体供給マニホールド72aは、第2エンドプレート18bに当接するマニホールドベース部材74aを備える。マニホールドベース部材74aは、マニホールドカバー部材76aと固定されるとともに、前記マニホールドカバー部材76aは、第2エンドプレート18bに取り付けられる。第2エンドプレート18bには、各冷却媒体供給連通孔50aに近接してそれぞれ4個のねじ穴77aが形成される一方、各冷却媒体排出連通孔50bに近接してそれぞれ4個のねじ穴77bが形成される(図1参照)。
【0038】
マニホールドベース部材74aは、略平板形状を有し、前記マニホールドベース部材74aの上部及び下部には、それぞれ冷却媒体供給連通孔50aに一体に連通する冷却媒体入口(流体連通孔)78aが設けられる。マニホールドベース部材74aのマニホールドカバー部材76aに向かう面74a(in)には、上下の冷却媒体入口78aを囲繞する周回溝部80aが形成される。周回溝部80aには、シール部材81aが配置される。
【0039】
図1及び図5に示すように、マニホールドベース部材74aの第2エンドプレート18bに当接する面74a(out)には、一対の冷却媒体入口78a間の領域に位置して、複数の凹み部82aがリブ部83aを介して設けられる。リブ部83aは、マニホールドベース部材74aの面74a(out)よりも高さが低く、すなわち、前記面74a(out)よりも内方に離間して形成され、第2エンドプレート18bの表面との間に隙間が設けられる。
【0040】
凹み部82aは、例えば、ハニカム形状であり、前記凹み部82a同士は、正六角形状のリブ部83aにより仕切られる。凹み部82aの深さhは、マニホールドベース部材74aの厚さtに対して、例えば、h/t=0.1〜0.7程度の範囲内に設定される。なお、凹み部82aは、ハニカム形状の他、三角形や四角形等の多角形状、又は円形状等、種々の形状に設定可能である。
【0041】
図4に示すように、マニホールドベース部材74aの面74a(in)には、各冷却媒体入口78aの周囲に、複数の凹み部85aがリブ部87aを介して設けられる。リブ部87aは、マニホールドベース部材74aの面74a(in)よりも高さが低く、すなわち、前記面74a(in)よりも内方に離間して形成され、マニホールドカバー部材76aの表面との間に隙間が設けられる。凹み部85aの深さhは、マニホールドベース部材74aの厚さtに対して、例えば、h/t=0.1〜0.7程度の範囲内に設定される。凹み部85aは、ハニカム形状の他、三角形や四角形等の多角形状、又は円形状等、種々の形状に設定可能である。
【0042】
マニホールドベース部材74aの上部には、両角部にそれぞれ上下に2個ずつ孔部84aが形成される。マニホールドベース部材74aの下部には、両角部にそれぞれ上下に2個ずつ孔部84aが形成される。各孔部84aは、第2エンドプレート18bの各ねじ穴77aと同軸上に配置される。マニホールドベース部材74aの高さ方向(矢印C方向)略中央部には、矢印A方向両側に位置して、それぞれ上下2個の金属製の雌ねじ部材86aが埋設される。
【0043】
図4及び図6に示すように、マニホールドカバー部材76aは、マニホールドベース部材74aの上下の冷却媒体入口78aに連通する冷却媒体流通路89aを形成する筐体状の本体部88aを設ける。本体部88aの高さ方向略中央部には、冷却媒体供給口である入口管路部90aが、水平方向に向かって(又は水平方向から傾斜して)設けられる。本体部88aの外周縁部には、フランジ部92aが設けられる。
【0044】
図4に示すように、フランジ部92aの上部には、両角部にそれぞれ上下に2個ずつ孔部94aが形成される。フランジ部92aの下部には、両角部にそれぞれ上下に2個ずつ孔部94aが形成される。フランジ部92aの高さ方向(矢印C方向)略中央部には、矢印A方向両側に位置して、それぞれ上下に2個ずつ孔部96aが形成される。
【0045】
フランジ部92aの孔部94aは、マニホールドベース部材74aの孔部84aと同軸上に配置される一方、前記フランジ部92aの孔部96aは、前記マニホールドベース部材74aの金属製の雌ねじ部材86aと同軸上に形成される。
【0046】
図7に示すように、マニホールドカバー部材76aの内側(マニホールドベース部材74aに対向する側)の面76a(in)には、冷却媒体流通路89aを周回して複数の凹み部98aがリブ部100aを介して設けられる。凹み部98aは、凹み部82aと同様に、ハニカム形状を有するが、多角形状又は円形状等、種々の形状に設定可能である。
【0047】
図4及び図6に示すように、マニホールドカバー部材76aの外側の面76a(out)には、本体部88aの外周を周回して、複数の凹み部98aがリブ部100aを介して設けられる。
【0048】
図4に示すように、各孔部94aには、例えば、金属製の円筒状カラー部材106aが配設される。円筒状カラー部材106aは、孔部94aから孔部84aに挿入されて先端が第2エンドプレート18bのプレート面に当接するように、軸方向の長さが設定される。
【0049】
円筒状カラー部材106a内に締結ボルト(六角ボルト)108aが挿入され、前記締結ボルト108aがねじ穴77aに螺合することにより、冷却媒体供給マニホールド72aが第2エンドプレート18bに固定される。
【0050】
図4に示すように、各孔部96aには、例えば、金属製の円筒状カラー部材110aが配設される。円筒状カラー部材110aは、孔部96aに挿入されて先端がマニホールドベース部材74aの雌ねじ部材86aの端面に当接するように、軸方向の長さが設定される。
【0051】
円筒状カラー部材110a内に締結ボルト(六角ボルト)112aが挿入され、前記締結ボルト112aが雌ねじ部材86aに螺合することにより、マニホールドカバー部材76aがマニホールドベース部材74aに固定される。
【0052】
図1に示すように、冷却媒体排出マニホールド72bは、第2エンドプレート18bに固定される。なお、冷却媒体排出マニホールド72bでは、冷却媒体供給マニホールド72aと同一の構成要素には、同一の参照数字にaに代えてbを付し、その詳細な説明は省略する。
【0053】
冷却媒体排出マニホールド72bの上部及び下部には、それぞれ冷却媒体排出連通孔50bに一体に連通する冷却媒体出口(流体連通孔)78bが設けられる。冷却媒体排出マニホールド72bでは、マニホールドカバー部材76bを構成する本体部88bの高さ方向略中央部に、冷却媒体排出口である出口管路部90bが、水平方向に向かって(又は水平方向から傾斜して)設けられる。
【0054】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0055】
先ず、図2に示すように、第1エンドプレート18aの酸化剤ガス供給マニホールド68aから酸化剤ガス供給連通孔46aには、酸素含有ガス等の酸化剤ガスが供給される。第1エンドプレート18aの燃料ガス供給マニホールド70aから燃料ガス供給連通孔48aには、水素含有ガス等の燃料ガスが供給される。
【0056】
さらに、図1に示すように、第2エンドプレート18bでは、冷却媒体供給マニホールド72aの入口管路部90aから本体部88aの冷却媒体流通路89a内には、純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体が供給される。冷却媒体は、冷却媒体流通路89aの上下に連通する各冷却媒体供給連通孔50aに分配される。
【0057】
このため、図3に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス供給連通孔46aからカソードセパレータ42の酸化剤ガス流路58に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路58に沿って矢印A方向に移動し、電解質膜・電極構造体40のカソード電極54に供給される。
【0058】
一方、燃料ガスは、燃料ガス供給連通孔48aからアノードセパレータ44の燃料ガス流路60に供給される。燃料ガスは、燃料ガス流路60に沿って矢印A方向に移動し、電解質膜・電極構造体40のアノード電極56に供給される。
【0059】
従って、電解質膜・電極構造体40では、カソード電極54に供給される酸化剤ガスと、アノード電極56に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費されて発電が行われる。
【0060】
次いで、電解質膜・電極構造体40のカソード電極54に供給されて一部が消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出連通孔46bに沿って矢印B方向に排出される。一方、電解質膜・電極構造体40のアノード電極56に供給されて一部が消費された燃料ガスは、燃料ガス排出連通孔48bに沿って矢印B方向に排出される。
【0061】
また、上下の冷却媒体供給連通孔50aに供給された冷却媒体は、互いに隣接するカソードセパレータ42及びアノードセパレータ44間の冷却媒体流路62に導入される。冷却媒体は、上下の冷却媒体供給連通孔50aから一旦、互いに近接する方向に、すなわち、矢印C方向内方に沿って流動した後、矢印A方向に移動して電解質膜・電極構造体40を冷却する。冷却媒体は、矢印C方向外方に互いに離間する方向に移動した後、上下の冷却媒体排出連通孔50bに沿って矢印B方向に排出される。
【0062】
図1に示すように、冷却媒体は、上下それぞれ1個の冷却媒体排出連通孔50bから冷却媒体排出マニホールド72bの本体部88b内の冷却媒体流通路89bに排出される。冷却媒体は、本体部88bの中央側に流通した後、出口管路部90bから外部に排出される。
【0063】
この場合、本実施形態では、図1及び図5に示すように、マニホールドベース部材74aの面74a(out)には、一対の冷却媒体入口78a間の領域に位置して、複数の凹み部82aがリブ部83aを介して設けられている。
【0064】
このため、マニホールドベース部材74aは、複数の凹み部82aにより薄肉化を図ることができ、前記マニホールドベース部材74a自体の軽量化が確実に遂行される。しかも、各凹み部82a間には、リブ部83aが設けられている。従って、リブ部83aによる補強機能が得られ、マニホールドベース部材74a自体の強度を良好に確保することが可能になる。
【0065】
しかも、リブ部83aは、マニホールドベース部材74aの面74a(out)よりも高さが低く形成され、第2エンドプレート18bの表面との間に隙間が設けられている。これにより、第2エンドプレート18bとリブ部83aとにより空気室が構成され、前記第2エンドプレート18bからの放熱を抑制することができる。さらに、マニホールドベース部材74aは、リブ部83aが外周面よりも低く形成されており、前記外周面のみ平面度を確保すればよい。このため、精度の管理が容易となる。
【0066】
さらにまた、図4に示すように、マニホールドベース部材74aの面74a(in)には、各冷却媒体入口78aの周囲に対応して、複数の凹み部85aがリブ部87aを介して設けられている。これにより、マニホールドベース部材74a自体の軽量化が一層促進されるという利点がある。
【0067】
一方、図7に示すように、マニホールドカバー部材76aの面76a(in)には、冷却媒体流通路89aを周回して複数の凹み部98aがリブ部100aを介して設けられている。このため、マニホールドカバー部材76aは、複数の凹み部98aにより薄肉化を図ることができ、前記マニホールドカバー部材76a自体の軽量化が確実に遂行される。しかも、各凹み部98a間には、リブ部100aが設けられている。従って、リブ部100aによる補強機能が得られ、マニホールドカバー部材76a自体の強度を良好に確保することが可能になる。
【0068】
さらに、図6に示すように、マニホールドカバー部材76aの面76a(out)には、本体部88aの外周を周回して、複数の凹み部98aがリブ部100aを介して設けられる。これにより、マニホールドベース部材74a自体の軽量化が一層促進され、冷却媒体供給マニホールド72a全体の強度を良好に確保するとともに、軽量化を図ることが可能になる。また、冷却媒体排出マニホールド72bでは、上記の冷却媒体供給マニホールド72aと同様の効果が得られる。
【0069】
なお、本実施形態では、冷却媒体供給マニホールド72aは、マニホールドベース部材74a及びマニホールドカバー部材76aにより個別に構成されているが、これに限定されるものではない。例えば、マニホールドベース部材74a及びマニホールドカバー部材76aを一体成形することにより、冷却媒体供給マニホールド72aを単一部品として構成してもよい。一方、冷却媒体排出マニホールド72bも、同様に単一部品として構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…燃料電池スタック 12…発電セル
12as…積層体 18a、18b…エンドプレート
26…ケーシング 40…電解質膜・電極構造体
42…カソードセパレータ 44…アノードセパレータ
46a…酸化剤ガス供給連通孔 46b…酸化剤ガス排出連通孔
48a…燃料ガス供給連通孔 48b…燃料ガス排出連通孔
50a…冷却媒体供給連通孔 50b…冷却媒体排出連通孔
52…固体高分子電解質膜 54…カソード電極
56…アノード電極 58…酸化剤ガス流路
60…燃料ガス流路 62…冷却媒体流路
68a…酸化剤ガス供給マニホールド 68b…酸化剤ガス排出マニホールド
70a…燃料ガス供給マニホールド 70b…燃料ガス排出マニホールド
72a…冷却媒体供給マニホールド 72b…冷却媒体排出マニホールド
74a…マニホールドベース部材 76a…マニホールドカバー部材
77a、77b…ねじ穴 78a…冷却媒体入口
81a…シール部材 82a、98a…凹み部
83a、100a…リブ部 84a、94a、96a…孔部
86a…雌ねじ部材 88a、88b…本体部
89a…冷却媒体流通路 92a…フランジ部
106a、110a…円筒状カラー部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7